(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】ラッシュアジャスタ
(51)【国際特許分類】
F01L 1/245 20060101AFI20220708BHJP
【FI】
F01L1/245 E
(21)【出願番号】P 2018196465
(22)【出願日】2018-10-18
【審査請求日】2021-04-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000185488
【氏名又は名称】株式会社オティックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 恭介
(72)【発明者】
【氏名】柵木 清史
【審査官】二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-155196(JP,A)
【文献】特開昭58-178813(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0229980(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 1/00- 1/32
F01L 1/36- 1/46
F16K 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁と、前記底壁の周縁から立ち上がる筒状の周壁と、前記底壁を厚み方向に貫通する弁孔とを有するプランジャと、
前記弁孔の開閉に利用される球状の弁体と、
前記弁体が前記弁孔を塞ぐように前記弁体を付勢する圧縮コイルばねと、
前記圧縮コイルばねが起立し、かつ前記圧縮コイルばねの一端に前記弁体を載せた状態で、前記圧縮コイルばね及び前記弁体を収容する容器状をなし、前記プランジャの前記底壁に対して、外側から取り付けられるリテーナとを備えるラッシュアジャスタであって、
前記リテーナは、前記圧縮コイルばねが起立するように、前記圧縮コイルばねの他端が嵌め込まれる形で保持される保持部を有
し、
前記リテーナは、上端側が前記プランジャ側に配され、かつ前記圧縮コイルばね及び前記弁体を囲む本体周壁部と、前記本体周壁部の下端側に取り付けられ、前記保持部を含む底部とを有するラッシュアジャスタ。
【請求項2】
前記底部は、前記圧縮コイルばねの前記他端が載せられる載置部と、前記圧縮コイルばねの前記他端を囲むように前記載置部の周縁に立設され、前記本体周壁部の下端側の開口縁部の内側に外側から挿入され、かつ前記開口縁部に係止される底周壁部とを有し、
前記保持部は、前記底周壁部の内周面側のうち、前記圧縮コイルばねの外径よりも小さい内径を有する部分からなる締め付け部と、前記載置部とによって構成される請求項1に記載のラッシュアジャスタ。
【請求項3】
前記載置部は、厚み方向に貫通する孔からなり、前記底部が前記本体周壁部に取り付ける際に、前記弁体を前記弁孔側へ押し上げるための棒状の冶具を挿入するための挿入孔を含む請求項2に記載のラッシュアジャスタ。
【請求項4】
前記プランジャは、前記周壁とは逆向きに前記底壁の周縁から延びつつ前記底壁を取り囲むフランジ部を有し、
前記リテーナは、前記本体周壁部の上端から外側に広がるように延設され、前記フランジ部の内側に嵌め込まれることで、前記プランジャの前記底壁の外面側に取り付けられる取付片を有する請求項1~請求項3の何れか一項に記載のラッシュアジャスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の動弁装置に適用される油圧式のラッシュアジャスタに関する。
【背景技術】
【0002】
油圧式のラッシュアジャスタは、内燃機関の動弁装置におけるクリアランス(バルブクリアランス)を自動調整するために用いられている。この種のラッシュアジャスタは、例えば、特許文献1に示されるように、有底円筒状をなしたボディと、このボディ内に昇降可能な状態で収容されるプランジャとを備えている。
【0003】
プランジャは、ボディの底壁よりも一回り小さい円板状の底壁と、その底壁の周縁から立ち上がり、上端部が略半球状に絞られた周壁とを備えている。このようなプランジャの底壁の径方向中央には、円形の弁孔が厚み方向に貫通する形で設けられている。また、ボディ内の下部には、プランジャの底壁との間に、高圧室が設けられている。そのような高圧室には、球状の弁体(チェックボール)と、弁孔を塞ぐように弁体を付勢する圧縮コイルばね(チェックスプリング)と、弁体及び圧縮コイルばねを収容した状態でプランジャの下端側に取り付けられる容器(ケージ)状のリテーナが備えられている。なお、リテーナ内において、圧縮コイルばねは、上端に弁体を載せた状態で起立している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ラッシュアジャスタの組み立て時において、圧縮コイルばねが倒れた状態で、リテーナがプランジャの下端側に誤って取り付けられることがあった。
【0006】
リテーナをプランジャの下端側に取り付ける前に、弁体及び圧縮コイルばねは、上端に弁体を載せつつ圧縮コイルばねを起立させた状態で、予めリテーナ内に収容されている。そのような状態のリテーナを取り付ける際に、リテーナ等が他の構成部品等と接触して衝撃を受けると、弁体が飛び跳ね、更には圧縮コイルばねが横向きに倒れてしまうことがあった。ラッシュアジャスタを構成する各部品は非常に小さいため、組み立て作業時に圧縮コイルばねの倒れに気付き難い。また、取り付け時以外においても、例えば、弁体及び圧縮コイルばねを収容した状態のリテーナを搬送する際に、振動を受けて、圧縮コイルばねがリテーナ内で倒れてしまうことがあった。
【0007】
上記のように、圧縮コイルばねが倒れる等して、弁体及び圧縮コイルばねがプランジャに対して正しく取り付けられないと、ラッシュアジャスタが正常に機能せず、場合によっては、動弁装置(内燃機関)が破損する虞があった。
【0008】
本発明の目的は、ラッシュアジャスタにおいて、球状の弁体を付勢する圧縮コイルばねがリテーナ内で倒れることを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るラッシュアジャスタは、底壁と、前記底壁の周縁から立ち上がる筒状の周壁と、前記底壁を厚み方向に貫通する弁孔とを有するプランジャと、前記弁孔の開閉に利用される球状の弁体と、前記弁体が前記弁孔を塞ぐように前記弁体を付勢する圧縮コイルばねと、前記圧縮コイルばねが起立し、かつ前記圧縮コイルばねの一端に前記弁体を載せた状態で、前記圧縮コイルばね及び前記弁体を収容する容器状をなし、前記プランジャの前記底壁に対して、外側から取り付けられるリテーナとを備えるラッシュアジャスタであって、前記リテーナは、前記圧縮コイルばねが起立するように、前記圧縮コイルばねの他端が嵌め込まれる形で保持される保持部を有する。
【0010】
前記ラッシュアジャスタにおいて、前記リテーナは、上端側が前記プランジャ側に配され、かつ前記圧縮コイルばね及び前記弁体を囲む本体周壁部と、前記本体周壁部の下端側に取り付けられ、前記保持部を含む底部とを有することが好ましい。
【0011】
前記ラッシュアジャスタにおいて、前記底部は、前記圧縮コイルばねの前記他端が載せられる載置部と、前記圧縮コイルばねの前記他端を囲むように前記載置部の周縁に立設され、前記本体周壁部の下端側の開口縁部の内側に外側から挿入され、かつ前記開口縁部に係止される底周壁部とを有し、前記保持部は、前記底周壁部の内周面側のうち、前記圧縮コイルばねの外径よりも小さい内径を有する部分からなる締め付け部と、前記載置部とによって構成されることが好ましい。
【0012】
前記ラッシュアジャスタにおいて、前記載置部は、厚み方向に貫通する孔からなり、前記底部が前記本体周壁部に取り付ける際に、前記弁体を前記弁孔側へ押し上げるための棒状の冶具を挿入するための挿入孔を含むことが好ましい。
【0013】
前記ラッシュアジャスタにおいて、前記プランジャは、前記周壁とは逆向きに前記底壁の周縁から延びつつ前記底壁を取り囲むフランジ部を有し、前記リテーナは、前記本体周壁部の上端から外側に広がるように延設され、前記フランジ部の内側に嵌め込まれることで、前記プランジャの前記底壁の外面側に取り付けられる取付片を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ラッシュアジャスタにおいて、球状の弁体を付勢する圧縮コイルばねがリテーナ内で倒れることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図4】本体部と底部に分解された状態のリテーナの断面図
【
図5】プランジャの下方に、弁体を収容したリテーナの本体部を配置した状態を示す説明図
【
図6】プランジャの下端に、弁体を収容したリテーナの本体部が組み付けられた状態を示す説明図
【
図7】プランジャに組み付けられたリテーナの本体部の下方に、第1スプリングを起立した状態で保持した底部を配置した状態を示す説明図
【
図8】プランジャの下端に、弁体及び第1スプリングを収容したリテーナが組み付けられた状態を示す説明図
【
図9】プランジャの下端に、弁体を収容したリテーナの本体部を組み付ける際に、利用される第1冶具を示す説明図
【
図10】他の実施形態におけるリテーナの底部と、それを本体周壁部に取り付ける際に利用される第2冶具とを示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を、
図1~
図8を参照しつつ説明する。本実施形態では、内燃機関の動弁装置に適用される油圧式のラッシュアジャスタについて説明する。
図1は、内燃機関1の動弁装置10の断面図である。先ず、動弁装置10について説明する。
【0017】
図1に示されるように、内燃機関1が備えるシリンダヘッド2には、吸気ポート3を開閉する吸気バルブ4と、排気ポート(不図示)を開閉する排気バルブ(不図示)とが設けられている。本実施形態では、吸気バルブ4を開閉する吸気側の動弁装置10について説明する。なお、排気バルブを開閉する排気側の動弁装置の基本的な構成は、吸気側と同様であり、説明を省略する。
【0018】
動弁装置10は、主として、吸気バルブ4、バルブスプリング5、ロッカアーム6、カムシャフト71に設けられたカム7及びラッシュアジャスタ20を備えている。吸気バルブ4は、円板状の弁部材4aと、この弁部材4aから延びる棒状のバルブステム4bと、略円板状のバネ押さえ部4cとを備えている。上述した吸気ポート3は、シリンダヘッド2に設けられている吸気通路8の端部に配されており、このような吸気ポート3の開閉に弁部材4aが利用される。バルブステム4bは、吸気通路8の外壁を貫通する形で配されている。バルブステム4bの一端は、弁部材4aに固定されており、また、他端はシリンダヘッド2の外側に突出している。
【0019】
突出した前記他端側には、バネ押さえ部4cが取り付けられている。バネ押さえ部4cとシリンダヘッド2との間には、バルブスプリング5が圧縮状態で取り付けられている。また、バルブステム4bの前記他端は、ロッカアーム6の一端に当接されている。シリンダヘッド2には、上方に開口する形で穿設された凹状の取付室9が設けられている。ラッシュアジャスタ20はこの取付室9に挿入される形で取り付けられる。ラッシュアジャスタ20は、全体的には概ね円柱のような外観形状を備えており、その軸線方向が上下方向に沿いつつ、上端部が突出する形で取付室9に取り付けられる。なお、取付室9は、シリンダヘッド2に設けられているオイル供給路11と繋がっている。
【0020】
取付室9から突出するラッシュアジャスタ20の上端部は、ロッカアーム6の他端と当接して前記他端を支える部分となっている。動弁装置10において、カムシャフト71に設けられたカム7が回転して、ロッカアーム6がローラ61を介して上方から押圧されると、ロッカアーム6がラッシュアジャスタ20の上端部を支点として揺動し、それに連動して、バルブステム4bが往復移動することにより、吸気バルブ4の開閉動作が行われる。
【0021】
以下、ラッシュアジャスタ20について説明する。
図2は、実施形態1のラッシュアジャスタ20の断面図である。ラッシュアジャスタ20は、有底円筒状のボディ21と、ボディ21内に上下方向に往復移動(昇降移動)可能な状態で収容される有底円筒状のプランジャ22とを備えている。ボディ21は、円板状の底壁21aと、底壁21aの周縁から立ち上がる周壁21bとを備えている。周壁21bの外周面には、ボディ周回溝21cが全周に亘って環状に設けられている。また、周壁21bには、ボディ周回溝21cの溝奥面から周壁21bの内周面にかけて径方向(周壁21bの厚み方向)に貫通する形で、ボディ油孔21dが設けられている。そして、周壁21bの上端には、プランジャ22の上方への抜け出しを防止する環状のかしめ部材23が取り付けられている。なお、ラッシュアジャスタ20を構成するボディ21、プランジャ22等は、従来と同様、金属又は合金からなる金属系材料を利用して製造される。
【0022】
プランジャ22は、ボディ21の底壁21aよりも一回り小さい円板状の底壁22aと、底壁22aの周縁から立ち上がりつつ、上端部22b1が略半球状に絞られた形をなした周壁22bとを備えている。周壁22bの上端部22b1は、ロッカアーム6の端部を支える部分である。なお、周壁22bの上端部22b1には、上下方向に貫通する形で設けられた頂孔22b2が設けられている。プランジャ22内には、底壁22aと周壁22bとで区画された低圧室24が設けられている。周壁22bの外周面には、プランジャ周回溝22cが全周に亘って環状に設けられている。また、周壁22bには、プランジャ周回溝22cの溝奥面から周壁22bの内周面にかけて径方向(周壁22bの厚み方向)に貫通する形で、プランジャ油孔22dが設けられている。
【0023】
シリンダヘッド2のオイル供給路11より供給されたオイルは、ボディ周回溝21c、ボディ油孔21d、プランジャ周回溝22c及びプランジャ油孔22dを経て低圧室24に貯留される。
【0024】
プランジャ22の底壁22aの径方向中央には、円形の弁孔25が、上下方向(底壁22aの厚み方向)に貫通する形で設けられている。ボディ21内の下部には、プランジャ22の底壁22aとの間に、高圧室26が設けられている。高圧室26には、上下方向に移動して弁孔25の開閉に利用される球状の弁体(チェックボール)27と、弁体27を収容する容器(ケージ)状のリテーナ28と、リテーナ28内に収容されて弁体27を弁孔25に向けて(つまり、弁体27が弁孔25を塞ぐように)付勢する圧縮コイルばねからなる第1スプリング29と、リテーナ28の外周縁部とボディ21の底壁21aとの間に介在されてプランジャ22を上方に付勢する圧縮コイルばねからなる第2スプリング30とが設けられている。なお、後述するように、本実施形態のリテーナ28は、2部品からなり、一端に弁体27を載せた状態で第1スプリング29を確実に起立させる構成となっている。弁体27は、第1スプリング29により付勢されて弁孔25を閉じ、油圧変動に応じて第1スプリング29の付勢力に抗して下降することで弁孔25を開くように往復移動する。弁孔25が開くと、低圧室24のオイルが弁孔25を通して高圧室26に流れる。
【0025】
ここで、
図3及び
図4を参照しつつ、リテーナ28について説明する。
図3は、リテーナ28の断面図である。リテーナ28は、
図3に示されるように、全体的には、上方に開口した容器状をなしている。このリテーナ28は、2部品からなり、具体的には、プランジャ22の底壁22aに対して、外側から取り付けられる概ね筒状の本体部40と、この本体部40の下端に取り付けられる底部50とを備えている。
図4は、本体部40と底部50に分解された状態のリテーナ28の断面図である。リテーナ28を構成する本体部40及び底部50は、金属系材料(例えば、SUS材、SK材等)からなる。
【0026】
本体部40は、筒状の本体周壁部41と、本体周壁部41の上端から外側に広がるように延設された取付片42とを備えている。本体周壁部41の上端側は、プランジャ22側に配される部分である。本体部40の上端側には、複数個(本実施形態の場合、4個)の切り欠き部43が、等間隔で環状に並ぶ形で配置されている。そのため、取付片42及びそれに接続する本体周壁部41の上端側は、複数個の部分に分かれており、それらが等間隔で環状に並んだ形となっている。本体周壁部41の下端側には、底部50の取り付けに利用される開口縁部44が設けられている。本体周壁部41の下端側は、徐々に縮径するように、外側から内側に向かって絞られたような形をなしている。
【0027】
底部50は、全体的には、上方に開口した容器状をなしており、本体部40(本体周壁部41)の下端側にある開口縁部44の内側に嵌め込まれる形で取り付けられる。底部50は、起立した状態の第1スプリング29の下端が載せられる載置部51と、第1スプリング29の前記下端を囲むように載置部51の周縁に立設された底周壁部52とを有する。
【0028】
底部50の内側には、載置部51及び底周壁部52の内面側で形成され、第1スプリング29を起立した状態で保持する凹状の保持部53が配されている。保持部53は、底周壁部52の内周面において、第1スプリング29の外径よりも小さい内径の部分からなる環状の締め付け部53aを有する。底部50の載置部51の周縁に立設された底周壁部52は、下側から上側に向かうにつれて、徐々に縮径し、かつ途中で反対に、徐々に拡径するような形となっている。
図3,4等に示されるように、底周壁部52は、平仮名の「く」の字のように途中で折れ曲がった形をなしている。そのような底周壁部52の内周面側において、最も内側に突き出した部分が、締め付け部53aとなっている。
【0029】
次いで、
図5~
図8を参照しつつ、ラッシュアジャスタ20の組み立て工程の一部である、プランジャ22に対する弁体27、第1スプリング29及びリテーナ28の組み付け工程を説明する。
【0030】
図5は、プランジャ22の下方に、弁体27を収容したリテーナ28の本体部40を配置した状態を示す説明図である。
図5に示されるように、弁体27を収容したリテーナ28の本体部40は、開口縁部44が下側に、かつ取付片42が上側になるように、作業台X上に載せられている。弁体27は、上側の開口部から、筒状の本体部40内に入れられる。下端側の開口縁部44の直径(開口径)は、弁体27の直径よりも小さいため、弁体27が、開口縁部44を通過して本体部40内から落下することが防止されている。なお、開口縁部44の直径(開口径)は、第1スプリング29の直径よりは大きくされている。
【0031】
プランジャ22の下端側には、底壁22aの周縁から下方に向かって延びたフランジ部22eが設けられている。フランジ部22eは、周壁21bとは逆向きに底壁22aの周縁から延びた形となっている。フランジ部22eは、底壁22aを取り囲むような環状をなしている。
【0032】
図6は、プランジャ22の下端に、弁体27を収容したリテーナ28の本体部40が組み付けられた状態を示す説明図である。
図6に示されるように、弁体27を収容した状態のリテーナ28の本体部40は、上端にある環状の取付片42が、プランジャ22の下端側にある環状のフランジ部22eの内側に嵌め込まれることで、プランジャ22の底壁22aに対して、外側から取り付けられた形となっている。取付片42及び本体周壁部41は、縮径するように弾性変形した状態で、フランジ部22eの内側に嵌め込まれた形となっている。
【0033】
図7は、プランジャ22に組み付けられたリテーナ28の本体部40の下方に、第1スプリング29を起立した状態で保持した底部50を配置した状態を示す説明図である。
図7に示されるように、リテーナ28の底部50の内側には、上述したように、凹状の保持部53が形成されており、それを利用して、第1スプリング29が起立するように第1スプリング29の下端側が嵌め込まれる形で保持されている。より具体的には、保持部53は、底周壁部52の内周面側において、第1スプリング29の外径よりも小さい内径の部分からなる環状の締め付け部53aを備えており、その締め付け部53aが、載置部51に載せられた第1スプリング29の下端を外側から軽く締め付けることで、第1スプリング29が起立した状態で保持される。なお、第1スプリング29は、径方向に若干、縮径する形となるが、そのように変形しても、弁体27の開閉動作の問題とはならない。
【0034】
図8は、プランジャ22の下端に、弁体27及び第1スプリング29を収容したリテーナ28が組み付けられた状態を示す説明図である。起立した状態の第1スプリング29を収容したリテーナ28の底部50は、プランジャ22側に取り付けられている本体部40(本体周壁部41)の下端にある開口縁部44に対して、本体部40(本体周壁部41)の外側(下方)から取り付けられる。具体的には、先ず、起立した状態の第1スプリング29の上端が、開口縁部44の内側に挿入される。その際、第1スプリング29の上端は、弁体27に対して、下方から当接した状態となる。そして、第1スプリング29が弁体27と底部50の載置部51との間で挟まれた状態で、底部50の底周壁部52の上端が、開口縁部44の内側に押し込まれる。挿入の際、底周壁部52の上端は、縮径するように一時的に変形させてもよい。底周壁部52の上端が開口縁部44の内側に挿入された後、底周壁部52の上端は、開口縁部44に対して、係止される。底周壁部52の上端は、環状に広がった形をなしており、その部分が、開口縁部44を内側から外側に向かって押すような形で開口縁部44に係止される。
【0035】
底部50が、本体部40(本体周壁部41)に取り付けられると、
図8に示されるように、起立した第1スプリング29の上端に弁体27を載せた状態で、第1スプリング29及び弁体27が収容されたリテーナ28が、プランジャ22の下端に取り付けられる。
【0036】
上記のように、リテーナ28の底部50は、保持部53を利用して、第1スプリング29を起立させた状態で保持することがきる。そのため、第1スプリング29が組み付け時等において、リテーナ28内で倒れることが防止される。
【0037】
また、本実施形態のように、第1スプリング29が載せられる底部50を、本体部40側から分離した構成とすることで、第1スプリング29の外径よりも小さい内径の部分からなる環状の締め付け部53aを、底部50に設け易くなっている。
【0038】
図9は、プランジャ22の下端に、弁体27を収容したリテーナ28の本体部40を組み付ける際に、利用される第1冶具100を示す説明図である。第1冶具100は、作業台X上に載せられる板状の基部101と、この基部101の周縁から立ち上がる、内側にプランジャ22が収容される規制壁102とを備えている。
図9に示されるように、基部101の中央には、厚み方向に貫通する形で位置決め孔103が設けられている。位置決め孔103には、弁体27を収容した状態のリテーナ28の本体部40が入れられ、位置決め孔103内において、本体部40の位置が概ね固定される。位置決め孔103の大きさ(開口径)は、筒状の本体周壁部41の外径より大きく、取付片42の外径より小さく設定されている。このような位置決め孔103で位置決めされたリテーナ28の本体部40は、プランジャ22の下端との組み付け時に倒れ難い。しかも、リテーナ28の取付片42を、プランジャ22の下端にある環状のフランジ部22eの内側に嵌め込みやすい。このような第1冶具100を利用して、プランジャ22の下端にリテーナ28の本体部40を取り付けてもよい。
【0039】
図10は、他の実施形態におけるリテーナ28Aの底部50Aと、それを本体周壁部に取り付ける際に利用される第2冶具200とを示す説明図である。本実施形態のリテーナ28Aは、上記実施形態1と底部50Aの構造のみが異なっている。本実施形態の底部50Aは、載置部51Aに、厚み方向(上下方向)に貫通する孔からなる挿入孔55Aが設けられている。本実施形態の底部50Aは、実施形態1の底部50A(載置部51A)に、挿入孔55Aを追加して形成したものである。
【0040】
この挿入孔55Aは、リテーナ28Aの本体部に対して、第1スプリングを起立させた状態で保持する底部50Aを、リテーナ28Aの本体部(本体周壁部)に対して取り付ける際に、第2冶具200と共に利用される。第2冶具200は、底部50Aの載置部51Aに対して外側から宛がわれる支持台201と、この支持台201に立設された棒状の押し上げ部202と、支持台201の下端に取り付けられ、作業者が把持する把持部203とを備えている。挿入孔55Aに、第2冶具200の棒状の押し上げ部202が外側から内側に向かって挿入されると、押し上げ部202は、第1スプリングの内部を通され、第1スプリングの上端と当接する弁体に突き当たる。底部50Aを支持台201で支持した状態で、押し上げ部202を奥側へ押し込むと、弁体は弁孔側へ押し上げられ、底周壁部52Aの上端を、本体部(本体周壁部)の開口縁部内に押し込みやすくなる。つまり、第2冶具200を利用すると、弁体の重さを受けて第1スプリングが圧縮され易い状況でも、第1スプリング及び底周壁部52Aを、本体部(本体周壁部)の開口縁部内に挿入し易くなる。このように、挿入孔55Aを有する底部50Aを有するリテーナ28Aと共に、第2冶具200を利用してもよい。
【符号の説明】
【0041】
1…内燃機関、2…シリンダヘッド、3…吸気ポート、4…吸気バルブ、5…バルブスプリング、6…ロッカアーム、7…カム、8…吸気通路、9…取付室、10…動弁装置、11…オイル供給路、20…ラッシュアジャスタ、21…ボディ、22…プランジャ、22a…底壁、22b…周壁、22e…フランジ部、25…弁孔、27…弁体、28…リテーナ、29…第1スプリング(圧縮コイルばね)、30…第2スプリング、40…本体部、41…本体周壁部、42…取付片、43…切り欠き部、44…開口縁部、50…底部、51…載置部、52…底周壁部、53…保持部、53a…締め付け部