(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】ポリアミド用リン含有コモノマー
(51)【国際特許分類】
C08G 69/42 20060101AFI20220708BHJP
C08L 77/06 20060101ALI20220708BHJP
【FI】
C08G69/42
C08L77/06
(21)【出願番号】P 2019519406
(86)(22)【出願日】2017-10-13
(86)【国際出願番号】 US2017056549
(87)【国際公開番号】W WO2018071790
(87)【国際公開日】2018-04-19
【審査請求日】2020-09-09
(31)【優先権主張番号】201621035136
(32)【優先日】2016-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】520036260
【氏名又は名称】パフォーマンス・ポリアミデス,エスアエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】グルラジャン・パッドマナバン
(72)【発明者】
【氏名】カウスタブ・チャクラボルティー
(72)【発明者】
【氏名】マユリ・シャイウェイル
(72)【発明者】
【氏名】イマニ・ジョーンズ
(72)【発明者】
【氏名】ケシャブ・エス・ゴータム
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-270281(JP,A)
【文献】英国特許第01048097(GB,B)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 69
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
-[OC-Ar-O-P(=O)(-Ar)-O-Ar-CO-NH-R-NH]- (I)
の少なくとも1種の繰り返し単位を含むポリアミドであって、
式中、Arがアリール
及びアリーレ
ンからなる群から独立して選択され、
Rが共有結合、又は飽和若しくは不飽和の脂肪族、飽和若しくは不飽和の環状脂肪族、芳香族、アリール脂肪族、及びアルキル芳香族からなる群から選択される二価の炭化水素系基を表す、ポリアミド。
【請求項2】
Rが、水素化脂肪族、環状脂肪族、芳香族、及び脂環式基からなる群から選択される、請求項1に記載のポリアミド。
【請求項3】
Rがメタ-キシレレニル部位及びパラ-キシレレニル部位からなる群から選択される、請求項1又は2に記載のポリアミド。
【請求項4】
Arがフェニル基又はフェニレン基である、請求項1~
3のいずれか1項に記載のポリアミド。
【請求項5】
式I:
-[OC-フェニレン-O-P(=O)(-フェニル)-O-フェニレン-CO-NH-R-NH]- (I)
の少なくとも1種の繰り返し単位を含むポリアミドであって、
式中、Rが共有結合、又は飽和若しくは不飽和の脂肪族、飽和若しくは不飽和の環状脂肪族、芳香族、アリール脂肪族、及びアルキル芳香族からなる群から選択される二価の炭化水素系基を表す、請求項1~
4のいずれか1項に記載のポリアミド。
【請求項6】
前記ポリアミドが式Iの繰り返し単位のみからなるホモポリアミドである、請求項1及び
5のいずれか1項に記載のポリアミド。
【請求項7】
前記ポリアミドが式(I)の繰り返し単位とは異なる他の繰り返し単位を更に含むコポリアミドであり、前記繰り返し単位がジカルボン酸、ジアミン、アミノ酸、及び/又はラクタムなどのコモノマー由来である、請求項1~
5のいずれか1項に記載のポリアミド。
【請求項8】
前記ポリアミドが、モノマー単位の残基の合計量を基準として、0.1~100モル%、好ましくは0.2~50モル%、より好ましくは0.5~25モル%の式Iの繰り返し単位を含む、請求項1~
7のいずれか1項に記載のポリアミド。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか1項に記載のポリアミドの合成方法であって、
以下の式(II):
X
1OOC-Ar-O-P(=O)(-Ar)-O-Ar-COOX
2 (II)
(式中、X
1及びX
2は水素、アルキル基、又はハロゲン基から独立して選択され、Arは請求項1で定義した通りである)
の少なくとも1種のジカルボン酸と、
以下の式(III):
H
2N-R-NH
2 (III)
(式中のRは請求項1で定義した通りである)
の少なくとも1種のジアミンと、
の間で重縮合反応させてポリアミドを得ることを含む、方法。
【請求項10】
前記方法が、重縮合反応媒体中に他のモノマーを添加することも含む、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記モノマーが、ジカルボン酸、ジアミン、アミノ酸、及び/又はラクタムからなる群から選択される、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記方法が、モノマー単位の残基の合計量を基準として、0.1~60モル%、好ましくは0.2~40モル%、より好ましくは0.5~25モル%の式(II)のジカルボン酸を添加することを含む、請求項
9~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリアミドが、式中のArがフェニル又はフェニレンである式(II)のジカルボン酸と、式中のRがキシレンである式(III)のジアミンとの間の重縮合反応により合成される、請求項
9~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリアミドが、式中のArがフェニル又はフェニレンである式(II)のジカルボン酸と、式中のRがキシレンである式(III)のジアミンと、アジピン酸との間の重縮合反応により合成される、請求項
9~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~
8のいずれか1項に記載のポリアミドと、少なくとも1種の強化フィラー及び/又は少なくとも1種の他の添加剤とを含有するポリアミド組成物。
【請求項16】
少なくとも1種の他のポリアミドも含有する、請求項
15に記載のポリアミド組成物。
【請求項17】
前記他のポリアミドが、好ましくは以下の(コ)ポリアミド:ポリアミド6、ポリアミド7、ポリアミド66、ポリアミド10、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド69、ポリアミド510、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド614、ポリアミド1010、ポリアミド1012、ポリアミド1014、ポリアミド1018、ポリアミド1212、ポリアミド46、ポリアミド618、ポリアミド636、ポリアミド9T、ポリアミドMXD6、ポリアミド66/6T、ポリアミド66/MPMD.T、ポリアミド66/6I、並びにこれらのポリアミドを主体とするブレンド物及びコポリマーからなる群から選択される、請求項
16に記載のポリアミド組成物。
【請求項18】
- 式中のArがフェニル又はフェニレンである式(II)のジカルボン酸と式中のRがキシレンである式(III)のジアミンとから合成されるポリアミドと、ポリアミド66とのブレンド物;
- 式中のArがフェニル又はフェニレンである式(II)のジカルボン酸と式中のRがキシレンである式(III)のジアミンとアジピン酸とから合成されるコポリアミドと、ポリアミド66とのブレンド物;
- 式中のArがフェニル又はフェニレンである式(II)のジカルボン酸と式中のRがキシレンである式(III)のジアミンとから合成されるポリアミドと、ポリアミド610とのブレンド物;又は
- 式中のArがフェニル又はフェニレンである式(II)のジカルボン酸と式中のRがキシレンである式(III)のジアミンとアジピン酸とから合成されるコポリアミドと、ポリアミド610とのブレンド物;
である、請求項
15~17のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【請求項19】
少なくとも1種の難燃性添加剤を含有する、請求項
15~18のいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【請求項20】
式I:
-[OC-Ar-O-P(=O)(-Ar)-O-Ar-CO-NH-R-NH]-
式(I)
(式中、Arはアリール
及びアリーレ
ンからなる群から独立して選択され、Rは、共有結合、又は、飽和若しくは不飽和の脂肪族、飽和若しくは不飽和の環状脂肪族、芳香族、アリール脂肪族、脂環式、及びアルキル芳香族からなる群から選択される二価の炭化水素系基を表す)
の少なくとも1種の繰り返し単位を含むポリアミドと、少なくとも1種の強化フィラー及び/又は少なくとも1種の他の添加剤とをブレンドすることによる、請求項
15~19のいずれか1項に記載のポリアミド組成物の調製方法。
【請求項21】
請求項1~
8のいずれか1項に記載のポリアミドから得られる物品であって、糸、繊維、自動車部品、及びワイヤ&ケーブル部品からなる群から選択される、物品。
【請求項22】
請求項
15~19のいずれか1項に記載のポリアミド組成物から得られる物品であって、糸、繊維、自動車部品、及びワイヤ&ケーブル部品からなる群から選択される、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の主題は、概してポリアミド、ポリアミドから製造された物品、及びその製造方法に関する。
【0002】
本出願は、0216年10月14日に出願されたインド仮特許出願第201621035136号に基づく優先権を主張するものであり、この出願の全内容はあらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
不利な熱条件下で使用される可能性がある繊維又は物品の熱安定性及び難燃特性を改善することが大いに必要とされている。上述の特性を改善するための主な手法の1つは添加剤を使用することである。しかしながら、これらの添加剤は時間がたつにつれてポリマーから浸出して環境を汚染する場合がある。
【0004】
中国特許第103122501号明細書には、ハロゲンを主体とする難燃剤を使用することの欠点が記載されている。ハロゲンを主体とする難燃剤はポリマーの色の変化を引き起こし、これにより光の性能が低下し、そして最も重要なことにこれは燃焼プロセス中に有毒ガスを生成し、それによって大気汚染を引き起こす。
【0005】
リン化合物は、熱可塑性ポリマーの可燃性を低下させるために広く使用されている。米国特許第4032517号明細書は、それらのポリマー鎖の必須部分として0.5~7.5重量%のリンを有するコポリアミドを教示している。しかしながら、使用されるリン含有反応性コモノマーはより高価であり、そのため商業的な使用には適さない。
【0006】
リン含有化合物のいくつかの最も重要な他の欠点は、不活性な性質のリン添加剤による不十分な染着性である。
【0007】
更に、従来の実務では、研究の多くはポリエステル系繊維について行われてきた。しかしながら、米国特許第3960686号明細書は、これらの種類の繊維が生地が着用された時に生地から引き出される繊維により引き起こされる、いわゆるピリング効果の問題に直面することを教示している。結果として、生地表面は見た目が悪くなり、ひいては衣類の品質が低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そのため、優れた難燃性を有する、安価であるべき経済的なモノマーを提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、式I:
-[OC-Ar-O-P(=O)(-Ar)-O-Ar-CO-NH-R-NH]-
式(I)
の少なくとも1種の繰り返し単位を含むポリアミドであって、
式中、Arがアリール、アリーレン、ヘテロアリール、及び炭素環基からなる群から独立して選択され、Rが共有結合、又は飽和若しくは不飽和の脂肪族、飽和若しくは不飽和の環状脂肪族、芳香族、アリール脂肪族、及びアルキル芳香族からなる群から選択される二価の炭化水素系基を表す、ポリアミドに関する。
【0010】
本発明の主題のこれら及び他の特徴、態様、及び利点は、以下の記載及び添付の請求項を参照することによってより深く理解されるであろう。この概要は単純化された形態での概念の一部を紹介するために提供されている。この概要は請求項に記載の主題の重要な特徴又は本質的な特徴を特定することを意図するものではなく、また請求項に記載の主題の範囲を限定するために使用することを意図するものでもない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】2重量%のP
3Cが配合されたMXD6のTGAデータを示す。
【
図2】5重量%のP3Cが配合されたMXD6のTGAデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
当業者であれば、本開示が具体的に記載されたもの以外の別形態及び改良形態に適用されることを認識するであろう。本開示は全てのこのような変形形態及び改良形態を包含することが理解されなければならない。また、本開示は、本明細書において言及されるか又は示される全てのこのような工程、特徴、組成物及び化合物を個々に又は一括して、並びにこのような工程又は特徴のうちの任意の又はより多くの任意の及び全ての組み合わせも包含する。
【0013】
定義
参照により本明細書に組み込まれる任意の特許、特許出願、及び刊行物の開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合は、本記載が優先するものとする。
【0014】
便宜上、本開示のさらなる説明の前に、明細書、及び実施例において使用される特定の用語をここに記載する。これらの定義は、開示の他の部分を考慮して読まれ、且つ当業者によるように理解されるべきである。本明細書において使用される用語は、当業者に認識され公知である意味を有するが、しかしながら、便宜上及び完全性のために、特定の用語及びそれらの意味が以下に示される。
【0015】
冠詞「a」、「an」及び「the」は、冠詞の文法的対象の1つ又は2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。
【0016】
用語「及び/又は」は、「及び」、「又は」の意味並びにこの用語に関連する要素の他の可能な組み合わせを全て包含する。
【0017】
用語「含む(comprise)」及び「含む(comprising)」は、包括的な、開いた意味において使用され、付加的な要素が包含されてもよいことを意味する。本明細書の全体にわたり、文脈が他に必要としない限り「含む(comprise)」という語、及び変形形態、例えば「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」は、記載された要素若しくは工程又は要素若しくは工程の群を包含するが任意の他の要素若しくは工程又は要素若しくは工程の群を排除するものではないことを意味すると理解される。
【0018】
用語「包含する(including)」は、「包含するが、これらに限定されない(including but not limited to)」を意味するように使用される。「包含する(including)」及び「包含するが、これらに限定されない(including but not limited to)」は互換的に使用される。
【0019】
用語「の間の(between)」は、限界点を含んでいると理解されるべきである。
【0020】
用語「アリール」は、単環(例えばフェニル)もしくは多環(例えばビフェニル)、又は多環縮合(縮)環(例えばナフチル又はアントラニル)を有する6~18個の炭素原子の芳香族炭素環基を指す。また、アリール基は、多環、例えばテトラリンを形成するように、芳香族でない脂肪族環又は複素環と縮合するか又は架橋されてもよい。「アリーレン」基は、アリール基の二価類似体である。
【0021】
用語「脂肪族」は、1~18個の炭素原子を有する置換又は無置換の飽和アルキル鎖、1~18個の炭素原子を有する置換又は無置換のアルケニル鎖、1~18個の炭素原子を有する置換又は無置換のアルキニル鎖を指す。
【0022】
本明細書で使用される「アルキル」基には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなどの直鎖アルキル基;シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、及びシクロオクチルなどの環状アルキル基(又は「シクロアルキル」又は「脂環式」又は「炭素環式」基);イソプロピル、tert-ブチル、sec-ブチル、及びイソブチルなどの分岐鎖アルキル基;並びにアルキル置換シクロアルキル基及びシクロアルキル置換アルキル基などのアルキル置換アルキル基;を含む、1つ以上の炭素原子を有する飽和炭化水素が含まれる。用語「脂肪族基」は、1~18個の間の炭素原子を典型的に有する、直鎖又は分岐鎖を特徴とする有機部分が含まれる。複雑な構造においては、鎖は分岐又は橋かけしていてもよく、あるいは架橋していてもよい。脂肪族基には、アルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基が含まれる。
【0023】
本明細書で使用される「アルケニル」又は「アルケニル基」は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含有する、直鎖又は分岐状であり得る脂肪族炭化水素ラジカルを指す。アルケニル基の例には、これらに限定されるものではないが、エテニル、プロペニル、n-ブテニル、i-ブテニル、3-メチルブト-2-エニル、n-ペンテニル、ヘプテニル、オクテニル、デセニル等が含まれる。用語「アルキニル」は、エチニルなどの少なくとも1つの三重炭素-炭素結合を有する直鎖又は分岐鎖の炭化水素基を指す。
【0024】
用語「アリール脂肪族」は、脂肪族に共有結合しているアリール基を指し、この中アリール及び脂肪族は本明細書に定義されている。
【0025】
用語「脂環式」は、部分的に不飽和であってもよい単環式環又は多環縮合環を有する、3~20個の炭素原子の炭素環基を指し、この中のアリール及び脂肪族は本明細書で定義されている。用語「複素環基」には、環中の炭素原子の1個以上が炭素以外の元素(例えば窒素、硫黄、又は酸素)炭素環基に類似した閉環構造が含まれる。複素環基は飽和であっても不飽和であってもよい。
【0026】
用語「ヘテロアリール」は、少なくとも1つの環内に(2つ以上の環が存在する場合)、酸素、窒素、及び硫黄から選択されるヘテロ原子を有する3~10個の炭素原子を有する芳香族環基を指す。
【0027】
本明細書で使用される有機基に関する専門用語「(Cn~Cm)」(式中、n及びmはそれぞれ整数である)は、この基が、基当たりn個の炭素原子からm個の炭素原子を含有してもよいことを示す。
【0028】
比、濃度、量、及びその他の数値データは本明細書において範囲形式で示される場合がある。このような範囲形式は単に便宜上及び簡潔さのために使用され、範囲の限界点として明示的に列挙される数値を包含するだけでなく、それぞれの数値及び部分範囲が明示的に列挙されるかのようにその範囲内に包含される全ての個々の数値又は部分範囲を包含するように柔軟に解釈されると理解されなければならない。例えば、約120℃~約150℃の温度範囲は、約120℃~約150℃の明示的に列挙された限界点を包含するだけでなく、125℃~145℃、130℃~150℃等の部分範囲、並びに例えば122.2℃、140.6℃、及び141.3℃など、特定の範囲内の小数の量を含む個々の量も包含するように解釈されるべきである。
【0029】
上述したように、従来の実務では、使用される難燃剤の大部分は添加剤である。そのため、これらは時間がたつにつれてポリマーから浸出して環境を汚染する場合がある。ポリマー骨格内に共有結合により組み込まれた反応性コモノマーを使用すると、浸出に関連する問題を克服することができる。かくして、本開示は、比較的安価であり、広く入手可能な安価な出発材料から合成することができるモノマーを提供する。同じ目的のために必要とされる添加剤の量と比較してより少ない量で使用された場合であっても、モノマーは優れた難燃性をもたらす。
【0030】
ある実施形態では、本開示は、ポリマーの難燃性を改善するための、ポリマー骨格に化学的に組み込まれた有機リン化合物コモノマーの使用に関する。
【0031】
ある実施形態では、本開示は、式I:
-[OC-Ar-O-P(=O)(-Ar)-O-Ar-CO-NH-R-NH]-
式(I)
の少なくとも1種の繰り返し単位を含むポリアミドであって、
式中、Arがアリール、アリーレン、ヘテロアリール、及び炭素環基からなる群から独立して選択され、Rが共有結合、又は飽和若しくは不飽和の脂肪族、飽和若しくは不飽和の環状脂肪族、芳香族、アリール脂肪族、脂環式、及びアルキル芳香族からなる群から選択される二価の炭化水素系基を表す、ポリアミドに関する。
【0032】
Arは、特に、式(I)の繰り返し単位主鎖におけるその位置に応じてアリール基であってもアリーレン基であってもよい。例えば、Arが芳香族炭化水素由来のラジカルである場合、これはフェニル基であってもフェニレン基であってもよい。
【0033】
別の実施形態では、本開示は、式I:
-[OC-Ar-O-P(=O)(-Ar)-O-Ar-CO-NH-R-NH]-
式(I)
の少なくとも1種の繰り返し単位を含むポリアミドであって、
式中、Arがアリール、アリーレン、ヘテロアリール、及び炭素環基からなる群から独立して選択され、Rが水素化脂肪族、環状脂肪族、芳香族、及び脂環式基からなる群から選択される、ポリアミドに関する。
【0034】
別の実施形態では、Rは、好ましくは水素化脂肪族、環状脂肪族、芳香族、及び脂環式基からなる群から選択することができる。Rは、特には、メタ-キシレレニル部位及びパラ-キシレレニル部位からなる群から選択されてもよい。
【0035】
ある実施形態では、Arは、好ましくは、アリール、アリーレン、又はヘテロアリール、又はC4~C18の炭素原子を有する炭素環基である。Arは、好ましくはフェニル基又はフェニレン基である。
【0036】
式Iの繰り返し単位は、例えば:
-[OC-フェニレン-O-P(=O)(-フェニル)-O-フェニレン-CO-NH-R-NH]-
(式中、Rは、共有結合、又は、飽和若しくは不飽和の脂肪族、飽和若しくは不飽和の環状脂肪族、芳香族、アリール脂肪族、脂環式、及びアルキル芳香族からなる群から選択される二価の炭化水素系基を表す)
であってもよい。
【0037】
別の実施形態では、本開示は、式I:
-[OC-Ar-O-P(=O)(-Ar)-O-Ar-CO-NH-R-NH]-
式(I)
の少なくとも1種の繰り返し単位を含むポリアミドであって、
式中、Arがアリール、アリーレン、ヘテロアリール、及び炭素環基からなる群から独立して選択され、Rがメタ-キシレレニル部位及びパラ-キシレレニル部位からなる群から選択される、ポリアミドに関する。
【0038】
ある実施形態では、本開示は、式I:
-[OC-Ar-O-P(=O)(-Ar)-O-Ar-CO-NH-R-NH]-
式(I)
の少なくとも1種の繰り返し単位を含むポリアミドであって、
式中、Arがアリール又はアリーレンであり、Rが、共有結合、又は、飽和若しくは不飽和の脂肪族、飽和若しくは不飽和の環状脂肪族、芳香族、アリール脂肪族、脂環式、及びアルキル芳香族からなる群から選択される二価の炭化水素系基を表す、ポリアミドに関する。
【0039】
ある実施形態では、本開示は、式I:
-[OC-Ar-O-P(=O)(-Ar)-O-Ar-CO-NH-R-NH]-
式(I)
の少なくとも1種の繰り返し単位を含むポリアミドであって、
式中、Arがヘテロアリール基であり、Rが、共有結合、又は、飽和若しくは不飽和の脂肪族、飽和若しくは不飽和の環状脂肪族、芳香族、アリール脂肪族、脂環式、及びアルキル芳香族からなる群から選択される二価の炭化水素系基を表す、ポリアミドに関する。
【0040】
ある実施形態では、本開示は、式I:
-[OC-Ar-O-P(=O)(-Ar)-O-Ar-CO-NH-R-NH]-
式(I)
の少なくとも1種の繰り返し単位を含むポリアミドであって、
式中、ArがC4~C18の炭素原子を有する炭素環基であり、Rが、共有結合、又は、飽和若しくは不飽和の脂肪族、飽和若しくは不飽和の環状脂肪族、芳香族、アリール脂肪族、脂環式、及びアルキル芳香族からなる群から選択される二価の炭化水素系基を表す、ポリアミドに関する。
【0041】
ある実施形態では、本開示は、式I:
-[OC-Ar-O-P(=O)(-Ar)-O-Ar-CO-NH-R-NH]-
式(I)
の少なくとも1種の繰り返し単位を含むポリアミドであって、
式中、Arがフェニル基又はフェニレン基であり、Rが、共有結合、又は、飽和若しくは不飽和の脂肪族、飽和若しくは不飽和の環状脂肪族、芳香族、アリール脂肪族、脂環式、及びアルキル芳香族からなる群から選択される二価の炭化水素系基を表す、ポリアミドに関する。
【0042】
ある実施形態では、本開示は、式I:
-[OC-Ar-O-P(=O)(-Ar)-O-Ar-CO-NH-R-NH]-
式(I)
の少なくとも1種の繰り返し単位を含むポリアミドであって、
式中、Arがアリール又はアリーレンであり、Rが水素化脂肪族、環状脂肪族、芳香族、及び脂環式基からなる群から選択される、ポリアミドに関する。
【0043】
式I:ある実施形態では、本開示は、
-[OC-Ar-O-P(=O)(-Ar)-O-Ar-CO-NH-R-NH]-
式(I)
の少なくとも1種の繰り返し単位を含むポリアミドであって、
式中、Arがヘテロアリール基であり、Rが水素化脂肪族、環状脂肪族、芳香族、及び脂環式基からなる群から選択される、ポリアミドに関する。
【0044】
式I:ある実施形態では、本開示は、
-[OC-Ar-O-P(=O)(-Ar)-O-Ar-CO-NH-R-NH]-
式(I)
の少なくとも1種の繰り返し単位を含むポリアミドであって、
式中、ArがC4~C18の炭素原子を有する炭素環基であり、Rが水素化脂肪族、環状脂肪族、芳香族、及び脂環式基からなる群から選択される、ポリアミドに関する。
【0045】
ある実施形態では、本開示は、式I:
-[OC-Ar-O-P(=O)(-Ar)-O-Ar-CO-NH-R-NH]-
式(I)
の少なくとも1種の繰り返し単位を含むポリアミドであって、
式中、Arがフェニル基又はフェニレン基であり、Rが水素化脂肪族、環状脂肪族、芳香族、及び脂環式基からなる群から選択される、ポリアミドに関する。
【0046】
ある実施形態では、本開示は、式I:
-[OC-Ar-O-P(=O)(-Ar)-O-Ar-CO-NH-R-NH]-
式(I)
の少なくとも1種の繰り返し単位を含むポリアミドであって、
式中、Arがアリール又はアリーレンであり、Rがメタ-キシレレニル部位及びパラ-キシレレニル部位からなる群から選択される、ポリアミドに関する。
【0047】
ある実施形態では、本開示は、式I:
-[OC-Ar-O-P(=O)(-Ar)-O-Ar-CO-NH-R-NH]-
式(I)
の少なくとも1種の繰り返し単位を含むポリアミドであって、
式中、Arがヘテロアリール基であり、Rがメタ-キシレレニル部位及びパラ-キシレレニル部位からなる群から選択される、ポリアミドに関する。
【0048】
ある実施形態では、本開示は、式I:
-[OC-Ar-O-P(=O)(-Ar)-O-Ar-CO-NH-R-NH]-
式(I)
の少なくとも1種の繰り返し単位を含むポリアミドであって、
式中、ArがC4~C18の炭素原子を有する炭素環基であり、Rがメタ-キシレレニル部位及びパラ-キシレレニル部位からなる群から選択される、ポリアミドに関する。
【0049】
式I:ある実施形態では、本開示は、
-[OC-Ar-O-P(=O)(-Ar)-O-Ar-CO-NH-R-NH]-
式(I)
の少なくとも1種の繰り返し単位を含むポリアミドであって、
式中、Arがフェニル基又はフェニレン基であり、Rがメタ-キシレレニル部位及びパラ-キシレレニル部位からなる群から選択される基である、ポリアミドに関する。
【0050】
本発明のポリアミドは、ホモポリアミドであってもコポリアミドであってもよい。
【0051】
本発明のポリアミドは、特にはホモポリアミドであってもよく、その場合式Iの繰り返し単位のみからなる。
【0052】
本発明のポリアミドは、コポリアミドであってもよく、その場合、式(I)の単位とは異なる他の繰り返し単位を更に含み、前記繰り返し単位はジカルボン酸、ジアミン、アミノ酸、及び/又はラクタムなどのコモノマー由来である。
【0053】
ある実施形態では、本開示は、式I:
-[OC-Ar-O-P(=O)(-Ar)-O-Ar-CO-NH-R-NH]-
式(I)
(式中、Arはアリール、アリーレン、ヘテロアリール、及び炭素環基からなる群から独立して選択され、Rは、共有結合、又は、飽和若しくは不飽和の脂肪族、飽和若しくは不飽和の環状脂肪族、芳香族、アリール脂肪族、脂環式、及びアルキル芳香族からなる群から選択される二価の炭化水素系基を表す)
の少なくとも1種の繰り返し単位を含むポリアミドであって、
式(I)の単位とは異なる別の繰り返し単位を更に含むコポリアミドであり、前記繰り返し単位がジカルボン酸、ジアミン、アミノ酸、及び/又はラクタムなどのコモノマー由来である、ポリアミドに関する。
【0054】
本発明は、特には式I:
-[OC-Ar-O-P(=O)(-Ar)-O-Ar-CO-NH-R-NH]-
式(I)
(式中、Arはアリール、アリーレン、ヘテロアリール、及び炭素環基からなる群から独立して選択され、Rは、共有結合、又は、飽和若しくは不飽和の脂肪族、飽和若しくは不飽和の環状脂肪族、芳香族、アリール脂肪族、脂環式、及びアルキル芳香族からなる群から選択される二価の炭化水素系基を表す)
の少なくとも1種の繰り返し単位を含むコポリアミドであって、式(I)の単位とは異なる別の繰り返し単位を更に含むコポリアミドであり、前記繰り返し単位がジカルボン酸由来である、コポリアミドに関する。
【0055】
本発明によるポリアミドは、モノマー単位の残基の合計量を基準として、0.1~100モル%、好ましくは0.2~50モル%、より好ましくは0.5~25モル%の式Iの繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0056】
好ましくは、本発明によるポリアミドは、二酸部分に2~10モル%のビス(p-メトキシカルボニルフェニル)ホスフェートなどの、二酸部分に0.1~100モル%のビス(p-メトキシカルボニルフェニル)ホスフェート、より好ましくは二酸部分に1~20モル%のビス(p-メトキシカルボニルフェニル)ホスフェートを含む。そのようなモル%は、ポリアミドのモノマー単位の残基100モル%を基準とする。
【0057】
ジカルボン酸は、好ましくは、脂肪族二酸、芳香族二酸、非環状脂肪族二酸、及びこれらの混合物によって構成される群から選択される。
【0058】
ジアミンは、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン、環状脂肪族ジアミン、非環状脂肪族ジアミン、及びこれらの混合物によって構成される群から選択されてもよい。
【0059】
その場合、本発明のコポリアミドは、ポリアミド6、ポリアミド7、ポリアミド6.6、ポリアミド10、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6.9、ポリアミド510、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド614、ポリアミド1010、ポリアミド1012、ポリアミド1014、ポリアミド1018、ポリアミド1212、ポリアミド46、ポリアミド618、ポリアミド636、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミド9T、ポリアミドMXD6、ポリアミドPXD6、及びこれらの(コ)ポリアミドに基づくコポリマーの繰り返し単位を含んでいてもよい。本発明のポリマーは、好ましくは、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド66/6、及びこれらの(コ)ポリアミドに基づくコポリマーの繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0060】
ある実施形態では、本開示は、式I:
-[OC-Ar-O-P(=O)(-Ar)-O-Ar-CO-NH-R-NH]-
式(I)
(式中、Arはアリール、アリーレン、ヘテロアリール、及び炭素環基からなる群から独立して選択され、Rは、共有結合、又は、飽和若しくは不飽和の脂肪族、飽和若しくは不飽和の環状脂肪族、芳香族、アリール脂肪族、脂環式、及びアルキル芳香族からなる群から選択される二価の炭化水素系基を表す)
の少なくとも1種の繰り返し単位を含むポリアミドであって、
式(I)の繰り返し単位が二酸部分中に0.1~100モル%のビス(p-メトキシカルボニルフェニル)ホスフェートを含む、ポリアミドに関する。
【0061】
ある実施形態では、本開示は、式I:
-[OC-Ar-O-P(=O)(-Ar)-O-Ar-CO-NH-R-NH]-
式(I)
(式中、Arはアリール、アリーレン、ヘテロアリール、及び炭素環基からなる群から独立して選択され、Rは、共有結合、又は、飽和若しくは不飽和の脂肪族、飽和若しくは不飽和の環状脂肪族、芳香族、アリール脂肪族、脂環式、及びアルキル芳香族からなる群から選択される二価の炭化水素系基を表す)
の少なくとも1種の繰り返し単位を含むポリアミドであって、
式(I)の繰り返し単位が二酸部分中に1~20モル%のビス(p-メトキシカルボニルフェニル)ホスフェートを含む、ポリアミドに関する。
【0062】
ある実施形態では、本開示は、式I:
-[OC-Ar-O-P(=O)(-Ar)-O-Ar-CO-NH-R-NH]-
式(I)
(式中、Arはアリール、アリーレン、ヘテロアリール、及び炭素環基からなる群から独立して選択され、Rは、共有結合、又は、飽和若しくは不飽和の脂肪族、飽和若しくは不飽和の環状脂肪族、芳香族、アリール脂肪族、脂環式、及びアルキル芳香族からなる群から選択される二価の炭化水素系基を表す)
の少なくとも1種の繰り返し単位を含むポリアミドであって、
式(I)の繰り返し単位が二酸部分中に2~10モル%のビス(p-メトキシカルボニルフェニル)ホスフェートを含む、ポリアミドに関する。
【0063】
ある実施形態では、本開示は、式I:
-[OC-Ar-O-P(=O)(-Ar)-O-Ar-CO-NH-R-NH]-
式(I)
(式中、Arはアリール、アリーレン、ヘテロアリール、及び炭素環基からなる群から独立して選択され、Rは、共有結合、又は、飽和若しくは不飽和の脂肪族、飽和若しくは不飽和の環状脂肪族、芳香族、アリール脂肪族、脂環式、及びアルキル芳香族からなる群から選択される二価の炭化水素系基を表す)
の少なくとも1種の繰り返し単位を含むポリアミドの合成方法であって、
・以下の式(II):
X1OC-Ar-O-P(=O)(-Ar)-O-Ar-COOX2
式(II)
(式中、X1及びX2は独立してヒドロキシル、アルコキシ、及びハロゲン基からなる群から独立して選択され、Arは上で定義した通りである)
の少なくとも1種のジカルボン酸と、
・以下の式(III):
H2N-R-NH2
式(III)
(式中のRは上で定義した通りである)
の少なくとも1種のジアミンと、
の間で重縮合反応させてポリアミドを得ることを含む、方法に関する。
【0064】
前記方法は、重縮合反応媒体中に他のモノマーを添加することも含んでいてもよい。前記モノマーは、好ましくは、ジカルボン酸、ジアミン、アミノ酸、及び/又はラクタムからなる群から選択される。
【0065】
方法は、モノマー単位の残基の合計量を基準として、0.1~60モル%、好ましくは0.2~40モル%、より好ましくは0.5~25モル%の式(II)のジカルボン酸を添加することを含んでいてもよい。
【0066】
例えば、本発明のポリマーは、例として次のものであってもよい:
- 式中のArがフェニル又はフェニレンである式(II)のジカルボン酸と式中のRがキシレンである式(III)のジアミンとから合成されるポリアミド。
- 式中のArがフェニル又はフェニレンである式(II)のジカルボン酸と式中のRがキシレンである式(III)のジアミンとアジピン酸とから合成されるコポリアミド。
【0067】
ある実施形態では、本開示は、式I:
-[OC-Ar-O-P(=O)(-Ar)-O-Ar-CO-NH-R-NH]-
式(I)
(式中、Arはアリール、アリーレン、ヘテロアリール、及び炭素環基からなる群から独立して選択され、Rは、共有結合、又は、飽和若しくは不飽和の脂肪族、飽和若しくは不飽和の環状脂肪族、芳香族、アリール脂肪族、脂環式、及びアルキル芳香族からなる群から選択される二価の炭化水素系基を表す)
の少なくとも1種の繰り返し単位を含むポリアミドと、少なくとも1種の強化フィラー及び/又は少なくとも1種の他の添加剤とを含有する、ポリアミド組成物に関する。
【0068】
ある実施形態では、本開示は、式I:
-[OC-Ar-O-P(=O)(-Ar)-O-Ar-CO-NH-R-NH]-
式(I)
(式中、Arはアリール、アリーレン、ヘテロアリール、及び炭素環基からなる群から独立して選択され、Rは、共有結合、又は、飽和若しくは不飽和の脂肪族、飽和若しくは不飽和の環状脂肪族、芳香族、アリール脂肪族、脂環式、及びアルキル芳香族からなる群から選択される二価の炭化水素系基を表す)
の少なくとも1種の繰り返し単位を含むポリアミドと、少なくとも1種の強化フィラー及び/又は少なくとも1種の他の添加剤とをブレンドすることによる、ポリアミド組成物の調製方法に関する。
【0069】
本発明によるポリアミドの合成方法は、
以下の式(II):
X1OOC-Ar-O-P(=O)(-Ar)-O-Ar-COOX2 (II)
(式中、X1及びX2は水素、アルキル基、又はハロゲン基からなる群から独立して選択され、Arは上で定義した通りである)
の少なくとも1種のジカルボン酸と、
以下の式(III):
H2N-R-NH2 (III)
(式中のRは上で定義した通りである)
の少なくとも1種のジアミンと、
の間で重縮合反応させてポリアミドを得ることも含む。
【0070】
ポリアミド組成物は、少なくとも1種の他のポリアミド、特には1種又は2種の他のポリアミドも含有していてもよい。
【0071】
本発明の組成物において使用され得るポリアミドとしては、半結晶性又はアモルファスの(コ)ポリアミド、すなわち脂肪族ポリアミドや半芳香族ポリアミドなどのポリアミド又はコポリアミドを挙げることができ、より一般的には、飽和脂肪族若しくは芳香族の二酸と飽和脂肪族若しくは芳香族の一級ジアミンとの間の重縮合によって得られる直鎖ポリアミド、ラクタム若しくはアミノ酸の縮合によって得られるポリアミド、又はこれらの様々なモノマーの混合物の縮合によって得られる直鎖ポリアミドを挙げることができる。より具体的には、これらのコポリアミドは、例えば、ポリヘキサメチレンアジパミド、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸から得られるポリフタルアミド、並びにアジピン酸、ヘキサメチレンジアミン及びカプロラクタムから得られるコポリアミドであってもよい。
【0072】
好ましくは、ポリアミドは、
- 少なくとも1種の脂肪族、環状脂肪族、又は芳香族の二酸と、少なくとも1種の脂肪族、環状脂肪族、又は芳香族のジアミンとの重縮合によって得られるポリアミド、
- 少なくとも1種のアミノ酸であって、好ましくは、ラクタム環の開環によって生成されるオメガアミノ酸であるアミノ酸自体の重縮合によって得られるポリアミド、又は
- 前記二酸、ジアミン、及び/又はアミノ酸の組み合わせの重縮合によって得られるコポリアミド、
からなる群から選択される。
【0073】
重縮合で使用される二酸、ジアミン、及び/又はアミノ酸モノマーのうちの少なくとも1種は、2~40個の炭素原子を含み得る。
【0074】
ポリアミドは、好ましくは、以下の(コ)ポリアミド:ポリアミド6、ポリアミド7、ポリアミド66、ポリアミド10、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド69、ポリアミド510、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド614、ポリアミド1010、ポリアミド1012、ポリアミド1014、ポリアミド1018、ポリアミド1212、ポリアミド46、ポリアミド618、ポリアミド636、ポリアミド9T、ポリアミドMXD6、ポリアミド66/6T、ポリアミド66/MPMD.T、(MPMD=メチル-ペンタメチレンジアミン)、ポリアミド66/6I、並びにこれらのポリアミドを主体とするブレンド物及びコポリマーからなる群から選択される。
【0075】
本発明の組成物は、特に上のポリアミドから誘導されるコポリアミド又はこれらのポリアミド若しくはコポリアミドのブレンド物も含み得る。
【0076】
好ましいポリアミドは、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリカプロラクタム、又はポリヘキサメチレンアジパミドとポリカプロラクタムとのコポリマー及びブレンド物である。
【0077】
例えば、ISO標準307による80~200ml/g、最も好ましくは100~160ml/gの粘度指数VIを有する射出成形法に適した分子量のポリアミドが通常使用される。しかし、より低粘度のポリアミドも使用することができる。
【0078】
本発明の組成物は、例えば:
- 式中のArがフェニル又はフェニレンである式(II)のジカルボン酸と式中のRがキシレンである式(III)のジアミンとから合成されるポリアミドと、ポリアミド66とのブレンド物;
- 式中のArがフェニル又はフェニレンである式(II)のジカルボン酸と式中のRがキシレンである式(III)のジアミンとアジピン酸とから合成されるコポリアミドと、ポリアミド66とのブレンド物;
- 式中のArがフェニル又はフェニレンである式(II)のジカルボン酸と式中のRがキシレンである式(III)のジアミンとから合成されるポリアミドと、ポリアミド610とのブレンド物;
- 式中のArがフェニル又はフェニレンである式(II)のジカルボン酸と式中のRがキシレンである式(III)のジアミンとアジピン酸とから合成されるコポリアミドと、ポリアミド610とのブレンド物;
であってもよい。
【0079】
本発明は、少なくとも本発明のポリアミドと、少なくとも1種の強化フィラー及び/又は少なくとも1種の他の添加剤とを含む、ポリアミド組成物にも関する。強化フィラー及び/又は添加剤は、ポリアミドとブレンドすることによって添加されてもよい。その場合、ポリアミド組成物は、通常、例えば二軸押出装置の中でロッドの形態で押出成形され、その後前記ロッドは顆粒へと細断される。
【0080】
より一般的には、本発明による組成物は、特に成形されることが意図されている、ポリマー組成物の製造に通常使用される添加剤も含んでいてもよい。その場合、可塑剤、造核剤、触媒、光及び/又は熱安定剤、潤滑剤、タレ防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤、顔料、つや消し剤、導電剤(カーボンブラック等)、成形添加剤、又は他の従来の添加剤を挙げることができる。潤滑剤は、ステアリン酸、又はステアリン酸カルシウムなどのステアリン酸塩であってもよい。タレ防止剤は、ポリ(テトラフルオロエチレン)、とりわけ例えばPTFE SN3306であってもよい。
【0081】
本発明の組成物は、好ましくは、ガラス繊維又は炭素繊維などの強化繊維を含む。とりわけ本組成物は、難燃性ポリマー組成物の総重量を基準として、5~50重量%の強化繊維を含むことができる。
【0082】
本発明の組成物は、少なくとも1種の難燃性添加剤も含有していてもよい。
【0083】
異なるタイプの難燃性添加剤が本発明によって使用されてもよい。それらは、吸熱分解、熱遮蔽、気相の希釈、燃焼性部分の希釈、及びラジカルのクエンチなどのいくつかの機能のメカニズムを提供することができる。
【0084】
ポリマー組成物用の難燃性添加剤はとりわけ、Plastics Additives,Gaechter/Mueller,Hansen,1996,ページ709及び各所に記載されている。有用な難燃性添加剤は、特には、米国特許第6344158号明細書、米国特許第6365071号明細書、米国特許第6211402号明細書、及び米国特許第6255371明細書の中で挙げられている。
【0085】
本発明の組成物において使用される難燃性添加剤は、好ましくは次のものを含む群の中で選択される:
A)リン含有難燃性添加剤であって、
- 例えばトリフェニルホスフィンオキシド、トリ-(3-ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキシド、及びトリ-(3-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)ホスフィンオキシドなどのホスフィンオキシド、
- ホスホン酸及びそれらの塩、並びにホスフィン酸及びそれらの塩(例えば亜鉛、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、又はマンガンのホスフィン酸塩、特にはジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、ジメチルホスフィン酸のアルミニウム塩、又はジメチルホスフィン酸の亜鉛塩等)、
- 例えばAntiblaze 1045である二リン酸環状エステルなどの環状リン酸塩、
- トリフェニルホスフェートなどの有機リン酸塩、
- ポリリン酸アンモニウム及びポリリン酸ナトリウムなどの無機リン酸塩、
- 安定化された、被覆された、粉末としての、などの複数の形状で見出され得る赤リン、
などのリン含有難燃性添加剤;
B)トリアジン、シアヌル酸及び/又はイソシアヌル酸、メラミン又はその誘導体(シアヌレート、オキサレート、フタレート、ボレート、サルフェート、ホスフェート、ポリホスフェート、及び/又はピロホスフェート等)、メラミンの縮合生成物(メレム、メラム、メロン等)トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ベンゾグアナミン、グアニジン、アラントイン、及びグリコールウリルなどの、窒素含有難燃性添加剤;
C)ハロゲン含有難燃性添加剤であって、
- ポリブロモジフェニルオキシド(PBDPO)、臭素化ポリスチレン(BrPS)、ポリ(ペンタブロモベンジルアクリレート)、臭素化インダン、テトラデカブロモジフェノキシベンゼン(Saytex 120)、エタン-1,2-ビス(ペンタブロモフェニル)、又はAlbemarleのSaytex 8010、テトラブロモビスフェノールA、及び臭素化エポキシオリゴマーなどの臭素含有難燃性添加剤、特には次の化合物:ChemturaからのPDBS-80、AlbemarleからのSaytex HP3010又はDea Sea Bromine GroupからのFR-803P、Dea Sea Bromine GroupからのFR-1210、Dead Sea Bromine Groupからのオクタブロモジフェニルエーテル(OBPE)、FR-245、Dead Sea Bromine GroupからのFR-1025、及びDead Sea Bromine GroupからのF-2300又はF2400、
- OxyChemからのDechlorane plus(登録商標)(CAS 13560-89-9)などの、塩素含有難燃性添加剤、
などの、ハロゲン含有難燃性添加剤;
D)三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化セリウム、ホウ素含有化合物(ホウ酸カルシウム等)などの、無機難燃性添加剤。
【0086】
これらの成分は、単独で使用されても組み合わせて使用されてもよい。必要に応じて炭化剤及び炭化触媒も使用されてもよい。
【0087】
本発明による組成物は、組成物の総重量を基準として、0.1~30重量パーセント、好ましくは1~20重量パーセントの量で難燃性添加剤を含んでもよい。
【0088】
本発明による組成物は、例えば射出成形によって、射出/ブロー成形によって、押出によって、又は押出/ブロー成形によって形成される物品の製造のために、プラスチック加工の分野で原材料として使用されてもよい。1つの通常の実施形態によれば、変性ポリアミドは、例えば二軸押出装置で、ロッドの形態で押し出され、その後前記ロッドは顆粒へと裁断される。その後、成形部品は、上で製造された顆粒を溶融させ、溶融組成物を射出成形装置へ供給することによって製造される。
【0089】
本開示は、特には成形、射出成形、射出/ブロー成形、押出/ブロー成形、押出、又は紡糸によって物品を製造するための、本発明のポリアミドの使用にも関する。
【0090】
本開示は、特には成形、射出成形、射出/ブロー成形、押出/ブロー成形、押出、又は紡糸によって物品を製造するための、本発明のポリアミド組成物の使用にも関する。
【0091】
本開示は、本発明のポリアミドから得られる物品にも関し、物品は、特には糸、繊維、自動車部品、及びワイヤ&ケーブル部品からなる群から特に選択される。
【0092】
本開示は、本発明のポリアミド組成物から得られる物品にも関し、物品は、特には糸、繊維、自動車部品、及びワイヤ&ケーブル部品からなる群から特に選択される。
【実施例】
【0093】
ここで本開示を実施例で説明するが、それは本開示の作用を説明することを意図しており、限定的に理解して本開示の範囲に何らかの限定を暗示することを意図しない。本開示の範囲内にある別の実施例もまた可能である。
【0094】
実施例1:メチル-4-[(4-メトキシカルボニルフェノキシ)-フェニルホスホリル]オキシベンゾエート(P3C)の合成:
四口のRBF(窒素導入口、還流冷却器、滴下ろうと、及びオーバーヘッドスターラーを装着)の中に、N2下、室温でメチルパラベン(2.2mmol)及びTHF(5.0vol.)を入れ、均一な溶液が形成されるまで撹拌した。トリエチルアミン(5.0mmol)を室温で連続的に撹拌しながら溶液に入れた。N2下、フェニルホスホン酸ジクロリド(1.0mmol)を室温で反応混合物に滴下し、得られた混合物を室温で30分間撹拌した。その後、反応混合物を2.0時間還流した。反応混合物の中に白色析出物が観察された。反応混合物を室温まで冷却し、濾過して白色残渣を得た。白色残渣をTHFで洗浄し、全部の濾液(A)を別にとっておいた。引き続き、得られた残渣を水で十分に洗浄してトリエチルアミン塩酸塩を除去した。得られた残渣をCHCl3:MeOH(5:1)混合物から再結晶して白色結晶生成物(純度>99%)を得た。2回目の回収物も母液から回収した。濾液(A)をロータリーエバポレーターを使用して濃縮した。残渣を水と酢酸エチルとの間で分配した。有機層を分離し、水及び食塩水で洗浄した。酢酸エチル溶液をNa2SO4上で乾燥し、ロータリーエバポレーターを用いて留去した。得られた残渣をCHCl3:MeOH(4:1)から再結晶した。総収率:約70%。
【化1】
【0095】
実施例2:X%のP3Cコモノマーを有するポリアミドMXD,6の合成:
オーバーヘッドスターラーと、窒素パージ装置と、蒸留コンデンサーとを備えた四口ガラス蓋を有するハステロイケトルの中に、アジピン酸、メタキシレンジアミン(m-XDA)、及びP3Cを室温で入れた。回収フラスコの中に水の蓄積が観察された時に、ケトルをシリコーンオイル浴で200℃まで加熱した。その後、温度を10℃/5分の速度で265℃まで上げた。必要な温度に達した後、オーバーヘッドスターラーのトルク値の増加を観察することによってポリマーの形成を監視した。トルク値が30N・m以上に到達した時に系を分解し、ポリマーを氷水混合物中で急冷する。ポリマーの分子量(Mn及びMw)及び多分散指数(PDI)は、下の表1に示される通りGPCにより決定する。ポリマーの熱安定性は、DSC及びTGA実験により決定する。
【0096】
【0097】
更に、2重量%のP
3Cが配合されたMXD6のTGAデータを
図1に示し、5重量%のP3Cが配合されたMXD6のTGAデータを
図2に示す。
【0098】
実施例3:特性
表1の事実は、表2に示される複数の試験を行うために裏付けられた。
【0099】
【0100】
UL 94V試験では、厚さ平均3.2mmのポリマー試料の棒を垂直に固定し、バーナーの炎に10秒間接触させた。綿球を試料の直下に保持して、ポリマーからの可燃性の液だれを調べた。バーナーは10秒後に引き抜く。t1はバーナーを取り除いた後にポリマーの炎が自然に消えるのに要する時間を意味する。その後、棒を再度バーナーの炎に接触させ、同じプロセスを繰り返す。t2は、バーナーの炎へ2回目に当てた後にポリマーの炎が自然に消えるのに要する時間を意味する。t3は、炎へ2回目に当てた後に炎が消えた後のポリマー棒の残じん時間を意味する。本明細書に記載の実験において、それぞれの場合において残じん時間(t3)は0秒であった。
【0101】
そのため、上の試験から得られた最終的な観察結果は、試験片が垂れ落ちず、したがって本開示のポリアミドは安全かつ経済的であり、結果として改善された難燃性を有するポリアミドとしての用途が見出されることである。
【0102】
実施例4:P3Cが配合されたMXD6とPA610とのブレンド物の難燃性試験
異なる比率でP3Cが配合された(2重量%)MXD6とPA610とのブレンド物を、それらの難燃特性について評価した。全てのブレンド物は45%のガラス(FF-Eガラス、黒色)を含んでいた。ブレンドの組成は以下の表3にまとめられている。
【0103】
【0104】
合計燃焼時間は、UL94垂直燃焼試験規格に基づいて測定する。曲げ試験棒に炎を当て、炎が消えるまでに要した時間を測定する。燃焼時間が長いほど、難燃性等級は低い。合計燃焼時間は5本の棒の個々の燃焼の合計である。
【0105】
本主題で得られる利点
本主題について、それらの特定の実施例及び実施形態を参照しつつかなり詳細に説明したが、その他の実施形態も可能である。そのため、添付の請求項の趣旨及び範囲は本明細書に包含されている好ましい実施例及び実施形態についての記載に限定されるべきではない。
【0106】
以上から、本開示は、この目的のために実際に必要とされるはるかに少ない量の添加剤を含む、難燃特性を有する経済的かつ改善されたポリアミドを提供する。