(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルである電気化学的に活性なカソード材料を含む電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/52 20100101AFI20220708BHJP
H01M 6/06 20060101ALI20220708BHJP
H01M 4/42 20060101ALI20220708BHJP
H01M 50/284 20210101ALI20220708BHJP
H01M 50/256 20210101ALI20220708BHJP
【FI】
H01M4/52
H01M6/06 C
H01M4/42
H01M6/06 B
H01M50/284
H01M50/256 201
(21)【出願番号】P 2020115488
(22)【出願日】2020-07-03
(62)【分割の表示】P 2017550764の分割
【原出願日】2016-03-28
【審査請求日】2020-07-29
(32)【優先日】2015-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】315014051
【氏名又は名称】デュラセル、ユーエス、オペレーションズ、インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100096921
【氏名又は名称】吉元 弘
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド、ロイド、アングリン
(72)【発明者】
【氏名】ジェニファー、アン、ネルソン
(72)【発明者】
【氏名】ポール、アルバート、クリスティアン
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-332259(JP,A)
【文献】特開2003-151549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/52
H01M 6/06
H01M 4/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池であって、
ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルを含む電気化学的に活性なカソード材料を含むカソードと、
前記電池内の総電解質の重量ベースで20%から40%の間の量で存在する水酸化物を含む電解質と、
化学式を有する前記ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルと、
を備え、前記化学式は、Li
xA
yNi
1+a-zM
zO
2・nH
2Oを有し、
x
が0.02か
ら0.20、
y
が0.03か
ら0.20、
a
が0か
ら0.2、
z
が0か
ら0.2、
n
が0か
ら1であり、
Aが、カリウム、ルビジウム、セシウム、およびそれらの任意の組合せを含むアルカリ金属を含み、
Mが、アルカリ土類金属、遷移金属、非遷移金属、およびそれらの任意の組合せを含む、一次アルカリ電池。
【請求項2】
y
が0.08か
ら0.13である、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
Aは、カリウムを備える、請求項1又は2に記載の電池。
【請求項4】
aは
、0.09か
ら0.10である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電池。
【請求項5】
前記ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルは
、350mAh/gよりも大きい重量当り容量を有する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電池。
【請求項6】
前記ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルは
、350mAh/gか
ら400mAh/gの重量当り容量を有する、請求項5に記載の電池。
【請求項7】
x
が0.03か
ら0.12である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電池。
【請求項8】
前記ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルは、水和水と、0<n≦1を含む、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電池。
【請求項9】
前記電池は
、1.7ボルトか
ら1.8ボルトの開路電圧を有する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の電池。
【請求項10】
前記電池は、
亜鉛、亜鉛合金、およびそれらの任意の組合せを含む電気化学的に活性なアノード材料を含むアノードと、
前記カソードと前記アノードの間のセパレータと、
をさらに備える、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の電池。
【請求項11】
前記カソードは、さらに導電性添加材を備える、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の電池。
【請求項12】
前記電池は、外面を備える筐体と、
電圧テスターを備えるラベルとをさらに備え、
前記ラベルは、前記筐体の前記外面に貼り付けられている、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の電池。
【請求項13】
電池であって、
ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルを含む電気化学的に活性なカソード材料を含むカソードと、
アノードと、
前記カソードと前記アノードの間のセパレータと、
水酸化物を含む電解質と、
化学式を有する前記ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルと、
を備え、前記化学式は、Li
xA
yNi
1+a-zM
zO
2・nH
2Oを有し、
x
が0.02か
ら0.20、
y
が0.03か
ら0.20、
a
が0か
ら0.2、
z
が0か
ら0.2、
n
が0か
ら1であり、
Aが、カリウム、ルビジウム、セシウム、およびそれらの任意の組合せを含むアルカリ金属を含み、
Mが、アルカリ土類金属、遷移金属、非遷移金属、およびそれらの任意の組合せを含む、一次アルカリ電池。
【請求項14】
前記電池は、酸化マンガン、二酸化マンガン、電解二酸化マンガン、化学二酸化マンガン、高電力電解二酸化マンガン、ラムダ二酸化マンガン、ガンマ二酸化マンガン、ベータ二酸化マンガン、酸化銀、酸化ニッケル、オキシ水酸化ニッケル、酸化銅、ヨウ素酸銅、酸化ビスマス、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択された、追加の電気化学的に活性なカソード材料をさらに備える、請求項13に記載の電池。
【請求項15】
y
が0.08か
ら0.13である、請求項13又は14に記載の電池。
【請求項16】
Aは、カリウムを備える、請求項13乃至15のいずれか一項に記載の電池。
【請求項17】
aは
、0.09か
ら0.10である、請求項13乃至16のいずれか一項に記載の電池。
【請求項18】
前記ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルは
、350mAh/gよりも大きい重量当り容量を有する、請求項13乃至17のいずれか一項に記載の電池。
【請求項19】
前記ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルは
、350mAh/gか
ら400mAh/gの重量当り容量を有する、請求項18に記載の電池。
【請求項20】
x
が0.03か
ら0.12である、請求項13至19のいずれか一項に記載の電池。
【請求項21】
前記ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルは、nが0より大きいような水を含む、請求項13乃至20のいずれか一項に記載の電池。
【請求項22】
前記電池は
、1.7ボルトか
ら1.8ボルトの開路電圧を有する、請求項13乃至21のいずれか一項に記載の電池。
【請求項23】
前記アノードは、亜鉛、亜鉛合金、又はそれらの任意の組合せを含む電気化学的に活性なアノード材料を含む、請求項13乃至22のいずれか一項に記載の電池。
【請求項24】
前記電池は、外面を備える筐体と、
電圧テスターを備えるラベルとをさらに備え、
前記ラベルは、前記筐体の前記外面に貼り付けられている、請求項13乃至23のいずれか一項に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池に関し、より具体的には、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケル(beta-delithiated layered nickel oxide)である電気化学的に活性なカソード材料を含む電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学セルすなわち電池は、電気エネルギー源として一般に使用されている。電池は、一般的にアノードと呼ばれる負極と、一般的にカソードと呼ばれる正極とを含む。アノードは、酸化しうる電気化学的に活性なアノード材料を含む。カソードは、還元しうる電気化学的に活性なカソード材料を含む。電気化学的に活性なアノード材料は、電気化学的に活性なカソード材料を還元する能力がある。アノードとカソードの間には、セパレータが配置される。電池部品は、一般的に金属から作られたカン内すなわち筐体内に配置される。
【0003】
電子デバイス内の電気エネルギー源として電池を使用するとき、アノードおよびカソードに対する電気接点が作られ、デバイスを通じて電子を流すことが可能となり、それぞれの酸化反応および還元反応を引き起こして、電子デバイスに電力を提供することができる。電解質が、アノード、カソード、およびセパレータと接触している。電解質は、放電中に電池全体の荷電平衡を維持するように、セパレータを通ってアノードとカソードの間を流れるイオンを含む。
【0004】
玩具、リモートコントローラ、オーディオデバイス、フラッシュ装置、デジタルカメラおよび写真撮影用の周辺装置、電子ゲーム装置、歯ブラシ、ラジオおよび時計などの現代の電子デバイスに電力供給するのにより適した電池を作る必要性が高まっている。この必要性を満たすために、電池は、容量および耐用年数を増加させるように、電気化学的に活性なアノードおよび/またはカソード材料のより多くのローディングを含むことができる。しかし、電池は、外形寸法が固定され、内部容積が制限された、AA、AAA、AAAA、C、およびD電池サイズなどの共通のサイズで提供される。よって、電池のより良好な性能を達成するためだけに、電気化学的に活性な材料のローディングを増やす能力は、制限される。
【0005】
電池の電気化学的に活性なカソード材料は、性能を向上させるために調節できる別の設計特徴である。例えば、体積当りおよび重量当り容量がより高い電気化学的に活性な材料は、より良好な性能の電池をもたらすことができる。同様に、より高い酸化状態の電気化学的に活性な材料も、より良好な性能の電池をもたらすことができる。しかし、選択された電気化学的に活性な材料は、電池が電力供給しうるデバイスにとって許容可能な範囲の、閉路電圧、すなわち電流を流した状態での電圧(running voltage)を提供しなければならない。デバイスは、電池のOCV、すなわち電流を流した状態での電圧が高すぎる場合には、損傷する場合がある。反対に、デバイスは、電池の電流を流した状態での電圧が低すぎる場合には、全く機能しない場合がある。加えて、例えば高酸化状態の遷移酸化金属などの電気化学的に活性な材料は、反応性が非常に高い。そのような反応性が高い電気化学的に活性な材料の性質によって、電気化学的に活性な材料が電池内に組み入れられ、電解質と接触状態にされると、ガスの発生を招く場合がある。発生したあらゆるガスは、カソード内の連続性など、電池内の構造的問題、および/または電池からの電解質の漏洩を招く場合がある。高酸化状態の遷移酸化金属は、例えば、黒鉛などの炭素添加材、例えば、界面活性剤(1つまたは複数)などの他の添加材、および/またはセパレータなどの他の電池部品と有害に反応する場合がある。高酸化状態の遷移酸化金属は、電解質を消費する傾向もあり、このことは、カソード膨張など、電池内の他の構造的問題、および電池内の好ましくない水バランスを招く場合がある。また、高酸化状態の遷移酸化金属を電気化学的に活性なカソード材料として含む電池は、例えば、電池が一定期間保管されるときに、不安定性および高率自己放電を示す場合がある。加えて、電池の電気化学的に活性な材料の含有量に対する含水量と水酸化カリウム含有量の両方の比率は、電気化学的に活性な材料の適正な利用のために適当にバランスさせる必要がある。さらに、電気化学的に活性な材料の含有量に対する含水量と水酸化カリウムの含有量の両方の比率を好適に選択することによって、複数の放電率状態にわたり電池性能を向上させることができる。
【0006】
上で議論した必要性に対処する、電気化学的に活性なカソード材料を含む電池を提供する必要が存在する。ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルである電気化学的に活性なカソード材料を含む本発明の電池は、特に、これらの必要性に対処するものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態では、本発明は、電池に関する。電池は、カソード、アノード、カソードとアノードの間のセパレータ、および電解質を含む。カソードは、導電性添加材および電気化学的に活性なカソード材料を含む。電気化学的に活性なカソード材料はベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルを含む。ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルは化学式を有する。化学式は、LixAyNi1+a-zMzO2・nH2Oであり、ここで、xが約0.02から約0.20、yが約0.03から約0.20、aが約0から約0.2、zが約0から約0.2、nが約0から約1である。化学式中、Aはアルカリ金属である。アルカリ金属は、カリウム、ルビジウム、セシウム、およびそれらの任意の組合せを含む。化学式中、Mは、アルカリ土類金属、遷移金属、非遷移金属、およびそれらの任意の組合せを含む。アノードは電気化学的に活性なアノード材料を含む。電気化学的に活性なアノード材料は、亜鉛、亜鉛合金、およびそれらの任意の組合せを含む。
【0008】
本明細書は、本発明を構成するとみなされる主題を具体的に指摘し明確に特許請求する請求項により締めくくられるが、本発明は、添付図面と併せて、以下の説明から一層理解されると思われる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルである電気化学的に活性なカソード材料を含む一次アルカリ電池のある実施形態の断面図である。
【
図2】ベータ脱リチウム層状酸化ニッケルである電気化学的に活性なカソード材料のある実施形態の粉末X線回折パターンを他の材料の粉末X線回折パターンと共に含む図である。
【
図3】電圧計を含む一次アルカリ電池の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
電気化学セルすなわち電池は、一次電池または二次電池とすることができる。一次電池とは、例えば消耗するまで、一度だけ放電し、次いで廃棄される電池を意味する。一次電池については、例えば、David LindenによるHandbook of Batteries(第4版、2011)に記述されている。二次電池は、充電することを意図している。二次電池は、例えば、50回よりも多く、100回、またはそれよりも多く、放電および充電することができる。二次電池については、例えば、David LindenによるHandbook of Batteries(第4版、2011)に記述されている。よって、電池は、種々の電気化学対と電解質の組合せを含むことができる。本発明において提供する説明および例は、一般に一次アルカリ電気化学セルすなわち一次アルカリ電池に関するが、本発明は、水系、非水系、イオン液体系、および固体系の一次電池と二次電池の両方に当てはまることを理解されたい。
【0011】
よって、前述した系の一次電池および二次電池は、本出願の範囲内であり、本発明は、いかなる具体的な実施形態にも限定されない。
【0012】
図1を参照すると、カソード12、アノード14、セパレータ16、および筐体18を含む、一次アルカリ電気化学セルすなわち一次アルカリ電池10が示されている。電池10は、集電体20、シール22、およびエンドキャップ24も含む。エンドキャップ24は、電池10の負端子としての役割を果たす。電池10においてエンドキャップ24とは反対端に正ピップ26がある。正ピップ26は、電池10の正端子としての役割を果たす。電池10全体に電界溶液が分散している。カソード12、アノード14、セパレータ16、電解質、集電体20、およびシール22は、筐体18内に収容される。電池10は、例えば、AA、AAA、AAAA、C、またはDサイズのアルカリ電池とすることができる。
【0013】
筐体18は、一次アルカリ電池に一般に使用される従来のタイプの任意の筐体とすることができ、例えば冷間圧延鋼材またはニッケルめっき冷間圧延鋼材などの好適な任意の基材で作ることができる。筐体18は円筒形状を有することができる。筐体18は、他の好適な任意の非円筒形状でもよい。筐体18は、例えば、長方形、正方形、またはプリズム形状などの少なくとも2つの平行板を備える形状を有してもよい。筐体18は、例えば、冷間圧延鋼材またはニッケルめっき鋼材などの基材シートから深絞り加工することができる。筐体18は、例えば、円筒形状に絞り込み加工されてもよい。筐体18は、少なくとも1つの開放端を有することができる。筐体18は、閉鎖端および開放端を有し、それらの間に側壁を有することができる。筐体18の側壁の内部表面は、筐体18の側壁の内部表面とカソード12などの電極との間の電気接触抵抗を低くする材料で処理することができる。筐体18の側壁の内部表面は、例えば、筐体18の側壁の内表面とカソード12の間の接触抵抗を低減するために、例えば、ニッケル、コバルトによりめっきされてもよく、および/または炭素配合塗料で塗装されてもよい。
【0014】
カソード12は、少なくとも1つの電気化学的に活性なカソード材料を含む。電気化学的に活性なカソード材料は、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルとすることができる。ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルは、一般化学式LixAyNi1+a-zMzO2・nH2Oを有することができ、ここで、xが約0.02から約0.20、yが約0.03から約0.20、aが約0から約0.2、zが約0から約0.2、nが約0から約1であり、Aがアルカリ金属を含み、Mが、アルカリ土類金属、遷移金属、非遷移金属、およびそれらの任意の組合せを含む。ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルは、一般化学式LixAyNi1+a-zMzO2・nH2Oを有することができ、ここで、xが約0.03から約0.12、yが約0.03から約0.20、aが約0から約0.2、zが約0から約0.2、nが約0から約1であり、Aがアルカリ金属を含み、Mが、アルカリ土類金属、遷移金属、非遷移金属、およびそれらの任意の組合せを含む。電気化学的に活性なカソード材料は、重量当り容量を有することができる。ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルである電気化学的に活性なカソード材料は、約350mAh/gよりも大きい重量当り容量を有してもよい。ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルである電気化学的に活性なカソード材料は、約350mAh/gから約400mAh/gの重量当り容量を有してもよい。
【0015】
元素周期表の第1A族の元素は、一般にアルカリ金属と称する。アルカリ金属は、元素周期表の第1A族の元素または元素の任意の組合せを含むことができる。アルカリ金属には、例えば、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、およびそれらの任意の組合せが含まれてもよい。
【0016】
元素周期表の第IIA族の元素は、一般的にアルカリ土類金属と称する。アルカリ土類金属は、元素周期表の第IIA族の元素または元素の組合せを含むことができる。アルカリ土類金属には、例えば、マグネシウム(Mg)が含まれてもよい。
【0017】
元素周期表の第IB族~第VIIIB族の元素は、一般的に遷移金属と称する。遷移金属は、元素周期表の第IB族~第VIIIB族の元素または元素の組合せを含むことができる。遷移金属には、例えば、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、イットリウム(Y)、チタン(Ti)、およびそれらの任意の組合せが含まれてもよい。
【0018】
非遷移金属は、例えば、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、インジウム(In)、スズ(Sn)、およびそれらの任意の組合せを含むことができる。
【0019】
アルカリ金属は、例えば、カリウム(K)でもよい。ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの化学式は、例えば、LixKyNi1+a-zMzO2・nH2Oとすることができ、ここで、xが約0.02から約0.20、yが約0.03から約0.20、aが約0から約0.2、zが約0から約0.2、nが約0から約1である。ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの化学式は、例えば、LixKyNi1+a-zMzO2・nH2Oとすることができ、ここで、xが約0.02から約0.20、yが約0.08から約0.13、aが約0から約0.2、zが約0から約0.2、nが約0から約1であり、Mが、アルカリ土類金属、遷移金属、非遷移金属、およびそれらの任意の組合せを含む。ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの化学式は、例えば、Li0.11K0.11NiO2・0.5H2OまたはLi0.06K0.12NiO2・0.53H2Oでもよい。
【0020】
アルカリ土類金属は、例えば、マグネシウム(Mg)でもよい。ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの化学式は、例えば、LixKyNi1+a-zMgzO2・nH2Oでもよく、ここで、xが約0.02から約0.2、yが約0.03から約0.2、aが約0から約0.2、zが約0から約0.2、nが約0から約1である。ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの化学式は、例えば、Li0.15K.10Ni1.05Mg0.04O2・0.24H2Oでもよい。
【0021】
遷移金属は、例えば、コバルト(Co)でもよい。ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの化学式は、例えば、LixKyNi1+a-zCozO2・nH2Oでもよく、ここで、xが約0.02から約0.2、yが約0.03から約0.2、aが約0から約0.2、zが約0から約0.2、nが約0から約1である。ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの化学式は、例えば、Li0.04K0.11Ni0.97Co0.03O2・nH2Oでもよい。
【0022】
非遷移金属は、例えば、アルミニウム(Al)でもよい。ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの化学式は、例えば、LixKyNi1+a-zAlzO2・nH2Oでもよく、ここで、xが約0.02から約0.2、yが約0.03から約0.2、aが約0から約0.2、zが約0から約0.2、nが約0から約1である。ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの化学式は、例えば、Li0.12K0.09Ni1.08Al0.02O2・18H2Oでもよい。
【0023】
ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケル中のアルカリ金属(1つまたは複数)、アルカリ土類金属(1つまたは複数)、遷移金属(1つまたは複数)、および/または非遷移金属(1つまたは複数)の含有量は、当該技術で既知の許容可能な任意の方法により決定することができる。例えば、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケル中のアルカリ金属(1つまたは複数)および遷移金属(1つまたは複数)の含有量は、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)および/または原子吸光(AA)分光分析により決定されてもよい。ICP-AESおよび/またはAA分析は、例えば、例えば、J.R.DeanによるPractical Inductively Coupled Plasma Spectroscopy、65~87頁(2005)と、B.WelzおよびM.B.SperlingによるAtomic Absorption Spectrometry、221~294頁(第3版、1999)に記述されるような標準的な方法を使用して完了してもよい。例えば、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルなどのサンプル材料のICP-AES分析を完了するために、堀場製作所(京都、日本)から入手可能なUltima 2 ICP分光計を使用することができる。ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケル中に含まれる元素に応じた様々な波長でベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのICP-AES分析を実行することができる。
【0024】
ICP-AESにより決定される、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケル中のカリウム含有量は、約7重量パーセント未満でもよい。ICP-AESにより決定される、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケル中のカリウム含有量は、約3重量パーセントから約7重量パーセントでもよい。
【0025】
ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケル中の含水量は、当該技術で既知の許容可能な任意の方法により決定することができる。例えば、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケル中の含水量は、熱重量分析(TGA)により決定してもよい。TGAは、温度増加に応じたサンプル重量の変化を測定することによって、例えば、サンプル材料の吸収水および吸着水、サンプル材料の結晶格子中の含水量、およびサンプル材料中の総含水量を決定する。TGAについては、例えば、R.F.SpeyerによるThermal Analysis of Materials(1994)に記述されている。ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルなどのサンプル材料のTGAを完了するために、TA Instruments(Newcastle、デラウェア州、米国)から入手可能なQ5000分析器を使用することができる。
【0026】
粉末X線回折(XRD)は、結晶性粉末などのサンプル材料の結晶格子構造の特徴を調べるために使用される分析技術である。結晶性サンプル材料のXRD分析は、サンプル材料の結晶構造中の回折平面に対応する様々な強度、幅、および回折角(ピーク位置)のピークから成る特徴的な回折パターンをもたらす。XRDパターンは、例えば、B.D.CullityおよびS.R.StockによるElements of X-ray Diffraction(第3版、2001)に記述されるような標準的な方法による、CuKα放射を使用するX線回折計で測定することができる。ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルなどのサンプル材料の粉末XRD分析を完了するために、Bruker Corporation(Madison、ウィスコンシン州、米国)から入手可能なD-8 Advance X線回折計を使用することができる。
【0027】
サンプル材料の単位セル長および単位セル角などの単位セルパラメータは、例えば、XRDパターンのRietveld法により決定することができる。Rietveld法については、例えば、H.M.RietveldによるA Profile Refinement Method for Nuclear and Magnetic Structures,2 J.Appl.Cryst、65~71頁(1969)に記述されている。
【0028】
サンプル材料の結晶子サイズは、標準シリコン(Si)を含むサンプル材料のXRDパターンのピークブロードニングにより決定することができる。ピークブロードニング分析は、例えば、H.P.KlugおよびL.E.AlexanderによるX-ray Diffraction Procedures for Polycrystalline and Amorphous Materials、618-694頁(1974)において議論されているような、例えば、単一ピークScherrer法またはWarren-Averbach法により完了することができる。Warren-Averbach法は、サンプル材料の残留歪および応力を決定するために使用することもできる。
【0029】
半値全幅(FWHM)は、サンプル材料の回折パターン中のラインの相対先鋭度または幅広さの特徴を調べるために使用することができる。FWHMは、ピークの強度を測定し、測定された強度を2で除算して半強度(半高さ)を計算し、計算された半高さでのピークの2θの幅を測定することによって、決定することができる。
【0030】
正規化強度は、サンプル材料の結晶格子中の特定の回折平面に関連する回折の相対効率を比較するためにピーク位置と共に使用することができる。正規化強度は、同じXRDパターン中のピークについて計算することができる。XRDパターンの全てのピークを最大強度のピーク(基準ピーク)に対して正規化することができる。正規化は、パーセントで記録されるものであり、正規化されるピークの強度を基準ピークの強度により除算し、100倍することによって行われる。例えば、基準ピークは425の強度を有することができ、正規化されるピークは106の強度を有する場合がある。このピークの正規化強度は25%(例えば、[(106/425)・100])である。基準ピークは、100%の正規化強度を有する。
【0031】
得られたXRDパターンは、既知のXRDパターンと比較することができる。比較XRDパターンは、既知のサンプル材料から生成することができる。加えて、得られたXRDパターンは、例えば、国際回折データセンター(Newton Square、ペンシルベニア州、米国)から入手可能な粉末回折ファイル(PDF)データベース中またはFIZ Karlsruhe(Eggenstein-Leopoldshafen、独国)から入手可能な無機結晶構造データベース(ICSD)における既知のXRDパターンと比較されてもよい。既知のサンプル材料またはPDFとの比較によって、サンプル材料の得られたXRDパターンが、既知の材料のXRDパターンと異なるか、類似するか、または等しいかが判定される。例えば、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルとの比較のためのPDFデータベースにおける既知のXRDパターンには、ベータオキシ水酸化ニッケルのPDF#00-06-0141、ガンマオキシ水酸化ニッケルのPDF#00-00675、酸化ニッケルのPDF#00-059-0463、ベータ水酸化ニッケルのPDF#00-059-0463、および水酸化カリウムのPDF#00-036-0791が含まれる。
【0032】
ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルは、特徴的なXRDパターンを有することができる。XRDパターンには、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルを示す、いくつかのピークまたはピークの組合せを含むことができる。XRDパターンには、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのいくつかのピークの特徴的なFWHM値が含まれてもよい。XRDパターンには、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのいくつかのピークの特徴的な正規化強度が含まれてもよい。
【0033】
ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンは、第1のピークを含んでもよい。第1のピークは、XRDパターン上において約14.9°2θから約16.0°2θのピーク位置を有してもよい。第1のピークは、例えば、約15.4°2θにあってもよい。ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンは、第2のピークを含んでもよい。第2のピークは、XRDパターン上において約21.3°2θから約22.7°2θのピーク位置を有してもよい。第2のピークは、例えば、約22.1°2θにあってもよい。ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンは、第3のピークを含んでもよい。第3のピークは、XRDパターン上において約37.1°2θから約37.4°2θのピーク位置を有してもよい。第3のピークは、例えば、約37.3°2θにあってもよい。ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンは、第4のピークを含んでもよい。第4のピークは、XRDパターン上において約43.2°2θから約44.0°2θのピーク位置を有してもよい。第4のピークは、例えば、約43.6°2θにあってもよい。ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンは、第5のピークを有してもよい。第5のピークは、XRDパターン上において約59.6°2θから約60.6°2θのピーク位置を有してもよい。第5のピークは、例えば、約60.1°2θにあってもよい。ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンは、第6のピークを含んでもよい。第6のピークは、XRDパターン上において約65.4°2θから約65.9°2θのピーク位置を有してもよい。第6のピークは、例えば、約65.7°2θにあってもよい。ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンは、第7のピークを含んでもよい。第7のピークは、XRDパターン上において約10.8°2θから約12.0°2θのピーク位置を有してもよい。第7のピークは、例えば、約11.2°2θにあってもよい。ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンは、第8のピークを含んでもよい。第8のピークは、XRDパターン上において約47.2°2θから約47.4°2θのピーク位置を有してもよい。第8のピークは、例えば、約47.3°2θにあってもよい。ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンは、第9のピークを含んでもよい。第9のピークは、XRDパターン上において約48.1°2θから約48.6°2θのピーク位置を有してもよい。第9のピークは、例えば、約48.3°2θにあってもよい。
【0034】
ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンの第1のピークは、FWHM(FWHM)を有することができる。第1のピークのFWHMは、約1.01から約2.09とすることができる。第1のピークのFWHMは、例えば、約1.37でもよい。ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンの第2のピークは、FWHMを有することができる。第2のピークのFWHMは、約0.86から約1.95でもよい。第2のピークのFWHMは、例えば、約1.37でもよい。ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンの第3のピークは、FWHMを有することができる。第3のピークのFWHMは、約0.23から約0.41でもよい。第3のピークのFWHMは、例えば、約0.28でもよい。ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンの第4のピークは、FWHMを有することができる。第4のピークのFWHMは、約0.40から約0.75でもよい。第4のピークのFWHMは、例えば、約0.60でもよい。ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンの第5のピークは、FWHMを有することができる。第5のピークのFWHMは、約0.57から約1.45でもよい。第5のピークのFWHMは、例えば、約0.92でもよい。ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンの第6のピークは、FWHMを有することができる。第6のピークのFWHMは、約0.27から約0.53でもよい。第6のピークのFWHMは、例えば、約0.36でもよい。ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンの第7のピークは、FWHMを有することができる。第7のピークのFWHMは、約0.56から約1.73でもよい。第7のピークのFWHMは、例えば、約1.13でもよい。ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンの第8のピークは、FWHMを有することができる。第8のピークのFWHMは、約0.08から約0.21でもよい。第8のピークのFWHMは、例えば、約0.15でもよい。ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンの第9のピークは、FWHMを有することができる。第9のピークのFWHMは、約0.33から約0.58でもよい。第9のピークのFWHMは、例えば、約0.45でもよい。
【0035】
ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンのピークを正規化することができる。XRDパターンのピークは、例えば、XRDパターンの第3のピークに対して、正規化してもよい。XRDパターンの第1のピークの正規化強度は、約13%から約37%でもよい。XRDパターンの第1のピークの正規化強度は、例えば、約24%でもよい。XRDパターンの第2のピークの正規化強度は、約6%から約16%でもよい。XRDパターンの第2のピークの正規化強度は、例えば、約10%でもよい。XRDパターンの第3のピークの正規化強度は、例えば、100%でもよい。XRDパターンの第4のピークの正規化強度は、約45%から約73%でもよい。XRDパターンの第4のピークの正規化強度は、例えば、約58%でもよい。XRDパターンの第5のピークの正規化強度は、約7%から約17%でもよい。XRDパターンの第5のピークの正規化強度は、例えば、約11%でもよい。XRDパターンの第6のピークの正規化強度は、約41%から約61%でもよい。XRDパターンの第6のピークの正規化強度は、例えば、約48%でもよい。XRDパターンの第7のピークの正規化強度は、約2%から約18%でもよい。XRDパターンの第7のピークの正規化強度は、例えば、約6%でもよい。XRDパターンの第8のピークの正規化強度は、約8%から約20%でもよい。XRDパターンの第8のピークの正規化強度は、例えば、約10%でもよい。XRDパターンの第9のピークの正規化強度は、約6%から約20%でもよい。XRDパターンの第9のピークの正規化強度は、例えば、約12%でもよい。
【0036】
電気化学的に活性なカソード材料は、放電中に還元し、電池内の電解質中の水が同時に消費される。これによって、電気化学的に活性なカソード材料の構造中に、水酸化物が形成され、陽子が内包される。例えば、従来型のアルカリ電池は、電気化学的に活性なカソード材料として電解二酸化マンガン(EMD)を含む場合がある。この従来型の電池では、1電子還元プロセスにより3+の酸化状態のマンガンに還元されうる4+の酸化状態にあるマンガン1モル当り、1モルの水が消費されうる。例えば、非従来型のアルカリ電池は、電気化学的に活性なカソード材料としてベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルを含むことができる。ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルは、例えば、化学式Li0.06K0.12NiO2・0.53H2Oを有することができる。この非従来型の電池では、2電子還元プロセスにより2+の酸化状態のニッケルに還元されうる4+の酸化状態にあるニッケル1モル当り、2モルの水が消費されうる。この非従来型の電池では、また、1電子還元プロセスにより2+の酸化状態のニッケルに還元されうる3+の酸化状態にあるニッケル1モル当り、1モルの水が消費されうる。よって、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルを含む電池の電気化学放電は、完全な放電を達成するために、ニッケル1モル当り1モルよりも多くの水を必要とする場合がある。加えて、放電中にアノードの分極を最小化し、電池の保管中に自己放電により消費される水を補償するために、余分な水量が必要となる場合がある。必要となるであろう余剰水の量は、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの具体的な化学組成に依存する。電池には、水系アルカリ電解溶液中にベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの水分量として水が導入されてもよい。電解質は、電池全体に分散してもよい。電池内にある水の総量は、種々の方法により増加させることができる。例えば、電池に加えられてもよいアルカリ電解質の総量。さらに、電池内の水の量は、水系アルカリ電解溶液の水酸化カリウム濃度を低くすることにより増加されてもよい。一般に、電気化学的に活性な材料の含有分のために利用可能な内部容積を最大化するために、最小体積のアルカリ電解溶液を電池に加えることが望ましい。
【0037】
カソード12は、少なくとも1つ以上の追加の電気化学的に活性なカソード材料を含んでもよい。追加の電気化学的に活性なカソード材料には、酸化マンガン、二酸化マンガン、電解二酸化マンガン(EMD)、化学二酸化マンガン(CMD)、高電力電解二酸化マンガン(HP EMD)、ラムダ二酸化マンガン、ガンマ二酸化マンガン、ベータ二酸化マンガン、およびそれらの任意の組合せを含むことができる。他の電気化学的に活性なカソード材料には、酸化銀、酸化ニッケル、オキシ水酸化ニッケル、酸化銅、ヨウ素酸銅などの銅塩、酸化ビスマス、高原子価ニッケル化合物、酸素、およびそれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限定されない。酸化ニッケルには、水酸化ニッケル、オキシ水酸化ニッケル、オキシ水酸化コバルトにより覆われたオキシ水酸化ニッケル、アルファ脱リチウム層状酸化ニッケル、およびそれらの任意の組合せを含むことができる。水酸化ニッケルまたはオキシ水酸化ニッケルには、ベータオキシ水酸化ニッケル、ガンマオキシ水酸化ニッケル、および/またはベータオキシ水酸化ニッケルおよび/またはガンマオキシ水酸化ニッケルの連晶を含むことができる。オキシ水酸化コバルトにより覆われたオキシ水酸化ニッケルには、オキシ水酸化コバルトにより覆われたベータオキシ水酸化ニッケル、オキシ水酸化コバルトにより覆われたガンマオキシ水酸化ニッケル、および/またはオキシ水酸化コバルトにより覆われた、ベータオキシ水酸化ニッケルおよびガンマオキシ水酸化ニッケルの連晶を含むことができる。高原子価ニッケル化合物には、ニッケル酸バリウムおよび過ヨウ素酸ニッケルカリウムを含むことができる。
【0038】
カソード12は、炭素などの導電性添加材およびバインダを含んでもよい。カソード12は、他の添加材を含んでもよい。炭素は、カソード12の固体構造中における電子流を促すことによりカソード12の導電率を高めることができる。炭素は、膨張黒鉛および天然黒鉛などの黒鉛、グラフェン、単層ナノチューブ、多層ナノチューブ、炭素ファイバ、炭素ナノファイバ、炭素ナノリボン、炭素ナノプレートレット、およびそれらの混合物でもよい。カソード中の炭素の量は、例えば、約12%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約6%未満、約3.75%未満、または約3.5%未満、例えば約2.0%から約3.5%など、比較的少ないことが好ましい。炭素レベルを低くすることによって、カソード12の体積を増やしたり、電池10内の空隙体積(空隙体積は、ガスがセル内で発生するときに内圧が高くなりすぎることを防ぐために一定のレベル以上に維持されなければならない)を減らしたりせずに、より多くの電気化学的に活性なカソード材料のローディングをカソード12中に内包することが可能となる。電池内での使用に適した黒鉛は、例えば、TIMCAL Carbon & Graphite(Bodio、スイス国)からいずれも入手可能な、MX-15、SFG-15、MX-25、BNB-90および/またはBNC-30でもよい。
【0039】
一般に、カソードは、実質的に非膨張黒鉛を含まないことが好ましい。非膨張黒鉛粒子は、カソードペレット形成プロセスに潤滑性をもたらすが、このタイプの黒鉛は、膨張黒鉛よりも著しく導電性が低く、よって、膨張黒鉛を含むカソードと同じカソード導電率を得るためにより多くの非膨張黒鉛を使用する必要がある。カソード12は、低レベルの非膨張黒鉛を含んでもよい。しかし、非膨張黒鉛を内包することによって、非膨張黒鉛の低い導電率に起因して、カソード導電率を適切なレベルに維持しながら得られる黒鉛濃度の減少を損ねる場合がある。
【0040】
カソード12において使用できる任意選択的なバインダの例には、ポリエチレン、ポリアクリル酸、またはPVDFもしくはPTFEなどのフルオロカーボン樹脂が含まれる。カソード12において使用するための任意選択的なバインダは、例えば、E.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington、デラウェア州、米国)から入手可能なCOATHYLENE HA-1681でもよい。他のカソード添加材の例については、例えば、米国特許第5,698,315号、同第5,919,598号、同第5,997,775号および同第7,351,499号明細書に記述されている。
【0041】
カソード12内の電気化学的に活性なカソード材料の含有量は、カソードローディングと称する場合がある。カソード12のローディングは、電池10内で使用される電気化学的に活性なカソード材料および電池10のサイズに応じて変化してもよい。例えば、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルである電気化学的に活性なカソード材料を有するAA電池は、少なくとも約6グラムのベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのカソードローディングを有してもよい。カソードローディングは、例えば、少なくとも約7グラムのベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルでもよい。カソードローディングは、例えば、約7.2グラムと約11.5グラムの間のベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルでもよい。カソードローディングは、約8グラムから約10グラムのベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルでもよい。カソードローディングは、約8.5グラムから約9.5グラムのベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルでもよい。カソードローディングは、約9.5グラムから約11.5グラムのベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルでもよい。カソードローディングは、約10.4グラムから約11.5グラムのベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルでもよい。AAA電池の場合、カソードローディングは、少なくとも約3グラムのベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルである電気化学的に活性なカソード材料でもよい。カソードローディングは、約3グラムから約5グラムのベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルでもよい。カソードローディングは、約3.5グラムから約4.5グラムのベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルでもよい。カソードローディングは、約3.9グラムから約4.3グラムのベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルでもよい。AAAA電池の場合、カソードローディングは、約1.5グラムから約2.5グラムのベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルである電気化学的に活性なカソード材料でもよい。C電池の場合、カソードローディングは、約27.0グラムから約40.0グラム、例えば約33.5グラム、のベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルである電気化学的に活性なカソード材料でもよい。D電池の場合、カソードローディングは、約60.0グラムから約84.0グラム、例えば約72.0グラムの、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルである電気化学的に活性なカソード材料でもよい。
【0042】
活性カソード材料(1つまたは複数)、炭素粒子、バインダ、および他の任意の添加材などのカソード要素は、電池10の組立に使用するために、水系水酸化カリウム電解質などの液体と組み合わせ、混合し、押してペレットにすることができる。最適なカソードペレット処理では、一般に、カソードペレットは、約2%から約5%、より好ましくは約2.8%から約4.6%の範囲の水分レベルを有することが好ましい。ペレットは、電池10の組立中に筐体18内に置かれた後に、一般的に、筐体18内に均一なカソードアセンブリを形成するために再圧縮される。カソードペレットは、中心ボアを含む円筒形状を有してもよい。ペレットのサイズは、ペレットが内部で使用される電池のサイズ、例えばAAサイズ、AAAサイズ、AAAAサイズ、Cサイズ、およびDサイズによって変化してもよい。中心ボアは、ペレットの内径(ID)を規定してもよい。AA電池のペレットの内径は、例えば、約9.1mmから約9.9mmでもよい。AA電池のペレットの内径は、例えば、約9.3mmから約9.7mmでもよい。AAA電池のペレットの内径は、例えば、約6.6mmから約7.2mmでもよい。AAA電池のペレットの内径は、例えば、約6.7mmから約7.1mmでもよい。AAAA電池のペレットの内径は、例えば、約5mmから約5.5mmでもよい。C電池のペレットの内径は、例えば、約16mmから約19mmでもよい。D電池のペレットの内径は、例えば、約21mmから約25mmでもよい。
【0043】
カソード12は、カソード製造時に計算されうる空隙率を有する。カソード12の空隙率は、約20%から約40%、約22%と約35%の間、例えば、約26%でもよい。カソード12の空隙率は、製造時、例えば、カソードペレット処理の後に計算することができる。これは、電池10内のカソード12の空隙率が、特に、カソードの電解質の湿潤および電池10の放電と関連するカソード膨張に起因して、時間と共に変化するからである。カソード12の空隙率は、以下のように計算することができる。各固体カソード要素の真密度は、例えばLange’s Handbook of Chemistry(第16版、2005)などの参考書から得ることができる。カソード要素のそれぞれの固体重量は、電池設計により規定される。各カソード要素の固体重量は、カソード固体体積を決定するために各カソード要素の真密度により除算することができる。電池10内でカソード12が占める体積も、電池設計により規定される。カソード12が占める体積は、コンピュータ支援設計(CAD)プログラムにより計算することができる。空隙率は、以下の数式により決定される
カソード空隙率=[1-(カソード固体体積÷カソード体積)]×100
例えば、AA電池のカソード12は、カソード12内の固体として、約9.0グラムのアルファ脱リチウム層状酸化ニッケルと、約0.90グラムの黒鉛(BNC-30)を含んでもよい。アルファ脱リチウム層状酸化ニッケルと黒鉛の真密度は、それぞれ、約4.9g/cm3と約2.15g/cm3とすることができる。固体の重量をそれぞれの真密度により除算すると、アルファ脱リチウム層状酸化ニッケルが占める体積約1.8cm3と、黒鉛が占める体積約0.42cm3が得られる。総固体体積は約2.2cm3である。電池設計者は、カソード12が占める体積を約3.06cm3となるように選択することができる。上の方程式に従って、カソード空隙率を計算する[1-(2.2cm3÷3.06cm3)]と、約0.28すなわち28%のカソード空隙率が得られる。
【0044】
アノード14は、少なくとも1つの電気化学的に活性なアノード材料、ゲル化剤、および有機および/または無機ガス発生防止剤などの少量の添加材で作ることができる。電気化学的に活性なアノード材料には、亜鉛、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、カドミウム、鉄、AB5(H)、AB2(H)、およびA2B7(H)などの金属水酸化物、それらの合金、ならびにそれらの任意の組合せを含むことができる。
【0045】
アノード14内の電気化学的に活性なアノード材料の含有量は、アノードローディングと称する場合がある。アノード14のローディングは、電池内で使用される電気化学的に活性なアノード材料および電池のサイズに応じて変化してもよい。例えば、電気化学的に活性なアノード材料を有するAA電池は、少なくとも約3.3グラムの亜鉛のアノードローディングを有してもよい。アノードローディングは、例えば、少なくとも約3.5グラム、約3.7グラム、約3.9グラム、約4.1グラム、約4.3グラム、または約4.5グラムの亜鉛でもよい。アノードローディングは、約4.0グラムから約5.5グラムの亜鉛でもよい。アノードローディングは、約4.2グラムから約5.3グラムの亜鉛でもよい。例えば、亜鉛である電気化学的に活性なアノード材料を有するAAA電池は、少なくとも約1.8グラムの亜鉛のアノードローディングを有してもよい。例えば、アノードローディングは、約1.8グラムから約2.5グラムの亜鉛でもよい。アノードローディングは、例えば、約1.9グラムから約2.4グラムの亜鉛でもよい。例えば、亜鉛である電気化学的に活性なアノード材料を有するAAAA電池は、少なくとも約0.6グラムの亜鉛のアノードローディングを有してもよい。例えば、アノードローディングは、約0.7グラムから約1.3グラムの亜鉛でもよい。例えば、亜鉛である電気化学的に活性なアノード材料を有するC電池は、少なくとも約9.3グラムの亜鉛のアノードローディングを有してもよい。例えば、アノードローディングは、約10.0グラムから約19.0グラムの亜鉛でもよい。例えば、亜鉛である電気化学的に活性なアノード材料を有するD電池は、少なくとも約30.0グラムの亜鉛のアノードローディングを有してもよい。例えば、アノードローディングは、約30.0グラムから約45.0グラムの亜鉛でもよい。アノードローディングは、例えば、約33.0グラムから約39.5グラムの亜鉛でもよい。
【0046】
アノード14内で使用されうるゲル化剤の例には、ポリアクリル酸、ジビニルグリコールのポリアルケニルエーテルと架橋したポリアクリル酸、グラフト化した澱粉材料、ポリアクリル酸の塩、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースの塩(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、またはそれらの組合せが含まれる。アノード14は、ビスマス、スズ、またはインジウムなどの無機材料を含みうるガス発生防止剤を含んでもよい。代わりに、ガス発生防止剤は、リン酸エステル、イオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤などの有機化合物を含んでもよい。
【0047】
電解質は、カソード12、アノード14、およびセパレータ16の全体に分散してもよい。電解質は、水系溶液中のイオン伝導性成分を含む。イオン伝導性成分は水酸化物でもよい。水酸化物は、例えば、水酸化カリウム、水酸化セシウム、およびそれらの任意の組合せでもよい。イオン伝導性成分の濃度は、電池設計および電池の所望の性能に応じて選択されてもよい。水系アルカリ電解質は、イオン伝導性成分として、水を有する溶液中に水酸化物を含むことができる。電解質中の水酸化物の濃度は、電池10内の総電解質の重量ベースで約0.20から約0.40、すなわち約20%から約40%でもよい。例えば、電解質の水酸化物濃度は、電池10内の総電解質の重量ベースで約0.25から約0.32、すなわち約25%から約32%でもよい。水系アルカリ電解質は、酸化亜鉛(ZnO)を含んでもよい。ZnOは、アノード内の亜鉛腐食を抑制する役割を果たすことができる。電解質中に含まれるZnOの濃度は、電池10内の総電解質の約5重量%未満でもよい。ZnO濃度は、例えば、電池10内の総電解質の約1重量%から約3重量%でもよい。
【0048】
AAアルカリ電池内の水系アルカリ電解質の総重量は、例えば、約3.0グラムから約4.4グラムでもよい。AA電池内の電解質の総重量は、例えば、約3.3グラムから約3.8グラムでもよい。AA電池内の電解質の総重量は、例えば、約3.4グラムから約3.65グラムでもよい。AAAアルカリ電池内の水系アルカリ電解質の総重量は、例えば、約1.0グラムから約2.0グラムでもよい。AAA電池内の電解質の総重量は、例えば、約1.2グラムから約1.8グラムでもよい。AAA電池内の電解質の総重量は、例えば、約1.4グラムから約1.8グラムでもよい。AAAA電池内の電解質の総重量は、約0.68グラムから約1グラム、例えば、約0.85グラムから約0.95グラムでもよい。C電池内の電解質の総重量は、約11グラムから約14グラム、例えば、約12.6グラムから約13.6グラムでもよい。D電池内の電解質の総重量は、約22グラムから約30グラム、例えば、約24グラムから約29グラムでもよい。
【0049】
セパレータ16は、電解質により湿潤可能な材料か、または湿潤された材料を備える。液体と材料の表面との間の接触角が90°未満であるとき、または液体が材料の表面全体に自然に広がるときに、材料が液体により湿潤されているといえ、両方の条件は通常並存する。セパレータ16は、単一層または複数層の織紙もしくは不織紙または織布もしくは不織布を備えてもよい。セパレータ16は、不織材料層と組み合わされた層、例えばセロハン層を備えてもよい。セパレータ16は、不織材料の追加層を含むこともできる。セパレータ16は、電池10内の原位置で形成されてもよい。米国特許第6,514,637号明細書は、例えば、そのようなセパレータ材料と、それらの潜在的に好適な適用方法とを開示している。セパレータ材料は、薄くすることができる。セパレータ16は、例えば、250マイクロメートル(ミクロン)未満の乾燥材料厚さを有してもよい。セパレータ16は、約50ミクロンから約175ミクロンの乾燥材料厚さを有してもよい。セパレータ16は、約70ミクロンから約160ミクロンの乾燥材料厚さを有してもよい。セパレータ16は、約40g/m2以下の秤量を有してもよい。セパレータ16は、約15g/m2から約40g/m2の秤量を有してもよい。セパレータ16は、約20g/m2からから約30g/m2の秤量を有してもよい。セパレータ16は、通気性値を有することができる。セパレータ16は、国際標準化機構(ISO)規格2965に定義されるような通気性値を有してもよい。セパレータ16の通気性値は、約2000cm3/cm2・分@1kPaから約5000cm3/cm2・分@1kPaでもよい。セパレータ16の通気性値は、約3000cm3/cm2・分@1kPaから約4000cm3/cm2・分@1kPaでもよい。セパレータ16の通気性値は、約3500cm3/cm2・分@1kPaから約3800cm3/cm2・分@1kPaでもよい。
【0050】
集電体20は、当該技術において既知の任意の方法により具体的な電池設計に適した任意の形状に作られてもよい。集電体20は、例えば、爪状の形状を有してもよい。集電体20は、柱状本体と、柱状本体の一端に配置されたヘッドとを有してもよい。集電体20は、金属、例えば、亜鉛、銅、真ちゅう、銀、または他の好適な任意の材料で作られてもよい。集電体20は、任意選択的に、スズ、亜鉛、ビスマス、インジウム、または、集電体20と、例えば、アノード14との間の低い電気接触抵抗を示す別の好適な材料でめっきされてもよい。めっき材料は、集電体20がアノード14により接触されるときにガス形成を抑制する能力を発揮してもよい。
【0051】
シール22は、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエーテルウレタンなどのポリマー、ポリマー複合体、およびそれらの任意の組合せを所定の寸法の形状に射出成形することにより用意されてもよい。シール22は、例えば、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン6,12、ナイロン11、ポリプロピレン、ポリエーテルウレタン、コポリマー、複合材料、およびそれらの任意の組合せから作られてもよい。例示的な射出成形法には、コールドランナ法とホットランナ法の両方が含まれてもよい。シール22には、可塑剤、結晶核剤、抗酸化物質、離型剤、潤滑剤、および帯電防止剤などの他の既知の機能性材料が含まれてもよい。シール22は、防水剤で被覆されてもよい。シール22は、電池10内で使用する前に加湿されてもよい。シール22は、例えば、シール材料に応じて約1.0重量パーセントから約9.0重量パーセントの水分量を有してもよい。集電体20は、シール22に挿入され、シールを貫通してもよい。
【0052】
エンドキャップ24は、それぞれの電池を閉鎖するのに十分な任意の形状で形成されてもよい。エンドキャップ24は、例えば、円筒形状またはプリズム形状を有してもよい。エンドキャップ24は、好適な寸法の所望の形状に材料を押圧することにより形成されてもよい。エンドキャップ24は、電池10の放電中に電子を伝導する好適な任意の材料から作られてもよい。エンドキャップ24は、例えば、ニッケルめっき鋼材またはスズめっき鋼材から作られてもよい。エンドキャップ24は、集電体20に電気接続されてもよい。エンドキャップ24は、例えば、集電体20に溶接することにより集電体20と電気接続されてもよい。エンドキャップ24は、例えば、深放電中またはデバイス内での電池10の反転中などの、電池10内でのガス発生イベント中にエンドキャップ24の下で強まりベントの破裂を招きうる任意のガス圧力を逃がすための1つまたは複数の穴などの開口を含んでもよい。集電体20、シール22、およびエンドキャップ24は、集合的にエンドキャップアセンブリと称する場合がある。
【0053】
ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルを含むカソード12を含む電池10は、ボルトで測定される開路電圧(OCV)を有することができる。電池10は、約1.7Vから約1.8VのOCVを有してもよい。電池10は、例えば、約1.76VのOCVを有してもよい。
【0054】
電池10は、水抽出可能なカリウムの含有量を有することができる。電池10内の水抽出可能なカリウムの含有量は、当該技術で既知の許容可能な任意の方法により決定することができる。例えば、水抽出可能なカリウムの含有量は、ICP-AESにより決定してもよい。ICP-AESの詳細については、上で議論している。例えば、アノード/セパレータアセンブリおよびカソードアセンブリは、放電していない電池から取り外されてもよい。アノード/セパレータアセンブリおよびカソードアセンブリは、サンプル溶液を用意するために、例えば、脱イオン水で洗浄されてもよい。サンプル溶液中のカリウム含有量は、次いでICP-AESにより決定することができる。電池10の水抽出可能なカリウムの含有量は、約0.4gから約0.6gでもよい。電池10の水抽出可能なカリウムの含有量は、約0.01モルから約0.015モルでもよい。
【0055】
電池10は、水抽出可能な水酸化カリウムの含有量を有することができる。水抽出可能な水酸化カリウムの含有量は、ICP-AESにより決定された水抽出可能なカリウムの含有量および水酸化カリウム(KOH)の式量から計算することができる。水酸化カリウム中には、水酸化物(OH)1モル当り1モルのカリウム(K)がある。水抽出可能なカリウムのモル数を決定するために、ICP-AESにより決定された水抽出可能なカリウムの含有量(グラム)は、カリウムの式量(39.0983g/モル)で除算することができる。水抽出可能な水酸化カリウムの重量(グラム)を得るために、水抽出可能なカリウムのモルは、水酸化カリウムの式量(56.1056g/モル)で乗算することができる。電池10の水抽出可能な水酸化カリウムの含有量は、約0.5gから約1gでもよい。電池10の水抽出可能な水酸化カリウムの含有量は、約0.01モルから約0.02モルでもよい。
【0056】
電池10は、酸抽出可能なカリウムの含有量を有することができる。電池10内の酸抽出可能なカリウムの含有量は、当該技術で既知の許容可能な任意の方法により決定することができる。例えば、酸抽出可能なカリウムの含有量は、ICP-AESにより決定してもよい。ICP-AESの詳細については、上で議論している。アノード/セパレータアセンブリおよびカソードアセンブリは、放電した電池から取り外されてもよい。アノード/セパレータアセンブリおよびカソードアセンブリは、サンプル溶液を用意するために、例えば、硫酸で洗浄されてもよい。サンプル溶液中のカリウム含有量は、次いでICP-AESにより決定することができる。電池10の酸抽出可能なカリウムの含有量は、約0.8gから約1gでもよい。電池10の酸抽出可能なカリウムの含有量は、約0.02モルから約0.025モルでもよい。
【0057】
電池10は、酸抽出可能な水酸化カリウムの含有量を有することができる。酸抽出可能な水酸化カリウムの含有量は、ICP-AESにより決定された酸抽出可能なカリウムの含有量および水酸化カリウム(KOH)の式量から計算することができる。水酸化カリウム中には、水酸化物(OH)1モル当り1モルのカリウム(K)がある。
【0058】
ICP-AESにより決定された酸抽出可能なカリウムの含有量(グラム)は、酸抽出可能なカリウムのモル数を決定するためにカリウム(39.0983g/モル)の式量で除算することができる。酸抽出可能な水酸化カリウムの重量(グラム)を得るために、酸抽出可能なカリウムのモルは、水酸化カリウム(56.1056g/モル)の式量で乗算することができる。電池10の酸抽出可能な水酸化カリウムの含有量は、約1gから約1.4gでもよい。電池10の酸抽出可能な水酸化カリウムの含有量は、約0.02モルから約0.025モルでもよい。
【0059】
電池10は総含水量を有することができる。電池10内の総含水量は、当該技術で既知の許容可能な任意の方法により決定することができる。例えば、総含水量は、重量変化測定により決定してもよい。アノード/セパレータアセンブリおよびカソードアセンブリを、放電していない電池から取り外してもよい。サンプルは、約8から10時間の間、例えば約175℃の高温で、加熱することができる。電池10の総含水量は、以下の合計である。(1)アノード/セパレータアセンブリの重量ロスおよび(2)カソードアセンブリの重量ロス。電池10の総含水量は、約2.5gから約3gでもよい。電池10の総含水量は、約0.14モルから約0.17モルでもよい。
【0060】
電池10は、電気化学的に活性なカソード材料の含有量に対する水抽出可能な水酸化カリウムの含有量の比率を有することができる。水抽出可能な水酸化カリウムの含有量および電気化学的に活性なカソード材料の含有量はグラムまたはモルで測定することができる。水抽出可能な水酸化カリウムの含有量は、電気化学的に活性なカソード材料の含有量に対する水抽出可能な水酸化カリウムの含有量の比率を決定するために、電気化学的に活性なカソード材料の含有量で除算することができる。電池10の電気化学的に活性なカソード材料の含有量(グラム)に対する水抽出可能な水酸化カリウムの含有量(グラム)の比率は、約0.1未満でもよい。電池10の電気化学的に活性なカソード材料の含有量(グラム)に対する水抽出可能な水酸化カリウムの含有量(グラム)の比率は、約0.05から約0.1でもよい。電池10の電気化学的に活性なカソード材料の含有量(モル)に対する水抽出可能な水酸化カリウムの含有量(モル)の比率は、約0.15未満でもよい。
【0061】
電池10は、電気化学的に活性なアノード材料の含有量に対する水抽出可能な水酸化カリウムの含有量の比率を有することができる。水抽出可能な水酸化カリウムの含有量および電気化学的に活性なアノード材料の含有量は、グラムまたはモルで測定することができる。水抽出可能な水酸化カリウムの含有量は、電気化学的に活性なアノード材料の含有量に対する水抽出可能な水酸化カリウムの含有量の比率を決定するために、電気化学的に活性なアノード材料の含有量で除算することができる。電池10の電気化学的に活性なアノード材料の含有量(グラム)に対する水抽出可能な水酸化カリウムの含有量(グラム)の比率は、約0.2未満でもよい。電池10の電気化学的に活性なアノード材料の含有量(モル)に対する水抽出可能な水酸化カリウムの含有量(モル)の比率は、約0.2未満でもよい。
【0062】
電池10は、電気化学的に活性なカソード材料の含有量に対する酸抽出可能な水酸化カリウムの含有量の比率を有することができる。酸抽出可能な水酸化カリウムの含有量および電気化学的に活性なカソード材料の含有量は、グラムまたはモルで測定することができる。酸抽出可能な水酸化カリウムの含有量は、電気化学的に活性なカソード材料の含有量に対する酸抽出可能な水酸化カリウムの含有量の比率を決定するために、電気化学的に活性なカソード材料の含有量で除算することができる。電池10の電気化学的に活性なカソード材料の含有量(グラム)に対する酸抽出可能な水酸化カリウムの含有量(グラム)の比率は、約0.2より大きくてもよい。電池10の電気化学的に活性なカソード材料の含有量(モル)に対する酸抽出可能な水酸化カリウムの含有量(モル)の比率は、約0.2より大きくてもよい。
【0063】
電池10は、酸抽出可能なカリウムの含有量に対する水抽出可能なカリウムの含有量の比率を有することができる。水抽出可能なカリウムの含有量および酸抽出可能なカリウムの含有量は、グラムまたはモルで測定することができる。水抽出可能なカリウムの含有量は、酸抽出可能なカリウムの含有量に対する水抽出可能なカリウムの含有量の比率を決定するために、酸抽出可能なカリウムの含有量で除算することができる。電池10の酸抽出可能なカリウムの含有量(グラム)に対する水抽出可能なカリウムの含有量(グラム)の比率は、約0.9未満でもよい。電池10の酸抽出可能なカリウムの含有量(グラム)に対する水抽出可能なカリウムの含有量(グラム)の比率は、約0.45から約0.75でもよい。電池10の酸抽出可能な水酸化カリウムの含有量(モル)に対する水抽出可能な水酸化カリウムの含有量(モル)の比率は、約0.9未満でもよい.
電池10は、電気化学的に活性なカソード材料の含有量に対する総含水量の比率を有することができる。総含水量および電気化学的に活性なカソード材料の含有量は、グラムまたはモルで測定することができる。総含水量は、電気化学的に活性なカソード材料の含有量に対する総含水量の比率を決定するために、電気化学的に活性なカソード材料の含有量で除算することができる。電気化学的に活性なカソード材料の含有量(グラム)に対する総含水量(グラム)の比率は、約0.25より大きくてもよい。電気化学的に活性なカソード材料の含有量(グラム)に対する総含水量(グラム)の比率は、約0.27から約0.35でもよい。電気化学的に活性なカソード材料の含有量(モル)に対する総含水量(モル)の比率は、約1.7より大きくてもよい。
【0064】
ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルである電気化学的に活性なカソード材料を含む本発明の電池は、例えば、従来型のアルカリ電池よりも向上した、低率、中率、および高率のドレイン放電に関する放電性能を有することができる。ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルである電気化学的に活性なカソード材料を含む本発明の電池は、例えば、従来型のアルカリ電池よりも高い開路電圧を有してもよい。
【0065】
図2を参照すると、いくつかのサンプル材料のXRDパターンが示されている。
図2には、本発明のベータ脱リチウム化層状酸化ニッケル(Li
0.06K
0.12NiO
2・0.53・H
2O)の例示的なXRDパターン110が含まれている。ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの例示的なXRDパターン110は、約15.6°2θでの第1のピーク(111)、約21.9°2θでの第2のピーク(112)、約37.3°2θでの第3のピーク(113)、約43.6°2θでの第4のピーク(114)、約59.9°2θでの第5のピーク(115)、および約65.8°2θでの第6のピーク(116)を含む。ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの例示的なXRDパターン110は、約11.2°2θでの第7のピーク(117)、約47.3°2θでの第8のピーク(118)、および約48.3°2θでの第9のピーク(119)も含む。
【0066】
図2を更に参照すると、ガンマオキシ水酸化ニッケル(γ-NiOOH)の例示的なXRDパターン120が示されている。ガンマオキシ水酸化ニッケルのXRDパターン120は、約12.8°2θでの第1のピーク(121)、約25.5°2θでの第2のピーク(122)、約37.8°2θでの第3のピーク(123)、約42.9°2θでの第4のピーク(124)、約66.3°2θでの第5のピーク(125)、および約67.7°2θでの第6のピーク(126)を含む。ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンは、ガンマオキシ水酸化ニッケルのXRDパターンとは異なる。例えば、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンは、特に、XRDパターン内の特異なピーク、すなわち、約15.6°2θでのピーク(111)、約21.9°2θでのピーク(112)、および約59.9°2θでのピーク(115)を含む。ガンマオキシ水酸化ニッケルのXRDパターンは、そのようなピークを含まない。加えて、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンは、特に、XRDパターン内の特異なピーク、すなわち、約11.2°2θでのピーク(117)、約47.3°2θでのピーク(118)、および約48.3°2θでのピーク(119)を含む。ガンマオキシ水酸化ニッケルのXRDパターンは、そのようなピークを含まない。
【0067】
図2を更に参照すると、アルファ脱リチウム層状酸化ニッケル(Li
0.06NiO
2)の例示的なXRDパターン130が示されている。アルファ脱リチウム層状酸化ニッケルの例示的なXRDパターン130は、約18.5°2θでの第1のピーク(131)、約37.2°2θでの第2のピーク(132)、約38.8°2θでの第3のピーク(133)、約44.9°2θでの第4のピーク(134)、約58.6°2θでの第5のピーク(135)、および約64.1°2θでの第6のピーク(136)を含む。ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンは、アルファ脱リチウム層状酸化ニッケルのXRDパターンとは異なる。例えば、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンは、特に、XRDパターン内の特異なピーク、すなわち、約15.6°2θでのピーク(111)、約21.9°2θでのピーク(112)、および約43.6°2θでのピーク(114)を含む。アルファ脱リチウム層状酸化ニッケルのXRDパターンは、そのようなピークを含まない。加えて、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンは、特に、XRDパターン内の特異なピーク、すなわち、約11.2°2θでのピーク(117)を含む。アルファ脱リチウム層状酸化ニッケルのXRDパターンは、そのようなピークを含まない。
【0068】
図2を更に参照すると、酸化ニッケル(NiO)の例示的なXRDパターン140が示されている。酸化ニッケルのXRDパターン140は、約37.2°2θでの第1のピーク(141)、約43.3°2θでの第2のピーク(142)、および約62.9°2θでの第3のピーク(143)を含む。ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンは、酸化ニッケルのXRDパターンとは異なる。例えば、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンは、特に、XRDパターン内の特異なピーク、すなわち、約15.6°2θでのピーク(111)、約21.9°2θでのピーク(112)、約59.9°2θでのピーク(115)、および約65.8°2θでのピーク(116)を含む。酸化ニッケルのXRDパターンは、そのようなピークを含まない。加えて、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンは、特に、XRDパターン内の特異なピーク、すなわち、約11.2°2θでのピーク(117)、約47.3°2θでのピーク(118)、および約48.3°2θでのピーク(119)を含む。酸化ニッケルのXRDパターンは、そのようなピークを含まない。
【0069】
図2を更に参照すると、ベータ水酸化ニッケル(β-Ni(OH)
2)の例示的なXRDパターン150が示されている。ベータ水酸化ニッケルのXRDパターン150は、約19.2°2θでの第1のピーク(151)、約33.1°2θでの第2のピーク(152)、約38.5°2θでの第3のピーク(153)、約52.2°2θでの第4のピーク(154)、約59.2°2θでの第5のピーク(155)、および約62.8°2θでの第6のピーク(156)を含む。ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンは、ベータ水酸化ニッケルのXRDパターンとは異なる。例えば、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンは、特に、XRDパターン内の特異なピーク、すなわち、約15.6°2θでのピーク(111)、約21.9°2θでのピーク(112)、約43.6°2θでのピーク(114)、および約65.8°2θでのピーク(116)を含む。ベータ水酸化ニッケルのXRDパターンは、そのようなピークを含まない。加えて、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンは、特に、XRDパターン内の特異なピーク、すなわち、約11.2°2θでのピーク(117)、約47.3°2θでのピーク(118)、および約48.3°2θでのピーク(119)を含む。ベータ水酸化ニッケルのXRDパターンは、そのようなピークを含まない。
【0070】
図2を更に参照すると、ベータオキシ水酸化ニッケル(β-NiOOH)の例示的なXRDパターン160が示されている。ベータオキシ水酸化ニッケルのXRDパターン160は、約19.1°2θでの第1のピーク(161)および約37.9°2θでの第2のピーク(162)を含む。ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンは、ベータオキシ水酸化ニッケルのXRDパターンとは異なる。例えば、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンは、特に、XRDパターン内の特異なピーク、すなわち、約15.6°2θでのピーク(111)、約21.9°2θでのピーク(112)、約43.6°2θでのピーク(114)、約59.9°2θでのピーク(115)、および約65.8°2θでのピーク(116)を含む。ベータオキシ水酸化ニッケルのXRDパターンは、そのようなピークを含まない。加えて、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンは、特に、XRDパターン内の特異なピーク、すなわち、約11.2°2θでのピーク(117)、約47.3°2θでのピーク(118)、および約48.3°2θでのピーク(119)を含む。ベータオキシ水酸化ニッケルのXRDパターンは、そのようなピークを含まない。
【0071】
図2を更に参照すると、水酸化カリウム(KOH)の例示的なXRDパターン170が示されている。水酸化カリウムのXRDパターン170は、約22.1°2θでの第1のピーク(171)、約28.4°2θでの第2のピーク(172)、約30.5°2θでの第3のピーク(173)、約33.3°2θでの第4のピーク(174)、約39.1°2θでの第5のピーク(175)、および約45.8°2θでの第6のピーク(176)を含む。ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンは、水酸化カリウムのXRDパターンとは異なる。例えば、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンは、特に、XRDパターン内の特異なピーク、すなわち、約15.6°2θでのピーク(111)、約37.3°2θでのピーク(113)、約43.6°2θでのピーク(114)、約59.9°2θでのピーク(115)、および約65.8°2θでのピーク(116)を含む。水酸化カリウムのXRDパターンは、そのようなピークを含まない。加えて、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンは、特に、XRDパターン内の特異なピーク、すなわち、約11.2°2θでのピーク(117)を含む。水酸化カリウムのXRDパターンは、そのようなピークを含まない。
【0072】
図2を更に参照すると、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターン110、アルファ脱リチウム層状酸化ニッケルのXRDパターン130、酸化ニッケルのXRDパターン140、ベータ水酸化ニッケルのXRDパターン150、および水酸化カリウムのXRDパターン170は、NIST 640d標準シリコンを示す約28.5°2θでのピーク(101)を含む。標準シリコンは、2θ回折角較正のために使用される。
【0073】
図3を参照すると、例えば、電池310の電圧、容量、充電状態、および/または電力を決定するために、ラベル320内に組み込まれたインジケータすなわちテスター330を有するラベル320を有する、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルである電気化学的に活性なカソード材料を含む電池310が示されている。ラベル320は、ラベルの図表および文字が記載された透明層または半透明層を有する積層された多層フィルムでもよい。ラベル320は、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、および他の同様なポリマー材料から作られてもよい。テスター330は、例えば、熱変色性または電気変色性のインジケータを含んでもよい。熱変色性の電池テスターでは、電池310の筐体およびエンドキャップとの電気接触状態にインジケータを置くことができる。消費者は、テスター330内に含まれた電気回路内に配置されたスイッチを手動で押すことによりインジケータを作動させる。スイッチを押すと、消費者は、熱変色性テスターにより筐体を介して、電池310のアノードをエンドキャップを介して電池310のカソードに接続する。熱変色性テスターは、導体の抵抗も長さに沿って変化するように、可変の幅を有する銀導体を含むことができる。電流は、電流が銀導体中を流れると、銀導体の上の熱変色性インクの表示色を変化させる熱を発生させる。テスター330は、例えば、電池310の相対容量を示す計器として配置することができる。電流が大きくなると、より多くの熱が発生し、計器は、電池310が良好であることをより多く示すように変化する。
【0074】
実験的試験
ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルである電気化学的に活性な材料のICP-AESによる元素分析
サンプル材料の元素組成を決定するために、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルである電気化学的に活性な材料のサンプルに関するICP-AESによる元素分析が完了される。ICP-AES分析は、堀場製作所のUltima 2 ICP分光計により完了される。ICP-AES分析は、分光計内にサンプル溶液を置くことにより完了される。サンプル溶液は、分析される所望の元素(1つまたは複数)に応じた方法で用意される。
【0075】
元素分析の場合、凡そ0.15グラムのサンプル材料を約20mLの硝酸(HNO3)の8規定(8N)溶液に加えることによって、第1の溶液が作られる。第1の溶液は、殆ど全ての液体が蒸発するまで約210℃で加熱される。第1の溶液は、次いで、100℃から約150℃の間に冷まされる。第1の溶液が冷まされた後に、約10mLの濃縮塩酸(HCl)を第1の溶液に加えることによって、第2の溶液が形成される。第2の溶液は、ほぼ全ての液体が蒸発するまで約210℃で加熱される。第2の溶液は、次いで冷まされる。第2の溶液が約100℃と約150℃の間に冷まされた後に、約10mLの濃縮HClを第2の溶液に加えることによって、第3の溶液が形成される。第3の溶液は、ほぼ全ての液体が蒸発するまで約210℃で加熱される。第3の溶液は、次いで、1時間にわたり約110℃でオーブン内に置かれる。オーブン内に保管した後、第3の溶液は冷まされる。5mLの濃縮HClを第3の溶液に加えることによって、第4の溶液が形成される。第4の溶液は、サンプル材料が第4の溶液中に溶けるまで約210℃まで加熱される。第4の溶液は冷まされる。第4の溶液を100mL容量フラスコに移し、容量フラスコの100mL目盛線まで蒸留水を第4の溶液に加えることによって、第5の溶液が形成される。第5の溶液は、ICP-AES分光計を使用した、リチウム(Li)、カリウム(K)、およびルビジウム(Rb)の元素分析に使用される。1mLの第5の溶液を50mL遠心分離管に移し、約2.5mLの濃縮HClを遠心分離管に加え、第6の溶液の総重量が50グラムとなるように蒸留水を遠心分離管に加え、遠心分離管の成分を混合することによって、第6の溶液が形成される。第6の溶液は、ICP-AES分光計を使用した、ニッケル(Ni)の元素分析に使用される。
【0076】
ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルである電気化学的に活性な材料のICP-AES分析は、カリウム(K)、リチウム(Li)、ニッケル(Ni)、およびルビジウム(Rb)に特有な種々の波長で実行される。例えば、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケル中のカリウム(K)の分析波長(λ)は、約766nmに設定されてもよい。例えば、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケル中のリチウム(Li)の分析波長(λ)は、約610nmに設定されてもよい。例えば、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケル中のニッケル(Ni)の分析波長(λ)は、約231nmに設定されてもよい。例えば、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケル中のルビジウム(Rb)の分析波長(λ)は、約780nmに設定されてもよい。
【0077】
以下の表1には、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルである電気化学的に活性な材料に関するICP-AES結果による元素分析が含まれる。サンプル材料中のリチウム(Li)、ニッケル(Ni)、およびカリウム(K)の重量パーセントが記録される。ICP-AESによる元素分析データは、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルである電気化学的に活性な材料の化学組成を決定するために使用される。ICP-AESによる元素分析は、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルである電気化学的に活性な材料が、その化学組成中に望ましくない副産物または分解生成物を有していないことを確認するためにも使用される。
【0078】
ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルである電気化学的に活性な材料の熱重量分析(TGA)による含水量
サンプル材料中の吸収水/吸着水、結晶水、および総含水量を決定するために、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルである電気化学的に活性な材料のサンプルに関するTGAによる含水量が完了される。TGA分析は、TA InstrumentsのQ5000分析器を使用して完了される。
【0079】
TGA分析は、約34mgのサンプルをTGAサンプルホルダ上に置くことにより行われる。サンプル材料は、5℃/分で約800℃の温度まで加熱される。
【0080】
サンプルは、例えば、約25mL/分の流量で流れる窒素の存在下で加熱される。サンプル重量は、時間および温度の関数として測定される。
【0081】
表1には、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルである電気化学的に活性な材料に関するTGAにより測定された含水量が含まれる。TGAにより測定された含水量は、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルである電気化学的に活性な材料の化学組成中に存在する構造格子水を決定するために使用される。TGAにより測定された含水量は、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルである電気化学的に活性な材料の表面に吸着された水を決定するため、およびその組成中に余剰水が存在しないことを確認するためにも使用される。
【表1】
【0082】
粉末X線回折分析
粉末X線回折(XRD)分析は、結晶性粉末サンプルの特徴的なXRD回折パターンを決定するために結晶性粉末サンプルに関して実行される。XRD分析は、Bruker D-8 Advance X線回折計を使用して完了される。XRD分析は、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルである電気化学的に活性な材料およびいくつかの比較サンプルに関して実行される。Brukerサンプルホルダ内に約1グラム~約2グラムのサンプル材料が置かれる。サンプル材料を含むサンプルホルダは、次いで、X線回折計の回転サンプルステージ内に置かれ、サンプル材料は、次いで回折計のCuKaX線源により照射される。回折したX線は、Baltic Scientific Instruments(Riga、ラトビア国)から入手可能なSol-X検出器により測定される。各サンプルのXRDパターンは、次いで、Bruker Corporationにより供給されるDiffrac-plusソフトウェアを使用して、10°2θから80°2θまで2秒/ステップで0.02°ステップサイズにより収集される。サンプル材料のXRDパターンは、次いで、いずれもBruker Corporationから入手可能なEVAおよびTopasデータ分析ソフトウェアパッケージを使用して分析される。サンプル材料のXRDパターンは、既知の材料について測定された基準XRDパターンと比較される。
【0083】
表2は、分析されたサンプル材料および既知の材料ならびに各材料のXRDパターン中の特徴的なピークをまとめている。
【表2】
【0084】
AAアルカリ一次電池アセンブリ
以下の表3では電池Aと称する、従来型のAAアルカリ電池が組み立てられる。電池Aは、円筒筐体内のアノード、カソード、セパレータ、および水系アルカリ電解質を含む。アノードは、4.27グラムの亜鉛、水に溶けた約31重量%のKOHおよび2.0重量%のZnOを有する1.78グラムの水酸化カリウムアルカリ電解質、0.026グラムのポリアクリル酸ゲル化剤、および0.023グラムの腐食防止剤を含むアノードスラリを含む。カソードは、電解二酸化マンガン(EMD)、黒鉛、および水酸化カリウム水系電解溶液の混合物を含む。カソードは、10.87グラムのEMD、0.46グラムのTimcal MX-15黒鉛、0.12グラムのTimcal BNB-90、および0.52グラムの電解質から成るローディングを含む。アノードとカソードの間にはセパレータが介在する。セパレータは、水に溶けた約31重量%のKOHを有する約1.33グラムの水酸化カリウムアルカリ電解溶液の事前注入で湿潤される。アノード、カソード、およびセパレータは、円筒筐体に挿入される。筐体は、次いで、電池組立プロセスを完了するためにシールされる。電池Aは、次いで、以下に記述するような組立後電池分析、熟成、および性能試験を受ける。
【0085】
以下の表3では電池Bと称する、実験的AA電池が組み立てられる。電池Bは、円筒筐体内のアノード、カソード、セパレータ、および電解質を含む。アノードは、5.17グラムの亜鉛、水に溶けた約27重量%のKOHおよび1.7重量%のZnOを有する2.17グラムの水酸化カリウムアルカリ電解質、0.038グラムのポリアクリル酸ゲル化剤、および0.01グラムの腐食防止剤を含むアノードスラリを含む。カソードは、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケル、黒鉛、および水酸化カリウム水系電解溶液の混合物を含む。カソードは、9.54グラムのベータ脱リチウム化層状酸化ニッケル、0.78グラムのTimcal MX-15黒鉛、および0.52グラムの電解質から成るローディングを含む。アノードとカソードの間にはセパレータが介在する。セパレータは、水に溶けた約5.5重量%のKOHを有する約1.00グラムの水酸化カリウムアルカリ電解溶液の事前注入で湿潤される。アノード、カソード、およびセパレータは、円筒筐体に挿入される。筐体は、次いで、電池組立プロセスを完了するためにシールされる。電池Bは、次いで、以下で記述するような組立後電池分析、熟成、および性能試験を受ける。
【表3】
【0086】
組立後AAアルカリ一次電池の分析
ICP-AESによる元素分析は、電池の水抽出可能なカリウムの含有量を決定するために水洗浄液に関して完了される。ICP-AES分析は、堀場製作所のUltima 2 ICP分光計を使用して完了される。ICP-AES分析は、分光計内にサンプル溶液を置くことにより完了される。
【0087】
放電していない電池から取り外された、アノード/セパレータアセンブリおよびカソードアセンブリから、ICP-AES分析用のサンプル溶液が用意される。アノード/セパレータアセンブリおよびカソードアセンブリを取り外す前に、電池は、約5分から10分の間、液体窒素を収容するDewarフラスコ内に完全に沈められる。この工程は、電池内の全ての液体電解質が凝固することを確実にする。電池は、例えば、Dremelツールで、切開される。エンドキャップアセンブリは、電池から取り外される。電池の金属筐体は、引き剥がされる。アノード/セパレータアセンブリおよびカソードアセンブリは、次いで電池から取り外される。アノード/セパレータアセンブリおよびカソードアセンブリは、電池から慎重に取り外されなければならない。分析結果が有害な影響を受けないように、アノードとカソードの不慮の短絡を防止しなければならない。加えて、電池内に存在する全てのカリウムを正確に考慮するために、分解プロセス中の電解溶液のロスを最小化する必要がある。アノード/セパレータアセンブリおよびカソードアセンブリは、別々の、自重が測られた遠心分離管内に置くことができる。アノード/セパレータアセンブリおよびカソードアセンブリを含む遠心分離管は、それぞれ凡そ22℃まで温められる。各遠心分離管には、次いで、凡そ40mLの脱イオン水が加えられる。遠心分離管は、次いで、再計量されシールされる。シールされた遠心分離管は、次いで、アノード/セパレータアセンブリおよびカソードアセンブリそれぞれから可溶性の任意のカリウムを抽出するために、約22℃で24時間、振り混ぜられる。遠心分離管は、次いで、遠心分離機内に置かれ、各遠心分離管内の固体分と液体分を分離するために回転される。透明な上澄液が、次いで遠心分離管から取り除かれる。各サンプル中のカリウムの含有量は、ICP-AESにより決定される。ICP-AES法は、カリウムに関して上述した、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルである電気化学的に活性な材料のICP-AESによる元素分析の場合と同じである。電池内の水抽出可能なカリウムの含有量は、以下の合計である。(1)アノード/セパレータアセンブリを含む遠心分離管の浮遊物中のカリウム含有量、および(2)カソードアセンブリを含む遠心分離管の浮遊物中のカリウム含有量。以下の表4には、電池Aおよび電池Bの水抽出可能なカリウムの含有量が含まれる。
【0088】
水抽出可能な水酸化カリウムの含有量は、ICP-AESにより決定された水抽出可能なカリウムの含有量および水酸化カリウム(KOH)の式量から計算される。水酸化カリウム中には、水酸化物(OH)1モル当り1モルのカリウム(K)がある。ICP-AESにより決定された水抽出可能なカリウムの含有量(グラム)は、水抽出可能なカリウムのモル数を決定するためにカリウムの式量(39.0983g/モル)で除算される。水抽出可能な水酸化カリウムの重量(グラム)を得るために、水抽出可能なカリウムのモルは、水酸化カリウムの式量(56.1056g/モル)で乗算される。以下の表4には、電池Aおよび電池Bの水抽出可能な水酸化カリウムの含有量が含まれる。
【0089】
ICP-AESによる元素分析は、電池の酸抽出可能なカリウムの含有量を決定するために酸抽出溶液に関して完了される。ICP-AES分析は、堀場製作所のUltima 2 ICP分光計により完了される。ICP-AES分析は、分光計内にサンプル溶液を置くことにより完了される。
【0090】
約1.0ボルト未満の開路電圧まで放電した電池から取り外された、アノード/セパレータアセンブリおよびカソードアセンブリから、ICP-AES分析のサンプルが用意される。放電した電池は、例えば、Dremelツールで、切開される。エンドキャップアセンブリは、次いで取り外される。放電した電池の金属筐体は、引き剥がされる。アノード/セパレータアセンブリおよびカソードアセンブリは、次いで金属筐体から取り外される。アセンブリは、次いで250mL容量フラスコに移される。アセンブリを含む容量フラスコには、次いで、約125mLの6M硫酸が、ゆっくりと加えられる。フラスコは、次いで被覆され、約40℃の温度で凡そ2時間、撹拌される。フラスコは、次いで約45℃から約60℃の温度で更に8から10時間、撹拌される。アセンブリおよび初期の硫酸を含む容量フラスコには、次いで、凡そ100mLの硫酸が加えられる。フラスコは、次いで約45℃から約60℃の温度で更に8から10時間、撹拌される。フラスコは、次いで約22℃の温度まで冷まされる。容量フラスコには、容量フラスコ内の固体および液体の総体積が約250mLとなるように、次いで更なる硫酸が加えられる。容量フラスコ内の固体は、次いで、少なくとも約1時間、沈降される。上澄み液は、次いで容量フラスコから取り除かれ、遠心分離管(1つまたは複数)内に置かれる。遠心分離管(1つまたは複数)は、次いでシールされ、次いで遠心分離機内に置かれる。遠心分離管(1つまたは複数)は、次いで、遠心分離管内の浮遊固体分と懸濁液分を分離するために回転される。澄んだ上澄液は、次いで遠心分離管(1つまたは複数)から取り除かれる。各サンプル中のカリウム含有量は、ICP-AESにより決定される。ICP-AES法は、カリウムに関して上述した、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルである電気化学的に活性な材料のICP-AESによる元素分析の場合と同じである。電池内の酸抽出可能なカリウムの含有量は、ICP-AESにより決定される、溶液中のカリウム含有量である。以下の表4には、電池Aおよび電池Bの酸抽出可能なカリウムの含有量が含まれる。
【0091】
酸抽出可能な水酸化カリウムの含有量は、ICP-AESにより決定された酸抽出可能なカリウムの含有量および水酸化カリウム(KOH)の式量から計算される。水酸化カリウム中には、水酸化物(OH)1モル当り1モルのカリウム(K)がある。ICP-AESにより決定された酸抽出可能なカリウムの含有量(グラム)は、酸抽出可能なカリウムのモル数を決定するためにカリウムの式量(39.0983g/モル)で除算される。酸抽出可能な水酸化カリウムの重量(グラム)を得るために、酸抽出可能なカリウムのモルは、水酸化カリウムの式量(56.1056g/モル)で乗算される。以下の表4には、電池Aおよび電池Bの酸抽出可能な水酸化カリウムの含有量が含まれる。
【0092】
放電していない電池の総含水量を決定するために、アノード/セパレータアセンブリおよびカソードアセンブリに関する重量変化測定が完了される。アノード/セパレータアセンブリおよびカソードアセンブリを取り外す前に、電池は、約5分から10分の間、液体窒素を収容するDewarフラスコ内に完全に沈められる。この工程は、電池内の全ての液体電解質が凝固することを確実にする。電池から取り外された、アノード/セパレータアセンブリおよびカソードアセンブリから重量変化測定用のサンプルが用意される。電池は、例えば、Dremelツールで、切開されてもよい。電池の金属筐体は、引き剥がされてもよい。アノード/セパレータアセンブリおよびカソードアセンブリは、次いで電池から取り外されてもよい。アノード/セパレータアセンブリおよびカソードアセンブリは、別々の、自重が測られたアルミニウム舟形計量容器内に置かれてもよい。それらの含有物を含むそれぞれの舟形計量容器は、次いで再計量される。それらの含有物を有する舟形計量容器は、次いで約22℃の箱型オーブン内に置かれる。箱型オーブンの温度は、約175℃に達するまで毎分約2℃の割合で増加する。舟形計量容器およびそれらの含有物は、約175℃で約8から10時間、箱型オーブン内に保持される。箱型オーブンは、次いで約22℃まで冷まされる。それらの含有物を含む各舟形計量容器は、次いで再計量される。電池10の総含水量は、以下の合計である。(1)アノード/セパレータアセンブリの重量ロスおよび(2)カソードアセンブリの重量ロス。以下の表4には、電池Aおよび電池Bの総含水量が含まれている。
【表4】
【0093】
組立後AAアルカリ一次電池の性能試験
性能試験の前に、電池は、約20℃で4日間熟成される。4日間の熟成の後、電池の開路電圧(OCV)が測定される。電池のOCVは、例えば、電池の正端子と負端子の間に電圧計を置くことにより測定される。電池の測定された開路電圧(V)は記録される。OCV試験は、電池の容量を消費しない。
【0094】
4日間の熟成の後、電池の短絡電流(SCC)が測定される。SCCプロトコルは、電池から6アンペア(Amp)の一定電流を0.1秒間流すことを含む。電池の電圧は、6Ampのドレイン下で測定され、記録される。電池は、完全に短絡した場合に、ゼロ(0)ボルトの測定電圧を有する。電池が短絡する電流は、測定されたOCVの座標とドレイン下で測定された電圧の座標との間の線を、電流対電圧のx、yプロット上のx軸の交点まで外挿することにより計算される。測定されたOCVは、(0Amp,OCV)の(x,y)座標を有する。ドレイン下で測定された電圧は、(6Amp,負荷電圧)の(x,y)座標を有する。SSC試験は、極めて短期間であるため、電池の容量を著しくは消費しない。SSCは、以下の数式により計算される
SSC(Amp)=[(OCV-6Amp)/(OCV-負荷電圧)]
性能試験は、30ミリアンペア連続放電試験(30mA連続)と称する場合がある放電性能試験を含む。30mA連続プロトコルは、0.9ボルトの臨界電圧に達するまで電池から30mAの一定電流ドレインを流すことを含む。電池の測定された総容量は、アンペア時(Ah)およびワット時(Wh)で記録される。30mA連続放電試験は低率放電試験である。
【0095】
性能試験は、1ワット連続放電試験(1W連続)と称する場合がある高率連続放電状態での放電性能試験を含む。1W連続試験プロトコルは、0.9ボルトの臨界電圧に達するまで電池から1ワットの一定電力ドレインを流すことを含む。電池の測定された容量は、アンペア時(Ah)およびワット時(Wh)で記録される。1W連続放電試験は高率放電試験である。
【0096】
性能試験は、250ミリワット間欠放電試験(250mW間欠)と称する場合がある中率間欠放電状態での放電性能試験を含む。250mW間欠試験プロトコルは、電池から250ミリワットの一定電力ドレインを1時間流すことを含む。放電は次いで中止され、電池は7時間休止される。電池は、次いで更なる期間放電され、0.9ボルトの臨界電圧に達するまで休止される。電池の測定された容量は、アンペア時(Ah)およびワット時(Wh)で記録される。250mW間欠放電試験は中率間欠放電試験である。
【0097】
性能試験は、デジタルカメラにおける使用をシミュレートするように設計された、デジタルカメラ試験(Digicam)と称する場合がある放電性能試験を含む。デジタルカメラ試験は、高電力と中電力のパルス化された放電サイクルを電池に加えることを含むパルス試験プロトコルである。各サイクルは、2秒間の1.5ワット高電力パルスと、その直後に続く28秒間の650mW中電力パルスとを含む2つの放電状態の組合せから成る。放電状態のこの組合せは10回(すなわち、合計5分)繰り返され、次いで、電池は55分間休止される。放電パルスと休止期間の組合せサイクル(すなわち、1時間/サイクル)は、1.05ボルトの臨界電圧に達するまで繰り返される。臨界電圧に達するのに必要とされるサイクル数は、パルスまたは画像として記録される。記録されたパルス数は、放電サイクルの総数に対応する、1.5ワット高電力パルスの総数から成る。Digicam放電試験は高率放電試験である。
【0098】
性能試験結果
電池Aおよび電池Bは、OCV試験、SSC試験、30mA連続試験、1W連続試験、250mW間欠試験、およびDigicam性能試験を受ける。以下の表5は、性能試験結果をまとめている。表5の%差の列は、電池Aに対する電池Bの性能の百分率差を含む。
【0099】
ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルを含む電池Bは、一般的な市販アルカリ電池である電池Aと比べて全体性能が向上される。電池BのOCVは、電池Aと比べて高い。電池Bの高いOCVは、電池Aよりも高い総エネルギーを示している。電池BのOCVは、電池Bが電気デバイスに組み込まれるときの損傷の可能性が比較的低くなるように、高すぎることはない。電池BのSSCは、電池Aよりも著しく多い。電池Bの大きなSSCは、電池Aよりも多くの放電電流を運ぶ能力を示している。1W連続試験を除く全ての放電試験の下で電池Bにより送られる電流の量(Ah)は、電池Aよりも多い。全ての放電試験の下で電池Bにより送られるエネルギーの量(Wh)は、電池Aよりも多い。加えて、Digicam試験の下で電池Bにより送られるパルスの数は、電池Aよりも非常に多い。結果は、低率、中率、および高率の放電状態に対して、電池Bが全般的に電池Aよりも良好な性能を発揮することを示している。
【表5】
【0100】
本明細書に開示する寸法および値は、記載する精密な数値に厳密に限定されるものと理解されるべきではない。代わりに、特に指定しない限り、そのような各寸法は、記載する値と、その値を囲む機能的に等価な範囲との両方を意味することを意図している。例えば、「40mm」として開示する寸法は、「約40mm」を意味することを意図している。
【0101】
本明細書において引用するそれぞれの文献は、任意の相互参照または関連特許もしくは関連出願および本出願がそれらの優先権または利益を主張する任意の特許出願または特許を含めて、明示的に除外したり、特に限定したりしない限り、その全体を参照することにより本明細書に組み込まれる。任意の文献の引用は、その文献が、本明細書において開示もしくは特許請求される任意の発明に関する先行技術であること、または単独もしくは他の1つもしくは複数の参考文献との組合せにより、そのような任意の発明を教示、示唆もしくは開示していることを認めるものではない。さらに、本文献中の用語の任意の意味または定義が、参照により組み込まれた文献中の同じ用語の任意の意味または定義と矛盾する限り、本文献においてその用語に割り当てられた意味または定義が適用されるべきである。
【0102】
本発明の具体的な実施形態を例示および記述してきたが、本発明の趣旨および範囲から逸脱せずに種々の他の変更および修正を行うことができることは、当業者にとって自明であろう。したがって、添付の請求項は、本発明の範囲内にあるそのような全ての変更および修正をカバーすることを意図している。