(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】液晶媒体および該液晶媒体を含む高周波コンポーネント
(51)【国際特許分類】
C09K 19/60 20060101AFI20220708BHJP
C09K 19/38 20060101ALI20220708BHJP
C09K 19/12 20060101ALI20220708BHJP
C09K 19/30 20060101ALI20220708BHJP
C09K 19/16 20060101ALI20220708BHJP
C09K 19/18 20060101ALI20220708BHJP
C09K 19/54 20060101ALI20220708BHJP
【FI】
C09K19/60 Z
C09K19/60 A
C09K19/38
C09K19/12
C09K19/30
C09K19/16
C09K19/18
C09K19/54 B
C09K19/54 Z
(21)【出願番号】P 2018541267
(86)(22)【出願日】2017-01-20
(86)【国際出願番号】 EP2017000069
(87)【国際公開番号】W WO2017137145
(87)【国際公開日】2017-08-17
【審査請求日】2020-01-17
(32)【優先日】2016-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】593033142
【氏名又は名称】メルク・パテント・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent GmbH
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250, 64293 Darmstadt
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ヴィテク
(72)【発明者】
【氏名】ダークマー クラス
(72)【発明者】
【氏名】ペーア キアシュ
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0067605(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0315473(US,A1)
【文献】国際公開第2011/042699(WO,A1)
【文献】特開2009-057460(JP,A)
【文献】Large microwave birefringence liquid-crystal characterization for phase-shifter applications,Japanese Journal of Applied Physics,2008年,47(5, Pt. 1),3564-3567
【文献】Proceedings of SPIE,2000年,Vol.4147,p.335-339
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 19/00 ー 19/60
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 1種以上の多色性化合物と
、
- 式Iの1種以上の化合物と、
- 式IIIの1種以上の化合物と、任意に
- 1種以上の重合性メソゲン化合物と
を含む液晶媒体であって、ここで、
前記多色性化合物が、
【化1】
および
【化2】
[式中、
X
A
は、F、Cl、CN、CF
3
、OCF
3
またはSF
4
CF
3
であり、
L
A
、L
’A
およびL
’’A
は、互いに独立して、H、F、ClまたはCNであり、
R
A
およびR
’A
は、互いに独立して、1~6個のC原子を有するアルキル、または2~6個のC原子を有するアルケニルであり、
R
D
およびR
’D
は、互いに独立して、1~6個のC原子を有するアルキル、または2~6個のC原子を有するアルケニルであり、
RおよびR’は、互いに独立して、1~6個のC原子を有するアルコキシであり、かつ
L’およびL’’は、互いに独立して、H、FまたはClである]の群から選択される二色性色素であり、
前記式Iの化合物が、
【化3】
[式中、
R
1は、H、1~17個のC原子を有する非フッ素化アルキルもしくは非フッ素化アルコキシまたは2~15個のC原子を有する非フッ素化アルケニル、非フッ素化アルケニルオキシもしくは非フッ素化アルコキシアルキルを表し、
nは、0または1を表し、かつ
【化4】
は、互いに独立して、
【化5】
を表すか、または
【化6】
は、代替的に
【化7】
を表す]であり、
前記式IIIの化合物が、
【化8】
[式中、
R
3は、H、1~17個のC原子を有する非フッ素化アルキルもしくは非フッ素化アルコキシまたは2~15個のC原子を有する非フッ素化アルケニル、非フッ素化アルケニルオキシもしくは非フッ素化アルコキシアルキルを表し、
Z
31およびZ
32のうちの一方は、トランス-CH=CH-、トランス-CF=CF-または-C≡C-を表し、他方のものは、トランス-CH=CH-、トランス-CF=CF-または単結合を表し、かつ
【化9】
は、互いに独立して、
【化10】
を表し、または
【化11】
は、代替的に
【化12】
を表す]である、液晶媒体。
【請求項2】
式P
【化13】
[式中、
P
a、P
bは、それぞれ互いに独立して、重合性基であり、
Sp
a、Sp
bは、それぞれ互いに独立して、スペーサー基を表し、
s1、s2は、それぞれ互いに独立して、0または1を表し、
n1、n2は、それぞれ互いに独立して、0または1を表し、
Qは、単結合、-CF
2O-、-OCF
2-、-CH
2O-、-OCH
2-、-(CO)O-、-O(CO)-、-(CH
2)
4-、-CH
2-CH
2-、-CF
2-CF
2-、-CF
2-CH
2-、-CH
2-CF
2-、-CH=CH-、-CF=CF-、-CF=CH-、-CH=CF-、-(CH
2)
3O-、-O(CH
2)
3-、-C≡C-、-O-、-CH
2-、-(CH
2)
3-、-CF
2-を表し、
Z
1、Z
4は、互いに独立して、単結合、-CF
2O-、-OCF
2-、-CH
2O-、-OCH
2-、-(CO)O-、-O(CO)-、-(CH
2)
4-、-CH
2-CH
2-、-CF
2-CF
2-、-CF
2-CH
2-、-CH
2-CF
2-、-CH=CH-、-CF=CF-、-CF=CH-、-CH=CF-、-(CH
2)
3O-、-O(CH
2)
3-、-C≡C-、-O-、-CH
2-、-(CH
2)
3-、-CF
2-を表し、
ここで、Z
1およびQまたはZ
4およびQのそれぞれは、-CF
2O-および-OCF
2-から選択される基を同時には表さず、
A
1、A
2、A
3、A
4は、それぞれ互いに独立して、以下の群から選択されるジラジカル基を表し:
a)トランス-1,4-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキセニレンおよび1,4’-ビシクロヘキシレンから成る群であって、ここでさらに、1個以上の隣接していないCH
2基は、-O-および/または-S-によって置き換えられていてよく、ここでさらに、1個以上のH原子は、Fによって置き換えられていてよく、
b)1,4-フェニレンおよび1,3-フェニレンから成る群であって、ここでさらに、1個または2個のCH基は、Nによって置き換えられていてよく、ここでさらに、1個以上のH原子は、Lによって置き換えられていてよく、
c)テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、テトラヒドロフラン-2,5-ジイル、シクロブタン-1,3-ジイル、ピペリジン-1,4-ジイル、チオフェン-2,5-ジイルおよびセレノフェン-2,5-ジイルから成る群であって、それらの各々は、Lで一置換または多置換されていてもよく、
d)5~20個の環式C原子を有する飽和、部分不飽和または完全不飽和の、任意に置換された多環式基から成る群であって、該環式C原子の1個以上はさらにヘテロ原子によって置き換えられていてよく、ここでさらに、これらの基における1個以上のH原子は、Lによって置き換えられていてよく、かつ/または1個以上の二重結合は、単結合によって置き換えられていてよく、かつ/または1個以上のCH基は、Nによって置き換えられていてよく、
またはA
3は、代替的に単結合であってもよく、
Lは、それぞれ出現する場合に、同一または異なって、F、Cl、CN、SCN、SF
5または1~12個のC原子を有する直鎖もしくは分枝鎖の、それぞれの場合に任意にフッ素化されたアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシもしくはアルコキシカルボニルオキシを表す]の1種以上の化合物を含み、かつ任意に重合開始剤をさらに含む、請求項
1記載の液晶媒体。
【請求項3】
さらに、式IIの1種以上の化合物
【化14】
[式中、
R
2は、H、1~17個のC原子を有する非フッ素化アルキルもしくは非フッ素化アルコキシまたは2~15個のC原子を有する非フッ素化アルケニル、非フッ素化アルケニルオキシもしくは非フッ素化アルコキシアルキルを表し、
Z
21は、トランス-CH=CH-、トランス-CF=CF-または-C≡C-を表し、かつ
【化15】
は、互いに独立して、
【化16】
を表す]を含む、請求項1
または2記載の液晶媒体。
【請求項4】
式I-1、I-2、II-1~II-3およびIII-1、III-2、III-4~III-5
【化17】
[式中、R
1、R
2、R
3、A
11、A
12、A
13、A
21、A
22、A
31、A
32、A
33、Z
31およびZ
32のそれぞれは、請求項1および
3において記載されるそれぞれの意味を有する]の化合物の群から選択される1種以上の化合物を含む、請求項1から
3までのいずれか1項記載の液晶媒体。
【請求項5】
1種以上のキラル化合物をさらに含む、請求項1から
4までのいずれか1項記載の液晶媒体。
【請求項6】
請求項1において記載される1種以上の多色性化合物と、請求項1において記載される式Iの1種以上の化合物と、請求項1において記載される式IIIの1種以上の化合物と、請求項1または
2において記載される重合性化合物の重合により得られるかまたは得ることができるポリマーとを含む液晶媒体を含む、複合系。
【請求項7】
請求項1から
5までのいずれか1項記載の液晶媒体または請求項
6記載の複合系を含む、マイクロ波領域での動作に適したコンポーネント。
【請求項8】
マイクロ波領域で動作可能な位相シフターまたはLCベースのアンテナ素子である、請求項
7記載のコンポーネント。
【請求項9】
マイクロ波領域での動作に適したコンポーネントにおける請求項1から
5までのいずれか1項記載の液晶媒体または請求項
6記載の複合系の使用。
【請求項10】
1種以上の重合性化合物を、
請求項1において記載される1種以上の多色性化合物、請求項1において記載される式Iの1種以上の化合物、請求項1において記載される式IIIの1種以上の化合物、および任意に1種以上の更なる化合物および/または1種以上の添加剤と混合する、液晶媒体を調製する方法。
【請求項11】
請求項1において記載される式Iの1種以上の化合物および請求項1において記載される式IIIの1種以上の化合物を含む液晶媒体のチューナビリティを改善するための
請求項1において記載される1種以上の多色性化合物の使用。
【請求項12】
請求項
7または
8記載の1種以上のコンポーネントを含む、マイクロ波アンテナアレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶媒体および該液晶媒体を含む高周波コンポーネント、特に、高周波デバイス用、例えばマイクロ波の位相をシフトさせるためのデバイス用、とりわけマイクロ波フェーズドアレイアンテナ用のマイクロ波コンポーネントに関する。
【0002】
液晶媒体は、情報を表示するための電気光学的ディスプレイ(液晶ディスプレイ:LCD)においてしばらくの間使用されてきた。
【0003】
最近になって、マイクロ波技術用のコンポーネントに使用するための液晶媒体も、例えば、独国特許出願公開第2004029429号明細書(DE102004029429.1A)および特開2005-120208号公報(JP2005-120208(A))などに提案されている。
【0004】
典型的なマイクロ波適用として、K.C.Gupta,R.Garg,I.Bahl and P.Bhartia:Microstrip Lines and Slotlines,2nd ed.,Artech House,Boston,1996によって記載されている逆マイクロストリップ線路の概念が、例えば、D.Dolfi,M.Labeyrie,P.Joffre and J.P.Huignard:Liquid Crystal Microwave Phase Shifter.Electronics Letters,Vol.29,No.10,pp.926-928,May 1993,N.Martin,N.Tentillier,P.Laurent,B.Splingart,F.Huert,PH.Gelin,C.Legrand:Electrically Microwave Tunable Components Using Liquid Crystals.32nd European Microwave Conference,pp.393-396,Milan 2002において、またはWeil,C.:Passiv steuerbare Mikrowellenphasenschieber auf der Basis nichtlinearer Dielektrika[Passively Controllable Microwave Phase Shifters based on Nonlinear Dielectrics(非線形誘電体に基づく受動的に制御可能なマイクロ波位相シフター)],Darmstaedter Dissertationen D17,2002、C.Weil,G.Luessem and R.Jakoby:Tunable Invert-Microstrip Phase Shifter Device Using Nematic Liquid Crystals,IEEE MTT-S Int.Microw.Symp.,Seattle,Washington,June 2002,pp.367-370において、Merck KGaAより市販用の液晶K15と共に用いられている。C.Weil,G.Luessem and R.Jakoby:Tunable Invert-Microstrip Phase Shifter Device Using Nematic Liquid Crystals,IEEE MTT-S Int.Microw.Symp.,Seattle,Washington,June 2002,pp.367-370は、それをもって約40Vの制御電圧により10GHzで12°/dBの位相シフター特性を達成していた。LCの挿入損失、すなわち液晶における偏光損失によってのみ生じた損失は、Weil,C.:Passiv steuerbare Mikrowellenphasenschieber auf der Basis nichtlinearer Dielektrika[Passively Controllable Microwave Phase Shifters based on Nonlinear Dielectrics(非線形誘電体に基づく受動的に制御可能なマイクロ波位相シフター)],Darmstaedter Dissertationen D17,2002において、10GHzでほぼ1~2dBとなっていた。加えて、位相シフター損失が、誘電LC損失および導波管接合部での損失によって主に決定されることが記載されていた。T.Kuki,H.Fujikake,H.Kamoda and T.Nomoto:Microwave Variable Delay Line Using a Membrane Impregnated with Liquid Crystal.IEEE MTT-S Int.Microwave Symp.Dig.2002,pp.363-366,June 2002、およびT.Kuki,H.Fujikake,T.Nomoto:Microwave Variable Delay Line Using Dual-Frequency Switching-Mode Liquid Crystal.IEEE Trans.Microwave Theory Tech.,Vol.50,No.11,pp.2604-2609,November 2002はまた、平面位相シフター配置と組み合わせた重合LC膜および二重周波数スイッチング方式液晶の使用を取り扱っている。
【0005】
A.Penirschke,S.Mueller,P.Scheele,C.Weil,M.Wittek,C.Hock and R.Jakoby:「Cavity Perturbation Method for Characterization of Liquid Crystals up to 35GHz」,34th European Microwave Conference-Amsterdam,pp.545-548は、中でも、9GHzの周波数での公知の単一液晶物質K15(Merck KGaA,ドイツ国)の特性を記載している。
【0006】
A.Gaebler,F.Goelden,S.Mueller,A.Penirschke and R.Jakoby「Direct Simulation of Material Permittivites using an Eigen-Susceptibility Formulation of the Vector Variational Approach」,12MTC 2009-International Instrumentation and Measurement Technology Conference,Singapore,2009(IEEE),pp.463-467は、公知の液晶混合物E7(Merck KGaA,ドイツ国)の対応する特性を記載している。
【0007】
独国特許出願公開第102004029429号明細書(DE102004029429.1)は、マイクロ波技術における、中でも位相シフターにおける液晶媒体の使用を記載している。この明細書中で、液晶媒体は、対応する周波数範囲におけるそれらの特性に関して調査されている。加えて、この明細書は、少量の式
【化1】
の化合物を、周知のシアノビフェニル化合物
【化2】
と組み合わせて含む液晶媒体、それに他の化合物のほかに、
【化3】
を含む媒体も記載している。
【0008】
しかしながら、これらの比較的単純な混合物は、マイクロ波領域で動作するデバイス中での適用に対して、そのうえ一般的な物理的特性、例えば透明点および相範囲、特に低温での貯蔵に対するそれらの安定性およびそれらの粘度、とりわけそれらの回転粘度に関してさえ制限された性能を示す。
【0009】
これらの化合物の1種以上を含むマイクロ波用途用の更なる液晶媒体、ならびに同様のものが、独国特許出願公開第102010025572号明細書(DE102010025572A)および国際公開第2013/034227号(WO2013/034227)においてマイクロ波用途用に提案されている。
【0010】
例えば、「Influence of dye molecules on the birefringence of liquid crystal mixtures at near infrared frequencies」,Simpson、S.H.,Richardson,R.M.,and Hanna、S.,Journal of Chemical Physics,(2007),Vol.127,Issue(10)pp.104901-104901-14には、ゲストホストシステムにおいて色素を使用して吸収エッジを近赤外領域にさらに近づけることで、液晶の(実効)複屈折を増大させることが提案されている。
【0011】
さらに、「Liquid crystal dyes with high solubility and large dielectric anisotropy」,Wu,Shin-Tson,Margerum,J.David,Ho,Mei-Sing and Fung,Bing M.,Appl.Phys.Lett.(1994),64(17)pp.2191-2193は、一般式
【化4】
(nは、4~14の範囲にあり、特にnは、4、5および6である)のアゾ色素、および近赤外範囲におけるそれらの挙動を記載しており、他の使用の中でも、それらをIRおよびミリ波変調器のための非極性、高複屈折性LC用の「ドーパント」として使用することを提案している。
【0012】
液晶媒体のポリマー安定化だけでなく、キラルドーパントによるドーピングも、いくつかの種類のディスプレイ用途のために様々な理由で提案されてきた。
【0013】
しかしながら、これまで典型的に使用されてきた液晶組成物は、不適当または不十分な材料特性、例えば不都合にも高い損失および/または不適当な位相シフトを有している。液晶媒体を含む高周波技術用の公知のデバイスは、十分な安定性、とりわけ高速応答性が依然として欠如している。
【0014】
したがって、高周波技術用途において、特定の、今まではどちらかというと馴染みの無い独特の特性または特性の組合せを意味しうる、有利で改善された特性を有する新規の液晶媒体が当該技術分野において必要とされている。
【0015】
本発明の目的は、マイクロ波領域における低減された誘電損失および改善された材料品質を有する適切な液晶媒体を提供することであり、ここで、性能指数ηが、高いチューナビリティ(tunability)を、付随する低誘電損失と関係付ける。更なる目的は、とりわけ、例えば、位相シフターおよび漏洩アンテナなどの平面構造を使用したデバイス中での用途用に改善された応答時間を示し、同時に、更なる利点、例えば広範で安定したネマチック相範囲、改善された低温挙動、および低温での動作特性、それに貯蔵寿命の改善を提供する液晶媒体を提供することである。本発明の更なる目的は、以下の詳細な説明から当業者に直ちに明らかとなる。
【0016】
この目的は、独立請求項に定義される主題によって解決され、同時に、好ましい実施形態が、それぞれの従属請求項に記載され、以下でさらに説明される。
【0017】
本発明は、とりわけ、主たる態様、好ましい実施形態および特定の特徴を含む以下の項目を提供し、これらの項目は、単独でまたは組合せにおいて上記の目的を解決し、最終的には追加の利点を提供する。
【0018】
本発明の第1の態様は、
(i)1種以上の多色性化合物と
(ii)式I、IIおよびIIIの化合物の群から選択される1種以上の化合物と、
任意に(iii)1種以上の重合性化合物と
を含む液晶媒体を提供し、ここで、式I、IIおよびIIIの化合物が、
【化5】
[式中、
R
1は、H、1~17個のC原子を有する非フッ素化アルキルもしくは非フッ素化アルコキシまたは2~15個のC原子を有する非フッ素化アルケニル、非フッ素化アルケニルオキシもしくは非フッ素化アルコキシアルキルを表し、
nは、0または1を表し、かつ
【化6】
は、互いに独立して、
【化7】
を表すか、または
【化8】
は、代替的に
【化9】
を表す]、
【化10】
[式中、
R
2は、H、1~17個のC原子を有する非フッ素化アルキルもしくは非フッ素化アルコキシまたは2~15個のC原子を有する非フッ素化アルケニル、非フッ素化アルケニルオキシもしくは非フッ素化アルコキシアルキルを表し、
Z
21は、トランス-CH=CH-、トランス-CF=CF-または-C≡C-を表し、かつ
【化11】
は、互いに独立して、
【化12】
を表す]、
【化13】
[式中、
R
3は、H、1~17個のC原子を有する非フッ素化アルキルもしくは非フッ素化アルコキシまたは2~15個のC原子を有する非フッ素化アルケニル、非フッ素化アルケニルオキシもしくは非フッ素化アルコキシアルキルを表し、
Z
31およびZ
32のうちの一方は、トランス-CH=CH-、トランス-CF=CF-または-C≡C-を表し、他方のものは、トランス-CH=CH-、トランス-CF=CF-または単結合を表し、かつ
【化14】
は、互いに独立して、
【化15】
を表し、または
【化16】
は、代替的に
【化17】
を表す]である。
【0019】
好ましくは、1種以上の多色性化合物は、メソゲン化合物である。さらに、任意に提供される1種以上の重合性化合物は、メソゲン化合物である。
【0020】
驚くべきことに、1種以上の多色性化合物と、上記の式I、IIおよびIIIの化合物の群から選択される1種以上の化合物との組合せとを含む、本発明による液晶媒体を提供することによって、十分に高速なスイッチング時間、適切なネマチック相範囲および改善されたまたは少なくとも適切な誘電損失を有する媒体を得ることが可能であることが見出された。
【0021】
本発明では、式I、IIおよびIIIの化合物の群から選択される1種以上の化合物を含有する媒体中で、1種、2種または3種以上の多色性添加剤、とりわけ二色性色素を使用することによって、液晶媒体のチューナビリティに関する著しい利点を提供することができることが有利には認められた。
【0022】
そのような多色性添加剤は、メソゲンホストの長分子軸の平均方向に対する光の伝搬の配向に応じて異なる電磁吸収スペクトルを示す。長分子軸の平均方向はダイレクターと呼ばれる。特に、これらの添加剤が電磁放射線の可視スペクトルまたは隣接するUV領域または近IR領域における吸収を示す場合、それらは典型的には多色性色素と呼ばれる。好ましくは、本発明による媒体中に提供される多色色素は、二色性色素であり、すなわち、それらは、光の伝搬に対するそれらのダイレクターの配向の2つの異なる方向、すなわち、光の伝搬に対して平行または垂直の異なるスペクトルを示す。それらのそれぞれの吸収値の比は誘電比と呼ばれる。これはメソゲンホストの秩序パラメーターおよび該ホスト中のそれぞれの添加剤の相対的な配向度に依存する。したがって、好ましくは、液晶化合物中に存在するメソゲンコアおよび/またはメソゲン基および/または典型的な末端基と同様に細長い構造を有する化合物が、本出願に従って使用される。
【0023】
特に1種以上の蛍光色素を使用した場合に、多色性色素の使用の更なる利点が見出された。好ましくは、使用されるすべてのまたは大部分の色素が蛍光色素であるか、またはそれらの1種もしくは2種のみが蛍光色素であってよい。マイクロ波領域での大部分の用途のために液晶媒体がキャビティ内で用いられることを考慮した場合、材料の望ましくない漏出の可能性がある。そのような事態は、材料中に存在する色素の色によって都合良く検出されることができる。この場合、蛍光色素は、特別な照明下で、とりわけUV照射で、特に容易に検出可能であるという利点を有している。しかし、場合によっては、非蛍光色素も有益に使用することもできる。
【0024】
好ましくは、本発明による液晶媒体は、アゾ色素およびチアジアゾール色素の群から選択される1種以上の多色性色素を含む。
【0025】
本発明の別の態様は、本発明による液晶媒体と、1種以上の重合性化合物の重合により得られるかまたは得ることができるポリマーとを含む複合系に関する。
【0026】
好ましくは、ポリマー安定化系は、本明細書中に定義される式Pの1種以上の化合物を単独で、または任意により好ましくは重合開始剤をさらに含むそれぞれの混合物からの1種以上の更なる重合性化合物と組み合わせて重合することによって得ることができるかまたは得られる。
【0027】
重合性化合物、とりわけ反応性メソゲンを使用することによって、幅広い温度範囲および改善されたより高速なスイッチング時間、良好なチューナビリティティおよび許容可能な損失を有する安定化された液晶相を得ることができることが見出された。
【0028】
本発明の更なる態様は、高周波技術用のコンポーネントまたはデバイス中での本発明による液晶媒体および複合系の使用、とりわけマイクロ波領域での動作に適したコンポーネント、好ましくはマイクロ波領域で動作可能な位相シフターまたはLCベースのアンテナ素子、およびマイクロ波アンテナアレイに関する。
【0029】
有利には、1種以上の多色性化合物の使用により、上記の式I、IIおよびIIIの化合物の群から選択される1種以上の化合物を含む液晶媒体のチューナビリティに関する著しい利点を提供することができ、これはまた上記のコンポーネントおよびデバイス中での使用に好都合でありうることが有利には見出された。
【0030】
「液晶」、「メソモルフィック化合物」または「メソゲン化合物」という用語は、省略して「メソゲン」とも呼ばれ、適切な温度、圧力、および濃度の条件下で、メソ相(ネマチック、スメクチックなど)として、またはとりわけLC相として存在し得る化合物を意味する。非両親媒性メソゲン化合物は、例えば、1種以上の棒状、バナナ型または円盤状のメソゲン基を含む。
【0031】
「メソゲン基」という用語は、この文脈では、液晶(LC)相挙動を誘発する能力を有する基を意味する。本発明によるメソゲン化合物は、必ずしもLC相それ自体を示す必要はない。それらは他の化合物との混合物においてのみLC相挙動を示すことも可能である。簡略化のために、「液晶」という用語は、これ以降、メソゲン材料およびLC材料の両方に使用される。
【0032】
「キラル」という用語は、一般に、その鏡像と重ね合わすことができない物体を説明するために使用される。「アキラル」(非キラル)な物体は、それらの鏡像と同一である物体である。キラルネマチックおよびコレステリックという用語は、特に明記されない限り、本出願では同義語として使用される。
【0033】
特に明記されない限り、本出願で言及される光の波長は550nmである。
【0034】
セルのセルギャップは、好ましくは1μm~20μmの範囲にあり、とりわけ2.0μm~10μmの範囲内にある。
【0035】
以下では、本発明を、態様、実施形態および特定の特徴の詳細な説明によって例示し、特定の実施形態をより詳細に説明するが、それらによって本発明が限定されることはない。
【0036】
驚くべきことに、1種以上の多色性化合物と、上記の式I、IIおよびIIIの化合物の群から選択される1種以上の化合物とを液晶媒体中に組み合わせて提供することによって、十分に高速なスイッチング時間、適切なネマチック相範囲、改善されたまたは少なくとも適切な誘電損失を含む有利な特性を得ることができることが見出された。
【0037】
本発明に従って使用される多色性添加剤は、好ましくは二色性色素であり、それらは好ましくは大きな二色性比を示す。
【0038】
つまりこれは、それらのスペクトル特性が、ダイレクターに沿った観察とそれに垂直な観察とでは著しく異なることを意味する。
【0039】
多色性化合物、とりわけ二色性色素の濃度およびLC媒体中での二色性色素の合計濃度のそれぞれは、好ましくは0.1%以上15%以下、より好ましくは0.5%以上10%以下、最も好ましくは1.0%以上8%以下の範囲にある。
【0040】
好ましい色素は、アゾ色素およびチアジアゾール色素の群から選択される。上記の好ましい濃度範囲は、とりわけこれらの好ましい二色性色素に適用される。
【0041】
本発明に従って使用されるアゾ色素は、好ましくは、芳香族環に連結された1個または2個のジアゾ基を含む。それらは、より好ましくは、式AおよびD、好ましくは式Aの群から選択される:
【化18】
式中、
X
Aは、極性基で、好ましくは、F、Cl、CN、CF
3、OCF
3、SF
5またはSF
4CF
3、より好ましくはCl、CF
3、SF
5またはSF
4CF
3、最も好ましくはClまたはCF
3から選択され、
L
A、L
’AおよびL
’’Aは、互いに独立して、H、F、ClまたはCN、好ましくはH、FまたはCl、最も好ましくはHまたはFであり、
R
AおよびR
’Aは、互いに独立して、1~6個のC原子、好ましくは1~3個のC原子、最も好ましくは1個のC原子を有するアルキル、または2~6個のC原子、好ましくは2個もしくは3個のC原子を有するアルケニルであり、
R
DおよびR
’Dは、互いに独立して、1~6個のC原子、好ましくは2~5個のC原子、最も好ましくは4個もしくは5個のC原子を有するアルキル、または2~6個のC原子、好ましくは3個、4個もしくは5個のC原子を有するアルケニルである。
【0042】
本発明に従って使用されるチアジアゾール色素は、好ましくはジベンゾチアジアゾールで、より好ましくは式Tから選択される:
【化19】
式中、
RおよびR’は、互いに独立して、1~6個のC原子、好ましくは2~5個のC原子、最も好ましくは4個または5個のC原子を有するアルコキシであり、かつ
L’およびL’’は、互いに独立して、H、FまたはCl、好ましくはFである。
【0043】
本発明によれば、1種以上の重合性化合物が液晶媒体中に任意に提供される。好ましい実施形態によれば、1種以上の重合性化合物が本発明の液晶媒体中に存在する。
【0044】
好ましくは、本発明による液晶媒体は、式Pの1種以上の化合物を含む:
【化20】
式中、
P
a、P
bは、それぞれ互いに独立して、重合性基であり、
Sp
a、Sp
bは、それぞれ互いに独立して、スペーサー基を表し、
s1、s2は、それぞれ互いに独立して、0または1を表し、
n1、n2は、それぞれ互いに独立して、0または1を表し、
Qは、単結合、-CF
2O-、-OCF
2-、-CH
2O-、-OCH
2-、-(CO)O-、-O(CO)-、-(CH
2)
4-、-CH
2-CH
2-、-CF
2-CF
2-、-CF
2-CH
2-、-CH
2-CF
2-、-CH=CH-、-CF=CF-、-CF=CH-、-CH=CF-、-(CH
2)
3O-、-O(CH
2)
3-、-C≡C-、-O-、-CH
2-、-(CH
2)
3-、-CF
2-、好ましくは-CF
2O-を表し、
Z
1、Z
4は、互いに独立して、単結合、-CF
2O-、-OCF
2-、-CH
2O-、-OCH
2-、-(CO)O-、-O(CO)-、-(CH
2)
4-、-CH
2-CH
2-、-CF
2-CF
2-、-CF
2-CH
2-、-CH
2-CF
2-、-CH=CH-、-CF=CF-、-CF=CH-、-CH=CF-、-(CH
2)
3O-、-O(CH
2)
3-、-C≡C-、-O-、-CH
2-、-(CH
2)
3-、-CF
2-を表し、
ここで、Z
1およびQまたはZ
4およびQのそれぞれは、-CF
2O-および-OCF
2-から選択される基を同時には表さず、
A
1、A
2、A
3、A
4は、それぞれ互いに独立して、以下の群から選択されるジラジカル基(diradical group)を表し:
a)トランス-1,4-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキセニレンおよび1,4’-ビシクロヘキシレンから成る群であって、ここでさらに、1個以上の隣接していないCH
2基は、-O-および/または-S-によって置き換えられていてよく、ここでさらに、1個以上のH原子は、Fによって置き換えられていてよく、
b)1,4-フェニレンおよび1,3-フェニレンから成る群であって、ここでさらに、1個または2個のCH基は、Nによって置き換えられていてよく、ここでさらに、1個以上のH原子は、Lによって置き換えられていてよく、
c)テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、テトラヒドロフラン-2,5-ジイル、シクロブタン-1,3-ジイル、ピペリジン-1,4-ジイル、チオフェン-2,5-ジイルおよびセレノフェン-2,5-ジイルから成る群であって、それらの各々は、Lで一置換または多置換されていてもよく、
d)5~20個の環式C原子を有する飽和、部分不飽和または完全不飽和の、任意に置換された多環式基から成る群であって、該環式C原子の1個以上はさらにヘテロ原子によって置き換えられていてよく、好ましくは、ビシクロ[1.1.1]ペンタン-1,3-ジイル、ビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジイル、スピロ[3.3]ヘプタン-2,6-ジイル、
【化21】
から成る群から選択され、ここでさらに、これらの基における1個以上のH原子は、Lによって置き換えられていてよく、かつ/または1個以上の二重結合は、単結合によって置き換えられていてよく、かつ/または1個以上のCH基は、Nによって置き換えられていてよく、
またはA
3は、代替的に単結合であってもよく、
Lは、それぞれ出現する場合に、同一または異なって、F、Cl、CN、SCN、SF
5または1~12個のC原子を有する直鎖もしくは分枝鎖の、それぞれの場合に任意にフッ素化されたアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシもしくはアルコキシカルボニルオキシを表し、
R
03、R
04は、それぞれ互いに独立して、H、Fまたは1~12個のC原子を有する直鎖もしくは分枝鎖のアルキルを示し、ここでさらに、1個以上のH原子は、Fによって置き換えられていてよく、
Mは、-O-、-S-、-CH
2-、-CHY
1-または-CY
1Y
2-を表し、かつ
Y
1およびY
2は、それぞれ互いに独立して、R
03について上記で示される意味の1つを有するか、またはClもしくはCNを表し、かつ基Y
1およびY
2のうちの一方は、代替的に-OCF
3、好ましくはH、F、Cl、CNまたはCF
3を表す。
【0045】
任意に重合開始剤がさらに含まれ、ここで、好ましくは1種以上の重合開始剤がLC媒体中に存在する。
【0046】
本発明に従って好ましくは使用される式Pの重合性化合物は、以下の式から成る群から選択される:
【化22-1】
【化22-2】
【化22-3】
【化22-4】
【化22-5】
【化22-6】
式中、Lは、それぞれ出現する場合に、同一または異なって、上記および下記に示される意味の1つを有し、rは、0、1、2、3または4を表し、sは、0、1、2または3を表し、かつnは、1~24、好ましくは1~12、より好ましくは2~8の整数を表し、ここで、単結合または二重結合の端に基が示されていない場合、それは末端CH
3基またはCH
2基である。
【0047】
式P1-1~P12-4中、
【化23】
は、好ましくは、以下の式
【化24】
から成る群から選択される基を表し、該基は、特に好ましくは、
【化25】
から選択される。
【0048】
式P中、部分構造A
2-Q-A
3は、好ましくは、式
【化26】
[式中、少なくとも1個の環は、少なくとも1個の基(L=F)で置換されており、かつrは、それぞれの場合に独立して、0、1、2、3または4、好ましくは0、1または2である]の基を表す。
【0049】
式Pおよびその下位式の化合物におけるPaおよびPbは、好ましくは、それぞれ独立して、アクリレートまたはメタクリレート、さらにはフルオロアクリレートを表す。
【0050】
式Pおよびその下位式の化合物におけるSpaおよびSpbは、好ましくは、-(CH2)p1-、-(CH2)p1-O-、-(CH2)p1-O-CO-および-(CH2)p1-O-CO-O-ならびにそれらの鏡像から成る群から選択される基を表し、該基中、p1は、1~12、好ましくは1~6、特に好ましくは1、2または3の整数を表し、ここで、これらの基は、O原子が直接隣接しないようにPaまたはPbに連結されている。
【0051】
式Pの化合物の中で特に好ましいのは、基PaおよびPbが、ビニルオキシ、アクリレート、メタクリレート、フルオロアクリレート、クロロアクリレート、オキセタンおよびエポキシド基から成る群から選択され、好ましくはアクリレートまたはメタクリレート基であり、かつ/または基SpaおよびSpbが、-(CH2)p1-、-(CH2)p1-O-、-(CH2)p1-O-CO-および-(CH2)p1-O-CO-O-ならびにそれらの鏡像から成る群から選択され、該基中、p1は、1~12、好ましくは1~6、特に好ましくは1、2または3の整数を表し、ここで、これらの基は、O原子が直接隣接しないようにPaまたはPbに連結されている化合物である。
【0052】
本発明の好ましい実施形態に従って使用される式Pの化合物は、より好ましくは6員環であるちょうど2個の環を含む、すなわちn1=n2=0の化合物である。以下の式の化合物の群から選択される化合物が特に好ましい:
【化27-1】
【化27-2】
【化27-3】
式中、P
a、P
b、Sp
a、Sp
b、s1およびs2は、上記式Pのもとで定義されるとおりであり、好ましくは、Sp
aおよびSp
bは、それぞれ独立して、アルキレン-(CH
2)
n-であり、ここで、nは、好ましくは3、4、5、6または7であり、かつ上記式中のP
aおよびP
bは、それぞれ独立して、好ましくはメタクリレートまたはアクリレート部分構造である。式Pa、Pb、Pc、Pd、Pe、Pf、Pg、PhおよびPiの群から選択される化合物、とりわけ式Paの化合物を使用することが特に好ましい。
【0053】
本発明によるポリマー安定化デバイス用のポリマー前駆体に使用するための適切で好ましいコモノマーは、例えば、以下の式から選択される:
【化28-1】
【化28-2】
【化28-3】
【化28-4】
式中、それぞれの基は、以下の意味を有する:
P
1およびP
2は、それぞれ互いに独立して、重合性基(好ましくはP
aについて上記または下記に示される意味の1つを有する)、特に好ましくは、アクリレート、メタクリレート、フルオロアクリレート、オキセタン、ビニルオキシまたはエポキシ基を表し、
Sp
1およびSp
2は、それぞれ互いに独立して、単結合またはスペーサー基(好ましくはSp
aについて上記または下記に示される意味の1つを有する)、特に好ましくは、-(CH
2)
p1-、-(CH
2)
p1-O-、-(CH
2)
p1-CO-O-、-(CH
2)
p1-O-CO-または-(CH
2)
p1-O-CO-O-を表し、該基中、p1は、1~12の整数であり、ここで、最後に言及した基は、隣接する環にO原子を介して連結されており、
あるいはまたP
1-Sp
1-およびP
2-Sp
2-の1個以上は、R
aaであってもよく、ただし化合物中に存在するP
1-Sp
1-およびP
2-Sp
2-の少なくとも1個は、R
aaではなく、
R
aaは、H、F、Cl、CNまたは1~25個のC原子を有する線状もしくは分枝状のアルキル(ここで、1個以上の隣接していないCH
2基は、OまたはS原子のいずれも互いに直接連結しないように、それぞれ互いに独立して、-C(R
0)=C(R
00)-、-C≡C-、-N(R
0)-、-O-、-S-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-で置き換えられていてよく、ここでまた、1個以上のH原子は、F、Cl、CNまたはP
1-Sp
1-で置き換えられていてもよい)、特に好ましくは、1~12個のC原子を有する線状もしくは分枝状の、任意に一フッ素化もしくは多フッ素化されたアルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニルまたはアルキルカルボニルオキシ(ここで、アルケニルおよびアルキニル基は、少なくとも2個のC原子を有し、かつ分枝状の基は、少なくとも3個のC原子を有する)を表し、
R
0、R
00は、それぞれ出現する場合に、それぞれ互いに独立して、Hまたは1~12個のC原子を有するアルキルを表し、
Z
1は、-O-、-CO-、-C(R
yR
z)-または-CF
2CF
2-を表し、
Z
2およびZ
3は、それぞれ互いに独立して、-CO-O-、-O-CO-、-CH
2O-、-OCH
2-、-CF
2O-、-OCF
2-または-(CH
2)
n-(ここで、nは、2、3または4である)を表し、
R
yおよびR
zは、それぞれ互いに独立して、H、F、CH
3またはCF
3を表し、
Lは、それぞれ出現する場合に、互いに独立して、F、Cl、CN、SCN、SF
5または12個までのC原子を有する線状もしくは分枝状の、任意に一フッ素化もしくは多フッ素化されたアルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシもしくはアルコキシカルボニルオキシ、好ましくはFを表し、
L’およびL’’は、それぞれ互いに独立して、H、FまたはClを表し、
rは、0、1、2、3または4を表し、
sは、0、1、2または3を表し、
tは、0、1または2を表し、かつ
xは、0または1を表す。
【0054】
本出願によるデバイスに使用するための適切で好ましいコモノマーは、例えば、一反応性化合物の群から選択され、該化合物は、1~9重量%、特に好ましくは4~7重量%の範囲の濃度でポリマー安定化系の前駆体中に存在する。好ましい一反応性化合物は、式M1~M29の化合物であり、ここで、化合物が1個だけの反応性基を有するようにP1-Sp1-およびP2-Sp2-の1個以上は、Raaである。
【0055】
特に好ましい一反応性化合物は、以下の式
【化29】
[式中、P
1、Sp
1およびR
aaは、上記で示されるそれぞれの意味を有し、かつP
1は、好ましくは、アクリレート(CH
2=CH-CO-O-)またはメタクリレート(CH
2=C(CH
3)-CO-O-)である]の化合物である。
【0056】
これらの化合物の中でも、式
【化30】
[式中、
nは、1~16、好ましくは2~8の範囲の整数、好ましくは偶数の整数であり、
mは、1~15、好ましくは2~7の範囲の整数である]の化合物が特に好ましい。
【0057】
LC媒体またはLC媒体中に存在する重合性もしくは重合した成分が、以下の式の1種以上の化合物を含む、上記および下記に記載される、好ましくは高周波技術用の、とりわけ位相シフターまたはマイクロ波アンテナ、例えば漏洩アンテナ用のLC媒体、LCデバイス、方法または使用が特に好ましい:
【化31】
式中、P
a、P
b、Sp
a、Sp
b、s1、s2およびLは、上記および下記に示される意味を有し、rは、0、1、2、3または4を表し、Z
2およびZ
3は、それぞれ互いに独立して、-CF
2-O-もしくは-O-CF
2-を表し、好ましくは、Z
2は-CF
2-O-であり、かつZ
3は-O-CF
2-であるかもしくはその逆であり、またはZ
2は-CO-O-であり、かつZ
3は-O-CO-であるかもしくはその逆であり、最も好ましくは、Z
2は-CF
2-O-であり、かつZ
3は-O-CF
2-であるか、またはZ
2は-CO-O-であり、かつZ
3は-O-CO-である。
【0058】
1つの実施形態では、1個以上の1,4-フェニレンを含むコアの代わりにシクロヘキシレンコアを有する反応性メソゲンを使用することが好ましい。このことは、一般にUV照射に対する、とりわけ重合中に使用されるUV照射に対する安定性の点で有利でありうる。結果得られるポリマー安定化相、すなわち複合系は、改善されたまたは十分に高い電圧保持率(VHR)を有している。
【0059】
さらに、フルオロフェニル液晶化合物を含む液体の液晶ホストと組み合わせてシクロヘキシレン反応性メソゲンを使用することによって、このホストが反応性メソゲンによって効果的に安定化されることで、先進デバイスに使用するために特に有益である高いVHRが生じることも見出された。
【0060】
1つの実施形態では、本発明による液晶媒体は、上記の式Iの1種以上の化合物を含む。別の実施形態では、本発明による液晶媒体は、上記の式IIの1種以上の化合物を含む。更なる実施形態では、本発明による液晶媒体は、上記の式IIIの1種以上の化合物を含む。
【0061】
しかしながら、より好ましくは、本発明による液晶媒体は、
- 式Iの1種以上の化合物および
- 式IIの1種以上の化合物
または
- 式Iの1種以上の化合物および
- 式IIIの1種以上の化合物
または
- 式IIの1種以上の化合物および
- 式IIIの1種以上の化合物
または、最も好ましくは、
- 式Iの1種以上の化合物および
- 式IIの1種以上の化合物および
- 式IIIの1種以上の化合物
を含む。
【0062】
追加的に、本発明に従って使用される液晶媒体は、特定の実施形態では、好ましくは、式IVの1種以上の化合物を含む:
【化32】
式中、
【化33】
は、
【化34】
を示し、好ましくは、
【化35】
を示し、特に好ましくは、
【化36】
を示し、
L
4は、1~6個のC原子を有するアルキル、3~6個のC原子を有するシクロアルキルまたは4~6個のC原子を有するシクロアルケニル、好ましくはCH
3、C
2H
5、n-C
3H
7(-(CH
2)
2CH
3)、i-C
3H
7(-CH(CH
3)
2)、シクロプロピル、シクロブチル、シクロヘキシル、シクロペンタ-1-エニルまたはシクロヘキサ-1-エニル、特に好ましくはCH
3、C
2H
5、シクロプロピルまたはシクロブチルを表し、
X
4は、H、1~3個のC原子を有するアルキルまたはハロゲン、好ましくはH、FもしくはCl、特に好ましくはHもしくはF、最も好ましくはFを表し、
R
41~R
44は、互いに独立して、それぞれ1~15個のC原子を有する非フッ素化アルキルもしくは非フッ素化アルコキシ、それぞれ2~15個のC原子を有する非フッ素化アルケニル、非フッ素化アルケニルオキシもしくは非フッ素化アルコキシアルキル、またはそれぞれ15個までのC原子を有するシクロアルキル、アルキルシクロアルキル、シクロアルケニル、アルキルシクロアルケニル、アルキルシクロアルキルアルキルもしくはアルキルシクロアルケニルアルキル、あるいはまたR
43およびR
44のうちの一方または両方ともHを表し、
好ましくは、R
41およびR
42は、互いに独立して、それぞれ1~7個のC原子を有する非フッ素化アルキルもしくは非フッ素化アルコキシ、またはそれぞれ2~7個のC原子を有する非フッ素化アルケニル、非フッ素化アルケニルオキシもしくは非フッ素化アルコキシアルキルを表し、
特に好ましくは、R
41は、1~7個のC原子を有する非フッ素化アルキル、またはそれぞれ2~7個のC原子を有する非フッ素化アルケニル、非フッ素化アルケニルオキシもしくは非フッ素化アルコキシアルキルを表し、
特に好ましくは、R
42は、それぞれ1~7個のC原子を有する非フッ素化アルキルまたは非フッ素化アルコキシを表し、かつ
好ましくは、R
43およびR
44は、H、1~5個のC原子を有する非フッ素化アルキル、3~7個のC原子を有する非フッ素化シクロアルキルもしくはシクロアルケニル、それぞれ4~12個のC原子を有する非フッ素化アルキルシクロヘキシルもしくは非フッ素化シクロヘキシルアルキル、または5~15個のC原子を有する非フッ素化アルキルシクロヘキシルアルキル、より好ましくはシクロプロピル、シクロブチルもしくはシクロヘキシルを表し、さらにより好ましくは、R
43およびR
44のうちの少なくとも一方は、n-アルキル、特に好ましくはメチル、エチルまたはn-プロピルを表し、他方のものは、Hまたはn-アルキル、特に好ましくはH、メチル、エチルまたはn-プロピルを表す。
【0063】
好ましくは、液晶媒体は、好ましくは20μm-1以上、より好ましくは40μm-1以上、さらにより好ましくは60μm-1以上の範囲、最も好ましくは80μm-1以上260μm-1以下の範囲の絶対値のらせん誘起力(HTP)を有する1種以上のキラルドーパントを含有する。
【0064】
したがって、好ましい実施形態では、1種以上のキラル化合物から成るキラル成分が、本出願によるメソゲン媒体中に追加的に存在してよい。使用されるこのキラル成分のキラル化合物は、存在する場合、好ましくは高い絶対値のHTPを有する。それらは一般的に比較的低い濃度でメソゲン基礎混合物に添加されるのでキラルドーパントとも呼ばれる。それらは好ましくはアキラル成分に良好な溶解性を有する。それらは、コレステリックピッチが光の波長よりもはるかに小さい小さな値を有する限り、メソゲン媒体のメソゲン特性または液晶特性を損なわないか、または損なったとしても僅かな程度である。しかしながら、コレステリックピッチが光の波長のオーダーである場合には、それらはコレステリック相の構造とは全く異なる構造を有するブルー相を誘発する。2種以上のキラル化合物が用いられる場合、それらは同一または反対の回転方向および同一または反対のねじれ温度依存性を有することができる。
【0065】
Merck KGaAより市販用の液晶混合物MLC-6828においては、20μm-1以上、とりわけ40μm-1以上、特に好ましくは70μm-1以上のHTPを有するキラル化合物が特に好ましい。
【0066】
本発明の好ましい実施形態では、キラル成分は、すべてが同じHTPの符号を有する2種以上のキラル化合物から成る。
【0067】
個々の化合物のHTPの温度依存性は、高くても低くてもよい。媒体のピッチの温度依存性は、HTPの異なる温度依存性を有する化合物を対応する比率で混合することによって補償することができる。
【0068】
光学活性成分については、多数のキラルドーパントが当業者に入手可能であり、例えば、コレステリルノナノエート、R/S-811、R/S-1011、R/S-2011、R/S-3011、R/S-4011、B(OC)2C*H-C-3またはCB15(すべてMerck KGaA,ダルムシュタット在)などのいくつかは商業的に入手可能である。
【0069】
特に適切なキラルドーパントは、1個以上のキラル基および1個以上のメソゲン基、またはキラル基と共にメソゲン基を形成する1個以上の芳香族または脂環式基を含有する化合物である。
【0070】
適切なキラル基は、例えば、キラル分枝炭化水素基、キラルエタンジオール、ビナフトールまたはジオキソラン、さらには、糖誘導体、糖アルコール、糖酸、乳酸、キラル置換グリコール、ステロイド誘導体、テルペン誘導体、アミノ酸または少数の、好ましくは1~5種のアミノ酸の配列から成る群から選択される一価または多価キラル基である。
【0071】
好ましいキラル基は、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、アラビノースおよびデキストロースなどの糖誘導体;例えば、ソルビトール、マンニトール、イジトール、ガラクチトールまたはそれらの無水誘導体などの糖アルコール、とりわけ、ジアンヒドロソルビド(1,4:3,6-ジアンヒドロ-D-ソルビド、イソソルビド)、ジアンヒドロマンニトール(イソソルビトール)またはジアンヒドロイジトール(イソイジトール)などのジアンヒドロヘキシトール;例えば、グルコン酸、グロン酸およびケトグロン酸などの糖酸;例えば、1個以上のCH2基がアルキルもしくはアルコキシで置換されているモノもしくはオリゴエチレンまたはプロピレングリコールなどのキラル置換グリコール基;例えば、アラニン、バリン、フェニルグリシンもしくはフェニルアラニンなどのアミノ酸、または1~5種のこれらのアミノ酸の配列;例えば、コレステリルまたはコール酸基などのステロイド誘導体;例えば、メンチル、ネオメンチル、カンフェイル、ピネイル、テルピネイル、イソロンギホリル、フェンキル、カレイル、ミルテニル、ノピル、ゲラニイル、リナロイル、ネリル、シトロネリルまたはジヒドロシトロネリルなどのテルペン誘導体である。
【0072】
適切なキラル基およびメソゲンキラル化合物は、例えば、独国特許出願公開第3425503号明細書(DE3425503)、独国特許出願公開第3534777号明細書(DE3534777)、独国特許出願公開第3534778号明細書(DE3534778)、独国特許出願公開第3534779号明細書(DE3534779)および独国特許出願公開第3534780号明細書(DE3534780)、独国特許出願公開第4342280号明細書(DE4342280)、欧州特許出願公開第01038941号明細書(EP01038941)ならびに独国特許出願公開第19541820号明細書(DE19541820)に記載されている。
【0073】
本発明に従って好ましく使用されるキラル化合物は、下記に示される式から成る群から選択される。
【0074】
以下の式A-I~A-IIIの化合物から成る群から選択されるドーパントが特に好ましい:
【化37】
式中、
R
a11およびR
a12は、互いに独立して、2~9個のC原子、好ましくは7個までのC原子を有するアルキル、オキサアルキルまたはアルケニルであり、かつR
a11は、代替的にメチルまたは1~9個のC原子を有するアルコキシであり、好ましくは、両方がアルキル、好ましくはn-アルキルであり、
R
a21およびR
a22は、互いに独立して、1~9個のC原子、好ましくは7個までのC原子を有するアルキルまたはアルコキシ、2~9個のC原子、好ましくは7個までのC原子を有するオキサアルキル、アルケニルまたはアルケニルオキシであり、好ましくは、両方がアルキル、好ましくはn-アルキルであり、
R
a31およびR
a32は、互いに独立して、2~9個のC原子、好ましくは7個までのC原子を有するアルキル、オキサアルキルまたはアルケニルであり、かつR
a11は、代替的にメチルまたは1~9個のC原子を有するアルコキシであり、好ましくは、両方がアルキル、好ましくはn-アルキルである。
【0075】
以下の式の化合物から成る群から選択されるドーパントが特に好ましい:
【化38】
【0076】
更なる好ましいドーパントは、以下の式A-IV:
【化39】
[式中、基
【化40】
は、
【化41】
好ましくはジアンヒドロソルビトールである]のイソソルビド、イソマンニトールまたはイソイジトールの誘導体、
および、例えば、ジフェニルエタンジオール(ヒドロベンゾイン)、とりわけ、以下の式A-V:
【化42】
[式中、
【化43】
は、それぞれ互いに独立して、Lで一置換、二置換もしくは三置換されていてもよい1,4-フェニレン、または1,4-シクロヘキシレンであり、
Lは、H、F、Cl、CNまたは1~7個のC原子を有する任意にハロゲン化されたアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニルもしくはアルコキシカルボニルオキシであり、
cは、0または1であり、
Z
0は、-COO-、-OCO-、-CH
2CH
2-または単結合であり、かつ
R
0は、1~12個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニルまたはアルキルカルボニルオキシである]のメソゲンヒドロベンゾイン誘導体(示されていないが、(R,S)、(S,R)、(R,R)および(S,S)エナンチオマーを含む)などのキラルエタンジオールである。
【0077】
式A-IVの化合物は、国際公開第98/00428号(WO98/00428)に記載されている。式A-Vの化合物は、英国特許出願公開第2328207号明細書(GB-A-2,328,207)に記載されている。
【0078】
非常に特に好ましいドーパントは、国際公開第02/94805号(WO02/94805)に記載されるキラルビナフチル誘導体、国際公開第02/34739号(WO02/34739)に記載されるキラルビナフトールアセタール誘導体、国際公開第02/06265号(WO02/06265)に記載されるキラルTADDOL誘導体、ならびに国際公開第02/06196号(WO02/06196)および国際公開第02/06195号(WO02/06195)に記載される少なくとも1個のフッ素化された架橋基および末端または中心のキラル基を有するキラルドーパントである。
【0079】
式A-VIのキラル化合物が特に好ましい:
【化44】
式中、
X
1、X
2、Y
1およびY
2は、それぞれ互いに独立して、F、Cl、Br、I、CN、SCN、SF
5、1~25個のC原子を有する直鎖もしくは分枝鎖のアルキル(該基は、F、Cl、Br、IもしくはCNで一置換もしくは多置換されていてよく、ここでさらに、1個以上の隣接していないCH
2基は、Oおよび/またはS原子が互いに直接連結しないように、それぞれ互いに独立して、-O-、-S-、-NH-、NR
0-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、-S-CO-、-CO-S-、-CH=CH-もしくは-C≡C-で置き換えられていてよい)、重合性基または20個までのC原子を有するシクロアルキルもしくはアリール(該基は、ハロゲン、好ましくはFで、または重合性基で任意に一置換もしくは多置換されていてよい)であり、
x
1およびx
2は、それぞれ互いに独立して、0、1または2であり、
y
1およびy
2は、それぞれ互いに独立して、0、1、2、3または4であり、
B
1およびB
2は、それぞれ互いに独立して、芳香族または完全もしくは部分飽和脂肪族6員環(ここで、1個以上のCH基は、N原子で置き換えられていてよく、かつ1個以上の隣接していないCH
2基は、Oおよび/またはSで置き換えられていてよい)であり、
W
1およびW
2は、それぞれ互いに独立して、-Z
1-A
1-(Z
2-A
2)m-Rであり、かつ2つのうちの一方は、代替的にR
1またはA
3であり、ここで、両方が同時にHではなく、または
【化45】
は、
【化46】
であり、
U
1およびU
2は、それぞれ互いに独立して、CH
2、O、S、COまたはCSであり、 V
1およびV
2は、それぞれ互いに独立して、(CH
2)
n(ここで、1~4個の隣接していないCH
2基は、Oおよび/またはSで置き換えられていてよい)であり、かつV
1およびV
2の一方は単結合であり、
【化47】
が、
【化48】
である場合、両方が単結合であり、
Z
1およびZ
2は、それぞれ互いに独立して、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-O-COO-、-CO-NR
0-、-NR
0-CO-、-O-CH
2-、-CH
2-O-、-S-CH
2-、-CH
2-S-、-CF
2-O-、-O-CF
2-、-CF
2-S-、-S-CF
2-、-CH
2-CH
2-、-CF
2-CH
2-、-CH
2-CF
2-、-CF
2-CF
2-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-CH=CH-、-CF=CH-、-CH=CF-、-CF=CF-、-C≡C-、これらの基の2個の組合せ(ここで、2個のOおよび/またはSおよび/またはN原子は、互いに直接結合していない)、好ましくは、-CH=CH-COO-、または-COO-CH=CH-、または単結合であり、
A
1、A
2およびA
3は、それぞれ互いに独立して、1,4-フェニレン(ここで、1個または2個の隣接していないCH基は、Nで置き換えられていてよい)、1,4-シクロヘキシレン(ここで、1個または2個の隣接していないCH
2基は、Oおよび/またはSで置き換えられていてよい)、1,3-ジオキソラン-4,5-ジイル、1,4-シクロヘキセニレン、1,4-ビシクロ[2.2.2]オクチレン、ピペリジン-1,4-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイル、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイルまたは1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル(ここで、これらの各基は、Lで一置換もしくは多置換されていてよい)であり、加えて、A
1は単結合であり、
Lは、ハロゲン原子、好ましくは、F、CN、NO
2、1~7個の炭素原子を有するアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニルまたはアルコキシカルボニルオキシ(ここで、1個以上のH原子は、FまたはClで置き換えられていてよい)であり、
mは、それぞれの場合に独立して、0、1、2または3であり、かつ
RおよびR
1は、それぞれ互いに独立して、H、F、Cl、Br、I、CN、SCN、SF
5、それぞれ1個もしくは3個~25個のC原子を有する直鎖もしくは分枝鎖のアルキル(該基は、F、Cl、Br、IまたはCNで任意に一置換または多置換されていてよく、ここで、1個以上の隣接していないCH
2基は、-O-、-S-、-NH-、-NR
0-、-CO-、-COO-、-OCO-、-O-COO-、-S-CO-、-CO-S-、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられていてよく、ここで、2個のOおよび/またはS原子は、互いに直接結合されていない)または重合性基である。
【0080】
式A-VI-1
【化49】
のキラルビナフチル誘導体、とりわけ以下の式A-VI-1a~A-VI-1c:
【化50】
[式中、
環BおよびZ
0は、式A-IVで定義されるとおりであり、
R
0は、式A-IVで定義されるとおりであるか、Hまたは1~4個のC原子を有するアルキルであり、かつ
bは、0、1または2であり、かつ
Z
0は、とりわけ、-OCO-または単結合である]から選択されるものが特に好ましい。
【0081】
さらに、式A-VI-2
【化51】
のキラルビナフチル誘導体、とりわけ、以下の式A-VI-2a~A-VI-2f:
【化52】
[式中、R
0は、式A-VIで定義されるとおりであり、かつXは、H、F、Cl、CNまたはR
0、好ましくはFである]から選択されるものが特に好ましい。
【0082】
キラルドーパントの濃度、またはLC媒体中でのキラルドーパントの合計濃度は、好ましくは0.05%以上~5%以下、より好ましくは0.1%以上~1%以下、最も好ましくは0.2%以上0.8%以下の範囲にある。これらの好ましい濃度範囲は、とりわけ、キラルドーパントS-2011またはその鏡像異性体R-2011(両方ともMerck KGaA社製)ならびに同一または同様のHTPを有するキラルドーパントに適用される。S-2011と比較して高いまたは低い絶対値を有するキラルドーパントについては、S-2011のHTP値に対するそれらのHTP値の比に応じて、これらの好ましい濃度を比例して減少または増加させてよい。
【0083】
本出願に従った液晶媒体は、好ましくは、全体で5%~70%、より好ましくは5%~60%、特に好ましくは30%~50%の式Iの化合物を含む。
【0084】
本出願に従った液晶媒体は、好ましくは、全体で20%~80%、より好ましくは30%~70%、特に好ましくは35%~65%の式IIの化合物を含む。
【0085】
本出願に従った液晶媒体は、好ましくは、全体で5%~45%、より好ましくは10%~40%、特に好ましくは15%~35%の式IIIの化合物を含む。
【0086】
液晶媒体がそれぞれの場合に式I、IIおよびIIIの1種以上の化合物を含む本発明の好ましい実施形態では、式Iの化合物の濃度は、好ましくは45%~100%、より好ましくは50%~100%、特に好ましくは55%~100%である。
【0087】
式IIの化合物の濃度は、好ましくは1%~20%、より好ましくは2%~15%、特に好ましくは3%~10%であり、かつ式IIIの化合物の濃度は、好ましくは1%~30%、より好ましくは5%~25%、特に好ましくは5%~20%である。
【0088】
液晶媒体がそれぞれの場合に式I、IIおよびIIIの1種以上の化合物を含む本発明の更なる好ましい実施形態では、式Iの化合物の濃度は、好ましくは15%~40%、より好ましくは20%~35%、特に好ましくは25%~30%であり、式IIの化合物の濃度は、好ましくは10%~35%、より好ましくは15%~30%、特に好ましくは20%~25%であり、式IIIの化合物の濃度は、好ましくは25%~50%、より好ましくは30%~45%、特に好ましくは35%~40%である。
【0089】
液晶媒体がそれぞれの場合に式IおよびIIの1種以上の化合物を含むが、式IIIの化合物は最大でも5%、好ましくは全く含まない本発明の好ましい実施形態では、式Iの化合物の濃度は、好ましくは10%~50%、より好ましくは20%~40%、特に好ましくは25%~35%であり、式IIの化合物の濃度は、好ましくは40%~70%、より好ましくは50%~65%、特に好ましくは55%~60%であり、式IIIの化合物の濃度は、好ましくは1%~4%、より好ましくは1%~3%、特に好ましくは0%である。
【0090】
本出願に従った液晶媒体は、特に好ましくは、全体で50%~80%、より好ましくは55%~75%、特に好ましくは57%~70%の下記で定義される式I-1の化合物および/または全体で5%~70%、より好ましくは6%~50%、特に好ましくは8%~20%の下記で定義される式I-2およびI-3の化合物の群から選択される化合物、最も好ましくは式I-2および式I-3の両方の化合物を含む。
【0091】
本出願に従った液晶媒体は、同様に好ましくは、全体で5%~60%、好ましくは10%~50%、特に好ましくは7%~20%の式IIの化合物を含む。
【0092】
単一の同族化合物が使用される場合、これらの限定は、この同族体の濃度に対応し、その濃度は、好ましくは2%~20%、特に好ましくは1%~15%である。2種以上の同族体が使用される場合、個々の同族体の濃度は、同様に特に好ましくは、それぞれの場合に1%~15%である。
【0093】
式I~IIIの化合物には、それぞれの場合に、3よりも大きい誘電異方性を有する誘電的に正の化合物、3未満かつ-1.5超の誘電異方性を有する誘電的に中性の化合物、および-1.5以下の誘電異方性を有する誘電的に負の化合物が含まれる。
【0094】
本発明の好ましい実施形態では、液晶媒体は、下記の式I-1およびI-2の化合物の群から選択される1種以上の式Iの化合物を含み、好ましくは同時に式I-1の1種以上の化合物と式I-2の1種以上の化合物とを含む。任意に、好ましくは1つの実施形態によれば、下記の式I-3の1種以上の化合物がさらに含まれる。特に好ましい実施形態では、式Iの化合物は、大部分が式I-1、I-2およびI-3の化合物から選択される1種以上の化合物から成り、より好ましくは本質的にそれらから成り、最も好ましくは完全にそれらから成る:
【化53】
式中、
L
1は、HまたはF、好ましくはHであり、かつ
他の基は、式Iについて上記で示されるそれぞれの意味を有し、好ましくは、
R
1は、1~7個のC原子を有する非フッ素化アルキルまたは2~7個のC原子を有する非フッ素化アルケニルを表す。
【0095】
本発明による媒体は、好ましくは、式I-1の1種以上の化合物を含み、該化合物は、より好ましくは、式I-a~I-cの化合物の群から、さらにより好ましくは式I-1cの化合物の群から選択され、ここで、より好ましくは、式I-1の化合物は、大部分がそれらから成り、さらにより好ましくは本質的にそれらから成り、特に好ましくは完全にそれらから成る:
【化54】
式中、基は、式I-1について上記で示されるそれぞれの意味を有し、ここで、好ましくは、
R
1は、非フッ素化アルキルまたは非フッ素化アルケニルを表す。
【0096】
媒体は、好ましくは、式I-2の1種以上の化合物を含み、該化合物は、より好ましくは、式I-2a~I-2dの化合物の群から、さらにより好ましくは式I-2dの化合物の群から選択され、ここで、好ましくは、式I-2の化合物は、大部分がそれらから成り、さらにより好ましくは本質的にそれらから成り、特に好ましくは完全にそれらから成る:
【化55】
式中、基は、式I-2について上記で示されるそれぞれの意味を有し、ここで、好ましくは、
R
1は、非フッ素化アルキルまたは非フッ素化アルケニルを表す。
【0097】
媒体は、好ましくは、式I-3の1種以上の化合物を含み、該化合物は、より好ましくは、式I-3a~I-3dの化合物の群から、さらにより好ましくは式I-3cの化合物から選択され、ここで、好ましくは、式I-3の化合物は、それらより大部分が成り、さらにより好ましくはそれらより本質的に成り、特に好ましくはそれらより完全に成る:
【化56】
式中、基は、式I-3について上記で示されるそれぞれの意味を有し、ここで、好ましくは、
R
1は、非フッ素化アルキルまたは非フッ素化アルケニルを表す。
【0098】
本発明による媒体は、好ましくは、式IIの1種以上の化合物を含み、該化合物は、より好ましくは、式II-1~II-3の化合物の群から、さらにより好ましくは式II-1およびII-2の化合物の群から選択され、ここで、好ましくは、式IIの化合物は、大部分がそれらから成り、より好ましくは本質的にそれらから成り、特に好ましくは完全にそれらから成る:
【化57】
式中、基は、式IIについて上記で示される意味を有し、好ましくは、
R
2は、H、1~7個のC原子を有する非フッ素化アルキルもしくはアルコキシまたは2~7個のC原子を有する非フッ素化アルケニルを表し、かつ
【化58】
のうちの一方は、
【化59】
を表し、他方のものは、独立して、
【化60】
を表し、好ましくは、
R
2は、C
nH
2n+1またはCH
2=CH-(CH
2)
zを表し、
nは、0~15の範囲、好ましくは1~7、特に好ましくは1~5の範囲の整数を表し、かつ
zは、0、1、2、3または4、好ましくは0または2を表す。
【0099】
媒体は、好ましくは、式II-1の1種以上の化合物を含み、該化合物は、より好ましくは、式II-1a~II-1eの化合物の群から、さらにより好ましくは式II-1aおよびII-1bの化合物の群から、特に好ましくはII-1bの化合物の群から選択され、ここで、好ましくは、式II-1の化合物は、大部分がそれらから成り、さらにより好ましくは本質的にそれらから成り、特に好ましくは完全にそれらから成る:
【化61】
式中、
R
2は、上記で示される意味を有し、好ましくはC
nH
2n+1またはCH
2=CH-(CH
2)
zを表し、
nは、互いに独立して、0~15の範囲、好ましくは1~7、特に好ましくは1~5の範囲の整数を表し、かつ
zは、0、1、2、3または4、好ましくは0または2を表す。
【0100】
媒体は、好ましくは、式II-2の1種以上の化合物を含み、該化合物は、より好ましくは、式II-2a~II-2bの化合物の群から、さらにより好ましくは同時に式II-2aの1種以上の化合物と式II-2bの1種以上の化合物とから選択され、ここで、好ましくは、式II-2のこれらの化合物は、大部分がそれらから成り、さらにより好ましくは本質的にそれらから成り、特に好ましくは完全にそれらから成る:
【化62】
式中、
R
2は、上記で示される意味を有し、好ましくはC
nH
2n+1またはCH
2=CH-(CH
2)
zを表し、
nは、0~15の範囲、好ましくは1~7、特に好ましくは1~5の範囲の整数を表し、かつ
zは、0、1、2、3または4、好ましくは0または2を表す。
【0101】
媒体は、好ましくは、式II-3の1種以上の化合物を含み、該化合物は、より好ましくは、式II-3a~II-3cの化合物の群から、さらにより好ましくは式II-3aおよび式II-3bの群から、特に好ましくは同時に式II-3aの1種以上の化合物と式II-3bの1種以上の化合物とから選択され、ここで、好ましくは、式II-3のこれらの化合物は、大部分がそれらから成り、さらにより好ましくは本質的にそれらから成り、特に好ましくは完全にそれらから成る:
【化63】
式中、
R
2は、上記で示される意味を有し、好ましくはC
nH
2n+1またはCH
2=CH-(CH
2)
zを表し、
nは、0~15の範囲、好ましくは1~7、特に好ましくは1~5の範囲の整数を表し、かつ
zは、0、1、2、3または4、好ましくは0または2を表す。
【0102】
媒体は、好ましくは、式IIIの1種以上の化合物を含み、該化合物は、より好ましくは、式III-1~III-6の化合物の群から選択され、ここで、さらにより好ましくは、該化合物は、式III-1、III-2、III-3およびIII-4の化合物の群から、特に好ましくはIII-1の化合物の群から選択され、ここで、好ましくは、式IIIの化合物は、大部分がそれらから成り、さらにより好ましくは本質的にそれらから成り、特に好ましくは完全にそれらから成る:
【化64】
式中、
Z
31およびZ
32は、互いに独立して、トランス-CH=CH-またはトランス-CF=CF-、好ましくはトランス-CH=CH-を表し、ここで、式III-6中、代替的にZ
31およびZ
32のうちの一方は、-C≡C-を表してよく、他方の基は、式IIIについて上記で示される意味を有し、かつ好ましくは、
R
3は、H、1~7個のC原子を有する非フッ素化アルキルもしくはアルコキシまたは2~7個のC原子を有する非フッ素化アルケニルを表し、かつ
【化65】
のうちの一方、好ましくは、
【化66】
は、
【化67】
を表し、他方のものは、互いに独立して、
【化68】
を表し、好ましくは、
R
3は、C
nH
2n+1またはCH
2=CH-(CH
2)
zを表し、
nは、0~15の範囲、好ましくは1~7、特に好ましくは1~5の範囲の整数を表し、かつ
zは、0、1、2、3または4、好ましくは0または2を表す。
【0103】
媒体は、好ましくは、式III-1の1種以上の化合物を含み、該化合物は、より好ましくは、式III-1a~III-1dの化合物の群から、さらにより好ましくは式III-1aおよび式III-1bの化合物の群から選択され、特に好ましくは式III-1bの化合物の群から選択され、ここで、好ましくは、式III-1のこれらの化合物は、大部分がそれらから成り、さらにより好ましくは本質的にそれらから成り、特に好ましくは完全にそれらから成る:
【化69】
式中、
R
3は、上記で示される意味を有し、好ましくはC
nH
2n+1またはCH
2=CH-(CH
2)
zを表し、
nは、0~15の範囲、好ましくは1~7、特に好ましくは1~5の範囲の整数を表し、かつ
zは、0、1、2、3または4、好ましくは0または2を表す。
【0104】
媒体は、好ましくは、式III-2の1種以上の化合物を含み、該化合物は、より好ましくは、式III-2aの化合物である:
【化70】
式中、
R
3は、上記で示される意味を有し、好ましくはC
nH
2n+1またはCH
2=CH-(CH
2)
zを表し、
nは、0~15の範囲、好ましくは1~7、特に好ましくは1~5の範囲の整数を表し、かつ
zは、0、1、2、3または4、好ましくは0または2を表す。
【0105】
媒体は、好ましくは、式III-3の1種以上の化合物および/または式III-4の1種以上の化合物を含む。
【0106】
媒体は、好ましくは、式III-5の1種以上の化合物を含み、該化合物は、より好ましくは、式III-5aの化合物である:
【化71】
式中、
R
3は、式III-5について上記で示される意味を有し、好ましくはC
nH
2n+1を表し、ここで、
nは、0~7の範囲、好ましくは1~5の範囲の整数を表す。
【0107】
式IIIの更なる好ましい化合物は、以下の式の化合物である:
【化72】
式中、
nは、0~7の範囲、好ましくは1~5の範囲の整数を表す。
【0108】
本発明による更なる態様では、1種以上の多色性化合物と、上記の式I、IIおよびIIIの化合物の群から選択される1種以上の化合物と、加えて上記の重合性化合物の重合により得られるかまたは得ることができるポリマーとを含む液晶媒体を含む複合系が提供される。
【0109】
適切で好ましい重合方法は、例えば、熱誘発重合または光重合、好ましくは光重合、とりわけUV光重合である。1種以上の開始剤を任意に添加してもよい。重合の適切な条件ならびに開始剤の適切な種類および量は、当業者に知られており、かつ文献に記載されている。フリーラジカル重合に適しているのは、例えば、好ましくは、商業的に入手可能な光開始剤Irgacure184(登録商標)、Irgacure369(登録商標)、Irgacure651(登録商標)、Irgacure784(登録商標)、とりわけIrgacure819(登録商標)、Irgacure907(登録商標)もしくはIrgacure1300(登録商標)(すべてBASF SE社製)またはDarocure1173(登録商標)(Ciba AG社製)である。開始剤が用いられる場合、その割合は、好ましくは0.001~5重量%、特に好ましくは0.001~1重量%である。
【0110】
本発明による重合性化合物は、開始剤を用いない重合にも適しており、このことは、例えば、材料費がより抑えられ、とりわけ、開始剤またはその分解生成物の考えられる残留量によるLC媒体の汚染がより少なくなるなどの相当の利点を伴いうる。したがって、重合は、開始剤を添加せずに行うこともできる。したがって、LC媒体は、好ましい実施形態では、重合開始剤を含まない。
【0111】
重合性成分またはLC媒体は、例えば、貯蔵または輸送中に、反応性メソゲン(RM)の望ましくない自発重合を防止するために1種以上の安定剤を含んでいてもよい。安定剤の適切な種類および量は、当業者に知られており、かつ文献に記載されている。特に適しているのは、例えば、Irganox(登録商標)シリーズ(Ciba社製)の商業的に入手可能な安定剤、例えば、Irganox(登録商標)1076などである。安定剤が用いられる場合、それらの割合は、RMまたは重合性成分を含むLC混合物の全量を基準として、好ましくは10~10,000ppmの範囲、より好ましくは50~2,000ppmの範囲にあり、最も好ましくは0.2%または約0.2%である。
【0112】
好ましくは、混合物は、重合前に下記のとおり特性決定される。次いで、反応性成分が、1回の照射で、例えば180秒間重合され、結果得られる媒体が再び特性決定される。
【0113】
媒体の重合は、好ましくは、約3.0mW/cm2の実効出力を有するUVランプ、例えばダイマックス社のBluewave200、365nm干渉フィルターで180秒間照射して行われる。重合は、試験用セル/アンテナデバイスにおいて直接行われる。UV誘発ホスト分解を最小限に抑えるために、適切なロングパスフィルター、例えばショット社のGG395またはGG410が有益に適用される。
【0114】
重合は、好ましくは室温で行われる。
【0115】
安定化を最大にする全体の照射時間は、指示された照射出力で典型的には180秒間である。更なる重合を、最適化された照射/温度プログラムに従って行うことができる。
【0116】
重合に先立つ媒体中での重合性化合物の合計濃度は、好ましくは1%~20%、より好ましくは2%~15%、最も好ましくは2%~10%の範囲にある。
【0117】
本発明の好ましい実施形態では、媒体は、3よりも大きい誘電異方性を有する式I-1の1種以上の誘電的に正の化合物を含む。
【0118】
媒体は、好ましくは、-1.5超3以下の範囲の誘電異方性を有する式I-2の1種以上の誘電的に中性の化合物を含む。
【0119】
本発明の好ましい実施形態では、媒体は、式IIの1種以上の化合物を含む。
【0120】
本発明の更なる好ましい実施形態では、媒体は、式IIIの1種以上の化合物を含む。
【0121】
本発明に従って使用される液晶媒体、好ましくは該液晶媒体のネマチック成分は、好ましくは、5員および/または6員環を2個以下のみ有する化合物を10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下、さらにより好ましくは1%以下で含み、とりわけ全く含まない。
【0122】
略称(頭字語)の定義は、同様に、表Dにおいて下記に示されるか、または表A~Cから明らかである。
【0123】
本発明に従った液晶媒体は、好ましくは、式I~IIIの化合物の群から選択される化合物を含み、より好ましくは大部分がそれから成り、さらにより好ましくは本質的にそれらから成り、特に好ましくは完全にそれらから成る。
【0124】
本発明の好ましい実施形態では、液晶媒体は、大部分が、好ましくは式I~IIIの化合物の群から選択されるイソチオシアネート化合物から成り、より好ましくは本質的にそれから成り、最も好ましくは完全にそれから成る。
【0125】
本発明の液晶媒体は、1種以上の重合性化合物を、1種以上の多色性化合物および上記の式I、IIおよびIIIの化合物の群から選択される1種以上の化合物と、任意に1種以上の更なる化合物および/または1種以上の添加剤と混合またはブレンドすることによって調製することができる。
【0126】
本発明による液晶媒体または複合系は、高周波技術用のコンポーネントに有益に使用することができる。
【0127】
したがって、本発明の別の態様は、本発明による液晶媒体または複合系を含む、高周波技術用のコンポーネントに関する。該コンポーネントは、マイクロ波領域での動作に好ましくは適しており、より好ましくはマイクロ波領域で動作可能な位相シフターまたはLCベースのアンテナ素子である。
【0128】
更なる態様では、本発明による1種以上のコンポーネントを含むマイクロ波アンテナアレイが提供される。
【0129】
これらのコンポーネントおよびデバイス中で、1種以上の多色性化合物を含む本発明の液晶媒体を、VHRを適切に維持または改善しながら、とりわけ、チューナビリティ、とりわけマイクロ波チューナビリティ、および/または損失パラメーターに有利にまたは適切に影響を及ぼすことによって有利に使用することができる。
【0130】
本出願では、「含む」という用語は、組成に関連して、対象となる実体、すなわち、媒体または成分が、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上の合計濃度で、指示された成分もしくは数種類の成分または化合物もしくは数種類の化合物を含むことを意味する。
【0131】
これと関連して、「大部分が~から成る」という用語は、対象となる実体が、55%以上、好ましくは60%以上、特に好ましくは70%以上の指示された成分もしくは数種類の成分または化合物もしくは数種類の化合物を含むことを意味する。
【0132】
これと関連して、「本質的に~から成る」という用語は、対象となる実体が、80%以上、好ましくは90%以上、非常に好ましくは95%以上の指示された成分もしくは数種類の成分または化合物もしくは数種類の化合物を含むことを意味する。
【0133】
これと関連して、「完全に~から成る」という用語は、対象となる実体が、98%以上、好ましくは99%以上、特に好ましくは100.0%の指示された成分もしくは数種類の成分または化合物もしくは数種類の化合物を含むことを意味する。
【0134】
上記に明示されていない他のメソゲン化合物も、任意成分として有利には本発明に従った媒体中で使用することができる。そのような化合物は当業者に知られている。
【0135】
好ましくは、媒体中での式I~IIIの化合物の合計濃度は、80%以上100%以下の範囲、より好ましくは90%以上100%以下の範囲、最も好ましくは95%以上100%以下の範囲にある。
【0136】
好ましくは、媒体中での式I-3、より好ましくは式I-3cの化合物の合計濃度は、10%以上45%以下、より好ましくは15%以上35%以下、さらにより好ましくは20%以上33%以下、最も好ましくは25%以上30%以下の範囲にある。
【0137】
本発明に従った液晶媒体は、好ましくは90℃以上の、より好ましくは100℃以上の、さらにより好ましくは120℃以上の、さらに一層より好ましくは150℃以上の、特に好ましくは170℃以上の透明点を有する。
【0138】
本発明に従った媒体のネマチック相は、好ましくは、少なくとも20℃以下90℃以上に及ぶ。該相が100℃以上まで、より好ましくは少なくとも0℃以下120℃以上、さらにより好ましくは少なくとも-10℃以下140℃以上、特に少なくとも-20℃以下150℃以上に及ぶことがより好ましい。
【0139】
本発明に従った液晶媒体のΔεは、1kHzおよび20℃で、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、特に好ましくは3以上である。
【0140】
本発明に従った液晶媒体のΔnは、589nm(NaD)および20℃で、好ましくは0.200以上0.90以下の範囲、より好ましくは0.250以上0.90以下の範囲、さらにより好ましくは0.300以上0.85以下の範囲、特に好ましくは0.350以上0.800以下の範囲にある。
【0141】
本発明の好ましい実施形態では、本発明に従った液晶媒体のΔnは、好ましくは0.50以上、より好ましくは0.55以上である。
【0142】
本発明に従って、式Iの個々の化合物は、混合物全体の好ましくは10%~70%、より好ましくは20%~60%、さらにより好ましくは30%~50%、特に好ましくは25%~45%の合計濃度で使用される。
【0143】
式IIの化合物は、混合物全体の好ましくは1%~20%、より好ましくは1%~15%、さらにより好ましくは2%~15%、特に好ましくは3%~10%の合計濃度で使用される。
【0144】
式IIIの化合物は、混合物全体の好ましくは1%~60%、より好ましくは5%~50%、さらにより好ましくは10%~45%、特に好ましくは15%~40%の合計濃度で使用される。
【0145】
液晶媒体は、好ましくは、全体で50%~100%、より好ましくは70%~100%、特に好ましくは80%~100%、とりわけ90%~100%の、式I、IIおよびIIIの化合物を含み、より好ましくは大部分がそれらの化合物から成り、特に好ましくは完全にそれらの化合物からなる。
【0146】
本出願では、誘電的に正という表現は、Δε>3.0の化合物または成分を記載し、誘電的に中性という表現は、-1.5≦Δε≦3.0のものを記載し、誘電的に負という表現は、Δε<-1.5のものを記載する。Δεは、1kHzの周波数および20℃で決定される。それぞれの化合物の誘電異方性は、ネマチックホスト混合物中でのそれぞれの個々の化合物の10%溶液の結果より決定される。ホスト混合物中でのそれぞれの化合物の溶解度が10%未満の場合、濃度は5%に低下される。試験用混合物の容量は、ホメオトロピック配向を有するセルおよびホモジニアス配向を有するセルの両方において決定される。両タイプのセルのセル厚は、およそ20μmである。印加される電圧は、1kHzの周波数および典型的には0.5V~1.0Vの実効値を有する矩形波であるが、常にそれぞれの試験用混合物の容量性閾値よりも低く選択される。
【0147】
Δεは(ε||-ε⊥)と定義され、一方で、εave.は(ε||+2ε⊥)/3である。
【0148】
誘電的に正の化合物のために使用されるホスト混合物は、混合物ZLI-4792であり、誘電的に中性および誘電的に負の化合物のために使用されるホスト混合物は、混合物ZLI-3086で、両方ともMerck KGaA社製(ドイツ国)である。化合物の比誘電率の絶対値は、目的の化合物を添加した際のホスト混合物のそれぞれの値の変化から決定される。これらの値は、目的の化合物の濃度100%に外挿される。
【0149】
20℃の測定温度でネマチック相を有する成分は、そのまま測定され、他のすべてのものは、化合物と同様に処理される。
【0150】
両方の場合において特に明記されない限り、本出願での閾値電圧という表現は、光学的閾値を指し、10%相対コントラスト(V10)のために示され、飽和電圧という表現は、光学的飽和を指し、90%相対コントラスト(V90)のために示される。フレデリクス閾値(VFr)とも呼ばれる容量性閾値電圧(V0)は、明示的な記載がある場合にのみ用いられる場合にのみ使用される。
【0151】
本出願で示されるパラメーター範囲は、特に明記されない限り、すべて限界値を含む。
【0152】
互いに組み合わせた特性の各種範囲について示される異なる上限および下限値は、追加の好ましい範囲を生む。
【0153】
本出願を通じて、特に明記されない限り、以下の条件および定義が適用される。すべての濃度は重量パーセントで示され、それぞれの混合物全体に関し、すべての温度は摂氏(℃)で示され、すべての温度差は摂氏(℃)の差異で示される。すべての物理的特性は、「Merck Liquid Crystals,Physical Properties of Liquid Crystals」,Status Nov.1997,Merck KGaA(ドイツ国)に従って決定され、特に明記されない限り、20℃の温度で示される。光学異方性(Δn)は、589.3nmの波長で決定される。誘電異方性(Δε)は1kHzの周波数で決定される。閾値電圧および他のすべての電気光学的特性も、Merck KGaA(ドイツ国)で製造された試験用セルを使用して決定される。Δεを決定するための試験用セルは、およそ20μmのセル厚を有する。電極は1.13cm2の面積およびガードリングを有する円形ITO電極である。配向層は、ホメオトロピック配向(ε||)用には日産化学社製(日本国)SE-1211であり、ホモジニアス配向(ε⊥)用には日本合成ゴム社製(日本国)ポリイミドAL-1054である。容量は0.3Vrmsの電圧を有する正弦波を使用したSolatron1260周波数応答分析器を使用して決定される。電気光学的測定において使用される光は白色光である。Autronic-Melchers社製(ドイツ国)から商業的に入手可能なDMS装置を使用した構成が使用される。特性電圧が、垂直観察のもとで決定された。閾値電圧(V10)、中間灰色電圧(V50)および飽和電圧(V90)が、それぞれ10%、50%および90%相対コントラストのために決定された。
【0154】
液晶媒体は、A.Penirschke,S.Muller,P.Scheele、C.Weil,M.Wittek,C.Hock and R.Jakoby:「Cavity Perturbation Method for Characterization of Liquid Crystals up to 35GHz」,34thEuropean Microwave Conference,Amsterdam,pp.545-548に記載されるとおり、マイクロ波周波数範囲におけるそれらの特性に関して調査される。
【0155】
これに関しては、A.Gaebler,F.Golden、S.Muller,A.Penirschke and R.Jakoby「Direct Simulation of Material Permittivites(以下省略)」,12MTC2009-International Instrumentation and Measurement Technology Conference,Singapore,2009年(IEEE),pp.463-467、および独国特許出願公開第102004029429号明細書(DE102004029429A)も比較されたい。これらにも測定方法が同様に詳細に記載されている。
【0156】
液晶はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)毛細管内に導入される。毛細管は180μmの内径および350μmの外径を有する。有効長は2.0cmである。充填された毛細管は、共振周波数が30GHzのキャビティの中心に導入される。このキャビティは、6.6mmの長さ、7.1mmの幅および3.6mmの高さを有する。次いで、入力信号(ソース)が印加され、市販のベクトルネットワークアナライザを使用して出力信号の結果が記録される。
【0157】
液晶で充填された毛細管が有る状態での測定と、液晶で充填された毛細管が無い状態での測定との間の共振周波数およびQ因子の変化が、A.Penirschke,S.Muller,P.Scheele,C.Weil,M.Wittek,C.Hock and R.Jakoby:「Cavity Perturbation Method for Characterization of Liquid Crystals up to 35GHz」,34thEuropean Microwave Conference,Amsterdam,pp.545-548において、そこで記載されるとおり、等式10および11によって、対応する目標周波数で比誘電率および損失角を決定するために使用される。
【0158】
液晶のダイレクターに垂直および平行なコンポーネントの特性の値は、磁界中の液晶の配向によって得られる。このために永久磁石の磁界が使用される。磁界の強さは0.35テスラである。磁石の配向が対応して設定され、次いで、対応して90°回転される。
【0159】
好ましいコンポーネントは、位相シフター、バラクター、無線および電波アンテナアレイ、整合回路適応フィルターならびにその他である。
【0160】
本出願では、特に明記されない限り、化合物という用語は、1種の化合物および複数種の化合物の両方を意味する。
【0161】
本発明による液晶媒体は、好ましくは、上記で示される好ましい範囲のネマチック相を有している。本明細書中では、ネマチック相を有しているという表現は、一方ではスメクチック相および結晶化が対応する温度における低温で確認されないことを意味し、他方ではネマチック相からの加熱に際して透明化が起きないことを意味する。低温での調査は、流動粘度計において対応する温度で行なわれ、5μmの層厚を有する試験用セルに少なくとも100時間貯蔵して確認される。高温では、従来の方法によって毛細管中で透明点が測定される。
【0162】
さらに、本発明による液晶媒体は、好ましくは、可視域における、特に589.0nmの波長での(すなわち、Na「D」線での)高い光学異方性値により特徴付けられる。589nmでの複屈折率は、好ましくは0.20以上、より好ましくは0.25以上、さらにより好ましくは0.30以上、さらに一層好ましくは0.40以上、特に好ましくは0.45以上である。加えて、複屈折率は、好ましくは0.80以下である。
【0163】
好ましく用いられる液晶は、正の誘電異方性を有している。これは、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、さらにより好ましくは6以上、特に好ましくは10以上である。
【0164】
さらに、本発明による液晶媒体は、好ましくは、マイクロ波領域における高い異方性値により特徴付けられる。約8.3GHzでの複屈折率は、例えば、好ましくは0.14以上、より好ましくは0.15以上、さらにより好ましくは0.20以上、さらに一層好ましくは0.25以上、特に好ましくは0.30以上である。加えて、複屈折率は、好ましくは0.80以下である。
【0165】
マイクロ波領域における誘電異方性は、次のとおり定義される:
【数1】
【0166】
チューナビリティ(τ)は、次のとおり定義される:
【数2】
【0167】
材料品質(η)は、次のとおり定義される:
【数3】
であり、ここで、最大誘電損失は、
【数4】
である。
【0168】
好ましい液晶材料の材料品質(η)は、6以上、好ましくは8以上、より好ましくは10以上である。
【0169】
対応するコンポーネントにおいて、好ましい液晶材料は、15°/dB以上、好ましくは20°/dB以上、より好ましくは30°/dB以上、さらにより好ましくは40°/dB以上、さらにより好ましくは50°/dB以上、さらに一層特に好ましくは80°/dB以上、特に好ましくは100°/dB以上の位相シフター品質を有している。
【0170】
しかしながら、いくつかの実施形態では、負の値の誘電異方性を有する液晶も有利には使用することができる。
【0171】
用いられる液晶は、個々の物質または混合物のいずれかである。それらは、好ましくはネマチック相を有している。
【0172】
「アルキル」という用語は、好ましくは、1~15個の炭素原子を有する直鎖および分枝鎖のアルキル基、とりわけ直鎖の基であるメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルおよびヘプチルを含む。2~10個の炭素原子を有する基が、一般的に好ましい。
【0173】
「アルケニル」という用語は、好ましくは、2~15個の炭素原子を有する直鎖および分枝鎖のアルケニル基、とりわけ直鎖の基を含む。特に好ましいアルケニル基は、C2~C7-1E-アルケニル、C4~C7-3E-アルケニル、C5~C7-4-アルケニル、C6~C7-5-アルケニルおよびC7-6-アルケニル、とりわけC2~C7-1E-アルケニル、C4~C7-3E-アルケニルおよびC5~C7-4-アルケニルである。更なる好ましいアルケニル基の例は、ビニル、1E-プロペニル、1E-ブテニル、1E-ペンテニル、1E-ヘキセニル、1E-ヘプテニル、3-ブテニル、3E-ペンテニル、3E-ヘキセニル、3E-ヘプテニル、4-ペンテニル、4Z-ヘキセニル、4E-ヘキセニル、4Z-ヘプテニル、5-ヘキセニル、6-ヘプテニルなどである。5個までの炭素原子を有する基が、一般的に好ましい。
【0174】
「フルオロアルキル」という用語は、好ましくは、末端フッ素を有する直鎖の基、すなわち、フルオロメチル、2-フルオロエチル、3-フルオロプロピル、4-フルオロブチル、5-フルオロペンチル、6-フルオロヘキシルおよび7-フルオロヘプチルを含む。しかしながら、フッ素の他の位置が除外されるものではない。
【0175】
「オキサアルキル」または「アルコキシアルキル」という用語は、好ましくは、式CnH2n+1-O-(CH2)mの直鎖の基を含み、式中、nおよびmは、それぞれ互いに独立して、1~10を表す。好ましくは、nは1であり、かつmは1~6である。
【0176】
ビニル末端基を含有する化合物およびメチル末端基を含有する化合物が、典型的には低い回転粘度を有する。
【0177】
本出願では、高周波技術および超周波技術(hyper-frequency technology)の両方は、1MHz~1THz、好ましくは1GHz~500GHz、より好ましくは2GHz~300GHz、特に好ましくは約5GHz~150GHzの範囲の周波数を有する用途を表す。
【0178】
本発明に従った液晶媒体は、通常の濃度で更なる添加剤およびキラルドーパントを含むことができる。これらの更なる構成成分の合計濃度は、混合物全体を基準として0%~10%、好ましくは0.1%~6%の範囲にある。使用される個々の化合物の濃度は、それぞれ好ましくは0.1%~3%の範囲にある。これらおよび類似の添加剤の濃度は、本出願では、液晶媒体の液晶成分および液晶化合物の値および濃度範囲を引合いに出す場合は考慮されない。
【0179】
好ましくは、本発明による媒体は、そのコレステリックピッチを調整するために、キラルドーパントとして1種類以上のキラル化合物を含む。本発明による媒体中でのそれらの合計濃度は、好ましくは0.05%~15%、より好ましくは1%~10%、最も好ましくは2%~6%の範囲にある。
【0180】
任意に、本発明による媒体は、物理的特性を調整するために、更なる液晶化合物を含んでいてもよい。そのような化合物は専門家に知られている。本発明による媒体中でのそれらの濃度は、好ましくは0%~30%、より好ましくは0.1%~20%、最も好ましくは1%~15%である。
【0181】
応答時間は、電気光学的応答の相対チューニングまたは相対コントラストが0%~90%に変化する時間(t90-t0)の立ち上がり時間(τon)(すなわち、遅延時間(t10-t0)を含む)、電気光学的応答の相対チューニングまたは相対コントラストが100%から10%に戻って変化する時間(t100-t10)の減衰時間(τoff)および全体応答時間(τtotal=τon+τoff)としてそれぞれ求められる。
【0182】
本発明による液晶媒体は、複数種の化合物、好ましくは3~30種、より好ましくは4~20種、非常に好ましくは4~16種の化合物から成る。これらの化合物は、慣用的な方法で混合される。一般に、より少ない量で使用される化合物の所望量が、より多い量で使用される化合物に溶解される。より高い濃度で使用される化合物の透明点よりも温度が高い場合には、溶解プロセスの完了を観察することは特に容易である。しかしながら、他の慣用の手法において、例えば、化合物の同族または共融混合物であってもよい、例えば、いわゆるプレ混合物を使用するか、または構成成分自体がそのまま使用可能な混合物である、いわゆる「マルチボトル」系を使用して媒体を調製することも可能である。
【0183】
例えば、液晶の融点T(C,N)またはT(C,S)、スメクチック(S)相からネマチック(N)相への転移T(S,N)および透明点T(N,I)などのすべての温度は、摂氏(℃)で示される。すべての温度差は摂氏(℃)の差異で示される。
【0184】
本発明および特に以下の実施例では、メソゲン化合物の構造は、頭字語とも呼ばれる略語を用いて示される。これらの頭字語について、化学式は、下記の表A~Cを使用して以下のとおり省略される。すべての基CnH2n+1、CmH2m+1およびClH2l+1またはCnH2n-1、CmH2m-1およびClH2l-1は、それぞれの場合にn、mおよびl個のC原子を有する、直鎖アルキルまたはアルケニル、好ましくは1E-アルケニルをそれぞれ示す。表Aは、化合物のコア構造の環要素に使用される符号を列挙するのに対し、表Bは、連結基を示す。表Cは、左手側または右手側の末端基の符号の意味を示す。表Dは、化合物の例示的な構造を、それらのそれぞれの略語と一緒に示す。
【0185】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【0186】
【0187】
【表3】
ここで、nおよびmは、それぞれ整数を示し、3つの点「...」は、この表の他の略語のプレースホルダーである。
【0188】
以下の表は、例示的な構造を、それらのそれぞれの略語と一緒に示す。これらは、略語の規則の意味を例示するために示される。それらはさらに、好ましく使用される化合物を示す。
【0189】
表D;例示的な構造
以下の例示的な構造は、特に好ましくは用いられる、末端-NSC基を有する化合物である:
【0190】
【0191】
以下の例示的な構造は、好ましくは追加的に媒体中で使用される化合物である:
【表5】
【0192】
以下の例示的な構造は、任意に用いられる、3つの6員環を有する補助化合物である:
【表6-1】
【表6-2】
【0193】
以下の例示的な構造は、任意に用いられる、4つの6員環を有する補助化合物である:
【表7】
【0194】
追加的に用いられる誘電的に中性の化合物の例示的な構造:
【表8】
【0195】
追加的に用いることができる更なる化合物の例示的な構造:
【表9-1】
【0196】
【0197】
以下の表(表E)は、本発明に従ったメソゲン媒体中で二色性色素として使用されることができ、好ましくは二色性色素として使用される例示的な化合物を示す。
【0198】
【0199】
本発明に従ったメソゲン媒体は、好ましくは、表Eの化合物からなる群から選択される1種、より好ましくは2種、さらにより好ましくは3種以上の化合物を含む。1種以上の二色性色素は、好ましくは0.1%以上15%以下、より好ましくは0.5%以上10%以下、最も好ましくは1.0%以上8%以下の範囲の濃度で使用される。
【0200】
以下の表(表F)は、本発明に従ったメソゲン媒体中での安定剤として使用することができる例示的な化合物を示す。媒体中でのこれらおよび類似の化合物の合計濃度は、好ましくは5%以下である。
【0201】
【表11-1】
【表11-2】
【表11-3】
【表11-4】
【0202】
本発明の好ましい実施形態では、メソゲン媒体は、表Fからの化合物の群から選択される1種以上の化合物を含む。
【0203】
以下の表(表G)は、本発明に従ったメソゲン媒体中でのキラルドーパント剤として好ましくは使用することができる例示的な化合物を示す。
【0204】
【0205】
本発明の好ましい実施形態では、メソゲン媒体は、表Gからの化合物の群から選択される1種以上の化合物を含む。
【0206】
本出願に従ったメソゲン媒体は、好ましくは、上記表からの化合物からなる群から選択される2種以上、好ましくは4種以上の化合物を含む。
【0207】
本発明に従った液晶媒体は、好ましくは、表Dの化合物の群から選択される、3つ以上、好ましくは4つ以上の異なる式を有する7種以上、好ましくは8種以上の化合物を含む。
【0208】
以下の実施例は、本発明の単なる例示であり、決して本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではない。本開示に照らせば、当業者には、その実施例および改変例またはそれらの均等物が明らかになるであろう。
【0209】
実施例
実施例1
基礎混合物
以下の表に示す組成および特性を有する液晶混合物B-1を調製し、その一般的な物理的特性および19GHzでのマイクロ波コンポーネントへのその適用性に関して特性決定する。
【0210】
【0211】
この混合物は、マイクロ波領域における用途、とりわけマイクロ波(MW)領域における位相シフターまたはLCベースのアンテナ素子用に適しており、かつ適切な応答時間を示す。
【0212】
実施例1.1~1.3
混合物B-1を3つの部分に分ける。これらの3つの部分のそれぞれ一つに、上記の表Eに示す、ある濃度の二色性色素TAZO-1を添加して、M-1.1、M-1.2およびM-1.3を得る。
【0213】
これらの3つの部分に択一的に、TAZO-1をそれぞれ1.0%、3.0%および5.0%添加する。
【0214】
【0215】
結果得られる3つの混合物M-1.1~M-1.3のそれぞれを、PI Al3046で覆われ逆平行にラビングされたガラス基板を有する試験用セルに充填する。試験用セルは50μmのセルギャップを有する。混合物を、それらの一般的な物理的特性およびマイクロ波領域におけるそれらの性能に関して調査する。
【0216】
実施例2
混合物B-1に、上記の表Eに示す二色性色素AZO-1を、3.0%の濃度で添加する。
【0217】
結果得られる混合物M-2を、マイクロ波用途におけるその性能に関して調査する。
【0218】
実施例3
混合物B-1に、上記の表Eに示す二色性色素AZO-2を、3.0%の濃度で添加する。
【0219】
結果得られる混合物M-3を、マイクロ波用途におけるその性能に関して調査する。
【0220】
実施例4
混合物B-1に、上記の表Eに示す二色性色素AZO-3を、3.0%の濃度で添加する。
【0221】
結果得られる混合物M-4を、マイクロ波用途におけるその性能に関して調査する。
【0222】
実施例5
混合物B-1に、上記の表Eに示す二色性色素THIO-1(Merck KGaA、ダルムシュタット在、ドイツ国)AZO-1を、3.0%の濃度で添加する。
【0223】
結果得られる混合物M-5を、マイクロ波用途におけるその性能に関して調査する。
【0224】
以下の表は、混合物B-1ならびにM-1.2、M-2、M-3、M-4およびM-5のマイクロ波特性の比較を示しており、ここで、後者の混合物はそれぞれ、上記のそれぞれの色素3%を含有している。
【0225】
【0226】
驚くべきことに、それぞれの二色性色素を提供することにより、チューナビリティが向上するという利点が得られることが分かった。同時に、誘電損失は、性能指数ηが少なくとも同等またはさらに著しく改善されるように、少なくとも同等のレベルに維持されるかまたはさらに改善される。二色性色素の量を増やすことにより、有利な効果をさらに高めることができる。
【0227】
比較のためおよび参考として、周知の化合物4’-ペンチル-4-シアノビフェニル(5CBまたはK15(Merck KGaA)とも呼ばれる)は、20℃でtanδεr.⊥=0.026およびη=4.3と求められる。
【0228】
以下の混合物は、マイクロ波領域における用途、とりわけMW領域における位相シフターまたはLCベースのアンテナ素子用に適している。
【0229】
実施例6
基礎混合物
以下の表に示す組成および特性を有する液晶混合物B-6を調製し、その一般的な物理的特性および19GHzでのマイクロ波コンポーネントへのその適用性に関して特性決定する。
【0230】
【0231】
混合物B-6を7つの部分に分ける。これらの7つの部分のうちの3つに、上記の表Eに示す二色性色素TAZO-1を、それぞれ1.0%、3.0%および5.0%の濃度で添加する。他の4つの部分には、上記の表Eに示すそれぞれAZO-1、AZO-2、AZO-3またはTHIO-1を、それぞれ3.0%の濃度で添加する。
【0232】
結果得られる混合物は、実施例1.1~1.3および実施例2~5と同様に、とりわけチューナビリティおよび性能指数に関して改善された特性を示す。
【0233】
実施例7
基礎混合物
以下の表に示す組成および特性を有する液晶混合物B-7を調製し、その一般的な物理的特性および19GHzでのマイクロ波コンポーネントへのその適用性に関して特性決定する。
【0234】
【0235】
混合物B-7を7つの部分に分ける。これらの7つの部分のうちの3つに、上記の表Eに示す二色性色素TAZO-1を、それぞれ1.0%、3.0%および5.0%の濃度で添加する。他の4つの部分には、上記の表Eに示すそれぞれAZO-1、AZO-2、AZO-3またはTHIO-1を、それぞれ3.0%の濃度で添加する。
【0236】
結果得られる混合物は、実施例1.1~1.3および実施例2~5と同様に、とりわけチューナビリティおよび性能指数に関して改善された特性を示す。
【0237】
実施例8
以下の表に示す組成および特性を有する液晶混合物B-8を調製する。
【0238】
【0239】
混合物B-8を7つの部分に分ける。これらの7つの部分のうちの3つに、上記の表Eに示す二色性色素TAZO-1を、それぞれ1.0%、3.0%および5.0%の濃度で添加する。他の4つの部分には、上記の表Eに示すそれぞれAZO-1、AZO-2、AZO-3またはTHIO-1を、それぞれ3.0%の濃度で添加する。
【0240】
結果得られる混合物は、実施例1.1~1.3および実施例2~5と同様に、とりわけチューナビリティおよび性能指数に関して改善された特性を示す。
【0241】
実施例9~13
基礎混合物
実施例8の液晶媒体B-8に、ある濃度の更なる単一化合物を択一的に1つずつ加え、結果得られる基礎混合物(B-9~B-13)を、それらの一般的な物理的特性およびマイクロ波用途におけるその性能に関して調査する。
【0242】
【0243】
【0244】
【0245】
【0246】
【0247】
混合物B-9~B-13をそれぞれ7つの部分に分ける。これらの7つの部分のうちの3つにそれぞれ、上記の表Eに示す二色性色素TAZO-1を、それぞれ1.0%、3.0%および5.0%の濃度で添加する。他の4つの部分には、上記の表Eに示すそれぞれAZO-1、AZO-2、AZO-3またはTHIO-1を、それぞれ3.0%の濃度で添加する。
【0248】
結果得られる、それぞれの二色性化合物をそれぞれの濃度で含む混合物は、実施例1.1~1.3および実施例2~5と同様に、とりわけチューナビリティおよび性能指数に関して改善された特性を示す。
【0249】
実施例14
基礎混合物
以下の表に示す組成および特性を有する液晶混合物B-14を調製し、その一般的な物理的特性および19GHzでのマイクロ波コンポーネントへのその適用性に関して特性決定する。
【0250】
【0251】
混合物B-14を7つの部分に分ける。これらの7つの部分のうちの3つにそれぞれ、上記の表Eに示す二色性色素TAZO-1を、それぞれ1.0%、3.0%および5.0%の濃度で添加する。他の4つの部分には、上記の表Eに示すそれぞれAZO-1、AZO-2、AZO-3またはTHIO-1を、それぞれ3.0%の濃度で添加する。
【0252】
結果得られる混合物は、実施例1.1~1.3および実施例2~5と同様に、とりわけチューナビリティおよび性能指数に関して改善された特性を示す。
【0253】
実施例15
基礎混合物
以下の表に示す組成および特性を有する液晶混合物B-15を調製し、その一般的な物理的特性および19GHzでのマイクロ波コンポーネントへのその適用性に関して特性決定する。
【0254】
【0255】
混合物B-15を7つの部分に分ける。これらの7つの部分のうちの3つにそれぞれ、上記の表Eに示す二色性色素TAZO-1を、それぞれ1.0%、3.0%および5.0%の濃度で添加する。他の4つの部分には、上記の表Eに示すそれぞれAZO-1、AZO-2、AZO-3またはTHIO-1を、それぞれ3.0%の濃度で添加する。
【0256】
結果得られる混合物は、実施例1.1~1.3および実施例2~5と同様に、とりわけチューナビリティおよび性能指数に関して改善された特性を示す。
【0257】
実施例16
以下の表に示す組成および特性を有する液晶基礎混合物B-16を調製し、その一般的な物理的特性および19GHzでのマイクロ波コンポーネントへのその適用性に関して特性決定する。
【0258】
【0259】
混合物B-16を7つの部分に分ける。これらの7つの部分のうちの3つにそれぞれ、上記の表Eに示す二色性色素TAZO-1を、それぞれ1.0%、3.0%および5.0%の濃度で添加する。他の4つの部分には、上記の表Eに示すそれぞれAZO-1、AZO-2、AZO-3またはTHIO-1を、それぞれ3.0%の濃度で添加する。
【0260】
結果得られる混合物は、実施例1.1~1.3および実施例2~5と同様に、とりわけチューナビリティおよび性能指数に関して改善された特性を示す。
【0261】
実施例17
基礎混合物
以下の表に示す組成および特性を有する液晶混合物B-17を調製し、その一般的な物理的特性および19GHzでのマイクロ波コンポーネントへのその適用性に関して特性決定する。
【0262】
【0263】
混合物B-17を7つの部分に分ける。これらの7つの部分のうちの3つにそれぞれ、上記の表Eに示す二色性色素TAZO-1を、それぞれ1.0%、3.0%および5.0%の濃度で添加する。他の4つの部分には、上記の表Eに示すそれぞれAZO-1、AZO-2、AZO-3またはTHIO-1を、それぞれ3.0%の濃度で添加する。
【0264】
結果得られる混合物は、実施例1.1~1.3および実施例2~5と同様に、とりわけチューナビリティおよび性能指数に関して改善された特性を示す。
【0265】
実施例18
基礎混合物
以下の表に示す組成および特性を有する液晶混合物B-18を調製し、その一般的な物理的特性および19GHzでのマイクロ波コンポーネントへのその適用性に関して特性決定する。
【0266】
【0267】
混合物B-18を7つの部分に分ける。これらの7つの部分のうちの3つにそれぞれ、上記の表Eに示す二色性色素TAZO-1を、それぞれ1.0%、3.0%および5.0%の濃度で添加する。他の4つの部分には、上記の表Eに示すそれぞれAZO-1、AZO-2、AZO-3またはTHIO-1を、それぞれ3.0%の濃度で添加する。
【0268】
結果得られる混合物は、実施例1.1~1.3および実施例2~5と同様に、とりわけチューナビリティおよび性能指数に関して改善された特性を示す。
【0269】
実施例19
基礎混合物
以下の表に示す組成および特性を有する液晶混合物B-19を調製し、その一般的な物理的特性および19GHzでのマイクロ波コンポーネントへのその適用性に関して特性決定する。
【0270】
【0271】
混合物B-19を7つの部分に分ける。これらの7つの部分のうちの3つにそれぞれ、上記の表Eに示す二色性色素TAZO-1を、それぞれ1.0%、3.0%および5.0%の濃度で添加する。他の4つの部分には、上記の表Eに示すそれぞれAZO-1、AZO-2、AZO-3またはTHIO-1を、それぞれ3.0%の濃度で添加する。
【0272】
結果得られる混合物は、実施例1.1~1.3および実施例2~5と同様に、とりわけチューナビリティおよび性能指数に関して改善された特性を示す。
【0273】
実施例20
基礎混合物
以下の表に示す組成および特性を有する液晶混合物B-20を調製し、その一般的な物理的特性および19GHzでのマイクロ波コンポーネントへのその適用性に関して特性決定する。
【0274】
【0275】
混合物B-20を7つの部分に分ける。これらの7つの部分のうちの3つにそれぞれ、上記の表Eに示す二色性色素TAZO-1を、それぞれ1.0%、3.0%および5.0%の濃度で添加する。他の4つの部分には、上記の表Eに示すそれぞれAZO-1、AZO-2、AZO-3またはTHIO-1を、それぞれ3.0%の濃度で添加する。
【0276】
結果得られる混合物は、実施例1.1~1.3および実施例2~5と同様に、とりわけチューナビリティおよび性能指数に関して改善された特性を示す。
【0277】
実施例21
基礎混合物
以下の表に示す組成および特性を有する液晶混合物B-21を調製し、その一般的な物理的特性および19GHzでのマイクロ波コンポーネントへのその適用性に関して特性決定する。
【0278】
【0279】
混合物B-21を7つの部分に分ける。これらの7つの部分のうちの3つにそれぞれ、上記の表Eに示す二色性色素TAZO-1を、それぞれ1.0%、3.0%および5.0%の濃度で添加する。他の4つの部分には、上記の表Eに示すそれぞれAZO-1、AZO-2、AZO-3またはTHIO-1を、それぞれ3.0%の濃度で添加する。
【0280】
結果得られる混合物は、実施例1.1~1.3および実施例2~5と同様に、とりわけチューナビリティおよび性能指数に関して改善された特性を示す。
【0281】
実施例22
基礎混合物
以下の表に示す組成および特性を有する液晶混合物B-22を調製し、その一般的な物理的特性および19GHzでのマイクロ波コンポーネントへのその適用性に関して特性決定する。
【0282】
【0283】
混合物B-22を7つの部分に分ける。これらの7つの部分のうちの3つにそれぞれ、上記の表Eに示す二色性色素TAZO-1を、それぞれ1.0%、3.0%および5.0%の濃度で添加する。他の4つの部分には、上記の表Eに示すそれぞれAZO-1、AZO-2、AZO-3またはTHIO-1を、それぞれ3.0%の濃度で添加する。
【0284】
結果得られる混合物は、実施例1.1~1.3および実施例2~5と同様に、とりわけチューナビリティおよび性能指数に関して改善された特性を示す。
【0285】
実施例23
以下の表に示す組成および特性を有する液晶混合物B-23を調製し、その一般的な物理的特性および19GHzでのマイクロ波コンポーネントへのその適用性に関して特性決定する。
【0286】
【0287】
混合物B-23を7つの部分に分ける。これらの7つの部分のうちの3つにそれぞれ、上記の表Eに示す二色性色素TAZO-1を、それぞれ1.0%、3.0%および5.0%の濃度で添加する。他の4つの部分には、上記の表Eに示すそれぞれAZO-1、AZO-2、AZO-3またはTHIO-1を、それぞれ3.0%の濃度で添加する。
【0288】
結果得られる混合物は、実施例1.1~1.3および実施例2~5と同様に、とりわけチューナビリティおよび性能指数に関して改善された特性を示す。
【0289】
実施例24
基礎混合物
以下の表に示す組成および特性を有する液晶混合物B-24を調製し、その一般的な物理的特性および19GHzでのマイクロ波コンポーネントへのその適用性に関して特性決定する。
【0290】
【0291】
混合物B-24を7つの部分に分ける。これらの7つの部分のうちの3つにそれぞれ、上記の表Eに示す二色性色素TAZO-1を、それぞれ1.0%、3.0%および5.0%の濃度で添加する。他の4つの部分には、上記の表Eに示すそれぞれAZO-1、AZO-2、AZO-3またはTHIO-1を、それぞれ3.0%の濃度で添加する。
【0292】
結果得られる混合物は、実施例1.1~1.3および実施例2~5と同様に、とりわけチューナビリティおよび性能指数に関して改善された特性を示す。
【0293】
実施例25
基礎混合物
以下の表に示す組成および特性を有する液晶混合物B-25を調製し、その一般的な物理的特性および19GHzでのマイクロ波コンポーネントへのその適用性に関して特性決定する。
【0294】
【0295】
混合物B-25を7つの部分に分ける。これらの7つの部分のうちの3つにそれぞれ、上記の表Eに示す二色性色素TAZO-1を、それぞれ1.0%、3.0%および5.0%の濃度で添加する。他の4つの部分には、上記の表Eに示すそれぞれAZO-1、AZO-2、AZO-3またはTHIO-1を、それぞれ3.0%の濃度で添加する。
【0296】
結果得られる混合物は、実施例1.1~1.3および実施例2~5と同様に、とりわけチューナビリティおよび性能指数に関して改善された特性を示す。
【0297】
実施例26
以下の表に示す組成および特性を有する液晶基礎混合物B-26を調製し、その一般的な物理的特性および19GHzでのマイクロ波コンポーネントへのその適用性に関して特性決定する。
【0298】
【0299】
混合物B-26を7つの部分に分ける。これらの7つの部分のうちの3つにそれぞれ、上記の表Eに示す二色性色素TAZO-1を、それぞれ1.0%、3.0%および5.0%の濃度で添加する。他の4つの部分には、上記の表Eに示すそれぞれAZO-1、AZO-2、AZO-3またはTHIO-1を、それぞれ3.0%の濃度で添加する。
【0300】
結果得られる混合物は、実施例1.1~1.3および実施例2~5と同様に、とりわけチューナビリティおよび性能指数に関して改善された特性を示す。
【0301】
実施例27
基礎混合物
以下の表に示す組成および特性を有する液晶混合物B-27を調製し、その一般的な物理的特性および19GHzでのマイクロ波コンポーネントへのその適用性に関して特性決定する。
【0302】
【0303】
混合物B-27を7つの部分に分ける。これらの7つの部分のうちの3つにそれぞれ、上記の表Eに示す二色性色素TAZO-1を、それぞれ1.0%、3.0%および5.0%の濃度で添加する。他の4つの部分には、上記の表Eに示すそれぞれAZO-1、AZO-2、AZO-3またはTHIO-1を、それぞれ3.0%の濃度で添加する。
【0304】
結果得られる混合物は、実施例1.1~1.3および実施例2~5と同様に、とりわけチューナビリティおよび性能指数に関して改善された特性を示す。
【0305】
実施例28
基礎混合物
以下の表に示す組成および特性を有する液晶混合物B-28を調製し、その一般的な物理的特性および19GHzでのマイクロ波コンポーネントへのその適用性に関して特性決定する。
【0306】
【0307】
混合物B-28を7つの部分に分ける。これらの7つの部分のうちの3つにそれぞれ、上記の表Eに示す二色性色素TAZO-1を、それぞれ1.0%、3.0%および5.0%の濃度で添加する。他の4つの部分には、上記の表Eに示すそれぞれAZO-1、AZO-2、AZO-3またはTHIO-1を、それぞれ3.0%の濃度で添加する。
【0308】
結果得られる混合物は、実施例1.1~1.3および実施例2~5と同様に、とりわけチューナビリティおよび性能指数に関して改善された特性を示す。
【0309】
上記実施例で使用した二色性色素に代えて、蛍光性二色性色素を使用してもよい。これらにより、それぞれのマイクロ波コンポーネントからの変調媒体の漏れを容易に検出することができる。
【0310】
1種以上の多色性化合物を提供することに加えて、上記の混合物に1種以上のキラル化合物を添加することで、大部分の用途で改善された性能を達成することができる。