(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】可撓性かつ溶解性の固体シート物品
(51)【国際特許分類】
C11D 17/06 20060101AFI20220708BHJP
A61K 8/46 20060101ALI20220708BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20220708BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20220708BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20220708BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20220708BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20220708BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20220708BHJP
C11D 1/22 20060101ALI20220708BHJP
C11D 1/29 20060101ALI20220708BHJP
C11D 3/37 20060101ALI20220708BHJP
C11D 1/72 20060101ALI20220708BHJP
C11D 3/22 20060101ALI20220708BHJP
C11D 3/20 20060101ALI20220708BHJP
【FI】
C11D17/06
A61K8/46
A61K8/86
A61K8/81
A61K8/02
A61Q5/02
A61Q5/12
A61Q19/10
C11D1/22
C11D1/29
C11D3/37
C11D1/72
C11D3/22
C11D3/20
(21)【出願番号】P 2019528796
(86)(22)【出願日】2019-01-15
(86)【国際出願番号】 CN2019071785
(87)【国際公開番号】W WO2020147008
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2019-05-29
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】590005058
【氏名又は名称】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE PROCTER & GAMBLE COMPANY
【住所又は居所原語表記】One Procter & Gamble Plaza, Cincinnati, OH 45202,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】タン、ホンシン
(72)【発明者】
【氏名】マクナマラ、カール・デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】グレン、ロバート・ウェイン・ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】タン、ミン
(72)【発明者】
【氏名】岡田 俊之
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/141104(WO,A1)
【文献】特表2014-510190(JP,A)
【文献】特開2000-169896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体物品であって、
i)前記固体物品の25重量%~70重量%の、C
6~C
20直鎖アルキルベンゼンスルホネート(LAS)、0.5~5の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するトリデセス硫酸ナトリウム(STS)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される第1の界面活性剤と、
ii)前記固体物品の5重量%~40重量%の、0.5~10の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するC
6~C
20直鎖又は分枝鎖アルキルアルコキシサルフェート(AAS)、5~15の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するC
6~C
20直鎖又は分枝鎖アルキルアルコキシル化アルコール(AA)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される第2の界面活性剤と、
iii)前記固体物品の5重量%~50重量%の、50,000~400,000ダルトンの重量平均分子量を有するポリビニルアルコールと、
を含み、
可撓性かつ溶解性のシートの形態であ
り、かつ多孔質であ
り、80%~100%の連続気泡含有率、100μm~2000μmの全体平均孔径及び5μm~200μmの平均気泡壁厚を有する、固体物品
(ただし、前記固体物品は、脆弱線を含む非繊維状洗濯洗剤シートであって、前記非繊維状洗濯洗剤シートは前記脆弱線により分離される、非繊維状洗濯洗剤シートを除く)。
【請求項2】
前記固体物品の30重量%~65重量%の前記第1の界面活性剤を含む、請求項1に記載の固体物品。
【請求項3】
前記固体物品の20重量%以下の、非芳香族及び非アルコキシル化C
6~C
20直鎖又は分岐鎖アルキルサルフェート(AS)を含む、請求項1又は2に記載の固体物品。
【請求項4】
前記固体物品の10重量%~40重量%の前記ポリビニルアルコールを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の固体物品。
【請求項5】
前記ポリビニルアルコールが、60,000~300,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の固体物品。
【請求項6】
前記固体物品の20重量%以下のデンプンを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の固体物品。
【請求項7】
0.1%~25%の可塑剤を更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の固体物品。
【請求項8】
可撓性かつ溶解性の固体シート物品であって、(a)前記固体シート物品の10重量%~25重量%の、50,000~400,000ダルトンの重量平均分子量を有するポリビニルアルコールと、(b)前記固体シート物品の30重量%~80重量の、C
6~C
20直鎖アルキルベンゼンスルホネート(LAS)、0.5~5の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するトリデセス硫酸ナトリウム(STS)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される主界面活性剤を含む1つ以上の界面活性剤と、を含み、前記固体シート物品は多孔質であり
、80%~100%の連続気泡含有率、100μm~2000μmの全体平均孔径及び5μm~200μmの平均気泡壁厚を有する、可撓性かつ溶解性の固体シート物品
(ただし、前記可撓性かつ溶解性の固体シート物品は、脆弱線を含む非繊維状洗濯洗剤シートであって、前記非繊維状洗濯洗剤シートは前記脆弱線により分離される、非繊維状洗濯洗剤シートを除く)。
【請求項9】
前記1つ以上の界面活性剤が、0.5~10の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するC
6~C
20直鎖又は分枝鎖アルキルアルコキシサルフェート(AAS)、5~15の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するC
6~C
20直鎖又は分枝鎖アルキルアルコキシル化アルコール(AA)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される従界面活性剤を更に含む、請求項8に記載の可撓性かつ溶解性の固体シート物品。
【請求項10】
前記固体シート物品が、以下:
・
85%~100%の連続気泡含有率、及び/又は
・
200μm~1000μmの全体平均孔径、及び/又は
・
10μm~100μmの平均気泡壁厚、及び/又は
・前記固体シート物品の0.5重量%~25重量%の最終含水量、及び/又は
・0.5mm~4mmの厚さ、及び/又は
・50グラム/m
2~250グラム/m
2の坪量、及び/又は
・0.05グラム/cm
3~0.5グラム/cm
3の密度、及び/又は
・0.03m
2/g~0.25m
2/gの比表面積、
を特徴とする、請求項8又は9に記載の可撓性かつ溶解性の固体シート物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリビニルアルコール及び1つ以上の界面活性剤を含有する可撓性かつ溶解性の固体物品に関する。
【背景技術】
【0002】
水溶性ポリマーキャリア又はマトリックス中に界面活性剤及び他の活性成分を含む可撓性かつ溶解性の洗剤シートは周知である。このようなシートは、水に溶解した際に界面活性剤及び他の活性成分を送達するのに特に有用である。同じ製品カテゴリーの従来の顆粒又は液体の洗剤と比較して、このようなシートは、より良好な構造的一体性を有し、より濃縮されており、そして、保管、輸送/運搬、持ち運び、及び取り扱いがより容易である。同じ製品カテゴリーの固体タブレット洗剤と比較して、このようなシートは、より可撓性が高く、より脆性が低く、消費者にとってより良好な感覚的魅力を有する。
【0003】
このような可撓性かつ溶解性の洗剤シートの製造業者が直面する1つの課題は、このような界面活性剤及び水溶性ポリマーキャリアによって形成される混合物の保管安定性及びフィルム形成特性に対する懸念から、このような可撓性かつ溶解性の洗剤シートに組み込むのに好適な界面活性剤が限られていることである。
【0004】
例えば、韓国特許第101787652号は、フィルム形成剤としてのポリビニルアルコールポリマー又はコポリマー、主界面活性剤としての構造中にエチレンオキシド基を全く有しない非芳香族C8~C18アルキルサルフェートアルカリ金属塩(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)、及び所望により共界面活性剤としての非イオン性界面活性剤(例えば、LA7又はLA9)を含有する可撓性かつ溶解性の洗濯洗剤シートを開示している。具体的には、韓国特許第10178652号は、他の界面活性剤(例えば、直鎖アルキルベンゼンスルホネート(linear alkylbenzene sulphonate、LAS)又はラウリルエーテル硫酸ナトリウム(sodium lauryl ether sulfate、SLES))が使用されるとき、特に主界面活性剤として使用されるとき、関連するフィルム形成性能及び保管安定性がかなり劣化することを示唆している。
【0005】
このように界面活性剤の選択肢が限定されていることから、このような可撓性かつ溶解性の固体シート製品の配合自由度に対して厳しい制約が課され、これは、ひいては、最適以下の又はあまり望ましくない洗浄性能を有する洗剤製品につながり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、改善された洗浄性能を提供するが、良好なフィルム形成特性及び保管安定性も依然として維持している、他の界面活性剤を含有する可撓性かつ溶解性の固体シート物品が必要とされている。
【0007】
溶解プロファイルが改善された可撓性かつ溶解性の固体シート物品を提供することも有利であろう。
【0008】
上述の改善された可撓性かつ溶解性のシートを作製するための、よりコスト効率が高くかつ容易にスケール変更可能なプロセスを提供することが更に有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様では、本発明は、可撓性かつ溶解性のシートの形態の固体物品であって:
i)当該固体物品の約25重量%~約70重量%、好ましくは約30重量%~約65重量%、より好ましくは約40重量%~約60重量%の、C6~C20直鎖アルキルベンゼンスルホネート(LAS)、約0.5~約5の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するトリデセス硫酸ナトリウム(sodium trideceth sulfates、STS)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される第1の界面活性剤と、
ii)当該固体物品の約5重量%~約40重量%、好ましくは約10重量%~約30重量%、より好ましくは約15重量%~約25重量%の、約0.5~約10の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するC6~C20直鎖又は分枝鎖アルキルアルコキシサルフェート(alkylalkoxy sulfates、AAS)、約5~約15の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するC6~C20直鎖又は分枝鎖アルキルアルコキシル化アルコール(alkylalkoxylated alcohols、AA)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される第2の界面活性剤と、
iii)当該固体物品の約5重量%~約50重量%、好ましくは約10重量%~約40重量%、より好ましくは約15重量%~約30重量%、最も好ましくは約20重量%~約25重量%の、約50,000~約400,000ダルトン、好ましくは約60,000~約300,000ダルトン、より好ましくは約70,000~約200,000ダルトン、最も好ましくは約80,000~約150,000ダルトンの重量平均分子量を有するポリビニルアルコールと、を含む固体物品を提供する。
【0010】
好ましくは、上記固体物品は、当該固体物品の約20重量%以下、好ましくは0重量%~約10重量%、より好ましくは0重量%~約5重量%、最も好ましくは0重量%~約1重量%の非芳香族及び非アルコキシル化C6~C20直鎖又は分枝鎖アルキルサルフェート(alkyl sulfates、AS)を含有する。
【0011】
本発明で使用されるポリビニルアルコールは、好ましくは、約40%~100%、好ましくは約50%~約95%、より好ましくは約65%~約92%、最も好ましくは約70%~約90%の範囲の加水分解度を特徴とする。より好ましくは、本発明の固体物品は、当該固体物品の約20重量%以下、好ましくは0重量%~約10重量%、より好ましくは0重量%~約5重量%、最も好ましくは0重量%~約1重量%のデンプンを含有する。
【0012】
更に、当該固体物品は、当該シートの総重量の約0.1%~約25%、好ましくは約0.5%~約20%、より好ましくは約1%~約15%、最も好ましくは約2%~約12%の可塑剤を含み得る。可塑剤は、グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。最も好ましい可塑剤はグリセリンである。
【0013】
別の態様では、本発明は、可撓性かつ溶解性の固体シート物品であって、(a)当該固体シート物品の約10重量%~約25重量%の、約50,000~約400,000ダルトンの重量平均分子量を有するポリビニルアルコールと、(b)当該固体シート物品の約30重量%~約80重量%の、C6~C20直鎖アルキルベンゼンスルホネート(LAS)、約0.5~約5の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するトリデセス硫酸ナトリウム(STS)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される主界面活性剤を含む1つ以上の界面活性剤とを含む、固体シート物品に関する。
【0014】
このような可撓性かつ溶解性の固体シート物品は、約0.5~約10の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するC6~C20直鎖又は分枝鎖アルキルアルコキシサルフェート(AAS)、約5~約15の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するC6~C20直鎖又は分枝鎖アルキルアルコキシル化アルコール(AA)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される従界面活性剤(minor surfactant)を更に含み得る。
【0015】
本発明の特に好ましい実施形態では、可撓性かつ溶解性の固体シート物品は多孔質であり、かつ以下のパラメータ:
・約80%~100%、好ましくは約85%~100%、より好ましくは約90%~100%の連続気泡含有率、及び/又は
・約100μm~約2000μm、約150μm~約1000μm、好ましくは約200μm~約600μmの全体平均孔径、及び/又は
・約5μm~約200μm、好ましくは約10μm~約100μm、より好ましくは約10μm~約80μmの平均気泡壁厚、及び/又は
・当該固体シート物品の約0.5重量%~約25重量%、好ましくは約1重量%~約20重量%、より好ましくは約3重量%~約10重量%の最終含水量、及び/又は
・約0.5mm~約4mm、好ましくは約0.6mm~約3.5mm、より好ましくは約0.7mm~約3mm、更により好ましくは約0.8mm~約2mm、最も好ましくは約1mm~約1.5mmの厚さ、及び/又は
・約50グラム/m2~約250グラム/m2、好ましくは約80グラム/m2~約220グラム/m2、より好ましくは約100グラム/m2~約200グラム/m2の坪量、及び/又は
・約0.05g/cm3~約0.5g/cm3、好ましくは約0.06g/cm3~約0.4g/cm3、より好ましくは約0.07g/cm3~約0.2g/cm3、最も好ましくは約0.08g/cm3~約0.15g/cm3の密度、及び/又は
・約0.03m2/g~約0.25m2/g、好ましくは約0.04m2/g~約0.22m2/g、より好ましくは約0.05m2/g~約0.2m2/g、最も好ましくは約0.1m2/g~約0.18m2/gの比表面積
のうちの1つ以上を特徴とする。
【0016】
本発明のこれらの及びその他の態様は、本発明の以下の詳細な説明を読むことにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】バッチプロセスにおける可撓性、多孔質、溶解性の固体シートを作製するための対流式加熱/乾燥構成を示す図である。
【
図2】バッチプロセスにおける可撓性、多孔質、溶解性の固体シートを作製するためのマイクロ波式加熱/乾燥構成を示図であるす。
【
図3】連続プロセスにおける可撓性、多孔質、溶解性の固体シートを作製するための衝突オーブン式加熱/乾燥構成を示す図である。
【
図4】バッチプロセスにおける可撓性、多孔質、溶解性のシートを作製するための底部伝導式加熱/乾燥構成を示す図である。
【
図5】連続プロセスにおける可撓性、多孔質、溶解性の固体シートを作製するための回転ドラム式加熱/乾燥構成を示す図である。
【
図6A】回転ドラム式加熱/乾燥構成を使用するプロセスによって作製された、第1の可撓性、多孔質、溶解性のシートの上面のSEM画像である。
【
図6B】
図6Aに示すシートと同じ成分を含有するが、衝突オーブン式加熱/乾燥構成を使用するプロセスによって作製された、第2の可撓性、多孔質、溶解性のシートの上面のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
I.定義
用語「固体」とは、本明細書で使用するとき、物品が拘束されておらず、かつ当該物品に外力が印加されていないときに、20℃、大気圧下でその形状を実質的に保持する(すなわち、その形状が何らかの目に見える変化をしない)物品の能力を指す。
【0019】
用語「可撓性」は、本明細書で使用するとき、物品をその長手方向に垂直な中心線に沿って90°曲げたときに、破損することも著しく破断することもなく応力に耐える物品の能力を指す。好ましくは、このような物品は、著しい弾性変形を受けることができ、5GPa以下、好ましくは1GPa以下、より好ましくは0.5GPa以下、最も好ましくは0.2GPa以下のヤング率を特徴とする。
【0020】
用語「溶解性」は、本明細書で使用するとき、20℃、大気圧下で、8時間以内に、全く撹拌することなく、5重量%未満しか未溶解残渣を残さない、十分な量の脱イオン水に完全に又は実質的に溶解する物品の能力を指す。
【0021】
用語「シート」は、本明細書で使用するとき、三次元形状を有する、すなわち、厚さ、長さ、及び幅を有するが、長さ対厚さのアスペクト比及び幅対厚さのアスペクト比が両方とも少なくとも約5:1であり、長さ対幅の比が少なくとも約1:1である非繊維性構造体を指す。好ましくは、長さ対厚さのアスペクト比及び幅対厚さのアスペクト比は、両方とも少なくとも約10:1、より好ましくは少なくとも約15:1、最も好ましくは少なくとも約20:1であり、長さ対幅のアスペクト比は、好ましくは少なくとも約1.2:1、より好ましくは少なくとも約1.5:1、最も好ましくは少なくとも約1.618:1である。
【0022】
用語「スルホネート」又は「サルフェート」は、本明細書で使用するとき、中和されていないスルホン酸若しくは硫酸の形態、又は中和された塩の形態、又は両方の混合物(すなわち、部分的に中和されている)のいずれかの化合物を指す。
【0023】
用語「ポリビニルアルコール」又は「PVA」は、本明細書で使用するとき、ポリビニルアルコールのホモポリマー及びコポリマーの両方を含む。コポリマーは、ビニルアルコールモノマー及び1つ以上の別の種類のモノマーを含んでいてよい。
【0024】
用語「水溶性」は、本明細書で使用するとき、少なくとも約25グラム、好ましくは少なくとも約50グラム、より好ましくは少なくとも約100グラム、最も好ましくは少なくとも約200グラムのこのような材料を、20℃、大気圧下で、十分に撹拌しながら、1リットル(1L)の脱イオン水に入れたときに、目に見える固体を残すこともなく、視覚的に分離した相を形成することもなく、水に完全に溶解又は分散するサンプル材料の能力を指す。
【0025】
本明細書で使用するとき、用語「デンプン」は、天然デンプン又は加工デンプンの両方を指す。デンプンの典型的な天然供給源としては、穀物、塊茎、根、豆果、及び果実を挙げることができる。より具体的な天然供給源としては、トウモロコシ、エンドウマメ、ジャガイモ、バナナ、オオムギ、コムギ、コメ、サゴ、アマランス、タピオカ、アロールート、カンナ、ソルガム、及びこれらのろう質又は高アミラーゼ類を挙げることができる。天然デンプンは、当該技術分野において既知の任意の加工方法によって加工して、剪断デンプン又は熱阻害デンプンなどの物理的に加工されたデンプン;架橋、アセチル化、及び有機エステル化、ヒドロキシエチル化、並びにヒドロキシプロピル化、リン酸化、並びに無機エステル化、カチオン性、アニオン性、非イオン性、両性及び双極性、並びにこれらのコハク酸塩及び置換コハク酸誘導体などの化学的に加工されたデンプン;酸化、酵素変換、酸加水分解、熱、又は酸デキストリン化によって調製される流動性又は低粘度(thin-boiling)デンプンを含むデンプンのいずれかに由来する変換産物(熱及び又は剪断生成物も本明細書で有用であり得る);並びに当該技術分野において既知のアルファ化デンプンを含む加工デンプン、を形成することができる。
【0026】
用語「主界面活性剤」は、組成物中の合計界面活性剤含有量の50重量%を超える量で当該組成物中に存在する界面活性剤を指す。
【0027】
用語「従界面活性剤」は、組成物中の合計界面活性剤含有量の50重量%以下の量で当該組成物中に存在する界面活性剤を指す。
【0028】
用語「連続気泡発泡体」又は「連続気泡細孔構造」は、本明細書で使用するとき、気体、典型的には乾燥プロセス中に発泡体構造が崩壊しない気体(空気など)を含有し、それによって固体の物理的強度及び凝集性を維持する、空隙又は気泡のネットワークを画定する固体の相互接続されたポリマー含有マトリックスを指す。構造の相互接続性は、以下に開示される試験3によって測定される連続気泡含有率によって説明され得る。
【0029】
本明細書で使用するとき、用語「底面」は、エアレーションされた湿潤プレミックスのシートが乾燥工程中に配置される支持面に直ちに接触する、本発明の可撓性、多孔質、溶解性の固体シートの表面を指し、一方、用語「上面」は、当該シートの底面とは反対側の表面を指す。更に、このような固体シートは、その厚さに沿って、その上面に隣接する上部領域、その底面に隣接する底部領域、及び上部領域と下部領域との間に位置する中間領域を含む3つの領域に分けることができる。上部領域、中間領域、及び底部領域は、等しい厚さである、すなわち、それぞれがシートの全厚の約1/3の厚さを有する。
【0030】
用語「エアレーションする」、「エアレーションしている」又は「エアレーション」は、本明細書で使用するとき、機械的及び/又は化学的手段によって液体又はペースト状組成物に気体を導入するプロセスを指す。
【0031】
用語「加熱方向」は、本明細書で使用するとき、熱源が物品に熱エネルギーを印加し、その結果、このような物品の一方の側から他方の側に向かって低下する温度勾配が生じる方向を指す。例えば、物品の一方の側に位置する熱源が、当該物品に熱エネルギーを印加して、当該一方の側から反対側に向かって低下する温度勾配を生じさせる場合、加熱方向は、当該一方の側から反対側へと延びるとみなされる。このような物品の両側又はこのような物品の異なる部分が同時に加熱され、このような物品全体にわたって観察可能な温度勾配が存在しない場合、加熱は非方向的に行われ、加熱方向は存在しない。
【0032】
用語「実質的に反対である」又は「実質的にオフセットしている」は、本明細書で使用するとき、その間に90°以上のオフセット角度を有する2つの方向又は2本の線を指す。
【0033】
本明細書で使用するとき、用語「実質的に整列された」又は「実質的な整列」は、その間に90°未満のオフセット角度を有する2つの方向又は2本の線を指す。
【0034】
用語「一次熱源」は、本明細書で使用するとき、物体(例えば、本発明に係るエアレーションされた湿潤プレミックスのシート)によって吸収される総熱エネルギーの50%超、好ましくは60%超、より好ましくは70%超、最も好ましくは80%超を提供する熱源を指す。
【0035】
用語「制御された表面温度」は、本明細書で使用するとき、比較的一貫した、すなわち、+/-20%未満のばらつき、好ましくは+/-10%未満のばらつき、より好ましくは+/-5%未満のばらつきしか有しない表面温度を指す。
【0036】
用語「本質的に含まない」又は「本質的に含まず」とは、指定される物質が極めて少量であり、組成物又は製品に意図的に添加されたものでない、あるいは好ましくは、このような組成物又は製品中に分析によって検出可能な濃度では存在しないことを意味する。それは、指定される物質がこのような組成物又は製品に意図的に添加された物質のうちの1つ以上の不純物としてのみ存在する組成物又は製品を含み得る。
【0037】
特定の重量平均分子量(すなわち、約50,000~約400,000ダルトン、好ましくは約60,000~約300,000ダルトン、より好ましくは約70,000~約200,000ダルトン、最も好ましくは約80,000~約150,000ダルトン)を有するポリビニルアルコールを、可撓性かつ溶解性の固体シート物品の形成においてフィルム形成剤として使用したとき、他の界面活性剤(LAS及び/又はSTSなど)を主界面活性剤として使用したときでさえも、得られる固体シート物品が「安定化」又は改善されたフィルム形成特性を有し得ることは、本発明の驚くべきかつ予想外の発見であった。この発見によって、このような他の界面活性剤と比較して比較的乏しい洗浄性能を有する非芳香族及び非アルコキシル化アルキルサルフェート(AS)の必要性が低減又は排除される。
【0038】
II.本発明の固体シートの処方
1.ポリビニルアルコール(Polyvinyl alcohol、PVA)
上述したように、本発明の可撓性かつ溶解性の固体シートは、フィルム形成剤としてのポリビニルアルコール(PVA)ポリマー又はそのコポリマー、構造化剤に加えて、界面活性剤のためのキャリア、並びに所望により他の活性成分(例えば、乳化剤、ビルダー、キレート剤、香料、着色剤など)を含み得る。PVAポリマー又はコポリマーは、本発明の可撓性かつ溶解性の固体シート物品中に、固体シートの総重量に対して約5%~約50%、好ましくは約10%~約40%、好ましくは約15%~約30%、より好ましくは約20%~約25%の範囲の量で存在することが好ましい。本発明の特に好ましい実施形態では、本発明の可撓性かつ溶解性の固体シート物品中に存在するPVAの総量は、このようなシート物品の総重量に対して25%以下である。
【0039】
本発明の実施に好適なPVAポリマー又はコポリマーは、約50,000~約400,000ダルトン、好ましくは約60,000~約300,000ダルトン、より好ましくは約70,000~約200,000ダルトン、最も好ましくは約80,000~約150,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有するものが選択される。重量平均分子量は、各ポリマー原材料の平均分子量を合計し、多孔質固体内に存在するポリマーの総重量の重さによるそれぞれの相対的重量パーセントを乗じることによって計算される。
【0040】
本発明の可撓性かつ溶解性の固体シート物品は、好ましくは、まず、PVA、界面活性剤、及び所望により他の活性成分を含有する湿潤プレミックスを形成し、続いて、湿潤プレミックスをシートに成形し、次いで、このような湿潤プレミックスのシートを乾燥させて、固化したシート物品を形成することによって作製される。それに対応して、PVAポリマー又はコポリマーの重量平均分子量は、湿潤プレミックスの全体的なフィルム形成特性、及び所望の界面活性剤との適合性/不適合性に影響を及ぼし得る。更に、本明細書で使用されるPVAポリマー又はコポリマーの重量平均分子量は、湿潤プレミックスの粘度に影響を及ぼすことがあり、これは、ひいては、このように形成された、得られる固体シート物品の様々な物理的特性に影響を及ぼし得る。
【0041】
本発明のPVAポリマー又はコポリマーは、更に、約40%~約100%、好ましくは約50%~約95%、より好ましくは約70%~約92%、最も好ましくは約80%~約90%の範囲の加水分解度を特徴とし得る。
【0042】
本発明のPVAコポリマーは、ビニルアルコールモノマー及び任意の他の種類の1つ以上のモノマーを含み得る。本発明の実施に好ましいPVAコポリマーは、ビニルアルコールモノマーに加えて、以下の式(I)及び/又は(II)によって表される1つ以上のアニオン性モノマーを含む:
【0043】
【化1】
(式中、R
1、R
2、及びR
3は、それぞれ独立して、H又はメチルであり、nは、独立して、0~3の整数である)。上述のアニオン性モノマー単位は、存在する場合、好ましくは約0.5~約5モル%の範囲の量で存在する。
【0044】
市販されているポリビニルアルコールとしては、CELVOL 523、CELVOL 530、CELVOL 540、CELVOL 518、CELVOL 513、CELVOL 508、CELVOL 504を含むがこれらに限定されない、Celanese Corporation(Texas,USA)製の商標名CELVOLのもの;Kuraray Europe GmbH(Frankfurt,Germany)製の商標名Mowiol(登録商標)及びPOVAL(商標)のもの;並びにLubon Vinylon Co(南京、中国)を含む様々な供給元から市販されているPVA 1788(PVA BP17とも呼ばれる);並びにこれらの組み合わせが挙げられる。本発明の特に好ましい実施形態では、可撓性、多孔質、溶解性の固体シートは、このような物品の総重量に対して約10%~約25%、より好ましくは約15%~約23%の、80,000~約150,000ダルトンの範囲の重量平均分子量及び約80%~約90%の範囲の加水分解度を有するポリビニルアルコールを含む。
【0045】
上述のPVPに加えて、本明細書に記載される必要な構造及び物理的/化学的特性を有する固体シート物品を提供するのに役立つ限り、単一のデンプン又はデンプンの組み合わせを、必要とされるPVAの全体的なレベルを低減するような量でフィラー材料として使用してよい。しかしながら、デンプンが多すぎると、固体シート物品の溶解度及び構造的一体性が損なわれることがある。したがって、本発明の好ましい実施形態では、固体シート物品は、当該固体シート物品の20重量%以下、好ましくは0重量%~10重量%、より好ましくは0重量%~5重量%、最も好ましくは0重量%~1重量%のデンプンを含むことが望ましい。
【0046】
2.界面活性剤
上記のPVAに加えて、本発明の可撓性かつ溶解性の固体シート物品は、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、双性イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ポリマー界面活性剤、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の界面活性剤を含む。
【0047】
本発明の1つの利点は、本発明の固体シート物品が多孔質であり、かつ独特の連続気泡発泡体(open cell foam、OCF)構造(以下に記載される)を特徴とし得ることであり、これによって、依然として高速溶解を提供しながら、高含有量の界面活性剤を配合することが可能になる。したがって、高度に濃縮された洗浄組成物を本発明の固体シート物品に処方して、消費者に新規かつ優れた洗浄体験を提供することができる。好ましくは、本発明の固体シート物品は、当該固体シートの総重量に対して約30%~約80%、好ましくは約40%~約70%、より好ましくは約50%~約65%の界面活性剤を含む。
【0048】
本明細書で使用される界面活性剤は、従来の意味(すなわち、消費者が知覚可能な泡立ち効果を提供するもの)及び乳化剤(すなわち、泡立ち性能は全く提供しないが、安定な発泡体構造の作製における加工助剤として主に意図されるもの)の両方の界面活性剤を含んでよい。本明細書において界面活性剤成分として使用するための乳化剤の例としては、モノ-及びジ-グリセリド、脂肪族アルコール、ポリグリセロールエステル、プロピレングリコールエステル、ソルビタンエステル、並びに空気界面を安定化するために既知であるかさもなければ一般的に使用されている他の乳化剤が挙げられる。
【0049】
本明細書に用いるのに好適なアニオン性界面活性剤の非限定的な例としては、アルキル及びアルキルエーテルサルフェート、硫酸化モノグリセリド、スルホン化オレフィン、アルキルアリールスルホネート、一級又は二級アルカンスルホネート、アルキルスルホスクシネート、アシルタウレート、アシルイセチオネート、アルキルグリセリルエーテルスルホネート、スルホン化メチルエステル、スルホン化脂肪酸、アルキルホスフェート、アシルグルタメート、アシルサルコシネート、アルキルスルホアセテート、アシル化ペプチド、アルキルエーテルカルボキシレート、アシルラクチレート、アニオン性フルオロ界面活性剤、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0050】
本発明の実施に特に好適なアニオン性界面活性剤の1つのカテゴリーとしては、C6~C20直鎖アルキルベンゼンスルホネート(LAS)界面活性剤が挙げられる。LAS界面活性剤は、当該技術分野において周知であり、市販されている直鎖アルキルベンゼンをスルホン化することによって容易に入手することができる。本発明で使用することができる例示的なC10~C20直鎖アルキルベンゼンスルホネートとしては、C10~C20直鎖アルキルベンゼンスルホン酸のアルカリ金属、アルカリ土類金属、又はアンモニウムの塩を、好ましくは、C11~C18又はC11~C14直鎖アルキルベンゼンスルホン酸のナトリウム、カリウム、マグネシウム、及び/又はアンモニウムの塩が挙げられる。C12及び/又はC14直鎖アルキルベンゼンスルホン酸のナトリウム又はカリウムの塩がより好ましく、C12及び/又はC14直鎖アルキルベンゼンスルホン酸のナトリウム塩、すなわち、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム又はテトラデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが最も好ましい。
【0051】
LASは、優れた洗浄効果をもたらし、洗濯洗剤用途で使用するのに特に好適である。(上に記載したとおりの)特定の重量平均分子量を有するポリビニルアルコールをフィルム形成剤及びキャリアとして使用したとき、組成物全体のフィルム形成性能及び安定性に悪影響を及ぼすことなく、LASを主界面活性剤として使用できることは、本発明の驚くべきかつ予想外の発見であった。それに対応して、本発明の特定の実施形態では、LASは、固体シート物品において主界面活性剤として使用される。存在する場合、本発明の固体シート物品中のLASの量は、固体シート物品の総重量に対して約25%~約70%、好ましくは約30%~約65%、より好ましくは約40%~約60%の範囲であってよい。
【0052】
本発明の実施に好適なアニオン性界面活性剤の別のカテゴリーとしては、約0.5~約5、好ましくは約0.8~約4、より好ましくは約1~約3、最も好ましくは約1.5~約2.5の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するトリデセス硫酸ナトリウム(STS)が挙げられる。トリデセスは、一実施形態では1分子当たり平均して少なくとも1つのメチル分枝を含むC13分枝状アルコキシル化炭化水素である。本発明によって使用されるSTSとしては、ST(EOxPOy)Sを挙げることができるが、EOxは、0~5、好ましくは1~4、より好ましくは1~3の範囲の繰り返し数xを有する繰り返しエチレンオキシド単位を指し、POyは、0~5、好ましくは0~4、より好ましくは0~2の範囲の繰り返し数yを有する繰り返しプロピレンオキシド単位を指す。例えば、約2の重量平均エトキシル化度を有するST2Sなどの材料は、エトキシレートを有さない、1モルのエトキシレートを有する、3モルのエトキシレートを有するなどのかなりの量の分子を含んでもよいが、エトキシル化の分布は、広い、狭い、又は切断型であってよく、それでも依然として約2の全重量平均エトキシル化度をもたらすことが理解される。STSは、パーソナルクレンジング用途に特に好適であり、(上に記載したとおりの)特定の重量平均分子量を有するポリビニルアルコールをフィルム形成剤及びキャリアとして使用したとき、組成物全体のフィルム形成性能及び安定性に悪影響を及ぼすことなく、STSを主界面活性剤として使用できることは、本発明の驚くべきかつ予想外の発見であった。それに対応して、本発明の特定の実施形態では、STSは、固体シート物品において主界面活性剤として使用される。存在する場合、本発明の固体シート物品中のSTS界面活性剤の量は、固体シート物品の総重量に対して約25%~約70%、好ましくは約30%~約65%、より好ましくは約40%~約60%の範囲であってよい。
【0053】
本発明の実施に好適なアニオン性界面活性剤の別のカテゴリーとしては、アルキルサルフェートが挙げられる。これら物質は、それぞれの式:ROSO3M(式中、Rは、約6~約20個の炭素原子のアルキル又はアルケニルであり、xは、1~10であり、Mは、アンモニウム、ナトリウム、カリウム及びトリエタノールアミンなどの水溶性カチオンである)を有する。好ましくは、Rは、約6~約18個、好ましくは約8~約16個、より好ましくは約10~約14個の炭素原子を有する。既に、非芳香族及び非アルコキシル化C6~C20直鎖又は分岐鎖アルキルサルフェート(AS)は、フィルム形成性能及び保存安定性における低分子量ポリビニルアルコール(例えば、50,000ダルトン未満(less more than)の重量平均分子量を有するもの)との適合性から、可撓性かつ溶解性の固体シート物品における第一選択の界面活性剤として、特にその物品における主界面活性剤として考えられている。しかしながら、より高い重量平均分子量(例えば、約50,000~約400,000ダルトン、好ましくは約60,000~約300,000ダルトン、より好ましくは約70,000~約200,000ダルトン、最も好ましくは約80,000~約150,000ダルトン)を有するポリビニルアルコールをフィルム形成剤及びキャリアとして使用したとき、組成物全体のフィルム形成性能及び安定性に悪影響を及ぼすことなく、より良好な洗浄性能を有し、よりコストの低いLAS及び/又はSTSなどの界面活性剤を、固体シート物品における主界面活性剤として使用できることは、本発明の驚くべきかつ予想外の発見であった。したがって、本発明の特に好ましい実施形態では、当該固体シート物品の約20重量%以下、好ましくは0重量%~約10重量%、より好ましくは0重量%~約5重量%、最も好ましくは0重量%~約1重量%のASを含む固体シート物品を提供することが望ましい。
【0054】
本発明の実施に好適なアニオン性界面活性剤の別のカテゴリーとしては、C6~C20直鎖又は分枝鎖アルキルアルコキシサルフェート(AAS)、特に約0.5~約10、好ましくは約1~約5、より好ましくは約2~約4の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するものが挙げられる。このカテゴリーの中でも、それぞれの式RO(C2H4O)xSO3Mを有する直鎖又は分枝鎖アルキルエトキシサルフェート(AES)が特に好ましく、式中、Rは、約6~約20個の炭素原子のアルキル又はアルケニルであり、xは、1~10であり、Mは、アンモニウム、ナトリウム、カリウム、及びトリエタノールアミンなどの水溶性カチオンである。好ましくは、Rは、約6~約18個、好ましくは約8~約16個、より好ましくは約10~約14個の炭素原子を有する。AES界面活性剤は、典型的には、エチレンオキシドと約6~約20個の炭素原子を有する一価アルコールとの縮合生成物として作製される。有用なアルコールは、脂肪、例えば、ココナッツ油又はタローに由来していてもよく、又は合成であってもよい。本明細書では、ラウリルアルコール及びココナッツ油由来の直鎖アルコールが好ましい。このようなアルコールを、約1~約10、好ましくは約3~約5、特に約3のモル比のエチレンオキシドと反応させ、例えば、アルコール1モル当たり平均3モルのエチレンオキシドを有する、得られた分子種の混合物を硫酸化し、中和する。非常に好ましいAAS(又は好ましくはAES)は、個々の化合物の混合物を含むものであり、当該混合物は、約10~約16個の炭素原子の平均アルキル鎖長及び約1~約4モルのエチレンオキシドの平均エトキシル化度を有する。存在する場合、本発明の固体シート中のAASの量は、当該固体シート物品の総重量に対して約2%~約40%、好ましくは約5%~約30%、より好ましくは約8%~約12%の範囲であり得る。
【0055】
他の好適なアニオン性界面活性剤としては、一般式[R1-SO3-M](式中、R1は、約6~約20個、好ましくは約10~約18個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖の飽和脂肪族炭化水素ラジカルからなる群から選択され、Mは、カチオンである)の有機硫酸反応生成物の水溶性塩が挙げられる。アルカリ金属及びアンモニウムスルホン化C10~18 n-パラフィンが好ましい。他の好適なアニオン性界面活性剤としては、約12~約24個の炭素原子を有するオレフィンスルホネートが挙げられる。オレフィンスルホネートが由来するα-オレフィンは、約12~約24個の炭素原子、好ましくは約14~約16個の炭素原子を有するモノ-オレフィンである。好ましくは、それらは直鎖オレフィンである。
【0056】
布地及びホームケア組成物に用いるのに好適なアニオン性界面活性剤の別の種類は、β-アルキルオキシアルカンスルホネートである。これらの化合物は以下の化学式を有する:
【0057】
【化2】
式中、R
1は、約6~約20個の炭素原子を有する直鎖アルキル基であり、R
2は、約1(好ましい)~約3個の炭素原子を有する低級アルキル基であり、Mは、上記のとおりの水溶性カチオンである。
【0058】
好適なアニオン性界面活性剤の更なる例は、イセチオン酸でエステル化され、水酸化ナトリウムで中和された、例えばココナッツ油に由来する脂肪酸の反応生成物;例えば脂肪酸がココナッツ油に由来するメチルタウリドの脂肪酸アミドのナトリウム又はカリウムの塩である。更に他の好適なアニオン性界面活性剤は、スクシンアマートであり、その例としては、N-オクタデシルスルホスクシンアミド酸二ナトリウム、ジアンモニウムラウリルスルホスクシンアマート、四ナトリウムN-(1,2-ジカルボキシエチル)-N-オクタデシルスルホスクシンアマート、スルホコハク酸ナトリウムのジアミルエステル、スルホコハク酸ナトリウムのジヘキシルエステル、及びスルホコハク酸ナトリウムのジオクチルエステルが挙げられる。
【0059】
本発明の固体シートに含まれ得る非イオン性界面活性剤は、アルキルアルコキシル化アルコール、アルキルアルコキシル化フェノール、アルキル多糖類(特に、アルキルグルコシド及びアルキルポリグルコシド)、ポリヒドロキシ脂肪酸アミド、アルコキシル化脂肪酸エステル、スクロースエステル、ソルビタンエステル、及びソルビタンエステルのアルコキシル化誘導体、アミンオキシドなどが挙げられるがこれらに限定されない、任意の従来の非イオン性界面活性剤であってよい。好ましい非イオン性界面活性剤は、式R1(OC2H4)nOH(式中、R1はC8~C18アルキル基又はアルキルフェニル基であり、nは約1~約80である)のものである。特に好ましいのは、Shellから市販されているNEODOL(登録商標)非イオン性界面活性剤などの、約1~約20、好ましくは約5~約15、より好ましくは約7~約10の重量平均エトキシル化度を有するC8~C18アルキルエトキシル化アルコールである。本明細書で有用な非イオン性界面活性剤の他の非限定的な例としては、アルコキシレート単位がエチレンオキシ単位、プロピレンオキシ単位、又はこれらの混合物であってよいC6~C12アルキルフェノールアルコキシレート、C12~C18アルコール、及びエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックポリマーとのC6~C12アルキルフェノール縮合物(Pluronic(登録商標)(BASF)など);C14~C22中鎖分枝状アルコール(branched alcohols、BA)、C14~C22中鎖分枝状アルキルアルコキシレート(BAEx、式中、xは1~30である)、アルキル多糖類、具体的には、アルキルポリグリコシド、ポリヒドロキシ脂肪酸アミド、並びにエーテルで末端保護されたポリ(オキシアルキル化)アルコール界面活性剤が挙げられる。好適な非イオン性界面活性剤はまた、商品名Lutensol(登録商標)としてBASFから販売されているものを含む。
【0060】
好ましい実施形態では、非イオン性界面活性剤は、モノラウリン酸ソルビタン(SPAN(登録商標)20)、モノパルミチン酸ソルビタン(SPAN(登録商標)40)、モノステアリン酸ソルビタン(SPAN(登録商標)60)、トリステアリン酸ソルビタン(SPAN(登録商標)65)、モノオレイン酸ソルビタン(SPAN(登録商標)80)、トリオレイン酸ソルビタン(SPAN(登録商標)85)、イソステアリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(Tween(登録商標)20)、モノパルミチン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(Tween(登録商標)40)、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(Tween(登録商標)60)、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(Tween(登録商標)80)、モノラウリン酸ポリオキシエチレン(4)ソルビタン(Tween(登録商標)21)、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(4)ソルビタン(Tween(登録商標)61)、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(5)ソルビタン(Tween(登録商標)81)(全てUniqemaから入手可能)、及びこれらの組み合わせを含む、ソルビタンエステル及びソルビタンエステルのアルコキシル化誘導体から選択される。
【0061】
本発明の実施に最も好ましい非イオン性界面活性剤としては、5~15の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するC6~C20直鎖又は分枝鎖アルキルアルコキシル化アルコール(AA)、より好ましくは7~9の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するC12~C14直鎖エトキシル化アルコールが挙げられる。存在する場合、本発明の固体シート中のAA型非イオン性界面活性剤の量は、固体シートの総重量に対して約2%~約40%、好ましくは約5%~約30%、より好ましくは約8%~約12%の範囲であってよい。
【0062】
本発明の好ましい実施形態では、可撓性かつ溶解性の固体シート物品は、当該固体シート物品の約25重量%~約70重量%、好ましくは約30重量%~約65重量%、より好ましくは約40重量%~約60重量%の、LAS、STS、又はこれらの組み合わせである第1の界面活性剤を含む。より好ましくは、このような第1の界面活性剤は、固体シート物品中に主界面活性剤として存在する。
【0063】
本発明の特に好ましい実施形態では、可撓性かつ溶解性の固体シート物品は、上記第1の界面活性剤に加えて、当該固体シート物品の約5重量%~約40重量%、好ましくは約10重量%~約30重量%、より好ましくは約15重量%~約25重量%の、AAS、AA、又はこれらの組み合わせである第2の界面活性剤を含む。
【0064】
本発明の可撓性かつ溶解性の固体シート物品は、1つ以上の両性界面活性剤を更に含んでもよい。本発明の固体シートに用いるのに好適な両性界面活性剤としては、脂肪族ラジカルが直鎖又は分枝鎖であってよく、脂肪族置換基のうちの1つが約8~約18個の炭素原子を含有し、1つがアニオン性水可溶化基、例えば、カルボキシ、スルホネート、サルフェート、ホスフェート、又はホスホネートを含有する、脂肪族の二級及び三級アミンの誘導体として広く記載されるものが挙げられる。この定義に該当する化合物の例は、3-ドデシル-アミノプロピオン酸ナトリウム、3-ドデシルアミノプロパンスルホン酸ナトリウム、ラウリルサルコシン酸ナトリウム、ドデシルアミンをイセチオン酸ナトリウムと反応させることによって調製されるものなどのN-アルキルタウリン、及びN-高級アルキルアスパラギン酸である。
【0065】
パーソナルケア用途(例えば、シャンプー、顔又は身体洗浄剤など)の固体シートに配合するのに特に好適な両性界面活性剤の1つのカテゴリーとしては、ラウロアンホアセテート及びココアンホアセテートなどのアルキルアンホアセテートが挙げられる。アルキルアンホアセテートは、モノアセテート及びジアセテートで構成され得る。アルキルアンホアセテートのいくつかの種類では、ジアセテートは、不純物又は意図しない反応生成物である。存在する場合、本発明の固体シート中のアルキルアンホアセテートの量は、固体シートの総重量に対して約2%~約40%、好ましくは約5%~約30%、より好ましくは約10%~約20%の範囲であってよい。
【0066】
好適な双極性界面活性剤には、脂肪族第四級アンモニウム、ホスホニウム及びスルホニウム化合物の誘導体として広く記述されるものであって、その脂肪族ラジカルが直鎖又は分枝鎖であることができ、その脂肪族置換基のうちの1つが約8~約18個の炭素原子を含有し、1つがアニオン性基、例えば、カルボキシ、スルホネート、サルフェート、ホスフェート又はホスホネートを含有するものが挙げられる。このような好適な双極性界面活性剤は、以下の式によって表すことができる:
【0067】
【化3】
(式中、R
2は、約8~約18個の炭素原子のアルキル、アルケニル、又はヒドロキシアルキルラジカル、0~約10個のエチレンオキシド部分、及び0~約1個のグリセリル部分を含有し、Yは、窒素、リン、及び硫黄原子からなる群から選択され、R
3は、約1~約3個の炭素原子を含有するアルキル又はモノヒドロキシアルキル基であり、Xは、Yが硫黄原子であるとき、1であり、Yが窒素又はリン原子であるとき、2であり、R
4は、約1~約4個の炭素原子のアルキレン又はヒドロキシアルキレンであり、Zは、カルボキシレート、スルホネート、サルフェート、ホスホネート、及びホスフェート基からなる群から選択されるラジカルである)。
【0068】
本明細書に用いるのに好適な他の双極性界面活性剤としては、ココジメチルカルボキシメチルベタイン、ココアミドプロピルベタイン、ココベタイン、ラウリルアミドプロピルベタイン、オレイルベタイン、ラウリルジメチルカルボキシメチルベタイン、ラウリルジメチルアルファカルボキシエチルベタイン、セチルジメチルカルボキシメチルベタイン、ラウリルビス-(2-ヒドロキシエチル)カルボキシメチルベタイン、ステアリルビス-(2-ヒドロキシプロピル)カルボキシメチルベタイン、オレイルジメチルガンマ-カルボキシプロピルベタイン、及びラウリルビス-(2-ヒドロキシプロピル)アルファ-カルボキシエチルベタインなどの高級アルキルベタインを含むベタインが挙げられる。スルホベタインは、ココジメチルスルホプロピルベタイン、ステアリルジメチルスルホプロピルベタイン、ラウリルジメチルスルホエチルベタイン、ラウリルビス-(2-ヒドロキシエチル)スルホプロピルベタインなどによって表すことができ、RCONH(CH2)3ラジカル(式中、Rは、C11~C17アルキルである)がベタインの窒素原子に結合しているアミドベタイン及びアミドスルホベタインも本発明において有用である。
【0069】
また、カチオン性界面活性剤を、本発明において、特に布地柔軟剤及びヘアコンディショナー製品において利用してもよい。カチオン性界面活性剤を主界面活性剤として含有する製品の作製において使用されるとき、このようなカチオン性界面活性剤は、固体シートの総重量に対して約2%~約30%、好ましくは約3%~約20%、より好ましくは約5%~約15%の範囲の量で存在することが好ましい。
【0070】
カチオン性界面活性剤としては、ジアミド活性物質、並びにアミド結合及びエステル結合の混合を有する活性物質の種類を包含するDEQA化合物を挙げることができる。好ましいDEQA化合物は、典型的には、MDEA(メチルジエタノールアミン)及びTEA(トリエタノールアミン)などのアルカノールアミンを脂肪酸と反応させることによって作製される。このような反応から典型的に得られるいくつかの物質としては、N,N-ジ(アシル-オキシエチル)-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド又はN,N-ジ(アシル-オキシエチル)-N,N-メチルヒドロキシエチルアンモニウムメチルサルフェートが挙げられ、ここで、アシル基は、動物脂、不飽和、及び多価不飽和脂肪酸に由来する。
【0071】
カチオン性界面活性剤として用いるのに好適な他の活性物質としては、例えば、約2:1の分子比の脂肪酸とジアルキレントリアミンとの反応生成物が挙げられ、当該反応生成物は以下の式の化合物を含有する:
R1-C(O)-NH-R2-NH-R3-NH-C(O)-R1
(式中、R1、R2は上に定義されたとおりであり、各R3は、C1~6アルキレン基、好ましくはエチレン基である)。これらの活性物質の例は、約2:1の分子比のタロー酸、キャノーラ酸、又はオレイン酸とジエチレントリアミンとの反応生成物であり、当該反応生成物の混合物は、それぞれ以下の式を有するN,N”-ジタローオイルジエチレントリアミン、N,N”-ジキャノーラ-オイルジエチレントリアミン、又はN,N”-ジオレオイルジエチレントリアミンを含有する:
R1-C(O)-NH-CH2CH2-NH-CH2CH2-NH-C(O)-R1
(式中、R2及びR3は、二価エチレン基であり、R1は、上に定義されたとおりであり、R1が植物若しくは動物の供給源に由来する市販されているオレイン酸のオレオイル基であるとき、この構造の許容可能な例としては、Henkel Corporationから入手可能なEMERSOL(登録商標)223LL又はEMERSOL(登録商標)7021が挙げられる)。
【0072】
カチオン性界面活性剤として使用される別の活性物質は、下式を有する:
[R1-C(O)-NR-R2-N(R)2-R3-NR-C(O)-R1]+X-
(式中、R、R1、R2、R3、及びX-は、上に定義されたとおりである)。この活性物質の例は、下式を有するジ脂肪アミドアミン系柔軟剤である:
[R1-C(O)-NH-CH2CH2-N(CH3)(CH2CH2OH)-CH2CH2-NH-C(O)-R1]+CH3SO4
-
(式中、R1-C(O)は、DegussaからそれぞれVARISOFT(登録商標)222LT、VARISOFT(登録商標)222、及びVARISOFT(登録商標)110の商標名で市販されているオレオイル基、ソフトタロー基、又は硬化タロー基である)。
【0073】
カチオン性界面活性剤として使用するための活性物質として好適な第2のタイプのDEQA(「DEQA(2)」)化合物は、次の一般式を有する:
[R3N+CH2CH(YR1)(CH2YR1)]X-
(式中、各Y、R、R1、及びX-は、上記と同じ意味を有する)。好ましいDEQA(2)の例は、式1,2-ジ(アシルオキシ)-3-トリメチルアンモニオプロパンクロリドを有する「プロピル」エステル四級アンモニウム布地柔軟剤活性物質である。
【0074】
本発明のパーソナルケア組成物での使用に好適な高分子界面活性剤としては、限定するものではないが、エチレンオキシドと脂肪族アルキル残基(fatty alkyl residues)とのブロックコポリマー、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマー、疎水変性ポリアクリレート、疎水変性セルロース、シリコーンポリエーテル、シリコーンコポリオールエステル、ジ四級ポリジメチルシロキサン、及び共修飾されたアミノ/ポリエーテルシリコーンが挙げられる。
【0075】
3.可塑剤
本発明の好ましい実施形態では、本発明の可撓性かつ溶解性の固体シート物品は、好ましくは当該固体シート物品の総重量に対して約0.1%~約25%、好ましくは約0.5%~約20%、より好ましくは約1%~約15%、最も好ましくは2%~12%の範囲の量の可塑剤を更に含む。
【0076】
本発明に用いるのに好適な可塑剤としては、例えば、ポリオール、コポリオール、ポリカルボン酸、ポリエステル、ジメチコンコポリオールなどが挙げられる。
【0077】
有用なポリオールの例としては、グリセリン、ジグリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール(特に200~600)、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、グリセロール誘導体(プロポキシル化グリセロールなど)、グリシドール、シクロヘキサンジメタノール、ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチルペンタン-1,3-ジオール、ペンタエリスリトール、尿素、糖アルコール(ソルビトール、マンニトール、ラクチトール、キシリトール、マルチトール、並びに他の一価及び多価アルコールなど)、単糖、二糖、及びオリゴ糖(フルクトース、グルコース、スクロース、マルトース、ラクトース、高フルクトースコーンシロップ固形物、及びデキストリンなど)、アスコルビン酸、ソルベート、エチレンビスホルムアミド、アミノ酸などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
ポリカルボン酸の例としては、クエン酸、マレイン酸、コハク酸、ポリアクリル酸、及びポリマレイン酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
好適なポリエステルの例としては、グリセロールトリアセテート、アセチル化モノグリセリド、ジエチルフタレート、トリエチルシトレート、トリブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリブチルシトレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
好適なジメチコンコポリオールの例としては、PEG-12ジメチコン、PEG/PPG-18/18ジメチコン、及びPPG-12ジメチコンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
他の好適な可塑剤としては、アルキル及びアリルフタレート;ナフタレート;ラクテート(例えば、ナトリウム、アンモニウム、及びカリウム塩);ソルベス-30;尿素;乳酸;ピロリドンカルボン酸ナトリウム(PCA);ヒアルロン酸ナトリウム又はヒアルロン酸;可溶性コラーゲン;変性タンパク質;L-グルタミン酸モノナトリウム;α&βヒドロキシル酸、例えば、グリコール酸、乳酸、クエン酸、マレイン酸及びサリチル酸;ポリメタクリル酸グリセリル;ポリマー可塑剤、例えばポリクオタニウム;タンパク質及びアミノ酸、例えばグルタミン酸、アスパラギン酸、及びリシン;水素デンプン加水分解産物;その他低分子量エステル(例えば、C2~C10アルコールと酸のエステル);並びに、食品及びプラスチック業界の当業者に既知である任意の他の水溶性可塑剤;並びにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
可塑剤の特に好ましい例としては、グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、及びこれらの混合物が挙げられる。最も好ましい可塑剤はグリセリンである。
【0083】
4.追加成分
上記の成分、例えば、PVAポリマー又はコポリマー、界面活性剤、及び可塑剤に加えて、本発明の可撓性かつ溶解性の固体シート物品は、その意図される用途に応じて、1つ以上の追加成分を含んでよい。このような1つ以上の追加成分は、布地ケア活性物質、食器洗浄活性物質、硬質表面洗浄活性物質、美容及び/又はスキンケア活性物質、パーソナルクレンジング活性物質、ヘアケア活性物質、口腔ケア活性物質、女性ケア活性物質、ベビーケア活性物質、並びにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。
【0084】
好適な布地ケア活性物質としては、有機溶媒(直鎖又は分枝鎖の低級C1~C8アルコール、ジオール、グリセロール、又はグリコール;C1~C4アルカノールアミンなどの低級アミン溶媒、及びその混合物;より具体的には、1,2-プロパンジオール、エタノール、グリセロール、モノエタノールアミン、及びトリエタノールアミン)、キャリア、ヒドロトロープ、ビルダー、キレート剤、分散剤、酵素及び酵素安定剤、触媒材料、漂白剤(光漂白剤を含む)及び漂白活性化剤、香料(カプセル化香料又は香料マイクロカプセルを含む)、着色剤(顔料及び染料など、色相染料を含む)、増白剤、移染防止剤、粘土汚れ除去/再付着防止剤、構造化剤、レオロジー変性剤、抑泡剤、加工助剤、布地柔軟剤、抗菌剤などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
好適なヘアケア活性物質としては、縮れ低減のためのクラスIIの水分制御物質(サリチル酸及び誘導体、有機アルコール、並びにエステル)、カチオン性界面活性剤(特に、25℃における水への溶解度が、好ましくは0.5g/水100g未満、より好ましくは0.3g/水100g未満の水不溶性タイプ)、高融点脂肪族化合物(例えば、25℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは45℃以上、更により好ましくは50℃以上の融点を有する脂肪族アルコール、脂肪酸、及びこれらの混合物、シリコーン化合物、コンディショニング剤(Hormelから入手可能な商標名Peptein 2000を有する加水分解コラーゲン、エーザイから入手可能な商標名Emix-dのビタミンE、Rocheから入手可能なパンテノール、Rocheから入手可能なパンテニルエチルエーテル、加水分解ケラチン、タンパク質、植物抽出物、及び栄養素)、防腐剤(ベンジルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、及びイミダゾリジニル尿素)、pH調整剤(クエン酸、クエン酸ナトリウム、コハク酸、リン酸、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなど)、塩(酢酸カリウム及び塩化ナトリウムなど)、着色剤、香料又は芳香剤、金属イオン封鎖剤(エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムなど)、紫外線及び赤外線遮断及び吸収剤(サリチル酸オクチルなど)、毛髪脱色剤、毛髪パーマ剤、毛髪固定剤、抗ふけ剤、抗菌剤、発毛又は育毛剤、共溶媒又は他の追加の溶媒などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0086】
好適な美容及び/又はスキンケア活性物質としては、化粧品での使用が承認されており、CTFA Cosmetic Ingredient Handbook,Second Edition,The Cosmetic,Toiletries,and Fragrance Association,Inc.1988,1992などの参考文献に記載されている物質が挙げられる。好適な美容及び/又はスキンケア活性物質の更なる非限定的な例としては、防腐剤、香料又は芳香剤、着色剤又は染料、増粘剤、保湿剤、皮膚軟化剤、医薬活性物質、ビタミン又は栄養素、日焼け止め剤、脱臭剤、感覚剤、植物抽出物、栄養素、収れん剤、化粧品粒子、吸収性粒子、繊維、抗炎症剤、美白剤、皮膚色調剤(皮膚全体の色調を改善する機能を有し、ビタミンB3化合物、糖アミン、ヘキサミジン化合物、サリチル酸、1,3-ジヒドロキシ-4-アルキルベンゼン、例えば、ヘキシルレゾルシノール及びレチノイドなどを挙げることができる)、皮膚日焼け剤、剥離剤、保湿剤、酵素、酸化防止剤、フリーラジカル捕捉剤、抗しわ活性物質、抗にきび剤、酸、塩基、ミネラル、懸濁剤、pH調整剤、顔料粒子、抗菌剤、防虫剤、シェービングローション剤、共溶媒又は他の追加の溶媒などが挙げられる。
【0087】
本発明の固体シート物品は、組成物での使用が既知であるか又は組成物において有用である他の任意成分を更に含んでいてもよいが、このような任意材料は、本明細書に記載される選択された必須材料と適合性であるか、又はそうでなくても製品の性能を過度に損なわない。
【0088】
本発明の固体シートによって形成され得る製品タイプの実施形態の非限定的な例としては、洗濯洗剤製品、布地柔軟化製品、手洗い製品、ヘアシャンプー又は他のヘアトリートメント製品、ボディクレンジング製品、シェービング調製製品、食器洗浄製品、医薬又は他のスキンケア活性物質を含有するパーソナルケア基剤、保湿製品、日焼け止め製品、美容又はスキンケア製品、脱臭製品、口腔ケア製品、女性用洗浄製品、ベビーケア製品、芳香剤含有製品などが挙げられる。
【0089】
上述した可撓性、溶解性、好ましくは多孔質の固体シート物品の作製プロセス、並びにそれを本発明の溶解性多層構造体に組み立てる方法について以下に詳細に説明する。
【0090】
III.シートを作製するためのプロセスの概要
本発明の可撓性かつ溶解性の固体シート物品は、任意の好適なシート形成プロセスによって形成することができる。好ましくは、このようなシート形成プロセスは、得られる固体シート物品において、多孔質構造、より好ましくは連続気泡発泡体(OCF)構造の形成をもたらすエアレーション工程を含む。
【0091】
例えば、国際公開第2010077627号は、溶解を改善する機能を有する、約80%~100%の連続気泡含有率を特徴とするOCF構造を有する多孔質シートを形成するためのバッチプロセスを開示している。具体的には、最初に原材料のプレミックスを形成し、これを激しくエアレーションし、次いで、バッチ(例えば、対流オーブン又はマイクロ波オーブン内)で熱乾燥させて、所望のOCF構造を有する多孔質シートを形成する。このようなOCF構造は、得られる多孔質シートの溶解速度を著しく改善するが、このようなシートには、より厚い気泡壁を有する、視覚的により密で、より多孔性の低い底部領域がやはり存在する。このような高密度の底部領域は、シートを通過する水の流れに悪影響を及ぼすことがあり、それによって、シートの全体的な溶解速度に悪影響を及ぼし得る。複数のこのようなシートを積層して多層構造を形成したとき、複数の高密度底部領域の「バリア」作用が特に増強される。
【0092】
別の例では、国際公開第2012138820号は、エアレーションされた湿潤プレミックスの連続乾燥が、例えば(対流オーブン又はマイクロ波オーブンの代わりに)衝突オーブンを使用することによって行われることを除いて、国際公開第2010077627号と同様のプロセスを開示している。このような連続乾燥プロセスによって形成されるOCFシートは、その異なる領域全体にわたる細孔構造の均一性/一貫性の改善を特徴とする。残念ながら、このようなOCFシートには、比較的小さな細孔開口部を有する上面及び比較的小さい細孔を有する上部領域(すなわち、クラスト状の上部領域)などの律速因子が依然として存在し、これらは、それを通過する水の流れに悪影響を及ぼし、その溶解を減速させることがある。
【0093】
上記のプロセスにおける乾燥工程の間、水の蒸発、気泡の崩壊、薄膜気泡縁(bubble facings)から気泡間の台地状境界(plateau borders)への間隙排液(気泡間に開口部を生成し、連続気泡を形成する)、及びプレミックスの固化の同時機構の下でOCF構造が形成される。様々な加工条件、例えば、湿潤プレミックス中の固形分含量、湿潤プレミックスの粘度、重力、及び乾燥温度、並びに制御された排液を達成し、所望のOCF構造を形成するようにこのような加工条件のバランスをとる必要性が、これら機構に影響し得る。
【0094】
上述の加工条件に加えて、乾燥工程中に使用される熱エネルギーの方向(すなわち、加熱方向)も、得られるOCF構造に著しい影響を及ぼし得ることは、本発明の驚くべきかつ予想外の発見であった。例えば、乾燥工程中に熱エネルギーが非方向的に印加される(すなわち、明らかな加熱方向がない)場合、又は乾燥工程の大部分の間、加熱方向が重力方向と実質的に整列している(すなわち、その間のオフセット角度が90°未満である)場合、得られる可撓性、多孔質、溶解性の固体シートは、その厚さを横断する方向に沿った異なる領域において、細孔開口部がより小さく、孔径のばらつきがより大きい上面を有する傾向がある。対照的に、乾燥工程の大部分の間、加熱方向が重力方向からオフセットしている(すなわち、その間のオフセット角度が90°以上である)場合、得られる固体シートは、このようなシートの厚さを横断する方向に沿った異なる領域において、細孔開口部がより大きく、孔径のばらつきがより小さい上面を有し得る。それに対応して、後者のシートは、それを通って流れる水に対してより大きな受容力があるので、前者のシートよりも溶解性が高い。
【0095】
いかなる理論に束縛されるものでもないが、乾燥工程中の加熱方向と重力方向との間の整列又は不整列、及びその持続時間は、気泡間の間隙排液に著しい影響を与えることがあり、それに対応して、プレミックスの固化における細孔の膨張及び細孔の開口に影響を及ぼし、非常に異なるOCF構造を有する固体シートをもたらすと考えられる。このような違いは、以下の
図1~
図5により明確に示される。
【0096】
図1は、対流式加熱/乾燥構成を示す。乾燥工程中、成形型10(金属、セラミック、又はTeflon(登録商標)などの任意の好適な材料で作製され得る)に、水に溶解している原材料(例えば、PVAポリマー又はコポリマー、界面活性剤、並びに所望により、可塑剤及び任意の他の活性成分)を含有するエアレーションされたプレミックスを充填し、これによって、第1の側面12A(すなわち、上側)と、対向する第2の側面12B(すなわち、成形型10の支持面と直接接触しているため、底側)とを有するシート12が形成される。このような成形型10を、乾燥工程中に約45~46分間130℃の対流オーブン内に入れる。対流オーブンは、シート12を上方から、すなわち、(斜交平行線模様の矢印によって示される)下向きの加熱方向に沿って加熱し、これによって、第1の側面12Aから反対側の第2の面12Bに向かって低下する温度勾配が当該シート12内に形成される。下向きの加熱方向は、(白色の矢印によって示される)重力方向と整列し、このような整列した位置は、乾燥時間全体にわたって維持される。乾燥中、重力によって液体プレミックスは底部領域に向かって下方に流れるが、加熱方向が下向きであると、まず上部領域が乾燥し、最後に底部領域が乾燥する。その結果、完全に膨張する機会を得なかった気泡によって形成された、小さな開口部を有する多数の細孔を含む上面を有する多孔質固体シートが形成される。より小さな細孔開口部を有するこのような上面は、シートの溶解速度を制限する可能性があるので、シートへの水の浸入に関して最適ではない。他方、このようなシートの底部領域は、密であり、多孔性が低く、完全に膨張した気泡によって形成されるが非常に数が少ない大きな細孔を有し、重力によってもたらされる下向きの排液により、このような底部領域内の細孔間の気泡壁は厚くなる。細孔がより少なく、気泡壁の厚いこのような密な底部領域は、シートの全体的な溶解速度に関する更なる律速因子である。
【0097】
図2は、マイクロ波式加熱/乾燥構成を示す。乾燥工程中、成形型30に、エアレーションされた湿潤プレミックスを充填し、これによって、第1の側面32A(上側)及び反対側の第2の側面32B(底側)を有するシート32が形成される。次いで、このような成形型30を低エネルギー密度マイクロ波アプリケータ(図示せず)内に入れ、このアプリケータは、Industrial Microwave System Inc.(North Carolina)によって提供され、2.0kWの電力、1フィート/分のベルト速度、及び54.4℃の周囲空気温度で動作する。成形型30を、乾燥工程中に約12分間、このようなマイクロ波アプリケーション内に入れる。このようなマイクロ波アプリケータは、なんらかの明らかな又は一貫した加熱方向を有さずに、シート32を内部から加熱する。それに対応して、当該シート32には温度勾配が形成されない。乾燥中、シート32全体は同時に加熱されるか又はほぼ同時に加熱されるが、(白色の矢印によって示される)重力によって、液体プレミックスはやはり底部領域に向かって下向きに流れる。結果として、このように形成された固化したシートは、対流式加熱/乾燥構成によって形成されたシートと比較して、より均一に分布し、より均一なサイズの細孔を有する。しかしながら、マイクロ波式乾燥工程中の重力下での排液によって、やはり厚い気泡壁を有する密な底部領域が生じ得る。更に、シート32全体を同時に加熱してもなお、乾燥工程中の上面における細孔の膨張及び細孔の開口が制限されることがあり、得られるシートは、比較的小さな細孔開口部を有する上面を依然として有し得る。更に、マイクロ波エネルギーは、シート32内の水を加熱し、このような水を沸騰させるので、不規則なサイズの気泡を発生させ、厚い気泡壁を有する意図しない密な領域が形成されることがある。
【0098】
図3は、衝突オーブン式加熱/乾燥構成を示す。乾燥工程中、成形型40に、エアレーションされた湿潤プレミックスを充填し、これによって、第1の側面42A(上側)及び反対側の第2の側面42B(底側)を有するシート42が形成される。次いで、このような成形型40を、国際公開第2012138820号の実施例1、表2に記載されているものと同様の条件下で、連続衝突オーブン(図示せず)内に入れる。このような連続衝突オーブンは、(2本の斜交平行線模様の矢印によって示される)対向する、オフセットしている加熱方向で、上部及び底部の両方からシート42を加熱する。それに対応して、乾燥中に当該シート42内に明らかな温度勾配は形成されず、シート42全体が、その上面及び底面の両方からほぼ同時に加熱される。
図2に記載されているマイクロ波式加熱/乾燥構成と同様に、
図3のこのような衝突オーブン式加熱/乾燥構成においても、(白色の矢印によって示される)重力によって、液体プレミックスは底部領域に向かって下向きに流れ続ける。結果として、このように形成された固化したシートは、対流式加熱/乾燥構成によって形成されたシートと比較して、より均一に分布し、より均一なサイズの細孔を有する。しかしながら、乾燥工程中の重力下での排液によって、やはり厚い気泡壁を有する密な底部領域が生じ得る。更に、シート42全体を両方からほぼ同時に加熱してもなお、乾燥工程中の上面における細孔の膨張及び細孔の開口が制限されることがあり、得られるシートは、比較的小さな細孔開口部を有する上面を依然として有し得る。
【0099】
上記の加熱/乾燥構成に加えて、本発明は、加熱の方向が、底部領域に向かう重力によって引き起こされる排液を相殺/低減し(それによって、底部領域における密度を低減し、細孔構造を改善し)、乾燥中に上面付近の気泡が膨張するためにより多くの時間をかけることを可能にする(それによって、得られるシートの上面に著しく大きな細孔開口部を形成する)ように意図的に構成されている、エアレーションされた湿潤プレミックスを乾燥させるための改善された加熱/乾燥構成(いわゆる、「反重力」加熱/乾燥構成)を発見する。いずれの特徴も、シートの全体的な溶解速度を改善するために機能するので、望ましい。
【0100】
図4は、本発明の一実施形態に係る反重力構成の一種である、可撓性、多孔質、溶解性のシートを作製するための底部伝導式加熱/乾燥構成を示す。具体的には、成形型50に、エアレーションされた湿潤プレミックスを充填し、これによって、第1の側面52A(すなわち、底側)及び反対側の第2の側面52B(すなわち、上側)を有するシート52が形成される。このような成形型50を、加熱された表面、例えば、乾燥工程中約30分間、約125~130℃の制御された表面温度を有する予熱されたペルチェプレート上に置く。熱は、成形型50の底部の加熱された表面から成形型を通して伝導されて、下方から、すなわち、(斜交平行線模様の矢印によって示される)上向きの加熱方向に沿ってシート52を加熱し、これによって、第1の側面52A(底側)から反対側の第2の側面52B(上側)に向かって低下する温度勾配が当該シート52内に形成される。このような上向きの加熱方向は、(白色の矢印によって示される)重力方向と反対であり、乾燥時間全体にわたってそのように維持される(すなわち、加熱方向は、乾燥時間のほぼ100%の間、重力方向とは反対である)。乾燥中、重力によって、液体プレミックスはやはり底部領域に向かって下向きに流れる。しかしながら、上向きの加熱方向は、下から上へとシートを乾燥させ、底部領域において熱によって発生した水蒸気が上向きに上昇して、固化しているマトリックスから逃れるので、底部領域に向かう下向きの排液は、固化しているマトリックス及び上昇している水蒸気によって著しく制限され、「相殺」/低減される。それに対応して、得られる乾燥シートの底部領域はあまり密ではなく、比較的薄い気泡壁を有する多数の細孔を含む。更に、上部領域は、このプロセス中に乾燥される最後の領域であるので、上部領域内の気泡は、膨張して、シートへの水の浸入を促進するのに特に有効な著しく大きな連続細孔を、得られるシートの上面に形成するのに十分な時間を有する。更に、得られたシートは、その異なる領域(例えば、上部、中間、底部)全体にわたって、より均一に分布した全体孔径を有する。
【0101】
図5は、本発明の別の実施形態に係る反重力構成の別の種類である、可撓性、多孔質、溶解性のシートを作製するための回転ドラム式加熱/乾燥構成を示す。具体的には、供給トラフ60に、エアレーションされた湿潤プレミックス61を充填する。加熱された回転可能なシリンダ70(ドラム乾燥機とも呼ばれる)を、当該供給トラフ60の上方に配置する。当該加熱されたドラム乾燥機70は、制御された表面温度が約130℃であることを特徴とする円筒状の加熱された外面を有し、これは、(矢尻のついた細い曲線によって示される)時計回り方向に沿って回転して、エアレーションされた湿潤プレミックス61を供給トラフ60から持ち上げる。エアレーションされた湿潤プレミックス61は、ドラム乾燥機70の円筒状の加熱された外面上に薄いシート62を形成し、このドラム乾燥機は、回転し、エアレーションされた湿潤プレミックスのこのようなシート62を約10~15分間乾燥させる。このように形成されるシート62の一貫した厚さを確保するために、レベリングブレード(図示せず)をスラリー持ち上げ位置付近に配置してもよいが、単にエアレーションされた湿潤プレミックス61の粘度並びにドラム乾燥機70の回転速度及び表面温度を調節することによって、シート62の厚さを制御することが可能である。乾燥すると、シート62は、次いで、ドラム回転の最後に手動で又はスクレーパ72によって持ち上げられ得る。
【0102】
図5に示すように、エアレーションされた湿潤プレミックス61によって形成されたシート62は、加熱されたドラム乾燥機70の加熱された外面に直接接触する第1の側面62A(すなわち、底側)と、反対側の第2の側面62B(すなわち、上側)とを有する。それに対応して、ドラム乾燥機70からの熱は、外向きの加熱方向に沿ってシート62に伝導されて、シート62の第1の側面62A(底側)を最初に加熱し、次いで、反対側の第2の側面62B(上側)を加熱する。このような外向きの加熱方向は、第1の側面62A(底側)から反対側の第2の側面62B(上側)に向かって低下する温度勾配をシート62内に形成する。ドラム乾燥機70が回転するにつれて、外向きの加熱方向は、ゆっくりとかつ絶えずであるが、(
図5の複数の外向きに伸びる斜交平行線模様の矢印によって示される)非常に明らかでかつ予測可能な経路に沿って変化する。外向きの加熱方向及び(白色の矢印によって示される)重力方向の相対的な位置も、同様に明らかかつ予測可能にゆっくりとかつ絶えず変化している。乾燥時間の半分未満の間(すなわち、加熱方向が水平方向の破線の下方にあるとき)、外向きの加熱方向は、重力方向と実質的に整列され、その間のオフセット角度は90°未満である。乾燥時間の大部分の間(すなわち、加熱方向が水平方向の破線と同一平面上にあるか又はその上方にあるとき)、外向きの加熱方向は、重力方向と反対又は実質的に反対であり、その間のオフセット角度は90°以上である。シート62の初期の「開始」コーティング位置に応じて、加熱方向は、乾燥時間の55%超(コーティングがドラム乾燥機70のまさに底部で始まる場合)、好ましくは乾燥時間の60%超(
図5に示されるように、コーティングがドラム乾燥機70のより高い位置で開始する場合)、重力方向と反対又は実質的に反対であり得る。結果的に、乾燥工程の大部分の間、回転ドラム式加熱/乾燥構成におけるこの緩徐な回転及び加熱方向の変化は、重力によって引き起こされるシート62内の排液を制限及び「相殺」/低減する機能を有することができ、その結果、このように形成されたシートにおけるOCF構造が改善される。加熱されたドラム乾燥機70によって乾燥されたとき、得られるシートは、また、多数のより均一なサイズの細孔を有する、あまり密ではない底部領域と、比較的大きな細孔開口部を有する上面とを特徴とする。更に、得られたシートは、その異なる領域(例えば、上部、中間、底部)全体にわたって、より均一に分布した全体孔径を有する。
【0103】
上述したように改善された(すなわち、重力方向に対して実質的にオフセットされた関係の)加熱方向を使用することに加えて、本発明に係る得られるシートにおいて最適なOCF構造を達成するために、湿潤プレミックスの粘度及び/又は固形分含量、エアレーションの量及び速度(エアレーションされたプレミックス中の気泡のサイズ及び量に影響を及ぼし、それに対応して、固化したシートにおける細孔のサイズ/分布/量/特徴に影響し得る、空気供給ポンプ速度、混合ヘッド速度、空気流量、エアレーションされたプレミックスの密度など)、乾燥温度及び乾燥時間を慎重に調整することが望ましい場合もあり、更には重要な場合もある。
【0104】
可撓性、多孔質、溶解性のシートを作製するためのプロセス、並びにこのようなシートの物理的及び化学的特徴のより詳細な説明を、以下の章に記載する。
【0105】
IV.固体シートの作製プロセス
本発明は、(a)約40℃及び1s
-1で測定された約1,000cps~約25,000cpsの粘度を特徴とする、水又は好適な溶媒中に溶解又は分散している原材料(例えば、PVAポリマー又はコポリマー、界面活性剤、並びに所望により、可塑剤及び任意の他の活性成分)を含有する湿潤プレミックスを形成する工程と、(b)当該湿潤プレミックスを(例えば、ガスを湿潤スラリーに導入することによって)エアレーションして、エアレーションされた湿潤プレミックスを形成する工程と、(c)当該エアレーションされた湿潤プレミックスを、反対側の第1及び第2の側面を有するシートに成形する工程と、(d)当該成形されたシートを、好ましくは当該成形されたシートの第1の側面から第2の側面に向かって低下する温度勾配を形成する加熱方向に沿って、70℃~200℃の温度で1分間~60分間の乾燥時間乾燥させる工程であって、加熱方向が、乾燥時間の半分を超える間、重力方向から実質的にオフセットしている、すなわち、主に「反重力」加熱方向に沿った加熱下で実施される乾燥工程とによって可撓性、多孔質、溶解性の固体シートを作製することを提案する。このような主に「反重力」加熱方向は、それぞれ
図4及び
図5において上述したように、底部伝導式加熱/乾燥構成及び回転ドラム式加熱/乾燥構成が挙げられるが、これらに限定されない、様々な手段によって達成することができる。
【0106】
工程(A):湿潤プレミックスの調製
本発明の湿潤プレミックスは、一般に、PVAポリマー又はコポリマー、界面活性剤、任意の可塑剤、及び任意の他の活性成分を含む対象の固体を、プレミックスタンク内で十分な量の水又は別の溶媒と混合することによって調製される。湿潤プレミックスは、メカニカルミキサを使用して形成することができる。本明細書で有用なメカニカルミキサとしては、ピッチブレードを有するタービン又はMAXBLENDミキサ(住友重機械工業)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0107】
40℃及び1s-1で測定したときに約1,000cps~約25,000cpsの所定の範囲内になるように、湿潤プレミックスの粘度を調節することが本発明において特に重要である。湿潤プレミックスの粘度は、後続の乾燥工程中に、エアレーションされたプレミックスの細孔の膨張及び細孔の開口に著しい影響を及ぼし、異なる粘度を有する湿潤プレミックスは、非常に異なる発泡体構造の可撓性、多孔質、溶解性の固体シートを形成し得る。一方、湿潤プレミックスが濃すぎる/粘性が高すぎる(例えば、40℃及び1s-1で測定したときに約25,000cps超の粘度を有する)場合、このような湿潤プレミックスのエアレーションがより困難になり得る。より重要なことに、後続の乾燥工程中の三次元発泡体の薄膜気泡縁から台地状境界内への間隙排液が悪影響を受けたり著しく制限されたりする可能性がある。乾燥中の間隙排液は、後続の乾燥工程中に、エアレーションされた湿潤プレミックスにおける細孔の膨張及び細孔の開口を可能にするために重要であると考えられる。その結果、このように形成された可撓性、多孔質、溶解性の固体シートは、それによって、著しく小さな細孔を有し得、細孔間の相互接続性がより低くなり得(すなわち、連続細孔よりも「閉」細孔が多くなる)、これにより、水がこのようなシートに浸入し、このようなシートから放出されることが困難になる。他方、湿潤プレミックスが薄すぎる/流れすぎる(例えば、40℃及び1s-1で測定したときに約1,000cps未満の粘度を有する)場合、エアレーションされた湿潤プレミックスが十分に安定ではない場合がある、すなわち、エアレーション後かつ乾燥前に湿潤プレミックス中で気泡があまりにも早く破裂、崩壊、又は合体する場合がある。その結果、得られる固体シートは、所望よりもはるかに多孔性が低く、より密になる可能性がある。
【0108】
一実施形態では、湿潤プレミックスの粘度は、40℃及び1秒-1で測定したとき、約3,000cps~約24,000cps、好ましくは約5,000cps~約23,000cps、より好ましくは約10,000cps~約20,000cpsの範囲である。プレミックス粘度値は、コーン及びプレート形状を有するMalvern Kinexus Lab+レオメータ(CP1/50 SR3468 SS)を使用して、ギャップ幅0.054mm、温度40℃、及び剪断速度1.0秒-1で360秒間測定される。
【0109】
好ましいが必須ではない実施形態では、対象の固体は、湿潤プレミックスの総重量に対して約15%~約70%、好ましくは約20%~約50%、より好ましくは約25%~約45%の濃度で当該湿潤プレミックス中に存在する。固形分含有率は、水及び低沸点アルコールなどの任意の明らかに揮発性の物質を除く、全ての固体成分、半固体成分、及び液体成分の全加工混合物の重量による重量パーセントの合計である。一方、湿潤プレミックス中の固形分含量が高すぎる場合、間隙排液を妨げるか又は悪影響を及ぼし、本明細書に記載される所望の主に連続気泡の多孔質固体構造の形成を阻止するレベルまで湿潤プレミックスの粘度が増大する場合がある。他方、湿潤プレミックス中の固形分含量が低すぎる場合、気泡の破裂/崩壊/合体を引き起こし、乾燥中の細孔構造の収縮率(%)が増加し、その結果、多孔性が著しく低くかつより密な固体シートが生じるレベルまで湿潤プレミックスの粘度が低下する場合がある。
【0110】
本発明の湿潤プレミックス中の対象の固形分の中でも、固形分の総重量に対して、約10%~約75%の界面活性剤、約0.1%~約25%のPVAポリマー又はコポリマー、及び所望により約0.1%~約25%の可塑剤が存在し得る。他の活性物質又は有益剤をプレミックスに添加してもよい。
【0111】
好ましくは、用いられる湿潤プレミックスは、当該湿潤プレミックスの約3重量%~約20重量%のPVA、一実施形態では湿潤プレミックスの約5重量%~約15重量%のPVA、一実施形態では湿潤プレミックスの約7重量%~約10重量%のPVAを含む。
【0112】
より好ましくは、湿潤プレミックスは、湿潤プレミックスの約10重量%~約40重量%の界面活性剤、一実施形態では湿潤プレミックスの約12重量%~約35重量%の界面活性剤、一実施形態では湿潤プレミックスの約15重量%~約30重量%の界面活性剤を含む。
【0113】
更により好ましくは、湿潤プレミックスは、当該湿潤プレミックスの約0.02重量%~約20重量%の可塑剤、一実施形態では当該湿潤プレミックスの約0.1重量%~約10重量%の可塑剤、一実施形態では湿潤プレミックスの約0.5重量%~約5重量%の可塑剤を含む。
【0114】
所望により、湿潤プレミックスは、エアレーションプロセスの直前及び/又はエアレーションプロセス中に、周囲温度よりも高いが、その中の成分の分解を引き起こす任意の温度よりも低い温度で、予熱される。一実施形態では、湿潤プレミックスは、約40℃~約100℃、好ましくは約50℃~約95℃、より好ましくは約60℃~約90℃、最も好ましくは約75℃~約85℃の範囲の高温で維持される。一実施形態では、任意の連続加熱は、エアレーション工程の前に利用される。更に、このような高温で湿潤プレミックスを試し、維持するために、エアレーションプロセス中に追加の熱を加えてもよい。これは、1つ以上の表面からの伝導加熱、蒸気の注入、又は他の加工手段によって達成することができる。エアレーション工程前及び/又はエアレーション工程中に湿潤プレミックスを予熱する行為により、混合物への気泡の導入及び所望の固体シートの形成を改善するために、より高い固形分含有率を有するプレミックスの粘度を低下させる手段が提供され得ると考えられる。より高い固形分含有率を実現することが望ましいが、その理由は、乾燥のための全体的なエネルギー要件を低減することができるためである。したがって、固形分含有率の増加は、逆に、含水率の減少及び粘度の増大をもたらし得る。上述したように、粘度が高すぎる湿潤プレミックスは、本発明の実施には望ましくない。予熱は、このような粘度増大を効果的に相殺し得るので、高固形分含量のプレミックスを使用した場合であっても、高速溶解性シートの製造が可能になる。
【0115】
工程(B):湿潤プレミックスのエアレーション
湿潤プレミックスのエアレーションは、後で乾燥時にその中にOCF構造を形成するために、十分な量の気泡を湿潤プレミックスに導入するために行われる。十分にエアレーションされた後、湿潤プレミックスは、エアレーションされていない湿潤プレミックス(偶発的に捕捉されたいくらかの気泡を含んでいる場合はある)又は不十分にエアレーションされた湿潤プレミックス(いくらかの気泡を含有している場合があるが、はるかに低い体積率及び著しく大きな気泡サイズである)よりも著しく低い密度を特徴とする。好ましくは、エアレーションされた湿潤プレミックスは、約0.05g/mL~約0.5g/mL、好ましくは約0.08g/mL~約0.4g/mL、より好ましくは約0.1g/mL~約0.35g/mL、更により好ましくは約0.15g/mL~約0.3g/mL、最も好ましくは約0.2g/mL~約0.25g/mLの範囲の密度を有する。
【0116】
エアレーションは、本発明において物理的又は化学的手段のいずれかによって行うことができる。一実施形態では、例えば、ローターステーターミキサ、遊星ミキサ、加圧ミキサ、非加圧ミキサ、バッチミキサ、連続ミキサ、半連続ミキサ、高剪断ミキサ、低剪断ミキサ、浸漬スパージャ、又はこれらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない、任意の好適な機械的加工手段を使用することによって、機械的撹拌を通して湿潤プレミックスにガスを導入することによって行うことができる。別の実施形態では、化学的手段を介して、例えば、化学発泡剤を使用して、発泡系による二酸化炭素(CO2ガス)の形成を含む1つ以上の成分の化学反応を介してその場でガスを形成させることによって行うことができる。
【0117】
特に好ましい実施形態では、湿潤プレミックスのエアレーションは、マシュマロの製造において食品業界で従来利用されている連続加圧エアレータ又はミキサを使用することによって、コスト効率よく行うことができることが見出された。連続加圧ミキサは、均一な気泡サイズを有する、高度に均一かつ安定した発泡体構造を生じさせるために、湿潤プレミックスを均質化する又はエアレーションするように作動し得る。高剪断ローター/ステーターの撹拌ヘッドの独特の設計は、連続気泡発泡体の層において均一な気泡サイズをもたらすことができる。好適な連続加圧エアレータ又はミキサとしては、Mortonウィスク(Morton Machine Co.(Motherwell,Scotland))、Oakes連続自動ミキサ(E.T.Oakes Corporation(Hauppauge,New York))、Fedco連続ミキサ(The Peerless Group(Sidney,Ohio))、Mondo(Haas-Mondomix B.V.(Netherlands))、Aeros(Aeros Industrial Equipment Co.,Ltd.(広東省、中国))、及びPreswhip(ホソカワミクロングループ(大阪、日本))が挙げられる。例えば、Aeros A20連続エアレータは、それぞれ約300~800(好ましくは400~600)の混合ヘッド速度設定及び約50~150(好ましくは約60~130、より好ましくは80~120)の空気流量で、約300~800(好ましくは約500~700)の供給ポンプ速度設定で動作することができる。別の例では、Oakes連続自動ミキサは、約10~30リットル/時間(好ましくは約15~25L/時、より好ましくは約19~20L/時)の空気流量で、約10~30rpm(好ましくは約15~25rpm、より好ましくは約20rpm)の混合ヘッド速度設定で動作することができる。
【0118】
別の特定の実施形態では、湿潤プレミックスのエアレーションは、回転ドラム乾燥機の一部である回転バー、より具体的には、湿潤プレミックスがドラム乾燥機の加熱された外面上にコーティングされ、乾燥される前に湿潤プレミックスが保管される供給トラフの構成要素を使用することによって行うことができる。回転バーは、典型的には、湿潤プレミックスを撹拌して、ドラム乾燥機の加熱された回転ドラム上にコーティングされる前の待機時間中に供給トラフにおける相分離又は沈降を防止するために使用される。本発明では、このような回転バーを約150~約500rpm、好ましくは約200~約400rpm、より好ましくは約250~約350rpmの範囲の回転速度で動作させて、湿潤プレミックスを空気界面で混合し、湿潤プレミックスの所望のエアレーションを達成するのに必要な十分な機械的撹拌を提供することが可能である。
【0119】
上述したように、エアレーションの最適化及び乾燥中の排液の制御のために湿潤プレミックスの粘度を調整するために、湿潤プレミックスをエアレーションプロセス中に高温で維持してよい。例えば、回転ドラムの回転バーを使用することによってエアレーションを行うとき、供給トラフ内のエアレーションされた湿潤プレミックスは、典型的には、回転バーによる初期エアレーション中(回転ドラムが静止している間)約60℃で維持され、次いで、回転ドラムが加熱され、回転を開始するときに約70℃に加熱される。
【0120】
エアレーションされた湿潤プレミックスの気泡サイズは、得られる固体シートのOCF構造において均一な層を達成するのに役立つ。一実施形態では、エアレーションされた湿潤プレミックスの気泡サイズは約5~約100マイクロメートルであり、別の実施形態では、気泡サイズは約20マイクロメートル~約80マイクロメートルである。気泡サイズの均一性により、得られる固体シートは一貫した密度を有するようになる。
【0121】
工程(C):シート形成
十分なエアレーション後、エアレーションされた湿潤プレミックスは、反対側の第1の側面と第2の側面とを有する1つ以上のシートを形成する。シート形成工程は、例えば、押出成形、鋳造、成形、真空成形、プレス、印刷、コーティングなどによって、任意の好適な方法で行うことができる。より具体的には、エアレーションされた湿潤プレミックスは、(i)湿潤プレミックスを浅いキャビティ若しくはトレイ又は特別に設計されたシート型に注ぎ、(ii)乾燥機の連続ベルト又はスクリーン上に押出成形し、(iii)回転ドラム乾燥機の外面上にコーティングすることによって、シートに成形することができる。好ましくは、シートが形成される支持面は、金属(例えば、鋼、クロムなど)、TEFLON(登録商標)、ポリカーボネート、NEOPRENE(登録商標)、HDPE、LDPE、ゴム、ガラスなどの、防食、非相互作用、及び/又は非粘着性の材料によって形成されるか、又はコーティングされる。
【0122】
好ましくは、エアレーションされた湿潤プレミックスの形成されたシートは、0.5mm~4mm、好ましくは0.6mm~3.5mm、より好ましくは0.7mm~3mm、更により好ましくは0.8mm~2mm、最も好ましくは0.9mm~1.5mmの範囲の厚さを有する。エアレーションされた湿潤プレミックスのこのように形成されたシートの厚さを制御することは、得られる固体シートが所望のOCF構造を確実に有するようにするために重要であり得る。形成されたシートが薄すぎる(例えば、厚さが0.5mm未満)場合、エアレーションされた湿潤プレミックス中に捕捉された気泡の多くは、後続の乾燥工程中に膨張して、得られる固体シートの厚さ全体にわたって延在する貫通孔を形成する。このような貫通孔は、多すぎる場合、シートの全体的な構造的一体性及び審美的外観の両方を著しく損なうことがある。形成されたシートが厚すぎる場合、乾燥にかかる時間がより長くなるだけでなく、その厚さに沿って異なる領域(例えば、上部、中間、及び底部領域)間でより大きな孔径のばらつきを有する固体シートも生じるが、その理由は、乾燥時間が長いほど、気泡の破裂/崩壊/合体、排液、細孔の膨張、細孔の開口、水の蒸発などを通して、力のより大きな不均衡が生じる場合があるためである。
【0123】
より重要なことに、比較的短い乾燥時間内で効率的な乾燥を確保することに加えて、迅速な溶解のための満足のいく細孔構造を依然として提供しながら、比較的薄いシートの複数の層を所望のアスペクト比を有する本発明の多層構造に組み立てることはより容易である。
【0124】
工程(D):反重力加熱下における乾燥
必ずしもそうではないが、好ましくは、本発明は、乾燥時間全体を通して又は少なくとも乾燥時間の半分を超えて、乾燥工程中に反重力加熱方向を使用する。いかなる理論にも束縛されるものではないが、このような反重力加熱方向は、乾燥工程中の、形成されたシートの底部領域に向かう過剰の間隙排液を低減又は相殺することができると考えられる。更に、上面が最後に乾燥されるので、形成されたシートの上面付近の気泡が膨張し、上面上に細孔開口部を形成する時間をより長くすることができる(湿潤マトリックスが乾燥すると、気泡はもはや膨張することも、表面開口部を形成することもできないため)。その結果、このような反重力加熱による乾燥によって形成された固体シートは、より迅速な溶解、並びに他の驚くべきかつ予想外の効果を可能にする改善されたOCF構造を特徴とする。
【0125】
特定の実施形態では、反重力加熱方向は、
図4に示すものと同じ又は同様の伝導式加熱/乾燥構成によって提供される。例えば、エアレーションされた湿潤プレミックスを成形型に注いで、2つの反対側の側面を有するシートを形成することができる。次いで、成形型を、ホットプレート、又は加熱された移動ベルト、又は約80℃~約170℃、好ましくは約90℃~約150℃、より好ましくは約100℃~約140℃の制御された表面温度を特徴とする平面状の加熱された表面を有する任意の他の好適な加熱装置上に配置してよい。熱エネルギーは、伝導を介して、平面状の加熱された表面からエアレーションされた湿潤プレミックスのシートの底面に伝達され、その結果、シートの固化は底部領域から始まり、上向きに徐々に移動して最後に上部領域に到達する。このプロセス中に加熱方向が主に反重力である(すなわち、重力方向から実質的にオフセットしている)ことを確実にするために、加熱された表面が、乾燥中の当該シートの一次熱源であることが好ましい。任意の他の加熱源が存在する場合、全体的な加熱方向は適宜変化し得る。より好ましくは、加熱された表面は、乾燥中の当該シートの唯一の熱源である。
【0126】
別の特定の実施形態では、反重力加熱方向は、
図5に示すものと同様の回転ドラム式加熱/乾燥構成(ドラム乾燥又はローラー乾燥とも呼ばれる)によって提供される。ドラム乾燥は、比較的低温で、加熱された回転可能なドラム(ローラー又はシリンダとも呼ばれる)の外面上の原材料の粘性プレミックスから液体を乾燥させてシート状物品を形成するために使用される接触乾燥方法の一種である。これは、大量の乾燥に特に好適な連続乾燥プロセスである。この乾燥は、接触加熱/乾燥を介して比較的低温で実施されるため、通常、高いエネルギー効率を有し、原材料の組成的一体性に悪影響を及ぼさない。
【0127】
ドラム乾燥において使用される加熱された回転可能なシリンダは、例えば蒸気又は電気によって内部で加熱され、所定の回転速度でベースブラケットに設置された電動駆動装置によって回転させられる。加熱された回転シリンダ又はドラムは、好ましくは、約0.5メートル~約10メートル、好ましくは約1メートル~約5メートル、より好ましくは約1.5メートル~約2メートルの範囲の外径を有する。それは、約80℃~約170℃、好ましくは約90℃~約150℃、より好ましくは約100℃~約140℃の制御された表面温度を有し得る。更に、このような加熱された回転シリンダは、約0.005rpm~約0.25rpm、好ましくは約0.05rpm~約0.2rpm、より好ましくは約0.1rpm~約0.18rpmの速度で回転している。
【0128】
当該加熱された回転可能シリンダは、好ましくは、その外面上に非粘着性コーティングがコーティングされる。非粘着性コーティングは、加熱された回転可能なドラムの外面上を覆ってもよく、又は加熱された回転可能なドラムの外面の媒体に固定されてもよい。媒体としては、耐熱不織布、耐熱性炭素繊維、耐熱金属、又は非金属メッシュなどが挙げられるが、これらに限定されない。非粘着性コーティングは、シート形成プロセス中にシート状物品の構造的一体性をダメージから効果的に保護することができる。
【0129】
上記のような原材料のエアレーションされた湿潤プレミックスを加熱された回転可能なドラム上に添加し、それによって、加熱された回転可能なドラムの外面上に粘性プレミックスの薄層を形成するための供給機構もまた、ベースブラケット上に提供される。したがって、プレミックスのこのような薄層は、接触加熱/乾燥によって、加熱された回転可能なドラムによって乾燥される。供給機構は、ベースブラケットに設置された供給トラフを備えるが、当該供給トラフには、少なくとも1つ(好ましくは2つ)の供給ホッパーと、供給の動的観察のための撮像装置と、供給ホッパーの位置及び傾斜角度を調整するための調整装置とが設置されている。当該調整装置を使用して、当該供給ホッパーと加熱された回転可能なドラムの外面との間の距離を調整することによって、形成されたシート状物品の異なる厚さの必要性を満たすことができる。また、調整装置は、速度及び品質の材料要件を満たすように、供給ホッパーを異なる傾斜角に調整するために使用することもできる。また、供給トラフは、加熱された回転可能なシリンダの外面上に湿潤プレミックスがコーティングされる前に相分離及び沈降することを回避するために、その中の湿潤プレミックスを撹拌するための回転バーを含んでいてもよい。このような回転バーは、上述したように、必要に応じて湿潤プレミックスをエアレーションするために使用することもできる。
【0130】
また、急速な熱損失を防止するために、ベースブラケットに設置された加熱シールドが存在していてもよい。また、加熱シールドは、加熱された回転可能なドラムによって必要とされるエネルギーを効果的に節約し、それによって、エネルギー消費を低減し、コスト削減を提供することができる。加熱シールドは、モジュール組立構造体又は一体型構造体であり、ベースブラケットから自由に取り外すことができる。熱蒸気を吸い込むための加熱シールドには、形成されているシート状物品に落下するなんらかの水凝縮物を回避するために、吸引装置も設置されている。
【0131】
加熱された回転可能なドラムによって既に形成されたシート状物品を掻き取るか又は掬い上げるための、ベースブラケットに設置された任意の静的掻き取り機構が存在していてもよい。静的掻き取り機構は、更なる加工のために既に形成されたシート状物品を下流に搬送するために、ベースブラケット上又はその片側に設置することができる。静的掻き取り機構は、自動的に又は手動で、加熱された回転可能なドラムに接近したり離れたりすることができる。
【0132】
本発明の可撓性、多孔質、溶解性の固体構造物品の作製プロセスは、以下のとおりである。まず、ベースブラケット上に非粘着コーティングを有する加熱された回転可能なドラムを、電動駆動装置によって駆動する。次に、調整装置によって、供給ホッパーと加熱された回転可能なドラムの外面との間の距離が設定値になるように供給機構を調整する。一方、供給ホッパーは、加熱された回転可能なドラムの外面上に可撓性、多孔質、溶解性の固体構造物品を作製するために、全て又は一部の原材料を含有するエアレーションされた湿潤プレミックスを添加して、前章で上記したとおり所望の厚さを有する当該エアレーションされた湿潤プレミックスの薄層をその上に形成する。所望により、加熱シールドの吸引装置が、加熱された回転可能なドラムによって生成された熱蒸気を吸引する。次に、比較的低温(例えば、130℃)の加熱された回転可能なドラムによって乾燥させた後に、エアレーションされた湿潤プレミックスの薄層によって形成された乾燥/固化したシートを、静的掻き取り機構が掻き取る/掬い上げる。また、乾燥/固化したシートは、このような静的な掻き取り機構を用いずに手動で又は自動的に剥離し、次いで、ローラーバーによって巻き上げてもよい。
【0133】
本発明における総乾燥時間は、湿潤プレミックスの処方及び固形分含量、乾燥温度、熱エネルギー流入、並びに乾燥されるシート材料の厚さに依存する。好ましくは、乾燥時間は、約1分間~約60分間、好ましくは約2分間~約30分間、より好ましくは約2~約15分間、更により好ましくは約2~約10分間、最も好ましくは約2~約5分間である。
【0134】
このような乾燥時間中、加熱方向は、乾燥時間の半分超、好ましくは乾燥時間の55%又は60%超(例えば、上記の回転ドラム式加熱/乾燥構成のように)、より好ましくは乾燥時間の75%超又は更には100%(例えば、上記の底部伝導式加熱/乾燥構成のように)、重力方向に実質的に対向するように構成される。更に、エアレーションされた湿潤プレミックスのシートは、第1の加熱方向下で第1の持続時間にわたって乾燥させ、次いで、第2の対向する加熱方向下で第2の持続時間にわたって乾燥させてよいが、第1の加熱方向は重力方向と実質的に対向し、第1の持続時間は、全乾燥時間の51%~99%のいずれか(例えば、55%、60%、65%、70%~80%、85%、90%、又は95%)である。このような加熱方向の変化は、本明細書に図示されていない様々な他の構成によって、例えば、長手方向中心軸に沿って回転することができる蛇行している細長い加熱ベルトによって容易に達成することができる。
【0135】
V.固体シートの物理的特性
上記の加工工程によって、特に反重力加熱/乾燥構成を使用することによって形成された可撓性、多孔質、溶解性の固体シートは、シートへのより容易な水の浸入及びシートの水へのより迅速な溶解を可能にする改善された細孔構造を特徴とし得る。このような改善された細孔構造は、上記のような様々な加工条件を調整することによって容易に得ることができる。
【0136】
一般に、このような固体シートは、(i)以下の試験3によって測定したとき、約80%~100%、好ましくは約85%~100%、より好ましくは約90%~100%の連続気泡含有率、及び(ii)以下の試験2に記載のMicro-CT法によって測定したとき、約100μm~約2000μm、好ましくは約150μm~約1000μm、より好ましくは約200μm~約600μmの全平均孔径を特徴とし得る。全平均孔径が、本発明のOCF構造の多孔度を規定する。連続気泡含有率が、本発明のOCF構造中の細孔間の相互接続性を規定する。また、OCF構造の相互接続性は、国際公開第2010077627号及び同第2012138820号に開示されている星形体積又は構造モデル指数(Structure Model Index、SMI)によっても説明され得る。
【0137】
本発明の固体シートは、反対側の上面及び底面を有するが、その上面は、好ましくは、以下の試験1に記載のSEM法によって測定したとき、約100μm超、より好ましくは約110μm超、更により好ましくは約120μm超、更により好ましくは約130μm超、最も好ましくは約150μm超の表面平均孔径を特徴とする。非反重力加熱/乾燥構成(例えば、対流式、マイクロ波式、又は衝突オーブン式構成)によって形成された固体シートと比較すると、反重力加熱/乾燥構成(例えば、底部伝導式又は回転ドラム式構成)によって形成された固体シートは、(以下の実施例2で詳細に説明する
図6A及び
図6Bに示されるように)その上面において著しく大きい表面平均孔径を有するが、その理由は、反重力加熱下では、エアレーションされた湿潤プレミックスの形成されたシートの上面が最後に乾燥/固化され、上面付近の気泡は、膨張するための最も長い時間を有し、上面により大きな細孔開口部を形成するためである。
【0138】
更に、本明細書に記載される反重力加熱/乾燥構成によって形成された固体シートは、非反重力加熱/乾燥構成によって形成されたシートと比較して、その厚さ方向に沿った異なる領域間のより均一な孔径分布を特徴とし得る。具体的には、反重力加熱/乾燥構成によって形成された固体シートは、上面に隣接する上部領域と、底面に隣接する底部領域と、それらの間の中間領域とを含むが、上部、中間、及び底部領域は全て同じ厚さを有する。このような固体シートの上部、中間、及び底部領域のそれぞれは、平均孔径によって特徴付けられるが、上部領域における平均孔径に対する底部領域における平均孔径の比率(すなわち、底部対上部平均孔径比)は、約0.6~約1.5、好ましくは約0.7~約1.4、好ましくは約0.8~約1.3、より好ましくは約1~約1.2である。比較すると、衝突オーブン式加熱/乾燥構成によって形成された固体シートは、(以下の実施例2に示すように)1.5超、典型的には約1.7~2.2の底部対上部平均孔径比を有し得る。更に、反重力加熱/乾燥構成によって形成された固体シートは、約0.5~約1.5、好ましくは約0.6~約1.3、より好ましくは約0.8~約1.2、最も好ましくは約0.9~約1.1の底部対中間平均孔径比、及び約1~約1.5、好ましくは約1~約1.4、より好ましくは約1~約1.2の中間対上部平均孔径比を特徴とし得る。
【0139】
また更に、反重力加熱/乾燥構成によって形成された固体シートの上部、中間、及び底部領域における平均孔径間の相対標準偏差(relative standard deviation、RSTD)は、20%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下、最も好ましくは5%以下である。対照的に、衝突オーブン式加熱/乾燥構成によって形成された固体シートは、(以下、実施例2に示されるように)20%超、恐らく25%超、又は更には35%超の上部/中間/底部平均孔径間の相対標準偏差(RSTD)を有し得る。
【0140】
好ましくは、本発明の固体シートは、更に、以下の試験2によって測定したとき、約5μm~約200μm、好ましくは約10μm~約100μm、より好ましくは約10μm~約80μmの平均気泡壁厚を特徴とする。
【0141】
本発明の固体シートは、少量の水を含有していてもよい。好ましくは、以下の試験4によって測定したとき、当該固体シートの0.5重量%~25重量%、好ましくは1重量%~20重量%、より好ましくは3重量%~10重量%の最終含水量を特徴とする。得られる固体シート中の適切な最終含水量は、シートの所望の可撓性/変形性を確保することに加えて、消費者に柔らか/滑らかな感触を提供することができる。最終含水量が低すぎる場合、シートの脆性が高すぎたり剛性が高すぎたりすることがある。最終含水量が高すぎる場合、シートがべたつきすぎる場合があり、その全体的な構造的一体性が損なわれる場合がある。
【0142】
本発明の固体シートは、約0.6mm~約3.5mm、好ましくは約0.7mm~約3mm、より好ましくは約0.8mm~約2mm、最も好ましくは約1mm~約1.5mmの範囲の厚さを有し得る。固体シートの厚さは、以下に記載される試験5を使用して測定することができる。乾燥後の固体シートは、ひいては全体的な体積膨張につながる細孔膨張に起因して、エアレーションされた湿潤プレミックスのシートよりもわずかに厚いことがある。
【0143】
本発明の固体シートは、更に、以下に記載される試験6によって測定したとき、約50グラム/m2~約250グラム/m2、好ましくは約80グラム/m2~約220グラム/m2、より好ましくは約100グラム/m2~約200グラム/m2の坪量を特徴とし得る。
【0144】
更に、本発明の固体シートは、以下の試験7によって測定したとき、約0.05グラム/cm3~約0.5グラム/cm3、好ましくは約0.06グラム/cm3~約0.4グラム/cm3、より好ましくは約0.07グラム/cm3~約0.2グラム/cm3、最も好ましくは約0.08グラム/cm3~約0.15グラム/cm3の範囲の密度を有し得る。本発明の固体シートの密度は、同様に、ひいては全体的な体積膨張につながる細孔膨張に起因して、エアレーションされた湿潤プレミックスのシートよりも低い。
【0145】
更に、本発明の固体シートは、以下に記載される試験8によって測定したとき、約0.03m2/g~約0.25m2/g、好ましくは約0.04m2/g~約0.22m2/g、より好ましくは0.05m2/g~0.2m2/g、最も好ましくは0.1m2/g~0.18m2/gの比表面積を特徴とし得る。本発明の固体シートの比表面積は、その多孔度を示すことができ、その溶解速度に影響を与えることがあり、例えば、比表面積が大きいほど、シートがより多孔質になり、その溶解速度が速くなる。
【0146】
VI.複数のシートの多層溶解性固体物品への組み立て
上記のとおり、上記の可撓性、溶解性、多孔質の固体シートが形成されると、このようなシートの2枚以上を更に一緒に組み立てて多層溶解性固体物品を形成することができる。このような多層溶解性固体物品は、球状、立方体状、矩形状、多角形状、楕円状、円筒形状、ロッド状、シート状、花形、扇形、星形、ディスク形などが挙げられるがこれらに限定されない、任意の望ましい三次元形状を有し得る。シートは、当該技術分野において既知の任意の手段によって、組み合わされ及び/又は処理されてよく、その手段の例としては、化学的手段、機械的手段、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。このような組み合わせ及び/又は処理工程は、本明細書においてまとめて「変換」プロセスと呼ばれ、すなわち、本発明の2枚以上の可撓性、溶解性、多孔質のシートを、所望の三次元形状を有する溶解性固体物品に変換する機能を有する。
【0147】
(約80%~100%の連続気泡含有率及び約100μm~約2000μmの全平均孔径によって規定される連続気泡発泡体又はOCF構造を有する)本発明の可撓性、溶解性、多孔質の固体シートの複数の層を一緒に積み重ねることによって形成される三次元(3-D)多層構造が、同じアスペクト比を有する単層構造よりも溶解性が高いことは、本発明の驚くべきかつ予想外の発見であった。これにより、得られる多層構造を厚さ方向に沿って著しく延伸して、取り扱いが容易であり、消費者にとってより審美的に魅力的な三次元製品形状(例えば、厚いパッド又は更には立方体の形態の製品)を作り出すことができる。
【0148】
具体的には、上記の可撓性、溶解性、多孔質のシートの複数の層を一緒に積み重ねることによって形成される本発明の多層溶解性固体物品は、最大寸法D及び最小寸法z(最大寸法Dに対して垂直である)によって特徴付けられるが、D/z比(以下、「アスペクト比」とも称される)は、1~約10、好ましくは約1.4~約9、好ましくは約1.5~約8、より好ましくは約2~約7の範囲である。
【0149】
本発明の多層溶解性固体物品は、規則的又は不規則な任意の好適な形状、例えば、球状、立方体状、矩形状、多角形状、楕円状、円筒形状、ロッド状、シート状、花形、扇形、星形、ディスク形などであってよい。アスペクト比が1である場合、溶解性固体物品は球形状を有する。アスペクト比が約1.4である場合、溶解性固体物品は立方体形状を有する。
【0150】
本発明の多層溶解性固体物品は、約3mm超であるが約20cm未満、好ましくは約4mm~約10cm、より好ましくは約5mm~約30mmの最小寸法zを有し得る。
【0151】
上記の多層溶解性固体物品は、このような可撓性、溶解性、多孔質のシートを2枚より多く含んでいてよい。例えば、当該物品は、約4~約50、好ましくは約5~約40、より好ましくは約6~約30枚の当該可撓性、溶解性、多孔質のシートを含んでいてよい。本発明に従って作製された可撓性、溶解性、多孔質のシートにおける改善されたOCF構造は、依然として積層体に満足のいく全体的な溶解速度を提供すると同時に、多くのシート(例えば、15~40枚)を一緒に積み重ねることを可能にする。本発明の特に好ましい実施形態では、多層溶解性固体物品は、上記の可撓性、溶解性、多孔質のシートを15~40層含み、約2~約7の範囲のアスペクト比を有する。
【0152】
本発明の多層溶解性固体物品は、このような物品の外面(例えば、1つ以上の側面)から視認可能な、異なる色の個々のシートを含んでいてよい。異なる色のこのような視認可能なシートは、消費者にとって審美的に魅力的である。更に、異なる色の個々のシートは、個々のシートに含有される異なる有益剤を示す視覚的合図を提供することができる。例えば、多層溶解性固体物品は、第1の色を有し、第1の有益剤を含有する第1のシートと、第2の色を有し、第2の利益を含有する第2のシートとを含んでよいが、第1の色は、第1の有益剤を示す視覚的合図を提供し、第2の色は、第2の有益剤を示す視覚的合図を提供する。
【0153】
更に、例えば、噴霧、散布、振りかけ、コーティング、展延、浸漬、注入、又は更には蒸着によって、上記の多層溶解性固体物品の個々のシートの間に1つ以上の機能性成分を「挟持」してもよい。このような機能性成分と、個々のシートの周辺部付近の切断シール又は縁部シールとの干渉を回避するために、このような機能性成分は2枚の隣接するシート間の中央領域内に位置することが好ましく、中央領域とは、このような隣接するシートの周辺部から最大寸法Dの少なくとも10%の距離だけ離れている領域として定義される。
【0154】
好適な機能性成分は、洗浄活性物質(界面活性剤、遊離香料、カプセル化香料、香料マイクロカプセル、シリコーン、柔軟化剤、酵素、漂白剤、着色剤、ビルダー、レオロジー変性剤、pH調整剤、及びこれらの組み合わせ)及びパーソナルケア活性物質(例えば、皮膚軟化剤、保湿剤、コンディショニング剤、及びこれらの組み合わせ)からなる群から選択され得る。
【0155】
試験方法
試験1:シート物品の表面平均孔径を決定するための走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopic、SEM)法
Hitachi TM3000 Tabletop Microscope(S/N:123104-04)を使用して、サンプルのSEM顕微鏡写真を取得する。本発明の固体シート物品のサンプルは、面積約1cm×1cmであり、より大きなシートから切断される。画像を倍率50Xで収集し、ユニットを15kVで操作する。各サンプルに対してランダムに選択された位置から最低5枚の顕微鏡画像を収集し、その結果、平均孔径が推定される総分析面積は約43.0mm2になる。
【0156】
次いで、まず、Matlabにおける画像解析ツールボックスを使用してSEM顕微鏡写真を処理する。必要に応じて、画像をグレースケールに変換する。所与の画像について、「imhist」Matlab関数を使用して、単一画素ごとの強度値のヒストグラムを作成する。典型的には、このようなヒストグラムから、より明るいシート表面の画素及び細孔内のより暗い領域の画素に対応する2つの別個の分布が明らかである。これら2つの分布のピーク値間の強度値に対応する閾値を選択する。次いで、この閾値よりも低い強度値を有する全ての画素を強度値0に設定し、一方、より高い強度値を有する画素を1に設定し、それによって、二値白黒画像を作成する。次いで、ImageJ(https://imagej.nih.gov、バージョン1.52a)を用いて二値画像を解析して、細孔面積分率及び孔径分布の両方を調べる。各画像のスケールバーを使用して、ピクセル/mmのスケーリング係数を提供する。解析のために、自動閾値処理及び粒子分析機能を使用して、各細孔を分離する。分析機能からの出力は、画像全体についての面積分率、並びに検出された各個々の細孔の細孔面積及び細孔周囲長を含む。
【0157】
平均孔径は、DA50として定義され、総細孔面積の50%は、DA50平均直径以下の水力直径を有する細孔で構成される。
水力直径=「4×細孔面積(m2)/細孔周囲長(m)」。
これは、全てが円形ではない細孔を考慮するために計算される等価直径である。
【0158】
試験2:連続気泡発泡体(OCF)の全体的又は局所的平均孔径及び平均気泡壁厚を決定するためのマイクロコンピュータ断層撮影(μCT)法
多孔度は、OCFによって占有される全空間に対する空隙空間の比である。多孔度は、閾値処理を介して空隙空間をセグメント化し、空隙ボクセル対総ボクセルの比を決定することによって、μCTスキャンから計算することができる。同様に、固体体積分率(solid volume fraction、SVF)は、全空間に対する固体空間の比であり、SVFは、総ボクセルに対する占有されているボクセルの比として計算することができる。多孔度及びSVFはいずれも、OCFの高さ方向における孔径分布又はOCFストラットの平均気泡壁厚などの構造情報を提供しない平均スカラー値である。
【0159】
OCFの3D構造を特徴付けるために、高等方性空間分解能でデータセットを取得することができるμCT X線走査機器を使用してサンプルを撮像する。好適な機器の一例は、以下の設定で動作するSCANCOシステムモデル50μCTスキャナ(Scanco Medical AG,Bruttisellen,Switzerland)である:エネルギーレベル、133μAにおいて45kVp;投影、3000;視野、15mm;積分時間、750ms;5回の平均;及びボクセルサイズ、3μm/画素。走査及びその後のデータ再構成が完了した後、スキャナシステムは、ISQファイルと称される16ビットのデータセットを作成し、ここでは、グレーレベルがX線減衰の変化を反映し、これは、ひいては材料密度に関連する。次いで、スケーリング係数を使用してISQファイルを8ビットに変換する。
【0160】
走査されたOCFサンプルは、通常、直径約14mmのコアを穿孔することによって調製される。OCFパンチを低減衰発泡体上に平らに置き、次いで、走査のために直径15mmのプラスチック製円筒管に取り付ける。サンプルの走査は、全ての実装された切断サンプルの体積全体がデータセットに含まれるように取得する。このより大きなデータセットから、サンプルデータセットのより小さなサブボリュームを、走査されたOCFの総断面から抽出し、データの3Dスラブを作成し、ここでは、エッジ/境界効果なしに定性的に細孔を評価することができる。
【0161】
高さ方向における孔径分布を特徴付けるために、ストラットサイズ、局所厚さマップアルゴリズム、又はLTMを、サブボリュームデータセットに対して実行する。LTM法は、各空隙ボクセルのその最も近い境界からの距離に等しいグレーレベル値を割り当てるユークリッド距離マッピング(Euclidean Distance Mapping、EDM)で開始する。EDMデータに基づいて、細孔を表す3D空隙空間(又はストラットを表す3D固体空間)を、EDM値に一致するようなサイズの球体で細分する。球体によって囲まれたボクセルには、最大球面の半径値を割り当てる。換言すれば、各空隙ボクセル(又はストラットについては固体ボクセル)には、両方が空隙空間境界(又はストラットについては固体空間境界)にちょうど収まり、割り当てられたボクセルを含む最大球の半径値を割り当てる。
【0162】
LTMデータスキャンから出力された3D標識された球面分布は、高さ方向(又はZ方向)における二次元画像のスタックとして処理され、OCF深さの関数としてスライス間の球径の変化を推定するために使用することができる。ストラットの厚さを3Dデータセットとして処理し、サブボリュームの全体又は一部について平均値を評価することができる。計算及び測定は、Thermo Fisher Scientific製のAVIZO Lite(9.2.0)及びMathworks製のMATLAB(R2017a)を使用して行った。
【0163】
試験3:シート物品の連続気泡含有率
連続気泡含有率は、ガス比重瓶法を介して測定される。ガス比重瓶法は、体積を正確に測定するためにガス置換法を用いる一般的な分析技術である。ヘリウム又は窒素などの不活性ガスが、その置換媒体として使われる。本発明の固体シート物品のサンプルを既知の体積の機器コンパートメント内に密閉し、適切な不活性ガスを入れ、次いで、別の高精度の内部体積に膨張させる。膨張前及び膨張後の圧力を測定し、これを使用してサンプル物品の体積を計算する。
【0164】
ASTM標準試験法D2856は、気体比重瓶の古いモデルを用いて連続気泡の割合を決定する手順を提供する。この装置はもはや製造されていない。しかしながら、MicromeriticsのAccuPyc比重瓶を用いる試験を実施することによって、便利にかつ高精度で連続気泡率を決定することができる。ASTM手順D2856には、発泡体材料の連続気泡率を決定する5つの方法(A、B、C、D及びE)について記載されている。これら実験については、窒素ガスを用い、Accupyc 1340を使用して、ASTM foampycソフトウェアにより、サンプルを分析することができる。ASTM手順の方法Cは、連続気泡率を計算するために使用されるべきである。この方法は、以下の式に従って、カリパスと標準体積計算を使用して決定された幾何学的体積を、Accupycによって測定された連続気泡体積と単純に比較する。
連続気泡率=サンプルの連続気泡体積/サンプルの幾何学的体積×100
これら測定は、Micromeretics Analytical Services,Inc.(One Micromeritics Dr,Suite 200,Norcross,GA 30093)により行われることが推奨される。この技術に関するより多くの情報は、Micromeretics Analytical Servicesのウェブサイト(www.particletesting.com又はwww.micromeritics.com)で入手可能であるか、又はClyde Orr及びPaul Webbによって「Analytical Methods in Fine particle Technology」として出版されている。
【0165】
試験4:シート物品の最終含水量
本発明の固体シート物品の最終含水量は、Mettler Toledo HX204 Moisture Analyzer(S/N B706673091)を使用することによって得られる。乾燥したシート物品を最低1g、測定トレイ上に置く。次いで、10分の分析時間及び110℃の温度の追加のプログラム設定で標準プログラムを実行する。
【0166】
試験5:シート物品の厚さ
本発明の可撓性、多孔質、溶解性の固体シート物品の厚さは、Mitutoyo Corporation Digital Disk Stand Micrometer Model Number IDS-1012E(Mitutoyo Corporation,965 Corporate Blvd,Aurora,IL,USA 60504)などのマイクロメータ又は隙間ゲージを用いることによって得られる。マイクロメータは、直径1インチ、重さ約32グラムのプラテンを有し、約0.09psi(6.32gm/cm2)の加圧で厚さを測定する。
【0167】
可撓性、多孔質、溶解性の固体シート物品の厚さは、プラテンを持ち上げ、シート物品の一部分をプラテンの真下のスタンド上に配置し、注意深くプラテンを下げてシート物品に接触させ、プラテンを離し、数値表示装置でシート物品の厚さをミリメートル単位で測定することによって測定される。平らではない、より剛性のシート物品の場合を除いて、厚さを可能な限り最も低い表面圧力で測定するのを確実にするために、シート物品をプラテンの全ての縁まで十分に延ばさなければならない。
【0168】
試験6:シート物品の坪量
本発明の可撓性、多孔質、溶解性の固体シート物品の坪量は、その面積当たりのシート物品の重量(グラム/m2)として計算される。面積はシート物品の外縁に対して垂直な平面上への投影面積として計算される。本発明の固体シート物品は、10cm×10cmのサンプル正方形に切断されているため、面積は既知である。次いで、このようなサンプルの正方形をそれぞれ計量し、次いで、得られた重量を100cm2の既知の面積で除して、対応する坪量を決定する。
【0169】
不規則な形状の物品については、平らな物体の場合、このような物体の外周内に取り囲まれている面積に基づいて面積を計算する。球状物体については、平均直径に基づいて3.14×(直径/2)2として面積を計算する。円筒状の物体ついては、平均直径及び平均長さに基づいて直径×長さとして面積を計算する。不規則な形状の三次元物体については、最大の外側寸法を備える側部に対して垂直に配向された平面上に投影された当該側部に基づいて面積を計算する。このことは、物体の外側寸法を1枚のグラフ用紙に鉛筆で注意深くトレーシングし、次に正方形を近似的に計数し、その正方形の既知の面積を乗算することによるか、又はスケールを含むトレーシングした領域(コントラストのために陰影がつけられている)の写真を撮り、画像分析技術を用いることにより、その面積を算定することによって達成できる。
【0170】
試験7:シート物品の密度
本発明の可撓性、多孔質、溶解性の固体シート物品の密度は、以下の式:計算密度=多孔質固体の坪量/(多孔質固体の厚さ×1,000)によって決定される。溶解性多孔質固体の坪量及び厚さは、上記の方法に従って決定される。
【0171】
試験8:シート物品の比表面積
可撓性、多孔質、溶解性の固体シート物品の比表面積は、ガス吸着技術によって測定される。表面積は、分子スケールの固体サンプルの露出面の測定値である。BET(Brunauer、Emmet及びTeller)理論は、表面積を決定するのに用いられる最もよく知られているモデルであり、ガス吸着等温線に基づいている。ガス吸着は、物理的な吸着及び毛管凝縮を用いてガス吸着等温線を測定するものである。この技術は、以下の工程によって要約される。サンプルをサンプル管に入れ、真空下又は流動ガス下で加熱して、サンプルの表面上の夾雑物を除去する。サンプル重量は、脱ガスされたサンプル及びサンプル管の混合重量から空のサンプル管重量を差し引いて得られる。次いで、サンプル管を分析ポート上に置き、分析を開始する。この分析方法における第1の工程は、サンプル管を排気し、続いて、液体窒素温度でヘリウムガスを用いてサンプル管内の自由空間体積を測定することである。次いで、サンプルに対して2回目の排気を行なって、ヘリウムガスを除去する。計器は次に、吸着等温線の収集を開始し、要求される圧力測定値が達成されるまで、ユーザが特定する間隔でクリプトンガスを投与することによって吸着等温線を収集する。次いで、クリプトンガス吸着を備えるASAP 2420を用いてサンプルを分析してよい。これら測定は、Micromeretics Analytical Services,Inc.(One Micromeritics Dr,Suite 200,Norcross,GA 30093)により行われることが推奨される。この技術に関するより多くの情報は、Micromeretics Analytical Servicesのウェブサイト(www.particletesting.com又はwww.micromeritics.com)で入手可能であるか、又はClyde Orr及びPaul Webbによる書籍「Analytical Methods in Fine particle Technology」に公開されている。
【0172】
試験9:溶解速度
本発明の溶解性シート又は固体物品の溶解速度は、以下のように測定される。
1.室温(25℃)の脱イオン水400mLを1Lのビーカーに加え、次いで、このビーカーを磁気撹拌板上に置く。
2.長さ23mm及び厚さ10mmの電磁撹拌棒を水に入れ、300rpmで回転するように設定する。
3.Mettler Toledo S230導電率計を1413μS/cmになるように較正し、プローブを水のビーカー内に入れる。
4.各実験では、最低0.2gのサンプルが水に溶解するようにサンプルの数を選択する。
5.導電率計のデータ記録機能を開始し、サンプルをビーカー内に落とす。5秒間、ガラスビーカーの直径と同様の直径を有する平坦な鋼板を使用して、水の表面下にサンプルを浸漬し、それが表面に浮かんでくるのを防ぐ。
6.定常状態値に達するまで少なくとも10分間、導電率を記録する。
7.95%溶解に達するのに必要な時間を計算するために、まず、導電率データから10秒間移動平均を計算する。次いで、この移動平均が最終的な定常状態の導電率値の95%を超えた時点を推定し、95%の溶解を達成するのに必要な時間としする。
【実施例】
【0173】
実施例1:可撓性かつ溶解性の固体シートの例示的な処方
以下は、満足のいくフィルム形成特性、保管安定性、及び洗浄効果を呈する、本発明の可撓性かつ溶解性の固体シートの代表的な処方である。
【0174】
【表1】
1.約1700の重合度を有するホモポリマー
2.約500の重合度を有するホモポリマー
【0175】
実施例2:異なる加熱/乾燥構成によって作製された固体シートにおける異なるOCF構造
以下の表1に記載のとおり、以下の界面活性剤/ポリマー組成を有する湿潤プレミックスを調製する。
【0176】
【0177】
表1に記載の湿潤プレミックス組成物の粘度は、約14309.8cpsである。エアレーション後、このようなエアレーションされた湿潤プレミックスの平均密度は、約0.225g/cm3である。
【0178】
以下の表2に記載されるとおり以下の設定及び条件を用いて、連続エアレータ(Aeros)及び回転ドラム乾燥機を使用することによって、表1に記載の上記湿潤プレミックスから可撓性、多孔質、溶解性の固体シートAを調製する。
【0179】
【0180】
更に、下記の表3に記載されるとおり以下の設定及び条件を用いて、連続エアレータ(Oakes)及び衝突オーブン上に置かれた成形型を使用することによって、表1に記載の上記湿潤プレミックスから別の可撓性、多孔質、溶解性の固体シートIを調製する。
【0181】
【0182】
表4~7は、以下のように、上記の湿潤プレミックス及びそれぞれの乾燥プロセスから作製された固体シートA及びIについて測定された様々な物理的パラメータ及び細孔構造を要約する。
【0183】
【0184】
【0185】
【0186】
【0187】
上記のデータは、回転ドラム乾燥プロセスによって作製された固体シートは、100μmを超える上面平均孔径を特徴とする改善されたOCF構造を有するが、衝突オーブン乾燥プロセスによって作製された固体シートは有しないことを実証する。この差は、それぞれ固体シートAの上面及び固体シートIの上面のSEM画像である
図6A及び
図6Bによって更に実証される。
【0188】
更に、上記のデータは、回転ドラム乾燥プロセスによって作製された固体シートが、衝突オーブン乾燥プロセスによって作製された固体シートよりも平均孔径の局所的なばらつきが著しく小さく、特に、上部平均孔径に対する底部平均孔径の比が著しく小さいことを示す。
【0189】
本明細書に開示した寸法及び値は、記載された正確な数値に厳密に限定されるものと理解されるべきではない。むしろ、特に指定がない限り、そのような各寸法は、記載された値及びその値の周辺の機能的に同等の範囲の両方を意味することを意図している。例えば、「40mm」として開示される寸法は、「約40mm」を意味することが意図される。
【0190】
相互参照されるか又は関連する全ての特許又は特許出願、及び本願が優先権又はその利益を主張する任意の特許出願又は特許を含む、本明細書に引用される全ての文書は、明示的に除外されるか、又は別途制限されない限り、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いかなる文献の引用も、本明細書中で開示又は特許請求される任意の発明に対する先行技術であるとはみなされず、あるいはそれを単独で又は他の任意の参考文献と組み合わせたときに、そのような任意の発明を教示、示唆、又は開示するとはみなされない。更に、本文書における用語の任意の意味又は定義が、参照することによって組み込まれた文書内の同じ用語の意味又は定義と矛盾する場合、本文書におけるその用語に与えられた意味又は定義が適用されるものとする。
【0191】
本発明の特定の実施形態を例示及び説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正を行うことができる点は当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内に含まれるそのような全ての変更及び修正は、添付の特許請求の範囲にて網羅することを意図したものである。