(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】燃料電池装置、制御装置および制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04291 20160101AFI20220708BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20220708BHJP
H01M 8/04664 20160101ALI20220708BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20220708BHJP
H01M 8/04701 20160101ALI20220708BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20220708BHJP
H01M 8/04955 20160101ALI20220708BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20220708BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20220708BHJP
【FI】
H01M8/04291
H01M8/04 J
H01M8/04664
H01M8/0432
H01M8/04701
H01M8/04 Z
H01M8/04746
H01M8/04955
H01M8/10 101
H01M8/12 101
(21)【出願番号】P 2020509870
(86)(22)【出願日】2019-03-13
(86)【国際出願番号】 JP2019010279
(87)【国際公開番号】W WO2019188294
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-09-16
(31)【優先権主張番号】P 2018068880
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000109026
【氏名又は名称】ダイニチ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】白石 晋平
(72)【発明者】
【氏名】小林 和明
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-004085(JP,A)
【文献】特開2005-122959(JP,A)
【文献】特開2011-034701(JP,A)
【文献】特開2014-207060(JP,A)
【文献】特開2009-252594(JP,A)
【文献】特開2010-238485(JP,A)
【文献】特開2010-277973(JP,A)
【文献】特開2008-16320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04- 8/0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、
該燃料電池より排出される排ガスから回収した水を前記燃料電池へ供給するために貯留する第1タンクと、
前記第1タンク内の水面の高さを検出する水位検出装置と、
前記燃料電池および該燃料電池に付随する各補機の動作を制御する制御装置と、
前記第1タンクに外部から水を補給する水補給装置と、
前記排ガスと熱交換される熱媒を貯留する第2タンクと、
前記第2タンク内の熱媒の温度を測定する熱媒温度測定装置と、を備える燃料電池装置であって、
前記水補給装置は、
前記第1タンクに外部から補給される水を流過させる水補給流路と、
該水補給流路中に位置するイオン交換樹脂と、
該イオン交換樹脂が破過したことを判定する破過判定装置と、を有し、
前記制御装置は、
前記第1タンク内の水位が予め決められた第1所定水位以下となった場合に、前記排ガスから回収される水の量が増加するように、前記各補機の動作を制御する第1制御、および、
前記第1タンクから前記燃料電池へ供給する水の量が減少するように、前記各補機の動作を制御する第2制御、のうち、
少なくとも一方の制御を行う水回収運転制御を実行し、
該水回収運転制御が開始されてから予め決められた第1所定時間経過した後、前記水位検出装置で測定された前記第1タンク内の水位が、前記第1所定水位以下である場合、前記破過判定装置により、前記イオン交換樹脂が破過しているか否かを判定する破過判定制御を実行し、該破過判定制御において、前記イオン交換樹脂が破過していないと判定されたとき、前記水補給装置によって前記第1タンクに所定量の外部の水を補給する補水制御を実行し、前記破過判定制御において、前記イオン交換樹脂が破過していると判定されたとき、前記燃料電池装置の発電運転を停止する制御を実行し、
前記制御装置は、
予め決められた
、外気温が低い時間帯に含まれる所定の第1時刻になった時、前記燃料電池装置の発電運転を再び開始させる第1運転再開制御と、
前記熱媒温度測定装置で測定された熱媒温度が予め決められた第1所定温度以下であった時、前記燃料電池装置の発電運転を再び開始させる第2運転再開制御と、を実行可能であり、
前記制御装置は、前記発電運転を停止する制御を実行した後、前記第1運転再開制御および前記第2運転再開制御のうち、いずれか一方の運転再開制御を実行する、燃料電池装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記発電運転の停止から、予め決められた第2所定時間の待機後、前記第1運転再開制御および前記第2運転再開制御のうち、いずれか一方の運転再開制御を実行する、請求項1に記載の燃料電池装置。
【請求項3】
前記第2タンク内の熱媒を冷却する冷却装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記燃料電池装置の発電運転を停止する制御を実行した後であって、前記運転再開制御を実行後に実行される、前記燃料電池装置の発電運転をするための準備である起動準備制御を実行する前に、前記熱媒を冷却する熱媒冷却制御を実行する、請求項1または2に記載の燃料電池装置。
【請求項4】
燃料電池を備える燃料電池装置を制御する制御装置であって、
燃料電池より排出される排ガスから回収される水の量が増加するように、前記燃料電池に付随する各補機の動作を制御する第1制御と、
燃料電池より排出される排ガスから回収した水を該燃料電池へ供給するために貯留する第1タンクから前記燃料電池へ供給する水の量が減少するように、前記燃料電池に付随する各補機の動作を制御する第2制御と、
前記第1タンクに外部から水を補給する水補給装置によって前記第1タンクに所定量の外部の水を補給する補水制御と、
前記第1タンクに外部から補給される水を流過させる水補給流路中に位置するイオン交換樹脂が破過しているか否かを判定する破過判定制御と、
予め決められた
、外気温が低い時間帯に含まれる所定の第1時刻になった時、前記燃料電池装置の発電運転を再び開始させる第1運転再開制御と、
前記排ガスと熱交換される熱媒を貯留する第2タンク内の熱媒温度が予め決められた第1所定温度以下であった時、前記燃料電池装置の発電運転を再び開始させる第2運転再開制御と、
前記燃料電池装置の発電運転を停止する発電運転停止制御と、
を実行可能であり、
前記第1タンク内の水位が予め決められた第1所定水位以下となった場合に、前記第1制御および前記第2制御のうち、少なくとも一方の制御を行う水回収運転制御を実行し、
該水回収運転制御が実行されて、予め決められた第1所定時間継続した後、前記第1タンク内の水位が前記第1所定水位以下である場合、前記破過判定制御を実行し、該破過判定制御において、前記イオン交換樹脂が破過していないと判定されたとき、前記補水制御を実行し、前記破過判定制御において、前記イオン交換樹脂が破過していると判定されたとき、前記発電運転停止制御を実行し、
前記発電運転停止制御を実行した後、前記第1運転再開制御および前記第2運転再開制御のうち、いずれか一方の運転再開制御を実行する、制御装置。
【請求項5】
燃料電池を備える燃料電池装置を制御する制御装置に、
燃料電池より排出される排ガスから回収した水を該燃料電池へ供給するために貯留する第1タンク内の水位が予め決められた第1所定水位以下となった場合に、前記排ガスから回収される水の量が増加するように、前記燃料電池に付随する各補機の動作を制御する第1制御を行う第1水回収運転制御ステップと、
前記第1タンク内の水位が予め決められた第1所定水位以下となった場合に、前記第1タンクから前記燃料電池へ供給する水の量が減少するように、前記燃料電池に付随する各補機の動作を制御する第2制御を行う第2水回収運転制御ステップと、
前記第1タンクに外部から水を補給する水補給装置によって前記第1タンクに所定量の外部の水を補給する補水制御ステップと、
前記第1タンクに外部から補給される水を流過させる水補給流路中に位置するイオン交換樹脂が破過しているか否かを判定する破過判定制御ステップと、
予め決められた
、外気温が低い時間帯に含まれる所定の第1時刻になった時、前記燃料電池装置の発電運転を再び開始させる第1運転再開制御ステップと、
前記排ガスと熱交換される熱媒を貯留する第2タンク内の熱媒温度が予め決められた第1所定温度以下であった時、前記燃料電池装置の発電運転を再び開始させる第2運転再開制御ステップと、
前記燃料電池装置の発電運転を停止する発電運転停止制御ステップと、
を実行させる制御プログラムであって、
前記第1水回収運転制御ステップおよび前記第2水回収運転制御ステップのうち、少なくとも一方のステップが予め決められた第1所定時間継続した後、前記第1タンク内の水位が前記第1所定水位以下である場合、前記破過判定制御ステップを実行し、該破過判定制御ステップにおいて、前記イオン交換樹脂が破過していないと判定されたとき、前記補水制御ステップを実行し、前記破過判定制御ステップにおいて、前記イオン交換樹脂が破過していると判定されたとき、前記発電運転停止制御ステップを実行し、
前記発電運転停止制御ステップを実行した後、前記第1運転再開制御ステップおよび前記第2運転再開制御ステップのうち、いずれか一方のステップを実行する運転再開制御ステップと、
を実行させる、制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池装置、制御装置および制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
収納容器内に、水素含有ガスである燃料ガスと、酸素含有ガスである空気とを用いて電力を得ることができる燃料電池セルを複数積層したセルスタックを備える燃料電池モジュールが知られている。また、該燃料電池モジュールおよびその動作に必要な補機類を外装ケース等の筐体に収容した燃料電池装置が、種々提案されている。
【0003】
このような燃料電池装置においては、発電に用いられなかった余剰の燃料ガスを燃焼させ、燃焼後の排ガスを熱交換器等に通して冷却する。この熱交換時に、前記排ガスに含まれる水蒸気が凝縮して生成される凝縮水を、イオン交換樹脂等により浄化処理して改質水タンク等の水タンクに貯留する。そして、貯留された水を、天然ガス等の原燃料を水蒸気改質する改質器に改質水として供給する、いわゆる水自立運転が行われている。
【0004】
このような、改質水を利用した燃料電池の運転や制御に関し、特許文献1には、たとえば外気温が高い等により、水タンクに貯留した改質水の量が不足する場合、燃料電池のカソードに供給される単位時間当たりの反応空気供給量を減らして、燃料電池の空気利用率を大きくすることが開示されている。これにより、改質水となる、回収される凝縮水を増やして、貯留された水の量を回復させる燃料電池システムが記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、熱媒または冷媒である低温の水との熱交換によって凝縮水を生成する凝縮部を備える燃料電池装置において、水タンクに貯留した改質水の量に応じて、熱交換器に供給する熱媒の量を制御することにより、水タンクに貯留された改質水の量の不足を抑制する燃料電池装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-234869号公報
【文献】特開2012-119086号公報
【発明の概要】
【0007】
本開示の燃料電池装置は、燃料電池と、該燃料電池より排出される排ガスから回収した水を前記燃料電池へ供給するために貯留する第1タンクと、前記第1タンク内の水面の高さを検出する水位検出装置と、前記燃料電池および該燃料電池に付随する各補機の動作を制御する制御装置と、前記第1タンクに外部から水を補給する水補給装置と、を備える。
前記制御装置は、
前記第1タンク内の水位が予め決められた第1所定水位以下となった場合に、
前記排ガスから回収される水の量が増加するように、前記各補機の動作を制御する第1制御、および、前記第1タンクから前記燃料電池へ供給する水の量が減少するように、前記各補機の動作を制御する第2制御、のうち、少なくとも一方の制御を行う水回収運転制御を実行する。
前記制御装置は、該水回収運転制御が開始されてから予め決められた第1所定時間経過した後、前記水位検出装置で測定された前記第1タンク内の水位が、前記第1所定水位以下である場合、前記水補給装置によって前記第1タンクに所定量の外部の水を補給する補水制御を実行する。
【0008】
また、本開示の制御装置は、燃料電池を備える燃料電池装置を制御する制御装置であって、
燃料電池より排出される排ガスから回収される水の量が増加するように、前記燃料電池に付随する各補機の動作を制御する第1制御と、燃料電池より排出される排ガスから回収した水を該燃料電池へ供給するために貯留する第1タンクから前記燃料電池へ供給する水の量が減少するように、前記燃料電池に付随する各補機の動作を制御する第2制御と、前記第1タンクに外部から水を補給する水補給装置によって前記第1タンクに所定量の外部の水を補給する補水制御と、を実行可能である。
前記制御装置は、前記第1タンク内の水位が予め決められた第1所定水位以下となった場合に、前記第1制御および前記第2制御のうち、少なくとも一方の制御を行う水回収運転制御を実行する。該水回収運転制御が実行されて、予め決められた第1所定時間継続した後、前記第1タンク内の水位が前記第1所定水位以下である場合、前記補水制御を実行する。
【0009】
また、本開示の制御プログラムは、燃料電池を備える燃料電池装置を制御する制御装置に、
燃料電池より排出される排ガスから回収した水を該燃料電池へ供給するために貯留する第1タンク内の水位が予め決められた第1所定水位以下となった場合に、前記排ガスから回収される水の量が増加するように、前記燃料電池に付随する各補機の動作を制御する第1制御を行う第1水回収運転制御ステップと、
前記第1タンク内の水位が予め決められた第1所定水位以下となった場合に、前記第1タンクから前記燃料電池へ供給する水の量が減少するように、前記燃料電池に付随する各補機の動作を制御する第2制御を行う第2水回収運転制御ステップと、
前記第1水回収運転制御ステップおよび前記第2水回収運転制御ステップのうち、少なくとも一方のステップが予め決められた第1所定時間継続した後、前記第1タンク内の水位が前記第1所定水位以下である場合、前記第1タンクに外部から水を補給する水補給装置によって、前記第1タンクに所定量の外部の水を補給する補水制御ステップと、を実行させる。
【0010】
一方、本開示の燃料電池装置は、燃料電池と、該燃料電池より排出される排ガスから回収した水を前記燃料電池へ供給するために貯留する第1タンクと、前記第1タンク内の水面の高さを検出する水位検出装置と、前記燃料電池および該燃料電池に付随する各補機の動作を制御する制御装置と、を備える。
前記制御装置は、前記第1タンク内の水位が予め決められた第2所定水位以下となった場合に、前記排ガスから回収される水の量が増加するように、前記各補機の動作を制御する第1制御、および、前記第1タンクから前記燃料電池へ供給する水の量が減少するように、前記各補機の動作を制御する第2制御、のうち、少なくとも一方の制御を行う水回収運転制御を実行する。
前記制御装置は、該水回収運転制御が開始されてから予め決められた第3所定時間経過した後、前記水位検出装置で測定された前記第1タンク内の水位が前記第2所定水位以下である場合、燃料電池装置の発電運転を停止する制御を実行する。
【0011】
また、上記の燃料電池装置に対応する、本開示の制御装置は、燃料電池を備える燃料電池装置を制御する制御装置であって、
燃料電池より排出される排ガスから回収される水の量が増加するように、前記燃料電池に付随する各補機の動作を制御する第1制御と、燃料電池より排出される排ガスから回収した水を該燃料電池へ供給するために貯留する第1タンクから前記燃料電池へ供給する水の量が減少するように、前記燃料電池に付随する各補機の動作を制御する第2制御と、を実行可能である。
前記制御装置は、前記第1タンク内の水位が予め決められた第2所定水位以下となった場合に、前記第1制御および前記第2制御のうち、少なくとも一方の制御を行う水回収運転制御を実行し、該水回収運転制御が実行されて、予め決められた第3所定時間継続した後、前記第1タンク内の水位が前記第2所定水位以下である場合、燃料電池装置の発電運転を停止する制御を実行する。
【0012】
さらに、前記の燃料電池装置に対応する、本開示の制御プログラムは、燃料電池を備える燃料電池装置を制御する制御装置に、
燃料電池より排出される排ガスから回収した水を該燃料電池へ供給するために貯留する第1タンク内の水位が予め決められた第2所定水位以下となった場合に、前記排ガスから回収される水の量が増加するように、前記燃料電池に付随する各補機の動作を制御する第1制御を行う第1水回収運転制御ステップと、
前記第1タンク内の水位が予め決められた第2所定水位以下となった場合に、前記第1タンクから前記燃料電池へ供給する水の量が減少するように、前記燃料電池に付随する各補機の動作を制御する第2制御を行う第2水回収運転制御ステップと、
前記第1水回収運転制御ステップおよび前記第2水回収運転制御ステップのうち、少なくとも一方のステップが予め決められた第3所定時間継続した後、前記第1タンク内の水位が前記第2所定水位以下である場合、燃料電池装置の発電運転を停止する発電運転停止ステップと、を実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本開示の目的、特色、および利点は、下記の詳細な説明と図面とから、より明確になるであろう。
【
図1】実施形態の燃料電池装置の概略構成図である。
【
図2】
図1のF部分を拡大した、燃料電池装置の改質水タンク周辺の説明図である。
【
図4】第1実施形態の燃料電池装置における水回収運転制御および補水制御のフローチャートである。
【
図5A】第1実施形態の燃料電池装置における運転再開制御のフローチャートの一例であり、第1運転再開制御のフローを示す図である。
【
図5B】第1実施形態の燃料電池装置における運転再開制御のフローチャートの他の例であり、第2運転再開制御のフローを示す図である。
【
図6】第2実施形態の燃料電池装置における水回収運転制御のフローチャートである。
【
図7A】第2実施形態の燃料電池装置における運転再開制御のフローチャートの一例であり、第1運転再開制御のフローを示す図である。
【
図7B】第2実施形態の燃料電池装置における運転再開制御のフローチャートの一例であり、第2運転再開制御のフローを示す図である。
【
図7C】第2実施形態の燃料電池装置における運転再開制御のフローチャートの他の例であり、熱媒冷却制御および起動準備制御のフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて実施形態の燃料電池装置について説明する。
図1,
図2および
図3は、実施形態の燃料電池装置の概略構成を説明する図である。なお、
図2は、
図1のF部を拡大して示す、改質水タンク周りの概略構成である。
【0015】
実施形態の燃料電池装置100は、天然ガス,LPガス等の原燃料と空気とを使用して発電を行なう燃料電池モジュール1の稼動による電力供給と、熱交換器3、ラジエータ4、熱媒循環ポンプP2および蓄熱タンク5等からなる排熱回収システム(ヒートサイクルHSともいう)を利用した温水の供給とを行うものである。なお、上記の蓄熱タンク5は、本開示の第2タンクに相当する。また、温水の供給を行なわない、いわゆるモノジェネレーションシステムとすることもできる。
【0016】
また、燃料電池装置100は、前述の燃料電池モジュール1等の他、補機として、改質水タンク6、パワーコンディショナ20、制御装置30、記憶装置40等を備えている。さらに、燃料電池装置100は、改質水ポンプP1を含む改質水流路R、排水流路Dと、各種センサ類とを備えている。センサとしては、水位検出装置である、中水位に位置する水検知器WL1,低水位に位置する水検知器WL2と、熱媒温度測定装置である水温計TS1と、改質水の水質を測定するための水質測定装置である電気伝導率計WC1等と、を少なくとも備える。
【0017】
燃料電池モジュール1は、収納容器10に収容されている。内部に、複数の燃料電池セルが積層されたセルスタック11と、水蒸気を用いて原燃料の水蒸気改質を行う改質器12と、余剰の燃料ガスに点火するための着火ヒータ(図示省略)、および、触媒容器2に充填された排ガス触媒等を備える。そして、燃料電池モジュール1は、
図3に示すように、各フレーム51と外装パネル(図示省略)とからなるケース50の中に配設されている。
【0018】
なお、
図3では図示していないが、ケース50内には、
図1に例示するような、天然ガス等の原燃料を改質器に送給するガスポンプB1、空気等の酸素含有ガスをセルスタックに送給する空気ブロワB2、改質水タンク6内の改質水を、水蒸気改質用の原料水として改質器12に供給する改質水ポンプP1、改質水タンク6内の余剰水を排出するための排水流路D等が、配設されている。
【0019】
さらに、ケース50内には、先に述べたような、系統電源と連係するパワーコンディショナ20、装置全体をコントロールする制御基板を含む制御装置30、記憶装置40等や、燃料電池の運転を制御するために用いる各種センサ類も、配置されている。
【0020】
上述のような構成の燃料電池装置100においては、燃料電池モジュール1に隣接して配置された熱交換器3で、燃料電池モジュール1より排出された排ガスと、熱交換器3内を流れる水等の熱媒または冷媒との間で熱交換が行われ、排ガスに含まれる水分が結露して凝縮水が生じる。
【0021】
生じた凝縮水は、気液分離器等により分離され、凝縮水流路Cを経由して、凝縮水を回収および貯留する改質水タンク6に導入される。なお、改質水タンク6は、本開示の第1タンクに相当するものである。
【0022】
水分が取り除かれた排ガスは、排ガス流路Eを介して、燃料電池装置の外に排気される。また、改質水タンク6に貯水された改質水は、改質水流路Rおよび改質水ポンプP1を介して、燃料電池モジュール1内の改質器12に供給され、改質水を用いた原燃料の水蒸気改質に利用される。
【0023】
図2は、燃料電池装置100の構成の中で、燃料電池の発電運転およびそれに用いられる改質水に関連する部分、すなわち
図1の二点鎖線F内を拡大して示したものである。
【0024】
凝縮水を浄化して貯留する改質水タンク6は、浄化処理用途の第1改質水タンク61と、貯留用途の第2改質水タンク62と、で構成されている。なお、これら第1改質水タンク61と第2改質水タンク62との間は、下部の通水管65で接続されて、連通している。
【0025】
生成された改質水を貯留する第2改質水タンク62の下部または底部には、改質水ポンプP1の吸引口に繋がる改質水導出口62aが設けられている。また、第2改質水タンク62の上部側面には、排水流路Dに繋がる余剰水導出口62bが設けられている。
【0026】
第2改質水タンク62の下部には、貯留された改質水の水位である上水面が、下限水位である渇水位に達したことを検出する水検知器WL2が配設されている。なお、図中の各センサの黒丸は、センサの配設位置、またはプローブ等の先端の検出位置を示すものである。
【0027】
凝縮水を回収および精製して改質水を作製する第1改質水タンク61の中には、熱交換器3から回収された凝縮水を浄化処理するためのイオン交換樹脂が充填された第1のイオン交換樹脂容器63と、改質水の不足時に、外部から補給される水道水等(以下、外部水という)を浄化するためのイオン交換樹脂が充填された第2のイオン交換樹脂容器64とが、配設されている。
【0028】
第1改質水タンク61の所定の中間位置には、貯留された改質水の水位である上水面が、予め決められた設定水位である中水位に達したことを検出する水検知器WL
1が配設されている。なお、
図2に示すように、第1改質水タンク61中に、貯留水である改質水の導電率(単位:μS/cm)を測定する第2の電気伝導率計WC
2を配設してもよい。
【0029】
そして、本実施形態の燃料電池装置100においては、水タンクに外部から水を補給する水補給装置として、
図2に示すように、改質水タンク6と、外部の水源である上水道(Waterworks)等との間に、電磁開閉式の止水弁V
1を含む水補給流路Gが配設されている。
【0030】
水補給流路Gの下流側の末端である端部は、第1改質水タンク61の下部に設けられた外部水受水口61aに接続されている。外部水受水口61aから流入した外部水は、タンク内部に配設された延設管61bを介して、第2のイオン交換樹脂容器64の底部に設けられた外部水導入口64aから、第1改質水タンク61内に導入される。
【0031】
また、第2のイオン交換樹脂容器64の中には、外部水浄化用のイオン交換樹脂が充填されている。外部水は、このイオン交換樹脂層を通過する間に、水道水等に含まれる不純物が除去され、導電率1μS/cm程度の脱イオン水、すなわち改質水の補水が精製されるようになっている。
【0032】
なお、図中の電気伝導率計WC1は、前述のイオン交換樹脂が破過していないどうかを判定する、破過判定装置の一例である。この電気伝導率計WC1は、浄化処理された後の脱イオン水である補水の導電率を測定できるように、補水が滞留する、第2のイオン交換樹脂容器64の上部に配設されている。
【0033】
浄化処理された補水は、第2のイオン交換樹脂容器64の上部側面に設けられた浄化水流出口64bから流出して、第1改質水タンク61内の貯水部に流下して、改質水として貯留される。
【0034】
本実施形態の燃料電池装置100においては、改質水タンク6内の改質水が不足する場合、上述した水道水などの外部水が、イオン交換樹脂等を介して浄化された後、補水として改質水タンク6内に導入される。補水が行われる条件や制御等については、後記で説明する。
【0035】
そして、燃料電池装置100は、以下に詳細に述べるように、種々の機能を実行するための制御および処理能力を提供するために、少なくとも1つのプロセッサを含む制御装置30を備える。
【0036】
種々の実施形態によれば、少なくとも1つのプロセッサは、単一の集積回路として、または、複数の通信可能に接続された集積回路および/もしくはディスクリート回路として、実行されてもよい。少なくとも1つのプロセッサは、種々の既知の技術にしたがって実行されることが可能である。
【0037】
1つの実施形態において、プロセッサは、たとえば、関連するメモリに記憶された指示を実行することによって1以上のデータ計算手続または処理を実行するように構成された、1以上の回路またはユニットを含む。他の実施形態において、プロセッサは、1以上のデータ計算手続きまたは処理を実行するように構成されたファームウェア、たとえばディスクリートロジックコンポーネントであってもよい。
【0038】
種々の実施形態によれば、プロセッサは、1以上のプロセッサ、コントローラ、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路、デジタル信号処理部、プログラマブルロジックデバイス、フィールドプログラマブルゲートアレイ、または、これらのデバイスもしくは構成の任意の組み合わせ、または、他の既知のデバイスおよび構成の組み合わせ、を含み、以下に説明される機能を実行してもよい。
【0039】
制御装置30は、記憶装置40と、パワーコンディショナ20と、燃料電池モジュール1と、ガスポンプB1等の原燃料供給装置と、空気ブロワB2等の酸素含有ガス供給装置と、改質水ポンプP1等の水供給装置、止水弁V1を含む水補給流路G等の水補給装置、および、中水位の水検知器WL1,低水位の水検知器WL2等の水位検出装置、水温計TS1等の熱媒温度測定装置、電気伝導率計WC1等の水質測定装置などの各種センサと接続され、これらの各機能部をはじめとして、燃料電池装置100の全体を制御および管理する。制御装置30は、記憶装置40に記憶されているプログラムを取得して、このプログラムを実行することにより、燃料電池装置100の各部にかかる、種々の機能を実現する。
【0040】
制御装置30から、他の機能部または装置に制御信号または各種の情報などを送信する場合、制御装置30と他の機能部とは、有線または無線により接続されていればよい。制御装置30が行う本実施形態に特徴的な制御については、後記で説明する。なお、本実施形態において、制御装置30は特に、先に述べた外部水の、改質水貯留部への補水を制御する。また、各図では、制御装置30および記憶装置40と、燃料電池を構成する各装置および各センサとを結ぶ接続線の図示を、省略している場合がある。
【0041】
記憶装置40は、プログラムおよびデータを記憶できる。記憶装置40は、処理結果を一時的に記憶する作業領域としても利用してもよい。記憶装置40は、記録媒体を含む。記録媒体は、半導体記憶媒体、および磁気記憶媒体等の任意の非一時的(non-transitory)な記憶媒体を含んでよい。また、記憶装置40は、複数の種類の記憶媒体を含んでいてもよい。記憶装置40は、メモリカード、光ディスク、または光磁気ディスク等の可搬の記憶媒体と、記憶の読み取り装置との組合せを含んでいてもよい。記憶装置40は、RAM(Random Access Memory)等の一時的な記憶領域として利用される記憶デバイスを含んでいてもよい。
【0042】
つぎに、上記構成の燃料電池装置による、改質水の水量を回復させる水回収運転制御、および、改質水が不足する場合の補水制御は、以下のように行われる。なお、以下の説明は、
図4および
図5A,
図5Bのフローチャートにもとづいて行う。また、フローチャートにおける各ステップを「S」と省略して呼称する。たとえば、ステップ1,ステップ2・・・は、それぞれ、〔S1〕,〔S2〕・・・と称する。なお、図中も同じ表記とする。
【0043】
図4および
図5A,
図5Bに示す、第1実施形態の燃料電池装置における制御装置30は、システムに異常を感知していない通常時または正常時には、第1タンクである改質水タンク6の所定の中間位置に配設された水検知器WL
1が発信している水検出信号が途切れるまで、すなわち、第1所定水位である中水位の水検知器WL
1からの水検出信号が受信できなくなるまで、水検出信号の受信の有無を判断する〔S1〕のループ、すなわち
図4のフローチャートの〔S1〕における図示左側を繰り返しながら、待機している。
【0044】
ここで、前記〔S1〕のループ中に、中水位の水検知器WL1が発信する水検出信号が受信されなくなった場合、制御装置30は、以下の水回収運転制御を開始する〔S2〕。
【0045】
水回収運転制御は、改質水タンク6内の改質水の水量回復を目的に行うものである。その制御は、〔S2〕以降において、燃料電池の発電出力を抑制するとともに、他の補機類も制御して、燃料電池の発電運転を継続する。
【0046】
具体的には、排ガスから回収される水の量を増加させる第1制御、および、改質水タンク6から燃料電池モジュール1へ供給する水の量を低減させる第2制御、のうち、少なくとも一方の制御を行う。
【0047】
第1制御とは、前述のように燃料電池の発電出力を抑制するほか、たとえば、ヒートサイクルHS系の熱媒循環ポンプP2の送出量である水流量を定格最大にするとともに、ラジエータ4のファンの回転を定格最大回転数まで引き上げる等、熱媒循環系のポンプとファンの稼動デューティ比を上げる制御を行う。
【0048】
また、燃料利用率を下げて酸素利用率を上げるために、原燃料を改質器に送給するガスポンプB1の送出量であるガス流量と、空気をセルスタックに送給する空気ブロワB2の送出量である空気流量とを制御する等、原料供給系のポンプとブロワの稼動デューティ比を上げる制御を行う。これにより、最大の効率で、凝縮水を回収することができるようになる。
【0049】
第2制御とは、たとえば、燃料電池モジュール1への水供給用装置である改質水ポンプP1の、改質水の送出量である送水量をできる限り低減する制御を行う。
【0050】
そして、〔S2〕以降に記載の水回収運転制御は、これら第1制御および第2制御のうち、少なくとも一方、可能であれば両方の制御を同時に行うことにより、最大限の効率で、凝縮水を回収することができる。
【0051】
水回収運転制御の継続中、制御装置30は、改質水タンク6の渇水位置である低水位位置の水検知器WL2が、水検出信号を発信しているか否かを確認する〔S3〕。仮に、〔S3〕において、低水位位置の水検知器WL2からの水検出信号が途絶えれば、改質水タンク6内の改質水の貯水量が危険レベルにまで低下していると判断して、発電運転を停止する制御に移行する(〔S12〕の渇水アラートを参照)。なお、渇水アラートが発報し、発電運転が停止された場合〔S12〕には、その後、人の手によるメンテナンスを経ることで、運転を再開することができる。
【0052】
つぎに、制御装置30は、〔S4〕において、貯留改質水の水位の回復度合いを確認する。すなわち、この際、制御装置30は、水検知器WL1から水検出信号が受信され、貯留改質水の水位が第1所定水位まで回復したことが確認できれば、〔S13〕において、前述の水回収運転制御を終了し、定格発電運転が可能な状態である〔S1〕以前の初期状態に復帰する。
【0053】
一方、〔S5〕において、水回収運転制御を開始してから第1所定時間T1経過後も、中水位の水検知器WL1からの水検出信号が受信されるようにならなかった、すなわち貯留改質水の水位の回復が充分でなかった場合、制御装置30は、外部水を補給する補水制御〔S7〕を開始する。なお、この第1所定時間T1とは、予め決められた、たとえば3時間程度の期間を指す。
【0054】
ここで、制御装置30は、補水制御〔S7〕実行の前に、外部水が補給可能であるかどうかを判定する、破過判定制御を実行してもよい。
【0055】
破過判定制御の具体的な例として、制御装置30は、補水に使用する外部水浄化用のイオン交換樹脂が「破過」していないかどうか、すなわち、補水用イオン交換樹脂が寿命を迎えていないか否かを、破過判定装置、この例では破過検知装置として電気伝導率計を使用して、検出および判定する。
【0056】
一例として、第1実施形態の燃料電池装置100の場合、
図4のフローチャートにおいて、補水開始から第1所定時間T1経過〔S5〕と補水制御開始〔S7〕との間に、補水用イオン交換樹脂の破過を判定する破過判定制御〔S6〕を行う。
【0057】
破過判定制御〔S6〕は、第2のイオン交換樹脂容器64の上部に配設されている電気伝導率計WC1を用いて、第2のイオン交換樹脂容器64内の浄化処理済の脱イオン水の導電率Jが、予め決められた所定導電率J1以下の値であるか否か、を確認する。
【0058】
そして、制御装置30は、破過判定制御〔S6〕において、測定された導電率Jが所定導電率J1以下、すなわち破過していない「No(Good)」である場合、外部水浄化用のイオン交換樹脂がまだ寿命を迎えておらず、正常に機能していると判断して、後記の補水制御〔S7〕を開始または実行する。
【0059】
また、破過判定制御〔S6〕において、測定された導電率Jが所定導電率J1を超える場合、すなわち、外部水浄化用のイオン交換樹脂が寿命を迎え、破過している「Yes(No Good)」と判断された場合、外部水を用いた補水は中止され、燃料電池は、発電運転から、その運転を停止する制御〔スタンバイ状態:S14〕に移行する。すなわち、改質水タンク6内の改質水の貯水量が危険レベルにまで低下する前、言い換えれば、渇水アラートの発報をともなう発電運転の停止がされる前に、発電運転を停止する。
【0060】
なお、上記例では、破過判定制御〔S6〕は、浄化処理済の脱イオン水の導電率Jを基準または判定項目として行うものとしたが、判定条件として、他の測定値を用いることもできる。たとえば、外部水である水道水の、第2のイオン交換樹脂容器64への時間あたり流入量を計測するフローメーター、あるいは、量水計等を備えている場合、それらのセンサから得られる値、すなわち水量を積算して、累積水量の値を、補水用イオン交換樹脂の破過判定の指標としてもよい。
【0061】
また、たとえば、前記の外部水である水道水の、第2のイオン交換樹脂容器64への流入量を、水補給流路Gに配設された止水弁V1が開弁された時間と、水補給流路G中を流れる外部水の水圧や流量等に基づいて、演算で算出可能であれば、開弁された時間を積算した累積値を、第2のイオン交換樹脂容器64へ流入した累積水量として、補水用イオン交換樹脂の破過判定に利用してもよい。
【0062】
つぎに、前述の、補水用イオン交換樹脂の破過を判定する破過判定制御〔S6〕において、破過がない「No」と判定されれば、外部水を第1タンクである改質水タンク6内に補給する「補水制御」〔S7からS10まで〕を開始する。
【0063】
補水制御は、
図4のフローチャートに示すように、まず、〔S8〕として、外部水導入用の、水補給流路Gに配設された電磁開閉式の止水弁V
1を開けて、外部水である水道水を第2のイオン交換樹脂容器64に導入し、補水を開始する。以下、外部水を「水道水」とする。
【0064】
ついで、改質水タンク6内の貯留改質水の水量を確認しながら、水道水の補水を継続する。すなわち、フローチャートの〔S9〕において、先に述べたものと同様、改質水タンク6内の改質水の貯水量が、危険な渇水レベルにまで低下していないか否か、低水位位置の水検知器WL2の水検出信号を確認しながら、水道水の補水を継続する。
【0065】
仮に、補水中に、低水位位置の水検知器WL2からの水検出信号が途絶えれば、渇水もしくは何らかの異常が生じているとして補水を中断し、渇水アラートの発報とともに、発電運転を停止する制御に移行する〔S15〕。なお、渇水アラートの発報とともに発電運転が停止された場合〔S15〕には、その後、人の手によるメンテナンスを経ることで、運転を再開することができる。
【0066】
つぎに、フローチャートの〔S10〕において、制御装置30は、前記第1所定水位である中水位の水検知器WL1からの水検出信号を受信できた場合、改質水タンク6内の貯留改質水の水量が回復したと判断して、止水弁V1を閉めて、水道水の導入を停止する〔S11〕。そして、前述の補水制御と、発電出力抑制等を行っていた水回収運転制御とを終了して、定常運転である〔S1〕に復帰する。
【0067】
以上のように、本実施形態の燃料電池装置100は、改質水の水量が不足して、水回収運転制御を行う場合であっても当該制御を一定期間継続した場合には、外部水により補水することで、発電運転を継続することができる。
【0068】
すなわち、従前の構成の燃料電池装置において、改質水の水量回復操作や制御を行っても、発電運転に必要な水が確保できない場合、装置は強制的に停止され、人の手によるメンテナンスが完了するまで運転を再開できない場合が多かった。
【0069】
本実施形態の燃料電池装置、制御装置および制御プログラムは、改質水の水量回復操作や制御を行っても、発電運転に必要な水が確保できない場合でも、メンテナンスを伴う装置の停止が回避される。これにより、効率的な発電運転を継続することができる。
【0070】
また、補水する前に水回収運転制御を行うことで、外部水の補水回数を極力少なくして、外部水浄化用のイオン交換樹脂の機能低下を抑え、該イオン交換樹脂の寿命を延ばすこともできる。
【0071】
つぎに、前述の
図4のフローチャートにおいて例示したように、補水用イオン交換樹脂の破過によって補水ができず、燃料電池装置の発電運転が停止した場合、すなわち、フローチャートにおける〔S6〕から〔S14〕への移行が発生した場合、運転スタンバイ状態の燃料電池装置は、後記の
図5Aに示す第1発電再開制御のフロー、または、
図5Bに示す第2発電再開制御のフローのようにして、自動的に、発電運転の再開を目指すようプログラムまたは制御されている。
【0072】
詳しく説明すると、まず一例として、
図5Aに示すフローを適用する場合、スタンバイ状態となった燃料電池装置は、〔S20〕において、まず、予め決められた第2所定時間である期間T2の間、燃料電池の発電運転を停止したまま、待機する。なお、この第2所定時間T2とは、予め決められた、たとえば1日間程度の期間である。
【0073】
上述の待機期間T2が終了したら、制御装置30は、第1運転再開制御〔S21-1〕を開始する。第1運転再開制御〔S21-1〕は、〔S22-1〕において、内蔵する時計や通信回線を介した外部のタイムサーバ等から、日本標準時等の、燃料電池装置設置場所の標準時に基づく現在時刻、いわゆる現地時間を取得し、その現在時刻が、たとえば真夜中である午前2時や3時等の、比較的外気温が低いと推定される時間帯に予め設定された第1所定時刻を、前記待機期間T2終了後に初めて迎えた際に実行され、燃料電池装置は、前述のスタンバイ状態から、発電運転の再開に向けた起動準備制御へと、移行する。
【0074】
他方、
図5Bに示す第2運転再開制御のフローを適用する場合、スタンバイ状態となった燃料電池装置は、
図5Aの第1運転再開制御と同様、〔S20〕において、まず、予め決められた第2所定時間である期間T2の間、燃料電池の発電運転を停止したまま、待機する。
【0075】
ついで、待機期間T2が終了したら、制御装置30は、第2運転再開制御〔S21-2〕を開始する。第2運転再開制御〔S21-2〕は、〔S22-2〕において、第2タンクである、ヒートサイクルHS系の蓄熱タンク5に配設された水温計TS1の温度の確認を行い、その水温が予め決められた第1所定温度M1以下であれば、燃料電池装置は、前述のスタンバイ状態から、発電運転の再開に向けた起動準備制御へと、移行する。
【0076】
起動準備制御は、発電運転の再開に向けた準備を行うモードであり、たとえば、燃料電池モジュール内に空気を送る空気ブロアB2の起動等を行う。また、第2所定時間である期間T2の間、発電運転を停止したまま待機する〔S20〕は、省略することができる。すなわち、〔S14〕で発電運転を停止した後、直ちに第1運転再開制御(フロー
図5A参照)または第2運転再開制御(フロー
図5B参照)を実行するよう制御してもよい。
【0077】
なお、第1所定温度M1とは、たとえば47℃である。また、本実施形態において、測定された水温Mが47℃を超える場合、制御装置30は、蓄熱タンク5内の熱媒の温度を下げるための熱媒冷却制御を行う場合がある。
【0078】
熱媒冷却制御とは、たとえば、発電運転の停止から起動準備制御開始までの間に、蓄熱タンク5内の熱媒の温度を下げ、発電運転の再開後に、凝縮水の回収量が増えるように準備する制御である。熱媒は、冷却装置を作動させることで冷却することができる。冷却装置の一例としては、ヒートサイクルHS系の熱媒循環ポンプP2や、ラジエータ4がある。たとえば、ヒートサイクルHS系の熱媒循環ポンプP2を作動させるとともに、ラジエータ4を作動させる制御を行ってもよい。
【0079】
また、熱媒冷却制御は、発電運転の停止から起動準備制御開始までの間に、実行してもよい。フロー
図5Aに示すように、第1所定時刻を過ぎた〔S22-1〕後、発電運転を再開する〔S23〕前に、熱媒冷却制御を開始し、所定時間の間熱媒冷却制御を継続、または、熱媒が第1所定温度以下となるまで、継続してもよい。また、フロー
図5Bで示すように、第2運転再開制御〔S21-2〕を開始した後に、熱媒冷却制御を開始し、熱媒が第1所定温度以下〔S22-2〕となるまで継続してもよい。
【0080】
以上の制御により、本実施形態の燃料電池装置100は、補水ができない場合でも、渇水アラートが発報する前に運転を停止させ、かつ水位を回復できる環境としたうえで、運転を再開することができる。
【0081】
すなわち、燃料電池装置100は、改質水の水量回復操作や制御を行っても、発電運転に必要な水が確保できない場合でも、人の手によるメンテナンスを経ることなく、発電運転を再開することができる。その結果、効率よく発電運転を行うことができる。
【0082】
なお、燃料電池装置100の制御装置30および記憶装置40は、燃料電池装置100の外部に有する構成として実現することもできる。さらに、本開示に係る制御装置30における特徴的な制御工程を含む制御方法として実現したり、上記工程をコンピュータに実行させるための制御プログラムとして実現したりすることも可能である。
【0083】
また、セルスタック装置および燃料電池モジュールは、SOFCに限定されず、たとえば固体高分子形燃料電池〔Polymer Electrolyte Fuel Cell(PEFC)〕、リン酸形燃料電池〔Phosphoric Acid Fuel Cell(PAFC)〕、および、溶融炭酸塩形燃料電池〔Molten Carbonate Fuel Cell(MCFC)〕などのような燃料電池で構成してもよい。
【0084】
つぎに、
図6および
図7A,
図7B,
図7Cに示す、第2実施形態の燃料電池装置の制御について説明する。なお、第2実施形態の燃料電池装置の構成は、前述の第1実施形態と同様であるため、特に必要としない限り、構成や符号等に関する詳細な説明は省略する。
【0085】
この第2実施形態の燃料電池装置、制御装置および制御プログラムが、第1実施形態と異なるのは、第1タンクである改質水タンク内の改質水の水量回復を目的に行う水回収運転制御を行っても、発電運転の継続に必要な改質水の水量の回復が見込めない場合は、浄化した外部水を改質水として補水することは行わず、燃料電池装置の発電運転を停止する点である。
【0086】
そのため、第1実施形態の燃料電池装置においては必要であった、水タンクに外部から水を補給する水補給装置として配設されている、外部水受水口61a、延設管61b、外部水導入口64a、止水弁V1等を含む水補給流路Gと、第2のイオン交換樹脂容器64、および、第2のイオン交換樹脂容器64に配設された電気伝導率計WC1は、第2実施形態の燃料電池装置においては、必須の構成ではない。
【0087】
第2実施形態の燃料電池装置の制御について詳しく説明する。
第2実施形態の燃料電池装置も、
図6のフローチャートに示すように、システムに異常を感知していない通常時または正常時、制御装置30は、第1タンクである改質水タンク6の所定の中間位置に配設された水検知器WL
1からの水検出信号を監視しており、それが途切れた時に、水回収運転制御〔S2〕を開始する。
【0088】
水回収運転制御〔S2〕は、第1実施形態と同様、排ガスから回収される水の量を増加させる第1制御、および、改質水タンク6から燃料電池モジュール1へ供給する水の量を低減させる第2制御、のうち、少なくとも一方の制御を行う。なお、第1制御および第2制御の内容は、第1実施形態と同じであるため、説明を省略する。
【0089】
なお、水回収運転制御〔S2〕は、第1制御および第2制御のうち、少なくとも一方、可能であれば両方の制御を同時に行うことにより、最大限の効率で、凝縮水を回収することが可能である点は、同様である。
【0090】
また、この水回収運転制御〔S2〕の継続中、制御装置30は、〔S3〕において、改質水タンク6の渇水位置である低水位位置の水検知器WL2からの水検出信号が途絶えれば、発電運転を停止する制御に移行する(〔S12〕の渇水アラート参照)。
【0091】
また、〔S4〕において、中水位に位置する水検知器WL1から水検出信号が受信されれば、〔S13〕において、前述の水回収運転制御を終了し、定格発電運転が可能な状態である〔S1〕初期状態に復帰する点も、同様である。さらに、第1実施形態と同様、渇水アラートが発報し、発電運転が停止された場合〔S12〕には、その後、人の手によるメンテナンスを経ることで、運転を再開することができる。
【0092】
そして、〔S5〕において、水回収運転制御を開始してから第3所定時間T3経過後も、中水位の水検知器WL1からの水検出信号が受信されるようにならなかった、すなわち貯留改質水の水位の回復が充分でなかった場合、制御装置30は、発電運転を停止する制御に移行する〔S30〕。なお、この場合、改質水タンク6の渇水位置である低水位位置以上の水があることから、渇水アラートの発報をともなわずに発電運転を停止する。
【0093】
つぎに、上述のように、水回収運転制御を行っても、改質水の水位の回復が充分でないという理由で燃料電池装置の発電運転が停止した場合、スタンバイ状態の第2実施形態の燃料電池装置は、次のステップとして、後記に示す
図7A,
図7Bまたは
図7Cに示すフローのようにして、自動的に、発電運転の再開を目指すようプログラムまたは制御されている。
【0094】
詳しく説明すると、まず一例として、
図7Aに示すフローが適用される場合、スタンバイ状態となった燃料電池装置は、〔S40〕において、まず、予め決められた第4所定時間である期間T4の間、燃料電池の発電運転を停止したまま、待機する。なお、この第4所定時間T4とは、予め決められた、たとえば1日間程度の期間である。
【0095】
上述の待機期間T4が終了したら、制御装置30は、第1運転再開制御〔S41-1〕を開始する。第1運転再開制御〔S41-1〕は、第1実施形態と同様、〔S42-1〕において、内蔵する時計や通信回線を介した外部のタイムサーバ等から、日本標準時等の、燃料電池装置設置場所の標準時に基づく現在時刻、いわゆる現地時間を取得し、その現在時刻が、たとえば真夜中である午前2時や3時等の、比較的外気温が低いと推定される時間帯に予め設定された第2所定時刻を、前記待機期間T4終了後に初めて迎えた際に実行され、燃料電池装置は、前述のスタンバイ状態から、発電運転の再開に向けた起動準備制御へと、移行する。
【0096】
なお、制御装置30は、蓄熱タンク5内の熱媒の温度を下げるための熱媒冷却制御を行ってもよい。第1実施形態と同様に、第2所定時刻を過ぎた〔S42-1〕後、発電運転を再開するための起動準備制御〔S43〕に移行する前に、前述の熱媒冷却制御を開始して、所定時間の間、熱媒冷却制御を継続するか、あるいは、熱媒が予め決められた所定温度以下となるまで継続してもよい。
【0097】
起動準備制御は、発電運転の再開に向けた準備を行うモードであり、たとえば、燃料電池モジュール内に空気を送る空気ブロアB2の起動等を行う。また、第4所定時間である期間T4の間、発電運転を停止したまま待機する〔S40〕は、省略することができる。すなわち、〔S30〕で発電運転を停止した後、直ちに第1運転再開制御(フロー
図7A参照)または第2運転再開制御(フロー
図7B参照)を実行するよう制御してもよい。
【0098】
他方、
図7Bに示す第2運転再開制御のフローが適用される場合、スタンバイ状態となった燃料電池装置は、第1実施形態と同様、〔S40〕において、まず、予め決められた第4所定時間である期間T4の間、燃料電池の発電運転を停止したまま、待機する。
【0099】
ついで、待機期間T4が終了したら、制御装置30は、第2運転再開制御〔S41-2〕を開始する。第2運転再開制御〔S41-2〕は、〔S42-2〕において、第2タンクである、ヒートサイクルHS系の蓄熱タンク5に配設された水温計TS1の温度の確認を行い、その水温が予め決められた第2所定温度M2以下であれば、燃料電池装置は、前述のスタンバイ状態から、発電運転の再開に向けた起動準備制御へと、移行する。なお、第2所定温度M2とは、たとえば47℃である。
【0100】
つぎに、他の一例として、
図7Cに示すフローが適用される場合、上記例と同様、スタンバイ状態となった燃料電池装置は、〔S40〕において、まず、予め決められた第4所定時間である期間T4の間、燃料電池の発電運転を停止したまま、待機する。
【0101】
ついで、待機期間T4が終了したら、制御装置30は、第2運転再開制御の〔S42-2〕と同様、〔S42-3〕において、第2タンクである、ヒートサイクルHS系の蓄熱タンク5に配設された水温計TS1の温度の確認を行い、その水温が予め決められた第2所定温度M2以下であれば、燃料電池装置は、前述のスタンバイ状態から、発電運転の再開に向けた起動準備制御へと移行する〔S44〕。
【0102】
しかしながら、前記の〔S42-3〕において、第2タンクに配設された水温計TS1の温度が、第2所定温度M2である47℃を超えている場合、制御装置30は、以下に説明する熱媒冷却制御〔S50からS56まで〕を実行して、蓄熱タンク5内の熱媒の温度を下げてから、起動準備制御〔S44〕へと移行する。なお、熱媒冷却制御〔S50からS56まで〕は、他の条件から独立した、サブルーチンとして実行することもできる。
【0103】
熱媒冷却制御〔S50からS56まで〕は、〔S50〕において開始すると、まず、
図7Cのフローチャートに示すように、〔S51〕においてヒートサイクルHS系の熱媒循環ポンプP2を作動させるとともに、〔S52〕においてラジエータ4のファンを作動させる制御を行う。
【0104】
そして、〔S53〕において、蓄熱タンク5内の熱媒の温度が充分に下がる、予め決められた第5所定時間である期間T5の間、これら熱媒循環ポンプP2とラジエータ4のファンとを作動させたまま待機した後、ラジエータ4のファンを停止〔S54〕し、熱媒循環ポンプP2を停止〔S55〕させ、熱媒冷却制御を終了する〔S56〕。
【0105】
この熱媒冷却制御〔S50からS56まで〕により、蓄熱タンク5内の熱媒の温度を極力下げ、前述の発電運転の再開後に、凝縮水の回収量が増えるように、準備する。
【0106】
以上の制御により、第2実施形態の燃料電池装置100は、渇水アラートが発報する前に運転を停止させ、かつ水位を回復できる環境としたうえで、運転を再開することができる。すなわち、燃料電池装置100は、メンテナンスを経ることなく発電運転を再開できることで、効率よく発電運転を行うことができる。
【0107】
なお、第1実施形態と同様、第2実施形態においても、燃料電池装置100の制御装置30および記憶装置40は、燃料電池装置100の外部に有する構成として実現することもできる。さらに、本開示に係る制御装置30における特徴的な制御工程を含む制御方法として実現したり、上記工程をコンピュータに実行させるための制御プログラムとして実現したりすることも可能である。
【0108】
さらに、セルスタック装置および燃料電池モジュールは、SOFCに限定されず、たとえば固体高分子形燃料電池〔Polymer Electrolyte Fuel Cell(PEFC)〕、リン酸形燃料電池〔Phosphoric Acid Fuel Cell(PAFC)〕、および、溶融炭酸塩形燃料電池〔Molten Carbonate Fuel Cell(MCFC)〕などのような燃料電池で構成してもよい。
【0109】
さらに、本開示は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形態で実施できる。したがって、前述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、本開示の範囲は請求の範囲に示すものであって、明細書本文には何ら拘束されない。さらに、請求の範囲に属する変形や変更は全て本開示の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0110】
1 燃料電池モジュール
5 蓄熱タンク(第2タンク)
6 改質水タンク(第1タンク)
61 第1改質水タンク
62 第2改質水タンク
63 第1イオン交換樹脂容器
64 第2イオン交換樹脂容器
30 制御装置
40 記憶装置
100 燃料電池装置
【0111】
V1 止水弁
G 水補給流路
R 改質水流路
P1 改質水ポンプ
TS1 水温計
WC1 電気伝導率計
WL1 水検知器(中水位センサ)
WL2 水検知器(低水位センサ)