(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】通信装置及び通信システム
(51)【国際特許分類】
H04M 1/00 20060101AFI20220708BHJP
H04M 11/06 20060101ALI20220708BHJP
【FI】
H04M1/00 H
H04M1/00 U
H04M11/06
(21)【出願番号】P 2018164206
(22)【出願日】2018-09-03
【審査請求日】2021-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 収
【審査官】白川 瑞樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-102317(JP,A)
【文献】特開平5-056178(JP,A)
【文献】特開2010-087705(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0046943(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0016709(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04M1/00
1/24-3/00
3/16-3/20
3/38-3/58
7/00-7/16
11/00-11/10
99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声信号と、当該音声信号の帯域に含まれる制御信号とを受信して、前記音声信号を出力する通信装置であって、
前記音声信号と前記制御信号とを受信する受信手段と、
前記受信された受信信号から、特定周波数の制御信号を検出する検出手段と、
前記受信信号を遅延させる遅延手段と、
前記遅延された受信信号から前記検出手段によって検出された制御信号を減算して、前記制御信号を除去し、音声出力部に出力する減算手段とを備えたことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記検出手段が、
アナログの受信信号をディジタル信号に変換するA/D変換部と、
前記A/D変換部から出力された信号について高速フーリエ変換を行って周波数成分に変換するFFT部と、
前記周波数成分の内、予め設定された特定周波数の成分を出力するトーン検出部と、
前記トーン検出部から出力された特定周波数の成分を逆高速フーリエ変換するIFFT部と、
前記逆高速フーリエ変換された信号をアナログ信号に変換して、検出された制御信号として出力するD/A変換部とを備えたことを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項3】
前記トーン検出部が、特定周波数の成分の信号強度が予め設定されたしきい値を超えた場合に、前記成分を出力することを特徴とする請求項2記載の通信装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか記載の通信装置を備え、
無線通信端末との無線通信を行う基地局と、
前記通信装置と前記基地局とを接続する回線制御を行う切替装置とを備えたことを特徴とする通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システムに係り、特に音声信号に監視・制御信号が重畳されている場合でも、音質を劣化させることなく監視・制御信号を除去し、明瞭な音声を出力することができる通信装置及び通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明:
図5]
従来、例えば発電所や鉄塔等の被監視装置が設置された地域と、被監視装置の監視を行う監視所(支所)との間で通信を行う業務用の通信システムがある。
一般的な通信システムの概略構成について
図5を用いて説明する。
図5は、一般的な通信システムの概略構成を示す説明図である。
図5に示すように、一般的な通信システムは、無線端末1と、指令端末5′と、切替装置3と、基地局4とを備えている。
【0003】
無線端末1は、被監視装置の近くにいる保守員等が携帯する端末や、車両に搭載された端末等の無線通信端末であり、基地局4と無線通信を行って、保守員と指令端末5′のオペレータとの通話を実現するものである。
【0004】
指令端末5′は、支所等に設けられ、有線によって切替装置3に接続され、切替装置3及び基地局4を介して無線端末1との通信を行う通信装置である。指令端末5′には、ハンドセット10や、オペレータによって操作される操作パネル(図示せず)が接続されている。
ハンドセット10は、音声を入力するマイク11と、音声を出力するスピーカ12と、通話開始時にオペレータによって押下されるプッシュボタン13とを備えている。
また、操作パネルには、基地局4を選択するボタンや、着信時に発信元の基地局4を示すLED等が設けられている。
【0005】
切替装置3は、回線交換を行うものであり、制御信号に従って指令端末5′と基地局4とを接続する。
基地局4は、無線通信システムの基地局装置であり、切替装置3に有線で接続して通信すると共に、エリア内にいる無線端末1と無線通信を行う。
【0006】
そして、このような通信システムにおいては、通信制御のための監視・制御信号(以下、「制御信号」とする)が伝送され、制御信号は、音声信号と同じ帯域に含めて伝送されるようになっている。
制御信号としては、例えば、交流プレス信号、プレス確認信号、ビジー信号、ルートトーン信号がある。
各信号の帯域としては、音声信号は300~3400Hz、制御信号は2900Hz~3350Hzの単一トーン信号である。
【0007】
[従来の指令端末の構成:
図6]
従来の指令端末5′の構成について
図6を用いて説明する。
図6は、従来の指令端末5′の構成ブロック図である。尚、
図6では、ハンドセット10や操作パネルは省略している。
従来の指令端末5′は、受信手段21と、検出手段22と、制御部23と、ローパスフィルタ24と、トーン生成部25と、送信手段26とを備えている。
【0008】
受信手段21は、切替装置3からの信号を受信して復調する。
検出手段22は、受信信号から制御信号を検出するものである。具体的には、受信手段21からの信号をA/D変換して、FFT(Fast Fourie Transform;高速フーリエ変換)により周波数軸に変換し、制御信号の周波数を検出すると、当該制御信号を受信した旨を示す信号を制御部23に出力する。
【0009】
制御部23は、入力に応じて制御信号を出力する。
例えば、ハンドセット10のプレスボタン13が押下されると、制御部23は、発呼を要求する交流プレス信号を出力する。また、検出手段22から交流プレス信号が入力されると、当該制御信号に応じてプレス確認信号を出力する。
【0010】
トーン生成部24は、制御部23からの制御信号に応じたトーン信号を生成する。
送信手段26は、トーン生成部25からのトーン信号とマイク11からの音声信号とを入力して、信号処理及び変調を行い、重畳して送信する。尚、音声信号と制御信号とが常に同時に入力されるわけではなく、いずれか一方のみの場合(時間)や両方とも入力されない場合もある。
【0011】
ローパスフィルタ(LPF;Low Pass Filter;低域通過フィルタ)24は、受信手段21から出力された信号から、制御信号が含まれる帯域をカットしてスピーカ12に出力するものである。LPF24のカットオフ周波数は、例えば2700Hzとしている。
従来の指令端末5′では、これにより、制御信号のトーン音がスピーカ12に出力されるのを防ぐようになっている。
【0012】
[関連技術]
尚、トーン信号に関する従来技術としては、特開2004-7132号公報「トーン信号発生回路」(特許文献1)がある。
特許文献1には、1つのSINデータROMに格納されたデータを、時間分割で使用することによって、複数のトーン信号を同時に発生し、回路規模を大幅に削減するトーン信号発生回路が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、従来の通信装置及び通信システムでは、音声に重畳された制御信号をローパスフィルタによって除去するため、音声信号についても同帯域がカットされてしまい、音質が劣化してしまうという問題点があった。
具体的には、ローパスフィルタによって2700Hz~3400Hzの高周波数部分をカットするため、明瞭度が低下したこもった音(こもり音)になってしまい、聞き取りにくい。
特に、従来は、制御信号が重畳されているか否かに関わらず、ローパスフィルタによって高帯域部分を除去していたため、常に音質の劣化が発生していた。
【0015】
尚、特許文献1には、音声信号と制御信号とが重畳された受信信号から特定の周波数の制御信号(トーン信号)を除去して、音質を改善することは記載されていない。
【0016】
本発明は上記実状に鑑みて為されたもので、受信信号において音声信号と制御信号とが重畳されていても、音質を劣化させることなく制御信号を除去し、明瞭な音声を出力することができる通信装置及び通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、音声信号と、当該音声信号の帯域に含まれる制御信号とを受信して、音声信号を出力する通信装置であって、音声信号と制御信号とを受信する受信手段と、受信された受信信号から、特定周波数の制御信号を検出する検出手段と、受信信号を遅延させる遅延手段と、遅延された受信信号から検出手段によって検出された制御信号を減算して、制御信号を除去し、音声出力部に出力する減算手段とを備えたことを特徴としている。
【0018】
また、本発明は、上記通信装置において、検出手段が、アナログの受信信号をディジタル信号に変換するA/D変換部と、A/D変換部から出力された信号について高速フーリエ変換を行って周波数成分に変換するFFT部と、周波数成分の内、予め設定された特定周波数の成分を出力するトーン検出部と、トーン検出部から出力された特定周波数の成分を逆高速フーリエ変換するIFFT部と、逆高速フーリエ変換された信号をアナログ信号に変換して、検出された制御信号として出力するD/A変換部とを備えたことを特徴としている。
【0019】
また、本発明は、上記通信装置において、トーン検出部が、特定周波数の成分の信号強度が予め設定されたしきい値を超えた場合に、当該成分を出力することを特徴としている。
【0020】
また、本発明は、通信システムにおいて、上記のいずれか記載の通信装置を備え、無線通信端末との無線通信を行う基地局と、通信装置と基地局とを接続する回線制御を行う切替装置とを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、音声信号と、当該音声信号の帯域に含まれる制御信号とを受信して、音声信号を出力する通信装置であって、音声信号と制御信号とを受信する受信手段と、受信された受信信号から、特定周波数の制御信号を検出する検出手段と、受信信号を遅延させる遅延手段と、遅延された受信信号から検出された制御信号を減算して、制御信号を除去し、音声出力部に出力する減算手段とを備えた通信装置としているので、音声信号の高帯域部分を大幅にカットすることなく、制御信号を除去することができ、音質を向上させて明瞭な音声を出力することができる効果がある。
【0022】
また、本発明によれば、検出手段が、アナログの受信信号をディジタル信号に変換するA/D変換部と、A/D変換部から出力された信号について高速フーリエ変換を行って周波数成分に変換するFFT部と、周波数成分の内、予め設定された特定周波数の成分を出力するトーン検出部と、トーン検出部から出力された特定周波数の成分を逆高速フーリエ変換するIFFT部と、逆高速フーリエ変換された信号をアナログ信号に変換して、検出された制御信号として出力するD/A変換部とを備えた上記通信装置としているので、ディジタル処理により、制御信号を精度よく検出して除去することができる効果がある。
【0023】
また、本発明によれば、トーン検出部が、特定周波数の成分の信号強度が予め設定されたしきい値を超えた場合に、当該成分を出力する上記通信装置としているので、制御信号が重畳されていない場合には、信号レベルがしきい値を超えないため、制御信号と同等の周波数成分の音声を除去しないようにして、一層音質を向上させることができる効果がある。
【0024】
また、本発明によれば、上記のいずれか記載の通信装置を備え、無線通信端末との無線通信を行う基地局と、通信装置と基地局とを接続する回線制御を行う切替装置とを備えた通信システムとしているので、通信端末が無線通信端末と通話を行う場合に、受話音声の音質を向上させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図4】検出手段52における処理を示すフローチャートである。
【
図5】一般的な通信システムの概略構成を示す説明図である。
【
図6】従来の指令端末5′の構成ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る通信装置(本通信装置)は、受信手段が、音声信号と制御信号とが重畳された信号を受信して、検出手段が、受信信号から周波数解析によって特定周波数の制御信号を検出し、減算手段が、遅延された受信信号から、検出された制御信号を減算して、制御信号が含まれない音声信号を音声出力部に出力するようにしており、音声信号の高帯域部分をカットせずに制御信号を除去することができ、音質を改善して明瞭な音声を出力することができるものである。
【0027】
また、本発明の実施の形態に係る通信システム(本通信システム)は、指令端末としての本通信装置と、無線通信の基地局と、本通信装置と基地局とを接続する回線制御を行う切替装置とを備えたシステムである。
【0028】
[本通信システムの概略構成]
本通信システムは、
図5に示した通信システムと同様の構成であるため、図示は省略する。本通信システムは、
図5に示した従来の指令端末5′の代わりに、本通信装置である指令端末5が設けられている点が異なっている。
そして、
図5の通信システムと同様に、有線区間においては、音声信号と単一トーンの制御信号とが重畳される場合があるものである。
【0029】
[本通信装置(本指令端末)の構成:
図1]
次に、本通信装置に相当する指令端末5の構成について
図1を用いて説明する。
図1は、本通信装置の構成ブロック図である。
図1に示すように、本指令端末5は、受信手段51と、検出手段52と、制御部53と、トーン生成部55と、送信手段56と、遅延手段57と、減算手段58とを備えている。
これらの内、受信手段51と、トーン生成部55と、送信手段56は、上述した従来の指令端末5′の構成部分と同等であるため、説明は省略する。
【0030】
そして、本指令端末5では、受信手段51で受信した受信信号を2つに分岐して、その一方から制御信号を検出して、制御部53に出力すると共に、他方の受信信号から制御信号を除去して、明瞭な音声信号を音声出力部に出力する点が特徴となっている。
【0031】
本指令端末5の特徴部分について説明する。
検出手段52は、受信手段51から出力されて分岐された一方の信号について、周波数解析を行って、特定周波数の制御信号を検出して制御部53にその旨報知する(当該制御信号を受信したことを報知する)と共に、受信した制御信号を再生して減算手段58に出力する。検出手段52は、DSP(Digital Signal Processor)等で構成される。
検出手段52の構成及び動作については後述する。
【0032】
制御部53は、検出手段52によって制御信号が検出されると、従来と同様に、当該制御信号に応じた動作を行う。例えば、検出手段52から制御信号である交流プレス信号の検出が報知されると、制御部53は、通話可能な状態であるかどうかを判断し、通話可能な状態であれば、プレス確認信号をトーン生成部55に出力する。更に、制御部53は、必要に応じて、操作パネルのLEDを点灯(又は点滅)させる。
また、本指令端末5の制御部53は、検出手段52で検出すべき制御信号の周波数及び受信強度のしきい値を記憶しており、検出手段52に設定する。
制御部53は、マイクロコンピュータ等で構成される。
【0033】
遅延手段57は、受信手段52から出力されて分岐された他方の信号を、一定時間遅延させる。遅延時間は、検出手段52における処理に要する時間に合わせている。
減算手段58は、遅延手段57から出力された信号から、検出手段52で生成された制御信号を減算して、制御信号を除去してスピーカに出力する。スピーカは、請求項に記載した音声出力部に相当している。
【0034】
[指令端末5の動作:
図1]
本指令端末5の動作について
図1を用いて簡単に説明する。
本指令端末5では、切替装置3からの信号が受信手段51で受信されると、受信信号は2つに分岐され、一方は検出手段52に入力される。そして、周波数解析により制御信号が検出されると、制御部53にその旨通知されると共に、検出された周波数領域の制御信号が時間領域に変換されて、制御信号が生成(再生)される。
【0035】
また、分岐された受信信号の他方は、遅延手段57に入力されて遅延され、減算手段58において、当該遅延された信号から検出手段52で生成された信号が減算されて、制御信号を含まない音声信号が出力される。このようにして、本指令端末5の動作が行われるものである。
【0036】
これにより、本指令端末5では、制御信号が重畳された音声信号から、制御信号をピンポイントで除去することができ、音声信号の高帯域部分をほとんど温存することができ、音質を大幅に向上させることができるものである。
尚、制御信号と同一周波数の音声信号はカットされるものの、カットされる帯域が極めて狭いために音質への影響はない。
【0037】
[検出手段の構成:
図2]
次に、本指令端末5における検出手段52の構成について
図2を用いて説明する。
図2は、検出手段52の構成ブロック図である。
図2に示すように、検出手段52は、A/D(Analog/Digital)変換部(図ではA/Dと記載)521と、FFT部522と、トーン検出部523と、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform)部524と、D/A(Digital/Analog)変換部(D/A)525とを備えている。
【0038】
各部について説明する。
A/D変換部521は、受信手段51からの受信信号をA/D変換する。
FFT部522は、A/D変換された受信信号について、FFTを行って周波数成分に変換し、周波数解析を行う。
【0039】
トーン検出部523は、FFT部522から入力された周波数軸の信号から、制御信号を検出する。
具体的には、トーン検出部523には、予め制御信号の周波数及び信号レベルのしきい値が記憶されており、制御信号に相当する周波数成分の信号レベルが当該しきい値を超えていれば、制御信号を受信した旨を制御部53に報知すると共に、当該周波数成分をIFFT部524に出力する。
制御信号の周波数は、監視・制御信号テーブルに記憶されているが、これについては後述する。
【0040】
IFFT部524は、トーン検出部523から入力された制御信号に相当する周波数成分をIFFT処理によって時間成分に変換して、制御信号データを得る。制御信号データは、受信信号に重畳されていた制御信号をデジタルデータに変換した信号に相当する。
【0041】
そして、D/A変換部525は、制御信号データをD/A変換して、アナログ信号の制御信号を生成し、減算手段58に出力する。
【0042】
[検出手段52の動作:
図2]
検出手段52における動作について
図2を用いて説明する。
図2に示すように、受信信号がA/D変換部21に入力されると、アナログ信号からディジタル信号に変換され、FFT部522において周波数領域の信号に変換される。
そして、トーン検出部523で、記憶されている制御信号の周波数成分の信号レベルが、設定されているしきい値を超えているかどうか判断され、超えている場合には当該制御信号を受信したと判定されて、制御部53にその旨(特定の制御信号を受信したことが)通知される。
【0043】
更に、トーン検出部523で検出された周波数領域の制御信号は、IFFT部523に入力されて、IFFT処理によって時間領域の信号(制御信号データ)に変換され、更にD/A変換部525においてディジタル信号からアナログ信号に変換されて、減算手段58に出力される。
このようにして、検出部52の動作が行われるものである。
【0044】
[監視・制御信号テーブルの例:
図3]
次に、監視・制御信号テーブルについて
図3を用いて説明する。
図3は、監視・制御信号テーブルの説明図である。
図3に示すように、監視・制御信号テーブルは、本通信システムにおいて音声信号に重畳される可能性のある監視・制御信号(制御信号)のトーン信号の周波数を記憶するものである。
ここでは、交流プレス信号が3300Hz,プレス確認信号が2900Hz,ビジー信号が3000Hz,ルートトーン信号が3350Hzに設定されている。
そして、監視・制御信号テーブルは、予め検出手段52のトーン検出部523に記憶されている。
【0045】
また、トーン検出部523には、制御信号の受信の有無を判定するための信号強度のしきい値も記憶されている。
制御信号の信号強度は、通常の音声信号の信号強度に比べて大きいため、しきい値は、通常の音声信号の信号レベルより大きく、制御信号の信号レベルより小さい値に設定されている。
【0046】
つまり、制御信号として規定されている周波数に信号(音声信号)が存在しても、しきい値に達していない場合には、制御信号とは認定されず、当該周波数成分がIFFT部524に出力されることはない。
そのため、当該周波数の音声信号が減算手段58で除去されることもない。
これにより、制御信号が重畳されていない場合に、制御信号と同じ周波数の音声信号が除去されるのを防ぎ、音質劣化を防ぐことができるものである。
【0047】
尚、上述した制御信号の内、交流プレス信号(3300Hz)と、プレス確認信号(2900Hz)は音声と重畳されることはないが、ルートトーン信号(3350Hz)及びビジー信号(3000Hz)は音声と重畳されることがある。
ルートトーン信号は、機器間において2つのルート(A,B)で送受信される冗長構成となっている。
機器(本指令端末5)は、このルートトーン信号を常にモニタしており、接続状態を監視している。
【0048】
ビジー信号は、接続される基地局に対して割り当てられるトーン信号であり、基地局は、配下の移動局が送信状態になると、指令端末に対して常にビジー信号を送出する。
また、ビジー信号は、接続される基地局の数分だけ、当該システムに割り当てられるため、2900Hz~3150Hzの範囲において50Hz間隔で6波(2900Hz,2950Hz,3000Hz,3050Hz,3100Hz,3150Hz)まで持てるようになっている。
図3の例では、ビジー信号として3000Hzが設定されている場合を示している。
【0049】
[検出手段52における処理:
図4]
次に、検出手段52における処理について
図4を用いて説明する。
図4は、検出手段52における処理を示すフローチャートである。
図4に示すように、検出手段52は、受信信号が入力されると、A/D変換部521でディジタル信号に変換し、FFT部522でFFT処理により周波数成分の解析を行う(S11)。
【0050】
そして、トーン検出部523で監視・制御信号テーブル及び設定されているしきい値を参照して、制御信号の周波数に一致する信号があるかどうか、更にしきい値を超えているかどうかを判断して、超えている場合に制御信号を受信したと判定する(監視・制御信号の検出)(S12)。
【0051】
そして、IFFT部524で、検出された制御信号をIFFT処理によって時間領域の信号に変換して、D/A変換部525でアナログ信号に変換することで制御信号を生成して、減算手段58に出力する(監視・制御信号の生成出力)(S13)。
このようにして、検出手段52における処理が行われるものである。
【0052】
[実施の形態の効果]
本実施の形態に係る通信装置(本通信装置、本指令端末)5によれば、受信手段51が、音声信号と監視・制御信号とが重畳された信号を受信して、検出手段52が、受信信号から周波数解析によって特定周波数の監視・制御信号を検出し、減算手段58が、一定時間遅延させた受信信号から検出された監視・制御信号を減算して、監視・制御信号が含まれない音声信号を出力するようにしており、音声信号と監視・制御信号とが重畳された信号から、音声信号の高帯域部分をカットせずに特定周波数の監視・制御信号を除去することができ、音質を改善して明瞭な音声を出力することができる効果がある。
【0053】
また、本通信装置5によれば、検出手段52が、受信信号をA/D変換して、FFT処理によって周波数解析を行い、予め設定された特定周波数の監視・制御信号を検出すると、検出された周波数成分についてIFFT処理を行って時間領域に変換し、D/A変換して減算手段58に出力するようにしており、ディジタル処理により監視・制御信号を精度よく検出し、生成できる効果がある。
【0054】
また、本通信システムによれば、無線端末1が、有線区間を介して本通信装置(本指令端末5)と通信を行う通信システムであって、本通信装置が、音声信号と監視・制御信号とが重畳された受信信号から、周波数解析によって特定周波数の監視・制御信号を検出し、一定時間遅延させた受信信号から検出された監視・制御信号を減算して、監視・制御信号が含まれない音声信号を出力するようにしており、音声信号の高帯域部分をカットせずに特定周波数の監視・制御信号を除去することができ、音質を改善して明瞭な音声を出力することができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、受信信号において音声信号と制御信号とが重畳されていても、音質を劣化させることなく制御信号を除去し、明瞭な音声を出力することができる通信装置及び通信システムに適している。
【符号の説明】
【0056】
1…無線端末、 3…切替装置、 4…基地局、 5…指令端末、 10…ハンドセット、 11…マイク、 12…スピーカ、 13…プレスボタン、 21,51…受信手段、 22,52…検出手段、 23,53…制御部、 24…ローパスフィルタ、 25,55…トーン生成部、 26,56…送信手段、 58…減算手段、 521…A/D変換器、 522…FFT部、 523…トーン検出部、 524…IFFT部、 525…D/A変換部