(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】スペーサーとベンド用レバーを用いた単弦牽引装置
(51)【国際特許分類】
G10D 3/147 20200101AFI20220708BHJP
G10D 1/08 20060101ALI20220708BHJP
【FI】
G10D3/147
G10D1/08 100
(21)【出願番号】P 2019211147
(22)【出願日】2019-11-22
【審査請求日】2021-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】719001783
【氏名又は名称】千田 守男
(72)【発明者】
【氏名】千田 守男
【審査官】冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05140884(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0372090(US,A1)
【文献】特公昭48-028290(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2008/0141843(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10D 3/14-3/153
G10D 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブリッジプレートの鉛直面から出ている、複数のオクターブ調整ネジのネジ頭が埋まる径と深さを持った貫通孔を板厚方向に該ネジ頭の数と同数設け、且つ2弦用と3弦用の弦通し孔およびストッパー専用ネジ穴を板厚方向に貫通させた厚みの有る板状の物で、金属または合成樹脂で成形されており、該ネジ頭に嵌めてブリッジプレートの鉛直面に密着して装着できる事を特徴とするスペーサーと、T字型に形成された金属の板を鈍角または一部分が円弧をもった横折の形状に曲げ加工を施し、板厚方向に貫通した弦止め用孔及び弦通し用孔を持たせ、且つ該弦止め用孔と該弦通し用孔の間に円弧または楕円弧状の弦の経路を持った弦ガイドを具えた事を特徴とするベンド用レバーとを併せて用い、ストリングベンダー奏法を行なう際、スペーサーの角を支点にし、手のひらでベンド用レバーを押し下げて音程を変えることができる単弦牽引装置
【請求項2】
ベンド用レバーの可動域を制限し、音程を調整できる事を特徴とするストッパーを装着したスペーサーを組み込んだ請求項1に記載の単弦牽引装置。
【請求項3】
3弦用ストリングベンダーとして使用する場合に、ストッパーのネジとの接触を避ける為の切り欠きを設け、併せてショルダーストラップ型ストリングベンダーと併設して、3弦用ストリングベンダーとして使用する場合に、2弦を通すために必要な溝孔を板厚方向に設けたことを特徴とするベンド用レバーを装着した請求項1に記載の単弦牽引装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギター演奏におけるストリングベンダーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ペダルスチールギターの奏法をエレキギターでも再現しようと、ストリングベンダーは1960年代に開発されて以来、様々な方式のストリングベンダーが市販され、代表的な方式としては、ショルダーストラップ型、ヒップショット型、パームベンド型などがある。
【0003】
各方式に共通するのは、1960年代に開発された手法を踏襲し、ブリッジサドル29から後方に弦23を引っ張ることで張力を増やし、音程を全音または半音上げることを可能とする機構を有している。以下音程を半音または全音上げる操作をベンドまたはベンディングとする。2弦(B弦)のみをベンドするタイプはBベンダーと呼称され、3弦(G弦)のみのタイプはGベンダーと呼ばれており、2弦3弦両方に対応したBGベンダーも存在するなど、複数弦を弦毎にベンディング可能な機構に拡張できるストリングベンダーも製作されている。
【0004】
一般的にストリングベンダーを搭載しているギターはエレキギターが多く、3サドル用ブリッジプレート44を用いたエレキギターを例にすれば、該ブリッジプレート44後方に具えられた弦の引っ張り機構から、ネックヘッド部の弦巻機38へと張られた弦23を、該ブリッジプレート44の鉛直部33と接触せずにブリッジサドル29に掛ける為に、
図14に示すように該ブリッジプレート44の鉛直部33に溝を切り込み、又は弦通し用の孔をあける処置がされている。また
図15に示した中空構造を持ったエア抜きボルト23を用いて弦通し用の孔の機能を代替させている場合もある。
【0005】
ショルダーストラップ型は特許文献5及び特許文献8の記述に相当する方式で、ギターのボディ背面部に掘り込みを施し、弦の引っ張り機構一式を埋込んで、カムと一体になった力点となるストラップピン36を、ショルダーストラップ37に装着して上下に動かし、カムとシャフトで連結しているブリッジサドル29の後方に設けた弦の引っ張り機構の軸を、回転又は上下運動に変えて音程を変化させる。この方式は高い工作精度が求められ費用は高額となる。
【0006】
ヒップショット型は特許文献6の記述に相当する方式で、梃子の原理を利用した弦の引っ張り機構である専用器具をブリッジサドル29後方に固定し、力点となるレバーを腰に押し当てて動かし音程を操作する。専用器具を必要とするが取り付けは容易である。
【0007】
パームベンド型は非特許文献4または非特許文献6に相当するもので、既設のブリッジプレート28を取り外し、梃子の原理を利用した引っ張り機構と一体化した専用ブリッジプレートに換装する。音程の操作は弦を巻き付けたエンドボールを、作用点となる弦を止める孔または溝で受け止めさせ、力点となるレバーを手のひらで押し下げて行なうものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2017-102419
【文献】US20140196590A1
【文献】US20160232881A1
【文献】US3479917A
【文献】US3512443A
【文献】US4535670A
【文献】US5140884A
【文献】US5481954A
【文献】US7696420B2
【文献】US9251768B2
【文献】US9530388B1
【文献】US9607589B2
【非特許文献】
【0009】
【文献】https://en.wikipedia.org/wiki/B-Bender
【文献】http://stringbender.com/classic.php
【文献】https://shop.fender.com/ja-JP/articles/articles-pitch-perfect-a-history-of-the-b-bender
【文献】https://store.duesenberg.de/en/hardware/multibender/76/duesenberg-multibender
【文献】http://handbendersweden.com/instructions/
【文献】https://www.jacksonsteelguitar.com/product/the-edge-pitch-changer-telecaster/
【文献】http://rollingbender.com/admin/index.php/our-products/
【文献】https://b-blender.com/?page_id=131
【文献】https://bowdenbbenders.com/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ストリングベンダーの多くは、音程を上げてから元の音程に素早く戻すために、機構にスプリング31やバネを利用しており、構造を堅牢にする必要から、部材に鋼材を使用してギター本体に組み込んでいるため重量が多くなり、立位で長時間演奏する場合は演奏者の肩への負担が増すことになる。また、パームベンド型以外のストリングベンターの操作は座位(特に胡座)には不向きで、操作は出来ても姿勢に制約が有る
【0011】
本発明では梃子の作用点として働く弦止め用の孔と、力点となるレバーを併せ持つ形状の弦の引っ張り器具を、ブリッジプレート28の鉛直面34に直付けする仕様を考案したが、
図21に示したようにオクターブ調整ネジ30の頭が該鉛直面34に出ているため、引っ張り器具は平衡が取れず安定した状態で操作する事ができなかった。以下弦の引っ張り器具であるレバーをベンド用レバー12とする。
【0012】
希望の音程に達するまで手のひらでベンド用レバー12を押し下げただけでは、手を同じ位置に保てず音程が不安定になり、正確な音程にはならないため、従来のストリングベンダーと同様に、希望の音程に達したら固定して維持できる仕組みが必要になる。
【0013】
弦23の破断は弦巻機38で点接触している鋭角箇所、またはエンドポール25の巻き付け箇所で起こり易く、本発明においてはベンド用レバー12を繰り返し操作する事で、応力による弦23への負荷は該箇所に顕著にかかり易くなる。また、弦の経路において弦23が折れ曲がったり、金属面の角や孔の縁に接触して金属疲労や摩耗するなどにより、弦23が破断する事が起こり得るため、弦23への負荷を軽減するとともに弦23の破断を回避又は遅延させる必要がある。
【0014】
ギターは一般的に高音部から、1弦(E弦)、2弦(B弦)、3弦(G弦)、4弦(D弦)、5弦(A弦)、低音部6弦(E弦)へと6弦で構成されており、ストリングベンダーを装着してあるギターは、2弦(B弦)のみをベンドできるものが多くを占めている。2弦(B弦)のベンディングに1弦(E弦)や3弦(G弦)なども加えて、弦毎にベンドできる器具が存在するが、既設の器具を取り外しての交換が必要となる。可能であれば、既に2弦(B弦)用のストリングベンダーを装着してあるギターにも、3弦(G弦)をベンド出来る機能を持った器具を併設して装着したい。
【0015】
ベンド用レバー12の適正な長さや高さは演奏者毎に好みが有り、補正できる仕組みが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明では手のひらで操作するパームベンド型を採用するため姿勢の制約は少ない。
【0017】
本発明ではベンドによって音程を上げてから元の音程に戻す機構に、スプリング35やバネを用いないため、仕様に高い剛性を求める事はなく、重い部材は使用しない。
【0018】
弦の引っ張り器具であるベンド用レバー12とブリッジプレート28の鉛直面34に出ているオクターブ調整ネジのネジ頭との接触を避ける為に、間にスペーサー1を置く。スペーサー1には、ブリッジプレート28に装着されているブリッジサドル29用のオクターブ調整ネジ30の数と同数の、ネジ頭が埋まる径と深さを持った貫通孔7を設ける。このスペーサー1を該ネジ頭に嵌め込んで装着すれば、ブリッジプレート28の鉛直面34後方に新たな突起の無い面を設けることができる。これによりベンド用レバー12は起点10でスペーサー1と密着することができる為、スペーサー1の角を支点9にしてベンド用レバー12を操作してもガタツキの無い安定した動作ができるようになる。
【0019】
スペーサー1にストッパー専用ネジ孔6を板厚方向に貫通させて設け、同様にブリッジプレート28の鉛直面34にも、スペーサー1に設けた該ネジ孔の位置に合わせて、重なり連なるようにストッパー専用ネジ孔6を板厚方向に貫通させて設け、鍔が大きなネジをストッパー26としてスペーサー1側から装着し、ブリッジプレート28を貫通させナット27で締結し固定する。ストッパー26はベンド用レバー12がスペーサー1の角を支点9にして操作する際、ストッパー26のネジ込み量でベンド用レバー12の可動範囲を微調整し、ベンドして音程を半音または全音上げるための終点11を決める。
【0020】
スペーサーには2弦用の弦通し孔4および3弦用の弦通し孔5を板厚方向に貫通させる。演奏者は2弦(B弦)または3弦(G弦)の何れかの弦通し用の孔を選び、ベンド用レバー12を装着し弦23を通す。
【0021】
ベンド用レバー12に弦止め用の孔を一つだけ設けて、そこから弦23を通して弦23を張りベンドを繰り返すと、作用点である弦止め用の孔で止まっているエンドボール25に巻き付いている弦23は、巻き返し部分24から応力により解けるように引き延ばされて、張力が徐々に緩んだり金属疲労により断線し易くなるため、弦通し用の孔を一つ増設して一つは弦止め孔13、もう一つは弦通し孔14とし、二箇所の孔に弦をわたすことで弦23に加わる負荷を分散する。
【0022】
弦23の折れ曲がりや孔の縁の金属部分との接触が、ベンド用レバー12の弦通し孔14部分で生じる懸念があり、折れ曲がりへの改善策として、該レバーの弦止め孔13から弦通し孔14の間に、緩やかな曲線を持った弦ガイド16を設けて弦23を這わせて通すとともに、弦通し孔14に合成樹脂製のチューブを嵌めて、孔の縁での弦23と金属部分の接触を避ける対策をする。
【0023】
本発明におけるベンド用レバー12は、3弦側に装着して3弦(G弦)用ストリングベンダーとして機能させることができる他に、
図17に示すように、既に2弦(B弦)用ストリングベンダーを装着しているギターにも3弦(G弦)のベンド用レバー12として併設して組み込む事ができる。この場合2弦(B弦)の通り道を確保することが必要になるため、ベンド用レバー12に2弦(B弦)を通すための溝孔39を設ける。
【0024】
ベンド用レバー12を操作する手の位置の自由度を高めるために、長さ等を補正できる延長用バー41や握り玉42を装着できる孔を板厚方向に貫通させ設ける。
【発明の効果】
【0025】
本発明ではブリッジプレート28の鉛直面34に出ている、オクターブ調整ネジ30のネジ頭に嵌め込んだスペーサー1の角を支点9にして、ベンド用レバー12を手のひらで押し下げて音程を上げる事ができる。該レバーに加えた力を無くせば、音程は弦23の張力のみで元に戻るため、他の方式と違いスプリング35やバネは必要なく、強度を保つための鋼材も不要となり、軽量化が図れると共に部品数も少ない。手のひらでの操作では姿勢に制約は無く、座位(特に胡座)や立位での演奏にも支障はない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1はスペーサーとベンド用レバー及びストッパーの配置を示した模式図である。
【
図2】
図2はベンド用レバーを押し下げた状態を一部拡大して示した図である。
【
図3】
図3は3サドル用のスペーサーの三面図である。
【
図4】
図4は6サドル用のスペーサーの三面図である。
【
図5】
図5は鈍角の傾きを持ったベンド用レバーの三面図である。
【
図6】
図6は一部分に円弧を持った形状に曲げたベンド用レバーの三面図である。
【
図8】
図8は
図5に示したベンド用レバーに弦ガイドを装着した模式図である。
【
図9】
図9は
図6に示したベンド用レバーに弦ガイドを装着した模式図である。
【
図11】
図11はベンド用レバーに弦ガイドを装着した参考使用状態図である。
【
図12】
図12はベンド用レバーに弦ガイドを装着する前の背面側斜視図である。
【
図13】
図13はベンド用レバーに弦ガイドを装着する前の正面側斜視図である。
【
図14】
図14は3サドル用ブリッジプレートにスペーサーとベンド用レバーを装着する場合の模式図である。
【
図15】
図15は6サドル用ブリッジプレートにスペーサーとベンド用レバーを装着する場合の模式図である。
【
図16】
図16はショルダーストラップ型ストリングベンダーの従来例である。
【
図17】
図17は既設ストリングベンダーにスペーサーとベンド用レバーを併設した実施例を示す。
【
図19】
図19はベンド用レバーに延長用バーを装着した模式図である。
【
図20】
図20はベンド用レバーに握り玉を装着した実施例である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
エレキギター用のブリッジプレート28には
図14および
図15に示した以外の型式もあるが、本発明では、鉛直部33にブリッジサドル29を動かし、音程を調整するオクターブ調整ネジ30が装着してある器具の総称としてブリッジプレート28を定義する。
【0028】
本発明はスペーサー1とベンド用レバー12およびストッパー26の3つで構成する。スペーサー1はブリッジプレート28の鉛直面34に出ているオクターブ調整ネジ30の、ネジ頭が埋まる径と深さを持った貫通孔7を設けた厚みの有る板状の物で、金属または合成樹脂で成形されており、該ネジ頭に嵌め込みブリッジプレート28の鉛直面34に密着させて装着することで、スペーサー1はベンド用レバー12が該ネジ頭と直に接触しない緩衝部位となるとともに、ベンド用レバー12を押し下げる際の支点9を持つ事になる。
【0029】
ブリッジプレート28はオクターブ調整ネジ30とブリッジサドル29が3個の型式と6個の型式があるため、型式ごとにオクターブ調整ネジ30の数や位置に合わせた貫通孔7を板厚方向に設けたスペーサー1を作成する。以下オクターブ調整ネジ30とブリッジサドル29が3個の型式に対応するスペーサーを3サドル用スペーサー2とし、6個の型式に対応するスペーサーを6サドル用スペーサー3とする。
【0030】
3サドル用スペーサー2には2弦用の弦通し孔4および3弦用の弦通し孔5を各々板厚方向に貫通させて設ける。同様に3サドル用ブリッジプレート44の鉛直部33にも、2弦用の弦通し孔4或いは弦通し溝32、および3弦用の弦通し孔5を各々板厚方向に貫通させ設ける。
【0031】
6サドル用スペーサー3においては、6サドル用ブリッジプレート45に装着されたブリッジサドル29のオクターブ調整ネジ30を中空構造のエア抜きボルト31に交換すれば、エア抜きボルト31自体が弦の通し孔として機能し、3サドル用スペーサー2に設けた2弦や3弦用の弦の通し孔と同様の機能を持つ事ができる。
【0032】
3サドル用スペーサー2の2弦用通し孔4または3弦用通し孔5には合成樹脂製の弦通し用ガイドチューブ8を装着する。これはベンド用レバー12から張られた弦23がブリッジサドル29に達するまでに、該スペーサー2の弦通し用の孔の縁に接触する事を避けると共に、弦23が該スペーサー2の弦通し用の孔の中心に寄るように通すためである。
【0033】
3サドル用スペーサー2および6サドル用スペーサー3に、それぞれストッパー専用ネジ孔6を板厚方向に貫通させて設ける。同様に3サドルおよび6サドル対応のブリッジプレート28にも、各スペーサーに設けたストッパー専用ネジ孔6の位置に合わせて重り連なるように、ストッパー専用ネジ孔6を板厚方向に貫通させて設ける。
【0034】
図2に示すように、ストッパー26は鍔の大きな頭部を持ったネジを採用し、ブリッジプレート28とスペーサー1を密着させた状態で、スペーサー1のストッパー専用ネジ孔6から装着し、ブリッジプレート28のストッパー専用ネジ孔6を貫通させナット27で締結し、がたつきが無いように固定する。ストッパー26はネジ込み量を調整して、スペーサー1の直後に置かれたベンド用レバー12を押し下げて達する終点11の位置を変えて、音程の微調整ができる。
【0035】
ベンド用レバー12はT字型に形成された金属の板を、
図5又は
図6に示した側面図のように、鈍角または一部分が円弧をもった横折の形状に曲げたもので、スペーサー1の直後に密着した状態で置かれ、スペーサー1の角を支点9にして、該レバーを押し下げた角度で弦23の音程を上げる引き量が決まる。ベンド用レバー12を押し下げた位置では、該レバーがブリッジサドル29に接触しないように適切な角度を保つと共に、演奏性を考慮した曲げ加工を施す。
【0036】
ベンド用レバー12には板厚方向に貫通させた弦通し用の孔を2箇所設ける。1つは弦止め孔13とし、もう一つは弦通し孔14とする。弦止め孔13から弦通し孔14へと弦23をわたす事で張力による負荷を一点に掛かる事を避け、弦23への負荷を軽減することができる。
【0037】
ベンド用レバー12の弦通し孔14部分では、弦23の折れ曲がりが生じる懸念があり、それを避ける為に
図7の側面図に示した円弧または楕円弧の形状を持った、弦の経路を緩やかな曲線に導く弦ガイド16を、弦止め孔13から弦通し孔14の間に装着する。
【0038】
図8及び
図9は弦ガイド16をベンド用レバー12に装着した模式図を示す。ベンド用レバー12に設けた弦止め孔13の位置に合わせて、弦ガイド16側にも弦通し用の孔を1箇所設ける。弦ガイド16の終端19は、ベンド用レバー12の弦通し孔14の上端に位置するように曲げ加工を施す。弦ガイド16とベンド用レバー12とはリベット20や溶接にて接合又はボルトとナットで締結する。
【0039】
ベンド用レバー12の弦通し孔14には、
図10に示した合成樹脂製の弦ガイド用ブッシュ21又は弦ガイド用弦通しチューブ22を嵌める。これは弦23を弦通し孔14の中心寄りに通すとともに、孔の縁の金属面と金属である弦23が直接触れて、擦れ合い摩耗する事を避けるためでもある。
【0040】
ベンド用レバー12を3弦(G弦)用ストリングベンダーとして使用する場合、該レバーを3弦(G弦)側に移動させて装着するに際し、該レバーがストッパー26のネジに接触しないように、ベンド用レバー12に
図5に示した切り欠き15を設け、ネジを逃がす仕様とする。
【0041】
図17および
図18に示すように、既設のショルダーストラップ型2弦(B弦)ストリングベンダーと併設して、3弦(G弦)用にベンド用レバー12を装着して使用する場合には、該レバーに2弦(B弦)の通り道を設ける必要があり、弦23を通す溝孔39をベンド用レバー12の板厚方向に貫通させて設ける。
【実施例】
【0042】
図14はブリッジサドル29が3個のタイプで、2弦用ストリングベンダーとしての模式図を示す。あらかじめ3サドル用ブリッジプレート44の鉛直部33には、弦通し溝32とストッパー専用ネジ孔6を設ける。3サドル用スペーサー2を、該ブリッジプレート44の鉛直面34に出ているオクターブ調整ネジ30の頭に嵌め込む。
【0043】
ストッパー26を3サドル用スペーサー2のストッパー専用ネジ孔6から装着し、3サドル用ブリッジプレート44に設けた該ネジ孔6を貫通させ、ナット27で締結し仮固定する。
【0044】
ベンド用レバー12を3サドル用スペーサー2とストッパー26の間に置き、弦23をベンド用レバー12の弦止め孔13から通し、弦ガイド16に這わせ、弦通し孔14、2弦用通し孔4、弦通し溝32へと順に通し、ブリッジサドル29に掛け、弦巻機38にて巻き上げる。ベンド用レバー12は、弦23を巻上げた張力のみで3サドル用スペーサー2と密着する。弦23の調音後、ストッパー26を調節してベンド用レバー12の押し下げ量を決め、ナット27を締め付けストッパー26を固定する。
【0045】
図15はブリッジサドル29が6個のタイプで、2弦用ストリングベンダーベンダーとしての模式図を示す。予めストッパー専用ネジ孔6が、6サドル用ブリッジプレート45の鉛直面34に設けられているとする。2弦用ブリッジサドル29のオクターブ調整ネジ30はエア抜きボルト31に交換しておく。6サドル用スペーサー3を該ブリッジプレート45の鉛直面34に出ているオクターブ調整ネジ30の頭に嵌め込む。ストッパー26およびベンド用レバー12の取付については、ブリッジサドル29が3個のタイプと同様である。
【0046】
ベンド用レバー12を3弦(G弦)用ストリングベンダーベンダーとして使用する場合、ブリッジサドル29が3個の型式では、3サドル用スペーサー2の3弦用通し孔5と該レバーの弦通し孔14の位置を合わせベンド用レバー12を移動する。ブリッジサドル29が6個の型式では、3弦用のオクターブ調整ネジ30をエア抜きボルト31に交換し、スペーサー3の3弦(G弦)用の弦の通し孔の位置に合わせてベンド用レバー12を移動する。何れの場合もベンド用レバー12に切り欠き15が設けてあることにより、ストッパー26のネジとベンド用レバー12は接触しない。
【0047】
図17は既に2弦(B弦)用ストリングベンダーを装着しているギターに、3弦(G弦)用にベンド用レバー12を併設して組み込んだ実施例を示し、
図18は模式図を示す。予め3サドル用ブリッジプレート44には3弦用の弦通し溝32または通し孔、およびストッパー専用ネジ孔6を設けてあるものとする。ベンド用レバー12は3弦用ストリングベンダーベンダーとして組み込み弦を張り、2弦(B弦)はベンド用レバー12に設けた溝孔39を通って張られる。溝孔39はベンド用レバー12を操作しても弦23と接触しない幅と高さを持たせている。
【0048】
図19はベンド用レバー12に延長用バー41を装着する場合の模式図を示す。ベンド用レバー12に設けた延長用孔40に装着された延長用バー41は、延長用孔40を軸に回転させ角度を変更でき、手を置く位置を変える事ができる。
【0049】
図20はベンド用レバー12に握り玉42を装着した実施例を示す。該レバーに取付ける握り玉42のサイズを変える事により、手を置く高さが変わり手や指の動作の自由度が高まる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、鉛直部にブリッジサドルを動かすオターク調整ネジを具えるブリッジプレートを用いた弦楽器に利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 スペーサー
2 3サドル用スペーサー
3 6サドル用スペーサー
4 2弦用通し孔
5 3弦用通し孔
6 ストッパー専用ネジ孔
7 貫通孔
8 弦通しガイドチューブ
9 支点
10 起点
11 終点
12 ベンド用レバー
13 弦止め孔
14 弦通し孔
15 切り欠き
16 弦ガイド
17 弦ガイド止め孔
18 弦ガイド部弦通し孔
19 終端
20 リベット
21 弦ガイド用ブッシュ
22 弦ガイド用弦通しチューブ
23 弦
24 巻き返し部分
25 エンドボール
26 ストッパー
27 ナット
28 ブリッジプレート
29 ブリッジサドル
30 オクターブ調整ネジ
31 エア抜きボルト
32 弦通し溝
33 鉛直部
34 鉛直面
35 スプリング
36 ストラップピン
37 ショルダーストラップ
38 弦巻機
39 溝孔
40 延長用孔
41 延長用バー
42 握り玉
43 ピックアップ
44 3サドル用ブリッジプレート
45 6サドル用ブリッジプレート