(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】汚泥減容化装置
(51)【国際特許分類】
C02F 11/00 20060101AFI20220708BHJP
C02F 3/34 20060101ALI20220708BHJP
【FI】
C02F11/00 Z ZAB
C02F3/34 101A
(21)【出願番号】P 2021210482
(22)【出願日】2021-12-24
【審査請求日】2021-12-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592141927
【氏名又は名称】JFE環境テクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101340
【氏名又は名称】丸山 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100205730
【氏名又は名称】丸山 重輝
(74)【代理人】
【識別番号】100213551
【氏名又は名称】丸山 智貴
(72)【発明者】
【氏名】古原 翔太郎
(72)【発明者】
【氏名】満留 憲二
(72)【発明者】
【氏名】松島 泰生
(72)【発明者】
【氏名】宮本 一希
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-212581(JP,A)
【文献】特開2007-222830(JP,A)
【文献】特開2007-021285(JP,A)
【文献】特開2007-152268(JP,A)
【文献】特開2005-246134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/00-11/20
C02F 3/00- 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱窒槽
(1)と、硝化槽
(2)と、硝化槽通過後の汚泥を固液分離する固液分離手段
(3)と、
前記固液分離手段
(3)で分離された汚泥を前記脱窒槽
(1)に返送汚泥ライン
(7)を介して返送する返送汚泥ポンプ
(6)と、を備え、
前記返送汚泥ライン
(7)に、外部空気を取り込むことなく、
返送する返送汚泥のみを取り込み、該取り込まれた
返送汚泥中の一部の微生物の細胞壁を破壊して可溶化する噴流ノズル(9)を設置し、
前記噴流ノズル(9)は、汚泥入口(92)と、該汚泥入口(92)に連通する膨出空間である空洞部(94)と、該空洞部(94)に連通する細い筒状空筒部(96)と、該筒状空筒部(96)の先端(97)とを有し、
前記汚泥入口(92)より返送汚泥ポンプ(6)を介して導入された返送汚泥は、前記空洞部(94)に送られて圧縮が促進され、
前記圧縮された汚泥が前記筒状空筒部(96)に送られる際に、汚泥中の微生物に剪断力が働くと共に、
さらに前記筒状空筒部(96)の先端(97)から、前記返送汚泥ライン(7)の配管に送られる際にも汚泥中の微生物に剪断力が働き、
前記汚泥中の微生物に働く剪断力により、微生物の細胞壁を破壊して可溶化することを特徴とする汚泥減容化装置。
【請求項2】
脱窒槽
(1)と、硝化槽
(2)と、硝化槽通過後の汚泥を固液分離する固液分離手段
(3)と、
前記固液分離手段
(3)で分離された汚泥を前記脱窒槽
(1)に返送汚泥ライン
(7)を介して返送する返送汚泥ポンプ
(6)と、
前記硝化槽
(2)から前記脱窒槽
(1)に循環液を移送する循環液移送ライン
(8)を介して循環液を移送する循環液移送ポンプとを備え、
前記循環移送ライン
(8)に、外部空気を取り込むことなく、前記循環液のみを取り込み、該取り込まれた
循環液中の一部の微生物の細胞壁を破壊して可溶化する噴流ノズル(9)を設置し、
前記循環液移送ライン(8)に設置した前記噴流ノズル(9)は、汚泥入口(92)と、該汚泥入口(92)に連通する膨出空間である空洞部(94)と、該空洞部(94)に連通する細い筒状空筒部(96)と、該筒状空筒部(96)の先端(97)とを有し、
前記汚泥入口(92)より循環液移送ポンプを介して導入された高圧の循環液汚泥は、前記空洞部(94)に送られて圧縮が促進され、
前記圧縮された汚泥が、前記筒状空筒部(96)に送られる際に、汚泥中の微生物に剪断力が働くと共に、
さらに前記筒状空筒部(96)の先端(97)から、前記循環液移送ライン(8)の配管に送られる際にも汚泥中の微生物に剪断力が働き、
前記汚泥中の微生物に働く剪断力により、微生物の細胞壁を破壊して可溶化することを特徴とする汚泥減容化装置。
【請求項3】
前記硝化槽
(2)から前記脱窒槽
(1)に循環液を移送する循環液移送ライン
(8)を介して循環液を移送する循環液移送ポンプとを備え、
前記循環液移送ライン
(8)に、外部空気を取り込むことなく、前記循環液のみを取り込み、該取り込まれた
循環液中の一部の微生物の細胞壁を破壊して可溶化する噴流ノズルを設置
し、
前記循環液移送ライン(8)に設置した前記噴流ノズル(9)は、汚泥入口(92)と、該汚泥入口(92)に連通する膨出空間である空洞部(94)と、該空洞部(94)に連通する細い筒状空筒部(96)と、該筒状空筒部(96)の先端(97)とを有し、
前記汚泥入口(92)より循環液移送ポンプを介して導入された高圧の循環液汚泥は、前記空洞部(94)に送られて圧縮が促進され、
前記圧縮された汚泥が、前記筒状空筒部(96)に送られる際に、汚泥中の微生物に剪断力が働くと共に、
さらに前記筒状空筒部(96)の先端(97)から、前記循環液移送ライン(8)の配管に送られる際にも汚泥中の微生物に剪断力が働き、
前記汚泥中の微生物に働く剪断力により、微生物の細胞壁を破壊して可溶化することを特徴とする
請求項1記載の汚泥減容化装置。
【請求項4】
前記空洞部(94)に送られる汚泥の圧力は、0.05~0.25MPaの範囲であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の汚泥減容化装置。
【請求項5】
前記硝化槽
(2)と前記固液分離手段
(3)の間に、二次脱窒槽
(4)を備えることを特徴とする請求項1~
4の何れかに記載の汚泥減容化装置。
【請求項6】
汚泥再生処理を含むし尿処理施設に適用されることを特徴とする請求項1~5の何れかに記載の汚泥減容化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥減容化装置に関し、詳しくは、より効率的な汚泥減容化を実現できる汚泥減容化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
汚泥減容化技術には、熱、電気、アルカリや次亜塩素酸などの薬品を用いたものがあり、それぞれ一定の減容化効果が得られることは知られている。
しかし、投入エネルギーコストが、減容化により得られる削減コストを上回ることが多く、十分なメリットが得られる技術は普及していない。
【0003】
また、これらの技術は、可溶化処理により、色度や有機物等の成分が多く溶出し、生物処理では完全に除去されず、後段の凝集処理や活性炭処理への負荷を増大させてしまう課題もある。
また、上記の熱、電気、アルカリや次亜塩素酸などの薬品を用いる技術とは異なった汚泥の減容化手法も提案されている。
【0004】
特許文献1には、曝気槽から排出されたフロック化した汚泥を沈殿槽あるいは汚泥貯留槽を介して高圧ポンプにより高圧圧送して解砕化装置に送り、解砕化装置により、このフロック化した汚泥を解砕化し、その解砕化された汚泥に対し気液混合装置により気液を導入し活性化させて曝気槽に返送されるようにした技術が開示されている。これにより、曝気槽に返送される汚泥全体の比表面積が増えるとともに、気液を導入することにより、解砕された汚泥の活性度が向上するので、曝気槽の持つ本来の能力が回復され、その結果余剰汚泥の減容化を図ることができる。
【0005】
また、特許文献2、3の汚泥可溶化方法では、濾液が噴流として噴射ノズルから連絡通路側に向かって噴射されると、連絡通路内において、噴流の流れの他に、噴流の随伴流として余剰汚泥と気体の流れが生成され、これにより、噴流の流れと随伴流の流れの速度差によって汚泥(余剰汚泥)中の微生物が破壊(殺傷)されて、汚泥を十分に可溶化する技術を開示している。
【0006】
また、連絡通路側に吸引された気体は、微細気泡になって圧壊して膨張する。これにより、汚泥(余剰汚泥)の細胞膜が損傷して、汚泥の可溶化を促進する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第3916247号公報
【文献】特開2020-49463号公報
【文献】特開2020-49464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1~3のいずれの技術も、気泡を汚泥に混入させる手法を採用しているため、長期間運転すると、気泡を導入するノズルの閉塞の問題があり、また、汚泥に気泡が混入するため、生物処理に嫌気状態が必須の脱窒処理を組み込むことができない問題がある。
【0009】
そこで、本発明の課題は、費用対効果の高く、気泡によるノズルの閉塞がなく、生物処理に嫌気状態が必須の脱窒処理を組み込むことができる汚泥減容化装置を提供することにある。
【0010】
更に、本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は以下の各発明によって解決される。
【0012】
(請求項1)
脱窒槽(1)と、硝化槽(2)と、硝化槽通過後の汚泥を固液分離する固液分離手段(3)と、
前記固液分離手段(3)で分離された汚泥を前記脱窒槽(1)に返送汚泥ライン(7)を介して返送する返送汚泥ポンプ(6)と、を備え、
前記返送汚泥ライン(7)に、外部空気を取り込むことなく、返送する返送汚泥のみを取り込み、該取り込まれた返送汚泥中の一部の微生物の細胞壁を破壊して可溶化する噴流ノズル(9)を設置し、
前記噴流ノズル(9)は、汚泥入口(92)と、該汚泥入口(92)に連通する膨出空間である空洞部(94)と、該空洞部(94)に連通する細い筒状空筒部(96)と、該筒状空筒部(96)の先端(97)とを有し、
前記汚泥入口(92)より返送汚泥ポンプ(6)を介して導入された返送汚泥は、前記空洞部(94)に送られて圧縮が促進され、
前記圧縮された汚泥が前記筒状空筒部(96)に送られる際に、汚泥中の微生物に剪断力が働くと共に、
さらに前記筒状空筒部(96)の先端(97)から、前記返送汚泥ライン(7)の配管に送られる際にも汚泥中の微生物に剪断力が働き、
前記汚泥中の微生物に働く剪断力により、微生物の細胞壁を破壊して可溶化することを特徴とする汚泥減容化装置。
(請求項2)
脱窒槽(1)と、硝化槽(2)と、硝化槽通過後の汚泥を固液分離する固液分離手段(3)と、
前記固液分離手段(3)で分離された汚泥を前記脱窒槽(1)に返送汚泥ライン(7)を介して返送する返送汚泥ポンプ(6)と、
前記硝化槽(2)から前記脱窒槽(1)に循環液を移送する循環液移送ライン(8)を介して循環液を移送する循環液移送ポンプとを備え、
前記循環移送ライン(8)に、外部空気を取り込むことなく、前記循環液のみを取り込み、該取り込まれた循環液中の一部の微生物の細胞壁を破壊して可溶化する噴流ノズル(9)を設置し、
前記循環液移送ライン(8)に設置した前記噴流ノズル(9)は、汚泥入口(92)と、該汚泥入口(92)に連通する膨出空間である空洞部(94)と、該空洞部(94)に連通する細い筒状空筒部(96)と、該筒状空筒部(96)の先端(97)とを有し、
前記汚泥入口(92)より循環液移送ポンプを介して導入された高圧の循環液汚泥は、前記空洞部(94)に送られて圧縮が促進され、
前記圧縮された汚泥が、前記筒状空筒部(96)に送られる際に、汚泥中の微生物に剪断力が働くと共に、
さらに前記筒状空筒部(96)の先端(97)から、前記循環液移送ライン(8)の配管に送られる際にも汚泥中の微生物に剪断力が働き、
前記汚泥中の微生物に働く剪断力により、微生物の細胞壁を破壊して可溶化することを特徴とする汚泥減容化装置。
(請求項3)
前記硝化槽(2)から前記脱窒槽(1)に循環液を移送する循環液移送ライン(8)を介して循環液を移送する循環液移送ポンプとを備え、
前記循環液移送ライン(8)に、外部空気を取り込むことなく、前記循環液のみを取り込み、該取り込まれた循環液中の一部の微生物の細胞壁を破壊して可溶化する噴流ノズルを設置し、
前記循環液移送ライン(8)に設置した前記噴流ノズル(9)は、汚泥入口(92)と、該汚泥入口(92)に連通する膨出空間である空洞部(94)と、該空洞部(94)に連通する細い筒状空筒部(96)と、該筒状空筒部(96)の先端(97)とを有し、
前記汚泥入口(92)より循環液移送ポンプを介して導入された高圧の循環液汚泥は、前記空洞部(94)に送られて圧縮が促進され、
前記圧縮された汚泥が、前記筒状空筒部(96)に送られる際に、汚泥中の微生物に剪断力が働くと共に、
さらに前記筒状空筒部(96)の先端(97)から、前記循環液移送ライン(8)の配管に送られる際にも汚泥中の微生物に剪断力が働き、
前記汚泥中の微生物に働く剪断力により、微生物の細胞壁を破壊して可溶化することを特徴とする請求項1記載の汚泥減容化装置。
(請求項4)
前記空洞部(94)に送られる汚泥の圧力は、0.05~0.25MPaの範囲であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の汚泥減容化装置。
(請求項5)
前記硝化槽(2)と前記固液分離手段(3)の間に、二次脱窒槽(4)を備えることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の汚泥減容化装置。
(請求項6)
汚泥再生処理を含むし尿処理施設に適用されることを特徴とする請求項1~5の何れかに記載の汚泥減容化装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、返送汚泥ポンプラインに、噴流ノズルを組み込むことで、新たなポンプを追加することなく、汚泥の可溶化が実現できる。
【0014】
これにより、汚泥減容化のための装置の初期コストや投入エネルギー(電気代)を抑制でき、また熱、電気、アルカリや次亜塩素酸などの薬品を使用しないため、汚泥の過度な変質も抑制でき、生物処理、凝集沈殿処理や活性炭処理に対する負荷も小さくすることができる。
【0015】
更に、噴流ノズルに気泡が導入されないので、嫌気状態が必須の脱窒処理に組み込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の汚泥減容化装置の好ましい実施形態を示すブロック図
【
図2】本発明で用いられる噴流ノズルの一実施形態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の汚泥減容化装置の好ましい実施形態を示すブロック図である。
【0018】
図1において、1は、硝酸や亜硝酸を除去する脱窒槽であり、嫌気条件下で脱窒処理が行われるので、外部から脱窒槽1内に空気が混入されない工夫が必要である。
【0019】
2は、有機物を分解処理すると共に窒素成分を硝酸化あるいは亜硝酸化する硝化槽である。有機物は、BODあるいはCODとして検出される成分である。本発明では、有機物は、排水に含まれている有機物や汚泥の可溶化によって生成される有機物が挙げられる。
【0020】
3は、硝化槽2内の汚泥を導入して固液分離する沈殿槽(硝化槽2通過後の汚泥を固液分離する沈殿槽)である。本態様では、重力沈降分離方式の沈殿槽が用いられる。本発明では、固液分離手段であればよく、凝集沈殿方式の沈殿槽や膜分離方式の膜分離槽であってもよい。膜としては、精密ろ過膜などを用いることができる。
【0021】
硝化槽2と沈殿槽3の間には、二次脱窒槽4及び再曝気槽5を配置してもよい。二次脱窒槽4は、脱窒槽1と同様の機能を果たす。再曝気槽5は、硝化槽2と同様の機能を果たす。二次脱窒槽4から再曝気槽5へ汚泥を循環する循環ライン(図示せず)を設けてもよい。
【0022】
沈殿槽3で沈降した汚泥は、返送汚泥ポンプ6を用いて脱窒槽1に返送汚泥ライン7を介して返送される。
【0023】
また硝化槽2内の汚泥は、循環液移送ポンプ(図示せず)を用いて、循環液として、循環液移送ライン8を介して脱窒槽1に移送される。
【0024】
9は、噴流ノズルであり、返送汚泥ライン7に設置される。噴流ノズル9は、外部空気を取り込むことなく、汚泥のみを取り込み、取り込まれた汚泥を可溶化する。噴流ノズルは、循環液移送ライン8に設置することもできる。その際に、噴流ノズルは、返送汚泥ライン7と循環液移送ライン8の両方に設置してもよいし、返送汚泥ライン7のみに設置してもよいし、循環液移送ライン8のみに設置してもよい。
【0025】
返送汚泥ライン7及び循環液移送ライン8は、いずれもポンプが設けられるラインであり、従って、噴流ノズルを設置したとしても、追加のポンプが不要である効果がある。
【0026】
循環液や返送汚泥の汚泥濃度と流量(原水量に対する比)を見ると、循環液移送ラインの循環液は、汚泥濃度は低いが流量が大きいことが特徴であり、返送汚泥ラインは、流量は少ないが汚泥濃度が高いことが特徴である。
【0027】
返送汚泥ラインのみにノズルを設置する場合、流量が小さいことからノズルが比較的小型で済む効果がある。
【0028】
次に、本発明を汚泥再生処理を含むし尿処理施設に適用する場合について説明する。
【0029】
し尿処理施設におけるそれぞれの流量や汚泥濃度は、以下の表1に示す通りである。なお、記載された値は一般的な値であり、必ずしもこの値に固定されるものではない。
【0030】
ここで、汚泥再生処理施設というのは、し尿、浄化槽汚泥及び生ごみ等の有機性廃棄物を併せて処理するとともに資源を回収する施設を意味する。
【0031】
【0032】
表1において、循環液量[倍-原水]および返送汚泥量[倍-原水]は、原水搬入量を1として、その原水搬入量に対する倍率で表す。
【0033】
原水搬入量とは、し尿と浄化槽汚泥の合計量である。また、原水搬入量は、し尿30%、浄化槽汚泥70%の比率(日本全体の平均発生比率と同程度)で計算した値である。
【0034】
表1におけるA方式、B方式、C方式は以下の通りである。
A方式:「標準脱窒素処理方式」…脱窒素槽⇒硝化槽⇒二次脱窒素槽⇒再曝気槽⇒沈殿槽による処理方式
B方式:「高負荷脱窒素処理方式」…脱窒素槽⇒硝化槽⇒二次脱窒素槽⇒再曝気槽⇒沈殿槽による処理方式
C方式:「膜分離高負荷膜脱窒素処理方式」…脱窒素槽⇒硝化槽⇒二次脱窒素槽⇒膜分離槽による処理方式
【0035】
表1における循環液は、硝化槽で硝化された液を、原水由来BODを用いて脱窒する目的で脱窒素槽へ循環される液(循環液移送ラインの循環液のこと)である。
【0036】
また、返送汚泥は、沈殿槽や膜分離槽で濃縮された汚泥を脱窒槽に返送し、各槽の汚泥濃度低下を抑制するためのものである。返送汚泥によって汚泥濃度の低下を抑制し、余剰汚泥引抜によって汚泥濃度の上昇を抑制し、バランスを保つことができる。
【0037】
次に、本発明で用いられる噴流ノズルについて、
図2に基づいて説明する。
【0038】
噴流ノズル9は、内筒90の外周に、外筒91が周設されている。内筒90と外筒91は着脱可能に密接されて固定されている。
【0039】
内筒90は、汚泥入口92を有する先端部93を備え、その前方に空洞部94を備える。空洞部94の前方に後端部95が形成されている。
【0040】
空洞部94は汚泥の圧縮領域であり、その空洞部94の前方中央に、細い筒状空筒部96が形成されている。
【0041】
細い筒状空筒部96の先端97から圧縮汚泥を排出する構造となっている。先端97は、返送汚泥ライン(図示しない配管)に接続される。
【0042】
上記のような構造であるので、外部空気を取り込む構造とはなっておらず、汚泥のみを取り込むことができる構造である。
【0043】
汚泥は、汚泥入口92から導入され、返送汚泥ポンプ(
図1の符号6)により高圧下で膨出空間である空洞部94に送り込まれ、圧縮が促進される。その圧縮された汚泥が、細い筒状空筒部96に送られ微生物に剪断力が働き、さらに先端97から、返送汚泥ラインの配管に送られる際にも微生物に剪断力が働き、微生物の破壊が起こる。その結果、汚泥の可溶化が実現する。
【0044】
以下の表2の「筒状空筒部直径(口径)」は、筒状空筒部96の直径である。
【0045】
噴流ノズル9の材質は、格別限定されないが、耐蝕性を考慮すると、ステンレス金属で形成することが好ましい。
【0046】
本発明において使用できる噴流ノズルの特性の一つである「ノズル標準通水量」と「液体供給孔」の関係を、表2に示す。
【0047】
【0048】
上記表2の通り、小型と大型のノズルで、通水量、筒状空筒部直径(口径)、筒状空筒部断面積は大きく異なる。
【0049】
一方、通水量を断面積で除した「流速」は、ほぼ同様の値となり、ノズルサイズによらずこの傾向は同じである。
【0050】
ここで、標準通水量の場合での圧力は、0.13~0.15MPaであった。本発明においては、標準通水量を下回っても上回ってもよく、ノズルに汚泥を供給して加圧する場合の圧力は、0.05~0.25MPaの範囲の高圧で、微生物の細胞壁の破壊を実現し、可溶化を行う。
【0051】
本発明では、大型、小型にかかわらず、流速は、5m/sec以上が好ましく、より好ましくは、10~25m/secの範囲である。
【0052】
本発明の作用について、
図3に基づいて説明する。
図3は、本発明の装置の作用を説明する図であり、
図3の(A)は、汚泥の減容化が何ゆえに要請されるかについて説明する。
【0053】
同図において、(I)は、汚水を生物処理槽に導入する段階である。処理槽には、〇印で模式的に示されている活性汚泥が懸濁状態で分散している。本件の説明はこの活性汚泥を「汚泥」と称している。
【0054】
次に、浄化処理が進むと(II)の段階となり、浄化の過程で、汚泥が増加する過程(〇印で模式的に示される汚泥の数が増加している)が示されている。
【0055】
次に、(III)の段階に進み、余剰汚泥の引き抜きが行われる。余剰汚泥の量は、従来の標準活性汚泥では、導入有機物量の40~50重量%と言われている。この余剰汚泥は、脱水して場内における堆肥化処理や場外処分(主に焼却処理)されている。この余剰汚泥の脱水、堆肥化処理や場外処分のコストが負担となっている。このため余剰汚泥量の削減のニーズは高い。これが汚泥の減容化が要請される理由である。
【0056】
これに対して、本発明では、
図3の(B)に示すような汚泥の減容化処理が行われる。
【0057】
(I)の段階では、活性汚泥微生物が模式的に示された●が6個だったものが、(II)の段階になると、本発明の噴流ノズルによって微生物が破壊され、微生物●は4個になり、2個が破壊(可溶化)される。
【0058】
その後、(III)の段階になると、可溶化した成分の一部は再び微生物となり、微生物●は5個になる。なお、数値は説明のために用いたもので、実際の減容化率を表すものではない。
【0059】
このようにして本発明の可溶化処理によって、全体としての汚泥発生量は減少する。
【0060】
本発明の噴流ノズルの中を微生物(汚泥)が通過すると、高圧により、微生物の細胞膜が破壊され、可溶化が生じる。
【0061】
可溶化により、液中に有機物やアンモニアが排出され、液中の有機物やアンモニア濃度が上昇する。これらの有機物やアンモニアは微生物に吸収され再処理される。
【0062】
本発明では、噴流ノズルによる可溶化と、微生物の再処理を組み合わせることにより、汚泥発生量が減少し、汚泥減容化が達成される。
本発明における汚泥の減容化率は、5~30%の範囲が好ましく、より好ましくは、10~20%の範囲である。
【0063】
本発明の汚泥減容化装置は、生物処理を行う水処理施設全般に適用可能であり、特にし尿処理(汚泥再生)施設や、メタン発酵施設への適用が好ましい例として挙げられる。
【実施例】
【0064】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、かかる実施例によって限定されない。
【0065】
1.微生物の可溶化試験
図2に示す噴流ノズルを用いて、微生物(汚泥)の可溶化試験を行った結果を説明する。
【0066】
この試験において、処理対象液量(汚泥量)=50L、通水量=25L/minとした。
【0067】
(1)SSの減少量
試験における汚泥(SS)の減少量は、表3の通りであった。
【0068】
【0069】
(2)SSの減少量と溶解性CODの増加量
一般的に、汚泥の可溶化効果がある場合は、処理によって汚泥(SS)が減少し、溶解性のCODが増加する。
【0070】
別途実施した試験では、SS減少量=700mg/LのときのCOD増加量は、390mg/Lであった。
【0071】
SS減少量を表3に基づき、197mg/Lとした場合、COD増加量は、390×197÷700≒110mg/Lとなる
【0072】
上記より、ノズル通水量1L当たりSSが197mg減少し、溶解性CODは110mg増加することが確認された。(本数値は後述の試算で使用する)
【0073】
仮に100m3/日の通水量の場合、19.7kgのSSが減少し、11.0kgの溶解性CODが増加する。
【0074】
(3)メタノール削減効果及び汚泥減容化効果の試算
BOD(COD)1kgは、メタノール0.86kgに相当する。これは濃度100%の場合であるが、50%の場合は1.72kgとなる。
【0075】
これに基づき、上記「1.微生物の可溶化試験」のデータ(以下、1.バッチ試験データともいう)を使用し、本発明によるメタノール削減効果を算出し、その結果を表4に示す。
【0076】
【0077】
表4において、A方式、B方式、C方式は、表1と同じである。また、BOD=CODとして計算する。メタノール単価は、100円/kg-50%とする。
また、表4における「増加COD量」は、「1.バッチ試験データ」に基づき、「返送汚泥量」は、表1で示した比率に基づく。
【0078】
(4)減容化汚泥量
【0079】
【0080】
表5において、A方式、B方式、C方式は、表1と同じである。搬入量は、し尿=30%、浄化槽汚泥=70%の比率で計算した値である。
また、「減容化汚泥量」は、「1.バッチ試験データ」に基づく。
更に、余剰汚泥発生量は、減容化処理をしない場合に発生する量とする。
【0081】
(5)菌体の再合成(汚泥の再合成)
可溶化した汚泥がその後に再合成されない場合は、表5のようになるが、実際は一部のBOD(COD)や窒素成分が再び菌体となる。
【0082】
再び菌体となる(再合成する)量について、(ア)好気槽に返送する場合と、(イ)嫌気槽に返送する場合で試算する。
【0083】
(ア)好気槽(硝化槽)に返送する場合(曝気処理)
BODと汚泥生成量の関係は以下の式で表される。
(BODと汚泥生成量の関係式)
ΔS=aLr-bSa
【0084】
式中、ΔSは汚泥生成量(kg/日)、aは除去BODの汚泥転換率、Lrは除去BOD量(kg/日)、bは内生呼吸による汚泥の自己酸化率(1/日)、Saは曝気槽内汚泥量(kg)である。なお、表6の汚泥再合成量(ア)において、a=0.5、Lr=汚泥可溶化により増加したBOD(COD)、bは無視小とみなして0として計算した。
【0085】
(イ)嫌気槽(脱窒素槽)に返送する場合(脱窒の有機物源として処理)
脱窒におけるメタノール消費量と菌体合成の関係は以下の式で表される。
【0086】
(脱窒におけるメタノール消費量と菌体合成の関係式)
NO3
-+1.08CH3OH+H+→0.065C5H7NO2+0.47N2↑+0.76CO2+2.44H2O
【0087】
式中、CH3OHはメタノール、C5H7NO2は菌体である。したがって、メタノール添加量の0.21倍量の菌体が合成される。
【0088】
(6)汚泥の再合成量
【0089】
【0090】
可溶化した汚泥を嫌気槽(脱窒素槽)に返送すると、好気槽(硝化槽)に返送する場合より汚泥の再合成量を0.36倍に抑制可能になる。
【0091】
従来技術では、下水処理場を想定しており、好気槽に戻す方法が主体である。本発明は汚泥の再合成量を抑制できる点のメリットがあり、さらにメタノール削減効果もある。
【0092】
(7)最終的な汚泥減容化率
汚泥再合成量も含めた最終的な汚泥減容化率は、表7の通りである。
【0093】
【0094】
6.試験結果の整理
以上のラボ試験では、汚泥中の固形物(SS)が7%減少した。
また、ノズル設置による返送汚泥ポンプ電流値の上昇は、1~2%と非常に小さく、ランニングコストの上昇は、電流値上昇分の電気代のみであった。
【0095】
更に同じ可溶化効果を得るためのコストは、アルカリ可溶化によるアルカリコストと比較して約1/250以下であり、また、次亜塩素酸可溶化による次亜塩素酸コストと比較して約1/500以下であった。
【0096】
また、ラボ試験のノズル最小部口径は6mmであったが、1か月の余剰汚泥通水試験で、一度も閉塞しなかった。実機ではより口径の大きいノズルを使用するため、さらに閉塞リスクは低下し、長期間の運転に適していると考えられる。
【符号の説明】
【0097】
1:脱窒槽
2:硝化槽
3:沈殿槽
4:二次脱窒槽
5:再曝気槽
6:返送汚泥ポンプ
7:返送汚泥ライン
8:循環液移送ライン
9:噴流ノズル
90:内筒
91:外筒
92:汚泥入口
93:先端部
94:空洞部
95:後端部
96:筒状空筒部
97:先端
【要約】
【課題】費用対効果の高く、気泡によるノズルの閉塞がなく、生物処理に嫌気状態が必須の脱窒処理を組み込むことができる汚泥減容化装置を提供すること。
【解決手段】脱窒槽1と、硝化槽2と、硝化槽2通過後の汚泥を固液分離する固液分離手段と、固液分離手段で分離された汚泥を脱窒槽1に返送汚泥ライン7を介して返送する返送汚泥ポンプ6とを備え、返送汚泥ライン7に、外部空気を取り込むことなく、返送汚泥のみを取り込み、取り込まれた汚泥を可溶化する噴流ノズル9を設置することを特徴とする汚泥減容化装置。
【選択図】
図1