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特許7101623自動車のクルーズコントロールシステムのための後方監視
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】自動車のクルーズコントロールシステムのための後方監視
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/14 20060101AFI20220708BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20220708BHJP
【FI】
B60W30/14
G08G1/16 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018565033
(86)(22)【出願日】2017-05-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-11
(86)【国際出願番号】 EP2017062954
(87)【国際公開番号】W WO2017215907
(87)【国際公開日】2017-12-21
【審査請求日】2018-12-12
【審判番号】
【審判請求日】2020-08-07
(31)【優先権主張番号】15/180,654
(32)【優先日】2016-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100112793
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳大
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクター ラー
【合議体】
【審判長】佐々木 正章
【審判官】鈴木 充
【審判官】木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-501250(JP,A)
【文献】特開2007-156704(JP,A)
【文献】特開2012-219986(JP,A)
【文献】特表2011-510855(JP,A)
【文献】国際公開第2015/198842(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W10/00-10/30
B60W30/00-50/16
B60K31/00-31/18
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスト車両のためのアダプティブクルーズコントロールシステムであって、当該システムは、
後方向きセンサと、
速度制御部と、
電子プロセッサを含むコントローラであって、前記後方向きセンサ及び前記速度制御部と通信可能に接続されたコントローラと、
を備えており、
前記コントローラは、
道路状況と交通状況とから成るグループのうちの少なくとも1つを表す少なくとも1つのパラメータを受信し、
記少なくとも1つのパラメータに基づいてコースティングモードを実施可能状態又は実施不能状態にし、
前記少なくとも1つのパラメータが、下り坂の道路勾配に接近中、道路のカーブに接近中、及び、制限速度の低下が近い、のうちの少なくとも1つを表すときは、前記コースティングモードを実施可能状態にし、
前記ホスト車両の後方に位置するターゲット車両の存在を表す信号を前記後方向きセンサから受信し
前記後方向きセンサからの前記信号が、前記ホスト車両の後方に位置する前記ターゲット車両を検出せず、かつ、前記コースティングモードが実施可能状態であるときは、前記速度制御部を介して制限なくコースティングを実施する、
ように構成されており
前記コントローラはさらに、前記ホスト車両と前記ターゲット車両との間の距離を特定し、予め定められた距離閾値に基づいて、前記ホスト車両に近い、及び、前記ホスト車両から遠い、から成るグループのうち1つとして前記ターゲット車両を分類するように構成されており、
前記コントローラは、前記ターゲット車両が前記ホスト車両に近いとして分類されたときは、前記コースティングモードを実施不能状態にすることにより前記コースティングの実施停止するように構成されており、
前記コントローラは、前記ターゲット車両が前記ホスト車両から遠いとして分類され、かつ、前記コースティングモードが実施可能状態であるときは、予め規定された制限内でコースティングを実施するように構成されており、
前記コントローラは、前記予め規定された制限として最低速度を設定すること、時間的に遅延させること、及び、期間を短縮すること、から成るグループのうちの少なくとも1つを選択することによって、前記予め規定された制限内でコースティングを実施するように構成されている、
ホスト車両のためのアダプティブクルーズコントロールシステム。
【請求項2】
前記コントローラはさらに、前記ホスト車両に対する相対的な前記ターゲット車両の速度を特定し、予め定められた速度閾値に基づいて、前記ホスト車両に接近中、及び、前記ホスト車両から後退中、から成るグループのうち1つとして前記ターゲット車両を分類するように構成されている、
請求項1に記載のアダプティブクルーズコントロールシステム。
【請求項3】
前記コントローラは、前記ターゲット車両が前記ホスト車両に接近中として分類されたときは、前記コースティングモードを実施不能状態にすることにより前記コースティングの実施停止するように構成されている、
請求項2に記載のアダプティブクルーズコントロールシステム。
【請求項4】
前記コントローラは、前記ターゲット車両が前記ホスト車両から後退中として分類され、かつ、前記コースティングモードが実施可能状態であるときは、予め規定された制限内でコースティングを実施するように構成されている、
請求項2に記載のアダプティブクルーズコントロールシステム。
【請求項5】
ユーザインタフェースをさらに備えており、前記コントローラはさらに、当該アダプティブクルーズコントロールシステムの動作モードを表す信号を前記ユーザインタフェースから受信するように構成されている、
請求項1に記載のアダプティブクルーズコントロールシステム。
【請求項6】
ホスト車両を適応制御する方法であって、当該方法は、
道路状況と交通状況とから成るグループのうちの少なくとも1つを表す少なくとも1つのパラメータをコントローラにより受信することと、
記少なくとも1つのパラメータに基づいて前記コントローラによりコースティングモードを実施可能状態又は実施不能状態にすることと、
前記少なくとも1つのパラメータが、下り坂の道路勾配に接近中、道路のカーブに接近中、及び、制限速度の低下が近い、のうちの少なくとも1つを表すときは、前記コントローラにより前記コースティングモードを実施可能状態にすることと、
前記ホスト車両の後方に位置するターゲット車両の存在を表す信号を、後方向きセンサから前記コントローラにより受信することと
前記後方向きセンサからの前記信号が、前記ホスト車両の後方に位置する前記ターゲット車両を検出せず、かつ、前記コースティングモードが実施可能状態であるときは、前記コントローラにより制限なくコースティングを実施することと、
を含み
当該方法はさらに、
前記コントローラにより、前記ホスト車両と前記ターゲット車両との間の距離を特定し、予め定められた距離閾値に基づいて、前記ホスト車両に近い、及び、前記ホスト車両から遠い、から成るグループのうち1つとして前記ターゲット車両を分類することと、
記ターゲット車両が前記ホスト車両に近いとして分類されたときは、前記コントローラにより前記コースティングモードを実施不能状態にすることにより前記コースティングの実施を停止することと、
記ターゲット車両が前記ホスト車両から遠いとして分類され、かつ、前記コースティングモードが実施可能状態であるときは、前記コントローラにより予め規定された制限内でコースティングを実施することと、
を含み、
前記予め規定された制限として最低速度を設定すること、時間的に遅延させること、及び、期間を短縮すること、から成るグループのうちの少なくとも1つを前記コントローラにより選択することによって、前記予め規定された制限内でコースティングを実施する、
ホスト車両を適応制御する方法。
【請求項7】
当該方法はさらに、前記コントローラにより、前記ホスト車両に対する相対的な前記ターゲット車両の速度を特定し、予め定められた速度閾値に基づいて、前記ホスト車両に接近中、及び、前記ホスト車両から後退中、から成るグループのうち1つとして前記ターゲット車両を分類することを含む、
請求項6に記載のホスト車両を適応制御する方法。
【請求項8】
当該方法はさらに、前記ターゲット車両が前記ホスト車両に接近中として分類されたときは、前記コントローラにより前記コースティングモードを実施不能状態にすることにより前記コースティングの実施を停止することを含む、
請求項7に記載のホスト車両を適応制御する方法。
【請求項9】
当該方法はさらに、前記ターゲット車両が前記ホスト車両から後退中として分類され、かつ、前記コースティングモードが実施可能状態であるときは、前記コントローラにより予め規定された制限内でコースティングを実施することを含む、
請求項7に記載のホスト車両を適応制御する方法。
【請求項10】
当該方法はさらに、前記ホスト車両の動作モードを表す信号をユーザインタフェースから受信することを含む、
請求項6に記載のホスト車両を適応制御する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、自動車のクルーズコントロールシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
最近の車両は、車両の運転者をアシストするために様々な種類の自動化された制御を有していることがある。自動化された車両制御システムの1つの種類は、アダプティブクルーズコントロールシステムである。アダプティブクルーズコントロールシステムは、慣用のクルーズコントロールシステムを上回る付加的な機能を提供する。例えば、あるアダプティブクルーズコントロール(「ACC」)システムは、このACCシステムが車両前方においてより遅い速度で走行中の車両を検出するまでは、所望の車両速度を維持することができる。また、あるアダプティブクルーズコントロールシステムは、車両が走行している車道の変化又は特徴に基づいて、車両速度を調整することもできる。ただし、これらの例の場合、アダプティブクルーズコントロールシステムは、車道上の他の車両に与える影響を考慮せずに速度を調整する。特に、車両速度の変更は、交通の流れ及び他の運転者をいくらか妨害する可能性もある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
概要
実施形態は、特に、車両に配置された後方向きセンサを用いた他の車両の後方監視に基づいて、自動化された制御のレベルを調整するアダプティブクルーズコントロールシステムが提供される。
【0004】
1つの実施形態は、車両用のアダプティブクルーズコントロールシステムを提供する。この実施形態によれば、システムは、後方向きセンサ、速度制御部及びコントローラを含む。コントローラは、道路状況又は交通状況を表す少なくとも1つのパラメータを受信する。次いでコントローラは、少なくとも1つのパラメータに基づいてコースティングモードを選択する。コースティングモードは、アクティブ又は非アクティブのいずれかの状態をとり得る。コントローラは、ホスト車両の後方に位置するターゲット車両の存在を表す信号を後方向きセンサから受信し、後方向きセンサからの信号が、ターゲット車両がホスト車両の後方に位置することを検出したときは、コースティングモードを制限する。これとは逆に、コントローラは、後方向きセンサからの信号が、ホスト車両の後方に位置するターゲット車両を検出せず、かつ、コースティングモードがアクティブであるときは、速度制御部を介してコースティングを実施する。
【0005】
別の実施形態は、車両用のアダプティブクルーズコントロールシステムを動作させるための方法を提供する。この実施形態によれば、この方法は、道路状況又は交通状況を表す少なくとも1つのパラメータをコントローラにより受信することを含む。コントローラは、少なくとも1つのパラメータに基づいてコースティングモードを選択する。コースティングモードは、アクティブ又は非アクティブのいずれかの状態をとり得る。コントローラは、ホスト車両の後方に位置するターゲット車両の存在を表す信号を後方向きセンサから受信し、後方向きセンサからの信号が、ターゲット車両がホスト車両の後方に位置することを検出したときは、コースティングモードを制限する。これとは逆に、コントローラは、後方向きセンサからの信号が、ホスト車両の後方に位置するターゲット車両を検出せず、かつ、コースティングモードがアクティブであるときは、コースティングを実施する。
【0006】
詳細な説明及び添付の図面を考察すれば、さらに別の態様及び実施形態が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】1つの実施形態によるアダプティブクルーズコントロールシステムを装備したホスト車両のブロック図である。
図2】1つの実施形態による図1のアダプティブクルーズコントロールシステムにおけるコントローラのブロック図である。
図3】1つの実施形態による図1のアダプティブクルーズコントロールシステムを装備したホスト車両を動作させるための方法のフローチャートである。
図4】1つの実施形態に従って図1のアダプティブクルーズコントロールシステムが、ホスト車両とホスト車両の後方に位置するターゲット車両との間の距離又は相対速度に基づいて、それぞれ異なる反応を示す交通状況のブロック図である。
図5】1つの実施形態に従って図1のアダプティブクルーズコントロールシステムが、ホスト車両とホスト車両の後方に位置するターゲット車両との間の距離又は相対速度に基づいて、それぞれ異なる反応を示す交通状況のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
詳細な説明
いくつかの実施形態について詳細に説明する前に、本発明は、その適用に関して、以下の説明において述べる又は以下の図面において示す構造の詳細及び構成要素の配置に限定されるものではない、ということを理解されたい。本発明は、他の実施形態でも実現可能であるし、様々な手法により実施又は実行することができる。
【0009】
また、ハードウェア及びソフトウェアをベースとする複数の装置、並びに、複数の種々の構造的構成要素を使用して、様々な実施形態を具現化することができる。これに加えて、実施形態は、ハードウェア、ソフトウェア及び電子的な構成要素又はモジュールを含むことができ、これらは、説明の都合上、構成要素の大半がハードウェアだけで具現化されているかのように描かれて説明されている場合もある。しかしながら、当業者であれば、この詳細な説明を読むことによって認識することができるように、少なくとも1つの実施形態において、本発明のエレクトロニクスベースの態様を、1つ又は複数のプロセッサにより実行可能な(例えば、非一時的コンピュータ可読媒体に格納された)ソフトウェアとして具現化することができる。例えば、本明細書に記載された「コントロールユニット」及び「コントローラ」は、1つ又は複数のプロセッサ、非一時的コンピュータ可読媒体を含む1つ又は複数のメモリモジュール、1つ又は複数の入出力インタフェース、及び、各構成要素を接続するための種々のコネクション(例えば、システムバス)を含むことができる。
【0010】
図1には、1つの実施形態によるアダプティブクルーズコントロールシステム105を装備したホスト車両100が示されている。図示されている例によれば、アダプティブクルーズコントロールシステム105は、コントローラ110、速度制御部115、ユーザインタフェース120、ナビゲーションシステム125、後方向きセンサ130及び前方センサ135を含む複数の構成要素によって構築されている。コントローラ110は、様々な有線又は無線のコネクションを介して、速度制御部115、ユーザインタフェース120、ナビゲーションシステム125、後方向きセンサ130及び前方センサ135と、通信可能に接続されている。例えば、一部の実施形態によれば、コントローラ110は、上述の記載で列挙したアダプティブクルーズコントロールシステム105の構成要素各々と、専用の配線を介してダイレクトに接続されている。別の実施形態によれば、コントローラ110は、車両通信バス(例えば、コントローラエリアネットワーク(CAN)バス)又は車両ネットワーク(例えば、ワイヤレスコネクション)などのような共用の通信リンクを介して、構成要素のうちの1つ又は複数と通信するように接続されている。
【0011】
アダプティブクルーズコントロールシステム105の構成要素を、様々な構造及び種類のものとすることができる。例えば、一部の実施形態によれば、速度制御部115を、ホスト車両100のエンジンに伝達されるパワーを制御するために電子的に制御される装置(例えば、スロットル)とすることができる。一部の実施形態によれば、速度制御部115には自動ブレーキング制御部も含まれる。別の例によれば、ユーザインタフェース120はハードウェアを含んでおり、さらにヒューマン・マシン・インタフェース(HMI)を提供するように構成されたソフトウェアを含むこともできる。これはボタン、パネル、ダイアル、ライト、ディスプレイ等を含むことができ、これらによってコントローラ110とホスト車両100の運転者との間の入力及び出力の機能が提供される。ユーザインタフェース120は、ホスト車両100の動作モードを変更するための、1つ又は複数の選択可能な入力(例えば、ボタン又はディスプレイ上で選択可能なアイコン)を含むことができ、これには例えば、アダプティブクルーズコントロールをアクティブ及び非アクティブにするための、又は、所望のクルーズコントール速度を設定するための、1つ又は複数の入力が含まれる。ユーザインタフェース120は、ホスト車両100の運転者に様々な指示を与えるためのインジケータ(例えば、ライト、アイコン、可聴アラーム、触覚フィードバック等)も含むこともできる。
【0012】
別の例によれば、ナビゲーションシステム125は、アダプティブクルーズコントロールシステム105のための付加的な入出力機能を含む。ナビゲーションシステム125は、グローバルポジショニングシステム(GPS)、リモート情報サーバ、内部データベース等を介して、情報を収集することができる。この情報は、道路状況、交通状況又はこれら両方を含むことができる。例えば、現在の及び接近中の道路状況及び交通状況に関する情報を、コントローラ110のために外部又は内部において生成することができる。道路状況は、下り坂又は上り坂の道路勾配に接近中であること、道路のカーブに接近中であること、制限速度の上昇又は低下が近いことなど、を含むことができる。
【0013】
コントローラ110は、道路状況及び交通状況を少なくとも部分的に使用して、コースティング(惰行)動作モード(以下では、「コースティングモード」と称する。)をイネーブルする時点を決定する。1つの例によれば、道路勾配情報によって、コントローラ110は、接近中の道路勾配に基づいてホスト車両100のピッチ角における接近中の変化を予測することができる。道路カーブ情報によって、コントローラ110は、ホスト車両100のヨー角及び横加速度における接近中の変化を予測することができる。結果としてコントローラ110は、道路状況によって、ホスト車両100に対する今後のパワー要求を予測することができる。例えば、コントローラ110は、道路状況に基づいて、アダプティブクルーズコントロールシステム105により設定された速度範囲を維持するのに必要とされるエンジンへのパワー出力を予測することができる。従って、コントローラ110は、ホスト車両100が必要とするパワーがいつ低下することになるのかを特定することができ、まもなくパワーが低下することを見越して、それを活用するために、コースティングモードをイネーブルすることができ、アクティブにすることができ、又は、コースティングモードに移行することができる。コースティングモードがイネーブルされると又はアクティブにされると、コントローラ110は、エンジンへのパワー出力を解除又は低減することができる。ただし、コースティングモードがイネーブルされているときであっても、一部の実施形態によれば、コントローラ110は、後方向きセンサ130から受け取った情報に基づいて、コースティングのタイミング(例えば、コースティング持続時間)、コースティング量(例えば、許容可能な速度範囲)及びコースティングの非アクティブ化を調整する。これについては、後で詳細に説明する。その結果として、コントローラ110は、燃料を節約するのが適切である場所で、車両のパワー消費を低減することができる。
【0014】
さらに別の例によれば、後方向きセンサ130をホスト車両100の後部に取り付けることができ、ホスト車両100から後方向きの視野でポジショニングすることができる。1つの例によれば、後方向きセンサ130を外部でホスト車両100のフレームに取り付けることができる。さらに別の例によれば、後方向きセンサ130を内部でホスト車両100内に取り付けることができる。別の実施形態によれば、後方向きセンサ130をホスト車両の側方に(例えば、サイドミラーに)取り付けて、ホスト車両100の後方に向けて配向することができる。一部の実施形態によれば、後方向きセンサ130は、レーダ(radio detection and ranging, RADAR)又はライダ(light detection and ranging, LIDAR)の構成要素及び機能を含む。別の実施形態によれば、後方向きセンサ130は超音波の検出及び機能を含むことができる。これらの実施形態によれば、後方向きセンサ130及び前方センサ135は、ホスト車両100から信号を送信し、かつ、ホスト車両100とターゲット車両との間の距離及び相対速度を表す反射信号を受信するように構成されている(これについては図4に示す)。さらに別の実施形態によれば、後方向きセンサ130は、他の車両の距離、相対速度、位置などを表す他の車両から伝送されたもの(例えば、無線周波数信号)を、これらのパラメータを能動的にセンシングするのではなく受信する。例えば、これらの実施形態によれば、「後方向きセンサ」は、車車間(vehicle-to-vehicle, V2V)技術を用いて、本明細書で述べる方法及びシステムにおいて使用されるパラメータの少なくとも一部を取得することができる。さらに別の実施形態によれば、後方向きセンサ130は、ホスト車両100の後方に位置する他の車両のイメージを捕捉するように構成されたカメラである。これらの実施形態によれば、様々なイメージ処理機器又はビデオ処理機器によって、ホスト車両100の後方に位置する他の車両の距離、相対速度、位置などを特定することができる。同様に前方センサ135は、後方センサ130に関連して上述の記載において説明した技術のうちの1つ又は複数を含むことができる。
【0015】
上述の記載において列挙したアダプティブクルーズコントロールシステム105の構成要素の各々は、データを受信、処理及び送信するために、電子プロセッサ及びメモリを含む専用処理回路を含むことができる。アダプティブクルーズコントロールシステム105の構成要素の各々は、予め定められた通信プロトコルを使用してコントローラ110と通信することができる。図1に示した実施形態は、アダプティブクルーズコントロールシステム105の構成要素及び接続の一例を提示しているにすぎない。しかし、これらの構成要素及び接続を、本明細書において例示し説明したものとは別の手法により構築してもよい。
【0016】
図2は、1つの実施形態によるアダプティブクルーズコントロールシステム105におけるコントローラ110のブロック図である。コントローラ110は、複数の電気的及び電子的な構成要素を含んでおり、これらによって、パワー、動作制御、及び、コントローラ110内部の構成要素及びモジュールに対する保護が提供される。コントローラ110は特に、電子プロセッサ205(プログラマブル電子マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ又は同等のデバイスなど)、メモリ210(例えば、非一時的機械可読メモリ)、及び、入出力インタフェース215を含む。別の実施形態によれば、コントローラ110は、さらに付加的な構成要素を、よりわずか構成要素だけを、又は、異なる構成要素を含む。コントローラ110を、複数の独立したコントローラ(例えば、プログラマブル電子制御ユニット)において具現化することができ、それらのコントローラの各々が、特定のファンクション又はサブファンクションを実施するように構成されている。これに加えて、コントローラ110は、複数のサブモジュールを含むことができ、これらのサブモジュールは、入出力機能、信号処理を扱うために、また、後で挙げる方法を適用するために、付加的な電子プロセッサ、メモリ、又は、特定用途向け集積回路(ASIC)を含むことができる。
【0017】
コントローラ110及び対応づけられたシステムは、特に本明細書で述べるプロセス及び方法を具現化するように構成されている。例えば、電子プロセッサ205は、メモリ210と通信可能に接続されており、メモリ210に格納可能な命令を実行する。電子プロセッサ205は、アダプティブクルーズコントロールシステム105の動作方法に関連する命令を、メモリ210から取り出して実行するように構成されている。一部の実施形態によれば、入出力インタフェース215は、電子プロセッサ205からの命令に基づいて速度制御部115を動作させるために、ドライバ、リレイ、スイッチなどを含む。一部の実施形態によれば、入出力インタフェース215は、J1939又はCANバスといったプロトコルを用いることによって、他の車両のコントローラ又はシステムと通信を行う。別の実施形態によれば、入出力インタフェース215は、特定の用途のニーズに応じて、他の適切なプロトコルのもとで通信を行う。
【0018】
図3には、1つの実施形態によるアダプティブクルーズコントロールシステム105を装備したホスト車両100を動作させるための方法300のフローチャートが示されている。方法300は、道路状況又は交通状況を表す少なくとも1つのパラメータを受信することを含む(ブロック305)。上述のように、少なくとも1つのパラメータを、ナビゲーションシステム125によりホスト車両100の現在の位置に基づいて生成することができる。一部の実施形態によれば、少なくとも1つのパラメータが、少なくとも一部は前方センサ135によって検知される。例えば、前方センサ135は、道路勾配情報、道路カーブ情報、交通状況情報、又は、これらの任意の組み合わせを生成することができる。一部の実施形態によれば、道路状況及び交通状況を、単独で又は組み合わせにより動作するナビゲーションシステム125と前方センサ135とによって、検知又はそうでなければ特定することができる。少なくとも1つのパラメータに基づいて、コントローラ110は、アダプティブクルーズコントロールシステム105のコースティングモードをアクティブ又は非アクティブに設定する(ブロック310)。コントローラ110は、ホスト車両100の後方に位置するターゲット車両の存在又はそのようなターゲット車両の不存在を表す信号を、後方向きセンサ130から受信する(ブロック315)。後方向きセンサ130からの信号がターゲット車両を検出すると、コントローラ110は、コースティングモードを制限することができる(ブロック325)。これとは逆に、後方向きセンサ130からの信号がターゲット車両を検出せず、かつ、コースティングモードがアクティブであるときは、コントローラ110は、速度制御部115を介して制限なくコースティングを実施する(ブロック330)。一部の実施形態によれば、ターゲット車両を検出するだけではなくそれ以外のことも、コントローラ110がコースティングモードを制限する前に行われる。例えば、コントローラ110により何等かの制限が加えられる前に、後で説明するように、ターゲット車両の特定の距離又は速度の検出が必要となる場合もある。
【0019】
方法300の各ステップの順番は、方法300を実施するにあたり重要ではない。方法300のステップを、図示の順序とは異なる順序で実施してもよいし、又は、それらのステップを同時に実施してもよい。これに加えて、方法300のステップを迅速に繰り返し実施してもよい。例えば、方法300の特定のステップを、ホスト車両100の全般的な動作中に継続的に実施してもよいし、又は、アダプティブクルーズコントロールシステム105がアクティブなときだけ実施してもよい。
【0020】
図4及び図5には、アダプティブクルーズコントロールがコントローラ110によって能動的に実施されている走行状況が描かれている。図示の例によれば、ターゲット車両400は、ホスト車両100後方において同一の車線内に位置している。後方向きセンサ130は、ホスト車両100から後方に広がる範囲405を有する。コントローラ110は、ターゲット車両400の存在を表す信号を、後方向きセンサ130から受信する。方法300のブロック325に記載したとおり、コントローラ110は、後方向きセンサ130からの信号がホスト車両100の後方に位置するターゲット車両を検出すると、コースティングモードを制限する。コースティングモードの制限を様々な手法により実施することができる。例えば、一部の実施形態によれば、後方向きセンサ130がターゲット車両400の存在を検出すると、コントローラ110は、アダプティブクルーズコントロールシステム105のコースティングモードを制限する。別の実施形態によれば、コントローラ110は、所定の付加的な状況が発生した場合だけ、ターゲット車両400の検出に基づいてコースティングモードを制限する。
【0021】
一部の実施形態によれば、コントローラ110は、後方向きセンサ130からの信号に基づいて、ホスト車両100とターゲット車両400との間の距離410を特定する。図4に示されているように、距離410が予め定められた距離閾値415よりも長ければ、コントローラ110は、ターゲット車両400を、ホスト車両100から「遠い」として分類する。これとは逆に、図5に描かれているように、ターゲット車両400が予め定められた距離閾値415よりも近いところにいれば(例えば、予め定められた距離閾値を、ほぼ車両3台分の長さとすることができる)、コントローラ110は、ターゲット車両400を、ホスト車両100に「近い」として分類する。換言すれば、ホスト車両100がコースティングをアクティブにしたときにターゲット車両400が急ブレーキを強いられることになるほど、ターゲット車両400がホスト車両100にあまりにも接近しているときには、ターゲット車両400は、ホスト車両100に「近い」とされる。距離410の分類に基づいて、コントローラ110は、コースティングをアクティブにする、コースティングを非アクティブにする、又は、予め規定された制限内でコースティングを許可することによって、アダプティブクルーズコントロールシステム105を調整することができる。
【0022】
一部のケースによれば、距離410に基づいてコースティングモードを制限することには、コースティングモードをディスエーブルすることが含まれる。斯かるケースにおいては、ターゲット車両400がホスト車両100に「近い」ときには常に、コントローラ110は、ターゲット車両400がホスト車両100に「近い」としてもはや分類されなくなるまでは少なくとも、コースティングモードの実施を停止する。別の実施形態によれば、コントローラ110は、ターゲット車両400が後方向きセンサ130によって検出されると直ちに、コースティングの実施を停止する。コントローラ110がターゲット車両400をホスト車両100から「遠い」として分類したときであっても、このことを実施することができる。
【0023】
別の実施形態によれば、コントローラ110は、予め規定された制限をコースティングモードに設定することによって、コースティングモードを制限する。ターゲット車両がホスト車両100に「近い」とき、又は、ホスト車両100から「遠い」ときに、このことを行うことができる。例えば、コントローラ110は、ターゲット車両400がホスト車両100に「近い」ときに、予め規定された複数の制限から成る第1のセットを有することができ、ターゲット車両400がホスト車両100から「遠い」ときに、予め規定された複数の制限から成る第2のセットを有することができる。このケースにおいては、予め規定された複数の制限から成る第1のセットによって、予め規定された複数の制限から成る第2のセットよりも、コースティングを大きく制限することができる。
【0024】
予め規定された制限によって、様々な手法によりアダプティブクルーズコントロールシステム105の挙動に作用を与えることができる。例えば、コントローラ110は、ホスト車両100の最低速度を設定することによって、予め規定された制限を設定することができる。最低速度を、道路状況又は交通情報に基づくものとすることができる。その結果、最低速度によって、使用可能なコースティング量に制限が設定される。例えば、ホスト車両100がコースティングから最低速度まで減速すると、コントローラ110は、速度制御部115を介して、ホスト車両100のエンジンにいくらかパワーを与えることによって、ホスト車両100を最低速度に維持する。
【0025】
予め規定された制限によって、コースティングに使用可能な期間又はコースティングの初期化の期間を制限することもできる。例えば、コントローラ110は、期間を短くしてコースティングを実施することによりコースティングを制限することができ、又は、コースティングモードの初期化を遅延させることができる。例えば、ホスト車両100が下り坂勾配に近づいているとき(例えば、丘の頂上に達する直前)、かつ、コースティングモードがイネーブルされているとき、コントローラ110は、エンジンへのパワーがまもなく低減されることを予期することができる。この例において、ターゲット車両400が検出されなければ、コントローラ110は、ホスト車両100を制限なくコースティングに設定することができる。しかしながら、ターゲット車両400がホスト車両100に「近い」ときには、コントローラ110は、予め規定された複数の制限から成る第1のセットに基づいて、時間的に遅延させて、又は、期間を短縮して、コースティングモードをアクティブにすることができる。同様に、ターゲット車両400がホスト車両100から「遠い」として分類されたときには、コントローラ110は、予め規定された複数の制限から成る第2のセットに基づいて、時間的に遅延させて、又は、期間を短縮して、コースティングモードをアクティブにすることができる。
【0026】
一部の実施形態によれば、コントローラ110は、ホスト車両100とターゲット車両400との間の相対速度に基づいて、コースティングモードを制限することもできる。これらの実施形態によれば、コントローラ110は、後方向きセンサ130から受信した信号に基づいて、ホスト車両100に対する相対的なターゲット車両400の速度を特定する。これには、距離410が増大しているのか又は減少しているのかを単に特定することを含めることができる。この特定に基づいてコントローラ110は、ターゲット車両400を、「接近中」、「後退中」又は「一定」として分類することができる。ターゲット車両400を分類するために、コントローラ110は、ターゲット車両400の相対速度を予め定められた速度閾値(図示せず)と比較することができる。例えば、コントローラ110は、ターゲット車両400を、相対速度が予め定められた速度閾値よりも速ければ、「接近中」として分類することができ、相対速度が予め定められた速度閾値よりも遅ければ、「後退中」として分類することができ、さらに相対速度がほぼゼロであるときは(例えば、時速1マイルよりも小さければ)、「一定」として分類することができる。一部の実施形態によれば、コントローラ110は、ターゲット車両400を、(例えば、時速5マイルよりも速くホスト車両100に接近しているとき)「高速接近中」として分類することができる。
【0027】
距離の分類に基づいてアダプティブクルーズコントロールシステム105を調整するのと同様に、コントローラ110は、速度の分類に基づいて、コースティングをアクティブにする、コースティングを非アクティブにする、又は、予め規定された制限内でコースティングを許可することによって、アダプティブクルーズコントロールシステム105を調整することができる。
【0028】
一部のケースによれば、ターゲット車両400の相対速度に基づいてコースティングモードを制限することは、コースティングモードをディスエーブルすることを含む。斯かるケースにおいては、ターゲット車両400がホスト車両100に「接近中」のときには常に、コントローラ110は、(例えば、ターゲット車両400が車線変更したときなど)ターゲット車両400がホスト車両100に「接近中」としてもはや分類されなくなるまでは少なくとも、コースティングモードの実施を停止する。別の実施形態によれば、コントローラ110は、ターゲット車両400が「一定」として分類されたときに、又は、ターゲット車両400が「高速接近中」として分類されたときのみ、コースティングの実施を停止する。
【0029】
一部の実施形態によれば、コントローラ110は、相対速度に基づいて予め規定された制限をコースティングモードに設定することによって、コースティングモードを制限する。ターゲット車両400がホスト車両100に「接近中」、「高速接近中」、又は、ホスト車両100から「一定」のときに、このことを行うことができる。例えば、コントローラ110は、ターゲット車両400がホスト車両100に「接近中」のときに、予め規定された複数の制限から成る第1のセットを有することができ、ターゲット車両400がホスト車両100から「一定」のときに、予め規定された複数の制限から成る第2のセットを有することができる。このケースにおいては、予め規定された複数の制限から成る第1のセットによって、予め規定された複数の制限から成る第2のセットよりも、コースティングを大きく制限することができる。これに加えて、ホスト車両100は、ターゲット車両400が「高速接近中」のときに、予め規定された複数の制限から成る第3のセットを有することができ、これによれば、予め規定された複数の制限から成る第1のセット又は予め規定された複数の制限から成る第2のセットのいずれかよりも大きくコースティングが制限されることになる。上述の記載と同様に、コントローラ110は、期間を短縮してコースティングを実施することによりコースティングを制限することができ、又は、コースティングモードの初期化を遅延させることができる。
【0030】
コントローラ110は、ターゲット車両400の距離410及び相対速度の双方に基づいて、アダプティブクルーズコントロールシステム105を調整することもできる。このケースにおいては、コントローラ110は、ターゲット車両400が「近い」及び「接近中」の両方として分類されたときのみ、コースティングモードをディスエーブルすることができる。これに加えコントローラ110は、ターゲット車両400の距離410と相対速度との組み合わせに基づいて、予め規定された制限をコースティングモードに設定することができる。例えば、コントローラ110は、ターゲット車両400の距離410と相対速度とを組み合わせて、リスク評価値を形成することができる。このケースにおいては、リスク評価値が第1のリスク閾値よりも大きければ、コントローラ110は、予め規定された制限を設定することができ、リスク評価値が第2のリスク閾値よりも大きければ、コントローラ110は、コースティングをディスエーブルすることができる。
【0031】
一部の実施形態によれば、コントローラ110は、リスク評価値に基づいて比較的連続的な範囲にわたって、コースティングモードの予め規定された制限を調整することができる。これらの実施形態によれば、コントローラ110は、リスク評価値が増大するにつれて、予め規定された制限を徐々に低減する。
【0032】
このように、実施形態は、特に、ホスト車両のためのアダプティブクルーズコントロールシステム、及び、アダプティブクルーズコントロールシステムを装備したホスト車両を動作させる方法を提供し、これらは、ホスト車両の後方向きセンサによって検出された車両に基づいて、アダプティブクルーズコントロールシステムの動作を調整する。以下の請求項には、本発明の様々な特徴及び利点が記載されている。
図1
図2
図3
図4
図5