(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】中枢神経系に沿って治療するためのシステム、カテーテル、および方法
(51)【国際特許分類】
A61M 1/00 20060101AFI20220708BHJP
【FI】
A61M1/00 140
(21)【出願番号】P 2021500092
(86)(22)【出願日】2019-07-02
(86)【国際出願番号】 US2019040285
(87)【国際公開番号】W WO2020010074
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-02-24
(32)【優先日】2018-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520306831
【氏名又は名称】ミネトロニクス ニューロ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MINNETRONIX NEURO,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】キャンベル、スーザン ローズマリー
(72)【発明者】
【氏名】ダルバンディ、ベジャン マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ゴーマン、ジョン レオナード
(72)【発明者】
【氏名】ヘドストローム、ブレイク アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】モンドリー、ジャック マイケル
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0094644(US,A1)
【文献】国際公開第2017/023419(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脳脊髄液の流れ制御システムであって、
流体回路に沿って脳脊髄液をポンプ輸送するように構成されたポンプと、
前記ポンプと連通する流体ラインであって、患者から脳脊髄液を受け取るように構成された入口と、状態調整された脳脊髄液を患者に供給するように構成された出口と、前記流体ラインの入口からポンプまでおよび前記ポンプから前記流体ラインの出口までの前記流体回路に沿った脳脊髄液の移動を可能にするように構成されたルーメンと、を有する前記流体ラインと、
前記流体ラインのルーメンと連通するセンサーであって、前記ポンプの下流の位置にある前記流体ラインのルーメン内の圧力に関連する測定値を検知するように構成される前記センサーと、
前記センサーおよび前記ポンプと通信するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記センサーによって検知された測定値に基づくデルタ値に基づいて前記ポンプの動作を制御するように構成され、前記デルタ値は、時刻Tにおいて前記センサーによって検知された測定値に基づく値と、時刻Tから時間間隔Nを引いた前の時刻において前記センサーによって検知された測定値に基づく値との差分であり、
前記コントローラは、
時刻Tにおいて前記センサーによって検知された前記測定値に基づく値が閾値に達していないときの第1の制御プロトコルと、
時刻Tにおいて前記センサーによって検知された前記測定値に基づく値が前記閾値に達したかまたはそれを超えたときの第1の制御プロトコルとは異なる第2の制御プロトコルと、に従って前記ポンプの動作を制御するように構成されており、
前記コントローラは、前記デルタ値に基づいて前記閾値を決定するように構成されている、流れ制御システム。
【請求項2】
前記時間間隔Nは5分に等しい、請求項
1に記載の流れ制御システム。
【請求項3】
前記コントローラは、前記ポンプが動作している連続時間の長さに基づいて前記閾値を調整するように構成されている、請求項
1または
2に記載の流れ制御システム。
【請求項4】
前記コントローラは、前記第1の制御プロトコルに従って前記ポンプの動作を制御するとき、前記閾値が第1の閾値であり、前記コントローラは、
前記センサーによって検知された測定値に基づく値を、前記デルタ値に基づく第2の閾値と比較し、
前記センサーによって検知された測定値に基づく値が前記第2の閾値に達していないかまたはそれを超えていない場合、前記コントローラは、前記ポンプのポンプ速度を第1の所定量で増加させ、
前記センサーによって検知された測定値に基づく値が前記第2の閾値に達したかまたはそれを超えた場合、前記コントローラは、前記ポンプのポンプ輸送速度を第2の所定量で増加させるように構成されている、請求項
1~
3のいずれか一項に記載の流れ制御システム。
【請求項5】
前記コントローラが前記第1の制御プロトコルに従って前記ポンプの動作を制御している時間量を計時するタイマーをさらに備え、
前記コントローラが、前記ポンプのポンプ輸送速度を第1の所定量および第2の所定量の一方で増加させ且つ前記ポンプ輸送速度の増加がゼロ以下である場合、前記コントローラは、前記タイマーを停止し、前記デルタ値を再計算するように構成されている、請求項
4に記載の流れ制御システム。
【請求項6】
タイマーをさらに備え、
前記第2の制御プロトコルに従って前記ポンプの動作を制御するとき、前記タイマーは、前記コントローラが前記第2の制御プロトコルに従って前記ポンプの動作を制御していた時間量を計時するように構成されており、
前記コントローラは、前記タイマーが動作しているかどうかを判定し、
前記コントローラが、前記タイマーが動作していないと判定すると、前記コントローラは、前記タイマーを起動して前記デルタ値を再計算するように構成されている、請求項
1~
4のいずれか一項に記載の流れ制御システム。
【請求項7】
前記センサーの下流の位置で前記流体ラインのルーメンから脳脊髄液を受け取るように構成されたフィルターモジュールをさらに備える請求項1~
6のいずれか一項に記載の流れ制御システム。
【請求項8】
脳脊髄液の状態調整システムであって、
ポンプ輸送速度を有し、流体回路に沿って脳脊髄液をポンプ輸送するように構成されたポンプと、
前記流体回路に沿ってポンプ輸送される脳脊髄液を受け取るように構成されたフィルターモジュールと、
前記ポンプと連通する流体ラインであって、患者から脳脊髄液を受け取るように構成された入口と、濾過された脳脊髄液を前記フィルターモジュールから患者に供給するように構成された出口と、前記流体ラインの入口から前記フィルターモジュールまでおよび前記フィルターモジュールから前記流体ラインの出口までの前記流体回路に沿った脳脊髄液の移動を可能にするように構成されたルーメンと、を有する前記流体ラインと、
前記フィルターモジュールの上流の位置で前記流体ラインのルーメンと連通するフィルター圧力センサーであって、前記フィルターモジュールの上流の位置で前記流体ラインのルーメン内の圧力に関連する測定値を検知するように構成されている前記フィルター圧力センサーと、
前記フィルター圧力センサーおよび前記ポンプと通信するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記フィルター圧力センサーによって検知された測定値に基づく値および前記コントローラによって計算されたデルタ値のうちの1つまたは両方に基づいて前記ポンプの動作を制御するように構成され、前記デルタ値は、時刻Tにおいて前記フィルター圧力センサーによって検知された測定値に基づく値と、時刻Tから時間間隔Nを引いた前の時刻において前記フィルター圧力センサーによって検知された測定値に基づく値との差分であ
り、
前記コントローラは、
時刻Tにおいて前記フィルター圧力センサーによって検知された前記測定値に基づく値が閾値に達していないときの第1の制御プロトコルと、
時刻Tにおいて前記フィルター圧力センサーによって検知された前記測定値に基づく値が前記閾値に達したかまたはそれを超えたときの第1の制御プロトコルとは異なる第2の制御プロトコルと、に従って前記ポンプの動作を制御するように構成されており、
前記コントローラは、前記デルタ値に基づいて前記閾値を決定するように構成されている、状態調整システム。
【請求項9】
前記フィルターモジュールは、
濾過された脳脊髄液の第1の出力を出力し、第1の廃棄物流体を出力するように構成された第1のフィルターと、
前記第1のフィルターの下流にある第2のフィルターであって、第1の廃棄物流体を受け取り、濾過された脳脊髄液の第2の出力を出力し、最終廃棄物流体を出力するように構成された前記第2のフィルターと、を含む、請求項
8に記載の状態調整システム。
【請求項10】
前記フィルターモジュールは、第1の接線流濾過および第2の接線流濾過を含み、前記第2の接線流濾過が、前記第1の接線流濾過の下流の位置で流体ラインに沿って配置される、請求項
8または請求項
9に記載の状態調整システム。
【請求項11】
前記ポンプは、前記フィルターモジュールの上流の位置で前記流体ラインに沿って配置される、請求項
8~
10のいずれか一項に記載の状態調整システム。
【請求項12】
前記フィルター圧力センサーが前記流体ラインのルーメンと連通している前記フィルターモジュールの上流の位置は、前記ポンプの下流である、請求項
8~
11のいずれか一項に記載の状態調整システム。
【請求項13】
前記コントローラと通信し、前記ポンプおよび前記フィルターモジュールの下流の位置で前記流体ラインのルーメンと連通する出口圧力センサーをさらに備え、
前記コントローラは、前記出口圧力センサーによって検知された測定値に基づく値が所定の閾値に達したかまたはそれを超えたときに前記ポンプをシャットダウンするように構成されている、請求項
8~
12のいずれか一項に記載の状態調整システム。
【請求項14】
前記コントローラは、前記第1の制御プロトコルに従って前記ポンプの動作を制御するとき、前記閾値が第1の閾値であり、前記コントローラは、
前記フィルター圧力センサーによって検知された測定値に基づく値を、前記デルタ値に基づく第2の閾値と比較し、
前記フィルター圧力センサーによって検知された測定値に基づく値が前記第2の閾値に達していないかまたはそれを超えていない場合、前記コントローラは、前記ポンプのポンプ輸送速度を第1の所定量で増加させ、
前記フィルター圧力センサーによって検知された測定値に基づく値が前記第2の閾値に達したかまたはそれを超えた場合、前記コントローラは、前記ポンプのポンプ輸送速度を第2の所定量で増加させるように構成されている、請求項
8~13のいずれか一項に記載の状態調整システム。
【請求項15】
コンピューティングデバイスによって使用するためのプログラムコードを非一時的な状態で格納したコンピュータ可読媒体であって、前記プログラムコードは、前記コンピューティングデバイスに脳脊髄液フィルターモジュールを通る流体の流れを制御する方法を実行させ、前記方法は、
脳脊髄液をポンプ輸送して流体ラインを介してフィルターモジュールを通過させるために制御信号をポンプに出力すること、
前記フィルターモジュールの上流の位置における前記流体ラインのルーメン内の圧力に関連する測定値に基づく値を決定すること、
前記制御信号を設定して前記ポンプのポンプ輸送速度を調整することであって、前記制御信号の設定は、前記フィルターモジュールの上流の位置における前記流体ラインのルーメン内の圧力に関連する測定値に基づく値およびデルタ値の一方又は両方に基づいており、前記デルタ値は、時刻Tにおいて前記フィルターモジュールの上流の位置で検知された前記流体ラインのルーメン内の圧力に関連する測定値に基づく値と、時刻Tから時間間隔Nを引いた前の時刻において前記フィルターモジュールの上流の位置で検知された前記流体ラインのルーメン内の圧力に関連する測定値に基づく値との差分である、前記ポンプのポンプ輸送速度を調整すること、
前記デルタ値に基づいて閾値を自動的に決定すること、を備
え、
前記制御信号を設定することは、
時刻Tにおける前記流体ラインのルーメン内の圧力に関連する測定値に基づく値が前記閾値に達していない場合、第1の制御プロトコルに従って前記制御信号を設定すること、
時刻Tにおける前記流体ラインのルーメン内の圧力に関連する測定値に基づく値が前記閾値に達したかまたはそれを超えた場合、前記第1の制御プロトコルと異なる第2の制御プロトコルに従って前記制御信号を設定すること、を含む、コンピュータ可読媒体。
【請求項16】
前記方法は、
前記ポンプが動作していた連続時間の長さに基づいて前記閾値を自動的に調整すること、をさらに備える、請求項
15に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項17】
前記閾値が第1の閾値であり、
前記第1の制御プロトコルに従って前記制御信号を設定することは、
時刻Tにおける前記流体ラインのルーメン内の圧力に関連する測定値に基づく値を、前記デルタ値に基づく第2の閾値と比較すること、
時刻Tにおける前記流体ラインのルーメン内の圧力に関連する測定値に基づく値が前記第2の閾値に達していないかまたはそれを超えていない場合、前記ポンプのポンプ輸送速度を第1の所定量で増加させること、
時刻Tにおける前記流体ラインのルーメン内の圧力に関連する測定値に基づく値が前記第2の閾値に達したかまたはそれを超えた場合、前記ポンプのポンプ輸送速度を第2の所定量で増加させること、をさらに含む、請求項
15または16に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項18】
前記方法は、
前記ポンプおよび前記フィルターモジュールの上流の位置における前記流体ラインのルーメン内の圧力に関連する測定値に基づく値が所定値に達したかまたはそれを超えた場合、前記ポンプをシャットダウンするように前記制御信号を設定すること、をさらに備える、請求項
15~
17のいずれか一項に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項19】
前記方法は、
前記ポンプおよび前記フィルターモジュールの下流の位置における前記流体ラインのルーメン内の圧力に関連する測定値に基づく値が所定の閾値に達したかまたはそれを超えた場合、前記ポンプをシャットダウンするように前記制御信号を設定すること、をさらに備える、請求項
15~
18のいずれか一項に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項20】
前記ポンプの動作を自動的に制御することは、時間の経過とともに繰り返される制御ループを使用して前記ポンプの動作を制御することを含む、請求項
15~
19のいずれか一項に記載のコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国特許法第119条の下で2018年7月2日に出願された米国仮特許出願第62/693,225号に対する優先権の利益を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、中枢神経系に沿って治療を行うためのシステム、カテーテル、及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
種々様々な医療用デバイスが医療用に開発されてきた。これらのデバイスのうちのいくつかは、ガイドワイヤ、カテーテルなどを備えている。これらのデバイスは様々な異なる製造方法のうち任意の1つによって製造され、かつ様々な方法のうち任意の1つに従って使用されうる。既知の医療用デバイス及び方法のうち、各々がある一定の長所及び欠点を有している。代替的医療用デバイス並びに医療用デバイスを製造及び使用するための代替法を提供することが、現在もなお必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
この開示は、医療用デバイスの構成、材料、製造方法、およびの使用代替物を提供する。例1。脳脊髄液の流れ制御システムが開示される。該システムは、流体回路に沿って脳脊髄液をポンプ輸送するように構成されたポンプと、前記ポンプと連通する流体ラインであって、患者から脳脊髄液を受け取るように構成された入口と、状態調整された脳脊髄液を患者に供給するように構成された出口と、前記流体ラインの入口からポンプまでおよび前記ポンプから前記流体ラインの出口までの前記流体回路に沿った脳脊髄液の移動を可能にするように構成されたルーメンと、を有する前記流体ラインと、前記流体ラインのルーメンと連通するセンサーであって、前記ポンプの下流の位置にある前記流体ラインのルーメン内の圧力に関連する測定値を検知するように構成される前記センサーと、前記センサーおよび前記ポンプと通信するコントローラと、を含む。前記コントローラは、前記センサーによって検知された測定値に基づいて前記ポンプの動作を制御するように構成されていることができる。
【0005】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記コントローラは、前記センサーによって検知された測定値に基づくデルタ値に基づいて前記ポンプの動作を制御するように構成され、前記デルタ値は、時刻Tにおいて前記センサーによって検知された測定値に基づく値と、時刻Tから時間間隔Nを引いた前の時刻において前記センサーによって検知された測定値に基づく値との差分であることができる。
【0006】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、時間間隔Nは5分に等しくてもよい。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、コントローラは、時刻Tにおいて前記センサーによって検知された前記測定値に基づく値が閾値に達していないときの第1の制御プロトコルと、時刻Tにおいて前記センサーによって検知された前記測定値に基づく値が前記閾値に達したかまたはそれを超えたときの第1の制御プロトコルとは異なる第2の制御プロトコルと、に従って前記ポンプの動作を制御するように構成されていることができる。
【0007】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記コントローラは、前記デルタ値に基づいて前記閾値を決定するように構成されていることができる。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記コントローラは、前記ポンプが動作している連続時間の長さに基づいて前記閾値を調整するように構成されていることができる。
【0008】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記コントローラは、前記第1の制御プロトコルに従って前記ポンプの動作を制御するとき、前記閾値が第1の閾値であり、前記コントローラは、前記センサーによって検知された測定値に基づく値を、前記デルタ値に基づく第2の閾値と比較するように構成されていることができる。前記センサーによって検知された測定値に基づく値が前記第2の閾値に達していないかまたはそれを超えていない場合、前記コントローラは、前記ポンプのポンプ輸送速度を第1の所定量で増加させることができる。前記センサーによって検知された測定値に基づく値が前記第2の閾値に達したかまたはそれを超えた場合、前記コントローラは、前記ポンプのポンプ輸送速度を第2の所定量で増加させることができる。
【0009】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記第1の所定量および前記第2の所定量は、前記デルタ値に基づくことができる。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記システムは、前記コントローラが前記第1の制御プロトコルに従って前記ポンプの動作を制御していた時間量を計時するタイマーを含むことができ、前記コントローラが、前記ポンプの前記コントローラが前記第1の制御プロトコルに従って前記ポンプの動作を制御している時間量を計時するタイマーをさらに備え、第1の所定量および第2の所定量の一方で増加させ且つ前記ポンプ輸送速度の増加がゼロ以下である場合、前記コントローラは、前記タイマーを停止し、前記デルタ値を再計算するように構成されていることができる。
【0010】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記コントローラが、前記ポンプのポンプ輸送速度を第1の所定量および第2の所定量の一方で増加させ且つ前記ポンプ輸送速度の増加がゼロよりも大きい場合、前記コントローラは、前記タイマーが動作しているかどうかを判定し、前記コントローラが、前記タイマーが動作していないと判定すると、前記コントローラは、前記タイマーを起動して前記デルタ値を再計算するように構成されていることができる。
【0011】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記コントローラが、前記タイマーが動作していると判定すると、前記コントローラは、前記タイマーが満了したかどうかを判定し、前記コントローラが、前記タイマーが満了していないと判定すると、前記コントローラは、前記デルタ値を再計算するように構成されており、前記コントローラが、前記タイマーが満了したと判定すると、前記コントローラは、前記センサーによって検知された測定値に基づく値が前記第2の閾値に達したかまたは到達していないかまたはそれを超えたかまたは超えていないかに基づいて、前記第1の所定量および前記第2の所定量の一方で前記ポンプ輸送速度を増加させるように構成されていることができる。
【0012】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記タイマーは第1のタイマーであり、前記システムは第2のタイマーをさらに含み、前記第2の制御プロトコルに従って前記ポンプの動作を制御するとき、前記第2のタイマーは、前記コントローラが前記第2の制御プロトコルに従って前記ポンプの動作を制御していた時間量を計時するように構成されており、前記コントローラは、前記第2のタイマーが動作しているかどうかを判定し、前記コントローラが、前記第2のタイマーが動作していないと判定すると、前記コントローラは、前記第2のタイマーを起動して前記デルタ値を再計算するように構成されていることができる。
【0013】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記コントローラが、前記第2のタイマーが動作していると判定すると、前記コントローラは、前記第2のタイマーが満了したかどうかを判定し、前記コントローラが、前記第2のタイマーが満了していないと判定すると、前記コントローラは、前記デルタ値を再計算するように構成されており、前記コントローラが、前記第2のタイマーが満了したと判定すると、前記コントローラは、前記ポンプ輸送速度を第3の所定量で低下させるように構成されていることができる。
【0014】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記コントローラが、前記第2のタイマーが満了したと判定すると、前記コントローラは、前記第2のタイマーを再起動するように構成されていることができる。
【0015】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記コントローラは、前記第2のタイマーを再起動した後に前記デルタ値を再計算するように構成されることができる。
【0016】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記コントローラは、前記デルタ値に基づいて前記第3の所定量を決定するように構成されていることができる。
【0017】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記第3の所定量は、前記ポンプのポンプ輸送速度のパーセンテージの値であることができる。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記システムはタイマーをさらに含み、前記第2の制御プロトコルに従って前記ポンプの動作を制御するとき、前記タイマーは、前記コントローラが前記第2の制御プロトコルに従って前記ポンプの動作を制御していた時間量を計時するように構成されており、前記コントローラは、前記タイマーが動作しているかどうかを判定し、前記コントローラが、前記タイマーが動作していないと判定すると、前記コントローラは、前記タイマーを起動して前記デルタ値を再計算するように構成されていることができる。
【0018】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記コントローラが、前記タイマーが動作していると判定すると、前記コントローラは、前記タイマーが満了したかどうかを判定し、前記コントローラが、前記タイマーが満了していないと判定すると、前記コントローラは、前記デルタ値を再計算するように構成されており、前記コントローラが、前記タイマーが満了したと判定すると、前記コントローラは、前記ポンプのポンプ輸送速度を所定量で低下させるように構成されていることができる。
【0019】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記コントローラが、前記タイマーが満了したと判定すると、前記コントローラは、前記タイマーを再起動するように構成されていることができる。
【0020】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記コントローラは、前記タイマーを再起動した後に前記デルタ値を再計算するように構成されることができる。
【0021】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記コントローラは、前記デルタ値に基づく動作ゾーンに従って前記ポンプを動作させるように構成されていることができる。
【0022】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記コントローラは、前記動作ゾーンおよびルックアップテーブル内の複数の値に基づいて前記ポンプのポンプ輸送速度を制御するように構成されていることができる。
【0023】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記システムは、前記センサーの下流の位置で前記流体ラインのルーメンから脳脊髄液を受け取るように構成されたフィルターモジュールをさらに備えることができる。
【0024】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記フィルターモジュールは、1つまたは複数の接線流濾過を含むことができる。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記フィルターモジュールは、状態調整された脳脊髄液の第1の出力を出力し、第1の廃棄物流体を出力するように構成された第1のフィルターと、前記第1のフィルターの下流にある第2のフィルターであって、第1の廃棄物流体を受け取り、状態調整された脳脊髄液の第2の出力を出力し、最終廃棄物流体を出力するように構成された前記第2のフィルターと、を含むことができる。
【0025】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記システムは、前記流体ラインと連通し、前記第2のフィルターの下流に配置された廃棄ポンプをさらに備え、前記廃棄ポンプは、前記最終廃棄物流体が前記第2のフィルターから出力される前記廃棄ポンプの輸送速度を少なくとも部分的に制御するように構成されていることができる。
【0026】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記システムは、前記流体ラインと連通し、前記フィルターモジュールの下流に配置された廃棄ポンプをさらに備え、前記廃棄ポンプは、前記廃棄物流体が前記フィルターモジュールから出力される廃棄ポンプ輸送速度を少なくとも部分的に制御するように構成されていることができる。
【0027】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記流体ラインは、前記流体回路内の所望の圧力を維持することを可能にするように構成された複数の管状構成要素を含むことができる。
【0028】
脳脊髄液の状態調整システムが開示される。該システムは、ポンプ輸送速度を有し、流体回路に沿って脳脊髄液をポンプ輸送するように構成されたポンプと、前記流体回路に沿ってポンプ輸送される脳脊髄液を受け取るように構成されたフィルターモジュールと、前記ポンプと連通する流体ラインであって、患者から脳脊髄液を受け取るように構成された入口と、濾過された脳脊髄液を前記フィルターモジュールから患者に供給するように構成された出口と、前記流体ラインの入口から前記フィルターモジュールまでおよび前記フィルターモジュールから前記流体ラインの出口までの前記流体回路に沿った脳脊髄液の移動を可能にするように構成されたルーメンと、を有する前記流体ラインと、前記フィルターモジュールの上流の位置で前記流体ラインのルーメンと連通するフィルター圧力センサーであって、前記フィルターモジュールの上流の位置で前記流体ラインのルーメン内の圧力に関連する測定値を検知するように構成されている前記フィルター圧力センサーと、前記フィルター圧力センサーおよび前記ポンプと通信するコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記フィルター圧力センサーによって検知された測定値に基づく値および前記コントローラによって計算されたデルタ値のうちの1つまたは両方に基づいて前記ポンプの動作を制御するように構成され、前記デルタ値は、時刻Tにおいて前記フィルター圧力センサーによって検知された測定値に基づく値と、時刻Tから時間間隔Nを引いた前の時刻において前記フィルター圧力センサーによって検知された測定値に基づく値との差分である。
【0029】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記フィルターモジュールは、濾過された脳脊髄液の第1の出力を出力し、第1の廃棄物流体を出力するように構成された第1のフィルターと、前記第1のフィルターの下流にある第2のフィルターであって、第1の廃棄物流体を受け取り、濾過された脳脊髄液の第2の出力を出力し、最終廃棄物流体を出力するように構成された前記第2のフィルターと、を含むことができる。
【0030】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記フィルターモジュールは、第1の接線流濾過および第2の接線流濾過を含み、前記第2の接線流濾過が、前記第1の接線流濾過の下流の位置で流体ラインに沿って配置されることができる。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記システムは、前記流体ラインと連通し、前記流体ラインの下流に配置された廃棄ポンプをさらに備え、前記廃棄ポンプは、前記廃棄物流体が前記流体ラインから出力される廃棄ポンプ輸送速度を少なくとも部分的に制御するように構成されていることができる。
【0031】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記ポンプは、前記フィルターモジュールの上流の位置で前記流体ラインに沿って配置されることができる。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記フィルター圧力センサーが前記流体ラインのルーメンと連通している前記フィルターモジュールの上流の位置は、前記ポンプの下流であることができる。
【0032】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記システムは、前記コントローラと通信し、前記ポンプおよび前記フィルターモジュールの上流の位置で前記流体ラインのルーメンと連通する入口圧力センサーをさらに備え、前記コントローラは、前記入口圧力センサーによって検知された測定値に基づく値が所定の閾値に達したかまたはそれを超えたときに前記ポンプをシャットダウンするように構成されていることができる。
【0033】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記システムは、前記コントローラと通信し、前記ポンプおよび前記フィルターモジュールの下流の位置で前記流体ラインのルーメンと連通する出口圧力センサーをさらに備え、前記コントローラは、前記出口圧力センサーによって検知された測定値に基づく値が所定の閾値に達したかまたはそれを超えたときに前記ポンプをシャットダウンするように構成されていることができる。
【0034】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記コントローラは、時刻Tにおいて前記フィルター圧力センサーによって検知された前記測定値に基づく値が閾値に達していないときの第1の制御プロトコルに従って、および時刻Tにおいて前記フィルター圧力センサーによって検知された前記測定値に基づく値が前記閾値に達したかまたはそれを超えたときの第1の制御プロトコルとは異なる第2の制御プロトコルに従って前記ポンプの動作を制御するように構成されていることができる。
【0035】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記コントローラは、前記第1の制御プロトコルに従って前記ポンプの動作を制御するとき、前記閾値が第1の閾値であり、前記コントローラは、前記フィルター圧力センサーによって検知された測定値に基づく値を、前記デルタ値に基づく第2の閾値と比較し、前記フィルター圧力センサーによって検知された測定値に基づく値が前記第2の閾値に達していないかまたはそれを超えていない場合、前記コントローラは、前記ポンプのポンプ輸送速度を第1の所定量で増加させ、前記フィルター圧力センサーによって検知された測定値に基づく値が前記第2の閾値に達したかまたはそれを超えた場合、前記コントローラは、前記ポンプのポンプ輸送速度を第2の所定量で増加させるように構成されていることができる。
【0036】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記システムは、前記コントローラが前記第1の制御プロトコルに従って前記ポンプの動作を制御していた時間量を計時するタイマーをさらに備え、前記コントローラが、前記ポンプのポンプ輸送速度を第1の所定量および第2の所定量の一方で増加させ且つ前記ポンプ輸送速度の増加がゼロ以下である場合、前記コントローラは、前記タイマーを停止し、前記デルタ値を再計算するように構成されていることができる。
【0037】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記コントローラが、前記ポンプのポンプ輸送速度を第1の所定量および第2の所定量の一方で増加させ且つ前記ポンプ輸送速度の増加がゼロよりも大きい場合、前記コントローラは、前記タイマーが動作しているかどうかを判定し、前記コントローラが、前記タイマーが動作していないと判定すると、前記コントローラは、前記タイマーを起動して前記デルタ値を再計算するように構成されていることができる。
【0038】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記コントローラが、前記タイマーが動作していると判定すると、前記コントローラは、前記タイマーが満了したかどうかを判定し、前記コントローラが、前記タイマーが満了していないと判定すると、前記コントローラは、前記デルタ値を再計算するように構成されており、前記コントローラが、前記タイマーが満了したと判定すると、前記コントローラは、前記フィルター圧力センサーによって検知された測定値に基づく値が前記第2の閾値に達したかまたは到達していないかまたはそれを超えたかまたは超えていないかに基づいて、前記第1の所定量および前記第2の所定量の一方で前記ポンプ輸送速度を増加させるように構成されていることができる。
【0039】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記タイマーは第1のタイマーであり、前記システムは第2のタイマーをさらに含み、前記第2の制御プロトコルに従って前記ポンプの動作を制御するとき、前記第2のタイマーは、前記コントローラが前記第2の制御プロトコルに従って前記ポンプの動作を制御していた時間量を計時するように構成されており、前記コントローラは、前記第2のタイマーが動作しているかどうかを判定し、前記コントローラが、前記第2のタイマーが動作していないと判定すると、前記コントローラは、前記第2のタイマーを起動して前記デルタ値を再計算するように構成されていることができる。
【0040】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記コントローラが、前記第2のタイマーが動作していると判定すると、前記コントローラは、前記第2のタイマーが満了したかどうかを判定し、前記コントローラが、前記第2のタイマーが満了していないと判定すると、前記コントローラは、前記デルタ値を再計算するように構成されており、前記コントローラが、前記第2のタイマーが満了したと判定すると、前記コントローラは、前記ポンプ輸送速度を第3の所定量で低下させるように構成されていることができる。
【0041】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記第3の所定量は、前記ポンプのポンプ輸送速度のパーセンテージの値であることができる。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記コントローラが、前記第2のタイマーが満了したと判定すると、前記コントローラは、前記第2のタイマーを再起動するように構成されていることができる。
【0042】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記コントローラは、前記第2のタイマーを再起動した後に前記デルタ値を再計算するように構成されることができる。
【0043】
脳脊髄液フィルターモジュールを通る脳脊髄液の流れを制御する方法が開示される。該方法は、ポンプを用いてポンプ輸送速度で流体ラインを介して第1のフィルターモジュールを通して脳脊髄液をポンプ輸送することであって、前記流体ラインは、患者から脳脊髄液を受け取るように構成された入口と、濾過された脳脊髄液を前記フィルターモジュールから患者に供給するように構成された出口と、前記流体ラインの入口から前記フィルターモジュールまでおよび前記フィルターモジュールから前記流体ラインの出口までの脳脊髄液の移動を可能にするように構成されたルーメンと、を有する、前記脳脊髄液をポンプ輸送すること、前記フィルターモジュールの上流の位置で前記流体ラインのルーメン内の圧力に関連する測定値を検知すること、前記フィルターモジュールの上流位置で検知された前記流体ラインのルーメン内の圧力に関連する測定値に基づく値およびデルタ値の一方又は両方に基づいて前記ポンプの動作を自動的に制御することであって、前記デルタ値は、時刻Tにおいて前記フィルターモジュールの上流の位置で検知された前記流体ラインのルーメン内の圧力に関連する測定値に基づく値と、時刻Tから時間間隔Nを引いた前の時刻において前記フィルターモジュールの上流の位置で検知された前記流体ラインのルーメン内の圧力に関連する測定値に基づく値との差分である、前記ポンプの動作を自動的に制御すること、を備える。
【0044】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記ポンプの動作を自動的に制御することは、時刻Tにおいて前記流体ラインのルーメン内の圧力に関連する測定値に基づく値が閾値に達しない場合、第1の制御プロトコルに従って前記ポンプの動作を制御すること、時刻Tにおいて前記流体ラインのルーメン内の圧力に関連する測定値に基づく値が前記閾値に達したかまたはそれを超えた場合、前記第1の制御プロトコルと異なる第2の制御プロトコルに従って前記ポンプの動作を制御すること、を含むことができる。
【0045】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記方法は、前記デルタ値に基づいて前記閾値を自動的に決定すること、をさらに備えることができる。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記方法は、前記ポンプが動作していた連続時間の長さに基づいて前記閾値を自動的に調整すること、をさらに備えることができる。
【0046】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記第1の制御プロトコルに従って前記ポンプの動作を制御するとき、前記閾値が第1の閾値であり、前記方法は、時刻Tにおける前記流体ラインのルーメン内の圧力に関連する測定値に基づく値を、前記デルタ値に基づく第2の閾値と比較すること、時刻Tにおける前記流体ラインのルーメン内の圧力に関連する測定値に基づく値が前記第2の閾値に達していないかまたはそれを超えていない場合、前記ポンプのポンプ輸送速度を第1の所定量で増加させること、時刻Tにおける前記流体ラインのルーメン内の圧力に関連する測定値に基づく値が前記第2の閾値に達したかまたはそれを超えた場合、前記ポンプのポンプ輸送速度を第2の所定量で増加させること、をさらに備えることができる。
【0047】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記方法は、前記第1の所定量および前記第2の所定量を前記デルタ値に基づいて自動的に決定すること、をさらに備えることができる。
【0048】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記方法は、前記第1の制御プロトコルに従って前記ポンプが制御されていた時間量をタイマーを用いて自動的に計時すること、前記ポンプのポンプ輸送速度が前記第1の所定量および前記第2の所定量の一方で増加され、前記ポンプ輸送速度の増加がゼロ以下である場合、前記第1の制御プロトコルに従って前記ポンプが制御されていた時間量の計時を停止し、前記デルタ値を再計算すること、をさらに備えることができる。
【0049】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記ポンプのポンプ輸送速度が前記第1の所定量および前記第2の所定量の一方で増加され、前記ポンプ輸送速度の増加がゼロより大きい場合、前記方法は、前記タイマーが動作しているかどうかを判定すること、前記タイマーが動作していないと判定された場合、前記タイマーを起動して前記デルタ値を再計算すること、をさらに備えることができる。
【0050】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記方法は、前記タイマーが満了したかどうかを判定すること、前記タイマーが満了したと判定された場合、前記デルタ値を再計算すること、前記タイマーが満了したと判定された場合、前記時刻Tにおける前記流体ラインのルーメン内の圧力に関連する測定値に基づく値が前記第2の閾値に達したかまたは達していないかまたはそれを超えたかまたは超えていないかに基づいて、前記第1の所定量および前記第2の所定量の一方で前記ポンプ輸送速度を増加させること、をさらに備えることができる。
【0051】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記タイマーは第1のタイマーであり、前記方法は、前記第2の制御プロトコルに従って前記ポンプが制御された時間量を前記第2のタイマーで計時すること、前記第2のタイマーが動作しているかどうかを判定することであって、前記第2のタイマーは、前記第2の制御プロトコルに従って前記ポンプが制御されていた時間量を計時するように構成されている、前記判定すること、前記第2のタイマーが動作していないと判定された場合、前記第2のタイマーを起動して前記デルタ値を再計算すること、をさらに備えることができる。
【0052】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記方法は、前記第2のタイマーが動作していると判定された後に前記第2のタイマーが満了したかどうかを判定すること、前記第2のタイマーが満了していないと判定した場合、前記デルタ値を再計算すること、前記第2のタイマーが満了したと判定した場合、前記ポンプ輸送速度を第3の所定量で低下させること、をさらに備えることができる。
【0053】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記方法は、前記第2のタイマーが満了したと判定された場合、前記第2のタイマーを再起動すること、をさらに備えることができる。
【0054】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記方法は、前記第2のタイマーを再起動した後に前記デルタ値を再計算すること、をさらに備えることができる。
【0055】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記方法は、前記デルタ値に基づいて前記第3の所定量を決定すること、をさらに備えることができる。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記方法は、前記第3の所定量を、前記ポンプのポンプ輸送速度のパーセンテージの値に基づいて決定すること、をさらに備えることができる。
【0056】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記第2の制御プロトコルに従って前記ポンプの動作を制御する場合、前記方法は、タイマーが現在、前記第2の制御プロトコルに従って前記ポンプが制御されていた時間量を計時しているかどうかを判定すること、前記タイマーが動作していないと判定された場合、前記タイマーを起動して前記デルタ値を再計算すること、をさらに備えることができる。
【0057】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記方法は、前記タイマーが動作していると判定された場合、前記タイマーが満了したかどうかを判定すること、前記タイマーが満了していないと判定された場合、前記デルタ値を再計算すること、前記タイマーが満了したと判定された場合、前記ポンプ輸送速度を所定量で低下させること、をさらに備えることができる。
【0058】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記方法は、前記ポンプおよび前記フィルターモジュールの上流の位置で前記流体ラインのルーメン内の圧力に関連する測定値を検知すること、前記ポンプおよび前記フィルターモジュールの上流の位置で前記流体ラインのルーメン内の圧力に関連する測定値に基づく値が所定値に達したかまたはそれを超えた場合、前記ポンプをシャットダウンすること、をさらに備えることができる。
【0059】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記方法は、前記ポンプおよび前記フィルターモジュールの下流の位置で前記流体ラインのルーメン内の圧力に関連する測定値を検知すること、前記ポンプおよび前記フィルターモジュールの下流の位置における前記流体ラインのルーメン内の圧力に関連する測定値に基づく値が所定の閾値に達したかまたはそれを超えた場合、前記ポンプをシャットダウンすること、をさらに備えることができる。
【0060】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記ポンプの動作を自動的に制御することは、時間の経過とともに繰り返される制御ループを使用して前記ポンプの動作を制御することを含むことができる。
【0061】
コンピュータ可読媒体はコンピューティングデバイスによって使用するためのプログラムコードを非一時的な状態で格納し、前記プログラムコードは、前記コンピューティングデバイスに脳脊髄液フィルターモジュールを通る流体の流れを制御する方法を実行させる。前記方法は、脳脊髄液をポンプ輸送して流体ラインを介してフィルターモジュールを通過させるために制御信号をポンプに出力すること、前記フィルターモジュールの上流の位置における前記流体ラインのルーメン内の圧力に関連する測定値に基づく値を決定すること、前記制御信号を設定して前記ポンプのポンプ輸送速度を調整することであって、前記制御信号の設定は、前記フィルターモジュールの上流の位置における前記流体ラインのルーメン内の圧力に関連する測定値に基づく値およびデルタ値の一方又は両方に基づいており、前記デルタ値は、時刻Tにおいて前記フィルターモジュールの上流の位置で検知された前記流体ラインのルーメン内の圧力に関連する測定値に基づく値と、時刻Tから時間間隔Nを引いた前の時刻において前記フィルターモジュールの上流の位置で検知された前記流体ラインのルーメン内の圧力に関連する測定値に基づく値との差分である、前記ポンプのポンプ輸送速度を調整すること、を備える。
【0062】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記制御信号を設定することは、時刻Tにおける前記流体ラインのルーメン内の圧力に関連する測定値に基づく値が閾値に達していない場合、第1の制御プロトコルに従って前記制御信号を設定すること、時刻Tにおける前記流体ラインのルーメン内の圧力に関連する測定値に基づく値が前記閾値に達したかまたはそれを超えた場合、前記第1の制御プロトコルと異なる第2の制御プロトコルに従って前記制御信号を設定すること、を含むことができる。
【0063】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記方法は、前記デルタ値に基づいて前記閾値を自動的に決定すること、をさらに備えることができる。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記方法は、前記ポンプが動作していた連続時間の長さに基づいて前記閾値を自動的に調整すること、をさらに備えることができる。
【0064】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記閾値が第1の閾値であり、前記第1の制御プロトコルに従って前記制御信号を設定することは、時刻Tにおける前記流体ラインのルーメン内の圧力に関連する測定値に基づく値を、前記デルタ値に基づく第2の閾値と比較すること、時刻Tにおける前記流体ラインのルーメン内の圧力に関連する測定値に基づく値が前記第2の閾値に達していないかまたはそれを超えていない場合、前記ポンプのポンプ輸送速度を第1の所定量で増加させること、時刻Tにおける前記流体ラインのルーメン内の圧力に関連する測定値に基づく値が前記第2の閾値に達したかまたはそれを超えた場合、前記ポンプのポンプ輸送速度を第2の所定量で増加させること、をさらに含むことができる。
【0065】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記方法は、前記第1の所定量および前記第2の所定量を前記デルタ値に基づいて自動的に決定すること、をさらに備えることができる。
【0066】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記方法は、前記第1の制御プロトコルに従って前記ポンプが制御されていた時間量をタイマーを用いて自動的に計時すること、前記ポンプのポンプ輸送速度を前記第1の所定量および前記第2の所定量の一方で増加させ、前記ポンプ輸送速度の増加がゼロ以下である場合、前記第1の制御プロトコルに従って前記ポンプが制御されていた時間量の計時を停止し、前記デルタ値を再計算すること、をさらに備えることができる。
【0067】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記制御信号が、前記ポンプのポンプ輸送速度が前記第1の所定量および前記第2の所定量の一方で増加させるように設定され、前記ポンプ輸送速度の増加がゼロより大きい場合、前記方法は、前記タイマーが動作しているかどうかを判定すること、前記タイマーが動作していないと判定された場合、前記タイマーを起動して前記デルタ値を再計算すること、をさらに備えることができる。
【0068】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記方法は、前記タイマーが満了したかどうかを判定すること、前記タイマーが満了したと判定された場合、前記デルタ値を再計算すること、前記タイマーが満了した場合、前記時刻Tにおける前記流体ラインのルーメン内の圧力に関連する測定値に基づく値が前記第2の閾値に達したかまたは達していないかまたはそれを超えたまたは超えていないかに基づいて、前記第1の所定量および前記第2の所定量の一方で前記ポンプ輸送速度を増加させるように前記制御信号を設定すること、をさらに備えることができる。
【0069】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記タイマーは第1のタイマーであり、前記方法は、前記第2のタイマーが動作しているかどうかを判定することであって、前記第2のタイマーは、前記第2の制御プロトコルに従って前記ポンプが制御されていた時間量を計時するように構成されている、前記判定すること、前記第2のタイマーが動作していないと判定した場合、前記第2のタイマーを起動して前記デルタ値を再計算すること、をさらに備えることができる。
【0070】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記方法は、前記第2のタイマーが動作していると判定された後に前記第2のタイマーが満了したかどうかを判定すること、前記第2のタイマーが満了していないと判定した場合、前記デルタ値を再計算すること、前記第2のタイマーが満了したと決定された場合、前記ポンプ輸送速度を第3の所定の量で低下させるように前記制御信号を設定すること、をさらに備えることができる。
【0071】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記方法は、前記第2のタイマーが満了したと判定された場合、前記第2のタイマーを再起動すること、をさらに備えることができる。
【0072】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記方法は、前記第2のタイマーを再起動した後に前記デルタ値を再計算すること、をさらに備えることができる。
【0073】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記方法は、前記デルタ値に基づいて前記第3の所定量を決定すること、をさらに備えることができる。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記方法は、前記第3の所定量を、前記ポンプのポンプ輸送速度のパーセンテージの値に基づいて決定すること、をさらに備えることができる。
【0074】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記制御信号が、前記第2の制御プロトコルに従って前記ポンプの動作を制御するように設定された場合、前記方法は、タイマーが現在、前記第2の制御プロトコルに従って前記ポンプが制御されていた時間量を計時しているかどうかを判定すること、前記タイマーが動作していないと判定された場合、前記タイマーを起動して前記デルタ値を再計算すること、をさらに備えることができる。
【0075】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記方法は、前記タイマーが動作していると判定された場合、前記タイマーが満了したかどうかを判定すること、前記タイマーが満了していないと判定された場合、前記デルタ値を再計算すること、前記タイマーが満了したと判定された場合、前記ポンプ輸送速度を所定量で低下させるように前記制御信号を設定すること、をさらに備えることができる。
【0076】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記方法は、前記ポンプおよび前記フィルターモジュールの上流の位置における前記流体ラインのルーメン内の圧力に関連する測定値に基づく値が所定値に達したかまたはそれを超えた場合、前記ポンプをシャットダウンするように前記制御信号を設定すること、をさらに備えることができる。
【0077】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記方法は、前記ポンプおよび前記フィルターモジュールの下流の位置における前記流体ラインのルーメン内の圧力に関連する測定値に基づく値が所定の閾値に達したかまたはそれを超えた場合、前記ポンプをシャットダウンするように前記制御信号を設定すること、をさらに備えることができる。
【0078】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、前記ポンプの動作を自動的に制御することは、時間の経過とともに繰り返される制御ループを使用して前記ポンプの動作を制御することを含むことができる。
【0079】
脳脊髄液のポンプおよび濾過システムを通る脳脊髄液の流れを制御する方法が開示される。該方法は、ポンプを用いてポンプ輸送速度で流体ラインを通して脳脊髄液をポンプ輸送する前記流体ラインを加圧すること、前記ポンプの下流の位置で前記流体ラインのルーメン内の圧力に関連する測定値を検知すること、前記ポンプの下流の位置で検知された前記流体ラインのルーメン内の圧力に関連する測定値に基づいて、前記流体ライン内の圧力減衰率を決定すること、決定された圧力減衰率を閾値圧力減衰と比較すること、前記決定された圧力減衰率が前記閾値圧力減衰に達したかまたはそれを超えた場合、前記流体ラインの漏洩を示すための制御信号を出力すること、を備えることができる。
【0080】
脳脊髄液のポンプおよび濾過システムを通る脳脊髄液の流れを制御する方法が開示される。該方法は、第1のセンサーで、脳脊髄液のポンプおよび濾過システムの流体ラインのルーメン内の圧力に関連する第1の測定値を検知することであって、前記第1のセンサーは、前記流体ラインに沿った第1の位置に配置されている、前記第1の測定値を検知すること、第2のセンサーで、前記流体ラインのルーメン内の圧力に関連する第2の測定値を検知することであって、前記第2のセンサーは、前記流体ラインに沿った第2の位置に配置されている、前記第2の測定値を検知すること、前記第1の測定値と前記第2の測定値との差分を決定すること、前記第1の測定値と前記第2の測定値との差分と、閾値差分とを比較すること、前記第1の測定値と前記第2の測定値との差分が前記閾値差分に達したかまたはそれを超えた場合に、漏洩または障害物の位置を示す制御信号を出力すること、を備える。
【0081】
脳脊髄液のポンプおよび濾過システムのフィルターモジュールを洗い流す方法が開示される。該方法は、前記脳脊髄液のポンプおよび濾過システムのポンプのポンプ速度で、前記脳脊髄液のポンプおよび濾過システムの流体ラインを通して流体をポンプ輸送すること、廃棄制御機構の廃棄ポンプ速度を前記ポンプのポンプ速度に等しくなるように設定すること、前記廃棄ポンプ機構の前記廃棄ポンプ速度を前記ポンプのポンプ速度に等しくなるように設定した後の所定の期間において、前記廃棄制御機構の前記廃棄ポンプ速度を前記ポンプのポンプ速度よりも遅い値に設定すること、を備える。
【0082】
いくつかの実施形態の上記した要約は、本開示の開示された各実施形態またはすべての実装を説明することを意図していない。以下の図面および詳細な説明は、これらの実施形態をより具体的に例示する。
【図面の簡単な説明】
【0083】
本開示は、添付の図面に関連して以下の詳細な説明を考慮すると、より完全に理解され得る。
【
図1】
図1は、例示的なポンプ/濾過システムの概略図である。
【
図2】
図2は、例示的なポンプ/濾過システムの概略図である。
【
図3】
図3は、ポンプ/濾過システムと共に使用するように構成された例示的なカテーテルの概略図である。
【
図4】
図4は、ポンプ/濾過システムの例示的な制御システムの概略ブロック図である。
【
図5】
図5は、例示的な流れ制御プロセスの概略フロー図である。
【
図6】
図6は、例示的な流れ制御テーブルの概略図である。
【
図7】
図7は、ポンプの動作を制御する際に使用する例示的な第1の流れ制御プロトコルの概略フロー図である。
【
図8】
図8は、ポンプの動作を制御する際に使用する例示的な第2の流れ制御プロトコルの概略フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0084】
本開示は、様々な修正形態および代替形態が可能であるが、その詳細は、例として図面に示されており、詳細に説明される。しかしながら、その意図は、記載された特定の実施形態に本開示を限定することではないことを理解されたい。それどころか、その意図は、本開示の趣旨および範囲に含まれるすべての修正、均等物、および代替物を網羅することである。
【0085】
脳脊髄液(Cerebrospinal fluid : CSF)は、脳内の脳室、具体的には脈絡叢で生産される、一般に透明で無色の流体である。脈絡叢は、1日に数回生じる毒素及び代謝産物を除去するためのCSFの洗い流し(flushing)又は再利用(recycling)に対応するために、毎日およそ500ミリリットルのCSFを生産する。脈絡叢から、CSFは流路(管)を通って脳及び脊柱を取り囲む空間に入り、その後身体内へと、ゆっくり流れる。CSFは、脳軟膜とクモ膜との間の、クモ膜下腔として知られる空間に見出される。CSFはさらに、脊髄の中心管と連続している脳内の脳室系の中及び周囲においても見出される。脳卒中又はその他の脳損傷の場合には、ある1つの位置(例えば脊柱の頚部、又は脳室)からCSFを取り出し、これを濾過し、かつそれを第2の位置(例えば脊柱の腰部)においてCSF腔に返戻することが望ましい可能性がある。しかしながら、CSF腔に医療機器を正確に送り込むことは非常に難易度が高い可能性がある。
【0086】
本開示は、脳脊髄液(CSF)の取り出し、交換及び再循環に関する。本明細書中に開示されるデバイス、システム及び方法は、CSFが身体を流れる場である脳及び脊髄並びにその周囲の空間(CSF腔としても知られる)を、安全かつ効率的に通行するために使用される。専用のデバイス及びシステムは、出入りが困難な場所であること、及びもし誤りがあれば生命を脅かす結果となる可能性から、CSF腔を通行するために有用であり場合によっては必須である。安全性及び効能の向上は、手術室で費やされる時間及び合併症の可能性を縮小し、患者の手術からの回復を向上させる。
【0087】
Neurapheresis(商標)治療及び他の濾過治療は、CSFからの物質(例えば微生物、細胞、ウイルス、外来物質、薬物、これらの組み合わせなど)の除去をもたらし得る。これらの濾過治療及びその他の治療技法は、多くの神経系の疾患又は状態、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、様々な原因による脳炎、様々な原因による髄膜炎、ギラン‐バレー症候群(GBS)、多発性硬化症(MS)、HIV関連神経認知障害、脊髄損傷、外傷性脳損傷、脳血管痙攣、卒中及びその他の疾患又は状態、を治療するために使用可能である。
【0088】
精製、状態調整、及び化合物除去のうち少なくともいずれかのスキーマ又はシステム(例えば、濾過治療)は、広範囲にわたる生化学的なパラメータ及び流動に合わせて調整可能である。例えば、スキーマおよび/またはシステムは、具体的な疾患又は疾患群に合わせて適切に、大きさ、親和性、生化学的性質、温度、及びその他の特徴のようないくつかの特徴に基づいて、策定されることが可能である。精製スキーマは、拡散、サイズ排除、固定化された抗体又は抗体フラグメントを使用するex‐vivoの免疫療法、疎水性/親水性、陰イオン性/陽イオン性、高/低結合親和性、キレート化剤、抗菌性、抗ウイルス性、抗DNA/RNA/アミノ酸、酵素系、及び磁気系のシステム並びにナノ粒子を用いるシステムのうち少なくともいずれかに基づくことができる。
【0089】
CSF濾過療法(例えば、Neurapheresis療法)で使用するシステムに関して、開示されるシステムは、CSF流の妨げを最小限として安全かつ迅速にCSF腔にアクセスするために使用可能である。本明細書中に開示されるシステム及びデバイスは、安全かつ迅速な流動回路を提供し、かつ濾過を提供する。
【0090】
本明細書中に開示されたシステム及びデバイスは、安全かつ効率的に、ある1つの位置(例えば脊柱の頚部、又は脳室)からCSFを取り出すためにCSF腔にアクセスし、該CSFを濾過又はその他の方法で処理し、そしてそれをCSF腔に、例えば第2の位置(例えば脊柱の腰部)において返戻するために使用可能である。様々な態様において、本明細書中に開示されたシステム及びデバイスは、内因性の頭蓋内又は脊髄内圧力を生理的範囲内に、例えば、約5~約20mmHg、又は約0~約10mmHg、又は約-5~約10mmHg、又は約-5~約25mmHgに、維持する。本システムはこのようにして、例えば水頭症(脳の脳室内におけるCSFの異常滞留)による脊髄性頭痛を軽減する。本システムはさらに、圧力低下(例えばドレナージ過剰、ヘルニア形成などに起因するもの)によって引き起こされた脊髄性頭痛を軽減するために使用されてもよい。いくつかの態様では、システムは、システム内の障害物又は遮断物を検知するためにカテーテル内又は流動回路内にセンサーを備え、これにより閉ループの圧力制御を提供することができる。様々な態様において、本明細書中に開示されたシステム及びデバイスはさらに、再循環する流動ループの縮小又は削除によりシステムが効率的に働くのを支援する。システム及びデバイスは、入口と出口との間の間隔を、例えば約10cm~約40cmの範囲内に維持する。ある実装では、間隔は約10cm~約30cmの範囲内である。入口及び出口はCSF腔の中の適所に位置付けられて、ポンプの作動又はその他のシステム内における陽圧若しくは陰圧の生成が、カテーテル中に組織が引き込まれる原因となったり引き込まれるのを助長したりしないようになっている。いくつかの局面において、入口および出口は、組織がカテーテルに引き込まれるのを防ぐために、腰椎頸椎槽の近くに配置される。いくつかの態様では、組織がいくつかの穴を塞いでいる場合に備えて、冗長性のために入口および出口に沿って複数の穴があり得る。特定の実施形態では、カテーテルのねじれを低減するために、カテーテル内のコイル状ワイヤの特定のコイルピッチを選択することができる。特定の態様では、入口と出口の間隔は、患者の頸部のレベルより下にとどまりながら最大になるように選択することができる。特定の態様では、入口と出口の間隔は、椎骨の間隔に基づいて選択することができる。例えば、間隔は、入口と出口の間隔が約5つの椎骨から約12の椎骨までの長さの範囲内にあるように選択され得る。ある実装では、椎骨およそ10個の間隔が選択されうるが;しかしながら、その他の構成(本明細書中他所に記述されるものなど)が利用されてもよい。そのような間隔を設計する場合、椎骨はおよそ2~3cmの長さであると仮定されてよいが、また一方でその他の計測値及び設計が使用されてもよい。ある実装では、ルーメンの特定の大きさ、形状、及び他の構成のうち少なくともいずれかは、カテーテルの障害物除去及びカテーテルが閉塞状態に抵抗する能力のうち少なくともいずれか一方を促進するように、選択可能である。例えば、およそ1.52ミリメートル(0.060インチ)~およそ1.78ミリメートル(0.070インチ)の範囲内の、基端側のルーメン外径、及びおよそ0.635ミリメートル(0.025インチ)~およそ1.52ミリメートル(0.060インチ)の範囲内の基端側の内径が、選択されてもよいが;また一方で、その他の構成(本明細書中他所に記述されるものなど)が利用されてもよい。
【0091】
開示されたシステム及びデバイスは、CSF腔にアクセスするために使用され、かつ脊柱の頚部(C1‐C7)、胸部(T1‐T12)、又は腰部(L1‐L5)のうち任意のアクセスポイントで使用可能である。頚部のアクセス部位は、脳内の脳室系にアクセスするために使用可能である。1つの実施形態では、システム及びデバイスは腰部にアクセスするために使用される。いくつかの実施形態では、入口及び出口は、ドレナージのプロセスにより組織がカテーテル中に引き込まれることのないように、脊柱の適所に位置付けられる。例えば、患者が手術台に横たわっている場合、進入は、脊柱にアクセスするために例えば約90度のような適切な角度で行われるとよい。従来のカテーテルは、L4‐L6領域における90度の屈曲部を通して押し込まれるはずである。本明細書中に開示されたカテーテル及び関連する送達デバイスは、それらがこの角度をなした屈曲部についてより容易かつ効率的にアクセス及び通行することが可能であるように、湾曲していてもよい。
【0092】
図に目を向けると、
図1は、ポンプ/濾過システム100を概略的に示している。ポンプ/濾過システム100は、カテーテル(例えば、
図3または他の適切なカテーテルに関して以下で説明されるカテーテル200)に接続し得る入口流体経路102を有し得る。ポンプ/濾過システム100は、直接的に(例えば、ポンプ/濾過システム上のコネクタおよび/またはカテーテル上のコネクタを介して)または中間管または機構を介してカテーテルに接続し得る。
【0093】
ポンプ104は、流体(例えば、CSFまたは他の流体)を、ポンプ/濾過システム100の流体回路に、それに沿って、および/またはそれを通してポンプ輸送することができる。例えば、ポンプ104は、流体を入口流体経路102におよび経路106に沿ってセンサー108にポンプ輸送し得る。ポンプ104は、追加のポンプ機構の有無にかかわらず、ポンプ/濾過システム100を通してCSFをポンプ輸送するように構成され得る。ポンプ/濾過システム100を通って移動するCSFは、その内部にルーメンを有する流体ライン(例えば、ルーメンを形成し、(存在する場合)複数の接続点での流体気密接続によって流体回路内に所望の圧力を維持することを可能にするように構成された管または他の適切な機構)を介して、本明細書に記載された様々な経路(例えば、経路102,106等)を通って流体回路に沿って移動し得る。ここでは、ルーメンは、流体ラインの入口からポンプ104へ、ポンプ104から流体ラインの出口へ、流体回路に沿ったCSFの移動を可能にするように構成され得る。
【0094】
ポンプ104は、ポンプ/濾過システム100を通してCSFをポンプ輸送する任意の適切なタイプのポンプであり得る。例えば、ポンプ104は、患者からポンプ/濾過システム100を通してCSFをポンプ輸送し、患者に戻すように流体ラインに圧力を加えるように構成された蠕動ポンプ(peristaltic pump)または他の適切なポンプであり得る。ポンプ104は、流体ライン内で所望の圧力および/または流量を達成するように構成された単一のポンプまたは複数のポンプであり得る。ポンプ104は、フィルターモジュール112の上流にあるものとして
図1に示されているが、ポンプ104は、フィルターモジュール112に対して1つまたは複数の他の位置に全体的または少なくとも部分的に配置されてもよい。
【0095】
CSFは、ポンプ104から経路106に沿って、ポンプ104の下流のセンサー108に流れることができる。センサー108は、経路106から延びる流体ラインのルーメン内の測定値を検知するように構成され得る。
図1は、単一のセンサー(例えば、センサー108)を備えたポンプ/濾過システム100を示しているが、ポンプ/濾過システム100は、ポンプ/濾過システム100の流体ラインに沿ったまたはそれを通って移動する複数の位置に、必要に応じて、2つのセンサー、3つのセンサー、または複数のセンサーを利用することができる。
【0096】
センサー108は、経路106と経路110との間の流体ラインのルーメン内の圧力に関連する測定値を検知するように構成された任意の適切なセンサーであり得る。例えば、圧力に関連する測定値を検知するように構成されているものとして本明細書に記載されたセンサー108および/または他のセンサーは、圧力センサー、フローセンサー、または流体ラインのルーメン内の圧力に関連する測定値を検知する他の適切なセンサーであり得る。一例では、センサー108は、流体ラインのルーメンと連通し(例えば、流体ラインの壁を介するなどの直接的な連通および/または間接的な連通)、ポンプ104の下流の位置での流体ラインのルーメン内の圧力に関連する測定値を検知するように構成された圧力センサーであり得る。圧力センサーの複数の例は、任意の適切なタイプの圧力センサー要素を含む。一例では、複数の圧力センサー要素は、必要に応じて、絶対圧力検知素子、ゲージ圧力検知素子、または他の圧力検知素子などのMEMS(マイクロエレクトロメカニカルシステム)圧力センサー素子であり得る。
【0097】
流体は、センサー108から経路110に沿ってフィルターモジュール112に流れることができる。フィルターモジュール112は、1つまたは複数のフィルターを有し得る。一例では、フィルターモジュール112は、第1のフィルター114および第2のフィルター116を有し得る。いくつかの事例では、第1のフィルター114および/または第2のフィルター116はそれぞれ、接線流濾過(tangential flow filter : TFF)または他の適切なタイプのフィルターであり得る。例えば、第1のフィルター114および/または第2のフィルター116は、5kDaのTFF、100kDaのTFF、0.2μmのTFF、0.45μmのTFFなどを備えることができる。代替的または追加的には、第1のフィルター114および/または第2のフィルター116は、デッドエンド型フィルター(例えば、5kDaのデッドエンド型フィルター)および/またはエレクトロフィルター(例えば電荷に基づいて物質を除外するフィルター)を備えてもよい。
【0098】
少なくともいくつかの実例では、第1のフィルター114及び第2のフィルター116は、大きさ及び種類のうち少なくともいずれか一方が同じであり得る(例えば、第1のフィルター114及び第2のフィルター116はいずれも100kDaのTFFであり得る)。他の実例では、第1のフィルター114及び第2のフィルター116は大きさ及び種類のうち少なくともいずれか一方が異なっていてもよい(例えば、第1のフィルター114は5kDaのフィルターであり、第2のフィルター116は100kDaのTFFフィルターであり得る)。
【0099】
いくつかの実例では、フィルターモジュール112は、特定のフィルター(例えば第1のフィルター114)のみを含み得る。例えば、第1のフィルター114は5kDaのフィルターであってよく、かつ第1のフィルター114が唯一のフィルターであってよい。代替的には、フィルターモジュール112は、3つ以上のフィルター(例えば、第1のフィルター114、第2のフィルター116、および1つまたは複数の追加のフィルター)を含み得る。
【0100】
第1のフィルター114は、CSFが受け取られた流体である場合、CSFを第1の清浄なCSF118(例えば、状態調整されたCSF)および第1のCSFの廃棄物120に分離するように構成され得る。
図1に示すように、第1のフィルター114からの第1の清浄なCSF118は、経路122を通って清浄CSF出口経路124に進み、第1のフィルター114からの第1のCSFの廃棄物120は、第1の廃棄CSF経路126を通って第2のフィルター116に進むことができる。清浄なCSFの出口経路124は、カテーテルの入口またはポンプ/濾過システム100に接続された別のカテーテルに接続し得る。清浄なCSFの出口経路124間の接続は、直接的な接続(例えば、ポンプ/濾過システム100上のコネクタおよび/またはカテーテル上のコネクタを介した)または中間管または機構を介したものであり得る。
【0101】
第2のフィルター116は、受け取った第1のCSFの廃棄物120を清浄なCSF128(例えば、状態調整されたCSF)とCSFの廃棄物130(例えば、最終廃棄物流体)に分離するように構成され得る。
図1に示されるように、第2のフィルター116からの清浄なCSF128は、経路132を通って清浄CSF出口経路124に進み、第2のフィルター116からのCSFの廃棄物130は、経路134を通って(例えば、コントローラ、廃棄ポンプ、またはその他の適切な廃棄制御機構を用いた手動または自動化された)廃棄制御機構136に進むことができる。廃棄制御機構136(例えば、廃棄制御機構136が、弁、背圧弁、ピンチ弁(pinch valve)、流量計測機構、ポンプなどであるか、またはそれらを含み得る)は、CSFの廃棄物が廃棄出口経路138に沿って廃棄のために収集装置140に送られる速度(例えば、CSFの廃棄物がフィルターモジュール112から出力される速度)を制御することができる。廃棄制御機構は、手動および/または自動化された方法で制御され得る。
【0102】
図2は、ポンプ/濾過システム100を介してCSFを輸送するためのポンプ/濾過システム100の構成要素間の複数の経路に沿った複数の流体ライン(例えば、経路102、106、110、122、124、126、132、134、136、138)を示すポンプ/濾過システム100のさらなる概略図を示す。
図2に示されるポンプ/濾過システム100では、4つのセンサーが、ポンプ/濾過システム100の制御を可能にするために利用される。
図2に示される例では、センサー142(例えば、圧力に関連するパラメータを検知するように構成された圧力センサーまたは他のセンサー)は、ポンプ104の上流に配置されて、経路102の流体ラインにおけるポンプ/濾過システムの入口圧力に関連する測定値を検知し、センサー108は、ポンプ104の下流および第1のフィルター114の上流に配置されて、経路106,110に隣接する流体ラインにおける第1のフィルターの入口圧力に関連する測定値を検知し、センサー144(例えば、圧力に関連するパラメータを検知するように構成された圧力センサーまたは他のセンサー)は、第1のフィルター114の下流および第2のフィルター116の上流に配置されて、第1の廃棄CSF経路126に隣接する流体ラインにおける第2のフィルターの入口圧力に関連する測定値を検知し、第4のセンサー146(例えば、圧力に関連するパラメータを検知するように構成された圧力センサーまたは他のセンサー)は、第2のフィルター116の下流に配置されて、清浄CSF出口経路124に隣接するポンプ/濾過システムの出口圧力に関連する測定値を検知し得る。以下でより詳細に説明されるように、ポンプ/濾過システム100の複数のセンサーおよび/または他の複数のセンサーからの1つまたは複数の測定値を利用して、ポンプ104の動作を制御し得る。
【0103】
図3は、ポンプ/濾過システム100と共に利用可能なカテーテル200の実施形態を示す。カテーテル200は本明細書において説明されているが、CSFをポンプ輸送および/または濾過するためにポンプ/濾過システム100と共に使用可能な例示的なカテーテルの追加の説明は、2018年6月18日に出願され、「中枢神経系に沿って治療するためのシステム、カテーテル、および方法(SYSTEMS, CATHETERS, AND METHODS FOR TREATING ALONG THE CENTRAL NERVOUS SYSTEM)」と題する米国特許出願第62 / 286,413号(弁護士整理番号1421.1010120)に記載されており、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0104】
図3は、Yコネクタ部分202、基端側サブアセンブリ240、及び先端側サブアセンブリ260を有するカテーテル200を示す。Yコネクタ部分202は、コネクタ204、206、機構208、210、212、ポジションマーカー214、及び/またはその他の好適な構成要素を備えることができる。追加的または代替的に、必要に応じて、他のカテーテル構成は、ポンプ/濾過システム100と共に使用することができる。
【0105】
コネクタ204、206は様々な形態をとることができる。例えば、図示されるように、コネクタ204、206はそれぞれメス型及びオス型のルアーロック式コネクタであるが、これに必須ではない。機構208、210、212は、張力緩和かつ耐キンク性(kink resistance)の機構であってよい。機構208は、Yコネクタ部分202の中央合流点付近の部分におけるカテーテル200の撓み又は変形を可能にするように構成されうる。機構210、212は、コネクタ204、206の近くにおけるカテーテル200の撓み又は変形を可能にするように構成されうる。ある実装では、機構210、212は、コネクタ204、206がマルチルーメンカテーテルのどのルーメンに対応しているかを表示するために色分けされてもよい。ある実施形態では、機構208、210、212は、およそ3.18mm(1/8”)のポリオレフィン製熱収縮チューブの形態であってもよいが、これは必須ではない。
【0106】
カテーテル200の長さL1はおよそ1,300mm、併せて作業長さL2はおよそ1,150mmであってよい。作業長さL2は様々な用途及び設計を考慮して規定されうる。図示されるように、作業長さL2は、先端側サブアセンブリ260の先端部から機構208の先端部までの距離である。機構208の先端部からコネクタ206の基端部までの距離D1は、およそ150mmであってよい。機構208はおよそ35mmの長さL3を有してもよく、機構210、212はおよそ7mmの長さL4を有してもよい。ある実装では、カテーテル200はおよそ400mm~およそ1200mmの長さL1と、併せて様々な度合で適宜変更される作業長さL2及びその他の寸法を有することができる。
【0107】
使用時、カテーテル200は、脳脊髄腔内に(例えば腰部の脳脊髄腔に沿って)配置可能である。CSFは、カテーテル200、ポンプ/濾過システム100、および/または流れ制御プロセス300を使用して採取/吸引されうる。吸引された流体はポンプ/濾過システム100および流れ制御プロセス300を使用して濾過されることが可能であり、濾過/状態調整がなされたCSFは、カテーテル200、ポンプ/濾過システム100および流れ制御プロセス300を使用して、患者に返戻されることが可能である。いくつかの実例では、第2のカテーテル200(形態及び機能についてカテーテル200と類似していてよい)が、脳室内など頭蓋のCNSの一部分に配置されてもよい。第2のカテーテル200は、頭蓋領域(例えば脳室)から脳脊髄液を採取/吸引し、ポンプ/濾過システム100を使用して脳脊髄液の状態調整/濾過を行い、状態調整/濾過がなされた脳脊髄液を頭蓋領域又は隣接している領域に返戻するために、使用可能である。これらのうちのいくつか及びその他の実例では、第2のカテーテル200は、頭蓋領域へ薬物(例えばメトトレキセートのような化学療法薬)を注入するために使用可能である。カテーテル200(例えば脳脊髄腔内のもの)及び第2のカテーテル200(脳室内のもの)は一緒に使用されてもよいし、それらが交代で使用されてもよい。脳脊髄腔内及び脳室内の両方で、吸引及び注入の両方のためにカテーテル200を使用することにより、CNS全体にわたる脳脊髄液の循環を改善する可能性のある頭蓋‐腰部ループが形成されうる。
【0108】
図4は、ポンプ/濾過システム100の概略的な制御システム150を示している。概略的な制御システム150は、コントローラ152、コントローラ152と通信するポンプ104、コントローラ152と通信する圧力検知モジュール154、コントローラ152と通信するユーザーインタフェース156、および/または1つまたは複数の他の構成要素またはシステムを含み得る。いくつ場合によっては、圧力検知モジュール154およびユーザーインタフェース156は、含まれる場合、互いに直接通信することができるが、このことは必須ではない。
【0109】
コントローラ152は、1つまたは複数の構成要素を含み得る。一例では、コントローラ152は、プロセッサ158、プロセッサ158と通信するメモリ160、プロセッサ158および/またはメモリ160と通信する入力/出力(I/O)ポート162、および/または制御システム150の1つまたは複数の他のより適切な構成要素を含み得る。いくつかの事例では、メモリ160は、フィルター圧力を所望の範囲内に維持しながら、ポンプ/濾過システム100を通る流量を最適化するために、および/または他の所望の目的のために、コントローラ152が、自動化された方法で動作して、圧力検知モジュール154および/またはユーザーインタフェース156からI/Oポート162において受信した入力に基づいてI/Oポート162を介してポンプ104および/または廃棄制御機構136に制御信号を出力することを可能にするプロセッサ158によって実行されるソフトウェアまたは他の複数の命令を含むかまたは含むようにプログラムされる非時的なコンピュータ可読媒体であるかまたはそれを含み得る。追加的または代替的に、コントローラ152は、ポンプ104および/または廃棄制御機構136から情報を受信し、および/または制御信号を圧力検知モジュール154および/またはユーザーインタフェース156に出力するように構成され得る。
【0110】
プロセッサ158は、単一のプロセッサまたは個別にまたは互いに動作する複数のプロセッサを含み得る。例示的な複数のプロセッサコンポーネントは、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、マルチコアプロセッサ、グラフィカル処理ユニット、および/または他の適切なプロセッサを含み得るが、これらに限定されない。
【0111】
メモリ160は、単一のメモリコンポーネントまたは個別にまたは互いに動作する複数のメモリコンポーネントを含み得る。メモリの複数の例示的なタイプは、RAM、ROM、EEPROM、FLASH、その他の揮発性または不揮発性メモリ、またはコントローラ152に適したその他のメモリを含み得る。メモリ160は、非一時的なコンピュータ可読媒体であり得るか、またはそれを含み得る。
【0112】
複数のI/Oポート162は、圧力検知モジュール154、ユーザーインタフェース156、ポンプ104、廃棄制御機構136、および/またはポンプ/濾過システム100の1つ以上の他の構成要素と通信するように構成された任意のタイプの通信ポートとすることができる。例示的なI/Oポートタイプは、有線ポート、ワイヤレスポート、無線周波数(radio frequency : RF)ポート、Bluetoothポート、近距離無線通信(Near-Field Communication : NFC)ポート、HDMIポート、イーサネットポート、VGAポート、シリアルポート、パラレルポート、コンポーネントビデオポート、Sビデオポート、複合オーディオ/ビデオポート、DVIポート、USBポート、光ポート、および/またはその他の適切なポートを含み得る。
【0113】
圧力検知モジュール154は、上記で説明されたセンサー108、142、144、146のうちの1つまたは複数、および/または流体ラインのルーメン内の圧力に関連する測定値を検知するように構成された他のセンサーを含み得る。一例では、圧力検知モジュール154は、センサー108,142,144,146のうちの1つまたは複数からの読み取り値をコントローラ152に送り、プロセッサ158は、受け取った読み取り値に基づいて制御信号をポンプ104及び/又は廃棄制御機構136に出力し得る。
【0114】
ユーザーインタフェース156は、ユーザーがポンプ/濾過システム100と相互作用することを可能にするように構成された任意の適切なタイプのユーザーインタフェースであり得る。例えば、ユーザーインタフェース156は、ワークステーション、コンピュータ、コンピューティングデバイス、タブレットコンピュータ、電話、ディスプレイ、キーパッド、タッチスクリーン、マウス、および/またはユーザーがポンプ/濾過システム100と対話することを可能にする1つまたは複数の他の適切な構成要素を含み得る。
【0115】
制御システム150は、廃棄制御機構136に制御信号を送り、廃棄制御機構136の動作を制御するように構成され得る。例えば、制御システム150は、流れ制御プロセスを利用して、廃棄制御機構136を通る流体の流量を最適化して、フィルターモジュール112からの廃棄物除去を最適化し得るいくつかの事例では、制御システム150は、圧力検知モジュールから受信した測定値に関連する値が閾値レベルに達するかまたはそれを超える場合に、廃棄制御機構136に制御信号を送信して廃棄制御機構をシャットダウンするように構成され得る。
【0116】
制御システム150は、ポンプ104に制御信号を送信して、ポンプ104の動作を制御するように構成され得る。いくつかの事例では、制御システム150は、流れ制御プロセスを利用して、ポンプ104のポンプ速度を最適化して、ポンプ/濾過システム100を通る流体の流れを最大化しつつ、汚染物質の時間的に変化する性質(例えば、髄液の濃度または物質組成は経時的に変化し得る)に適応し、フィルター圧力(例えば、フィルターモジュール112の上流で測定されたフィルター圧力または他の適切なフィルター圧力)を所望の境界内に維持し得る。一例では、制御システムによって利用される制御フロー(control flow)は、ポンプ104のために指定された最適なポンプ速度設定ポイントを持たずに、および/または最適なフィルター圧力設定ポイントを持たずに作用し得る。フィルター圧力はフィルターモジュール112内のCSF中の汚染物質の濃度に比例し得るので、最適なフィルター圧力設定ポイントを利用しないことは、CSF中の汚染物質濃度が時間とともに変化するため、制御フローを使用してCSFをポンプ輸送および濾過することを可能にする。
【0117】
制御システム150は、メモリ160および/または他のメモリ内に保存され、圧力検知モジュール154および/またはユーザーインタフェース156からの入力に応答してプロセッサ158によって実行される一組の命令を含み得る1つ以上の流れ制御プロセスを利用し得る。いくつかの事例では、流れ制御システム150の流れ制御プロセスは、任意のまたは限られたユーザー対話無しで、制御システム150からの入力に基づいて、ポンプの動作をリアルタイムで(例えば、治療中に)調整するように構成された自動化された流れ制御プロセスであり得る。そのような場合、流れ制御は自動化された流れ制御プロセスであり得る。
【0118】
図5は、例示的な流れ制御プロセス300の概略フロー図である。
図5に示される流れ制御プロセス300は、特に明記しない限り、
図5に示されるものと同様または異なる順序で追加または代替のステップを含み得る。いくつかの事例では、流れ制御プロセス300は、自動化された方法でコントローラ150によって実行され、流れ制御プロセス300は、時間とともに繰り返される制御ループと見なされ得る。さらに、流れ制御プロセス300は、複数の命令(例えば、制御アルゴリズムまたは他の複数の命令)を有するコンピュータ可読媒体(例えば、メモリ160、他のメモリ、または他のコンピュータ可読媒体)に実質的に完全に存在し、複数の命令は、プロセッサ(例えば、プロセッサ158または他のプロセッサ)によって実行可能であり、非一時的な状態でコンピュータ可読媒体に格納され得る。
【0119】
流れ制御プロセス300は、流れ制御プロセス300の開始302から始めることができる。本明細書では詳細には説明しないが、流れ制御プロセス300は、ポンプ/濾過システム100を起動し、次に流れ制御プロセス300の開始302に移行するように構成された起動段階を含み得る。代替的または追加的には、ポンプ/濾過システム100を起動するように構成された起動段階は、流れ制御プロセス300から分離され得る。
【0120】
流れ制御プロセス300が開始すると(302)、流れ制御プロセス300は、ポンプ104の下流でフィルターモジュール112を通過する流体ライン内の圧力に関連する測定値に少なくとも部分的に基づいて、ポンプ/濾過システム100の安定性を決定し得る。
【0121】
ポンプ104の下流でフィルターモジュール112を通過する流体ライン内の圧力に関連する測定値は、圧力(例えば、フィルター圧力)または圧力に関連する他の測定値であり得るが、この測定値をフィルター圧力と呼称する。フィルター圧力は、本明細書では、ポンプ104の下流でフィルターモジュール112の上流に配置されたセンサー108によって検知される測定値であるとして主に説明されているが、フィルター圧力は、ポンプ/濾過システムの1つまたは複数の代替センサーまたは追加センサーによって検知される測定値に基づいて決定される値であってもよい。
【0122】
いくつかの事例では、動作中(例えば、治療中)のポンプ/濾過システム100の安定性は、フィルター圧力に基づいて決定され得る。他の複数の技術における、ポンプ/濾過システム100の安定性を決定する一例の技術は、ポンプ/濾過システム100のゾーン(zone)を決定し、フィルター圧力および/または他の測定値がそのゾーンに対して指定された範囲内にあるかどうかを決定することである。フィルター圧力がゾーンによって指定された最大フィルター圧力よりも低い場合、ポンプ/濾過システム100は安定していると考えられ、フィルター圧力がゾーンによって指定された最大フィルター圧力よりも高い場合、ポンプ/濾過システム100は安定していないと考えられる。
【0123】
ポンプ/濾過システム100のゾーンは、フィルターモジュール112のフィルター圧力に基づいて決定され得る。フィルター圧力は、単一のセンサーによって検知される測定値に関連する圧力、複数のセンサーによって検知される測定値に関連する圧力の加重平均、1つまたは複数のセンサーによって検知される測定値に関連する圧力のローリング平均(rolling average)、および/または1つまたは複数のセンサーによって検知される測定値に関連する圧力に基づく他の値とすることができる。フィルター圧力は、適切な時間間隔でサンプリング、取得、またはその他の方法で決定され得る。いくつかの事例では、フィルター圧力は、約0.5Hz、約1.0Hz、約1.5Hz、約2Hzのレート(rate)で、または1つまたは複数の他の適切なサンプリングレート(sampling rate)でサンプリングされ得る。一例では、フィルター圧力は、約1.0Hzでサンプリングされ得る。さらに、フィルター圧力は、サンプリングされたフィルター圧力のローリング平均であってもよく、フィルター圧力は、フィルター圧力の最新の設定された数の平均、設定された期間にわたって決定された最新の複数のフィルター圧力、および/またはフィルター圧力の他の適切なローリング平均であってもよい。一例では、フィルター圧力は、ポンプ/濾過システム100のセンサー108によって検知された複数の測定値に基づく圧力の1分間のローリング平均であり得る。1分間のローリング平均の圧力が参照されるが、フィルター圧力は、約1分未満または約1分を超える期間にわたる平均であってもよい。
【0124】
ポンプ/濾過システム100のゾーンは、適切な方法で決定され得る。一例では、ポンプ/濾過システム100のゾーンは、時刻Tで測定された圧力検知モジュール154からの複数の測定値に基づいて最新または現在のフィルター圧力値を取得し(304)、N時間単位前(例えば、TからNを引いた時間)からフィルター圧力値を取得すること(306)によって決定され得る。Nは、ノイズおよび/またはポンプ/濾過システム100におけるフィルター圧力への他の無意味な寄与に起因する可能性が低い圧力の有意な変化がその時間にわたって存在し得るような適切な数の時間単位であり得る。例えば、N時間単位は、約1分未満、約1分、約2分、約3分、約4分、約5分、約6分、約10分、約10分よりも大きい、または約1分~約10分の範囲の他の値に設定され得る。一例では、Nは、5分であり得る。
【0125】
N単位時間前からフィルター圧力を取得した(304)後、フィルター圧力の変化(例えば、デルタフィルター圧力)が決定または計算され得る(308)。例えば、フィルター圧力の変化は、現在のフィルター圧力FP(n)からN単位時間前からのフィルター圧力を差し引くことによって決定および/または計算され得る(308)。フィルター圧力がN単位時間にわたって低下した場合、フィルター圧力の変化はゼロ(0)に設定され得るが、このことは必須ではない。
【0126】
圧力の変化が決定されると、ゾーンは、
図6の流れ制御テーブル350または他のテーブルまたはデータベースなどの流れ制御テーブルを参照し、フィルター圧力の変化を流れ制御テーブル352の行350に見られる値と比較する(310)ことによって決定され得る。例えば、流れ制御テーブル350の行352は、ポンプ/濾過システム100の様々なゾーンに関連するフィルター圧力変化の範囲をリスト化してもよく、ポンプ/濾過システム100のゾーンは、決定された圧力変化が該当するフィルター圧力範囲に関連する変化を有するゾーンであると決定されてもよい。
図6に示される例では、ゾーンゼロ(0)は(例えば、N単位時間当たり)0~5mmHg/5minの範囲を有し、ゾーン1は5mmHg/5minよりも大きく10mmHg/5min以内の範囲を有し、ゾーン2は10mmHg/5minよりも大きく20mmHg/5min以内の範囲を有し、ゾーン3は20mmHg/5minよりも大きく25mmHg/5min以内の範囲を有し、ゾーン4は25mmHg/5minよりも大きく30mmHg/5min以内の範囲を有し、ゾーン5は30mmHg/5minよりも大きい全ての圧力変化の範囲を有し得る。
図6には6つのゾーンが示されており、各ゾーンは、それに関連するフィルター圧力値の特定の範囲の変化を有するが、異なる数のゾーンおよび/またはゾーンに関連するフィルター圧力値の異なる範囲を、必要に応じて利用することができる。いくつかの事例では、ゾーン0は「安定ゾーン(stable zone)」と見なされ得るが、このことは必須ではない。
【0127】
流れ制御テーブル350は、コントローラ152のメモリ160または他のメモリに保存され、プロセッサ158によってアクセスされ得る。いくつかの事例では、流れ制御テーブル350はルックアップテーブルであり得るが、このことは必須ではない。いくつかの事例では、流れ制御テーブル350は、ポンプ/濾過システム100の様々なゾーンを、ポンプ/濾過システム100の動作に関連する様々なパラメータと関連付けることを可能にするテーブル以外のフォーマットであってもよい。流れ制御テーブル350は、複数の制御パラメータに関連する複数のゾーンを示しているが、流れ制御テーブル350は、複数のゾーンに関連する追加のおよび/または代替の複数のパラメータ、および/または経時的なフィルター圧力または他の圧力の変化を含む。
【0128】
流れ制御プロセス300で使用される複数のポンプ速度調整は、決定されたゾーンについて決定され得る(312)。複数のポンプ速度調整は、流れ制御テーブル350の行358、360、362に見出されることができる。各ゾーンについて、流れ制御テーブルの行358は、「ポンプ速度のわずかな増加」の値を提供し、流れ制御テーブル350の行360は、「ポンプ速度の大幅な増加」の値を提供し、流れ制御テーブル350の行362は、「ポンプ速度の低下」の値を提供し得る。行358では、ポンプ速度のわずかな増加は、ゾーンゼロ(0)からゾーン4では0.01ml/minであり、ゾーン5ではゼロ(0)ml/minであり得る。行360では、ポンプ速度の大幅な増加は、ゾーンゼロ(0)では0.01ml/minであり、ゾーン1からゾーン5ではゼロ(0)ml/minであり得る。行362において、ポンプ速度の低下は、ゾーンゼロ(0)では0.01ml/minであり、ゾーン1では現在のポンプ速度の5パーセントであり、ゾーン2では現在のポンプ速度の10%であり、ゾーン3では現在のポンプ速度の20%であり、ゾーン4では現在のポンプ速度の30%であり、ゾーン5では現在のポンプ速度の50%であり得る。例示的な流れ制御テーブル350には3つの異なるポンプ速度指定が提供されているが、3つより少ないまたは多いポンプ速度指定を利用することができる。追加的または代替的に、行358、360、362の値は、
図6の流れ制御テーブル350に示されているものおよび/または本明細書に記載されているものとは異なっていてもよい。
【0129】
テーブル350は複数のポンプ速度調整を規定しているが、流れ制御プロセス300または他のプロセスは、ポンプ104のポンプ速度を最小ポンプ速度値および最大ポンプ速度値内に維持するように構成されてもよい。最小ポンプ速度値は、約0.1ミリリットル/分(ml/min)から約1.0ml/minの範囲内、または他の適切な値の範囲内であり、最大ポンプ速度値は、約3.5mil/minから約4.5mil/minの範囲内、または他の適切な値の範囲内であり得る。一例では、最小ポンプ速度値は約0.5ml/minであり、最大ポンプ速度値は約4.0ml/minであってもよいが、他の最小ポンプ速度値および最大ポンプ速度値が企図される。
【0130】
フィルター圧力変化および/またはゾーンが決定されると(308、310)、現在のフィルター圧力FP(n)は、第1のフィルター圧力閾値(例えば、最大フィルター圧力FP(max)などの最大閾値)と比較され(314)、第1のフィルター圧力閾値は、決定(308、310)されたフィルター圧力変化および/またはゾーンに関連付けられ、流れ制御テーブル350の行356に見出される。行356において、フィルター圧力最大値FP(max)(例えば、最大閾値等の第1のフィルター圧力閾値)は、ゾーンゼロ(0)について200mmHgであり、ゾーン1について190mmHgであり、ゾーン2について180mmHgであり、ゾーン3について170mmHgであり、ゾーン4について160mmHgであり、ゾーン5について50mmHgであり得る。いくつかの事例では、流れ制御テーブル350内のフィルター圧力最大値FP(max)は、時間とともに調整され得る。一例では、流れ制御テーブル350内の各フィルター圧力最大値FP(max)は、治療中にポンプ/濾過システム100が使用されている8時間ごとに50mmHg増加され得る。追加的または代替的に、行356の値は、
図6の流れ制御テーブル350に示されているものおよび/または本明細書に記載されているものとは異なっていてもよい。
【0131】
現在のフィルター圧力が、ポンプ/濾過システム100の現在特定されたフィルター圧力の変化および/またはゾーンに関連する第1のフィルター圧力閾値よりも小さい場合、第1の流れ制御プロトコル400を使用して、ポンプ104の流量を制御し得る。現在のフィルター圧力FP(n)が、ポンプ/濾過システム100の現在特定されたフィルター圧力の変化および/またはゾーンに関連するフィルター圧力閾値に到達するかまたは超えた場合、第2の流れ制御プロトコル500を使用して、ポンプ104の流量を制御し得る。第1の流れ制御プロトコル400および第2の流れ制御プロトコル500のいずれかを実行した後、流れ制御プロセス300は、流れ制御プロセス300の開始302に戻り、制御ループを生成し得る。いくつかの事例では、第1の流れ制御プロトコル400と第2の流れ制御プロトコル500の範囲が重複することがあるが、このことは必須ではない。
【0132】
図7は、第1の流れ制御プロトコル400の概略フロー図を示している。
図7に示される第1の流れ制御プロトコル400は、特に明記しない限り、
図7に示されるものと同様または異なる順序で追加または代替のステップを含み得る。
【0133】
図7に示されるように、現在のフィルター圧力FP(n)が、決定された(308,310)ポンプ/濾過システム100のフィルター圧力の変化および/またはゾーンについての第1のフィルター圧力閾値に到達しないかまたはそれを超えない場合、第1の流れ制御プロトコル400を利用して、ポンプ/濾過システム100のポンプ104を制御し得る。流れ制御プロセス300が第1の流れ制御プロトコル400に従うと、ポンプ104の可能なポンプ速度増加値は、ステップ312に関して上述した方法と同様の方法で、以前に決定された(308,310)フィルター圧力の変化および/またはゾーンに基づいて決定され得る(402)。一例では、ポンプ/濾過システム100がゾーンゼロ(0)で動作していると決定された場合(310)、コントローラ152は、ポンプ104のポンプ速度を0.01ml/minのポンプ速度の小さな増加(410)または0.01ml/minのポンプ速度の大きな増加(408)のいずれかで調節することを決定する(402)ように構成され得る。(例えば、流れ制御プロセス300のステップ312において)ポンプのポンプ速度増加値が既に決定されている場合、第1の流れ制御プロトコル400の一部分としてポンプ速度増加を決定すること(402)は省略されてもよいが、このことは必須ではない。
【0134】
コントローラ152は、ダウンタイマー(down timer)を含んでもよく、第1の流れ制御プロトコル400の一部分として、動作していた場合にはダウンタイマーが停止されてリセットされてもよい(404)。コントローラ152のダウンタイマーは、ポンプ/濾過システム100のフィルター圧力が第1のフィルター圧力閾値(例えば、コントローラ152が、第1の流れ制御プロトコル400に従ってポンプ/濾過システム100の動作を制御することなく、第2の流れ制御プロトコル500に従ってポンプ/濾過システム100の動作を制御していた連続したまたは途切れない時間量)に到達したか又はそれを超えた時間を記録し得る。このように、コントローラ152は、現在のフィルター圧力FP(n)が第1のフィルター圧力閾値に達していないかまたはそれを超えていないという決定(314)に応答して第1の流れ制御プロトコル400に進む場合、コントローラ152が第1の流れ制御プロトコル400に従って開始すると、ダウンタイマーがリセットされて停止されてもよい。
【0135】
いくつかの事例では、ダウンタイマーは、カウントダウンタイマーであってもよく、所定の時間からカウントダウンするように構成されてもよい。例えば、ダウンタイマーは、30秒、1分、2分、3分、5分、10分又は他の適当な時間量からカウントダウンするように構成され得る。他の例では、ダウンタイマーは、カウントダウンタイマーではなく、ゼロ(0)単位時間の時刻から計時を開始し得る。このようなタイマーは、存在する場合、所定の設定された時間の後に満了する(expire)ことができる。一例では、ダウンタイマーを利用して、所望よりも速くポンプ輸送速度(pumping rate)を低下させないようにしてもよい。
【0136】
図6の流れ制御テーブル350を使用する場合、流れ制御テーブル350の行366は、各ゾーンについてダウンタイマーが満了するまでの時間の値を提供し得る。行366において、時間の値は、ゾーンゼロ(0)からゾーン4までの各ゾーンについて60秒であり、ゾーン5について30秒であり得る。上述したように、追加のまたは代替的な時間が企画される。
【0137】
第1の流れ制御プロトコル400に従う場合、コントローラ152は、現在のフィルター圧力FP(n)が、決定された(308,310)圧力変化および/またはゾーンについて、第2のフィルター圧力閾値(例えば、フィルター圧力最小FP(min)などの最小閾値)を超えたかどうかを判定する(406)ように構成され得る。現在のフィルター圧力FP(n)が第2のフィルター圧力閾値を超えた場合、コントローラ152は、I/Oポート162を介してポンプ104に信号を出力し、以前に決定された(402)(および/または312)大きなポンプ速度の増加によってポンプ速度を増加する(408)。現在のフィルター圧力FP(n)が第2のフィルター圧力閾値を超えていない場合、コントローラ152は、I/Oポート162を介してポンプ104に信号を出力し、以前に決定された(402)(および/または312)小さなポンプ速度の増加によってポンプ速度を増加する(410)。
【0138】
フィルター圧力の最小FP(min)(例えば、最小閾値等の第2のフィルター圧力閾値)は、決定された(308,310)フィルター圧力の変化及び/又はゾーンに関連付けられ、流れ制御テーブル350の行354に見出され得る。行354において、フィルター圧力の最小値FP(min)は、ゾーンゼロ(0)からゾーン5までについて50mmHgであり得る。追加的または代替的に、行354の値は、
図6の流れ制御テーブル350に示されているものおよび/または本明細書に記載されているものとは異なっていてもよい。
【0139】
ポンプ104のポンプ速度が、小さいポンプ速度の増加および大きいポンプ速度の増加のいずれかに従って調節された後、コントローラ152は、ポンプ速度の増加がポンプ速度の増加閾値よりも大きいかどうかを判定し得る(412)。一例において、ポンプ速度の増加閾値は、ゼロ(0)、現在のポンプ速度の関数、または他の適切なポンプ速度の増加閾値であってもよい。ポンプ速度の増加がポンプ速度の増加閾値よりも大きかった場合、コントローラ152は、アップタイマー(up timer)が作動しているかどうかを判定する(414)ように構成され得る。アップタイマーが動作していない場合、コントローラ152は、アップタイマーを始動し(416)、次いで、流れ制御プロセス300を再び始動する(302)ように構成され得る。
【0140】
コントローラ152のアップタイマーは、ポンプ/濾過システム100のフィルター圧力が第1のフィルター圧力閾値(例えば、コントローラ152が、第2の流れ制御プロトコル500に従ってポンプ/濾過システム100の動作を制御することなく、第1の流れ制御プロトコル400に従ってポンプ/濾過システム100の動作を制御していた連続したまたは途切れない時間量)に到達していないか又はそれを超えていない時間を記録し得る。いくつかの事例では、アップタイマーは、カウントダウンタイマーであってもよく、所定の時間からカウントダウンするように構成されてもよい。例えば、アップタイマーは、30秒、1分、2分、3分、5分、10分又は他の適当な時間量からカウントダウンするように構成され得る。一例では、アップタイマーを利用して、所望よりも速くポンプ輸送速度を増加させないようにしてもよい。他の例では、アップタイマーは、カウントダウンタイマーではなく、ゼロ(0)単位時間の時刻から計時を開始し得る。このようなタイマーは、存在する場合、所定の設定された時間の後に満了することができる。
【0141】
図6の流れ制御テーブル350を使用する場合、流れ制御テーブル350の行364は、各ゾーンについてアップタイマーが満了し得る時間の値を提供し得る。行364において、時間の値は、ゾーンゼロ(0)からゾーン5までの各ゾーンについて60秒であり得る。上述したように、追加のまたは代替的な時間が企画される。
【0142】
アップタイマーが作動している場合、コントローラ152は、アップタイマーが満了したかどうかを判定する(418)。アップタイマーが満了していない場合、コントローラ152は、流れ制御プロセス300を再び開始する(302)ように構成され得る。
【0143】
アップタイマーが満了した場合、コントローラ152は、複数のI/Oポート162を介してポンプ104に制御信号を出力して、ポンプ104のポンプ速度を、現在のフィルター圧力FP(n)が、決定された(308,310)フィルター圧力の変化および/またはゾーンについて第2のフィルター圧力閾値を超えたかどうかの決定(406)に基づいて、小さなポンプ速度増加または大きなポンプ速度増加のいずれかで増加させる(420)ことができ、ポンプ速度は、現在のフィルター圧力FP(n)が第2のフィルター圧力閾値を超えた場合には大きなポンプ速度増加(例えば、第1の所定量)によって調節され、現在のフィルター圧力FP(n)が第2のフィルター圧力閾値を超えていない場合には小さなポンプ速度増加(例えば、第2の所定量)によって調節される(410)ことができる。アップタイマーが満了するまで待機することによって、所望の間隔でポンプ104のポンプ輸送速度を増加させることを可能にする。コントローラがポンプ104のポンプ速度を増加させた(420)後、コントローラ152は、アップタイマーをリセットして再起動し(422)、次いで、流れ制御プロセス300を再び開始する(302)。
【0144】
ポンプ速度増加がポンプ速度増加閾値よりも大きいかどうかの判定(412)に戻り、ポンプ速度増加がポンプ速度増加閾値よりも大きくない場合、コントローラは、アップタイマーを停止する(424)ように構成され得る。アップタイマーを停止した(424)後、コントローラは、流れ制御プロセス300を再び開始する(302)ことができる。
【0145】
図8は、第2の流れ制御プロトコル500の概略フロー図を示している。
図8に示される第2の流れ制御プロトコル500は、特に明記しない限り、
図8に示されるものと同様または異なる順序で追加または代替のステップを含み得る。
【0146】
図8に示されるように、現在のフィルター圧力FP(n)が、決定された(308,310)ポンプ/濾過システム100のフィルター圧力変化および/またはゾーンについての第1のフィルター圧力閾値に到達するかまたはそれを超える場合、第2の流れ制御プロトコル500を利用して、ポンプ/濾過システム100のポンプ104を制御し得る。流れ制御プロセス300が第2の流れ制御プロトコル500に従うと、ポンプ104の可能なポンプ速度低下値は、ステップ312に関して上述した方法と同様の方法で、以前に決定された(308,310)フィルター圧力変化および/またはゾーンに基づいて決定され得る(502)。一例では、ポンプ/濾過システム100がゾーンゼロ(0)で動作していると決定された場合(310)、コントローラ152は、ポンプ104のポンプ速度を0.01ml/minで低下させることを決定する(502)ように構成され得る。別の例では、ポンプ/濾過システム100がゾーン2で動作していると決定された場合、コントローラ152は、ポンプ104のポンプ速度をポンプ104が現在ポンプ輸送しているポンプ速度の10パーセントで低下させることを決定する(502)ように構成され得る。(例えば、流れ制御プロセス300のステップ312において)ポンプのポンプ速度低下値が既に決定されている場合、第2の流れ制御プロトコル500の一部分としてポンプ速度低下を決定すること(502)は省略されてもよいが、このことは必須ではない。
【0147】
第1の流れ制御フローに関して説明したように、コントローラ152は、アップタイマーを含み、第2の流れ制御プロトコル500の一部分として、動作していた場合にはアップタイマーが停止されてもよい(504)。追加的または代替的に、コントローラ152は、ダウンタイマーが実行されているかどうかを判定する(506)ように構成され得る。ダウンタイマーが動作していない場合、コントローラ152は、ダウンタイマーを起動し(508)、次いで、流れ制御プロセス300を再び開始する(302)ように構成され得る。
【0148】
ダウンタイマーが動作している場合、コントローラ152は、ダウンタイマーが満了したかどうかを判定する(510)。ダウンタイマーが満了していない場合、コントローラ152は、流れ制御プロセス300を再び開始する(302)ように構成され得る。
【0149】
ダウンタイマーが満了した場合、コントローラ152は、複数のI/Oポート162を介してポンプ104に制御信号を出力して、ポンプ速度値の決定された(502)低下によってポンプ104のポンプ速度を低下させる(512)ことができる。ポンプ105のポンピング速度を低下させるためにダウンタイマーが満了するまで待機することは、所望の間隔でポンプ104のポンプ輸送速度を低下させてポンプ輸送速度が所望されるよりも早く低下しないことを確実にすることを可能にし得る。コントローラ152がポンプ104のポンプ速度を低下させた(512)後、コントローラ152は、ダウンタイマーをリセットして再開し(514)、次いで、流れ制御プロセス300を再び開始する(302)。
【0150】
流れ制御プロセス300、第1の流れ制御プロトコル400、および第2の流れ制御プロトコル500の説明で示唆されているように、(例えば、流れ制御プロセス300、第1の流れ制御プロトコル400、第2の流れ制御プロトコル500、および/または他の流れ制御手順を含む)複数の流れ制御手順をリアルタイムで繰り返すことができる。動作中、流れ制御プロセス300は、ポンプ/濾過システム100の動作中に自動化された方法で絶えず実行されて、特にフィルターモジュール112に関して、流体ライン内の圧力変化に応答してポンプ104のポンプ速度を調整し得る。CSF中の汚染物質の異なる濃度および/またはフィルターモジュール112の状態に経時的に応答するそのような構成は、フィルター圧力を許容範囲内に維持しながら、CSFのポンプ輸送速度を最適化することを可能にし得る。
【0151】
流れ制御プロセス300の複数の機能に加えてまたはその代替として、コントローラ152は、1つまたは複数の他の制御動作を行うことができる。例えば、コントローラ152は、他の複数の動作の中でもとりわけ、1つまたは複数の安全ポンプシャットダウン動作(safety pump shut down action)を実行するように構成され得る。一例では、コントローラ152は、圧力検知モジュール154の1つ以上のセンサーから(例えば、ポンプ104およびフィルターモジュール112の上流の位置、ポンプ104およびフィルターモジュール112の下流の位置、および/または1つ以上の他の適切な位置における流体ラインのルーメン内の圧力に関連する測定値を検知する1つ以上のセンサーから)測定値を受信し、受信した1つまたは複数の測定値に基づく値が所定の値または閾値に到達および/またはそれを超える場合、コントローラは、ポンプ104の動作をシャットダウンし、廃棄制御機構136をシャットダウンし、および/または1つ以上の他の制御動作を行うように構成され得る。
【0152】
追加的または代替的に、さらなる例では、コントローラ152は、圧力検知モジュール154から受信した測定値を監視して、ポンプ/濾過システム100を通る流体ラインに沿った開通性(patency)および/または漏洩を判定するように構成され得る。一例では、流体ラインがポンプ104および/または廃棄制御機構136によって加圧されると、コントローラ152は、存在する場合、流体ライン内の圧力減衰の速度(rate of pressure decay)を決定および監視して、ポンプ/濾過システム100の開通性および/または漏洩を判定することができる。圧力減衰は、ポンプ104の下流にある1つまたは複数のセンサーの圧力検知モジュール154から経時的に受け取られる1つまたは複数の測定値に基づくことができる。いくつかの事例では、コントローラ152は、決定された圧力減衰の1つまたは複数の速度を閾値圧力減衰(threshold pressure decay)と比較することができ、監視された圧力減衰の速度が閾値圧力減衰に達するかまたはそれを超える場合、コントローラ152は、警報を開始すること、ポンプ104および廃棄制御機構136の一方または両方の動作を停止すること、および/または他の適切な制御動作を含み得るが、これらに限定されない1つ以上の制御動作を行うことができる。閾値圧力減衰は、ポンプ/濾過システム100にプログラムされた所定の値、圧力検知モジュール154から受信した測定値の関数、および/または1つ以上の他の適切な方法で決定された値であり得る。
【0153】
追加的または代替的に、さらなる例では、コントローラ152は、圧力検知モジュール154からの受信した複数の測定値を監視して、ポンプ/濾過システム100を通る流体ラインに沿った潜在的な漏洩および/または障害物の位置を決定するように構成され得る。一例では、(例えば、流量センサー、圧力センサー等の)2つ以上のセンサー、ポンプ104および少なくとも1つのセンサー、廃棄制御機構136および少なくとも1つのセンサー、および/または廃棄制御機構136およびポンプ104からの測定値が監視され、ポンプ/濾過システム100の流体ラインにおける潜在的な漏洩または障害物の位置を決定するために利用され得る。例えば、2つのセンサー間で(例えば、流体ラインに沿った第1の位置にある第1のセンサーと流体ラインに沿った第2の位置にある第2のセンサーとの間等で)測定値が、期待される量(例えば閾値量)を上回るかおよび/または超える量で異なる場合、コントローラ152は、2つのセンサー間に漏洩または障害物が存在することを決定し得る。同様に、センサーからの測定値が、ポンプ104および/または廃棄制御機構136のポンプ速度についての期待値を上回るかおよび/または超える量で異なる場合、コントローラ152は、ポンプ104および/または廃棄制御機構136とセンサーとの間に漏洩または障害物が存在すると判定し得る。コントローラ152が漏洩または障害物の位置を特定するとき、コントローラ152は、警報を開始すること、ポンプ104および廃棄制御機構136の一方または両方の動作を停止すること、その位置をユーザーインタフェース156に提示すること、および/または他の適切な制御動作を含むが、これらに限定されない1つ以上の制御動作を行うことができる。
【0154】
追加的または代替的に、さらなる例において、コントローラ152は、フィルターモジュール112のフィルターを洗い流すように構成され得る。一例では、コントローラ152は、廃棄制御機構136を、流体ラインを通ってCSFをポンプ輸送するポンプ104のポンプ速度に一致するポンプ速度で動作させるように構成されてもよく、その結果、フィルターモジュール112の複数のフィルターにわたる接線流(tangential flow)は、最小であるかまたは全くない。フィルターモジュール112の複数のフィルターにわたる接線流が最小であるかまたは全くない場合、CSFから濾過された比較的大きな粒子(例えば、濾過中にCSFから除去され、フィルターの膜を通過できない粒子)は、ポンプ104から廃棄制御機構136に流れる流れを用いてフィルターモジュール112の複数のフィルターから取り除かれる(brushed away)ことができる。ポンプ104のポンプ速度が廃棄制御機構136の廃棄ポンプ速度に等しい所定の時間の後、コントローラは、廃棄ポンプ速度をポンプ104のポンプ速度未満の値に低下させることができる。このような洗い流し処理(flushing procedure)は、粒子がフィルターモジュール112内の複数のフィルターの膜を通過できないことによって生じるフィルターモジュールの複数のフィルターの背圧を低下させるように構成されることができる。
【0155】
ポンプ/濾過システム100、カテーテル200、および流れ制御プロセス300を使用して、いくつかの状態を治療することができる。企図される複数の状態のうちのいくつかは、がんを含む。例えば、軟膜転移(LM)は、原発性の固形腫瘍又は血液系腫瘍由来の細胞が転移し、クモ膜下腔(SAS)に侵入し、かつ脳脊髄液(CSF)全体に広がって、結果として中枢神経系(CNS)の表面に沿った軟膜への播種が生じる状態である。LMは、がんの進行の後期イベントに相当し、最も多く現れる症状には、多発性の脳神経障害、運動障害、精神状態の変化、頭痛、及び神経根痛が含まれる。LMの発生率はがん患者の3~5%と概算され、がん患者の全生存期間がより長くなることで増加してきた。LMは転移がん治療計画における困難な課題を提示し、有効な接近手段及び治療法が無いために悲惨な予後及び4か月の平均生存期間という結果をもたらす。メトトレキセート(MTX)、シタラビン及びチオテパなどの抗がん剤を用いた全身療法は、血液脳関門(BBB)の通過率が不十分なため効果的ではない。オマヤ貯留槽を含む髄腔内(IT)薬物送達システムは全生存期間をより長くしてきたが;しかしながら該システムは度重なる注射を必要とし、また受動拡散に依存している。CNS全体を対象とし、かつIT投与薬物の分布を増強する将来の治療法であれば、生存をさらに改善するということも考えられる。CSFはおよそ20ml/hrで生産され、全体積は~150mlであり、その結果として1日当たり平均で3回代謝回転する。CSFの生産速度は頭蓋内圧(ICP)に依存しない。LMはCSFの流出路を閉鎖する可能性があるので、患者は水頭症及びICP上昇の深刻なリスクに直面する。加えて、BBB及び血液‐CSF関門によりCSFが比較的孤立していることが、腫瘍生存のための特有の環境を提供する。
【0156】
ポンプ/濾過システム100、カテーテル200、および流れ制御プロセス300は、CSF中の多数の病原体及び細胞を迅速に取り除き、またCSF中薬物送達を増強する能力を有しうる。例えば、ポンプ/濾過システム100、カテーテル200、および流れ制御プロセス300は、LMの転帰を、1)SAS全体にわたる特定の抗がん剤(オマヤ貯留槽により、カテーテル200により、又は両方により送達されるMTX)の曝露及び循環の増強、(2)がんを広げている循環腫瘍細胞(CTC)を除去するためのCSFの局所的濾過、(3)CSFドレナージによるICPの制御、(4)腫瘍細胞(例えば、クモ膜顆粒及びリンパ系を介したCSFの自然な再吸収を妨げる場合のある生きた腫瘍細胞及び死んだ腫瘍細胞のうち少なくともいずれか)の濾別、によって改善するために、使用可能である。ポンプ/濾過システム100、カテーテル200、および流れ制御プロセス300はさらに、CSF中の薬物(例えばメトトレキセートのような化学療法剤)の濃度を(例えば、過剰な薬物の除去、毒性の低減などを行うために)低減するために使用されてもよい。
【0157】
本明細書中で示唆されるように、患者に化学療法剤を注入することを含む治療方法が企図される。いくつかの実例では、化学療法剤はメトトレキセートである。その他の化学療法剤も企図される。化学療法剤は、これらの患者における標準治療と同じように、患者の脳室に移植されたオマヤ貯留槽(及び同様のデバイス(例えばリッカム(Rickham)デバイスなど)のうち少なくともいずれか一方)によってCNSに注入されてもよい。追加として、又は別例として、化学療法剤はカテーテル200を使用して患者に注入されてもよい。例えば、化学療法剤は、清浄CSF出口経路124へ、カテーテル200のポートのうちの1つへ、別個のデバイスに配置された作用薬を介してカテーテル200へ、又は他の適切な方法で、添加されることが可能である。ポンプ/濾過システム100、カテーテル200、および流れ制御プロセス300によるCSFの循環は、脳脊髄腔及びCNSのうち少なくともいずれかの全体に化学療法剤を循環させるのを支援することができる。
【0158】
治療にポンプ/濾過システム100、カテーテル200、および流れ制御プロセス300を使用することが可能な別の企図される状態は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)である。例えば、ALSの病理は、グルタミン酸作動性の機能/経路の過剰刺激とこれに伴う興奮毒性、カルシウムレベルの上昇、及び活性酸素種の生成、のうち少なくともいずれかと相関している可能性がある。酸化ストレスは、細胞死に関連した酸化促進性化合物及び酸化還元活性鉄の放出、ミトコンドリアの機能不全、炎症、並びに興奮毒性を介して、ALSの病理学的メカニズムに関与している可能性がある。カテーテル200、ポンプ/濾過システム100、および/または流れ制御プロセス300は、CSFについて、ALSの病理に関連するもののような酸化性物質及び炎症性物質のうち少なくともいずれか(例えば、フリーラジカル、サイトカイン、ケモカイン、白血球を含む)の低減/除去を行う助けとなるように、使用可能である。ALSの治療の一部として低減/除去されうる物質のいくつかの例には、不溶性のスーパーオキシドジスムターゼ‐1(SOD1)、グルタメート、ニューロフィラメントタンパク質、及び抗GM1ガングリオシド抗体のうち1以上が含まれうる。
【0159】
いくつかの実例では、酸化性物質及び炎症性物質のうち少なくともいずれかは電荷を帯びている場合がある。そのような物質の除去は、エレクトロフィルトレーション(例えば電荷を有するフィルター)を利用して増強されうる。従って、少なくともいくつかの実例では、第1のフィルター114、第2のフィルター116、その両方、および/または1つまたは複数のフィルターが、帯電フィルター(エレクトロフィルター)を備えていてもよい。上記のうちのいくつか、及びその他の実例において、第1のフィルター114、第2のフィルター116、又は両方は、免疫親和性カラム、サイズ排除カラム、陰イオン交換カラム、陽イオン交換カラム、及びプロテインA又はプロテインGのカラムを備えていてもよい。
【0160】
CSF中にあるALS関連の病理学的メディエータの除去に加えて、ポンプ/濾過システム100、カテーテル200、および流れ制御プロセス300はさらに、CSFに1以上の薬物を送達するために使用されてもよい。そのような治療は、酸化性物質及び炎症性物質のうち少なくともいずれかをさらに低減する助けとなりうる。いくつかの実例では、薬物は、清浄CSF出口経路124(例えば、返戻用出口)へ、カテーテル200のポートのうちの1つへ、別個のデバイスに配置された作用薬を介してカテーテル200へ、又は他の適切な方法で、添加されることが可能である。ポンプ/濾過システム100、カテーテル200、および流れ制御プロセス300によるCSFの循環は、脳脊髄腔及びCNSのうち少なくともいずれかの全体に薬物を循環させるのを支援することができる。利用可能ないくつかの薬物の例には、リルゾール、エダラボンなどが挙げられる。
【0161】
治療にポンプ/濾過システム100、カテーテル200、および流れ制御プロセス300を使用することが可能な別の企図される状態は、単純ヘルペス脳炎(HSE)である。HSEは、重症の神経炎症、脳浮腫及び出血性壊死を引き起こしてその結果頭蓋内圧(ICP)の上昇を伴うことが知られている。医学的管理は標準化されているが、減圧開頭術及び側頭葉切除術のうち少なくともいずれか一方を含む積極的な内科的かつ外科的合同管理が、制御不良なICP、神経炎症及び脳浮腫に起因して実施されることが多い。活性酸素種(ROS)の生産は、ウイルス感染に対する自然防御の構成要素であるとも考えられている。しかしながら、CNSの脂質に富んだ環境は酸化損傷を受けやすいかもしれない。よって、酸化損傷はHSE感染と関連している可能性がある。
【0162】
ポンプ/濾過システム100、カテーテル200、および流れ制御プロセス300は、HSEの病理に関連するもののような酸化性物質及び炎症性物質のうち少なくともいずれか(例えば、フリーラジカル、サイトカイン、ケモカイン、白血球を含む)を除去するために使用可能である。いくつかの実例では、酸化性物質及び炎症性物質のうち少なくともいずれかは電荷を帯びている場合がある。そのような物質の除去は、エレクトロフィルトレーション(例えば電荷を有するフィルター)を利用して増強されうる。従って、少なくともいくつかの実例では、第1のフィルター114、第2のフィルター116、又は両方が、帯電フィルター(エレクトロフィルター)を備えていてもよい。
【0163】
治療にポンプ/濾過システム100、カテーテル200、および流れ制御プロセス300を使用することが可能な別の企図される状態は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)及び後天性免疫不全システム(AIDS)である。CNSのHIV感染は、髄膜炎、急性炎症性多発根神経症(AIDP)、抗レトロウイルス療法の導入により引き起こされる免疫再構築症候群(IRIS)、慢性炎症性多発神経炎(CIDP)、糖尿病性多発神経障害(DSP)、進行性多巣性白質脳症(PML)、及びHIV関連神経認知障害(HAND)を含む多くの合併症をもたらす可能性がある。ポンプ/濾過システム100、カテーテル200、および流れ制御プロセス300は、CNSからいくつかの異なるHIV株を濾別/低減/除去するように設計されることが可能である。これにより、CSF中のウイルス負荷の低減及びCNS中のHIV感染に関連した合併症の低減のうち少なくともいずれか一方を行うことが可能である。加えて、ポンプ/濾過システム100、カテーテル200、および流れ制御プロセス300は、CNSからHIVに関連した多くの様々な炎症性物質を濾別/低減/除去するために設計されてもよい。
【0164】
治療にポンプ/濾過システム100、カテーテル200、および流れ制御プロセス300を使用することが可能な別の企図される状態は、多発性硬化症(MS)である。2つのサブタイプすなわち臨床的に初発の段階(CIS)及び再発寛解型多発性硬化症(RRMS)は進行を伴わない疾患を表す一方、一次性進行型(PPMS)及び二次性進行型(SPMS)はそれぞれ発症時から又はRRMS後の、進行性疾患の患者を表している。多巣性病変の形成をもたらす神経炎症、脱髄、軸索損傷及び結果として生じる神経変性が、この疾患の特徴である。現行の治療は、(1)抗炎症性の天然に存在する分子(IFN‐β)、(2)分子であって抗炎症性の細胞の増殖を刺激するもの(グラチラマー酢酸塩)又は自己反応性の細胞の増殖を阻害するもの(テリフルノミド)、(3)免疫抑制性のモノクローナル抗体(ナタリズマブ)、(4)転写因子に結合して抗炎症メカニズムを増強するか又は炎症促進メカニズムを抑制する分子(フマル酸ジメチル)、及び(5)リンパ系組織からCNSへのリンパ球の移出を阻害する作用薬(フィンゴロモド(fingolomod))、などに分類されうる。いくつかの実例では、ポンプ/濾過システム100、カテーテル200、および流れ制御プロセス300は、免疫細胞を含むMSに関連したいくつかの異なる炎症性作用因子(イムノグロビン(immunoglobin)、好中球、リンパ球、単球など)、MSの病理に関連するもののような酸化性及び炎症性のうち少なくともいずれかの作用因子(例えば、フリーラジカル、サイトカイン、ケモカイン、白血球など)、並びに同様のものを、濾別/低減/除去するために設計されてもよい。これにより、MSの治療及びMSの症状の改善のうち少なくともいずれかを支援することが可能である。
【0165】
治療にポンプ/濾過システム100、カテーテル200、および流れ制御プロセス300を使用することが可能な別の企図される状態は、ギラン‐バレー症候群(GBS)である。GBSは世界中の急性麻痺性神経障害の最も一般的な原因である。急性運動性軸索型神経障害(AMAN)及び急性炎症性脱髄性多発性神経障害(AIDP)が主要な表現型である。GBSは、宿主の遺伝学的要因及び環境要因と、先行するカンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)及びジカウイルスなどの病原体による感染との組み合わせにより、個体において発症する可能性がある。広く知られている作用機序は、外来抗原とガングリオシド残基との分子相同性がその結果として、ミエリン又は軸索の構成成分を認識してマクロファージ及びリンパ球のうち少なくともいずれかの浸潤、補体沈着、並びにサイトカイン生産を含む炎症性免疫応答を開始させる自己抗体を発生せしめている、と暗に示している。CSFの分析は、患者の90%における、タンパク質の増加(>400mg/L)、及び髄液細胞増加(pleocytosis)の欠如を示す。その病理に関与する神経炎症性サイトカイン及びその他のタンパク質のレベル上昇については注目されてきたが、GBSのCSFの具体的な免疫タンパク質のプロファイルは不均一である。上記のうちのいくつかにおいて、及びその他の実例において、第2のカテーテル(例えば、形態及び機能においてカテーテル200、オマヤ貯留槽などに類似していてよい)が頭蓋領域に薬物を注入するために使用されてもよい。
【0166】
現行のGBS治療には、血漿交換療法(PE)又は免疫グロブリン静注療法(IVIg)に支持療法を伴うものが含まれうる。GBS患者におけるCSFのタンパク質異常、例えば高レベルの炎症性サイトカインTNF‐α及びIL‐67、抗ガングリオシド抗体、並びに補体成分の活性化に基づき、炎症性のものを低減/除去するためのCSFの濾過は、GBSシステムの低減及びGBSの治療のうち少なくともいずれか一方を行う助けとなりうる。いくつかの実例では、カテーテル200、ポンプ/濾過システム100、および/または流れ制御プロセス300は、免疫細胞を含むGBSに関連したいくつかの異なる炎症性作用因子(イムノグロビン(immunoglobin)、好中球、リンパ球、単球など)、GBSの病理に関連するもののような酸化性及び炎症性のうち少なくともいずれかの作用因子(例えば、フリーラジカル、サイトカイン、ケモカイン、白血球など)を濾別/低減/除去するために設計されてもよい。これにより、GBSの治療及びGBSの症状の改善のうち少なくともいずれかを支援することが可能である。いくつかの実例では、ポンプ/濾過システム100、カテーテル200及び流れ制御プロセス300は、GBSの治療に使用される時に5kDaのフィルターを備えることができる。本明細書中に開示されたものを含めてその他のフィルターサイズも企図される。例えば、ポンプ/濾過システム100、カテーテル200及び流れ制御プロセス300は、5kDaの接線流濾過、100kDaの接線流濾過、エレクトロフィルター、又はこれらの組み合わせを備えることができる。
【0167】
治療にポンプ/濾過システム100、カテーテル200、および流れ制御プロセス300を使用することが可能な別の企図される状態は、髄膜炎(meningitis)である。細菌性髄膜炎は、病原細菌がクモ膜下腔に入って化膿性の炎症反応を引き起こしたときに生じる。グラム陰性細菌性髄膜炎(GBM)は、グラム陰性細菌が中枢神経系(CNS)に侵入した場合に生じる悲惨な状態である。毎年GBMについては30,000の米国の症例及び世界で100万以上の症例がある。細菌感染がGBMとして現われる場合、GBMは、多くの場合30%を超える死亡率、及び病的状態という極めて重い負担を患者に与え、かつ標準的な抗生物質に弱い細菌によって引き起こされた場合ですら治療するのは臨床医にとって非常に困難である。GBMは、小児又は免疫不全の患者、例えばHIV患者、臓器移植処置後若しくは脳外科的処置後の患者などにおいて最も多く見られる。現行の治療ガイドラインには、少なくとも10日間~2週間のセファロスポリン又はカルバペネム又はポリマイシン(polymycin)の静脈内投与が含まれている。昔から外傷及び脳外科的処置を中心として生じている、グラム陰性の腸内細菌性髄膜炎が存在する状態では、耐性の高い細菌が疾患を引き起こす可能性がある。治療のためにはアミノグリコシド及びポリマイシン(polymycin)のような抗生物質が考えられるが、CNS疾患では全身に使用されるこれらの作用薬については治療‐毒性の比率が不十分であり、最適な治療は存在しないかもしれない。
【0168】
重要な優先事項と考えられてきた3種の主要なグラム陰性の病原体には、シュードモナス属菌、アシネトバクター属菌及びおよびクレブシエラ属菌(PAK)が含まれる。これらのグラム陰性細菌は、肺炎、血流感染及びとりわけ院内感染髄膜炎のような、重症かつ多くの場合致命的な感染症を引き起こす可能性がある。これらの細菌は、カルバペネム及び第3世代セファロスポリン(多剤耐性細菌性髄膜炎を治療するために利用可能な最高の抗生物質)を含む多くの抗生物質に対し耐性を獲得してきた。世界保健機関は、多面的な手法が必要であること、並びに、手を打たなければさらなる公衆衛生問題を引き起こして患者のケア及び生存に劇的な影響を与えるであろうことを、認めている。このことは、目下利用可能な抗生物質では治療できないGBM感染症の極めて現実的な見込みを提起している。この抗生物質発見以前の時代への逆戻りは、不幸にも世界の多くの地域において現実となっている。
【0169】
CSFの汚染生物体量の低減は、生存に影響を及ぼすただ一つの最も重要な要因であって、より良好な全体的臨床転帰に結びつく。最初の24時間におけるCSFの滅菌を用いる、CSFの汚染生物体量の迅速な低減は、重要である。抗生物質の効果の最適化は、存在する生物体負荷量に、及び感染初期に開始されようとしている抗生物質治療の直接的活性に、直に左右される。どの抗生物質製剤が最も有効であろうかを判定することは、PAKのような薬物耐性細菌に直面してますます困難となっている。細菌性髄膜炎のための新しい抗生物質についての臨床データは、耐性の出現に簡単に歩調を合わせてきたわけではなく、また新しい治療手法の開発は切に必要とされている。加えて、実験動物モデルは、細菌性髄膜炎の転帰がクモ膜下腔(SAS)における炎症の重症度と関係しており、炎症性反応の調節によって改善される可能性が考えられることを示している。
【0170】
ポンプ/濾過システム100、カテーテル200及び流れ制御プロセス300は、CSFへの直接的な接近手段を提供し、かつ標的病原体の除去と併せた能動的な循環を作り出す、革新的な新しい治療オプションを提供することができる。これは、CFU及びCSFの汚染細菌量を迅速に低減し、かつ細菌性髄膜炎の罹患率及び死亡率の低減につなげる、新規な治療手法を提供することができる。
【0171】
従って、本方法は、ポンプ/濾過システム100、カテーテル200及び流れ制御プロセス300を使用してCSF中の病原性細菌及び/又は該細菌の関連するエンドトキシン及び/又はサイトカインのうち1以上の存在を低減又は排除することにより、細菌性髄膜炎の症状の改善又は低減をもたらす。該方法は、患者からCSFを取り出すステップ、病原性細菌、及び/又は該病原性細菌に関連したエンドトキシン、及び/又はサイトカイン、のうち少なくとも1つをCSFから取り出すステップ、並びに、この内生のCSFを患者に返戻するステップを含み、取り出すステップ及び返戻するステップは、治療の少なくとも一部分の間に同時に実施される。いくつかの実施形態では、サイトカインは、IL‐1ra、IL‐6、TNF、CRP、及びCXCL10、又はこれらの組み合わせで構成されている群から選択される。
【0172】
上記のうちのいくつかにおいて、及びその他の実例において、該方法は、脊柱のアクセス部位を通じて患者の脊柱のCSF腔の中へとカテーテル200を導入するステップ、脊柱のCSF腔を通して脳に向かってカテーテル200を、カテーテル200の複数の開口部がCSF腔の内部に、かつ予め選択された距離の間隔を置かれるか又は適切な距離に調整されて配置されるように、前進させるステップ、カテーテル200の開口部のうち少なくともいくつかを通してCSFを抜き出すステップ、抜き出したCSFからポンプ及び濾過システム100および流れ制御プロセス300を用いて病原性細菌及び/又は該細菌の関連するエンドトキシン及び/又はサイトカインのうち少なくとも1つを取り出す(それによりCSFの状態調整を行う)ステップ、並びに、状態調整がなされたCSFをカテーテル200の開口部のうち他のものを通して返戻するステップ、によって細菌性髄膜炎の症状の改善又は低減をもたらす。
【0173】
真菌性髄膜炎(FM)は、脳脊髄液(CSF)を介したクモ膜下腔(SAS)への任意の主要な真菌病原体の播種から生じる、中枢神経系の髄膜の感染症である。クリプトコックス性髄膜炎(CM)はクリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)によって引き起こされ、成人における真菌性髄膜炎の最も一般的な原因である。真菌性髄膜炎の原因となる他の病原体には、C.ガッティ(C. Gattii)、ブラストミセス属菌、ヒストプラスマ属菌、コクシジオイデス属菌が含まれる。CMのための治療は、抗真菌剤を用いた導入、地固め、及び維持の手法に基礎を置いており、他所で明確に定められているが、罹患率及び死亡率は継続して高い。創薬の計画は、血液脳関門(BBB)の通過に乏しいため限定されている。このため、本発明者らは、感染したCSFの濾過のための、代替のカテーテルを用いる体外濾過システム(Neurapheresis療法)を開発した。ここで本発明者らは、感染したCSFからのC.ネオフォルマンス細胞、多糖類抗原、及び炎症伝達物質の濾別のための代替の機械的治療介入としての、Neurapheresis療法のin vitroの特徴解析について説明する。
【0174】
ポンプ/濾過システム100、カテーテル200及び流れ制御プロセス300は、CSFへの直接的な接近手段を提供し、かつ標的病原体の除去と併せた能動的な循環を作り出す、革新的な新しい治療オプションを提供することができる。これは、CFU及びCSFの汚染真菌量を迅速に低減し、かつ真菌性髄膜炎の罹患率及び死亡率の低下につなげる、新規な治療手法を提供することができる。少なくともいくつかの実例では、ポンプ/濾過システム100およびカテーテル200は、C.ネオフォルマンスのような真菌が通過することを全く許さないように設計された1以上のフィルター(例えばフィルター114/116)を備えることができる。上記のうちのいくつかにおいて、及びその他の実例において、ポンプ/濾過システム100およびカテーテル200は、真菌(例えばC.ネオフォルマンス)、関連する抗原、及び炎症性物質のうち少なくともいずれかを取り除くように設計された1以上のフィルター(例えばフィルター114/116)を備えることができる。少なくともいくつかの実例では、5kDaのTFF及び100kDaのTFFのうち少なくともいずれか一方をCSFが1回通過することが、CSF中のC.ネオフォルマンスを取り除くか又はそうでなければ(other)C.ネオフォルマンスのCFUを低減するのに十分である可能性がある。加えて、5kDaのTFF及び100kDaのTFFのうち少なくともいずれか一方は、CSFからC.ネオフォルマンス抗原を取り除くか又はそうでなければ低減するのに十分である可能性がある。更に、5kDa及び100kDaのうち少なくともいずれか一方のTFFはさらに、CSFからいくつかの神経炎症性物質、例えばIL‐1ra、IL‐6、TNF、CRP、及びCXCL10/IP‐10のうち少なくともいずれかを取り除くことも可能である。
【0175】
従って、本方法は、ポンプ/濾過システム100、カテーテル200及び流れ制御プロセス300を使用して、CSF中の病原性真菌及び/又は該真菌の関連抗原(クリプトコックス抗原)及び/又はサイトカインのうち1以上の存在を低減又は排除することにより、真菌性髄膜炎の症状の改善又は低減をもたらす。該方法は、本明細書中に記載されるように患者からCSFを取り出すステップと;CSFから、病原体真菌、及び/又は該病原体真菌の関連抗原、及び/又はサイトカインのうち少なくとも1つを取り出すステップと、この内生のCSFを患者に返戻するステップと、を含み、取り出すステップ及び返戻するステップは、治療の少なくとも一部分の間に同時に実施される。いくつかの実施形態では、サイトカインは、IL‐1ra、IL‐6、TNF、CRP、及びCXCL10、又はこれらの組み合わせで構成されている群から選択される。真菌及び/又は抗原及び/又はサイトカインは、1以上の濾過システムを使用してCSFから取り出すことが可能である。5kDa及び100kDaのうち少なくともいずれか一方のTFFはさらに、いくつかの神経炎症性物質、例えばIL‐1ra、IL‐6、TNF、CRP、及びCXCL10/IP‐10のうち少なくともいずれかを取り除くことも可能である。
【0176】
上記のうちのいくつかにおいて、及びその他の実例において、該方法は、脊柱のアクセス部位を通じて患者の脊柱のCSF腔の中へとカテーテル200を導入するステップ、脊柱のCSF腔を通して脳に向かってカテーテル200を、カテーテル200の複数の開口部がCSF腔の内部に、かつ予め選択された距離の間隔を置かれるか又は適切な距離に調整されて配置されるように、前進させるステップ、カテーテル200の開口部のうち少なくともいくつかを通してCSFを抜き出すステップ、抜き出したCSFからポンプ及び濾過システム100および流れ制御プロセス300を用いて病原性真菌及び/又は該真菌の関連する抗原及び/又はサイトカインのうち少なくとも1つを取り出す(それによりCSFの状態調整を行う)ステップ、並びに、状態調整がなされたCSFをカテーテル200の開口部のうち他のものを通して返戻するステップ、によって真菌性髄膜炎の症状の改善又は低減をもたらす。
【0177】
少なくともいくつかの実例では、ポンプ/濾過システム100、カテーテル200及び流れ制御プロセス300はCNSの一部に薬物を送達するために使用されてもよい。例えば、CMのためのいくつかの治療には、アムホテリシンB(AmB)及びフルシトシンのような静脈内及び経口用の抗真菌剤の投与が含まれうる。一般に、髄腔内(IT)AmBボーラス投与は、注射部位付近における神経に有毒な薬物濃度を伴う可能性がある。ポンプ/濾過システム100、カテーテル200及び流れ制御プロセス300の使用は、AmB及びその他の薬物のうち少なくともいずれかのIT注入を可能にするかもしれない。予想外にも、ポンプ/濾過システム100、カテーテル200及び流れ制御プロセス300は、AmBのようないくつかの薬物を低減し、濾別し(例えば第1のフィルター114、第2のフィルター116、若しくは両方を用いる)、又はその他の方法で除去するために使用されることも可能である。このために、AmBの用量を、所望の用量まで正確に漸増することが可能である。AmBのレベルが望ましからぬレベル(例えば望ましからぬ高レベル)に達した場合、ポンプ/濾過システム100、カテーテル200及び流れ制御プロセス300は、CSFから不要な量のAmBを迅速に除去するために使用することが可能である。
【0178】
ポンプ/濾過システム100、カテーテル200及び流れ制御プロセス300は、治療用量と毒性用量との差が比較的小さい薬物を含むいくつかの他の薬物を送達するために使用することも可能である。例えば、薬物はポンプ/濾過システム100、カテーテル200及び流れ制御プロセス300を使用してCSFに注入されることが可能である。毒性の徴候が観察された場合、又はCSF中の薬物濃度の計測値が所望されるよりも高い場合、ポンプ/濾過システム100、カテーテル200及び流れ制御プロセス300を、CSFから薬物を迅速に除去するために使用することが可能である。このように、ポンプ/濾過システム100、カテーテル200及び流れ制御プロセス300は、所望の通りに、患者のCSF中への制御された薬物送達及びCSFからの薬物の迅速な除去のために使用することが可能である。
【0179】
ポンプ/濾過システム100、カテーテル200及び流れ制御プロセス300はさらに、いくつかの状態に伴うICPを低減する助けとなることも可能である。例えば、いくつかの状態(例えば、がん、HSE、及びその他など)は、CSFの再吸収のための天然の経路を遮断するか、閉塞するか、又はその他のかたちで影響を与えている、細胞(例えば腫瘍細胞など)、炎症性物質、及び同様なものによる、ICPの上昇を伴う場合がある。ポンプ/濾過システム100、カテーテル200及び流れ制御プロセス300を使用することにより、天然の再吸収経路を遮断しているかもしれない物質を除去/低減せしめ、それによりCSFの体積に望ましい影響を及ぼしてICPを低減することが可能である。
【0180】
脳脊髄腔及びCNSのうち少なくともいずれか一方に第1の位置でアクセスするための第1のポート、並びに脳脊髄腔及びCNSのうち少なくともいずれか一方に第2の位置でアクセスするための第2のポートを利用するシステムも、企図される。そのようなポートは、急性期に移植されてもよいし、長期間にわたって移植されてもよい。いくつかの実例では、ポートは、脳脊髄腔及びCNSのうち少なくともいずれか一方への物質の注入、脳脊髄腔及びCNSのうち少なくともいずれか一方からの物質の除去、又は両方を可能にすることができる。ポートのうち一方又は両方が、オマヤ貯留槽であるか又はそうでなければオマヤ貯留槽に類似したものであってよい。ポートは、チューブ/カテーテル、ポンプ/濾過システム100、カテーテル200及び流れ制御プロセス300のうち少なくともいずれかと共に使用されるように設計可能である。例えば、第1のチューブ及び第1のカテーテル200のうち少なくともいずれか一方はポートのうちの1つに接続されているか又はそうでなければ接続可能であってよく、かつ第2のチューブ及び第2のカテーテル200のうち少なくともいずれか一方は他方のポートに接続されているか又はそうでなければ接続可能であってよい。CSFは、患者から(例えば、チューブ、第1若しくは第2のカテーテル200のうちいずれか、又はその他同種のものを使用して)取り出されて、流れ制御プロセス300を用いてポンプ/濾過システム100によって濾過されることが可能である。いくつかの実例では、濾過されたCSFは、同じチューブ/カテーテルを使用して患者に返戻されてもよい。他の実例では、濾過されたCSFは、別のチューブ/カテーテルを使用して患者に返戻されてもよい。換言すれば、CSFは第1のポートでカテーテルを使用して患者から取り出され、かつ次に第2のポートでカテーテルを使用して患者に返戻されることが可能である。これにより、脳脊髄腔及びCNSのうち少なくともいずれか一方を通してCSFを循環させる助けとなるループ様の経路を形成することができる。ポートは、CSFの循環を促進する助けとなるかたちで患者に沿って位置決めされることが可能である。例えば、ポートのうちの一方は患者の頭蓋に位置付けられてもよく(例えば、脳の脳室へのアクセスを提供することを含みうる)、他方は脊柱の腰部領域に沿って位置付けられてもよい(例えば、腰部脳脊髄腔に隣接する位置での脳脊髄腔へのアクセスを提供してもよい)。その他の位置も企図される。
【0181】
方向についての言及(例えば、基端側、先端側、上側、下側、上方向、下方向、左、右、側方、前方、後方、上部、底部、上方、下方、垂直、水平、時計回り、及び反時計回り)は全て、本開示についての読者の理解を助けるための識別を目的として使用されているにすぎず、特に本開示の配置状態、配向、又は使用に関して、限定を設けるものではない。接続についての言及(例えば、添着した、結合した、接続した、及び連結した)は広く解釈されるべきであり、かつ別途指示のないかぎり、一群の要素の間の媒介部材、及び要素間の相対的運動を含むことができる。そのため、接続についての言及は、2つの要素が直接接続されて互いに固定された関係にあることを必ずしも暗示するものではない。なお、送達用シース及び送達用カテーテルはこの説明の目的のためには互換的に使用可能である。例示の図面は単に例証を目的としており、本明細書に添付された図面において反映された寸法、配置状態、順序及び相対的大きさは、変更可能である。
【0182】
米国特許出願公開第2016/0051801号明細書は参照により本願に組込まれる。米国特許第8,435,204号明細書は参照により本願に組込まれる。米国特許出願第62/568,412号明細書(特許弁護士整理番号1421.1010100)は参照により本願に組込まれる。米国特許出願第62/598,846号明細書(特許弁護士整理番号1421.1011100)は参照により本願に組込まれる。
【0183】
上記の明細書、実施例及びデータは、以降の特許請求の範囲に示されるような開示内容の典型的な実施形態の構造及び使用についての完全な説明を提供する。特許請求の範囲に示されるような開示内容の様々な実施形態について、ある程度具体的に、又は1以上の個々の実施形態に関して、上述してきたが、当業者が、本開示の思想又は範囲から逸脱することなく、開示された実施形態に多くの変更を加えるということも考えられる。したがって他の実施形態も企図される。意図されているのは、上記の説明に含まれかつ添付図面に示されている全ての事柄は単に特定の実施形態の例証にすぎず、かつ限定的なものではない、と解釈されるべきであるということである。細部又は構造の変更は、本開示の基本的な要素を逸脱しなければ為されることが可能である。