IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ファイ・バイオメド・インコーポレイテッドの特許一覧 ▶ ポステック・リサーチ・アンド・ビジネス・ディベロップメント・ファウンデーションの特許一覧

特許7101763スマートフォトニックレンズを利用した電子薬システムの製造および応用
<>
  • 特許-スマートフォトニックレンズを利用した電子薬システムの製造および応用 図1
  • 特許-スマートフォトニックレンズを利用した電子薬システムの製造および応用 図2
  • 特許-スマートフォトニックレンズを利用した電子薬システムの製造および応用 図3
  • 特許-スマートフォトニックレンズを利用した電子薬システムの製造および応用 図4
  • 特許-スマートフォトニックレンズを利用した電子薬システムの製造および応用 図5
  • 特許-スマートフォトニックレンズを利用した電子薬システムの製造および応用 図6
  • 特許-スマートフォトニックレンズを利用した電子薬システムの製造および応用 図7
  • 特許-スマートフォトニックレンズを利用した電子薬システムの製造および応用 図8
  • 特許-スマートフォトニックレンズを利用した電子薬システムの製造および応用 図9
  • 特許-スマートフォトニックレンズを利用した電子薬システムの製造および応用 図10
  • 特許-スマートフォトニックレンズを利用した電子薬システムの製造および応用 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】スマートフォトニックレンズを利用した電子薬システムの製造および応用
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/36 20060101AFI20220708BHJP
   A61N 1/378 20060101ALI20220708BHJP
   A61N 1/05 20060101ALI20220708BHJP
   A61F 2/14 20060101ALI20220708BHJP
   G02C 7/04 20060101ALI20220708BHJP
【FI】
A61N1/36
A61N1/378
A61N1/05
A61F2/14
G02C7/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020514547
(86)(22)【出願日】2019-11-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-06
(86)【国際出願番号】 KR2019016604
(87)【国際公開番号】W WO2020111826
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2020-03-10
(31)【優先権主張番号】10-2018-0149690
(32)【優先日】2018-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)この研究は、韓国科学技術情報通信部から資金提供を受けている韓国研究財団(NRF)の先端ソフトエレクトロニクスセンター(グローバルフロンティアプロジェクト、CASE-2015M3A6A5072945、30%)によって支援された。またこの業務は、韓国の中小ベンチャー企業部から資金提供を受けているワールドクラス300プロジェクト(S2482887、70%)によっても支援された。
(73)【特許権者】
【識別番号】520077609
【氏名又は名称】ファイ・バイオメド・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PHI BIOMED INC.
(73)【特許権者】
【識別番号】520077610
【氏名又は名称】ポステック・リサーチ・アンド・ビジネス・ディベロップメント・ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】POSTECH RESEARCH AND BUSINESSDEVELOPMENT FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100206140
【弁理士】
【氏名又は名称】大釜 典子
(72)【発明者】
【氏名】ハン・セグァン
(72)【発明者】
【氏名】シン・サンベ
【審査官】和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第10117740(US,B1)
【文献】特表2007-506466(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0010266(US,A1)
【文献】米国特許第09884180(US,B1)
【文献】特開2004-089399(JP,A)
【文献】特表2010-504179(JP,A)
【文献】特表2016-500450(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1856015(KR,B1)
【文献】特表2018-524637(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/00 - 1/39
A61F 2/14
A61F 9/007
G02C 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LED光源を含むコンタクトレンズ;および光電インプラントを含み、
前記光電インプラントは、網膜下(sub-retinal)視神経に移植(implant)され、
前記光電インプラントは、光電素子を含み、
前記光電素子は、前記LED光源から照射された光を電気信号に変換し、
前記光電素子が視神経組織と連結されて、前記光電素子から発生した電流で神経を刺激する、システム。
【請求項2】
神経刺激を通じて治療できる疾患の治療用である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
疾患は、アルツハイマーおよびパーキンソン病のような脳疾患;糖尿、肥満、高血圧のような代謝性疾患;関節炎;感染;炎症性疾患;および視神経疾患よりなるグループから選択されるものである、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
コンタクトレンズは、シリコーンエラストマー(Silicone elastomer)の弾性重合体;シリコーンハイドロゲル(Silicone hydrogel);ポリジメチルシロキサン(PDMS);ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)(PHEMA);およびポリエチレングリコールメタクリレート(poly(ethylene glycol)methacrylate,PEGMA);よりなるグループから選択された一つ以上を基盤とするものである、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
LED光源は、透明基板上に形成され、
前記透明基板は、パリレンC(Parylene C)、PDMS、シリコーンエラストマー(Silicone elastomer)、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリイミド(PI)よりなるグループから選択された一つ以上を含むものである、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
コンタクトレンズは、オンデマンド型半導体素子、アンテナおよびバッテリーよりなるグループから選択された一つ以上をさらに含むものである、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
光電素子の電極からつながった配線に位置するバンプ(bump)と視神経組織が連結されるものである、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
ステムは、スマートメガネをさらに含み、
前記スマートメガネから送信された電気的な信号を通じて駆動するものである、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スマートフォトニックレンズを利用した電子薬システムに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、電気刺激を通じて神経を刺激して疾患を治療する電子薬に対する研究が全世界的に活発に進行している(特許文献1)。
【0003】
このような電子薬をアルツハイマー、パーキンソン病のような脳疾患;糖尿、肥満、高血圧のような代謝性疾患;関節炎;肝炎;炎症性疾患;および視神経疾患を含むほぼすべての疾患に適用するための多様な研究が進行されている。しかしながら、このような電子薬は、ほとんどが体内インプラント施術を必要とする侵襲的技術であって、患者体内移植手術が必要であり、体内駆動のための電源供給が難しく、使用可能な期間も制限的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許公開2018-0071535号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明では、前述した従来の電子薬の問題点を解決するために、LED光源を含むコンタクトレンズを利用して網膜下(sub-retinal)視神経に移植された電子薬デバイスの光電素子を駆動させる電子薬システムを提供する。
【0006】
本発明では、コンタクトレンズの光を視神経に連結された網膜下の光電素子に人為的に照射して、前記光電素子から発生する電気信号で神経を刺激して多様な疾患治療に活用しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、LED光源を含むコンタクトレンズ;および電子薬デバイスを含み、
前記電子薬デバイスは、網膜下(sub-retinal)視神経に移植(implant)され、
前記電子薬デバイスは、前記LED光源から照射された光を電気信号に変換する電子薬システムを提供する。
【0008】
また、本発明は、定められた時間にコンタクトレンズ内のLED光源から電子薬デバイスに光を照射する段階;および
前記照射された光を電子薬デバイスの光電素子で電気信号に変換し、電流を発生させて視神経を刺激する段階を含み、
前記電子薬デバイスは、網膜下(sub-retinal)視神経に移植(implant)される電子薬システムの駆動方法を提供する。
【0009】
また、本発明は、前述した電子薬システムを使用した疾病の治療方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、視神経に連結された電子薬デバイスにコンタクトレンズ中のLED光源から発生した可視光線あるいは赤外線などの光を人為的に照射して、前記電子薬デバイスの光電素子から発生する電流で神経を刺激して多様な疾患の治療に活用することができる。
【0011】
本発明は、電子薬デバイスに別途の電源供給源がなくても、駆動が可能であるという長所を有する。また、コンタクトレンズに含まれたLED光源を介して光源を照射するので、レンズにおけるLED光源の位置調節を通じて電子薬デバイスまで光源が安定的に到達することができ、時間および場所などに影響を受けず、電子薬システムを容易に使用することができる。また、LED光源を使用するので、波長別光源の選択が容易であり、光量を調節が可能であるという長所を有する。
【0012】
本発明の電子薬システムは、アルツハイマーおよびパーキンソン病のような脳疾患;糖尿、肥満、高血圧のような代謝性疾患;関節炎;感染;炎症性疾患;および視神経疾患を含む神経刺激を通じて治療できる多様な疾患に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1は、本発明によるコンタクトレンズのLED光源を利用した電子薬システムを示す。
図2は、本発明によるオンデマンド半導体素子の設計および製作例を示す。
図3は、本発明によるコンタクトレンズの製造工程を示す。
図4は、本発明によるコンタクトレンズの設計図を示す。
図5は、本発明による柔軟性透明基板に製作した金パッドを示す。
図6は、本発明による柔軟性透明基板上のフリップ-チップボンディングおよびLED光源のAgエポキシボンディング工程の写真を示す。
図7は、本発明による常用フォトダイオードと多重金バンプの形成および柔軟性透明基板に超小型光電素子を製作した写真を示す。
図8は、本発明によるPCB基板に超小型無線駆動モジュールを製作した写真を示す。
図9は、本発明によるコンタクトレンズの駆動例を示す。
図10は、本発明によるコンタクトレンズの動物への適用例を示す。
図11は、本発明によるコンタクトレンズと光電素子を利用した電子薬システムの光電流測定結果を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、LED光源を含むコンタクトレンズ;および電子薬デバイスを含み、
前記電子薬デバイスは、網膜下(sub-retinal)視神経に移植(implant)され、
前記電子薬デバイスは、前記LED光源から照射された光を電気信号に変換する電子薬システムに関する。
【0015】
以下、本発明の電子薬システムをより詳細に説明する。
【0016】
本発明による電子薬システムは、神経刺激を通じて治療できる疾患の治療のために使用され得る。
【0017】
前記神経刺激を通じて治療できる疾患は、特に制限されず、例えば、アルツハイマーおよびパーキンソン病のような脳疾患;糖尿、肥満、高血圧のような代謝性疾患;関節炎;感染;炎症性疾患;および視神経疾患よりなるグループから選択され得る。この際、視神経疾患の治療は、視力治療を意味する。
【0018】
本発明の電子薬システムは、コンタクトレンズおよび電子薬デバイスを含む。
【0019】
本発明においてコンタクトレンズは、シリコーンエラストマー(Silicone elastomer)の弾性重合体;シリコーンハイドロゲル(Silicone hydrogel);ポリジメチルシロキサン(PDMS);ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)(PHEMA);およびポリエチレングリコールメタクリレート(poly(ethylene glycol)methacrylate,PEGMA);よりなるグループから選択された一つ以上の高分子を基盤とすることができる。
【0020】
本発明においてコンタクトレンズ(以下、スマートレンズと表現することができる。)は、LED光源(LED light source)を含む。
【0021】
日常生活における光は、可視光線および紫外線であって、身体あるいは眼球内浸透される光量は非常に少ない。赤色光源および赤外線は、最大数cmまで透過が可能で、体内細胞治療に用いられる。
【0022】
本発明では、このような光源をコンタクトレンズに適用させて、前記光源を視神経まで安定的に伝達した。例えば、コンタクトレンズに含まれたLED光源を瞳孔の中央に位置させて光を照射する場合、紫外線、青色、緑色および/または赤色光源などの光源は、視神経まで安定的に到達することができる。
【0023】
一具体例において、LED光源は、マイクロLED(MicroLED、mLED、μLED)でありうる。
【0024】
前記LED光源、すなわちマイクロLEDは、当業界において一般的に使用される製品を使用することができ、または直接製作して使用することができる。
【0025】
一具体例において、LED光源は、網膜に光を照射することができる。網膜下の電子薬デバイスでは、前記照射された光を電子信号に変換させるので、これを利用して疾病の治療に適用することができる。
【0026】
一具体例において、LED光源は、使用目的によって特定の波長の光を放出するLEDを選択して構成することができる。例えば、前記LED光源は、紫外線、青色、緑色、赤色および赤外線よりなるグループから選択された一つ以上の光源から構成され得る。
【0027】
また、一具体例において、コンタクトレンズ内のLED光源の位置は、特に制限されず、その位置を適切に調節することができる。例えば、網膜下に移植された電子薬デバイスの位置に合わせて前記LED光源の位置を調節することができ、具体的に、瞳孔の中央付近に位置させることができる。
【0028】
本発明では、LED光源の人為的駆動が可能であり、またLED光源の位置調節が可能であるので、波長別光源の選択および光量を調節して、眼球内所望の位置まで光(光源) が到達するようにすることができる。
【0029】
一具体例において、コンタクトレンズの内部には、透明基板が形成され得、前記LED光源は、透明基板上に形成され得る。
【0030】
前記透明基板は、光透過性に優れ、柔軟であり、伸縮性を有することができる。また、透明基板は、生体適合性に優れた特性を有する。このような透明基板は、パリレンC(Parylene C)PDMS、シリコーンエラストマー(Silicone elastomer)、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリイミド(PI)よりなるグループから選択された一つ以上を含むことができる。
【0031】
一具体例において、LED光源は、前記透明基板上で眼球側方向の面に形成され得る。
【0032】
本発明のコンタクトレンズは、前述したLED光源の他にオンデマンド型半導体素子(ASIC,Application Specific Integrated Circuit)、バッテリーおよびアンテナよりなるグループから選択された一つ以上をさらに含むことができる。
【0033】
一具体例において、オンデマンド型半導体素子(ASIC)は、LED光源の無線制御および電力伝送などのために使用することができる。このようなオンデマンド型半導体は、1.デジタル制御(Digital control)、2.緩和発振器(Relaxation oscillator)、3.キャリア周波数発生器(Carrier frequency generator)、4.バンドギャップ・リファレンス発生器(Bandgap reference generator)、5.Vdd発生器(Vdd generator)などから構成され得る。前記オンデマンド型半導体は、目的する用途に合わせて製作して使用することができる。
【0034】
一具体例において、バッテリーは、充電が可能であり、柔軟性を有する薄膜型バッテリーでありうる。前記薄膜型バッテリーを使用してンタクトレンズの無線駆動を可能にすることができ、外部でパワーを供給せずに動作可能なシステムを具現することもできる。
【0035】
前記バッテリーは、コンタクトレンズを構成している素子に電力を供給することができる。また、反復的な曲げまたは変形にもバッテリーの破損がなく、レンズに適用したときに密封され、眼球内安定性を確保することができる。前記薄膜型バッテリーは、当業界において使用される製品を使用することができ、直接製作して使用することができる。
【0036】
一具体例において、アンテナは、誘導電流および電磁界共鳴を通じて電力および信号を外部に送信および受信することができる。前記アンテナは、円形の構造を有する円形アンテナでありうる。
【0037】
前記アンテナは、ナノ物質から構成され得、前記ナノ物質は、ナノ粒子である0次元物質;ナノワイヤー、ナノファイバーまたはナノチューブである1次元ナノ物質;およびグラフェン、MoSまたはナノフレークである2次元ナノ物質よりなるグループから選択された一つ以上を含むことができる。
【0038】
一具体例において、アンテナは、外部で発生したパワー、すなわち無線電力を受信するための無線電気アンテナおよびデータ通信のためのRF(Radio Frequency)アンテナから構成され得る。
【0039】
特に、本発明では、無線電気アンテナを使用して、バッテリーの役割を補完することができる。前記無線電気アンテナは、後述するスマートメガネの無線電気コイルで発生したパワーを受信することができる。前記受信されたパワーは、オンデマンド型半導体素子の制御を通じてLED光源の駆動などに使用することができる。
【0040】
一具体例において、前述したオンデマンド型半導体素子、バッテリーおよびアンテナは、透明基板上に形成されて、製作および駆動を容易にすることができる。前記オンデマンド型半導体素子、バッテリーおよびアンテナは、透明基板上で眼球側方向の面、すなわちLED光源と同じ面に形成され得る。
【0041】
本発明の電子薬システムは、電子薬デバイスを含む。
【0042】
本発明において電子薬デバイスは、患者に移植(インプラント、implant)されて、患者の疾病および/または障害を治療するために、患者の神経に電気刺激を提供する機器を意味する。
【0043】
一具体例において、電子薬デバイスは、網膜下(sub-retinal)視神経に移植され、前記視神経(視神経組織)と連結され得る。
【0044】
一具体例において、電子薬デバイスは、光電素子を含む。
【0045】
前記光電素子は、LED光源から照射された光(光源)を電子信号に変換する機能を行い、別途の電圧あるいは電流源がない状態でも電流を発生させることができる。
【0046】
前記光電素子は、視神経組織と連結され得る。具体的に、光電素子の負(-)および/または正(+)電極からつながった配線に位置するバンプ(bump)が視神経と連結され得る。この際、前記バンプとして金バンプを使用することができる。前記連結は、当業界の一般的な方法により行われ得る。
【0047】
本発明では、視神経組織と連結された光電素子、すなわち電子薬システムをコンタクトレンズと連動することによって、人為的に視神経に電気刺激を付与することができる。したがって、本発明の電子薬デバイスを光電インプラントと表現することができる。
【0048】
一具体例において、電子薬デバイスは、侵襲素子の駆動のための別途の回路および電力源が必要なく、単一素子である光電素子と連結部品だけから構成されて、必要な電流刺激を制御することができる。
【0049】
また、本発明の電子薬システムは、スマートメガネをさらに含むことができる。
【0050】
本発明においてスマートメガネは、無線で電気的な信号を送信または受信して、前記コンタクトレンズのLED光源の駆動を調節することができる。前記スマートメガネの駆動電源は、充電が可能なリチウムイオンバッテリーを使用することができ、スマートメガネにあるブルートゥース(bluetooth)モジュールを利用してスマート機器と無線通信を行うことができる。
【0051】
前記スマートメガネは、スマートフォン、スマート時計またはPCとペアリングされ得る。パワーは、内蔵されたリチウムイオン電池を使用することができ、自己パワーリングのためにフォトセルが挿入され得る。前記スマートメガネの総重さは、20g未満であり、Wi-Fi 802.11b/g、Bluetooth、micro USBが可能になり得る。
【0052】
また、本発明は、前述した電子薬システムの製造方法に関する。前述したように、電子薬システムは、コンタクトレンズおよび電子薬デバイスを含む。
【0053】
本発明においてLED光源などを延伸基板上に構成する場合、コンタクトレンズは、(S1)ハンドリング基板上に水に溶解する犠牲層を形成する段階;
(S2)前記犠牲層上に透明基板を形成する段階;
(S3)前記透明基板上にLED光源を形成する段階;および
(S4)前記LED光源が形成された透明基板をコンタクトレンズ内に転写させる段階を含むことができる。
【0054】
段階(S1)は、ハンドリング基板(handling substrate)上に犠牲層を形成する段階である。
【0055】
前記犠牲層は、ハンドリング基板と透明基板の間の接着層の役割を行うことができ、LED光源が形成された透明基板の転写(transfer)を助けることができる。このような犠牲層は、水に溶解することができると、特に制限されず、ポリビニルアルコール(PVA)およびデキストラン(DEXTRAN)よりなるグループから選択された一つ以上を含むことができる。
【0056】
段階(S2)は、犠牲層上に透明基板を形成する段階であって、犠牲層は、接着剤の役割を行う。したがって、前記透明基板は、ハンドリング基板と容易に付着され得、以後工程で犠牲層の溶解を通じてハンドリング基板から容易に剥離され得る。
【0057】
一具体例において透明基板は、光透過性に優れた材料を使用することができ、前述した種類を使用することができる。
【0058】
段階(S3)は、透明基板上にLED光源を形成する段階である。
【0059】
一具体例において、LED光源は、人体適合性エポキシ、例えば、Agエポキシなどを使用して透明基板に接合させることができる。
【0060】
また、段階(S4)は、LED光源が形成された透明基板をコンタクトレンズ内に転写させる段階である。
【0061】
犠牲層上に製作されたLED光源は、生体親和的な水で犠牲層を溶かしながら転写(fransfer)され得る。
【0062】
また、本発明は、透明基板上にオンデマンド型半導体素子、バッテリおよびアンテナを形成する段階をさらに含むことができる。前記段階は、段階(S3)の実行時に行われ得る。
【0063】
一具体例において、オンデマンド型半導体素子は、透明基板に金あるいはアルミニウムなどの金属を蒸着した後、フォトリソグラフィ工程を利用したエッチング方法により金属パッドを形成する段階;および
【0064】
前記金属パッドにフリップ-チップボンディング工程を用いて素子を接合する段階を通じて製造され得る。
【0065】
前記フリップ-チップボンディング工程では、非導電性接着剤を利用して超音波および熱圧着工程を用いて素子をボンディングすることができる。
【0066】
一具体例において、バッテリーは、LED光源と同じ方法で透明基板に形成され得る。
【0067】
また、一具体例において、アンテナは、(a1)透明基板上にパターニングのためのマスク物質を形成する段階;
(a2)前記マスク物質が形成された透明基板にナノ物質をリフト-オフ工程を用いてコーティングして、センサーおよび回路をパターニングする段階;および
(a3)前記パターニングされたセンサーおよび回路上にパッシベーション層を形成する段階を通じて製造され得る。
【0068】
段階(a1)は、透明基板上にパターニングのためのマスク物質を形成する段階である。
【0069】
前記マスク物質は、シャドウマスクの役割を行うことができ、マスク物質を使用してナノ物質をパターニングすることができる。このようなマスク物質としてフォトレジスト(Photoresist)に使用できる物質を使用することができ、具体的にLOF,AZシリーズなどを使用することができる。
【0070】
段階(a2)は、マスク物質が形成された透明基板にナノ物質をリフト-オフ工程を用いてコーティングして、センサーおよび回路をパターニングする段階である。
【0071】
前記段階を通じてナノ物質のパターンを形成することができる。前記ナノ物質は、前述した種類を使用することができ、具体的に銀ナノワイヤーを使用することができる。
【0072】
前記段階で製造されるナノ物質は、アンテナとして作用することができる。
【0073】
また、前記段階で製造された回路は、LED光源、半導体素子、アンテナおよびバッテリーを連結する役割を行うことができる。
【0074】
段階(a3)は、前記パターニングされたアンテナおよび回路上にパッシベーション層を形成する段階である。
【0075】
前記パッシベーション層を形成してナノ物質の損失を防止し、電気的安定性を向上させることができる。
【0076】
本発明において電子薬デバイスは、体内挿入のために光電素子を包装して製造することができる。この際、包装材料として生体適合性樹脂を使用することができ、前記生体適合性樹脂としてエチレンビニルアセテート(EVA)、ポリウレタン(PUR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ塩化ビニル(PVC)を使用することができる。前記包装時に、光電流の効率の低下を防ぐために、吸光部分(window)に蒸着されている無反射コーティング(antireflection coating)処理部分を考慮して光波長ガイド(light waveguide)処理を行うことができる。
【0077】
また、本発明は、前述した電子薬システムの駆動方法に関する。
【0078】
前記駆動方法は、定められた時間にコンタクトレンズ内のLED光源から電子薬デバイスに光を照射する段階;および
前記照射された光を電子薬デバイスの光電素子で電気信号に変換し、電流を発生させて視神経を刺激する段階を含むことができる。
【0079】
一具体例において、コンタクトレンズのLED光源では、定められた時間に網膜下視神経に移植されている電子薬デバイスに光を照射することができる。また、電子薬デバイスの光電素子は、照射された光を電気信号に変換し、電流を発生させて視神経を刺激することができる(図1参照)。この際、LED光源の駆動または制御は、オンデマンド型半導体素子により行われ得る。
【0080】
一具体例において、電子薬システムは、スマートメガネをさらに含むことができる。前記スマートメガネの無線電気コイルで発生したパワーである無線電力は、コンタクトレンズの無線電気アンテナで受信され、オンデマンド型半導体素子の制御を通じて受信されたパワーをLED光源の駆動に使用することができる。
【0081】
また、本発明は、前述した電子薬システムを使用した疾患の治療方法に関する。
【0082】
本発明では、電子薬デバイスの光電素子においてコンタクトレンズのLED光源から照射された光を電気信号に変換し、電流を発生させて視神経を刺激することによって、疾患を治療することができる。
【0083】
前記疾患は、神経刺激を通じて治療できる疾患であって、例えば、アルツハイマーおよびパーキンソン病のような脳疾患;糖尿、肥満、高血圧のような代謝性疾患;関節炎;感染;炎症性疾患;視神経疾患よりなるグループから選択され得る。この際、視神経疾患の治療は、視力治療を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0084】
以下、本発明を下記実施例により詳細に説明する。ただし、下記実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記実施例に限定されるものではない。
【0085】
実施例.
製造例1.コンタクトレンズの製造
(1)オンデマンド型半導体の設計および製作
LED光源の無線制御および電力伝送のために、1.デジタル制御(Digital control)、2.緩和発振器(Relaxation oscillator)、3.キャリア周波数発生器(Carrier frequency generator)、4.バンドギャップ・リファレンス発生器(Bandgap reference generator)、5.Vdd発生器(Vdd generator)などから構成された回路が含まれたオンデマンド型半導体素子が必要である。本オンデマンド型半導体素子を使用してコンタクトレンズの無線電力伝達および駆動が可能であり、電流および光照射タイミングの制御が可能である。光源は、紫外線、青色、緑色、赤色、赤外線発光LEDを適用することができる。
【0086】
前記オンデマンド型半導体素子は、まず、コンピュータシミュレーション、レイアウト生成(Layout generation)およびTCADシミュレーションの段階を経て製作が可能であり、自体消費電力を考慮してCMOS 0.18μm以下の工程で製作した(図2)。
【0087】
(2)コンタクトレンズの製造
(1)で製作されたオンデマンド型半導体素子およびLED光源を使用してコンタクトレンズを製造した。
前記コンタクトレンズの製造方法を図3に示した。図3のように、本発明のコンタクトレンズは、金属蒸着(Metal Deposition)、フォトリソグラフィ(Photolithography)、フリップ-チップボンディング(Flip Chip Bonding)、LEDボンディング(LED Bonding)およびコンタクトレンズ製造(Contact Lens)工程を用いて製造された。
【0088】
具体的に、30μm以下の柔軟性透明基板に金あるいはアルミニウムなどの金属を200~500nmで蒸着した後、フォトリソグラフィ工程を利用した湿式/乾式エッチング方法を利用してパッドを形成した。その後、フリップ-チップボンディング(Flip-Chip bonding)工程を使用して、前記柔軟性透明基板上にオンデマンド型半導体素子を非伝導性接着剤を利用して超音波および熱圧着工程でボンディングした。LED光源、バッテリー、電圧および電流制御のためのコンデンサおよび抵抗などは、柔軟性プラスチック基板の耐熱性を考慮して人体適合性エポキシ(Ag epoxy)などを利用してボンディングした。
【0089】
各素子が接合された透明基板は、レーザーカッター(Laser cutter)などで素子部分だけを切削した後、人体適合性シリコーンエラストマー(Si elastomer)などでレンズを製作した。
【0090】
以後、アンテナおよびRF伝送処理機能がある駆動ボードを通じてコンタクトレンズを駆動した。
【0091】
本発明において図4は、本発明によるコンタクトレンズの設計図を示す。図4に示されたように、本発明では、LED光源、オンデマンド型半導体素子(ASIC CHIP)、アンテナなどを含むコンタクトレンズを製造することができる。
【0092】
また、図5は、本発明による柔軟性透明基板に製作した金パッドを示す。前記金パッドにフリップ-チップボンディング工程を用いて半導体素子を容易にボンディングすることができる。
【0093】
また、図6は、柔軟性透明基板上のフリップ-チップボンディング(左側および中間写真)およびLED光源などのAgエポキシボンディング後の写真(右側写真)を示す。図6より、透明基板上にパターニングボンディングされたオンデマンド型半導体素子のフリップ-チップボンディング結果を確認することができる。また、LED光源、コンデンサ、バッテリー、抵抗などの電子素子をAgエポキシを利用してボンディング後に作動状態を確認することができる。
【0094】
製造例2.網膜下電子薬デバイスの製作
光電素子は、常用化された高性能フォトダイオードを使用して、光源の波長によって最適化された構造の素子を使用した。また、フォトダイオードは、目的および必要電流によって数十μmから数mmのサイズの製品を使用した。
【0095】
前記光電素子の体内挿入のために生体適合性樹脂を利用した包装工程を行った。前記包装工程時に、光電流の効率の低下を防ぐために、吸光部分(window)に蒸着されている無反射コーティング(antireflection coating)処理部分を考慮して光波長ガイド(light waveguide)処理を行った。また、視神経組織との連結のために、微細な金バンプ(gold bump)を形成して、前記光電素子に多重連結した。
【0096】
本発明において図7は、常用フォトダイオード(左側写真)と多重金バンプの形成(中間の二つの写真)および柔軟性基板に超小型光電素子の製作(右側写真)の例を示す。
【0097】
図7に示されたように、柔軟な透明基板上に構成されたフォトダイオードおよび視神経と連結のために構成された金バンプを確認することができる。
【0098】
製造例3.柔軟性超小型モジュールの開発
光電素子、シグナル増幅器、無線モジュール、バッテリーなど必須コンポーネントに対する回路構成で超小型モジュールを設計し、データ処理およびキャリブレーション(calibration)、モード制御(mode control)機能は、ソフトウェアで処理した。
【0099】
PCBおよび柔軟性基板(FPCB,Polyimide)から構成するとき、デバイスのサイズは、最小20cm程度に製作し、バンド型モジュールで製作した。メガネ用モジュールの場合、適用部位によって横、縦の比率を流動的に調節することができる。
【0100】
図8は、PCB基板に製作した超小型モジュールの設計および製作例を示す。
【0101】
図8に示されたように、PCBモジュール上、製作が可能であり、アンテナは、用途によって無線同軸ケーブルを利用して位置を調節することができる。本モジュールは、内蔵バッテリーあるいはUSB電源で動作することができる。
【0102】
また、図9は、コンタクトレンズの駆動例を示す。
【0103】
図9の左側写真は、LED光源、オンデマンド型半導体素子、アンテナを含むコンタクトレンズの写真である。中間および右側写真より、本実施例で製造されたコンタクトレンズのアンテナにモジュールを直接連結したりまたはケーブルに連結することによって、コンタクトレンズの駆動が可能であることを確認することができる。
【0104】
また、図10は、本発明によるコンタクトレンズの動物への適用例を示す。
【0105】
実験用ウサギを対象にコンタクトレンズ実験を進行し、PCBモジュールとケーブルを通じて無線駆動が可能な赤色LED光源を含むコンタクトレンズの作動を確認することができる。
【0106】
実験例1.コンタクトレンズのLED光源により光電素子で発生した光電流の測定
(1)方法
無線駆動モジュールを利用して、赤色LED光源を含むコンタクトレンズおよび光電素子の駆動を実施した。
【0107】
具体的に、本実験例では、コンタクトレンズの赤色LED光源を利用して石英キューベット(cuvette)に入れたヒツジ(sheep)の血液に対する透過度実験を進めた。光源と光電素子は、2cm距離の間にサンプル血液を位置させて進めた。
【0108】
(2)結果
測定結果を図11に示した。
【0109】
図11は、コンタクトレンズの赤色LED光源により光電素子で発生した光電流を測定結果を示す。
【0110】
図11に示されたように、キューベット内存在する血液を透過して発生した光電流は、約30nAであることが確認される。光電流は、光源との距離、フォトダイオードのサイズに比例することを確認することができる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の電子薬システムは、アルツハイマーおよびパーキンソン病のような脳疾患;糖尿、肥満、高血圧のような代謝性疾患;関節炎;感染;炎症性疾患;および視神経疾患を含む神経刺激を通じて治療できる多様な疾患に適用可能である。
本明細書の開示内容は、以下の態様を含み得る。
(態様1)
LED光源を含むコンタクトレンズ;および電子薬デバイスを含み、
前記電子薬デバイスは、網膜下(sub-retinal)視神経に移植(implant)され、
前記電子薬デバイスは、前記LED光源から照射された光を電気信号に変換する電子薬システム。
(態様2)
神経刺激を通じて治療できる疾患の治療用である、態様1に記載の電子薬システム。
(態様3)
疾患は、アルツハイマーおよびパーキンソン病のような脳疾患;糖尿、肥満、高血圧のような代謝性疾患;関節炎;感染;炎症性疾患;および視神経疾患よりなるグループから選択されるものである、態様2に記載の電子薬システム。
(態様4)
コンタクトレンズは、シリコーンエラストマー(Silicone elastomer)の弾性重合体;シリコーンハイドロゲル(Silicone hydrogel);ポリジメチルシロキサン(PDMS);ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)(PHEMA);およびポリエチレングリコールメタクリレート(poly(ethylene glycol)methacrylate,PEGMA);よりなるグループから選択された一つ以上を基盤とするものである、態様1に記載の電子薬システム。
(態様5)
LED光源は、透明基板上に形成され、
前記透明基板は、パリレンC(Parylene C)、PDMS、シリコーンエラストマー(Silicone elastomer)、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリイミド(PI)よりなるグループから選択された一つ以上を含むものである、態様1に記載の電子薬システム。
(態様6)
コンタクトレンズは、オンデマンド型半導体素子、アンテナおよびバッテリーよりなるグループから選択された一つ以上をさらに含むものである、態様1に記載の電子薬システム。
(態様7)
電子薬デバイスは、光電素子を含み、
前記光電素子は、LED光源から照射された光を電気信号に変換するものである、態様1に記載の電子薬システム。
(態様8)
光電素子は、視神経組織と連結されて、前記光電素子から発生した電流で神経を刺激するものである、態様7に記載の電子薬システム。
(態様9)
光電素子の電極からつながった配線に位置するバンプ(bump)と視神経組織が連結されるものである、態様8に記載の電子薬システム。
(態様10)
電子薬システムは、スマートメガネをさらに含み、
前記スマートメガネから送信された電気的な信号を通じて駆動するものである、態様1に記載の電子薬システム。
(態様11)
定められた時間にコンタクトレンズ内のLED光源から電子薬デバイスに光を照射する段階;および
前記照射された光を電子薬デバイスの光電素子で電気信号に変換し、電流を発生させて視神経を刺激する段階を含み、
前記電子薬デバイスは、網膜下(sub-retinal)視神経に移植(implant)される電子薬システムの駆動方法。
(態様12)
コンタクトレンズ内のLED光源の駆動は、オンデマンド型半導体素子により制御されるものである、態様11に記載の電子薬システムの駆動方法。
(態様13)
スマートメガネをさらに含み、
前記スマートメガネの無線電気コイルで発生した無線電力は、コンタクトレンズのアンテナで受信され、オンデマンド型半導体素子の制御を通じて受信された電力をLED光源の駆動に使用するものである、態様11に記載の電子薬システムの駆動方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11