(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】空気紡績装置を作動させるための方法、糸ガイド通路、およびこのような糸ガイド通路を含む空気紡績機
(51)【国際特許分類】
D01H 1/115 20060101AFI20220708BHJP
D01H 4/48 20060101ALI20220708BHJP
D01H 15/00 20060101ALI20220708BHJP
【FI】
D01H1/115 Z
D01H4/48
D01H15/00
(21)【出願番号】P 2020501295
(86)(22)【出願日】2018-07-13
(86)【国際出願番号】 EP2018069160
(87)【国際公開番号】W WO2019012143
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-04-20
(31)【優先権主張番号】102017115939.8
(32)【優先日】2017-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518264859
【氏名又は名称】ザウラー スピニング ソリューションズ ゲー・エム・ベー・ハー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Saurer Spinning Solutions GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Carlstr. 60, 52531 Uebach-Palenberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル モーア
(72)【発明者】
【氏名】ハインツ-ヨーゼフ ポイカー
(72)【発明者】
【氏名】チャンドラセカラン ゼスハヤー
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ ズィーヴェアト
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヒム ゾブコヴィアク
(72)【発明者】
【氏名】パウル シュトラーテン
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-223061(JP,A)
【文献】特開2003-212438(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0029153(US,A1)
【文献】特開平02-006639(JP,A)
【文献】特開2016-037685(JP,A)
【文献】西独国特許出願公開第3518316(DE,A1)
【文献】特開2014-001491(JP,A)
【文献】特開2003-113539(JP,A)
【文献】特表2008-540861(JP,A)
【文献】特表2007-522355(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01H 1/115
D01H 4/48
D01H 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紡績中断後に空気紡績装置(5)を作動させるための方法であって、スライバ走行方向(R)において前記空気紡績装置(5)の上流に、スライバ(25)をドラフトするためのドラフト装置(4)が配置されていて、かつ下流に、前記空気紡績装置(5)を用いて紡績された糸(36)を引き出すための、個別モータによって駆動可能な糸引出し装置(6)が配置されている、方法において、
紡績中断後に、前記紡績された糸(36)の、巻取りボビン(9)に巻き取られた糸端部(37)を、吸込みノズル(39)を用いて回収し、かつ前記スライバ走行方向(R)において前記空気紡績装置(5)の下流に配置された糸端部準備装置(40)に移送し、
前記糸端部(37)を、前記糸端部準備装置(40)において処理し、かつ次いで紡績コーン(19)の出口開口の領域に引き渡し、
前記糸端部(37)を、個別モータによって反転可能に駆動される糸引出し装置(6)を用いて、前記紡績コーン(19)の入口開口(35)に搬送し、かつそこで前記空気紡績装置(5)の内部において前記入口開口(35)の上流に間隔をおいて位置決めし、
該当する作業ユニット(2)の前記ドラフト装置(4)を起動し、かつ前記スライバ(25)を、ノズルブロック(17)のスライバガイド(18)を通して、前記紡績コーン(19)の前記入口開口(35)の領域に搬送し、そこで前記紡績された糸(36)の準備された前記糸端部(37)に糸継ぎする
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記紡績された糸(36)の、前記巻取りボビン(9)に巻き取られた前記糸端部(37)を、それぞれ空気紡績機のそれぞれの前記作業ユニット(2)の構成部分である吸込みノズル(39)を用いて回収する、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記紡績された糸(36)の、前記巻取りボビン(9)に巻き取られた前記糸端部(37)を、空気紡績機の多数の作業ユニットを取り扱う走行可能なサービスアセンブリ(10)の構成部分である吸込みノズル(39)を用いて回収する、
請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記糸端部準備装置(40)は、前記紡績された糸(36)の前記糸端部(37)を糸継ぎ工程のために準備するための保持兼解撚管(31)を有している、
請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記該当する作業ユニット(5)の、前記スライバ(25)をドラフトする前記ドラフト装置(4)は、個別モータによってかつ特に反転可能に駆動可能である、
請求項1記載の方法。
【請求項6】
紡績装置(5)と、
空気紡績機(1)の、巻取りボビン(9)を形成する巻取り装置との間に配置するため
の、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法を実施するための糸ガイド通路(60;90)であって、当該糸ガイド通路(60;90)は、前記紡績装置(5)と前記巻取り装置との間において延びる糸(36)を通過案内するための貫通通路を形成している、
糸ガイド通路(60;90)において、
当該糸ガイド通路(60;90)は、互いに連結可能で空気供給可能な複数の通路部分(62,64,66;92,94,96)を有していて、該通路部分(62,64,66;92,94,96)は、少なくとも1つの第1の通路部分(62;92)、第2の通路部分(64;94)、および前記第1の通路部分(62;92)と前記第2の通路部分(64;94)との間に配置された通路接続部分(66;96)を含んでおり、前記通路接続部分(66;96)は、前記第2の通路部分(64;94)における空圧的な吸込み作用を伴って、前記第1の通路部分(62;92)において空気正圧を生ぜしめるために、当該糸ガイド通路(60;90)に圧縮空気を供給するための流入部(68;98)を含んでいる
ことを特徴とする、糸ガイド通路(60;90)。
【請求項7】
当該糸ガイド通路(60;90)、特に前記通路接続部分(66)は、前記糸(36)を変向させるための糸変向部分(67)を有している、
請求項6記載の糸ガイド通路(60
;90)。
【請求項8】
前記流入部(68)の貫通軸線が、前記第1の通路部分(62)の糸ガイド軸線に平行に、特に一致して、かつ前記第2の通路部分(64)の糸ガイド軸線に対して横方向に延びている、
請求項7記載の糸ガイド通路(60
;90)。
【請求項9】
前記糸ガイド通路(60;90)は、前記
空気紡績機(1)の作業ユニット(2)のハウジング部分またはフレーム部分(100)に当該糸ガイド通路(60;90)を固定するための固定部分を有しており、前記固定部分は、特に、少なくとも1つの糸変向部分(67)を収容するためのハウジング(70)を形成している、
請求項6から8までのいずれか1項記載の糸ガイド通路(60;90)。
【請求項10】
糸端部(37)を準備するための、少なくとも1つの保持兼解撚管(31)を備えた糸端部準備装置(40)が設けられており、前記保持兼解撚管(31)は、当該糸ガイド通路(60;90)の、巻取りボビン(9)に近い方の端部(64B)に配置されているか、または形成されている、
請求項6から9までのいずれか1項記載の糸ガイド通路(60;90)。
【請求項11】
前記保持兼解撚管(31)は、第2の通路部分(64;94)を形成している、
請求項10記載の糸ガイド通路(60;90)。
【請求項12】
当該糸ガイド通路(60;90)の、前記紡績装置(5)に近い方の端部(62B)が、ノズル状に形成されているか、またはノズル状に形成されたエレメント(74)に隣接している、
請求項6から11までのいずれか1項記載の糸ガイド通路(60;90)。
【請求項13】
当該糸ガイド通路(60;90)の、前記紡績装置(5)に近い方のノズル状に形成された端部(62B)、もしくはノズル状に形成されたエレメント(74)が、前記紡績装置(5)に通じる糸ガイドホッパ(76,77,78)のホッパ入口(76)に対して間隔をおいて配置されており、前記間隔は、前記糸ガイド通路(60;90)もしくはノズル状の前記エレメント(74)の、前記紡績装置(5)に近い方の端部から進出する糸端部(37)が、前記通路接続部分(66;96)において生ぜしめられた圧縮空気を用いて少なくとも前記ホッパ入口(76)に、かつ特に追加的に、前記ホッパ入口(76)に接続していて前記ホッパ入口(76)に対して間隔をおいて配置された少なくとも1つの糸貫通部(77;78)に案内可能であるように選択されている、
請求項12記載の糸ガイド通路(60;90)。
【請求項14】
空気紡績機(1)であって、
供給されたスライバ(35)から糸(36)を紡績するための空気紡績装置(5)、
前記空気紡績装置(5)から前記糸(36)を引き出すための、個別モータによって駆動可能な糸引出し装置(6)、および
紡績された前記糸(36)を巻き取るための巻取り装置
を含んでいる、空気紡績機(1)において、
請求項6から13までのいずれか1項記載の糸ガイド通路(60;90)が、前記空気紡績装置(5)と、下流に配置された巻取り装置との間、特に前記空気紡績装置(5)と、前記巻取り装置の上流に配置された、個別モータによって駆動可能な糸引出し装置(6)との間に配置されており、前記糸引出し装置(6)は追加的に、前記空気紡績装置(5)の方向に前記糸(36)を供給するために、反転駆動可能に設計されていて、かつ相応に駆動制御可能である、
ことを特徴とする、空気紡績機(1)。
【請求項15】
当該空気紡績機(1)は、スライバ(35)を確定してドラフトしかつ供給するための、個別モータによって駆動可能なドラフト装置(4)を有しており、前記ドラフト装置(4)の駆動装置は、前記糸引出し装置(6)の駆動装置とは無関係に駆動制御可能である、
請求項14記載の空気紡績機(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方では、紡績中断後に空気紡績装置を作動させるための方法に関する。スライバ走行方向において空気紡績装置の上流に、スライバをドラフトするためのドラフト装置が配置されていて、かつ下流に、空気紡績装置を用いて紡績された糸を引き出すための、個別モータによって駆動可能な糸引出し装置が配置されている。
【0002】
他方において本発明は、紡績装置と、例えば空気紡績機のような繊維機械の、巻取りボビンを形成する巻取り装置との間に配置するための糸ガイド通路、およびこのような空気紡績機に関する。糸ガイド通路は、特に方法を実施するために適しており、このとき糸ガイド通路は、紡績装置と巻取り装置との間において延びる糸を通過案内するための貫通通路を形成している。
【0003】
繊維工業においては、テキスタイル糸の製造との関連において、種々様々な方法および紡績装置が公知である。例えばリング精紡機および/またはオープンエンドロータ紡績機が、ずっと以前から周知されていて、かつ極めて優良であることが判明している。さらに、特に合成糸材料の加工との関連において、いわゆる空気紡績機も公知である。
【0004】
上に挙げた紡績方法もしくは所属の紡績方法は、特許文献において、また数多くの特許明細書においても、かなり詳しく記載されている。
【0005】
独国特許発明第4036119号明細書には、例えば空気紡績機の空気紡績装置が記載されており、この空気紡績装置は、入口側に配置されたノズルブロックと、下流に配置された回転可能に支持された中空の紡績スピンドルとを有している。このときノズルブロックは、回転する空気流を生ぜしめるための空気吹込みノズルの他に、さらにスライバガイドを有しており、このスライバガイドは、供給されるスライバのために、撚り止めとして作用する。
【0006】
空気吹込みノズルによって生ぜしめられた回転する空気流は、紡績プロセス中に、ノズルブロックの繊維入口開口の領域において吸込み流を生ぜしめ、この吸込み流は、空気紡績装置内への、上流に配置されたドラフト装置においてドラフトされたスライバの導入を促進する。すなわち空気紡績装置内に導入されたスライバは、ノズルブロックを通って、紡績プロセス中に回転する、駆動ベルトによって作動させられる中空の紡績スピンドルの入口開口に達する。
【0007】
回転する紡績スピンドル内へのスライバの進入時に、自由な繊維端部は、回転する空気流を用いて、回転する紡績スピンドルの円錐形状に形成されたスピンドルヘッドの周りに巻き付けられ、かつスピンドルへの糸の引込み中に、いわゆる芯繊維の周りに螺旋形状に巻き付く。すなわち紡績プロセス中に、芯繊維は、いわゆる巻付き繊維と一緒に新しい糸を形成する。
【0008】
回転する空気流を用いて糸を製造するための同等の装置は、独国特許出願公開第19926492号明細書によっても公知である。しかしながらこの公知の空気紡績装置は、回転可能に支持された紡績コーンではなく、不動の紡績コーンを有している。
【0009】
この空気紡績装置においても、紡績すべきスライバは、ノズルブロック内に配置されたスライバガイドを介して空気紡績装置内に導入され、かつ不動に配置された中空の紡績コーンの入口開口内に達する。
【0010】
上において既に独国特許発明第4036119号明細書との関連において記載されたように、この公知の装置においてもスライバは、紡績コーンの入口開口の領域において、ノズルブロックに配置された空気吹込み開口を通して生ぜしめられる回転する空気流にさらされる。回転する空気流は、スライバの自由な繊維端部を、公知のように、紡績コーンのヘッドの周りに位置させ、かつさらに空気紡績装置内へのスライバの導入を促進する。この公知の空気紡績装置においても、自由な繊維端部は、いわゆる巻付き繊維として芯繊維の周りに螺旋形状に巻き付き、このとき糸を形成する。
【0011】
このような空気紡績装置において、例えば供給されたスライバの裂断に基づいて、または紡績された糸が、糸クリアラによるコントロールされた切断によって切り離されたことに基づいて、紡績プロセスが中断すると、紡績中断を解消するために働く後続の糸継ぎ工程中に、まず、既に紡績された、通常所属の綾巻きボビンに巻き取られた糸の糸端部を呼び戻し、かつ空気紡績装置を通してドラフト装置の領域にまで搬送することが必要である。このとき空気紡績装置の内部における搬送媒体としては、糸の作動時における搬送方向とは逆向きの空気流がしばしば使用される。
【0012】
独国特許出願公開第102011053810号明細書には、例えば、搬送媒体が圧縮空気源によって生ぜしめられる空気紡績装置が記載されている。この公知の空気紡績装置では、圧縮空気は、空気紡績装置の紡績コーン内に組み込まれたインジェクション通路を通って流れ、このインジェクション通路は、例えば紡績コーンの糸引出し通路内に開口している。すなわち空気紡績装置による糸端部の戻し搬送のためには、インジェクション通路に圧縮空気が供給され、この圧縮空気は、紡績コーンの糸引出し通路において、ドラフト装置の方向に向けられた吸込み空気流を生ぜしめ、この吸込み空気流は、作業ユニットの綾巻きボビンから呼び戻された糸の糸端部を、空気紡績装置の上流に配置されたドラフト装置の供給ローラ対へと搬送する。
【0013】
空気紡績装置の紡績コーン内に組み込まれたこのようなインジェクション通路は、確かに、実に良好な機能確実性によって傑出しているが、しかしながら紡績コーン内に組み込まれたこのようなインジェクション通路の製造は、製造技術的に比較的要求が多く、ひいてはかなりコストが掛かる。
【0014】
回転する空気流を用いて糸を製造するための空気紡績装置は、独国特許出願公開第102007009074号明細書にも記載されている。この空気紡績装置もまた、紡績ハウジング内に配置された中空の紡績コーンと、回転する空気流を生ぜしめるための、圧縮空気供給可能なノズルブロックとを有している。しかしながらこの公知の空気紡績装置の紡績ハウジングは、さらに、排気通路を備えた拡大室を有している。糸継ぎ工程のために、排気通路には圧縮空気源が接続可能であり、これに対してノズルブロックは、同時に圧縮空気供給部から切離し可能である。すなわち、排気通路を介して紡績ハウジング内に吹き込まれる圧縮空気によって、拡大室内において空気流が生ぜしめられ、この空気流は、紡績コーンに沿って、ノズルブロック内に配置されたスライバガイドの方向に流れる。これによって紡績コーンの入口開口の領域においては吸込み作用が発生し、この吸込み作用によって、糸は紡績方向とは逆向きに紡績コーンを貫いて搬送可能である。
【0015】
すなわち、独国特許出願公開第102007009074号明細書に記載された空気紡績装置は、拡大室が、紡績プロセス中にノズルブロックを介してもたらされた圧縮空気を排出するために、排気通路を有していて、この排気通路が、糸継ぎ工程との関連において追加的にインジェクタノズルとして使用可能であるという事情を利用している。このような空気紡績装置の製造は、全体として比較的簡単であり、ひいては安価である。
【0016】
上に記載された空気紡績装置を備えた空気紡績機は、特に合成糸材料を加工する場合に、比較的良好な効率を有している。しかしながら公知の空気紡績装置において紡績中断後の再糸継ぎとの関連において使用される方法は、ドラフトされたスライバと既に製造された糸とを再び結合するために、かなり改善の余地がある。
【0017】
欧州特許出願公開第1072702号明細書に従来技術として例として記載されている空気紡績装置では、紡績中断後に、既に紡績された糸の糸端部が、搬送アームを用いて、スピンドルと呼ばれる紡績コーンの出口開口の近傍に搬送される。次いで糸は、糸走行方向において空気紡績装置の上流に位置決めされている吸込みエレメントによって吸い込まれる。すなわち糸は、紡績プロセス中に通常の糸走行方向とは逆向きに紡績コーンを通して搬送され、かつ吸込みエレメント内に吸い込まれる。吸込みエレメント内には、ドラフト装置において加工されてドラフト装置から進出するスライバもまた吸い込まれ、かつ吸込みエレメント内において糸と交絡させられる。互いに交絡させられた両繊維エレメントは、次いで最終的な結合のために、空気紡績装置の紡績コーン内に吸い込まれる。
【0018】
しかしながらこの公知の方法では、糸継ぎのための準備段階中に頻繁にエラーが発生し、これらのエラーは、糸継ぎの形成を邪魔するか、またはそれどころか阻止する。この公知の方法の別の欠点としては、糸とスライバとの間における結合部を含む糸部分が、明らかに認識できるほど、残りの糸よりも太いということがある。このような太い箇所は、例えば織布である最終製品において、しばしば不都合を生ぜしめるので、このような太い箇所は、重大な品質欠陥である。
【0019】
紡績中断後に、紡績された糸にドラフトされたスライバを結合するための同等の方法は、独国特許出願公開第10335651号明細書にも記載されている。
【0020】
この公知の方法では、紡績中断後に、紡績された糸は、まず後方に、つまり紡績プロセス中に通常の糸走行方向とは逆向きに、空気紡績装置の下流に配置された定置の引出しローラ対および空気紡績装置を通して、空気紡績装置の上流に設置された同様に定置のドラフト装置に搬送される。次に糸端部は、設定可能な長さで、ドラフト装置の、開放された出口ローラ対の間に位置決めされ、かつ糸端部が準備される。次いでドラフト装置の出口ローラ対は閉鎖され、ドラフト装置および引出しローラ対は始動させられ、これによって糸の、準備された糸端部は、スライバ内にローラによって押し込まれ、スライバに結合される。
【0021】
この公知の接合方法においても、残りの糸よりも太く、ひいてはかなりの品質欠陥である結合箇所が発生する。
【0022】
空気紡績装置の再糸継ぎ時におけるこのようなエラーの発生を最小にするために、さらに、空気紡績装置の糸継ぎ時に補助糸を用いて作業を行うことが既に提案されている。
【0023】
例えば独国特許出願公開第102005022187号明細書に記載されたこのような方法では、空気紡績装置内への補助糸の導入は2段階で行われる。第1段階において補助糸は、インジェクタ流を用いてまず上流からノズルブロックのスライバ通路を通して搬送され、かつ次いで第2段階において空気紡績装置の紡績コーン内に導入され、このとき紡績コーン内への補助糸の導入は、紡績コーンへの負圧供給によって行われ、この負圧は、紡績コーンの出口開口の領域に位置決めされている吸込み装置によって生ぜしめられる。
【0024】
この方法を実施するために使用される空気紡績装置は、シフト可能に支持された2つの構造コンポーネントから成っており、これらの構造コンポーネントは、ノズルブロックのスライバ通路内への補助糸の導入中に、かつ紡績コーン内への補助糸の導入時に、互いに幾分間隔をおいて位置決めされている。すなわち補助糸は、それぞれ手によって捕捉されて、ノズルブロックもしくは紡績コーン内に問題なく導入することができる。補助糸の導入後に、空気紡績装置は閉鎖され、糸継ぎ工程が開始される。このときドラフト装置においてドラフトされたスライバは、補助糸にローラによって押し付けられ、かつ補助糸と共に空気紡績装置を通して確実に搬送され、このとき新しい糸が形成される。次いで補助糸と補助糸/スライバの結合箇所とは、再び除去され、かつ新しい糸は、糸スプライシング装置を用いて、本来の糸とほぼ等しく、綾巻きボビンから呼び戻された上糸に結合される。
【0025】
独国特許出願公開第102005022187号明細書に記載された方法によって、糸継ぎ工程を空気紡績装置によってより確実に行うことができ、かつ品質的に良好な糸継ぎ箇所を形成することができる。しかしながらこの方法においても、上に記載された方法を好適に使用することができるようにするために必要な、作業ユニットにおける構造上のコストは、かなり高い。
【0026】
例として上に記載された空気紡績装置を出発点として、本発明によって、紡績中断後に、品質的に改善された新しいピーサ(Anspinner)の形成が、市販の空気紡績装置の使用下で可能になり、このとき所属の空気紡績装置がその構造上のコストに関して特に可能な限り安価に保たれていて、かつ確実に機能する可能性を提供することが望まれている。
【0027】
本発明の第1の態様によれば、そのために空気紡績装置を作動させるための方法であって、スライバ走行方向において空気紡績装置の上流に、スライバをドラフトするためのドラフト装置が配置されていて、かつ下流に、空気紡績装置を用いて紡績された糸を引き出すための、個別モータによって駆動可能な糸引出し装置が配置されている、方法が提案される。提案された方法によれば、紡績中断後に、紡績された糸の、一般的に綾巻きボビンと呼ばれる巻取りボビンに巻き取られた糸端部を、吸込みノズルを用いて回収し、かつスライバ走行方向において空気紡績装置の下流に配置された糸端部準備装置に移送する。糸端部準備装置において、糸端部を処理し、かつ次いで紡績コーンの出口開口の領域に引き渡し、この領域から糸端部を、個別モータによって駆動可能な糸引出し装置であって、そのために本発明によれば反転駆動可能に設計された糸引出し装置を用いて、紡績コーンの入口開口に搬送し、かつそこで空気紡績装置の内部において入口開口の上流に間隔をおいて位置決めする。次いで、該当する作業ユニットのドラフト装置を起動し、かつこのときスライバを、ノズルブロックのスライバガイドを通して、紡績コーンの入口開口の領域に搬送し、かつそこで紡績された糸の準備された糸端部に糸継ぎする。
【0028】
提案された方法の好適な構成は、従属請求項の対象である。
【0029】
提案された方法は、特に、空気紡績装置におけるコストの掛かる新しい開発を前もって必要とすることなしに、この方法を効果的に使用することができるという利点を有している。すなわち繊維機械構造に基づいて以前から公知で、かつ優良であることが判明している構造エレメント、つまり個別モータによって駆動可能な糸引出し装置、吸込みノズル、および/または保持兼解撚管のような構造エレメントの使用によって、公知の空気紡績装置の比較的簡単かつ僅かな変更を伴うだけで、比較的簡単な形式で、提案された方法の問題のない実施を可能にする、確実で安価な空気紡績装置を形成することができる。
【0030】
このときさらに提案された方法によって、糸継ぎ時に形成されたスライバ/糸結合部が、公知の方法の同等の結合部に対して品質的に改善されているということを保証することができる。
【0031】
好適な実施形態では、紡績されたもしくは完成した糸の、紡績中断後に巻取りボビンに巻き取られた糸端部を、それぞれ空気紡績機の作業ユニットのそれぞれの作業ユニットの構成部分である吸込みノズルを用いて回収する。
【0032】
しかしながら択一的に好適な実施形態では、巻取りボビンに巻き取られた糸端部を、空気紡績機の多数の作業ユニットを手掛ける走行可能なサービスアセンブリの構成部分である吸込みノズルを用いて回収することも提案されていてよい。
【0033】
このときそれぞれの作業ユニットに作業ユニット固有の吸込みノズルが配置されている好適な実施形態は、このような構造によって不要な待機時間を確実に回避することができ、このことが空気紡績機の効率にポジティブな影響を及ぼすという利点を有している。すなわち紡績機において複数の作業ユニットで同時に紡績中断が生じた場合でも、それぞれ該当する作業ユニットの吸込みノズルによって、巻取りボビンに巻き取られた糸を常に直ちに、空気紡績装置に呼び戻し、準備し、かつ次いで遅延なしに作業ユニットにおける糸継ぎ工程を開始することができる。
【0034】
吸込みノズルが、空気紡績機の多数の作業ユニットを手掛ける走行可能なサービスアセンブリの構成部分であると、これによって極めて安価な装置が得られる。しかしながらこのような場合には、1つの作業ユニットが長い時間手掛けられないままになるというおそれが生じることがある。なぜならば、サービスアセンブリはなお、同様に糸継ぎ工程を実施する必要がある他の作業ユニットにおいて使用中だからである。
【0035】
さらに別の好適な実施形態では、糸継ぎ工程のための糸端部の準備を行う糸端部準備装置は、紡績された糸の糸端部を糸継ぎ工程のために準備するためのいわゆる保持兼解撚管を有している。例えば独国特許出願公開第3518316号明細書または独国特許出願公開第10202781号明細書にかなり詳しく記載されているこのような保持兼解撚管は、以前から公知の、繊維機械構造において優良であることが判明している部材である。
【0036】
方法の別の利点が、別の好適な実施形態において与えられており、この実施形態では、スライバを確定して供給できるようにするために、作業ユニットのドラフト装置は、個別モータによって駆動可能である。さらに好ましくは、ドラフト装置は反転駆動可能であり、これによって必要な場合に、スライバ供給の変更、もしくは供給されたスライバの確定された引戻しを可能にすることができる。スライバのこのような確定された供給によって、一方ではスライバがまず比較的慎重に糸の準備された糸端部に接近させられて、この糸端部と結合されることを、かつ他方では所定の作動時間後に、言い換えればある一定の慣らし運転段階後に、空気紡績装置が再び通常の作業速度で製造することができることを、保証することができる。ドラフト装置および糸引出し装置の駆動は、好ましくは、互いに無関係に、例えば紡績機の中央制御装置を介して、または作業ユニット毎の固有の制御装置を介して制御可能であり、これによって、この両装置の、効果的でかつ必要に応じた共働を可能にすることができる。
【0037】
本発明の第2の態様によれば、好適な実施形態のうちの1つの実施形態による、特に上に記載された方法を実施するために、紡績装置と、例えば空気紡績機のような紡績機の、巻取りボビンを形成する巻取り装置との間に配置するための糸ガイド通路が提案され、このとき糸ガイド通路は、紡績装置と巻取り装置との間において延びる糸を通過案内するための貫通通路を形成している。糸ガイド通路は、互いに連結可能で空気圧供給可能な複数の通路部分を有していて、該通路部分は、少なくとも1つの第1の通路部分、第2の通路部分、および第1の通路部分と第2の通路部分との間に配置された通路接続部分を含んでおり、このとき通路接続部分は、第2の通路部分における空気圧による吸込み作用を伴って、第1の通路部分において空気正圧を生ぜしめるために糸ガイド通路に圧縮空気を供給するための流入部を含んでいる。第1の通路部分、第2の通路部分、および通路接続部分は、それぞれ個々のエレメントから形成されていても、またはまとめられた複数のエレメントから形成されていてもよい。それとは択一的にまたは追加的に、これらの部分のうちの少なくとも1つが、糸ガイド通路の少なくとも1つの別の部分との関連において、一体の統合された部材から形成されていてもよい。さらに択一的に、これらの部分のうちの少なくとも2つの部分が、一体の統合された部材から形成されていてよい。
【0038】
言い換えれば糸ガイド通路は、紡績装置と巻取り装置との間の、特に紡績装置と、通常紡績装置の下流に配置されている糸引出し装置との間の確定された領域に配置され得るように構成されており、このように構成されていると、これらの装置の間において延びている糸走路の少なくとも一部分は、糸ガイド通路を貫いて延びている。本発明の第1の態様による上に記載された方法に関して、好ましくは、糸ガイド通路の使用下で、紡績コーンの出口開口の領域への処理された糸端部の引渡しのステップと共に、糸端部を、糸ガイド通路を通して紡績コーンの出口開口の領域に引き渡す。糸端部の引渡しは、好ましくは個別モータによって反転可能に駆動される糸引出し装置を用いて行うことができる。
【0039】
通路接続部分に配置された流入部は、好ましくは特に、糸ガイド通路に挿入された糸端部を空気圧によって自動的に導くことを可能にする。流入部は、好ましくは孔としてまたはリング間隙として形成されていてよい。これによって第1および第2の通路部分の配置形態に依存して、挿入された糸端部を、紡績装置の方向かまたは巻取り装置の方向に空気圧によって導くことができる。
【0040】
好適な実施形態によれば、紡績装置の下流には、スライバ走行方向と同一の糸走行方向において、まず第1の通路部分が、次いで通路接続部分が、かつその後で第2の通路部分が配置されている。したがってこの好適な実施形態では、糸継ぎ工程中に、第2の通路部分内に挿入されている糸端部を、第1の通路部分を介して紡績装置の方向に空気圧によって導くことができる。
【0041】
択一的に好適な実施形態によれば、紡績装置の下流に、糸走行方向において、まず第2の通路部分が、次いで通路接続部分が、かつその後で第1の通路部分が配置されていてよい。このように構成されていると、この好適な実施形態では、スプライシング工程中に、第2の通路部分に挿入されている糸端部を、第1の通路部分を介して巻取り装置の方向に空気圧によって導くことができる。これによって、さらに好ましくは、糸ガイド通路と巻取り装置との間に、例えば巻取り機の技術分野に基づいて以前から公知の、2つの糸端部を結合するためのスプライシング装置が設けられていてよい。このときさらに好適な実施形態によれば、スプライシング装置は、紡績機の複数の作業ユニットを取り扱う1つのサービスアセンブリに設けられても、または作業ユニット毎に設けられてもよい。そのために、糸ガイド通路から導かれた糸端部をスプライシング装置にもたらすための単に1つの装置が付加的に設けられてよく、この装置は、例えば同様に巻取り機の技術分野に基づいて公知のグリッパ管である。このような好適な実施形態を用いて、糸切れの場合に糸継ぎプロセス(Anspinnprozess)を思いとどまることができ、かつ糸継ぎ(Fadenverbindung)を、スプライシング結合を用いて実施することが可能になる。
【0042】
択一的に好適な実施形態によれば、糸ガイド通路、好ましくは通路接続部分は、第2の流入部を有しており、この第2の流入部は、第1の流入部に抗して作用し、圧縮空気が糸ガイド通路内に、第1の通路部分の代わりに第2の通路部分において空気正圧を生ぜしめるために、第2の通路部分の代わりに第1の通路部分において空気圧による吸込み作用を伴って供給されるようになっている。本発明の意味では、以下において第1の通路部分というのは、対応配置された流入部を介した圧縮空気の供給によって、空気正圧が生ぜしめられる、糸ガイド通路の通路部分のことを意味している。相応に第2の通路部分というのは、対応配置された流入部もしくは別の流入部を介した圧縮空気の供給によって、吸込み作用が生ぜしめられる、糸ガイド通路の通路部分のことを意味している。したがって糸ガイド通路の同一の通路部分が、流入部または別の流入部を介した圧縮空気の供給に依存して、第1または第2の通路部分を形成する。そのために第1の流入部および第2の流入部は、好ましくは、必要に応じて制御されて圧縮空気が供給可能であるように設計されている。このような好適な実施形態によって、糸切れの場合に必要に応じて、糸継ぎプロセスとスプライシング結合との間で選択を行うことができる、装置を提供することができる。この選択は、スライバ裂断もしくは糸裂断の箇所に依存して糸継ぎプロセスが実施されるか、またはスプライシング結合が実施されるか、プログラム技術的にもしくは制御側において調節されるか、または調節可能であることができる。選択基準としては、もちろん繊維技術的に重要な別の基準を用いることができる。
【0043】
別の好適な実施形態によれば、糸ガイド通路、特に通路接続部分は、糸を変向させるための糸変向部分を有している。このとき糸ガイド通路の1つの通路部分、特に第1の通路部分の貫通軸線は、通路部分もしくは第1の通路部分において延びている糸走路もしくは糸ガイド軸線に沿って延在している、糸変向部分の側において、糸ガイド通路の、糸変向部分の他方の側に配置された通路部分、特に第2の通路部分の相応の貫通軸線に対して、投影平面において横方向に、つまり180°とは異なる角度を成して延びている。これによって糸ガイド通路および全体的に紡績機を、糸ガイド通路の領域においてスペースを節減して構成することができる。
【0044】
別の好適な形式では、流入部は、流入開口によって形成された貫通平面に対して垂直に延びている、流入部の貫通軸線が、糸ガイド軸線もしくは第1の通路部分の貫通軸線に平行に、さらに好ましくは一致して、かつ第2の通路部分の糸ガイド軸線に対して横方向に延びているように、設けられていてかつ糸ガイド通路を備えて形成されていてよい。このように構成されていると、正圧作用および吸込み作用をそれぞれの第1および第2の通路部分において、さもなくば生じる不都合な渦流を回避しながらもしくは低減することによって、効果的に生ぜしめることができる。さらに流入部と共働する圧縮空気接続部を、外側から問題なく接近可能に糸ガイド通路に配置すること、または糸ガイド通路を備えて形成することができる。
【0045】
さらに糸ガイド通路は、好適な実施形態によれば、紡績機の作業ユニットのハウジング部分またはフレーム部分に糸ガイド通路を特に解離可能に固定するための固定部分を有していてよい。糸ガイド通路は、モジュラ式に紡績機に配置することができ、かつさらに好適な実施形態によれば、必要な場合にまた交換すること、もしくは取り外すことができる。
【0046】
さらに好ましくは、固定部分は、少なくとも糸変向部分を収容するためのハウジングを形成しているか、またはこのようなハウジングに配置されている。このように構成されていると、糸ガイド通路を比較的コンパクトに構成することができる。例えばハウジングはさらに、流入部もしくは別の流入部に対応配置された圧縮空気接続部を有することができる。さらに好ましくは、ハウジングは、糸ガイド通路の、糸走行方向において紡績装置の最も近くに位置している通路部分に、場所を提供することができ、これによって、例えばOリングまたはこれに類したもののような追加的なシール手段を減じることができ、かつ糸ガイド通路自体を構造的に比較的単純に構成することができる。
【0047】
別の好適な実施形態によれば、糸端部を準備するための、少なくとも1つの保持兼解撚管を備えた糸端部準備装置が設けられており、このとき保持兼解撚管は、糸ガイド通路の、巻取りボビンに近い方の端部に配置されているか、または形成されている。保持兼解撚管は、以前から公知であり、したがって以下においては、保持兼解撚管の構成の詳細な記載について省くことができる。糸継ぎ工程中に糸端部は、通路接続部分内への進入前に、保持兼解撚管を用いてまず解撚され、もしくは準備され、かつ次いで、既に解撚されたもしくは準備された状態において紡績装置の方向に導かれることができる。
【0048】
好ましくは、少なくとも1つの保持兼解撚管は、糸ガイド通路の1つの通路部分、特に
第2の通路部分を形成している。これによって糸ガイド通路を、比較的コンパクトにかつ構造的にさらに簡単化して構成することができる。このとき流入部は、さらに好ましくは、保持兼解撚管に隣接して配置されていてよい。これによって、単に糸端部を解撚もしくは準備するためにだけ設けられている圧縮空気接続部を節約することができる。なぜならば流入部を用いて、一方では、糸端部の解撚もしくは準備を伴って、保持兼解撚管内への糸端部の挿通を可能にすることができ、かつ他方では、第1の通路部分を介して紡績装置内へ準備された糸端部を空気圧によって導くことを可能にすることができるからである。このとき圧縮空気供給は、解撚プロセスおよび糸ガイド工程のために場合によっては種々様々に必要な圧縮空気強度を自動的に準備するために、好ましくは自動的に調整されていてよい。そのために必要な場合にさらに好ましくは、存在する圧縮空気強度を検出するための圧縮空気センサが、適宜に配置されていてよい。
【0049】
さらに好ましくは、1実施形態によれば、糸ガイド通路の、紡績装置に近い方の端部が、ノズル状に形成されているか、またはノズル状に形成されたエレメントに隣接している。糸ガイド通路のノズル状の端部は、好適な実施形態によれば、糸走行方向において紡績装置の最も近くに位置している通路部分の相応の端部によって形成されていてよい。ノズル状のエレメントは、好ましくは、ノズル状のエレメントが挿入エレメントを形成していて、この挿入エレメントがさらに好ましくは糸ガイド通路において障害なしに挿入可能および取外し可能であるように形成されていてよい。このように構成されていると、糸ガイド通路自体を交換する必要なしに、製造すべき糸に相応して、適宜なノズル端部を、紡績装置の方向において糸端部を確定して空気圧によって案内するために使用することができる。
【0050】
さらに好ましくは、糸ガイド通路の、紡績装置に近い方の端部、もしくはノズル状のエレメントが、紡績装置に通じる糸ガイドホッパのホッパ入口に対して間隔をおいて配置されており、このときこの間隔は、糸ガイド通路もしくはノズル状のエレメントの、紡績装置に近い方の端部から進出する糸端部が、通路接続部分において生ぜしめられた圧縮空気を用いて少なくともホッパ入口内に、案内可能であるように選択されている。このように構成されていると、糸端部を伴う圧縮空気は、糸ガイド通路からの進出時および紡績装置の領域への進入前に、その強さが適宜に弱められる、もしくはコントロールされることができる。好ましくは、紡績装置の方向においてホッパ入口には、少なくとも1つの別の糸貫通部が続いており、この別の糸貫通部の糸貫通部入口は、紡績装置の方向においてホッパ入口に続くホッパ出口に対して間隔をおいて配置されている。このように構成されていると、糸端部を伴う圧縮空気の強さを、必要に応じてコントロール可能なさらなる弱化を達成することができる。
【0051】
本発明の第3の態様によれば、空気紡績機が提案され、この空気紡績機は、供給されたスライバから糸を紡績するための空気紡績装置、空気紡績装置から糸を引き出すための、個別モータによって駆動可能な糸引出し装置、および紡績された糸を巻き取るための巻取り装置を含んでいる。空気紡績機は、さらに、上に記載された好適な実施形態のうちの1つの実施形態による糸ガイド通路を有しており、このとき糸ガイド通路は、空気紡績装置と、下流に配置された巻取り装置との間、特に空気紡績装置と、巻取り装置の上流に配置された、個別モータによって駆動可能な糸引出し装置との間に配置されている。糸引出し装置は、空気紡績装置の方向に糸を供給するために、追加的に反転可能に、かつ相応に駆動制御可能に設計されている。択一的な実施形態によれば、糸引出し装置は、個別モータによって駆動可能な巻取り装置によって形成されていてよい。第3の態様によるこのような空気紡績機によって、上に記載された利点を同様に得ることができる。
【0052】
次に本発明について、図面に示された実施例を参照しながら詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】作業ユニットを備えた空気紡績機であって、作業ユニットが、その空気紡績装置を手掛けるためにそれぞれ作業ユニット固有の吸込みノズルおよび糸端部準備装置を有している、空気紡績機を示す正面図である。
【
図2】走行可能なサービスアセンブリによって手掛けられる作業ユニットを備えた空気紡績機であって、このときサービスアセンブリが、綾巻きボビンに巻き取られた糸を回収するための吸込みノズルと糸端部準備装置とを有している、空気紡績機の択一的な実施形態を示す正面図である。
【
図3】紡績作動中の空気紡績装置を概略的に示す断面図である。
【
図4】糸継ぎ工程中における、
図3に示された空気紡績装置を示す図である。
【
図5】
図1および
図2に示された空気紡績機のような空気紡績機において使用することができる、1実施例による糸ガイド通路を示す図である。
【
図6】1実施例による糸ガイド通路を断面して斜め上から見た図である。
【
図7】
図6に示された糸ガイド通路を断面して斜め横から見た図である。
【
図8】
図6および
図7に示された糸ガイド通路のような糸ガイド通路を、空気紡績機の作業ユニットに取り付けられた状態で示す図である。
【0054】
図1には、通常、綾巻きボビン9と呼ばれる巻取りボビンを製造する繊維機械、本実施形態では空気紡績機1が、正面図で概略的に示されている。このような繊維機械1は、機械端部側に配置された機械フレーム13A,13Bの間に、多数の作業ユニット2を有している。列を成して並んで配置されていて通常同一に形成されているこれらの作業ユニット2は、紡績ユニットとしても公知である。作業ユニット2のそれぞれの作業ユニットには、紡績ケンス3が位置決めされており、この紡績ケンス3は、供給材料を蓄えて、例えばスライバ25を備えて構成されている。
【0055】
作業ユニット2は、さらにそれぞれドラフト装置4、空気紡績装置5、糸引出し装置6、糸クリアラ7、および糸綾振り装置8を有しており、糸綾振り装置8は、空気紡績装置5においてスライバ25から紡績されたもしくは完成した糸36を、綾巻き状態で巻取りボビン9に巻成するために働く。このとき紡績プロセス中に生じるいわゆる綾巻きボビン9は、それぞれ、通常のように、ボビンフレーム(図示せず)において保持され、かつボビン駆動装置(同様に図示せず)によって回転させられる。
【0056】
作業ユニット2のそれぞれの作業ユニットは、さらに吸込みノズル39を備えて構成されていて、この吸込みノズル39は、完成した糸36の、紡績中断後に綾巻きボビン9に巻き取られた糸端部37を回収すること、および糸引出し装置6の領域に配置されたいわゆる糸端部準備装置40に移送することを可能にする。
【0057】
空気紡績機1の、
図2に示された実施形態が、
図1に示された空気紡績機に対して異なっているのは、単に次のことである。すなわち
図2に示された空気紡績機1では、紡績ユニット2は、作業ユニット固有の吸込みノズルも、作業ユニット固有の糸端部準備装置も有しておらず、紡績中断後における作業ユニット2での作業は、自動的に作動するいわゆるサービスアセンブリ10によって手掛けられ、このサービスアセンブリ10は、レール11,12上を案内され、かつ作業ユニット2に沿って走行可能である。すなわち紡績中断の場合にサービスアセンブリ10は、該当する作業ユニット2に位置決めされていて、その吸込みノズル39は、紡績中断後に綾巻きボビン9に巻き取られた糸36の糸端部37を回収し、かつ回収された糸端部37を、サービスアセンブリ固有の糸端部準備装置40に移送する。次いでサービスアセンブリ10の糸端部準備装置40において、糸36の糸端部37は、後続の糸継ぎ工程(Anspinnvorgang)のために準備される。
【0058】
しかしながら実施例において図示されていない別の実施形態では、サービスアセンブリの吸込みノズルが、回収された糸を作業ユニット固有の糸端部準備装置に引き渡すことも提案されてよい。
【0059】
図3には、通常の紡績プロセス中における、好適な実施例による方法を実施するために適した空気紡績装置5が、側面図および拡大図で示されている。
【0060】
図面から分かるように、断面図で示された空気紡績装置5の上流には、スライバ25をドラフトするためのドラフト装置4が配置されている。スライバ走行方向Rにおいて空気紡績装置5の下流には、個別モータによって反転駆動可能な糸引出し装置6が設置されており、この糸引出し装置6は、完成した糸36を、巻取りボビン9の方向にかつそれとは逆方向に搬送することができるように作用する。
【0061】
さらに糸引出し装置6の領域には、
図3および
図4には示されていない糸準備装置40が配置されており、この糸準備装置40は、完成した糸36の、吸込みノズル39によって呼び戻された糸端部37を、後続の糸継ぎ工程のために準備する。
【0062】
このような糸端部準備装置40は、原則的に公知であり、かつ例えば独国特許出願公開第3518316号明細書および独国特許出願公開第10202781号明細書にかなり詳しく記載されている。
【0063】
図5を参照しながら後で詳しく述べるように、このような糸端部準備装置40は、空気供給可能な保持兼解撚管31を有している。
【0064】
図3に示されているように、空気紡績装置5は主として、2部分から成る外側ハウジング14,15、拡張ハウジング16、ノズルブロック17、スライバガイド18、および中空の紡績コーン19から成っている。
【0065】
このとき拡張ハウジング16は、外側ハウジングの上流側のハウジング部分14との関連において、空気圧管路21を介して正圧源22に接続されている上流側のリング室20を形成しており、かつ外側ハウジングの下流側のハウジング部分15との関連において、拡大室28を形成している。
【0066】
拡大室28が排気通路29を介して周囲雰囲気に間接的に接続されているのに対して、リング室20は、ノズルブロック17に配置されている少なくとも1つの吹出し空気ノズル23に空気圧的に連通するように接続されている。
【0067】
このとき吹出し空気ノズル23は、紡績コーン19の入口開口35の領域に接線方向で紡績コーン19のヘッド24に向けられていて、紡績コーン19において回転する空気流が生じるようになっている。紡績コーン19は、好ましくは高耐摩耗性の材料、例えばテクニカルセラミックス材料から成っている。
【0068】
圧縮空気供給を制御するために、空気圧管路21は弁32を備えており、この弁32の操作は、好ましくは、相応の制御導線を介して弁に接続されている紡績ユニット固有の制御装置38によって行われる。
【0069】
図3に示された、通常の公知の紡績工程中に、それぞれ紡績ケンス3に蓄えられたスライバ25は、綾巻きボビン9への途中で、まずドラフト装置4を通過し、このドラフト装置4において強くドラフトされる。次いでドラフト装置4の出口ローラ対26を介して、ドラフトされたスライバ25は、空気紡績装置5の入口開口27の領域に移送させられ、かつそこに存在する負圧流の影響下で空気紡績装置5内に吸い込まれる。空気紡績装置5の内部において、ドラフトされたスライバ25は、スライバガイド18およびノズルブロック17を介して、中空の紡績コーン19の入口開口35に達し、かつ紡績コーン19の内部において形成される糸36によって紡績コーン19内に引き込まれる。このときスライバ25は、紡績コーン19のヘッド24の領域において、ノズルブロック17から流出する空気流によって生ぜしめられる回転流の影響を受ける。
【0070】
圧縮空気源22によって生ぜしめられたこの空気流の、ノズルブロック17への確定された供給のために、弁32が開放されている。紡績プロセス中に、ノズルブロック17を介して流入する空気流を、排気通路29を通して周囲雰囲気に、または機械固有の吸込み部に流出できるようにするために、相応の制御導線を介して制御装置38に接続された弁34が開放されている。
【0071】
紡績プロセス中に、スライバ走行方向Rにおけるスライバ25の連続的な移動に基づいて、スライバ25は、中空の紡績コーン19内に連続的に引き込まれ、このとき縁部繊維は、スライバ25の芯繊維の周りに螺旋形状に巻き付けられる。これによって完成した糸36は、糸引出し装置6を用いて空気紡績装置5から引き出され、次いで綾巻きボビン9に巻き取られる。
【0072】
紡績プロセス中に、例えばスライバ25の裂断に基づいて、または既に紡績された糸36の、糸クリアラ7によるコントロールされた切断に基づいて、紡績中断が発生すると、紡績プロセスの新規スタートの前に、まず糸継ぎ工程を実施しなければならない。
【0073】
糸継ぎ工程を実施するためには、公知のように、ドラフトされたスライバ25と、綾巻きボビン9に巻き取られた、既に完成した糸36とが必要になる。
【0074】
本発明による方法によれば、実施例の形態では、紡績中断後にまず、例えば該当する作業ユニット2の、作業ユニット固有の吸込みノズル39によって、既に完成した糸36の糸端部37が、綾巻きボビン9から呼び戻され、かつ例えば
図5~
図8に示されているように、保持兼解撚管31を備えた、好ましくはスライバ走行方向Rにおいて空気紡績装置5の下流に配置された糸端部準備装置40に移送させられる。保持兼解撚管31において糸端部37は、十分に撚りが解され、かつルーズな繊維が除去される。
【0075】
図5~
図7から詳細に看取できるように、糸端部準備装置40はそのために、収容ハウジング47内に配置された保持兼解撚管31を有している。収容ハウジング47は、リング室46を有しており、このリング室46には、空気圧管路41を介して圧縮空気源42が接続されている。空気圧管路41内には、弁43が配置されていて、この弁43は、制御導線44を介して、例えば作業ユニット2の、(
図5~
図7には図示されていない)制御装置38に接続されている。保持兼解撚管31は、リング室46に接続されている少なくとも1つの吹出しノズル45を備えている。
【0076】
自体公知のように、糸は、糸継ぎ工程のためにその糸端部を準備するために、まず保持兼解撚管31内に導入されねばならない。すなわち吸込みノズル39によって綾巻きボビン9から呼び戻された糸36は、吸込みノズル39において、糸36が空気圧によって保持兼解撚管31内に挿通され得るように、糸端部準備装置40のところで準備される。そのために糸端部準備装置40は、例えば
図5~
図7において示唆されているように、少なくとも1つの切断装置50と共働することができ、この切断装置50は、呼び戻された糸36を必要に応じて所定長さに切断する。切断工程の間、弁43は駆動制御され、吹出しノズル45を介して圧縮空気が保持兼解撚管31内に吹き込まれ、これによって切断された糸端部37を、保持兼解撚管31内に空気圧によって挿通すること、もしくは吸い込むことができる。挿通された糸端部37は、保持兼解撚管31内において糸撚りが解され、かつ繊維が除去される。必要な場合には、同様にクランプ装置が設けられていてよく、このクランプ装置は、切断工程の前に糸を公知の形式でクランプする。このときクランプ装置は、さらに好適な形式では、切断装置と組み合わせられていてよい。
【0077】
図5~
図8によってさらに示されているように、糸端部準備装置40は、糸36を通過させるための糸ガイド通路60に連結されており、このとき糸ガイド通路60は、スライバ走行方向Rにおいて空気紡績装置5と糸端部準備装置40との間で、糸端部準備装置40に直ぐ隣接して配置されている。スライバ走行方向Rは、空気紡績機の、糸36が空気紡績装置5を用いて紡績される紡績作動時における糸の走行方向と同一である。
【0078】
図5に示された実施例による糸ガイド通路60は、通路接続部分66を介在させて第1の通路部分62と第2の通路部分64とを有している。第1の通路部分62および通路接続部分66は、ハウジング70によって収容されている。ハウジング70は、例えば
図8に示されているように、空気紡績機1の作業ユニット2のフレームまたはハウジング100に糸ガイド通路60を固定するための固定部分(図示せず)を有している。第2の通路部分64の第1の端部64Aは、Oリング80を介在させてハウジング70内において密に終端している。第2の通路部分64の第2の端部64Bは、
図5に示された実施例によれば、別のOリング80を介在させて糸端部準備装置40の収容ハウジング47内において密に終端しており、このとき第2の端部64Bは、保持兼解撚管31の対応配置された端部に直に接触しており、かつこの端部と共に、糸36もしくは糸端部37のための共通の通路貫通部を形成している。
【0079】
通路接続部分66は、第1の通路部分62と第2の通路部分64との間において糸36を変向させるための糸変向部分67を含んでいる。糸変向部分67は、横断面において円弧状に構成されていて、このとき第2の通路部分64の、ハウジング70内に進入していてかつ通路接続部分66に接続されている第1の端部64Aは、横断面において円弧形状の糸変向部分67を介して、第1の通路部分62の、通路接続部分66に結合された第1の端部62Aに、空気紡績装置5と糸端部準備装置40との間において糸36を通過させるために連結されている。これによって糸ガイド通路60は、糸走路を部分的に取り囲む部分を形成している。これによってさらに第1の通路部分62と第2の通路部分64との間には、180°未満の角度、図示の実施例では90°未満の角度が形成されている。これによって糸ガイド通路60は、コンパクトに形成可能である。このとき固定部分は、糸ガイド通路60の、角度を成している側とは反対の側に問題なく設けることができる。
【0080】
さらにハウジング70は、例えばインジェクタとして形成された圧縮空気接続部72のための収容部を含んでおり、このインジェクタを用いて圧縮空気は、流入部68を介して第1の通路部分62に、空気正圧を生ぜしめるために供給可能であり、このとき同時に、第2の通路部分64内において吸込み作用が発生する。流入部68は、第1の通路部分62の第1の端部62Aに隣接していて、圧縮空気を、特に第1の通路部分62の糸ガイド軸線に平行に、特に一致するように、かつ第2の通路部分64の糸ガイド軸線に対して横方向に供給する。このとき糸ガイド軸線は、糸がそれに沿って糸ガイド通路60内においてもしくはそれぞれの通路部分62,64,66において案内される軸線である。
【0081】
第1の通路部分62の第2の端部62Bは、ハウジング70内に収容されたノズルインサート74に隣接していて、このノズルインサート74は、好ましくは破壊なしに交換可能に挿入・取外し可能である。このノズルインサート74を介して、第1の通路部分62から圧縮空気によって導かれた糸端部37は、ノズルインサート74の出口に対して間隔をおいて反対側に位置しているホッパ入口76の方向に吹き込まれる。ノズルインサート74の出口とホッパ入口76との間の間隔は、1実施例によれば、互いに相対的に変化不能であり、かつ別の実施例によれば特に可変に調節可能であり、これによって糸端部37を導く圧縮空気の強度を低減させることができる。言い換えれば、糸端部37を導く圧縮空気の一部分は、ノズルインサート74の出口とホッパ入口76との間に形成された中間室において逃げ、これに対して残りの圧縮空気の部分は、糸端部37をホッパ入口76内に導く。ホッパ入口76には、空気紡績装置5の方向においてこの実施例によれば2つの別の糸貫通部77,78が、圧縮空気の確定された部分を逃がすためにそれぞれ別の中間室の間に形成されており、その後で糸端部37は、スライバ走行方向もしくは糸走行方向Rとは逆向きに空気紡績装置5内に進入することができる。間に位置している糸貫通部77,78を備えたホッパ入口76は、固定ねじ79を用いてハウジング70と空気紡績装置5との間において保持されている。固定ねじ79を用いて、空気紡績装置5とハウジング70とは互いに連結されている。特に別の実施例によれば、ホッパ入口76および/または間に位置している糸貫通部77,78の位置は、固定ねじに沿って可変に、必要に応じて調節することができ、これによって個々の部分における逃げる圧縮空気の割合を調節することができる。これらの実施例のうちの1つの実施例による配置形態を用いて、糸もしくは準備された糸端部37は、丁寧に空気紡績装置5へと導かれることができる。上に述べたように準備されて空気紡績装置5に移送された糸端部37は、次いで、ドラフト装置4から供給されたスライバ25に結合される。
【0082】
このとき、準備された糸端部37が、
図4に示すように、紡績コーン19の入口開口35の上流に幾分間隔をおいて空気紡績装置5の内部において位置決めされると、糸端部37の供給が終了する。糸端部37が常に整然と位置決めされることを保証するために、糸引出し装置6は、個別モータによって、例えばステップモータを介して駆動されており、このときステップモータは、ステップモータのステップの数の検出を用いて糸引出し装置6が、反転可能に、つまり紡績作動時における糸引出し方向とは逆向きに駆動されるように、駆動制御され、これによって糸端部37の、確定された必要に応じた戻しを、糸ガイド通路60内における空気流を伴って、糸引出し装置6から空気紡績装置5に向かう方向に沿って、設定された位置に至るまで生ぜしめることができる。好ましくは、ノズルブロック17および紡績コーン19の入口開口35の領域には、制御装置38に接続されたセンサが設けられていてよく、このセンサを用いて、糸端部37の整然とした位置決めをさらに確認することができる。
【0083】
糸端部37がその設定された位置に達するや否や、制御装置38は、ノズルブロック17に圧縮空気が再び供給されるように、弁32,34の切換えを指示する。同時に、同様に個別モータによって駆動されるドラフト装置4および糸引出し装置6が駆動制御され、これによってスライバ25の自由端部がまず、糸36の準備された糸端部37と接触させられ、スライバ25は、糸36の準備された糸端部37と交絡させられ、かつこのとき互いに結合されて、引出し可能な新しい糸が形成され、この糸は、糸引出し装置6を用いて確定されて空気紡績装置5から引き出すことができる。これによって糸継ぎ工程は、通常の紡績プロセスに移行する。
【0084】
図6および
図7には、別の実施例による糸ガイド通路90が示されている。この糸ガイド通路90は、
図5に示された糸ガイド通路60とは、構造的に主として流入部98の配置箇所によって異なっている。詳しく言えば、流入部98は、
図5に示された糸ガイド通路60との比較において、糸走行方向Rにおいて保持兼解撚管31の上流に位置する部分に配置されている。流入部98は、糸走行方向Rとは逆に向けられたリング間隙の形態で構成されており、これによって吹き込むべき圧縮空気を、空気紡績装置5の方向で、もしくは糸走行方向Rとは逆の方向で、糸ガイド通路60内に導入することができる。流入部98を含む通路部分は、本発明の意味において、糸ガイド通路90の通路接続部分96を形成している。通路接続部分96は、別のリング室97を含んでおり、この別のリング室97は、圧縮空気を供給するために流入部98に連結されている。リング室97は、収容ハウジング47に形成された開口48を介して別の空気圧管路92に連結されており、この別の空気圧管路92は、収容ハウジングの、別の空気圧管路92のために設けられた収容部49において開口48に隣接して終端している。
【0085】
この実施例では、通路接続部分96は、保持兼解撚管31の近傍において、第2の通路部分94を介在させて配置されている。第2の通路部分94は、この実施例では、間に配置されたノズルエレメント93を介して、糸端部37を通過させるために、保持兼解撚管31に連結されている。
【0086】
通路接続部分96は、第2の通路部分94とは反対の側において、第1の通路部分92に隣接している。第1の通路部分92は、この実施例では結果的に、
図5に記載された糸ガイド通路60の第2の通路部分64と構造的に同一に構成されている。図示されていない別の実施例によれば、択一的な形式で第1の通路部分92は、通路接続部分96と一体に構成されていてよい。
【0087】
第1の通路部分92には、空気紡績装置5の方向においてハウジング70が続いており、このハウジング70は、
図5との関連において説明された、糸変向部分67およびノズルインサート74を備えたハウジング70とほぼ同様に、しかしながら流入部68および流入部68に通じるインジェクタ72なしに形成されている。この関係において、この実施例によるハウジング70およびノズルインサート74の構成を見ながら、後続の記載との関連において上に述べた記載が参照される。
【0088】
図6に明確に示されているように、糸変向部分67には、カバーエレメント71によって閉鎖された貫通部が通じており、この貫通部を介して糸変向部分67、ひいては糸変向部は接近可能である。したがって貫通部を介して、処理すべき糸種類に依存して、種々様々に形成された糸変向部分67が、ハウジング70内に挿入可能もしくは交換可能にハウジング70のために準備されていてよい。別の実施例によれば、ハウジング70における糸変向部分67の固定は、カバーエレメント71を用いて行うことができる。
【0089】
糸変向部分67は、この実施例ではほぼ双円錐形に、また公知のようにディアボロ形状として形成されている。この特殊に双円錐形状の構成および糸変向部分67のそれぞれ他の形状は、案内すべき糸種類に相応して適宜に選択されていてよい。例えば双円錐形状の、糸ガイド面部分に通じる側面は、糸の要求に応じて横断面で見て、凹面状または凸面状の湾曲を有していてよく、またはさらに択一的に横断面で見て直線的に形成されていてよい。糸ガイド面部分の、糸変向方向に対して垂直に延びている幅は、処理すべき糸種類に合わせられて適宜に選択されていてよい。糸変向部を形成する半径もまた、糸種類に合わせられて適宜に選択されていてよい。
【0090】
ハウジング70には、空気紡績装置5の方向においてさらに、
図5におけるように示されていて
図5との関連において説明された形式で、ノズルインサート74、ホッパ入口76、および別の糸貫通部77,78が続いている。
【0091】
図8には、
図5~
図7に示された糸ガイド通路60のような糸ガイド通路が、空気紡績機1の作業ユニット2に取り付けられた状態において例示されている。特に、糸ガイド通路60の変向された構成が、この実施例によればスペースを節減して、作業ユニット2に配置された残りの装置の間に配置可能であることが明らかになる。
【0092】
糸ガイド通路は、図示されていない実施例によれば、例えば第2の通路部分が保持兼解撚管に組み合わせられていて、保持兼解撚管が第2の通路部分を形成するようにすることによって、さらによりコンパクトに構成可能であり、このとき流入部は、例えばリング間隙の形態で保持兼解撚管の端部に位置決めされる、もしくは保持兼解撚管の端部領域に形成される。これによって圧縮空気を、流入部を介して供給することができ、これにより一方では、吸込みノズル39を用いて提供された糸端部を吸い込むこと、および糸端部37を直接準備することもしくは解撚することができ、かつ他方では、準備された糸端部37を糸ガイド通路60において空気圧によって導くことができる。これによって糸端部37の、丁寧な、もしくはほとんど雑ではない準備を達成することができる。さらに、糸端部37の解撚のためにだけ設けられねばならない圧縮空気接続部を節約することができる。
【0093】
記載されかつ図面に示された実施例は、単に例として選択されている。種々様々な実施例を、完全に、または個々の特徴に関連して互いに組み合わせることができる。また1実施例を、別の実施例の特徴によって補足することも可能である。例えばハウジングは、旋回ジョイントとして形成されていてよく、これによって糸変向部分を介して形成される角度を、必要に応じて設置現場において、かつ/または設置工程において変更することができる。それとは択一的に、流入部または追加的に別の流入部は、第1の通路部分の領域において、圧縮空気供給が第1の通路部分の糸ガイド軸線に対して横方向に行われるように、配置されかつ構成されていてよい。さらに1実施例によれば、第1の通路部分と第2の通路部分とは、異なった平面において延びていてよく、このように構成されていると、吸込みノズルが、捕捉された糸端部を糸端部準備装置の領域に供給するために、ドラフト装置および第2の通路部分のそばを確実に妨げられずに通過することを保証することができる。
【0094】
1つの実施例が、第1の特徴と第2の特徴とを「および/または」で結んでいる場合には、この実施例は、1つの実施形態によれば第1の特徴と第2の特徴とを有しており、かつ別の実施形態によれば、単に第1の特徴だけ、または単に第2の特徴だけを有していると理解することができる。