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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】高分子電解質及びこの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0565 20100101AFI20220708BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20220708BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20220708BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20220708BHJP
   C08K 3/16 20060101ALI20220708BHJP
   C08G 65/48 20060101ALI20220708BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20220708BHJP
【FI】
H01M10/0565
H01M10/052
H01M10/0568
H01B1/06 A
C08K3/16
C08G65/48
C08L71/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019565146
(86)(22)【出願日】2018-09-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-09
(86)【国際出願番号】 KR2018011231
(87)【国際公開番号】W WO2019059705
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2019-08-14
(31)【優先権主張番号】10-2017-0121709
(32)【優先日】2017-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0093721
(32)【優先日】2018-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】505282042
【氏名又は名称】ポステック・アカデミー‐インダストリー・ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】デイル・キム
(72)【発明者】
【氏名】ムン・ジョン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ジョンヒョン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ヨンジュ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ルシア・キム
(72)【発明者】
【氏名】ハ・ヨン・チョン
(72)【発明者】
【氏名】ギュハ・ジョ
【審査官】森 透
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-002153(JP,A)
【文献】特開2011-243568(JP,A)
【文献】特開平03-188157(JP,A)
【文献】特表2011-506629(JP,A)
【文献】特表2009-544794(JP,A)
【文献】特開2001-181352(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0308245(US,A1)
【文献】米国特許第05393621(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0081557(US,A1)
【文献】Ha Young Jung, Prithwiraj Mandal, Gyuha Jo, Onnuri Kim, Kyungwon Kwak and Moon Jeong Park,Modulating Ion Transport and Self-Assembly of Polymer Electrolutes via End-Group Chemistry,Macromolecules,American Chemical Society,2017年04月05日,50,pp. 3224-3233
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
H01M 10/36-10/39
H01B 1/06
C08K 3/38
C08K 3/30
C08K 3/16
C08G 65/48
C08L 71/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンオキシド(Poly(ethylene oxide):PEO)系高分子;及び
リチウム塩;
を含み、
前記ポリエチレンオキシド系高分子の末端がリン化合物官能基で置換され、
前記リン化合物官能基で置換されたポリエチレンオキシド系高分子は、下記化学式2又は化学式3で表され
前記高分子の分子量は、1~20kg/molである、高分子電解質。
【化2】
【化3】
(前記化学式1ないし3において、nは整数の反復単位で10ないし120であり、Rは炭素数1-4のアルキレン鎖である。)
【請求項2】
前記リン化合物官能基は、ホスホン酸ジエチル(diethyl phosphonate)またはホスホン酸(phosphonic acid)である、請求項1に記載の高分子電解質。
【請求項3】
前記リチウム塩は、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、CFSOLi、LiSCN、LiC(CFSO、(CFSONLi、(FSONLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、4-フェニルホウ酸リチウム、イミド及びビス(トリフルオロメタンスルホニルイミド)(bis(trifluoromethane sulfonyl)imide)(LiTFSI)からなる群から選択される1種以上である、請求項1又は2に記載の高分子電解質。
【請求項4】
前記高分子電解質において、前記高分子の[EO]と前記リチウム塩の[Li+]の割合である[Li+]/[EO]値が0.02と0.08との間である、請求項1からの何れか一項に記載の高分子電解質。
【請求項5】
前記高分子電解質は、全固体電池用固体電解質である、請求項1からの何れか一項に記載の高分子電解質。
【請求項6】
(a)ポリエチレンオキシド(Poly(ethylene oxide):PEO)系高分子に、リン化合物を添加し、前記ポリエチレンオキシド系高分子の末端を改質する段階;及び
(b)リチウム塩を添加する段階;を含み、
前記リン化合物で末端が改質されたポリエチレンオキシド系高分子は、下記化学式2又は化学式3で表され
前記高分子の分子量は、1~20kg/molである、高分子電解質の製造方法。
【化5】
【化6】
(前記化学式1ないし3において、nは整数の反復単位で10ないし120であり、Rは炭素数1-4のアルキレン鎖である。)
【請求項7】
前記(a)段階において、前記リン化合物は、ホスホン酸ジエチル(diethyl phosphonate)系化合物、またはホスホン酸(phosphonic acid)系化合物である、請求項に記載の高分子電解質の製造方法。
【請求項8】
正極、負極及びその間に介在される固体高分子電解質を含んで構成される全固体電池において、
前記固体高分子電解質は、請求項1ないし請求項のいずれか一つに記載の高分子電解質であることを特徴とする全固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年9月21日付韓国特許出願第10-2017-0121709号及び2018年8月10日付10-2018-0093721に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容を本明細書の一部として含む。
【0002】
本発明は、高分子電解質及びこの製造方法に係り、より詳しくは、リチウム陽イオン輸率が向上された高分子電解質及びこの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
携帯電話、ノートパソコン、カムコーダーなどのポータブル機器だけでなく、電気自動車に至るまで、充放電可能な二次電池の適用分野が日々拡がっていて、これによって二次電池の開発が活発に行われている。また、二次電池の開発時、容量密度及び非エネルギーを向上させるための電池設計に対する研究開発も進められている。
【0004】
一般に、電池の安全性は、液体電解質<ゲルポリマー電解質<固体電解質の順に向上されるが、これに反して電池性能は減少することと知られている。
【0005】
従来、電気化学反応を利用した電池、電気二重層キャパシターなどの電気化学素子用電解質では、液体状態の電解質、特に、非水系有機溶媒に塩を溶解したイオン伝導性有機液体電解質が主に使われてきた。しかし、このように液体状態の電解質を使うと、電極物質が退化し、有機溶媒が揮発する可能性が高いだけでなく、周りの温度及び電池自体の温度上昇による燃焼などのような安全性に問題がある。
【0006】
特に、リチウム二次電池に使われる電解質は、液体状態で高温の環境で可燃性の危険があるため、電気自動車への適用に少なくない負担要因になり得る。また、溶媒が可燃性の有機電解液を使っているので、漏液だけでなく、発火燃焼事故の問題も常に伴っている。このため、電解液に難燃性のイオン性液体やゲル状電解質、または高分子状の電解質を使うことが検討されている。したがって、液体状態のリチウム電解質を固体状態の電解質に取り替える場合、このような問題を解決することができる。ここで、現在まで様々な固体電解質が研究開発されてきた。
【0007】
固体電解質は、難燃性素材を主に使っていて、これによって安定性が高くて非揮発性素材で構成されているので、高温で安定している。また、固体電解質が分離膜の役目をするので、既存の分離膜が不要であり、薄膜工程の可能性がある。
【0008】
最も理想的な形態は、電解質にも無機固体を使う全個体型であって、安全性だけでなく安定性や信頼性に優れた二次電池が得られる。大容量(エネルギー密度)を得るために、積層構造の形を取ることも可能である。また、従来の電解液のように、溶媒化リチウムが脱溶媒化される過程も不要で、イオン伝導体固体電解質の中をリチウムイオンだけが移動すれば良いので、不要な副反応を発生しないので、サイクル寿命も大幅に伸ばせることができる。
【0009】
全固体二次電池を現実化するにあたり、解決しなければならない最大の問題点である固体電解質のイオン伝導度は、以前は有機電解液に大きく及ばなかったが、最近、イオン伝導度を向上させる様々な技術が報告されていて、これを用いた全固体二次電池の実用化方案に対する研究が続いている。
【0010】
このようなリチウムイオン電池(Lithium ion battery)に使われる電解質の一つであるポリエチレンオキシド(PEO)とリチウム塩の複合体電解質は、既存の液体電解質に比べて高い安定性を持つという長所がある。
【0011】
しかし、この電解質に使われるPEOは、高い結晶性を有する高分子であり、これによって高分子の融点(約50℃)以下で結晶化する場合、イオン伝導度が極めて低くなる問題がある。既存には、PEOの分子量を極めて低めて常温で液体状態を有する高分子を用いる場合が頻繁であったが、これはPEOの結晶化特性を緩和した根本的研究とは認めがたい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【文献】Ito, K.;Nishina, N.;Ohno, H.J.Mater.Chem.1997, 7, 1357-1362.
【文献】Jo, G.;Anh, H.;Park, M.J.ACS Macro Lett.2013, 2, 990-995.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述したように、PEOを電解質に使う場合、高分子の低い融点によって約50℃以下で結晶化される場合、イオン伝導度が極めて低くなる問題が発生した。ここで、本発明者は、多角的に研究を行った結果、PEO鎖の内在的結晶性を減らすことができる新しい高分子合成を通じて問題を解決できる方法を見つけ出し、本発明を完成した。
【0014】
したがって、本発明の目的は、新しい官能基が取り入れられた高分子を通して、リチウム塩を含むPEO基盤の高分子電解質が常温で優れた常温イオン伝導度を有し、リチウム陽イオン輸率も向上されたリチウム電池用電解質を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するために、本発明は、ポリエチレンオキシド(Poly(ethylene oxide):PEO)系高分子;及びリチウム塩;を含み、前記ポリエチレンオキシド系高分子の末端が硫黄化合物官能基、窒素化合物官能基、またはリン化合物官能基で置換された高分子電解質を提供する。
【0016】
また、本発明は、(a)ポリエチレンオキシド(Poly(ethylene oxide):PEO)系高分子に、硫黄化合物、窒素化合物、またはリン化合物を添加し、前記ポリエチレンオキシド系高分子の末端を改質する段階;及び(b)リチウム塩を添加する段階;を含む高分子電解質の製造方法を提供する。
【0017】
また、本発明は、正極、負極、及びその間に介在される固体高分子電解質を含んで構成される全固体電池において、前記固体高分子電解質は、ポリエチレンオキシド(Poly(ethylene oxide):PEO)系高分子;及びリチウム塩;を含み、前記ポリエチレンオキシド系高分子の末端が窒素化合物官能基、またはリン化合物官能基で置換された高分子電解質である全固体電池を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の高分子電解質を全固体電池に適用すれば、PEOの分子量を変化させないまま様々な末端官能基を取り入れた高分子の合成を通じて高分子の結晶性を減らすことができ、よって、本発明の高分子電解質は、常温でも優れたイオン伝導度を有することができる。また、末端官能基とリチウム塩の間の分子引力を制御することで、リチウム陽イオン輸率を向上させることができ、放電容量及び充放電速度を向上させる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施例1ないし3、及び比較例1のNMRデータ測定結果を示すグラフである。
図2】本発明の実施例2ないし3の加水分解効率を測定した31P NMR結果を示すグラフである。
図3】本発明の実施例1ないし3、及び比較例1のゲル透過クロマトグラフィー分析法の結果を示すグラフである。
図4】本発明の実施例1ないし3、及び比較例1ないし2の示差走査熱量分析法(differential scanning calorimeter、DSC)の分析結果を示すグラフである。
図5】本発明の実施例1ないし3、及び比較例1のイオン伝導度を分析した結果を示すグラフである。
図6】本発明の実施例1ないし3、及び比較例1のイオン伝導度を分析した結果を補正して示すグラフである。
図7】本発明の実施例1ないし3、及び比較例1の電極分極測定結果を示すグラフである。
図8】本発明の実施例1ないし3、及び比較例1のFT-IR測定結果を示すグラフである。
図9】本発明の実施例1ないし3、及び比較例1のFT-IR測定結果を示すグラフである。
図10】本発明の実施例1ないし3、及び比較例1のFT-IR測定結果を示すグラフである。
図11】本発明の実施例1と、実施例1の高分子にLiTFSI塩をドーピングした後のFT-IR測定結果を示すグラフである。
図12】本発明の実施例3と、実施例3の高分子にLiTFSI塩をドーピングした後のFT-IR測定結果を示すグラフである。
図13】本発明の実施例1ないし3、及び比較例1と、これらにLiTFSI塩をドーピングした後のFT-IR測定結果を示すグラフである。
図14】チオール-エン クリック化学(thiol-ene click chemistry)を通じる末端を置換したPS-b-PEOブロック共重合体の合成経路を示す。
図15】(a)SEO-ene、SEO-c、SEO-2h、そしてSEO-2cのH NMRスペクトル(b)SECデータ(c)SEO-h、SEO-c、SEO-2h、そしてSEO-2cのFT-IR、O-H伸縮(stretching)とC=O伸縮(stretching)は(c)に表記した。
図16】SEO-h、SEO-c、SEO-2h、そしてSEO-2cの60℃でのSAXSデータ。満たされた逆三角形は、SEO-cのブラッグピーク(bragg peaks)
【0020】
【数1】
【0021】
を示す。末端基による界面変化を絵で示す。末端を置換したSEO試料の結晶化度を示すDSCデータを挿入した。
図17】(a)保存(storage、G’、満たされた記号)そして損失(loss、G”、開かれた記号)弾性率(modulus)。0.5rad/sで0.1%のstrainで冷却(青色)、昇温(赤色)実験を1℃/minの一定した速度で行った。末端を置換した各試料の平衡弾性率(plateau modulus)は点線で記した。(b)SEO-2cとPEO-2cの50℃で振動数に注いで測定したG’、G”。
図18】末端基を置換した試料にリチウム塩をドーピングしてイオンの伝導特性を示すグラフである。
図19】(a)r=0.02でリチウム塩をドーピングした末端基が置換されたSEO電解質膜の温度によるイオン伝導特性、(b)T=60℃、DV=0.1Vで分極実験を通して測定したリチウムイオン輸率(lithium transference number)電流の流れを観察した代表的なデータを挿入した。(c)r=0.06でリチウム塩をドーピングした末端基が置換されたSEO電解質膜の温度によるイオン伝導特性。Vogel-Tammann-Fulcher(VTF)式によってフィッティング(fitting)したことを実線で示す。(d)PEO-2hのリチウム塩をドーピングしたものと、ドーピングしていないデータ(r=0.06)。TFSI-陰イオン、リチウムイオンとそれぞれ水素結合、dipolar相互作用をする末端基を示す。3700-2500cm-1間の範囲ピークを拡大して挿入した。
図20】(a)末端基が置換されたPEO鎖の分子間相互作用を示す図面。(b)PEO-2c、PEO-2hのリチウム塩下での分子間相互作用を示す図面である。二つの試料いずれも末端がTFSI-陰イオンと水素結合相互作用をし、リチウムイオンがエーテル酸素と配位(coordination)をした。PEO-2cで観察できる二量体(dimer)形成も示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明が属する技術分野において、通常の知識を有する者が容易に実施できるよう、添付の図面を参照にして詳しく説明する。しかし、本発明は、幾つか異なる形態で具現されてもよく、本明細書に限定されない。
【0023】
図面では、本発明を明確に説明するために、説明と関系ない部分を省略し、明細書全体にわたって類似する部分に対しては類似な図面符号を付する。また、図面で示された構成要素の大きさ及び相対的大きさは、実際の縮尺とは無関系であり、説明の明瞭性のために縮小または誇張されたものであってもよい。
【0024】
高分子電解質
本発明は、PEOの分子量を変化させないまま様々な末端官能基を取り入れた高分子の合成を通じて高分子の結晶性を減らすことができる新しい高分子として、ポリエチレンオキシド(Poly(ethylene oxide):PEO)系高分子;及びリチウム塩;を含み、
上記ポリエチレンオキシド系高分子の末端が硫黄化合物官能基、窒素化合物、またはリン化合物で置換された、高分子電解質を提供する。
【0025】
本発明の高分子電解質は、硫黄化合物、窒素化合物、またはリン化合物をポリエチレンオキシド系高分子の末端に官能基として取り入れることで、高分子に導入された官能基とリチウム塩の間に様々な相互作用を誘導することで、イオン伝導の特性を向上することができる。
【0026】
具体的に、本発明において、ポリエチレンオキシド系高分子の末端に取り入れる窒素化合物官能基では、ニトリル(nitrile)、アミン(amine)、ピリジン(pyridine)、イミダゾール(imidazole)などがあり、リン化合物官能基では、ホスホン酸ジエチル(diethyl phosphonate)、またはホスホン酸(phosphonic acid)などがある。
【0027】
本発明において、上記ポリエチレンオキシド系高分子の末端に窒素化合物またはリン化合物が官能基として取り入れられた高分子の具体例は、下記化学式1ないし化学式3のいずれか一つで表されてもよい。
【0028】
【化1】
【0029】
【化2】
【0030】
【化3】
【0031】
(上記化学式1ないし3において、nは整数の反復単位で10ないし120であり、Rは炭素数1-4のアルキル鎖である。)
【0032】
本発明の高分子電解質は、上記のように、ポリエチレンオキシド(PEO)の分子量を変化させないまま様々な末端官能基を取り入れた高分子の合成を通じて高分子の結晶性を非置換ポリエチレンオキシド(PEO)に対して30~80%程度に減らすことができる。
【0033】
具体的に、本発明において、ポリエチレンオキシド系高分子の末端に取り入れる硫黄化合物官能基では、下記化学式4で表される官能基があるものを使ってもよい。
【0034】
[化学式4]
-S-R
(ここで、Rは炭素数1~4のカルボキシル基、ジオール基、ジカルボキシル基である。)
また、上記化学式4において、上記-Rは、下記化学式5(a)ないし化学式5(c)で表される官能基より一つ以上選択されてもよい。
【0035】
【化4】
【0036】
本発明において、ポリエチレンオキシド系高分子の末端が硫黄化合物の官能基で置換される場合、上記ポリエチレンオキシド系高分子は、ポリエチレンオキシドブロックと疎水性ブロック、例えば、ポリスチレンブロックからなるブロック共重合体であってもよい。
【0037】
本発明の実施において、上記ブロック共重合体は、下記化学式(6)で表されるものであってもよく、
【0038】
【化5】
【0039】
ここで、Rは炭素数1~4のカルボキシル基、ジオール基、ジカルボキシル基であり、
R1は炭素数1-8のアルキルであり、
bはブロック共重合体であることを意味し、
0<n<200で、0<m<100で、1.5m<n<2.5mで、
上記ブロック共重合体の分子量は、20kg/mol以下、好ましくは2~20kg/molで、各ブロックの分子量は1~10kg/molである。
【0040】
本発明の好ましい実施において、上記ブロック共重合体は、下記化学式(7)で表され、官能基-Rは、化学式(5)で表されてもよい。
【0041】
【化6】
【0042】
【化7】
【0043】
ここで、bはブロック共重合体であることを意味し、
0<n<200で、0<m<100で、1.5m<n<2.5mで、
上記ブロック共重合体の分子量は、2~20kg/molである。
【0044】
本発明において、上記ブロック共重合体は金属塩、好ましくは、リチウム塩でドーピングされてもよい。
【0045】
本発明において、上記ブロック共重合体は、ジャイロイド、ラメラ、または無定形構造を持つことができる。
【0046】
また、本発明の高分子電解質は、全固体電池用固体電解質で使われてもよい。
【0047】
固体電解質は、難燃性素材を主に使っていて、これによって安定性が高くて非揮発性の素材で構成されているので、高温で安定する。また、固体電解質が分離膜の役目をするので、既存の分離膜が不要であり、薄膜工程の可能性がある。
【0048】
最も理想的な形は、電解質にも無機固体を使う全個体型であって、安全性だけでなく安定性や信頼性に優れた二次電池が得られる。大容量(エネルギー密度)を得るために、積層構造の形を取ることも可能である。また、従来の電解液のように、溶媒化リチウムが脱溶媒化される過程も不要で、イオン伝導体固体電解質の中をリチウムイオンだけが移動すれば良いので、不要な副反応を発生せず、サイクル寿命も大幅に伸ばせることができる。
【0049】
また、本発明の高分子電解質は、後述するように、イオン伝導度が向上されているので、全固体イオン電池に適用させることに好ましい。
【0050】
また、本発明は、上記のような高分子にリチウム塩を取り入れて複合体電解質を製作し、イオン伝導度及びリチウム陽イオンの輸送特性を向上させる。
【0051】
このために、本発明は、ポリエチレンオキシド系高分子にリチウム塩をドーピングする。
【0052】
上記リチウム塩は、特に制限されないが、好ましくは、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、CFSOLi、LiSCN、LiC(CFSO、(CFSONLi、(FSONLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、4-フェニルホウ酸リチウム、イミド及びbis(trifluoromethane sulfonyl)imide(LiTFSI)からなる群から選択される1種以上を使ってもよい。
【0053】
本発明の高分子電解質は、ポリエチレンオキシド(PEO)の分子量を変化させないまま様々な末端官能基を取り入れた高分子の合成を通じて高分子の結晶性を減らすことができるので、高分子電解質の分子量を1~20kg/molで使ってもよい。
【0054】
また、本発明の高分子電解質は、リチウム電池の実用的性能を確保するために、上記高分子の[EO]と上記リチウム塩の[Li+]の割合である[Li+]/[EO]値が0.02と0.08との間であってもよい。上記高分子の[EO]と上記リチウム塩の[Li+]濃度が上記範囲に含まれれば、電解質が適切な伝導度及び粘度を有するので、優れた電解質性能が表れるし、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0055】
また、本発明の高分子電解質は、イオン輸送特性がリチウム陽イオンの輸率0.5以上であって優秀である。
【0056】
高分子電解質の製造方法
また、本発明は、上記のような高分子電解質を製造するために、
(a)ポリエチレンオキシド(Poly(ethylene oxide):PEO)系高分子に、硫黄化合物、窒素化合物、またはリン化合物を添加し、上記ポリエチレンオキシド系高分子の末端を改質する段階;及び(b)リチウム塩を添加する段階;を含む高分子電解質の製造方法を提供する。
【0057】
先ず、本発明は、(a)段階でポリエチレンオキシド(Poly(ethylene oxide):PEO)系高分子に、硫黄化合物、窒素化合物、またはリン化合物を添加して上記ポリエチレンオキシド系高分子の末端を改質し、これを通じて上記ポリエチレンオキシド系高分子の末端が硫黄化合物官能基、窒素化合物官能基、またはリン化合物官能基で置換されてもよい。
【0058】
本発明の高分子電解質は、硫黄化合物、窒素化合物、またはリン化合物をポリエチレンオキシド系高分子の末端に官能基で取り入れることにより、高分子に取り入れられた官能基とリチウム塩の間で様々な相互作用を誘導することで、イオン伝導特性を向上することができる。
【0059】
上記硫黄化合物、窒素化合物、またはリン化合物を添加する方式は特に制限されず、業界で通常用いられる方式で添加してもよい。
【0060】
具体的に、本発明において、ポリエチレンオキシド系高分子の末端に取り入れる窒素化合物官能基では、ニトリル(nitrile)、アミン(amine)、ピリジン(pyridine)、イミダゾール(imidazole)などがあり、リン化合物官能基では、ホスホン酸ジエチル(diethyl phosphonate)、またはホスホン酸(phosphonic acid)などがある。
【0061】
上記(a)段階で、上記ポリエチレンオキシド系高分子の末端に窒素化合物またはリン化合物が官能基として取り入れられた高分子の具体例は、下記化学式1ないし化学式3のいずれか一つで表されてもよい。
【0062】
【化8】
【0063】
【化9】
【0064】
【化10】
【0065】
(上記化学式1ないし3において、nは整数の反復単位で10ないし120であり、Rは炭素数1-4のアルキル鎖である。)
【0066】
また、本発明において、ポリエチレンオキシド系高分子の末端が硫黄化合物官能基で置換される場合、上記ポリエチレンオキシド系高分子は、ポリエチレンオキシドブロックと疎水性ブロック、例えば、ポリスチレンブロックからなるブロック共重合体であってもよい。
【0067】
この場合、ポリエチレンオキシドブロックを含むブロック共重合体で、上記ポリエチレンオキシドブロックの末端を下記化学式(8)に改質する段階;及び
-R-CH=CH (8)
(ここで、Rは炭素数1~6のアルキル)
上記化学式(8)の化合物を下記化学式(9)のシオール化合物とシオール-エンクリック反応する段階;
HS-R (9)
(ここで、上記Rは、炭素数1~4のカルボキシル基、ジオール基、ジカルボキシル基)
を含む方法であって、ポリエチレンオキシド系高分子の末端が硫黄化合物官能基で置換されてもよい。
【0068】
本発明の高分子電解質は、上記のように、ポリエチレンオキシド(PEO)の分子量を変化させないまま様々な末端官能基を取り入れた高分子の合成を通じて高分子の結晶性を非置換ポリエチレンオキシド(PEO)に対して30~80%程度に減らすことができる。
【0069】
また、本発明は、(b)段階でリチウム塩を添加する段階を通じて、上記(a)段階で改質された高分子にリチウム塩を取り入れて複合体電解質を製作し、イオン伝導度及びリチウム陽イオン輸送特性を向上させる。
【0070】
このために、本発明は、ポリエチレンオキシド系高分子にリチウム塩をドーピングすることができる。
【0071】
上記リチウム塩は、特に制限されないが、好ましくは、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、CFSOLi、LiSCN、LiC(CFSO、(CFSONLi、(FSONLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、4-フェニルホウ酸リチウム、イミド及びビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(bis(trifluoromethane sulfonyl)imide)(LiTFSI)からなる群から選択される1種以上を使ってもよい。
【0072】
本発明の高分子電解質は、ポリエチレンオキシド(PEO)の分子量を変化させないまま様々な末端官能基を取り入れた高分子の合成を通じて高分子の結晶性を減らすことができるので、高分子電解質の分子量を1~20kg/molで使ってもよい。
【0073】
また、本発明の高分子電解質は、リチウム電池の実用的性能を確保するために、上記高分子の[EO]と上記リチウム塩の[Li+]の割合である[Li+]/[EO]値が0.02と0.08との間であってもよい。上記高分子の[EO]と上記リチウム塩の[Li+]濃度が上記範囲に含まれれば、電解質が適切な伝導度及び粘度を有するので、優れた電解質性能が表れ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0074】
また、本発明の高分子電解質は、イオン輸送特性がリチウム陽イオンの輸率0.5以上であって優秀である。
【0075】
全個体電池
また、本発明は、正極、負極及びその間に介在される固体高分子電解質を含んで構成される全固体電池において、上記固体高分子電解質は、ポリエチレンオキシド(Poly(ethylene oxide):PEO)系高分子;及びリチウム塩;を含み、上記ポリエチレンオキシド系高分子の末端が窒素化合物官能基、またはリン化合物官能基で置換された高分子電解質である全固体電池を提供する。
【0076】
本発明において、電極活物質は、本発明で示す電極が正極である場合は正極活物質が、負極である場合は負極活物質が使われてもよい。この時、各電極活物質は、従来電極に適用される活物質であれば、いずれも可能であり、本発明で特に限定しない。
【0077】
正極活物質は、リチウム二次電池の用途によって変わることがあるし、具体的組成は公知の物質を用いる。一例として、リチウム-リン酸-鉄系化合物、リチウムコバルト系酸化物、リチウムマンガン系酸化物、リチウム銅酸化物、リチウムニッケル系酸化物及びリチウムマンガン複合酸化物、リチウム-ニッケル-マンガン-コバルト系酸化物からなる群から選択されたいずれか一つのリチウム遷移金属酸化物を挙げることができる。より具体的に、Li1+aM(PO4-b)Xで表されるリチウム金属リン酸化物の中で、Mは、第2ないし12族の金属の中で選択される1種以上であり、XはF、S及びNの中で選択された1種以上であって、-0.5=a=+0.5、及び0=b≦=0.1であることが好ましい。
【0078】
この時、負極活物質は、リチウム金属、リチウム合金、リチウム金属複合酸化物、リチウム含有チタン複合酸化物(LTO)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択された1種が可能である。この時、リチウム合金は、リチウムとNa、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Al及びSnから選択される少なくとも一つの金属からなる合金を使ってもよい。また、リチウム金属複合酸化物は、リチウムとSi、Sn、Zn、Mg、Cd、Ce、Ni及びFeからなる群から選択されたいずれか一つの金属(Me)酸化物(MeO)で、一例として、LiFe(0<x=1)またはLiWO(0<x=1)であってもよい。
【0079】
この時、必要な場合、上記活物質に加え、導電材(Conducting material)、または高分子電解質をさらに添加してもよく、導電材では、ニッケル粉末、酸化コバルト、酸化チタン、カーボンなどを挙げることができる。カーボンでは、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、黒鉛、炭素繊維及びフラーレンからなる群から選択されたいずれか一つ、またはこれらの中で1種以上を挙げることができる。
【0080】
全固体電池の製造は、電極及び固体電解質を粉末状態で製造した後、これを所定のモールドに投入してプレスする乾式圧縮工程、または活物質、溶媒及びバインダーを含むスラリー組成物形態で製造し、これをコーティングした後で乾燥するスラリーコーティング工程を通じて製造されている。上記の構成を有する全固体電池の製造は、本発明で特に限定せずに、公知の方法が用いられてもよい。
【0081】
一例として、正極及び負極の間に固体電解質を配置した後、これを圧縮成形してセルを組み立てる。上記組み立てられたセルを外装材内に設置した後、加熱圧縮などによって封止する。外装材では、アルミニウム、ステンレスなどのラミネートパック、円筒状や角形の金属製容器がとても適する。
【0082】
電極スラリーを集電体上にコーティングする方法は、電極スラリーを集電体上に分配した後、ドクターブレード(Doctor blade)などを使って均一に分散させる方法、ダイキャスティング(Die casting)、コンマコーティング(Comma coating)、スクリーンプリンティング(Screen printing)などの方法を挙げられる。また、別途基材(Substrate)の上に成形した後、プレッシング(Pressing)またはラミネーション(Lamination)方法によって電極スラリーを集電体と接合することもできる。この時、スラリー溶液の濃度、またはコーティング回数などを調節して最終的にコーティングされるコーティング厚さを調節することができる。
【0083】
乾燥工程は、金属集電体にコーティングされたスラリーを乾燥するためにスラリー内の溶媒及び水分を取り除く過程であって、使う溶媒によって変わる。一例として、50~200℃の真空オーブンで行う。乾燥方法では、例えば、温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、(遠)赤外線や電子線などの照射による乾燥法を挙げることができる。乾燥時間については特に限定されないが、通常30秒ないし24時間の範囲で行われる。
【0084】
上記乾燥工程以後は、冷却過程をさらに含んでもよく、上記冷却過程は、バインダーの再結晶組職がよく形成されるよう、室温まで徐冷(Slow cooling)することであってもよい。
【0085】
また、必要な場合、乾燥工程以後、電極の容量密度を高め、集電体と活物質との間の接着性を増加させるため、高温加熱された2つのロールの間に電極を通過させて所望の厚さで圧縮する圧延工程を行うことができる。上記圧延工程は、本発明で特に限定せず、公知の圧延工程(Pressing)が可能である。一例として、回転ロールの間に通過させたり平板プレス機を利用して行う。
【0086】
以下、本発明を具体的に説明するために、実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明による実施例は、幾つか異なる形態で変形されてもよく、本発明の範囲が下で述べる実施例に限定されるものとして解釈されてはならない。本発明の実施例は、当業界で平均的知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供される。
【0087】
実施例:末端置換されたポリエチレンオキシドの製造
実験条件
実験条件1:塩でドーピングされた高分子の製造
計算された量のLiTFSIをメタノール/ベンゼン(methanol/benzene)共溶媒(cosolvent)を使って高分子と混ぜた後、常温で一日間撹拌させる。アルゴン環境で溶媒をゆっくり蒸発させて乾燥した後、一週間真空状態で完全に乾燥させる。サンプルが水を吸収することを避けるために、全てのサンプル準備過程と乾燥過程は、酸素と水分センサー、真空オーブンが装着されたアルゴン環境のグローブボックス(glove box)の中で行った。
【0088】
実験条件2:X線小角散乱実験(Small Angle X-Ray Scattering、SAXS)
合成した全ての高分子試料は、浦項加速器研究所(Pohang Light Source、PLS)4Cと9Aビームライン(beam line)で行われた。入射X-rayの波長(l)は、0.118nm(Dλ/λ=10-4)である。試料が測定過程中に酸素及び水分を吸収することを防止するため、カプトンフィルムを用いて密閉されたセルを製作して使った。試料から検出機までの距離は、0.5mと1.5mを使って、散乱波数ベクトル(scattering wave vector、q=4psin(q/2)/l、q:散乱角)範囲を広くした。
【0089】
実験条件3:示差走査熱量測定法(Differential Scanning Calorimetry、DSC)
合成した全ての高分子試料のDSC温度記録図(thermogram)は、TA Instruments(model Q20)を利用して測定された。約5mgの試料を、アルゴンで満たされたグローブボックスの中でアルミニウムパンに入れ、空のアルミニウムパンを基準(reference)として使った。5℃/min、10℃/minの昇温/冷却速度に対し、-65℃~120℃間の熱力学的特性が測定された。
【0090】
実験条件4:レオロジー(Rheology)
動的貯蔵弾性率(storage modulus)と損失弾性率(loss modulus)は、Anton Paar MCR 302レオメートルを使って測定した。レオメートルは8mm大きさの平行する板が装着されていて、サンプルの厚さは、0.5mmで調節した。全ての測定は線形粘弾性状態(linear viscoelastic regime)で0.1%の変形率(strain)で測定された。振動数を0.5rad/sで固定し、1℃/minの速度で昇温/冷却実験を行い、50℃の温度で0.1-100rad/s範囲の振動数について実験を行った。
【0091】
実験条件5:伝導度測定
塩をドーピングした試料は、アルゴン環境のグローブボックス(glove box)でポテンシオスタット(potentiostat)(VersaSTAT 3、Princeton Applied Research)を利用してスループレーン(through-plane)伝導度を測定した。実験室で作った二つの電極セル(ステンレススチールブロッキング電極(blocking electrode)と1cm×1cmの白金作用/対(working/counter)電極で構成)を使い、サンプルの厚さは200mmとなるように製作した。
【0092】
実験条件6:分極実験
塩をドーピングした試料は、二つのリチウム電極の間に位置させて分極実験を行った。試料の温度は60℃とし、分極電圧(polarization voltage、DV)は0.1Vに維持したまま1時間流れる電流を観察した。全ての過程は、アルゴン環境のグローブボックス(glove box)で行われた。
【0093】
実験条件7:赤外線分光法(Fourier Transform Infrared Spectroscopy、FT-IR)
赤外線分光法実験は、Bruker Vertex 70 FT-IR分光光度計を利用し、22℃の一定温度で行った。パウダー試料(高い分子量)は、反射モード(reflection mode)で32回測定し、平均を計算して得て(振動数分解能1cm-1)、液体試料(低い分子量)は、透過モード(transmission mode)で16回測定し、平均を計算して得た。(振動数分解能4cm-1
【0094】
[実施例1]:ニトリル(nitrile)置換されたポリエチレンオキシドの合成(PEO(CN)の合成)
ポリエチレングリコールメチルエーテル(Polyethylene glycol methyl ether)(Mn=2000g/mol、4.0g、2.0mmol)とアクリロニトリル(acrylonitrile)(20mL)を0℃で30分間撹拌した後、KOH(10mg、0.18mmol)を入れた。反応物の色が黄色くなれば、5mLのHClを入れて反応を終了させた。得られた反応物をジクロロメタン(dichloromethane)を利用して抽出(extraction)した後、回転蒸発濃縮機を利用して溶媒を取り除いた。得られた高分子をエーテル(ether)を利用して精製した。製造された物質のNMR DATAを測定して、図1のPEO-CNに示す。
【0095】
H NMR(300MHz、CDCl)δppm:3.99-3.43(n X 4H、-OCHCHO-)、3.37(3H、-OCH)、2.59(2H、-OCHCHCN)、
【0096】
[実施例2]:ホスホン酸ジエチル(diethyl phosphonate)置換されたポリエチレンオキシドの合成(PEO(PE)の合成)
50mL 丸底フラスコ(Round Bottom Flask)(RBF)にホスホン酸ジエチルビニル(Diethylvinylphosphonate)(2.5mL、16.3mmol)、炭酸セシウム(Cesium carbonate)(0.5g、1.5mmol)をArで交ぜて、90℃で30分間撹拌した後、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(Poly(ethylene glycol)methyl ether)(Mw=2000g/mol、5g、2.5mmol)をアセトニトリル(acetonitrile)24mLに溶かして落とした。3日間反応させた後、HClを入れて反応を終決した。得られた反応物をジクロロメタン(dichloromethane)を利用して抽出(extraction)した後、回転蒸発濃縮機を利用して溶媒を取り除いた。得られた高分子をエーテル(ether)を利用して精製した。製造された物質のNMR DATAを測定して、図1のPEO-PEに示す。
【0097】
H NMR(300MHz、DO)δppm:4.15(4H、-P=O(OCHCH)、3.99-3.43(n X 4H、-OCHCHO-)、3.37(3H、-OCH)、2.26(2H、-PCHCHO-)、1.33(4H、-P=O(OCHCH
【0098】
[実施例3]:ホスホン酸(phosphonic acid)置換されたポリエチレンオキシドの合成(PEO(PA)の合成)
末端がホスホン酸塩(phosphonate)で置換されたポリ(エチレングリコールメチルエーテル(Poly(ethylene glycol)methyl ether)(1g、0.46mmol)を25mLのクロロホルム(chloroform)に溶かして、0℃にした。ブロモトリメチルシラン(Bromotrimethylsilane)(0.1mL、0.75mmol)をゆっくり落とす。40℃で15時間反応した後、MeOHを入れて反応を終決した。反応終決後、回転蒸発濃縮機を利用して溶媒を取り除いた。製造された物質のNMR DATAを測定して、図1のPEO-PAに示す。
【0099】
H NMR(300MHz、DO)δppm:3.99-3.43(n X 4H、-OCHCHO-)、3.37(3H、-OCH)、1.99(2H、-PCHCHO-)。
【0100】
[比較例1]:ポリエチレンオキシドの合成
エチレンオキシドモノマー(Ethylene oxide monomer)は、CaHで1日、n-ブチルリチウム(n-Butyllithium)で30分間攪拌(stirring)を二度繰り返して精製した。メタノール(Methanol)は、マグネシウム(magnesium)を利用して精製し、溶媒として使うTHFは、ベンゾフェノンケチル(benzophenone kethyl)を利用して精製した。精製した100mLのTHFにメタノール(Methanol)(0.04mL、1mmol)、t-Bu-P(1mL、1mmol)を入れて脱ガス(degassing)を行い、真空状態にする。ここで、精製したエチレンオキシド(ethylene oxide)(5mL、100mmol)を蒸留(distill)した後、常温で3日間反応を進める。反応は、0.1mLの酢酸(acetic acid)を入れて終決する。反応終決後、ヘキサン(hexane)を利用して精製を行った。
【0101】
製造された物質のNMR DATAを測定して、図1のPEOに示す。
【0102】
H NMR(300MHz、DO)δppm:3.99-3.43(n X 4H、-OCHCHO-)、3.37(3H、-OCH)、1.99
【0103】
[比較例2]:2つのヒドロキシル(hydroxyl)基で置換されたポリエチレンオキシドの合成
250mLの丸底フラスコに100mL無水ベンゼン(anhydrous benzene)を使ったポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(Poly(ethylene glycol)methyl ether)(Mw=2000g/mol、5g、2.5mmol)溶液を用意し、ここに水素化ナトリウム(NaH、0.5g、25mmol)を入れる。混合物は、常温で3時間反応させた後、臭化アリル(allyl bromide、15g、125mmol)を落とす。一日くらい反応させた後、反応しない水素化ナトリウム(NaH)はろ過して取り除く。得られた反応物は、2日間乾燥させた後、次の反応を行う。反応物(4g、2mmol)を80mLの無水トルエン(anhydrous toluene)に溶かし、チオグリセロール(thioglycerol、8.6g、80mmol)、そしてAIBN(1.3mg、8mmol)を入れた後、アルゴン環境、80℃で1.5時間反応させる。得られた反応物を回転蒸発濃縮機を利用して溶媒を取り除き、エーテル(ether)を利用して精製した。
【0104】
実験例1:NMR測定結果
上記実施例1ないし3、及び比較例1のH NMR測定結果(AV300、Bruker使用)、ニトリル(nitrile)官能基が取り入れられた実施例1のPEO-CN高分子の場合、99%以上の極めて高い置換効率を持つことが確認できた。また、ホスホン酸ジエチル(diethylphosphonate)官能基が取り入れられた実施例2のPEO-PE高分子の場合、87%の高い置換効率を持ち、これを加水分解して合成した実施例3のホスホン酸(phosphonic acid)官能基の場合、100%の加水分解効率を持つPEO-PA高分子が合成されたことが確認できた。このような加水分解効率の場合、図231P NMRを通じてやはり100%であることを確認することができた。
【0105】
実験例2:GPC測定結果(架橋形成可否確認)
上記実施例1ないし3、及び比較例1で合成されたそれぞれの高分子の多分散指数(Polydispersity Index、PDI)架橋形成可否を確認するために、ゲル透過クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography、GPC)分析法(Waters Breeze 2 HPLC、Waters使用)を通じて確認した。その結果、図3のように、実施例1(PEO-CN)と実施例2(PEO-PA)及び実施例3(PEO-PE)の高分子のPDIが1.03と確認され、これは前駆体で使われた比較例1(PEO)と同じ値である。すなわち、末端官能基の置換反応過程で架橋が形成されていないことを確認することができた。
【0106】
実験例3:DSC測定結果(官能基が高分子の結晶性に及ぼす影響を確認)
官能基が高分子の結晶性に及ぼす影響を分析するために、示差走査熱量分析法(differential scanning calorimeter、DSC)で分析した。その結果、図4及び表1のように、2つのヒドロキシル(hydroxyl)官能基が取り入れられた比較例2のPEO-(OH)(本研究陣の先行特許に用いられた高分子、10-2017-0029527参照)とニトリル(nitrile)官能基が取り入れられた実施例1のPEO-CNの場合、比較例1のPEOに比べて約9%のさらなる結晶性減少が確認された。一方、ホスホン酸ジエチル(diethylphosphonate)官能基が取り入れられた実施例2のPEO-PEの場合、PEOに対して53%の結晶性を有し、これを加水分解してホスホン酸(phosphonic acid)官能基を形成した実施例3は、PEOに対して42%に過ぎない結晶性を持つことが分かった。これを通じて末端官能基の導入がPEOの結晶性に大きな影響を及ぼし、これを活用すれば高分子電解質の常温での伝導性を向上させる方法になることが分かった。
【0107】
【表1】
【0108】
実験例4:イオン伝導性測定結果
上記実施例1(PEO-CN)、実施例2(PEO-PE)、実施例3(PEO-PA)及び比較例1(PEO)で合成されたそれぞれの高分子に、リチウム塩(LiTFSI)を6%ドーピング(r=0.06)した後、ポテンシオスタット(Potentiostat)(VersaSTAT 3、Princeton Applied Research)を使ってイオン伝導度を分析した。図5のように、常温でホスホン酸(phosphonic acid)が結合された実施例3(PEO-PA)の高分子の伝導度が7倍ほど増加したことが分かった。
【0109】
また、末端置換された高分子のガラス転移温度(glass transition temperature)(Tg)が向上する事実を考慮し、x軸の温度をT(=Tg-50K)に補正した場合、図6のように全ての末端置換された高分子でイオン伝導効率が大きく増加したことが分かるし、末端化学が塩ドーピング高分子のイオン輸送効率を効果的に高める方法であることが分かった。
【0110】
実験例5:電極分極(ELECTRODE POLARIZATION)測定結果
リチウム塩と官能基の間の相互作用が電解質内部でのイオン拡散に及ぼす影響を分析するため、実施例1(PEO-CN)、実施例3(PEO-PA)及び比較例1(PEO)で合成されたそれぞれの高分子に、LiTFSIがドーピングされた試料に対して46℃で分極実験を行った。二つのリチウム電極に0.1Vの電位差を与えて0.5時間の電流の変化を測定し、その結果を図7に示す。その結果、実施例1のPEO-CNと実施例3のPEO-PAが一般的PEOよりもっと高い最終電流値を持つことを確認することができた。これは、高分子末端に存在するニトリル(nitrile)及びホスホン酸(phosphonic acid)官能基が高分子の緩和(relaxation)が遅くなったにもかかわらず(Tg上昇)、リチウム塩を効果的に解離させ、リチウムを拡散するために有利に作用するためだと考えられた。
【0111】
【表2】
【0112】
実験例6:赤外線分光法(FT-IR)測定結果
上記実験例3のような結晶性減少が発生する原因を分析するために、赤外線分光法(FT-IR、Fourier transform infrared spectroscopy)を通じて官能基と高分子及びリチウム塩の間の相互作用を分析した。上記実施例1ないし3、及び比較例1のFT-IR測定結果を図8ないし図10に示す。
【0113】
先ず、図8に示すように、PAの場合、PEOと比べた時よりも強いOH官能基の間の水素結合を示す。これは、絶対的OH数が約1.7倍以上多いだけでなく、ホスホン酸(phosphonic acid)間の水素結合ネットワーク(hydrogen bonding network)がもっと効率的に形成されるためである。
【0114】
また、図9の1500~800cm-1間のスペクトルでPEO鎖の振動(vibration)(δ)、縦ゆれ(wagging)(ω)、ねじれ(twisting)(τ)、そして横ゆれ(rocking)(ρ)によって表れる特性ピーク(peak)を比べてみると、いつもPEOとCNよりPEとPAの場合、その強さが目立って減少することを確認することができた。これは、ホスホン酸ジエチル(diethylphosphonate)官能基とホスホン酸(phosphonic acid)官能基の導入によってPEO鎖の結晶性が減少したためである。これは、前説したDSC結果とも一致する。
【0115】
また、図10で定量化したように、リン酸基が結合されたPEOの場合、末端のOH基間の強い分子間、分子内水素結合(inter-、intra- hydrogen bonding)によって、IRピーク(IR peak)がレッドシフト(red shift)されることが確認できた。
【0116】
また、リチウム塩の効果を分析するために、図11ないし図13のように、CN、PE、PA高分子と、それぞれにLiTFSI塩を2%ドーピングした高分子電解質のFT-IRスペクトルを比べた。
【0117】
先ず、リチウム塩がドーピングされる場合、図11のように、ニトリル(nitrile)官能基がリチウム塩との新しい相互作用を形成することによって、2248cm-1で表れるピーク(peak)の強さが減ることになると同時に、2276cm-1でLi陽イオンと結合したニトリル(nitrile)のpeakが新たに登場する。
【0118】
一方、PAの場合、図12のように、ホスホン酸(phosphonic acid)官能基がTFSI陰イオンと強い水素結合を形成するようになり、約3400cm-1で表れたOHピーク(peak)が約3200cm-1で移動するようになる現象が表れる。
【0119】
また、実施例1(PEO-CN)、実施例2(PEO-PE)、実施例3(PEO-PA)及び比較例1(PEO)で合成されたそれぞれの高分子に、それぞれLiTFSI塩を2%ドーピングした高分子電解質のFT-IRスペクトルを図13に示す。TFSI陰イオンO=S=O結合の伸縮(stretching)(ν)によって表れる1354と1146cm-1peakを比べてみると、PAの場合、ピーク(peak)の強さが別の試料に比べてずっと大きく増加し、同時に1146から1136cm-1へのピーク(peak)の移動を観察することができる。この結果もPAと陰イオン間の強い水素結合を示す。
【0120】
実験例7:分子量分析
合成した全ての高分子は、エーテルに何回か沈殿を取って精製をした後常温、真空状態で一週間乾燥させた。核磁気共鳴装置(Nuclear Magnetic Resonace、1H-NMR、)を通じる実験を行い、CDClとMeODを内部標準物質で使った。ゲル透過クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography、GPC、Waters Breeze 2 HPLC)でTHFを溶媒にして、PSスタンダード(standard)を基準で合成した高分子の分子量分布を分析した。その結果、実施例1ないし3、及び比較例1ないし2で製造された高分子たちの分子量は1~20kg/molであった。
【0121】
[製造例1]:末端がアリル基(allyl group)で置換されたポリエチレンオキシドの合成(SEO-eneの合成)
50mLの丸底フラスコに4mL無水ベンゼン(anhydrous benzene)を使ったPS-b-PEO(200mg、0.014mmol)溶液を用意し、ここに水素化ナトリウム(NaH、3.4mg、0.14mmol)を入れる。混合物は、常温で3時間反応させた後、臭化アリル(allyl bromide、87mg、0.72mmol)を落とす。一日くらい反応させた後、反応しない水素化ナトリウム(NaH)はろ過して取り除く。
【0122】
H NMR(500MHz、CDCl)δppm:7.10-6.40(b、n X 5H、CHCH(C))、5.95-5.87(m、1H、CH=CH)、5.29-5.16(m、2H、CH=CH)、4.0(d、2H、OCHCH=CH)、3.64(b、n X 4H、-OCHCHO-)、2.21-1.20(b、n XX 3H、CHCH(C))。
【0123】
[実施例4]:チオグリコール酸(thioglycolic acid)で置換されたポリエチレンオキシドの合成(SEO-cの合成)
50mLの丸底フラスコに製造例1で製造したSEO-ene(80mg、0.0057mmol)、チオグリコール酸(thioglycolic acid、10.57mg、0.1147mmol)、そしてAIBN(1.9mg、0.0114mmol)をアルゴン環境下で1.6mL 無水トルエン(anhydrous toluene)に溶かす。反応は、80℃で2.5時間行う。
【0124】
H NMR(500MHz、CDCl)δppm:7.10-6.30(b、n X 5H、CHCH(C))、3.56(b、n X 4H、-OCHCHO-)、3.23(s、2H、-SCHCOOH)、2.78-2.75(t、2H、-CHSCHCOOH)、2.21-1.20(b、n XX 3H、CHCH(C))。
【0125】
[実施例5]:メルカプトコハク酸(mercaptosuccinic acid)で置換されたポリエチレンオキシドの合成(SEO-2cの合成)
50mLの丸底フラスコに製造例1で製造したSEO-ene(85mg、0.0061mmol)、メルカプトコハク酸(mercaptosuccinic acid、36.6mg、0.244mmol)、そしてAIBN(4mg、0.0244mmol)をアルゴン環境下で1.7mLの無水ジオキサン(anhydrous dioxane)に溶かす。反応は、80℃で1.5時間行う。
【0126】
H NMR(500MHz、CDCl and MeOD(5:1))δppm:7.10-6.30(b、n X 5H、CHCH(C))、3.56(b、n X 4H of -OCHCHO- and 1H of -C(H)COOH)、2.88-2.56(m、2H of -CHCOOH and 2H of -CHS-)、2.20-1.20(b、n XX 3H、CHCH(C))。
【0127】
[実施例6]:チオグリセロール(thioglycerol)で置換されたポリエチレンオキシドの合成(SEO-2hの合成)
50mLの丸底フラスコに製造例1で製造したSEO-ene(85mg、0.0061mmol)、チオグリセロール(thioglycerol、26.4mg、0.244mmol)、そしてAIBN(4mg、0.0244mmol)をアルゴン環境下で1.7mLの無水トルエン(anhydrous toluene)に溶かす。反応は、80℃で1.5時間行う。
【0128】
H NMR(500MHz、CDCl)δppm:7.10-6.30(b、n X 5H、CHCH(C))、3.64(b、n X 4H of -OCHCHO- and 3H of thioglycerol)、2.66-2.63(m、4H、-CHSCH2-)、2.20-1.20(b、n XX 3H、CHCH(C))
【0129】
実験例8:末端が置換されたPS-b-PEOブロック共重合体の合成
実施例4ないし6のように、互いに異なる種類と個数の末端で置換されたPS-b-PEOブロック共重合体を合成した。図14で見られるように、PEOの末端が-OH基であるPS-b-PEO(7.4-6.5kg/mol)を、先ず水素化ナトリウム(NaH)下で臭化アリル(allyl bromide)基で置換した。次に、thiolating agent(thioglycolic acid、mercaptosuccinic acid、thioglycerol)を利用したチオール-エンカップリング反応(thiol-ene coupling reaction)を通じて互いに異なる末端基を取り入れることができる。ヒドロキシ基(hydroxyl)、アリル(allyl)、カルボン酸(carboxylic acid)、ジオール(diol)、ジカルボン酸(dicarboxylic acid)、をそれぞれSEO-h、SEO-ene、SEO-c、SEO-2h、そしてSEO-2cと名付けた。PEOホモポリマー(5.0kg/mol)も類似な反応を通してPEO-h、PEO-ene、PEO-c PEO-2h、PEO-2cを合成した。PEOに対して末端を置換した全てのサンプルは、分子量の増加が0.19kg/mol以下である。
【0130】
図15aは、SEO-ene、SEO-c、SEO-2h、SEO-2cの1H-NMRスペクトルを示す。スペクトルから5.94-5.88ppmと5.29-5.16ppmのピークが消えて、3.30-2.50ppmに新しいピークが生成されることにより、SEO-c、SEO-2h及びSEO-2cが成功的に合成されたことが確認された。NMRデータに基づいて、末端が置換された程度が全て95%以上であることを確認した。図15bのゲル透過クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography、GPC)を通じて、他の副反応やクロスリンキングが起こらなかったことを確認した。
【0131】
図15cのFT-IRスペクトルを見ると、3700-3100cm-1間で表れるO-Hストレッチングピークは、おおよそ末端基の数に比例することが分かる。また、SEO-c、SEO-2cのスペクトルで1750-1700cm-1で見られるC=Oピークは、末端の-COOH基の数と関わることが分かる。末端置換FT-IR分析は、分子間相互作用を分析した部分で詳しく扱っている。
【0132】
実験例9:末端が置換されたSEOブロック共重合体の構造(Morphology)と粘弾性(Viscoelastic)分析
次に、末端が置換されたSEOブロック共重合体の構造を検討した。図16は、用意した試料の60℃でのSAXSデータを示す。一つの-OHを有するSEO-h試料は、q=0.363nm-1で一つのブラッグピーク(bragg peak)のみが観察された。末端に-COOHを有するSEO-c試料は、似ているqで(domain spacing、d100=17.3nm)1q:2qのブラッグピーク(bragg peak)を示した。このような結果は、整列されたラメラ(lamellar)構造の形成を意味する。SEO-hと比べて見ると、低いq値で散乱の強さが目立つ程増加したことが分かるし、これは、末端の-COOH導入によって構造が形成される効果であると思われる。
【0133】
SEOのPEO鎖に末端を二つ付ける場合、SEO-2hとSEO-2cいずれも
【0134】
【数2】
【0135】
ブラッグピーク(bragg peak)を観察することができ、これは、よく整列されたジャイロイド(gyroid)構造を意味する。Domain spacing(d211)は、SEO-2hが18.4nm、SEO-2cが18.8nmと目立つように増加したことを観察することができたが、これは、末端のジオール(diol)、ジカルボン酸(dicarboxylic acid)によって自由体積(free volume)が増加した結果であると考えられる。全体的に、この結果を通じて末端官能基をPEO鎖に取り入れれば、結晶性が減少して自由体積(free volume)が増加すると解釈することができる。結晶性PEOの密度は、1.21 g/cmであることに対し、無定形PEOの密度は、1.12g/cmである。
【0136】
図16に挿入されたDSCデータを見れば、末端を取り入れたSEO試料(SEO-c、SEO-2c、SEO-2h)がSEO-hに比べて低い融解熱(ΔHm)を示した。融解熱(ΔHm)が=215.6J/g(PEO homopolymer)である時の結晶性度を100%にして計算した結晶性度は、SEO-h、SEO-c、SEO-2h、そしてSEO-2cに対してそれぞれ60.3%、36.0%、27.9%、そして31.8%であった。末端に取り入れた基の濃度は1 mol%にもならないため、このような結晶性の減少を示すことは、とても興味深い結果である。
【0137】
SEOに末端基を取り入れることは、線形粘弾性特性(linear viscoelastic property)にも重要な影響を及ぼす。図17aの末端を置換した試料を80℃から1℃/minの速度で冷却しながら測定した貯蔵(storage、G’)、損失(loss、G”)弾性率を示した。観察された履歴を見ると、PEO鎖に末端を置換する場合、相違する結晶化も挙動を見せる。昇温と冷却を繰り返して得たモジュラスを比べてみると、末端基を取り入れた場合、安定状態のモジュラス(点線で表示)がかなり増加したことが観察できる。(G’=17MPa(SEO-h)、35MPa(SEO-c)、122MPa(SEO-2h)、そして121MPa(SEO-2c))。SEO-2hとSEO-2cの場合、立方対称(cubic symmetry)を持つジャイロイド(gyroid)構造の利点によって最も高いモジュラスを示すことが分かる。一方、PEOホモポリマー(homopolymer)の場合は、末端基に関係なく、モジュラスが減少する結果を見せた。整理すると、末端基の数は、SEOの機械的強度に大きい影響を及ぼすことで結論付けることができる。
【0138】
図17bにSEO-2cとPEO-2cのモジュラスと、粘弾性特性を直接比べておいた。特定温度(323K)で振動数を変化させて観察した結果、PEO-2cは典型的な粘弾性体(viscoelastic solid、G’(w)~ G”(w)~ w1/4)の反応を見せた。同一温度でSEO-2cは、PEO-2cより10倍以上高いモジュラスを示し、振動数に対する依存度が弱かった(G’(w)~ w0.12、G”(w)~ w0.03)。この結果は、立方体の特性とPSブロックのglassyな状態で弾性体(elastic behavior)の特性を示す。
【0139】
末端官能基を取り入れた高分子電解質膜のイオン伝導特性
次に、末端基を置換した試料にリチウム塩をドーピングしてイオン伝導特性を省察してみた。図18aは、AC impedance spectroscopyを利用してr=0.02(r=[Li]/[EO])塩をドーピングしたサンプルの温度によるイオン伝導特性を測定した結果である。結果を見ると、末端を置換した場合、常温での伝導度がずっと向上されることを明らかに観察することができるし、カルボン酸(carboxylic acid)を取り入れた物質が最も顕著にPEOの結晶性を低めた。全ての試料に対して昇温する場合、似ているイオン伝導特性を見せた。末端基を取り入れた場合、ガラス転移温度(glass transition temperature)が-65℃(SEO-h)、-45℃(SEO-c)、-44℃(SEO-2h)、そして-37℃(SEO-2c)に増加するにもかかわらず、伝導度が向上されることは、とても興味深い結果であると言える。特に、SEO-2hとSEO-2cがSEO-hに比べて3~7倍もっと強いモジュラスを持つことを考慮すれば、とても注目すべき結果だと考えられる。リチウム塩をr=0.02にドーピングした場合、SEO-c、SEO-2h、SEO-2cは構造が維持され、SEO-hはPSと塩を含んだPEO間の偏析力(segregation strength)が増加してラメラ(lamellar)構造を有することが分かる。
【0140】
全ての試料に対して高い温度で類似する伝導度で収斂する結果を示したが、ジオール(diol)基を持つ場合、リチウム陽イオン輸率(lithium transference number、TLi+)が相当向上されたことを観察した。図18bには、60℃でのTLi+値を示す。r=0.02でリチウム塩をドーピングした試料を分極実験で分析し、分極電圧(polarization voltage、DV)を0.1Vに維持して、二つのリチウム電極の間に位置させて流れる電流を測定した。SEO-hは、0.25のTLi+値を示し、これは文献に報告された典型的なPEOとリチウム塩複合電解質膜の値と符合する。末端基にカルボン酸(carboxylic acid)を取り入れたものは、TLi+を向上させなかったが、ジオール(diol)基を取り入れた場合、TLi+が2倍近く増加した(0.48)。図18bに-OHと-(OH)を末端に取り入れた試料の分極実験結果を示す。このような結果のメカニズム分析は、次の頁で論じる。
【0141】
図18cは、r=0.06に塩をドーピングした時の伝導特性であり、末端基に関係なく、いずれもラメラ(lamellar)構造を示した。DSCデータを通して全ての試料が無定形であることを確認した。カルボン酸(carboxylic acid)を末端とする試料が最も低い伝導特性を示し、これは内部の双極子間(dipole-dipole)相互作用による遅い分節動き(segmental motion)によるものであると思われる。注目すべき点は、SEO-2hの場合、高い温度でSEO-hよりもっと高い伝導度を示すという点である。塩の濃度を高めても、ジオール(diol)基を持つ場合、TLi+が2倍程度向上された値を示し、他の試料は、~0.2程度の値で非常に高い値である。伝導度データをVogel-Tammann-Fulcher(VTF)式でフィッティング(fitting)して得たポテンシャル障壁(potential barrier)は、SEO-h、SEO-c、SEO-2h、そしてSEO-2cに対してそれぞれ974K、1181K、1380K、そして1227Kである。
【0142】
PEO上での末端基による分子間、分子内(Inter-、Intramolecular)相互作用
PEOでの分子間、分子内(Inter-、Intramolecular)相互作用に対する深度深い研究のためにFT-IR分光法を利用した。末端基の信号を強調するために、低い分子量のPEO(0.55kg/mol)で末端基を置換して試料を用意した。これは末端基の濃度を8mol%まで増加させた。合成した高分子は、液体状であったし、CaF windowの間に満たしてFT-IRスペクトルを観察した。2900cm-1あたりで見えるC-H伸縮ピーク(stretching peak)を内部標準として使用した。
【0143】
私たちは、先ず、末端基の数と種類の影響を観察するために、リチウム塩をドーピングしていないPEO試料を分析した。図19aには、22℃、3700-2600cm-1領域で得られたFT-IRスペクトルを示す。PEO-hとPEO-2hのスペクトルを比べてみると、レッドシフト(red-shift)(41cm-1)を示し、OH伸縮(stretching)によるバンドの強さが増加した。これは、普通、鎖間(inter-chain)で見られる水素結合のバンドよりシフト(shift)された程度が小さいため、鎖内(intra-chain)水素結合から来ると考えられる。このような結果は、単純に-OH末端基の数を増やすことだけでも鎖形態に劇的な変化を与えられることを意味する。このような変化は、結局PEOの結晶性に重要な役目をし、これはDSCとレオロジー(rheology)測定で確認することができる。
【0144】
PEO-cとPEO-2c試料もOH伸縮(stretching)によるピークを観察することができた。しかし、とてもブロードで低い強さのピークが3000-3700-cm-1領域で観察され、これは末端のカルボン酸(carboxylic acid)が鎖のエーテル酸素と活発に水素結合をすることを意味する。
【0145】
注目すべきことは、PEO-cとPEO-2cが1850-1600cm-1で見られるC=O伸縮(stretching)ピークがとても違うという点である。PEO-cは、3つのピークが見えたことに対し、PEO-2cは一つのピークを見せているが、このような差は、PEO-cの末端の-COOHが隣合う事実と、二量体(dimer)を形成して水素結合(hydrogen bonding)と4重極相互作用(quadrupole interactions)をすることを意味する。対照的に、PEO-2cは立体障害(steric hindrance)によって、上記のような相互作用があまり起こらなかった。
【0146】
リチウム塩がある場合、C-O-C振動(vibration)と同時にTFSI-陰イオンとPEO末端基の間の水素結合の相互作用を観察することができた。このような相互作用は、ヒドロキシ(hydroxyl)基を取り入れる場合さらに目立った。図19dにPEO-2hのデータを示し、OH伸縮(stretching)によるブロードでred-shiftされたバンドを観察することができる。PEO-2hスペクトルを利用してバックグラウンド(background)を取り除くと、3332cm-1と3542cm-1領域でOH伸縮(stretching)による変化を観察することができる。このような結果は、それぞれOH基とTFSI-陰イオンの間の水素結合による寄与と、OH基とリチウムイオンの間の配位(coordination)によるものである。リチウムイオンと配位(coordination)しながらブルーシフト(blue shift)することは、B3LYP 交換相関汎関数(exchange-correlation functional)に基づいて密度関数理論(density functional theory)を利用した第1原理計算(Ab Intio calculation)を用いて推測した結果とよく符合した。
【0147】
このような結果を通じて末端にジオール(diol)基があるSEOが高いTLi+を示すことが、末端と陰イオンの間の水素結合で陰イオンを安定化する効果があるためだと説明することができる。これは、末端基の数を増やすことが高い伝導特性とリチウムイオンの輸率を高めるのに効果的な方法であると結論付けた。
【0148】
リチウム塩をドーピングしたPEO-cとPEO-2cの場合、低い振動数領域でC=O伸縮(stretching)による新しいピークが観察されたが、これは末端の-COOH基がリチウムイオンを媒介にして相互作用することを意味する。したがって、末端が-COOHである場合、リチウムイオンが末端と相互作用で縛られ、低い伝導特性を表すものとして説明される。(図18c)。
【0149】
図20aに結晶性を持つPEO-hと二量体(dimer)を形成するPEO-cそして分子内(intramolecular)水素結合をするPEO-2hを絵で表現して示す。リチウムが存在する場合(図20b)、リチウムイオンは一次的にPEO主鎖のエーテル酸素と配位(coordination)して、末端基とリチウム塩の陰イオンが水素結合する。ジオール(diol)基を末端に持つサンプルは、4重極相互作用(quadrupole interactions)をしないので、ジカルボン酸(dicarboxylic acid)を末端で持つサンプルより高い伝導特性とリチウムイオンの輸率を示した。
【0150】
末端基を通じてPS-b-PEOブロック共重合体の自己組立(self-assembly)、線形粘弾性特性(linear viscoelastic properties)、そしてイオン伝導特性を調節する研究を行った。今回の研究の二つ重要な結果を要すると、第一、PE-b-PEOブロック共重合体のPEO末端に幾つかの基を取り入れれば、PEOの自由体積(free volume)を増加させ、PEOの鎖形態(chain conformation)を変化させて共連続(co-continuous)または無定形のPEO相を得られる。このような変化は、常温伝導度(~30倍増加)と線形粘弾性特性(3~7倍増加)に大きな影響を及ぼした。特に、ジオール(diol)基を末端で持つ場合、作動温度の全範囲で高いイオン伝導効率を示し、これは乾燥した高分子電解質膜で活用する可能性があると思われる。第二、末端基に関係なく、リチウム塩の陰イオンと水素結合しながらリチウムイオンの輸率を大きく向上させた。本研究で示した末端基の密度を制御する方法は、PEOに塩をドーピングした電解質膜の根本的な短所である低いリチウムイオンの輸率を解決することができ、これを通じて固体相高分子電解質膜の製造に活用され、次世代エネルギー貯蔵素子の開発に大きく寄与すると期待される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図11
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