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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/10 20120101AFI20220708BHJP
   B60K 6/445 20071001ALI20220708BHJP
   B60K 6/383 20071001ALI20220708BHJP
   B60W 20/17 20160101ALI20220708BHJP
   F16D 41/12 20060101ALI20220708BHJP
【FI】
B60W10/10 900
B60K6/445 ZHV
B60K6/383
B60W20/17
F16D41/12 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020523870
(86)(22)【出願日】2018-06-05
(86)【国際出願番号】 JP2018021492
(87)【国際公開番号】W WO2019234811
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000154347
【氏名又は名称】株式会社ユニバンス
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】加藤忠彦
【審査官】篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-209882(JP,A)
【文献】特開2016-175575(JP,A)
【文献】特開2013-095386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 - 20/50
B60K 6/20 - 6/547
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 15/42
F16H 3/00 - 3/78
F16D 41/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンに接続された入力部材と、
前記入力部材の動力を断接する第1クラッチと、
車輪に接続された出力部材と、
前記入力部材に接続された回転要素、第1回転電機に接続された回転要素、前記出力部材および第2回転電機に接続された回転要素を有する差動装置と、
前記回転要素のうちいずれか2つの回転要素を連結する第2クラッチと、
前記第2クラッチを切る状態と前記第2クラッチがつながる状態とを切り換える切換装置と、を備え、
前記第2クラッチは、前記2つの回転要素の相対回転の向きが第1方向のときに係合できる第1係合子と、
前記2つの回転要素の相対回転の向きが前記第1方向と反対の第2方向のときに係合できる第2係合子と、
前記第2係合子に干渉して前記第2係合子を係合できなくするリテーナと、を備え、
前記切換装置により前記第2クラッチがつながる状態になると、前記第2クラッチは、前記2つの回転要素の相対回転の向きが前記第2方向のときに前記リテーナにより相対回転を許容し、前記2つの回転要素の相対回転の向きが前記第1方向のときに前記第1係合子により連結し、
前記第2クラッチがつながった後は、前記第1係合子により前記リテーナが干渉しなくなり、前記2つの回転要素の相対回転の向きが前記第2方向のときに前記第2係合子が係合して前記2つの回転要素は一体に回転する車両用駆動装置。
【請求項2】
前記第2クラッチが連結する前記2つの回転要素は、一方が前記エンジンに駆動される駆動側、他方が被動側であり、
前記第2クラッチは、前記駆動側の回転要素の回転数が前記被動側の回転要素の回転数より高くなると連結する請求項1記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記第2クラッチは、前記差動装置の軸線に交差する第1面を有する第1部材と、
前記第1面と前記軸線の方向に対向する第2面を有する第2部材と、を備え、
前記第1部材は、前記第1面の前記軸線を中心とする円周上に複数の第1穴が形成され、
前記第1穴の各々に前記第1係合子が揺動可能に配置され、
前記第2部材は、前記第2面の前記軸線を中心とする円周上に複数の第2穴が形成され、
前記第2クラッチをつなぐときは前記第1係合子が前記第1穴の縁部および前記第2穴の縁部にそれぞれ係合する請求項1又は2に記載の車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジン及び回転電機を併用するハイブリッド車両に用いられる車両用駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジン及び回転電機を併用する車両に用いられる車両用駆動装置として、特許文献1に、エンジンに接続された入力部材と、車輪に接続された出力部材と、入力部材に接続された回転要素、第1回転電機に接続された回転要素、並びに、出力部材および第2回転電機に接続された回転要素を有する差動装置と、を備えるものが開示されている。この車両用駆動装置は、エンジンを停止した状態で、第1回転電機および第2回転電機のトルクを出力部材に伝達し、車両を走行させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-18356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、回転電機は回転数が低いほど駆動力が大きいので、上記従来の技術では、車両の速度が上がり回転電機の回転数が高くなると推進力が急激に低下する。推進力の低下を補うためにエンジンを駆動すると、差動装置を介してエンジンに繋がる第1回転電機の駆動力は伝達されない状態になるので、推進力はそれほど大きくならない。第1回転電機の駆動力の低下を補うために加速時にエンジンの回転数を高くし出力を大きくすると、2つの回転電機を駆動した程度の推進力は得られるものの、騒音(エンジン音)が激しくなり車両の静粛性が失われる。
【0005】
本発明はこの問題点を解決するためになされたものであり、加速時に静粛性を確保しつつ強い推進力が得られる車両用駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明の車両用駆動装置は、エンジンに接続された入力部材と、入力部材の動力を断接する第1クラッチと、車輪に接続された出力部材と、入力部材に接続された回転要素、第1回転電機に接続された回転要素、並びに、出力部材および第2回転電機に接続された回転要素を有する差動装置と、いずれか2つの回転要素を連結する第2クラッチと、第2クラッチを切る状態と第2クラッチがつながる状態とを切り換える切換装置と、を備える。切換装置により第2クラッチがつながる状態になると、第2クラッチは、2つの回転要素の相対回転の向きが第2方向のときに相対回転を許容し、2つの回転要素の相対回転の向きが第2方向と反対の第1方向のときに連結する。第2クラッチがつながった後は2つの回転要素の相対回転の向きが第2方向のときも2つの回転要素は一体に回転する。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の車両用駆動装置によれば、切換装置により、差動装置の回転要素のいずれか2つを連結する第2クラッチを切る状態と第2クラッチがつながる状態とが切り換えられる。切換装置により第2クラッチがつながる状態になると、第2クラッチは、2つの回転要素の相対回転の向きが第2方向のときに相対回転を許容し、2つの回転要素の相対回転の向きが第1方向のときに連結する。これにより、第2クラッチをつなぐために2つの回転要素の回転数を合わせる制御を不要にできる。第2クラッチがつながると回転要素が一体に回転するので、エンジンの回転数に応じて、出力部材、第1回転電機および第2回転電機の回転数が定められる。よって、加速時に強い推進力が得られる。また、第1回転電機および第2回転電機によってエンジンの回転数が制限されるので、加速時に騒音が激しくならないようにすることができ、静粛性を確保できる。
【0008】
請求項2記載の車両用駆動装置によれば、第2クラッチが連結する2つの回転要素は、一方がエンジンに駆動される駆動側、他方が被動側であり、第2クラッチは、駆動側の回転要素の回転数が被動側の回転要素の回転数より高くなると連結する。これにより、エンジンの回転数を高くしていくと第2クラッチが衝撃なくつながり、強い推進力が得られる。よって、請求項1の効果に加え、第2クラッチがつながるときの衝撃を抑制しつつ操縦の入力に対する応答性を良くすることができる。
【0009】
請求項3記載の車両用駆動装置によれば、第2クラッチは、差動装置の軸線に交差する第1面を有する第1部材と、第1面と軸線の方向に対向する第2面を有する第2部材と、を備える。第1部材は、第1面の軸線を中心とする円周上に複数の第1穴が形成され、第1穴の各々に第1係合子が揺動可能に配置され、第2部材は、第2面の軸線を中心とする円周上に複数の第2穴が形成される。第1部材の第1面に形成された第1穴に第1係合子が配置され、第1面に対向する第2部材の第2面に形成された第2穴の縁部と第1穴の縁部とに第1係合子が係合して第2クラッチがつながるので、第2クラッチの軸線方向の長さを短くできる。よって、請求項1又は2の効果に加え、第2クラッチが配置されたことによる車両用駆動装置の軸線方向の長さの増加を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施の形態における車両用駆動装置のスケルトン図である。
図2】第2クラッチの断面図である。
図3図2のIII-III線における第2クラッチの断面図である。
図4図2のIV-IV線における第2クラッチの断面図である。
図5】(a)は滑り状態にある第2クラッチの模式図であり、(b)はつながった第2クラッチの模式図である。
図6】車両用駆動装置の電気的構成を示すブロック図である。
図7】(a)は第1マップの模式図であり、(b)は第2マップの模式図である。
図8】(a)はEVモードの共線図であり、(b)はパワーEVモードの共線図であり、(c)はHVモードの共線図であり、(d)はパワーHVモードの共線図である。
図9】パワーモード処理のフローチャートである。
図10】(a)は第2実施の形態における車両用駆動装置のスケルトン図であり、(b)は第3実施の形態における車両用駆動装置のスケルトン図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず図1を参照して車両用駆動装置10の構成について説明する。図1は第1実施の形態における車両用駆動装置10のスケルトン図である。
【0012】
図1に示すように車両用駆動装置10は、エンジン(ICE)13に接続された入力部材14、第1回転電機(MG1)11及び第2回転電機(MG2)12に接続された差動装置20、車輪29に接続された出力部材27、第2クラッチ30及び切換装置60を備えている。なお、回転電機は、モータ、ジェネレータ、及び、必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすジェネレータモータのいずれをも含む概念である。
【0013】
エンジン13はガソリンエンジンやディーゼルエンジン等が用いられる。入力部材14は例えば軸部材で構成される。入力部材14はエンジン13の出力軸であるクランクシャフト等に接続される。エンジン13の出力軸と入力部材14とは、直接的に連結されていても良いし、ダンパ等の他部材を介して連結されていても良い。
【0014】
入力部材14と車両用駆動装置10のケース15との間に第1クラッチ16が配置されている。本実施形態では第1クラッチ16はワンウェイクラッチであり、入力部材14の正回転を許容し、入力部材14の逆回転を規制する。入力部材14の正回転は、エンジン13の出力軸(クランクシャフト等)の回転方向と同じ回転方向である。
【0015】
差動装置20は、本実施形態ではシングルピニオン型の遊星歯車装置である。差動装置20は、サンギヤ21、キャリヤ22及びリングギヤ23の3つの回転要素を有する。サンギヤ21は、第1回転電機11の出力軸である第1ロータ軸17に連結されている。キャリヤ22は入力部材14に連結されている。リングギヤ23はカウンタギヤ24にかみ合う。
【0016】
カウンタギヤ24は、第2回転電機12の出力軸である第2ロータ軸18に連結する駆動ギヤ25にかみ合う。チェーン26は、カウンタギヤ24と出力部材27との間に掛け渡されている。出力部材27は、出力用差動装置28を介して車輪29に駆動力を伝達する。本実施形態では、出力部材27は、出力用差動装置28のケースと一体に回転する部材によって構成されている。出力用差動装置28を介して車輪29に接続された出力部材27は、カウンタギヤ24及びチェーン26を介してリングギヤ23に接続されている。
【0017】
第2クラッチ30は、差動装置20の回転要素のうちいずれか2つを連結する装置である。本実施形態では、第2クラッチ30はキャリヤ22とリングギヤ23との間において動力の伝達・遮断を行う機能をもつ一種のかみ合いクラッチである。切換装置60は、第2クラッチ30を切る状態と第2クラッチ30がつながる状態とを切り換える装置である。
【0018】
図2は第2クラッチ30の軸線Oを含む断面図であり、図3図2のIII-III線における第2クラッチ30の断面図であり、図4図2のIV-IV線における第2クラッチ30の断面図である。理解を容易にするため、図2から図4では第2クラッチ30が結合するキャリヤ22やリングギヤ23の図示が省略されている。
【0019】
図2に示すように第2クラッチ30は、軸線Oを中心に回転する第1部材31及び第2部材50を備えている。本実施形態では、第1部材31及び第2部材50は、第1ロータ軸17及び差動装置20と同一の軸線O上に配置され、第1ロータ軸17に回転自在に固定されている。本実施形態では、第1部材31はキャリヤ22(図1参照)に連結され、第2部材50はリングギヤ23に連結されている。
【0020】
第1部材31は、軸線Oを中心とする円環状に形成される部材であり、軸線Oに交差する(本実施形態では軸線Oに直交する)平坦面状の第1面32に第1穴33及び第3穴35(図4参照)が複数形成されている。第1面32は、第2部材50の平坦面状の第2面51と軸線O方向に対向する。第1穴33及び第3穴35には、第2部材50側を向く第3面37がそれぞれ形成されている。
【0021】
第1穴33の第3面37には第1係合子40が配置され、第3穴35(図4参照)の第3面37には第2係合子43が配置されている。第3面37よりも第2部材50から離れた位置にある第1穴33の底面38と第1係合子40との間、第3穴35の底面38と第2係合子43との間に、圧縮ばね46がそれぞれ配置されている。圧縮ばね46は、第1係合子40及び第2係合子43を第2部材50側へ付勢する。第1部材31の第1面32には、第1係合子40及び第2係合子43と干渉するリテーナ47が配置されている。
【0022】
第2部材50は、軸線Oを中心とする円環状に形成される部材であり、軸線Oに交差する(本実施形態では軸線Oに直交する)平坦面状の第2面51に第2穴52が複数形成されている。第2穴52は、第1部材31に配置された第1係合子40及び第2係合子43(図4参照)が係合する部位である。
【0023】
図3に示すように第2穴52は、周方向に互いに間隔をあけて第2部材50に複数形成されている。第2穴52は同じ大きさであり、軸線方向から見て略矩形状である。第2穴52の周方向に対向する縁部53,54は、軸線Oを中心とする円周上に位置する。第2部材50は、第2穴52を周方向に繋ぐリング溝55が第2面51に形成されている。第2部材50は、リング溝55の溝底に連通するピン穴56が複数形成されている。
【0024】
図1に戻って説明する。ピン穴56は、第2部材50を軸線方向に貫通する。切換装置60は、リング61、ピン62、板部材63及びアクチュエータ64を備えている。リング61はリング溝55(図4参照)に収容され、ピン62はピン穴56に収容される。ピン62は、軸線Oの周りに配置された円環状の板部材63を介して、アクチュエータ64の軸線方向の力をリング61に伝達する。アクチュエータ64は板部材63及びピン62を介してリング61を軸線方向へ移動させる。
【0025】
図4に示すように第1部材31は、第1穴33及び第3穴35が周方向に交互に並んでいる。第1穴33及び第3穴35は軸線O方向から見て略矩形状である。本実施形態では、第1穴33の周方向の長さは第3穴35の周方向の長さよりも長い。第1穴33の縁部34及び第3穴35の縁部36は、軸線Oを中心とする円周上に位置する。第1部材31は、第1穴33及び第3穴35を周方向に繋ぐ円形の溝39が第1面32に形成されている。溝39は、第2部材50(図2参照)に配置されたリング61が進入する窪みである。
【0026】
第1係合子40は第1穴33に配置され、第2係合子43は第3穴35に配置される。第1係合子40は、矩形の板状の支柱41と、支柱41の端から支柱41の幅方向の両側に突出する腕42と、を備えている。第2係合子43は、矩形の板状の支柱44と、支柱44の端から支柱44の幅方向の両側に突出する腕45と、を備えている。第1係合子40は、第1穴33の第3面37上を周方向にスライドできる。第1係合子40及び第2係合子43は、第1部材31に配置される周方向の向きが異なる以外は同一の部品である。
【0027】
リテーナ47は円板状の部材であり、放射状に延びる複数の第1腕48及び第2腕49が、周方向に交互に配置されている。リテーナ47は、第1部材31に配置された圧縮ばね(図示せず)の復元力により、軸線Oを中心に第1方向(矢印F方向)に付勢されている。リテーナ47が第1方向(矢印F方向)に付勢された状態で、第1腕48は第1係合子40の支柱41の周方向の端面に当接し、第2腕49は第2係合子43の支柱44の一部を覆う。
【0028】
図5(a)は滑り状態にある第2クラッチ30の模式図であり、図5(b)はつながった第2クラッチ30の模式図である。図5(a)に示すように、第1穴33の第3面37に配置された第1係合子40と第1穴33の底面38との間に配置された圧縮ばね46は、第1係合子40の支柱41のうち腕42(図4参照)が設けられた部分と反対側の部分に弾性力(復元力)を加える。本実施形態では、圧縮ばね46はねじりコイルばねである。リテーナ47(図2参照)の第1腕48は第1係合子40の腕42側の支柱41の端面に押し当てられており、第1係合子40の腕42は第2部材50の第2面51に押さえられるので、第1係合子40は腕42を中心に揺動できる。
【0029】
しかし、切換装置60(図1参照)のリング61が第2穴52に進入している場合は(切換装置60がオフのとき)、第1係合子40は、リング61に当たって第2穴52に係合できない。一方、切換装置60を作動させてリング61が第2穴52から退出すると(切換装置60がオンのとき)、第2クラッチ30はつながる状態になる。しかし、図5(a)のように、第2部材50に対して第1部材31が第2方向(反矢印F方向)へ相対回転する場合は、第1係合子40は第2穴52に係合できないので、第2クラッチ30は滑り状態となる。このときの第2係合子43は、リテーナ47の第2腕49に支柱44の一部が覆われているので、第2穴52に進入できない。
【0030】
これに対し、切換装置60を作動させてリング61を第2穴52から退出させ、第2クラッチ30がつながる状態のときに(切換装置60がオンのとき)、第2部材50に対して第1部材31が第1方向(矢印F方向)へ相対回転すると、第2穴52に進入した第1係合子40が第1腕48を押し、リテーナ47は第2方向(反矢印F方向)へ回転する。その結果、図5(b)のように、第1係合子40はリテーナ47を押し退けて第1穴33の縁部34及び第2穴52の縁部53にそれぞれ係合する。連結された第1部材31及び第2部材50は第1方向(矢印F方向)へ一体に回転し、第2クラッチ30は動力を伝達する。
【0031】
また、第1係合子40に押し退けられたリテーナ47の第2腕49は第2係合子43を覆えなくなるので、第2係合子43は圧縮ばね46の弾性力によって第2部材50側へ起き上がる。第2部材50の第2穴52は、第2部材50側へ起き上がった第2係合子43が進入できる位置に形成されているので、第2係合子43は第2部材50の第2穴52に進入する。これにより、第2部材50に対して第1部材31が第2方向(反矢印F方向)へ相対回転する場合に、第2係合子43は第3穴35の縁部36及び第2穴52の縁部54にそれぞれ係合して、第1部材31及び第2部材50は第2方向(反矢印F方向)へ一体に回転し、動力を伝達する。
【0032】
第2クラッチ30を切るには、第1係合子40及び第2係合子43を第2部材50の第2穴52から退出させれば良い。第2部材50の第2面51に第1係合子40を接触させた状態で第2クラッチ30を切ることができるので、第2クラッチ30を切るための軸線方向の隙間(空間)をほとんど必要としない。よって、第2クラッチ30の軸線方向の長さを短くできる。その結果、第2クラッチ30が配置されたことによる車両用駆動装置10の軸線方向の長さの増加を抑制できる。
【0033】
図6は車両用駆動装置10の電気的構成を示すブロック図である。車両用駆動装置10は、装置の各部を制御するための主制御ユニット70を備えている。主制御ユニット70は、入出力ポート77を介して、MG1(第1回転電機)制御ユニット81、MG2(第2回転電機)制御ユニット82及びエンジン制御ユニット83との間で相互に情報伝達が可能な状態に接続されている。
【0034】
主制御ユニット70は、CPU71、ROM72及びRAM75を備えている。ROM72は、CPU71により実行される制御プログラム(例えば図9に図示されるフローチャートのプログラム)や第1マップ73及び第2マップ74等を記憶する書き換え不能な不揮発性のメモリである。RAM75は、制御プログラムの実行時に各種のデータを書き換え可能に記憶するためのメモリであり、車両の走行モードを記憶するモードメモリ76が設けられている。
【0035】
MG1制御ユニット81及びMG2制御ユニット82は、インバータ(図示せず)を介して第1回転電機11及び第2回転電機12が所望のトルク及び回転を出力するように制御する。エンジン制御ユニット83はエンジン13の各部を制御することによりエンジン13が所望のトルク及び回転を出力するように制御する。切換装置60の作動は、主制御ユニット70の制御指令に基づいて行われる。
【0036】
バッテリ状態検出センサ84は、バッテリ(図示せず)の充電量等の情報を検出するためのセンサである。車速センサ85は、車速を検出するために出力部材27の回転数を検出するセンサである。アクセル操作検出センサ86は、アクセルペダルの操作量を検出するためのセンサである。入力部材回転センサ87は、入力部材14の回転数を検出するためのセンサである。入力部材14はエンジン13の出力軸およびキャリヤ22と一体に回転するので、入力部材14の回転数はエンジン13及びキャリヤ22の回転数と等しい。
【0037】
第1ロータ軸回転センサ88は、第1ロータ軸17の回転数を検出するためのセンサである。第1ロータ軸17はサンギヤ21と一体に回転するので、第1ロータ軸17の回転数はサンギヤ21の回転数と等しい。リングギヤ回転センサ89は、リングギヤ23の回転数を検出するためのセンサである。各センサ84~89は、検出結果をそれぞれ主制御ユニット70へ出力する出力装置を備えている。
【0038】
他の入出力装置90としては、ブレーキペダルの操作量を検出するブレーキ操作検出センサ、エンジン13の冷却水の水温を検出する水温センサ、エンジンオイルの油温を検出する油温センサ等が例示される。
【0039】
主制御ユニット70は、バッテリ状態検出センサ84により検出されるバッテリの状態、車速センサ85により検出される車速、アクセル操作検出センサ86により検出されるアクセルペダルの操作量等に応じて、ROM72に記憶された第1マップ73及び第2マップ74に従い、車両の走行モードを選択する。CPU71は選択した走行モードをRAM75のモードメモリ76に記憶する。
【0040】
本実施形態ではCPU71は、バッテリの充電量が多いときは第1マップ73を用い、バッテリの充電量が少ないときは第2マップ74を用いる。なお、バッテリの状態、車速、アクセルペダルの操作量の他に、ブレーキペダルの操作量、エンジン13の冷却水の水温、エンジンオイルの油温等の条件を使って走行モードを選択することは可能である。
【0041】
図7(a)は第1マップ73の模式図であり、図7(b)は第2マップ74の模式図である。図7(a)及び図7(b)に示すように主制御ユニット70は、バッテリの状態、車速およびアクセル開度に応じて、EVモード、パワーEVモード、HVモード、パワーHVモードの各走行モードに切り換える制御を行う。
【0042】
図8(a)はEVモードのときの差動装置20の共線図であり、図8(b)はパワーEVモードのときの差動装置20の共線図であり、図8(c)はHVモードのときの差動装置20の共線図であり、図8(d)はパワーHVモードのときの差動装置20の共線図である。共線図において、縦線はそれぞれサンギヤ21(S)及び第1回転電機11(MG1)、キャリヤ22(C)及びエンジン13(ICE)、リングギヤ23(R)及び第2回転電機12(MG2)に対応する。縦軸は各回転要素の回転速度であり、+は正回転(エンジン13の出力軸の回転方向と同じ回転方向)、-は負回転を示している。
【0043】
図8(a)に示すEVモードは、第1クラッチ16が相対回転する状態で、第2回転電機12のトルクのみにより出力部材27を駆動する走行モードである。エンジン13は燃焼停止状態である。切換装置60はオフであり、差動装置20の3つの回転要素は自由に回転できる。EVモードでは、入力部材14及びサンギヤ21を介したトルク伝達が行われることなく、リングギヤ23に連結された第2回転電機12のトルクのみが、リングギヤ23に連結された出力部材27に伝達される。
【0044】
図8(b)に示すパワーEVモードは、第1クラッチ16が負回転を規制した状態で、少なくとも第1回転電機11のトルクにより走行するモードである。エンジン13は燃焼停止状態であり、切換装置60はオフである。本実施形態では、第1回転電機11及び第2回転電機12の双方のトルクにより出力部材27を駆動する。パワーEVモードでは、リングギヤ23に連結された第2回転電機12のトルクが、リングギヤ23に連結された出力部材27に伝達される。また、キャリヤ22の回転速度はゼロであり、第1クラッチ16が負回転を規制し、第1回転電機11は負回転しつつ負方向のトルクを出力する。
【0045】
負回転を規制した第1クラッチ16は、入力部材14及びキャリヤ22をケース15に固定する。第1クラッチ16は第1回転電機11の反力受けとして機能し、サンギヤ21に伝達される第1回転電機11の負方向のトルクは、トルクの向きが逆転されて、リングギヤ23に連結された出力部材27に伝達される。これにより、第1回転電機11及び第2回転電機12の双方のトルクにより出力部材27を駆動する。
【0046】
図8(c)に示すHVモードは、第1クラッチ16が相対回転する状態で、第1回転電機11の回転を制御することにより、エンジン13の回転を無段階に変速して出力部材27に伝達するモードである。エンジン13は燃焼状態であり、切換装置60はオフである。差動装置20は、エンジン13(キャリヤ22)のトルクをサンギヤ21及びリングギヤ23に配分する。第1回転電機11は、エンジン13のトルクの反力受けとして機能し、エンジン13のトルクが出力部材27側のリングギヤ23に配分される。第1回転電機11は、正回転しつつ負方向のトルクを出力して発電を行う。第2回転電機12は力行し、正方向のトルクを出力して、出力部材27に伝達されるエンジン13のトルクを補助する。
【0047】
ここで、第1回転電機11及び第2回転電機12は回転数が低いほど駆動力が大きいので、パワーEVモードにおいて、車両の速度が上がり第1回転電機11及び第2回転電機12の回転数が高くなると推進力が急激に低下する。また、HVモードでは、エンジン13のトルクが出力部材27に伝達されるが、差動装置20を介してエンジン13に繋がる第1回転電機11の駆動力は低下するので、全体の推進力はそれほど大きくならない。HVモードにおいて、第1回転電機11の駆動力の低下を補うために加速時にエンジン13の回転数を高くすると、パワーEVモード程度の推進力は得られるが、エンジン13の騒音が激しくなりハイブリッド車両としての静粛性が失われる。
【0048】
これに対し、図8(d)に示すパワーHVモードは、主に加速時に使われる走行モードである。エンジン13は燃焼状態であり、第1クラッチ16は相対回転する状態である。切換装置60はオンであり、第2クラッチ30はキャリヤ22とリングギヤ23とを連結する。これにより、キャリヤ22が入力部材14と一体に回転する状態で、サンギヤ21、キャリヤ22及びリングギヤ23が一体に回転する。差動装置20は、エンジン13の回転をそのままリングギヤ23に出力する。
【0049】
即ちパワーHVモードでは、エンジン13の回転数に応じて、出力部材27、第1回転電機11及び第2回転電機12の回転数が定まる。第1回転電機11及び第2回転電機12は、エンジン13が出力部材27に伝達するトルクが不足する場合等に力行し、正方向のトルクを出力してエンジン13のトルクを補助する。よって、加速時に強い推進力が得られる。また、第1回転電機11及び第2回転電機12によってエンジン13の回転数が制限されるので、加速時にエンジン13の騒音が激しくならないようにすることができ、車両の静粛性を確保できる。
【0050】
第2クラッチ30は、第2部材50に対して第1部材31が第2方向(反矢印F方向)へ相対回転する場合に、第2係合子43によって、第1部材31及び第2部材50は第2方向(反矢印F方向)へ一体に回転し、動力を伝達する。これにより、リングギヤ23が駆動側、キャリヤ22が被動側となった場合も、サンギヤ21、キャリヤ22及びリングギヤ23が一体に回転する。よって、必要に応じて第1回転電機11に発電を行わせることができる。
【0051】
図9を参照して、EVモード、パワーEVモード及びHVモードの各走行モードからパワーHVモードにするパワーモード処理について説明する。図9はパワーモード処理のフローチャートである。この処理は、車両用駆動装置10の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば0.2秒間隔で)実行される処理である。
【0052】
CPU71は、第1マップ73及び第2マップ74を用い、車速やアクセルペダルの操作量等の操縦の入力に基づいて、パワーHVモードの要求があるか否かを判断する(S1)。パワーHVモードの要求があるときは(S1:Yes)、CPU71はモードメモリ76を参照して、走行モードを取得する(S2)。一方、パワーHVモードの要求がないときは(S1)、切換装置60をオフし(S15)、第2クラッチ30を連結できない状態にする。
【0053】
走行モードがEVモードの場合には(S3:EV)、エンジン13は燃焼を停止した状態で、第2回転電機12が力行している。CPU71はエンジン制御ユニット83を使ってエンジン13を始動し(S4)、エンジン13の回転数を最小回転数に設定する(S5)。最小回転数とは、出力部材27がエンジン13に連結されたときにエンジン13が停止しない最小の回転数である。これにより、EVモードからパワーHVモードに切り換えられて出力部材27がエンジン13に連結されたときに、エンジン13が停止しないようにできる。
【0054】
CPU71は、エンジン13の回転数が最小回転数を含む許容範囲にある場合に(S6:Yes)、入力部材回転センサ87及びリングギヤ回転センサ89の検出結果を使い、リングギヤ23の回転数はキャリヤ22の回転数以上かを判断する(S7)。リングギヤ23の回転数がキャリヤ22の回転数以上の場合(S7:Yes)、CPU71は切換装置60をオンする(S9)。一方、リングギヤ23の回転数がキャリヤ22の回転数未満の場合(S7:No)、CPU71は第1ロータ軸回転センサ88及びリングギヤ回転センサ89の検出結果を使い、リングギヤ23の回転数はサンギヤ21の回転数以上かを判断する(S8)。リングギヤ23の回転数がサンギヤ21の回転数以上の場合(S8:Yes)、CPU71はS9の処理を実行し、リングギヤ23の回転数がサンギヤ21の回転数未満の場合(S8:Yes)、S5の処理に戻す。
【0055】
S9の処理において切換装置60がオンされると、第2クラッチ30はつながる状態になる。このときの第2クラッチ30は、第2部材50に対して第1部材31が第2方向(反矢印F方向)へ相対回転している(図5(a)参照)。第1係合子40は第2穴52に係合できないので、第2クラッチ30は滑り状態となる。これにより、切換装置60がオンされたときに第1係合子40が直ちに係合しないようにできるので、連結時に衝撃が生じないようにできる。
【0056】
エンジン13の回転数を上げると(S10)、第2部材50に対して第1部材31が第1方向(矢印F方向)へ相対回転し、第1係合子40はリテーナ47を押し退けて第1穴33の縁部34及び第2穴52の縁部53にそれぞれ係合する(図5(b)参照)。これにより、第2クラッチ30をつなぐためにキャリヤ22の回転数とリングギヤ23の回転数を合わせる制御をしなくても、第2クラッチ30はキャリヤ22とリングギヤ23とを衝撃なく連結し、サンギヤ21、キャリヤ22及びリングギヤ23が一体に回転する。パワーHVモードでは、第1回転電機11をオンして第1回転電機11が力行すると(S11)、強い推進力が得られる。よって、第2クラッチ30がつながるときの衝撃を抑制しつつ操縦の入力に対する応答性を良くすることができる。
【0057】
走行モードがHVモードの場合には(S3:HV)、エンジン13は力行しているので、CPU71はS4からS6の処理をスキップしてS7からS11の処理を実行する。これにより、HVモードからパワーHVモードの切り換えが終了する。
【0058】
走行モードがパワーEVモードの場合には(S3:パワーEV)、CPU71は車速センサ85の検出結果を使い、車速が最低速度以上かを判断する(S12)。最低速度とは、出力部材27がエンジン13に連結されたときにエンジン13が停止しない最低の車速である。車速が最低速度未満のときは(S12:No)、第2回転電機12の回転数を上げて車速を上昇させ(S15)、この処理を終了する。これにより、パワーEVモードからパワーHVモードに切り換えられて出力部材27がエンジン13に連結されたときに、エンジン13が停止しないようにできる。
【0059】
車速が最低速度以上のときは(S12:Yes)、CPU71は切換装置60をオンする(S13)。S13の処理によって第2クラッチ30はつながる状態になるが、第1クラッチ16は入力部材14及びキャリヤ22をケース15に固定しているので、第2クラッチ30は、第2部材50に対して第1部材31が第2方向(反矢印F方向)へ相対回転する(図5(a)参照)。よって、第2クラッチ30は、第2部材50と第1部材31との相対回転を許容する滑り状態となる。
【0060】
CPU71はエンジン13を始動し(S14)、エンジン13の回転数を上げると(S10)、第2部材50に対して第1部材31が第1方向(矢印F方向)へ相対回転し、第2クラッチ30がつながる(図5(b)参照)。第1回転電機11をオンして(S11)、この処理を終了する。以上のように、EVモード、パワーEVモード、HVモードの各走行モードからパワーEVモードへの切り換えができる。
【0061】
図10(a)及び図10(b)を参照して第2実施の形態および第3実施の形態について説明する。第1実施形態では、キャリヤ22とリングギヤ23との間において第2クラッチ30が動力の伝達・遮断を行う場合について説明した。これに対し第2実施の形態における車両用駆動装置100は、サンギヤ21とリングギヤ23との間において第2クラッチ30が動力の伝達・遮断を行い、第3実施の形態における車両用駆動装置101は、サンギヤ21とキャリヤ22との間において第2クラッチ30が動力の伝達・遮断を行う。なお、第1実施形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0062】
図10(a)は第2実施の形態における車両用駆動装置100のスケルトン図であり、図10(b)は第3実施の形態における車両用駆動装置101のスケルトン図である。車両用駆動装置100,101は、差動装置20の回転要素のいずれか2つを第2クラッチ30が連結するので、第1実施形態と同様の作用効果を実現できる。
【0063】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、第1係合子40や第2係合子43の数や形状、第2穴52の数や形状は一例であり、適宜設定できる。
【0064】
実施形態では、第2クラッチ30が、第1係合子40及び第2係合子43を備える二方向クラッチの場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第2係合子43を省略して、第2クラッチ30を一方向クラッチとすることは当然可能である。
【0065】
実施形態では、圧縮ばね46としてねじりコイルばねを第2クラッチ30に用いる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。ねじりコイルばねの代わりに、圧縮コイルばね等の他の圧縮ばねを用いることは当然可能である。
【0066】
実施形態では、アクチュエータ64を用いてトルクを伝達できる状態にする切換装置60について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。切換装置60は、公知の機構を適宜設定できる。
【0067】
実施形態の切換装置60は、リング61やピン62を介して第1係合子40及び第2係合子43の揺動を規制する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。リング61を省略し、ピン62の先端形状や第1係合子および第2係合子の形状を変更することで、ピンを介して第1係合子および第2係合子の揺動を規制することは当然可能である。また、ピンやリングに代えて、第2穴52に第1係合子や第2係合子が進入できないようにする板状のシャッター等を設け、それを切換装置の一部とすることは当然可能である。
【0068】
実施形態では、切換装置60のアクチュエータ64が軸線方向の力を発生して第2クラッチ30を断接する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。アクチュエータ64の力の向きは、第2クラッチ30を断接する機構に応じて適宜設定できる。
【0069】
実施形態では、第1係合子40及び第2係合子43が同一形状の場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1係合子40及び第2係合子43の長さ、幅、厚さが互いに異なるようにすることは当然可能である。
【0070】
実施形態では、1組のギヤユニット(3つの回転要素)からなる差動装置20を例示して説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。複数組のギヤユニットを組み合わせて、4つ以上の回転要素をもつ差動装置を構成することは当然可能である。以下、複数組のギヤユニットの一例を第1ギヤユニット及び第2ギヤユニットとして説明する。
【0071】
第1ギヤユニットは、第1サンギヤ、第1サンギヤとかみ合う第1ピニオン、第1ピニオンとかみ合う第1リングギヤ、及び、第1ピニオンを回転自在に支持する第1キャリヤからなる。第2ギヤユニットは、第2サンギヤ、第2サンギヤとかみ合う第2ピニオン、第2ピニオンとかみ合う第2リングギヤ、及び、第2ピニオンを回転自在に支持する第2キャリヤからなる。第1キャリヤと第2サンギヤとが連結され1つの回転要素(以下「第1回転要素」と称す)を構成する。第1リングギヤと第2キャリヤとが連結され別の回転要素(以下「第2回転要素」と称す)を構成する。第1キャリヤ及び第2サンギヤ(第1回転要素)にエンジン13が連結される。第1リングギヤ及び第2キャリヤ(第2回転要素)に出力部材27が連結される。第2リングギヤ(第3回転要素)に第1回転電機11が連結される。第1サンギヤ(第4回転要素)に第2回転電機12が連結される。2組のギヤユニットをもつ差動装置は4つの回転要素をもつ。
【0072】
この場合、出力部材27に連結された第2回転要素と、第2回転電機12に連結された第4回転要素と、を連結させる以外の、いずれか2つの回転要素を第2クラッチ30に連結させることができる。さらに、この第2クラッチ30を切る状態と第2クラッチ30がつながる状態とを切り換える切換装置60を備えることにより、実施形態で説明した作用効果と同様の作用効果を実現できる。
【0073】
実施形態では、遊星歯車装置を例示して差動装置20を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。遊星歯車装置に代えて、トラクションを利用して動力を伝達する遊星ローラ装置を用いることは当然可能である。差動装置20として遊星ローラ装置を用いることにより、振動や騒音をさらに小さくできると共に、バックラッシを無くすことができる。
【0074】
実施形態では、第1クラッチ16に一方向クラッチを用いる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。ドグクラッチ等のかみ合いクラッチや摩擦クラッチ等を第1クラッチ16に用い、主制御ユニット70からの制御信号によって、第1クラッチ16により入力部材14の正回転を許容し、入力部材14の逆回転を規制することは当然可能である。
【符号の説明】
【0075】
10,100,101 車両用駆動装置
11 第1回転電機
12 第2回転電機
13 エンジン
14 入力部材
16 第1クラッチ
20 差動装置
21 サンギヤ(回転要素)
22 キャリヤ(回転要素)
23 リングギヤ(回転要素)
27 出力部材
29 車輪
30 第2クラッチ
31 第1部材
32 第1面
33 第1穴
34 縁部
40 第1係合子
50 第2部材
52 第2穴
53 縁部
60 切換装置
O 軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図10