(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】内燃機関の可変動弁機構
(51)【国際特許分類】
F01L 13/00 20060101AFI20220708BHJP
F01L 1/04 20060101ALI20220708BHJP
F01L 1/18 20060101ALI20220708BHJP
F16H 25/12 20060101ALI20220708BHJP
【FI】
F01L13/00 301G
F01L1/04 D
F01L1/18 K
F16H25/12 A
(21)【出願番号】P 2019005188
(22)【出願日】2019-01-16
【審査請求日】2021-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000185488
【氏名又は名称】株式会社オティックス
(74)【代理人】
【識別番号】100096116
【氏名又は名称】松原 等
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 憲
【審査官】二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-224496(JP,A)
【文献】再公表特許第2016/098498(JP,A1)
【文献】特開2010-275935(JP,A)
【文献】特開2011-122498(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0167325(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 13/00
F01L 1/04
F01L 1/18
F16H 25/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カムシャフト(2)に、カム(3)と2つの螺旋溝(5,7)とが設けられ、
カムシャフト(2)と平行に延びるロッカシャフト(9)に、ロッカアーム本体(10)が揺動可能に支持され、
ロッカアーム本体(10)に、ロッカシャフト(9)と平行に延びるローラ軸(15)が設けられ、
ローラ軸(15)に、カム(3)が当接しうるローラ(16)がロッカシャフト長方向に変位可能に支持され、
2つの螺旋溝(5,7)に択一的に係入する2つの係入アーム(23,24)とローラ(16)の両側面を抱持するローラガイド(31)とを含むリンクアーム(20)が、ロッカシャフト長方向に変位可能に設けられ、
2つの係入アーム(23,24)を回動装置(40)により回動させて、一方の係入アーム(23)を一方の螺旋溝(5)に係入させるか又は他方の係入アーム(24)を他方の螺旋溝(7)に係入させるかを選択することにより、選択した螺旋溝(5,7)に沿ってリンクアーム(20)及びローラ(16)をロッカシャフト長方向に変位させて、該ローラ(16)に前記カム(3)が当接するか又は当接しないかを切り替える内燃機関の可変動弁機構において、
リンクアーム(20)が、回動装置(40)により回動する、2つの係入アーム(23,24)を含む回動部材(21)と、回動装置(40)により回動しない、ローラガイド(31)を含む非回動部材(27)とに、分割形成されていることを特徴とする内燃機関の可変動弁機構。
【請求項2】
回動部材(21)は、ロッカシャフト(9)に、ロッカシャフト周方向に回動可能に且つロッカシャフト長方向にスライド変位可能に外嵌されている請求項1記載の内燃機関の可変動弁機構。
【請求項3】
非回動部材(27)は、ロッカシャフト(9)に、ロッカシャフト長方向に変位可能に外嵌され、ロッカシャフト周方向に回動不能となっている請求項1又は2記載の内燃機関の可変動弁機構。
【請求項4】
回動部材(21)は、非回動部材(27)に、ロッカシャフト長方向に相対変位しないように嵌入している請求項1~3のいずれか一項に記載の内燃機関の可変動弁機構。
【請求項5】
ローラガイド(31)は、ロッカアーム本体揺動時のローラ軸(15)の動きを逃がす切欠(33)が形成されたガイド壁(32)が、ロッカシャフト長方向にローラ嵌入空間をおいて少なくとも2つ並んで構成されている請求項1~4のいずれか一項に記載の内燃機関の可変動弁機構。
【請求項6】
回動装置(40)は、電磁ソレノイド(41,42)からなるものである請求
項1~5のいずれか一項に記載の内燃機関の可変動弁機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のバルブを駆動するとともに、その駆動状態を内燃機関の運転状況に応じて変更する可変動弁機構に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、先に、
図7に示す内燃機関の可変動弁機構51を提案した(特許文献1)。この可変動弁機構51は、カムシャフト52に、カム53と2つの螺旋溝54,55とが設けられ、カムシャフト52と平行に延びるロッカシャフト56に、ロッカアーム本体57が揺動可能に支持され、ロッカアーム本体57に、ロッカシャフト56と平行に延びるローラ軸58が設けられ、ローラ軸58に、カム53が当接しうるローラ59がロッカシャフト長方向に変位可能に支持され、2つの螺旋溝54,55に択一的に係入する2つの係入アーム61とローラ59の両側面を抱持するローラガイド63(摺接部)とを含むリンクアーム60が、ロッカシャフト長方向に変位可能に設けられている。そして、リンクアーム60全体を回動装置により回動させて、一方の係入アーム61を一方の螺旋溝54に係入させるか又は他方の係入アーム(図示略)を他方の螺旋溝55に係入させるかを選択することにより、選択した螺旋溝54,55に沿ってリンクアーム60及びローラ59をロッカシャフト長方向に変位させて、該ローラ59に前記カム53が当接するか又は当接しないかを切り替える機構である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記リンクアーム60は、2つの係入アーム61とローラガイド63とを一体的に含み、これら全体を回動させるために慣性質量が大きく、また、ローラガイド63とローラ59との摺接が回動抵抗になるため、駆動力の大きい回動装置が必要であった。回動装置として例えば電磁ソレノイドを用いる場合には、容量の大きい大型の電磁ソレノイドが必要になり、内燃機関の大型化や、電力消費増加による燃費悪化に繋がるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明の課題は、リンクアームの回動部分の慣性質量を低減し、またローラガイドとローラとの摺接が回動部分の回動抵抗にならないようにし、もって回動装置に要求される駆動力を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の可変動弁機構は、
カムシャフトに、カムと2つの螺旋溝とが設けられ、
カムシャフトと平行に延びるロッカシャフトに、ロッカアーム本体が揺動可能に支持され、
ロッカアーム本体に、ロッカシャフトと平行に延びるローラ軸が設けられ、
ローラ軸に、カムが当接しうるローラがロッカシャフト長方向に変位可能に支持され、
2つの螺旋溝に択一的に係入する2つの係入アームとローラの両側面を抱持するローラガイドとを含むリンクアームが、ロッカシャフト長方向に変位可能に設けられ、
2つの係入アームを回動装置により回動させて、一方の係入アームを一方の螺旋溝に係入させるか又は他方の係入アームを他方の螺旋溝に係入させるかを選択することにより、選択した螺旋溝に沿ってリンクアーム及びローラをロッカシャフト長方向に変位させて、該ローラに前記カムが当接するか又は当接しないかを切り替える内燃機関の可変動弁機構において、
リンクアームが、回動装置により回動する2つの係入アームを含む回動部材と、回動装置により回動しないローラガイドを含む非回動部材とに、分割形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、リンクアームの回動部分である回動部材の慣性質量を低減でき、またローラガイドとローラとの摺接が回動部材の回動抵抗にならないようにでき、もって回動装置に要求される駆動力を低減することができる。回動装置として例えば電磁ソレノイドを用いる場合には、容量の小さい小型の電磁ソレノイドで済み、内燃機関の小型化や、電力消費減少による燃費向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は実施例の可変動弁機構を示し、(a)は前上からみた斜視図、(b)は後下からみた斜視図である。
【
図2】
図2は同機構のローラロッカアーム及びリンクアームを示し、(a)は前上から見た分解斜視図、(b)は後下から見た分解斜視図である。
【
図3】
図3は同機構のローラを第一カムが当接する位置に変位させた状態を示し、(a)は平面図、(b)はIIIb-IIIb側断面図である。
【
図4】
図4も同状態を示し、(a)はIVa-IVa側断面図、(b)は(a)からリフトしたときの側断面図である。
【
図5】
図5は同機構のローラを第二カムが当接する位置に変位させた状態を示し、(a)は平面図、(b)はVb-Vb側断面図である。
【
図6】
図6も同状態を示し、(a)はVIa-VIa側断面図、(b)は(a)からリフトしたときの側断面図である。
【
図7】
図7は従来例の可変動弁機構の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.ロッカアーム本体
ロッカアーム本体は、ローラをローラ軸にロッカシャフト長方向に変位可能に支持する関係で、ロッカシャフト長方向に幅広となるため、複数のバルブ押圧部を設けて、複数のバルブを駆動するタイプとすることが好ましい。但し、1つのバルブを駆動するタイプとしてもよい。
また、ローラ軸に支持するローラの数は、1つでも複数でもよい。
【0010】
2.リンクアーム
回動部材は、ロッカシャフトに、ロッカシャフト周方向に回動可能に且つロッカシャフト長方向にスライド変位可能に外嵌されていることが好ましい。
非回動部材は、ロッカシャフトに、ロッカシャフト長方向に変位可能に外嵌され、ロッカシャフト周方向に回動不能となっていることが好ましい。
但し、回動部材と非回動部材は、ロッカシャフトとは別の、カムシャフトと平行に延びるシャフトに、上記と同様に外嵌されていてもよい。
【0011】
回動部材と非回動部材(すなわちリンクアーム)を一緒にロッカシャフト長方向に変位することを容易にするため、回動部材は、非回動部材に、ロッカシャフト長方向に相対変位しないように嵌入していることが好ましい。
【0012】
ローラガイドの構造は、特に限定されないが、ロッカアーム本体揺動時のローラ軸の動きを逃がす切欠が形成されたガイド壁が、ロッカシャフト長方向にローラ嵌入空間をおいて少なくとも2つ並んで構成されている態様を例示できる。
【0013】
3.回動装置
回動装置としては、特に限定されないが、電磁ソレノイド、油圧機構、電動モータ機構等によるものを例示できる。
【0014】
4.ローラに前記カムが当接しないときの態様
ローラに前記カムが当接しないときの態様としては、ローラに別のカムも当接しない態様、ローラに別のゼロリフトの円カムが当接する態様、ローラに別のノーズプロフィールのカムが当接する態様とを例示できる。次に説明する実施例は、ローラに別のノーズプロフィールのカムが当接する態様である。
【実施例】
【0015】
次に、本発明の実施例を
図1~
図6を参照して説明する。なお、実施例の各部の構造、形状、数等は例示であり、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更できる。
【0016】
本実施例の可変動弁機構1は、
カムシャフト2に、カム3と2つの螺旋溝5,7とが設けられ、
カムシャフト2と平行に延びるロッカシャフト9に、ロッカアーム本体10が揺動可能に支持され、
ロッカアーム本体10に、ロッカシャフト9と平行に延びるローラ軸15が設けられ、
ローラ軸15に、カム3が当接しうるローラ16がロッカシャフト長方向に変位可能に支持され、
2つの螺旋溝5,7に択一的に係入する2つの係入アーム23,24とローラ16の両側面を抱持するローラガイド31とを含むリンクアーム20が、ロッカシャフト長方向に変位可能に設けられ、
2つの係入アーム23,24を回動装置40により回動させて、一方の係入アーム23を一方の螺旋溝5に係入させるか又は他方の係入アーム24を他方の螺旋溝7に係入させるかを選択することにより、選択した螺旋溝5,7に沿ってリンクアーム20及びローラ16をロッカシャフト長方向に変位させて、該ローラ16に前記カム3が当接するか又は当接しないかを切り替える機構であって、
リンクアーム20が、回動装置40により回動する2つの係入アーム23,24を含む回動部材21と、回動装置40により回動しないローラガイド31を含む非回動部材27とに、分割形成されていることを特徴とする。
【0017】
カムシャフト長方向と、ロッカシャフト長方向と、ローラ軸長方向は、いずれも
図1(a)、
図3(a)及び
図5(a)での左右方向であって同一である。そこで、以下では、これらの図で左に向かう方向を軸長方向d1といい、右に向かう方向を軸長方向d2という。
【0018】
[カム等]
カムシャフト2には、軸長方向d1側から軸長方向d2側へ順に、駆動カムとしての第一カム3、第二カム4、第一カム3及び第二カム4と、カムレール溝としての第二螺旋溝7、円環溝6及び第一螺旋溝5とが、並んで設けられている。
【0019】
2つの第一カム3は、断面形状が円形のベース円と、ベース円から突出した相対的に高リフトかつ狭作用角のノーズとからなり、主に高速回転域で使用されるものである。
2つの第二カム4は、断面形状が円形のベース円と、ベース円から突出した相対的に低リフトかつ広作用角のノーズとからなり、主に低速回転域で使用されるものである。
【0020】
円環溝6は、リンクアーム20を軸長方向d1,d2に変位不能に係止するための溝であって、軸長方向にずれない円環状の溝である。
【0021】
第一螺旋溝5は、リンクアーム20を軸長方向一方d1に変位させるための溝であって、円環溝6よりも軸長方向他方d2側に設けられている。第一螺旋溝5は、その基端から所定の位置までは、カムシャフト2の回転方向の反対方向に軸長方向d1,d2にずれることなく延びており、該所定の位置からは、カムシャフト2の回転方向の反対方向に進むに従い軸長方向一方d1側に進む螺旋状に延びて円環溝6に合流している。この螺旋状に延びる部分は、第一及び第二カム3,4のベース円作用時に、第一係入アーム23の先端部が係入する位相に設けられている。
【0022】
第二螺旋溝7は、リンクアーム20を軸長方向他方d2に変位させるための溝であって、円環溝6よりも軸長方向一方d1側に設けられている。第二螺旋溝7は、その基端から所定の位置までは、カムシャフト2の回転方向の反対方向に軸長方向d1,d2にずれることなく延びており、該所定の位置からは、カムシャフト2の回転方向の反対方向に進むに従い軸長方向他方d2側に進む螺旋状に延びて円環溝6に合流している。この螺旋状に延びる部分は、第一及び第二カム3,4のベース円作用時に、第二係入アーム24の先端部が係入する位相に設けられている。
【0023】
[ロッカアーム]
ロッカアーム本体10は、
図2等に示すように、軸長方向に離間した第一側壁部11及び第二側壁部12と、第一側壁部11と第二側壁部12の前端部間を連結する前連結部13と、第一側壁部11と第二側壁部12との間に配されて前連結部13に支持された中間壁部14と、第一側壁部11と中間壁部14との間に架け渡されたローラ軸15とを含み構成されている。
【0024】
第一側壁部11及び第二側壁部12の長さ方向後部に形成された被支持穴にロッカシャフト9が通され、第一側壁部11の長さ方向中間部に前記ローラ軸15が位置し、前連結部13の下面にバルブVを押圧するバルブ押圧部17が形成されている。ロッカアーム本体10は、ロッカシャフト周方向に揺動可能であるが、ロッカシャフト長方向(軸長方向d1,d2)には変位しないようになっている。
【0025】
ローラ軸15には、2つのローラ16がローラ軸周方向に回転可能に且つローラ軸長方向(軸長方向d1,d2)にスライド変位可能に外嵌されている。
【0026】
[リンクアーム]
リンクアーム20は、
図2等に示すように、回動部材21と非回動部材27とに分割形成され、両部材が組み付けられてなる。
【0027】
(回動部材)
回動部材21は、筒状基部22と、筒状基部22から、正面視で軸長方向に互いに離間し、側面視でV字をなするように、前方へ突出した第一係入アーム23及び上方へ突出した第二係入アーム24とを含み構成されている。
【0028】
筒状基部22は、ロッカシャフト9に、ロッカシャフト周方向に回動可能に且つロッカシャフト長方向(軸長方向d1,d2)にスライド変位可能に外嵌されている。筒状基部22の背面には、板状の被押圧部25が設けられ、被押圧部25の下部又は上部が択一的に前方へ回動装置40により押圧されることにより、回動部材21が回動する。筒状基部22の下部には、ロッカシャフト長方向にもロッカシャフト周方向にも(後述するボルト36径よりも)大きい逃がし穴26が形成され、この逃がし穴26に後述するスリーブ39が通っている。
【0029】
第一係入アーム23は、その先端部が第一螺旋溝5ないし円環溝6に係入可能に形成されている。第二係入アーム24は、その先端部が第二螺旋溝7ないし円環溝6に係入可能に形成されている。
【0030】
(非回動部材)
非回動部材27は、回動部材21の筒状基部22が嵌入する嵌入空間をおいて離れた第一筒状部28及び第二筒状部29と、第一筒状部28と第二筒状部29の下部間を連結する下連結部30と、第一筒状部28から前方へ突出したローラガイド31とを含み構成されている。
【0031】
第一筒状部28及び第二筒状部29は、ロッカシャフト9に、ロッカシャフト長方向(軸長方向d1,d2)にスライド変位可能に外嵌されている。
【0032】
第一筒状部28及び第二筒状部29の下には、下連結部30から離れる方向において段状に低くなる係合段部34が設けられている。
【0033】
下連結部30には、ロッカシャフト長方向(軸長方向d1,d2)に延びる長孔35が形成され、この長孔35に後述するスリーブ39が通っている。
【0034】
ローラガイド31は、ロッカアーム本体揺動時のローラ軸15の変位を逃がす切欠33が形成されたガイド壁32が、ロッカシャフト長方向(軸長方向d1,d2)に2つのローラ嵌入空間をおいて3つ並んで構成されている。3つのガイド壁32の下端間は連結底38で連結され補強されているが、この連結底38は必須ではない。ローラガイド31の左右長は、ロッカアーム本体10の第一側壁部11と中間壁部14との間よりも短く、リンクアーム20の左右長は、ロッカアーム本体10の第一側壁部11と第二側壁部12との間よりも短いので、リンクアーム20は軸長方向d1,d2に変位可能となっている。
【0035】
(組み付け)
非回動部材27の嵌入空間に回動部材21の筒状基部22が、ロッカシャフト長方向に相対変位しないように嵌入されて、リンクアーム20が出来上がり、このリンクアーム20がロッカアーム本体10の第一側壁部11と第二側壁部12との間に入れられるとともに、ローラ嵌入空間にローラ16が嵌入された状態で、上述のとおり、第一側壁部11、第二側壁部12、第一筒状部28、第二筒状部29、及び筒状基部22にロッカシャフト9が通されている。
【0036】
そして、スリーブ39が、非回動部材27の長孔35と回動部材21の逃がし穴26とを通されてロッカシャフト9に当てられ、該スリーブ39にボルト36が通されてロッカシャフト9に交差状に螺着されている。このスリーブ39と長孔35と逃がし穴26の大小関係により、非回動部材27はロッカシャフト周方向に回動不能且つロッカシャフト長方向に変位可能となっており、回動部材21はロッカシャフト周方向に回動可能かつロッカシャフト長方向に変位可能となっている。
【0037】
また、スリーブ39の下端とボルト36の頭部との間には、板バネからなる弾性部材37が挟着されている。弾性部材37と下連結部30の下面との間には隙間があり、非回動部材27のロッカシャフト長方向の変位を許容している。弾性部材37は軸長方向d1,d2両側に延出し、各延出端部は、リンクアーム20が軸長方向d1,d2に変位し終わったときに各係合段部34に係合する抑制部を構成している。この係合により、リンクアーム20の不要の変位(いずれの係入アーム23,24も螺旋溝5,7に係入していないときに、内燃機関の振動等で起こりうる。)が抑制される。
【0038】
[回動装置]
回動装置40は、
図3、
図5等に示すように、被押圧部25の下部を前方へ押圧して回動部材21を軸周方向一方r1に回動させるための第一電磁ソレノイド41と、被押圧部25の上部を前方へ押圧して回動部材21を軸周方向他方r2に回動させるための第二電磁ソレノイド42とからなる。各電磁ソレノイド41,42は、ONによりロッドを繰出して回動部材21を押圧し、OFFによりロッドを退入させて前記押圧を解除する。
【0039】
以上のように構成された実施例の可変動弁機構1の可変動弁動作を説明する。
[1]ローラ16を第一カム3が当接する位置に変位させるとき
図3、
図4に示すように、第一電磁ソレノイド41をONにして、被押圧部25の下部を前方へ押圧し、回動部材21を軸周方向一方r1に回動させる。このとき、非回動部材27は回動しないので、回動部材21の慣性質量は小さく、ローラガイド31とローラ16との接触は回動抵抗とならない。
【0040】
この回動部材21の回動により、第一係入アーム23の先端部が第一螺旋溝5に係入し、第二係入アーム24の先端部が円環溝6から退出する。前記のとおり、第一螺旋溝5の螺旋状に延びる部分はベース円作用時に第一係入アーム23が係入する位相にあるので、回動部材21はカムシャフト2の回転に伴いベース円作用時に第一螺旋溝5に沿って軸長方向一方d1に変位し、非回動部材27及びローラ16を押して同様に変位させる。その結果、2つのローラ16は2つの第一カム3が当接する(且つ第二カム4が当接しない)位置に変位し、第一係入アーム23が円環溝6に入ることでリンクアーム20及びローラ16の左右方向位置が保持される。
【0041】
そして、
図4に示すように、第一カム3によりローラ16が押圧されてロッカアーム本体10が揺動し、第一カム3により、バルブVが高リフトかつ狭作用角でリフトされる。この動弁モードは、主に高速回転域で使用される。
【0042】
[2]ローラ16を第二カム4が当接する位置に変位させるとき
図5、
図6に示すように、第二電磁ソレノイド42をONにして、被押圧部25の上部を前方へ押圧し、回動部材21を軸周方向他方r2に回動させる。このとき、非回動部材27は回動しないので、回動部材21の慣性質量は小さく、ローラガイド31とローラ16との接触は回動抵抗とならない。
【0043】
この回動部材21の回動により、第二係入アーム24の先端部が第二螺旋溝7に係入し、第一係入アーム23の先端部が円環溝6から退出する。前記のとおり、第二螺旋溝7の螺旋状に延びる部分はベース円作用時に第二係入アーム24が係入する位相にあるので、回動部材21はカムシャフト2の回転に伴いベース円作用時に第二螺旋溝7に沿って軸長方向他方d2に変位し、非回動部材27及びローラ16を押して同様に変位させる。その結果、2つのローラ16は2つの第二カム4が当接する(且つ第一カム3が当接しない)位置に変位し、第二係入アーム24が円環溝6に入ることでリンクアーム20及びローラ16の左右方向位置が保持される。
【0044】
そして、
図6に示すように、第二カム4によりローラ16が押圧されてロッカアーム本体10が揺動し、バルブVが低リフトかつ広作用角でリフトされる。この動弁モードは、主に低速回転域で使用される。
【0045】
本実施例によれば、リンクアーム20の回動部分である回動部材21の慣性質量を低減でき、また回動部材21がローラ16と摺接しないようにでき、もって回動装置40が要する駆動力を低減することができる。回動装置40として例えば電磁ソレノイドを用いる場合には、容量の小さい小型の電磁ソレノイドで済み、内燃機関の小型化や、電力消費減少による燃費向上が期待できる。
【0046】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、例えば次のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することができる。
(1)第一カム3及び第二カム4をそれぞれ1つにし、ローラ16を1つにすること。
【符号の説明】
【0047】
1 可変動弁機構
2 カムシャフト
2 リンクアーム
3 第一カム
4 第二カム
5 第一螺旋溝
6 円環溝
7 第二螺旋溝
9 ロッカシャフト
10 ロッカアーム本体
15 ローラ軸
17 ローラ
20 リンクアーム
21 回動部材
22 筒状基部
23 第一係入アーム
24 第二係入アーム
25 被押圧部
26 逃がし穴
27 非回動部材
28 第一筒状部
29 第二筒状部
30 下連結部
31 ローラガイド
32 ガイド壁
33 切欠
35 長孔
36 ボルト
40 回動装置
41 第一電磁ソレノイド
42 第二電磁ソレノイド
d1 軸長方向一方
d2 軸長方向他方
r1 軸周方向一方
r2 軸周方向他方