(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】光受信装置の組立方法
(51)【国際特許分類】
G02B 6/42 20060101AFI20220708BHJP
G02B 6/12 20060101ALI20220708BHJP
G02B 6/27 20060101ALI20220708BHJP
G02B 6/32 20060101ALI20220708BHJP
H04B 10/07 20130101ALI20220708BHJP
H04B 10/61 20130101ALI20220708BHJP
H04J 14/06 20060101ALI20220708BHJP
【FI】
G02B6/42
G02B6/12 331
G02B6/27
G02B6/32
H04B10/07
H04B10/61
H04J14/06
(21)【出願番号】P 2018162444
(22)【出願日】2018-08-31
【審査請求日】2021-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000154325
【氏名又は名称】住友電工デバイス・イノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】黒川 宗高
(72)【発明者】
【氏名】藤村 康
(72)【発明者】
【氏名】芦澤 建
(72)【発明者】
【氏名】金丸 聖
【審査官】野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-032667(JP,A)
【文献】特開2007-164179(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0027683(US,A1)
【文献】特開2018-004896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12-6/14
6/26-6/34
6/42-6/43
H04B 10/00-10/90
H04J 14/00-14/08
Scopus
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光受信装置の組立方法であって、
前記光受信装置は、
互いに直交する2つの偏光成分を含む信号光を入力する信号光入力ポートと、
前記信号光を一方の前記偏光成分と他方の前記偏光成分とに分岐する偏光ビームスプリッタと、
前記一方の偏光成分から電気的な第1の受信信号を生成し、前記他方の偏光成分から電気的な第2の受信信号を生成する信号受信部と、
前記信号光入力ポートと前記信号受信部との間の光路上に配置される少なくとも1つの光学部品と、
を備え、
前記偏光ビームスプリッタは、前記信号光の波長域である第1の波長域、及び前記第1の波長域外の第2の波長域を設計波長域に含み、
前記組立方法は、
前記第2の波長域が含まれる試験光を入力する模擬ポートと前記信号受信部の間の前記光路上に前記偏光ビームスプリッタを配置する工程と、
前記偏光ビームスプリッタと前記信号受信部の間の前記光路上に前記少なくとも1つの光学部品を配置する工程と、
前記試験光を前記
模擬ポートから前記偏光ビームスプリッタに入力する工程と、
前記信号受信部に入力される前記試験光の光強度に基づいて、前記少なくとも1つの光学部品の光軸調整を行う工程と、
前記模擬ポートを前記信号光入力ポートに置き換えて前記信号光入力ポートの光軸調整及び固定を行う工程と、
を含む、光受信装置の組立方法。
【請求項2】
前記第1の波長域の下限が1565nmであり、
前記第2の波長域は1565nmよりも小さい波長域を含む、請求項1に記載の光受信装置の組立方法。
【請求項3】
前記第1の波長域の上限が1615nmである、請求項2に記載の光受信装置の組立方法。
【請求項4】
前記試験光の波長が1550nm~1565nmの範囲内である、請求項2または3に記載の光受信装置の組立方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの光学部品には、前記信号受信部に前記信号光を集光するためのレンズが含まれる、請求項1~4のいずれか1項に記載の光受信装置の組立方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの光学部品には、前記信号光を減衰する可変減衰器が含まれる、請求項1~5のいずれか1項に記載の光受信装置の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光受信装置の組立方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コヒーレント光受信装置に関する技術が開示されている。
図5は、このコヒーレント光受信装置の構成を概略的に示す。
図5に示されるコヒーレント光受信装置100では、光導波路基板101、光90度ハイブリッド回路111及び112、複数の信号光用受光素子134及び135、並びにモニタ用受光素子104が筐体105に収容されている。信号光L1及び局発光L2は、光導波路基板101の第1の端面101aからそれぞれ光導波路基板101内の光導波路106,107に入力される。信号光L1は、互いに直交する2つの偏光成分を含む。
【0003】
モニタ用受光素子104は、光導波路106上の光分岐素子131によって分岐された一方の信号光L1を受ける。他方の信号光L1は偏光ビームスプリッタ132によって各偏光成分に分岐される。分岐された一方の偏光成分は光90度ハイブリッド回路111に入力され、他方の偏光成分は光90度ハイブリッド回路112に入力される。局発光L2は光分岐素子133によって分岐され、一方の局発光L2は光90度ハイブリッド回路111に入力され、他方の局発光L2は光90度ハイブリッド回路112に入力される。光90度ハイブリッド回路111,112から出力される干渉光の光強度は、複数の信号光用受光素子134,135によって検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光受信装置を構成する各種の光学部品の少なくとも一部は、使用される波長域に合わせて設計される。例えば、
図5に示された偏光ビームスプリッタ132は、誘電体多層膜によって2つの偏光成分を分岐させるが、誘電体多層膜の膜厚は使用される波長域に合わせて設計される。しかし、近年の通信量の増大に伴い、波長域が拡大されることが予測される。波長域が拡大されると、単一の設計波長域では対処できず、その光受信装置を使用する波長域に応じて光学部品の設計波長域を異ならせる必要が生じる。
【0006】
光受信装置を組み立てる際には、試験光を用いて各種光学部品の光軸調整を行う。このとき用いられる試験光の波長は、光軸調整を精度良く行う為に、光学部品の設計波長域に含まれることが望ましい。しかしながら、使用される波長域に応じて光学部品の設計波長域を異ならせる場合、試験光の波長を光受信装置の使用波長域に応じて変更する必要が生じる。従って、試験装置の光源の波長可変域を広くする(若しくは光受信装置毎に光源を交換する)必要が生じ、試験装置のコストが増大してしまう。また、光受信装置の組み立て作業が繁雑になる。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、波長域が拡大された場合であっても、試験装置のコストの増大及び光受信装置の組み立て作業の繁雑化を抑制できる光受信装置の組立方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、一実施形態に係る光受信装置の組立方法において、光受信装置は、互いに直交する2つの偏光成分を含む信号光を入力する信号光入力ポートと、信号光を一方の偏光成分と他方の偏光成分とに分岐する偏光ビームスプリッタと、一方の偏光成分から電気的な第1の受信信号を生成し、他方の偏光成分から電気的な第2の受信信号を生成する信号受信部と、信号光入力ポートと信号受信部との間の光路上に配置される少なくとも1つの光学部品と、を備える。偏光ビームスプリッタは、信号光の波長域である第1の波長域、及び第1の波長域外の第2の波長域を設計波長域に含む。当該組立方法は、信号光入力ポートと信号受信部の間の光路上に偏光ビームスプリッタを配置する工程と、偏光ビームスプリッタと信号受信部の間の光路上に少なくとも1つの光学部品を配置する工程と、信号光の波長帯域とは別の第2の波長域に含まれる試験光を信号光入力ポートから偏光ビームスプリッタに入力する工程と、信号受信部に入力される試験光の光強度に基づいて、少なくとも1つの光学部品の光軸調整を行う工程と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明による光受信装置の組立方法によれば、波長域が拡大された場合であっても、試験装置のコストの増大及び光受信装置の組み立て作業の繁雑化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る組立方法の対象である光受信装置1Aを示す平面図である。
【
図2】
図2は、光受信装置1Aの内部の各光学部品の接続関係を概略的に示す平面図である。
【
図3】
図3は、一例として、PBS26のP偏光透過率(Tp)と入射光の波長との関係を実測したグラフである。
【
図4】
図4は、光受信装置1Aの組立方法を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、従来のコヒーレント光受信装置の構成を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本発明の実施形態の説明]
最初に、本発明の実施形態の内容を列記して説明する。一実施形態に係る光受信装置の組立方法において、光受信装置は、互いに直交する2つの偏光成分を含む信号光を入力する信号光入力ポートと、信号光を一方の偏光成分と他方の偏光成分とに分岐する偏光ビームスプリッタと、一方の偏光成分から電気的な第1の受信信号を生成し、他方の偏光成分から電気的な第2の受信信号を生成する信号受信部と、信号光入力ポートと信号受信部との間の光路上に配置される少なくとも1つの光学部品と、を備える。偏光ビームスプリッタは、信号光の波長域である第1の波長域、及び第1の波長域外の第2の波長域を設計波長域に含む。当該組立方法は、信号光入力ポートと信号受信部の間の光路上に偏光ビームスプリッタを配置する工程と、偏光ビームスプリッタと信号受信部の間の光路上に少なくとも1つの光学部品を配置する工程と、信号光の波長帯域とは別の第2の波長域に含まれる試験光を信号光入力ポートから偏光ビームスプリッタに入力する工程と、信号受信部に入力される試験光の光強度に基づいて、少なくとも1つの光学部品の光軸調整を行う工程と、を含む。
【0012】
この組立方法では、偏光ビームスプリッタが、信号光の波長域である第1の波長域、及び第1の波長域外の第2の波長域を設計波長域に含む。これにより、信号光の波長域外の第2の波長域に試験光の波長を設定することが可能になる。そして、この組立方法では、偏光ビームスプリッタを配置したのち、第2の波長域に含まれる試験光を用いて、他の光学部品の光軸調整を行う。従って、この組立方法によれば、波長域が第2の波長域から第1の波長域まで拡大された場合であっても、第1の波長域用の光受信装置の光学部品の光軸調整、及び第2の波長域用の光受信装置の光学部品の光軸調整を、共通の波長の試験光を用いて行うことができる。故に、試験装置の光源の波長可変域を広くする(若しくは光受信装置毎に光源を交換する)ことを不要にできるので、試験装置のコストの増大及び光受信装置の組み立て作業の繁雑化を抑制できる。
【0013】
上記の各組立方法において、第1の波長域の下限が1565nmであり、第2の波長域は1565nmよりも小さい波長域を含んでもよい。現在、コヒーレント光伝送システムにおいては、1530nm~1565nmの波長域(いわゆるCバンド帯)が用いられている。しかしながら、今後の更なる通信量の増大に備え、より長波長の帯域である1565nm~1615nmの波長域(いわゆるLバンド帯)をCバンド帯と併用することが検討されている。従って、上記の各組立方法において第1の波長域の下限が1565nm(すなわちLバンド帯)であり、第2の波長域が1565nmよりも小さい波長域(すなわちCバンド帯)を含むことにより、Lバンド帯とCバンド帯とを併用する場合であっても、Cバンド帯に含まれる試験光を用いてLバンド帯用の光受信装置の光学部品の光軸調整を精度良く行うことができる。この場合、第2の波長域の上限は1615nm(すなわちLバンド帯の上限)であってもよい。また、この場合、試験光の波長は1550nm~1565nmの範囲内であってもよい。
【0014】
上記の各組立方法において、少なくとも1つの光学部品には、信号受信部に信号光を集光するためのレンズが含まれてもよい。これにより、レンズの光軸調整を精度良く行うことができる。また、上記の各組立方法において、少なくとも1つの光学部品には、信号光を減衰する可変減衰器が含まれてもよい。これにより、可変減衰器の減衰比の調整を精度良く行うことができる。
【0015】
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る光受信装置の組立方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る組立方法の対象である光受信装置1Aを示す平面図である。
図2は、光受信装置1Aの内部の各光学部品の接続関係を概略的に示す平面図である。この光受信装置1Aは、位相変調された受信信号光(以下、信号光という)L1に局部発振光(以下、局発光という)L2を干渉させ、信号光L1に含まれる情報を取り出す。なお、本実施形態では、信号光L1は偏光方向が互いに直交する2つの偏光成分を含み、かつ、互いに直交する位相成分、すなわち、0°と180°との間で位相変調された情報と、90°と270°との間で位相変調された情報とを含む、いわゆるDP-QPSK(Dual Polarization Quadrature Phase Shift Keying)により変調された信号を対象とする光受信装置である。なお、局発光L2は、一方の偏光成分を主に含み、典型的には直線偏光である。
【0017】
図1に示されるように、光受信装置1Aは、略直方体状のハウジング(筐体)2と、ハウジング2の一端面2bに固定された信号光入力ポート11及び局発光入力ポート13とを備える。信号光入力ポート11の光軸と局発光入力ポート13の光軸とは、互いに平行である。信号光入力ポート11はシングルモードファイバ(Single Mode Fiber:SMF)に接続され、光受信装置1Aの外部からこのSMFを介して信号光L1を受ける。局発光入力ポート13は偏波保持ファイバ(Polarization Maintaining Fiber:PMF)に接続され、光受信装置1Aの外部からこのPMFを介して局発光L2を受ける。これらの信号光L1及び局発光L2は、それぞれ信号光入力ポート11及び局発光入力ポート13を介してハウジング2の内部に入力される。なお、局発光L2の光源は例えば半導体レーザダイオード(Laser Diode:LD)である。
【0018】
信号光入力ポート11は、SMFの先端に付属するフェルールを受け入れる円筒状のスリーブ11aと、コリメートレンズを収容したレンズホルダ11bと、スリーブ11a及びレンズホルダ11bの間に配置される中子ホルダ11cとが一体化されており、該レンズホルダ11bがハウジング2の一端面2bに固定されている。SMF内を伝搬した信号光L1は、コリメートレンズによってコリメート光に変換されハウジング2内に入射する。局発光入力ポート13は、PMFの先端に付属するフェルールを受け入れる円筒状のスリーブ13aと、コリメートレンズを収容したレンズホルダ13bと、スリーブ13a及びレンズホルダ13bの間に配置される中子ホルダ13cとが一体化されており、該レンズホルダ13bがハウジング2の一端面2bに固定されている。PMF内を伝搬した局発光L2は、コリメートレンズによってコリメート光に変換されハウジング2内に入射する。
【0019】
ハウジング2はコバール製である。ハウジング2の4つの側面のうち、一端面2bを除く他の側面には、複数の端子3が設けられている。複数の端子3は、各側面を構成する多層セラミック層(multi-layered ceramics)の最下層から引き出される。複数の端子3には、信号光L1から抽出した受信信号を光受信装置1Aの外部に取り出すための端子、ハウジング2の内部の電子回路に電源電圧やバイアスを供給する端子、接地端子等が含まれる。ハウジング2の底面の四隅からは、ハウジング2を回路基板等に固定するためのフランジ4が引き出されている。
【0020】
光受信装置1Aは、上記の構成に加えて、信号光L1と局発光L2とを干渉させるマルチモード干渉導波路(MMI:Multi-Mode Interference)素子である第1のMMI素子32a及び第2のMMI素子32bを備える。MMI素子32aは、信号光L1の一方の偏光成分と局発光L2とを干渉させて該一方の偏光成分に含まれる情報を回復する。また、MMI素子32bは、信号光L1の他方の偏光成分と局発光L2とを干渉させて該他方の偏光成分に含まれる情報を回復する。MMI素子32a,32bは、例えば光90°ハイブリッド素子である。MMI素子32a,32bは、一端面2bに対して並んで配置されている。
【0021】
また、光受信装置1Aは、入力ポート11,13とMMI素子32a,32bとの間の光路上に配置された複数の光学部品を更に備える。複数の光学部品には、2つのMMI素子32a,32bの各信号光入力端と信号光入力ポート11とを光学的に結合するために、偏波分離素子(Polarization Beam Splitter:PBS)26、スキュー調整素子27a、レンズ系(集光部品)36、波長板(λ/2板)29、全反射ミラー30a、及びレンズ系(集光部品)38が含まれる。更に、複数の光学部品には、PBS26と信号光入力ポート11との間の光路上に配置された、ビームスプリッタ(Beam Splitter:BS)22及び可変光減衰器(VOA)23が含まれる。
【0022】
信号光入力ポート11とMMI素子32a,32bとの間の光路上に配置されるこれらの光学部品は、全てハウジング2内に収容されている。具体的には、
図1に示されるように、BS22は、ハウジング2の底面上に設けられたキャリア20a上に搭載される。VOA23は、キャリア20aから独立してハウジング2の底面上に設けられたキャリア20b上に搭載される。その他の光学部品は、キャリア20a,20bとは独立してハウジング2の底面上に設けられたキャリア20d上に搭載される。キャリア20a,20b,及び20dは、例えばAlN製である。
【0023】
BS22は、互いに対向する前面(光学面)及び裏面を有する平板状の光透過性部材と、前面に形成された誘電体多層膜フィルタとによって構成され得る。誘電体多層膜フィルタの反射率は、信号光L1の波長において例えば10%以下であり、本例では5%である。信号光L1はBS22の前面に入射し、誘電体多層膜フィルタによって分岐される。分岐された一方の信号光(モニタ光L10)は、誘電体多層膜フィルタで反射される。他方の信号光L11は、誘電体多層膜フィルタを透過してBS22の裏面から出射する。入射信号光L1の光軸と、反射信号光L11の光軸とは、略直角を成す。これにより、反射信号光L11の光軸は、信号光入力ポート11の光軸と平行となる。
【0024】
光受信装置1Aは、モニタ用フォトダイオード(モニタPD)24を更に備える。
図1に示されるように、モニタPD24はPDキャリア24aの側面に固定され、このPDキャリア24aがキャリア20a上に搭載される。また、
図2に示されるように、モニタPD24は、BS22の表面側に配置される。モニタPD24は、BS22の表面と光学的に結合し、BS22において反射したモニタ光L10を受ける。モニタPD24は、モニタ光L10に対応する検知信号を出力する。キャリア20aは、この検知信号を伝える配線パターンを有し、この配線パターンは、ボンディングワイヤを介して端子3と接続される。
【0025】
VOA23は、BS22が透過した信号光L11の光路上に配置され、信号光L11を必要に応じて減衰する。その減衰量は、上述したモニタPD24が出力する検知信号に基づいて設定される。この減衰量を設定する制御信号は、光受信装置1Aの外部から端子3を介して入力される。例えば、モニタPD24が過入力状態を検知した場合には、VOA23の減衰量を大きくして、MMI素子32a,32bに向かう信号光L11の強度を小さくする。
【0026】
PBS26は、平板状の部材であって、VOA23を介してBS22と光結合する光入射面(光学面)を有する。PBS26は、互いに対向する前面(光入射面)及び裏面を有する平板状の光透過性部材と、前面に形成された誘電体多層膜フィルタとによって構成され得る。誘電体多層膜フィルタは、例えばTa2O5層とSiO2層とが交互に積層されてなる。PBS26は、誘電体多層膜フィルタの作用によって、信号光L11を、一方の偏光成分(例えばX偏光成分)を有する信号光L12と、他方の偏光成分(例えばY偏光成分)を有する信号光L13とに分岐する。このときの分岐比は50%である。信号光L12は、PBS26を透過する。信号光L13は、PBS26の光入射面で反射され、信号光L12の進行方向と交差する方向に直進する。信号光L12の光軸と信号光L13の光軸とは略直角を成す。
【0027】
スキュー調整素子27a及びレンズ系38は、PBS26とMMI素子32aの信号光入力端との間の光路上に配置されている。PBS26を直進した信号光L12は、スキュー調整素子27aを通過する。スキュー調整素子27aは、例えばSi製のブロック材であり、PBS26からMMI素子32aの信号光入力端の間の光路長を等価的に長くすることにより、信号光L13の信号光L12に対する光路長の差による遅れを補償する。すなわち、信号光L13は、PBS26から全反射ミラー30aに至る距離分だけ、MMI素子に至るまでの距離が長い。スキュー調整素子27aは当該距離分に相当する信号光L13の位相遅れを信号光L12に対して与える。その後、信号光L12は、レンズ系38によってMMI素子32aの信号光入力端に集光される。なお、レンズ系38は、光軸方向に並ぶ2つの集光レンズ38a,38bによって構成される。
【0028】
また、λ/2板29、全反射ミラー30a、及びレンズ系36は、PBS26とMMI素子32bの信号光入力端との間の光路上に配置される。PBS26が反射した(分岐した)Y偏光成分を有する信号光L13は、全反射ミラー30aによって再度反射し、その光軸がMMI素子32bの信号光入力端の光軸と一致する。その後、信号光L13は、全反射ミラー30aとMMI素子32bとの間に配置されたλ/2板29を透過する。λ/2板29は、互いに対向する光入射面及び光出射面を有する平板状の複屈折材料によって構成され得る。複屈折材料は、例えば水晶である。λ/2板29は、複屈折材料の作用により2つの偏光成分に180°の位相差を与えて、信号光L13の偏光方向を90°回転する。従って、λ/2板29を透過した信号光L13の偏光方向は、PBS26を直進した信号光L12の偏光方向と一致する。その後、信号光L13は、レンズ系36によって他方のMMI素子32bの信号光入力端に集光する。レンズ系36は、光軸方向に並ぶ2つの集光レンズ36a,36bによって構成される。なお、λ/2板29は、信号光L13の光路上であれば何処に配置されてもよく、例えばPBS26と全反射ミラー30aとの間に配置されてもよい。
【0029】
光受信装置1Aは、2つのMMI素子32a,32bの各局発光入力端と局発光入力ポート13とを光結合するための光学部品として、スキュー調整素子27b、全反射ミラー30b、偏光子33、BS34、レンズ系(集光部品)28及び31を更に含む。これらの光学部品は、全てハウジング2内に収容されている。
【0030】
偏光子33は、局発光入力ポート13から入力する局発光L2の偏光方向を確定する。これにより、入力ポート13に結合するPMFにより維持されるべき局発光の偏光方向がハウジング2の組み立て時にずれたとしても、偏光方向が0°若しくは90°の直線偏光成分のみを有する局発光L2を得ることができる。なお、局発光L2の光源が半導体LDである場合、一般には活性層に平行な成分の偏光が支配的な楕円偏光となる。しかし、半導体LDの発振安定性、材料的信頼性、所望の出力波長等を得るために、格子不整合を有する活性層が採用されていることがある。そのような格子不整合を有する活性層が出力するレーザ光では、楕円偏光の短軸が相対的に大きくなる場合がある。そのような場合であっても、偏光子33が、局発光L2を楕円偏光から直線偏光に変換する。
【0031】
BS34は、平板状の部材であって、偏光子33を介して局発光入力ポート13と光結合する光入射面(光学面)を有し、偏光子33を通過した局発光L2を二つの局発光L22,L23に分岐比50%をもって分岐する。一方の局発光L22は、BS34で反射され、全反射ミラー30bに向けて直進する。他方の局発光L23は、BS34を透過する。局発光L22の光軸と局発光L23の光軸とは、略直角を成す。
【0032】
全反射ミラー30b及びレンズ系28は、BS34とMMI素子32aの局発光入力端との間の光路上に配置されている。BS34が反射した(分岐した)局発光L22は、全反射ミラー30bにより再度反射され、その光軸がMMI素子32aの局発光入力端の光軸と一致する。その後、局発光L22は、レンズ系28によってMMI素子32aの局発光入力端に集光する。レンズ系28は、光軸方向に並ぶ2つの集光レンズ28a,28bによって構成される。
【0033】
スキュー調整素子27b及びレンズ系31は、BS34とMMI素子32bの局発光入力端との間の光路上に配置されている。BS34を直進した局発光L23は、スキュー調整素子27bを通過する。スキュー調整素子27bは、BS34からMMI素子32bの局発光入力端に至る局発光L23の光路長を等価的に長くすることにより、局発光L22の局発光L23に対する光路長の差による遅れを補償する。すなわち、局発光L22は、BS34から全反射ミラー30bに至る距離分だけ、MMI素子に至るまでの距離が局発光L23よりも長い。スキュー調整素子27bは、当該距離分に相当するだけ局発光L23に位相遅れを与える。その後、局発光L23は、レンズ系31によってMMI素子32bの局発光入力端に集光する。なお、レンズ系31は、光軸方向に並ぶ2つの集光レンズ31a,31bによって構成される。
【0034】
以上に述べたように、光受信装置1Aに入力した信号光L1および局発光L2は、2個のMMI素子32a,32bに振り分けられる。MMI素子32a,32bは、本実施形態における信号受信部であって、例えばインジウムリン(InP)製の半導体基板を用いたフォトダイオード(PD)集積型干渉導波路素子である。MMI素子32aは、一方の偏光成分(信号光L12)と局発光L22とを互いに干渉させることにより、信号光L12のうち局発光L22の位相と同一である信号成分と、局発光L22とは位相が90°異なる信号成分とを抽出して、電気的な第1の受信信号である光電流を生成する。同様に、MMI素子32bは、他方の偏光成分(信号光L13)と局発光L23とを互いに干渉させることにより、信号光L13のうち局発光L23の位相と同一である信号成分と、局発光L23とは位相が90°異なる信号成分とを抽出して電気的な第2の受信信号である光電流を生成する。MMI素子32a,32bにより生成された光電流は、ハウジング2内に搭載されたアンプ39a,39b(
図1を参照)によって電圧信号に変換され、複数の端子3から出力される。アンプ39a,39bは、二つのMMI素子32a,32bを囲む回路基板20e上に実装されている。アンプ39a,39bは、例えばトランスインピーダンスアンプ(TIA)である。
【0035】
ここで、信号光入力ポート11とMMI素子32a,32bとの間の光路上に配置された複数の光学部品のうち、BS22、PBS26、及びλ/2板29の光学特性について説明する。BS22及びPBS26は、前述したように誘電体多層膜フィルタを有する。そして、BS22及びPBS26の光学特性(分岐比)は、入射光の波長及び誘電体多層膜フィルタの膜厚に依存する。従って、BS22及びPBS26の誘電体多層膜フィルタの膜厚は、所望の光学特性を得るために、使用波長域に対応して適切な値に設定される。本実施形態の信号光L1の波長域が例えばLバンド帯(1565nm~1615nm、本実施形態における第1の波長域)である場合、BS22及びPBS26の設計波長域にはLバンド帯が含まれる。すなわち、BS22及びPBS26の誘電体多層膜フィルタの膜厚は、少なくともLバンド帯において所望の光学特性が得られるように設定される。具体的には、Lバンド帯の全域においてBS22の分岐比が10%以下の所望の値(例えば5%)となるように、BS22の誘電体多層膜フィルタの膜厚が選択される。また、Lバンド帯の全域においてPBS26の分岐比が所望の値(略50%)となるように、PBS26の誘電体多層膜フィルタの膜厚が選択される。
【0036】
図3は、一例として、PBS26のP偏光透過率(Tp)と入射光の波長との関係を実測したグラフである。横軸は入射光の波長(単位:nm)を表し、縦軸はP偏光透過率(dB)を表す。また、
図3には、PBS26の設計波長域A1が示されている。
図3に示されるように、本実施形態のPBS26のP偏光透過率は、1550nm未満の波長域から1550nmにかけて急激に上昇し、1550nm~1555nm及びそれ以降は0dB付近でほぼ一定となる。このような光学特性を有するPBS26によれば、Lバンド帯の全域において略50%の分岐比を実現することができる。
【0037】
加えて、本実施形態では、PBS26の設計波長域A1に、Cバンド帯のうちLバンド帯に隣接する一部の波長域A2(例えば1560nm~1565nm、本実施形態における第2の波長域)が含まれる。従って、本実施形態のPBS26の設計波長域は、1560nm~1615nmとなっている。なお、Lバンド帯外であってPBS26の設計波長域に含まれる波長域A2の具体的な範囲は、これに限られない。例えば、1555nm~1565nm、1550nm~1565nmなど、1565nmよりも小さい波長域を含んでさえいれば、必要に応じてその幅が増減されてもよい。
【0038】
BS22の設計波長域もまた、上記と同様の考え方により設定される。すなわち、BS22の設計波長域には、Cバンド帯のうちLバンド帯に隣接する一部の波長域(例えば1560nm~1565nm)が含まれる。従って、本実施形態のBS22の設計波長域は、PBS26と同様に、1560nm~1615nmとなっている。なお、Lバンド帯外であってBS22の設計波長域に含まれる波長域の具体的な範囲は、これに限られない。例えば、1555nm~1565nm、1550nm~1565nmなど、1565nmよりも小さい波長域を含んでさえいれば、必要に応じてその幅が増減されてもよい。
【0039】
また、λ/2板29は、前述したように板状の複屈折材料を有する。そして、λ/2板29の光学特性(2つの偏光成分に与えられる位相差)は、入射光の波長及び複屈折材料の板厚に依存する。従って、λ/2板29の複屈折材料の板厚は、所望の光学特性を得るために、使用波長域に対応して適切な値に設定される。本実施形態の信号光L1の波長域が例えばLバンド帯である場合、λ/2板29の設計波長域にはLバンド帯が含まれる。すなわち、λ/2板29の複屈折材料の板厚は、少なくともLバンド帯において所望の光学特性が得られるように設定される。具体的には、Lバンド帯の全域においてλ/2板29の位相差が180±5°の範囲内に収まるように、λ/2板29の複屈折材料の板厚が選択される。
【0040】
なお、波長域A1を設計波長域とするBS22、PBS26、及びλ/2板29の外面には、Cバンド帯を設計波長域とするBS、PBS、及びλ/2板と識別するために、マーキングが施されている。マーキングとしては、例えば、ダイシングブレードによるステップカット等が挙げられる。
【0041】
ここで、光受信装置1Aの組立方法について説明する。
図4は、光受信装置1Aの組立方法を示すフローチャートである。
図4に示されるように、まず、工程S1では、MMI素子32a,MMI素子32bを、AuSn半田等を用いてキャリア20d上に固定する。そして、アンプ39a,39bを、AnSn半田よりも融点の低い半田及びAgペースト等の樹脂材を用いて、キャリア20d上に固定する。その後、キャリア20dをハウジング2の底面上に搭載し、例えばUV樹脂といった接着剤により固定する。
【0042】
次に、工程S2では、各光学部品をハウジング2の底面上に固定する。詳細には、まず、PBS26、全反射ミラー30a及び30b、並びにBS34をキャリア20d上に配置し接着剤により固定する。このとき、これらの光学部品をハウジング2の上方にて把持し、オートコリメータの光を光入射面にて反射させ、その反射光をオートコリメータにて観測しながら、これらの光の光軸が互いに一致するように、これらの光学部品の角度を調整する。そして、その角度を維持したまま、これらの光学部品をキャリア20d上の所定位置に配置する。なお、これらの光学部品のキャリア20d上の位置は、予めキャリア20dに形成された位置合わせマークに対して目視だけで決められる。上記の作業は、PBS26、全反射ミラー30a及び30b、並びにBS34の全てについて順に行われる。
【0043】
続いて、BS22をハウジング2内のキャリア20a上に配置し、接着剤により固定する。この工程では、先の工程と同様にして、オートコリメータを用いながらBS22の角度を調整し、その角度を維持したまま、BS22をキャリア20a上の所定位置に配置する。
【0044】
続いて、スキュー調整素子27a及び27b、λ/2板29、及び偏光子33を、ハウジング2内のキャリア20d上に配置し、接着剤により固定する。この工程では、先の工程と同様にして、オートコリメータを用いながらこれらの光学部品の角度を調整し、その角度を維持したまま、これらの光学部品をキャリア20d上の所定位置に配置する。この作業は、スキュー調整素子27a及び27b、λ/2板29、及び偏光子33の全てについて順に行われる。
【0045】
続いて、工程S3では、MMI素子32a、32bに入力される試験光の光強度に基づいて、BS22、PBS26、及びλ/2板29を除く他の少なくとも一つの光学部品の光軸調整を行う。この工程では、集光レンズ28a,31a,36a,及び38aの光軸調整及び固定を行う。その準備として、まず、光軸調整に用いる試験光源の出力波長を、Cバンド帯のうちLバンド帯に隣接する一部の波長域A2(
図3を参照)に含まれる波長に設定する。一例では、波長域A2は1550nm~1565nmである。また、一例では、試験光源の出力波長は1560nmである。また、2つの模擬ポートをハウジング2の一端面2bに配置する。これらの模擬ポートは、入力ポート11,13に代わるものであり、これらの模擬ポートからは、試験光源からの試験光がハウジング2内に向けて出射される。各模擬ポートは内部にコリメートレンズを搭載しており、これらの試験光は実質的にコリメート光となる。
【0046】
次に、これらの模擬ポートの光軸調整を行う。まず、一方の模擬ポートから試験光をハウジング2内に導入し、BS22、PBS26、及びλ/2板29を含む各光学部品に試験光を入力する。そして、各光学部品を通過した試験光を、MMI素子32aに内蔵されたPDにより検出する。この状態で、模擬ポートをハウジング2の一端面2b上でスライドし試験光強度が最大となる模擬ポートの位置を探索する。同様に、他方の試験ポートから模擬ポートを介して試験光をハウジング2内に導入し、各光学部品を通過した試験光を、MMI素子32bに内蔵されたPDにより検出する。そして、模擬ポートを一端面2b上でスライドし、PDを介して検知される試験光強度が最大となる模擬ポートの位置を探索する。MMI素子32a、32bの信号光入力ポート、局発光入力ポートの有効面積は数μm□程度と非常に狭いが、試験光がコリメート光に変換されているので、レンズ系28、31、36、及び38を介する光結合ではない場合であっても、最大光結合を与える模擬ポートの位置を決定することができる。
【0047】
次に、集光レンズ28a,31a,36a,及び38aの光軸調整及び固定を行う。まず、集光レンズ28aをキャリア20d上に配置し、各模擬ポートからの試験光を入射させ、集光レンズ28aを通過した試験光をMMI素子32aの内蔵PDにより検出する。そして、集光レンズ28aの位置及び角度を僅かに変化させながら、内蔵PDでの受光強度が最大となる集光レンズ28aの位置及び角度を決定する。その決定後、集光レンズ28aをMMI素子32a側に所定量だけ移動させた後に上方に退避させ、キャリア20dのレンズ搭載面に接着樹脂(例えばUV硬化樹脂)を塗布する。そして、集光レンズ28aを元の位置に戻し、内蔵PDでの受光強度が退避前の強度となるように集光レンズ28aの位置を調整したのち、UV照射を行い集光レンズ28aをキャリア20d上に仮固定する。集光レンズ31a,36a,及び38aについても集光レンズ28aと同様にしてキャリア20d上に仮固定する。その後、接着樹脂に熱を加えることにより、集光レンズ28a,31a,36a,及び38aの本固定を行う。
【0048】
続いて、工程S4では、上述した試験光をそのまま用いて、集光レンズ28b,31b,36b,及び38bの光軸調整及び固定を行う。これらの光軸調整及び固定の方法は、上述した集光レンズ28a,31a,36a,及び38aの光軸調整及び固定の方法と同様である。
【0049】
続いて、工程S5では、MMI素子32a、32bに入力される試験光の光強度に基づいて、BS22、PBS26、及びλ/2板29を除く他の少なくとも一つの光学部品の光軸調整を行う。この工程では、モニタPD24及びVOA23の光軸調整及び固定を行う。まず、ハウジング2の外部においてPDキャリア24a上にモニタPD24を搭載し中間アセンブリを予め組み立てておき、この中間アセンブリをキャリア20a上に搭載する。次に、模擬ポートからの試験光をモニタPD24に入射させ、モニタPD24に入射した試験光の強度を検出する。そして、PDキャリア24aの位置及び角度を僅かに変化させながら、モニタPD24での受光強度が最大となるPDキャリア24aの位置及び角度を決定する。その決定後、PDキャリア24aを上方に退避させ、キャリア20aのPDキャリア搭載面に接着樹脂(例えばUV硬化樹脂)を塗布する。そして、PDキャリア24aを元の位置に戻し、モニタPD24での受光強度が退避前の強度となるようにPDキャリア24aの位置を調整したのち、UV照射を行いPDキャリア24aをキャリア20a上に仮固定する。
【0050】
続いて、VOA23をVOAキャリア20b上に固定する。このとき、印加電圧に対して最大の消光比を得るために、VOA23を把持するコレットを介してバイアス電源からVOA23に制御信号を印加しつつ、模擬ポートから試験光を入力し、VOA23を通過した試験光の強度をMMI素子32aに内蔵したPDにより検知し、その消光比を確認しながら光軸調整を行う。その後、VOA23を上方に退避させ、キャリア20bのVOA搭載面に接着樹脂(例えばUV硬化樹脂)を塗布する。そして、VOA23を元の位置に戻し、VOA23の消光比が退避前の消光比となるようにVOA23の位置を調整したのち、UV照射を行いVOA23をキャリア20b上に仮固定する。その後、接着樹脂に熱を加えることにより、PDキャリア24a及びVOA23の本固定を行う。
【0051】
続いて、工程S6では、ハウジング2を塞ぐ蓋(リッド)を、ハウジング2の内部を乾燥窒素により置換しつつハウジング2に溶接固定する。なお、蓋の内面には、迷光を防ぐ為に黒色メッキが施される。
【0052】
続いて、工程S7では、一方の試験ポートを本来の信号光入力ポート11に置き換え、信号光入力ポート11の光軸調整及び固定を行う。具体的には、信号光入力ポート11から試験光を導入し、試験光の強度をMMI素子32aの内蔵PDにより検出する。そして、検出される試験光の強度を参照しながら、信号光入力ポート11のレンズホルダ11b及びスリーブ11aの双方を端面2bに沿った面内においてスライドさせつつ、内蔵PDでの受光強度が模擬ポートを用いてレンズ系を光軸調整した時と同様の強度となる位置を決定する。この位置は、VOA23の消光比がVOA23を光軸調整した時と同様の消光比となる位置であると尚良い。決定後、レンズホルダ11bを、例えばYAG溶接によりハウジング2に固定する。そして、中子ホルダ11cをレンズホルダ11bとスリーブ11aとの間に配置し、スリーブ11aの3軸光軸調整を行う。内蔵PDでの受光強度が最大となる位置で、中子ホルダ11c及びスリーブ11aをYAG溶接により固定する。
【0053】
続いて、工程S8では、他方の試験ポートを本来の局発光入力ポート13に置き換え、局発光入力ポート13の光軸調整及び固定を行う。具体的には、局発光入力ポート13から試験光を導入し、試験光の強度をMMI素子32bの内蔵PDにより検出する。そして、検出される試験光の強度を参照しながら、局発光入力ポート13のレンズホルダ13b及びスリーブ13aの双方を端面2bに沿った面内においてスライドさせつつ、内蔵PDでの受光強度が模擬ポートを用いてレンズ系を光軸調整した時と同様の強度となる位置を決定する。決定後、レンズホルダ13bを、例えばYAG溶接によりハウジング2に固定する。そして、中子ホルダ13cをレンズホルダ13bとスリーブ13aとの間に配置し、スリーブ13aの3軸光軸調整を行う。内蔵PDでの受光強度が最大となる位置で、中子ホルダ13c及びスリーブ13aをYAG溶接により固定する。
【0054】
続いて、工程S9では、スリーブ11aの光軸の微調整を行うために、中子ホルダ11cに弱い強度のYAG光を照射してMMI素子32aの内蔵PDでの受光強度及びVOA23の消光比を最適に近づける。同様に、スリーブ13aの光軸の微調整を行うために、中子ホルダ13cに弱い強度のYAG光を照射してMMI素子32bの内蔵PDでの受光強度を最適に近づける。
【0055】
なお、上記の工程S4~S9において使用される試験光の波長は、工程S3において使用された試験光と同様に、Cバンド帯のうちLバンド帯に隣接する一部の波長域A2(
図3を参照)に含まれる。一例では、波長域A2は1550nm~1565nmである。また、一例では、試験光の波長は1560nmである。
【0056】
以上に説明した、本実施形態に係る光受信装置1Aの組立方法によって得られる効果について説明する。通常、光受信装置を組み立てる際には、試験光を用いて各種光学部品の光軸調整を行う。このとき用いられる試験光の波長は、光軸調整を精度良く行う為に、光学部品の設計波長域に含まれることが望ましい。現在、コヒーレント光通信においてはCバンド帯が主に用いられているが、通信量の増大に伴い、波長域をLバンド帯まで拡大することが検討されている。そして、Lバンド帯に対応する光受信装置の開発が進められている。Lバンド帯に対応する光受信装置では、光学部品の設計波長域がLバンド帯となる。光学部品のうち、例えばBS22、PBS26、及びλ/2板29は、Cバンド帯及びLバンド帯の双方に対応することが困難であり、各バンド帯毎に専用の設計が必要となる。
【0057】
しかしながら、既存の試験装置では、試験光の波長はCバンド帯に含まれる。従って、Lバンド帯用の光受信装置の組み立てにLバンド帯の試験光を用いる場合、試験装置の光源の波長可変域を広くする(若しくは組み立てる光受信装置に合わせて光源を交換する)必要が生じ、試験装置のコストが増大してしまう。特に、Cバンド帯(1530~1565nm)からLバンド帯(1565nm~1615nm)にわたる波長範囲をカバーできる波長可変光源は極めて高価である。また、光受信装置の組み立て作業が繁雑になり、工数が増大してしまう。或いは、光受信装置の製造ラインをCバンド用とLバンド用とに分けることも考えられるが、製造設備の大型化に繋がり好ましくない。
【0058】
上記の課題に対し、本実施形態の組立方法においては、BS22、PBS26、及びλ/2板29の設計波長域A1(
図3を参照)が、信号光L1の波長域であるLバンド帯に加えて、Cバンド帯の一部である波長域A2(
図3を参照)を含む。これにより、信号光L1の波長域外の波長域A2に試験光の波長を設定することが可能になる。そして、本実施形態では、BS22、PBS26、及びλ/2板29を配置したのち、波長域A2に含まれる試験光を用いて、他の光学部品(レンズ系28,31,36,38等)の光軸調整を行う。従って、本実施形態によれば、波長域がCバンド帯からLバンド帯まで拡大された場合であっても、Cバンド帯用の光受信装置の光学部品の光軸調整と、Lバンド帯用の光受信装置の光学部品の光軸調整とを、共通の波長の試験光を用いて行うことができる。或いは、試験光源の波長可変範囲を狭く(例えばCバンド帯に限定)することができる。故に、本実施形態の組立方法によれば、試験装置のコストの増大及び組み立て作業の煩雑化を抑制することができる。なお、BS22、PBS26、及びλ/2板29を除く他の光学部品(例えばスキュー調整素子27a,27b、偏光子33、BS34等)は、Cバンド帯及びLバンド帯の双方に対応するように設計してもよい。
【0059】
また、本実施形態のように、波長域A2は、Lバンド帯の下限である1565nmよりも小さい波長域を含んでもよい。これにより、通信システムにおいてLバンド帯とCバンド帯とを併用する場合であっても、Cバンド帯に含まれる試験光を用いてLバンド帯用の光受信装置1Aの光学部品の光軸調整を精度良く行うことができる。この場合、試験光の波長は1550nm~1565nmの範囲内であってもよい。このように、Cバンド帯のうちLバンド帯に近い一部の波長域に試験光の波長を設定することにより、BS22、PBS26、及びλ/2板29の設計波長域が広くなり過ぎることを抑制できる。
【0060】
また、本実施形態のように、BS22、PBS26、及びλ/2板29を設置した後に取り付けられる光学部品には、レンズ系28,31,36,38が含まれてもよい。これにより、レンズ系28,31,36,38の光軸調整を精度良く行うことができる。また、本実施形態のように、BS22、PBS26、及びλ/2板29を設置した後に取り付けられる光学部品には、VOA23が含まれてもよい。これにより、VOA23の減衰比の調整を精度良く行うことができる。
【0061】
本発明による光受信装置の組立方法は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では
図3に示された波長域A1を設計波長域とする光学部品としてBS22、PBS26、及びλ/2板29を例示したが、信号光L1の波長域である第1の波長域、及び第1の波長域外の第2の波長域を設計波長域に含む光学部品は、これらのうち少なくとも1つであってもよく、或いはこれら以外の光学部品であってもよい。また、上記実施形態では信号光L1の波長域としてLバンド帯を例示しているが、信号光L1の波長域はLバンド帯以外の他のバンド帯であってもよい。
【符号の説明】
【0062】
1A…光受信装置、2…ハウジング、2b…端面、3…端子、4…フランジ、11…信号光入力ポート、11a…スリーブ、11b…レンズホルダ、11c…中子ホルダ、13…局発光入力ポート、13a…スリーブ、13b…レンズホルダ、13c…中子ホルダ、20a,20b,20d…キャリア、20e…回路基板、22…BS、24…モニタPD、24a…PDキャリア、26…PBS、27a,27b…スキュー調整素子、28,31,36,38…レンズ系、28a,28b,31a,31b,36a,36b,38a,38b…集光レンズ、29…λ/2板、30a,30b…全反射ミラー、32a,32b…MMI素子、33…偏光子、39a,39b…アンプ、50…分岐比、100…コヒーレント光受信装置、A1…設計波長域、A2…波長域、L1,L11,L12,L13…信号光、L10…モニタ光、L2,L22,L23…局発光。