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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】鼓膜切開用チューブおよび設置デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61F 11/20 20220101AFI20220708BHJP
【FI】
A61F11/20
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020526108
(86)(22)【出願日】2018-11-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-21
(86)【国際出願番号】 EP2018080015
(87)【国際公開番号】W WO2019086608
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-05-31
(31)【優先権主張番号】17199754.7
(32)【優先日】2017-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520145953
【氏名又は名称】アベンタメド・デジグネイティド・アクティビティ・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100163061
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】ボーガン,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】オドリスコル,オリーブ
(72)【発明者】
【氏名】グライムス,キャロル
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-533359(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0045369(US,A1)
【文献】特表2017-523857(JP,A)
【文献】米国特許第04744792(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鼓膜切開用チューブ設置デバイス(100、600)であって、前記鼓膜切開用チューブ設置デバイス(100、600)は、
展開メカニズムに接続されているか、または、展開メカニズムへの接続のためのカップラーを有する、ステム(105、605)と、
鼓膜を穿孔するように構成されている先端部(106、606)を有するニードル(104、604)であって、前記ニードル(104、604)は、長手方向軸線を有している、ニードル(104、604)と、
前記長手方向軸線から所定の距離に軸線方向に延在している複数のフィンガー(121、621)を含むリテイナー(120、620)と
を含み、
前記リテイナー(120、620)は、前記リテイナー(120、620)が遠位フランジを半径方向内向きに押圧して遠位フランジを折り畳まれた位置に保つ、展開前遠位位置から、遠位フランジが展開位置へ半径方向に自由に飛び出すことができる、展開近位位置へ移動可能であり、
前記鼓膜切開用チューブ設置デバイス(100、600)は、近位フランジ(4、504)と、インタールーメンコネクター(2、502)と、遠位フランジ(6、506)とを含む、鼓膜切開用チューブ(1、500)をさらに含み、
前記近位フランジ(4、504)は、通路(10、510)を含み、
展開前位置では、前記フィンガー(121、621)が、前記近位フランジ(4、504)の通路(10、510)を通って延在し、前記遠位フランジ(6、506)を内向きに押圧する、鼓膜切開用チューブ設置デバイス。
【請求項2】
直径方向に対向する少なくとも2つのフィンガー(121、621)が存在している、請求項1に記載の鼓膜切開用チューブ設置デバイス。
【請求項3】
前記フィンガー(121、621)は、凹形内部表面を備えたアーチ形の断面形状を有している、請求項1または2に記載の鼓膜切開用チューブ設置デバイス。
【請求項4】
前記ステム(105、605)に接続されているハンドルをさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の鼓膜切開用チューブ設置デバイス。
【請求項5】
前記ステム(105、605)は、前記ハンドルに対して回転可能であり、
前記鼓膜切開用チューブ設置デバイス(100、600)は、前記ステム(105、605)の回転のためのユーザアクチュエーター(404)をさらに含み、
前記ニードル(104、604)は、前記ステム(105、605)の中にロック可能であり(125、127)、前記ニードル(104、604)が前記ステム(105、605)とともに回転するようになっている、請求項4に記載の鼓膜切開用チューブ設置デバイス。
【請求項6】
前記遠位フランジ(6、506)は、少なくとも1つのタブ(15、515)を含み、前記少なくとも1つのタブ(15、515)は、円周方向の位置においてフィンガー(121、621)とともに整列しており、前記展開前位置において前記フィンガー(121、621)によって内向きに押圧されている、請求項1に記載の鼓膜切開用チューブ設置デバイス。
【請求項7】
前記遠位フランジ(6、506)は、複数のタブ(15、515)を含む、請求項6に記載の鼓膜切開用チューブ設置デバイス。
【請求項8】
前記複数のタブ(15、515)は、実質的に等しく円周方向に間隔を置いて配置されている、請求項7に記載の鼓膜切開用チューブ設置デバイス。
【請求項9】
前記通路(10、510)は、貫通穴(10、510)であり、前記貫通穴(10、510)は、表面(13、513)をそれぞれ有しており、前記表面(13、513)は、半径方向内向きに面しており、フィンガー(121、621)の外側表面に係合する、請求項1から8のいずれか一項に記載の鼓膜切開用チューブ設置デバイス。
【請求項10】
少なくとも1つの貫通穴(10、510)は、アーチ形の形状を有しており、前記表面(13、513)は、凹形になっている、請求項9に記載の鼓膜切開用チューブ設置デバイス。
【請求項11】
少なくとも1対の直径方向に対向する通路(10、510)が存在している、請求項1から10のいずれか一項に記載の鼓膜切開用チューブ設置デバイス。
【請求項12】
前記近位フランジ(4、504)は、第1の材料によって構成され、前記遠位フランジ(6、506)は、第2の材料によって構成され、前記第1の材料は、前記第2の材料よりも剛性が高い、請求項1から11のいずれか一項に記載の鼓膜切開用チューブ設置デバイス。
【請求項13】
前記リテイナー(120、620)または前記ニードル(104、604)は、軸線方向ガイド部材(130、630)を含み、前記軸線方向ガイド部材(130、630)は、チューブ展開前のルーメン(3、503)の中にフィットするように構成されている、請求項1から12のいずれか一項に記載の鼓膜切開用チューブ設置デバイス。
【請求項14】
鼓膜切開用チューブ設置デバイス(100、600)であって、前記鼓膜切開用チューブ設置デバイス(100、600)は、
展開メカニズムに接続されているか、または、展開メカニズムへの接続のためのカップラーを有する、ステム(105、605)と、
鼓膜を穿孔するように構成されている先端部(106、606)を有するニードル(104、604)であって、前記ニードル(104、604)は、長手方向軸線を有している、ニードル(104、604)と、
前記長手方向軸線から所定の距離に軸線方向に延在している複数のフィンガー(121、621)を含むリテイナー(120、620)と
を含み、
前記リテイナー(120、620)は、前記リテイナー(120、620)が遠位フランジを半径方向内向きに押圧して遠位フランジを折り畳まれた位置に保つ、展開前遠位位置から、遠位フランジが展開位置へ半径方向に自由に飛び出すことができる、展開近位位置へ移動可能であり、
前記ニードル(604)は、前記先端部(606)の近位に凹部(650)を含み、前記凹部(650)は、遠位フランジ(515)のタブ(15、515)の折り畳まれた部分(517)を受け入れるように構成されている、鼓膜切開用チューブ設置デバイス。
【請求項15】
前記ニードル(604)は、前記先端部(606)の近位に凹部(650)を含み、前記凹部(650)は、遠位フランジ(515)のタブ(15、515)の折り畳まれた部分(517)を受け入れるように構成されている、請求項1から13のいずれか一項に記載の鼓膜切開用チューブ設置デバイス。
【請求項16】
前記ニードル(604)および前記遠位フランジ(515)のタブ(15、515)は、前記遠位フランジ(515)が折り畳まれているときに、矢印形状のフォーメーションを形成するように構成されている、請求項14または15に記載の鼓膜切開用チューブ設置デバイス。
【請求項17】
近位フランジ(4、504)と、ルーメン(3、503)を備えたインターフランジコネクター(2、502)と、遠位フランジ(6、506)とを含む鼓膜切開用チューブ(1)であって、
前記近位フランジ(4、504)は、複数の軸線方向の貫通穴の通路(10、510)を含み、
前記遠位フランジ(6、506)は、軸線方向に折り畳まれたり、半径方向に解放されて展開位置になったりするように構成されており、
前記遠位フランジ(6、506)は前記近位フランジ(4、504)よりも高い可撓性を有する、鼓膜切開用チューブ。
【請求項18】
少なくとも1つの通路(10、510)は、前記インターフランジコネクター(2、502)の外部表面に隣接している半径方向内側の表面を有している、請求項17に記載の鼓膜切開用チューブ。
【請求項19】
少なくとも1対の直径方向に対向する通路(10、510)が存在している、請求項17または18に記載の鼓膜切開用チューブ。
【請求項20】
前記近位フランジ(4、504)は、第1の材料によって構成され、前記遠位フランジ(6、506)は、第2の材料によって構成され、前記第1の材料は、前記第2の材料よりも剛性が高くなっている、請求項17から19のいずれか一項に記載の鼓膜切開用チューブ。
【請求項21】
前記遠位フランジ(6、506)は、複数のタブ(515)を含み、
前記複数のタブ(515)のうちの少なくとも1つは、主に半径方向の成分を有する方向に延在している半径方向の部分(516)と、前記鼓膜切開用チューブ(1)が弛緩されているときに主に軸線方向の成分を有する方向に延在するガイド部分(517)とを有しており、
前記ガイド部分(517)は、前記遠位フランジ(6、506)が半径方向内向きに押圧されているときに、遠位方向に狭くなるテーパー付きの構成を形成するように配置されている、請求項17から20のいずれか一項に記載の鼓膜切開用チューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鼓膜切開用チューブおよび設置デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
患者が耳の病気(たとえば、中耳炎)に関して外科的に治療されるときには、患者は、典型的に、鼓膜切開用チューブが鼓膜切開のために設置されることによって治療される。鼓膜切開用チューブは、小さいチューブであり、それは、典型的に、手術室の中で全身麻酔の下で、外科医によって手動で鼓膜(または、「鼓膜(ear drum)」)の中に設置される。外科医は、外耳道から耳垢を取り、鼓膜の中に小さい切開部を作り、中耳の中の任意の流体を除去するために吸引を使用し、次いで、鼓膜の中にチューブを位置決めする。チューブは、中耳と外耳との間の圧力を等しくし、中耳空間を換気する。鼓膜切開用チューブ設置は、子供が全身麻酔によって外科手術を受ける最も一般的な理由である。
【0003】
現在では、鼓膜切開用チューブを設置することが望まれるときには、それは、典型的に、手動で行われる。その理由は、内側フランジが、長期間にわたって鼓膜の中に留まるためにとりわけ幅広くなっている必要があるからである。鼓膜切開用チューブは、現在のENT器具類を使用した手動設置の挿入を支援するために、チューブの内側フランジの上にリードイン特徴(lead-in feature)を必要とする場合がある。
【0004】
設置デバイスは、鼓膜切開用チューブが臨床環境において安全におよび迅速に設置されることを可能にし、すべての患者において全身麻酔を必要とすることなく、チューブが設置されることを可能にする。
【0005】
WO2013/155169(Acclarent)およびUS4744792(Richards Medical Co.)は、鼓膜切開用チューブを説明している。
【0006】
WO2011/008948(Acclarent)は、鼓膜切開用チューブおよび設置デバイスを説明しており、そこでは、先端部が、鼓膜の中に切開部を生成させ、鼓膜切開用チューブを膜の中へ放出する。鼓膜切開用チューブは、それを取り囲むスリーブによって拘束されており、そのフランジが軸線方向に横たわるようになっている。スリーブは、展開の間に引き抜かれ、フランジが半径方向の位置へ広げられることを可能にする。
【0007】
WO2013/113022(Entra Tympanic LLC)は、チューブ設置の間に膜を不動化するために真空チャネルを有する設置および除去デバイスを説明している。このケースでは、チューブのフランジは、折り畳まれておらず、チューブは、全体を通して同じ物理的な構成を保っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】WO2013/155169
【文献】US4744792
【文献】WO2011/008948
【文献】WO2013/113022
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、チューブ(特に、長い滞在時間または「押し出しまでの時間」にわたって幅広い遠位フランジを有するチューブ)の効果的な展開のための設置デバイスを提供することに関するものである。押し出しまでの時間は、患者の臨床要件に依存している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
鼓膜切開用チューブ設置デバイスは、ニードルを備えたステムを有しており、ニードルは、鼓膜を穿孔するように構成されている先端部を有している。リテイナーは、ニードルの上にあり、1つの例では、フィンガーを含み、フィンガーは、上記軸線から所定の距離に、および、等しい円周方向の分離で、軸線方向に延在している。リテイナーは、遠位位置から近位位置へ移動可能であり、遠位位置において、リテイナーは、遠位フランジタブを半径方向内向きに押圧し、遠位フランジを折り畳まれた位置に保ち、近位位置において、遠位フランジは、展開位置へ半径方向に自由に飛び出すことができる。フィンガーは、チューブ近位フランジ通路を通って延在し、近位フランジの遠位に面する面をリテイナーの半径方向外向きに露出された状態のままにしながら、遠位フランジを内向きに押圧する。したがって、近位フランジは、全体を通して、その最終的な展開構成を有しており、したがって、鼓膜に対して物理的なストップ部材として作用することが可能であり、また、それがステムの半径方向外向きに延在しているので、外科医のための可視化を提供する。
【0011】
さまざまな態様において、我々は、鼓膜切開用チューブ設置デバイスであって、鼓膜切開用チューブ設置デバイスは、
展開メカニズムに接続されているか、または、展開メカニズムへの接続のためのカップラーを有する、ステムと、
鼓膜を穿孔するように構成されている先端部を有するニードルであって、ニードルは、長手方向軸線を有している、ニードルと、
上記長手方向軸線から所定の距離に軸線方向に延在している複数のフィンガーを含むリテイナーと
を含み、
リテイナーは、展開前遠位位置から展開近位位置へ移動可能であり、展開前遠位位置において、リテイナーは、遠位フランジを半径方向内向きに押圧し、上記遠位フランジを折り畳まれた位置に保つように構成されており、展開近位位置において、遠位フランジは、展開位置へ半径方向に自由に飛び出すことができる、鼓膜切開用チューブ設置デバイスを説明する。
【0012】
好ましくは、直径方向に対向する少なくとも2つのフィンガーが存在している。好ましくは、フィンガーは、凹形内部表面を備えたアーチ形の断面形状を有している。
【0013】
デバイスは、ステムに接続されているハンドルをさらに含むことが可能であり、ステムは、ハンドルに対して回転可能であり、ステムの回転のためのユーザーアクチュエーターが存在していることが可能である。好ましくは、ニードルは、ステムの中にロック可能であり、ニードルがステムとともに回転するようになっている。好ましくは、ニードルは、ステムの凹部の中に係合するためのロック部材を含む。好ましくは、ステムは、その長さに沿ってクランク形になっているか、または、曲げられている。
【0014】
好ましくは、設置デバイスは、近位フランジと、インタールーメンコネクター(inter-lumen connector)と、遠位フランジとを含む、鼓膜切開用チューブをさらに含み、
近位フランジは、通路を含み、
展開前位置では、フィンガーが、近位フランジ通路を通って延在し、遠位フランジを内向きに押圧する。
【0015】
好ましくは、遠位フランジは、少なくとも1つのタブを含み、少なくとも1つのタブは、円周方向の位置においてフィンガーとともに整列しており、展開前位置において上記フィンガーによって内向きに押圧されている。
【0016】
好ましくは、遠位フランジは、複数のタブを含む。
【0017】
好ましくは、タブは、実質的に等しく円周方向に間隔を置いて配置されている。たとえば、おおよそ90°だけ間隔を離して配置された4つのタブが存在していることが可能である。好ましくは、通路は、貫通穴であり、貫通穴は、表面をそれぞれ有しており、表面は、半径方向内向きに面しており、フィンガーの外側表面に係合する。好ましくは、少なくとも1つの貫通穴は、アーチ形の形状を有しており、上記表面は、凹形になっている。少なくとも1対の直径方向に対向する通路が存在していることが可能である。
【0018】
近位フランジは、第1の材料のものであることが可能であり、遠位フランジは、第2の材料のものであることが可能であり、上記第1の材料は、第2の材料よりも剛性が高い。
【0019】
好ましくは、リテイナーまたはニードルは、軸線方向ガイド部材を含み、軸線方向ガイド部材は、チューブ展開前のルーメンの中にフィットするように構成されている。
【0020】
ニードルは、先端部の近位に凹部を含むことが可能であり、凹部は、遠位フランジのタブの折り畳まれた部分を受け入れるように構成されている。好ましくは、凹部(650)は、環状になっている。好ましくは、ニードルおよび遠位フランジタブは、遠位フランジが折り畳まれているときに、矢印形状のフォーメーションを形成するように構成されている。
【0021】
別の態様では、我々は、近位フランジと、ルーメンを備えたインターフランジコネクター(inter-flange connector)と、遠位フランジとを含む鼓膜切開用チューブであって、近位フランジは、複数の軸線方向の貫通穴通路を含み、遠位フランジは、展開位置へ軸線方向に折り畳まれるように構成されており、また、展開位置へ半径方向に解放するように構成されている、鼓膜切開用チューブを説明する。
【0022】
好ましくは、少なくとも1つの通路は、インターフランジコネクターの外部表面に隣接している半径方向内側の表面を有している。好ましくは、上記半径方向内側の表面は、湾曲している。好ましくは、通路は、半径方向内向きに面する外側凹形表面を備えたアーチ形の形状を有している。好ましくは、少なくとも1対の直径方向に対向する通路が存在している。好ましくは、遠位フランジは、近位フランジよりも可撓性になっている。
【0023】
近位フランジは、第1の材料のものであることが可能であり、遠位フランジは、第2の材料のものであり、上記第1の材料は、第2の材料よりも剛性が高くなっている。
【0024】
好ましくは、遠位フランジは、複数のタブを含み、複数のタブのうちの少なくとも1つは、主に半径方向の成分を有する方向に延在している半径方向の部分と、チューブが弛緩されているときに主に軸線方向の成分を有する方向に延在するガイド部分とを有しており、ガイド部分は、遠位フランジが半径方向内向きに押圧されているときに、遠位方向に狭くなるテーパー付きの構成を形成するように配置されている。
【0025】
(付記)
我々は、近位フランジと、ルーメンを備えたインターフランジコネクターと、遠位フランジとを含む鼓膜切開用チューブであって、近位フランジは、複数の軸線方向の通路を含み、内側フランジは、展開位置へ軸線方向に折り畳まれるように構成されており、また、展開位置へ半径方向に解放するように構成されている、鼓膜切開用チューブを説明する。
【0026】
好ましくは、通路は、インターフランジコネクターの外部表面に隣接している半径方向内側の表面を有している。好ましくは、通路は、貫通穴である。
【0027】
好ましくは、貫通穴は、半径方向内向きに面する凹形表面を備えたアーチ形の形状を有している。好ましくは、少なくとも1対の直径方向に対向する通路が存在している。
【0028】
近位フランジは、第1の材料のものであることが可能であり、遠位フランジは、第2の材料のものであることが可能であり、上記第1の材料は、第2の材料よりも剛性が高くなっている。第1の材料は、金属であることが可能であり、第2の材料は、ポリマーであることが可能である。インターフランジコネクターは、遠位フランジと一体になっていることが可能である。チューブは、異なる材料から一体的に成形され得る。
【0029】
また、我々は、ステムとニードルとを含む鼓膜切開用チューブ設置デバイスであって、ステムは、展開メカニズムに接続されているか、または、展開メカニズムへの接続のためのカップラーを有しており、ニードルは、鼓膜を穿孔するように構成されている先端部を有しており、ニードルは、長手方向軸線を有している、鼓膜切開用チューブ設置デバイスを説明する。デバイスは、上記軸線から所定の距離に軸線方向に延在している複数のフィンガーを含むリテイナーを有することが可能である。リテイナーは、遠位位置から近位位置へ移動可能であり、遠位位置において、リテイナーは、遠位フランジを半径方向内向きに押圧し、上記遠位フランジを折り畳まれた位置に保つように適合されており、近位位置において、遠位フランジは、展開位置へ半径方向に自由に飛び出すことができる。
【0030】
好ましくは、直径方向に対向する少なくとも2つのフィンガーが存在しており、たとえば、2対の対向するフィンガーが存在している。
【0031】
好ましくは、フィンガーは、凹形内部表面を備えたアーチ形の断面形状を有している。
【0032】
デバイスは、ハンドルをさらに含むことが可能である。
【0033】
好ましくは、ステムは、ハンドルに対して回転可能である。好ましくは、デバイスは、ステムの回転ユーザーアクチュエーターをさらに含む。
【0034】
好ましくは、ニードルは、ステムの中にロック可能であり、ニードルがステムとともに回転するようになっている。ニードルは、ステムの凹部の中に係合するためのロック部材を含むことが可能である。
【0035】
好ましくは、ステムは、その長さに沿ってクランク形になっているか、または、曲げられている。
【0036】
また、我々は、任意の実施形態のチューブをさらに含む鼓膜切開用チューブ設置デバイスであって、フィンガーは、近位フランジ通路を通って延在し、近位フランジの遠位に面する面をリテイナーの半径方向外向きに露出された状態のままにしながら、遠位フランジを内向きに押圧する、鼓膜切開用チューブ設置デバイスを説明する。そのようなデバイスは、好ましくは、適切な位置に工場で挿入されたチューブを有しており、デバイスがそのパッケージを開けると使用する準備ができているようになっている。好ましくは、遠位フランジは、タブを含み、タブは、円周方向の位置においてフィンガーとともに整列しており、上記フィンガーによって内向きに押圧されている。
【0037】
本発明は、添付の図面を参照して単なる例として与えられているそのいくつかの実施形態の以下の説明から、より明確に理解されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】鼓膜切開用チューブの斜視図である。
図2】チューブの展開のための設置デバイスを示す斜視図である。
図3】とりわけニードルおよびリテイナーを示す、デバイスの遠位端部の縦断面図である。
図4】設置デバイスの動作を示す縦断面図である。
図5】設置デバイスの動作を示す縦断面図である。
図6】設置デバイスの動作を示す縦断面図である。
図7】別のチューブの縦断面図である。
図8】代替的な鼓膜切開用チューブの斜視図である。
図9】代替的な鼓膜切開用チューブの斜視図である。
図10】代替的な鼓膜切開用チューブの斜視図である。
図11】さらなる設置デバイスの側面図である。
図12】代替的な鼓膜切開用チューブの斜視図である。
図13】代替的な設置デバイスの斜視図である。
図14】チューブのない状態のこの設置デバイスの遠位端部の縦断面図であり、ニードルおよびリテイナーの特定の詳細を示す図である。
図15図12のチューブを展開する、使用時の図13および図14の設置デバイスの縦断面図である。
図16図12のチューブを展開する、使用時の図13および図14の設置デバイスの縦断面図である。
図17図12のチューブを展開する、使用時の図13および図14の設置デバイスの縦断面図である。
図18】使用の間の良好な視認性のための曲げ部を有するステムを示す、代替的な設置デバイスの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1を参照すると、鼓膜切開用チューブ1は、鼓膜を通って交差するためのルーメン(lumen)3を備えたインターフランジコネクター2を含む。インターフランジコネクター2は、外側(近位)フランジ4および内側(遠位)フランジ6を接続している。
【0040】
近位フランジ4は、その周辺部の周りに概して円形になっており、環状の形状を有している。それは、概して環状の面5を有しており、概して環状の面5は、使用時に鼓膜に向けて遠位に面している。
【0041】
遠位フランジ6は、その遠位端部においてルーメン3の周りにあり、(互いに90°の位置に)円周方向に間隔を離して配置された4つのタブ15を含む。
【0042】
近位フランジ4は、4つの通路を含み、4つの通路は、このケースでは、インターフランジコネクター2の周辺部の周りのアーチ形の貫通穴10であり、等しく間隔を離して配置されている。通路10は、遠位フランジ6のタブ15と軸線方向におよび円周方向に整合させられており、同様に、互いに90°の位置にある。それぞれの通路10は、半径方向内向きに面する湾曲した表面13を有している。
【0043】
さまざまな例では、通路は、好ましくは、通路10などのような貫通穴であり、それらは、好ましくは、示されているように、半径方向内向きに面する凹形表面を備えたアーチ形の形状を有している。
【0044】
図2および図3を参照すると、設置デバイス100は、ステム105と先端部106とを有するニードル104を含む。ニードル104は、デバイス100のステム108のスリーブ107を通して中央に延在している。そして、ニードルステム105は、デバイスステム108の近位にあるハンドル(図示せず)の中のユーザー作動式の展開メカニズムに接続されている。そのメカニズムは、ユーザーがアクチュエーターボタンを押圧するとニードル104を近位方向に引っ張り戻すように配置されている。このメカニズムは、ユーザー作動式の後退に関して任意の公知のタイプのものであることが可能であり、好ましくは、後退を引き起こすためのバネ圧力の解放のためにバネ荷重式になっている。
【0045】
図2は、明確化のために、設置デバイス100の外側のチューブ1を示している。
【0046】
リテイナー120が、溶接による、または、他の実施形態では、圧入特徴による、または、たとえば、一体的になっていることによる、ニードルステム105の中央本体部130への接続によって、ニードル104に装着されている。リテイナー120は、軸線方向に延在する4つのフィンガー121を含み、フィンガー121は、90°分離を伴って円周方向に等しく広がっている。フィンガーは、チューブ通路10の断面形状よりも非常にわずかに小さい断面形状を備えて構成されている。それらは、ニードルステムの上のリテイナーベース122から、使用時にチューブアーチ形の通路10を通って延在している。また、中央ガイド130は、フィンガー121によって包含される体積の中の、ニードル104の部分である。図3から図7を参照してより詳細に下記に説明されているように、リテイナー120(具体的には、そのフィンガー121)は、ニードル先端部の可視化のために軸線方向に遠位フランジ6を保持するためのものであり、また、使用時に鼓膜を通した挿入のためにプロファイルを低減させるためのものである。
【0047】
図3は、リテイナーフィンガー121の中に中央ガイド130がある状態で、ニードル104のステム105および先端部106をより明確に示している。リテイナー120は、フィンガー121が軸線方向に延在している状態で明確に図示されている。中央ガイド130の構成は、設置の間に、使用時のチューブ1のルーメン3の中にそれがフィットすることを可能にする。これは、正確な場所へのガイド効果、および、チューブに対するフィンガーの移動を提供する。
【0048】
図2に示されているように、デバイスステムスリーブ107は、そのマウス7の中に、リテイナー120と、ニードル104と、ロック部材125とを受け入れ、ロック部材125は、ニードル104の一体部である。使用時に、膜に対するステムの角度配向を改善するために、スリーブ107を回転させることが有益である可能性がある。ロック部材125に起因して、そのような回転は、ニードル104がステムとともに回転することを引き起こす。ロック部材125は、スリーブマウス7(同様に、長方形の断面形状のものである)の中へフィットするために長方形ブロック形状のものである。これが凹部7の中に係合されているときには、それはニードル104および取り付けられたリテイナー120が回転することを防止する。また、図2に示されているように、角度付きのまたはクランク形のステムスリーブ107は、可視化を支援するためのものである。
【0049】
他の実施形態では、ステムに対してニードルをロックすることは、スナップフィット締結具などのような任意の他の適切な特徴(たとえば、ディンプルの構成のものも可能である)によるものであることも可能である。
【0050】
図4から図6に図示されているように、展開の前に、リテイナーフィンガー121は、近位フランジ4を通過し、インターフランジコネクター2を取り囲み、(折り畳まれた)遠位フランジ6を半径方向に押し込んでいる。フィンガー121は、チューブ1の遠位端部およびニードル先端部106が使用時に鼓膜を容易に貫通することができる程度に、遠位フランジ6のタブ15を半径方向に押し込んでいる。近位フランジ4は、有利には、その最終的な使用時位置を有しており、その位置において、近位フランジ4は、鼓膜を通る移動に抵抗し、一方、遠位フランジ6は、それがフィンガー121によって実質的に軸線方向に保たれるので、容易に押し通されることが可能であり、遠位フランジ6のタブ15は、半径方向内向きに押圧されている。
【0051】
より詳細には、使用時に、チューブ1は、使用のポイントにおいて手動でデバイス100に装着されるか、または、工場で事前に装着されるかのいずれかである。設置デバイス100は、外科医によって移動させられ、ステム108が外耳道に進入し、ニードル先端部106が鼓膜を穿孔するようになっている。有利には、近位フランジ4の面5は、遠位フランジ6が折り畳まれていても、鼓膜に当接する。これは、ステム108の挿入に対して正確で簡単な限界を提供する。チューブ近位フランジ4は、スリーブ107の遠位表面を越えて半径方向に延在しており、それが鼓膜に当接するときに、それは使用しているときの可視化の基準ポイントを提供する。したがって、近位フランジ4は、挿入に対する限界として作用し、いつ鼓膜切開用ナイフ(ニードル)104が鼓膜を通して十分に遠くに挿入されたかを外科医が知ることを可能にし、また、外科医がデバイス100からチューブ1を解放することを可能にする。他の実施形態では、スリーブ107は、近位フランジの半径方向寸法に対して図示されているものよりもさらに小さい半径方向寸法を有することが可能であるということが想定される。
【0052】
重要なことには、フィンガー121は、遠位フランジのタブ15を内向きに半径方向に押し、それらが鼓膜を容易に通過することができるようになっている。しかし、リテイナーフィンガー121は近位フランジ4を通過するので、近位フランジ4は、膜の近位に容易に維持されることができ、その面5が膜に当接し、制限ストップとして作用する状態になっている。これは、先行技術デバイスの場合よりもはるかに正確な位置制御を可能にする。
【0053】
また、通路10は、半径方向のリテイニング強度をフィンガー121に提供し、通路10の半径方向外側の表面13は、リテイナーのフィンガー121が遠位フランジ6のタブ15を半径方向内向きに押圧するそれらの遠位端部とリテイナーベース122との間の所定の場所において、フィンガー121を内向きに押圧する。これは、タブ15が軸線方向の配向を有する状態で、フィンガー121が正確に信頼性高く遠位フランジを圧縮された状態に保つことを保証することを助ける。
【0054】
図5に示されているように、外科医は、次いで、ハンドルの中の展開メカニズムを動作させ、リテイナー120が遠位フランジタブ15を半径方向内向きに保つ位置から、タブがそれらの自然な半径方向の位置へ飛び出すことをそれらが可能にする場所へ、ニードル104およびリテイナー120が近位方向に後退させられることを引き起こす。
【0055】
図6に示されているように、リテイナーフィンガー121およびニードル104は、互いに取り付けられており、したがって、一緒に後退する。リテイナーおよびニードル後退のシーケンシングは、設置デバイスハンドルの中の引っ張りメカニズムによって実現される。
【0056】
図7を参照すると、鼓膜切開用チューブ1の縦断面図が見られる。これは、チューブの追加的な詳細、とりわけ、インターフランジコネクター2によって接合されている内側フランジ6および外側フランジ4を通るルーメン3の追加的な詳細を示している。この特定の例では、フランジ4は、フランジ6よりも厚い寸法のものであり、フランジ6は、外向きに延在するタブ15を含む。この実施形態では、近位フランジ4は、第1の剛性の高い材料のものであり、インターフランジコネクター2および遠位フランジ6は、一体的になっており、より可撓性の第2の材料のものである。第1の材料は、好ましくは、チタンなどのような金属であり、第2の材料は、好ましくは、シリコーンまたはニチノールなどのような、形状記憶特性を有する材料である。この材料の組み合わせは、リテイナーフィンガーをガイドするための、および、展開の間のチューブのための構造体を提供する(それは、チューブが展開の間にスリーブ107の中へ引っ張り込まれることを防止する)ための最適な強度を可能にし、他方では、遠位フランジが折り畳まれおよび解放されるのに最適な可撓性を可能にする。
【0057】
一体的な成形が、好ましくは、チューブの製造のために実施され、ここで、チューブは、特性の最適な組み合わせを実現するために異なる材料のものであり、フィンガー121の案内のための、および、ストップとして作用するための近位フランジの剛性を備えており、また、遠位フランジ6に関して、折り返されて、迅速に安定してオリジナルの半径方向の位置に戻る能力を有している。近位フランジ4のこの剛性は、展開の間のチューブ構造体を与えるという追加された利点を有している。
【0058】
図1から図7の例では、チューブ1は、遠位フランジにおいて、可撓性の(インプラントグレードのシリコーン)材料のものであり、チューブの残りの部分において、剛性の高い(チタンまたはステンレス鋼)材料のものである。この例では、最大直径は、3mmであり、インターフランジ距離は、1.6mmであり、全体的な長さは、2.7mmである。しかし、寸法は、臨床要件に適するために、任意の適切な組み合わせのものであることが可能である。
【0059】
図8図9、および図10を参照すると、チューブのいくつかの代替的な実施形態が、とりわけ、遠位フランジに関して示されている。図8を参照すると、チューブ201は、チューブ1の以前の実施形態に対応する参照数字および部分とともに示されている。しかし、この実施形態では、遠位フランジ206は、2つのタブ210を含み、2つのタブ210は、おおよそ180°だけ軸線方向に間隔を離して配置されている。近位フランジ4の通路、および、デバイスのリテイナーフィンガーは、遠位フランジのタブ210の場所に軸線方向にマッチするように、対応して整合させられている。
【0060】
図9を参照すると、チューブ220は、チューブ1の実施形態に対応する参照数字および部分とともに示されている。しかし、この実施形態では、遠位フランジ226は、3つのタブ221を含み、3つのタブ221は、おおよそ120°だけ軸線方向に間隔を離して配置されている。
【0061】
図10を参照すると、チューブ230は、チューブ1の実施形態に対応する参照数字および部分とともに示されている。しかし、この実施形態では、遠位フランジ236は、単一の環状の本体部231を含む。この遠位フランジ236は、複数のリテイナーフィンガーによって畳み込まれるのに十分な可撓性を有している。
【0062】
チューブ201、220、および230の材料は、チタンおよびシリコーンである。
【0063】
図11を参照すると、完全な設置デバイス400は、ステム401と、ハンドル402と、ユーザーアクチュエーター403とを有している。ステム401は、カップラー404によってハンドル402に接続されており、カップラー404は、ステムをその長手方向軸線の周りに回転させるために、矢印の方向に回転させられ得る。ニードルステムは、この例では、可撓性である。示されているように、ステムの遠位端部405は、角度付きになっている。したがって、ステム401のその軸線の周りの回転は、先端部が所望の方向に湾曲させられることを可能にし、外科医によって使用されている手、および、手術されている特定の耳を促進させる。鼓膜は、垂直方向に対して角度付きになっていることが多く、典型的に、上向きおよび外向きに延在する傾斜を備えており、そのうえ、膜自身は、平面的でなく、円錐状の形状を有している可能性があり、円錐状の形状は、対称的でない可能性がある。カップラー404およびステムの角度は、人の生体構造に応じてより鋭角になり得る、鼓膜の自然な角度を支援することとなる角度を外科医が選ぶことを可能にする。この角度は、チューブが鼓膜に対して垂直になっているときにチューブが挿入されることを可能にすることとなる。この角度は、存在する可能性があり、または、存在しない可能性がある。必要とされる場合には、ステム401の中の曲げ部が、より良好な可視化を支援するために提供され得る。
【0064】
図12を参照すると、鼓膜切開用チューブ500は、近位フランジ504と、ルーメン(lumen)503を備えたインターフランジコネクター502と、遠位フランジ506とを含む。近位フランジ504は、等しい90°の分離で4つの軸線方向の貫通穴通路510を含む。遠位フランジ506は、他の実施形態に関して、展開位置へ軸線方向に折り畳まれるように構成されており、また、展開位置へ半径方向に解放するように構成されている。それぞれの通路510は、インターフランジコネクター502の外部表面に隣接しており、半径方向内向きに面する凹形表面513を備えたアーチ形の形状をそれぞれ有している。
【0065】
遠位フランジ506は、半径方向の部分516と、軸線方向の部分517とをそれぞれ有する4つのタブ515の配置を有している。半径方向の部分516は、直角の角度で、および、より一般的には、好ましくは、半径方向から+/-30°の角度で、ルーメンから延在しており、軸線方向の部分517は、軸線方向から+/-45°の角度で半径方向の部分516からそれぞれ延在している。
【0066】
タブ部分517は、代替的に、ガイド部材と称され得る。その理由は、それらの目的が、下記に詳細に説明されているように、矢印形状に寄与することによって、使用時に鼓膜を通してチューブ500をガイドすることを支援することであるからである。
【0067】
図13および図14を参照すると、設置デバイス600は、スリーブ607を備えたステム608を有しており、スリーブ607は、ハンドルを備えた展開メカニズムに接続されているか、または、そのような展開メカニズムへの接続のためのカップラーを有している。
【0068】
ニードル604は、鼓膜を穿孔するように構成されている先端部606を有しており、ニードルは、長手方向軸線を有している。先端部606の直ぐ近位に、遠位におよび半径方向内向きにテーパーを付けられた表面を有する環状の凹部650が存在している。リテイナー620は、4つのフィンガー621を含み、4つのフィンガー621は、長手方向軸線から所定の半径方向の距離において、軸線方向に延在している。リテイナー620は、チューブに対して展開前遠位位置から展開近位位置へ移動可能であり、展開前遠位位置において、リテイナー620は、遠位フランジを半径方向内向きに押圧し、遠位フランジを折り畳まれた位置に保つように適合されており、展開近位位置において、遠位フランジは、展開位置へ半径方向に自由に飛び出すことができる。
【0069】
フィンガー621は、凹形内部表面を備えたアーチ形の断面形状を有しており、通路510を通ってフィットする。
【0070】
リテイナー620は、軸線方向ガイド部材630を含み、軸線方向ガイド部材630は、チューブ500展開前のルーメン503の中にフィットするように構成されている。ニードル604は、ステムの凹部(図示せず)の中に係合するためのロック部材625を含む。この係合を固定するために、ステムスリーブの中にディンプル(図示せず)が存在している。
【0071】
リテイナー620は、溝部642の中へのクリップ641のクリンピングを可能にするために、ロケーション特徴アパーチャー(location feature aperture)640の使用によって係合されているニードル604の中の円周方向の溝部642によって、ニードル604に固定されている。この配置は、リテイナー620をニードル604に固定している。リテイナーがニードルに固定されており、展開の間に(展開されているチューブに対して)ニードルとともに移動することを保証するために、任意の外側の適切な機械的なおよび/または接着剤の配置が使用され得るということが想定される。
【0072】
図15から図17に示されているように、設置デバイス600は、デバイスステム608を有しており、デバイスステム608の中で、ニードル604は、ニードルステム605の中に係合されているアクチュエーターロッド661の線形移動にしたがってスライドする。図示されているように、ニードル604の近位端部は、近位端部におけるスライド係合のためのフランジ662を有しており、一方、ニードル604とステムスリーブ607の内部表面との間の表面接触の範囲を最小化している。
【0073】
図15に示されている展開前状況では、遠位フランジ506のガイド部分517は、環状の凹部650の中へ半径方向内向きに押圧されており、遠位フランジ506がニードル先端部606の矢印形状の継続部を効果的に形成するようになっている。これは、流線形の様式で患者の鼓膜を通した遠位フランジ506の正確で効果的な挿入を支援する。デバイス600の他の利益は、リードインがチューブの上に必要とされないということであり、その理由は、それが事前に搭載されており、近位フランジが常に見られることができ、鼓膜に突き当たるときにエンドストップとして働いているので、チューブの任意の可視化を喪失しない状態で、チューブを挿入するための半径方向のガイドを有しているからである。また、これらの利点は、上記に説明されている先の実施形態にも当てはまる。
【0074】
図18は、アクチュエーターメカニズムを備えたハンドル670を有する全体的な設置デバイス600を示している。ステム608は、改善された可視化のために、その近位端部において曲げ部680を有する。ニードル604は、ケーブルにクリンプされており、ケーブルは、ハンドル670の中のアクチュエーターとリンク接続している。
【0075】
本発明は、説明されている実施形態に限定されるのではなく、構築および詳細において変化させられ得る。他の例では、リテイナーフィンガーは、丸形、正方形、または長方形などのような、異なる断面形状を有している。チューブの材料は、異なっていることが可能であるが、近位フランジの材料が遠位フランジの材料よりも剛性の高いものになっているということが一般的に有利である。
【0076】
例として図8から図10に示されているように、遠位フランジの上の異なる数および位置のタブ、ならびに、対応して異なる構成の通路およびリテイナーフィンガーが存在することが可能である。予期される臨床的使用、特に、チューブの押し出しまでの予期される時間は、これらの構成を決定することとなる。遠位フランジは、タブを有していなくてもよく、実際に、図10に示されているように、環状になっていることも可能であるということが想定される。そのようなケースでは、遠位フランジの材料が可撓性になっているべきであるというより多くの要件が存在する。
【0077】
また、近位フランジが、半径方向外向きの方向に開口している通路を有するということも想定される。これは、近位フランジを通って延在するリテイナーフィンガーの利益を依然として提供することとなり、近位フランジは、制限ストップを提供する遠位に面する面を依然として有することとなる。しかし、通路が、半径方向内向きに面する表面を少なくとも有し、フィンガーの半径方向の位置を保つことを助けるということ、または、リテイナーの上に別個の内向きに面する表面が存在するということが好適である。
【0078】
また、チューブは、インプラントグレードのシリコーンまたは他の適切なポリマーなどのような、同じ材料から一体的に作製されることができ、近位フランジは、好ましくは、その組成において、より硬くなっている。この場合において、リテイナーフィンガーが鼓膜を通過するために、および、使用時に鼓膜に対するストップとして作用するために、近位フランジの中に必要とされる機械的な特性を実現するために、材料の組成が使用されていない場合には、寸法および形状などのようなフランジ特質は、硬いベース構造体を生成させるために修正され得る。例は、近位フランジ厚さを増加させることとなり、近位フランジが金属などのようなより硬い材料のものであることによって一体成形配置が提供することとなる剛性をベースに与える。また、ステムスリーブの遠位端部が、たとえば、軸線方向に面するより大きい断面積を有することによって、および/または、金属などのようなより硬い材料のものであることによって、より高い剛性をチューブ近位フランジに提供するように構成され得るということも想定される。
【0079】
本発明のデバイスは、第三者ハンドルへの接続のためのカートリッジの形態をとることが可能であり、または、それは、好ましくは、ニードルを後退させるためのメカニズムを備えたハンドルを組み込むことが可能である。また、ニードルの後退を引き起こすためのメカニズムは、たとえば、筆記用ペンのための従来のアクチュエーターなどのような、任意の所望のタイプのものであることが可能である。
【0080】
また、リテイナーは、ニードルから独立して移動可能であり、鼓膜チューブを適切な場所に残すように後退し、ニードルは、事前にまたは事後に引き抜かれるということが想定される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18