(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】掘削機の自動制御方法
(51)【国際特許分類】
E02F 3/43 20060101AFI20220708BHJP
【FI】
E02F3/43 C
(21)【出願番号】P 2020566678
(86)(22)【出願日】2019-04-10
(86)【国際出願番号】 EP2019059130
(87)【国際公開番号】W WO2019228699
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2020-11-27
(31)【優先権主張番号】102018208642.7
(32)【優先日】2018-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100112793
【氏名又は名称】高橋 佳大
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】カイ リウ
(72)【発明者】
【氏名】ウド シュルツ
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0064897(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0009966(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0282878(US,A1)
【文献】国際公開第2018/051511(WO,A1)
【文献】特開2000-291048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーム(12)を介して掘削機(10)と可動に接続されている掘削機ショベル(11)を備える掘削機(10)の自動制御方法であって、
・前記掘削機(10)に対して、変化させられる地盤(20)の座標を伴うセマンティックマップを提供するステップと、
・前記掘削機(10)に対して、前記セマンティックマップから特定され、前記掘削機ショベル(11)によって前記地盤を処理するための開始点と方向とを含む材料処理軌道(70)を提供するステップと、
・前記開始点に向かうように前記掘削機の駆動ユニットを制御するステップと、
・前記セマンティックマップを用いて、前記開始点に応じて運動軌道(50)を計算するステップと、
・前記セマンティックマップを用いて、掘削機ショベル軌道(40)を計算するステップと、
・前記材料処理軌道(70)、前記運動軌道(50)及び前記掘削機ショベル軌道(40)に従って作業ステップを実行するために制御信号を出力するステップと、
・前記セマンティックマップを更新するステップと、
を特徴とする、掘削機(10)の自動制御方法。
【請求項2】
前記掘削機(10)の自動制御を、前記地盤(20,21,22,23)の一部の掘削のために使用し、
前記材料処理軌道は、開始点である前記掘削機ショベル(11)の穿孔箇所(42)と前記掘削機ショベル(11)の動作の方向とを含む材料除去軌道(70)であり、
前記掘削機ショベル軌道は、前記掘削機ショベル(11)の動作を示す掘削機ショベル受容軌道(40)であり、
前記材料除去軌道(70)、前記運動軌道(50)及び前記掘削機ショベル受容軌道(40)に従って前記作業ステップを実行する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記掘削機ショベル(11)が掘削ウィンドウを超えないように、前記材料除去軌道(70)及び/又は前記掘削機ショベル受容軌道(40)を計算する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
掘削機ショベル荷下ろし軌道を、前記掘削機(10)の位置、荷下ろし箇所の位置及び前記開始点から計算し、材料除去の後に、前記掘削機ショベル(11)の荷下ろしのための作業ステップを、少なくとも前記掘削機ショベル荷下ろし軌道に従って実行する、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記材料除去軌道(70)
の計算
において、
及び/又は、前記掘削機ショベル受容軌道(40)
の計算
において、及び/又は、前記掘削機ショベル荷下ろし軌道
の計算
において、前記掘削機(10)が前記地盤の掘削された部分(21)に進入し
てそこから再度退出することがあることを考慮し、
少なくとも最後の前記作業ステップを前記地盤の掘削された前記部分(21)の外側から実行する、請求項2乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記掘削機(10)の自動制御を、前記地盤の隆起のために使用し、
前記材料処理軌道は、前記掘削機ショベル(11)の荷下ろし箇所と前記掘削機ショベル(11)の動作の方向とを含む材料追加軌道であり、
前記掘削機ショベル軌道は、前記掘削機ショベル(11)の動作を示す掘削機ショベル荷下ろし軌道であり、
前記材料追加軌道、前記運動軌道及び前記掘削機ショベル荷下ろし軌道に従って前記作業ステップを実行する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記掘削機(10)に対して、前記セマンティックマップに加えて、前記変化させられる地盤(20)の座標を伴うグローバルマップも提供し、前記軌道(40,50,70)を特定する際に前記グローバルマップを考慮する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記掘削機(10)は、自動的に、ルート計画を用いて、周辺領域のモデル又は前記掘削機(10)の電子制御装置(15)によって自身で開始位置(32)へ移動する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
光学センサ(16)を用いて前記周辺領域の3Dプロファイルを特定し、前記周辺領域の3Dプロファイルを、前記運動軌道(50)の計算及び/又は前記掘削機ショベル軌道(40)の計算に使用する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記軌道(40,50,70)を特定する際に、前記掘削機ショベル(11)の作業特性を考慮する、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記作業ステップの実行後に前記掘削機ショベル軌道(40)を再計算する、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
現れた障害物(60,80)を、前記掘削機ショベル軌道(40)及び/又は前記運動軌道(50)及び/又は前記材料処理軌道(70)の計算の際に考慮する、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記軌道(40,50,70)の計算を、少なくとも部分的にビルディングインフォメーションモデルによって実行し、又は、前記掘削機(10)の電子制御装置(15)によって実行する、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
複数の掘削機(10,100)に対して前記軌道(40,50,70)を計算し、
前記掘削機(10,100)は、計算された前記軌道(40,50,70)に従って自身の作業ステップを実行する、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか一項に記載の方法を用いて掘削機(10)を自動制御するように構成されている電子制御装置(15)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セマンティックマップを使用した、掘削機の自動制御方法に関する。さらに本発明は、本発明に係る方法を実施するように構成されている電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術
アームを介して掘削機と可動に接続されている掘削機ショベルを備える掘削機は、周知である。今日、掘削機の操作を容易にするために、種々のアシスタント機能が使用されている。終端位置ダンピングは、アームのシリンダが機械的ストッパに衝突することを阻止する。さらに、掘削機が超えてはならない作業スペースの制限が設定される。このような作業スペースの制限によって、掘削機又は掘削機ショベルが障害物、例えば壁に衝突することが阻止される。座標制御においては、掘削機のオペレータは、アームの個々のシリンダを制御するのではなく、掘削機ショベルの経路を直接的に設定する。上述したアシスタントシステムには、アーム及び掘削機ショベルの位置を特定するためにセンサが必要である。これには、特に、慣性センサ及び光学センサ、例えばカメラが含まれる。
【0003】
さらに、掘削機の動作の仕方を自動化する取り組みがある。掘削機自体の動作に加えて、ここにおける焦点は、特に、掘削機ショベルの作業の動作である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明の開示
ここでは、アームを介して掘削機と可動に接続されている掘削機ショベルを備える掘削機の自動制御方法が提案されており、当該方法は、以下のステップを含む。
【課題を解決するための手段】
【0005】
方法の開始時に、掘削機に対して、変化させられる地盤の座標を伴うセマンティックマップが提供される。セマンティックマップは、幾何学的情報に加えて、対象物に対するセマンティック標識(分類された対象物)も光学センサのセンサデータから得られるメトリックマップである。光学センサは、好ましくはカメラであり、掘削機及び/又は掘削機の周辺環境にあるインフラストラクチャに配置されているものとしてよい。例えば、掘削機が走行する地盤は地面としてマークされ、地盤に対して垂直に上方へ突き出ている領域は壁としてマークされる。変化させられる地盤の座標は、有利には、モデルから計算され、セマンティックマップに記入される。このモデルは、ここでは、いわゆる「ビルディングインフォメーションモデル」(BIM)であるものとするとよい。このモデルにおいては、建物のデータがデジタルにモデリングされ、建物が仮想モデルとして利用可能である。一方では、変化させられる地盤は、地面における、掘削されるべき所定の窪みであるものとしてよい。このような場合には、所定の窪みが建設ピットとしてマークされているものとしてよい。他方では、変化させられる地盤は、盛り上げられるべき所定の隆起部であるものとしてよく、これは、例えば土手としてマークされ得る。言い換えると、セマンティックマップは、座標と、結果として、掘削されるべき建設ピット又は盛り上げられるべき隆起部の位置と寸法とを有している。建設ピットの位置、長さ、幅及び深さ、又は、盛り上げ部分の高さ若しくは隆起部の形状も再現する3次元座標(3D座標)を使用することが好ましい。
【0006】
任意選択的に、掘削機に対して、セマンティックマップに加えて、変化させられる地盤の座標を伴うグローバルマップも提供されるものとするとよい。このようなグローバルマップは、例えば建設現場全体内の、より広い周辺領域における変化させられる地盤の位置を再現する。ここで、両方のマップがマージされることが好ましく、これは、セマンティックマップ内の対象物がグローバルにも参照されることを意味している。グローバルマップにおける、計画され、既に存在している対象物の位置は、セマンティックマップに転写されるものとするとよい。これによって、掘削機は、セマンティックマップに基づいて、例えば光学センサを用いて自分の位置を認識することができる。このような場合には、掘削機で、ナビゲーション衛星システム(全球測位衛星システム(GNSS))のための受信装置を省略することができる。
【0007】
さらに、掘削機に対して、材料処理軌道が提供される。材料処理軌道は、場合によっては、グローバルマップを含むセマンティックマップから特定され、掘削機ショベルによって地盤を処理するための開始点と方向とを含む。このようにして、少なくとも、最初の処理の大略的な方向付け又は掘削機ショベルによる地盤に対する材料除去若しくは材料追加に関する3次元の材料の流れのより詳細な設定が確立される。建設ピットの掘削の場合及び隆起部の盛り上げの場合に関して、以下において、より詳細な説明を行う。材料処理軌道を特定する際に、作業特性、例えば、掘削機ショベルの動作の可能性、受容力、作業幅及び/又は作業深さ若しくは作業高さが考慮される。
【0008】
次に、掘削機の駆動ユニット、例えばモータが、掘削機が材料処理軌道によって、与えられた開始点に向かうように制御される。ここで、掘削機は、有利には、ルート計画を用いて、開始点に自動的に移動することができる。ルート計画のために、掘削機は、有利には上述した「ビルディングインフォメーションモデル」からの周辺領域のモデルを使用することができる。選択的に、ルート計画は、掘削機の電子制御装置上において実行されるものとするとよい。この場合、定められた走行道を用いて、及び/又は、走行可能な空き領域に基づいて、ルート計画を行うことができる。光学センサのセンサデータから空き領域を特定することができる。選択的に、セマンティックマップから空き領域を特定することができる。空き領域を特定する際に、走行と作業ツールに対するモーションウィンドウとは区別される。空き領域又は走行道は、掘削機用に特別に設計されており、他のもの、例えば搬送車両用のものとは異なる場合がある。開始点までのルート内に障害物が現れた場合、この障害物を回避するためにルート計画がそれに応じて調整される。
【0009】
開始点に応じて、セマンティックマップを用いて、さらに、場合によってはグローバルマップに基づいて運動軌道が計算され、これに沿って掘削機は、地盤の処理のために又は地盤の処理の際に又は地盤の処理の間に動作する。ここでは、走行の動作と作業の動作との両方が再現される。さらに、光学センサのセンサデータから、周辺領域の3Dプロファイルを特定することができ、これは運動軌道の計算に含まれる。運動軌道の計算の際に、上述したルート計画を使用することができる。掘削機ショベル軌道内に障害物が現れた場合、この障害物を回避するために、運動軌道がそれに応じて調整される。ここでも、作業特性、例えば、掘削機ショベルの動作の可能性、受容力、作業幅及び/又は作業深さ若しくは作業高さ、並びに、場合によっては建設ピット又は隆起部の寸法が考慮される。
【0010】
さらに、セマンティックマップを用いて、掘削機ショベルの動作を再現する掘削機ショベル軌道が計算又は計画される。掘削機ショベル軌道は、掘削機の電子制御装置によって計算されることが有利である。掘削機ショベル軌道と掘削機ショベルの位置とに基づいて、掘削機ショベルが配向され、掘削機ショベルの刃先が正確に制御される。建設ピットの掘削の場合及び隆起部の盛り上げの場合に関して、以下において、より詳細な説明を行う。さらに、光学センサのセンサデータから、掘削機ショベル軌道の計算に含まれる、周辺領域の3Dプロファイルを特定することができる。ここでも、作業特性、例えば、掘削機ショベルの動作の可能性、受容力、作業幅及び/又は作業深さ若しくは作業高さ、並びに、場合によっては建設ピット又は隆起部の寸法が考慮される。
【0011】
軌道が特定されると、掘削機は、材料処理軌道、運動軌道及び掘削機ショベル軌道に従って作業ステップを実行する。このために、掘削機は、本発明に係る方法を制御する制御装置から制御信号を得る。より詳細には、掘削機及び掘削機ショベルは、材料処理軌道に応じて自身を位置決めし、材料を受容する又は荷下ろしするために、掘削機ショベルを材料処理軌道に沿って動作させる。次に、掘削機ショベルは、掘削機ショベル軌道に沿って、新たな処理点又は同一の処理点へと動作させられる。ここで、掘削機ショベルは、再度、材料処理軌道に沿って動作する。掘削機の現在の位置から到達されるべき所定の位置で地盤の処理が成されるまで、これらのステップを複数回繰り返すことができる。最後に、掘削機は運動軌道に沿って、新たな位置へ移動し、新たに開始する。
【0012】
典型的に、作業ステップ後に地盤は変化している。変化させられた地盤における調整を可能にするために、作業ステップの実行後に掘削機ショベル軌道が再計算されるように設定されている。有利には、作業ステップの実行の際の地盤の処理中に現れる障害物が、掘削機ショベル軌道の再計算の際に考慮される。
【0013】
最後に、セマンティックマップは、光学センサのセンサデータに基づいて更新される。掘削された材料又は捨てられた材料を、センサデータにおいて見ることができる。この過程において、掘削機ショベル軌道を、以前に掘削された材料若しくは盛り上げられた材料、更新されたセマンティックマップ、材料処理軌道及び/又は作業特性、特に掘削機ショベルの受容力の知識を用いて再計算することができる。これによって、材料損失なく、可能な限り多くの材料が受容され、単に材料が変位されるだけでなく実際に搬送され、掘削機ショベルが引き続き処理を行う必要が可能な限り少なくなるように、掘削機ショベルの制御を最適化することができる。
【0014】
ある態様によれば、掘削機の自動制御は、地盤の一部の掘削のために使用される。言い換えると、掘削機及び掘削機ショベルは、建設ピットから材料を取り去るように制御される。これは、掘削機が行うべきタスクの大部分をカバーすることができる。このような場合、上述した材料処理軌道は、開始点である掘削機ショベルの穿孔箇所と掘削機ショベルの動作の方向とを含む材料除去軌道である。材料除去軌道は、建設ピットにおける材料減少の進行を表し、材料の受容のための削り取り(Abschneidens)の機会に対する、掘削機ショベルの大略的な手引きとして用いられる。さらに、掘削機ショベル軌道は、材料の削り取り及び受容のための掘削機ショベルの動作を示す掘削機ショベル受容軌道である。これに対応して、材料除去軌道、上述した運動軌道及び掘削機ショベル受容軌道に従って作業ステップが実行される。
【0015】
付加的に、掘削機ショベル荷下ろし軌道が計算可能である。掘削機ショベル荷下ろし軌道は、上述した作業ステップの過程において受容された材料を荷下ろし箇所で荷下ろしするための掘削機ショベルの動作を示している。荷下ろし箇所は、固定された箇所であるものとしてもよく、又は、例えば搬送車両であるものとしてもよく、それ自体公知の方法により選択されるものとしてよい。掘削機ショベル荷下ろし軌道は、有利には、掘削機の位置、荷下ろし箇所の位置及び開始点から計算される。掘削機ショベル荷下ろし軌道の計算の際に、掘削機ショベルの上述した作業特性も考慮することができる。材料除去の後、荷下ろし箇所における掘削機ショベルの荷下ろしのための作業ステップが、少なくとも掘削機ショベル荷下ろし軌道に従って実行される。その結果、建設ピットからの材料の掘削及びそれに続く材料の荷下ろしを、共に自動制御することができる。有利には、材料除去軌道に従って従前の掘削機ショベル受容軌道上において材料除去が完全に行われた場合、荷下ろし箇所から新たな削り取り箇所への掘削機ショベルの動作が掘削機ショベル受容軌道において設定される。又は、材料除去軌道に従って従前の掘削機ショベル受容軌道上において材料除去が完全には行われなかった場合若しくは終えられなかった場合、荷下ろし箇所から同一の削り取り箇所への掘削機ショベルの動作が掘削機ショベル受容軌道において設定される。
【0016】
建設ピットの周辺環境において損害を引き起こさないようにするために、掘削機ショベルが所定の掘削ウィンドウを超えないように、材料除去軌道及び/又は掘削機ショベル受容軌道が計算されるように設定されている。光学センサを用いて、掘削機ショベルが掘削ウィンドウの境界に接近しているか否かが監視される。掘削機ショベルが掘削ウィンドウから退出する前に、掘削機ショベルにブレーキがかけられ、ここで、掘削機ショベルは、有利には、行き過ぎることなく停止する。掘削ウィンドウは、ビルディングインフォメーションモデルによって設定可能であるものとしてよく、又は、特に作業スペースの制限の形態で掘削機の電子制御装置内に格納されているものとしてよい。
【0017】
材料除去軌道の計算の際に、掘削機が、地盤の掘削された部分即ち建設ピットに進入し、そこから再度退出し得ることが考慮される。同様に、掘削機ショベル受容軌道の計算の際に、及び/又は、掘削機ショベル荷下ろし軌道の計算の際に、掘削機が建設ピット内に進入しているか否かが考慮される。これは特に、建設ピットの寸法及び掘削機の仕様、特に掘削機の寸法及びアームの到達距離に関連する。特に材料除去軌道の場合、建設ピットの側面の少なくとも1つの部分が、掘削機がこの部分の上を走行し得るように処理されることが考慮される。例として、ここでは、それを介して掘削機が建設ピットから外部に退出することができる傾斜路が挙げられる。ここでは、掘削機が建設ピット内に閉じ込められることを回避するために、少なくとも最後の作業ステップが建設ピットの外側から実行されるように設定されている。上述した例においては、掘削機は、最初に傾斜路を介して建設ピットから退出して、その後に、掘削機は、最終的に建設ピットの外側から傾斜路自体を掘削する。
【0018】
他の態様によれば、掘削機の自動制御は、地盤の隆起のために使用される。言い換えると、掘削機及び掘削機ショベルは、例えば、土手を形成するために、材料が盛り上がるように制御される。これは、掘削機が行うべきタスクの他の大部分をカバーすることができる。このような場合、上述した材料処理軌道は、掘削機ショベルの荷下ろし箇所と掘削機ショベルの動作の方向とを含む材料追加軌道である。材料追加軌道は、荷下ろし箇所における材料追加の進行を示す。さらに、掘削機ショベル軌道は、掘削機ショベルに受容された材料を荷下ろしするための掘削機ショベルの動作を示す掘削機ショベル荷下ろし軌道である。これに対応して、材料追加軌道、上述した運動軌道及び掘削機ショベル荷下ろし軌道に従って作業ステップが実行される。
【0019】
地盤の一部の掘削のための掘削機の自動制御と地盤の隆起のための掘削機の自動制御とを、互いに別々に使用することも、組み合わせて使用することも可能である。後者の場合には、掘削時に材料が建設ピットから受容され、地盤の隆起のために、他の箇所即ち荷下ろし箇所に再度荷下ろしされる。地盤の隆起のための荷下ろし箇所は、固定された箇所であり、上述した意味における搬送車両ではないことは、明らかである。
【0020】
一方では、上述した軌道の計算を、少なくとも部分的にビルディングインフォメーションモデルによって行うことができる。有利には、ここでは、処理されるべき地盤の実際の状態は、光学センサを介して特定され、ビルディングインフォメーションモデルの目標状態と比較される。このような比較は、一方では、ビルディングインフォメーションモデルのパフォーマンスを評価するために使用可能であり、他方では、ビルディングインフォメーションモデルを改善するために使用可能である。選択的に、軌道の計算は、掘削機の制御装置によって実行されるものとするとよい。
【0021】
掘削機ショベルから落下した材料及び/又は単に変位された材料は、識別可能であり、軌道を繰り返すことによって受容可能である。
【0022】
これまでの方法は、1台の掘削機に関連しているが、同一の建設プロジェクトで複数の掘削機が同時に使用され、特に同等のタスクが与えられていることもある。このような場合には、軌道が、複数の掘削機に対して同時に計算される。ここで、軌道の計算の際に、衝突及び相互の妨害が回避されることに留意されるべきである。2つ以上の掘削機の軌道の部分が互いに近接して位置している場合又は交差している場合には、これらの掘削機がこれらの部分に同時に存在しないように留意されるべきである。
【0023】
電子制御装置は、上述した方法を実施するように構成されている。このために、方法の各ステップを実行するコンピュータプログラムが設けられているものとするとよい。これによって、構造を変更する必要なく、従来の電子制御装置にこの方法を実装することができる。さらに、これが機械可読記憶媒体に格納されているものとするとよい。
【0024】
本発明の実施例を図面に示し、以下の記載において、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態による運動軌道及び掘削機ショベル受容軌道が記入されている、掘削機及び建設ピットの概略的な平面図を示している。
【
図2】掘削機のルートに付加的な障害物がある、
図1の概略図を示している。
【
図3】
図3a乃至
図3cはそれぞれ、本発明の実施形態による材料除去軌道が記入されている、
図1の掘削機及び建設ピットの概略的な側面図を示している。
【
図4】
図4a乃至
図4cは、建設ピットに付加的な障害物がある、
図3の概略図を示している。
【
図5】さらなる掘削機を備えた、
図3の概略図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態
図1は、掘削機10及び建設ピット20の概略的な平面図を示している。この図においては、複数の時点における同一の掘削機10が示されている。掘削機10は、アーム12を介して掘削機10と可動に接続されている掘削機ショベル11を有している(分かり易くするために、参照符号は、1台の掘削機に対してのみ示されている)。さらに、掘削機10は、電子制御装置15と、電子制御装置15に接続されている、カメラ16の形態の光学センサとを有している。ここでは、光学センサは、1つだけ示されているが、光学センサが複数個設けられているものとしてもよい。掘削機10の電子制御装置15には、ビルディングインフォメーションモデルに基づいて、設定されている建設ピット20の座標が記入されているセマンティックマップ及び任意選択的にグローバルマップ(図示せず)が提供される。ここで、これらのマップは、特にマージされており、計画され、既に存在している対象物のグローバルな位置がセマンティックマップに転写されている。セマンティックマップと掘削機10の位置とに基づいて、
図3に関連してより詳細に説明される材料除去軌道が提供される。掘削機10は、ルート計画を用いて特定されたルート30上を、掘削機の起点位置31から、材料処理軌道によって与えられた開始位置32へと自動的に向かう。ルート計画は、電子制御装置15上において実行されるものとしてもよく、ビルディングインフォメーションモデルを使用するものとしてもよい。ルート30は、カメラ16によって識別され、又は、セマンティックマップから特定される、固定された走行道若しくは走行可能な空き領域上に延在する。
【0027】
さらに、
図1には、それに沿って掘削機ショベル11が動作する掘削機ショベル受容軌道40が記入されており、ここで、掘削機ショベル11は、開始位置32から、アーム12の長さ及び可動性に応じて、円形セクション41によってマークされた領域を掘削することができる。材料除去軌道に対する開始点として、穿孔箇所42が、掘削機ショベル受容軌道40に沿って、円形セクション41上に配置されており、ここで、掘削機ショベル11が所定の方向において地面に穴を開け、材料を取り去る。これに対する詳細な説明は、
図3に関して記載される。穿孔箇所42は、掘削機ショベルの動作の可能性、受容力、及び、特に作業幅に応じて配置されている。掘削機10は、
図3に関連してより詳細に説明されている材料除去軌道に従って、各穿孔箇所42で掘削機ショベル11を用いて材料を掘削する。次に、ここに示されていない実施形態においては、掘削機ショベル11は、掘削機ショベル荷下ろし軌道に沿って、荷下ろし箇所まで移動する。荷下ろし箇所は、固定されているものとしてもよく、搬送車両、例えばトラックであるものとしてもよい。作業ステップが実行された後、掘削機ショベル受容軌道が再計算される。次に、掘削機ショベル11は、掘削機ショベル受容軌道40に沿って次の穿孔箇所42へ移動し、そこで材料を再度取り去る。
【0028】
マークされた領域がこのように掘削されると、掘削機10は、それぞれ記入されている運動軌道50に沿って、終点54に到達するまで、次の点51、52、53へとさらに走行し、これらの箇所においてそれぞれ上述した掘削を実行する。ここで、掘削機10は、建設ピット20の既に掘削された部分内において動作する。運動軌道50は、電子制御装置15上において実行されるものとしてもよく、ビルディングインフォメーションモデルを使用するものとしてもよく、ここでは、カメラ16によって識別され、又は、セマンティックマップから特定される、固定された走行道又は走行可能な空き領域上に延在することができる。掘削機10が最後の掘削を実行しているときに、掘削機10が建設ピット20の外側に位置するように、終点54は選択されている。分かり易くするために、さらなる点51、52、53、54に対してのみ、その上を掘削機ショベルが動作することができる円形セクション(個々の参照符号はない)が示されているが、各掘削機ショベル受容軌道40自体は示されていない。掘削機ショベル11が、掘削機10の好ましい走行方向に反して、掘削機10の後面でも材料を取り去ることができることが明らかである。ここでは、掘削機10は、建設ピット20から出たときに、残余の所定の領域を掘削することができるので、これは、終点54にとって特に重要である。
【0029】
以下においては、同一の構成要素に同一の参照符号が付されているので、以下においてそれらの新たな説明は、省略されている。
【0030】
図1及び
図2において、掘削機10及び建設ピット20の下方にルート30及び運動軌道50が示されていることを見て取ることができる。ルート30、運動軌道50、及び、特に、ルート30又は運動軌道50上の点31、32、51、52、53、54を明確に識別可能に示すべく、分かり易くするために、このような表示が選択された。ルート30及び運動軌道50は、適用において、それぞれ
図1及び
図2において掘削機10が示されている3つの位置を通って延在する。実際にルート30及び運動軌道50は、主に、図示された平面において2次元的に延在し、場合によっては3次元的に延在する。
【0031】
図2は、同様に、掘削機10及び建設ピット20の概略的な平面図を示している。
図1と比較して、
図2においては、掘削機10と開始位置32との間に位置する障害物60が示されている。障害物60は、掘削機10のカメラ16によって識別され、元来のルート30が、それに沿って掘削機10が起点位置31から開始位置32に移動する新たなルート35に変更されるように、ルート計画が調整される。
【0032】
図3a乃至
図3cはそれぞれ、
図1の掘削機10及び建設ピット20の概略的な側面図を示している。
図3aにおいては、起点31にある掘削機10が示されており、計画された建設ピット20が示されている。掘削機は、起点位置31から、
図3bにおいて到達する開始位置32へ移動する。
図3bにおいては、さらに、それに沿って掘削機ショベル11が最初の位置71から、穿孔箇所における位置72を介して終了位置73まで移動する材料除去軌道70が示されている。材料除去軌道70は、開始点、従って穿孔箇所42(
図2を参照)に加えて、穿孔箇所において掘削機ショベル11によって地盤から材料を削り取るための方向も含む。材料を削り取ることによって、建設ピットの示された部分21が得られる。
図3cには、実際に掘削された建設ピット22が示されており、これは、この実施例においては、実質的に、計画された建設ピット20に相当する。実際の建設ピット22は、カメラ16によって記録され、実際の建設ピット22の実際の状態が、計画された建設ピット20の目標状態と比較される。このような比較は、一方では、ビルディングインフォメーションモデルのパフォーマンスを評価するために使用可能であり、他方では、ビルディングインフォメーションモデルを改善するために使用可能である。
【0033】
図4a乃至
図4cは、同様に、掘削機10及び建設ピット20の概略的な側面図を示している。
図4aは、ここで、
図3aに相当する。
図3bと比較して、
図4bには、障害物80、例えば、建設ピット20内のケーブルが示されている。これは示されている部分21の掘削時に現れる。障害物80は、掘削機ショベル軌道40、運動軌道50及び/又は材料処理軌道70の計算の際に考慮される。
図4cは、ここで、変化させられた実際の建設ピット23を示しており、これは、計画された建設ピット20と比較して変位しているが、障害物80にはもはや接触していない。変化させられた実際の建設ピット23の寸法は、計画された建設ピット20の寸法に相当する。実際の建設ピット23の変位は、ビルディングインフォメーションモデルと合致して実行され、例えば、建設ピット20が厳密に指定された箇所において掘削されるべき場合には阻止されるものとしてもよい。ここでも、変化させられた実際の建設ピット23は、カメラ16によって記録され、ビルディングインフォメーションモデルは、実際の建設ピット23の新たな位置に対応して調整される。さらに、
図4cにおいては、再度、掘削機10が、既に掘削された部分21内に存在し得ること、及び、再度そこから退出するように移動し得ることが示されている。
【0034】
図5a乃至
図5cは、同様に、掘削機10及び建設ピット20の概略的な側面図を示している。ここで、
図5aは、
図3aに相当する。
図3bと比較して、
図5bには、掘削機10に相当し、同様に掘削機ショベル101、アーム102、電子制御装置105及びカメラ106を含む付加的な掘削機100が示されている。この付加的な掘削機100は、既に説明した掘削機10と協働して建設ピット20を掘削するために使用される。付加的な掘削機100に対しては、掘削機10と同様に、掘削機ショベル軌道、運動軌道及び材料処理軌道も計算される。付加的な掘削機100の動作の仕方の説明については、掘削機10の説明が参照される。
図5cは、掘削機10によって掘削された建設ピットの部分21及び付加的な掘削機100によって掘削された建設ピットの部分121を示している。
【0035】
図示されていないさらなる実施例においては、掘削機10の自動制御は、地盤の隆起のために使用される。ここでは、材料除去軌道70の代わりに、掘削機ショベル11の材料の荷下ろし箇所と掘削機ショベル11の動作の方向とを含む材料追加軌道が使用され、掘削機ショベル受容軌道40の代わりに、掘削機ショベル11の動作を示す掘削機ショベル荷下ろし軌道が使用される。さらに、運動軌道50が、対応して調整される。次に、材料追加軌道と、掘削機ショベル荷下ろし軌道と、調整された運動軌道とに従って作業ステップが実行される。