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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】工具カセット
(51)【国際特許分類】
   B21D 37/14 20060101AFI20220708BHJP
   B23Q 3/155 20060101ALI20220708BHJP
【FI】
B21D37/14 H
B23Q3/155 K
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019542128
(86)(22)【出願日】2018-02-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-27
(86)【国際出願番号】 EP2018052639
(87)【国際公開番号】W WO2018141901
(87)【国際公開日】2018-08-09
【審査請求日】2021-01-25
(31)【優先権主張番号】102017201788.0
(32)【優先日】2017-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518006075
【氏名又は名称】トルンプフ シュヴァイツ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】TRUMPF Schweiz AG
【住所又は居所原語表記】TRUMPF Strasse 8, 7214 Gruesch, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マティアス トヴァイトマン
(72)【発明者】
【氏名】エティエンヌ ラルドン
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0191199(US,A1)
【文献】特開平11-129181(JP,A)
【文献】実開平03-076624(JP,U)
【文献】特開平02-147131(JP,A)
【文献】特開昭59-110584(JP,A)
【文献】登録実用新案第3020740(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 37/14
B23Q 3/155
B25J 15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状のワークを加工するための、ポンチおよびダイから成る、複数部材を有する加工工具の工具部分を取り付けるための工具カセット(1)であって、当該工具カセット(1)は:
カセット基体(2)、
加工用ポンチとして形成された工具部分を取外し可能に保持するためのポンチホルダ(3)、および
加工用ダイとして形成された工具部分を取外し可能に保持するためのダイホルダ(4)を有しており、
前記ポンチホルダ(3)は、互いに旋回可能な2つのカセットアーム(6)を有しており、これらのカセットアーム(6)はそれぞれ、各前記カセットアーム(6)を旋回可能に支承するためのピン(7)を有しており、かつ
前記カセット基体(2)は、前記ピン(7)を回動可能に取り付けるための、前記ピン(7)に対応する2つの開口(8)を有しており、
前記ピン(7)は別個の構成部材として形成されており、対応する凹部(9)が前記カセットアーム(6)に形成されており、前記凹部(9)内で前記ピン(7)はプレス嵌めにより、前記カセットアーム(6)と強固に結合されている、工具カセット(1)。
【請求項2】
前記ピン(7)は、該ピン(7)の軸方向において、強固な結合部における前記カセットアーム(6)の軸方向における厚さの少なくとも4倍の長さを有している、請求項記載の工具カセット(1)。
【請求項3】
前記ピン(7)は、その軸方向において、前記カセットアーム(6)の片面側に、前記強固な結合部における該カセットアーム(6)の軸方向における厚さの少なくとも3倍だけ突出しているように形成されている、請求項記載の工具カセット(1)。
【請求項4】
当該工具カセット(1)は、互いに間隔をあけて配置された複数の部分(10)を有しており、これらの部分(10)はそれぞれ、整合し合うように配置された開口(8)を備えており、前記ピン(7)がそれぞれ整合し合う前記開口(8)に取り付けられるように、前記ピン(7)の長さが寸法設定されていると共に、前記開口(8)の各位置が配置されている、請求項1からまでのいずれか1項記載の工具カセット(1)。
【請求項5】
前記ピン(7)は、それぞれその軸方向において前記カセットアーム(6)の両面側に突出するように、前記カセットアーム(6)に配置されている、請求項1からまでのいずれか1項記載の工具カセット(1)。
【請求項6】
少なくとも1つの前記開口(8)は、前記カセットアーム(6)の前記両面のうちの一方の面の側において前記カセット基体に形成されており、かつ少なくとも1つの別の開口(8)は、前記カセットアーム(6)の前記両面のうちの他方の面の側において前記カセット基体(2)に結合された別の構成部材(12)に形成されている、請求項記載の工具カセット(1)。
【請求項7】
前記ピン(7)は鋼から製造されており、かつ前記カセット基体(2)は少なくとも、前記開口(8)が形成されたプラスチックから成る部分を有している、請求項1からまでのいずれか1項記載の工具カセット(1)。
【請求項8】
前記カセット基体(2)はプラスチックから形成されている、請求項記載の工具カセット(1)。
【請求項9】
前記ピン(7)と、前記対応する開口(8)とは、遊びの少ない移行嵌合部を形成するように適合されている、請求項1からまでのいずれか1項記載の工具カセット(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具カセット、特に板状のワークを加工するための、複数部材を有する加工工具の工具部分を取り付けるための工具カセットに関する。
【0002】
例えば加工ポンチとして形成された工具部分を取外し可能に保持するためのポンチホルダを形成するカセットアームを備えた工具カセットは周知である。旋回運動を実施することができるようにするために、カセットアームはそれぞれ開口を有しており、開口は、工具カセットに挿入されるピンと共に支承箇所を形成しており、ピンを中心として各カセットアームが旋回する。特に重たい加工工具の場合(重たい加工ポンチの場合)には、カセットアームひいては加工ポンチが、支承箇所におけるすきま嵌めに基づき垂れ下がる、という問題が生じ、このことは、加工工具が用いられる加工機械のポンチセンサの問題につながる恐れがある。
【0003】
さらに、開口内でカセットアームとピンとの間に擦過腐食が発生する、という問題が生じる。これは特に、カセットが水性洗浄浴を伴う超音波浴で洗浄される場合に起こる。
【0004】
本発明の根底を成す課題は、上記問題を解決すること、すなわち、重たい加工ポンチにおけるカセットアームの垂れ下がりを防ぐと共に、カセットアームと開口内のピンとの間の擦過腐食の発生を防ぐ、工具カセットを提供することにある。
【0005】
この課題は、請求項1記載の工具カセットにより解決される。本発明の改良は、各従属請求項に記載されている。
【0006】
本発明の1つの態様では、カセットアームが、カセットアームを旋回可能に支承するための各1つのピンを有している工具カセットが提供され、この場合、カセット基体が、ピンを回動可能に取り付けるための、各1つの対応する開口を有している。
【0007】
ピンの回動可能な取付けに基づき、カセットアームにピンを設けることが可能である。カセットアームとピンとの間の固い結合により、カセットアームが、特に重たい加工工具により荷重を加えられたために垂れ下がる、という問題は解消される。
【0008】
従来技術において垂れ下がりは、カセットアームとピンとの間の支承箇所のすきま嵌めの、短い案内長さに基づき生じる。短い案内長さは、カセットアームの小さな厚さに起因している。しかし、カセットアームがピンを中心として回動する場合、前記箇所ではすきま嵌めが必要とされている。
【0009】
本発明では、この領域の材料の弾性変形が大幅に減少されると共に、カセットアームとピンとの間の支承箇所の摩耗に基づく、カセットアームの垂れ下がりを招くカセットアームとピンとの間の遊びの増大が防がれる。
【0010】
このことは、カセットアームとピンとの間の小さな支持長さを備えた支承箇所をなくすことにより、可能になる。固い結合に基づき、加工ポンチにより加えられる荷重のモーメントに基づき生じる大きな半径方向の力が、支承箇所の軸方向の両端部に点状に生じる代わりに、ピンとカセットアームとの間の結合部の全長にわたって分散されるため、カセットアームとピンとの間の相対運動に関係する前記力による弾性変形と摩耗の両方共が、減少または防止される。さらに、この箇所における擦過腐食の発生も防がれる。
【0011】
プレス嵌め部としての好適な構成により、強固な結合部は簡単かつ廉価に製造され得る。
【0012】
ピンが、好適にはカセットアームの強固な結合部の厚さの少なくとも4倍の長さを有していると、開口内のピンの半径方向の支持力は、大きな支持長さに基づき小さくなり、その結果、摩耗は一切または最小限にしか生じない。
【0013】
特にピンがカセットアームの片面側に突出している場合には、突出長さはカセットアームの強固な結合部の厚さの好適には3倍であり、これにより、小さな半径方向の支持力が保証されている。
【0014】
好適には工具カセットは、ピン用の整合し合う開口を備え、互いに間隔をあけて配置された複数の部分を有している。ピンの長さおよび位置が適宜に調整されていると、工具カセットにおいて材料が節減されているにもかかわらず、大きな支持長さを得ることができ、このことは、重量節減およびコスト削減を可能にする。
【0015】
好適にはカセットアームの両面側にピンが突出していると、ピンの支持長さはカセットアームの外側に増大され、このことは、より小さな半径方向の支持力をもたらす。
【0016】
好適にはカセットアームの両面側に開口が設けられており、少なくとも1つの開口は、カセット基体とは異なる側においてカセット基体に結合された別の構成部材に設けられていることにより、カセットアームの脱落をピンにより防止することができ、組立が容易になり、かつピンは別の構成部材に半径方向で支持され得るようになっており、このことはカセットアームの支承部が剛性であっても、やはり複数の利点をもたらす。
【0017】
有利には、カセット基体にプラスチックから成る少なくとも複数の部分が設けられており、かつピンが鋼から形成されていると、一方では有利な摺動が可能になり、かつ他方では擦過腐食が防止され、これにより例えば、工具カセットを超音波浴内で水性洗浄剤を用いて洗浄することが可能になる。
【0018】
工具カセットのカセット基体が好適にはプラスチックから形成されていると、カセット基体は重量を削減されて廉価に製造され得る。さらにこの場合、特殊な基体形状でさえ、比較的大量の個数で簡単に製造され得る。
【0019】
ピンおよび対応する開口の有利な構成では、これらは遊びの少ない移行嵌合部を形成しており、加工ポンチの垂れ下がりを低減させることができる。
【0020】
本発明を、1つの実施例に基づき添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明による工具カセットの斜視図である。
図2】工具カセットの側方断面図である。
【0022】
図1には本発明による工具カセット1の斜視図が示されており、図2には本発明による工具カセット1の側方断面図が示されている。
【0023】
工具カセット1は、板状のワークを加工するための、複数部材を有する加工工具(図示せず)を取り付けるために用いられる。工具カセット1は、カセット基体2を有している。カセット基体2には、加工工具の加工用ポンチとして形成された工具部分を取外し可能に保持するためのポンチホルダ3と、加工工具の加工用ダイとして形成された工具部分を取外し可能に保持するためのダイホルダ4とが設けられている。さらに、好適には板状のワークの加工に適した加工工具の掻取機用のホルダ5も設けられている。択一的には、このホルダ5が設けられていない実施形態も可能である。それというのも、掻取機を有さない加工工具も存在するからである。
【0024】
ポンチホルダ3は、2つのカセットアーム6を有している。これらのカセットアーム6は、互いに旋回可能でありかつそれぞればね(図示せず)により予荷重を加えられている。つまりカセットアーム6は、加工ポンチが取り付けられていない停止位置では、加工ポンチの取付け装置の寸法よりも小さな間隔を有しており、これにより、加工ポンチがポンチホルダ内へ挿入されると緊締されるようになっている。カセットアーム6はそれぞれ、カセットアーム6を旋回可能に支承するためのピン7を有している。このためにピン7は、カセット基体2に形成された、対応する開口8(図2)内に、旋回可能に取り付けられている。ピンは、それぞれ任意には平行に配置されており、これによりカセットアーム6が1平面内で旋回することができるようになっている。
【0025】
ピン7は、好適には別個の構成部材として形成されており、対応して形成された凹部をカセットアーム6が有しているため、ピン7は凹部9(図2)内でカセットアーム6と強固に結合されている。この強固な結合部は、本実施形態ではプレス嵌め部として形成されているが、択一的にろう接、溶接または接着等により形成されていてもよい。
【0026】
ここではピン7の長さは、ピン7の軸方向に見て、カセットアーム6の強固な結合部の厚さの約8倍であるように選択されている。択一的には、カセットアーム6の前記厚さの少なくとも4倍のピンの長さが、既に有利である。
【0027】
ピン7とカセットアーム6との結合部は、ピン7がその軸方向においてカセットアーム6の両面側に突出するように選択されている。1つの択一的な実施形態では、ピン7は片面側にのみ突出していてもよいか、または一方のピン7は片面側に突出しておりかつ他方のピン7は両面側に突出している。ピン7は、本実施形態ではピン7の軸方向に見て、カセットアーム6の強固な結合部の厚さの約7倍だけ突出している。択一的にはピンの、カセットアーム6の前記厚さの少なくとも3倍の突出長さが、既に有利である。
【0028】
工具カセット1は、互いに間隔をあけて配置された複数の部分10(図2)を有しており、これらの部分10にはそれぞれ、ピン7を回動可能に取り付けるための開口8が形成されている。部分10は、ここではカセット基体2に設けられているが、工具カセット1の別の構成部材により提供されてもよい。部分10に形成された各開口8は、各1つのピン7を取り付けるために、それぞれ整合するように配置されており、これによりピン7は、整合し合う各開口8に取り付けられる。各ピン7がそれぞれ整合し合う開口8に取り付けられるように、ピン7の長さが寸法設定されていると共に、開口8の各位置が配置されている。1つの択一的な実施形態では、ピン7を取り付けるために複数の整合し合う開口8が設けられているのではなく、1つのピン7に対して各1つの開口8だけが設けられており、この場合、ピン7は垂れ下がりが生じること無しにカセットアーム6を支承するために、相応する十分な長さおよび位置を有している必要がある。
【0029】
工具カセット1はさらに、フレーム11を有しており、フレーム11は取付け部分12を備えている。フレーム11は、取付け部分を介してカセット基体2に結合されている。フレーム11は、少なくとも1つの別の開口9を有しており、この開口9にはピン7が回動可能に取り付けられている。つまり本実施形態では、少なくとも1つの開口9は、カセットアーム6の一方の面の側においてカセット基体2に形成されており、少なくとも1つの別の開口9は、カセットアーム6の両面のうちの他方の面の側においてフレーム11の取付け部分12、つまり工具カセット1に結合された構成部材に形成されている。
【0030】
工具基体2は、プラスチック、特に繊維強化ポリアミドから製造されている。1つの択一的な実施形態では、開口8が形成されている工具基体2の部分だけが、プラスチックから製造されているに過ぎない。ピン7は、鋼から製造されている。工具基体2は、択一的に別の材料、例えばアルミニウムまたはマグネシウム合金から製造されていてもよい。
【0031】
良好な可動性を保証するが、カセットアーム6における加工ポンチの垂れ下がりは防ぐために、ピン7と、対応する開口8とは、遊びの少ない移行嵌合部を形成するように適合されている。つまり、ピン7および開口8の直径は、ピン7と開口8との間に締付けも過剰な遊びも一切生じることがない許容範囲内の共通の呼び寸法である。
【0032】
本明細書、後続の請求項および図面に示した特徴は全て、個別でも、互いに任意に組み合わされたものでも、本発明にとって重要であり得る。
図1
図2