IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国家能源投資集団有限責任公司の特許一覧 ▶ 北京低▲タン▼清▲潔▼能源研究所の特許一覧

特許7101819アモルファス炭素材料、製造方法及び使用
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】アモルファス炭素材料、製造方法及び使用
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/05 20170101AFI20220708BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20220708BHJP
【FI】
C01B32/05
H01M4/587
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2020564575
(86)(22)【出願日】2018-08-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-28
(86)【国際出願番号】 CN2018100258
(87)【国際公開番号】W WO2019218506
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2020-11-17
(31)【優先権主張番号】201810482062.9
(32)【優先日】2018-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520335934
【氏名又は名称】国家能源投資集団有限責任公司
【氏名又は名称原語表記】CHINA ENERGY INVESTMENT CORPORATION LIMITED
(73)【特許権者】
【識別番号】520380978
【氏名又は名称】北京低▲タン▼清▲潔▼能源研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】潘 ▲広▼宏
(72)【発明者】
【氏名】梁 文斌
(72)【発明者】
【氏名】▲唐▼ ▲クン▼
(72)【発明者】
【氏名】田 ▲亜▼峻
(72)【発明者】
【氏名】康 丹苗
(72)【発明者】
【氏名】段 春▲ティン▼
(72)【発明者】
【氏名】康 利斌
(72)【発明者】
【氏名】▲衛▼ 昶
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-076209(JP,A)
【文献】特開2010-073651(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105489866(CN,A)
【文献】国際公開第2011/027503(WO,A1)
【文献】特表2019-508355(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/05
H01M 4/587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)真密度ρ及び粉末X線回折分析法により得られた層間隔d002は、関係式:100×ρ×d002≧70 式(I)を満たし、
(2)粉末X線回折分析法により得られた層間隔d002、L及びLは、関係式:L×d002≦0.58 式(II)、及び
100×(L/L )×d002 ≦0.425 式(III)を満たし、
(3)全質量に対して、ケイ素成分0.001~2%とアルミニウム成分0.001~2%とを含有する、ことを特徴とするアモルファス炭素材料。
上記式中、ρの単位はg/cm、d002、L及びLの単位はすべてnmである。
【請求項2】
100×ρ×d002≦120である、請求項1に記載のアモルファス炭素材料。
【請求項3】
100×ρ×d 002 ≦90である、請求項2に記載のアモルファス炭素材料。
【請求項4】
×d002≧0.1である、請求項1~3のいずれか1項に記載のアモルファス炭素材料。
【請求項5】
×d 002 ≧0.45である、請求項4に記載のアモルファス炭素材料。
【請求項6】
100×(L/L )×d002 ≧0.1である、請求項1~5のいずれか1項に記載のアモルファス炭素材料。
【請求項7】
100×(L /L )×d 002 ≧0.28である、請求項6に記載のアモルファス炭素材料。
【請求項8】
熱拡散係数が≧0.09mm・s-1 である、請求項1~7のいずれか1項に記載のアモルファス炭素材料。
【請求項9】
熱拡散係数が≧0.12mm ・s -1 である、請求項8に記載のアモルファス炭素材料。
【請求項10】
粒子径D50が2~50μmである粉末の形態である、請求項1に記載のアモルファス炭素材料。
【請求項11】
粒子径D 50 が5~30μmである粉末の形態である、請求項10に記載のアモルファス炭素材料。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載のアモルファス炭素材料の製造方法であって、
(1)炭素元素含有量>70%の炭素含有材料粉末を炭素源として提供するステップと、
(2)ケイ素含有物質とアルミニウム含有物質との組み合わせ、又はケイ素とアルミニウムとを同時に含有する物質であるケイ素アルミニウム源を提供するステップと、
(3)前記炭素含有材料粉末とケイ素アルミニウム源を、界面活性剤を含有する水溶液と混合し、次に相分離を行い、得た固体を乾燥させ、乾燥粉末を得るステップと、
(4)真空又は不活性の雰囲気下、前記乾燥粉末を炭化するステップと、を含む、ことを特徴とする製造方法。
【請求項13】
前記炭素含有材料粉末の平均粒子径D50は、1~100μmである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記炭素含有材料粉末の平均粒子径D 50 は、2~100μmである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
炭素含有材料は、ピッチ、石炭及びコークスのうちの少なくとも1種である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記ケイ素含有物質は、ケイ素単体、酸化ケイ素、ケイ酸、ケイ酸塩、グラスファイバー、炭化ケイ素及び有機ケイ素から選ばれる少なくとも1種である、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記アルミニウム含有物質は、アルミニウム単体、メタアルミン酸塩、アルミナ、ボーキサイト、水酸化アルミニウム及び無機又は有機酸のアルミニウム塩から選ばれる少なくとも1種である、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
ケイ素とアルミニウムとを同時に含有する前記物質は、ケイ素アルミニウム複合酸化物、アルミノケイ酸塩、ゼオライト、カオリン及びフライアッシュから選ばれる少なくとも1種である、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記界面活性剤を含有する水溶液の濃度が0.001~50重量%である、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記界面活性剤を含有する水溶液の濃度が0.01~10重量%である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記炭素含有材料粉末100重量部に対して、前記界面活性剤の使用量は0.005~250重量部である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記炭素含有材料粉末100重量部に対して、前記界面活性剤の使用量は0.05~50重量部である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記界面活性剤は、アニオン性界面活性剤及び/又はカチオン性界面活性剤から選ばれる、請求項12~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記アニオン性界面活性剤は、アラビアガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、C ~C 12 脂肪酸塩、C 12 ~C 20 アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩及びC 12 ~C 18 脂肪アルコール硫酸塩から選ばれる少なくとも1種である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記カチオン性界面活性剤は、C 10 ~C 22 アルキルトリメチルアンモニウム型カチオン界面活性剤、ジ(C 10 ~C 22 )アルキルジメチルアンモニウム型カチオン界面活性剤及びC 10 ~C 22 アルキルジメチルベンジルアンモニウム型カチオン界面活性剤から選ばれる少なくとも1種である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記界面活性剤は、アラビアガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ドデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド及びセチルトリメチルアンモニウムクロリドから選ばれる少なくとも1種である、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
ステップ(4)では、前記炭化は、温度が900~1600℃、時間が1~20時間であり、
あるいは、ステップ(4)の炭化処理を行う前に、前記乾燥粉末を真空又は不活性雰囲気下、400~800℃の温度で1~12時間予備焼成するステップをさらに含む、請求項12~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
ステップ(1)とステップ(4)の間の任意の段階でボールミリングを行い、炭化用の粉末の平均粒子径D50を1~50μmにするステップをさらに含む、請求項12~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
炭化用の粉末の平均粒子径D 50 を2~30μmにする、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
請求項1~11のいずれか1項に記載のアモルファス炭素材料の機械部品材料、電池電極材料又は熱伝導材料としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素材料の分野に関し、具体的には、アモルファス炭素材料、製造方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池、特にリチウムイオン二次電池の分野では、黒鉛材料は、電子伝導率が高く、リチウムインターカレーション前後の層状構造の体積の変化が小さく、リチウムインターカレーション容量が高く、リチウムインターカレーション電位が低いなどの特徴を有するため、現在主な市販のリチウムイオン電池負極材料となっている。二次電池は、複数回繰り返して使用することができ、残量が切れた後に満充電すると再び使用することができる。
【0003】
二次電池技術の発展に伴い、負極材料への要求がますます高まり、アモルファス炭素材料が注目されてきた。アモルファス炭素材料は、層間隔が大きく、電解液との適合性に優れ、リチウムイオンの拡散速度が高く、熱伝達能力が高いなどの利点があるので、電気自動車、ピーク調整可能な周波数変調グリッドや大規模エネルギー貯蔵の分野では将来性が期待できる。
【0004】
CN105720233Aは、リチウムイオン電池負極用炭素材料、及びリチウムイオン電池負極用炭素材料の製造方法を開示しており、該方法は、石炭液化残渣を重合するステップと、重合生成物を安定化させ、安定化生成物を炭化するステップと、を含む。
【0005】
CN104681786Aは、石炭系材料の黒鉛化内層、中間層及び表面に分布している外層からなる石炭系負極材料、及び該石炭系負極材料の製造方法を開示する。前記製造方法は、石炭系材料を粉砕するステップと、次に粘着剤、又は粘着剤と変性剤との混合物を加えるステップと、その後、プレス、高温黒鉛化を行うステップと、を含む。該材料は、平均粒子径D50が2~40μm、d002が0.335~0.337nm、比表面積が1~30m/g、固定炭素含有量が≧99.9%、真密度が≧2g/cmである。CN105185997Aは、ナトリウムイオン二次電池負極材料、その製造方法及び使用を開示する。前記材料は、石炭とハードカーボン前駆体を原料として、溶媒を加えた後、機械的混合を行い、乾燥させた後、不活性雰囲気下、架橋、硬化、分解をして製造されるアモルファス炭素材料である。前記材料は、平均粒子径が1~50μm、d002が0.35~0.42nm、Lが1~4nm、Lが3~5nmである。
【0006】
以上の特許文献は複数種の炭素材料及びその製造方法を開示したが、これら製造方法は、操作ステップが多く複雑であり、製造される炭素材料は、主に電池容量の向上に用いられ、電池の安全性や耐用年数に影響する熱伝達能力の向上を考慮に入れない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術に存在する上記問題に対して、本発明の目的は、新規アモルファス炭素材料、その製造方法及び使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成させるために、第1態様によれば、本発明は、
(1)真密度ρ及び粉末X線回折分析法により得られた層間隔d002は、関係式:100×ρ×d002≧70 式(I)を満たし、
(2)粉末X線回折分析法により得られた層間隔d002、L及びLは、関係式:L×d002≦0.58 式(II)、及び
100×(L/L )×d002 ≦0.425 式(III)を満たすこと、
(3)全質量に対して、ケイ素成分0.001~2%と、アルミニウム成分0.001~2%とを含有する、ことを特徴とするアモルファス炭素材料を提供する。
上記式中、ρの単位はg/cm、d002、L及びLの単位はすべてnmである。
【0009】
第2態様によれば、本発明は、
(1)炭素元素含有量>70%の炭素含有材料粉末を炭素源として提供するステップと、
(2)ケイ素含有物質とアルミニウム含有物質との組み合わせ、又はケイ素とアルミニウムとを同時に含有する物質であるケイ素アルミニウム源を提供するステップと、
(3)前記炭素含有材料粉末とケイ素アルミニウム源を、界面活性剤を含有する水溶液と混合し、次に相分離を行い、得た固体を乾燥させ、乾燥粉末を得るステップと、
(4)真空又は不活性雰囲気下、前記乾燥粉末を炭化するステップと、を含む、前記アモルファス炭素材料の製造方法を提供する。
【0010】
第3態様によれば、本発明は、上記方法で製造されるアモルファス炭素材料を提供する。
【0011】
第4態様によれば、本発明は、上記アモルファス炭素材料の機械部品材料、電池電極材料又は熱伝導材料としての使用を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の前記アモルファス炭素材料は、高い熱拡散係数、優れた熱伝達特性を有し、そして、電池の負極材料として使得すると電池に高容量を持たせ、このため、その応用分野が広くなり、また、従来技術に比べて、本発明の方法は、操作しやすいという特徴を有する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書に開示されている範囲の端点及び任意の値は、正確な範囲又は値に限定されず、これらの範囲又は値は、これらの範囲又は値に近い値を含むと理解されるべきである。数値範囲の場合、各範囲の端点間、各範囲の端点と個々の点値の間、および個々の点値の間を組み合わせて、1つ以上の新しい数値範囲を取得でき、これらの数値範囲は、本明細書で具体的に開示されていると見なされるべきである。
【0014】
第1態様によれば、本発明は、
(1)真密度ρ及び粉末X線回折分析法により得られた層間隔d002は、関係式:100×ρ×d002≧70 式(I)を満たし、
(2)粉末X線回折分析法により得られた層間隔d002、L及びLは、関係式:L×d002≦0.58 式(II)、及び
100×(L/L )×d002 ≦0.425 式(III)を満たすこと、
(3)全質量に対して、ケイ素成分0.001~2%と、アルミニウム成分0.001~2%とを含有する、ことを特徴とするアモルファス炭素材料を提供する。
上記式中、ρの単位はg/cm、d002、L及びLの単位はすべてnmである。
【0015】
本発明では、ケイ素、アルミニウム成分の含有量はすべてプラズマ発光分光法(ICP)により測定される。
【0016】
好ましくは、70≦100×ρ×d002≦120、さらに好ましくは70≦100×ρ×d002≦100、より好ましくは70≦100×ρ×d002≦90である。
【0017】
好ましくは、0.1≦L×d002≦0.58、さらに好ましくは0.3≦L×d002≦0.58、より好ましくは0.45≦L×d002≦0.58である。
【0018】
好ましくは、0.1≦100×(L/L )×d002 ≦0.425、さらに好ましくは0.2≦100×(L/L )×d002 ≦0.425、より好ましくは0.25≦100×(L/L )×d002 ≦0.425、最も好ましくは0.28≦100×(L/L )×d002 ≦0.425である。
【0019】
本発明によれば、前記アモルファス炭素材料の粉末X線回折分析法により得られた層間隔d002値は0.34~0.4nmの範囲内、好ましくは0.35~0.395nmの範囲内、より好ましくは0.355~0.39nmの範囲内である。
【0020】
本発明によれば、前記アモルファス炭素材料についてラマン分析により得られたL値は、3~6nmの範囲内、好ましくは4~5nmの範囲内、さらに好ましくは4.1~4.75nmの範囲内、より好ましくは4.2~4.7nmの範囲内である。
【0021】
本発明によれば、前記アモルファス炭素材料の粉末X線回折分析法により得られたL値は、1~1.9nmの範囲内、好ましくは1.1~1.8nmの範囲内、さらに好ましくは1.1~1.6nmの範囲内、より好ましくは1.2~1.55nmの範囲内である。
【0022】
本発明によれば、前記アモルファス炭素材料の熱拡散係数が≧0.09mm・s-1、好ましくは≧0.095mm・s-1、さらに好ましくは≧0.1mm・s-1、より好ましくは≧0.12mm・s-1である。
【0023】
本発明によれば、前記アモルファス炭素材料は、粒子径D50が2~50μm、好ましくは3~40μm、より好ましくは5~30μmである粉末の形態であってもよい。
【0024】
一実施形態によれば、前記アモルファス炭素材料の真密度ρは1.0~2.5g/cm、好ましくは1.3~2.5g/cm、さらに好ましくは1.8~2.3g/cmである。
【0025】
第2態様によれば、本発明は、
(1)炭素元素含有量>70%の炭素含有材料粉末を炭素源として提供するステップと、
(2)ケイ素含有物質とアルミニウム含有物質との組み合わせ、又はケイ素とアルミニウムとを同時に含有する物質であるケイ素アルミニウム源を提供するステップと、
(3)前記炭素含有材料粉末とケイ素アルミニウム源を、界面活性剤を含有する水溶液と混合し、次に相分離を行い、得た固体を乾燥させ、乾燥粉末を得るステップと、
(4)真空又は不活性雰囲気下、前記乾燥粉末を炭化するステップと、を含むアモルファス炭素材料の製造方法を提供する。
【0026】
本発明では、炭素元素の含有量は質量百分率含有量を意味し、プラズマ発光分光法(ICP)により測定される。前記炭素含有材料粉末中、炭素元素の含有量は、例えば、75~100%、好ましくは80~100%である。
【0027】
ステップ(1)では、前記炭素元素含有量>70%の炭素含有材料粉末は、ピッチ、石炭及びコークスから選ばれる少なくとも1種であってもよい。そのうち、前記石炭ピッチの軟化点は、30~360℃であってもよく、好ましくは40~350℃である。前記石油ピッチの軟化点は40~360℃であってもよく、好ましくは40~350℃である。前記メソフェーズピッチの軟化点は、200~360℃であってもよい。前記メソフェーズピッチは、通常、20~100%のメソフェーズ含有量を有する。
【0028】
具体的には、前記炭素含有材料は、軟化点が40℃、50℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、200℃、250℃、320℃、350℃及びこれらの点値のうちの任意の2つからなる範囲内の任意値である石炭ピッチであってもよく、軟化点が40℃、45℃、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、150℃、200℃、250℃、320℃、350℃、360℃及びこれらの点値のうちの任意の2つからなる範囲内の任意値である石油ピッチであってもよく、或いは、軟化点が220℃、250℃、260℃、280℃、300℃、310℃、320℃、330℃、340℃、360℃及びこれらの点値のうちの任意の2つからなる範囲内の任意値であるメソフェーズピッチであってもよい。また、前記メソフェーズピッチのメソフェーズ含有量は、20%、40%、50%、60%、80%、90%、95%、97%、100%及びこれらの点値のうちの任意の2つからなる範囲内の任意値であってもよい。
【0029】
ステップ(1)では、前記炭素含有材料粉末は、1~100μmの範囲内の平均粒子径D50を有することができ、好ましい平均粒子径D50は2~100μmである。具体的には、前記平均粒子径D50は、1μm、2μm、3μm、5μm、10μm、12μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μm及びこれらの点値のうちの任意の2つからなる範囲内の任意値であってもよい。
【0030】
前記炭素含有材料粉末は、任意の可能な方式で得られることができ、前記方式は、本分野で一般的に使用されるものであってもよく、例えば、炭素源としての炭素含有材料を機械的粉砕することにより得られ、前記機械的粉砕については従来技術を参照することができ、例えばジョー粉砕、ジェット粉砕、圧砕、衝撃破砕、研磨破砕、分割破砕、水圧破砕、爆発破砕などから選ばれることができるが、これらに制限されない。
【0031】
ステップ(2)では、前記ケイ素アルミニウム源はケイ素含有物質とアルミニウム含有物質との組み合わせ、又はケイ素とアルミニウムとを同時に含有する物質である。前記アモルファス炭素材料中、ケイ素及びアルミニウムはそれぞれ主にSiO及びAlの形態で存在する。当業者が理解できるように、前記アモルファス炭素材料には、例えば、未分解のケイ素アルミニウム源物質自体、又は炭化中に形成するケイ素化合物、アルミニウム化合物やケイ素アルミニウム化合物など、ほかの形態のケイ素やアルミニウムが少量で存在する可能性もある。
【0032】
ステップ(2)では、前記ケイ素含有物質は、ケイ素単体(例えば、ナノケイ素、ミクロンケイ素)、酸化ケイ素、ケイ酸、ケイ酸塩(例えば、ケイ酸ナトリウム)、グラスファイバー、炭化ケイ素及び有機ケイ素から選ばれる少なくとも1種であってもよい。
【0033】
前記アルミニウム含有物質は、アルミニウム単体、メタアルミン酸塩(例えば、メタアルミン酸ナトリウム)、アルミナ、ボーキサイト、水酸化アルミニウム及び無機又は有機酸のアルミニウム塩(例えば、硫酸カリウムアルミニウム・十二水和物)から選ばれる少なくとも1種であってもよい。
【0034】
ケイ素とアルミニウムとを同時に含有する前記物質は、ケイ素アルミニウム複合酸化物(例えば、AlSiOとAl(SiO)、アルミノケイ酸塩(例えば、アルミノケイ酸ナトリウム)、ゼオライト、カオリン及びフライアッシュから選ばれる少なくとも1種であってもよい。
【0035】
ステップ(2)では、前記炭素含有材料粉末との混合のし易さから、前記ケイ素アルミニウム源は、通常、粉末の形態であり、その平均粒子径D50が、1~100μm、例えば1μm、2μm、3μm、5μm、10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μm及びこれらの点値のうちの任意の2つからなる範囲内の任意値であってもよい。
【0036】
本発明によれば、前記アモルファス炭素材料にケイ素及びアルミニウムを導入することにより、本発明の前記アモルファス炭素材料の熱拡散係数を向上させるか、又は前記アモルファス炭素材料で製造される電池により高い電池容量を付与できる。
【0037】
ステップ(3)では、前記界面活性剤を含有する水溶液の濃度は、0.001~50重量%であってもよく、好ましくは0.01~20重量%、さらに好ましくは0.01~10重量%である。具体的には、該水溶液の濃度は、例えば、0.001重量%、0.01重量%、0.1重量%、0.2重量%、0.5重量%、1重量%、2重量%、3重量%、5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%及びこれらの点値のうちの任意の2つからなる範囲内の任意値であってもよい。
【0038】
ステップ(3)では、前記炭素含有材料粉末100重量部に対して、前記界面活性剤の使用量は、0.005~250重量部であってもよく、好ましくは0.01~100重量部、さらに好ましくは0.05~50重量部であり、具体的には、例えば、0.005重量部、0.05重量部、0.1重量部、0.2重量部、0.5重量部、1重量部、5重量部、10重量部、15重量部、20重量部、25重量部、30重量部、50重量部、100重量部、250重量部及びこれらの点値のうちの任意の2つからなる範囲内の任意値であってもよい。
【0039】
特定の一実施形態では、前記炭素含有材料粉末100重量部に対して、前記界面活性剤の使用量は0.05~50重量部であり、該水溶液の濃度は0.01~10重量%である。
【0040】
前記界面活性剤を含有する水溶液の調製方式などについては限制されず、前記界面活性剤を溶解して均質な溶液を形成できればよく、通常、前記界面活性剤の溶解を促進するために、前記溶解は、高温条件下、例えば50~85℃で行われることができる。
【0041】
ステップ(3)では、前記界面活性剤は、アニオン性界面活性剤及び/又はカチオン性界面活性剤から選ばれることができる。
【0042】
好ましくは、前記アニオン性界面活性剤は、アラビアガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、C~C12脂肪酸塩(例えば、硬脂酸ナトリウム)、C12~C20アルキルスルホン酸塩(例えば、セチルスルホン酸ナトリウム)、アルキルベンゼンスルホン酸塩(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)及びC12~C18脂肪アルコール硫酸塩(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)から選ばれる少なくとも1種である。
【0043】
前記カチオン性界面活性剤は、四級アンモニウム型カチオン界面活性剤から選ばれることができ、好ましくは、C10~C22アルキルトリメチルアンモニウム型カチオン界面活性剤、ジ(C10~C22)アルキルジメチルアンモニウム型カチオン界面活性剤及びC10~C22アルキルジメチルベンジルアンモニウム型カチオン界面活性剤から選ばれる少なくとも1種である。前記四級アンモニウム型カチオン界面活性剤の例には、デシルトリメチルアンモニウムクロリド、ウンデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、リデシルトリメチルアンモニウムクロリド、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ペンタデシルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘプタデシルトリメチルアンモニウムクロリド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ノナデシルトリメチルアンモニウムクロリド、エイコシルトリメチルアンモニウムクロリド、デシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ウンデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ドデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、リデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ペンタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、セチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ヘプタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ノナデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、エイコシルジメチルベンジルアンモニウムクロリドのうちの1種又は任意の複数種の組み合わせが含まれるが、これらに制限されない。
【0044】
より好ましくは、前記界面活性剤は、アラビアガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ドデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド及びセチルトリメチルアンモニウムクロリドから選ばれる少なくとも1種である。
【0045】
ステップ(3)では、前記混合は、通常、撹拌しながら行われ、前記混合の温度は1~99℃であってもよく、好ましくは15~90℃である。具体的には、例えば1℃、5℃、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃及びこれらの点値のうちの任意の2つからなる範囲内の任意値であってもよい。撹拌速度は実際の状況に応じて設定することができ、本発明の目的を達成できればよい。所望の温度は任意の可能な方式で実現することができ、例えば、水浴による加熱、アルコールランプによる加熱などがある。前記撹拌の時間は0.5~30時間、好ましくは1~10時間、より好ましくは2~8時間である。前記撹拌速度は実際の状況に応じて設定することができ、本発明の目的を達成できればよい。
【0046】
ステップ(3)では、本発明では、前記相分離の方式や操作条件については特に限制がなく、従来技術を参照して選択することができ、例えば前記相分離は、静置後上層液体を除去することにより実施するか、又は遠心分離により実施する。
【0047】
ステップ(3)では、前記乾燥の方式や操作条件については従来技術を参照して選択することができ、例えば、加熱乾燥、真空乾燥又は空気乾燥など、本分野で公知する方式で実施できる。1つの好適な実施形態では、前記乾燥は真空乾燥であり、前記真空乾燥は、温度が80~130℃、時間が1~30時間である。
【0048】
ステップ(4)では、好ましくは、前記炭化は、温度が900~1600℃、時間が1~20時間である。具体的には、例えば、前記炭化の温度は、900℃、1000℃、1100℃、1200℃、1300℃、1400℃、1500℃、1600℃及びこれらの点値のうちの任意の2つからなる範囲内の任意値であってもよく、炭化時間は必要に応じて決定し、数時間であってもよく、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間及びこれらの点値のうちの任意の2つからなる範囲内の任意値であってもよい。
【0049】
ステップ(4)では、乾燥粉末を真空又は不活性雰囲気で炭化する。炭化が真空で行われる場合、好ましくは前記炭化は、-40kPa~-101.325kPaの間の相対真空度で行われ、具体的には、-40kPa、-50kPa、-60kPa、-70kPa、-80kPa、-90kPa、-101.325kPa及びこれらの点値のうちの任意の2つからなる範囲内の任意値であってもよい。炭化が不活性雰囲気下で行われる場合、前記不活性雰囲気は、例えば、窒素ガス、アルゴンガスなどのガスのうちの1種又はこれらのガスの混合物であってもよい。また、前記炭化は、ある温度で所定時間炭化した後、昇温して炭化し続けてもよく(即ち、多段炭化)、同一温度で直接炭化してもよい(即ち一段炭化)。
【0050】
本発明では、あるいは、ステップ(4)の炭化(即ち焼成)処理を実施する前に、前記乾燥粉末を予備焼成するステップをさらに含んでもよく、前記予備焼成は、真空又は不活性雰囲気下行われ、予備焼成の温度は前記炭化の温度よりも低い。
【0051】
一般的には、前記予備焼成の温度は、400~800℃、例えば、400℃、450℃、500℃、550℃、600℃、650℃、700℃、750℃、800℃及びこれらの点値のうちの任意の2つからなる範囲内の任意値であってもよく、時間は必要に応じて、数時間、例えば1~12時間であってもよい。
【0052】
本発明では、前記予備焼成及び炭化は、同一設備で実施することができ、例えば合肥科晶材料技術有限公司から購入したOTF-1200X-80-III-F3LVシステムの管状炉部分にて行われる。前記予備焼成における真空度、不活性雰囲気については上記炭化を参照して選択すればよく、本発明では詳しく説明しない。
【0053】
本発明では、前記方法は、ステップ(1)とステップ(4)の間の任意の段階でボールミリングを行うステップをさらに含んでもよい。前記ボールミリングにより炭化用の粉末の平均粒子径D50を1~50μm、好ましくは1~40μm、さらに好ましくは2~30μm、例えば1μm、5μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、50μm及びこれらの点値のうちの任意の2つからなる範囲内の任意値にする。
【0054】
前記ボールミリングステップは、必要に応じて、前記ステップ(1)、ステップ(2)、ステップ(3)、ステップ(4)及び前記予備焼成操作の間の任意の段階で行われる。例えば、該ボールミリングは、ステップ(1)とステップ(2)の間、ステップ(2)とステップ(3)の間、ステップ(3)とステップ(4)の間、ステップ(3)と予備焼成の間、又は予備焼成とステップ(4)の間で行われることができる。ボールミリングは、必要に応じて、一段階又は多段階に分けて行うことができ、本発明では、前記ボールミリング条件については制限がなく、所望の粉末粒度D50を取得できればよい。
【0055】
第3態様によれば、本発明は、本発明の第2態様に記載の方法で製造されるアモルファス炭素材料を提供する。
【0056】
第4態様によれば、本発明は、本発明の第1態様又は第3態様に記載のアモルファス炭素材料の機械部品材料、電池電極材料又は熱伝導材料としての使用を提供する。
【0057】
本発明によれば、前記アモルファス炭素材料の使用は、二次電池(例えばリチウムイオン電池)の負極材料として使用することを含み、この場合、電池の容量を向上できる。具体的には、一実施形態によれば、本発明の炭素材料を負極材料として製造した負極と、参照電極としての金属リチウムシートとを組み立てたボタン電池の容量は≧240mAh/g、好ましくは≧245mAh/g、より好ましくは≧249mAh/gである。
【0058】
以下、実施例にて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の保護範囲はそれに制限されない。
【0059】
特に断らない限り、以下のテスト方法及びテスト器具は、以上で説明された本発明の各態様、及び以下で説明する各実施例や比較例に適用できる。
【0060】
以下の実施例及び比較例では、設備と測定方法は下記である。
1、設備
1)小型超微粉碎机は、温州頂歴医療器械有限公司から購入され、型番WF18である。
2)全方向遊星型ボールミルは、長沙米淇儀器設備有限公司から購入され、型番QM-QXである。
3)焼成(予備焼成、炭化を含む)は、合肥科晶材料技術有限公司から購入されるOTF-1200X-80-III-F3LVシステムの管状炉部分にて行われる。
【0061】
2、試薬
アラビアガムは、国薬集団化学試薬北京有限公司から購入され、製品番号:69012495、規格:Aladdin A108975、CAS番号:9000-01-5である。
【0062】
カルボキシメチルセルロースナトリウムは、国薬集団化学試薬北京有限公司から購入され、製品番号:30036328、規格CP300-800(滬試)、CAS番号:9004-32-4である。
【0063】
フェノール樹脂は、国薬集団化学試薬北京有限公司から購入され、製品番号30265876、規格A010024、炭素含有量69重量%である。
【0064】
3、テスト
1)軟化点
ASTM D 3104-99 硬ピッチ軟化点の標準試験方法(Standard Test Method for Softening Point of Pitches)に準じて測定する。
【0065】
2)真密度
真密度は、米国のマイクロメリティクス社(Micromeritics Instrument Corp.)の真密度計AccuPyc(登録商標) II 1340を用いて25℃で測定する。
【0066】
3)粉末XRD分析
ドイツのブルカーAXS社(Bruker AXS GmbH)製のD8 Advance型回折計を用いてテストし、管電圧40kV、管電流40mA、X線放射線源Cu Kα(λ=1.54184Å)、収集ステップサイズ0.02°、収集2θ範囲10~60°とする。Scherrer式L=Kλ/B002cosθによりLを計算し、ここで、KはScherrer係数、λはX線波長、Bは回折ピークの半値幅、θは回折角である。
【0067】
4)ラマン分光法
フランスのHoriba Jobin Yvon社製のLabRam HR-800型ラマン分光計を用いて、レーザー波長532.06nm、スリット幅100μm、走査範囲700~2100cm-1でテストする。得られたIGとIDの値をラマン分光法により分析し、式La=4.4IG/IDによりLaを算出する。
【0068】
5)粒度(D50
イギリスのマルバーンインスツルメンツ社(Malvern Instruments Ltd.)製の Malvern Mastersizer 2000レーザー粒度分布計を用いてテストする。
【0069】
6)熱拡散係数
ドイツのネッチ社(NETZSCH Group)製のLFA 447レーザー熱伝導率計を用いて、レーザー散乱法によりテストする。
【0070】
7)電池容量
電池容量は、武漢市藍電電子股分有限公司製の電池テストシステムCT2001A電池テスターを用いてテストする。それぞれ以下の実施例及び比較例における炭素材料(炭素負極材料として)を用いて製造された負極を備えるボタン電池について、初回充放電容量テストを行い、ここで、電池を0.05C(1C=250mAh/g)で3.0Vに定電流充電し、次に、同じ速度で0Vまで定電流放電し、10個の電池について測定し、平均値を測定値とした。
【0071】
ボタン電池の製造過程は以下のとおりである。以下の実施例又は比較例で製造される炭素材料(負極材料として)と導電性カーボンブラックSuper Pと粘着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを92:3:5の質量比で均一に混合し、溶媒であるN-メチルピロリドン(NMP)を固形分が48%となるまで加え、撹拌して均一な負極スラリーとし、ドクターブレードで該負極スラリーを銅箔に均一に塗布した後、80℃のオーブンに入れて24時間真空乾燥させて溶媒を除去する。得られた負極片を打ち抜き機で直径12mmのシートに打ち抜き、このシートを80℃で24時間乾燥させ、MBraun2000グローブボックス(Ar雰囲気、HOとO濃度0.1×10-16体積%未満)に入れて、金属リチウムシートを参照電極として組み立て、ボタン電池とした。
【0072】
実施例1
軟化点260℃のメソフェーズピッチ(炭素含有量98重量%、メソフェーズ含有量50%)とケイ酸アルミニウム(Al(SiO)を、96:4の質量比で混合し、混合物を小型超微粉砕機で粉砕して、D50=50μmの粉末を得て、この粉末を全方向遊星式ボールミルにより300rpmでボールミリングし、D50=10μmの粉末を得た。
【0073】
アラビアガムを水に加え、80℃水浴の条件で、濃度2重量%の溶液を調製した。粉末と溶液との質量比が20:100となるように前述ボールミリングした粉末を該溶液に加え、80℃で4時間撹拌し、その後、常温で静置して、上層の液体を除去し、得た固体を120℃で12時間真空乾燥させた。乾燥させた粉末をOTF-1200X-80-III-F3LVシステムの管状炉部分に投入し、窒素ガス雰囲気下、600℃で10時間予備焼成し、次に、1300℃に昇温し、この温度で8時間焼成して、D50=14μmのアモルファス炭素材料を得た。
【0074】
実施例2
軟化点320℃のメソフェーズピッチ(炭素含有量99重量%、メソフェーズ含有量90%)とケイ酸アルミニウム(Al(SiO)を、98:2の質量比で混合し、混合物を小型超微粉砕機で粉砕して、D50=80μmの粉末を得て、この粉末を全方向遊星式ボールミルにより300rpmでボールミリングし、D50=25μmの粉末を得た。
【0075】
アラビアガムを水に加え、80℃水浴の条件で、濃度0.01重量%の溶液を調製した。次に、粉末と溶液との質量比が20:100となるようにボールミリングした粉末をこの溶液に加え、80℃で4時間撹拌し、その後、常温で静置して、上層の液体を除去し、得た固体を120℃で12時間真空乾燥させた。乾燥させた粉末をOTF-1200X-80-III-F3LVシステムの管状炉部分に投入し、窒素ガス雰囲気下、1600℃で1時間焼成して、D50=29μmのアモルファス炭素材料を得た。
【0076】
実施例3
軟化点45℃の石油ピッチ(炭素含有量86重量%)とカオリン(Al・2SiO・2HO)を、99:1の質量比で混合し、混合物を小型超微粉砕機で粉砕して、D50=30μmの粉末を得て、この粉末を全方向遊星式ボールミルにより300rpmでボールミリングし、D50=10μmの粉末を得た。
【0077】
カルボキシメチルセルロースナトリウムを水に加え、80℃水浴の条件で、濃度0.1重量%の溶液を調製した。次に、粉末と溶液との質量比が20:100となるように前述ボールミリングした粉末をこの溶液に加え、室温で4時間撹拌し、その後、常温で静置して、上層の液体を除去し、得た固体を120℃で12時間真空乾燥させた。乾燥させた粉末をOTF-1200X-80-III-F3LVシステムの管状炉部分に投入し、窒素ガス雰囲気下、900℃で20時間焼成して、D50=13μmのアモルファス炭素材料を得た。
【0078】
実施例4
軟化点120℃の石炭ピッチ(炭素含有量93重量%)とカオリン(Al・2SiO・2HO)を、99.9:0.1の質量比で混合し、混合物を小型超微粉砕機で粉砕して、D50=12μmの粉末を得た。
【0079】
アラビアガムを水に加え、80℃水浴の条件で、濃度0.2重量%の溶液を調製した。次に、粉末と溶液との質量比が20:100となるように上記粉末を前記溶液に加え、80℃で4時間撹拌し、その後、常温で静置して、上層の液体を除去し、得た固体を120℃で12時間真空乾燥させた。乾燥させた粉末をOTF-1200X-80-III-F3LVシステムの管状炉部分に投入し、窒素ガス(N)雰囲気下、800℃で1時間予備焼成した。焼成して得た生成物を全方向遊星式ボールミルにより280rpmでボールミリングし、D50=6μmの粉末を得た。再度この粉末をOTF-1200X-80-III-F3LVシステムの管状炉部分に投入し、窒素ガス雰囲気下、1200℃で6時間焼成して、D50=8μmのアモルファス炭素材料を得た。
【0080】
実施例5
軟化点280℃のメソフェーズピッチ(炭素含有量98重量%、メソフェーズ含有量70%)とカオリン(Al・2SiO・2HO)を、94:6の質量比で混合し、混合物を小型超微粉砕機で粉砕して、D50=100μmの粉末を得て、この粉末を全方向遊星式ボールミルにより300rpmでボールミリングし、D50=15μmの粉末を得た。
【0081】
セチルトリメチルアンモニウムクロリド(C1942ClN)を水に加え、80℃水浴の条件で、濃度10重量%の溶液を調製した。粉末と溶液との質量比が20:100となるように上記ボールミリングした粉末をこの溶液に加え、80℃で4時間撹拌し、その後、常温で静置して、上層の液体を除去し、得た固体を120℃で12時間真空乾燥させた。乾燥させた粉末をOTF-1200X-80-III-F3LVシステムの管状炉部分に投入し、窒素ガス雰囲気下、400℃で12時間予備焼成し、次に、1100℃に昇温し、この温度で8時間焼成して、D50=18μmのアモルファス炭素材料を得た。
【0082】
実施例6
石炭(炭素含有量89重量%)とケイ酸アルミニウム(Al(SiO)を、95:5の質量比で混合し、混合物を小型超微粉砕機で粉砕して、D50=50μmの粉末を得て、この粉末を全方向遊星式ボールミルにより300rpmでボールミリングし、D50=10μmの粉末を得た。
【0083】
アラビアガムを水に加え、80℃水浴の条件で、濃度5重量%の溶液を調製した。粉末と溶液との質量比が20:100となるように上記ボールミリングした粉末をこの溶液に加え、80℃で4時間撹拌し、その後、常温で静置して、上層の液体を除去し、得た固体を120℃で12時間真空乾燥させた。乾燥させた粉末をOTF-1200X-80-III-F3LVシステムの管状炉部分に投入し、窒素ガス雰囲気下、700℃で1時間予備焼成し、さらに1200℃に昇温し、この温度で5時間焼成して、D50=12μmのアモルファス炭素材料を得た。
【0084】
比較例1
軟化点260℃のメソフェーズピッチ(炭素含有量98重量%、メソフェーズ含有量50%)と二酸化ケイ素(SiO)を、96:4の質量比で混合し、混合物を小型超微粉砕機で粉砕し、D50=50μmの粉末を得て、この粉末を全方向遊星式ボールミルにより300rpmでボールミリングし、D50=10μmの粉末を得た。
【0085】
アラビアガムを水に加え、80℃水浴の条件で、濃度2重量%の溶液を調製した。次に、粉末と溶液との質量比が20:100となるように上記ボールミリングした粉末をこの溶液に加え、80℃で4時間撹拌し、その後、常温で静置して、上層の液体を除去し、得た固体を120℃で12時間真空乾燥させた。乾燥させた粉末をOTF-1200X-80-III-F3LVシステムの管状炉部分に投入し、窒素ガス雰囲気下、600℃で10時間予備焼成し、次に、1300℃に昇温し、この温度で8時間焼成して、D50=14μmの炭素材料を得た。
【0086】
比較例2
軟化点260℃のメソフェーズピッチ(炭素含有量98重量%、メソフェーズ含有量50%)とアルミナ(Al)を、96:4の質量比で混合し、混合物を小型超微粉砕機で粉砕して、D50=50μmの粉末を得て、この粉末を全方向遊星式ボールミルにより300rpmでボールミリングし、D50=10μmの粉末を得た。
【0087】
アラビアガムを水に加え、80℃水浴の条件で、濃度2重量%の溶液を調製した。次に、粉末と溶液との質量比が20:100となるように上記ボールミリングした粉末をこの溶液に加え、80℃で4時間撹拌し、その後、常温で静置して、上層の液体を除去し、得た固体を120℃で12時間真空乾燥させた。乾燥させた粉末をOTF-1200X-80-III-F3LVシステムの管状炉部分に投入し、窒素ガス雰囲気下、600℃で10時間予備焼成し、次に、1300℃に昇温し、この温度で8時間焼成して、D50=15μmの炭素材料を得た。
【0088】
比較例3
軟化点260℃のメソフェーズピッチ(炭素含有量98重量%、メソフェーズ含有量50%)とケイ酸アルミニウム(Al(SiO)を、96:4の質量比で混合し、混合物を小型超微粉砕機で粉砕して、D50=50μmの粉末を得て、この粉末を全方向遊星式ボールミルにより300rpmでボールミリングし、D50=10μmの粉末を得た。ボールミリングした粉末をOTF-1200X-80-III-F3LVシステムの管状炉部分に投入し、窒素ガス雰囲気下、600℃で10時間予備焼成し、次に、1300℃に昇温し、この温度で8時間焼成して、D50=13μmの炭素材料を得た。
【0089】
比較例4
軟化点260℃のメソフェーズピッチ(炭素含有量98重量%、メソフェーズ含有量50%)を小型超微粉砕機で粉砕し、得到D50=50μmの粉末を得て、この粉末を全方向遊星式ボールミルにより300rpmでボールミリングし、D50=10μmの粉末を得た。
【0090】
アラビアガムを水に加え、80℃水浴の条件で、濃度2重量%の溶液を調製した。次に、粉末と溶液との質量比が20:100となるように上記ボールミリングした粉末をこの溶液に加え、80℃で4時間撹拌し、その後、常温で静置して、上層の液体を除去し、得た固体を120℃で12時間真空乾燥させた。乾燥させた粉末をOTF-1200X-80-III-F3LVシステムの管状炉部分に投入し、窒素ガス雰囲気下、600℃で10時間予備焼成し、次に、1300℃に昇温し、この温度で8時間焼成して、D50=13μmの炭素材料を得た。
【0091】
比較例5
フェノール樹脂とケイ酸アルミニウム(Al(SiO)を、96:4の質量比で混合し、混合物を小型超微粉砕機で粉砕して、D50=50μmの粉末を得て、この粉末を全方向遊星式ボールミルにより300rpmでボールミリングし、D50=10μmの粉末を得た。
【0092】
アラビアガムを水に加え、80℃水浴の条件で、濃度2重量%の溶液を調製した。次に、粉末と溶液との質量比が20:100となるように上記ボールミリングした粉末をこの溶液に加え、80℃で4時間撹拌し、その後、常温で静置して、上層の液体を除去し、得た固体を120℃で12時間真空乾燥させた。乾燥させた粉末をOTF-1200X-80-III-F3LVシステムの管状炉部分に投入し、窒素ガス雰囲気下、600℃で10時間予備焼成し、次に、1300℃に昇温し、この温度で8時間焼成して、D50=12μmの炭素材料を得た。
【0093】
実施例及び比較例で得られた炭素材料についてキャラクタリゼーション及び特性をテストし、結果を表1に示す。
【0094】
【表1】
【0095】
表1の結果から明らかなように、本発明の前記方法で製造されたアモルファス炭素材料は、良好な熱伝達特性を備えながら、高い電池容量を付与できる。
【0096】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明はこれらに制限されない。本発明の技術的構想を逸脱しない限り、本発明の技術案に対して、各技術的特徴を任意の適切な方式で組み合わせることを含む、さまざまな簡単な変形を行うことができ、これら簡単な変形や組み合わせはすべて本発明で開示された内容とみなされるべきであり、すべて本発明の特許範囲に属する。