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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】複合炭素材料、その製造方法及び使用
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/05 20170101AFI20220708BHJP
   C01B 32/21 20170101ALI20220708BHJP
   C01B 32/194 20170101ALI20220708BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20220708BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20220708BHJP
【FI】
C01B32/05
C01B32/21
C01B32/194
H01M4/587
H01M4/36 E
H01M4/36 A
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020564583
(86)(22)【出願日】2018-08-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-28
(86)【国際出願番号】 CN2018100253
(87)【国際公開番号】W WO2019218504
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2020-11-17
(31)【優先権主張番号】201810482039.X
(32)【優先日】2018-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520335934
【氏名又は名称】国家能源投資集団有限責任公司
【氏名又は名称原語表記】CHINA ENERGY INVESTMENT CORPORATION LIMITED
(73)【特許権者】
【識別番号】520380978
【氏名又は名称】北京低▲タン▼清▲潔▼能源研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】梁 朋
(72)【発明者】
【氏名】梁 文斌
(72)【発明者】
【氏名】▲衛▼ 昶
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 均▲慶▼
(72)【発明者】
【氏名】▲鄭▼ 冬芳
(72)【発明者】
【氏名】段 春▲ティン▼
(72)【発明者】
【氏名】潘 ▲広▼宏
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/019994(WO,A1)
【文献】特開2009-76209(JP,A)
【文献】国際公開第2014/128814(WO,A1)
【文献】特開2018-166130(JP,A)
【文献】国際公開第2015/019993(WO,A1)
【文献】特開2019-87541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/05
C01B 32/21
C01B 32/194
H01M 4/587
H01M 4/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒鉛結晶相とアモルファス炭素相を含み、XRDにより測定した前記黒鉛結晶相の(002)面のピーク強度I002とアモルファス炭素相のピーク強度Iamorとの比I002/Iamorが0.1~40であり、前記黒鉛結晶相の含有量が5重量%以上である複合炭素材料。
【請求項2】
前記黒鉛結晶相の(002)面のピーク強度I002とアモルファス炭素相のピーク強度Iamorとの正規化I002/Iamorが0.1~60である、請求項1に記載の複合炭素材料。
【請求項3】
前記黒鉛結晶相の(002)面のピーク強度I 002 とアモルファス炭素相のピーク強度I amor との正規化I 002 /I amor が7~22である、請求項2に記載の複合炭素材料。
【請求項4】
前記黒鉛結晶相の(002)面のピーク強度I002と該ピークの半値幅FWHMとの比I002/FWHMが1,000~80,000である、請求項1~3のいずれか1項に記載の複合炭素材料。
【請求項5】
前記黒鉛結晶相の(002)面のピーク強度I 002 と該ピークの半値幅FWHMとの比I 002 /FWHMが8,000~60,000である、請求項4に記載の複合炭素材料。
【請求項6】
前記複合炭素材料についてラマン分光法により測定したIdとIgとの比Id/Igの変動係数δが0.8未満である、請求項1~5のいずれか1項に記載の複合炭素材料。
【請求項7】
前記複合炭素材料についてラマン分光法により測定したIdとIgとの比Id/Igの変動係数δが0.05~0.35である、請求項6に記載の複合炭素材料。
【請求項8】
前記複合炭素材料の真密度ρが1.8~2.3g/cmである、請求項1~のいずれか1項に記載の複合炭素材料。
【請求項9】
1)マトリックス材料とフィラーを多段混合して、混合物を得るステップと、
2-1)前記混合物を酸化し、炭化炉にて炭化するステップ、又は
2-2)前記混合物を金型においてプレスして炭化するステップと、を含み、
前記多段混合は、
(1)室温で1~6時間混合する段階と、
(2)マトリックス材料の軟化温度よりも10~50℃高い温度に加熱しながら0.5~3時間混合する段階と、
(3)マトリックス材料の軟化温度よりも10~50℃高い温度に加熱した後、2~10時間恒温混合する段階と、
(4)室温に降温しながら0.5~3時間を混合する段階と、を含み、
以上の(1)~(4)の段階が複数回繰り返され、前記多段混合の総時間が10~150時間であり、
前記マトリックス材料は炭化により前記アモルファス炭素相になり、前記フィラーは黒鉛及び/又はグラフェンから選ばれる、請求項1~のいずれか1項に記載の複合炭素材料の製造方法。
【請求項10】
ステップ1)では、前記マトリックス材料は、石炭ピッチ、石油ピッチ、メソフェーズピッチ、石炭直接液化残渣、重質芳香族炭化水素、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、フルフラール樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリフッ化ビニリデン及びポリアクリロニトリルから選ばれる少なくとも1種である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記マトリックス材料は、石炭ピッチ、石油ピッチ及びメソフェーズピッチから選ばれる少なくとも1種である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記マトリックス材料及び前記フィラーはすべて粒子形態であり、前記マトリックス材料の粒度が50メッシュ以上であり、前記フィラーの粒度が80メッシュ以上である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記マトリックス材料の粒度が100~300メッシュであり、前記フィラーの粒度が80~200メッシュである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ステップ1)では、前記マトリックス材料と前記フィラーとの質量比が1:0.1~5である、請求項に記載の方法。
【請求項15】
ステップ1)では、前記マトリックス材料と前記フィラーとの質量比が1:0.25~1である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ステップ1)では、前記多段混合は、ボールミリング、ニーディング及び密閉式混錬から選ばれる1種又は複数種を組み合わせた方式で実施される、請求項9~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
ステップ2-1)では、前記酸化は酸化性雰囲気で行われ、前記酸化の温度が220~350℃、時間が1~16時間であるか、又は
前記酸化は強酸化性酸で行われ、前記酸化の温度が25~100℃、時間が0.5~12時間である、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
ステップ2-1)では、前記炭化の温度が750~1450℃、時間が1~8時間である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ステップ2-2)では、前記プレス炭化は、温度が600~1600℃、前記混合物の表面に印加する圧力が10~50MPa、プレス炭化の時間が1~10hである、請求項に記載の方法。
【請求項20】
3)ステップ2-1)又はステップ2-2)で得た炭化生成物を粉砕して分級するステップをさらに含む、請求項9~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
ステップ3)により、得られた粉末のメジアン粒径を5~20μmにする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
請求項1~のいずれか1項に記載の複合炭素材料の放熱材料又はリチウムイオン電池への使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素質複合材料の分野に関し、具体的には、複合炭素材料、その製造方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
黒鉛系複合材料は、特性に優れているので、多くの分野で広く使用されている。例えば、金属材料に比べて、黒鉛系複合材料は、低密度、高熱伝導率及び低熱膨張係数を有するので、金属の代替品としてコンピュータ、通信機器、集積回路や電子パッケージなどの分野における放熱材料として用いられ得る。黒鉛系複合材料は、電子伝導率が高く、リチウムイオン拡散係数が大きく、リチウムインターカレーション前後の層状構造の体積の変化が小さく、リチウムインターカレーション容量が高く、リチウムインターカレーション電位が低いなどの特徴を有するので、現在、主なリチウムイオン電池負極材料となっており、さらに、黒鉛系複合材料は、優れた機械的強度を有することから、金型、圧子などの機械部品を製造する材料として有用である。
【0003】
黒鉛系複合材料の使用に応じて、該材料の製造方法が複数開発されている。
【0004】
CN106241775Aは、黒鉛材料、その原料組成物、その製造方法及び用途を開示している。該黒鉛材料の製造方法は、天然鱗片状黒鉛、人造黒鉛、メソフェーズカーボンミクロスビーズ及び粘着剤を、ニーディング、押出、破砕及び篩分けのプロセスにより処理して、マトリックス黒鉛粉末を得るステップと、マトリックス黒鉛粉末を球状グリーン体にプレスするステップと、グリーン体を炭化して精製するステップと、を含む。該黒鉛材料は、燃料素子のケース層の材料として使用可能である。
【0005】
CN101708838Aは、天然鱗片状黒鉛系の高配向性黒鉛材料及びその製造方法を開示する。該製造方法は、天然黒鉛、粘着剤及び溶媒を混合して粉砕し、乾燥、ホットプレス成形を行い、最後に、炭化して黒鉛化し、配向性黒鉛材料を得るステップを含む。該黒鉛材料は放熱材料として使用可能である。
【0006】
CN106252596Aは、ソフトカーボン黒鉛複合負極材料、その製造方法及びリチウムイオン電池を開示している。該製造方法は、天然球状黒鉛をピッチと混合して、所定の圧力で加熱して含浸させることで、ピッチを軟化して天然球状黒鉛内の隙間に流動して充填させ、冷却して、中間生成物を得るステップと、中間生成物を順次に炭化、粉砕及び分級するステップと、を含む。
【0007】
以上の特許文献では、複数の黒鉛系複合材料及びその製造方法が開示されており、これらの製造方法は、操作ステップが多くて複雑であり、黒鉛をマトリックスにおいてナノスケールで均一に分散させるのが困難であり、製造された黒鉛系複合材料が特定の分野でしか使用できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来技術に存在する上記問題に対して、本発明の目的は、新規複合炭素材料、その製造方法及び使用を提供することである。本発明者らは、研究した結果、黒鉛系複合材料において、黒鉛結晶相(002)面のピーク強度とアモルファス炭素相のピーク強度との比が一定の範囲に制御されることにより、得られた黒鉛系複合材が優れた機械的特徴、放熱特性を有し、且つリチウムイオン電池の負極材料として用いられると、電池の電気化学的特性を向上できることを見出し、この知見に基づいて、本発明を完成させた。
【0009】
本発明の第1態様によれば、本発明は、黒鉛結晶相とアモルファス炭素相を含み、XRDにより測定した前記黒鉛結晶相の(002)面のピーク強度I002とアモルファス炭素相のピーク強度Iamorとの比I002/Iamorが0.1~40であり、前記黒鉛結晶相の含有量が5重量%以上である複合炭素材料を提供する。
【0010】
本発明の第2態様によれば、本発明は、
1)マトリックス材料とフィラーを多段混合して、混合物を得るステップと、
2-1)前記混合物を酸化し、炭化炉にて炭化するステップ、又は
2-2)前記混合物を金型においてプレスして炭化するステップと、を含み、
前記多段混合は、
(1)室温で1~6時間混合する段階と、
(2)マトリックス材料の軟化温度よりも10~50℃高い温度に加熱しながら0.5~3時間混合する段階と、
(3)前記マトリックス材料の軟化温度よりも10~50℃高い温度で2~10時間恒温混合する段階と、
(4)室温に降温しながら0.5~3時間混合する段階と、を含み、
以上の(1)~(4)の段階が複数回繰り返され、前記多段混合の総時間が10~150時間であり、
前記マトリックス材料は、前記炭化により前記アモルファス炭素相になり、前記フィラーは黒鉛及び/又はグラフェンから選ばれる前記複合炭素材料の製造方法を提供する。
【0011】
本発明の第3態様によれば、本発明は、本発明の第2態様に記載の方法で製造される複合炭素材料を提供する。
【0012】
本発明の第4態様によれば、本発明は、本発明の複合炭素材料の放熱材料又はリチウムイオン電池への使用を提供する。
【0013】
本発明の複合炭素材料は、高い圧縮強度、曲げ強度を有するとともに、高熱伝導率を有するので、放熱材料として使用することができ、前記複合炭素材料は、リチウムイオン電池の負極材料として使用することもでき、前記複合炭素材料を備えるリチウムイオン電池はより優れた電気化学的特性を有する。また、本発明の方法は、黒鉛をマトリックスにおいてナノスケールの厚さで均一に分散させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例4で製造された複合炭素材料のTEM像である。
図2】実施例4で製造された複合炭素材料のTEM像の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書に開示されている範囲の端点及び任意の値は、正確な範囲又は値に限定されず、これらの範囲又は値は、これらの範囲又は値に近い値を含むと理解されるべきである。数値範囲の場合、各範囲の端点間、各範囲の端点と個々の点値の間、および個々の点値の間を組み合わせて、1つ以上の新しい数値範囲を取得でき、これらの数値範囲は、本明細書で具体的に開示されていると見なされるべきである。
【0016】
本発明の第1態様によれば、本発明は、黒鉛結晶相とアモルファス炭素相を含み、X線回折分析(XRD)により測定した黒鉛結晶相の(002)面のピーク強度I002とアモルファス炭素相のピーク強度Iamorとの比I002/Iamorが0.1~40であり、前記黒鉛結晶相の含有量が5重量%以上である複合炭素材料を提供する。
【0017】
本発明では、前記黒鉛結晶相の含有量は、前記ケイ素‐炭素複合材料を製造するときの投入量に応じて決まる。
【0018】
本発明の複合炭素材料では、前記黒鉛結晶相の(002)面のピーク強度I002とアモルファス炭素相のピーク強度Iamorは以下の常法により測定される。粉末サンプルについてXRD検出を行ってサンプルのXRDスペクトル及びXRDデータを取得し、Topasソフトウェアを用いてバックグラウンドを自動的に控除した後、ピークフィッティングを行い、黒鉛結晶相の(002)面のピークとアモルファス炭素相のピークとを得て、対応する強度を読み取る。
【0019】
前記複合炭素材料において、前記黒鉛結晶相の(002)面のピーク強度I002とアモルファス炭素相のピーク強度Iamorとの比I002/Iamorが、好ましくは0.5~38、さらに好ましくは3~38である。
【0020】
本発明の複合炭素材料において、前記黒鉛結晶相の(002)面のピーク強度I002とアモルファス炭素相のピーク強度Iamorとの正規化I002/Iamorが0.1~60であってもよい。
【0021】
当業者が理解できるように、正規化I002/Iamorは材料中の各成分の含有量による強度比への影響を回避できる。
【0022】
本発明では、正規化I002/Iamorは式(1)により決定される。
正規化I002/Iamor=(I002/Wf)/(Iamor/Wf) 式(1)
式中、Wfは、複合炭素材料の製造に使用されるフィラー(黒鉛結晶相形成用)の、フィラーとマトリックス材料(アモルファス炭素相形成用)との和に対する質量百分率を表し、
Wfは、複合炭素材料の製造に使用されるマトリックス材料の、フィラーとマトリックス材料との和に対する質量百分率を表す。
【0023】
前記複合炭素材料において、前記黒鉛結晶相の(002)面のピーク強度I002とアモルファス炭素相のピーク強度Iamorとの正規化I002/Iamorは、好ましくは5~45、さらに好ましくは7~22である。
【0024】
本発明の複合炭素材料において、XRDにより測定した前記黒鉛結晶相(002)面のピーク強度I002と該ピークの半値幅FWHMとの比I002/FWHMが1,000~80,000である。ここで、I002/FWHMはXRD回折スペクトルのうち黒鉛結晶相(002)面のピークの特徴を反映する。
【0025】
前記複合炭素材料において、前記黒鉛結晶相の(002)面のピーク強度I002と該ピークの半値幅FWHMとの比I002/FWHMが、好ましくは2,000~75,000、さらに好ましくは6,000~65,000、さらに好ましくは8,000~60,000である。
【0026】
一実施形態によれば、前記複合炭素材料において、XRDにより測定した前記黒鉛結晶相の(002)面の黒鉛層間隔d002が0.335~0.345nmであり、前記黒鉛結晶相のc軸結晶面の結晶粒度Lcが5~35nmである。
【0027】
本発明の複合炭素材料において、前記複合炭素材料についてラマン分光法により測定したIdとIgとの比Id/Igの変動係数δが0.8未満である。前記変動係数δは、前記黒鉛結晶相とアモルファス炭素相とが非常に均一に分散していることを示している。
【0028】
本発明では、前記変動係数δは以下の方式で決定される。
I:サンプルのうちの20箇所でのラマン分光法によるId及びIgの値を測定する。
II:上記20箇所でのId/Igをそれぞれ算出して、μ、μ、……、μ20とし、式(2)により平均値μを算出する。
μ=(μ+μ+……+μ20)/20、 式(2)
III:式(3)により標準偏差σを算出する。
σ=sqrt{[(μ-μ)+(μ-μ)+……+(μ-μ)]/n}
式(3)
式中、sqrtは平方根を表す。
IV:式(4)により変動係数δを算出する。
δ=σ/μ 式(4)
【0029】
前記複合炭素材料において、前記変動係数δは通常少なくとも0.01である。好ましくは、前記変動係数δは0.02~0.6、さらに好ましくは0.04~0.45、さらに好ましくは0.05~0.35である。
【0030】
本発明の複合炭素材料において、前記黒鉛結晶相は、ナノスケールの厚さで前記アモルファス炭素相に分散しており、通常、前記黒鉛結晶相の厚さは1~40nmであってもよく、好ましくは5~30nm、さらに好ましくは5~25nmである。
【0031】
本発明では、前記黒鉛結晶相の厚さは透過型電子顕微鏡技術(HR-TEM)により測定される。
【0032】
一実施形態によれば、前記複合炭素材料の真密度ρは1.8~2.3g/cmである。
【0033】
本発明の第2態様によれば、本発明は、前記複合炭素材料の製造方法を提供し、該方法は、
1)マトリックス材料とフィラーを多段混合して、混合物を得るステップと、
2-1)前記混合物を酸化し、炭化炉にて炭化するステップ、又は
2-2)前記混合物を金型においてプレスして炭化するステップと、を含み、
前記多段混合は、
(1)室温(15~45℃)で1~6時間混合する段階と、
(2)マトリックス材料の軟化温度よりも10~50℃高い温度に加熱しながら0.5~3時間混合する段階と、
(3)前記マトリックス材料の軟化温度よりも10~50℃高い温度で2~10時間恒温混合する段階と、
(4)室温に降温しながら0.5~3時間混合する段階と、を含み、
以上(1)~(4)の段階が複数回繰り返され、前記多段混合の総時間が10~150時間である。
【0034】
本発明では、前記マトリックス材料について特に限定がなく、炭化により前記アモルファス炭素を形成できるものであればよい。一般的には、前記マトリックス材料は、石油ピッチ、石炭ピッチ、メソフェーズピッチ、石炭直接液化残渣(DCLR)、重質芳香族炭化水素、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、フルフラール樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリフッ化ビニリデン及びポリアクリロニトリルから選ばれる1種又は複数種であってもよい。
【0035】
本明細書では、軟化温度はマトリックス材料の種類に応じて決定され、マトリックス材料が流動可能になる温度を意味し、例えば、マトリックス材料が上記ピッチ類又は熱硬化性樹脂から選ばれる場合、前記軟化温度とはこれらの軟化点であり、前記マトリックス材料が上記熱可塑性樹脂である場合、前記軟化温度とはその融点である。
【0036】
好ましくは、前記マトリックス材料は石油ピッチ、石炭ピッチ及びメソフェーズピッチのうちの少なくとも1種である。前記石炭ピッチの軟化点は、80~360℃であってもよく、好ましくは100~320℃であり、前記石油ピッチの軟化点は、80~360℃であってもよく、好ましくは100~320℃であり、前記メソフェーズピッチの軟化点は180~360℃であってもよい。また、前記メソフェーズピッチ中のメソフェーズの含有量が通常30~100体積%である。
【0037】
本発明の方法によれば、フィラーとしての前記黒鉛、グラフェンは前記複合炭素材料における黒鉛結晶相を形成することに用いられる。ここで、前記黒鉛は天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛及び酸化黒鉛から選ばれる1種又は複数種であってもよい。一般的には、前記黒鉛中の炭素の含有量が90重量%以上である。前記グラフェンの層数が好ましくは20層以下である。
【0038】
1つの好適な実施形態によれば、ステップ1)では、前記マトリックス材料は、石炭ピッチ、石油ピッチ及びメソフェーズピッチから選ばれる少なくとも1種である。前記多段混合を行う前の前記マトリックス材料及び前記フィラーはすべて粒子形態である。
【0039】
前記マトリックス材料の粒度が、50メッシュ以上(即ち270μm孔径の篩下物)、好ましくは100~300メッシュである。例えば、マトリックス材料であるピッチ粒子は、-50メッシュ、-100メッシュ(即ち150μm孔径の篩下物)、-150メッシュ(106μm孔径の篩下物)、-200メッシュ(75μm孔径の篩下物)、-300メッシュ(48μm孔径の篩下物)の粒度を有する。前記粒度を有するピッチは市販品として直接入手するか、又は粉砕して篩分けすることにより得られる。
【0040】
前記フィラーの粒度が、80メッシュ以上(即ち180μm孔径の篩下物)、好ましくは80~200メッシュである。例えば、前記フィラー粒子は-100メッシュ、-150メッシュ、-200メッシュの粒度を有する。本発明では、前記フィラーの形態について特に限制がなく、任意の幾何学的形状であってもよく、例えば、球状、フレーク状、円柱状、多面体などを含むが、これらに制限されない。前記粒度のフィラーは市販品として直接入手するか、又は粉砕して篩分けすることにより得られる。
【0041】
本発明の方法によれば、ステップ1)では、前記マトリックス材料及びフィラーの使用量は、形成される複合炭素材料において、前記黒鉛結晶相(即ちフィラー)の含有量が5重量%以上であるようにする。通常、前記マトリックス材料とフィラーとの質量比は、1:0.1~5であってもよく、好ましくは1:0.25~1である。
【0042】
ステップ1)では、前記多段混合は混合するときに温度を段階的に調整することにより行われる。当業者が理解できるように、(2)段階「前記マトリックス材料の軟化温度よりも10~50℃高い温度に加熱しながら0.5~3時間混合する」とは、混合過程において、室温を開始温度とし、温度をマトリックス材料の軟化温度よりも10~50℃高い温度に徐々に昇温してこの段階の終点温度とし、この段階の昇温にかかる時間が0.5~3時間であることを意味し、(4)段階「室温に降温しながら0.5~3時間混合する」とは、混合過程において、(3)段階の恒温温度を室温に徐々に降温する過程は合計0.5~3時間かかることを意味する。
【0043】
本発明では、前記(2)段階の昇温は好ましくは等速昇温、前記(4)段階の降温は好ましくは等速降温である。
【0044】
ステップ1)では、前記多段混合は、ボールミリング、ニーディング及び密閉式混錬から選ばれる1種又は複数種を組み合わせた方式で実施される。前記多段混合は不活性雰囲気保護下又は真空条件下で行われることができる。前記不活性雰囲気は、例えば窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、ネオンガス及びクリプトンガスから選ばれる少なくとも1種である。
【0045】
ステップ1)では、前記混合は例(1)~(4)の4段階の順に従って行われ、これを1サイクルとして複数回繰り返し、例えば繰り返し回数は2~9回(即ち3~10回行う)である。好ましくは、前記多段混合の総時間は50~130時間である。
【0046】
一実施形態によれば、前記混合は前記ボールミリングにより実施され、ボールミルは、自転が100~1000rpmに制御されてもよく、好ましくは300~800rpmであり、公転が50~400rpmに制御されてもよく、好ましくは100~400rpmである。
【0047】
別の実施形態によれば、前記混合は前記ニーディングにより実施され、ニーダーの回転数は好ましくは50~500rpm、さらに好ましくは200~500rpmである。
【0048】
さらなる好適な実施形態によれば、前記混合は前記密閉式混錬により実施され、密閉式混錬機の回転数は50~500rpm、さらに好ましくは200~500rpmである。
【0049】
ステップ2-1)では、本発明において前記酸化の操作及び条件については特に限定がなく、従来技術を参照して選択することができる。
【0050】
一実施形態によれば、前記酸化は酸化性雰囲気において行われ、前記酸化の温度が220~350℃、酸化の時間が1~16時間であってもよく、好ましくは5~12時間である。前記酸化性雰囲気は例えば空気又は酸素ガスである。
【0051】
別の実施形態によれば、前記酸化は強酸化性酸において行われ、前記酸化の温度が25~100℃、酸化の時間が0.5~12時間であってもよい。前記強酸化性酸の例には、濃硝酸、濃硝酸と濃硫酸との混合物(例えば体積比が1:3の混合物)、濃硝酸と濃塩酸との混合物(例えば王水)が含まれるが、これらに制限されない。該実施形態では、ステップ2-1)は、炭化前に、前記酸化により得られた生成物を中性(pH6~8)まで水洗して乾燥させることをさらに含んでもよい。好ましくは、前記強酸化性酸は濃硝酸である。
【0052】
当業者が理解できるように、前記酸化処理は、非再溶融性の生成物を得る目的で行われる。ここで、「非再溶融性」は炭素系複合材料製造の分野における一般的な意味を有し、酸化処理により得られた生成物がいずれの加熱条件でも軟化したり、流動性を持ったりすることがないことを意味する。
【0053】
ステップ2-1)では、前記炭化は炭化炉にて行われ、前記炭化の温度が600~1600℃であってもよく、好ましくは750~1450℃であり、炭化の時間が1~10時間であってもよく、好ましくは1~8時間である。
【0054】
ステップ2-2)では、前記プレス炭化において、炭化の温度が600~1600℃であってもよく、好ましくは750~1450℃であり、前記混合物の表面に印加する圧力が10~50MPaであってもよく、好ましくは10~40MPaであり、炭化の時間が1~10hであってもよく、好ましくは1~8時間である。
【0055】
ステップ2-1)及びステップ2-2)では、前記炭化は、通常、不活性雰囲気保護下で行われる。前記不活性雰囲気は前記と同様であるため、ここで詳しく説明しない。
【0056】
本発明の方法によれば、前記複合炭素材料の実際な用途に応じて、該方法は、
3)ステップ2-1)又は2-2)で得られた炭化生成物(即ち本発明の複合炭素材料)を粉砕して分級するステップをさらに含んでもよい。
【0057】
ステップ3)では、前記粉砕はボールミル又はジェットミルにより実施され得る。
好ましくは、ステップ3)により、得られた粉末のメジアン粒径を5~20μmにする。
【0058】
本発明の第3態様によれば、本発明は、前記方法で製造される複合炭素材料を提供する。
【0059】
本発明の第4態様によれば、本発明は、前記複合炭素材料の放熱材料又はリチウムイオン電池への使用を提供する。
【0060】
本発明の前記複合炭素材料は、高い圧縮強度、曲げ強度を有するとともに、高熱伝導率を有するため、放熱材料として使用することができる。前記複合炭素材料をリチウムイオン電池の負極材料として用いると、リチウムイオン電池に高容量維持率を持たせ、つまり、電池の電気化学的特性を向上させる。
【0061】
以下、実施例にて本発明を詳細に説明する。
【0062】
以下の実施例及び比較例では、設備と測定方法は下記である。
1、設備
1)密閉式混錬機は東莞市力顕儀器有限公司から購入され、型番HZ-7048である。
2)ニーダーはサーモフィッシャーサイエンティフィック社から購入されるThermo scientific(商標)であり、型番HAAKE PolyLab Rheomex 600 OSである。
3)ボールミルは長沙米淇儀器設備有限公司から購入され、型番QM-QX2Lである。
4)ジェットミルは維坊埃爾派粉体技術設備有限公司から購入され、型番MQW03である。
【0063】
2、ピッチ軟化点はASTM D 3104-99に準じて測定される。
【0064】
3、複合炭素材料のキャラクタリゼーション
1)真密度テスト
米国のマイクロメリティクス社(Micromeritics Instrument Corp.)製の真密度計AccuPyc(登録商標) II 1340を用いて25℃で測定する。
2)XRDテスト
ドイツのブルカーAXS社(Bruker AXS GmbH)製のD8 ADVANCE X線回折計により、銅Kα放射線を用いて、10~90°の走査角度の範囲でテストし、ステップを0.02とする。
3)TEMテスト
サンプルを微細粉末に研いた後、銅メッシュに担持し、日本電子株式会社(JEOL Ltd.)製のJEM 2100高解像度透過型電子顕微鏡(HR-TEM)を用いて測定する。
4)ラマン分光法
フランスのHoriba jobin yvon社製のLabRam HR-800マイクロレーザー共焦点ラマン分光計を用いて、レーザー波長532.06nm、スリット幅100μm、走査範囲700~2100cm-1でテストし、得られたIdとIgの値をラマン分光法により分析する。
ここで、試験対象の複合炭素材料である粉末サンプルをサンプルセルに平らに広げ、該サンプルのランダムな20個の点につきテストし、対応するId/Ig値を得て、次に、前記算出方法によりId/Ig値の変動係数δを算出する。
5)圧縮強度及び曲げ強度はInstron社製の5966型万能材料試験機を用いて、下記基準に従ってテストする。
GB/T 13465.1-2014「不浸透性黒鉛材料試験方法 第1部分:機械的特性試験方法総則」;
GB/T 13465.2-2014「不浸透性黒鉛材料試験方法 第2部分:曲げ強度」;
GB/T13465.3-2014「不浸透性黒鉛材料試験方法 第3部分:圧縮強度」。
6)熱伝導率:ドイツのネッチ社(NETZSCH Group)製のLFA 467 HyperFlashフラッシュ熱伝導率計を用いて、ASTM E1461-2011の方法に従って測定する。
【0065】
4、リチウムイオン電池の特性のテスト(容量維持率)
武漢市藍電電子股分有限公司製の電池テストシステムLAND CT2001Aを用いて、充放電電圧の範囲を0~3Vとしてテストする。
【0066】
まず、0.1Cでの放電容量をテストして、20回のテストの平均値を算出し、次に、2Cでの放電容量をテストして、20回のテストの平均値を算出し、2Cでの放電容量の平均値と0.1Cでの放電容量の平均値との比を放電容量維持率とする。
【0067】
実施例1
本実施例は本発明の複合炭素材料及びその製造方法を説明する。
軟化点150℃の石油ピッチをマトリックス材料として、該ピッチを粉砕して150メッシュのスクリーンにかけ、次に、得られた篩下物粒子と天然黒鉛(150メッシュ篩下物粒子、炭素含有量≧99.5重量%)を4:1の質量比、室温で撹拌して混合した後、ニーダーに加え、窒素ガス保護下、500rpmの回転数、室温で3時間処理し、次に160℃に等速で加熱しながら1時間処理し、引き続き、160℃で3時間恒温処理し、最後に、等速で室温に冷却しながら1時間処理し、上記プロセスを9回繰り返し、つまり、合計72時間ニーディングした。
【0068】
ニーディングして得られた混合物を金型に投入して、窒素ガス保護下、1400℃に加熱しながら、混合物の表面に10MPaの圧力を印加し、この温度及び圧力で1時間保持し、次に冷却して、複合炭素材料を得た。該複合炭素材料のキャラクタリゼーションの結果及び特性を表1に示す。
【0069】
実施例2
本実施例は本発明の複合炭素材料及びその製造方法を説明する。
軟化点200℃の石炭ピッチをマトリックス材料として、該ピッチを粉砕して200メッシュのスクリーンにかけ、次に、得られた篩下物粒子と人造黒鉛(200メッシュ篩下物粒子、炭素含有量>99重量%)を3:2の質量比、室温で撹拌して混合した後、ボールミルに加え、窒素ガス保護下、自転回転数800rpm、公転回転数200rpm、室温で3時間ボールミリングし、次に220℃に等速で加熱しながら1.5時間ボールミリングし、引き続き、220℃で10時間恒温ボールミリングし、最後に、等速で室温に冷却しながら1.5時間ボールミリングし、上記プロセスを6回繰り返し、つまり、合計96時間ボールミリングした。
【0070】
ボールミリングして得られた混合物を金型に投入して、窒素ガス保護下、800℃に加熱しながら、混合物の表面に10MPaの圧力を印加し、この温度及び圧力で1時間保持し、次に冷却して、複合炭素材料を得た。該複合炭素材料のキャラクタリゼーションの結果及び特性を表1に示す。
【0071】
比較例1
軟化点200℃の石炭ピッチをマトリックス材料として、該ピッチを粉砕して200メッシュのスクリーンにかけ、次に、得られた篩下物粒子と天然黒鉛(200メッシュスクリーン粒子、炭素含有量>99重量%)を3:2の質量比、室温で撹拌して混合した後、ボールミルに加え、窒素ガス保護下、自転回転数800rpm、公転回転数200rpm、室温で12時間ボールミリングし、次に、220℃に加熱しながら1.5時間ボールミリングした後、220℃で1時間恒温ボールミリングし、最後に、常温に冷却しながら1.5時間ボールミリングし、上記プロセスを6回繰り返し、つまり、合計96時間ボールミリングした。
【0072】
ボールミリングして得られた混合物を金型に投入して、窒素ガス保護下、800℃に加熱しながら、混合物の表面に10MPaの圧力を印加し、この温度及び圧力で1時間保持し、次に冷却して、複合炭素材料を得た。該複合炭素材料のキャラクタリゼーションの結果及び特性を表1に示す。
【0073】
比較例2
軟化点200℃の石炭ピッチをマトリックス材料として、該ピッチを粉砕して200メッシュのスクリーンにかけ、次に、得られた篩下物粒子と人造黒鉛(200メッシュ篩下物粒子、炭素含有量>99重量%)を3:2の質量比、室温で撹拌して混合した後、ボールミルに加え、窒素ガス保護下、自転回転数800rpm、公転回転数200rpm、室温で96時間ボールミリングした。
【0074】
ボールミリングして得られた混合物を金型に投入して、窒素ガス保護下、800℃に加熱しながら混合物の表面に10MPaの圧力を印加し、この温度及び圧力で1時間保持し、次に冷却して、複合炭素材料を得た。該複合炭素材料のキャラクタリゼーションの結果及び特性を表1に示す。
【0075】
実施例3
本実施例は本発明の複合炭素材料及びその製造方法を説明する。
軟化点220℃の石油ピッチをマトリックス材料として、該ピッチを粉砕して150メッシュのスクリーンにかけ、次に、得られた篩下物粒子と天然黒鉛/グラフェン混合物(質量比5:1、天然黒鉛200メッシュ篩下物粒子、炭素含有量>99重量%、グラフェンの厚さ10層以下)を1:1の質量比、室温で撹拌して混合した後、密閉式混錬機に加え、窒素ガス保護下、300rpmの回転数、室温で3時間処理し、次に250℃に等速で加熱しながら2時間処理し、引き続き、250℃で8時間恒温処理し、最後等速で室温に冷却しながら2時間処理し、上記プロセスを8回繰り返し、つまり、合計120時間密閉式混錬した。
【0076】
密閉式混錬して得られた混合物を金型に投入して、窒素ガス雰囲気下、1600℃に加熱しながら混合物の表面に40MPaの圧力を印加し、該温度及び圧力で2h維持し、次に冷却して、複合炭素材料を得た。該複合炭素材料のキャラクタリゼーションの結果及び特性を表1に示す。
【0077】
実施例4
本実施例は本発明の複合炭素材料及びその製造方法を説明する。
軟化点280℃のメソフェーズピッチ(メソフェーズ含有量60体積%)をマトリックス材料として、該ピッチを粉砕して100メッシュのスクリーンにかけ、次に、得られた篩下物粒子と膨張黒鉛/天然黒鉛混合物(質量比1:2、いずれも100メッシュ篩下物粒子、且つ炭素含有量>99重量%)を、4:1質量比、室温で撹拌して混合した後、ボールミルに加え、窒素ガス保護下、自転回転数600rpm、公転回転数400rpm、室温で2時間ボールミリングし、次に、300℃に等速で加熱しながら3時間ボールミリングし、引き続き、300℃で4時間恒温ボールミリングし、最後に、等速で室温に冷却しながら3時間ボールミリングし、上記プロセスを6回繰り返し、つまり、合計72時間ボールミリングした。
【0078】
ボールミリングして得られた混合物を金型に投入して、窒素ガス保護下、1300℃に加熱しながら混合物の表面に30MPaの圧力を印加し、該温度及び圧力で4時間保持し、次に冷却して、複合炭素材料を得た。該複合炭素材料のキャラクタリゼーションの結果及び特性を表1に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
表1の結果から明らかなように、比較例1~2に比べて、実施例1~4で製造された複合炭素材料は、より高い機械的強度を有するとともに、高い熱伝導率を有する。また、図1及び図2は、実施例4で製造される複合炭素材料の各拡大倍数のTEM像であり、同図から分かるように、該複合炭素材料における黒鉛相はナノスケールの厚さ(≦10nm)でアモルファス炭素に分散している。さらに、HR-TEMにより観察した結果、実施例1~3で製造される複合炭素材料における黒鉛相もすべてナノスケールの厚さ(5~25nm)でアモルファス炭素に分散していることが分かった。
【0081】
実施例5
本実施例は本発明の複合炭素材料及びその製造方法を説明する。
軟化点220℃の石油ピッチをマトリックス材料として、該ピッチを粉砕して200メッシュのスクリーンにかけ、次に、得られた篩下物粒子と天然黒鉛(200メッシュ篩下物粒子、炭素含有量≧99.5%)を、4:1の質量比、室温で撹拌して混合した後、ニーダーに加え、窒素ガス保護下、500rpmの回転数、室温で3時間処理し、次に、240℃に等速で加熱しながら2時間処理し、引き続き、240℃で6時間恒温処理し、最後に、等速で室温に冷却しながら2時間処理し、上記プロセスを5回繰り返し、つまり、合計65時間処理した。
【0082】
ニーディングして得られた混合物を酸化炉に投入し、空気雰囲気下、260℃で8時間処理し、引き続き、得られた酸化生成物を炭化炉に加え、窒素ガス保護下、1400℃で3時間炭化処理し、次に冷却して、複合炭素材料を得た。該複合炭素材料のキャラクタリゼーション結果を表2に示す。
【0083】
比較例3
軟化点220℃の石炭ピッチをマトリックス材料として、該ピッチを粉砕して200メッシュのスクリーンにかけ、次に、得られた篩下物粒子と天然黒鉛(200メッシュ篩下物粒子、炭素含有量≧99.5%)を、4:1の質量比、室温で撹拌して混合した後、ニーダーに加え、窒素ガスにおいて、500rpmの回転数、室温で96時間撹拌した。
【0084】
ニーディングして得られた混合物を酸化炉に投入し、空気雰囲気下、260℃で8時間処理し、引き続き、得られた酸化生成物を炭化炉に投入し、窒素ガス保護下、1400℃で3時間炭化処理し、複合炭素材料を得た。該複合炭素材料のキャラクタリゼーション結果を表2に示す。
【0085】
実施例6
本実施例は本発明の複合炭素材料及びその製造方法を説明する。
軟化点150℃の石油ピッチをマトリックス材料として、該ピッチを粉砕して100メッシュのスクリーンにかけ、次に、得られた篩下物粒子と人造黒鉛(100メッシュ篩下物粒子、炭素含有量>99%)を、1:1の質量比、室温で撹拌して混合した後、ボールミルに加え、窒素ガス保護下、自転回転数600rpm、公転回転数400rpm、室温で2時間ボールミリングし、次に、180℃に等速で加熱しながら1時間ボールミリングし、引き続き、180℃で8時間恒温ボールミリングし、最後に、等速で室温に冷却しながら1時間ボールミリングし、上記プロセスを6回繰り返し、つまり、合計72時間ボールミリングした。
【0086】
ボールミリングして得られた混合物を濃硝酸に加え、60℃で2時間処理し、次にろ過して、得られたろ過ケーキを脱イオン水で、得られた溶液pHが7となるまで洗浄し、最後に、100℃でブラスト乾燥させた。乾燥生成物を炭化炉に投入し、窒素ガス保護下、1500℃で3時間炭化処理し、次に冷却して、複合炭素材料を得た。該複合炭素材料のキャラクタリゼーション結果を表2に示す。
【0087】
比較例4
酸化ステップを行わず、ボールミリングして得られた混合物を直接炭化炉に投入し、窒素ガス保護下、1500℃で5時間炭化処理し、複合炭素材料を得た以外、実施例6の方法で複合炭素材料を製造した。該複合炭素材料のキャラクタリゼーション結果を表2に示す。
【0088】
実施例7
本実施例は本発明の複合炭素材料及びその製造方法を説明する。
軟化点150℃の石油ピッチをマトリックス材料として、該ピッチを粉砕して100メッシュのスクリーンにかけ、次に、得られた篩下物粒子と人造黒鉛(100メッシュ篩下物粒子、炭素含有量>99%)を、1:1の質量比、室温で撹拌して混合した後、密閉式混錬機に加え、窒素ガス保護下、回転数300rpm、室温で1時間処理し、次に、190℃に等速で加熱しながら1.5時間処理し、引き続き、190℃で5時間恒温処理し、最後に、等速で室温に冷却しながら1.5時間処理し、上記プロセスを4回繰り返し、つまり、合計36時間密閉式混錬した。
【0089】
密閉式混錬して得られた混合物を酸化炉に投入し、空気雰囲気下、240℃で8時間処理し、引き続き、得られた酸化生成物を炭化炉に投入し、窒素ガス保護下、1400℃で3時間炭化処理し、複合炭素材料を得た。該複合炭素材料のキャラクタリゼーション結果を表2に示す。
【0090】
応用実施例1~3及び応用比較例1~2は、それぞれ実施例5~7、比較例3~4で製造されるケイ素‐炭素複合材料のリチウムイオン電池への使用を説明する。
【0091】
応用実施例1~3及び応用比較例1~2
実施例5~7、比較例3~4で製造された複合炭素材料をそれぞれジェットミルにおいてさらに粉砕して分級し、メジアン粒径が8μmの複合炭素材料粉末をそれぞれ得て、5種類の粉末をそれぞれカーボンブラック、PVDF及びNMPと質量比92:3:5:200で混合し、均一に撹拌し、負極スラリーを得た後、得られた負極スラリーを銅箔(厚さ10μm)上に塗布し、真空オーブンにて120℃、-0.08MPaで12時間乾燥させ、リチウムイオン電池負極を得た。
【0092】
上記電池負極に孔を打ち抜いた後、アルゴンガスで満たされているグローブボックスにおいて組み立ててボタン電池とし、ここで、対電極は金属リチウムシートであり、電解液は1mol/L LiPFのEC+EMC溶液(ECとEMCとの体積比1:1)から選ばれ、セパレータはCelgard2400セパレータである。該電池の特性を表2に示す。
【0093】
【表2】
【0094】
表2から分かるように、比較例3~4に比べて、実施例5~7で製造される複合炭素材料をリチウムイオン電池の負極材料として用いることによって、リチウムイオン電池の放電容量維持率を高めることができる。さらに、HR-TEMにより観察した結果、実施例5~7で製造される複合炭素材料における黒鉛相はすべて均ナノスケールの厚さ(5~30nm)でアモルファス炭素に分散していることが分かった。
【0095】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明はこれらに制限されない。本発明の技術的構想を逸脱しない限り、本発明の技術案に対して、各技術的特徴を任意の適切な方式で組み合わせることを含む、さまざまな簡単な変形を行うことができ、これら簡単な変形や組み合わせはすべて本発明で開示された内容とみなされるべきであり、すべて本発明の特許範囲に属する。
図1
図2