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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】過冷却状態解除装置
(51)【国際特許分類】
   A23G 9/04 20060101AFI20220708BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20220708BHJP
   F25C 1/00 20060101ALI20220708BHJP
   A23G 9/00 20060101ALN20220708BHJP
【FI】
A23G9/04
A23L2/00 W
F25C1/00 A
A23G9/00 101
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018143706
(22)【出願日】2018-07-31
(65)【公開番号】P2020018199
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】515118014
【氏名又は名称】サンデン・リテールシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(72)【発明者】
【氏名】品川 大輔
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-531151(JP,A)
【文献】特開2006-300411(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G 9/04
F25C 1/00
A23G 9/00
A23L 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴部より細い口部を有する容器本体と、当該容器本体の前記口部の開口を密閉するキャップと、を備えた飲料容器に充填された飲料の過冷却状態を解除してフローズン状態に変化させる過冷却状態解除装置であって、
前記飲料容器を受容する容器受け部材と、
前記容器受け部材によって受容された前記飲料容器の前記口部又は前記キャップに超音波振動を印加する振動子と、
を有する、過冷却状態解除装置。
【請求項2】
前記容器受け部材は、前記飲料容器の前記口部が飲料で満たされた姿勢を維持する、
請求項1に記載の過冷却状態解除装置。
【請求項3】
前記容器受け部材は、前記飲料容器を横転状態、傾斜状態又は倒立状態に維持する、
請求項2に記載の過冷却状態解除装置。
【請求項4】
前記振動子は、前記飲料容器の前記口部又は前記キャップに超音波振動を印加する部分に少なくとも1つの凸部を有する、
請求項1~請求項3のいずれか1つに記載の過冷却状態解除装置。
【請求項5】
前記容器受け部材は、倒立状態の前記飲料容器の前記口部の外周面に形成されたネックリングを受容する、
請求項1~請求項4のいずれか1つに記載の過冷却状態解除装置。
【請求項6】
前記振動子は、当該振動子の下方に配置された振動子受け部材によって相対変位可能に支持される、
請求項1~請求項5のいずれか1つに記載の過冷却状態解除装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過冷却状態の飲料をフローズン状態に変化させる過冷却状態解除装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、過冷却状態の炭酸飲料が販売されている。この過冷却状態の炭酸飲料は、飲料容器を開栓して一口飲んだ後に再度閉栓し、飲料容器をゆっくりと天地返しすることで、過冷却状態が解除されてフローズン状態に変化させていた。しかし、過冷却状態の炭酸飲料の購入者が上記手順を必ずしも行うとは限らず、炭酸飲料がフローズン状態に変化しないことがあった。そこで、特表2017-531151号公報(特許文献1)に記載されるように、過冷却状態の炭酸飲料が充填された飲料容器の底面に超音波振動を印加することで、過冷却状態を解除してフローズン状態に変化させる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2017-531151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記提案技術においては、飲料容器の底面に超音波振動を印加しているが、飲料容器の底面は中央部分が凹となっているため、底面の周縁部に超音波振動を印加することとなるので振動が分散し、また、上記提案技術において、超音波振動を発生させるために多く用いられているランジュバン型振動子の振動は、その中心部に比して周縁部が弱いことから、過冷却状態の飲料に強い振動を与えることができず、過冷却状態を解除できないおそれがあった。また、過冷却状態の飲料に強い振動を与えることができないため、炭酸飲料よりもフローズン状態になり難い無炭酸飲料に適用することが困難でもあった。
【0005】
そこで、本発明は、無炭酸飲料を含む飲料の過冷却状態を解除してフローズン状態に変化させる過冷却状態解除装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため、胴部より細い口部を有する容器本体と、容器本体の口部の開口を密閉するキャップと、を備えた飲料容器に充填された飲料の過冷却状態を解除してフローズン状態に変化させる過冷却状態解除装置は、飲料容器を受容する容器受け部材と、容器受け部材によって受容された飲料容器の口部又はキャップに超音波振動を印加する振動子と、を有している。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、無炭酸飲料を含む飲料の過冷却状態を解除してフローズン状態に変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】飲料容器を挿入する前の過冷却状態解除装置の一例を示す斜視図である。
図2】飲料容器を挿入した後の過冷却状態解除装置の一例を示す斜視図である。
図3】過冷却状態解除装置の一例を示す縦断面図である。
図4】容器受け部材の一例を示す縦断面図である。
図5】振動子受け部材の一例を示す斜視図である。
図6】振動子ケースの一例を示す縦断面図である。
図7】振動子に凸部を形成する方法の一例を示す縦断面図である。
図8】振動子に凸部を形成する方法の他の例を示す縦断面図である。
図9】販売機に組み込まれて過冷却状態を解除する第1の機構の説明図である。
図10】販売機に組み込まれて過冷却状態を解除する第2の機構の説明図である。
図11】販売機に組み込まれて過冷却状態を解除する第3の機構の説明図である。
図12】販売機に組み込まれて過冷却状態を解除する第4の機構の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付された図面を参照し、本発明を実施するための実施形態について詳述する。
図1及び図2は、飲料容器100に充填された過冷却状態の飲料をフローズン状態に変化させる、過冷却状態解除装置200の一例を示している。以下においては、飲料容器100の一例としてペットボトルについて説明するが、飲料容器100としては、ペットボトルに限らず、キャップによって閉塞される公知の容器とすることができる。
【0010】
飲料容器100は、合成樹脂の一種であるポリエチレンテレフタラート(PET)を材料として作られた容器本体120と、ポリエチレン(PE)又はポリプロピエン(PP)を材料として作られたキャップ140と、を有している。
【0011】
容器本体120は、有底筒形状の胴部120Aと、外周面にネックリング及び雄ねじが形成された円筒形状の口部120Bと、胴部120Aの開口端と口部120Bのネックリング側の一端とを接続するテーパ形状の肩部120Cと、が一体成型されたものである。なお、筒形状、円筒形状及びテーパ形状とは、一見して主要部が筒形状、円筒形状及びテーパ形状であると認識できる程度でよく、例えば、その外周面に凹凸、模様などが形成されていてもよい(形状については以下同様)。
【0012】
キャップ140は、内周面に雌ねじが形成された円筒形状の円筒部140Aと、円筒部140Aの軸方向の一端を閉塞する円板形状の天面部140Bと、が一体成型されたものである。キャップ140は、円筒部140Aの雌ねじが容器本体120の口部120Bの雄ねじに着脱可能に螺合することによって、容器本体120の開口(飲み口)を開閉可能に閉塞する。
【0013】
そして、飲料容器100には、過冷却状態の飲料、即ち、凝固点(氷点)より低温まで冷却された飲料が充填されている。ここで、過冷却状態としては、例えば、凝固点より4℃ほど低温の状態とすることができる。
【0014】
過冷却状態解除装置200は、図3に示すように、倒立状態の飲料容器100を受容する容器受け部材220と、倒立状態の飲料容器100に超音波振動を印加する振動子240と、振動子240を受容する振動子受け部材260と、振動子240及び振動子受け部材260を収納する振動子ケース280と、作動スイッチ300と、電子基板320と、電源基板340と、ケーシング360と、を有している。ここで、倒立状態とは、容器本体120の口部120Bが下方に位置する状態、即ち、過冷却状態の飲料が口部120Bに満たされた姿勢を維持した状態を意味する。
【0015】
容器受け部材220は、図4に示すように、円筒形状の小径部220Aと、円筒形状の大径部220Bと、小径部220Aの軸方向の一端と大径部220Bの軸方向の一端とを接続するテーパ形状の肩部220Cと、が一体成型されたものである。小径部220Aは、各種の飲料容器100について容器本体120のネックリング120Dの外径が一定(φ33mm)であることに着目し、ネックリング120Dを挿入して固定可能な内径を有している。大径部220Bは、倒立状態の飲料容器100の下部、即ち、キャップ140が螺合された口部120B及び肩部120Cを挿入可能な内径を有している。肩部220Cは、大径部220Bに挿入された倒立状態の飲料容器100の下部を小径部220Aへと導くガイド機能を発揮する。そして、容器受け部材220は、小径部220Aが下方に位置すると共に大径部220Bが上方に位置した状態で配置される。
【0016】
振動子240は、例えば、リング状の圧電素子をボルト及びナットで締め付けて一体化したものであって、人間には聞き取れないほど高い周波数の超音波振動を発生させる。振動子240としては、例えば、ランジュバン型振動子を使用することができる。
【0017】
振動子受け部材260は、図5に示すように、円筒形状の円筒部260Aと、円筒部260Aの軸方向の一端を閉塞する円板形状の円板部260Bと、円筒部260Aの外周面と円板部260Bの上面との間に位置する4つの補強リブ260Cと、が一体成型されたものである。円筒部260Aは、振動子240のナットを収納しつつその下面を相対変位可能に支持可能な寸法(内径及び外径)を有している。円筒部260Aは、振動子240が所定周波数で振動しているとき、振動子240の振動が伝達されて減衰しないように、振動振幅の節、即ち、振動が弱い部分を支持することが好ましい。円板部260Bは、円筒部260Aより大きな外径を有し、その板面に、振動子240に電力を供給する配線を通すための2つの配線孔260Dが形成されている。補強リブ260Cは、円筒部260Aの中心軸の周りに90°ごとに設けられ、円筒部260Aと円板部260Bとの接合強度を向上させる。また、補強リブ260Cの上端の一部が上方に向かって突出しており、この部分で振動子240の半径方向への変位を抑制している。
【0018】
振動子ケース280は、図6に示すように、有底円筒形状の円筒部280Aと、円筒部280Aの開口に接合される円板形状の円板部280Bと、が一体成型されたものである。円筒部280Aは、開口から所定距離を隔てた状態で振動子240及び振動子受け部材260を軸方向に収納可能な全長及び内径を有している。また、円筒部280Aの内周面の上部には、振動子240の上部外周を弾性支持する弾性リング280Dが取り付けられている。弾性リング280Dとしては、例えば、クロロプレンゴム(CR)を使用することができる。円板部280Bの板面には、その中心軸と同心に、飲料容器100の少なくともキャップ140が貫通可能な貫通孔280Cが形成されている。なお、振動子ケース280は、その内部への振動子240及び振動子受け部材260の収納を可能にすべく、例えば、中心軸を通る面で縦方向に二分割可能になっている。
【0019】
そして、振動子受け部材260に対して振動子240の下面を相対変位可能に支持させ、これを二分割した振動子ケース280に収納させる。このとき、振動子受け部材260は、振動子ケース280の底面に載置されるが、必要に応じてねじ、接着剤などで部分的に固定してもよい。その後、二分割した振動子ケース280を閉じ、例えば、ねじなどで容易に開かないように固定する。
【0020】
作動スイッチ300は、例えば、防水機能を有する押しボタンスイッチである。電子基板320は、各種の電子素子が表面実装された基板であって、作動スイッチ300が押し下げられたときに、振動子240を作動させる。なお、電子基板320は、作動スイッチ300が押し下げられている間だけ振動子240を作動させるか、又は、作動スイッチ300が押し下げられると所定時間だけ振動子240を作動させるように構成されている。電源基板340は、商用電源から電力を受け、これを安定化させて振動子240を作動させるための電力を生成する。
【0021】
ケーシング360は、飲料容器100の販売機などに取り付けられるケース本体362と、ケース本体362の前面に着脱可能に取り付けられるカバー364と、を有している。ここで、ケース本体362に対するカバー364の固定は、例えば、図示しないねじで行うことができる。
【0022】
ケース本体362には、その上方から下方にかけて、倒立状態の飲料容器100の下半分を収納可能な第1の凹部362Aと、容器受け部材220を収納可能な第2の凹部362Bと、振動子ケース280を収納可能な第3の凹部362Cと、電源基板340を収納可能な第4の凹部362Dと、が形成されている。ここで、第1の凹部362A、第2の凹部362B、第3の凹部362C及び第4の凹部362Dは、ケース本体362の前面から背面に向けて夫々形成されている。
【0023】
第1の凹部362Aは、例えば、倒立状態の飲料容器100の下半分を収納可能な半円形状の横断面をなし、ケース本体362の上面から所定長さに亘って形成されている。第2の凹部362Bは、容器受け部材220小径部220A、大径部220B及び肩部220Cの外周面に倣った横断面をなし、第1の凹部362Aの下端から容器受け部材220の高さに応じた長さに亘って形成されている。第3の凹部362Cは、振動子ケース280の円筒部280Aの外周面に倣った横断面をなし、第2の凹部362Bの下端から振動子ケース280の円筒部280Aの全長に応じた長さに亘って形成されている。第4の凹部362Dは、平面視で電源基板340を収納可能な大きさを有し、その底面に電源基板340を固定するための複数のボス(図示せず)が突出形成されている。
【0024】
カバー364は、ケース本体362を向く裏面の上方から下方にかけて、倒立状態の飲料容器100の下半分を収納可能な第1の凹部364Aと、電子基板320を収容可能な第2の凹部364Bと、が形成されている。第1の凹部364Aは、ケース本体362の第1の凹部362Aと協働して、倒立状態の飲料容器100の下半分を収納可能にする。第2の凹部364Bは、平面視で電子基板320を収納可能な大きさを有し、その底面に電子基板320を固定するための複数のボス(図示せず)が突出形成されている。
【0025】
また、カバー364の裏面の所定箇所には、容器受け部材220及び振動子ケース280をケース本体362に向けて押圧して固定する、例えば、弾性部材からなる押圧材(図示せず)が取り付けられている。さらに、カバー364の下部には、その外方から操作可能な状態で、作動スイッチ300が取り付けられている。
【0026】
そして、ケーシング360のケース本体362の所定箇所に、容器受け部材220、振動子240及び振動子受け部材260が収納された振動子ケース280、電源基板340などを取り付ける。また、カバー364の所定箇所に、作動スイッチ300、電子基板320などを取り付ける。その後、ケーシング360のケース本体362とカバー364とを接合し、過冷却状態解除装置200の組立が完了する。
【0027】
かかる過冷却状態解除装置200によれば、過冷却状態の飲料が充填された飲料容器100を倒立状態にし、その下半分を過冷却状態解除装置200に挿入する。過冷却状態解除装置200に対して飲料容器100を挿入する過程では、容器受け部材220の肩部220Cが下方に向かうにつれて徐々に縮径するテーパ形状をなしているため、飲料容器100のキャップ140が小径部220Aへとガイドされる。そして、飲料容器100のキャップ140が小径部220Aに挿入された状態では、図4に示すように、飲料容器100のネックリング120Dの外周面が小径部220Aの内周面と当接し、容器受け部材220に対する飲料容器100の固定が行われる。なお、飲料容器100のキャップ140の天面部140Bは、容器受け部材220の小径部220Aの下端より下方へと突出し、振動子ケース280に収納された振動子240に接触する。
【0028】
この状態で作動スイッチ300を押し下げると、これを検知した電子基板320は、電源基板340を介して電力を振動子240へと供給する。すると、振動子240は、飲料容器100のキャップ140を介して、その口部120Bに満たされた過冷却状態の飲料に超音波振動を印加する。振動子240から飲料に伝達される超音波振動は、キャップ140という限られた面積を介して伝達されるため、単位面積当たりの振動強度が大きくなり、開栓しなくとも飲料の過冷却状態を解除してフローズン状態に変化させることができる。また、単位面積当たりの振動強度が大きくなることから、従来技術ではフローズン状態に変化させることが困難であった、過冷却状態の無炭酸飲料をフローズン状態に変化させることもできる。ここで、ランジュバン型振動子の特性として、振動強度は周縁部から中心に向かって強くなることから、飲料容器100の底部に比して中心部に存するキャップ140に対して大きな振動強度を有する超音波振動を印加することができる。
【0029】
振動子240をケーシング360に取り付ける工夫として、振動子240を強固にケーシング360に固定せず、図6に示すように、振動子240の下端を相対変位可能に受容する振動子受け部材260と、振動子240の上部を相対変位可能に受容する弾性リング280Dと、を使用した。即ち、振動子240を強固にケーシング360に固定すると、振動子240によって生成された超音波振動の一部は、固定箇所を介してケーシング360に伝達されてしまい、飲料容器100に印加される超音波振動が弱くなってしまう。そこで、上記のような工夫をすることで、ケーシング360に対する振動子240の変位をある程度許容し、ケーシング360に伝達される超音波振動を低減することで、飲料容器100に印加される超音波振動を極力大きくすることができる。また、振動子240の振幅調整が不要となり、過冷却状態解除装置200の生産性を向上させることもできる。
【0030】
振動子240の上面、即ち、飲料容器100のキャップ140と接触する部分に、上方へと向かって突出する、少なくとも1つの凸部を形成するようにしてもよい。この凸部は、キャップ140の天面部140Bより大幅に小さい横断面積を有し、飲料容器100に印加する超音波振動の単位面積当たりの振動強度が大きくなる。この場合、単位面積当たりの振動強度を最大にするには、凸部は1つであることが望ましい。
【0031】
振動子240の上面に凸部を形成する場合、例えば、凸部を接着剤や両面粘着剤などで固定すると、振動子240の振動や飲料容器100を挿入する衝撃などで、凸部が取れてしまう可能性がある。振動子240の上面の中心に雌ねじを設け、凸部の下方に雄ねじを設けて、これらを螺合させることが考えられるが、ねじの緩みや、振動によって振動子240と凸部とが相対変位して摩擦による発熱が起こり得る。そこで、図7に示すように、平面視で円形又は多角形をなす板材Aの一面(上面)に凸部Bを一体化した部材MBを、振動子240の上面と振動子ケース280の円板部280Bとの間に配置するようにしてもよい。この場合、振動子240によって部材MBの全体が振動し、振動子240と部材MBとが接触して高音が発生する可能性がある。このため、図8に示すように、部材MBの他面(下面)に中心を通る直線状又は中心に位置する点状の凸部Cを更に形成し、振動子240と部材MBとの接触を線接触又は点接触とすることで、この高音が発生することを抑制できる。なお、振動子240の上面に形成する凸部Bとしては、例えば、球、円錐、円柱を切断した形状が考えられる。
【0032】
過冷却状態の飲料が充填された飲料容器100は、完全な倒立状態に限らず、飲料容器100の口部120Bに飲料が満たされた姿勢、例えば、キャップ140が下方に位置する傾斜状態、飲料容器100の軸線が水平面上に延びる横転状態であってもよい。この場合、過冷却状態解除装置200の容器受け部材220は、傾斜状態又は横転状態の飲料容器100を受容するようにすればよい。また、振動子240による超音波振動は、飲料容器100の口部120Bの外周面に形成されたネックリング120Dに印加するようにしてもよい。
【0033】
本実施形態においては、過冷却状態解除装置200に対して飲料容器100を倒立状態で挿入し、キャップ140の天面部140Bに超音波振動を印加する構成としたが、キャップ140の円筒部140Aの周面に超音波振動を印加するようにしてもよい。また、飲料容器100を傾斜状態又は横転状態にして超音波振動を印加する場合、構造的にキャップ140の天面部140Bに超音波振動を印加し難ければ、キャップ140の円筒部140Aの周面に超音波振動を印加するようにしてもよい。このような構成を採用する場合、振動子240の振動印加面は、図示したような平面ではなく、徐々に縮径する先細り形状であってもよい。
【0034】
飲料容器100に充填された飲料の過冷却状態を解除してフローズン状態に変化させる方法として、飲料の販売機に次のような機構を組み込むこともできる。
【0035】
第1の機構として、図9に示すように、飲料容器100の収容室から取り出し口までの通路400を鉛直方向に延びる直線状に形成し、取り出し口から所定高さにおいて飲料容器100の落下を一時的に停止する一時停止装置420を取り付ける。一時停止装置420は、飲料容器100の落下を一時的に停止したとき、飲料容器100の自重によって一時停止機能を解除するように構成する。そして、一時停止機能が解除されると、過冷却状態の飲料が充填された飲料容器100は、直線状の通路400を落下して取り出し口へと送り出され、このときの衝撃を飲料に伝え、過冷却状態の飲料をフローズン状態へと変化させる。
【0036】
第2の機構として、図10に示すように、飲料容器100の収容室から取り出し口までの通路440を蛇行形状、即ち、通路440が延びる方向が左右に屈曲や蛇行する形状に形成する。そして、飲料容器100が屈曲や蛇行する形状の通路440を通過して取り出し口へと送り出されるとき、飲料容器100が通路440を形成する壁に衝突することによって発生する衝撃を飲料に伝え、過冷却状態の飲料をフローズン状態へと変化させる。
【0037】
第3の機構として、図11に示すように、飲料容器100の収容室から取り出し口までの通路の途中において、例えば、通路形状などを工夫して、飲料容器100を倒立状態から正立状態へと回転させる。そして、飲料容器100が倒立状態から正立状態へと回転するときの攪拌と正立状態で落下したときの衝撃を飲料に伝え、過冷却状態の飲料をフローズン状態へと変化させる。
【0038】
第4の機構として、図12に示すように、飲料容器100の収容室から取り出し口までの通路の途中に、例えば、飲料容器100の自重を利用して作動するハンマー460を取り付ける。そして、飲料容器100が取り出し口に送り出されるとき、ハンマー460によって飲料容器100の外面を叩いて衝撃を与え、過冷却状態の飲料をフローズン状態に変化させる。
【0039】
第1の機構~第4の機構は、電力を必要としないため、過冷却状態解除装置200が取り付けられる販売機に容易に組み込むことができる。このようにすれば、第1の機構~第4の機構によって飲料がフローズン状態に変化しなくとも、過冷却状態解除装置200によって飲料に超音波振動が印加されるので、これらの相乗効果によってフローズン状態への変化を促進することができる。
【符号の説明】
【0040】
100 飲料容器
120 容器本体
120A 胴部
120B 口部
120D ネックリング
140 キャップ
200 過冷却状態解除装置
220 容器受け部材
240 振動子
260 振動子受け部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12