IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社トプコンの特許一覧

<>
  • 特許-測量装置 図1
  • 特許-測量装置 図2
  • 特許-測量装置 図3
  • 特許-測量装置 図4
  • 特許-測量装置 図5
  • 特許-測量装置 図6
  • 特許-測量装置 図7
  • 特許-測量装置 図8
  • 特許-測量装置 図9
  • 特許-測量装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】測量装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20220708BHJP
【FI】
G01C15/00 103D
G01C15/00 103E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018170278
(22)【出願日】2018-09-12
(65)【公開番号】P2020041934
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100083563
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 祥二
(72)【発明者】
【氏名】大友 文夫
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 薫
(72)【発明者】
【氏名】穴井 哲治
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-090244(JP,A)
【文献】特開2018-132328(JP,A)
【文献】特開2018-066571(JP,A)
【文献】特開2016-151423(JP,A)
【文献】特開2016-085102(JP,A)
【文献】特開2006-046920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 1/00- 1/14
G01C 5/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準点に設置される一脚と、該一脚の下端から既知の距離と該一脚の軸心に対して既知の角度で設けられ、基準光軸を有する測量装置本体と、前記一脚に設けられ、表示部を有する操作パネルとを具備し、前記測量装置本体は、測距光を照射し、反射測距光を受光して測定対象迄の距離を測定する測距部と、前記基準光軸に対して前記測距光を偏向する光軸偏向部と、前記測定対象を含み、前記基準光軸と所定の関係で観察画像を取得する測定方向撮像部と、所定のスキャンパターンに沿って前記測距部に測距させる演算制御部とを有し、該演算制御部は、前記観察画像中で設定された追尾点を中心に視準画像を連続して切出し、最初に切出された該視準画像を基準視準画像として設定し、該基準視準画像と前記視準画像との画像マッチングにより前記基準視準画像に対する前記視準画像の移動量を演算し、演算結果に基づき前記追尾点が前記視準画像の中心に位置する様前記光軸偏向部を制御する測量装置。
【請求項2】
前記演算制御部は、前記追尾点が前記視準画像の中心に位置する様前記光軸偏向部を制御する毎に、前記追尾点を中心に微小スキャンパターンを実行する請求項1に記載の測量装置。
【請求項3】
前記微小スキャンパターンは、微小な円状のスキャンパターンである請求項2に記載の測量装置。
【請求項4】
前記演算制御部は、前記視準画像中の前記追尾点の位置に基づき、各視準画像を重ね合わせ平均し、精細画像を作成する請求項2又は請求項3に記載の測量装置。
【請求項5】
前記演算制御部は、画像処理により前記測定対象の複数の稜線を抽出し、該複数の稜線の傾斜を演算し、該複数の稜線と前記微小スキャンパターンの交点の3次元座標を演算し、前記複数の稜線の傾斜と前記交点の3次元座標に基づき、前記測定対象の角部の3次元座標を演算する請求項2~請求項4のうちいずれか1項に記載の測量装置。
【請求項6】
前記測量装置本体に対して既知の位置に設けられ、前記基準光軸に対して既知の関係を有する下方撮像部を更に具備し、該下方撮像部は下方に向けられた下方撮像光軸を有し、前記一脚の下端及びその周囲を含む下方画像を取得し、前記演算制御部は、前記一脚の軸心を中心とする回転に伴う回転前後の前記下方画像間の変位を求め、該変位に基づき前記基準点を中心とした前記測量装置本体の回転角を演算する請求項1~請求項5のうちいずれか1項に記載の測量装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡単に目標位置を測定可能な測量装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、測量装置を用いて測定対象を測定する場合、三脚上に測量装置を設置し、測定対象をノンプリズム測距にて測定していた。然し乍ら、従来の測量装置は、設置の際に水平出しを行う必要があり、又測量装置を基準点上に設置する必要がある。従って、測量装置の設置作業に時間を要し、又熟練を要していた。
【0003】
又、近年出願人が提案した測量装置として、例えば特許文献4に示される測量装置がある。該測量装置は、ジンバルを内蔵し、2次元スキャンが可能となっている。該測量装置を設置する際には、該測量装置を一脚に搭載し、該一脚の下端を基準点に合わせるだけでよいので、容易に測量装置を設置することができる。
【0004】
然し乍ら、上記した測量装置は、一脚により支持される為、姿勢が不安定であり、測距光を所望の測定位置に照射し続けることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-151423号公報
【文献】特開2016-151422号公報
【文献】特開2016-161411号公報
【文献】特開2017-90244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、所望の測定対象部位を追尾しつつ測定が可能な測量装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基準点に設置される一脚と、該一脚の下端から既知の距離と該一脚の軸心に対して既知の角度で設けられ、基準光軸を有する測量装置本体と、前記一脚に設けられ、表示部を有する操作パネルとを具備し、前記測量装置本体は、測距光を照射し、反射測距光を受光して測定対象迄の距離を測定する測距部と、前記基準光軸に対して前記測距光を偏向する光軸偏向部と、前記測定対象を含み、前記基準光軸と所定の関係で観察画像を取得する測定方向撮像部と、所定のスキャンパターンに沿って前記測距部に測距させる演算制御部とを有し、該演算制御部は、前記観察画像中で設定された追尾点を中心に視準画像を連続して切出し、最初に切出された該視準画像を基準視準画像として設定し、該基準視準画像と前記視準画像との画像マッチングにより前記基準視準画像に対する前記視準画像の移動量を演算し、演算結果に基づき前記追尾点が前記視準画像の中心に位置する様前記光軸偏向部を制御する測量装置に係るものである。
【0008】
又本発明は、前記演算制御部は、前記追尾点が前記視準画像の中心に位置する様前記光軸偏向部を制御する毎に、前記追尾点を中心に微小スキャンパターンを実行する測量装置に係るものである。
【0009】
又本発明は、前記微小スキャンパターンは、微小な円状のスキャンパターンである測量装置に係るものである。
【0010】
又本発明は、前記演算制御部は、前記視準画像中の前記追尾点の位置に基づき、各視準画像を重ね合わせ平均し、精細画像を作成する測量装置に係るものである。
【0011】
又本発明は、前記演算制御部は、画像処理により前記測定対象の複数の稜線を抽出し、該複数の稜線の傾斜を演算し、該複数の稜線と前記微小スキャンパターンの交点の3次元座標を演算し、前記複数の稜線の傾斜と前記交点の3次元座標に基づき、前記測定対象の角部の3次元座標を演算する測量装置に係るものである。
【0012】
更に又本発明は、前記測量装置本体に対して既知の位置に設けられ、前記基準光軸に対して既知の関係を有する下方撮像部を更に具備し、該下方撮像部は下方に向けられた下方撮像光軸を有し、前記一脚の下端及びその周囲を含む下方画像を取得し、前記演算制御部は、前記一脚の軸心を中心とする回転に伴う回転前後の前記下方画像間の変位を求め、該変位に基づき前記基準点を中心とした前記測量装置本体の回転角を演算する測量装置に係るものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基準点に設置される一脚と、該一脚の下端から既知の距離と該一脚の軸心に対して既知の角度で設けられ、基準光軸を有する測量装置本体と、前記一脚に設けられ、表示部を有する操作パネルとを具備し、前記測量装置本体は、測距光を照射し、反射測距光を受光して測定対象迄の距離を測定する測距部と、前記基準光軸に対して前記測距光を偏向する光軸偏向部と、前記測定対象を含み、前記基準光軸と所定の関係で観察画像を取得する測定方向撮像部と、所定のスキャンパターンに沿って前記測距部に測距させる演算制御部とを有し、該演算制御部は、前記観察画像中で設定された追尾点を中心に視準画像を連続して切出し、最初に切出された該視準画像を基準視準画像として設定し、該基準視準画像と前記視準画像との画像マッチングにより前記基準視準画像に対する前記視準画像の移動量を演算し、演算結果に基づき前記追尾点が前記視準画像の中心に位置する様前記光軸偏向部を制御するので、測定中に前記測量装置本体の視準方向が変化した場合であっても、安定して前記追尾点を中心とした測定を行うことができ、測定精度の向上を図ることができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例を示す概略図である。
図2】測量装置本体を示す概略ブロック図である。
図3】測定方向撮像部、下方撮像部で取得した画像と測量装置本体によるスキャン軌跡との関係を示す図である。
図4】(A)、(B)は、光軸偏向部の作用説明図である。
図5】操作パネルの概略ブロック図である。
図6】(A)、(B)は、それぞれ局所パターンの一例を示す図である。
図7】追尾点の追尾について説明するフローチャートである。
図8】(A)は観察画像と視準画像を示す枠との関係を示す説明図であり、(B)は視準画像を示す説明図である。
図9】(A)~(D)は、視準方向が変化した場合の微小スキャンパターンの位置ズレを説明する説明図である。
図10】測定対象部位の3次元座標の演算について説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0016】
図1は本発明の実施例の概略を示す図であり、図1中、1はモノポール支持方式の測量装置、2は測定対象を示す。
【0017】
前記測量装置1は、主に、一脚(モノポール)3、該一脚3の上端に設けられた測量装置本体4、前記一脚3の適宜位置に、例えば測定作業者が立ち姿勢で操作し易い位置に、操作パネル7が設けられる。
【0018】
該操作パネル7は、前記一脚3に対して固定的に設けられてもよく、或は着脱可能であってもよい。前記操作パネル7が前記一脚3に取付けられた状態で操作可能である。又、前記操作パネル7を前記一脚3から分離し、該操作パネル7単体で操作可能としてもよい。該操作パネル7と前記測量装置本体4とは、有線、無線等各種通信手段を介してデータ通信が可能となっている。
【0019】
又、前記一脚3の前記操作パネル7より下方の位置に1本の補助脚6が折畳み可能に取付けられている。
【0020】
前記一脚3の下端は尖端となっており、該下端は基準点R(測定の基準となる点)に設置される。又、前記一脚3の下端から前記測量装置本体4の機械中心(測量装置本体4に於ける測定の基準となる点)迄の距離は既知となっている。
【0021】
前記測量装置本体4の光学系は、およそ水平方向に延出する基準光軸Oを有し、該基準光軸Oは前記一脚3の軸心Pと直交する線に対して所定角度下方に傾斜する様に設定される。従って、前記一脚3が鉛直に設定されると前記基準光軸Oは水平に対して前記所定角度下方に傾斜する。
【0022】
前記補助脚6は、上端で前記一脚3に折畳み可能に連結され、前記補助脚6は折畳み状態では、前記一脚3と密着し、密着した状態を保持する様なロック機構が設けられる。或は簡易的に前記一脚3と前記補助脚6とを束ねるバンド(図示せず)が設けられてもよい。前記補助脚6が折畳まれた状態で、作業者が一脚3を把持し、測定を実行できる。
【0023】
前記補助脚6は、上端を中心に所定の角度回転し、前記一脚3から離反させることが可能となっており、離反させた位置で固定可能となっている。前記補助脚6を使用することで、前記測量装置本体4は該補助脚6と前記一脚3との2点支持となり、前記測量装置本体4の支持は安定し、前記測量装置本体4による測定の安定性が向上する。尚、前記補助脚6は、1本の場合を説明したが2本であってもよい。この場合、前記一脚3は自立可能となる。
【0024】
前記測量装置本体4は、測距部24(後述)、測定方向撮像部21(後述)を有し、又前記測量装置本体4には外部撮像部である下方撮像部5が設けられている。前記測距部24の光学系の基準光軸が前記基準光軸Oである。前記測定方向撮像部21の光軸(以下、第1撮像光軸61)は前記基準光軸Oに対して所定角(例えば6°)上方に傾斜しており、又前記測定方向撮像部21の光軸と前記測距部24の光軸との距離及び位置関係は既知となっている。前記測距部24と前記測定方向撮像部21は前記測量装置本体4の筐体内部に収納されている。
【0025】
前記下方撮像部5は、CCD、CMOS等の撮像素子を有し、デジタル画像を取得可能な撮像装置が用いられる。又、撮像素子中の画素の位置が前記下方撮像部5の下方撮像光軸(以下、第2撮像光軸8)を基準として検出可能となっている。又、前記下方撮像部5として、例えば、市販のデジタルカメラが用いられてもよい。
【0026】
前記下方撮像部5は前記測量装置本体4の筐体に固定され、前記下方撮像部5(即ち、該下方撮像部5の像形成位置)は前記測量装置本体4の機械中心に対して既知の位置(距離)に設けられる。前記第2撮像光軸8は、下方に向けられ、前記基準光軸Oに対して所定の既知の角度に設定され、前記第2撮像光軸8と前記基準光軸Oとは既知の関係(距離)となっている。尚、前記下方撮像部5は前記筐体に収納され、前記測量装置本体4と一体化されてもよい。
【0027】
前記測定方向撮像部21の画角はθ1であり、前記下方撮像部5の画角はθ2であり、θ1とθ2とは等しくてもよく又異なっていてもよい。又、前記測定方向撮像部21の画角と前記下方撮像部5の画角はオーバラップしていなくともよいが、所定量オーバラップすることが好ましい。又、前記下方撮像部5の画角、前記第2撮像光軸8の方向は、前記一脚3の下端が画像中に含まれる様設定される。
【0028】
図2を参照して、前記測量装置本体4の概略構成を説明する。
【0029】
該測量装置本体4は、測距光射出部11、受光部12、測距演算部13、演算制御部14、第1記憶部15、撮像制御部16、画像処理部17、第1通信部18、光軸偏向部19、姿勢検出器20、前記測定方向撮像部21、射出方向検出部22、モータドライバ23を具備し、これらは筐体25に収納され、一体化されている。尚、前記測距光射出部11、前記受光部12、前記測距演算部13、前記光軸偏向部19等は、測距部24を構成する。
【0030】
前記測距光射出部11は、射出光軸26を有し、該射出光軸26上に発光素子27、例えばレーザダイオード(LD)が設けられている。又、前記射出光軸26上に投光レンズ28が設けられている。更に、前記射出光軸26上に設けられた偏向光学部材としての第1反射鏡29と、受光光軸31(後述)上に設けられた偏向光学部材としての第2反射鏡32とによって、前記射出光軸26は、前記受光光軸31と合致する様に偏向される。前記第1反射鏡29と前記第2反射鏡32とで射出光軸偏向部が構成される。
【0031】
前記測距演算部13は前記発光素子27を発光させ、前記発光素子27はレーザ光線を発する。前記測距光射出部11は、前記発光素子27から発せられたレーザ光線を測距光33として射出する。尚、レーザ光線としては、連続光或はパルス光、或は特許文献3に示される断続変調光のいずれが用いられてもよい。
【0032】
前記受光部12について説明する。該受光部12には、測定対象2からの反射測距光34が入射する。前記受光部12は、前記受光光軸31を有し、該受光光軸31には、前記第1反射鏡29、前記第2反射鏡32によって偏向された前記射出光軸26が合致する。尚、該射出光軸26と前記受光光軸31とが合致した状態を測距光軸35とする。
【0033】
前記基準光軸O上に前記光軸偏向部19が配設される。該光軸偏向部19の中心を透過する真直な光軸は、前記基準光軸Oとなっている。該基準光軸Oは、前記光軸偏向部19によって偏向されなかった時の前記射出光軸26又は前記受光光軸31又は前記測距光軸35と合致する。
【0034】
前記反射測距光34が前記光軸偏向部19を透過し、入射した前記受光光軸31上に結像レンズ38が配設される。又、前記受光光軸31上に受光素子39、例えばアバランシフォトダイオード(APD)が設けられている。前記結像レンズ38は、前記反射測距光34を前記受光素子39に結像する。該受光素子39は、前記反射測距光34を受光し、受光信号を発生する。受光信号は、前記測距演算部13に入力され、該測距演算部13は受光信号に基づき測距光の往復時間を演算し、往復時間と光速に基づき前記測定対象2迄の測距を行う。又、受光信号は前記反射測距光34を受光した際の受光強度の情報も含んでおり、前記測距演算部13は前記測定対象2からの反射強度も演算する。
【0035】
前記第1通信部18は、前記測定方向撮像部21で取得した画像データ、前記画像処理部17で処理された画像データ、前記測距部24が取得した測距データを前記操作パネル7に送信し、更に該操作パネル7からの操作コマンドを受信する。
【0036】
前記第1記憶部15には、撮像の制御プログラム、画像処理プログラム、測距プログラム、表示プログラム、通信プログラム、操作コマンド作成プログラム、前記姿勢検出器20からの姿勢検出結果に基づき前記一脚3の傾斜角、傾斜方向を演算し、更に傾斜角の鉛直成分(前記一脚3の測定対象2に対する前後方向の傾斜角)、傾斜角の水平成分(前記一脚3の測定対象2に対する左右方向の傾斜角)を演算する傾斜角演算プログラム、測距を実行する為の測定プログラム、前記光軸偏向部19の偏向作動を制御する為の偏向制御プログラム、追尾点(後述)を追尾する為の追尾プログラム、積算画像(後述)を作成する為の積算画像作成プログラム、前記測定対象2の稜線や角部を演算する為の演算プログラム、各種演算を実行する演算プログラム等の各種プログラムが格納される。又、測距データ、測角データ、画像データ等の各種データが格納される。
【0037】
前記演算制御部14は、前記測量装置本体4の作動状態に応じて、前記各種プログラムを展開、実行して前記測量装置本体4による前記測距光射出部11の制御、前記受光部12の制御、前記測距演算部13の制御、前記測定方向撮像部21の制御等を行い、測距を実行する。
【0038】
前記光軸偏向部19の詳細について説明する。
【0039】
該光軸偏向部19は、一対の光学プリズム41,42から構成される。該光学プリズム41,42は、それぞれ同径の円板形であり、前記測距光軸35上に該測距光軸35と直交して同心に配置され、所定間隔で平行に配置されている。前記光学プリズム41は、光学ガラスにて成形され、平行に配置された3つの三角プリズムを有している。同様に、前記光学プリズム42も、光学ガラスにて成形され、平行に配置された3つの三角プリズムを有している。尚、前記光学プリズム41を構成する三角プリズムと、前記光学プリズム42を構成する前記三角プリズムは、全て同一偏角の光学特性を有している。
【0040】
各三角プリズムの幅、形状は全て同じでもよく、或は異なっていてもよい。尚、中心に位置する前記三角プリズムの幅は、前記測距光33のビーム径よりも大きくなっており、該測距光33は中心に位置する三角プリズムのみを透過する様になっている。中心以外に位置する三角プリズムについては、多数の小さい三角プリズムで構成してもよい。
【0041】
更に、中心の前記三角プリズムについては、光学ガラス製とし、中心以外の前記三角プリズムについては、光学プラスチック製としてもよい。これは、前記光軸偏向部19から測定対象2迄の距離は大きく、中心の前記三角プリズムの光学特性については精度が要求され、一方中心以外の前記三角プリズムから前記受光素子39迄の距離は小さく、高精度の光学特性は必要ないという理由による。
【0042】
前記光軸偏向部19の中央部(中心の前記三角プリズム)は、前記測距光33が透過し、射出される第1光軸偏向部である測距光偏向部となっている。前記光軸偏向部19の中央部を除く部分(中心の前記三角プリズムの両端部及び中心以外の前記三角プリズム)は、前記反射測距光34が透過し、入射する第2光軸偏向部である反射測距光偏向部となっている。
【0043】
前記光学プリズム41,42は、それぞれ前記基準光軸Oを中心に独立して個別に回転可能に配設されている。前記光学プリズム41,42は、回転方向、回転量、回転速度が独立して制御されることで、射出される前記測距光33の前記射出光軸26を任意の方向に偏向し、又受光される前記反射測距光34の前記受光光軸31を前記射出光軸26と平行に偏向する。
【0044】
又、前記測距光33を連続して照射しつつ、前記光学プリズム41,42を連続的に駆動し、連続的に偏向することで、前記測距光33を所定のスキャンパターンでスキャンさせることができる。
【0045】
前記光学プリズム41,42の外形形状は、それぞれ前記測距光軸35(基準光軸O)を中心とする円形であり、前記反射測距光34の広がりを考慮し、充分な光量を取得できる様、前記光学プリズム41,42の直径が設定されている。
【0046】
前記光学プリズム41の外周にはリングギア45が嵌設され、前記光学プリズム42の外周にはリングギア46が嵌設されている。
【0047】
前記リングギア45には駆動ギア47が噛合し、該駆動ギア47はモータ48の出力軸に固着されている。同様に、前記リングギア46には駆動ギア49が噛合し、該駆動ギア49はモータ50の出力軸に固着されている。前記モータ48,50は、前記モータドライバ23に電気的に接続されている。
【0048】
前記モータ48,50は、回転角を検出できるモータ、或は駆動入力値に対応した回転をするモータ、例えばパルスモータが用いられる。或は、モータの回転量(回転角)を検出する回転角検出器、例えばエンコーダ等を用いて前記モータ48,50の回転量を検出してもよい。該モータ48,50の回転量がそれぞれ検出され、前記モータドライバ23により前記モータ48,50が個別に制御される。
【0049】
又、前記モータ48,50の回転量、即ち前記駆動ギア47,49の回転量を介して前記光学プリズム41,42の回転角が検出される。尚、エンコーダを直接リングギア45,46にそれぞれ取付け、エンコーダにより前記リングギア45,46の回転角を直接検出する様にしてもよい。
【0050】
ここで、前記光軸偏向部19の偏向角は、前記光学プリズム41,42の回転角に対して小さく(例えば、偏向角±10°させる為の回転角が±40°)、高精度に偏向させることができる。
【0051】
前記駆動ギア47,49、前記モータ48,50は、前記測距光射出部11と干渉しない位置、例えば前記リングギア45,46の下側に設けられている。
【0052】
前記投光レンズ28、前記第1反射鏡29、前記第2反射鏡32、前記測距光偏向部等は、投光光学系を構成する。又、前記反射測距光偏向部、前記結像レンズ38等は、受光光学系を構成する。
【0053】
前記測距演算部13は、前記発光素子27を制御し、前記測距光33としてレーザ光線をパルス発光又はバースト発光(断続発光)させる。該測距光33が前記測距光偏向部により、測定対象2に向う様前記射出光軸26(即ち、前記測距光軸35)が偏向される。前記測距光軸35が、測定対象2を視準した状態で測距が行われる。
【0054】
前記測定対象2から反射された前記反射測距光34は前記反射測距光偏向部、前記結像レンズ38を介して入射し、前記受光素子39に受光される。該受光素子39は、受光信号を前記測距演算部13に送出し、該測距演算部13は前記受光素子39からの受光信号に基づき、パルス光毎に測定点(測距光が照射された点)の測距を行い、測距データは前記第1記憶部15に格納される。
【0055】
前記射出方向検出部22は、前記モータ48,50に入力する駆動パルスをカウントすることで、前記モータ48,50の回転角を検出する。或は、エンコーダからの信号に基づき、前記モータ48,50の回転角を検出する。又、前記射出方向検出部22は、前記モータ48,50の回転角に基づき、前記光学プリズム41,42の回転位置を演算する。
【0056】
更に、前記射出方向検出部22は、前記光学プリズム41,42の屈折率と、該光学プリズム41,42を一体とした時の回転位置、両光学プリズム41,42間の相対回転角とに基づき、各パルス光毎の前記測距光33の前記基準光軸Oに対する偏角、射出方向をリアルタイムで演算する。演算結果(測角結果)は、測距結果に関連付けられて前記演算制御部14に入力される。尚、前記測距光33がバースト発光される場合は、断続測距光毎に測距が実行される。
【0057】
前記演算制御部14は、前記モータ48,50の回転方向、回転速度、前記モータ48,50間の回転比を制御することで、前記光学プリズム41,42の相対回転、全体回転を制御し、前記光軸偏向部19による偏向作用を制御する。又、前記演算制御部14は、前記測距光33の偏角、射出方向から、前記基準光軸Oに対する測定点の水平角、鉛直角を演算する。更に、前記演算制御部14は、測定点についての水平角、鉛直角を前記測距データに関連付けることで、前記測定点の3次元データを求めることができる。而して、前記測量装置本体4は、トータルステーションとして機能する。
【0058】
次に、前記姿勢検出器20について説明する。該姿勢検出器20は、前記測量装置本体4の水平、又は鉛直に対する傾斜角を検出し、検出結果は前記演算制御部14に入力される。尚、前記姿勢検出器20としては、特許文献1に開示された姿勢検出装置を使用することができる。
【0059】
該姿勢検出器20について簡単に説明する。該姿勢検出器20は、フレーム54を有している。該フレーム54は、前記筐体25に固定され、或は構造部材に固定され、前記測量装置本体4と一体となっている。
【0060】
前記フレーム54にはジンバルを介してセンサブロック55が取付けられている。該センサブロック55は、直交する2軸を中心に2方向にそれぞれ360°又は360°以上回転自在となっている。
【0061】
該センサブロック55には、第1傾斜センサ56、第2傾斜センサ57が取付けられている。前記第1傾斜センサ56は水平を高精度に検出するものであり、例えば水平液面に検出光を入射させ反射光の反射角度の変化で水平を検出する傾斜検出器、或は封入した気泡の位置変化で傾斜を検出する気泡管である。又、前記第2傾斜センサ57は傾斜変化を高応答性で検出するものであり、例えば加速度センサである。
【0062】
前記センサブロック55の、前記フレーム54に対する2軸についての各相対回転角は、エンコーダ58,59によってそれぞれ検出される様になっている。
【0063】
又、前記センサブロック55を回転させ、水平に維持するモータ(図示せず)が前記2軸に関してそれぞれ設けられている。該モータは、前記第1傾斜センサ56、前記第2傾斜センサ57からの検出結果に基づき、前記センサブロック55を水平に維持する様に前記演算制御部14によって制御される。
【0064】
前記センサブロック55が傾斜していた場合(前記測量装置本体4が傾斜していた場合)、前記センサブロック55(水平)に対する前記フレーム54の各軸方向の相対回転角が前記エンコーダ58,59によってそれぞれ検出される。該エンコーダ58,59の検出結果に基づき、前記測量装置本体4の2軸についての傾斜角、2軸の傾斜の合成によって傾斜方向が検出される。
【0065】
前記センサブロック55は、2軸について360°又は360°以上回転自在であるので、前記姿勢検出器20がどの様な姿勢となろうとも、例えば該姿勢検出器20の天地が逆になった場合でも、全方向での姿勢検出(水平に対する傾斜角、傾斜方向)が可能である。
【0066】
姿勢検出に於いて、高応答性を要求する場合は、前記第2傾斜センサ57の検出結果に基づき姿勢検出と姿勢制御が行われるが、該第2傾斜センサ57は前記第1傾斜センサ56に比べ検出精度が悪いのが一般的である。
【0067】
前記姿勢検出器20では、高精度の前記第1傾斜センサ56と高応答性の前記第2傾斜センサ57を具備することで、該第2傾斜センサ57の検出結果に基づき姿勢制御を行い、更に前記第1傾斜センサ56により高精度の姿勢検出を可能とする。
【0068】
該第1傾斜センサ56の検出結果で、前記第2傾斜センサ57の検出結果を較正することができる。即ち、前記第1傾斜センサ56が水平を検出した時の前記エンコーダ58,59の値、即ち実際の傾斜角と前記第2傾斜センサ57が検出した傾斜角との間で偏差を生じれば、該偏差に基づき前記第2傾斜センサ57の傾斜角を較正することができる。
【0069】
従って、予め、該第2傾斜センサ57の検出傾斜角と、前記第1傾斜センサ56による水平検出と前記エンコーダ58,59の検出結果に基づき求めた傾斜角との関係を取得しておけば、前記第2傾斜センサ57に検出された傾斜角の較正(キャリブレーション)をすることができ、該第2傾斜センサ57による高応答性での姿勢検出の精度を向上させることができる。環境変化(温度等)の少ない状態では、傾斜検出は前記第2傾斜センサ57の検出結果と補正値で求めてもよい。
【0070】
前記演算制御部14は、傾斜の変動が大きい時、傾斜の変化が速い時は、前記第2傾斜センサ57からの信号に基づき、前記モータを制御する。又、前記演算制御部14は、傾斜の変動が小さい時、傾斜の変化が緩やかな時、即ち前記第1傾斜センサ56が追従可能な状態では、該第1傾斜センサ56からの信号に基づき、前記モータを制御する。尚、常時、前記第2傾斜センサ57に検出された傾斜角を較正することで、該第2傾斜センサ57からの検出結果に基づき前記姿勢検出器20による姿勢検出を行ってもよい。
【0071】
尚、前記第1記憶部15には、前記第1傾斜センサ56の検出結果と前記第2傾斜センサ57の検出結果との比較結果を示す対比データが格納されている。前記第1傾斜センサ56からの信号に基づき、該第2傾斜センサ57による検出結果を較正する。この較正により、該第2傾斜センサ57による検出結果を前記第1傾斜センサ56の検出精度迄高めることができる。よって、前記姿勢検出器20による姿勢検出に於いて、高精度を維持しつつ高応答性を実現することができる。
【0072】
前記演算制御部14は、前記姿勢検出器20からの検出結果から前記一脚3の前後方向の倒れ角(測定対象2に対して近接離反する方向の倒れ角)及び前記一脚3の左右方向の倒れ角を演算する。前後方向の倒れ角は、前記基準光軸Oの水平に対する傾斜角として現れ、左右方向の倒れ角は、前記測定方向撮像部21で取得する画像の傾き(回転)として現れる。
【0073】
前記演算制御部14は、前記倒れ角と前記光軸偏向部19による偏角により、前記測距光軸35の水平に対する傾斜角を演算する。又、前記画像の傾きに基づき、表示部68(後述)に表示される画像の傾きを修正し、鉛直画像として表示する。
【0074】
前記測定方向撮像部21は、前記測量装置本体4の前記基準光軸Oと平行な前記第1撮像光軸61と、該第1撮像光軸61に配置された撮像レンズ62とを有している。前記測定方向撮像部21は、前記光学プリズム41,42による最大偏角θ/2(例えば±30°)と略等しい、例えば50°~60°の画角を有するカメラである。前記第1撮像光軸61と前記射出光軸26及び前記基準光軸Oとの関係は既知であり、又各光軸間の距離も既知の値となっている。
【0075】
又、前記測定方向撮像部21は、静止画像又は連続画像或は動画像がリアルタイムで取得可能である。前記測定方向撮像部21で取得された画像は、前記操作パネル7に送信される。本実施例では、前記画像は前記操作パネル7の表示部68(図5参照)に静止画像の観察画像81(図3参照)として表示され、作業者は該表示部68に表示された前記観察画像81を観察して測定作業を実行できる。前記観察画像81の中心は、前記第1撮像光軸61と合致し、前記基準光軸Oは前記第1撮像光軸61と既知の関係に基づき前記観察画像81の中心に対して所定の画角ずれた位置となる。
【0076】
前記撮像制御部16は、前記測定方向撮像部21の撮像を制御する。前記撮像制御部16は、前記測定方向撮像部21が前記動画像、又は連続画像を撮像する場合に、該動画像、又は連続画像を構成するフレーム画像を取得するタイミングと前記測量装置本体4でスキャンし測距するタイミングとの同期を取っている。又、前記撮像制御部16は、前記測定方向撮像部21が前記観察画像81を取得する場合に、該観察画像81や視準画像82(後述)を取得するタイミングと、前記測量装置本体4でスキャンするタイミングとを制御する。前記演算制御部14は画像と測定データ(測距データ、測角データ)との関連付けも実行する。又、前記撮像制御部16は、前記第1通信部18、第2通信部67(図5参照)を介して前記測定方向撮像部21と前記下方撮像部5との撮像タイミングの同期制御を行っている。
【0077】
前記測定方向撮像部21の撮像素子63は、画素の集合体であるCCD、或はCMOSセンサであり、各画素は画像素子上での位置が特定できる様になっている。例えば、各画素は、前記第1撮像光軸61を原点とした画素座標を有し、該画素座標によって画像素子上での位置が特定される。又、前記第1撮像光軸61と前記基準光軸Oとの関係(距離)が既知であるので、前記測距部24による測定位置と前記撮像素子63上での位置(画素)との相互関連付けが可能である。前記撮像素子63から出力される画像信号は、前記撮像制御部16を介して前記画像処理部17に入力される。
【0078】
前記光軸偏向部19の偏向作用、スキャン作用について説明する。
【0079】
前記光学プリズム41の三角プリズムと、前記光学プリズム42の三角プリズムが同方向に位置した状態では、最大の偏角(例えば、30°)が得られる。前記光学プリズム41,42のいずれか一方が他方に対して180°回転した位置にある状態では、該光学プリズム41,42の相互の光学作用が相殺され、偏角は0°となる。この状態では、最少の偏角が得られる。従って、前記光学プリズム41,42を経て射出、受光されるレーザ光線の光軸(前記測距光軸35)は、前記基準光軸Oと合致する。
【0080】
前記発光素子27から前記測距光33が発せられ、該測距光33は前記投光レンズ28で平行光束とされ、前記測距光偏向部を透過して測定対象2に向けて射出される。ここで、前記測距光偏向部を透過することで、前記測距光33は中心の前記三角プリズムによって所要の方向に偏向されて射出される。
【0081】
ここで、前記測距光33は全て中心の前記三角プリズムを透過し、中心の該三角プリズムの光学作用を受けるが、単一の光学部材からの光学作用であるので、光束の乱れがなく偏向精度は高い。更に、中心の前記三角プリズムとして光学ガラスが用いられることで、更に偏向精度が高められる。
【0082】
前記測定対象2で反射された前記反射測距光34は、前記反射測距光偏向部を透過して入射され、前記結像レンズ38により前記受光素子39に集光される。
【0083】
前記反射測距光34が前記反射測距光偏向部を透過することで、前記反射測距光34の光軸は、前記受光光軸31と合致する様に中心以外の前記三角プリズムによって偏向される。
【0084】
ここで、前記反射測距光偏向部として用いられる中心以外の前記三角プリズムには、光学プラスチックが用いられてもよく、或は微小な三角プリズムの集合であるフレネルプリズムが用いられてもよい。前記光軸偏向部19と前記受光素子39間の距離が短いので、前記反射測距光偏向部には高精度が要求されない。
【0085】
前記光学プリズム41と前記光学プリズム42との回転位置の組合わせにより、射出する前記測距光33の偏向方向、偏角を任意に変更することができる。
【0086】
又、前記光学プリズム41と前記光学プリズム42との位置関係を固定した状態で(前記光学プリズム41と前記光学プリズム42とで得られる偏角を固定した状態で)、前記モータ48,50により、前記光学プリズム41と前記光学プリズム42とを一体に回転すると、前記測距光偏向部を透過した前記測距光33が描く軌跡は前記基準光軸O(図2参照)を中心とした円となる。
【0087】
従って、前記発光素子27よりレーザ光線を発光させつつ、前記光軸偏向部19を回転させれば、前記測距光33を円の軌跡でスキャンさせることができる。尚、前記反射測距光偏向部は、前記測距光偏向部と一体に回転していることは言う迄もない。
【0088】
図4(A)に示される様に、前記光学プリズム41により偏向された光軸の偏向方向を偏向Aとし、前記光学プリズム42により偏向された光軸の偏向方向を偏向Bとすると、前記光学プリズム41,42による光軸の偏向は、該光学プリズム41,42間の角度差θとして、合成偏向Cとなる。
【0089】
従って、前記光学プリズム41と前記光学プリズム42とを逆向きに等速度で回転させることで、前記測距光33を合成偏向C方向に直線の軌跡51で往復スキャンさせることができる。
【0090】
更に、図4(B)に示される様に、前記光学プリズム41の回転速度に対して遅い回転速度で前記光学プリズム42を回転させれば、角度差θは漸次増大しつつ前記測距光33が回転される。従って、該測距光33のスキャン軌跡はスパイラル状となる。
【0091】
又、前記光学プリズム41、前記光学プリズム42の回転方向、回転速度を個々に制御することで、前記測距光33のスキャン軌跡を前記基準光軸Oを中心とした種々の2次元のスキャンパターンが得られる。
【0092】
例えば、前記光学プリズム41と前記光学プリズム42の、一方の光学プリズム41を17.5Hzで正回転させ、他方の光学プリズム42を5Hzで逆回転させることで、図3に示される様な、花びら状の2次元の閉ループスキャンパターン(花びらパターン74(内トロコイド曲線))が得られる。
【0093】
前記下方撮像部5について説明する。
【0094】
該下方撮像部5は、前記測量装置本体4と電気的に接続されており、前記下方撮像部5で取得された画像データは前記測量装置本体4に入力される。
【0095】
前記下方撮像部5の撮像は、前記撮像制御部16によって前記測定方向撮像部21の撮像、前記測距部24の測距と同期制御される。前記下方撮像部5は、前記測量装置本体4の機械中心に対して既知の位置に設けられており、前記下方撮像部5と前記一脚3下端との距離も既知となっている。
【0096】
更に、前記下方撮像部5の前記第2撮像光軸8は、前記基準光軸Oとの成す角、基準光軸Oと前記第2撮像光軸8との交点の位置が既知の関係にあり、前記下方撮像部5で取得した画像データは、前記演算制御部14によって前記測定方向撮像部21で取得した画像及び前記測距部24で測定した測距データと関連付けられて前記第1記憶部15に格納される。
【0097】
前記操作パネル7について図5を参照して略述する。
【0098】
該操作パネル7は、上記した様に、前記一脚3に対して固定的に設けられてもよく、或は着脱可能であってもよい。又、着脱可能な場合は、前記操作パネル7を前記一脚3から取外し、前記操作パネル7単体の状態で、作業者が保持し、操作可能としてもよい。
【0099】
前記操作パネル7は、主に演算部65、第2記憶部66、前記第2通信部67、前記表示部68、操作部69を具備している。尚、前記表示部68をタッチパネルとし、前記表示部68に前記操作部69を兼用させてもよい。又、前記表示部68をタッチパネルとした場合は、前記操作部69は省略してもよい。
【0100】
前記第2記憶部66としては、半導体メモリ、HDD、メモリカード等が用いられる。該第2記憶部66には、前記測量装置本体4との間で通信を行う為の通信プログラム、前記下方撮像部5で取得した画像、前記測定方向撮像部21で取得した画像の合成等の処理を行う画像処理プログラム、前記下方撮像部5で取得した画像、前記測定方向撮像部21で取得した画像、前記測距部24で測定した測定情報を前記表示部68に表示させる為の表示プログラム、前記操作部69で操作された情報から前記測量装置本体4へのコマンドを作成する為のコマンド作成プログラム等の各種プログラムが格納されている。
【0101】
前記第2通信部67は前記画像処理部17との間で、測定データ、画像データ、コマンド等のデータを前記演算制御部14、前記第1通信部18を経由して、通信する。
【0102】
前記表示部68は、前記測量装置本体4の測定状態、距離、偏角、反射光量等の測定結果等を表示し、又前記下方撮像部5、前記測定方向撮像部21が取得した画像(前記観察画像81)、或は前記画像処理部17で画像処理された画像を表示する。又、前記表示部68は、前記測定方向撮像部21が取得した画像とスキャン軌跡(前記花びらパターン74)とを重ね合わせて表示可能である。更に、前記表示部68は、前記観察画像81上で指定された所望の点(追尾点87(図8(A)、図8(B)参照))を中心として、前記画像処理部17が前記観察画像81から所要範囲を切出して拡大した画像を、視準画像82(図8(A)、図8(B)参照)として表示してもよい。
【0103】
ここで、該視準画像82とは、前記追尾点87を中心とした画像であり、且つ前記光軸偏向部19によって偏向された前記測距光軸35(偏向されていない場合は、該測距光軸35と前記基準光軸Oとは合致する)を中心とする画像である。前記視準画像82は、前記表示部68に所定の倍率(例えば、3倍~10倍)で拡大されて表示される。前記操作部69からは、前記測量装置本体4に測定作業に関する指令等、各種指令を入力できる様になっている。又、前記観察画像81の表示、前記視準画像82の表示は、前記操作部69から切替え可能となっている。
【0104】
又、前記視準画像82は、前記観察画像81中での位置が固定となっている。即ち、該観察画像81の基準光軸Oの位置が変化した場合には、前記視準画像82の中心の位置も同様に変化する。
【0105】
尚、前記操作パネル7として、例えばスマートフォン、タブレットが用いられてもよい。又、前記操作パネル7がデータコレクタとして使用されてもよい。
【0106】
次に、図1図5に於いて、前記測量装置1の測定作用について説明する。尚、以下の測定作用は、前記第1記憶部15に格納されたプログラムを前記演算制御部14が実行することでなされる。
【0107】
測定を開始する準備として、前記一脚3の下端を基準点Rに位置決めし、前記一脚3を作業者が保持する。尚、前記操作パネル7は前記一脚3に取付けられた状態とする。又、前記下方撮像部5、前記測定方向撮像部21は作動状態で前記測量装置1の設置は行われる。
【0108】
前記基準光軸Oを測定対象2に向ける場合、前記一脚3を該一脚3の下端を中心に回転し、或は該一脚3を前後、左右に傾斜し、或はみそすり回転する。図3に示される様に、前記基準光軸Oが画像の中心に対して6°下に位置する前記観察画像81が前記表示部68に表示され、前記観察画像81から前記基準光軸Oの方向、位置を確認することができる。この時の前記一脚3の倒れ角及び倒れ角の変化は、前記姿勢検出器20によって検出される。
【0109】
前記基準光軸Oの方向が確定した状態では、前記基準光軸Oを中心とする測定可能な偏向範囲73を前記観察画像81上で確認できる。作業者は、前記観察画像81中の測定可能範囲の任意の点を測定点(測定対象2)として指定が可能である。前記測定対象2の指定で前記演算制御部14は前記光軸偏向部19を用いて前記測距光軸35を前記測定対象2に向ける。
【0110】
前記測距光軸35が前記測定対象2に向けられ、前記測距光33が照射され、前記測定対象2の測定(測距、測角)が実行される。前記測距光33の方向、測距結果等は、前記表示部68に表示される。又、該表示部68には、前記観察画像81と、該観察画像81中での前記視準画像82の位置を示す枠83等が表示されている。前記視準画像82の詳細を確認したい場合には、該視準画像82を拡大表示させる。
【0111】
測定対象2を変更又は他の箇所の測定対象2への移動を行う場合、前記観察画像81から再度測定点を指定や再度前記視準画像82を作成することも可能である。一方で、前記観察画像81を表示したまま、前記一脚3の傾動、回転により測定点を移動させることも可能である。
【0112】
前記測距光軸35の視準状態、即ち、前記測距光軸35を前記測定対象2に合わせた状態を維持する場合、測定作業者が前記一脚3を保持してもよいし、或は前記補助脚6を引出し、前記一脚3を前記補助脚6で支持してもよい。
【0113】
該補助脚6で前記一脚3を支持することで、前記一脚3の前後方向の倒れ、前記一脚3の下端を中心とする回転が規制され、前記測量装置1の支持状態が安定する。
【0114】
尚、前記測量装置1の水平に対する傾斜は、前記姿勢検出器20によってリアルタイムで検出されるので、前記測量装置1の水平に対する傾斜角、傾斜方向がリアルタイムで検出され、検出結果に基づき測定結果をリアルタイムで補正することができる。従って、前記測量装置1を水平に調整する為の整準作業は必要なく、又前記一脚3を作業者が保持することで生じる微小な揺れ等による傾斜角の変動についても、リアルタイムで補正することができる。
【0115】
次に、図3を参照して前記一脚3の下端を中心とする水平方向の回転角の検出について説明する。
【0116】
図3中、71は前記測定方向撮像部21の第1画像取得範囲であり、81は該第1画像取得範囲71で取得される観察画像を示している。又、72は前記下方撮像部5の第2画像取得範囲であり、80は該第2画像取得範囲72で取得される下方画像を示している。又、73は前記光軸偏向部19による前記観察画像81及び前記下方画像80内での前記測距光軸35の偏向範囲、74は測距光を複数回照射しつつ前記光軸偏向部19により花びらパターンでスキャンした場合の軌跡を示している。前記花びらパターン74の軌跡に示されるドットは複数回の測距光の照射点を示す。又、75は前記観察画像81の画像中心、76は前記下方画像80の画像中心(該画像中心76は、前記第2撮像光軸8と合致する)を示している。
【0117】
又、図1に於いて、θ1は前記測定方向撮像部21の画角、θ2は前記下方撮像部5の画角、θ3は前記測量装置本体4のスキャン範囲をそれぞれ示している。
【0118】
更に、図3は、前記第1撮像光軸61と前記第2撮像光軸8間の角度が例えば60°に設定され、前記基準光軸Oが前記第1撮像光軸61に対して例えば6°下方に傾斜している、つまり、θ4は54°となる。又前記一脚3が後方(前記測定対象2から離反する方向)に5°傾いて保持された状態を示している。
【0119】
前記第2撮像光軸8は、下方に向けられ、前記一脚3の下端を含む様に、画像取得範囲が設定されている。図示では、前記下方撮像部5が取得する画像には、前記基準点Rを含む略80°の範囲の画像の例である。
【0120】
この前記基準点Rを中心とした所定半径の範囲を回転検出画像77として設定し、リアルタイムで取得する。
【0121】
測定開始時の前記回転検出画像77を取得し、該回転検出画像77を回転基準画像として設定する。
【0122】
測定開始以降の回転角を検出する場合は、前記回転基準画像に対する前記回転検出画像77の前記基準点Rを中心とした両画像間の回転変化(即ち、回転方向の画像のズレ)を検出し、回転変化に基づき前記回転角を演算する。前記回転角は前記姿勢検出器20の検出結果に基づき鉛直軸心を中心とした水平回転角に変換される。尚、前記水平角の検出は、前記回転検出画像77を前記姿勢検出器20の検出結果に基づき射影変換を施して、水平画像に変換してから水平回転変化を検出して水平回転角を求めてもよい。
【0123】
或は、測定開始時の前記観察画像81を取得し、該観察画像81と回転後の観察画像81とを特徴点等に基づき画像マッチングする。この時の両画像間の基準光軸Oの位置(前記観察画像81の中心)の偏差と、特徴点等についての測距結果と、前記姿勢検出器20の検出結果に基づき水平角を求めてもよい。
【0124】
次に、図1に示される様に、前記測量装置本体4により前記測定対象2を測定すると、該測定対象2迄の斜距離が測定される。更に前記第1撮像光軸61に対する前記基準光軸Oの偏角(図3では6°)と前記基準光軸Oに対する前記測距光軸35の偏角が前記射出方向検出部22によって検出される。又、前記測量装置本体4の水平に対する傾斜角が前記姿勢検出器20によって検出され、前記測距光軸35の水平に対する傾斜角が演算され、前記一脚3の水平回転変化が前記回転検出画像77或は前記観察画像81から検出される。
【0125】
前記測距光軸35の水平に対する傾斜角に基づき、前記斜距離が水平距離に補正され、該水平距離に基づき方向角が演算される。又、前記一脚3の長さ(該一脚3の下端から前記測量装置本体4の機械中心迄の距離)と前記第1撮像光軸61に対する前記一脚3の倒れが既知であることから、前記一脚3の下端(即ち、前記基準点R)を基準とした前記測定対象2の3次元座標が求められる。
【0126】
尚、前記水平角の演算、前記測距光軸35の傾斜角の演算、水平距離の演算等の演算については、前記演算制御部14が実行してもよく、或は前記演算部65が実行してもよい。
【0127】
上記説明では、前記測距光軸35を測定点に固定した状態で、トータルステーションと同様な作用で測定したが、前記測量装置1をレーザスキャナとしても測定することができる。
【0128】
図3に示される様に、前記光軸偏向部19は前記偏向範囲73の範囲で、前記測距光軸35を自在に偏向できる。前記光学プリズム41と前記光学プリズム42の回転を制御することで、前記花びらパターン74の軌跡でスキャンさせることができる。スキャン過程でパルス測距光を照射することで、前記花びらパターン74の軌跡に沿った測距データ(点群データ)を取得することができる。又、測距データ密度(点群データ密度)を上げる場合は、前記花びらパターン74が1パターンスキャンされる度に前記花びらパターン74をスキャンパターンの中心を中心として周方向に所定角度回転させればよい。又、スキャンと同期して、前記測定方向撮像部21、前記下方撮像部5によりそれぞれ画像が取得される。ここで、偏向範囲73(即ち、光軸偏向部19の最大偏向範囲(全偏向範囲))をスキャンする場合を全域スキャンと称す。
【0129】
又、全偏向範囲のスキャンを実行している状態で、スキャン中心を移動する場合(スキャン範囲を移動する場合)は、前記一脚3を軸心を中心に回転させるか、或は下端を中心にみそすり回転させるか、或は前記一脚3の倒れ角を変更することでできる。これにより、所望の方向の、所望の範囲の測距データ(点群データ或はスキャンデータ)を容易に取得することができる。
【0130】
前記観察画像81と、前記下方画像80とを合成する場合は、両画像のオーバラップ部分を用いて行うことができる。或は、前記花びらパターン74の軌跡の一部が前記下方画像80に含まれる様にスキャンを実行し、前記観察画像81中の前記花びらパターン74の軌跡に沿った測距データ、前記下方画像80中の前記花びらパターン74の軌跡に沿った測距データを用いて直ちに前記観察画像81と前記下方画像80との合成が可能である。
【0131】
尚、合成に用いられる軌跡に沿ったデータは、前記観察画像81、前記下方画像80に共通に含まれる軌跡に沿ったデータを用いてもよい。或は、前記観察画像81、前記下方画像80に個別に含まれる軌跡に沿ったデータの座標値を用いて前記観察画像81と前記下方画像80とを合成してもよい。
【0132】
前記観察画像81と前記下方画像80を合成することで、前記基準点Rから前記測定対象2迄を含む広範囲の合成画像が取得でき、測定範囲、測定位置の確認が容易となり、作業性が向上する。又、前記観察画像81、或は前記合成画像と2次元スキャンで得られた軌跡に沿ったデータとを関連付けることで、画素毎に3次元データを有する画像が取得できる。
【0133】
前記光学プリズム41、前記光学プリズム42の回転を制御することで、前記測距光33を種々のパターンでスキャンさせることができる。一方で、前記偏向範囲73の一部の範囲に限って前記測距光33をスキャンさせることも可能である。ここで、前記偏向範囲73の一部の範囲をスキャンすることを局所スキャンと称す。
【0134】
局所スキャンは、例えば前記視準画像82の範囲で実行され、前記視準画像82の範囲で点群データが取得される。
【0135】
局所スキャンを実行するパターンとしての例を、図6(A)、図6(B)に示す。その他、円、8の字パターン等がある。
【0136】
図6(A)に示すスキャンパターン85は、図4(A)で示される直線スキャンを1スキャン毎に前記光学プリズム41,42を一体に所定角度ステップP1だけ回転させることで得られる。尚、図6(A)中、S1はスキャン方向を示す。
【0137】
図6(B)に示すスキャンパターン86は、前記光学プリズム41,42により前記測距光軸35の偏角を設定した後、前記光学プリズム41,42を一体に所定角度回転させ、周方向に円弧スキャンさせ、1円弧スキャン毎に偏角を半径方向に所定送りステップP2で変更させることで得られる。尚、図6(B)中、S2はスキャン方向を示す。
【0138】
又、局所スキャンを実行する際、前記基準光軸Oを中心とする範囲では、前記光軸偏向部19の構造上、効果的な局所スキャンは得られない。従って、局所スキャンを実行する場合は、前記基準光軸Oから所要角度離れた位置に設定される。
【0139】
例えば、局所スキャンの中心が前記基準光軸Oから5°以内とならない様に、局所スキャンがプログラミングされる。局所スキャンが前記視準画像82の範囲で実行される場合は、該視準画像82の中心は、前記基準光軸Oから5°以上離れた位置が前記視準画像82の初期設定位置となる様設定される。
【0140】
モノポール支持方式では、安定性に限度があり、前記一脚3は測定中変動している。この為、前記測距光軸35も測定中常に変動している。本実施例では、前記観察画像81中の所望の点、例えば建造物の角等を前記追尾点87として設定している。
【0141】
本実施例では、前記観察画像81中から前記追尾点87を指定し、該追尾点87を中心とした前記視準画像82を切出す。更に、前記追尾点87が前記視準画像82の中心に位置する様追尾しつつ、前記視準画像82内の所定範囲をスキャンすることで、安定した測定を可能とする。以下、図7のフローチャート及び図8図9を参照し、前記追尾点87の追尾について説明する。
【0142】
STEP:01 先ず、前記測量装置本体4が前記測定対象2へと向けられると、前記演算制御部14は前記測定方向撮像部21に前記測定対象2の測定部位2aを含む前記観察画像81を取得させる。該観察画像81の中心と前記測量装置本体4の前記基準光軸Oとは、既知の角度(図3では6°)ずれている。
【0143】
STEP:02 作業者は、取得された前記観察画像81の中から、所定の前記追尾点87を指定する。該追尾点87は、図8(A)に示される様に、例えば構造物の角等、前記測定部位2aの特徴を有する点が指定される。前記観察画像81中で指定された点は、画像中心に対する位置(座標)を求めることができる。又、前記第1撮像光軸61と前記基準光軸Oとの既知の傾斜角から、前記追尾点87の前記基準光軸Oに対する偏角が演算される。
【0144】
STEP:03 前記追尾点87が指定されると、前記演算制御部14は、前記追尾点87を中心として所定範囲を有する前記視準画像82を前記観察画像81から切出す。この時の前記視準画像82を基準視準画像82aとして設定する(図8(B)参照)。又、この時の前記基準光軸Oに対する偏角を有し、前記追尾点87を視準する光軸を視準光軸とする。
【0145】
次に、前記演算制御部14は前記光軸偏向部19を制御し、前記追尾点87(視準光軸)を中心として、微小スキャンパターン88による局所スキャンを実行する。該微小スキャンパターン88は、例えば前記測距光33を微小な円状にスキャンする微小円スキャンのスキャンパターンである。
【0146】
前記微小スキャンパターン88の実行により、前記追尾点87(視準光軸)を中心とするスキャン軌跡に沿った測距データが得られる。尚、前記微小スキャンパターン88のパターン形状としては、上記した微小円スキャンの他に、花びらパターン、直線パターン等、所定のスキャンパターンが適用可能である。
【0147】
前記基準視準画像82aが設定され、該基準視準画像82aでの前記微小スキャンパターン88が実行されると、前記演算制御部14は、前記基準視準画像82aを基準とした前記追尾点87の追尾を開始する。
【0148】
STEP:04 追尾が開始されると、前記演算制御部14は、前記撮像制御部16を制御し、新たな前記視準画像82を取得させる。
【0149】
前記一脚3に支持された前記測量装置本体4は、前記補助脚6を使用したとしても完全に安定しているとは言えず、前記視準画像82(即ち視準光軸)は不安定に変動している。従って、前記基準視準画像82aと前記視準画像82との間ではズレを生じている場合がある。
【0150】
STEP:05 前記演算制御部14は、例えば相関処理により前記基準視準画像82aと前記視準画像82との画像マッチングを実行する。画像マッチングにより、前記基準視準画像82aに対する前記視準画像82のズレ量が演算される。
【0151】
ズレ量は、前記視準画像82の中心に対する前記基準視準画像82a取得時に実行された前記微小スキャンパターン88の中心(前記追尾点87)のズレ量であり、ズレ量、ズレ方向は画像の移動量として求められる。更に、1画素を4画素に拡大して扱い相関処理することで、サブピクセルの精度で移動量(変位量)を求めることができる。
【0152】
尚、前記視準画像82の取得時に前記測量装置本体4の位置が変化していなかった場合には、両画像間で位置ズレを生じず、前記視準画像82上で視準光軸(前記微小スキャンパターン88の中心)と前記追尾点87とが合致した状態となる。一方で、前記測量装置本体4が傾斜、回転していた場合には、両画像間で位置ズレを生じ、前記視準画像82上で前記追尾点87と視準光軸とが合致しない。
【0153】
図9(A)~図9(D)は、前記基準視準画像82aと前記視準画像82との間に位置ズレが生じていた状態で、微小スキャンパターン88を実行した場合の、両画像間のスキャン軌跡の位置を示している。尚、図9(A)~図9(D)中、破線は前記基準視準画像82aでのスキャン軌跡を示し、実線は前記視準画像82でのスキャン軌跡を示している。
【0154】
図9(A)は、視準光軸が前記追尾点87よりも右側に向けられた状態を示している。又、図9(B)は、視準光軸が前記追尾点87よりも左側に向けられた状態を示している。又、図9(C)は、視準光軸が前記追尾点87よりも下側に向けられた状態を示している。又、図9(D)は、視準光軸が前記追尾点87よりも上側に向けられた状態を示している。
【0155】
尚、前記基準視準画像82aと前記視準画像82に含まれる前記追尾点87は同一位置(同一座標)であり、画像の傾きについては前記姿勢検出器20からの検出結果により鉛直画像(或は水平画像)に修正することができる。従って、各視準画像82間の前記追尾点87の位置を多数比較することで、画像間の移動量を画像の画素以下(サブピクセル)で検出することができ、移動量を高精度に求めることができる。又、検出結果に基づき、画像を重ね合わせ平均(積算処理)することで、高精細化を行うことができる。実際には、1画素を4分割で表して重ね平均する。これにより、前記発光素子27の総画素数の4倍の画素数と同等の精度で精細画像を作成することができる。
【0156】
STEP:06 前記演算制御部14は、STEP:05で演算した移動量、移動方向に基づき、視準光軸が前記追尾点87に合致する様、前記光軸偏向部19を制御する。即ち、前記演算制御部14は、前記追尾点87が常に前記視準画像82の中心に位置する様に、前記光軸偏向部19を制御する。
【0157】
STEP:07 前記演算制御部14は、視準光軸を前記追尾点87に合致させた後、再度前記微小スキャンパターン88を実行する。
【0158】
STEP:08 前記演算制御部14は、前記微小スキャンパターン88の軌跡に沿った点群データが充分に取得される迄、STEP:04~STEP:07の処理を繰返す。又、前記演算制御部14は、前記視準画像82内の局所スキャンが完了すると、前記測量装置本体4に前記追尾点87の追尾を終了させる。
【0159】
上記作用をリアルタイムで実行することで、前記測量装置本体4が揺れ、回転した場合であっても、常に視準光軸を前記追尾点87に合致させる(即ち、追尾させる)ことができる。
【0160】
STEP:09 追尾が終了すると、前記演算制御部14は、繰返し実行された局所スキャンにより得られたスキャン結果(測定結果)と、多数の前記視準画像82を積算処理して得られた精細画像を前記表示部68に表示する。
【0161】
次に、図10を参照して、前記測定部位2aの角部91の3次元座標を取得する為の演算方法について説明する。
【0162】
前記演算制御部14は、前記視準画像82から画像処理(例えば、エッジ検出)によりエッジ検出(稜線検出)を行い、抽出したエッジ(稜線)92a~92cの傾斜を演算する。又、前記演算制御部14は、前記稜線92a~92cと前記微小スキャンパターン88(スキャン軌跡)との交点を求め、該微小スキャンパターン88の軌跡に沿って得られた測定結果から交点の3次元座標を演算する。尚、前記微小スキャンパターン88の測定結果は、繰返し実行されて得られた測定結果を平均した値を用いるのが望ましい。
【0163】
又、前記演算制御部14は、前記稜線92a~92cの傾斜と交点の3次元座標に基づき、前記稜線92a~92cの式をそれぞれ演算する。
【0164】
更に、前記演算制御部14は、前記稜線92aと前記稜線92bと前記稜線92cとの交点を演算することで、前記角部91の3次元座標を求めることができる。
【0165】
上述の様に、本実施例では、前記観察画像81中から前記追尾点87を設定し、該追尾点87を中心とする前記視準画像82を切出し、該追尾点87が常に前記視準画像82の中心に位置する様局所スキャンにより前記追尾点87を追尾している。
【0166】
従って、局所スキャン中、前記測量装置本体4の傾きや回転により、該測量装置本体4の視準方向が変化した場合であっても、安定して前記追尾点87を中心とした測定を行うことができ、測定精度の向上を図ることができる。
【0167】
又、本実施例では、前記基準視準画像82aに対する前記視準画像82の移動量に基づき、前記追尾点87の追尾を行っている。追尾を行なう際には、1画素を4分割して画像間の移動量を画素以下(サブピクセル)で検出することができるので、追尾を高精度に行うことができる。
【0168】
又、1画素を4分割することで、前記撮像素子63の総画素数の4倍の画素数と同等の精度で精細画像を作成することができるので、安価に高精度な精細画像を取得することができる。
【0169】
又、本実施例では、前記一脚3の下端を含む前記下方画像80を取得し、該下方画像80に基づき前記回転検出画像77を取得し、回転前後の該回転検出画像77間の回転変化に基づき、前記測量装置本体4の回転角を求めている。
【0170】
従って、エンコーダ等の回転角検出器を別途設けることなく前記測量装置本体4の回転角を検出できるので、該測量装置本体4の装置構成を簡略化できると共に、製作コストの低減を図ることができる。
【0171】
更に、本実施例では、前記測距部24による測距結果と、前記射出方向検出部22の検出結果と、前記姿勢検出器20の検出結果に基づき、前記測量装置本体4の設置位置を基準とした前記測定対象2の3次元座標を求めることができる。従って、前記測量装置本体4を垂直に設置する必要がなく、設置時間を短縮でき、熟練も要さないので、容易に短時間で前記測量装置1を設置できる。又、頻繁に前記測量装置本体4の向きや位置を変更する場合も、容易に短時間で測定を実行することができる。
【0172】
尚、本実施例では、設定した前記追尾点87を中心として前記視準画像82を切出し、前記追尾点87を追尾しつつ前記視準画像82内を局所スキャンする場合について説明している。一方で、前記観察画像81中に前記追尾点87を設定し、前記観察画像81内を全域スキャンしつつ前記追尾点87が前記基準光軸Oと合致する様前記追尾点87を追尾してもよい。
【0173】
又、本実施例では、前記微小スキャンパターン88を微小円スキャンにより形成しているが、該微小スキャンパターン88は円形状に限られるものではない。例えば、該微小スキャンパターン88を8の字スキャンにて形成してもよいし、ラスタスキャンやその他のスキャンパターンにより形成してもよい。
【0174】
更に、本実施例では、前記追尾点87が常に前記視準画像82の中心に位置する様、前記追尾点87を追尾しているが、前記基準視準画像82a取得時に実行される前記微小スキャンパターン88を基準微小スキャンパターン89とし、前記追尾点87が前記基準微小スキャンパターン89内に位置する様、前記追尾点87を追尾してもよい。
【符号の説明】
【0175】
1 測量装置
3 一脚
4 測量装置本体
5 下方撮像部
11 測距光射出部
12 受光部
13 測距演算部
14 演算制御部
16 撮像制御部
19 光軸偏向部
20 姿勢検出器
21 測定方向撮像部
22 射出方向検出部
24 測距部
33 測距光
35 測距光軸
77 回転検出画像
87 追尾点
88 微小スキャンパターン
91 角部
92a,92b,92c 稜線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10