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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】ガスを生成するためのデバイス
(51)【国際特許分類】
   B01J 7/00 20060101AFI20220708BHJP
   C01B 3/04 20060101ALI20220708BHJP
   H01M 8/0606 20160101ALN20220708BHJP
【FI】
B01J7/00 Z
C01B3/04 Z
H01M8/0606
【請求項の数】 19
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020069784
(22)【出願日】2020-04-08
(65)【公開番号】P2020171922
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2020-06-05
(31)【優先権主張番号】1903787
(32)【優先日】2019-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム・ドゥルマ
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ・ブランショ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・カプロン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンサン・フォシュー
(72)【発明者】
【氏名】イザベル・ルジョー
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ・トソニ
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-521277(JP,A)
【文献】実開昭52-096421(JP,U)
【文献】特表2015-522400(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0062506(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2007-0005446(KR,A)
【文献】特開2009-161378(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第1496014(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 4/00- 7/02
C01B 3/04
H01M 8/0606
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒システム(60)および電磁システム(65)を含むデバイス(15)であって、
前記触媒システムが、触媒作用チャンバ(120)を画定し、液体(40)からガスを生成する反応の触媒(110)を含み、前記触媒が、前記触媒作用チャンバの中に収容され、
前記電磁システムが、コイル(150)、および前記コイルに対して可動なロッド(155)を含み、前記ロッドが、前記触媒システムに固定され、磁石(175)およびコア(170)を含み、
前記電磁システムは、電流が前記コイルを通過すると、前記コイルに対して前記ロッドを移動させて、前記触媒作用チャンバが外側と流体連通する開位置に前記触媒システムを配置するように構成され、
前記触媒システムは、電流が前記コイルを流れない場合に前記触媒作用チャンバが密閉される閉位置に配置される、デバイス(15)。
【請求項2】
前記触媒システムの少なくとも一部は、電流が前記コイルを流れない場合に前記触媒システムを前記閉位置に保持する、前記磁石によって誘導される電磁閉鎖力を受ける、請求項1に記載のデバイス(15)。
【請求項3】
前記触媒システムが、第1の部品(100)と、前記ロッドに堅固に固定された第2の部品(95)とを含み、前記第1の部品および前記第2の部品がともに、前記触媒作用チャンバを画定し、前記開位置と前記閉位置との間で互いに対して可動である、請求項1または2に記載のデバイス(15)。
【請求項4】
前記触媒システムの一部が、少なくとも第1の部品および/または前記触媒を含む、請求項2または3に記載のデバイス(15)。
【請求項5】
前記触媒システムの第2の部品が、前記閉位置で前記第1の部品と前記ロッドとの間に圧縮される、請求項3または4に記載のデバイス(15)。
【請求項6】
ケーシング(70)を含み、前記第1の部品が、前記ケーシングに堅固に固定され、前記第1の部品および前記ケーシングは、前記コイルが閉じ込められるケージを形成する、請求項3から5のいずれか一項に記載のデバイス(15)。
【請求項7】
前記磁石が、前記コアの一方の長手方向端部(190)に固定されている、請求項1から6のいずれか一項に記載のデバイス(15)。
【請求項8】
前記ロッドは、前記磁石(175)が固定されている前記コアの長手方向端部(190)の反対側の前記コアの長手方向端部(185)に固定されている別の磁石(180)を含み、前記磁石と前記別の磁石との同じ極性の磁極は、互いに向き合って配置される、請求項1から7のいずれか一項に記載のデバイス(15)。
【請求項9】
前記触媒システムに弾性力を印加するためのばね(200)を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のデバイス(15)。
【請求項10】
ばねが、開位置における前記触媒システムによって圧縮される、請求項1から9のいずれか一項に記載のデバイス(15)。
【請求項11】
前記ばねは、前記コイル内の電流の前記通過がない場合、前記触媒システムを前記閉位置に保持するように、前記触媒システムに弾性閉鎖力を印加する、請求項9または10に記載のデバイス(15)。
【請求項12】
ばねが、前記コイルと前記触媒システムとの間に収容される、請求項1から11のいずれか一項に記載のデバイス(15)。
【請求項13】
ブイ(210)を含み、前記ブイ(210)は、比重が0.6を上回る液体と前記デバイスが接触する場合、前記ブイが前記液体において浮遊し、前記触媒システムが少なくとも部分的に前記液体の中に浸漬されるようになされている、請求項1から12のいずれか一項に記載のデバイス(15)。
【請求項14】
- 液体(40)を入れる内部空間(35)を画定するエンクロージャ(10)と、
- 開位置において、前記液体が触媒作用チャンバ(120)内に浸透し、前記液体を触媒に接触させることによってガスが生成されるように、少なくとも部分的に前記液体の中に浸漬される、請求項1から13のいずれか一項に記載のデバイス(15)と、
を含むガス発生器(5)。
【請求項15】
前記液体が、水素化物からなる溶液および液体有機水素担体の中から選択される、請求項14に記載のガス発生器(5)。
【請求項16】
前記デバイスが、前記エンクロージャの中を自由に移動できる、請求項14または15に記載のガス発生器(5)。
【請求項17】
スを生成する方法であって、次の連続するステップ、すなわち、
a) 請求項14から16のいずれか一項に記載のガス発生器(5)を入手するステップと、
b) 液体が触媒作用チャンバ内に浸透し、触媒(110)に接触するように、コイル(150)に電力を供給して、前記コイルに対してロッドを移動させることによって前記触媒作用チャンバ(120)を開放するステップと
含む方法。
【請求項18】
ステップb)に続き、
c) 前記コイルへの電力供給を切断することによって、触媒システムを閉鎖するステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ガスが水素である、請求項17または18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を触媒反応させることによってガスを生成するためのデバイス、およびこのガスを生成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二水素を生成するためのよく知られている方法は、水素化物水溶液(aqueous hydride solution)、たとえば水素化ホウ素ナトリウム溶液を、たとえばコバルト、プラチナ、またはルテニウムで形成された、水素化物の加水分解反応の触媒と接触させることにある。触媒と接触させると、水溶液の加水分解反応が生じ、二水素が発生する。
【0003】
例示として、特許文献1および特許文献2には、この種類の触媒水素化物加水分解を行うための発生器について記載されている。それらの文献に記載されているガス発生器は、動作に際して水素化物水溶液を入れるエンクロージャ、および水素化物水溶液の加水分解の触媒を入れる触媒作用チャンバ(catalysis chamber)を画定する触媒システム(catalytic system)を含む。
【0004】
触媒システムは、本体および取外し可能なカバーを含む。触媒システムの閉位置においては、カバーと本体はともに、水素化物水溶液から触媒を隔離する。そのとき、水素は発生しない。触媒システムの開位置においては、カバーは、本体から一定の距離に配置される。次いで、水素化物水溶液は、触媒と接触することになり、したがって、二水素の生成が開始される。このようにして生成される二水素は、排出開口部を介してエンクロージャから排出される。
【0005】
エンクロージャの中に発生する二水素の圧力が高くなり過ぎないようにするために、特許文献1および特許文献2に記載されている触媒システムは、本体とカバーとの両方に固定される中空の円筒形管の形態をとるエラストマー膜を含む。この膜の内部空間内の圧力が大気圧と等しくなるように、本体は、その端部の一方におけるエンクロージャの外側で、その反対側の端部における膜の内部空間内に放出するドレインをさらに含む。したがって、エンクロージャ内の二水素圧力が閾値圧力よりも高い場合、カバーは、エンクロージャ内の圧力の効果によって本体に押し付けられ、触媒システムの閉位置までねじり効果によりエラストマー膜を収縮させる。エンクロージャ内の圧力が閾値圧力よりも低い場合、その均衡位置へと戻ろうとするエラストマー膜は、展開され、触媒システムの開位置でカバーを取り除いて、水素化物水溶液の触媒への出入りを可能にする。
【0006】
触媒の水素化物水溶液に対する暴露は、特許文献1および特許文献2における受動的な方式で制御され、すなわち、触媒システムは、エンクロージャの中の二水素の圧力のみに応じて開閉される。そのため、上記の2つの文献に記載の触媒システムは、使用に対してそれほど柔軟性があるわけではない。
【0007】
特許文献1および特許文献2による触媒システムには、他にも欠点がある。
【0008】
エラストマー膜を確実に最適に展開し収縮させるためには、膜の高さを低くする必要があり、そのことにより、水素化物系水溶液の触媒への出入りが制限される。
【0009】
触媒システム閉鎖閾値圧力は、エラストマー膜の剛度によって決定され、この剛度は、エラストマー膜の形状特性、および機械的、具体的には弾性的特性によって左右される。そのため、ガス発生器の最適な動作を確実にするように膜をサイズ決めすることは複雑である。
【0010】
その上、エンクロージャ内の圧力とは無関係に触媒システムの開閉を制御することは可能ではない。触媒システムは、デフォルトで開いており、システムを閉鎖するためには、ガス圧力は、閾値圧力を超える必要がある。漏れがある場合には、水素の生成は、制御されない。
【0011】
最後に、従来技術の触媒システムは、比較的大型であり、そのことは、意図され得る空気圧用途(ポータブルコンピュータまたはモバイル電話、ドローンなど)に不利である。
【0012】
具体的には、特許文献1および特許文献2による触媒システムの寸法および形状は、触媒の寸法および形状が修正されるとすぐに修正されなくてはならない。そのため、それは、複雑な設計である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】国際公開第2012/003112号パンフレット
【文献】国際公開第2010/051557号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そのため、前述の欠点をなくす、液体を触媒に接触させることによってガスを生成するのに使用可能なガス発生器の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、この要件に対処し、触媒システムおよび電磁システムを含むデバイスを提案し、
触媒システムは、触媒作用チャンバを画定し、液体からガスを生成する反応の触媒を含み、触媒は、触媒作用チャンバ内に収容され、
電磁システムは、コイル、およびコイルに対して可動なロッドを含み、ロッドは、触媒システムに固定され、磁石およびコアを含み、
電磁システムは、電流がコイルに通されると、ロッドをコイルに対して移動させて、触媒作用チャンバが外側と流体連通する開位置に触媒システムを配置するように構成され、
触媒システムは、電流がコイルを流れない場合に触媒作用チャンバが密閉される閉位置に配置される。
【0016】
デバイスを液体と接触させて置くことによって、ガスの生成は、単にボビンに電流を供給することだけによってトリガされて、触媒作用チャンバを開位置に配置することができる。コイルに電力が供給され電流が通る場合、コイルは、磁石をコイルに向かって引きつける電磁場を生成する。その結果、ロッドに固定されている触媒システムは、閉位置から開位置に移動する。次いで、液体は、触媒作用チャンバ内に浸透し、触媒と接触するようになることができる。そのため、ガスが、生成され得る。
【0017】
その後、ガスの生成は、コイルの電力供給をただ単に切断することだけによって停止することができる。
【0018】
そのため、デバイスを含む発生器の、またはこの種類の発生器によって供給される燃料電池の異常動作が発生した場合には、具体的にはあらかじめ確立された基準に従って、水素の生成を停止することができる。
【0019】
そのため、ガスは、エンクロージャ内のガスの圧力および/またはガスの温度に関係なく生成され得る。特許文献1および特許文献2に記載のデバイスに対して、エンクロージャ内のガスの圧力の値とは関係なく、デバイスの使用者の制御の下、ガスの生成をトリガし、停止することが可能である。
【0020】
その上、本発明によるデバイスは、限定された全体的サイズである。
【0021】
閉位置においては、触媒作用チャンバは、「密封(hermetically sealed)」されている。それは、液密であり、気密である。たとえば、デバイスが、閉位置で液体に浸漬されている場合、液体は、触媒作用チャンバ内に浸透することができない。これにより、望ましくないガス生成のおそれが低減する。
【0022】
「開位置(open position)」とは、触媒作用チャンバが外側と流体連通するいずれの位置をも意味する。「外側(the outside)」とは、触媒作用チャンバの外側にあるものを意味する。具体的には、開位置は、アクチュエータの移動が到達する極限の開位置とすることができる。
【0023】
触媒システムの少なくとも一部は、電流がコイルを流れない場合に触媒システムを閉位置に保持する、磁石によって誘導される電磁閉鎖力を受けることができる。磁石は、上述した触媒システムを開放する際にそれが関与する以上に、有利には、触媒システムを閉鎖する際に関与する。
【0024】
触媒システムの少なくとも一部分は、好ましくは、強磁性材料で作られている。強磁性材料は、たとえば、鉄、または鉄、コバルトから選択された少なくとも1つの金属とニッケルとの合金、具体的には鋼である。
【0025】
触媒システムは、好ましくは、第1の部品と、ロッドに堅固に固定された第2の部品とを含む。第1の部品および第2の部品はともに、触媒作用チャンバを画定し、開位置と閉位置との間で互いに対して可動である。第1の部品は、好ましくは、閉位置で第2の部品を密閉し、またはその逆も同様である。触媒システムは、好ましくは、触媒作用チャンバの封止を向上させるために、閉位置で第1の部品と第2の部品との間に圧縮される封止部を含む。
【0026】
封止部は、第1の部品において取り付けられても、または第2の部品において取り付けられてもよい。
【0027】
第1の部品および第2の部品は、開位置と閉位置との間で互いに対して、平行におよび/または回転して、具体的には単に平行に可動とすることができる。
【0028】
開位置においては、第1の部品および第2の部品は、触媒作用チャンバを外側に連結する少なくとも1つの開口部を画定する。
【0029】
好ましくは、磁石によって誘導される電磁閉鎖力を受ける触媒システムの一部は、少なくとも第1の部品および/または触媒を含む。
【0030】
具体的には、第1の部品は、強磁性材料、具体的には、鋼または軟鉄を含んでも、好ましくはそれで構成されていてもよい。
【0031】
第1の部品と磁石との間の最短距離は、10mm未満、またはさらには5mm未満であってもよい。これにより、第1の部品と磁石は、磁石の磁化の効果に起因して確実に引きつけられる。
【0032】
第2の部品は、第1の部品とロッド、具体的には磁石との間に配置され得る。
【0033】
第2の部品は、好ましくは、閉位置で第1の部品と磁石との間に圧縮される。
【0034】
第2の部品は、閉位置で第1の部品および磁石に接触していることができる。
【0035】
第2の部品は、好ましくは、プラスチック材料、たとえば、熱硬化性材料で作られている。したがって、第2の部品は、磁石と第1の部品との間の電磁相互作用と相互作用しない。
【0036】
触媒は、強磁性材料とすることができる。触媒は、磁石によって磁気的に引きつけられ得る。
【0037】
触媒は、好ましくは水素化物系溶液または液体有機水素担体の加水分解に触媒作用を及ぼすようになされている金属であると好ましい。特に好ましい触媒は、コバルト、ニッケル、白金、ルテニウム、およびそれらの合金から選択される。具体的には、触媒は、鋼で作製され得る。
【0038】
触媒は、第1の部品および/または第2の部品に固定され得る。
【0039】
1つの特定の実施形態においては、第1の部品は、反磁性(amagnetic)材料で作製されても、または常磁性(paramagnetic)材料で作製されてもよく、触媒は、強磁性材料を含む、またはさらには強磁性材料で構成されている。次いで、触媒は、好ましくは、第1の部品に固定される。
【0040】
コイルは、環状の、具体的には、円環状の全体形状を有することができる。
【0041】
コイルは、電気絶縁体、たとえば、樹脂でコーティングされた少なくとも1つの金属の、たとえば、銅のワイヤで形成され、巻線支持体の周りに巻回されて多巻線になることができ、それにより、ロッドを案内することができる。
【0042】
コイルは、第1の部品に対して固定され得る。
【0043】
コイルは、開口部を含むことができ、この開口部内で、ロッド、具体的にはコアが、収容されており、平行に、たとえば長手方向に移動することができる。
【0044】
少なくとも閉位置においては、磁石は、好ましくは、長手方向にコイルから一定の距離に位置している。磁石は、好ましくは、開口部の外側に収容されている。
【0045】
好ましくは、コイル、およびロッド、具体的にはコアは、コイルが触媒システムの開位置と閉位置との間のロッドの移動を案内するように配置されている。
【0046】
ロッドは、好ましくは、開位置および閉位置における巻線支持体から一定の距離にある。そのため、ロッドは、コイルに擦れ合わず、それにより、触媒システムを開閉しやすくなる。コアとコイルとを分離する距離は、コイルに対してコアの移動の方向に垂直な方向に測定され、0.1mm以上2.0mm以下とすることができる。
【0047】
ロッドは、好ましくは、プラスチック材料で全体的にコーティングされ得る。したがって、水素化物溶液によるロッドの腐食が限定され得る。
【0048】
デバイスは、好ましくは、ケーシングを含み、第1の部品は、ケーシングに堅固に固定され、第1の部品とケーシングは、コイルが閉じ込められるケージを形成する。コイルは、具体的には、ケーシングに固定され得る。
【0049】
ケーシングは、鋼または軟鉄で作製され得る。
【0050】
第2の部品は、好ましくは、ケーシング内に収容されている。
【0051】
ケーシングは、開位置と閉位置との間の第2の部品の移動を案内することができる。
【0052】
本明細書において上述したように、ロッドは、触媒システムに、好ましくは堅固に固定される。デバイスが第1の部品および第2の部品を含む実施形態においては、ロッドは、第2の部品に固定される。
【0053】
磁石は、好ましくは、第2の部品に固定される。磁石は、第2の部品上に糊付けおよび/またはねじ留めされ得る。
【0054】
磁石は、化学式Nd2Fe14BのNdFeB合金、SmCo、AlNiCo、またはストロンチウムフェライトなどのハードフェライトから作製することができる。
【0055】
磁石は、好ましくは、コアに固定される。磁石は、好ましくは、コアの長手方向端部に固定される。たとえば、磁石は、コアに糊付けおよび/またはねじ留めされる。
【0056】
コアは、好ましくは、強磁性材料で作られている。そのため、コアは、コイルによって生成される磁気誘導を高める。
【0057】
好ましい変形形態においては、コアは、別の磁石を含む。
【0058】
この別の磁石は、コアに、固定され、具体的には、ねじ留めおよび/または糊付けされ得る。好ましくは、磁石と別の磁石との同じ極性の磁極は、互いに向き合って配置される。別の磁石は、好ましくは、磁石が固定されている長手方向端部の反対側のコアの長手方向端部に固定される。そのため、ロッドは、磁石間に挟まれている。このことは、デバイスの小型化を高め、この構成により、より高い強度の電磁場を生み出すとともに、コイルにおけるワイヤの巻線の数を低減させることが可能になる。
【0059】
デバイスは、触媒システムに弾性力を印加するためのばねを含むことができる。
【0060】
ばねは、触媒システムの開位置および/または閉位置で触媒システムに弾性力を印加することができる。
【0061】
ばねは、好ましくは、開位置における、任意選択的に閉位置における触媒システムによって圧縮される。
【0062】
ばねは、電流がコイルに流れない場合、具体的には、磁石と触媒システムとの間に磁気相互作用がない場合、閉位置に触媒システムを維持するように、閉鎖弾性力を触媒システムに印加することができる。
【0063】
ばねと磁石は、連携しておよびそれぞれ、コイルが電気的に不活性であるときに触媒システムを閉位置に維持するような方式で、弾性閉鎖力および電磁閉鎖力を触媒システムに印加することができる。そのため、ばねは、磁気力の結果として、触媒チャンバの閉位置での保持を増強する。
【0064】
ばねを用いることによって、デバイスは、互いと異なる複数の開位置に配置され得る。第1の開位置および第2の開位置における触媒作用チャンバに出入りするための、液体が出入りできる開口部または複数の開口部の寸法および/または形状は、異なっていることが好ましい。このようにして、ガス生成動力学は、2つの異なる開位置間で触媒デバイスを移動させることによって修正され得る。閉位置と、開位置のうちの一方との間のロッドの移動は、ロッドに印加される力、具体的には、コイルによって誘導される電磁力とばねによって誘導される弾性力との均衡から結果的に生じる。コイルに流れる電流を適合させることによって、触媒システムは、異なる開位置に配置され得る。ばねは、弾性閉鎖力を第2の部品に印加するように配置され得る。
【0065】
ばねは、コイルと、触媒システム、好ましくは、第2の部品との間に収容され得る。
【0066】
ばねは、開位置および閉位置に圧縮され得る。
【0067】
ばねは、コイルばねであっても、または板ばねであってもよい。
【0068】
ロッドは、ばねの中に収容され得る。
【0069】
その上、ガス発生器は、概して、どの向きに配置されても動作する必要がある。ここで、二水素を生成する場合、水素化物水溶液は、概して、水素化ホウ素ナトリウムNaBH4を含み、その触媒反応は、溶液からの水を消費して、メタホウ酸ナトリウムNaBO2を生成する。そのため、水素化物水溶液の体積は減少し、その比重は増加する。十分な二水素生産収率を維持するためには、連続的なガス生成の周期中、エンクロージャの中に水を追加する必要がある場合がある。そのため、たとえば、デバイスがどの向きであっても、確実に恒久的に浸漬されるようにするために、特許文献1および特許文献2の触媒システムは、デバイスの壁面に堅固に固定されるように、およびエンクロージャの実質的に中心に配置されるように制約を受ける。
【0070】
本発明によるデバイスは、好ましくは、ブイを含み、ブイは、比重が0.6よりも高く、好ましくは6よりも低い液体にデバイスが接触して置かれる場合、ブイが液体において流動し、触媒システムが少なくとも部分的に、好ましくは全部、液体の中に浸漬されるようになされている。
【0071】
したがって、デバイスを含むガス発生器がどの向きであっても、ガスは生成され得、液体は、触媒システムの開位置で触媒作用チャンバ内に浸透することができる。
【0072】
電磁システムは、ブイと触媒システムとの間に配置され得る。
【0073】
浮遊ブイの比重は、触媒システムの比重および/または電磁システムの比重よりも低いことが好ましい。
【0074】
ブイは、好ましくは、比重が0.6未満である。ブイは、ポリマー、たとえば、発泡ポリスチレンで作製され得る。
【0075】
電磁システムは、触媒システムの液体への浸漬を促進するように、好ましくは、ブイと触媒システムとの間に配置され得る。
【0076】
ブイは、好ましくは、ケーシングに固定される。たとえば、ブイは、ケーシングの側壁にわたって固定され、および/またはケーシングの底壁に固定される。
【0077】
その上、デバイスは、コイルに電気的に連結されているバッテリを含むことができる。
【0078】
バッテリは、好ましくは、封止されたエンベロープの中に収容されている。たとえば、バッテリは、誘導によって再充電可能である。そのため、デバイスは、有利には、複雑な形状のガス発生器内に入れることができる。
【0079】
バッテリは、たとえば、第1の部品に対しておよび/またはコイルに対して固定される。バッテリは、第1の部品に固定されても、またはケージ内に配置されてもよい。
【0080】
コイルは、n個の銅ワイヤ巻線を含むことができ、バッテリは、電流Iを生成するように適合可能であり、それにより、積n.Iは、1000A.ターン(A.turns)未満になる。
【0081】
デバイスは、制御信号を受信するように、および制御信号の受信に続いてバッテリによる電流の生成を制御するように構成されている受信機モジュールを含むことができる。
【0082】
制御モジュールは、デバイスがばねを含む変形形態において互いとは異なる複数の開位置で触媒システムを配置するように構成され得る。
【0083】
デバイスは、管状の全体形状とすることができる。
【0084】
たとえば、1つの実施形態においては、デバイスは、長さが、50mm未満、および/または高さが30mm未満、および/または深さが30mm未満とすることができる。触媒システムを閉鎖するように磁石によって誘導される電磁閉鎖力は、たとえば、2.0Nよりも大きい。コイルに印加される電流のパワーは、好ましくは、1W以上10W以下、具体的には、20W未満である。
【0085】
本発明は、さらにガス発生器に関し、この発生器は、
- 液体を入れる内部空間を画定するエンクロージャと、
- 開位置において、液体が触媒作用チャンバ内に浸透し、液体を触媒に接触させることによってガスが生成されるように、少なくとも部分的に液体の中に浸漬される、本発明によるデバイスと
を含む。
【0086】
液体は、水素化物からなる溶液、好ましくは水溶液、および液体有機水素担体から選択され得る。
【0087】
水素化物水溶液は、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素マグネシウム、水素化ホウ素カルシウム、水素化ホウ素リチウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化マグネシウム、水素化ナトリウムアルミニウム、およびそれらの混合物から選択された少なくとも1つの水素化物を含むことができる。水素化物水溶液は、水素化化学物質、具体的には、水酸化カリウムおよび/または水酸化ナトリウムの自然分解を制限するための薬剤またはアルカリ性薬剤の混合物をさらに含むことができる。
【0088】
「有機液体含有水素(organic liquid containing hydrogen)」は、液体有機水素担体(LOHC:liquid organic hydrogen carrier)としても知られている。有機液体含有水素は、水素に富んでいる化合物Aと水素に乏しい化合物Bとの化合物対で形成され、それは、A/Bと示される。LOHCは、トルエン/メチルシクロヘキサン、ナフタレン/デカリン、ジベンジルトルエン(H0-DBT)/ペルヒドロジベンジルトルエン(H18-DBT)、N-エチルカルバゾール(H0-NEC)/ドデカヒドロ-N-エチルカルバゾール(H12-NEC)、およびそれらの混合物から選択され得る。LOHCは、H2に富んでいる分子とH2に乏しい分子との間で液体/液体循環を可能にする任意の化合物とすることができる。
【0089】
デバイスは、液体の中にのみ部分的に浸漬され得る。触媒システムは、好ましくは、液体の中に完全に浸漬され、発生器はどの向きであってもよい。
【0090】
電磁システムは、液体の中に、たとえば全部、浸漬され得る。
【0091】
デバイスは、好ましくは、上述のブイを含み、このブイは液体において浮遊し、触媒システムが、液体の中に、好ましくは完全に浸漬された状態に維持する。
【0092】
具体的には、デバイスは、エンクロージャに対して可動である。デバイスは、エンクロージャに対して自由に移動できる。具体的には、デバイスは、エンクロージャとの電気的連結手段または機械的連結手段がなくてもよい。
【0093】
発生器は、コイルに電気的に連結されているバッテリを含むことができる。
【0094】
ガス発生器は、バッテリをコイルに連結する、具体的には液体の中に浸漬されている電気ケーブルを含むことができる。
【0095】
ガス発生器は、バッテリによる電流のコイルへの供給をトリガするための制御信号を発するように構成されている制御モジュールを含むことができる。
【0096】
本発明はまた、ガスを生成する方法に関し、この方法は、次の連続するステップ、すなわち、
a) 本発明による発生器を入手するステップと、
b) 液体が触媒作用チャンバ内に浸透し、触媒に接触するように、コイルに電力を供給して、コイルに対してコアを移動させることによって触媒作用チャンバを開放するステップと
を含む。
【0097】
方法は、好ましくは、二水素を生成するように実行される。
【0098】
好ましくは、調節されることになる大きさが、測定され、触媒作用チャンバの開放または閉鎖は、調節されることになる大きさが、最小値を下回ったとき、または最大値を上回ったとき、命令される。
【0099】
具体的には、調節されることになる大きさは、エンクロージャ内のガスの圧力、あるいはガスの温度、または水素化物溶液の温度、もしくは液体有機水素担体の温度とすることができる。
【0100】
第1の実施形態によれば、調節されることになる大きさは、エンクロージャ内の圧力とすることができ、液体は、水素化物溶液とすることができる。
【0101】
第2の実施形態によれば、調節されることになる大きさは、ガスの温度することができ、液体は、液体有機水素担体とすることができる。次いで、触媒システムの閉鎖は、エンクロージャの中のガスの温度が所定の臨界温度に到達するとすぐに命令され得る。
【0102】
方法は、ステップb)の後に、コイルへの電力の供給を切断することによって触媒システムを閉鎖することにあるステップc)を含むことができる。
【0103】
本発明の他の特徴、変形形態、および利点は、非限定的な例示によって本明細書に以降、提供される詳細な説明および例を読み、添付の図面を検討すると、より明白に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0104】
図1】本発明によるガス発生器の1つの例を示す長手方向断面図である。
図2】触媒システムの閉位置における、図1に示されているガス発生器内に入れられているデバイスの拡大図である。
図3図2によるデバイスの3D分解図である。
図4】触媒システムの開位置における図2によるデバイスを示す図である。
図5】触媒システムの開位置における図2によるデバイスを示す3D図である。
図6】触媒システムの閉位置における図5によるデバイスを示す図である。
図7】長手方向断面で見た、触媒システムの開位置におけるデバイスの別の例を示す図である。
図8】触媒システムの閉位置における図7によるデバイスを示す図である。
図9】長手方向断面で見た、触媒システムの開位置におけるデバイスのさらなる例を示す図である。
図10】触媒システムの閉位置における図9によるデバイスを示す図である。
図11】ガス発生器の別の実施形態を示す図である。
図12】より少ない体積の液体を入れている図11によるガス発生器を示す図である。
図13】重力の方向に対して異なって配向された図11によるガス発生器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0105】
図においては、装置およびデバイスを構成する様々な部材およびユニットの縮尺ならびに比率は、必ずしも配慮されるわけではない。その上、明瞭にするために、部材は、実際にはそうであっても、互いに接触していないように表すこともある。異なる参照記号は、同じ部材を指定することもある。
【0106】
本発明によるガス発生器5の1つの例が、図1に示されている。ガス発生器5は、エンクロージャ10、デバイス15、バッテリ20、測定モジュール25、および制御モジュール30を含む。
【0107】
エンクロージャは、ガスを生成するために触媒に接触して反応するように適合されている液体40を入れる内部空間35を画定する。液体は、たとえば、触媒と反応することによって二水素を生成することができる水素化物水溶液または液体有機水素担体である。
【0108】
エンクロージャは、内部空間内に生成されるガスを、たとえば示されていない燃料電池へと排出するためのベント45を含む。
【0109】
バッテリ20は、エンクロージャの外側に配置されている。本明細書において以降、明らかになるように、バッテリの他の配置が想定され得る。バッテリは、液体の中に浸漬される導電性で可撓性のケーブル50a~50bを用いてデバイスに電気的に連結されている。
【0110】
測定モジュール25は、制御されることになる大きさを測定するように構成されている。測定モジュールは、たとえば、電気的に、制御モジュールに連結され、この制御モジュールに対して、制御されることになる大きさの測定値が送信される。たとえば、測定モジュールは、エンクロージャ内のガスの圧力を測定するセンサを含んでいる。
【0111】
制御モジュールは、制御されることになる大きさの値を分析し、測定の結果に応じて、デバイスの電力供給をトリガする、または切断するように、バッテリに対する制御信号Scを生成し、送信することができる。
【0112】
デバイスは、液体の中に浸漬される。
【0113】
図1による例においては、デバイスは、エンクロージャの壁面に固定され、エンクロージャの実質的に中心に配置されている。しかしながら、製造が単純なそのような配置は、本発明において限定するものではない。本明細書において以降、説明するように、他の有利な配置変形形態が想定され得る。
【0114】
デバイスは、長手方向軸X周りに円形円筒形で管状の全体形状である。
【0115】
デバイスは、触媒システム60、電磁システム65、およびケーシング70を含む。
【0116】
ケーシングは、中空で管状の全体形状である。ケーシングは、中央穴80が貫通する底壁75を含み、その底壁75から側壁85が延び、側壁85の中に窓90が作られている。
【0117】
触媒システムは、第1の部品100、第2の部品95、封止部105、および触媒110を含む。
【0118】
図1図2、および図6に示されている構成においては、触媒システムは、閉位置で配置されている。第1の部品は、第2の部品によって画定される上部開口部115を遮断する。そのため、第1の部品および第2の部品は、閉鎖した触媒作用チャンバ120を画定する。
【0119】
たとえば、白金および/またはルテニウムに基づく触媒110は、触媒作用チャンバ内に収容されている。触媒は、角度のある形状であり、第1の部品に固定されている。第1の部品は、触媒作用チャンバに向いて配置されている壁面125を有し、その壁面125から突出部分130が長手方向に延びる。突出部分は、触媒の形状に相補的な形状の側方輪郭部135を有する。そのため、触媒は、図1に示されているように、第1の部品にわたって嵌合され、第1の部品に固定されている。
【0120】
示されていない変形形態によれば、触媒は、第2の部品によって支持され、たとえば、第2の部品の底面に堅固に固定されてもよい。さらなる変形形態によれば、触媒は、第1の部品によっておよび第2の部品によってそれぞれ支持される、たとえば環状の2つのブロックの形態をとってもよい。
【0121】
第2の部品は、底面140、および底面から長手方向に延びる側壁145を有する。たとえば、弾性材料で作られている封止部105は、第2の部品の側壁の長手方向端面に取り付けられている。
【0122】
閉位置においては、第1の部品および第2の部品は、封止部を挟み、圧縮する。そのため、それらは、液体、および触媒作用チャンバのガスに対する封止をもたらす。したがって、触媒システムの閉位置においては、エンクロージャの中に入っている液体は、触媒作用チャンバ内に浸透することはできない。そのとき、ガスは生成されない。
【0123】
その上、第1の部品100は、ケーシング70において取り付けられ、たとえばねじ留めされる。ケーシングおよび第1の部品はともに、電磁システムが収容されるケージ148を画定する。
【0124】
第1の部品および第2の部品は、矢印Tによって示されているように、長手方向に互いに対して平行して移動することができる。第1の部品に対する第2の部品の移動は、第2の部品が連結されている電磁システムによって案内される。
【0125】
電磁システム65は、長手方向軸の周りに延びるコイル150、およびロッド155を含む。
【0126】
コイルは、巻線支持体を含み、この巻線支持体の周りに銅ワイヤが巻回されている。
【0127】
コイルは、開口部160を含み、この開口部160の中を、ロッドは、矢印Tによって示されているように、長手方向軸に沿って平行に移動することができる。
【0128】
示されている例においては、コイルは、円環形状であり、完全にロッドを囲繞する。しかしながら、円環形状は、本発明においては限定するものではない。代替として、コイルは、より大まかな環状形状であってもよい。
【0129】
コイルは、ケーシングの側壁および底面と触媒システムとの間のケージ内に収容される。コイルは、ケーシングに固定され、たとえば、側壁に接してクリップ留めされ、または底壁に糊付けされる。そのため、コイルは、第1の部品に固定される。
【0130】
その上、ロッドは、コア170、およびコアの一方の長手方向端部に固定されている磁石175を含む。図1による例においては、コアは、円形円筒形であるが、他の形状が想定され得る。
【0131】
コアは、強磁性材料で作られていることが好ましく、磁石は、コアに固定される。一変形形態においては、コアは、反磁性材料で作製されても、または常磁性材料で作製されてもよい。
【0132】
閉構成においては、磁石は、コイルからその距離を置いて長手方向に配置される。具体的には、磁石は、中央開口部の外側に固定される。
【0133】
ロッド155は、第2の部品95上に堅固に固定される。
【0134】
示されている例においては、第2の部品は、プラスチック材料で作られている。
【0135】
第1の部品は、強磁性材料で作られている。そのため、第1の部品は、磁石によって誘導される電磁力を受け、電磁力は、磁石に対抗して第1の部品を引きつける傾向がある。
【0136】
コイルに電流が流れていない場合、第1の部品と磁石との間の引力により、触媒システムは閉位置に維持される。
【0137】
バッテリ20から生じる電流がコイル150を通過すると、コイルは、コイルに向かって磁石を引きつける電磁場を生成する。電磁場の強度は、磁石に対してコイルによって生成される引力の絶対値が、磁石と触媒システムとの間の電磁引力よりも大きくなるようになっている。次いで、磁石は、矢印Tによって示されているように、コイルに向かって長手方向にコイルに対して平行して移動し、それにより剛体移動(rigid body movement)で第2の部品を引き寄せる。
【0138】
コイルは第1の部品に対して固定され、この結果として、第2の部品は、このとき、第1の部品から距離を置いていることになる。次いで、触媒システムは、図4および図5でわかり得るように、開位置に配置される。次いで、エンクロージャの中に入っている液体40は、ケーシングの窓90を通過し、第1の部品に対する第2の部品の移動によって画定される開口部178を介して触媒作用チャンバ内に浸透し、触媒と接触するようになることができる。次いで、ガスが生成される。
【0139】
次いで、エンクロージャ内のガス圧力は、触媒反応が進むにつれて増加し、測定モジュールによって測定される。エンクロージャ内のガス圧力が最大圧力に到達した場合、制御モジュールは、コイルへの電流の供給を切断するように、制御信号を生成し送信する。このとき、コイルは、電磁場をもはや生成しなくなる。
【0140】
磁石によって誘導され、第1の部品が受ける磁気力は、次いで、触媒システムが閉位置に配置されるまで、第1の部品が磁石によって引きつけられ長手方向に移動するようになっている。
【0141】
そのため、図1に示されているデバイスは、特に小型であり、内部空間内で占有する容量は制約される。エンクロージャは、大量の液体を入れることができるので有利である。
【0142】
図7および図8に示されているデバイス15は、ロッド155が別の磁石180を含むという点で、図1図6に示されているデバイスとは異なる。
【0143】
別の磁石は、磁石が固定されている長手方向端部190の反対側のコアの長手方向端部185に取り付けられている。
【0144】
2つの磁石の同じ極性の磁極は、長手方向に一方が他方に向いて配置されている。
【0145】
コイルに電流が供給されると、両方の磁石は電磁力を受け、この電磁力は、触媒システムの開位置に向かってこれらの磁石を駆動させる。そのため、金属ワイヤの巻線の数を減らすことによって、コイルのサイズを、たとえば、図1図6によるデバイスに対して少なくとも係数2だけ縮小させるとともに、実質的に同一な、触媒システムを閉位置に維持する力を生み出すことが可能である。そのためデバイスのエネルギー効率はそのままで、デバイスの小型化が向上する。そのようなデバイスが特に好ましい。
【0146】
図9および図10によるデバイス15は、特に、デバイスがばね200を含んでいるという点、コア170がその長手方向端部190を介して第2の部品95に接触し、固定されているという点、および磁石175が反対側の端部185に固定されているという点で、図1図6に示されているデバイスとは異なる。
【0147】
ばね200は、コイル150と第2の部品95との間に挟まれ、当接している。
【0148】
示されている例においては、ばねは、ロッドが内部で係合し可動である中央開口部205を含むベルビルワッシャである。代替としては、ばねは、コイルばねであってもよい。
【0149】
デバイスの開位置および閉位置においては、ばねは圧縮されている。ばね内に格納される弾性エネルギーは、閉位置よりも開位置でより高い。
【0150】
示されている例においては、第1の部品および第2の部品、ならびに触媒は、反磁性材料、たとえばプラスチック材料で作られている。閉位置または開位置の触媒システムにおいては、磁石によって引力は生成されない。
【0151】
バッテリがコイルへと電流を供給すると、磁石が生成するにつれて、磁石は、電流によってコイルに向かって引きつけられる。コイルは、コイルの中の電流の通過によって生成される電磁力が閉位置でのばねにおける弾性圧縮力よりも大きい絶対値を有するように構成されている。
【0152】
次いで、第2の部品は、コイルに向かって移動し、したがって、触媒作用チャンバが開放される。第2の部品の移動は、磁石の引力がばねの弾性圧縮力を補償すると、停止する。
【0153】
コイルへの電流の供給が切断されると、ばねは展開し、第1の部品に対抗する第2の部品の移動をもたらして、触媒システムを閉鎖する。次いで、触媒システムは、圧縮状態にあるばねによって生成される弾性閉鎖力を受ける。
【0154】
そのようなデバイスが有利である。たとえば、デバイスは、鋼などの強磁性金属を腐食させる液体に接触するように意図され得る。たとえば、コイル、磁石、および触媒から離れているデバイスの構成部材は、ポリマー、たとえば熱可塑性物質で作製され得る。
【0155】
その上、デバイスは、図7および図8に示されているように、別の磁石を含むことができる。
【0156】
図9および図10に示されているデバイスの別の変形形態においては、第1の部品は、強磁性材料で作られている。次いで、磁石および第1の部品は、磁石によって誘導される磁気力の効果によって互いに向かって引きつけられる。
【0157】
第1の例によれば、閉位置においては、ばねは、均衡状態にあってよく、言い換えれば、ばねは、弾性エネルギーを格納していない。ばねは、触媒作用チャンバを閉位置で維持するように、触媒システムに追加の力を印加しない。第2の例によれば、ばねは、圧縮され得、触媒システムに追加の力を印加する。
【0158】
図11図13は、図2に表したデバイスを含むガス発生器5を示している。デバイスは、ケーシングに取り付けられたブイ210をさらに備える。
【0159】
デバイスは、可撓性電気ケーブル50a~50bを用いてバッテリ20に電気的に連結されている。
【0160】
デバイスは、内部空間内で自由に移動できる。電気ケーブルは、エンクロージャに対するデバイスの移動を妨げない。
【0161】
ブイは、液体において浮遊し、第2の部品の中に入っている液体の体積が、図11に示されているように多いか、または図12に示されているように少ないかにかかわらず、触媒システム60が液体の中に完全に浸漬された状態に維持する。同様に、図13に示されているように、エンクロージャが、異なる向きにより、たとえば重力の方向Gに対して90°に配置されているとき、触媒システムは液体の中に全体的に浸漬された状態に維持される。生成されるガスの流量は、図11および図13に示されているどの構成であっても、最適である。
【0162】
その上、示されている例においては、電磁システム65は、液体の中に全体的に浸漬される。示されていない一変形形態においては、電磁システム65は、液体の外側に配置されていてもよい。
【0163】
(実施例)
コイルの寸法
例示として、電気をほとんど消費しないデバイスの動作を確実にするために、電磁システムのエネルギー消費を最大で20Wとすることが必要である。その上、この例により、コイルは、2Nよりも大きい、閉位置で第1の部品に磁石によって印加される力よりも大きい力を磁石において生成することが必要である。
【0164】
コイルは、銅ワイヤのn個の巻線を含む。
【0165】
銅ワイヤの全長は、L=n.ltであり、ただし、ltは、巻線の長さである。
【0166】
巻線の断面Sbは、銅ワイヤの断面、巻付け率(whipping rate)f、および巻線数から得られ、Sb=S.n/fである。
【0167】
コイルの抵抗Rは、R=n2.lt.ρ/(Sb.f)と表され、ρは、1.7×10-8Ω.cmに等しい銅の電気抵抗率である。
【0168】
次いで、パワーPは、P=RI2=(n.I)2.lt.ρ/(Sb.f)と表される。
【0169】
コイルによって生み出される磁場の強度が、巻線の数nにコイル内を循環する電流Iを乗じた積n.Iに依存することは、当業者なら知っている。
【0170】
(実施例1)
図7および図8に示されているような第1の例においては、デバイスは、管状の全体形状であり、高さは50mmに等しく、直径は30mmに等しい。
【0171】
磁石は、およそ2.5Nの閉鎖力を触媒システムに印加する。磁石は、NdFeBで構成され、直径10mmおよび高さ2mmの平坦な円形円筒形トローチ形状である。
【0172】
第1の部品は、鋼または軟鉄で作られている。
【0173】
閉位置においては、突出部分は、磁石から2mmであり、距離は、長手方向に測定される。
【0174】
コイルは、鉄または軟鋼で作られ、長さは13mmに等しく、直径は10mmに等しい。
【0175】
コイルは、1mm厚の鋼板で形成された磁気回路を含む。磁気回路は、コイルによって生み出される磁束を導く。
【0176】
コイルは、内径が12mmに、および外径が30mmにそれぞれ等しい円環形状であり、それは、巻線面積90mm2および巻線長さ65mmに対応する。そのため、10mmに等しい直径のロッドは、コイル内で係合したとき、コイルから一定の距離がある。
【0177】
触媒システムを開放するには、コイルは、およそ500A.ターンの積n.Iを有することが必要である。U=lt.ρ/(Sb.f).n2.Iと表される、コイルの終端における電圧Uに応じて、容易にこの積を決定する方法を当業者なら知っている。また、関係D=(4.Sb.f/π.n)0,5からのワイヤの直径Dを決定する方法も当業者なら知っている。
【0178】
たとえば、5Vに等しい電圧Uにおいて、ターンの数nは、400に等しく、コイルを流れる電流Iは、1.3Aであり、コイルのワイヤの直径Dは、0.38mmに等しく、触媒作用チャンバを開放するのに消散するパワーPは、6Wである。
【0179】
コアの移動は、4mmである。極限の開位置と、閉位置との間の移動には、約10msかかる。
【0180】
(実施例2)
図7および図8に示されているような第2の例においては、デバイスは、管状の全体形状であり、高さは50mmに等しく、直径は30mmに等しい。
【0181】
磁石は、およそ2.5Nの閉鎖力を触媒システムに印加する。磁石は、フェライトで構成され、直径20mmおよび高さ5mmの円形円筒形トローチ形状である。
【0182】
コアは、鉄または軟鋼で作られ、長さは7mmに等しく、直径は20mmに等しい。
【0183】
閉位置においては、第2の部品の突出部分は、磁石から2mmであり、距離は、長手方向に測定される。
【0184】
コイルは、1mm厚の鋼板で形成された磁気回路を含む。
【0185】
コイルは、内径が22mmに、および外径が32mmにそれぞれ等しい円環形状であり、円環体の高さは10mmであり、それは、巻線面積50mm2および巻線長さ85mmに対応する。
【0186】
触媒システムを開放するには、コイルは、およそ200A.ターンの積n.Iを有することが必要である。
【0187】
たとえば、5Vに等しい電圧Uにおいて、ターンの数nは、430に等しく、電流Iは、0.5Aであり、コイルのワイヤの直径Dは、0.27mmに等しく、触媒作用チャンバを開放するのに消散するパワーPは、2.5Wである。
【0188】
コアの移動は、5mmを上回る。極限の開位置と、閉位置との間の移動には、約20msかかる。
【0189】
本明細書全体を通して明白に明らかになったように、本発明によるデバイスを含む発生器を用いて、ガス、具体的には、二水素の生成が、生成されたガスが意図される用途に応じて容易に適合され得る。その上、デバイスは、特に小型であり、その使用には、ほとんどエネルギーを消費しない。もちろん、本発明は、本発明によるデバイスおよびガス発生器の実施形態、ならびに説明し図示する方法の実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0190】
5 ガス発生器
10 エンクロージャ
15 デバイス
20 バッテリ
25 測定モジュール
30 制御モジュール
35 内部空間
40 液体
45 ベント
50a~50b ケーブル
60 触媒システム
65 電磁システム
70 ケーシング
75 底壁
80 中央穴
85 側壁
90 窓
95 第2の部品
100 第1の部品
105 封止部
110 触媒
115 上部開口部
125 壁面
130 突出部分
135 側方輪郭部
140 底面
145 側壁
148 ケージ
150 コイル
155 ロッド
160 開口部
170 コア
175 磁石
178 開口部
180 別の磁石
185 長手方向端部
190 長手方向端部
200 ばね
205 中央開口部
210 ブイ
G 重力の方向
T 矢印
X 長手方向軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13