(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20220708BHJP
H01F 17/00 20060101ALN20220708BHJP
H01F 17/04 20060101ALN20220708BHJP
H01F 27/00 20060101ALN20220708BHJP
H01F 27/29 20060101ALN20220708BHJP
H01F 37/00 20060101ALN20220708BHJP
【FI】
H02M3/155 W
H02M3/155 Y
H01F17/00 B
H01F17/04 A
H01F27/00 R
H01F27/29 123
H01F37/00 D
H01F37/00 N
(21)【出願番号】P 2019149594
(22)【出願日】2019-08-19
(62)【分割の表示】P 2016107560の分割
【原出願日】2016-05-30
【審査請求日】2019-08-20
【審判番号】
【審判請求日】2021-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100221512
【氏名又は名称】山中 誠司
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 由雅
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 顕徳
(72)【発明者】
【氏名】比留川 敦夫
【合議体】
【審判長】林 毅
【審判官】山澤 宏
【審判官】山崎 慎一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-56940(JP,A)
【文献】特開2006-210403(JP,A)
【文献】特開2003-217932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00- 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多相SWレギュレータに使用されるコイル部品であり、
2N個(Nは2以上の整数)のコイルを有し、
前記2N個のコイルは、N組の対をなすように構成され、
前記N組の対の一つをなす第1コイルおよび第2コイル以外のコイルをその他のコイルとするとき、前記第1コイルと前記第2コイルとの磁気結合は、前記第1コイルと前記その他のコイルとの磁気結合よりも強
く、
前記N組の対をなすコイルのそれぞれにおいて、
対の一方のコイルの一端と対の他方のコイルの一端とは、前記一方のコイルおよび前記他方のコイルに対して同じ一方側に引き出されているとともに、前記一方のコイルの他端と前記他方のコイルの他端とは、前記一方のコイルおよび前記他方のコイルに対して同じ他方側に引き出されており、
前記一方のコイルおよび前記他方のコイルは、前記一端から前記他端に向かって電流が流れた場合に、互いの磁束が打ち消しあうように巻回されている、コイル部品。
【請求項2】
前記第1コイルと前記第2コイルとの磁気結合は、前記第2コイルと前記その他のコイルとの磁気結合よりも強い、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記対をなすコイル同士の磁気結合は、対をなさない前記コイル同士の磁気結合のいずれよりも強い、請求項2に記載のコイル部品。
【請求項4】
絶縁層が第1方向に複数積層された素体をさらに備え、
前記2N個のコイルはそれぞれ、前記素体の内部に配置されるとともに、前記絶縁層上で巻回されたスパイラル配線によって構成されており、
前記2N個のコイルのそれぞれに対し、前記スパイラル配線の最内周よりも内側を該コイルの内径部分とすると、
前記第1方向からみて、前記第1コイルの内径部分の少なくとも一部と前記第2コイルの内径部分の少なくとも一部とは、互いに重なる、請求項1から
3の何れか一つに記載のコイル部品。
【請求項5】
前記第1方向からみて、前記第1のコイルの内径部分と前記その他のコイルの内径部分とは、互いに重ならない、請求項
4に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記第1のコイルと前記第2のコイルとは、異なる方向に巻回されている、請求項
4または
5に記載のコイル部品。
【請求項7】
同一の前記絶縁層上に複数の前記コイルが積層され、
該複数の前記コイルは、同じ方向に巻回されている、請求項
4から
6の何れか一つに記載のコイル部品。
【請求項8】
前記2N個のコイルは、すべて同じ方向に巻回されている、請求項
4から
7の何れか一つに記載のコイル部品。
【請求項9】
前記第1コイルおよび前記第2コイルはそれぞれ、複数の前記絶縁層上に巻回された複数の前記スパイラル配線から構成され、
前記第1コイルと前記第2コイルとの間の最端距離は、前記第1コイル、前記第2コイルのそれぞれにおける前記スパイラル配線同士の間の最短距離よりも長い、請求項
4から
8の何れか一つに記載のコイル部品。
【請求項10】
同一の前記絶縁層上に複数の前記コイルの前記スパイラル配線が巻回され、
該スパイラル配線同士の最短距離は、該スパイラル配線内の配線間隔よりも長い、請求項
4から
9の何れか一つに記載のコイル部品。
【請求項11】
前記第1コイルの一端と前記第2コイルの一端とは、前記第1コイルおよび前記第2コイルに対して同じ一方側に引き出されているとともに、前記第1コイルの他端と前記第2コイルの他端とは、前記第1コイルおよび前記第2コイルに対して同じ他方側に引き出されており、
前記第1コイルおよび前記第2コイルは、前記一端から前記他端に向かって電流が流れた場合に、互いの磁束が打ち消しあうように巻回されている、請求項1から
10の何れか一つに記載のコイル部品。
【請求項12】
前記第1コイルおよび前記第2コイルのそれぞれのターン数、コイル配線長およびコイル断面積は、同じである、請求項
11に記載のコイル部品。
【請求項13】
前記第1コイルの前記一端に接続される第1外部端子と、前記第2コイルの前記一端に接続される第2外部端子とは、隣り合う、請求項
11または
12に記載のコイル部品。
【請求項14】
2N個(Nは2以上の整数)のコイルを有し、
前記2N個のコイルは、N組の対をなすように構成され、
前記N組の対の一つをなす第1コイルおよび第2コイル以外のコイルをその他のコイルとするとき、前記第1コイルと前記第2コイルとの磁気結合は、前記第1コイルと前記その他のコイルとの磁気結合よりも強く、
絶縁層が第1方向に複数積層された素体をさらに備え、
前記2N個のコイルは、前記素体の内部に配置され、
前記2N個のコイルは、それぞれ、1ターン未満巻回された曲線状のスパイラル配線によって構成され、
前記2N個のコイルは、同一の絶縁層上に設けられ、
前記2N個のコイルのそれぞれに対し、前記スパイラル配線の最内周よりも内側を該コイルの内径部分とすると、前記第1方向からみて、いずれの前記コイルについても、その内径部分同士は重ならない、コイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コイル部品としては、US6,362,986B1(特許文献1)に記載されたものがある。このコイル部品は、複数(N個)のコイルを有し、これらのコイルは、共通のコアを通じて負に磁気結合(以下、単に「負結合」と記載する場合がある。)されており、励磁インダクタンスは漏れインダクタンスの約3倍より大きい。これは漏れインダクタンスが小さい、すなわちコイル同士が強く負結合されていることを示している。また、該コイル部品は、Nが3より大きい場合にも、共通のコアにコイルを巻回することで、すべてのコイルを強く負結合させている。特に該コイル部品では、各コイルに最も強く負結合するコイルが少なくとも2つ以上ある構成を開示している。該コイル部品は、マルチフェーズスィッチングレギュレータ(以下、「多相SWレギュレータ」と記載する。)の出力電圧平滑回路に使用される。多相SWレギュレータでは、平滑コンデンサへ入力されるリップル電圧を小さくするため、各コイルに入力されるパルス信号の周期(ターンオン遷移同士の間隔)を360°として位相で表わすと、これらのパルス信号は、360°/Nの位相差を持って各コイルに入力される。なお、負荷変動がない定常状態では、パルス信号のデューティ比は一定であり、また該デューティ比はパルス信号間で同一の値となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来のコイル部品において、例えば、N=2とすると、2つのコイルには位相差180°のパルス信号が入力される。ここで、パルス信号のデューティ比を50%とすると、一方のコイルにおいて、入力されるパルス信号がオン状態である期間(オン期間)は、他方のコイルにおいて、入力されるパルス信号がオフ状態である期間(オフ期間)となる。このとき、一方のコイルでは電流が増加し、他方のコイルでは電流が減少するが、これらのコイルはコアを通じて負結合されているため、該電流変化によるコアでの磁束の変化は同方向となり互いに強め合う。したがって、コアでの磁束の変化率は、2つのコイルが磁気結合されていない(以下、単に「無結合」と記載する場合がある。)場合のコアでの磁束の変化率よりも大きくなり、各コイルの実効インダクタンスは無結合の場合よりも大きくなる。これにより、一方のコイルにおける電流の増加率が低下するとともに、他方のコイルにおける電流の減少率が低下し、各コイルにおけるリップル電流は無結合の場合よりも小さくなる。特に、2つのコイルの結合係数が-1のとき、リップル電流は0となり、各コイルには直流電流が流れる。なお、本願において「リップル電流」とは、各コイルに流れる電流(コイル電流)の最大値と最小値との差(Ipp)を指している。また、低減されたリップルに対して、平滑コンデンサの容量に余裕がある場合は、各コイルのインダクタンスを小さくすることで、過渡応答速度の向上を図ることができる。
【0005】
しかし、本願の発明者は、前記従来のコイル部品では、以下のような問題があることを見出した。例えば、コイルの数(N)やパルス信号のデューティ比によっては、入力されるパルス信号がオン状態であるコイルが同時に2つ以上存在する期間(同時オン期間)が存在する場合がある。同時オン期間において、該2つ以上のコイルでは電流が増加するが、前記従来のコイル部品では該2つ以上のコイルが負結合されており、該2つのコイルの電流変化によるコアでの磁束の変化は逆方向となり互いに打ち消し合う。さらに、前記従来のコイル部品では、該2つ以上のコイルの負結合が強く、打ち消し合う磁束の量が大きいため、同時オン期間において、コアでの磁束の変化率が、無結合の場合よりも小さくなる可能性がある。このとき、無結合の場合と比較して、各コイルの実効インダクタンスが小さくなることで、各コイルにおける電流の変化率が大きくなり、リップル電流が大きくなる可能性がある。これは、同時オフ期間、すなわち入力されるパルス信号がオフ状態であるコイルが同時に2つ以上存在する期間においても同様である。したがって、前記従来のコイル部品のように、すべてのコイルが強く負結合されている(各コイルに最も強く負結合するコイルが少なくとも2つ以上ある)と、リップル電流が大きくなる可能性がある。
【0006】
そこで、本発明の課題は、多相SWレギュレータに使用される際、コイルのリップル電流を小さくできるコイル部品および該コイル部品を備えるスィッチングレギュレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様であるコイル部品は、
2N個(Nは2以上の整数)のコイルを有し、
前記2N個のコイルは、N組の対をなすように構成され、
前記N組の対の一つをなす第1コイルおよび第2コイル以外のコイルをその他のコイルとするとき、前記第1コイルと前記第2コイルとの磁気結合は、前記第1コイルと前記その他のコイルとの磁気結合よりも強い。
【0008】
ここで、コイル部品内で直列接続されたコイルは、1つのコイルとみなす。「第1コイルと第2コイルとの磁気結合が、第1コイルとその他のコイルとの磁気結合よりも強い」とは、「第1コイルと第2コイルとの結合係数の絶対値が、第1コイルとその他のコイルとの結合係数の絶対値よりも大きい」ことをいう。
【0009】
上記態様のコイル部品によれば、対をなす第1コイルおよび第2コイルの磁気結合は、第1コイルとその他のコイルとの磁気結合よりも強い。これにより、上記態様のコイル部品は、多相SWレギュレータに使用される際、各コイルに入力されるパルス信号を適切に選択することで、第1コイルのリップル電流を小さくすることができる。
【0010】
また、コイル部品の一実施形態では、前記第1コイルと前記第2コイルとの磁気結合は、前記第2コイルと前記その他のコイルとの磁気結合よりも強い。
【0011】
前記実施形態によれば、多相SWレギュレータに使用される際、各コイルに入力されるパルス信号を適切に選択することで、第2コイルのリップル電流を小さくすることができる。
【0012】
また、コイル部品の一実施形態では、前記対をなすコイル同士の磁気結合は、対をなさない前記コイル同士の磁気結合のいずれよりも強い。
【0013】
前記実施形態によれば、多相SWレギュレータに使用される際、各コイルに入力されるパルス信号を適切に選択することで、各コイルのリップル電流を小さくすることができる。
【0014】
また、コイル部品の一実施形態では、前記第1コイルと前記第2コイルには、互いの磁束が打ち消しあうように負結合する方向に電流が流される。
【0015】
前記実施形態によれば、第1コイルと第2コイルには負結合する方向に電流が流されるため、第1コイルおよび第2コイルに180°の位相差の信号が入力されるとき、第1、第2コイルのリップル電流を小さくできる。なお、「互いの磁束が打ち消し合う」とは、例えば、コイルの内径部分などの主に磁束の密度が高い箇所において磁束が打ち消し合うことを意味し、コイルの周辺部分など比較的磁束の密度が低い箇所では、磁束が強め合っていてもよい。
【0016】
また、コイル部品の一実施形態では、
絶縁層が第1方向に複数積層された素体をさらに備え、
前記2N個のコイルはそれぞれ、前記素体の内部に配置されるとともに、前記絶縁層上で巻回されたスパイラル配線 によって構成されており、
前記2N個のコイルのそれぞれに対し、前記スパイラル配線の最内周よりも内側を該コイルの内径部分とすると、
前記第1方向からみて、前記第1コイルの内径部分の少なくとも一部と前記第2コイルの内径部分の少なくとも一部とは、互いに重なる。
【0017】
前記実施形態によれば、第1コイルの内径部分の少なくとも一部と第2コイルの内径部分の少なくとも一部とは、互いに重なる。これにより、第1コイルの磁束が、第1コイルの軸に沿って、第1コイルの内径部分に発生すると、該磁束が第2コイルの内径部分を通過する。また、第2コイルの磁束が、第2コイルの軸に沿って、第2コイルの内径部分に発生すると、該磁束が第1コイルの内径部分を通過する。したがって、対をなす第1コイルおよび第2コイルの磁気結合を強くすることができる。なお、本願において、スパイラル配線とは、絶縁層上など平面上で巻回された曲線状の配線のことを指し、後述する実施形態に示されるように、スパイラル配線には、ターン数(巻回数)が1周未満の曲線状の配線も含まれる。
【0018】
また、コイル部品の一実施形態では、前記第1のコイルの内径部分と前記その他のコイルの内径部分とは、互いに重ならない。
【0019】
前記実施形態によれば、対をなさない第1のコイルとその他のコイルの磁気結合を弱くすることができる。
【0020】
また、コイル部品の一実施形態では、前記第1のコイルと前記第2のコイルとは、異なる方向に巻回されている。
【0021】
前記実施形態によれば、第1のコイルと第2のコイルとを容易に負結合させることができる。なお、本願において、2つのコイルが異なる方向に巻回されているとは、例えば、第1方向から見て、2つのコイルそれぞれにおいて両端が一方と他方とに引き出されている場合に、一方側から他方側に向かう巻回方向が異なることを意味する。具体的には、例えば、第1方向から見て、片方のコイルが一方側から他方側に向かって時計周りに巻回されている場合、もう一方のコイルは一方側から他方側に向かって反時計回りに巻回されている状態を意味する。
【0022】
また、コイル部品の一実施形態では、
同一の前記絶縁層上に複数の前記コイルが積層され、
該複数の前記コイルは、同じ方向に巻回されている。
【0023】
前記実施形態によれば、同一の絶縁層上に積層された複数のコイルは、同じ方向に巻回されているので、対をなさないコイルの組のうち、比較的磁気結合が大きい同一絶縁層上で隣接するコイルの組を容易に負結合させることができ、各コイルのリップル電流をより抑えることができる。
【0024】
また、コイル部品の一実施形態では、前記2N個のコイルは、すべて同じ方向に巻回されている。
【0025】
前記実施形態によれば、2N個のコイルは、すべて同じ方向に巻回されているので、電気特性の偏差を小さくできるとともに、製造を容易にできる。また、対をなすコイルを容易に正結合することができる。
【0026】
また、コイル部品の一実施形態では、前記2N個のコイルの前記スパイラル配線に対して前記第1方向両側にある前記絶縁層は、磁性体粉および樹脂のコンポジット材料からなる磁性樹脂層を含む。
【0027】
前記実施形態によれば、スパイラル配線に対して第1方向両側にある絶縁層は、磁性樹脂層を含むので、小型かつ薄型でありながら、適切なインダクタンスや結合係数を確保できるコイル部品を安価に提供することができる。
【0028】
また、コイル部品の一実施形態では、
前記磁性体粉の平均粒径は、0.5μm以上100μm以下であり、
前記磁性体粉は、前記樹脂に対して50vol%以上85vol%以下含有されている。
【0029】
前記実施形態によれば、磁性体粉の平均粒径は、0.5μm以上100μm以下であるので、磁性樹脂を小型のコアとできる。また、磁性体粉は、樹脂に対して50vol%以上85vol%以下含有されているので、十分な透磁率を得ることができて、対をなすコイルの磁気結合を強くすることができる。
【0030】
また、コイル部品の一実施形態では、
前記2N個のコイルのそれぞれに対し、該コイルの内径部分、および、該コイルの前記スパイラル配線の最外周よりも外側に設けられた、磁性体紛および樹脂のコンポジット材料からなる磁性樹脂体をさらに備え、
前記磁性樹脂層と前記磁性樹脂体とが閉磁路を構成している。
【0031】
前記実施形態によれば、磁性樹脂層と磁性樹脂体とが閉磁路を構成している。これにより、漏れ磁束を低減することができ、ノイズを抑えることができるとともに、対をなすコイル間の磁気結合を強くしつつ、対をなさないコイル間の磁気結合を弱くすることができる。
【0032】
また、コイル部品の一実施形態では、
前記第1コイルおよび前記第2コイルはそれぞれ、複数の前記絶縁層上に巻回された複数の前記スパイラル配線から構成され、
前記第1コイルと前記第2コイルとの間の最端距離は、前記第1コイル、前記第2コイルのそれぞれにおける前記スパイラル配線同士の間の最短距離よりも長い。
【0033】
前記実施形態によれば、第1コイルと第2コイルとの間の最短距離は、それぞれのスパイラル配線同士の間の最短距離よりも長いので、異電圧が印加される期間が比較的長くなる第1コイルと第2コイルの間の絶縁性を相対的に高めることができ、信頼性を向上できる。
【0034】
また、コイル部品の一実施形態では、
同一の前記絶縁層上に複数の前記コイルの前記スパイラル配線が巻回され、
該スパイラル配線同士の最短距離は、該スパイラル配線内の配線間隔よりも長い。
【0035】
前記実施形態によれば、同一の絶縁層上に巻回された隣り合うスパイラル配線の間の最短距離は、スパイラル配線内の配線間隔よりも長いので、異電圧が印加される期間がある隣り合うコイルの同一の絶縁層上に巻回されたスパイラル配線間の絶縁性を相対的に高めることができ、信頼性を向上できる。
【0036】
また、コイル部品の一実施形態では、前記スパイラル配線と接する前記絶縁層は、絶縁体紛および樹脂のコンポジット材料からなる。
【0037】
前記実施形態によれば、スパイラル配線内およびスパイラル配線間の絶縁性をより向上することができる。
【0038】
また、コイル部品の一実施形態では、
前記第1コイルの一端と前記第2コイルの一端とは、前記第1コイルおよび前記第2コイルに対して同じ一方側に引き出されているとともに、前記第1コイルの他端と前記第2コイルの他端とは、前記第1コイルおよび前記第2コイルに対して同じ他方側に引き出されており、
前記第1コイルおよび前記第2コイルは、前記一端から前記他端に向かって電流が流れた場合に、互いの磁束が打ち消しあうように巻回されている。
【0039】
前記実施形態によれば、対をなす第1コイルと第2コイルが負結合されるようにパルス信号を入力する際、第1、第2コイルの入力端、出力端をそれぞれ同じ側に揃えるができる。よって、コイル部品を実装する基板における配線引き回しをより容易にすることができる。
【0040】
また、コイル部品の一実施形態では、前記第1コイルおよび前記第2コイルのそれぞれのターン数、コイル配線長およびコイル断面積は、同じである。
【0041】
前記実施形態によれば、第1コイルおよび第2コイルのそれぞれのターン数、コイル配線長およびコイル断面積は、同じであるので、各コイルの電気特性の偏差を小さくできる。
【0042】
また、コイル部品の一実施形態では、前記第1コイルの前記一端に接続される第1外部端子と、前記第2コイルの前記一端に接続される第2外部端子とは、隣り合う。
【0043】
前記実施形態によれば、第1外部端子と第2外部端子とは、隣り合うので、コイル部品を小型化できる。
【0044】
また、スィッチングレギュレータの一実施形態では、
前記コイル部品と、
前記コイル部品の各コイルの一端側のそれぞれに接続された2N個のスイッチ部と、
前記コイル部品の各コイルの一端または他端側に接続された平滑回路と
を備え、
前記スイッチ部は、前記コイル部品の対をなすコイルに対して、180°の位相差を有する信号を入力する。
【0045】
前記実施形態によれば、前記コイル部品を有するので、コイルのリップル電流の低減により、性能の向上や、小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0046】
本発明のコイル部品によれば、対をなす第1コイルおよび第2コイルの磁気結合は、第1コイルとその他のコイルとの磁気結合よりも強いので、多相SWレギュレータに使用される際、各コイルに入力されるパルス信号を適切に選択することで、第1コイルのリップル電流を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】第1実施形態に係るコイル部品1を示す簡略構成図である。
【
図2】第2実施形態に係るコイル部品1Aを示す斜視図である。
【
図5A】コイル部品1Aの製法を説明する説明図である。
【
図5B】コイル部品1Aの製法の第2実施形態を説明する説明図である。
【
図5C】コイル部品1Aの製法の第2実施形態を説明する説明図である。
【
図5D】コイル部品1Aの製法の第2実施形態を説明する説明図である。
【
図5E】コイル部品1Aの製法の第2実施形態を説明する説明図である。
【
図5F】コイル部品1Aの製法の第2実施形態を説明する説明図である。
【
図5G】コイル部品1Aの製法の第2実施形態を説明する説明図である。
【
図5H】コイル部品1Aの製法の第2実施形態を説明する説明図である。
【
図5I】コイル部品1Aの製法の第2実施形態を説明する説明図である。
【
図5J】コイル部品1Aの製法の第2実施形態を説明する説明図である。
【
図5K】コイル部品1Aの製法の第2実施形態を説明する説明図である。
【
図5L】コイル部品1Aの製法の第2実施形態を説明する説明図である。
【
図5M】コイル部品1Aの製法の第2実施形態を説明する説明図である。
【
図5N】コイル部品1Aの製法の第2実施形態を説明する説明図である。
【
図5O】コイル部品1Aの製法の第2実施形態を説明する説明図である。
【
図5P】コイル部品1Aの製法の第2実施形態を説明する説明図である。
【
図5Q】コイル部品1Aの製法の第2実施形態を説明する説明図である。
【
図5R】コイル部品1Aの製法の第2実施形態を説明する説明図である。
【
図7】本実施例における各コイルの入力電圧および電流の関係を示すグラフである。
【
図8】比較例1における各コイルの入力電圧および電流の関係を示すグラフである。
【
図9】比較例2における各コイルの入力電圧および電流の関係を示すグラフである。
【
図10A】第3実施形態に係るコイル部品1Bを示す分解斜視図である。
【
図10B】第3実施形態に係るコイル部品1Bを示す断面図である。
【
図11A】第4実施形態に係るコイル部品1Cを示す分解斜視図である。
【
図11B】第4実施形態に係るコイル部品1Cを示す断面図である。
【
図12A】第5実施形態に係るコイル部品1Dを示す透視斜視図である。
【
図12C】コイル部品1Dを示す透視上面図である。
【
図13A】第6実施形態に係るコイル部品1Eを示す透視斜視図である。
【
図13C】コイル部品1Eを示す透視上面図である。
【
図14A】第7実施形態に係るコイル部品1Fを示す透視斜視図である。
【
図14C】コイル部品1Fを示す透視上面図である。
【
図14D】第7実施形態の変形例に係るコイル部品1Gを示す透視斜視図である。
【
図14E】第7実施形態の変形例に係るコイル部品1Hを示す透視斜視図である。
【
図15】第8実施形態に係るコイル部品1Jを示す模式図である。
【
図16】一実施形態に係るスィッチングレギュレータ5を示す簡略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明の一態様を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0049】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るコイル部品1を示す簡略構成図である。
図1に示すように、コイル部品1は、2N個(Nは2以上の整数)のコイルL1、L2、・・・L(2N)を有する。2N個のコイルL1~L(2N)は、N組の対をなすように構成される。具体的に述べると、第1コイルL1と第2コイルL2は、対をなし、第3コイルL3と第4コイルL4は、対をなし、同様に、第(2N-1)コイルL(2N-1)と第(2N)コイルL(2N)は、対をなす。すなわち、一般化するとMを1以上N以下の整数として、第(2M-1)コイルL(2M-1)と第(2M)コイルL(2M)は、対をなしている。
【0050】
ここで、コイル部品1が有する2N個のコイルL1、L2、・・・L(2N)はお互いに磁気結合している。ただし、対をなす第1コイルL1と第2コイルL2との磁気結合は、対をなさない第1コイルL1とその他のコイルL3~L(2N)との磁気結合よりも強い。つまり、第1コイルL1と第2コイルL2との結合係数の絶対値は、第1コイルL1とその他のコイルL3~L(2N)との結合係数の絶対値よりも大きい。
【0051】
具体的に述べると、第1、第2コイルの磁気結合K12は、第1、第3コイルの磁気結合K13、第1、第(2N)コイルの磁気結合K1(2N)よりも強い。図中、実線の矢印は強い磁気結合を示し、点線の矢印は弱い磁気結合を示す。また、第1コイルL1と第2コイルL2には、互いの磁束が打ち消しあうように負結合する方向、具体的には入力側(例えば
図1の左側)から出力側(例えば
図1の右側)に電流が流される。
【0052】
なお、第1コイルL1を基準とした場合だけでなく、コイルL2~L(2N)を基準とした場合であっても同様に、該基準としたコイルと対をなすコイルとの磁気結合は、該基準としたコイルと対をなさないその他のコイルとの磁気結合よりも強い。例えば、第2コイルL2を基準とすると、第1コイルL1と第2コイルL2との磁気結合は、第2コイルL2とその他のコイルL3~L(2N)との磁気結合よりも強い。また、対をなすコイルにはいずれも、互いの磁束が打ち消しあうように負結合する方向に電流が流される。さらに、コイル部品1では、対をなすコイル同士の磁気結合は、対をなさないコイル同士の磁気結合のいずれよりも強い。具体的には、例えば対をなす第1コイルL1と第2コイルL2との磁気結合は、対をなさない第3コイルL3と第(2N-1)コイルL(2N-1)との磁気結合よりも強い。
【0053】
前記コイル部品1によれば、対をなす第1コイルL1と第2コイルL2との磁気結合は、対をなさない第1コイルL1とその他のコイルL3~L(2N)との磁気結合よりも強い。これにより、コイル部品1を、多相SWレギュレータに用いる際、各コイルL1~L(2N)に入力されるパルス信号を適切に選択することで、第1コイルL1のリップル電流を小さくすることができる。
【0054】
具体的には、まず、コイル部品1は、2N個のコイルL1~L(2N)を有しており、多相SWレギュレータに用いられる際、コイル部品1に入力されるパルス信号の総数は2Nとなるため、これらを信号P1~P(2N)とする。このとき、信号P1~P(2N)の周期は同一であり、該周期を360°として位相で表わすと、信号P1~P(2N)は、360°/2Nの位相差を有する信号の集合となる。また、負荷変動がない定常状態では各信号P1~P(2N)は、一定かつ同一のデューティ比を有する。ここで、2Nは偶数であるため、2N個の信号P1~P(2N)には、180°の位相差を有する2つのパルス信号が存在する。
【0055】
そこで、第1コイルL1に入力される信号P1を、上記2つのパルス信号の一方とし、該第1コイルL1と対をなす第2コイルL2に入力される信号P2を、上記2つのパルス信号の他方とした場合を考える。信号P2は、信号P1との位相差が180°であり、信号P2~P(2N)のうち、信号P1に対して最も位相差が大きい信号である。つまり、信号P1のターンオン遷移(またはターンオフ遷移)に対する、信号P2~P(2N)のターンオン遷移(またはターンオフ遷移)の間隔を考えると、信号P2は、該間隔が最も大きい信号となる。これは、信号P2は、信号P2~P(2N)のうち、信号P1に対して、コイルの負結合によるリップル電流低減を図ることができる期間(一方がオン状態で他方がオフ状態である期間)が最も長く、コイルの負結合によるリップル電流増加が懸念される期間(同時オン期間および同時オフ期間)が最も短い信号であることを意味する。つまり、信号P2は、信号P1に対して、コイルの負結合によるリップル電流低減効果が最も発揮される信号である。コイル部品1では、信号P1が入力される第1コイルL1に対して比較的強く負結合する第2コイルL2に、このような信号P2を入力することで、第1コイルL1のリップル電流を効果的に小さくすることができる。
【0056】
また、上記の場合、第1コイルL1と対をなさないその他のコイルL3~L(2N)に入力される信号P3~P(2N)は、信号P1との位相差が、信号P1と信号P2との位相差と比較して小さい信号となる。つまり、信号P3~P(2N)は、信号P1に対して、ターンオン遷移同士の間隔またはターンオフ遷移同士の間隔が比較的小さい。これは、信号P3~P(2N)は、信号P1に対して、コイルの負結合によるリップル電流低減を図ることができる期間が比較的短く、コイルの負結合によるリップル電流増加が懸念される期間が比較的長い信号であることを意味する。つまり、信号P3~P(2N)は、第1パルス信号に対して、コイルの負結合によるリップル電流低減効果が比較的発揮しにくく、リップル電流増加が懸念される信号である。コイル部品1では、信号P1が入力される第1コイルL1に対して比較的弱く磁気結合されたその他のコイルL3~L(2N)に、このような信号P3~P(2N)を入力することで、第1コイルL1のリップル電流の増加を抑制することができる。
【0057】
以上により、コイル部品1は、多相SWレギュレータに使用される際、各コイルに入力されるパルス信号を適切に選択することで、第1コイルL1のリップル電流を小さくすることができる。
【0058】
特に、第1コイルL1と第2コイルL2には、互いの磁束が打ち消し合うように負結合する方向に電流が流されるので、第1コイルL1および第2コイルL2に180°の位相差の信号P1,P2が入力されるとき、第1、第2コイルL1、L2のインダクタリップル電流を小さくできる。
【0059】
また、上記の結合の相対的な強弱関係は、第1コイルL1を基準とした場合だけでなく、コイルL2~L(2N)を基準とした場合であっても同様である。したがって、第1コイルL1と同様に、各コイルL2~L(2N)を基準とした場合に、該基準としたコイルおよびその対をなすコイルに位相差が180°であるパルス信号を入力することで、各コイルL2~L(2N)のリップル電流を小さくすることができる。なお、このようにパルス信号を適切に選択するためには、例えば、まず信号P1として任意の信号を選択し、信号P(2M-1)としては信号P1に対して(360°/(2N))×(M-1)の位相差を有する信号を、信号P(2M)としては信号P1に対して(360°/(2N))×(M-1)+180°の位相差を有する信号を選択すればよい(Mは1以上N以下の整数)。具体的には、例えば、N=2のとき、信号P1~P4として、まず信号P1として任意の信号を選択し、信号P2としては信号P1に対して180°の位相差を有する信号を、信号P3としては信号P1に対して90°の位相差を有する信号を、信号P4としては信号P1に対して270°の位相差を有する信号を選択すればよい。
【0060】
したがって、コイル部品1では、多相SWレギュレータに用いる際、各コイルL1~L(2N)に入力される信号P1~P(2N)を上記のように適切に選択することで、全てのコイルL1~L(2N)のリップル電流を小さくできる。ただし、上記より類推されるように、コイル部品1では、コイルL1~L(2N)のうち、少なくとも1つのコイルを基準として、該コイルと対をなすコイルとの磁気結合が、該コイルと対をなさないその他のコイルとの磁気結合よりも強ければよい。このとき、該コイルに入力される信号と180°の位相差を有する信号を、該コイルと対をなすコイルに入力することにより、該コイルのリップル電流を小さくすることができる。この際、該コイル以外のコイルを基準とした場合の磁気結合の強弱関係はどのようなものであってもよい。なお、上記のように、対をなすコイル同士のどの磁気結合も、対をなさないコイル同士のどの磁気結合よりも強い場合は、より各コイルL1~L(2N)のリップル電流を確実に小さくすることができ、好ましい。また、上記のように、コイル部品1において、あるコイルを基準として、該コイルと「対をなす」コイルとは、該コイル以外のコイルのうち、該コイルと最も強く磁気結合されているコイルを指す。
【0061】
(第2実施形態)
図2は、第2実施形態に係るコイル部品1Aを示す斜視図である。
図3は、コイル部品1Aの分解斜視図である。
図4は、
図2のX-X断面図である。
図2と
図3と
図4に示すように、コイル部品1Aは、素体10と、素体10内に設けられた4(2×2)個の第1~第4コイルL1~L4と、素体10外に設けられ、第1~第4コイルL1~L4に電気的に接続される第1~第4外部端子とを有する。また、第1~第4外部端子は、素体10の第1側面10a側に設けられた外部端子11a~14aと、素体10の第2側面10b側に設けられた外部端子11b~14bとで構成される。第1側面10aと第2側面10bとは、互いに対向しており、外部端子11a~14aと、外部端子11b~14bは、それぞれこの順に互いに対向するように配置される。第1~第4外部端子11a~14a,11b~14bは、例えば、素体10表面にめっき形成されたCu,Ni,Snなどの金属膜や、スクリーン印刷されたCu、Ag、Auなどの低電気抵抗な金属を含む樹脂膜などである。
【0062】
なお、コイル部品1Aは、
図2に示される外部端子11a~14aおよび外部端子11b~14bの両方が配置された面を実装面とする。また、以下では、該実装面に直交する方向を上下方向(
図4の紙面上下方向に対応する)とし、コイル部品1Aにおける実装面側を下方、その反対面側を上方とする。
【0063】
素体10は、第1~第4コイルL1~L4のそれぞれを覆う絶縁樹脂35と、絶縁樹脂35を覆う磁性樹脂40とを有する。絶縁樹脂35は、ベース絶縁樹脂層(絶縁層)30および第1から第4絶縁樹脂層(絶縁層)31~34からなる。磁性樹脂40は、絶縁樹脂35の第1孔部35a内に設けられた第1磁性樹脂体41a、絶縁樹脂35の第2孔部35b内に設けられた第2磁性樹脂体41b、絶縁樹脂35の外周面の一部に設けられた第3磁性樹脂体41c、絶縁樹脂35の上下端面に設けられた磁性樹脂層(絶縁層)42からなる。これにより、素体10は、絶縁層30~34,42が上下方向に複数積層された構成を有する。すなわち、本実施形態の上下方向は、第1方向に相当する。なお、この明細書において、対象物を覆うとは、対象物の少なくとも一部を覆うことをいい、また、対象物の上方に配置されている場合のみだけでなく、対象物の側方や下方に配置されている場合も「覆う」という。
図3では、絶縁樹脂35を省略して描いている。
【0064】
第1~第4コイルL1~L4は、それぞれ素体10の内部に配置されるとともに、絶縁層30~33上で巻回された第1スパイラル配線21および第2スパイラル配線22によって構成される。ここで、第1~第4コイルL1~L4のそれぞれに対し、第1、第2スパイラル配線21,22の最内周よりも内側を内径部分とする。内径部分には、上下方向に沿った各コイルL1~L4の巻回中心軸(以下、単に「コイルの軸」と記載する場合がある。)が含まれる。第2コイルL2は、第1コイルL1の上方に積層される。第4コイルL4は、第1コイルL1の側方、すなわち同一の絶縁層(ベース絶縁樹脂層30)上に積層される。第3コイルL3は、第4コイルL4の上方に積層される。第3コイルL3は、第2コイルL2の側方、すなわち同一の絶縁層(第2絶縁樹脂層32)上に積層される。
【0065】
ここで、コイル部品1Aにおいては、上下方向に並ぶコイルが対をなすとする。このとき、4個のコイルL1~L4は、第1コイルL1と第2コイルL2との組および第3コイルL3と第4コイルL4との組の、2組の対をなすように構成されている。次に、対をなすコイル同士の磁気結合と対をなさないコイル同士の磁気結合の関係を以下に説明する。
【0066】
コイル部品1Aでは、上下方向からみて、第1コイルL1の内径部分と第2コイルL2の内径部分とは、互いに重なる。これにより、第1コイルL1の磁束が、第1コイルL1の軸に沿って、第1コイルL1の内径部分に発生すると、該磁束が第2コイルL2の内径部分を通過する。また、第2コイルL2の磁束が、第2コイルL2の軸に沿って、第2コイルL2の内径部分に発生すると、該磁束が第1コイルL1の内径部分を通過する。したがって、対をなす第1コイルL1と第2コイルL2とは、強く磁気結合する。なお、強い磁気結合を得るためには、第1コイルL1の内径部分の少なくとも一部と第2コイルL2の内径部分の少なくとも一部とが、互いに重なればよいが、第1コイルL1の軸と第2コイルL2の軸とが同軸である(軸が一致する)場合はさらに強い磁気結合を得ることができる。
【0067】
同様に、コイル部品1Aでは、上下方向からみて、第3コイルL3の内径部分と第4コイルL4の内径部分とは、互いに重なる。これにより、対をなす第3コイルL3と第4コイルL4とは、強く磁気結合する。
【0068】
一方、第1コイルL1および第2コイルL2の軸と第3コイルL3および第4コイルL4の軸とは、間隔を空けて平行に配置される。すなわち、上下方向からみて、第1コイルL1の内径部分と、第4コイルL4の内径部分とは、互いに重ならず、第2コイルL2の内径部分と、第3コイルL3の内径部分とは、互いに重ならない。これにより、内径部分を共有する第1コイルL1と第2コイルL2との磁気結合および第3コイルL3と第4コイルL4との磁気結合と比較して、第1コイルL1と第4コイルL4との磁気結合および第2コイルL2と第3コイルL3との磁気結合は、相対的に弱い。さらに、第1コイルL1と第3コイルL3、および、第2コイルL2と第4コイルL4も、磁気結合しているが、これらも内径部分が互いに重なっておらず、さらにコイル間の距離が最も大きい。したがって、第1コイルL1と第4コイルL4との磁気結合や第2コイルL2と第3コイルL3との磁気結合と比較して、第1コイルL1と第3コイルL3との磁気結合および第2コイルL2と第4コイルL4との磁気結合は、相対的に弱く、例えばコイル特性においてはほとんど無視してもよい程度であってもよい。
【0069】
以上より、コイル部品1Aでは、2組の対の一つである第1コイルL1および第2コイルL2以外のコイルL3,L4をその他のコイルL3,L4とするとき、第1コイルL1と第2コイルL2との磁気結合は、第1コイルL1とその他のコイルL3,L4との磁気結合よりも強い。同様に、第2コイルL2と第1コイルL1との磁気結合は、第2コイルL2とその他のコイルL3、L4との磁気結合よりも強い。また、2組の対の一つである第3コイルL3および第4コイルL4以外のコイルL1,L2をその他のコイルL1,L2とするとき、第3コイルL3と第4コイルL4との磁気結合は、第3コイルL3とその他のコイルL1、L2との磁気結合よりも強い。同様に、第4コイルL4と第3コイルL3との磁気結合は、第4コイルL4とその他のコイルL1、L2との磁気結合よりも強い。
【0070】
すなわち、コイル部品1Aでは、第1~第4コイルL1~L4のいずれのコイルを基準としても、該コイルと対をなすコイルとの磁気結合は、該コイルと対をなさないコイルとの磁気結合よりも強い。
【0071】
さらに、コイル部品1Aの構造の対称性から、第1コイルL1と第2コイルL2との磁気結合は、第3コイルL3と第4コイルL4との磁気結合と同程度の強さである。また、第1コイルL1と第4コイルL4との磁気結合は、第2コイルL2と第3コイルL3との磁気結合と同程度の強さであり、第1コイルL1と第3コイルL3との磁気結合は、第2コイルL2と第4コイルL4との磁気結合と同程度の強さである。したがって、コイル部品1Aでは、対をなすコイル同士の磁気結合は、対をなさないコイル同士の磁気結合のいずれよりも強い。
【0072】
なお、コイル部品1Aでは、第1から第4コイルL1~L4のそれぞれのターン数、コイル配線長およびコイル断面積は、同じである。これにより、各コイルの電気特性(インピーダンスやL値など)の偏差を小さくできる。さらに、この場合、各コイルL1~L4の一端、他端が近くに並ぶように配置されるため、外部端子11a~14a,11b~14bに接続する各コイルL1~L4の引き回しを最小にでき、これにより、コイル部品1Aの小型化を図ることができる。なお、必ずしもすべてのコイルL1~L4についてこの関係を満たす必要はなく、少なくとも1対のコイルのターン数、コイル配線長およびコイル断面積が、同じであれば上記効果を発揮することができる。また、上記において「同じ」とは、ターン数、コイル配線長およびコイル断面積の各値に対する製造ばらつきや誤差(例えば、ターン数およびコイル配線長については数%、コイル断面積については10%程度)程度の差異は許容され、実質的に同じである場合を含む。
【0073】
第1コイルL1は、ベース絶縁樹脂層30上で巻回された第1スパイラル配線21および第1絶縁樹脂層31上で巻回された第2スパイラル配線22の2層と、第1絶縁樹脂層31を上下方向に貫通し該2層を接続するビア配線25から構成される。第1スパイラル配線21と第2スパイラル配線22は、下層から上層に順に、配置される。第1、第2スパイラル配線21,22は、それぞれ、平面螺旋(渦巻)状に巻回されて形成されている。第1コイルL1では、第1スパイラル配線21は、外周から内周に向かって反時計回りに巻回され、第2スパイラル配線22は、内周から外周に向かって反時計回りに巻回されている。第1、第2スパイラル配線21,22およびビア配線25は、例えば、Cu、Ag、Auなどの低電気抵抗な金属によって構成される。好ましくは、セミアディティブ工法によって形成されるCuめっきを用いることで、低電気抵抗でかつ狭ピッチなスパイラル配線を形成できる。
【0074】
第1コイルL1において、第2スパイラル配線22は、ビア配線25を介して、第1スパイラル配線21に接続される。具体的には、ビア配線25は、第1スパイラル配線21の内周端21aと第2スパイラル配線22の内周端22aとを接続する。第1スパイラル配線21の外周端21bは、素体10の第1側面10a側に引き出され、外部端子11aに接続される。第2スパイラル配線22の外周端22bは、素体10の第2側面10b側に引き出され、外部端子11bに接続される。以上より、第1コイルL1は、第1側面10a側に引き出された外周端21bを一端、第2側面10b側に引き出された外周端22bを他端として、一端から他端に向かって反時計回りに巻回されている。
【0075】
第2から第4コイルL2~L4も同様に、下層側の絶縁層(ベース絶縁樹脂層30または第2絶縁樹脂層32)上で巻回された第1スパイラル配線21および上層側の絶縁層(第1絶縁樹脂層31または第3絶縁樹脂層33)上で巻回された第2スパイラル配線22の2層と、上層側の絶縁層を上下方向に貫通し該2層を接続するビア配線25から構成される。ただし、第2コイルL2において、第1スパイラル配線21は、外周から内周に向かって時計回りに巻回され、第2スパイラル配線22は、内周から外周に向かって時計回りに巻回されている。また、第2コイルL2では、ビア配線25は、第1スパイラル配線21の内周端21aと第2スパイラル配線22の内周端22aとを接続する。さらに、第2コイルL2では、第1スパイラル配線21の外周端21b(一端)は、素体10の第1側面10a側に引き出され、外部端子12aに接続される。第2スパイラル配線22の外周端22b(他端)は、素体10の第2側面10b側に引き出され、外部端子12bに接続される。以上より、第2コイルL2は、一端から他端に向かって、時計回りに巻回されている。第3コイルL3は、第1コイルL1と同様の構成を有し、第1側面10a側に引き出された第1スパイラル配線21の外周端(一端)は、外部端子13aに接続され、第2側面10b側に引き出された第2スパイラル配線22の外周端(他端)は、外部端子13bに接続される。以上より、第3コイルL3は、一端から他端に向かって、反時計回りに巻回されている。第4コイルL4は、第2コイルL2と同様の構成を有し、第1側面10a側に引き出された第1スパイラル配線21の外周端(一端)は、外部端子14aに接続され、第2側面10b側に引き出された第2スパイラル配線22の外周端(他端)は、外部端子14bに接続される。以上より、第4コイルL4は、一端から他端に向かって、時計回りに巻回されている。
【0076】
このように、コイル部品1Aでは、対をなす第1コイルL1の一端(外周端21b)と第2コイルL2の一端(外周端21b)とは、第1コイルL1および第2コイルL2に対して同じ第1側面10a(一方)側に引き出されている。また、第1コイルL1の他端(外周端22b)と第2コイルL2の他端(外周端22b)とは、第1コイルL1および第2コイルL2に対して、同じ第2側面10b(他方)側に引き出されている。さらに、第1コイルL1は一端から他端に向かって反時計回りに、第2コイルL2は一端から他端に向かって時計回りにそれぞれ巻回されており、第1コイルL1と第2コイルL2とは、異なる方向に巻回されている。すなわち、第1コイルL1と第2コイルL2は、一端から他端に向かって電流が流れた場合に、互いの磁束が打ち消し合うように巻回されている。これは、第1コイルL1と第2コイルL2の各一端を共にパルス信号の入力側、各他端を共にパルス信号の出力側とした場合に、第1コイルL1と第2コイルL2とは負結合されていることを意味する。
【0077】
したがって、コイル部品1Aでは、多相SWレギュレータに使用される際、同じ側にある第1コイルL1および第2コイルL2の各一端に180°の位相差を有する信号を入力することで、第1コイルL1および第2コイルL2のリップル電流を小さくすることができる。言い換えると、第1コイルL1と第2コイルL2とでは、負結合されるようにパルス信号を入力する際、第1コイルL1および第2コイルL2の入力側(一端)、出力側(他端)をそれぞれ同じ側に揃えることができる。これにより、コイル部品1Aを実装する基板における配線引き回しを容易にすることができる。
また、コイル部品1Aでは、対をなす第3コイルL3および第4コイルL4も第1コイルL1と第2コイルL2と同様の構成である。したがって、コイル部品1Aでは、第3コイルL3と第4コイルL4とでは負結合されるようにパルス信号を入力する際、第3コイルL3および第4コイルL4の入力側、出力側をそれぞれ同じ側に揃えることができる。これにより、コイル部品1Aを実装する基板における配線引き回しを容易にすることができる。
【0078】
また、コイル部品1Aでは、第1~第4コイルL1~L4のすべてについて、一端と、他端とが同じ側に引き出されている。これにより、コイル部品1Aでは、対をなすコイルがすべて負結合されるようにパルス信号を入力する際、コイルL1~L4の入力側、出力側をそれぞれ同じ側に揃えることができる。これにより、コイル部品1Aを実装する基板における配線引き回しをより容易にすることができる。
なお、上記では、外周端21bを一端(パルス信号の入力側)、外周端22bを他端(パルス信号の出力側)として説明したが、コイル部品1Aの対称性から、外周端22bを一端、外周端21bを他端としてもよい。
【0079】
ベース絶縁樹脂層30および第1から第4絶縁樹脂層31~34は、下層から上層に順に、配置される。絶縁樹脂層30~34の材料は、例えば、エポキシ系樹脂やビスマレイミド、液晶ポリマ、ポリイミドなどからなる有機絶縁材料の単独材料もしくは、シリカフィラーなどの無機フィラー材料や、ゴム系材料からなる有機系フィラーなどとの組み合わせからなる絶縁材料である。好ましくは、全ての絶縁樹脂層30~34は、同一材料で構成される。この実施形態では、全ての絶縁樹脂層30~34は、シリカフィラー(絶縁体粉)およびエポキシ樹脂のコンポジット材料からなる。このように、スパイラル配線21,22と接する絶縁層(絶縁樹脂層30~34)が、絶縁体粉および樹脂のコンポジット材料からなる場合、スパイラル配線21,22内およびスパイラル配線21,22間の絶縁性をより向上することができる。
【0080】
第1絶縁樹脂層31は、第1、第4コイルL1,L4の第1スパイラル配線21を覆うようにベース絶縁樹脂層30上に積層される。第2絶縁樹脂層32は、第1、第4コイルL1,L4の第2スパイラル配線22を覆うように第1絶縁樹脂層31上に積層される。
【0081】
第3絶縁樹脂層33は、第2、第3コイルL2,L3の第1スパイラル配線21を覆うように第2絶縁樹脂層32上に積層される。第4絶縁樹脂層34は、第2、第3コイルL2,L3の第2スパイラル配線22を覆うように第3絶縁樹脂層33上に積層される。
【0082】
ここで、各コイルL1~L4のビア配線25は、上下方向から見たとき重ならないように配置されている。ビア配線25が配置される箇所は、ビア配線25の絶縁樹脂層への充填量のばらつきにより、素体10の上下方向に沿った厚みがばらつきやすい箇所でもあり、このような箇所を重ならないように配置することで、素体10の厚みのばらつきを低減することができる。また、第1コイルL1と第2コイルL2のビア配線25は、上下方向から見たときに第1、第2コイルL1,L2の巻回中心を通り、第1、第2側面10a,10bに直交する直線に対して線対称となるように配置されることが好ましい。これにより、対をなす第1、第2コイルL1,L2の形状を対称形とでき、これらの電気特性が均一となるように、コイル部品1Aを製造することができる。第3コイルL3と第4コイルL4のビア配線25の位置関係も同様とすることで、第3、第4コイルL3,L4についても上記効果を得ることができるである。
【0083】
第1から第4コイルL1~L4の第1スパイラル配線21の外周端21bは、第1側面10aの長辺方向(上下方向と垂直な方向)に沿って順に配置されている。つまり、第1側面10a側の外部端子11a~14aは、第1側面10aの長辺方向に沿って順に配置されている。
【0084】
第1から第4コイルL1~L4の第2スパイラル配線22の外周端22bは、第2側面10bの長辺方向(上下方向と垂直な方向)に沿って順に配置されている。つまり、第2側面10b側の外部端子11b~14bは、第2側面10bの長辺方向に沿って順に配置されている。
【0085】
このように、第1コイルL1に接続される第1外部端子11と第2コイルL2に接続される第2外部端子12とは、隣り合って配置され、第3コイルL3に接続される第3外部端子13と第4コイルL3に接続される第4外部端子14とは、隣り合って配置される。コイル部品1Aでは、対をなす第1コイルL1と第2コイルL2とは上下方向に配置されており、これらの外周端21b、22bは比較的近い位置にある。よって外周端21b、22bが接続される第1外部端子11、第2外部端子12も近い位置にあることで、第1コイルL1および第2コイルL2の外部端子11,12に接続する配線の引き回しを短くできる。対をなす第3コイルL3および第4コイルL4でも同様の構成であるので、それぞれの外部端子13,14に接続する配線の引き回しも短くできる。これにより、コイル部品1Aでは、外形を小型化することができる。また、コイル部品1Aでは、第1側面10aにおける外部端子11a~14aの並び順と、第2側面10bにおける外部端子11b~14bの並び順が一致する。これにより、コイル部品1Aを実装する基板において、入力側の配線の並び順と出力側の配線の並び順を一致させることができ、実装が容易となる。したがって、小型でかつ実装が容易なコイル部品1Aを提供できる。
【0086】
コイル部品1Aのように、第1コイルL1および第2コイルL2がそれぞれ、複数の絶縁層(絶縁樹脂層30,31または絶縁樹脂層32,33)上に巻回された複数のスパイラル配線21,22から構成される場合、好ましくは、第1コイルL1と第2コイルL2との間の最短距離は、第1コイルL1、第2コイルL2のそれぞれにおけるスパイラル配線21,22同士の間の最短距離よりも長い。これにより、コイルL1、L2のリップル電流を小さくできるパルス信号の組み合わせにおいて、異電圧が印加される期間が比較的長くなる第1コイルL1と第2コイルL2の間の絶縁性を相対的に高めることができ、コイル部品1Aの信頼性を向上できる。第3コイルL3および第4コイルL4に関しても同様である。
【0087】
また、コイル部品1Aのように、同一の絶縁層(例えばベース絶縁樹脂層30)上に複数のコイル(例えば第1コイルL1、第4コイルL4)のスパイラル配線(例えば第1スパイラル配線21)が巻回される場合、好ましくは、該スパイラル配線同士の配線間隔(例えば、第1コイルL1と第4コイルL4のスパイラル配線21同士の間隔)は、該スパイラル配線内の配線間隔よりも長い。これにより、異電圧が印加される期間がある隣り合うコイルの同一の絶縁層上に巻回されたスパイラル配線間の絶縁性を相対的に高めることができ、信頼性を向上できる。
【0088】
絶縁樹脂35は、第1コイルL1および第2コイルL2の軸を中心とした第1孔部35aと、第3コイルL3および第4コイルL4の軸を中心とした第2孔部35bとを有する。
【0089】
磁性樹脂40は、磁性体粉および樹脂のコンポジット材料からなる。磁性体粉は、例えば、FeSi、FeCo、FeAl系の合金またはアモルファスからなる金属磁性材料であり、樹脂は、例えば、エポキシ等の樹脂材料である。すなわち、コイル部品1Aでは、第1から第4コイルL1~L4のスパイラル配線21,22に対して上下方向両側にある絶縁層は、磁性体粉および樹脂のコンポジット材料からなる磁性樹脂層42を含む。これにより、第1コイルL1~L4により発生する磁束の密度が磁性樹脂層42により向上し、小型かつ薄型でありながら、適切なインダクタンスや結合係数を確保できるコイル部品1Aを安価に提供することができる。
【0090】
また、コイル部品1Aでは、第1から第4コイルL1~L4のそれぞれに対し、コイルL1~L4の内径部分(第1、第2孔部35a,35b)に設けられた磁性樹脂体41a,41b、および、コイルL1~L4のスパイラル配線21,22の最外周よりも外側に設けられた磁性樹脂体41cをさらに備える。磁性樹脂体41a,41b,41cは前述のように磁性体粉および樹脂のコンポジット材料からなる。ここで、コイル部品1Aでは、第1、第2コイルL1,L2に対しては、磁性樹脂層42と磁性樹脂体41a,41cとが接続されることにより、第3、第4コイルL3,L4に対しては、磁性樹脂層42と磁性樹脂体41b,41cとが接続されることにより、それぞれ閉磁路を構成している。これにより、コイルL1~L4からの漏れ磁束を低減することができ、ノイズを抑えることができるとともに、対をなすコイルL1,L2間の磁気結合およびコイルL3,L4間の磁気結合を強くしつつ、対をなさないそれ以外のコイル間の磁気結合を弱くすることができる。
【0091】
磁性体粉の平均粒径は、好ましくは、0.5μm以上100μm以下であり、これにより、磁性樹脂を小型のコアとできる。また、磁性体粉は、好ましくは、樹脂に対して50vol%以上85vol%以下含有されており、これにより、十分な透磁率を得ることができて、対をなすコイルの磁気結合を強くすることができる。
【0092】
コイル部品1Aの特性(インダクタンス値および重畳特性)を向上させるため、磁性体粉は、70vol%以上含有されていることが望ましく、また、磁性樹脂40の充填性を向上させるため、粒度分布の異なる2または3種類の磁性体粉を混在させるとさらによい。また、磁性体粉が、絶縁樹脂35の第1、第2孔部35a,35bに確実に充填されるために、磁性体粉の平均粒径は、第1、第2孔部35a,35bより小さい方が望ましく、40μm以下がよい。また、コイル部品1Aの用途において、使用周波数が、例えば40MHz以上など高い場合は、磁性体粉は、平均粒形が1μm以下の粒度分布をもつ単一磁性フィラーであってもよい。
【0093】
コイル部品1Aでは、
図3に示すように、第1コイルL1と第4コイルL4の間の最小距離となる部分には第3磁性樹脂体41cが充填されていないことが好ましい。これにより、第1コイルL1と第4コイルL4の結合を相対的に弱くできる。また、磁性樹脂40は金属を含有している樹脂から成り、絶縁樹脂35と比較すると耐圧性に劣るため、第1コイルL1と第4コイルL4の最小距離に磁性樹脂40を充填しようとすると信頼性の観点から十分に第1コイルL1と第4コイルL4を離す必要があり、コイル部品1Aの外形サイズが増大してしまう。したがって、第1コイルL1と第4コイルL4の間の最小距離となる部分に第3磁性樹脂体41cが充填されないことで、同一外形においてコイル部品1Aの信頼性を向上させることができる。第2コイルL2と第3コイルL3の間においても同様である。
【0094】
コイル部品1Aの実施例として、スパイラル配線21,22の厚みは45μmであり、スパイラル配線21,22の幅は60μmであり、スパイラル配線21,22内の配線間隔は10μmであり、スパイラル配線21とスパイラル配線22との間の絶縁樹脂の厚みは10μmである。コイル部品1Aの外形サイズは幅2.0mm×奥行1.2mm×高さ0.85mmであり、コイル部品1Aの各コイルL1~L4のインダクタンス値は74nH、対をなすコイル間の結合係数は0.8である。
【0095】
次に、コイル部品1Aの製造方法を
図5A~
図5Rを用いて説明する。
【0096】
図5Aに示すように、基台50を準備する。基台50は、絶縁基板51と、絶縁基板51の両面に設けられたベース金属層52とを有する。この実施形態では、絶縁基板51は、ガラスエポキシ基板であり、ベース金属層52は、Cu箔であり、その主面は円滑面となっている。
【0097】
そして、
図5Bに示すように、基台50の一面上にダミー金属層60を接着する。この実施形態では、ダミー金属層60は、Cu箔である。ダミー金属層60は、基台50のベース金属層52と接着されるので、ダミー金属層60は、ベース金属層52の円滑面に接着される。このため、ダミー金属層60とベース金属層52の接着力を弱くすることができて、後工程において、基台50をダミー金属層60から容易に剥がすことができる。好ましくは、基台50とダミー金属層60を接着する接着剤は、低粘着接着剤とする。また、基台50とダミー金属層60の接着力を弱くするために、基台50とダミー金属層60の接着面を光沢面とすることが望ましい。
【0098】
その後、基台50に仮止めされたダミー金属層60上にベース絶縁樹脂層30を積層する。このとき、ベース絶縁樹脂層30を真空ラミネータにより積層してから熱硬化する。
【0099】
そして、
図5Cに示すように、ベース絶縁樹脂層30の一部に貫通孔30a,30d,30e,30fを形成して、ダミー金属層60を露出させる。貫通孔30a,30d,30e,30fは、レーザ加工により形成され、貫通孔30aが磁性樹脂体41aを,貫通孔30dが磁性樹脂体41bを,貫通孔30e,30fが磁性樹脂体41cを、それぞれ充填する場所に形成される。
【0100】
そして、
図5Dに示すように、貫通孔30a,30dを取り囲むベース絶縁樹脂層30に、第1スパイラル配線層3aと、第1スパイラル配線層3bとを形成する。このとき、第1スパイラル配線層3a,3bを、セミアディティブ工法により、同時に形成する。第1スパイラル配線層3aが、第1コイルL1の第1スパイラル配線21を構成し、第1スパイラル配線層3bが、第4コイルL4の第1スパイラル配線21を構成する。このとき、貫通孔30a,30d,30e,30f内およびその周辺のベース絶縁樹脂層30上にも配線層を形成しておく。
【0101】
そして、
図5Eに示すように、第1スパイラル配線層3a,3bを第1絶縁樹脂層31で覆う。このとき、第1絶縁樹脂層31を真空ラミネータでベース絶縁樹脂層30上に積層してから熱硬化する。
【0102】
そして、
図5Fに示すように、第1絶縁樹脂層31に、レーザ加工により、貫通孔31a,31d,31e,31fと、ビアホール31b,31cを形成する。貫通孔31a,31d,31e,31fはそれぞれ、貫通孔30a,30d,30e,30f上方の第1絶縁樹脂層31に形成される。
【0103】
ビアホール31b,31cは、第1スパイラル配線層3a,3bと次に形成される2層目の配線層とが電気的に直列に接続される位置、具体的には第1スパイラル配線21の内周端21aとなる部分上の第1絶縁樹脂層31に形成される。ここで、貫通孔31a,31d,31e,31fおよびビアホール31b,31cは、同時加工することで、工程を簡略化させることができる。
【0104】
そして、
図5Gに示すように、貫通孔31a,31dを取り囲む第1絶縁樹脂層31上に、第1スパイラル配線層3a,3bと同じセミアディティブ工法により第2スパイラル配線層5a,5bを形成する。この際、第2スパイラル配線層5aの一部をビアホール31bに充填することで、ビア配線25となる部分を形成し、第1スパイラル配線層3aと第2スパイラル配線層5aとを電気的に接続させる。なお、第2スパイラル配線層5bについても同様にビアホール31c内にビア配線25となる部分を形成し、第1スパイラル配線層3bと電気的に接続させる。第2スパイラル配線層5a,5bは、それぞれ第1コイルL1、第4コイルL4の第2スパイラル配線22を構成する。これにより、第1コイルL1および第4コイルL4を形成することができる。このとき、貫通孔31a,31d,31e,31f内およびその周辺の第1絶縁樹脂層31上にも配線層を形成しておく。
【0105】
そして、
図5Hに示すように、第2スパイラル配線層5a,5bを第2絶縁樹脂層32で覆う。このとき、第2絶縁樹脂層32を真空ラミネータで第1絶縁樹脂層31上に積層してから熱硬化する。
【0106】
そして、
図5Iに示すように、第2絶縁樹脂層32に、レーザ加工により、貫通孔32a,32d,32e,32fを形成する。貫通孔32a,32d,32e,32fは、それぞれ貫通孔31a,31d,31e,31f上方の第2絶縁樹脂層32に形成される。
【0107】
そして、
図5Jに示すように、貫通孔32a,32dを取り囲む第2絶縁樹脂層32上に、第1スパイラル配線層3aと同じセミアディティブ工法により第1スパイラル配線層7aと、第1スパイラル配線層7bとを形成する。第1スパイラル配線層7a,7bは、それぞれ第2コイルL2、第3コイルL3の第1スパイラル配線21を構成する。このとき、貫通孔32a,32d,32e,32f内およびその周辺の第2絶縁樹脂層32上にも配線層を形成しておく。
【0108】
そして、
図5Kに示すように、第1スパイラル配線層7a,7bを第3絶縁樹脂層33で覆う。このとき、第3絶縁樹脂層33を真空ラミネータで第2絶縁樹脂層32上に積層してから熱硬化する。
【0109】
そして、
図5Lに示すように、第3絶縁樹脂層33に、レーザ加工により、貫通孔33a,33d,33e,33fと、ビアホール33b,33cを形成する。貫通孔33a,33d,33e,33fは、それぞれ貫通孔32a,32d,32e,32f上方の第3絶縁樹脂層33に形成される。ビアホール33b,33cは、第1スパイラル配線層7a,7bと次に形成される配線層とが電気的に直列に接続される位置、具体的には第1スパイラル配線21の内周端21aとなる部分上の第3絶縁樹脂層33に形成される。
【0110】
そして、
図5Mに示すように、貫通孔33a,33dを取り囲む第3絶縁樹脂層33上に、第1スパイラル配線層7a,7bと同じセミアディティブ工法により第2スパイラル配線層9a,9bを形成する。この際、第2スパイラル配線層9aの一部をビアホール33bに充填することで、ビア配線25となる部分を形成し、第1スパイラル配線層7aと第2スパイラル配線層9aとを電気的に接続させる。なお、第2スパイラル配線層9bについても同様にビアホール33c内にビア配線25となる部分を形成し、第1スパイラル配線層7bと電気的に接続させる。第2スパイラル配線層9a,9bは、それぞれ第2コイルL2、第3コイルL3の第2スパイラル配線22を構成する。これにより、第2コイルL2および第3コイルL3を形成することができる。このとき、貫通孔33a,33d,33e,33f内およびその周辺の第3絶縁樹脂層33上にも配線層を形成しておく。
【0111】
そして、
図5Nに示すように、第2スパイラル配線層9a,9bを第4絶縁樹脂層34で覆う。このとき、第4絶縁樹脂層34を真空ラミネータで第3絶縁樹脂層33上に積層してから熱硬化する。
【0112】
そして、
図5Oに示すように、第4絶縁樹脂層34に、レーザ加工により、貫通孔34a,34d,34e,34fを形成する。貫通孔34a,34d,34e,34fは、それぞれ貫通孔33a,33d,33e,33f上方の第4絶縁樹脂層34に形成される。
【0113】
そして、
図5Pに示すように、基台50(ベース金属層52)の一面とダミー金属層60との接着面で基台50をダミー金属層60から剥がす。
【0114】
そして、
図5Qに示すように、ダミー金属層60をエッチングにより取り除く。この際、各絶縁樹脂層30~34の貫通孔30a~34a内,30d~34d,30e~34e,30f~31f内に設けられた配線層が同時にエッチングされ、コイルの内磁路および外磁路を形成する空間が形成される。このようにして、コイルL1~L4を有するコイル基板2を形成する。
【0115】
そして、
図5Rに示すように、コイル基板2の上下両側に、シート状に成型した磁性体粉および樹脂のコンポジット材料を複数枚配置し、真空ラミネータもしくは真空プレス機により、加熱圧着させ、その後硬化処理をする。このとき、内磁路および外磁路を形成する空間にコンポジット材料を充填し、内磁路に相当する磁性樹脂体41a,41bおよび外磁路に相当する磁性樹脂層42を含む磁性樹脂40を形成する。その後、ダイサー等によりカットし個片化する。このとき、第1、第2スパイラル配線21,22の外周端21b,22bに相当する第1、第2スパイラル配線層3a,3b,5a,5b,7a,7b,9a,9bの部分をカット面から露出させる。さらに、該カット面に露出した配線層と接続するように外部端子11a~14a,11b~14bを形成することで、
図2に示すコイル部品1Aを得ることができる。
【0116】
なお、上記では基台50の両面のうちの一面にコイル基板2を形成しているが、基台50の両面のそれぞれにコイル基板2を形成するようにしてもよい。また、上記では基台50の一面に一つのコイル基板2を形成しているが、基台50の一面に複数のコイル基板2を行列状に形成した後、個辺化することにより、複数のコイル部品1Aを同時に形成してもよい。これらの方法により、高い生産性を得ることができる。また、上記の製造方法はあくまでコイル部品1Aの製造方法の一例であり、同様の構成が得られるのであれば、公知の他の工法、技術を適用しても良い。
【0117】
前記コイル部品1Aによれば、対をなす第1コイルL1および第2コイルL2の磁気結合は、対をなさない第1コイルL1と第3、第4コイルL3,L4との磁気結合よりも強い。これにより、第1実施形態に係るコイル部品1と同様に、コイル部品1Aを、多相SWレギュレータに用いる際、各コイルL1~L4に入力されるパルス信号を適切に選択することで、第1コイルL1のリップル電流を小さくすることができる。
【0118】
また、コイル部品1Aでは、第1~第4コイルL1~L4のいずれのコイルを基準としても、該コイルと対をなすコイルとの磁気結合は、該コイルと対をなさないコイルとの磁気結合よりも強い。これにより、第1実施形態に係るコイル部品1と同様に、コイル部品1Aを、多相SWレギュレータに用いる際、各コイルL1~L4に入力されるパルス信号を適切に選択することで、第1~第4コイルL1~L4のリップル電流を小さくすることができる。
【0119】
なお、ここで、第1~第4コイルL1~L4のリップル電流を小さくするようにパルス信号を適切に選択するためには、例えば、第1コイルL1に入力される信号と比べて180°の位相差を有する信号を第2コイルL2に入力し、第1コイルL1に入力される信号と比べて90°の位相差を有する信号を第3コイルL3に入力し、第1コイルL1に入力される信号と比べて270°の位相差を有する信号を第4コイルL4に入力すればよい。
【0120】
また、コイル部品1Aでは、第1コイルL1に接続される第1外部端子11と、第2コイルL2に接続される第2外部端子12とは、隣り合い、第3コイルL3に接続される第3外部端子13と、第4コイルL4に接続される第4外部端子14とは、隣り合う。コイル部品1Aでは、磁気結合の強弱関係から、第1コイルL1と第2コイルL2との間隔は、第1コイルL1とその他のコイルL3,L4との間隔よりも短く、第1コイルL1と第2コイルL2とは近くに配置される。そこで、近くに配置される対をなすコイルL1,L2に接続される第1、第2外部端子11,12が隣り合うことで、コイル部品1A内におけるコイルL1,L2と外部端子11,12との間の引き回しを小さくすることができる。これにより、コイル部品1Aを小型化できる。なお、コイル部品1Aでは、他の対をなす第3、第4コイルL3,L4に接続される第3、第4外部端子13,14も同様の構成を有するため、コイル部品1Aをさらに小型化できる。
【0121】
以下、コイル部品1Aの実施例を用いて本願の発明者が行った評価により、実際に各コイルL1~L4のリップル電流を小さくできることについて説明する。
【0122】
表1に、本実施例および比較例1,2の構成、評価条件および評価結果を示す。本実施例および比較例1,2はいずれもコイル部品として、4個のコイルL1~L4を有する。コイルL1~L4のインダクタンス値はそれぞれ1μHである。本実施例は、
図2~4に示すコイル部品1Aの構成を有し、コイルL1とコイルL2およびコイルL3とコイルL4がそれぞれ対をなすように構成されている。比較例1は、4個のコイルL1~L4が互いに磁気結合していないコイル部品である。比較例2は、特許文献1に示されるコイル部品の構成を有するものであり、具体的には、
図6に示すように、ホイール型コア100の4つのスポーク101に、それぞれ、4個のコイルL1~L4が巻き付けられた構成を有する。
【0123】
【0124】
表1に示すように、比較例1では、4つのコイルL1~L4の互いの結合係数は0である。比較例2では、4つのコイルL~L4が互いに強く磁気結合しており、特に
図6において同一直線上に並ばないコイル同士の磁気結合(例えばコイルL1とコイルL2との磁気結合とコイルL1とコイルL4との磁気結合)は等しく、結合係数は-0.399である。
図6の同一直線上に並ぶコイル同士(例えばコイルL1とコイルL3およびコイルL2とコイルL4)においても、結合係数は-0.193となっている。なお、比較例2の結合係数は、磁場解析ソフトFemtet(ムラタソフトウェア株式会社製)による3D磁場解析結果から計算されている。
【0125】
一方、本実施例では、対をなすコイルL1とコイルL2との結合係数、および、対をなすコイルL3とコイルL4との結合係数は、-0.9であり、それ以外の対をなさないコイルの組み合わせの結合係数は、-0.1である。すなわち、対をなすコイルL1とコイルL2との磁気結合およびコイルL3とコイルL4との磁気結合が、対をなさないコイル同士の磁気結合よりも強い。比較例1、2は、この磁気結合の強弱関係を満たしていない。
【0126】
そして、本実施例と比較例1,2において、コイルL1に入力されるパルス信号に対して、コイルL2には180°の位相差を有するパルス信号を、コイルL3には90°の位相差を有するパルス信号を、コイルL4には270°の位相差を有するパルス信号を、それぞれ入力した。このときの、コイルL1~L4に入力されるパルス信号である入力電圧[V]およびコイル電流[A]の関係を、
図7から
図9に示す。
図7は、本実施例を示し、
図8は、比較例1を示し、
図9は、比較例2を示す。図中、(a)は第1コイルL1を示し、(b)は第2コイルL2を示し、(c)は第3コイルL3を示し、(d)は第4コイルL4を示す。図中、矩形波が入力電圧を示し、折れ線がコイル電流を示す。なお、コイル電流はLTSPICEにより計算した。また、
図7から
図9に示した波形のデータを表1に整理した。
【0127】
表1に示すように、本実施例では、無結合である比較例1と比べて、コイルL1~L4のリップル電流は約30%低減し、リップル実効値は約69%低減している。リップル実効値は、コイル電流の実効値からコイル電流の平均値を引いた値である。また、本実施例では、比較例2と比べても、コイルL1~L4のリップル電流は約58%低減し、リップル実効値は約76%低減している。したがって、本実施例では、比較例1、2と比べて、コイルL1~L4のリップル電流を小さくできることが分かる。なお、比較例2では、無結合である比較例1と比べて、リップル電流は約66%増加し、リップル実効値は約31%増加している。すなわち、特許文献1に記載のコイル部品が無結合のコイル部品よりもリップル電流が大きくなる場合がある、ということが本評価によって発見されたことを示している。
【0128】
(第3実施形態)
図10Aは、第3実施形態に係るコイル部品1Bを示す分解斜視図である。
図10Bは、コイル部品1Bを示す断面図である。第3実施形態は、第2実施形態とは、各コイルを構成するスパイラル配線の層の数量が相違する。この相違する構成を以下に説明する。なお、第3実施形態において、第2実施形態と同一の符号は、第2実施形態と同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0129】
図10Aと
図10Bに示すように、コイル部品1Bでは、第1から第4コイルL1~L4は、それぞれ、1層のスパイラル配線21と、ビア配線25および引出配線75の組み合わせから構成される。なお、引出配線75は直線状であり、スパイラル配線ではない。
【0130】
絶縁樹脂35は、ベース絶縁樹脂層30および第1、第2、第3絶縁樹脂層31,32,33から構成される。第1、第4コイルL1,L4のスパイラル配線21はベース絶縁樹脂層30上に、第1~第4コイルL1~L4の引出配線75は第1絶縁樹脂層31上に配置され、第2、第3コイルL2,L3のスパイラル配線21は第2絶縁樹脂層32上に、それぞれ第1絶縁樹脂層31、第2絶縁樹脂層32、第3絶縁樹脂層33に覆われている。
【0131】
コイル部品1B内の第1~第4コイルL1~L4の位置関係はコイル部品1Aと同様である。よって、対をなす第1コイルL1および第2コイルL2の磁気結合は、対をなさない第1コイルL1と第3、第4コイルL3,L4との磁気結合および第2コイルL2と第3、第4コイルL3,L4との磁気結合よりも強い。また、対をなす第3コイルL3および第4コイルL4の磁気結合は、対をなさない第3コイルL3と第1、第2コイルL1,L2との磁気結合および第4コイルL4と第1、第2コイルL1,L2との磁気結合よりも強い。
【0132】
コイル部品1Bでは、第1から第4コイルL1~L4のスパイラル配線21の内周端21aは、第1絶縁樹脂層31または第2絶縁樹脂層32に設けられたビア配線25を介して、第1絶縁樹脂層31上に設けられた各コイルL1~L4の引出配線75に接続される。引出配線75は、ビア配線25との接続部から、素体10の側面方向に直線状に伸び、対応する第1~第4外部端子11a~14a,11b~14bと接続される。なお、第1コイルL1~L4のスパイラル配線21の外周端21bは、第2実施形態に係るコイル部品1Aと同様に、素体10の側面に引き出され、対応する第1~第4外部端子11a~14a,11b~14bに接続される。
【0133】
なお、上記では引出配線75は、第1絶縁樹脂層31上、すなわちコイルL1,L4のスパイラル配線21が設けられた層と、コイルL2,L3のスパイラル配線21が設けられた層との間に設けているが、引出配線75はこの構成に限られない。引出配線75は、例えば、コイルL1,L4のスパイラル配線21が設けられた層より下層や、コイルL2,L3のスパイラル配線21が設けられた層より上層に設けられてもいてもよい。
【0134】
コイル部品1Bにおいて、コイルL1~L4の1つを第1コイル、該第1コイルと対をなすコイルを第2コイル、第1コイルおよび第2コイル以外のコイルをその他のコイルとするとき、第1コイルと第2コイルとの磁気結合は、第1コイルとその他のコイルとの磁気結合よりも強い。したがって、コイル部品1Bでも、多相SWレギュレータに使用される際、各コイルL1~L4に入力されるパルス信号を適切に選択することで、各コイルL1~L4のリップル電流を小さくできる。また、コイル部品1Bでは、各コイルL1~L4は、1層のスパイラル配線21から構成されるので、コイル部品1Bを低背化できる。
【0135】
(第4実施形態)
図11Aは、第3実施形態に係るコイル部品1Cを示す分解斜視図である。
図11Bは、コイル部品1Cを示す断面図である。第4実施形態は、第3実施形態とは、コイルL1~L4の外部端子への引出部分の構成が相違する。この相違する構成を以下に説明する。なお、第4実施形態において、第3実施形態と同一の符号は、第3実施形態と同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0136】
図11Aと
図11Bに示すように、コイル部品1Cでは、第1から第4コイルL1~L4のそれぞれのスパイラル配線21の内周端21aは、第1~第4柱状電極71~74により素体10の上面に引き出される。また、図示は省略するが、コイル部品1Cでは、外部端子の一部が素体10の上面側に設けられており、各コイルL1~L4の柱状電極71~74は、上面側において対応する外部端子に接続される。第1~第4柱状電極71~74は、例えば、Cu、Ag、Auなどの低電気抵抗な金属によって構成され、例えばセミアディティブ工法によって形成される。なお、第1から第4コイルL1~L4のそれぞれのスパイラル配線21の外周端21bは、第3実施形態と同様に素体10の側面に引き出され、対応する外部端子に接続される。以下、コイル部品1Cの内部構造をより詳細に説明する。
【0137】
第1、第4コイルL1,L4のスパイラル配線21の内周端21aは、第1絶縁樹脂層31に設けられたビア配線25を介して、第1絶縁樹脂層31上に設けられた引出配線75に接続される。第1、第4コイルL1,L4の引出配線75は、第2絶縁樹脂層32に設けられたビア配線25を介して、第2絶縁樹脂層32上かつ磁性樹脂40内に設けられた第1、第4柱状電極71,74にそれぞれ接続される。
【0138】
第2、第3コイルL2,L3のスパイラル配線21の内周端21aは、第2絶縁樹脂層32に設けられたビア配線25を介して、第2絶縁樹脂層32上かつ磁性樹脂40に設けられた第2、第3柱状電極72,73に接続される。
【0139】
コイル部品1C内の第1~第4コイルL1~L4の位置関係はコイル部品1Aと同様である。よって、対をなす第1コイルL1および第2コイルL2の磁気結合は、対をなさない第1コイルL1と第3、第4コイルL3,L4との磁気結合および第2コイルL2と第3、第4コイルL3,L4との磁気結合よりも強い。また、対をなす第3コイルL3および第4コイルL4の磁気結合は、対をなさない第3コイルL3と第1、第2コイルL1,L2との磁気結合および第4コイルL4と第1、第2コイルL1,L2との磁気結合よりも強い。
【0140】
すなわち、コイル部品1Cにおいて、コイルL1~L4の1つを第1コイル、該第1コイルと対をなすコイルを第2コイル、第1コイルおよび第2コイル以外のコイルをその他のコイルとするとき、第1コイルと第2コイルとの磁気結合は、第1コイルとその他のコイルとの磁気結合よりも強い。したがって、コイル部品1Cでも、多相SWレギュレータに使用される際、各コイルL1~L4に入力されるパルス信号を適切に選択することで、各コイルL1~L4のリップル電流を小さくできる。
【0141】
また、コイル部品1Cでは、第1から第4コイルL1~L4のそれぞれの一方の端部は、第1~第4柱状電極71~74により素体10の上面に引き出されるので、コイル部品1Bのようにスパイラル配線21以外の配線層を形成する必要が無く、より低背化できる。さらに、コイル部品1Cでは、外部端子の一部が素体10の上面側に設けられるが、例えば、該外部端子は上面側から側面側や底面側まで延長することができ、この場合面実装可能となる。また、例えば、素体10の上面のみに外部端子を設けた場合であっても、コイル部品1Cを実装基板内に埋め込むなど、3次元実装用とすることによって、素体10の上面から実装基板の配線パターンに直接接続することも可能である。さらに、このとき、外部端子を設けず、実装基板の配線パターンと第1~第4柱状電極71~74を直接接続してもよい。
【0142】
(第5実施形態)
図12Aは、第5実施形態に係るコイル部品1Dを示す透視斜視図であり、
図12Bは、
図12AのX-X断面図であり、
図12Cは、コイル部品1Dを示す透視上面図である。コイル部品1Dは、第4実施形態のコイル部品1Cとは、各コイルL1~L4を構成するスパイラル配線の形状が相違する。この相違する構成を中心に以下に説明する。なお、第5実施形態において、第1~第4実施形態と同一の符号は、該実施形態と同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0143】
図12Aに示すように、コイル部品1Dでは、第1から第4コイルL1~L4は、それぞれ、1層のスパイラル配線23Dによって構成される。また、
図12Bに示すように、第1、第4コイルL1,L4のスパイラル配線23Dは、ベース絶縁樹脂層30上に設けられ、第1絶縁樹脂層31に覆われている。第2、第3コイルL2,L3は第1絶縁樹脂層31上に設けられ、第2絶縁樹脂層32に覆われている。すなわち、スパイラル配線23Dは、素体10の内部に配置されている。さらに、
図12Cに示すように、スパイラル配線23Dは、上下方向から見たときに、半楕円形の弧状である。すなわち、スパイラル配線23Dは、ベース絶縁樹脂層30または第1絶縁樹脂層31上(絶縁層上)で約半周分巻回された曲線状の配線である。なお、スパイラル配線23Dの巻回数は、約半周分に限られず、1ターン未満の任意の数であってもよい。このように、巻回数が1ターン未満の場合は、スパイラル配線23Dの両端とも最外周となる(自身に囲まれた内周部分とならない)ため、ビア配線による立体配線を不要とできる。
【0144】
第1コイルL1のスパイラル配線23Dは、その両端23a,23bが第1外部端子11a,11bに接続され、該外部端子11a,11bからコイル部品1Dの中心側に向かって孤を描く曲線状である。第3コイルL3のスパイラル配線23Dは、第1コイルL1のスパイラル配線23Dと同じ形状であり、その両端23a,23bは、第3外部端子13a,13bに接続される。
【0145】
第2コイルL2のスパイラル配線23Dは、その両端23a,23bが第2外部端子12a,12bに接続され、該外部端子12a,12bからコイル部品1Dの縁側に向かって孤を描く曲線状である。第4コイルL4のスパイラル配線23Dは、第2コイルL2のスパイラル配線23Dと同じ形状であり、その両端23a,23bは、第4外部端子14a,14bに接続される。
【0146】
ここで、コイル部品1Dにおいて、コイルL1~L4のそれぞれに対し、スパイラル配線23Dの最内周よりも内側(スパイラル配線23Dの曲線と、スパイラル配線23Dの両端23a,23bを結んだ直線とに囲まれる範囲)を内径部分とする。このとき、コイル部品1Dでは、上下方向からみて、第1コイルL1の内径部分と第2コイルL2の内径部分とは、互いに重なり、第1コイルL3の内径部分と第4コイルL4の内径部分とは、互いに重なっている。また、第1コイルL1の内径部分と、第3、第4コイルL3,L4の内径部分は互いに重ならず、第2コイルL1の内径部分と、第3、第4コイルL3,L4の内径部分は互いに重ならない。
【0147】
すなわち、コイル部品1Dでは、第1実施形態のコイル部品1と同様に、第1コイルL1と第2コイルL2とが対をなし、第3コイルL3と第4コイルL4とが対をなし、4個のコイルL1~L4は、2組の対をなすように構成されている。さらに、対をなす第1コイルL1および第2コイルL2の磁気結合は、対をなさない第1コイルL1と第3、第4コイルL3,L4との磁気結合および第2コイルL2と第3、第4コイルL3,L4との磁気結合よりも強い。また、対をなす第3コイルL3および第4コイルL4の磁気結合は、対をなさない第3コイルL3と第1、第2コイルL1,L2との磁気結合および第4コイルL4と第1、第2コイルL1,L2との磁気結合よりも強い。実際に、コイル部品1Dの構成において、スパイラル配線23Dの配線幅を50μm、配線厚みを45μm、配線最小間隔を10μm、層間最小間隔を10μmとし、磁場解析ソフトFemtetを用いた3D磁場解析結果の計算を行った。結果としては、対をなす第1コイルL1と第2コイルL2との結合係数の絶対値は、ベース絶縁樹脂層30上で隣接する第1コイルL1と第4コイルL4との結合係数の絶対値の1.5倍以上であった。また、設けられる層が異なり、かつ内径部分同士の間隔も大きい第1コイルL1と第3コイルL3との結合係数の絶対値は上記結合係数の絶対値よりも小さかった。
【0148】
よって、コイル部品1Dにおいて、コイルL1~L4の1つを第1コイル、該第1コイルと対をなすコイルを第2コイル、第1コイルおよび第2コイル以外のコイルをその他のコイルとするとき、第1コイルと第2コイルとの磁気結合は、第1コイルとその他のコイルとの磁気結合よりも強い。したがって、コイル部品1Dでも、多相SWレギュレータに使用される際、各コイルL1~L4に入力されるパルス信号を適切に選択することで、各コイルL1~L4のリップル電流を小さくできる。また、コイル部品1Dでは、各コイルL1~L4は、1層のスパイラル配線23Dから構成されるので、コイル部品1Dを低背化できる。さらに、第3実施形態のコイル部品1Bのようにスパイラル配線23D以外の配線層を形成する必要が無く、より低背化できる。
【0149】
(第6実施形態)
図13Aは、第6実施形態に係るコイル部品1Eを示す透視斜視図であり、
図13Bは、コイル部品1Eを示す断面図であり、
図13Cは、コイル部品1Eを示す透視上面図である。コイル部品1Eは、第5実施形態のコイル部品1Dとは、各コイルL1~L4の形状や設けられる層が相違するとともに、第1~第4柱状電極71a~74a,71b~74bを備える点で相違する。この相違する構成を中心に以下に説明する。なお、第6実施形態において、第1~第5実施形態と同一の符号は、該実施形態と同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0150】
図13Aに示すように、コイル部品1Eでは、第1~第4コイルL1~L4は、それぞれ、1層のスパイラル配線23Eおよび引出配線75Eによって構成される。また、
図13Bに示すように、第1~第4コイルL1~L4はすべてベース絶縁樹脂層30上に設けられ、第1絶縁樹脂層31に覆われている。さらに、
図13Cに示すように、スパイラル配線23Eの両端は引出配線75Eに接続され、コイル部品1Eの側面10a,10b側に引き出されている。スパイラル配線23Eは、上下方向から見たときに、半楕円形の弧状である。すなわち、スパイラル配線23Eは、ベース絶縁樹脂層30上(絶縁層上)で約半周分巻回された曲線状の配線である。なお、スパイラル配線23Eの巻回数は、約半周分に限られず、1ターン未満の任意の数であってもよい。
【0151】
第1コイルL1の引出配線75Eは、一端が外側に位置する第1柱状電極71a,71bに接続され、第1柱状電極71a,71bからコイル部品1Eの中心側に延びる形状である。第4コイルL4の引出配線75Eは、一端が外側に位置する第4柱状電極74a,74bに接続され、第4柱状電極74a,74bからコイル部品1Eの中心側に延びる形状である。第1、第4コイルL1,L4のスパイラル配線23Eは、それぞれ、両端が引出配線75Eの他端に接続され、該他端からコイル部品1Eの縁側に向かって孤を描く曲線状である。
【0152】
第2コイルL2の引出配線75Eは、一端が内側に位置する第2柱状電極72a,72bに接続され、第2柱状電極72a,72bからコイル部品1Eの縁側に延びる形状である。第3コイルL3の引出配線75Eは、一端が内側に位置する第3柱状電極73a,73bに接続され、第3柱状電極73a,73bからコイル部品1Eの縁側に延びる形状である。第2、第3コイルL2,L3のスパイラル配線23Eは、それぞれ、両端が引出配線75Eの他端に接続され、該他端からコイル部品1Eの中心側に向かって孤を描く曲線状である。
【0153】
ここで、コイル部品1Eにおいて、コイルL1~L4のそれぞれに対し、スパイラル配線23Eの最内周よりも内側(スパイラル配線23Eの曲線と、スパイラル配線23Eの両端を結んだ直線とに囲まれる範囲)を内径部分とする。このとき、コイル部品1Eでは、上下方向からみて、いずれのコイルL1~L4についても、その内径部分同士は重ならない。
【0154】
一方、コイル部品1Eでは、第1、第2コイルL1,L2の引出配線75Eは、その他端でお互いに近接し、これにより、第1、第2コイルL1,L2のスパイラル配線23Eは、その両端で近接するとともに、お互いが反対側に孤を描く曲線状となるため、一つの楕円形の円弧状を形成する。第3、第4コイルL3,L4の引出配線75Eは、その他端でお互いに近接し、これにより、第3、第4コイルL3,L4のスパイラル配線23Eは、その両端で近接するとともに、お互いが反対側に孤を描く曲線状となるため、一つの楕円形の円弧状を形成する。すなわち、第1、第2コイルL1,L2のスパイラル配線23E、第3、第4コイルL3,L4のスパイラル配線23Eは、それぞれが楕円形を形成することにより、該楕円形の内径部分を共有する。該楕円形の内径部分では、第1、第2コイルL1,L2により発生する磁束、第3、第4コイルL3,L4により発生する磁束が集中するため、第1コイルL1と第2コイルL1との磁気結合、第3コイルL3と第4コイルL4との磁気結合は強くなる。
【0155】
すなわち、コイル部品1Eでは、第1実施形態のコイル部品1と同様に、第1コイルL1と第2コイルL2とが対をなし、第3コイルL3と第4コイルL4とが対をなし、4個のコイルL1~L4は、2組の対をなすように構成されている。さらに、対をなす第1コイルL1および第2コイルL2の磁気結合は、対をなさない第1コイルL1と第3、第4コイルL3,L4との磁気結合および第2コイルL2と第3、第4コイルL3,L4との磁気結合よりも強い。また、対をなす第3コイルL3および第4コイルL4の磁気結合は、対をなさない第3コイルL3と第1、第2コイルL1,L2との磁気結合および第4コイルL4と第1、第2コイルL1,L2との磁気結合よりも強い。実際に、コイル部品1Eの構成について、コイル部品1Dと同様の条件において、磁場解析ソフトFemtetを用いた3D磁場解析結果の計算を行ったところ、対をなす第1コイルL1と第2コイルL2との結合係数の絶対値は、ベース絶縁樹脂層30上で隣接する第2コイルL2と第3コイルL3との結合係数の絶対値の1.5倍以上であった。また、内径部分同士の間隔が大きい第2コイルL2と第4コイルL4との結合係数の絶対値は上記結合係数の絶対値よりも小さかった。
【0156】
よって、コイル部品1Eにおいて、コイルL1~L4の1つを第1コイル、該第1コイルと対をなすコイルを第2コイル、第1コイルおよび第2コイル以外のコイルをその他のコイルとするとき、第1コイルと第2コイルとの磁気結合は、第1コイルとその他のコイルとの磁気結合よりも強い。したがって、コイル部品1Eでも、多相SWレギュレータに使用される際、各コイルL1~L4に入力されるパルス信号を適切に選択することで、各コイルL1~L4のリップル電流を小さくできる。また、コイル部品1Eでは、各コイルL1~L4は、1層のスパイラル配線23Eから構成されるので、コイル部品1Eを低背化できる。さらに、第3実施形態のコイル部品1Bのようにスパイラル配線23E以外の配線層を形成する必要が無く、より低背化できる。そして、コイル部品1Eでは、スパイラル配線23Eがすべてベース絶縁層30上に積層され、絶縁樹脂35を2層構造とでき、さらなる低背化を実現できる。なお、第1~第4柱状電極71a~74a,71b~74bの外面には、CuやAg、Ni、Sn、Auなどの金属を含む外部端子を設けてもよく、この場合、実装品質を向上させることができる。また、第1~第4柱状電極71a~74a,71b~74bの外面が、外部端子になってもよく、この場合、コイル部品1Eを実装基板に埋め込む用途に適した構成とすることができる。
【0157】
(第7実施形態)
図14Aは、第7実施形態に係るコイル部品1Fを示す透視斜視図であり、
図14Bは、コイル部品1Fを示す断面図であり、
図14Cは、コイル部品1Fを示す透視上面図である。コイル部品1Fは、第6実施形態のコイル部品1Eとは、各コイルL1~L4の形状が相違する。この相違する構成を中心に以下に説明する。なお、第7実施形態において、第1~第6実施形態と同一の符号は、該実施形態と同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0158】
図14Aに示すように、コイル部品1Fでは、第1~第4コイルL1~L4は、それぞれ、1層のスパイラル配線23Fによって構成される。また、
図14Bに示すように、第1~第4コイルL1~L4はすべてベース絶縁樹脂層30上に設けられ、第1絶縁樹脂層31に覆われている。さらに、
図14Cに示すように、スパイラル配線23Fは、上下方向から見たときに、半楕円形の弧状である。すなわち、スパイラル配線23Fは、ベース絶縁樹脂層30上(絶縁層上)で約半周分巻回された曲線状の配線である。
【0159】
第1コイルL1のスパイラル配線23Fは、両端が外側に位置する第1柱状電極71a,71bに接続され、該第1柱状電極71a,71bからコイル部品1Fの中心側に向かって孤を描く曲線状である。第4コイルL4のスパイラル配線23Fは、両端が外側に位置する第4柱状電極74a,74bに接続され、該第4柱状電極74a,74bからコイル部品1Fの中心側に向かって孤を描く曲線状である。
【0160】
第2コイルL2のスパイラル配線23Fは、両端が内側に位置する第2柱状電極72a,72bに接続され、該第2柱状電極72a,72bからコイル部品1Fの縁側に向かって孤を描く曲線状である。第3コイルL3のスパイラル配線23Fは、両端が内側に位置する第3柱状電極73a,73bに接続され、該第3柱状電極73a,73bからコイル部品1Fの縁側に向かって孤を描く曲線状である。
【0161】
ここで、コイル部品1Fにおいて、コイルL1~L4のそれぞれに対し、スパイラル配線23Fの最内周よりも内側(スパイラル配線23Fの曲線と、スパイラル配線23Fの両端を結んだ直線とに囲まれる範囲)を内径部分とする。このとき、コイル部品1Fでは、上下方向からみて、いずれのコイルL1~L4についても、その内径部分同士は重ならない。
【0162】
一方、コイル部品1Fでは、第1、第2コイルL1,L2のスパイラル配線23Fはお互いに近接している。すなわち、第1コイルL1のスパイラル配線23Fで発生した磁束は、近接する第2コイルL2のスパイラル配線23Fの周囲を回り込み、第2コイルL2のスパイラル配線23Fで発生した磁束は、近接する第1コイルL1のスパイラル配線23Fの周囲を回り込む。これはお互いのスパイラル配線23Fが近接している、第3、第4コイルL3,L4でも同様である。したがって、第1コイルL1と第2コイルL1との磁気結合、第3コイルL3と第4コイルL4との磁気結合は強くなる。
【0163】
すなわち、コイル部品1Fでは、第1実施形態のコイル部品1と同様に、第1コイルL1と第2コイルL2とが対をなし、第3コイルL3と第4コイルL4とが対をなし、4個のコイルL1~L4は、2組の対をなすように構成されている。さらに、対をなす第1コイルL1および第2コイルL2の磁気結合は、対をなさない第1コイルL1と第3、第4コイルL3,L4との磁気結合および第2コイルL2と第3、第4コイルL3,L4との磁気結合よりも強い。また、対をなす第3コイルL3および第4コイルL4の磁気結合は、対をなさない第3コイルL3と第1、第2コイルL1,L2との磁気結合および第4コイルL4と第1、第2コイルL1,L2との磁気結合よりも強い。実際に、コイル部品1Fの構成について、コイル部品1Dと同様の条件において、磁場解析ソフトFemtetを用いた3D磁場解析結果の計算を行ったところ、対をなす第1コイルL1と第2コイルL2との結合係数の絶対値は、ベース絶縁樹脂層30上で隣接する第2コイルL2と第3コイルL3との結合係数の絶対値の4倍以上であった。また、内径部分同士の間隔が大きい第2コイルL2と第4コイルL4との結合係数の絶対値は上記結合係数の絶対値よりも小さかった。
【0164】
よって、コイル部品1Fにおいて、コイルL1~L4の1つを第1コイル、該第1コイルと対をなすコイルを第2コイル、第1コイルおよび第2コイル以外のコイルをその他のコイルとするとき、第1コイルと第2コイルとの磁気結合は、第1コイルとその他のコイルとの磁気結合よりも強い。したがって、コイル部品1Fでも、多相SWレギュレータに使用される際、各コイルL1~L4に入力されるパルス信号を適切に選択することで、各コイルL1~L4のリップル電流を小さくできる。また、コイル部品1Fでは、各コイルL1~L4は、1層のスパイラル配線23Fから構成されるので、コイル部品1Fを低背化できる。さらに、コイル部品1Bのようにスパイラル配線23F以外の配線層を形成する必要が無く、より低背化できる。そして、コイル部品1Fでは、スパイラル配線23Fがすべてベース絶縁層30上に積層され、絶縁樹脂35を2層構造とでき、さらなる低背化を実現できる。
【0165】
なお、コイル部品1Fでは、第1、第2コイルL1,L2において、同じ側にある一端からその反対側にある他端に向かって同時に電流が流れた場合、互いの磁束は強めあう。これは、第1コイルL1と第2コイルL2の同じ側にある各一端を共にパルス信号の入力側、その反対側にある各他端を共にパルス信号の出力側とした場合に、第1コイルL1と第2コイルL2とは正結合されていることを意味する。ただし、例えば、第1コイルL1と第2コイルL2の一方のコイルでは一端側を入力、他端側を出力とし、他方のコイルでは一端側を出力、他端側を入力とすれば、対をなす第1コイルL1と第2コイルL2とは負結合されている状態とできる。これは第3、第4コイルL3,L4についても同様である。
【0166】
また、コイル部品1Fでは、第1、第2コイルL1,L2の近接する部分は、例えば透磁率1の絶縁樹脂層を介しており、耐圧性を確保しながらスパイラル配線23Fの間隔を、例えば10μmなどと狭くすることが可能である。この場合、上記近接する部分の間には磁性樹脂が存在しないが、十分に近接していることで、上記計算結果のように磁気結合を確保することは可能である。
【0167】
図14Dは、第7実施形態の変形例に係るコイル部品1Gを示す透視斜視図である。コイル部品1Gは、前記コイル部品1Fとは、柱状電極の配置が相違する。まず、素体10の第1側面10a側にある各コイルL1~L4の端部を一端、第2側面10b側にある各コイルL1~L4の端部を他端とする。コイル部品1Gでは、第1、第3コイルL1,L3の一端側に接続された第1、第3柱状電極71a,73a、および、第2、第4コイルL2,L4の他端側に接続された第2、第4柱状電極72b,74bは、それぞれ、素体10の上方側において露出する。また、第1、第3コイルL1,L3の他端側に接続された第1、第3柱状電極71b,73b、および、第2、第4コイルL2,L4の他端側に接続された第2、第4柱状電極72a,74aは、それぞれ、素体10の下方側において露出する。
【0168】
この構成によれば、例えば、コイル部品1Gを実装基板に埋め込むとともに、素体10の上面側にパルス信号の入力ラインを配置し、素体10の下面側にパルス信号の出力ラインを配置することにより、対をなす第1、第2コイルL1,L2および第3、第4コイルL3,L4の組をより容易に負結合させることができる。
【0169】
図14Eは、第7実施形態の変形例に係るコイル部品1Hを示す透視斜視図である。コイル部品1Hは、前記コイル部品1Fとは、柱状電極の配置が相違する。具体的には、コイル部品1Hでは、第1、第3コイルL1,L3に接続された第1、第3柱状電極71a,71b,73a,73bは、下方側において、それぞれ,素体10から露出する。第2、第4コイルL2,L4に接続された第2、第4柱状電極72a,72b,74a,74bは、上方側において、それぞれ素体10から露出する。
【0170】
この構成によれば、コイル部品1Hの隣り合う第1~第4外部端子(第1~第4柱状電極)がそれぞれ別の面に露出するため、同じ外形サイズであっても、コイル部品1Hでは、コイル部品1Fに対して、端子間の間隔を大きくすることができ、実装基板との配線接続時に端子間での短絡を発生しにくくすることができる。
【0171】
(第8実施形態)
第2~7実施形態では、絶縁層が積層された素体と、絶縁層上に巻回された配線を有する構成、いわゆる積層コイルの構成を有していたが、第1実施形態のように、対をなすコイルと対をなさないコイルとの間で磁気結合の強弱をつける構成はこれに限られない。
【0172】
図15は、第8実施形態に係るコイル部品1Jを示す模式図である。コイル部品1Jは、第2実施形態のコイル部品1Aとは、素体10の構成および各コイルL1~L4の構成が相違する。この相違する構成を中心に以下に説明する。なお、第8実施形態において、第1~第7実施形態と同一の符号は、該実施形態と同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0173】
図15に示すように、コイル部品1Jでは、素体10が、第1コア40A、第2コア40Bおよび封止樹脂35Aによって構成され、第1から第4コイルL1~L4は,それぞれ、第1、第2コア40A,40Bに巻回された巻線によって構成される。
【0174】
第1、第2コア40A,40Bは、それぞれ、略四角形の枠状となっており、例えばフェライトや鉄などの磁性体材料からなる。第1、第2コア40A,40Bの対向する辺の一組には、外部端子11a~14a,11b~14bが形成されている。封止樹脂35Aは、第1、第2コア40A,40Bの両方を1つの素体10に封止するための部材であって、例えば、エポキシ樹脂などの絶縁性材料からなる。ここで、第1コア40Aと第2コア40Bとは、間隔を空けて配置されている。
【0175】
第1~第4コイルL1~L4は、例えば,絶縁被覆された銅線などであって、第1、第2コア40A,40Bの一辺に巻回され、その両端が第1~第4外部端子11a~14a,11b~14bに接続されている。ここで、第1、第2コイルL1,L2は、第1コア40Aの対向する辺の組のうち、第1、第2外部端子11a,11b,12a,12bが形成されていない組の一方、他方にそれぞれ同じ方向で巻回されている。また、第3、第4コイルL3,L4は、第2コア40Bの対向する辺の組のうち、第3、第4外部端子13a,13b,14a,14bが形成されていない組の一方、他方にそれぞれ同じ方向で巻回されている。すなわち、コイル部品1Jでは、第1コイルL1と第2コイルL2とが同じ第1コア40Aに巻回され、第3コイルL3と第4コイルL4とが同じ第2コア40Bに巻回されている。
【0176】
上記構成により、コイル部品1Jでは、第1コイルL1と第2コイルL2との磁気結合、第3コイルL3と第4コイルL4との磁気結合が強くなる。一方、第1コア40Aと第2コア40Bとは間隔を空けて配置されているため、第1コイルL1と第3、第4コイルL3,L4との磁気結合は弱く、第2コイルL2と第3、第4コイルL3,L4との磁気結合は弱くなる。
【0177】
したがって、コイル部品1Jでは、前記第1実施形態のコイル部品1と同様に、第1コイルL1と第2コイルL2とが対をなし、第3コイルL3と第4コイルL4とが対をなし、4個のコイルL1~L4は、2組の対をなすように構成されている。さらに、対をなす第1コイルL1および第2コイルL2の磁気結合は、対をなさない第1コイルL1と第3、第4コイルL3,L4との磁気結合および第2コイルL2と第3、第4コイルL3,L4との磁気結合よりも強い。また、対をなす第3コイルL3および第4コイルL4の磁気結合は、対をなさない第3コイルL3と第1、第2コイルL1,L2との磁気結合および第4コイルL4と第1、第2コイルL1,L2との磁気結合よりも強い。
【0178】
よって、コイル部品1Jにおいて、コイルL1~L4の1つを第1コイル、該第1コイルと対をなすコイルを第2コイル、第1コイルおよび第2コイル以外のコイルをその他のコイルとするとき、第1コイルと第2コイルとの磁気結合は、第1コイルとその他のコイルとの磁気結合よりも強い。したがって、コイル部品1Jでも、多相SWレギュレータに使用される際、各コイルL1~L4に入力されるパルス信号を適切に選択することで、各コイルL1~L4のリップル電流を小さくできる。
【0179】
また、コイル部品1Jでは、第1コイルL1の一端と第2コイルL2の一端とは、第1コイルL1および第2コイルL2に対して同じ一方側に引き出されているとともに、第1コイルL1の他端と第2コイルL2の他端とは、第1コイルL1および第2コイルL2に対して同じ他方側に引き出されている。さらに、第1コイルL1および第2コイルL2は、同じ方向に巻回されているため、一端をパルス信号の入力側から他端をパルス信号の出力側とするとき、負結合される。すなわち、第1コイルL1および第2コイルL2は、一端から他端に向かって電流が流れた場合に、コア40A内で互いに磁束が打ち消しあうように巻回されている。これは、第3コイルL3と第4コイルL4とにおいても同じである。
【0180】
したがって、コイル部品1Jでは、対をなすコイルがすべて負結合されるようにパルス信号を入力する際、コイルL1~L4の入力側、出力側をそれぞれ同じ側に揃えることができる。これにより、コイル部品1Jを実装する基板における配線引き回しをより容易にすることができる。
【0181】
(第9実施形態)
図12は、本発明のスィッチングレギュレータの一実施形態を示す簡略構成図である。
図12に示すように、スィッチングレギュレータ5(以下「レギュレータ5」と記載する。)は、降圧型のスィッチングレギュレータであり、入力電圧Vinを所定の出力電圧に降圧し、負荷7へ供給する。レギュレータ5は、コイル部品1と、コイル部品1の各コイルL1~L(2N)の一方の端部側のそれぞれに接続されたスイッチ部S1~S(2N)と、コイル部品1のコイルL1~L(2N)の他方の端部側に接続された(平滑回路の一例としての)コンデンサ6とを有する。レギュレータ5は、多相SWレギュレータであり、スイッチ部S1~S(2N)とコイルL1~L(2N)との組が、入力電圧Vinとコンデンサ6との間で並列に接続されている。
【0182】
コイル部品1は、第1実施形態(
図1)のコイル部品1と同じ構成である。なお、第1実施形態と同一の符号は、第1実施形態と同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0183】
各スイッチ部S1~S(2N)は、自身と接続された(自身に対応する)コイルL1~L(2N)に対して、入力電圧Vinまたはグランド電圧のいずれかを接続する(同期整流方式)。すなわち、各コイルL1~L(2N)には入力電圧Vinとグランド電圧との2値を有する矩形波であるパルス信号が入力される。ここで、自身に対応するコイルL1~L(2N)に入力電圧Vinが接続されているときの各スイッチ部S1~S(2N)状態をオン状態、対応するコイルL1~L(2N)にグランド電圧が接続されているときの各スイッチ部S1~S(2N)状態をオフ状態とする。オン状態とオフ状態との切り替えは、レギュレータ5が備えるPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)発生器(不図示)から各スイッチ部S1~S(2N)に入力される駆動信号P1~P(2N)によって制御される。
【0184】
具体的には、レギュレータ5にはある発振周波数が設定され、該発振周波数でPWM発生器は駆動信号P1~P(2N)により各スイッチ部S1~S(2N)をオン状態に移行させる(ターンオン)。すなわち、ターンオン同士の間隔は、発振周波数の逆数となる。これは、各コイルL1~L(2N)には、一定かつ同一の周期(発振周波数の逆数)を有する矩形波のパルス信号が入力されることを意味する。
【0185】
また、レギュレータ5は、コイルL1~L(2N)の出力電圧やコイルL1~L(2N)に流れる電流を検出する検出回路(不図示)を備え、該検出回路が一定以上の電圧や電流を検出すると、PWM発生器は駆動信号P1~P(2N)により各スイッチ部S1~S(2N)をオフ状態に移行させる(ターンオフ)。ここで、負荷7の消費電力に変動がない状態(定常状態)では、ターンオンからターンオフまでの間隔は一定となる。つまり、定常状態では、各コイルL1~L(2N)に入力される2N個のパルス信号は、一定かつ同一の周期内で、一定かつ同一のデューティ比(ターンオン-ターンオフまでの間隔/発振周波数の逆数)を有する。
【0186】
さらに、レギュレータ5は多相SWレギュレータであり、上記発振周波数の逆数を360°の位相で表わすと、駆動信号P1~P(2N)は、ターンオン間隔が360°/(2N)ずつずれた信号、すなわち360°/(2N)の位相差を持たせた信号の集合となっている。このとき、各コイルL1~L(2N)入力されるパルス信号も、360°/(2N)の位相差を持たせた信号の集合となる。これにより、各コイルL1~L(2N)から出力される電圧のピークが均等にずれるため、該出力電圧が合成された電圧の最小値と最大値との差、すなわちコンデンサ6へ入力されるリップル電圧を小さくできる。
【0187】
各コイルL1~L(2N)の一方の端部から、上記360°/(2N)の位相差を持たせたパルス信号が入力されると、各コイルL1~L(2N)の有するインダクタンスにより、矩形波のパルス信号が三角波のパルス信号に変換され、各コイルL1~L(2N)の他方の端部より該三角波が出力される。
【0188】
出力された該三角波は、コイルL1~L(2N)の他方の端部側に接続されたコンデンサ6により平滑され、後段の負荷7へ供給される。このとき、負荷7へ供給される電圧(出力電圧)は、入力電圧Vinと上記デューティ比との積となる。このように、レギュレータ5では、上記一定のデューティ比を適切に設定することで、入力電圧Vinを所定の出力電圧へ降圧し、負荷7へ供給する。
【0189】
ここで、前記レギュレータ5は、コイル部品1を有する。したがって、各コイルL1~L(2N)に入力するパルス信号を適切に選択することにより、各コイルL1~L(2N)のリップル電流を低減できる。具体的には、レギュレータ5では、Mを1以上N以下の整数として、信号P(2M-1)としては、信号P1に対して(360°/(2N))×(M-1)位相差を有する信号を、信号P(2M)としては、信号P1に対して(360°/(2N))×(M-1)+180°の位相差を有する信号が選択される。このとき、コイル部品1のすべての対をなすコイルL(2M-1)およびコイルL(2M)には、180°の位相差を有するパルス信号が入力され、各コイルL1~L(2N)のリップル電流を低減することができる。
【0190】
したがって、レギュレータ5では、リップル電流の低減により、各コイルL1~L(2N)での発熱による損失が低減されて効率が向上する。また、レギュレータ5では、リップル電流の低減により、各コイルL1~L(2N)に要求されるインダクタンス値やコンデンサ6に要求される静電容量値を低減でき、過渡応答速度の向上や回路の小型化を図ることができる。すなわち、レギュレータ5では、性能向上や、小型化を図ることができる。
【0191】
なお、上記では、レギュレータ5はPWM方式であったが、PFM(Pulse Frequency Modulation:パルス周波数変調)方式であってもよい。PFM方式であっても定常状態では各コイルL1~L(2N)に入力される2N個のパルス信号は、一定かつ同一の周期において、一定かつ同一のデューティ比を有し、360°/(2N)の位相差を持たせた信号の集合となる。したがって、この場合であっても、2N個のパルス信号を適切に選択することで、レギュレータ5では、性能向上や、小型化を図ることができる。
【0192】
また、上記では、スイッチ部S1~S(2N)は同期整流方式としたが、これに限られず、例えば、各スイッチ部S1~S(2N)が1つのスィッチング素子とダイオードとを有する構成(ダイオード整流方式)であってもよい。
【0193】
また、上記では、レギュレータ5は降圧型であったが、昇圧型や昇降圧型の多相SWレギュレータであっても、コイル部品1を有することにより、各コイルL1~L(2N)のリップル電流を低減することで、性能向上や、小型化を図ることができる。
【0194】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。例えば、第1から第9実施形態のそれぞれの特徴点を様々に組み合わせてもよい。
【0195】
前記第2~8実施形態では、コイル部品は、4つのコイルを有しているが、(2N)個(Nは2以上の整数)のコイルを有すればよく、N>2であってもよい。また、第2実施形態では、各コイルは、2層のスパイラル配線を有しているが、3層以上のスパイラル配線を有するようにしてもよい。
【0196】
前記第2実施形態では、コイルは、ターン数が1周以上のスパイラル配線を複数積層した構造であるが、ターン数が1周未満のスパイラル配線を複数積層した立体螺旋(ヘリカル)構造としてもよい。
【0197】
また、上記の実施形態では、対をなすコイルが負結合されている場合の効果を中心に説明したが、対をなすコイルの結合係数が正、すなわち対をなすコイルに同時に電流が流れた場合に、互いの磁束が強めあうように、対をなすコイルが磁気結合されていてもよい。これにより、対をなすコイルへの入力リップル電流を小さくできる。なお、対をなすコイルの結合係数が正となるようにするには、例えば、コイル部品1において、対をなすコイルの組、例えばコイルL1,L2の一方の巻回方向を逆にしてもよいし、コイルL1,L2の一方について、パルス信号の入出力を反対向きにしてもよい。また、例えば、コイル部品1Aにおいて、対をなすコイルL1,L2が同じ方向に巻回されていてもよい。
【0198】
また、コイル部品1Aにおいて、全てのコイル(スパイラル配線)を同じ方向に巻回してもよい。このとき、各コイルの形状、配置、製造条件などを揃えやすく、電気特性の偏差を小さくできるとともに、製造を容易にできる。また、対をなすコイルを容易に正結合することができる。
【0199】
また、コイル部品1Aでは、同一の絶縁層(例えばベース絶縁層30)上に複数のコイル(例えばコイルL1、L4)が積層され、該複数のコイルは、異なる方向に巻回されていたが、これに限られず、該複数のコイルは、同じ方向に巻回されていてもよい。この場合、同一の絶縁層上に積層された複数のコイルは、同じ方向に巻回されているので、対をなさないコイルの組のうち、比較的磁気結合が大きい同一絶縁層上で隣接するコイルの組を容易に負結合させることができ、各コイルのリップル電流をより抑えることができる。
【符号の説明】
【0200】
1、1A~1H、1J コイル部品
5 スィッチングレギュレータ
6 コンデンサ(平滑回路)
7 負荷
10 素体
10a 第1側面
10b 第2側面
11a~14a,11b~14b 第1~第4外部端子
21、22 第1、第2スパイラル配線
21a、22a 内周端
21b、22b 外周端
23D~23F スパイラル配線
23a 一端
23b 他端
25 ビア配線
30 ベース絶縁樹脂層
31~34 第1~第4絶縁樹脂層
35 絶縁樹脂
35A 封止樹脂
40 磁性樹脂
40A,40B 第1、第2コア
41a~41c 第1~第3磁性樹脂体
42 磁性樹脂層
71~74 第1~第4柱状電極
75,75E 引出配線
L1~L(2N) 第1~第(2N)コイル
S1~S(2N) 第1~第(2N)スイッチ部