(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】燃料電池用電解質膜の製造方法及びそれによって製造された電解質膜
(51)【国際特許分類】
H01M 8/1018 20160101AFI20220708BHJP
H01M 8/10 20160101ALI20220708BHJP
H01M 8/1039 20160101ALI20220708BHJP
H01M 8/1058 20160101ALI20220708BHJP
H01M 8/106 20160101ALI20220708BHJP
H01M 8/1069 20160101ALI20220708BHJP
H01M 8/1053 20160101ALI20220708BHJP
H01M 8/1067 20160101ALI20220708BHJP
【FI】
H01M8/1018
H01M8/10 101
H01M8/1039
H01M8/1058
H01M8/106
H01M8/1069
H01M8/1053
H01M8/1067
(21)【出願番号】P 2018128626
(22)【出願日】2018-07-05
【審査請求日】2021-01-26
(31)【優先権主張番号】10-2018-0048312
(32)【優先日】2018-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞株式会社
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【氏名又は名称】前川 英明
(72)【発明者】
【氏名】ユン、ソク、ファン
(72)【発明者】
【氏名】ホン、ボ、キ
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-270045(JP,A)
【文献】特開平09-199144(JP,A)
【文献】韓国公開実用新案第20-2015-0001125(KR,U)
【文献】米国特許出願公開第2009/0068528(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池用電解質膜の製造方法であって、
イオン伝導性高分子、及び上記イオン伝導性高分子が3次元的に接して形成される水素イオン移動チャネル(Channel)を含む電解質層を準備する段階と、
上記電解質層の一面から該一面に対向する他面への方向に気体を透過(Permeation)させて、
上記方向に気体が透過する上記水素イオン移動チャネルの屈曲度(Tortuosity)を下げる段階と、
を含む燃料電池用電解質膜の製造方法。
【請求項2】
燃料電池用電解質膜の製造方法であって、
イオン伝導性高分子、及び上記イオン伝導性高分子が3次元的に接して形成される水素イオン移動チャネル(Channel)を含む電解質層を準備する段階と、
上記電解質層の一面から該一面に対向する他面への方向に気体を透過(Permeation)させて、上記方向に水素イオンを移動させる上記水素イオン移動チャネルの屈曲度(Tortuosity)を下げる段階と、
を含む燃料電池用電解質膜の製造方法。
【請求項3】
電解質層を準備する段階において、
上記イオン伝導性高分子は、主鎖(Main-Chain)にポリテトラフルオロエチレン(PTFE:Polytetrafluoroethylene)を含み、側鎖(Side-Chain)にスルホン酸基(-SO
3H)を含む、請求項1
または2に記載の燃料電池用電解質膜の製造方法。
【請求項4】
電解質層を準備する段階において、
上記電解質層の厚さは5μm~100μmである、請求項1
または2に記載の燃料電池用電解質膜。
【請求項5】
電解質層を準備する段階において、
上記電解質層は、イオン伝導性高分子だけを含む純粋層と、イオン伝導性高分子及び3次元網状構造の支持体を含む混合層とを含み、
上記純粋層及び上記混合層は互いに隣接して配置され、上記純粋層と上記混合層との間にイオンが移動可能である、請求項1
または2に記載の燃料電池用電解質膜の製造方法。
【請求項6】
上記3次元網状構造の支持体は、
延伸されたポリテトラフルオロエチレン(e-PTFE:expanded-Polytetrafluoroethylene)、3.5Mamu~7.5Mamuの気孔性超高分子量ポリエチレン(UHMWPE:Porous Ultra High Molecular Weight Polyethylene)及びそれらの組合せからなる群から選ばれる、請求項
5に記載の燃料電池用電解質膜。
【請求項7】
上記水素イオン移動チャネルの屈曲度を下げる段階において、
上記気体は、水蒸気(H
2O)、エタノール(C
2H
5OH)、プロパノール(C
3H
7OH)及びそれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項1
または2に記載の燃料電池用電解質膜の製造方法。
【請求項8】
上記水素イオン移動チャネルの屈曲度を下げる段階において、
上記気体に上記イオン伝導性高分子のアルファ(α)転移温度(Ta:α-Transition Temperature)より2℃高い温度~200℃温度の熱を加えて透過させる、請求項1
または2に記載の燃料電池用電解質膜の製造方法。
【請求項9】
上記水素イオン移動チャネルの屈曲度を下げる段階において、
上記気体は上記イオン伝導性高分子のアルファ(α)転移温度より2℃高い温度未満の沸点を有する、請求項1
または2に記載の燃料電池用電解質膜の製造方法。
【請求項10】
上記水素イオン移動チャネルの屈曲度を下げる段階において、
上記気体の飽和蒸気圧によって上記気体が上記電解質層を透過する、請求項1
または2に記載の燃料電池用電解質膜の製造方法。
【請求項11】
上記水素イオン移動チャネルの屈曲度を下げる段階において、
上記気体の飽和蒸気圧は0.01MPa~1MPaの圧力である、請求項1
または2に記載の燃料電池用電解質膜の製造方法。
【請求項12】
上記水素イオン移動チャネルの屈曲度を下げる段階において、
上記気体は単位時間及び単位面積当たりの透過量が0.1~10[mg/cm
2.min]である、請求項1
または2に記載の燃料電池用電解質膜の製造方法。
【請求項13】
上記水素イオン移動チャネルの屈曲度を下げる段階において、
上記電解質層において上記気体の上記一面の濃度が上記他面よりも高く形成され、上記気体が上記一面から上記他面への方向に透過する、請求項1
または2に記載の燃料電池用電解質膜の製造方法。
【請求項14】
上記水素イオン移動チャネルの屈曲度を下げる段階において、
上記電解質層において上記気体の上記一面の圧力が上記他面よりも高く形成され、上記気体が上記一面から上記他面への方向に透過する、請求項1
または2に記載の燃料電池用電解質膜の製造方法。
【請求項15】
上記水素イオン移動チャネルの屈曲度を下げる段階において、
上記気体を加熱することを特徴とする、請求項
13又は
14に記載の燃料電池用電解質膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用電解質膜の製造方法及びそれによって製造された電解質膜に関し、特に、再整列されたイオン移動チャネルを有する電解質膜を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車向け燃料電池としては高分子電解質膜燃料電池(PEMFC:Polymer Electrolyte Membrane Fuel Cell)が適用されているが、この高分子電解質膜燃料電池が自動車の様々な運転条件で少なくとも数十kW以上の高い出力性能を正常に発現するには、広い電流密度(Current Density)範囲で安定して作動可能である必要がある。
【0003】
上記燃料電池の電気生成のための反応は、アイオノマーベースの電解質膜(Ionomer-Based Membrane)とアノード(Anode)/カソード(Cathode)の電極とから構成された膜-電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)から発生する。燃料電池の酸化極であるアノードに供給された水素が水素イオン(Proton)と電子(Electron)とに分離された後、水素イオン及び電子はそれぞれ電解質膜及び外部回路から還元極のカソード側に移動し、該カソードで酸素分子、水素イオン及び電子が共に反応して電気及び熱を生成すると同時に、反応副産物として水(H2O)を生成する。燃料電池における電気化学反応時に生成される水は、適量存在時には膜-電極接合体の加湿性を維持させる好ましい役割を担うが、過量生成時にはそれを適度に除去しないと高い電流密度において水の氾濫(Flooding)現象が発生し、この氾濫した水は、反応気体が効率的に燃料電池セルの内部まで供給されることを妨害するため、電圧損失が増加してしまう。このような燃料電池の電気化学反応においてアノード中の水素イオンが膜を通ってカソードに移動する際、一般的にH3O+のようなヒドロニウムイオン(Hydronium Ion)の形態で水分子と結合して水分子を引きずっていく(Dragging)が、このような現象を電気浸透牽引(EOD:Electro-Osmotic Drag)という。また、カソードに積もる水の量が増加すれば、一部の水がカソードからアノードに逆移動することもあり、これを逆拡散(BD:Back Diffusion)という。したがって、燃料電池において優れたセル性能を得るためには、このような水又は水素イオンなどの効率的な移動が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】韓国公開特許第10-2014-0076475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、イオン移動チャネルが再整列された電解質膜を提供することである。
【0006】
また、電解質膜内のイオン移動チャネルの再整列により、イオンの移動をより速かにする燃料電池用電解質膜を提供することをその目的とする。
【0007】
本発明の目的は以上に言及した目的に制限されない。本発明のその他の具体的な事項は詳細な説明及び図面に含まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するための本発明に係る燃料電池用電解質膜の製造方法は、イオン伝導性高分子、及び上記イオン伝導性高分子が3次元的に接して形成される水素イオン移動チャネル(Channel)を含む電解質層を準備する段階と、上記電解質層の一面から上記一面に対向する他面への方向に気体を透過(Permeation)させて上記水素イオン移動チャネルの屈曲度(Tortuosity)を下げる段階と、を含むことができる。
【0009】
電解質層を準備する段階において、上記イオン伝導性高分子は、主鎖(Main-Chain)にポリテトラフルオロエチレン(PTFE:Polytetrafluoroethylene)を含み、側鎖(Side-Chain)にスルホン酸基(-SO3H)を含むことができる。
【0010】
電解質層を準備する段階において、上記電解質層の厚さは5μm~100μmであってもよい。
【0011】
電解質層を準備する段階において、上記電解質層は、イオン伝導性高分子だけを含む純粋層と、イオン伝導性高分子及び3次元網状構造の支持体を含む混合層とを含み、上記純粋層及び上記混合層は互いに隣接して配置されて、上記純粋層と上記混合層との間にイオンが移動可能であってもよい。
【0012】
上記3次元網状構造の支持体は、延伸されたポリテトラフルオロエチレン(e-PTFE:expanded-Polytetrafluoroethylene)、3.5~7.5Mamu(Million Atomic Mass Unit)の気孔性超高分子量ポリエチレン(UHMWPE:Porous Ultra High Molecular Weight Polyethylene)及びそれらの組合せからなる群から選ぶことができる。
【0013】
上記水素イオン移動チャネルの屈曲度を下げる段階において、上記気体は、水蒸気(H2O)、エタノール(C2H5OH)、プロパノール(C3H7OH)及びそれらの混合物からなる群から選ぶことができる。
【0014】
上記水素イオン移動チャネルの屈曲度を下げる段階において、上記気体に上記イオン伝導性高分子のアルファ(α)転移温度(Ta:α-Transition Temperature)より2℃高い温度~200℃温度の熱を加えて透過させることができる。
【0015】
上記水素イオン移動チャネルの屈曲度を下げる段階において、上記気体は、上記イオン伝導性高分子のアルファ(α)転移温度より2℃高い温度未満の沸点を有することができる。
【0016】
上記水素イオン移動チャネルの屈曲度を下げる段階において、上記気体の飽和蒸気圧によって上記気体が上記電解質層を透過することができる。
【0017】
上記水素イオン移動チャネルの屈曲度を下げる段階において、上記気体の飽和蒸気圧は0.01MPa~1MPaの圧力であってもよい。
【0018】
上記水素イオン移動チャネルの屈曲度を下げる段階において、上記気体は単位時間及び単位面積当たりの透過量が0.1~10[mg/cm2.min]であってもよい。
【0019】
上記水素イオン移動チャネルの屈曲度を下げる段階において、上記電解質層で上記気体の上記一面の濃度が上記他面よりも高く形成され、上記気体が上記一面から上記他面への方向に透過してもよい。
【0020】
上記水素イオン移動チャネルの屈曲度を下げる段階において、上記電解質層で上記気体の上記一面の圧力が上記他面よりも高く形成され、上記気体が上記一面から上記他面への方向に透過してもよい。
【0021】
上記水素イオン移動チャネルの屈曲度を下げる段階において、上記気体を加熱することを特徴としてもよい。
【0022】
その他実施例の具体的な事項は詳細な説明及び図面に含まれている。
【発明の効果】
【0023】
本発明のいくつかの実施例による燃料電池用電解質膜の製造方法は、電解質層に気体を透過させることによって電解質層のイオン移動チャネルが再整列された電解質膜を提供することができる。
【0024】
また、このような電解質膜内のイオン移動チャネルの再整列は、イオン移動チャネルの屈曲度(Tortuosity)を下げ、究極的に水素イオンの移動を円滑にさせて燃料電池の性能を向上させることができる。
【0025】
本発明の効果は以上に言及した効果に限定されない。本発明の効果は、以下の説明から推論可能な効果のいずれをも含むと理解すべきであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明のいくつかの実施例による電解質膜の製造方法を示すフローチャートである。
【
図2】
図1のS100段階における電解質層を示す断面図である。
【
図3】
図2に示した電解質層の断面を拡大した図である。
【
図4】
図1のS200段階における電解質層を示す断面図である。
【
図5】本発明のいくつかの実施例による電解質膜の製造方法によって製造された電解質膜の断面図である。
【
図6】
図5に示した電解質膜の断面を拡大した図である。
【
図7】本発明のいくつかの実施例による電解質膜の製造方法によって製造された電解質膜の相対湿度による水素イオン伝導度の評価結果を、比較例に対比して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付の図面を参照して本発明の好適な実施例を詳細に説明する。本発明の利点及び特徴、並びにそれらを達成する方法は、添付の図面と共に詳細に後述する実施例から明らかになるであろう。しかし、本発明は以下に開示する実施例に限定されるものではなく、別の様々な形態にすることもでき、単に、本実施例は、本発明の開示を完全なものにし、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者に発明の範ちゅうを完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は請求項の範ちゅうによって定義されるべきである。明細書全体を通じて同一の参照符号は同一の構成要素を示す。
【0028】
別の定義がない限り、本明細書で使われる全ての用語(技術及び科学的用語を含む。)は、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者にとって共通に理解できる意味で使うことができる。また、一般に使われる辞書に定義されている用語は、明白に特別に定義されていない限り、理想的に又は過度に解釈されない。
【0029】
また、本明細書で使われた用語は実施例を説明するためのもので、本発明を制限しようとするためのものではない。本明細書において、単数型は、文脈において特別に言及しない限り、複数型も含む。明細書で使われる「含む(Comprises)」及び/又は「有する(Include)」は、言及された構成要素、特徴、数字、段階及び/又は動作以外に一つ以上の別の構成要素、特徴、数字、段階及び/又は動作の存在又は追加を排除しない意味で使う。そして、「及び/又は」は言及されたアイテムの各々及び一つ以上の全ての組合せを含む。
【0030】
また、層、膜、領域、板などの部分が別の部分の“上に”あるとされている場合、これは、別の部分の“上に直接”ある場合の他、それらの間に介在部分がある場合も含む。逆に、層、膜、領域、板などの部分が別の部分の“下に”あるとされている場合、これは別の部分の“下に直接”ある場合の他、それらの間に介在部分がある場合も含む。
【0031】
別に明示されない限り、本明細書で用いられている成分、反応条件、ポリマー組成物及び配合物の量を表現する全ての数、値及び/又は表現は、それらの数字が本質的に別の物の中からその値を得る上で発生する測定の様々な不確実性が反映された近似値であるから、いずれの場合も“約”という用語で修飾されるものと理解されるべきである。また、本記載において数値範囲が開示される場合、その範囲は連続的であり、別に指定されない限り、その範囲における最小値から最大値を含む該最大値までの全ての値が含まれる。さらには、このような範囲が整数を示す場合、別に指定されない限り、最小値から最大値を含む該最大値までを含む全ての整数が含まれる。
【0032】
本明細書において、変数について範囲が記載される場合、上記変数は、上記範囲における記載された終了点を含む記載された範囲内の全ての値を含むものと理解されるべきである。例えば、「5~10」の範囲は、5、6、7、8、9、及び10の値の他、6~10、7~10、6~9、7~9などの任意の下位範囲も含み、5.5、6.5、7.5、5.5~8.5及び6.5~9などのような記載された範囲の範ちゅうに妥当な整数の間の任意の値も含むものと理解されるべきである。また、例えば、「10%~30%」の範囲は、10%、11%、12%、13%などの値のように30%までを含む全ての整数の他、10%~15%、12%~18%、20%~30%などの任意の下位範囲も含み、10.5%、15.5%、25.5%などのように、記載された範囲の範ちゅう内の妥当な整数の間の任意の値も含むものと理解されるべきである。
【0033】
以下、本発明について添付の図面を参照してより詳しく説明する。
【0034】
図1は、本発明のいくつかの実施例による電解質膜の製造方法を示すフローチャートである。
【0035】
図1を参照すると、本発明に係る燃料電池用電解質膜の製造方法は、イオン伝導性高分子(すなわち、アイオノマー(Ionomer))及び水素イオン移動チャネル(Channel)を含む電解質層を準備する段階(S100)、及び上記電解質層に気体を透過(Permeation)させて上記水素イオン移動チャネルの屈曲度(Tortuosity)(又は、ねじれ)を下げる段階(S200)を含むことができる。
【0036】
さらに詳しく説明すると、電解質層が含む上記水素イオン移動チャネルは、イオン伝導性高分子が3次元的に接して形成される領域であり、水素イオンが移動可能な通路を意味する。これによって、水素イオンは、燃料電池の電解質膜において水素イオン移動チャネルに沿って燃料電池の電極に移動することができる。
【0037】
一方、屈曲度は、イオンの移動経路を説明するための直接的な尺度である。すなわち、本発明において屈曲度は、イオン伝導性高分子内で水素イオンが移動する経路の曲がりくねった程度を表す。したがって、燃料電池の効率向上のために水素イオンが速かに移動するためには、直線経路の水素イオン移動チャネルを導入することが好ましい。一方、電解質層の気孔度(Porosity)及び有効拡散係数(Effective Diffusion Coefficient)を測定して比較する場合、イオン移動チャネルの屈曲度の差を相対的に判断することができる。
【0038】
本発明において電解質層に含まれるイオン伝導性高分子は、主鎖(Main-chain or Backbone)と、前駆単量体(Precursor Monomer)からなる側鎖(Side-chain or Functional-chain)との共重合(Co-polymerization)で製造することができる。一方、イオン伝導性高分子の側鎖は、分子量の大きさによって、短側鎖(Short Side-chain)、中側鎖(Medium Side-chain)、長側鎖(Long Side-chain)に区別することができる。
【0039】
例えば、本発明のいくつかの実施例による電解質層のイオン伝導性高分子は、主鎖にポリテトラフルオロエチレン(PTFE:Polytetrafluoroethylene)を含むことができる。また、このようなイオン伝導性高分子は、側鎖(Side-Chain)にスルホン酸基(-SO3H)を含むことができる。また、イオン伝導性高分子の側鎖末端に位置している官能基(Functional Group)はスルホニルフルオリド(Sulfonyl Fluoride:-SO2F)を含むことができる。スルホニルフルオリドの特徴は、低い親水度(Hydrophilicity)により含湿特性(Water Uptake)が少ないことから、通常、水素イオンを伝達しないという点である。一方、スルホニルフルオリド官能基をスルホン酸基(-SO3H)に置き換えるために、アルカリ水溶液を用いた加水分解反応を行うことができる。
【0040】
特に、本発明のいくつかの実施例によるイオン伝導性高分子は、好ましくは、過フッ素系(Perfluorinated)アイオノマーを含むことができる。このような過フッ素スルホン酸系イオン伝導性高分子は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE:Polytetrafluoroethylene)からなる主鎖(Main-Chain)と、スルホン酸基を含む側鎖(Side-Chain)とが結合された構造を有することができる。また、過フッ素系アイオノマーを合成するために、原料として、テトラフルオロエチレンの他に、ヘキサフルオロプロピレンエポキシド(HFPO:HexaFluoro Propylene Epoxide)も共に使用することができる。
【0041】
一方、本発明の一実施例による電解質層を準備する段階(S100)において、電解質層は純粋層及び混合層を含むことができる。純粋層はイオン伝導性高分子だけを含むことができる。一方、混合層はイオン伝導性高分子及び支持体を含むことができる。このような支持体は、混合層のイオン伝導性高分子を支持する。支持体は、例えば、3次元網状構造を有することができる。
【0042】
また、純粋層及び混合層は相互隣接して配置されてもよい。したがって、上記純粋層及び上記混合層との間にイオン(例えば、水素イオン)が移動することができる。
【0043】
前述したように、イオン伝導性高分子に支持体を含めることにより、電解質膜の機械的剛性又は機械的、化学的耐久性を確保することができる。さらにいうと、燃料電池の性能向上のために薄い厚さ特性(例えば、30μm以下)を有する電解質膜の導入が要求され、その場合、薄い電解質膜の機械的剛性及び機械的/化学的耐久性を確保するために支持体を含めることができる。
【0044】
一方、3次元網状構造の支持体は、例えば、延伸されたポリテトラフルオロエチレン(e-PTFE:expanded-Polytetrafluoroethylene)、気孔性超高分子量ポリエチレン(UHMWPE:Porous Ultra High Molecular Weight Polyethylene)及びそれらの組合せからなる群から選ぶことができる。この時、気孔性超高分子量ポリエチレンは、3.5~7.5Mamu(Million Atomic Mass Unit)の原子質量を有することができる。
【0045】
特に、延伸されたポリテトラフルオロエチレンは、機械的特性(例えば、引張強度(Tensile Strength)又は伸び率(Elongation))に非常に優れており、電解質膜を通した水素透過(Hydrogen Crossover)を低減させることができる。これによって、燃料電池の燃料使用効率性(Fuel Usage Efficiency)を向上させることができる。一方、電解質層に含み得る支持体として、延伸されたポリテトラフルオロエチレン又は超高分子量ポリエチレンを例示したが、これに限定されない。例えば、電気放射(Electro-spinning)方式で網(Web)構造に製造されたポリフッ化ビニリデン(PVDF:Polyvinylidenefluoride)のようなフッ素系高分子が支持体として電解質層に含まれてもよい。
【0046】
以下、
図2~
図6を参照して、本発明のいくつかの実施例による燃料電池用電解質膜の製造方法を段階別に詳しく説明する。
【0047】
図2及び
図3は、
図1のS100段階における電解質層を示す断面図及びその断面を拡大した図である。説明の便宜上、
図1を用いて説明した以外の点を中心に説明する。
【0048】
まず、
図2を参照すると、イオン伝導性高分子及び水素イオン移動チャネルを含む電解質層10は、一面11と、一面11に対向する他面12で構成することができる。
【0049】
また、
図2で、電解質層10の一面11と他面12との間の断面においてx方向及びy方向に描かれているパターン(Pattern)は、電解質層10においてイオン伝導性高分子及び水素イオン移動チャネルの屈曲度を概略的に示している。すなわち、イオン伝導性高分子内で水素イオンが移動する曲がりくねった経路(Tortuous Path)を例示している。例えば、水素イオンが電解質層10における一面11から他面12までの直線経路(y方向)に沿う場合、屈曲度は理論的に1である。したがって、燃料電池の効率向上のためには水素イオンがより速かに移動する経路が必要であり、そのために、比較的曲がりくねっていない(すなわち、屈曲度が1に近い)水素イオン移動チャネルを導入することが好ましい。
【0050】
一方、このような屈曲度は、通常、電解質層10内の複雑な形状及び構造(例えば、不規則なイオン伝導性高分子の形状又は個別大きさのイオン伝導性高分子など)によって容易に測定されないため、
図2は屈曲度を概略的に示したものである。したがって、これに、本発明の電解質層10におけるイオン伝導性高分子及び水素イオン移動チャネルの屈曲度が限定されるわけではない。
【0051】
次に、
図3を参照すると、電解質層(
図2の10を参照)のイオン伝導性高分子、該イオン伝導性高分子に結合された官能基、水素イオン及び水分子が例示的に表示されている。
【0052】
例えば、本発明のいくつかの実施例による電解質層10は、イオン伝導性高分子が3次元的に接して水素イオン移動チャネルを形成する。例えば、
図3に示すように、イオン移動チャネルは互いに複雑に絡み合った構造を有することができる。例えば、イオン伝導性高分子の官能基(例えば、スルホン酸基)がクラスター(Cluster)となっている親水性領域がイオン移動チャネル(例えば、水素イオン移動チャネル)の役割を担う。
【0053】
次に、
図4は、
図1のS200段階における電解質層を示す断面図である。説明の便宜上、
図1~
図3を用いて説明した以外の点を中心に説明する。
【0054】
図4を参照すると、電解質層10に気体を透過させて水素イオン移動チャネルの屈曲度を下げる段階(
図1のS200参照)は、電解質層10の一面11から一面11に対向する他面12への方向(例えば、厚さ方向(y方向))に気体20を透過(Permeation)させて、水素イオン移動チャネルの屈曲度を下げることができる。また、使用される気体20は、水蒸気(H
2O)、エタノール(C
2H
5OH)、プロパノール(C
3H
7OH)及びそれらの混合物からなる群から選ぶことができる。一方、透過する気体20の残余物質によって電解質層10をなす高分子の物性が変更されることを防止するために、好ましくは水蒸気(H
2O)を気体20として使用することができる。
【0055】
さらにいうと、本発明のいくつかの実施例による燃料電池用電解質膜の製造方法は、例えば、電解質層10の一面11から他面12への方向に選択的気体透過(Preferential Vapor Permeation in Thickness or Through-Plane Direction)してイオン移動チャネルを再配向(Re-Orientation)又は再整列(Re-Alignment)させることができる。
【0056】
一方、本発明のいくつかの実施例による電解質膜の製造方法において、電解質層10の厚さは、好ましくは5μm~100μmであってよい。より好ましくは、電解質層10の厚さは、10μm~60μmの範囲であってもよい。これは、電解質層10の厚さが5μm未満であると、気体20(例えば、水蒸気)の過度な透過によって電解質膜が膨潤しすぎ、機械的安定性が急減するためである。すなわち、電解質層10の厚さが5μm未満である場合には水素透過(Hydrogen Crossover)が増加することがある。一方、厚さが100μmを超える場合には、気体20を効率的に透過させ難く、電解質膜の抵抗増加によって燃料電池の電気化学反応速度が減少する。その結果、電解質層10の厚さが100μmを超えると燃料電池の出力が大幅に低下することがある。
【0057】
一方、本発明のいくつかの実施例による電解質膜の製造方法において、水素イオン移動チャネルの屈曲度を下げる段階(S200)は、透過させる気体20に、電解質層10をなすイオン伝導性高分子のアルファ(α)転移温度(Ta:α-Transition Temperature)より2℃高い温度~200℃温度の熱を加えて、電解質層10に透過させることが好ましい。
【0058】
これは、アルファ(α)転移温度より2℃低い温度未満では、電解質層10をなすイオン伝導性高分子(例えば、過フッ素スルホン酸系アイオノマー)の移動性(Mobility)が大きくないため、外部から気体20(例えば、水蒸気)が供給される際にイオン移動チャネルが拡張される可能性が小さいためである。一方、温度が200℃を超える場合には、イオン伝導性高分子が熱的分解(Thermal Degradation)されて電解質層10の性能が減少することがある。
【0059】
一方、上記温度(アルファ(α)転移温度より2℃高い温度~200℃温度)範囲で気体20を電解質層10の厚さ方向に透過(例えば、y方向に選択的に透過(Preferential Permeation))させた後に、熱供給を中断する場合、再整列されたイオン移動チャネルはその構造を保つまま固定される。
【0060】
このように、電解質層10のアルファ(α)転移温度より高い高温環境で電解質層10の厚さ方向(例えば、y方向)に気体(例えば、水蒸気)を透過させた結果、電解質層10内の水素イオン移動チャネル(Tortuous Proton Conducting Channels)を選択的に再配向(又は、再整列)させることによって屈曲度を下げることができる。このように改質された(Modificated)電解質膜では、イオンの移動する距離を短縮して水素イオン伝導性を増加させることができる。その結果、燃料電池の性能をさらに改善することができる。のみならず、上記のように方向性を有する構造は、究極的には電解質膜の機械的強度の向上に役立ち得る。
【0061】
一方、透過させる気体20は、例えば、電解質層10をなすイオン伝導性高分子のアルファ(α)転移温度より2℃高い温度未満の沸点を有することができる。
【0062】
また、電解質層10を構成するイオン伝導性高分子の主鎖に結合された側鎖の種類及び密度によって、電解質層10のアルファ(α)転移温度を決定することができる。
【0063】
本発明のいくつかの実施例による電解質膜の製造方法において水素イオン移動チャネルの屈曲度を下げる段階(S200)は、気体20の飽和蒸気圧によって気体20が電解質層10を透過することができる。すなわち、例えば、気体20(例えば、水蒸気)を電解質層10の一面11から他面12への方向に透過させる時、電解質層10の厚さ方向(例えば、y方向)に透過させるために一面11に圧力(例えば、気体20の飽和水蒸気圧)を印加することができる。
【0064】
一方、電解質層10の厚さ方向に透過させるために一面11に印加される圧力は、電解質層10の内部に生成されたイオン移動チャネルの屈曲度を下げるために要求される。さらにいうと、電解質層10に存在するアイオノマーのナノ及びマイクロ構造を変形させることによってイオン移動チャネルの屈曲度を下げ得る程度の駆動力(Driving Force)を供給することが要求される。
【0065】
本発明のいくつかの実施例によれば、気体20(例えば、水蒸気)によって駆動力を供給することができる。例えば、駆動力の対象となる電解質層10の相対向する一面11及び他面12が、異なる気体20の濃度勾配(Concentration Gradient)及び/又は圧力差を有することによって、駆動力が決定され得る。
【0066】
電解質層10の一面11において気体20の濃度及び/又は圧力が、他面12におけるよりも高く形成されることによって、気体20を一面11から他面12への方向(例えば、y方向)に透過させることができる。また、好ましくは、気体20を加熱することによって、電解質層10に気体20を透過させるための駆動力をより増加させることができる。
【0067】
例えば、圧力差を増加させて駆動力を増大させるために、電解質層10の一面11に、気体20(例えば、水蒸気)を含む密封したチャンバーを接触させ、該チャンバーの温度を100℃以上に加熱することができる。また、電解質層10の他面12に減圧又は真空チャンバーを接触させる場合、気体20が選択的に移動する上でより好ましい効果が発生し得る。
【0068】
一方、透過する気体20の飽和水蒸気圧は、例えば、0.01~1MPaが好ましい。これは、0.01MPaより低い場合、水蒸気透過速度が遅くなって時間的効率性が劣化し、1MPaより高い場合、電解質層10に機械的な変形が発生し得るためである。
【0069】
以下、
図5及び
図6は、本発明のいくつかの実施例による電解質膜の製造方法(
図1のS100及びS200を参照)によって製造された電解質膜を示す断面図及びその拡大図である。説明の便宜上、
図1~
図4を用いて説明した以外の点を中心に説明する。
【0070】
まず、
図5を参照すると、本発明のいくつかの実施例による電解質膜の製造方法によって製造された電解質膜10’が既存の工程によるそれと区別される点は、厚さ方向(例えば、y方向)に気体を透過させることによって電解質膜10’内部の水素イオン移動チャネルが再配向(又は、再整列)されたという点である。すなわち、
図5で、電解質膜10’の一面11と他面12との間の断面にx方向及びy方向に描かれたパターンは、水素イオン移動チャネルの屈曲度を概略的に示しており、このパターンは、
図2に比べて比較的曲がりくねっていないことが分かる。すなわち、気体が透過する前である
図2の電解質層(
図2の10参照)に比べて、本発明の製造方法で製造された電解質膜10’の屈曲度は相対的に1に近い。
【0071】
一方、
図6を参照すると、電解質膜(
図5の10’を参照)のイオン伝導性高分子、該イオン伝導性高分子に結合された官能基、水素イオン及び水分子が例示的に表示されている。
図3の電解質層に比べて、
図6では、水素が移動する経路の屈曲度が低くなる(すなわち、相対的に屈曲度が1に近い。)ことが分かる。これによって、水素イオンがより速かに移動でき、燃料電池の効率を向上させることができる。
【0072】
一方、水素イオン伝導性(Proton Conductivity)は、イオン伝導性高分子及び該イオン伝導性高分子に結合された官能基(例えば、スルホン酸基)によって形成されるイオン移動チャネルと直接的な関係を有する。イオン移動チャネルの屈曲度が低く、官能基同士間の距離が短いとき(すなわち、単位体積当たりの官能基の密度が高いとき)に電解質膜10’の水素イオン伝導性が増加する傾向がある。したがって、同じ側鎖構造及び当量重量(EW:Equivalent Weight)の特性を有するイオン伝導性高分子の水素イオン伝導性が増加する場合、イオン移動チャネルの屈曲度がより低くなり得る。
【0073】
一方、本発明の他の実施例による電解質層のイオン移動チャネルの屈曲度を下げる方法は、イオン移動チャネルを整列させようとする方向に電解質層に振動を加える方法である。このとき、電解質層のアルファ(α)転移温度より2℃高い温度~200℃温度で振動を加えることができる。また、振動の振幅、振動数、又は適用時間によってイオン移動チャネルが再整列され得る。通常、電解質層の一面から該一面に対向する他面への方向に振動を加えてイオン移動チャネルを再整列させることができる。
【0074】
実施例及び実験例
【0075】
以下、本発明を、具体的な実施例及び実験例を挙げてより詳細に説明する。ただし、それらの実施例及び実験例は本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲がそれらに限定されるわけではない。
【0076】
本発明の実施例及び比較例において、電解質層の厚さは50.8μmと固定した。また、実施例及び比較例は、イオン伝導性高分子としてNafion212(登録商標)(DuPont社、USA)を使用した。
【0077】
比較例
【0078】
特別な処理を適用していない電解質層(Nafion212(登録商標))(DuPont社、USA)を使用した。
【0079】
実施例
【0080】
長側鎖の過フッ素スルホン酸系電解質層を使用した。また、実施例は、対象電解質層のアルファ(α)転移温度である105℃よりも5℃高い温度条件(すなわち、Nafion212(登録商標)のアルファ(α)転移温度より5℃高い温度である110℃)を維持した。対象電解質層の特定部位に電解質膜の厚さ方向に水蒸気を透過させ、水蒸気透過量は、300gを使用した。すなわち、300gの水が入っているガラス瓶の入口(水蒸気を透過させた面積(Area Permeated by Vapor):28.3cm2)を電解質層で密封し、密封したガラス瓶をオーブンに入れて110℃に保つ。飽和水蒸気によって約0.15MPaの圧力が発生し、発生した圧力により、ガラス瓶入口を封じている電解質膜の下面から水蒸気が流入し、電解質膜の厚さ方向に移動して電解質膜の上面から排出される。
【0081】
評価及び分析
【0082】
上記の方法で水蒸気を透過させた実施例と特別な処理をしていない比較例の水素イオン伝導度を測定した。実施例及び比較例の水素イオン伝導度を測定するために、温度80℃、相対湿度30%~90%の条件で実施例(電解質膜)又は比較例(電解質層)の厚さ方向の抵抗を測定した後、面積及び厚さ条件を代入した。
【0083】
一方、水蒸気透過によるイオン移動チャネルの再整列工程前(比較例)と、工程後(実施例)の水素イオン伝導度を実際に測定し、その結果及び向上率を次の表1にまとめた。また、
図7を参照すると、実施例及び比較例の相対湿度による水素イオン伝導度がグラフで示されている。
【0084】
【0085】
測定した結果、実施例の水素イオン伝導度は、比較例に比べて全ての条件において向上した。特に、低加湿条件(相対湿度30%)では、比較例に比べて実施例の水素イオン伝導度が53.9%増大した。相対湿度の低い環境では、電解質層のイオン移動チャネルの再整列効果をより明確に確認することができる。水素燃料電池が導入された車両では、性能を増大させるために高温低加湿運転条件の導入が持続的に要求されているが、本発明のいくつかの実施例によって再整列されたイオン移動チャネルを有する電解質膜が高温低加湿運転条件に適していることが確認できる。
【0086】
以上では本発明の好適な実施例について図示及び説明をしてきたが、本発明は、上述した特定の実施例に限定されものではなく、特許請求の範囲で請求する本発明の要旨を逸脱することなく当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者にとって様々な変形実施が可能であることは勿論であり、それらの変形実施は、本発明の技術的思想や展望から別個として理解されてはならないだろう。
【符号の説明】
【0087】
10 電解質層
10’ 電解質膜
11 一面
12 他面
20 気体