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特許7101821ケイ素-炭素複合材料、その製造方法及び使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】ケイ素-炭素複合材料、その製造方法及び使用
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/05 20170101AFI20220708BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20220708BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20220708BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20220708BHJP
【FI】
C01B32/05
H01M4/38 Z
H01M4/36 E
H01M4/587
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2020564584
(86)(22)【出願日】2018-08-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-14
(86)【国際出願番号】 CN2018100252
(87)【国際公開番号】W WO2019218503
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2020-11-17
(31)【優先権主張番号】201810480951.1
(32)【優先日】2018-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520335934
【氏名又は名称】国家能源投資集団有限責任公司
【氏名又は名称原語表記】CHINA ENERGY INVESTMENT CORPORATION LIMITED
(73)【特許権者】
【識別番号】520380978
【氏名又は名称】北京低▲タン▼清▲潔▼能源研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】梁 朋
(72)【発明者】
【氏名】梁 文斌
(72)【発明者】
【氏名】▲衛▼ 昶
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 均▲慶▼
(72)【発明者】
【氏名】▲鄭▼ 冬芳
(72)【発明者】
【氏名】潘 ▲広▼宏
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/019994(WO,A1)
【文献】特開2005-158718(JP,A)
【文献】特開2018-197178(JP,A)
【文献】特開2017-214270(JP,A)
【文献】国際公開第2012/132387(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/05
H01M 4/587
H01M 4/38
H01M 4/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合炭素材料とそれに分散させているナノケイ素とを含み、前記複合炭素材料は黒鉛結晶相とアモルファス炭素相を含み、XRDにより測定した前記黒鉛結晶相の(002)面のピーク強度I002とアモルファス炭素相のピーク強度Iamorとの比I002/Iamorが0.1~40であり、前記複合炭素材料中の黒鉛結晶相の含有量が5重量%以上である、ケイ素-炭素複合材料。
【請求項2】
前記ケイ素-炭素複合材料中、前記ナノケイ素の含有量が1~50重量%である、請求項1に記載のケイ素-炭素複合材料。
【請求項3】
前記ケイ素-炭素複合材料中、前記ナノケイ素の含有量が5~40重量%である、請求項2に記載のケイ素-炭素複合材料。
【請求項4】
前記ナノケイ素はナノケイ素粉末及び/又はナノ一酸化ケイ素から選ばれる、請求項1に記載のケイ素-炭素複合材料。
【請求項5】
前記黒鉛結晶相の(002)面のピーク強度I002とアモルファス炭素相のピーク強度Iamorとの正規化I002/Iamorが、0.1~60である、請求項1に記載のケイ素-炭素複合材料。
【請求項6】
前記黒鉛結晶相の(002)面のピーク強度I 002 とアモルファス炭素相のピーク強度I amor との正規化I 002 /I amor が、3~45である、請求項5に記載のケイ素-炭素複合材料。
【請求項7】
前記黒鉛結晶相の(002)面のピーク強度I002と該ピークの半値幅FWHMとの比I002/FWHMが、1,000~80,000である、請求項1に記載のケイ素-炭素複合材料。
【請求項8】
前記黒鉛結晶相の(002)面のピーク強度I 002 と該ピークの半値幅FWHMとの比I 002 /FWHMが、4,000~55,000である、請求項7に記載のケイ素-炭素複合材料。
【請求項9】
前記ケイ素-炭素複合材料のラマン分光法により測定したIdとIgとの比Id/Igの変動係数δが、0.8未満である、請求項1に記載のケイ素-炭素複合材料。
【請求項10】
前記ケイ素-炭素複合材料のラマン分光法により測定したIdとIgとの比Id/Igの変動係数δが、0.1~0.5である、請求項9に記載のケイ素-炭素複合材料。
【請求項11】
前記ケイ素-炭素複合材料の真密度ρが、1.8~2.3g/cmである、請求項1~10のいずれか1項に記載のケイ素-炭素複合材料。
【請求項12】
1)マトリックス材料、フィラー及びナノケイ素からなる混合原料を多段混合して、混合生成物を得るステップと、
2-1)ステップ1)で得られた混合生成物を酸化し、炭化炉にて炭化するステップ、又は
2-2)ステップ1)で得られた混合生成物を金型においてプレス炭化するステップと、を含み、
前記多段混合は、
(1)室温で1~6時間混合する段階と、
(2)前記マトリックス材料の軟化温度よりも10~50℃高い温度に加熱しながら0.5~3時間混合する段階と、
(3)前記マトリックス材料の軟化温度よりも10~50℃高い温度で2~10時間恒温混合する段階と、
(4)室温に降温しながら0.5~3時間混合する段階と、を含み、
以上の(1)~(4)の段階が複数回繰り返され、前記多段混合の総時間が10~150時間であり、
前記マトリックス材料は炭化により前記アモルファス炭素相になり、前記フィラーは黒鉛及び/又はグラフェンから選ばれる、請求項1~11のいずれか1項に記載のケイ素-炭素複合材料の製造方法。
【請求項13】
ステップ1)では、前記マトリックス材料は、石炭ピッチ、石油ピッチ、メソフェーズピッチ、石炭直接液化残渣、重質芳香族炭化水素、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、フルフラール樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリフッ化ビニリデン及びポリアクリロニトリルから選ばれる少なくとも1種である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記マトリックス材料は石炭ピッチ、石油ピッチ及びメソフェーズピッチのうちの少なくとも1種である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記混合原料は、前記マトリックス材料、フィラー及びナノケイ素をミキサーにて1~16時間混合することにより製造される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記マトリックス材料と前記フィラーはすべて粒子形態で前記ミキサーにおいて混合し、前記マトリックス材料の粒度が50メッシュ以上、前記フィラーの粒度が80メッシュ以上である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ステップ1)では、前記マトリックス材料と前記フィラーとの質量比が、1:0.1~5である、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
ステップ1)では、前記マトリックス材料と前記フィラーとの質量比が、1:0.25~2である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ステップ1)では、前記多段混合は、ボールミリング、ニーディング及び密閉式混錬から選ばれる1種又は複数種を組み合わせた方式で実施される、請求項1218のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
ステップ2-1)では、前記酸化は酸化性雰囲気で行われ、前記酸化の温度が220~350℃、時間1~16時間であり、又は
前記酸化は強酸化性酸で行われ、前記酸化の温度が25~100℃、時間が0.5~12時間である、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
ステップ2-1)では、前記炭化の温度が750~1450℃、時間が1~8時間である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
ステップ2-2)では、前記プレス炭化は、温度が600~1600℃、前記混合物の表面に印加する圧力が10~50MPa、プレス炭化の時間が1~10hである、請求項12に記載の方法。
【請求項23】
3)ステップ2-1)又はステップ2-2)で得た炭化生成物を粉砕して分級するステップをさらに含、請求項1222のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
ステップ3)により、得られた粉末のメジアン粒径を5~20μmにする、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
請求項1~11のいずれか1項に記載のケイ素-炭素複合材料の、リチウムイオン電池への使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素質複合材料の分野に関し、具体的には、ケイ素-炭素複合材料、その製造方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池の分野では、黒鉛材料は、電子伝導率が高く、リチウムイオン拡散係数が大きく、リチウムインターカレーション前後の層状構造の体積の変化が小さく、リチウムインターカレーション容量が高く、リチウムインターカレーション電位が低いなどの特徴を有するため、現在主な市販のリチウムイオン電池負極材料となっている。
【0003】
リチウムイオン電池負極材料が発展している現状では、ケイ素は4200mAh/gと高いリチウム貯蔵比容量から、黒鉛材料の代わりとして最も期待される負極材料であると考えられる。しかしながら、ケイ素負極材料には、体積膨張の問題が深刻であり、その結果、ケイ素負極の粒子の破砕を引き起こすだけではなく、ケイ素負極材料のサイクル特性へ深刻な影響を及ぼす。ケイ素材料の体積膨張が大きいという問題を解決するために、現在、ケイ素-炭素複合材料が開発されており、黒鉛材料を通じてサイクルにおけるケイ素材料の体積変化に対する緩衝作用を果たし、それにより、ケイ素材料のサイクル特性を改善する。
【0004】
CN102394288Aは、リチウムイオン電池用のケイ素-炭素負極材料及びその製造方法を開示している。該ケイ素-炭素負極材料はケイ素-炭素複合材料と黒鉛粉末からなり、ケイ素-炭素複合材料は炭素材料で被覆されたナノケイ素粉末で構成され、その成分としては、具体的には、ナノケイ素粉末、炭素材料前躯体及び黒鉛粉末を含み、ナノケイ素粉末は10~500nmのケイ素単体粉末であり、黒鉛粉末の粒子径は0.5~50μmである。該ケイ素-炭素負極材料の製造方法は、1)ナノケイ素粉末と、被覆層である炭素材料前躯体とを溶媒にて撹拌し、乾燥させて複合体1を得るステップと、2)複合体1を熱処理した後、粉砕して、ケイ素複合材料を得るステップと、3)ケイ素複合材料を洗浄してろ過し、乾燥させて粉砕し、ケイ素-炭素複合材料1を得るステップと、4)ケイ素-炭素複合材料1と、被覆層である炭素材料前躯体とを溶媒にて撹拌し、乾燥させて複合体2を得るステップと、5)複合体2を熱処理して粉砕し、ケイ素-炭素複合材料2を得るステップと、6)粉砕後のケイ素-炭素複合材料2と黒鉛粉末を均一に混合するステップと、を含む。前記製造方法は、プロセスが複雑であり、複数の混合、炭化のステップを必要とし、そして、ケイ素-炭素材料と黒鉛材料をナノスケールで混合することができない。
【0005】
CN102769139Aは、高容量リチウムイオン電池用の負極ケイ素-炭素複合材料の製造方法を開示しており、該方法は、天然球状黒鉛を高温で膨張処理し、微膨張黒鉛を得た後、ナノケイ素粉末を水に超音波分散させ、次に、吸引濾過して乾燥させ、層間にナノケイ素粉末が挿入された微膨張黒鉛を得て、炭素源前躯体と混合して被覆させ、その後、炭化・焼結を行うステップを含む。該方法は、ナノケイ素粒子の均一な分散や黒鉛シートへの効果的な挿入を実現できず、また、製造した負極材料は、サイクル特性が劣り、初回クーロン効率も低い。
【0006】
CN103367727Aは、リチウムイオン電池ケイ素-炭素負極材料及びその製造方法を開示している。該負極材料は、ナノケイ素、黒鉛重合体及び有機物分解炭素を含み、前記黒鉛重合体は粒子状黒鉛からなり、ナノケイ素は粒子状黒鉛隙間に嵌め込まれるか、又は粒子状黒鉛の表面に付着しており、有機物分解炭素はナノケイ素/黒鉛重合体に被覆されている。該材料の製造方法は、ナノケイ素、分散剤、粘着剤及び粒子状黒鉛を有機溶媒中で混合して乾燥させ、複合ナノケイ素/黒鉛重合体を得るステップと、複合ナノケイ素/黒鉛重合体を炭素源前駆体の分散液に加えて混合し、次に乾燥させて熱処理するステップと、を含む。該製造方法は、大量の有機溶媒が使用されているため、操作過程において安全上の問題が生じ、そして、前記方法は、添加物である黒鉛をナノスケールで分散させることができない。
【0007】
上記欠陥を解決するために、新規ケイ素-炭素複合材料及びその製造方法の開発が期待される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ケイ素-炭素複合材料、その製造方法及び使用を提供することである。本発明のケイ素-炭素複合材料は、リチウムイオン電池負極材料として用いると、リチウムイオン電池の電気化学的特性を効果的に向上できる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1態様によれば、本発明は、複合炭素材料とそれに分散させているナノケイ素とを含み、前記複合炭素材料は黒鉛結晶相とアモルファス炭素相を含み、XRDにより測定した前記黒鉛結晶相の(002)面のピーク強度I002とアモルファス炭素相のピーク強度Iamorとの比I002/Iamorが0.1~40であり、前記複合炭素材料中の黒鉛結晶相の含有量が5重量%以上である、ケイ素-炭素複合材料を提供する。
【0010】
本発明の第2態様によれば、本発明は、
1)マトリックス材料、フィラー及びナノケイ素からなる混合原料を多段混合して、混合生成物を得るステップと、
2-1)ステップ1)で得られた混合生成物を酸化し、炭化炉にて炭化するステップ、又は
2-2)ステップ1)で得られた混合生成物を金型においてプレス炭化するステップとを含み、
前記多段混合は、
(1)室温で1~6時間混合する段階と、
(2)マトリックス材料の軟化温度よりも10~50℃高い温度に加熱しながら0.5~3時間混合する段階と、
(3)前記マトリックス材料の軟化温度よりも10~50℃高い温度で2~10時間恒温混合する段階と、
(4)室温に降温しながら0.5~3時間混合する段階とを含み、
以上の(1)~(4)の段階が複数回繰り返され、前記多段混合の総時間が10~150時間であり、
前記マトリックス材料は炭化により前記アモルファス炭素相になり、前記フィラーは黒鉛及び/又はグラフェンから選ばれる、前記ケイ素-炭素複合材料の製造方法を提供する。
【0011】
本発明の第3態様によれば、本発明は、本発明の第2態様に記載の方法で製造されるケイ素-炭素複合材料を提供する。
【0012】
本発明の第4態様によれば、本発明は、本発明の第1態様又は第3態様に記載のケイ素-炭素複合材料の、リチウムイオン電池への使用を提供する。
【0013】
本発明の方法は、黒鉛をマトリックスにおいてナノスケールの厚さで均一に分散させることができる。そして、本発明のケイ素-炭素複合材料をリチウムイオン電池の負極材料として用いると、リチウムイオン電池に良好な初回充放電特性及びサイクル安定性を両立させ、リチウムイオン電池の耐用年数を効果的に延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例5で製造されたケイ素-炭素複合材料のHR-TEM像である。
図2】実施例5で製造されたケイ素-炭素複合材料の後方散乱電子でのSEM図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書に開示されている範囲の端点及び任意の値は、正確な範囲又は値に限定されず、これらの範囲又は値は、これらの範囲又は値に近い値を含むと理解されるべきである。数値範囲の場合、各範囲の端点間、各範囲の端点と個々の点値の間、および個々の点値の間を組み合わせて、1つ以上の新しい数値範囲を取得でき、これらの数値範囲は、本明細書で具体的に開示されていると見なされるべきである。
【0016】
本発明の第1態様によれば、本発明は、複合炭素材料とそれに分散させているナノケイ素とを含むケイ素-炭素複合材料を提供する。
【0017】
前記複合炭素材料は、黒鉛結晶相とアモルファス炭素相を含み、X線回折分析(XRD)により測定した黒鉛結晶相の(002)面のピーク強度I002とアモルファス炭素相のピーク強度Iamorとの比I002/Iamorが0.1~40であり、前記複合炭素材料中の黒鉛結晶相の含有量が5重量%以上である。
【0018】
本発明では、前記黒鉛結晶相の含有量は、前記ケイ素-炭素複合材料を製造するときの投入量に応じて決まる。
【0019】
本発明に係るケイ素-炭素複合材料によれば、前記黒鉛結晶相の(002)面のピーク強度I002とアモルファス炭素相のピーク強度Iamorは以下の常法により測定される。粉末サンプルについてXRD検出を行ってサンプルのXRDスペクトル及びXRDデータを取得し、Topasソフトウェアを用いてバックグラウンドを自動的に控除した後、ピークフィッティングを行い、黒鉛結晶相の(002)面のピークとアモルファス炭素相のピークを得て、対応する強度を読み取る。
【0020】
本発明に係るケイ素-炭素複合材料によれば、前記黒鉛結晶相の(002)面のピーク強度I002とアモルファス炭素相のピーク強度Iamorとの比I002/Iamorが、好ましくは0.5~37、さらに好ましくは1.5~37である。
【0021】
本発明に係るケイ素-炭素複合材料によれば、前記黒鉛結晶相の(002)面のピーク強度I002とアモルファス炭素相のピーク強度Iamorとの正規化I002/Iamorが0.1~60であってもよい。
【0022】
当業者が理解できるように、正規化I002/Iamorは材料中の各成分の含有量による強度比への影響を回避できる。
【0023】
本発明では、正規化I002/Iamorは式(1)により決定される。
正規化I002/Iamor=(I002/Wf)/(Iamor/Wf) 式(1)
式中、Wfは、ケイ素-炭素複合材料の製造に使用されるフィラー(黒鉛結晶相形成用)の、フィラーとマトリックス材料(アモルファス炭素相形成用)との和に対する質量百分率を表し、
Wfは、ケイ素-炭素複合材料の製造に使用されるマトリックス材料の、フィラーとマトリックス材料との和に対する質量百分率を表す。
【0024】
本発明に係るケイ素-炭素複合材料によれば、前記黒鉛結晶相の(002)面のピーク強度I002とアモルファス炭素相のピーク強度Iamorとの正規化I002/Iamorは、好ましくは3~50、さらに好ましくは3~45である。
【0025】
本発明に係るケイ素-炭素複合材料によれば、XRDにより測定した前記黒鉛結晶相(002)面のピーク強度I002と該ピークの半値幅FWHMとの比I002/FWHMが1,000~80,000である。ここで、I002/FWHMはXRD回折スペクトルのうち黒鉛結晶相(002)面のピークの特徴を反映する。
【0026】
前記黒鉛結晶相の(002)面のピーク強度I002と該ピークの半値幅FWHMとの比I002/FWHMが、好ましくは3,000~60,000、さらに好ましくは4,000~55,000である。
【0027】
本発明に係るケイ素-炭素複合材料によれば、前記ケイ素-炭素複合材料のラマン分光法により測定したIdとIgとの比Id/Igの変動係数δが0.8未満である。前記変動係数δから、前記黒鉛結晶相とアモルファス炭素相とが非常に均一に分散していることを示している。
【0028】
本発明では、前記変動係数δは以下の方式で決定される。
I:サンプルのうちの20箇所でのラマン分光法によるId及びIg値を測定する。
II:上記20箇所でのId/Igをそれぞれ算出して、μ、μ、……、μ20とし、式(2)により平均値μを算出する。
μ=(μ+μ+……+μ20)/20 式(2)
III:式(3)により標準偏差σを算出する。
σ=sqrt{[(μ-μ)+(μ-μ)+……+(μ-μ)]/n}
式(3)
式中、sqrtは平方根を表す。
IV:式(4)により変動係数δを算出する。
δ=σ/μ 式(4)
【0029】
前記ケイ素-炭素複合材料において、好ましくは、前記変動係数δは0.1~0.5である。
【0030】
本発明に係るケイ素-炭素複合材料によれば、前記黒鉛結晶相は、ナノスケールの厚さで前記アモルファス炭素相に分散しており、通常、前記黒鉛結晶相の厚さは1~40nmであってもよく、好ましくは5~30nm、さらに好ましくは5~25nmである。
【0031】
本発明では、前記黒鉛結晶相の厚さは透過型電子顕微鏡技術(HR-TEM)により測定される。
【0032】
一実施形態によれば、前記ケイ素-炭素複合材料において、XRDにより測定した前記黒鉛結晶相の(002)面の黒鉛層間隔d002は0.335~0.345nmであり、前記黒鉛結晶相のc軸結晶面の結晶粒度Lcは5~35nm、好ましくは10~28.5nmである。
【0033】
本発明では、前記ナノケイ素の種類及びその含有量については特に限定がなく、従来のケイ素-炭素負極材料に応じて決定することができる。一般的には、前記ケイ素-炭素複合材料において、前記ナノケイ素の含有量は1~50重量%であり得る。リチウムイオン電池の負極材料として使用する場合、さらに高い充電容量及びサイクル安定性をリチウムイオン電池に付与するために、好ましくは、前記ケイ素-炭素複合材料中、ナノケイ素の含有量が、好ましくは5~40重量%、さらに好ましくは15~40重量%である。
【0034】
本発明では、前記ナノケイ素は、具体的には、ナノケイ素粉末及び/又はナノ一酸化ケイ素から選ばれることができる。前記ナノケイ素のメジアン粒径(D50)は、1~200nmであってもよく、好ましくは30~150nmである。
【0035】
本発明では、前記ナノケイ素の含有量は前記ケイ素-炭素複合材料を製造するときのナノケイ素の投入量に応じて決まり、前記ナノケイ素のメジアン粒径とは、前記ケイ素-炭素複合材料の製造に使用されているナノケイ素のメジアン粒径をいう。
【0036】
一実施形態によれば、前記ケイ素-炭素複合材料の真密度ρは1.8~2.3g/cmである。
【0037】
本発明の第2態様によれば、本発明は、
1)マトリックス材料、フィラー及びナノケイ素からなる混合原料を多段混合して、混合生成物を得るステップと、
2-1)ステップ1)で得られた混合生成物を酸化し、炭化炉にて炭化するステップ、又は
2-2)ステップ1)で得られた混合生成物を金型においてプレス炭化するステップと、を含み、
前記多段混合は、
(1)室温(15~45℃)で1~6時間混合する段階と、
(2)前記マトリックス材料の軟化温度よりも10~50℃高い温度に加熱しながら0.5~3時間混合する段階と、
(3)前記マトリックス材料の軟化温度よりも10~50℃高い温度で2~10時間恒温混合する段階と、
(4)室温に降温しながら0.5~3時間混合する段階とを含み、
以上の(1)~(4)の段階が複数回繰り返され、前記多段混合の総時間が10~150時間であり、
前記マトリックス材料は炭化により前記アモルファス炭素相になり、前記フィラーは黒鉛及び/又はグラフェンから選ばれる、前記ケイ素-炭素複合材料の製造方法を提供する。
【0038】
本発明では、前記マトリックス材料について特に限定がなく、炭化により前記アモルファス炭素相を形成できるものであればよい。一般的には、前記マトリックス材料は、石油ピッチ、石炭ピッチ、メソフェーズピッチ、石炭直接液化残渣(DCLR)、重質芳香族炭化水素、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、フルフラール樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリフッ化ビニリデン及びポリアクリロニトリルから選ばれる少なくとも1種であり得る。
【0039】
本明細書では、軟化温度はマトリックス材料の種類に応じて決定され、マトリックス材料が流動可能になる温度を意味し、例えば、マトリックス材料が上記ピッチ類又は熱硬化性樹脂から選ばれる場合、前記軟化温度とはこれらの軟化点であり、前記マトリックス材料が上記熱可塑性樹脂である場合、前記軟化温度とはその溶融点である。
【0040】
好ましくは、前記マトリックス材料は石油ピッチ、石炭ピッチ及びメソフェーズピッチのうちの少なくとも1種である。前記石炭ピッチの軟化点は、80~360℃であってもよく、好ましくは100~320℃であり、前記石油ピッチの軟化点は、80~360℃であってもよく、好ましくは100~320℃であり、前記メソフェーズピッチの軟化点は180~360℃であってもよい。また、前記メソフェーズピッチ中のメソフェーズの含有量が通常30~100体積%である。
【0041】
本発明の方法によれば、フィラーとしての前記黒鉛、グラフェンは前記ケイ素-炭素複合材料における黒鉛結晶相を形成することに用いられる。その中でも、前記黒鉛は天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛及び酸化黒鉛から選ばれる1種又は複数種である。一般的には、前記黒鉛中の炭素の含有量が90重量%以上である。前記グラフェンの層数が好ましくは20層以下である。
【0042】
1つの好適な実施形態によれば、ステップ1)では、前記マトリックス材料は、石炭ピッチ、石油ピッチ及びメソフェーズピッチから選ばれる少なくとも1種である。前記マトリックス材料、フィラー及びナノケイ素からなる混合原料は、前記マトリックス材料、フィラー及びナノケイ素をミキサーにて1~16時間混合することにより製造されるものである。本発明では、前記ミキサーの混合温度について特に限定がなく、従来技術を参照して選択することができ、例えば該混合は室温で行われる。
【0043】
より好ましくは、前記マトリックス材料と前記フィラーはすべて粒子形態で前記ミキサーにおいて混合する。前記マトリックス材料の粒度が50メッシュ以上(即ち270μm孔径の篩下物)、さらに好ましくは100~300メッシュである。例えば、マトリックス材料であるピッチ粒子は、-50メッシュ、-100メッシュ(即ち150μm孔径の篩下物)、-150メッシュ(106μm孔径の篩下物)、-200メッシュ(75μm孔径の篩下物)、-300メッシュ(48μm孔径の篩下物)の粒度を有する。前記粒度のピッチは市販品として直接入手するか、又は粉砕して篩分けすることにより得られる。
【0044】
前記フィラーの粒度が、80メッシュ以上(即ち180μm孔径の篩下物)、さらに好ましくは80~200メッシュである。例えば、前記フィラー粒子は、-100メッシュ、-150メッシュ、-200メッシュの粒度を有する。本発明では、前記フィラーの形態について特に制限がなく、任意の幾何学的形状であってもよく、例えば、球状、フレーク状、円柱状、多面体などを含むが、これらに制限されない。前記粒度のフィラーは、市販品として直接入手するか、又は粉砕して篩分けすることにより得られる。
【0045】
本発明の方法によれば、ステップ1)では、前記マトリックス材料及びフィラーの使用量は、形成されるケイ素-炭素複合材料において、前記複合炭素材料の全重量を基準として、前記黒鉛結晶相(即フィラー)の含有量が5重量%以上であるようにする。前記マトリックス材料とフィラーとの質量比は、1:0.1~5であってもよく、好ましくは1:0.25~2である。
【0046】
ステップ1)では、前記多段混合は混合するときに温度を段階的に調整することにより行われる。当業者が理解できるように、(2)段階「前記マトリックス材料の軟化温度よりも10~50℃高い温度に加熱しながら0.5~3時間混合する」とは、混合過程において、室温を開始温度とし、温度をマトリックス材料の軟化温度よりも10~50℃高い温度に徐々に昇温してこの段階の終点温度とし、この段階の昇温にかかる時間が0.5~3時間であることを意味し、(4)段階「室温に降温しながら0.5~3時間混合する」とは、混合過程において、(3)段階の固定温度を室温に徐々に降温する過程は、合計で0.5~3時間かかることを意味する。
【0047】
本発明では、前記(2)段階の昇温は好ましくは等速昇温、前記(4)段階の降温は好ましくは等速降温である。
【0048】
ステップ1)では、前記多段混合は、ボールミリング、ニーディング及び密閉式混錬から選ばれる1種又は複数種を組み合わせた方式で実施される。前記多段混合は不活性雰囲気保護下又は真空条件下で行われることができる。
【0049】
前記不活性雰囲気は、例えば窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、ネオンガス及びクリプトンガスから選ばれる少なくとも1種である。
【0050】
ステップ1)では、前記混合は例(1)~(4)の4段階の順に従って行われ、これを1サイクルとして複数回繰り返し、例えば繰り返し回数は2~9回(即ち3~10回行う)である。好ましくは、前記多段混合の総時間は50~130時間である。
【0051】
1つの好適な実施形態によれば、前記混合は前記ボールミリングにより実施され、ボールミルは、自転が100~1000rpmに制御されてもよいが、好ましくは300~800rpmであり、公転が50~400rpmに制御されてもよいが、好ましくは100~400rpmである。
【0052】
別の好適な実施形態によれば、前記混合は前記ニーディングにより実施され、ニーダーの回転数は好ましくは50~500rpm、さらに好ましくは200~500rpmである。
【0053】
さらなる好適な実施形態によれば、前記混合は前記密閉式混錬により実施され、密閉式混錬機の回転数は50~500rpm、さらに好ましくは200~500rpmである。
【0054】
ステップ2-1)では、本発明において前記酸化の操作及び条件については特に限定がなく、従来技術を参照して選択することができる。
【0055】
一実施形態によれば、前記酸化は酸化性雰囲気において行われ、前記酸化の温度が220~350℃、酸化の時間が1~16時間であってもよく、好ましくは5~12時間である。前記酸化性雰囲気は、例えば空気又は酸素ガスである。
【0056】
別の実施形態によれば、前記酸化は強酸化性酸において行われ、前記酸化の温度が25~100℃、酸化の時間が0.5~12時間であってもよい。前記強酸化性酸の例には、濃硝酸、濃硝酸と濃硫酸との混合物(例えば体積比が1:3の混合物)、濃硝酸と濃塩酸との混合物(例えば王水)が含まれるが、これらに制限されない。好ましくは、前記強酸化性酸は濃硝酸である。
【0057】
該実施形態では、ステップ2-1)は、炭化前に、前記酸化により得られた生成物を中性(pH6~8)まで水洗して乾燥させることをさらに含んでもよい。
【0058】
当業者が理解できるように、前記酸化処理は、非再溶融性の生成物を得る目的で行われる。ここで、「非再溶融性」は炭素系複合材料製造の分野における一般的な意味を有し、酸化処理により得られた生成物がいずれの加熱条件でも軟化したり、流動性を持ったりすることがないことを意味する。
【0059】
ステップ2-1)では、前記炭化は炭化炉にて行われ、前記炭化の温度が600~1600℃であってもよく、好ましくは750~1450℃であり、炭化の時間が1~10時間であってもよく、好ましくは1~8時間である。
【0060】
ステップ2-2)では、前記プレス炭化において、炭化の温度が600~1600℃であってもよく、好ましくは750~1450℃であり、前記混合物の表面に印加する圧力が10~50MPaであってもよく、好ましくは10~40MPaであり、炭化の時間が1~10時間であってもよく、好ましくは1~8時間である。
【0061】
ステップ2-1)及びステップ2-2)では、前記炭化は、通常、不活性雰囲気保護下で行われる。前記不活性雰囲気は前記と同様であるため、ここで詳しく説明しない。
【0062】
本発明の方法によれば、前記ケイ素-炭素複合材料がリチウムイオン電池の負極材料として使用される場合、好ましくは、該方法は、
3)ステップ2-1)又は2-2)で得られた炭化生成物(即ち本発明のケイ素-炭素複合材料)を粉砕して分級するステップをさらに含む。好ましくは、該ステップにより、得られた粉末のメジアン粒径を5~20μmにする。
【0063】
前記粉砕はボールミル又はジェットミルにより実施されることができる。
【0064】
本発明の第3態様によれば、本発明は、前記方法で製造されるケイ素-炭素複合材料を提供する。
【0065】
本発明の第4態様によれば、本発明は、前記ケイ素-炭素複合材料の、リチウムイオン電池への使用を提供する。
【0066】
本発明の使用によれば、本発明に係る前記ケイ素-炭素複合材料は、リチウムイオン電池の負極材料として用いると、リチウムイオン電池に良好な初回充放電特性及びサイクル安定性を両立させ、リチウムイオン電池の耐用年数を延ばすことができる。
【0067】
以下、実施例にて本発明を詳細に説明する。
【0068】
以下の実施例及び比較例では、
1、設備
1)密閉式混錬機は東莞市力顕儀器有限公司から購入され、型番HZ-7048である。
2)ニーダーはサーモフィッシャーサイエンティフィック社から購入されるThermo scientificTMであり、型番HAAKE PolyLab Rheomex 600 OSである。
3)ボールミルは長沙米淇儀器設備有限公司から購入され、型番QM-QX2Lである。
4)ミキサーは無錫新光粉体科技有限公司から購入され、型番VCH-5である。
5)ジェットミルはイ(サンズイに「維」)坊埃爾派粉体技術設備有限公司から購入され、型番MQW03である。
2、ピッチ軟化点はASTM D 3104-99に準じて測定される。
3、ケイ素-炭素複合材料のキャラクタリゼーション
1)真密度テスト
米国のマイクロメリティクス社(Micromeritics Instrument Corp.)の真密度計AccuPyc II 1340を用いて25℃で測定する。
2)XRDテスト
ドイツのブルカーAXS社(Bruker AXS GmbH)製のD8 ADVANCE X線回折計により、銅Kα放射線を用いて、10~90°の走査角度の範囲でテストし、ステップを0.02とする。
3)TEMテスト
サンプルを微細粉末に研いた後、銅メッシュに担持し、日本電子株式会社(JEOL Ltd.)製のJEM 2100高解像度透過型電子顕微鏡(HR-TEM)を用いて測定する。
4)SEMテスト
チェコ共和国のFEI Compang社製の型番Nova NanoSEM 450の走査型電子顕微鏡を用いて、後方散乱電子図(BSE)を利用して、ナノケイ素の材料での分散を観察する。
5)ラマン分光法
フランスのHoriba jobin yvon社製のLabRam HR-800マイクロレーザー共焦点ラマン分光計を用いて、レーザー波長532.06nm、スリット幅100μm、走査範囲700~2100cm-1でテストし、得られたIdとIgの値をラマン分光法により分析する。
ここで、試験対象の材料である粉末サンプルをサンプルセルに平らに広げ、該サンプルのランダムな20個の点につきテストし、対応するId/Ig値を得て、次に、前記算出方法によりId/Ig値の変動係数δを算出する。
4、リチウムイオン電池性質のテスト(1週目の充電容量、1週目のクーロン効率及び50回サイクル容量維持率)
武漢市藍電電子股フン(にんべんに「分」)有限公司製の電池テストシステムLAND CT2001Aを用いて、充放電電圧の範囲を0~3Vとしてテストし、0.1Cの電流密度でテストし、ここで、50回サイクル容量維持率とは、電池の50週目の充電容量と1週目の充電容量との比である。
【0069】
実施例1~6は、本発明のケイ素-炭素複合材料及びその製造方法を説明する。
【0070】
実施例1
軟化点150℃の石油ピッチをマトリックス材料として、該ピッチを粉砕して150メッシュのスクリーンにかけ、次に、得られた篩下物粒子、天然黒鉛(150メッシュ篩下物粒子、炭素含有量≧99.5重量%)、ナノケイ素粉末(D50=30nm)を、4:1:1の質量比、室温でミキサーにて4時間混合し、混合原料を得た。
前記混合原料をニーダーに加え、窒素ガス保護下、300rpmの回転数、室温で3時間処理し、次に、160℃に等速で加熱しながら1時間処理し、引き続き、160℃で6時間恒温処理し、最後に、等速で室温に冷却しながら1時間処理し、上記プロセスを8回繰り返し、つまり、合計88時間ニーディングした。
ニーディングして得られた混合物を金型に投入して、窒素ガス保護下、750℃に加熱しながら、混合物の表面に10MPaの圧力を印加し、この温度及び圧力で1時間保持し、次に冷却して、ケイ素-炭素複合材料A-1を得た。該ケイ素-炭素複合材料のキャラクタリゼーションの結果を表1に示す。
【0071】
実施例2
軟化点200℃の石炭ピッチをマトリックス材料として、該ピッチを粉砕して200メッシュのスクリーンにかけ、次に、得られた篩下物粒子、人造黒鉛(200メッシュ篩下物粒子、炭素含有量>99重量%)、ナノ一酸化ケイ素(D50=50nm)を、3:2:2の質量比、室温でミキサーにて6時間混合し、混合原料を得た。
前記混合原料をボールミルに加え、アルゴンガス保護下、自転回転数800rpm、公転回転数200rpm、室温で3時間ボールミリングし、次に、240℃に等速で加熱しながら2時間ボールミリングし、引き続き、240℃で8時間恒温ボールミリングし、最後に、等速で室温に冷却しながら2時間ボールミリングし、上記プロセスを7回繰り返し、つまり、合計105時間ボールミリングした。
ボールミリングして得られた混合物を金型に投入して、窒素ガス保護下、750℃に加熱しながら、混合物の表面に10MPaの圧力を印加し、この温度及び圧力で4時間保持し、次に冷却して、ケイ素-炭素複合材料A-2を得た。該ケイ素-炭素複合材料のキャラクタリゼーションの結果を表1に示す。
【0072】
実施例3
軟化点180℃の石炭ピッチをマトリックス材料として、該ピッチを粉砕して300メッシュのスクリーンにかけ、次に、得られた篩下物粒子、人造黒鉛(300メッシュ篩下物粒子、炭素含有量>99重量%)、ナノケイ素粉末(D50=120nm)を、1:1:0.5の質量比、室温でミキサーにて4時間混合し、混合原料を得た。
前記混合原料をニーダーに加え、窒素ガス保護下、500rpmの回転数、室温で3時間処理し、次に、200℃に等速で加熱しながら1時間処理し、引き続き、200℃で6時間恒温処理し、最後に、等速で室温に冷却しながら1時間処理し、上記プロセスを6回繰り返し、合計66時間ニーディングした。
ニーディングして得られた混合生成物を酸化炉に投入して、空気雰囲気において、220℃で10時間処理し、引き続き、得られた酸化生成物を炭化炉に投入し、窒素ガス保護下、1400℃で3時間炭化処理し、次に冷却して、ケイ素-炭素複合材料A-3を得た。該ケイ素-炭素複合材料のキャラクタリゼーションの結果を表1に示す。
【0073】
実施例4
軟化点280℃のメソフェーズピッチ(メソフェーズの含有量は60体積%である)をマトリックス材料として、該ピッチを粉砕して100メッシュのスクリーンにかけ、次に、得られた篩下物粒子、膨張黒鉛、天然黒鉛(膨張黒鉛と天然黒鉛は、質量比が1:2であり、いずれも100メッシュ篩下物粒子であり、且つ炭素含有量>99重量%である)、ナノ一酸化ケイ素(D50=80nm)を、1:2:2の質量比、室温でミキサーにて10時間混合し、混合原料を得た。
前記混合原料をボールミルに加え、窒素ガス保護下、自転回転数600rpm、公転回転数400rpm、室温で3時間ボールミリングし、次に、300℃に等速で加熱しながら3時間ボールミリングし、引き続き、300℃で10時間恒温ボールミリングし、最後に、等速で室温に冷却しながら3時間ボールミリングし、上記プロセスを4回繰り返し、つまり、合計76時間ボールミリングした。
ボールミリングして得られた混合物を金型に投入して、窒素ガス保護下、1450℃に加熱しながら、混合物の表面に20MPaの圧力を印加し、この温度及び圧力で4時間保持し、次に冷却して、ケイ素-炭素複合材料A-4を得た。該ケイ素-炭素複合材料のキャラクタリゼーションの結果を表1に示す。
【0074】
実施例5
軟化点220℃の石油ピッチをマトリックス材料として、該ピッチを粉砕して200メッシュのスクリーンにかけ、次に、得られた篩下物粒子、天然黒鉛(200メッシュ篩下物粒子、炭素含有量≧99.5%)、及びナノケイ素粉末(D50=100nm)を、4:1:2の質量比、室温でミキサーにて8時間混合し、混合原料を得た。
前記混合原料を密閉式混錬機に加え、窒素ガス保護下、300rpmの回転数、室温で3時間処理し、次に、250℃に等速で加熱しながら2時間処理し、引き続き、250℃で8時間恒温処理し、最後に、等速で室温に冷却しながら2時間処理し、上記プロセスを6回繰り返し、90時間密閉式混錬をした。
密閉式混錬して得られた混合物を濃硝酸に加え、60℃で2時間処理し、次にろ過して、得られたろ過ケーキを脱イオン水で、得られた溶液pHが7となるまで洗浄し、最後に、100℃でブラスト乾燥させ、酸化生成物を得て、次に、得た酸化生成物を炭化炉に投入し、窒素ガス保護下、1300℃で3時間炭化処理し、次に冷却して、ケイ素-炭素複合材料A-5を得た。該ケイ素-炭素複合材料のキャラクタリゼーションの結果を表1に示す。
【0075】
実施例6
軟化点150℃の石油ピッチをマトリックス材料として、該ピッチを粉砕して150メッシュのスクリーンにかけ、次に、得られた篩下物粒子、天然黒鉛(150メッシュ篩下物粒子、炭素含有量≧99.5重量%)、ナノケイ素粉末(D50=30nm)を、1:1:0.2の質量比、室温でミキサーにて7時間混合し、混合原料を得た。
前記混合原料を密閉式混錬機に加え、窒素ガス保護下、500rpmの回転数、室温で1時間処理し、次に、190℃に等速で加熱しながら1.8時間処理し、引き続き、190℃で4時間恒温処理し、最後に、等速で室温に冷却しながら1.2時間処理し、上記プロセスを4回繰り返し、合計32時間密閉式混錬をした。
密閉式混錬して得られた混合物を金型に投入して、窒素ガス保護下、850℃に加熱しながら、混合物の表面に20MPaの圧力を印加し、この温度及び圧力で1時間保持し、次に冷却して、ケイ素-炭素複合材料A-6を得た。該ケイ素-炭素複合材料のキャラクタリゼーションの結果を表1に示す。
【0076】
比較例1
軟化点220℃の石油ピッチをマトリックス材料として、該ピッチを粉砕して200メッシュのスクリーンにかけ、次に、得られた篩下物粒子、天然黒鉛(200メッシュ篩下物粒子、炭素含有量≧99.5%)、及びナノケイ素粉末(D50=100nm)を、4:1:2の質量比、室温でミキサーにて8時間混合し、混合原料を得た。
前記混合原料をニーダーに加え、500rpmの回転数、室温で90時間ニーディングした。
ニーディングして得られた混合物を濃硝酸に加え、60℃で2時間処理し、次にろ過して、得られたろ過ケーキを脱イオン水で、得られた溶液pHが7となるまで洗浄し、最後に、100℃でブラスト乾燥させ、酸化生成物を得て、次に、得た酸化生成物を炭化炉に投入し、窒素ガス保護下、1300℃で3時間炭化処理し、ケイ素-炭素複合材料B-1を得た。該ケイ素-炭素複合材料のキャラクタリゼーションの結果を表1に示す。
【0077】
比較例2
軟化点280℃のメソフェーズピッチ(メソフェーズの含有量は60体積%である)をマトリックス材料として、該ピッチを粉砕して100メッシュのスクリーンにかけ、次に、得た篩下物粒子、膨張黒鉛、天然黒鉛(膨張黒鉛と天然黒鉛は、質量比が1:2であり、いずれも100メッシュ篩下物粒子であり、且つ炭素含有量>99重量%である)、ナノ一酸化ケイ素(D50=80nm)を、1:2:2の質量比、室温でミキサーにて10時間混合した。
該混合生成物をボールミルに加え、窒素ガス保護下、自転回転数600rpm、公転回転数400rpm、室温で15時間ボールミリングし、次に、300℃に等速で加熱しながら0.5時間ボールミリングし、引き続き、300℃で0.5時間恒温ボールミリングし、最後に、等速で室温に冷却しながら5時間ボールミリングし、上記プロセスを4回繰り返し、合計84時間ボールミリングした。
ボールミリングして得られた混合物を金型に投入して、窒素ガス保護下、1450℃に加熱しながら、混合物の表面に20MPaの圧力を印加し、この温度及び圧力で4時間保持し、次に冷却して、ケイ素-炭素複合材料B-2を得た。該ケイ素-炭素複合材料のキャラクタリゼーションの結果を表1に示す。
【0078】
比較例3
軟化点150℃の石油ピッチをマトリックス材料として、該ピッチを粉砕して150メッシュのスクリーンにかけ、次に、得られた篩下物粒子、天然黒鉛(150メッシュ篩下物粒子、炭素含有量≧99.5重量%)、ナノケイ素粉末(D50=30nm)を、1:1:0.2の質量比、室温でミキサーにて7時間混合し、混合原料を得た。
前記混合原料を密閉式混錬機に加え、窒素ガス保護下、500rpmの回転数、室温で1時間処理し、次に、200℃に加熱しながら5時間処理し、200℃で12時間恒温処理し、最後に、室温に等速で冷却しながら5時間処理し、上記プロセスを4回繰り返し、合計密閉式混錬を92時間した。
密閉式混錬して得られた混合物を金型に投入して、窒素ガス保護下、850℃に加熱しながら、混合物の表面に10MPaの圧力を印加し、この温度及び圧力で1時間保持し、次に冷却して、ケイ素-炭素複合材料B-3を得た。該ケイ素-炭素複合材料のキャラクタリゼーションの結果を表1に示す。
【0079】
応用実施例1~6及び応用比較例1~3は、それぞれ実施例1~6、比較例1~3のケイ素-炭素複合材料のリチウムイオン電池への使用を説明する。
【0080】
応用実施例1~6及び応用比較例1~3
実施例1~6及び比較例1~3で製造されたケイ素-炭素複合材料をそれぞれジェットミルにおいてさらに粉砕して分級し、ケイ素-炭素複合材料粉末(メジアン粒径D50はそれぞれ表2に示される)を得て、9種類の粉末をそれぞれカーボンブラック、PVDF及びNMPと92:3:5:200の質量比で混合し、均一に撹拌し、負極スラリーを得た後、得られた負極スラリーを銅箔(厚さ10μm)に塗布し、真空オーブンにて120℃、-0.08MPaで12時間乾燥させ、リチウムイオン電池負極を得た。
上記電池負極に孔を打ち抜いた後、アルゴンガスで満たされているグローブボックスにおいて組み立ててボタン電池とし、ここで、対電極は金属リチウムシートであり、電解液は1mol/L LiPFのEC+EMC溶液(ECとEMCとの体積比1:1)から選ばれ、セパレータはCelgard2400セパレータである。該電池の特性を表2に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
表2の結果から分かるように、比較例1~3に比べて、実施例1~6で製造されたケイ素-炭素複合炭素材料を負極材料として用いることによって、リチウムイオン電池の初回クーロン効率及び50回サイクル容量維持率を高め、つまり、電池のサイクル安定性を高める。また、図1図2は、実施例5で製造された複合炭素材料のHR-TEM像及びSEM像であり、図1から分かるように、該ケイ素-炭素複合材料中の黒鉛相は、ナノスケールの厚さ(10~20nm)でアモルファス炭素に分散しており、図2の明るいスポットはナノケイ素粒子であり、この図から明らかなように、ナノケイ素は炭素複合材料マトリックスにおいて均一に分散している。さらに、実施例1~4及び6で製造されたケイ素-炭素複合材料のそれぞれのHR-TEMにより観察した結果、黒鉛相もナノスケールの厚さ(10~25nm)でアモルファス炭素に分散している。
【0084】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明はこれらに制限されない。本発明の技術的構想を逸脱しない限り、本発明の技術案に対して、各技術的特徴を任意の適切な方式で組み合わせることを含む、さまざまな簡単な変形を行うことができ、これら簡単な変形や組み合わせはすべて本発明で開示された内容とみなされるべきであり、すべて本発明の特許範囲に属する。
図1
図2