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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】二重硬化エポキシ接着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 163/00 20060101AFI20220708BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220708BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20220708BHJP
   C08G 59/68 20060101ALI20220708BHJP
【FI】
C09J163/00
C09J11/06
C09J11/04
C08G59/68
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019506609
(86)(22)【出願日】2017-04-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-27
(86)【国際出願番号】 US2017028832
(87)【国際公開番号】W WO2017184974
(87)【国際公開日】2017-10-26
【審査請求日】2020-02-27
(31)【優先権主張番号】62/326,530
(32)【優先日】2016-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/180,207
(32)【優先日】2016-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518371836
【氏名又は名称】アディソン クリアー ウェーブ コーティングス インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ニューカム
(72)【発明者】
【氏名】チャウ ハ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン エイチ. ホーナー
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-192900(JP,A)
【文献】特表2006-504785(JP,A)
【文献】特開2007-153933(JP,A)
【文献】特開昭56-017239(JP,A)
【文献】特開昭54-095690(JP,A)
【文献】米国特許第04239725(US,A)
【文献】特開平04-226525(JP,A)
【文献】特開平04-234422(JP,A)
【文献】国際公開第2011/093236(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 163/00
C08G 59/00,59/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも93重量%の1種以上の重合性エポキシド;
紫外光又は可視光に曝されると該重合性エポキシドの酸触媒重合を誘導するように構成されている触媒量の光酸発生剤(PAG)であって、プロトン化されると超酸を形成する対イオンを有するスルホニウム塩又は加水分解して超酸を形成するスルホン酸エステルである、前記光酸発生剤;
銅(II)塩、チタン(IV)塩、及びチタン(IV)化合物からなる群から選択される、0.01重量%~1重量%のレドックス剤;及び
70℃以上の温度に曝されると該レドックス剤の存在下で該重合性エポキシドの酸触媒重合を誘導するように構成されている触媒量の熱酸発生剤(TAG)であって、ヨードニウム塩である、前記熱酸発生剤
を含む、光化学硬化性でも熱硬化性でもある二重硬化全エポキシ接着剤。
【請求項2】
前記レドックス剤が、酢酸銅(II)、トリフルオロ酢酸銅(II)、イソ酪酸銅(II)、オクタン酸銅(II)、パルミチン酸銅(II)、ステアリン酸銅(II)、安息香酸銅(II)、銅(II)アセチルアセトナート、銅(II)トリフルオロアセチルアセトナート、銅(II)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、ナプテン酸(napthenate)銅(II)、トリフリン酸銅(II)、及びメタンスルホン酸銅(II)からなる群から選択される、請求項記載の二重硬化全エポキシ接着剤。
【請求項3】
前記PAGが、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムビス(ヘプタフルオロプロピル)テトラフルオロホスフェートとジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムトリス(ヘプタフルオロプロピル)トリフルオロホスフェートの混合物、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロアンチモネートとビス(4-ジフェニルチオフェニル)スルフィドビス(ヘキサフルオロアンチモネート)の混合物、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロホスフェートとビス(4-ジフェニルチオフェニル)スルフィドビス(ヘキサフルオロホスフェート)の混合物、トリス[4-(4-アセチルフェニルチオ)フェニル]スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリス[4-(4-アセチルフェニルチオ)フェニル]スルホニウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、及び2,3-ジヒドロ-α-(2-メチルフェニル)-2-[[[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ]イミノ]-チオフェンアセトニトリルからなる群から選択される、請求項記載の二重硬化全エポキシ接着剤。
【請求項4】
前記PAGが365nmの光に曝されると酸触媒重合を誘導する、請求項記載の二重硬化全エポキシ接着剤。
【請求項5】
前記TAGが、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモネート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(ヘプタフルオロプロピル)テトラフルオロホスフェート、トリス(ヘプタフルオロプロピル)トリフルオロホスフェート、トリフレート、及びペルフルオロ-1-ブタンスルホネートからなる群から選択される対イオンを有するジアリールヨードニウム塩である、請求項記載の二重硬化全エポキシ接着剤。
【請求項6】
前記TAGが、p-(オクチルオキシフェニル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、(p-イソプロピルフェニル)(p-メチルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、(p-イソプロピルフェニル)(p-メチルフェニル)ヨードニウムビス(ヘプタフルオロプロピル)テトラフルオロホスフェートと(p-イソプロピルフェニル)(p-メチルフェニル)ヨードニウムトリス(ヘプタフルオロプロピル)トリフルオロホスフェートの混合物、ビス(4-メチルフェニル)ヨードニウムトリフレート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムペルフルオロ-1-ブタンスルホネート、及び(p-イソブチルフェニル)(p-メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェートからなる群から選択される、請求項記載の二重硬化全エポキシ接着剤。
【請求項7】
ヒュームドシリカ、シランカップリング剤、及び界面活性剤から選択される添加剤をさらに含む、請求項記載の二重硬化全エポキシ接着剤。
【請求項8】
0.05重量%~1.0重量%の犠牲還元剤をさらに含む、請求項記載の二重硬化全エポキシ接着剤。
【請求項9】
前記犠牲還元剤が、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、及びパルミチン酸アスコルビルからなる群から選択される、請求項記載の二重硬化全エポキシ接着剤。
【請求項10】
少なくとも93重量%の1種以上の重合性エポキシド;
紫外光又は可視光に曝されると該重合性エポキシドの酸触媒重合を誘導するように構成されている触媒量の光酸発生剤(PAG)であって、スルホニウム塩又はスルホン酸エステルである、前記光酸発生剤;
銅(II)塩、鉄(III)塩、チタン(IV)塩、又はチタン(IV)化合物からなる群から選択される0.01重量%~1重量%のレドックス剤;
70℃~130℃の範囲の温度に曝されると該レドックス剤の存在下で該重合性エポキシドの酸触媒重合を誘導するように構成されている触媒量の熱酸発生剤(TAG)であって、ヨードニウム塩である、前記熱酸発生剤;及び
アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、及びパルミチン酸アスコルビルからなる群から選択される、0.05重量%~1.0重量%の犠牲還元剤
を含む、光化学硬化性でも熱硬化性でもある二重硬化全エポキシ接着剤。
【請求項11】
前記PAGが、プロトン化されると超酸を形成する対イオンを有するスルホニウム塩又は加水分解して超酸を形成するスルホン酸エステルである、請求項10記載の二重硬化全エポキシ接着剤。
【請求項12】
前記PAGが、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムビス(ヘプタフルオロプロピル)テトラフルオロホスフェートとジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムトリス(ヘプタフルオロプロピル)トリフルオロホスフェートの混合物、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロアンチモネートとビス(4-ジフェニルチオフェニル)スルフィドビス(ヘキサフルオロアンチモネート)の混合物、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロホスフェートとビス(4-ジフェニルチオフェニル)スルフィドビス(ヘキサフルオロホスフェート)の混合物、トリス[4-(4-アセチルフェニルチオ)フェニル]スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリス[4-(4-アセチルフェニルチオ)フェニル]スルホニウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、及び2,3-ジヒドロ-α-(2-メチルフェニル)-2-[[[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ]イミノ]-チオフェンアセトニトリルからなる群から選択される、請求項11記載の二重硬化全エポキシ接着剤。
【請求項13】
前記TAGが、プロトン化されると超酸を形成する対イオンを有するジアリールヨードニウム塩である、請求項12記載の二重硬化全エポキシ接着剤。
【請求項14】
前記TAGが、p-(オクチルオキシフェニル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、(p-イソプロピルフェニル)(p-メチルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、(p-イソプロピルフェニル)(p-メチルフェニル)ヨードニウムビス(ヘプタフルオロプロピル)テトラフルオロホスフェートと(p-イソプロピルフェニル)(p-メチルフェニル)ヨードニウムトリス(ヘプタフルオロプロピル)トリフルオロホスフェートの混合物、ビス(4-メチルフェニル)ヨードニウムトリフレート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムペルフルオロ-1-ブタンスルホネート、及び(p-イソブチルフェニル)(p-メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェートからなる群から選択される、請求項13記載の二重硬化全エポキシ接着剤。
【請求項15】
前記レドックス剤が、酢酸鉄(III)、鉄(III)アセチルアセトナート、酒石酸鉄(III)、チタン(IV)イソプロポキシド、及びビス(η-5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタンからなる群から選択される鉄(III)塩、チタン(IV)塩、又はチタン(IV)化合物である、請求項13記載の二重硬化全エポキシ接着剤。
【請求項16】
前記レドックス剤が、酢酸銅(II)、トリフルオロ酢酸銅(II)、イソ酪酸銅(II)、オクタン酸銅(II)、パルミチン酸銅(II)、ステアリン酸銅(II)、安息香酸銅(II)、銅(II)アセチルアセトナート、銅(II)トリフルオロアセチルアセトナート、銅(II)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、ナプテン酸銅(II)、トリフリン酸銅(II)、及びメタンスルホン酸銅(II)からなる群から選択される銅(II)塩である、請求項13記載の二重硬化全エポキシ接着剤。
【請求項17】
前記TAGが70℃の温度に曝されると前記重合性エポキシドの酸触媒重合を誘導する、請求項16記載の二重硬化全エポキシ接着剤。
【請求項18】
少なくとも93重量%の1種以上の重合性エポキシド;
紫外光又は可視光に曝されると該重合性エポキシドの酸触媒重合を誘導するように構成されている触媒量の光酸発生剤(PAG)であって、スルホニウム塩又はスルホン酸エステルである、前記光酸発生剤;
0.01重量%~0.2重量%の銅(II)塩;及び
70℃以上の温度に曝されると該銅(II)塩の存在下で該重合性エポキシドの酸触媒重合を誘導するように構成されている触媒量の熱酸発生剤(TAG)であって、ヨードニウム塩である、前記熱酸発生剤
を含み、遮光された容器中で室温で保存される場合少なくとも5日間安定である、光化学硬化性でも熱硬化性でもある二重硬化全エポキシ接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2016年4月22日に出願された米国仮特許出願第62/326,530号の出願日遡及の特典を主張する本出願である。
【0002】
(技術分野)
本開示は、光化学硬化性でも熱硬化性でもある二重硬化全エポキシ接着剤組成物に関し、より具体的には、紫外光又は熱に曝されると酸触媒重合を経るそのようなエポキシ接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
半導体及び光電子パッケージングは、半導体又は光電子デバイスの部品の組立て、接続、及び結合に関与する種々のプロセスを包含する。そのようなデバイスのサイズがますます小型化されるにつれ、クランプ装置及びねじ接続など、素子の機械的な接続の代わりに、接着剤がますますパッケージング用途に利用されつつある。小型の半導体及び光電子デバイスには、典型的には、微細な公差(通常<1ミクロン)での部品の精密な整列、当業者による(by those in the industry)いわゆる「アクティブアライメント」が要求されるので、小型の半導体及び光電子デバイスをパッケージングするのに使用される接着剤が、そのような加工上の要求を満たすことが可能であるべきである。
【0004】
さらに、そのようなデバイスはしばしば部品間に、露光が限定されているか全くない状態の陰になった部分を含むので、半導体又は光電子パッケージング用途に使用される現在の接着剤は、光化学硬化性でも熱硬化性でもある「二重硬化」接着剤であり得る。詳細には、露光される接着剤の一部は、時には数秒以内に光化学的に(例えば、紫外光により)硬化されて、所望の公差限界内で整列された状態で部品を固定する。次いで、陰になった領域中の光から埋もれている接着剤の残りの部分が熱処理されて、硬化プロセスが完了する。しかし、例えば、カメラモジュールの場合、小型化は、高温(>90℃)に曝されると融解又は変形し得るポリカーボネート(PC)、変性PC、又は他の類似のプラスチックから製造された高屈折率レンズの使用も導いた。したがって、そのような用途に使用される現在の二重硬化接着剤は、熱に敏感な材料の完全性を維持するために比較的低温で硬化することが可能でなくてはならない。
【0005】
カメラモジュールを含む電子/光電子デバイスのパッケージングに使用されている現在の二重硬化接着剤は、多くの場合、低温熱の存在下でラジカル重合により硬化するアクリレート、アクリル化ビス-マレイミド(BMI)、アクリル化ウレタン、又は他の類似のアクリル化樹脂及び紫外光に曝されると酸触媒重合により硬化するエポキシ樹脂を含むハイブリッド樹脂である。しかし、エポキシ接着剤が、優れた接着性及び環境面の性質(例えば、水浸透性など)の点でアクリレート及びBMI接着剤より性能がよいことが周知であるものの、ポリカーボネートレンズなどの温度に敏感な部品に必要とされる低温で光化学硬化性でも熱硬化性でもある公知の市販の二重硬化のエポキシのみの接着剤は現在ない。
【0006】
エポキシ接着剤は、硬化が始まる方法によって2つの種類:熱硬化性エポキシ接着剤及び光化学硬化性エポキシ接着剤に分類できる。熱硬化性エポキシ接着剤は、重合機構によってさらに2つの群にさらに分類できる。具体的には、熱硬化性エポキシ接着剤は、エポキシドとアミン又は無水物など別の官能基との縮合により重合するもの(いわゆる「二部」系)及び酸触媒重合を経るもの(一成分系)に分類できる。二部エポキシド縮合系は、その塩基性成分のため酸触媒重合と適合性がない。
【0007】
米国特許第4,225,691号及び同第4,238,587号は、重合性エポキシ樹脂、ジアリールヨードニウム塩、及び銅系レドックス剤を含む、酸触媒重合により低温で熱硬化する樹脂組成物を記載している。そこに開示されている樹脂組成物は、効果的ではあるが、反応性が高いため数分又は数時間たらずでゲル化し得る。そのため、そのようなエポキシ樹脂組成物は取り扱いが困難なことがあり、使用直前に調製しなければならない。
【0008】
このため、ゲル化なしに室温で相当な期間保存できる二重硬化全エポキシ接着剤が必要とされていることがわかる。さらに、アクティブアライメントの加工要件と適合し、小型カメラモジュールアセンブリ用途などの温度に敏感な用途のために低温で硬化可能な接着剤が必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
(概要)
本開示の一態様に従うと、光化学硬化性でも熱硬化性でもある二重硬化全エポキシ接着剤が開示される。該二重硬化全エポキシ接着剤は、少なくとも約93重量%の1種以上の重合性エポキシド、紫外光に曝されると該重合性エポキシドの酸触媒重合を誘導するように構成されている触媒量の光酸発生剤(PAG)、約0.01重量%~約1重量%のレドックス剤、及び約70℃以上の温度に曝されると該レドックス剤の存在下で該重合性エポキシドの酸触媒重合を誘導するように構成されている触媒量の熱酸発生剤(TAG)を含み得る。
【0010】
本開示の別な態様に従うと、光化学硬化性でも熱硬化性でもある二重硬化全エポキシ接着剤が開示される。該二重硬化全エポキシ接着剤は、少なくとも約93重量%の1種以上の重合性エポキシド、紫外光又は可視光(200~500mn)に曝されると該重合性エポキシドの酸触媒重合を誘導するように構成されている触媒量の光酸発生剤(PAG)、及び銅(II)塩、鉄(III)塩、チタン(IV)塩、又はチタン(IV)化合物からなる群から選択される約0.01重量%~約1重量%のレドックス剤を含み得る。該接着剤は、約70℃~約130℃の範囲の温度に曝されると該レドックス剤の存在下で該重合性エポキシドの酸触媒重合を誘導するように構成されている触媒量の熱酸発生剤(TAG)及び約0.05重量%~約1.0重量%の犠牲還元剤をさらに含み得る。
【0011】
本開示の別の態様において、光化学硬化性でも熱硬化性でもある二重硬化全エポキシ接着剤が開示される。該二重硬化全エポキシ接着剤は、少なくとも約93重量%の1種以上の重合性エポキシド、紫外光又は可視光(200~500nm)に曝されると該重合性エポキシドの酸触媒重合を誘導するように構成されている触媒量の光酸発生剤(PAG)、約0.01重量%~約0.2重量%の銅(II)塩、及び70℃又は約70℃の温度に曝されると該銅(II)塩の存在下で該重合性エポキシドの酸触媒重合を誘導するように構成されている触媒量の熱酸発生剤(TAG)を含み得る。該二重硬化全エポキシ接着剤は、遮光された容器中で室温で保存される場合少なくとも約5日間安定であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
(図面の簡単な説明)
図1図1は、本開示に従って構成された二重硬化全エポキシ接着剤を使用して組立てられたカメラモジュールの断面図である。
【0013】
図2図2は、本開示に従って構成された二重硬化全エポキシ接着剤を使用する、アクティブアライメントされたデバイスの製造に含まれる工程の略図である。
【0014】
図3図3は、PAG-F及びTAG-Bを含む重合性エポキシドの混合物の100℃での熱硬化に対するステアリン酸銅(II)の影響を示すデータプロットである。エポキシ転化の%はFT-IRにより測定された。
図4図4は、TAG-A及び鉄(III)アセチルアセトナートを含む重合性エポキシドの混合物の125℃での熱硬化に対するパルミチン酸アスコルビル添加の影響を示すデータプロットである。エポキシ転化の%はFT-IRにより測定された。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(詳細な説明)
本開示は、半導体及び光電子パッケージング用途を含むがこれらに限定されない種々の用途に利用可能な二重硬化全エポキシ接着剤に関する。本明細書に開示される通り、「二重硬化全エポキシ接着剤」は、光化学硬化性でも熱硬化性でもあるエポキシ接着剤組成物であって、該組成物中の唯一の硬化性/重合性物質が1種以上のエポキシド化合物であるエポキシ接着剤組成物である。したがって、本明細書に開示される二重硬化全エポキシ接着剤は、非限定的にアクリレート樹脂(あらゆるアクリル酸塩、アクリル酸、又はアクリル酸エステル含有樹脂)、アクリル化ビス-マレイミド(BMI)樹脂、及びウレタン樹脂(アクリル化ウレタン樹脂を含む)などの他の硬化性/重合性構成要素を含まない。本明細書に開示されるエポキシ接着剤組成物は、紫外光又は可視光(約200nm~約500nm)に曝されると、又は約70℃~約130℃の範囲の比較的低温に曝されると、酸触媒重合を経る。したがって、エポキシ接着剤は、ポリカーボネートレンズを有するカメラモジュールなど、温度に敏感な部品を有するデバイスの組み立てに使用できる。
【0016】
ここで図1を参照すると、本明細書に開示される二重硬化全エポキシ接着剤を使用して組立てられたカメラモジュール10が示されている。カメラモジュール10は、1つ以上のポリカーボネートレンズ14を収容している鏡筒12、及び鏡筒12用のレンズ筐体16を含み得る。さらに、カメラモジュール10は、プリント基板(PCB)22及びフレキシブルプリント基板(FPCB)24上に載っているセンサーケース20中に封入されたイメージセンサー18を、イメージセンサー18をPCB 22に接続しているワイヤー26と共にさらに含み得る。赤外(IR)フィルター28及びガラス蓋30は、示される通り、ポリカーボネートレンズ14とイメージセンサー18を分離し得る。
【0017】
鏡筒を所定の位置にねじ込むことができるようにレンズ筐体にねじ山が切られている古い設計とは対照的に、図1のカメラモジュール10の鏡筒12は、二重硬化全エポキシ接着剤を使用してレンズ筐体16に結合している。すなわち、二重硬化全エポキシ接着剤は、鏡筒12とレンズ筐体16の間の結合界面で適用され、部品は、紫外光に短期間曝露されている間整列された状態に保たれて、接着剤が光化学硬化され、所望の公差限界内の整列が固定される。紫外光は、単色光源(例えば、365nm又は他の波長の単色光を与える発光ダイオード(LED))、又は約200nmから400nm超(>400nm)の範囲の紫外光を与える水銀ランプなど、あらゆる好適な紫外光源から供給できる。
【0018】
その後の工程において、次いで、鏡筒12とレンズ筐体16の間の陰になった領域32中に埋もれた接着剤は、低温熱(<90℃)に曝されて熱硬化され、温度に敏感なポリカーボネートレンズ14の融解又は変形を避けながら、硬化プロセスが完了する。同様に、ガラス蓋30とセンサーケース20/レンズ筐体16の間及びセンサーケース20とPCB 22の間など、モジュール10の部品間の他の陰になった領域32も、低温熱に曝すことにより二重硬化全エポキシ接着剤を使用して結合できる。
【0019】
ここで図2に進むと、電子デバイスのダイアタッチプロセス(チップボンディング)における二重硬化全エポキシ接着剤の使用が模式的に描かれている。詳細には、接着剤34は基板36上に分配され得て、ダイ38(又はチップ)が接着剤34上に配置され、アライメント装置40を使用して整列された位置で保持される。接着剤34を紫外光42に短時間曝すと、光42に曝される接着剤34の一部を硬化させることにより、基板36上のダイ38の整列を固定し得る。次いで、整列された部分は熱44により処理されて、露光から埋もれていた接着剤34の部分が硬化されて、硬化プロセスが完了し、整列したデバイスを与えることができる。図1~2が、本明細書に開示される二重硬化全エポキシ接着剤の実際的な用途のわずか2つの例を説明していることが留意される。本明細書に開示される接着剤組成物が、陰になった領域、温度に敏感な材料、及び/又はアクティブアライメントの要件を有するあらゆる用途に使用できることが理解されるだろう。それは、全エポキシ接着剤の接着性及び/又は環境面の性質特性から利益を受け得るあらゆる用途に使用できる。
【0020】
本明細書に開示される二重硬化全エポキシ接着剤は、以下の組成を有し得る:
(1)少なくとも約93重量%の1種以上の重合性エポキシド;
(2)紫外光又は可視光に曝されると該重合性エポキシドの酸触媒重合を誘導するように構成されている触媒量の光酸発生剤(PAG);
(3)約0.01重量%~約1重量%のレドックス剤;
(4)約70℃~約130℃の範囲の温度に曝されると該レドックス剤の存在下で該重合性エポキシドの酸触媒重合を誘導するように構成されている触媒量の熱酸発生剤(TAG);及び
(5)任意に、約0.05重量%~約0.5重量%の犠牲還元剤。
【0021】
上述の通り、本明細書に開示される接着剤組成物は、アクリル酸塩、アクリル酸、アクリル酸エステル、アクリル化ビス-マレイミド(BMI)誘導体、及びアクリル化ウレタンを含むあらゆるアクリレート化合物を含まない。先に列記された成分のそれぞれの詳細並びに他の任意の添加剤は、以下の段落に説明される。
【0022】
(重合性エポキシド)
本明細書に開示される接着剤組成物は、約93重量%~約99重量%の異なる重合性エポキシド化合物の混合物を含む1種以上の重合性エポキシド化合物を含み得る。該重合性エポキシドは、市販されているか、合成により調製できる。好適な市販のエポキシド化合物の非限定的な例には、とりわけ、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3',4'-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ヘキサヒドロフタル酸のジグリシジルエステル、2,2-ビス[4-(グリシジルオキシ)フェニル]プロパン、及びビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテルがある。
【0023】
(光酸発生剤(PAG))
本明細書に開示されるエポキシ接着剤は、紫外光又は可視光に曝されると重合性エポキシドの酸触媒重合を誘導する、触媒量(例えば、約0.05重量%~約3重量%)の1種以上のPAGを含み得る。好適なPAGは、公知の光化学活性「オニウム」塩(例えば、スルホニウム、ヨードニウムなど)並びに紫外光の存在下で反応して、重合性エポキシド(複数可)の酸触媒重合を誘導する「超酸」を発生させる中性の化合物(例えば、スルホン酸エステル)から選択され得る。当業者により理解される通り、超酸は、100%硫酸より高い酸度を有する酸である。例えば、PAGは、UV露光時にプロトン化されて超酸を形成する対イオンを有するスルホニウム塩であり得る。或いは、PAGは、紫外光に曝されると加水分解して超酸を形成するスルホン酸エステルであり得る。詳細には、PAGにより生じた超酸は、とりわけ、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモネート、スルホネート、及びテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなど、プロトンと充分に結合していない共役塩基を含み得る。この点で、特に興味深いものは、365nmの光の存在下で反応する市販のPAG、例えば、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(PAG-A)、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロホスフェート(PAG-B)、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムビス(ヘプタフルオロプロピル)テトラフルオロホスフェートとジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムトリス(ヘプタフルオロプロピル)トリフルオロホスフェートの混合物(PAG-C)、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロアンチモネートとビス(4-ジフェニルチオフェニル)スルフィドビス(ヘキサフルオロアンチモネート)の混合物(PAG-D)、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロホスフェートとビス(4-ジフェニルチオフェニル)スルフィドビス(ヘキサフルオロホスフェート)の混合物(PAG-E)、トリス[4-(4-アセチルフェニルチオ)フェニル]スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(PAG-F)、トリス[4-(4-アセチルフェニルチオ)フェニル]スルホニウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド(PAG-G)、及び2,3-ジヒドロ-α-(2-メチルフェニル)-2-[[[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ]イミノ]-チオフェンアセトニトリル(PAG-H)などである。上述のPAGの構造は表1に与えられる。紫外光に曝されると酸触媒(acid-catyalzed)エポキシ重合を誘導することが可能な表1に列記されていない他のPAGも使用できる。
表1.365nmで反応するPAGの構造
【表1】
【0024】
表1に列記されたPAGは、LED光源からなどの365nmの単色光に曝されると反応して、超酸を生じさせ得る。PAGは、水銀ランプ又は水銀-ハロゲンランプなどからの約200nm~約500nmの範囲の紫外-可視光に曝されても反応し得る。光化学硬化反応時間は、数分の1秒から約300秒まで、又はいくつかの場合さらに長く変わり得る。
【0025】
(熱酸発生剤(TAG))
本開示のエポキシ接着剤は、熱に曝されるとエポキシドの酸触媒重合を誘導する、触媒量(例えば、約0.05重量%~約3重量%)の1種以上のTAGをさらに含み得る。TAGは、非限定的に、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモネート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(ヘパトフルオロプロピル(hepatfluoropropyl))テトラフルオロホスフェート、トリス(ヘプタフルオロプロピル)トリフルオロホスフェート、トリフレート、及びペルフルオロ-1-ブタンスルホネートなど、超酸の共役塩基である対イオンを有する1種以上のジアリールヨードニウム塩を含み得る。例えば、好適なTAGは、p-(オクチルオキシフェニル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート(TAG-A)、(p-イソプロピルフェニル)(p-メチルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(TAG-B)、(p-イソプロピルフェニル)(p-メチルフェニル)ヨードニウムビス(ヘプタフルオロプロピル)テトラフルオロホスフェートと(p-イソプロピルフェニル)(p-メチルフェニル)ヨードニウムトリス(ヘプタフルオロプロピル)トリフルオロホスフェートの混合物(TAG-C)、ビス(4-メチルフェニル)ヨードニウムトリフレート(TAG-D)、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムペルフルオロ-1-ブタンスルホネート(TAG-E)、及び(p-イソブチルフェニル)(p-メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート(TAG-F)を含み得るがこれらに限定されない。上述のTAGの構造が表2に与えられる。しかし、表2に列記されていない他のTAGも使用できる。
表2.TAGの構造
【表2】
【0026】
熱の存在下で、ジアリールヨードニウム塩は、レドックス剤により還元されて、その後の分裂及び反応を経て、最終的にプロトンを遊離して、それが対イオンをプロトン化して、超酸が生じる。次いで、生じた超酸は重合性エポキシド(複数可)の酸触媒重合を誘導し得る。以下にさらに詳細に説明される通り、熱硬化に必要な温度及び反応時間は、レドックス剤の濃度及び本質並びに犠牲還元剤の存在及び濃度により著しく変わり得る。しかし、一般に、本明細書に開示されるTAGは、約70℃~約130℃の範囲の比較的低温で反応し得て、硬化時間は数分から数時間で変動し得る。しかし、反応温度及び時間は、レドックス剤の濃度及び本質、犠牲還元剤の濃度及び本質、並びに他の因子に基づいて、調整可能であり得る。
【0027】
水銀ランプ又は水銀-ハロゲンランプからなど高エネルギー紫外光が光化学硬化工程の間に使用される場合、表2のジアリールヨードニウム塩がPAGとしても作用し得ることがさらに留意される。そのような場合、エポキシ接着剤は、上述のPAGの非存在下でも二重硬化系として機能し得る。しかし、表1のPAGとは対照的に、表2のジアリールヨードニウム塩は、一般的に、365nm単色光に曝される場合低い効率で反応し得るので、365nm単色光がUV硬化工程に使用される場合反応性のPAGがより多く存在する必要がある。
【0028】
(レドックス剤)
本開示のエポキシ接着剤組成物は、熱の存在下でTAGを還元することが可能である、約0.01重量%~約1重量%の1種以上のレドックス剤をさらに含み得る。この目的のためのレドックス剤は、種々の銅(II)塩、鉄(III)塩、チタン(IV)塩、及びチタン(IV)化合物を含み得るが、これらに限定されない。特に興味深いのは、とりわけ、酢酸銅(II)、トリフルオロ酢酸銅(II)、イソ酪酸銅(II)、オクタン酸銅(II)、パルミチン酸銅(II)、ステアリン酸銅(II)、安息香酸銅(II)、銅(II)アセチルアセトナート、銅(II)トリフルオロアセチルアセトナート、銅(II)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、ナプテン酸(napthenate)銅(II)、トリフリン酸銅(II)、及びメタンスホン酸(methanesufonate)銅(II)などがあるが、これらに限定されない銅(II)塩である。出願者らは、先に列記された銅(II)塩が熱硬化反応を加速させるのに特に効果的で、いくつかの場合に熱硬化反応温度をわずか70℃にできることを見いだした。しかし、保存及び取り扱いを容易にするために、銅(II)塩の濃度は、本明細書に開示されるエポキシ接着剤組成物中で注意深く最適化される。具体的には、出願者らは、銅(II)塩濃度を比較的低い範囲(約0.01重量%~約1重量%)に保つことにより、銅(II)塩を含むエポキシ接着剤組成物を、比較的長い期間(約5日)室温で遮光された容器中で、著しいゲル化なしに保存できることを見いだした。
【0029】
好適な鉄(III)塩は、とりわけ、酢酸鉄(III)、鉄(III)アセチルアセトナート、及び酒石酸鉄(III)を含み得る。さらに、好適なチタン(IV)塩及びチタン化合物は、チタン(IV)イソプロポキシド、ビス(シクロペンタジエニル)チタン(IV)ビス(トリフルオロメタンスルホネート)、及びビス(η-5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタンを含み得るが、これらに限定されない。ビス(η-5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタンの構造は以下に示される。
【化1】
【0030】
参考のため、上述のレドックス剤のリストが表3に与えられる。さらに、表3のレドックス剤が、熱硬化反応の間に酸化された状態と還元された状態を循環するので、対応する還元された塩/化合物も熱硬化反応のレドックス剤として機能することも期待される。すなわち、表3に列記された対応する銅(I)塩、鉄(II)塩、及びチタン(III)塩/化合物も、好適なレドックス剤として機能し得る。
表3.エポキシ接着剤製剤のレドックス剤のリスト
【表3】
【0031】
全般的に銅(II)塩よりも活性が比較的低いが、上述の鉄(III)塩並びにチタン(IV)塩及び化合物を使用する熱硬化反応は、犠牲還元剤の添加により加速させることができる(以下のさらなる詳細を参照されたい)。
【0032】
(犠牲還元剤)
熱硬化工程におけるレドックス剤の循環を助けるために、本開示の二重硬化エポキシ接着剤は、任意に、約0.05%~約0.5%の1種以上の犠牲還元剤を含み得る。任意の犠牲還元剤は、他の公知の犠牲還元剤の中でも、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、及びパルミチン酸アスコルビルから選択され得る。以下にさらに説明される通り、出願者らは、そのような犠牲剤の添加が一般的に熱硬化速度の増加につながることを見いだした。
【0033】
(他の任意の添加剤)
種々の任意の添加剤を接着剤製剤に含めて、接着剤の加工及び/又は挙動を改善する所望の性質を付与できる。例えば、ヒュームドシリカを加えて、チキソトロピー性を付与でき、シランカップリング剤を加えて接着性を促進でき、且つ/又は界面活性剤を加えて湿潤性を改善できる。当業者に明らかな他のそのような添加剤も含めてよい。一般に、任意の添加剤は、約0.05重量%~約3重量%の範囲の比較的低濃度で存在し得るが、いくつかの場合にはより高い濃度又はより低い濃度も利用できる。
【0034】
(銅(II)塩の熱硬化に対する影響)
一組の試験において、出願者らは、エポキシ接着剤製剤の熱硬化の割合に対するステアリン酸銅(II)の影響を評価した。試験された製剤は、ビスフェノール-Aジグリシジルエーテル、脂環式エポキシ、PAG-F、TAG-B、エポキシシラン接着促進剤、及び様々な濃度のステアリン酸銅(II)を含んでいた。ステアリン酸銅(II)を欠くそのような1製剤がLEDからの5ジュール(J)の365nmの光に曝されると、製剤は固体で粘着性ではなく、エポキシ基は、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)により測定し、およそ70%重合していた。そのような結果は、365nm単色光による首尾よい光化学硬化を示す。
【0035】
種々の量のステアリン酸銅(II)(約0重量%~約0.2重量%)を含む一組の製剤の熱硬化速度が評価された。製剤は100℃の対流オーブン中で加熱され、各製剤のエポキシ重合の割合(又はエポキシ転化の%)がFT-IRにより評価された。評価の結果を図3にプロットする。わかる通り、ステアリン酸銅(II)がない状態では、3時間の100℃での加熱後にエポキシ転化は全く観察されなかった。しかし、低濃度のステアリン酸銅(II)(約0.1重量%~約0.2重量%)が存在すると、60%を超えるエポキシ転化が1時間の100℃での硬化後に観察された。およそ70%のエポキシ転化がこれらの製剤の完全な硬化と見なされることに留意される。したがって、低濃度の銅(II)塩すら、TAGにより誘導される熱硬化速度を大幅に加速させ得る。
【0036】
(熱硬化に対する犠牲還元剤の影響)
別の組の試験において、熱硬化速度に対する犠牲還元剤の影響が評価された。試験された製剤は、ビスフェノール-Aジグリシジルエーテル、脂環式エポキシ、約3重量%のTAG-A、レドックス剤としての約0.1重量%の鉄(III)アセチルアセトナート、及び0重量%~約1.0重量%の範囲の種々の濃度のパルミチン酸アスコルビルを含んでいた。323nmの光を主要な構成要素とする中圧水銀ランプからの10Jの紫外光が照射されると、パルミチン酸アスコルビルを含まない製剤は固体であり粘着性ではなく、およそ80%のエポキシ転化がFT-IRにより測定された。パルミチン酸アスコルビルを含まない同じ製剤がLEDからの10Jの365nmの光により照射されると、予測通り、低いエポキシ転化(約20%)が観察された。
【0037】
図4は、125℃で加熱された場合の、種々の濃度のパルミチン酸アスコルビルを有する製剤の熱硬化速度を示す。低レベルの硬化がパルミチン酸アスコルビルを加えない場合に観察されたが、エポキシ重合は0.1重量%ほどのパルミチン酸アスコルビルの添加により大いに加速された。さらに、1重量%のパルミチン酸アスコルビルが存在すると、エポキシ転化は、わずか1時間後に実際上完了した(すなわち約70%超が転化した)。そのため、本明細書に開示される二重硬化全エポキシ接着剤組成物における熱硬化速度が低濃度の犠牲還元剤の添加により増大され得ることがわかる。
【0038】
(レドックス剤の評価)
先に列記された銅(II)塩、鉄(III)塩、及びチタン(IV)塩/化合物が、熱硬化反応におけるレドックス剤としてのその有効性に関して評価された。試験された混合物は、脂環式エポキシド3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3',4'-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、約2重量%のTAG-A、及び種々の濃度(約0.1重量%~約1重量%)の表3のレドックス剤を含んでいた。製剤は、1~2時間の期間約100℃~約125℃の温度に加熱されて、エポキシ転化がFT-IRにより評価された。
【0039】
対照反応(レドックス剤を欠く)では、5%未満の重合(又はエポキシ転化)が125℃で2時間の加熱により観察された。対照的に、銅(II)塩を含む試験混合物では、良好なエポキシ転化が観察され、いくつかの場合80%を超えていた。良好なエポキシ転化(>40%)が、チタン(IV)塩/化合物を含む試験混合物でも125℃で2時間加熱された場合観察された。しかし、鉄(III)塩を含む試験混合物では、125℃で加熱された場合低いエポキシ転化が観察された。
【0040】
第2の組の評価を、表3に列記される鉄(III)塩及びチタン(IV)塩/化合物で実施した。試験混合物は、1%パルミチン酸アスコルビルが添加された以外上記と同じであった。FT-IRにより評価される通り、製剤が125℃で2時間加熱された場合、良好なエポキシ転化が鉄(III)塩及びチタン(IV)塩/化合物を含む試験製剤の全てで観察され、パルミチン酸アスコルビルの存在下での熱硬化の増大を示した。さらに、レドックス剤としての銅(II)アセチルアセトナート及びステアリン酸銅(II)と共に実施された試験では、パルミチン酸アスコルビルの存在下でのエポキシ転化の類似の増大が示された。
【0041】
上記結果に基づき、出願者らは、いくつかの場合に、犠牲剤が加えられて、反応速度を増大させ、且つ/又は加熱温度を下げ得るが、銅(II)塩、鉄(III)塩、又はチタン(IV)塩/化合物が、おそらく熱硬化反応の効果的なレドックス剤として作用すると結論づける。
【0042】
(室温安定性試験)
典型的には、二重硬化エポキシ接着剤の分配は、室温で、遮光されたシリンジ又は他の分配装置から実施される。したがって、接着剤製剤は、分配装置の使用の期間安定でなくてはならない(すなわち、著しい硬化(又はゲル化)の発生がない)。実際的な使用には、このいわゆる「ポットライフ」は、少なくとも1日でなくてはならず、数日が好ましい。粘度測定は、保存の間に硬化(又はゲル化)が起こっているのかどうかを検出する感度のいい方法である。本明細書に開示されるエポキシ接着剤組成物の室温安定性を評価するために、いくつかのエポキシ接着剤製剤が、本開示に従って調製され、25℃で保存され、粘度測定が数日にわたり定期的に実施された。3つの類似のエポキシ接着剤製剤の典型的な安定性結果が表3に示される。わかる通り、製剤は少なくとも3~4日間安定であり、4~5日の後にわずかな粘度増加を示し、ゲル化の開始を示唆している。このような試験に基づき、出願者らは、本開示のエポキシ接着剤製剤のほとんどが、遮光された容器に保存される場合、室温で少なくとも5日間(著しい硬化がなく)安定であり、いくつかが2週間以上安定であることを見いだした。
表4.エポキシ接着剤の室温安定性を評価するための粘度測定
【表4】
a粘度はセンチポイズ(cps)で与えられ、25±0.5℃で測定された。
【実施例
【0043】
(エポキシ接着剤製剤の例)
5つの例の実践的なエポキシ接着剤製剤を以下の表5~9に与える。
表5.実施例1
【表5】
表6.実施例2
【表6】
表7.実施例3
【表7】
表8.実施例4
【表8】
表9.実施例5
【表9】
【0044】
本開示の二重硬化全エポキシ接着剤を使用してカメラモジュールの鏡筒とレンズ筐体を結合する例のプロトコルを以下に与える。
【0045】
(例のプロトコル:)
4点の接着剤(それぞれ約0.5mg)をモジュールの筐体又は鏡筒上に分配する。鏡筒及び筐体を精密な整列ではめ合わせる。デバイスに、1平方センチメートルあたり100ミリワット(mW/cm2)の出力でLEDから365nmの光を約5~10秒間照射する。次いで、固定され整列されたモジュールを80~85℃で1~2時間硬化させる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
(産業上の利用可能性)
上記のことから、本明細書に開示される二重硬化全エポキシ接着剤組成物が、半導体及び光電子パッケージング用途などがあるがこれらに限定されない、部品の結合のために二重硬化接着剤に頼るいくつかの用途において利用可能性を有し得ることがわかる。より広く言うと、本明細書に開示されるエポキシ接着剤組成物は、アクティブアライメントの加工要件、陰になった領域の存在、及び/又は高温(例えば、約70℃超又は約90℃超)に対する感受性を有するそのような用途における利用可能性を見いだし得る。アクリレート化合物もビスマレイミド化合物も含まない全エポキシ接着剤の優れた性能性質から利益を導きだし得る他の用途も本開示の接着剤組成物の用途を見いだし得る。
【0047】
本明細書に開示される接着剤組成物は、光化学硬化と熱硬化の両方を可能にするPAG及びTAGを含む二重硬化全エポキシ接着剤である。出願者らは、光化学硬化性でも熱硬化性でもある他の全エポキシ接着剤組成物を全く知らない。そのため、本明細書に開示される全エポキシ接着剤は、現在の二重硬化ハイブリッド樹脂への依存を低減し得る。さらに、塩基性成分を含む縮合反応による重合を経る多くの熱硬化性エポキシ接着剤とは対照的に、本明細書に開示されるエポキシ接着剤は、熱硬化反応と光化学硬化反応の両方のために酸触媒重合を経る。さらに、本開示のエポキシ接着剤は、比較的低温(約70℃~約130℃)で熱硬化性であるので、温度に敏感な部品を有する多くの用途で使用するのに好適となっている。低温熱の存在下で酸触媒重合を経るエポキシ樹脂組成物が数例従来技術において公知であるが、そのような組成物は反応性が高く、室温で加工できる前に硬化/ゲル化することが多い。対照的に、本明細書に開示されるエポキシ接着剤組成物は、室温硬化速度を緩徐化し、貯蔵安定性を増加させるための、注意深く最適化された濃度のレドックス剤を有する。より具体的には、出願者らは、レドックス剤の濃度を比較的低い範囲に限定することにより、組成物が室温で数日以上保存可能であり、それにより取り扱いが大いに容易になることを見いだした。
本件出願は、以下の構成の発明を提供する。
(構成1)
少なくとも約93重量%の1種以上の重合性エポキシド;
紫外光又は可視光に曝されると該重合性エポキシドの酸触媒重合を誘導するように構成されている触媒量の光酸発生剤(PAG);
約0.01重量%~約1重量%のレドックス剤;及び
約70℃以上の温度に曝されると該レドックス剤の存在下で該重合性エポキシドの酸触媒重合を誘導するように構成されている触媒量の熱酸発生剤(TAG)
を含む、光化学硬化性でも熱硬化性でもある二重硬化全エポキシ接着剤。
(構成2)
レドックス剤が銅(II)塩である、構成1記載の二重硬化全エポキシ接着剤。
(構成3)
前記レドックス剤が、酢酸銅(II)、トリフルオロ酢酸銅(II)、イソ酪酸銅(II)、オクタン酸銅(II)、パルミチン酸銅(II)、ステアリン酸銅(II)、安息香酸銅(II)、銅(II)アセチルアセトナート、銅(II)トリフルオロアセチルアセトナート、銅(II)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、ナプテン酸(napthenate)銅(II)、トリフリン酸銅(II)、及びメタンスルホン酸銅(II)からなる群から選択される、構成2記載の二重硬化全エポキシ接着剤。
(構成4)
前記PAGが、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムビス(ヘプタフルオロプロピル)テトラフルオロホスフェートとジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムトリス(ヘプタフルオロプロピル)トリフルオロホスフェートの混合物、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロアンチモネートとビス(4-ジフェニルチオフェニル)スルフィドビス(ヘキサフルオロアンチモネート)の混合物、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロホスフェートとビス(4-ジフェニルチオフェニル)スルフィドビス(ヘキサフルオロホスフェート)の混合物、トリス[4-(4-アセチルフェニルチオ)フェニル]スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリス[4-(4-アセチルフェニルチオ)フェニル]スルホニウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、及び2,3-ジヒドロ-α-(2-メチルフェニル)-2-[[[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ]イミノ]-チオフェンアセトニトリルからなる群から選択される、構成2記載の二重硬化全エポキシ接着剤。
(構成5)
前記PAGが365nmの光に曝されると酸触媒重合を誘導する、構成4記載の二重硬化全エポキシ接着剤。
(構成6)
前記TAGが、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモネート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(ヘプタフルオロプロピル)テトラフルオロホスフェート、トリス(ヘプタフルオロプロピル)トリフルオロホスフェート、トリフレート、及びペルフルオロ-1-ブタンスルホネートからなる群から選択される対イオンを有するジアリールヨードニウム塩である、構成4記載の二重硬化全エポキシ接着剤。
(構成7)
前記TAGが、p-(オクチルオキシフェニル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、(p-イソプロピルフェニル)(p-メチルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、(p-イソプロピルフェニル)(p-メチルフェニル)ヨードニウムビス(ヘプタフルオロプロピル)テトラフルオロホスフェートと(p-イソプロピルフェニル)(p-メチルフェニル)ヨードニウムトリス(ヘプタフルオロプロピル)トリフルオロホスフェートの混合物、ビス(4-メチルフェニル)ヨードニウムトリフレート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムペルフルオロ-1-ブタンスルホネート、及び(p-イソブチルフェニル)(p-メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェートからなる群から選択される、構成6記載の二重硬化全エポキシ接着剤。
(構成8)
ヒュームドシリカ、シランカップリング剤、及び界面活性剤から選択される添加剤をさらに含む、構成6記載の二重硬化全エポキシ接着剤。
(構成9)
約0.05重量%~約1.0重量%の犠牲還元剤をさらに含む、構成6記載の二重硬化全エポキシ接着剤。
(構成10)
前記犠牲還元剤が、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、及びパルミチン酸アスコルビルからなる群から選択される、構成9記載の二重硬化全エポキシ接着剤。
(構成11)
少なくとも約93重量%の1種以上の重合性エポキシド;
紫外光又は可視光に曝されると該重合性エポキシドの酸触媒重合を誘導するように構成されている触媒量の光酸発生剤(PAG);
銅(II)塩、鉄(III)塩、チタン(IV)塩、又はチタン(IV)化合物からなる群から選択される約0.01重量%~約1重量%のレドックス剤;
約70℃~約130℃の範囲の温度に曝されると該レドックス剤の存在下で該重合性エポキシドの酸触媒重合を誘導するように構成されている触媒量の熱酸発生剤(TAG);及び
約0.05重量%~約1.0重量%の犠牲還元剤
を含む、光化学硬化性でも熱硬化性でもある二重硬化全エポキシ接着剤。
(構成12)
前記犠牲剤が、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、及びパルミチン酸アスコルビルからなる群から選択される、構成11記載の二重硬化全エポキシ接着剤。
(構成13)
前記PAGが、プロトン化されると超酸を形成する対イオンを有するスルホニウム塩又は加水分解して超酸を形成するスルホン酸エステルである、構成12記載の二重硬化全エポキシ接着剤。
(構成14)
前記PAGが、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムビス(ヘプタフルオロプロピル)テトラフルオロホスフェートとジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムトリス(ヘプタフルオロプロピル)トリフルオロホスフェートの混合物、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロアンチモネートとビス(4-ジフェニルチオフェニル)スルフィドビス(ヘキサフルオロアンチモネート)の混合物、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロホスフェートとビス(4-ジフェニルチオフェニル)スルフィドビス(ヘキサフルオロホスフェート)の混合物、トリス[4-(4-アセチルフェニルチオ)フェニル]スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリス[4-(4-アセチルフェニルチオ)フェニル]スルホニウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、及び2,3-ジヒドロ-α-(2-メチルフェニル)-2-[[[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ]イミノ]-チオフェンアセトニトリルからなる群から選択される、構成13記載の二重硬化全エポキシ接着剤。
(構成15)
前記TAGが、プロトン化されると超酸を形成する対イオンを有するジアリールヨードニウム塩である、構成14記載の二重硬化全エポキシ接着剤。
(構成16)
前記TAGが、p-(オクチルオキシフェニル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、(p-イソプロピルフェニル)(p-メチルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、(p-イソプロピルフェニル)(p-メチルフェニル)ヨードニウムビス(ヘプタフルオロプロピル)テトラフルオロホスフェートと(p-イソプロピルフェニル)(p-メチルフェニル)ヨードニウムトリス(ヘプタフルオロプロピル)トリフルオロホスフェートの混合物、ビス(4-メチルフェニル)ヨードニウムトリフレート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムペルフルオロ-1-ブタンスルホネート、及び(p-イソブチルフェニル)(p-メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェートからなる群から選択される、構成15記載の二重硬化全エポキシ接着剤。
(構成17)
前記レドックス剤が、酢酸鉄(III)、鉄(III)アセチルアセトナート、酒石酸鉄(III)、チタン(IV)イソプロポキシド、及びビス(η-5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタンからなる群から選択される鉄(III)塩、チタン(IV)塩、又はチタン(IV)化合物である、構成15記載の二重硬化全エポキシ接着剤。
(構成18)
前記レドックス剤が、酢酸銅(II)、トリフルオロ酢酸銅(II)、イソ酪酸銅(II)、オクタン酸銅(II)、パルミチン酸銅(II)、ステアリン酸銅(II)、安息香酸銅(II)、銅(II)アセチルアセトナート、銅(II)トリフルオロアセチルアセトナート、銅(II)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、ナプテン酸銅(II)、トリフリン酸銅(II)、及びメタンスルホン酸銅(II)からなる群から選択される銅(II)塩である、構成15記載の二重硬化全エポキシ接着剤。
(構成19)
前記TAGが約70℃の温度に曝されると前記重合性エポキシドの酸触媒重合を誘導する、構成18記載の二重硬化全エポキシ接着剤。
(構成20)
少なくとも約93重量%の1種以上の重合性エポキシド;
紫外光又は可視光に曝されると該重合性エポキシドの酸触媒重合を誘導するように構成されている触媒量の光酸発生剤(PAG);
約0.01重量%~約0.2重量%の銅(II)塩;及び
約70℃以上の温度に曝されると該銅(II)塩の存在下で該重合性エポキシドの酸触媒重合を誘導するように構成されている触媒量の熱酸発生剤(TAG)
を含み、遮光された容器中で室温で保存される場合少なくとも約5日間安定である、光化学硬化性でも熱硬化性でもある二重硬化全エポキシ接着剤。

図1
図2
図3
図4