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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】空調配置方法及び空調配置システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/62 20180101AFI20220708BHJP
【FI】
F24F11/62
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018230870
(22)【出願日】2018-12-10
(65)【公開番号】P2020094703
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 篤
(72)【発明者】
【氏名】八木 秀隆
(72)【発明者】
【氏名】三浦 克弘
(72)【発明者】
【氏名】高木 賢二
(72)【発明者】
【氏名】金子 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】福井 三穂
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-154014(JP,A)
【文献】特開2006-125754(JP,A)
【文献】特開2018-194224(JP,A)
【文献】国際公開第2018/220803(WO,A1)
【文献】特開平09-105545(JP,A)
【文献】国際公開第2014/208410(WO,A1)
【文献】特開2011-187030(JP,A)
【文献】特開2014-214975(JP,A)
【文献】特開2018-009770(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0159953(US,A1)
【文献】特開2015-114768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00-11/89
G06F 1/00-40/58
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間の複数の領域の少なくともいずれかのそれぞれに対し、空調を配置しない場合と空調を配置した場合との温熱指標の差を算出する工程と、
前記領域ごとに算出された前記温熱指標の差から空調を配置する領域を決定する工程と、
を備え
前記温熱指標の差を算出する工程では、空調を配置しない場合と空調を配置した場合との不満足者数の差を前記領域ごとに算出し、
前記領域を決定する工程では、前記領域ごとに算出された前記不満足者数の差から空調を配置する領域を決定する、
空調配置方法。
【請求項2】
前記領域を決定する工程では、前記領域ごとに算出された前記温熱指標の差から前記複数の領域に対して順位付けを行い、順位が高い前記領域に優先的に空調を配置する、
請求項に記載の空調配置方法。
【請求項3】
前記温熱指標の差を算出する工程の前に、前記領域ごとに前記温熱指標を算出する工程を備え、
前記温熱指標を算出する工程では、前記領域ごとの不満足者率及び滞在者数から不満足者数を前記領域ごとに算出する、
請求項1又は2に記載の空調配置方法。
【請求項4】
前記温熱指標を算出する工程では、標準新有効温度(SET*)を用いて前記不満足者率を算出する、
請求項に記載の空調配置方法。
【請求項5】
前記空間は、外気が流出入する半屋外空間である、
請求項1~のいずれか一項に記載の空調配置方法。
【請求項6】
前記複数の領域の広さが互いに異なる、
請求項1~のいずれか一項に記載の空調配置方法。
【請求項7】
複数の領域に分けられた空間から空調を配置する前記領域を決定する空調配置システムであって、
前記複数の領域の少なくともいずれかのそれぞれに対し、空調を配置しない場合と空調を配置した場合との温熱指標の差を算出する算出部と、
前記領域ごとに算出された前記温熱指標の差から空調を配置する領域を決定する領域決定部と、
を備え
前記算出部は、空調を配置しない場合と空調を配置した場合との不満足者数の差を前記領域ごとに算出し、
前記領域決定部は、前記領域ごとに算出された前記不満足者数の差から空調を配置する領域を決定する、
空調配置システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調を配置する領域を決定する空調配置方法及び空調配置システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開平8-14640号公報には、床吹出口の配置決定方法が記載されている。床吹出口は、空調機から送風された風を床下の通風路から床上に通す吹出口であり、床の複数の領域のいずれかに設けられる。この配置決定方法では、空調機からの送風によって床下に生じる静圧値、水平方向風量及び吹出口風量を算出し、複数の領域の吹出口風量の合計風量と目標風量との比較を行い、合計風量が目標風量と所定の誤差範囲内で一致したときに床吹出口の配置を確定する。また、この配置決定方法において、空調機の能力は、空調したい部屋の大きさやその部屋にある熱源等の負荷から求められた設計目標により決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-14640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、空間の環境改善の要求が高まっており、特に駅の内部空間等において空間の温度等の改善が求められている。例えば、上記の内部空間では、人が待ち合わせをしたり休憩をしたりすることがある一方、特に夏場は暑くて快適でないとの声も挙がっており、環境改善が求められている。
【0005】
また、上記の内部空間は、閉鎖空間でないことがあり、外気の流出入がある場合もあるので、空調機の能力を高めるだけでは不十分である。よって、必要に応じて空調の数を増やすことが考えられる。しかしながら、空調の数を増やす場合には、消費されるエネルギーが大きくなるので、エネルギー消費の観点からは好ましくない。従って、過大なエネルギー消費を抑えつつ、且つ空調の数及び配置を適正化して空間の環境改善を行うことが求められる。
【0006】
本発明は、過大なエネルギー消費を抑えつつ、空調の配置を適切に行うことができる空調配置方法及び空調配置システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る空調配置方法は、空間の複数の領域の少なくともいずれかのそれぞれに対し、空調を配置しない場合と空調を配置した場合との温熱指標の差を算出する工程と、領域ごとに算出された温熱指標の差から空調を配置する領域を決定する工程と、を備える。
【0008】
この空調配置方法は、空間の複数の領域の少なくともいずれかのそれぞれに対して、空調を配置しない場合、及び空調を配置する場合、のそれぞれにおいて温熱指標を算出する。そして、空調を配置しない場合の温熱指標と空調を配置した場合の温熱指標との差を領域ごとに算出し、当該差から空調を配置する領域を決定する。従って、空調を配置しない場合、及び空調を配置した場合の温熱指標の差を領域ごとに算出した上で空調を配置する領域を決定するので、空調を配置する領域を適切に定めることができる。その結果、空間の内部に適切に空調を配置することができるので、空間の環境改善を実現することができる。また、各領域の温熱指標の差から空調の配置がより効果的な領域を選択し、適切な領域を選択して空調を配置できる。従って、空調の数の過大な増加を抑えつつ適切な箇所に適切な数の空調を配置できる。よって、過大なエネルギー消費を抑えつつ、且つ空調の数及び配置を適正化して空間の環境改善を行うことができる。
【0009】
また、温熱指標の差を算出する工程では、空調を配置しない場合と空調を配置した場合との不満足者数の差を領域ごとに算出し、領域を決定する工程では、領域ごとに算出された不満足者数の差から空調を配置する領域を決定してもよい。この場合、空調を配置しない場合(空調配置前、空調非配置時)、と空調を配置した場合(空調配置後、空調配置時)とにおける不満足者数の差を領域ごとに算出し、当該不満足者数の差から空調を配置する領域を決定する。従って、領域ごとの不満足者数の差から空調を配置する領域を決定するので、空調が必要且つ効果的となる領域を適切に決定することができ、更なる環境改善に寄与する。
【0010】
また、領域を決定する工程では、領域ごとに算出された温熱指標の差から複数の領域に対して順位付けを行い、順位が高い領域に優先的に空調を配置してもよい。この場合、空調非配置時と空調配置時との温熱指標の差から複数の領域に対して順位付けを行い、順位が高い領域に空調を配置するので、空調の必要性が高く且つ空調が効果的となる領域に適切に空調を配置することができる。
【0011】
また、温熱指標の差を算出する工程の前に、領域ごとに温熱指標を算出する工程を備え、温熱指標を算出する工程では、領域ごとの不満足者率及び滞在者数から不満足者数を領域ごとに算出してもよい。この場合、各領域の不満足者率及び滞在者数から不満足者数を領域ごとに算出し、算出した領域ごとの不満足者数を温熱指標として用いるので、不満足者率及び滞在者数を活用してより適切に空調を配置することができる。
【0012】
また、温熱指標を算出する工程では、標準新有効温度(SET*)を用いて不満足者率を算出してもよい。温熱環境から不満足者率を算出する指標のうち、SET*は、汎用性が高い指標である。従って、SET*を用いることによって更に適切に不満足者率を算出することができる。
【0013】
また、空間は、外気が流出入する半屋外空間であってもよい。外気が流出入する半屋外空間では、空調からの風が空間外に流れるため、より適切な空調の配置が必要となる。このような半屋外空間であっても、前述したように、適切な箇所に適切な数の空調を配置することができる。従って、過大なエネルギー消費を抑えると共に空間の環境改善を適切に行うことができる。
【0014】
また、複数の領域の広さが互いに異なっていてもよい。この場合、温熱環境に応じて複数の領域の広さを互いに異ならせることが可能となるため、空間内の実際の温熱環境に促した領域を画定することができる。従って、領域ごとの温熱指標をより適切に算出すると共に、空間の内部に更に適切に空調を配置することができる。
【0015】
本発明に係る空調配置システムは、複数の領域に分けられた空間から空調を配置する領域を決定する空調配置システムであって、複数の領域の少なくともいずれかのそれぞれに対し、空調を配置しない場合と空調を配置した場合との温熱指標の差を算出する算出部と、領域ごとに算出された温熱指標の差から空調を配置する領域を決定する領域決定部と、を備える。
【0016】
この空調配置システムでは、算出部は、分けられた領域の少なくともいずれかのそれぞれに対して、空調を配置しない場合、及び空調を配置する場合、のそれぞれにおける温熱指標を算出する。そして、領域決定部は、空調を配置しない場合の温熱指標と空調を配置した場合の温熱指標との差から空調を配置する領域を決定する。従って、空調を配置しない場合、及び空調を配置した場合の温熱指標の差を領域ごとに算出した上で空調を配置する領域を決定するので、空調を配置する領域を適切に定めることができる。その結果、前述の空調配置方法と同様、空間の環境改善を実現させることができると共に、過大なエネルギー消費を抑えることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、過大なエネルギー消費を抑えつつ、空調の配置を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る空調配置方法における空間の領域分けの例を示す図である。
図2】実施形態に係る空調配置システムのブロック図の例を示す図である。
図3】実施形態に係る空調配置方法のフローチャートの例を示す図である。
図4図3の例示的な空調配置方法の不満足者数算出処理を示すフローチャートである。
図5】(a),(b),(c)及び(d)は、図4の不満足者数算出処理の結果の例を示す図である。
図6図3の空調配置方法の削減不満足者数算出処理の例を示すフローチャートである。
図7図3の空調配置方法の空調配置時不満足者数算出処理の例を示すフローチャートである。
図8】(a),(b),(c)及び(d)は、図7の空調配置時不満足者数算出処理の結果の例を示す図である。
図9図3の空調配置方法の領域決定処理の例を示すフローチャートである。
図10】(a)及び(b)は、図9の領域決定処理の結果の例を示す図である。
図11図9とは別の変形例に係る領域決定処理を示すフローチャートである。
図12】(a)及び(b)は、図11の領域決定処理の結果の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、図面を参照しながら本発明に係る空調配置方法及び空調配置システムの実施形態について説明する。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0020】
例えば、駅のコンコース等の空間においては、特に近年高い環境品質が求められている。このような閉鎖空間でない空間を半屋外空間と称することがある。「半屋外空間」とは、部分的又は時間的に囲まれた空間ではあるものの外気の流出入が可能な空間を示している。「半屋外空間」は、一部が開放された空間、及び一時的に開放される空間の両方を含んでいる。また、「半屋外空間」は、時間的に開閉される玄関及びエントランスを含むと共に、更に、アプローチテラス、ピロティ及び地下街等を含んでいる。すなわち、半屋外空間等の空間は、例えば、不特定の人が入れる空間を含んでおり、これらの空間では、人が待ち合わせをしたり休憩をしたりする場合がある。上記のような空間では、例えば夏場に非常に暑くなることがあり、暑すぎたり、場合によっては寒すぎたりして快適に過ごせるとは言い難い場合もある。よって、空間の環境品質を高めることが求められており、空間の内部に複数の空調を配置することが求められる場合もある。
【0021】
一方、地球環境負荷削減の要求も高まっており、空調の配置に伴う省エネルギー化の検討も不可避である。すなわち、空調の数が多すぎる場合には多くのエネルギー消費を伴うので、空間の内部の全体に空調を配置することは困難である。また、空間の内部の全体に均一に複数の空調を配置する場合、空間の温熱環境が十分に考慮されていないことにより適切に空調を配置できないこともある。更に、例えば空調の風量分配及び温度設定の制御を行うことが考えられるが、この場合、制御が複雑になると共に装置構成も複雑になりうるので、消費エネルギー及びコストの増大が懸念される。
【0022】
これに対し、本実施形態に係る空調配置方法及び空調配置システムでは、空間の内部の温熱指標を加味した上で局所的(部分的)に空調を配置することにより、空調の適切な配置を実現して過大なエネルギー消費を抑えることを可能としている。すなわち、本実施形態では、空調を配置する領域を選択することにより、空調自体の複雑な制御を不要とすることが可能である。例えば、本実施形態では、空間の複数の領域から空調の配置領域を決定するので、空調の複雑な制御及び空調の連携を不要とすることができ、風量分配や温度設定の複雑な制御を不要とすることができる。その結果、コストを低減させることができる共に省エネルギー化に寄与する。一例として、本実施形態では、空調は、通常の能力を有する一般的な空調であり、当該空調の配置を適切に行うことによって快適な環境を提供可能である。
【0023】
ここで、本明細書において「空調を配置した場合」とは、その時点において空調が配置されているか否かにかかわらず、当該時点の後に空調を配置した場合を示している。すなわち、「空調を配置した場合」には、空調がない領域に新たに空調を配置する場合、及び既設の空調があって更に空調を配置する場合、の両方を含んでいる。また、「空調を配置しない場合」は、その時点において空調が配置されているか否かにかかわらず、当該時点の後に空調を配置しない場合を示している。すなわち、「空調を配置しない場合」には、空調がない領域に引き続き空調を配置しない場合、及び既設の空調があって更には空調を配置しない場合、の両方を含んでいる。なお、上記では既設を基準にしているが、それに限られない。例えば、既設の空調の撤去を検討する場合には、ある領域に関し、「空調を配置した場合」として、領域内の既存の空調をそのまま利用する場合、又は、更に空調を配置する場合を含んでいてもよい。更に、「空調を配置しない場合」は、領域内の既存の空調の全部又は一部を撤去する場合を含んでいてもよい。以上のように、「空調を配置した場合」は、あくまで「空調を配置しない場合」と比較して空調(例えば、空調の台数、容量、能力等)が増強されている場合を含んでいる。
【0024】
また、「温熱指標」とは、人が「暑い」又は「寒い」と感じる温熱感覚の尺度を示しており、例えば、不快指数、予測平均温冷感申告(PMV:Predicted Mean Vote)、標準新有効温度(SET*:Standard New Effective Temperature)、WBGT(湿球黒球温度:Wet Bulb GlobeTemperature)等の熱中症リスク評価指標、生理的指標、並びにこれらから算出される環境に対する不満足者率PPD(Predicted Percentage of Dissatisfied)及び不満足者数等の指標を含んでいる。更に、「温熱指標」は、空調を配置する前後において変動する定量的な指標であればよい。すなわち、「温熱指標」は、温度又は湿度等の物理的指標、体感等の生理的指標、又は消費エネルギー量であってもよい。また、「温熱指標」は、人の衣服の種類(人体に対する繊維のまとわりつきやすさ等)、気中の粉塵の量、又は気中の揮発性物質(VOC:Volatile Organic Compounds)の量等であってもよい。
【0025】
図1に示されるように、本実施形態に係る空調配置方法及び空調配置システムでは、例えば、空間K1を複数の領域A1~A12に分けて、分けた領域A1~A12のそれぞれに対して温熱指標を算出した上で領域A1~A12のどの領域に空調を配置するかを決定する。一例として、空間K1は、駅のコンコース等の半屋外空間であり、不特定の人が出入りする空間である。
【0026】
領域A1~A12のそれぞれは、空調配置候補領域であるが、算出された温熱指標の結果、空調が配置される場合もあれば、空調が配置されない場合もある。領域A1~A12は、仮に空調が配置された場合に、当該空調によって一定の効果が期待される領域を示している。すなわち、領域A1~A12は、空調の設置場所と、当該設置場所の周辺であって当該空調によって環境が改善されうる場所とを含んでいる。
【0027】
従って、例えば、柱等がなく空調からの風がいきわたりやすい領域である領域A12は広くなっており、柱等が多く空調からの風がいきわたりにくい領域である領域A1~A6等は狭くなっている。例えば、領域A1~A12のそれぞれは柱間空間である。しかしながら、領域A1~A12の領域の分け方は、あくまで一例であって、領域の形状及び広さは適宜変更される。
【0028】
図2は、本実施形態に係る例示的な空調配置システム1のブロック図である。なお、図2に示される空調配置システム1の構成はあくまで例示であって適宜変更可能であり、例えば、図2に示される各機能のうち、一部が変更若しくは削除されたり、又は機能が追加されることも想定される。例えば、空調配置システム1は、入力部10と、制御部20と、出力部30とを備える。
【0029】
空調配置システム1は、その少なくとも一部がコンピュータ(又はサーバ)に設けられていてもよく、当該コンピュータは、例えば、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラム等を実行するプロセッサ(例えばCPU)と、ROM及びRAM等によって構成される主記憶部と、ハードディスク又はフラッシュメモリ等で構成される補助記憶部と、ネットワークカード又は無線通信モジュール等で構成される通信制御部と、キーボード又はマウス等の入力装置と、モニタ等の出力装置とを備える。
【0030】
空調配置システム1のコンピュータの各構成要素は、プロセッサ又は主記憶部に所定のソフトウェアを読み込ませて当該ソフトウェアを実行させることによって実現される。プロセッサは、当該ソフトウェアに従って、前述した通信制御部、入力装置又は出力装置を動作させ、主記憶部又は補助記憶部におけるデータの読み出し又は書き込みを行う。コンピュータの処理に必要なデータ又はデータベースは主記憶部又は補助記憶部に格納される。例えば、出力部30は、パーソナルコンピュータ又はノートパソコン等の情報端末のディスプレイ、及び、携帯電話又はタブレット等の携帯端末のディスプレイを含んでいる。例えば、制御部20は、空間K1の温熱指標を算出する算出部21と、空調を配置する領域を決定する領域決定部26と、各種情報を記憶する記憶部29とを備える。
【0031】
入力部10は、領域A1~A12のそれぞれの滞在者数RESi、及び空間K1全体の滞在者数SumRESを取得する滞在者数取得部11と、空調配置前後における空間K1に対する不満足者率を取得する不満足者率取得部12とを備える。なお、RESi等の「i」は領域の識別文字(領域i)を示している。
【0032】
一例として、滞在者数取得部11は、領域A1~A12のそれぞれにおける人の動線シミュレーションから領域A1~A12のそれぞれの滞在者数RESiを推定する。また、滞在者数取得部11は、領域A1~A12のそれぞれに対する既存測定結果から滞在者数RESiを取得してもよい。このように滞在者数取得部11が取得した滞在者数RESi及び滞在者数SumRESの情報は算出部21に出力される。
【0033】
不満足者率取得部12は、領域A1~A12のそれぞれにおける空調配置前の不満足者率PPDi及び空調配置後の不満足者率PPD2iを取得する。例えば、不満足者率取得部12は、領域A1~A12に対する温熱環境評価から領域A1~A12のそれぞれの不満足者率PPDi,PPD2iを算出する。一例として、不満足者率取得部12は、領域A1~A12のそれぞれにおける既存測定結果からSET*を算出し、SET*から不満足者率PPDi,PPD2iを算出する。また、不満足者率取得部12は、CFD(Computational Fluid Dynamics)による温度及び気流の解析結果からSET*を算出し、SET*から不満足者率PPDi,PPD2iを算出してもよい。
【0034】
なお、SET*を用いた場合、SET*では扱われるデータの種類が多く不満足者率PPDi,PPD2iをより適切に算出できる点で有効である。しかしながら、温熱環境評価としては、SET*以外の指標を用いることも可能である。すなわち、領域A1~A12の温熱環境から不満足者率PPDi,PPD2iを算出可能な指標であれば別の指標を用いてもよい。不満足者率取得部12が取得した領域A1~A12のそれぞれの不満足者率PPDi,PPD2iの情報は算出部21に出力される。
【0035】
算出部21は、例えば、領域毎不満足者数算出部22と、合計不満足者数算出部23と、削減不満足者数算出部24と、空調配置時不満足者数算出部25とを備える。領域毎不満足者数算出部22は、滞在者数取得部11及び不満足者率取得部12のそれぞれから得られた滞在者数RESi及び不満足者率PPDiから領域A1~A12のそれぞれにおける空調配置前の不満足者数DISiを算出する。合計不満足者数算出部23は、領域A1~A12の不満足者数DISiを合算して空間K1の合計の不満足者数SumDISを算出する。
【0036】
削減不満足者数算出部24は、空間K1において削減すべき不満足者数DelDISを算出する。具体的には、削減不満足者数算出部24は、空間K1全体の滞在者数SumRESに許容不満足率RateDISを積算して空間K1の許容不満足者数SumPERを算出する。そして、削減不満足者数算出部24は、空間K1の不満足者数SumDISから許容不満足者数SumPERを減算して削減すべき不満足者数DelDISを算出する。
【0037】
上記の許容不満足率RateDISは、例えば、予め記憶部29に記憶されており、適宜変更されてもよい。許容不満足率RateDISは、一例として、20%であり、この値はASHRAE Standard 55で示された値(空間の快適性に関する受容者の割合が80%)に合致している。しかしながら、許容不満足率RateDISは、20%に限られず、適宜変更可能である。
【0038】
空調配置時不満足者数算出部25は、例えば、領域A1~A12のそれぞれに対し空調配置後の不満足者数DIS2iを算出する。具体的には、空調配置時不満足者数算出部25は、領域A1~A12のそれぞれの滞在者数RESiに、空調配置後の領域A1~A12のそれぞれの不満足者率PPD2iを積算して空調配置後の不満足者数DIS2iを算出する。
【0039】
領域決定部26は、例えば、領域順位付け部27と領域選択部28とを備える。領域順位付け部27は、空調配置前の不満足者数DISiから空調配置後の不満足者数DIS2iを減算して削減可能不満足者数DelDIS2iを算出する。そして、領域順位付け部27は、算出した削減可能不満足者数DelDIS2iの多い順に領域A1~A12をそれぞれ順位付けする。
【0040】
領域選択部28は、領域順位付け部27によって順位づけされた領域A1~A12のうちいずれの領域に空調を配置するか(空調配置対象領域)を選択する。領域選択部28は、順位づけされた領域A1~A12のうち、順位が高い領域に優先的に空調を配置するように領域を選択する。例えば、領域選択部28は、領域A1~A12のうち上位X位(Xは11以下の自然数)までの領域を選択する。領域選択部28によって選択された空調配置対象領域の情報は、例えば、記憶部29に記憶されると共に、出力部30に出力される。
【0041】
次に、本実施形態に係る空調配置方法の例について説明する。以下では、空調配置システム1を用いて予め定められた空間のどの領域に空調を配置するかを決定する方法について説明する。本実施形態に係る空調配置方法では、例えば、図3に示されるように、空間全体の不満足者数SumDISの算出(ステップS1)、空間内で削減すべき不満足者数DelDISの算出(ステップS2)、及び空調配置時に各領域で削減可能な削減可能不満足者数DelDIS2iの算出(ステップS3)を経て、空調配置対象領域の決定(ステップS4)を行う。以下では、ステップS1~S4のそれぞれの詳細について説明する。
【0042】
図4は、空間全体の不満足者数SumDISを算出するステップS1の詳細を示すフローチャートである。例えば、図5(a)に示されるように、半屋外空間である空間K2を複数の領域R1~R7に分割する(空間を複数の領域に分ける工程、ステップS11)。空間K2及び領域R1~R7は、前述した空間K1及び領域A1~A12と同様の空間及び領域であってもよい。以下の説明では、「領域R1~R7のそれぞれ」を「領域i」と称することがある。
【0043】
空間K2を複数の領域R1~R7に分割した後には、滞在者数取得部11が領域iの滞在者数RESiを取得する(ステップS12)。例えば前述したように、滞在者数取得部11は、動線シミュレーション又は既存測定結果から滞在者数RESiを取得する。図5(b)に示されるように、一例として、領域R1~R7のそれぞれの滞在者数RESiは、それぞれ、18人、21人、13人、8人、3人、5人、2人である。
【0044】
次に、領域iの空調配置前の不満足者率PPDiを算出する(ステップS13)。例えば、不満足者率取得部12は、CFDによる温度及び気流の解析結果、又は既存測定結果からSET*を算出し、SET*から不満足者率PPDiを算出する。図5(c)に示されるように、一例として、領域R1~R7のそれぞれの不満足者率PPDiは、31%、72%、25%、85%、64%、43%、51%である。
【0045】
不満足者率PPDiの算出後には、領域iの不満足者数DISiを算出する(温熱指標を算出する工程、ステップS14)。例えば、領域毎不満足者数算出部22は、滞在者数RESiに不満足者率PPDを積算して不満足者数DISiを算出する。本実施形態では、不満足者数DISiが空調を配置しない場合の温熱指標である。図5(d)に示されるように、一例として、領域R1~R7のそれぞれの不満足者数DISiは、5.58人、15.12人、3.25人、6.80人、1.92人、2.15人、1.02人である。
【0046】
そして、空間K2全体の不満足者数SumDISを算出する(ステップS15)。例えば、合計不満足者数算出部23は、不満足者数DISiを領域R1~R7まで足し合わせてSumDISを算出する。図5(d)に示される例の場合、SumDISは35.84人である。以上のようにSumDISが算出されてステップS1を終了する。
【0047】
図6は、空間内で削減すべき不満足者数DelDISを算出するステップS2の詳細を示すフローチャートである。ステップS2では、例えば、滞在者数取得部11が空間K2の全体の滞在者数SumRESを取得し(ステップS21)、その後、削減不満足者数算出部24が空間K2全体の滞在者数SumRESに許容不満足率RateDISを積算して空間K2の許容不満足者数SumPERを算出する(ステップS22)。そして、現状の不満足者数SumDISから許容不満足者数SumPERを減算して削減すべき不満足者数DelDISを算出する(ステップS23)。
【0048】
図5(a)~図5(d)に示される例の場合、空間K2の全体の滞在者数SumRESは70人であるため、許容不満足率RateDISが20%であるとすると、許容不満足者数SumPERは14人となる。そして、現状の不満足者数SumDISは35.84人であるため、削減すべき不満足者数DelDISは35.84人-14人=21.84人となる。
【0049】
以上のように、削減すべき不満足者数DelDISを算出し、不満足者数DelDISが0以下でない場合(自然数である場合、ステップS24においてNO)にはステップS2を終了する。一方、不満足者数DelDISが0以下である場合(ステップS24においてYES)にはステップS25に移行し、不満足者数DelDISを0にした後にステップS2を終了する。
【0050】
図7は、空調配置時(空調配置後)に各領域で削減可能な削減可能不満足者数DelDIS2iを算出するステップS3の詳細を示すフローチャートである。ステップS3では、例えば不満足者率取得部12が領域iの空調配置後の不満足者率PPD2iを取得する(ステップS31)。例えば前述と同様、不満足者率取得部12は、CFDによる温度及び気流の解析結果からSET*を算出し、SET*から不満足者率PPD2iを算出する。図8(a)に示されるように、一例として、領域R1~R7のそれぞれの不満足者率PPD2iは、11%、7%、8%、18%、21%、13%、17%である。
【0051】
次に、例えば空調配置時不満足者数算出部25が空調配置時の不満足者数DIS2iを算出する(温熱指標を算出する工程、ステップS32)。本実施形態では、不満足者数DIS2iが空調を配置した場合の温熱指標である。例えば、空調配置時不満足者数算出部25は、滞在者数RESiに不満足者率PPD2iを積算して不満足者数DIS2iを算出する。図8(c)に示されるように、一例として、不満足者数DIS2iは、図8(a)の不満足者率PPD2iに図8(b)の滞在者数RESiを積算した値であって、1.98人、1.47人、1.04人、1.44人、0.63人、0.65人、0.34人である。
【0052】
例えば、領域順位付け部27が空調配置前の不満足者数DISiから空調配置後の不満足者数DIS2iを減算して削減可能不満足者数DelDIS2iを算出する(温熱指標の差を算出する工程、ステップS33)。図8(d)に示される例では、削減可能不満足者数DelDIS2iは、図5(d)に示されるDISiから図8(c)のDIS2iを減算した値であって、3.60人、13.65人、2.21人、5.36人、1.29人、1.50人、0.68人である。
【0053】
以上のように削減可能不満足者数DelDIS2iを算出し、DelDIS2iが0以下でない場合(自然数である場合、ステップS34においてNO)にはステップS3を終了する。一方、DelDIS2iが0以下である場合(ステップS34においてYES)にはステップS35に移行し、DelDIS2iを0にした後にステップS3を終了する。
【0054】
図9は、空調配置対象領域を決定するステップS4の詳細を示すフローチャートである。まず、削減可能不満足者数DelDIS2iに基づいて領域iに順位付けを行う(ステップS41)。図8(d)及び図10(a)に示されるように、DelDIS2iの値が大きい順に順位付けを行う。
【0055】
例えば、領域選択部28は、領域順位付け部27によって付された順位に基づいて、空調を配置する領域を決定する(領域を決定する工程、ステップS42)。例えば、領域選択部28は、順位が高い領域から順に削減可能不満足者数DelDIS2iを、削減すべき不満足者数DelDISを超えるまで足していく。例えば、DelDISは21.84人であるため、図10(a)及び図10(b)に示される例では、
13.65人+5.36人=19.01人<21.84人
13.65人+5.36人+3.60人=22.61人>21.84人
となる。よって、領域選択部28は上位3位までの領域R2、領域R4及び領域R1を空調配置対象領域として選択する。以上のように、領域選択部28が空調配置対象領域を選択してステップS4を含む一連の工程を終了する。
【0056】
次に、ステップS4の変形例について図11及び図12を参照しながら説明する。図11は、変形例に係るステップS4の詳細を示すフローチャートである。変形例に係るステップS4において、例えば、領域順位付け部27は、予め定められた予算を加味して領域の順位付けを行う。
【0057】
まず、領域順位付け部27は、一式の空調を配置するときにかかる費用を削減可能不満足者数DelDIS2iで割って一人当たりにかかる空調の配置費用を算出する(ステップS51)。ここで、「一式の空調」は、一台の空調、又は所定の複数台の空調を示している。一例として、空調一台の配置にかかる費用が30万円であって削減可能不満足者数DelDIS2iが図8(d)に示される結果である場合には、図12(a)のように一人当たりにかかる空調の配置費用が算出される。一例として、領域R2の一人当たりにかかる空調の費用は、(30万円/13.65人)=2.2万円である。例えば、領域順位付け部27は、一人当たりにかかる空調の配置費用が少ない順に順位付けを行う(ステップS52)。
【0058】
例えば、領域選択部28は、順位が高い領域から順に一人当たりの空調の配置費用を、予算上限を超えない範囲の上限まで足していき、空調を配置する領域を決定する(領域を決定する工程、ステップS53)。一例として、予算上限が50万円である場合、図12(a)及び図12(b)に示される例では、
2.2+5.6+8.3+13.6+20.0=49.7<50
2.2+5.6+8.3+13.6+20.0+23.3=73>50
となる。よって、領域選択部28は上位5位までの領域R2、領域R4、領域R1、領域R3及び領域R6を空調配置対象領域として選択する。
【0059】
以上のように、領域選択部28による領域の選択は種々の方法で行うことができ、前述した方法以外の方法で領域を選択することも可能である。例えば、削減可能不満足者数DelDIS2iが予め定められた閾値TH以上(一例として3人以上)である領域のそれぞれを空調配置対象領域としてもよいし、空調の配置台数が予めn台(nは自然数)と決められていて順位が1位からn位までの領域のそれぞれを空調配置対象領域としてもよい。
【0060】
次に、本実施形態に係る空調配置方法及び空調配置システム1から得られる作用効果について説明する。本実施形態に係る空調配置方法は、空間K2を複数の領域R1~R7に分けると共に、分けた領域R1~R7のそれぞれに対して、空調を配置しない場合、及び空調を配置する場合、のそれぞれにおいて温熱指標を算出する。
【0061】
そして、空調を配置しない場合の温熱指標と空調を配置した場合の温熱指標との差(例えば削減可能不満足者数DelDIS2i)を領域R1~R7ごとに算出し、当該差から空調を配置する領域を決定する。従って、空調を配置しない場合、及び空調を配置した場合の温熱指標の差を領域R1~R7ごとに算出した上で空調を配置する領域を決定するので、空調を配置する領域を適切に定めることができる。
【0062】
その結果、空間K2の内部に適切に空調を配置することができるので、空間K2の環境改善を実現することができる。また、領域R1~R7のそれぞれの温熱指標の差から空調を配置すべき及び空調の配置がより効果的な領域を選択し、適切な領域を選択して空調を配置できる。従って、空調の数の過大な増加を抑えつつ適切な箇所に適切な数の空調を配置できるので、過大なエネルギー消費を抑えることができる。よって、過大なエネルギー消費を抑えつつ、且つ空調の数及び配置を適正化して空間K2の環境改善を行うことができる。また、空調そのものとしては通常の空調を用いることができるので、空調そのものにかかるコストの増大を抑えることもできる。
【0063】
また、温熱指標の差を算出する工程では、空調を配置しない場合と空調を配置した場合との不満足者数の差(削減可能不満足者数DelDIS2i)を算出し、領域を決定する工程では、領域iごとに算出された不満足者数の差から空調を配置する領域を決定する。すなわち、空調を配置しない場合と空調を配置した場合とにおける不満足者数の差を領域iごとに算出し、当該不満足者数の差から空調を配置する領域を決定する。従って、領域iごとの不満足者数の差から空調を配置する領域を決定するので、空調が必要な領域且つ空調が効果的となる領域を適切に決定することができ、更なる環境改善に寄与する。
【0064】
また、領域を決定する工程では、領域iごとに算出された温熱指標の差から複数の領域iに対して順位付けを行い、順位が高い領域iに優先的に空調を配置する。よって、空調非配置時と空調配置時との温熱指標の差から複数の領域iに順位付けを行い、順位が高い領域iに空調を配置するので、空調の必要性が高く且つ空調が効果的に機能する領域に適切に空調を配置することができる。
【0065】
また、温熱指標の差を算出する工程の前に、領域iごとに温熱指標を算出する工程を備え、温熱指標を算出する工程では、不満足者率PPDi、PPD2i及び滞在者数RESiから不満足者数DISi、DIS2iを算出する。よって、不満足者率PPDi、PPD2i及び滞在者数RESiから不満足者数DISi、DIS2iを算出し、算出した不満足者数DISi、DIS2iを温熱指標として用いる。従って、不満足者率PPDi、PPD2i及び滞在者数RESiを活用してより適切に空調を配置することができる。
【0066】
また、温熱指標を算出する工程では、SET*を用いて不満足者率PPDi、PPD2iを算出する。前述したように、温熱環境から不満足者率PPDi、PPD2iを算出する指標のうち、SET*は、汎用性が高い指標である。従って、SET*を用いることによってより適切に不満足者率PPDi、PPD2iを算出することができる。
【0067】
また、空間K2は、外気が流出入する半屋外空間である。外気が流出入する半屋外空間では、空調からの風が空間K2外に流れるため、より適切な空調の配置が必要となる。このような半屋外空間であっても、前述したように、適切な箇所に適切な数の空調を配置することができる。従って、過大なエネルギー消費を抑えると共に空間K2の環境改善を適切に行うことができる。
【0068】
また、複数の領域iの広さは互いに異なる。よって、温熱環境に応じて複数の領域iの広さを互いに異ならせることが可能となるため、空間K2の温熱環境に促した領域iを画定することができる。従って、領域iごとの温熱指標をより適切に算出すると共に、空間K2の内部に更に適切に空調を配置することができる。
【0069】
本実施形態に係る空調配置システム1では、算出部21は、分けられた領域Riのそれぞれに対して、空調を配置しない場合、及び空調を配置する場合、のそれぞれにおける温熱指標を算出する。そして、領域決定部26は、空調を配置しない場合の温熱指標と空調を配置した場合の温熱指標との差から空調を配置する領域を決定する。従って、空調を配置しない場合、及び空調を配置した場合の温熱指標の差を領域Riごとに算出した上で空調を配置する領域iを決定するので、空調を配置する領域Riを適切に定めることができる。その結果、前述の空調配置方法と同様、空間の環境改善を実現させることができると共に、過大なエネルギー消費を抑えることができる。
【0070】
以上、本発明に係る空調配置方法及び空調配置システムの実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲において変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。すなわち、本発明は、各請求項の要旨を変更しない範囲において種々の変形が可能であり、例えば、空調配置方法の各工程の内容及び順序、並びに、空調配置システムの各部の構成は適宜変更可能である。
【0071】
例えば、前述の実施形態では、空間K2を複数の領域R1~R7に分けると共に、分けた領域R1~R7のそれぞれに対して、空調を配置しない場合、及び空調を配置する場合のそれぞれにおいて温熱指標を算出する例について説明した。しかしながら、分けた領域R1~R7の全てに対して温熱指標を算出しなくてもよく、例えば、領域R1~R7のいずれかのみにおいて温熱指標を算出してもよい。すなわち、領域R1~R7のうち温熱指標を算出しない領域が存在していてもよい。
【0072】
また、前述の実施形態では、領域iの温熱指標として不満足者数を算出する例について説明したが、領域iの温熱指標は不満足者数以外の指標であってもよい。例えば、領域iの温熱指標は温度そのものであってもよく、空調配置前後における温度の差に優先順位付けをして空調の配置領域を決定してもよい。更に、空調を配置する領域の決定において、例えば、予算等の経済的制約又は経済的効果(経済的指標)を加味してもよく、加味する要素は適宜選択可能である。また、設置又は追加する空調について、例えば、省エネルギー化の目標値に見合う単位面積当たりの負荷量(一例として処理熱量)を用いて各領域の面積から容量を設定してもよい。この場合、省エネルギー化を考慮した空調の配置が可能となる。なお、設置又は追加する空調自体の設定に関しては特に限定されない。
【0073】
更に、前述の実施形態では、削減可能な不満足者数が閾値以上である領域のそれぞれに空調を配置する例について説明した。しかしながら、領域を決定するときに用いる閾値の種類は適宜変更可能である。例えば、前述した温熱指標と当該閾値とは互いに別の指標であってもよい。具体例として、温熱指標が温度であって当該閾値が消費エネルギー量であってもよい。更に、当該閾値に経済的指標を加味してもよく、温熱指標及び当該閾値としては種々の指標を用いることができる。例えば、ある領域に既存空調が存在する場合において、「空調を配置しない場合」が当該領域内の既存の空調の全部又は一部を撤去する場合であって、「空調を配置した場合」が当該領域内の既存の空調をそのまま利用する場合であって、且つ、空調配置領域の決定において当該領域が空調配置対象領域とされなかったときには、当該決定に用いた閾値が上限閾値(一例として消費エネルギー量の上限閾値)であるときには当該領域内の既存の空調は閾値を満たすために撤去する必要があるが、当該決定に用いた閾値が下限閾値(一例として削減可能不満足者数の下限閾値)であるときには当該領域内の既存の空調を撤去せずに残置してもよい。
【0074】
また、前述の実施形態では、領域iに順位付けをする例について説明したが、順位付けを省略してもよく、例えば、温熱指標の差が所定値以上の全ての領域を空調配置対象領域としてもよい。更に、前述の実施形態では、領域の広さが互いに異なる例について説明したが、領域の広さが互いに同一であってもよい。また、前述の実施形態では、半屋外空間である空間K1,K2について説明したが、空調配置方法及び空調配置システムは、半屋外空間以外の空間、例えば、完全に開放された空間及び閉鎖空間にも適用可能である。
【0075】
また、前述の実施形態では、滞在者数取得部11及び不満足者率取得部12を有する入力部10、算出部21及び領域決定部26を有する制御部20、並びに出力部30を備える空調配置システム1について説明したが、入力部、制御部及び出力部の構成は適宜変更可能である。また、入力部10、制御部20及び出力部30の少なくともいずれかを有しない空調配置システムであってもよく、空調配置システムの構成は適宜変更可能である。更に、空調配置システムの少なくとも一部の機能が、例えば人手によって実行されてもよく、更には既存の測定の結果等を利用して実現されてもよい。
【0076】
また、前述の実施形態では、ステップS1~S4を備える空調配置方法の例について説明したが、ステップS1~S4のそれぞれの工程の内容及び順序は適宜変更可能である。更に、ステップS1~S4の少なくともいずれかが変更若しくは省略、又は別の工程が追加された空調配置方法であってもよい。
【0077】
また、前述の実施形態では、滞在者数取得部11が既存測定結果から滞在者数を算出する例について説明した。しかしながら、滞在者数取得部は、実測値から空間又は領域ごとの滞在者数を算出してもよく、滞在者数の取得方法は適宜変更可能である。不満足者率取得部の不満足者率の取得方法も適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0078】
1…空調配置システム、10…入力部、11…滞在者数取得部、12…不満足者率取得部、20…制御部、21…算出部、22…領域毎不満足者数算出部、23…合計不満足者数算出部、24…削減不満足者数算出部、25…空調配置時不満足者数算出部、26…領域決定部、27…領域順位付け部、28…領域選択部、29…記憶部、30…出力部、A1~A12,R1~R7…領域、K1,K2…空間。
図1
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図5
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図10
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図12