(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】パワー半導体モジュール、マスク、測定方法、コンピュータソフトウェア、及び記録媒体
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20220708BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20220708BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20220708BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20220708BHJP
H01L 27/06 20060101ALI20220708BHJP
H01L 27/088 20060101ALI20220708BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20220708BHJP
H01L 27/04 20060101ALI20220708BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20220708BHJP
G01K 7/01 20060101ALI20220708BHJP
H03K 17/00 20060101ALN20220708BHJP
H03K 17/567 20060101ALN20220708BHJP
【FI】
H01L29/78 652S
H01L29/78 652Q
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/78 655A
H01L29/78 655G
H01L29/78 652K
H01L29/78 652M
H01L29/78 658L
H01L29/78 657E
H01L29/78 657Z
H01L29/78 657G
H01L27/06 102A
H01L27/088 C
H01L27/04 P
H01L27/04 U
H01L27/04 H
H01L21/66 T
G01K7/01 C
H03K17/00 B
H03K17/567
(21)【出願番号】P 2021517158
(86)(22)【出願日】2019-06-04
(86)【国際出願番号】 JP2019022841
(87)【国際公開番号】W WO2020017185
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2020-12-02
(32)【優先日】2018-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503163527
【氏名又は名称】ミツビシ・エレクトリック・アールアンドディー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECTRIC R&D CENTRE EUROPE B.V.
【住所又は居所原語表記】Capronilaan 46, 1119 NS Schiphol Rijk, The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】デグランヌ、ニコラ
【審査官】石塚 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-503022(JP,A)
【文献】特開2010-258233(JP,A)
【文献】特開2008-218611(JP,A)
【文献】特開平08-088547(JP,A)
【文献】特開2000-338146(JP,A)
【文献】特開平10-246676(JP,A)
【文献】特開2004-134472(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0001785(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0163689(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0194635(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/739
H01L 21/336
H01L 21/8234
H01L 21/822
H01L 21/66
G01K 7/01
H03K 17/00
H03K 17/567
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極であるゲートG及び第2の電極であるエミッタEを有する少なくとも1つの絶縁ゲートバイポーラトランジスタIGBT、又は、
第1の電極であるゲートG及び第2の電極であるソースSを有する少なくとも1つの金属酸化物半導体電界効果トランジスタMOSFETを備え、
前記第1の電極は一体で作られたポリシリコン材料を含む、パワー半導体モジュールであって、
一体部は、モニタリング部分の一部を構成し、
前記モニタリング部分は、前記ポリシリコン材料を含み、前記第2の電極と電気接触しており、前記パワー半導体モジュールの動作状態において、漏洩電流が前記第1の電極と前記第2の電極との間に流れ、
前記モニタリング部分は、前記パワー半導体モジュールの動作状態中に、前記モニタリング部分の温度に応じた可変抵抗を有するように合わせて選択される場所、形態、サイズ、及び材料組成を有し、
前記モニタリング部分は、
少なくとも前記第1の電極のトレンチ及び前記第2の電極のダミートレンチを連続して覆うポリシリコン層、
前記第1の電極および前記第2の電極の間の電気的接続を確保するように、前記第1の電極のポリシリコン材料と前記第2の電極のポリシリコン材料との間に配設される伸長部、
のうちの少なくとも1つを備える、パワー半導体モジュール。
【請求項2】
前記モニタリング部分は、
前記モニタリング部分の抵抗値が、前記パワー半導体モジュールの予想動作温度範囲について10kΩ~1MΩの値を有し、及び/又は、
前記モニタリング部分の抵抗値が、前記パワー半導体モジュールの前記予想動作温度範囲内で少なくとも2%の係数の変動を有するように、
合わせて選択される材料組成及び有効断面を有する、請求項1に記載のパワー半導体モジュール。
【請求項3】
前記モニタリング部分は、
前記第1の電極のトレンチの壁を覆う酸化物層を貫通して配置される通路、
をさらに備える、請求項1又は2に記載のパワー半導体モジュール。
【請求項4】
前記第1の電極と前記第2の電極との間に電気接続される測定回路を更に備える、請求項1~3のいずれか一項に記載のパワー半導体モジュール。
【請求項5】
前記測定回路は、
少なくとも1つのアナログ・デジタル変換器と、
抵抗値Rmを有する抵抗であって、Rmはα×Rに等しく、Rは前記モニタリング部分の抵抗であり、αは0.1~10にある係数である、抵抗と、
前記第1の電極、前記第2の電極、及びゲートドライバの電圧源を含む閉じた電気回路に前記抵抗を接続し、および前記電気回路から前記抵抗を切り離すように配置されるスイッチのセットと、
を含む、請求項4に記載のパワー半導体モジュール。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のパワー半導体モジュールの温度を推定する測定方法であって、
a)絶縁ゲートバイポーラトランジスタIGBTのエミッタEから、または、金属酸化物半導体電界効果トランジスタMOSFETのソースSから、それぞれ電流が提供されないときに測定をトリガーすることと、
b)前記パワー半導体モジュールの前記第1の電極の診断モードを生成することであって、前記診断モード中に、前記第1の電極、前記第2の電極、及びゲートドライバの電圧源を含む閉じた電気回路内に抵抗が配置されるように、生成することと、
c)前記電気回路上で少なくとも電圧又は電流をモニタすることと、および
d)前記モニタされた値を較正データに従って温度に変換することと、
を含む、方法。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載のパワー半導体モジュールの接続部の健全状態を推定する測定方法であって、
1)絶縁ゲートバイポーラトランジスタIGBTのエミッタEの接続部に、または、金属酸化物半導体電界効果トランジスタMOSFETのソースSの接続部に、それぞれ大電流が通過するときに測定をトリガーすることと、
2)前記パワー半導体モジュールの前記第1の電極の診断モードを生成することであって、前記診断モード中に、前記第1の電極が電気的に切り離される、生成することと、
3)少なくとも電圧をモニタすることと、および
4)前記モニタされた値を較正データに従って損傷指標に変換することと、
を含む、方法。
【請求項8】
コンピュータソフトウェアであって、前記コンピュータソフトウェアがプロセッサによって実行されるときに、請求項
6又は請求項
7に記載の方法を実施する命令を含む、コンピュータソフトウェア。
【請求項9】
コンピュータソフトウェアがプロセッサによって実行されるときに、請求項
6又は請求項
7に記載の方法を実装するための前記コンピュータソフトウェアが記憶されている、コンピュータ可読非一時的記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワー半導体デバイスの技術分野に関する。より詳細には、本発明は、そのようなデバイスのモニタリングに関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistors)及び金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET:Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistors)のようなパワー半導体デバイス内の温度をモニタすることは重要である。例えば、温度をモニタすることは、保護、条件、及び健全度をモニタリングするために必要である。温度モニタリングでは、特定のセンサをダイのできる限り近くに配置することが知られている。ダイは、概してそのようなデバイスの最も重要であり、かつ最も高温の部分である。温度は、温度センサを使用することによって直接的に、又は、他のセンサを使用することによって間接的に測定することができる。
【0003】
一般的に、自由に扱えるダイの表面は非常に小さい。自由に扱える表面上にセンサを固定することは、難しく、場合によっては、不可能ですらある。この問題を回避するため、ダイから或る距離を置いてセンサを配設し、ダイに隣接する箇所で測定した温度又は推定した温度に応じて補正して、ダイ自身の温度を推定する数学的関数を使用することが通例である。しかしながら、これで推定された温度は不正確である。
【0004】
さらに、そのようなセンサを使用することは、半導体デバイスを得るために、更なる機器、接続部、及びプロセスを付加することになる。そのため、コストが高くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、この状況を改善するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
-第1の電極であるゲートG及び第2の電極であるエミッタEを有する少なくとも1つの絶縁ゲートバイポーラトランジスタIGBT、又は、
-第1の電極であるゲートG及び第2の電極であるソースSを有する少なくとも1つの金属酸化物半導体電界効果トランジスタMOSFETを備える、
パワー半導体モジュールについて考える。第1の電極は一体に作られたポリシリコン材料を含む。一体部は、モニタリング部分の一部を構成している。モニタリング部分は、第2の電極と電気的に接触している。したがって、モジュールが動作している状態において、漏洩電流が第1の電極と第2の電極との間に流れる。モニタリング部分は、モジュールが動作している状態において、モニタリング部分の温度に応じた抵抗の変化を有するように合わせて選択された場所、形態、サイズ、及び材料組成を有する。
【0007】
別の態様では、本明細書で述べるようなモジュールの作製中におけるポリシリコン堆積工程用のマスクが提案される。このマスクは、第1の電極及びモニタリング部分を形成するためのポリシリコン材料が、1回の堆積工程で、一体で堆積されるように構成される。
【0008】
別の態様では、本明細書で述べるようなパワー半導体モジュールの温度を推定する測定方法が提案される。この方法は、
a)絶縁ゲートバイポーラトランジスタIGBTのエミッタEから、又は、金属酸化物半導体電界効果トランジスタMOSFETのソースSから、電流が提供されないときに測定をトリガーすること;
b)モジュールの第1の電極の診断モードを生成することであって、診断モード中に、第1の電極、第2の電極、及びゲートドライバの電圧源を含む閉じた電気回路内に抵抗が配置される間、診断モードを生成すること;
c)上記回路上で少なくとも電圧又は電流をモニタすること;および、
d)モニタされた値を較正データに従って温度に変換すること、
を含む。
【0009】
別の態様では、ソフトウェアがプロセッサによって実行されるときに、本明細書で規定されるような方法の少なくとも一部を実施する命令を含むコンピュータソフトウェアが提案される。別の態様では、ソフトウェアがプロセッサによって実行されるときに、本明細書で規定されるような方法を実施するためのソフトウェアが記憶されているコンピュータ可読非一時的記録媒体が提案される。
【0010】
以下の特徴は、任意選択で、別々に又は互いに組み合わせて実行することができる。
【0011】
モニタリング部分は、
-モニタリング部分の抵抗値Rが、モジュールの予想動作温度範囲において10kΩ~1MΩの値を有し、及び/又は、
-モニタリング部分の抵抗値Rが、モジュールの予想動作温度範囲内で少なくとも2%の係数の変動を有するように、
合わせて選択される材料組成及び有効断面を有する。
【0012】
モニタリング部分は、以下、すなわち、
-第1の電極のトレンチの壁を覆う酸化物層を貫通して配置される通路、
-少なくとも第1の電極のトレンチ及び第2の電極のダミートレンチを連続して覆うポリシリコン層、
-上記2つの電極の間の電気的接続を確保するように、第1の電極のポリシリコン材料と第2の電極のポリシリコン材料との間に配設される伸長部、
のうちの少なくとも1つを備える。
【0013】
モジュールは、第1の電極と第2の電極との間に電気接続される測定回路を更に備える。
【0014】
測定回路は、
-少なくとも1つのアナログ・デジタル変換器と、
-抵抗値Rmを有する抵抗であって、Rmはα×Rに等しく、Rはモニタリング部分の抵抗であり、αは0.1~10にある係数である、抵抗と、
-第1の電極、第2の電極、及びゲートドライバの電圧源を含む閉じた電気回路に上記抵抗を接続し、および、この電気回路から上記抵抗を切り離すように配置されるスイッチのセットと、
を含む。
【0015】
パワー半導体モジュールの接続部の健全状態を推定する測定方法は、
1)絶縁ゲートバイポーラトランジスタIGBTのエミッタEの接続部に、または、金属酸化物半導体電界効果トランジスタMOSFETのソースSの接続部に、大電流が通過するときに測定をトリガーすること;
2)モジュールの第1の電極の診断モードを生成することであって、診断モード中に、上記第1の電極が電気的に切り離されるように、生成すること;
3)少なくとも電圧をモニタすること;および
4)モニタされた値を較正データに従って損傷指標に変換すること、
を含む。
【0016】
本発明及びその種々の実施形態によると、埋め込み式温度センサを有する半導体デバイスを提案することができる。多くの場合、MOSFET/IGBT上でモニタリング要素によって占有される補足エリアはゼロ又はほぼゼロである。提案される技術的解決策は、半導体デバイスの既存のアーキテクチャのほとんどの部分に容易に適応可能かつ、また互換性がある。半導体を作成するために使用される既存のマスクに対するわずかな修正によって、一体化された熱センサを有する半導体を得ることができる。
【0017】
他の特徴、詳細及び利点について、以下の詳細な説明かつ図において示す。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態による電気回路図である。
【
図2】本発明の一実施形態による電気回路図である。
【
図3】本発明の一実施形態による電気回路図である。
【
図4】
図3の回路図に関連する時間範囲における電圧の挙動を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態によるモジュールの上面図である。
【
図7】
図6と同様の図であり、以降の図の断面図の場所を示した、図である。
【
図9】本発明の1つの実施形態に対応する断面図である。
【
図11】本発明の1つの実施形態に対応する断面図である。
【
図13】本発明の1つの実施形態に対応する断面図である。
【
図14】本発明によるかつ
図7上で示す部分に対応するモジュールの写真である;写真は、本出願人のパートナーである「SYSTEM PLUS CONSULTING」社によって作成されたものである。
【
図15】本発明によるかつ
図9上で示す部分に対応するモジュールの写真である;写真は、本出願人のパートナーである「SYSTEM PLUS CONSULTING」社によって作成されたものである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図及び以下の詳細な説明は、本質的に、幾つかの厳密な要素を含む。それらは、本発明をわかりやすくするために、また、必要な場合は本発明を定義するために使用することができる。
【0020】
図1及び
図2を参照する。これらの図のそれぞれは、パワー半導体モジュール1を示す。
図1では、モジュール1は、第1の電極11であるゲート(G)及び第2の電極12であるエミッタ(E)を有するIGBTを備える。
図2では、モジュール1は、第1の電極11であるゲート(G)及び第2の電極12であるソース(S)を有するMOSFETを備える。以下で、「第1の電極11(first electrode 11)」及び「第2の電極12(second electrode 12)」という用語は、2つのタイプの半導体(IGBT及びMOSFET)のそれぞれの電極を指定するために使用される。換言すれば、以下で述べる特徴及び実施形態が、IGBT又はMOSFETといったタイプを問わず、任意の半導体コンポーネントに適用できることを当業者は理解するであろう。
【0021】
モジュール1はモニタリング部分13を備える。モニタリング部分13は、第1の電極11と第2の電極12との間に電気的に配設される。以下で述べるように、モジュール1の動作状態中に、モニタリング部分13は、感温抵抗器(又は「サーミスタ」)の挙動を有することになる。モニタリング部分13は、IGBTのゲート・エミッタ間に並列に、または、MOSFETのゲート・ソース間に並列に、それぞれ配設され、それにより、ゲート・エミッタ間電圧、または、ゲート・ソース間電圧がそれぞれ印加されると、定常状態において漏洩電流がモニタリング部分13を通して流れる。
【0022】
ここで、
図3及び
図4を参照する。この実施形態において、逆並列ダイオードが、IGBTのコレクタ(C)とエミッタ(E)との間に接続される。モジュール1は、第1の電極11と第2の電極12との間でかつモニタリング部分13に並列に電気接続された測定回路2を更に備える。モニタリング部分13は、
-正の、又は負の電圧が2つの電極11、12の間に印加されると、第1の電極11と第2の電極12との間に感温電流を生成し、
-正の、又は負の電流が2つの電極11、12の間に印加されると、第1の電極11と第2の電極12との間に感温電圧を生成する、
という効果を有する。
そのため、温度の効果は、電流I
meas又は電圧V
measをモニタすることによって、第1の電極11の側(ゲート側)で測定することができる。
【0023】
図3では、測定回路2は、
-+V
C及び-V
C(例えば、+15V及び-15V)で参照される2つの電圧発生器と、
-第1の電極11、モニタリング部分13、及び第2の電極12から構成される閉じた電気回路内で2つの電圧発生器+V
C及び-V
Cに交互に接続するように配置された2つのスイッチ14、15と、
-ADC(ADCは「アナログ・デジタル変換器(Analog-to-Digital Converter)」を表す)の形態の出力及び抵抗17に直列接続されたスイッチ16を含むセンサ部3と、
を備える。例において、抵抗17の抵抗値Rmは、モニタリング部分13の抵抗Rと同じオーダーの大きさである。例えば、Rm=α×Rであり、係数αは0.1~10にある。そのような回路によると、第1の電極11上の漏洩電流I
leak(Tj)又は第1の電極11と第2の電極12との間の電圧V
geを検出し測定することが可能になる。
【0024】
図4において、参照符号14、15、16は、対応するスイッチ14、15、16が閉じる状態に対応する。スイッチは、第1の電極11、第2の電極12、及びゲートドライバの電圧源を含む閉じた電気回路内に抵抗17を接続し、または、電気回路から抵抗17を切り離す手段の例である。
【0025】
種々の実施形態において、測定回路2は、逆並列ダイオードを通って流れる電流が通過するときの、第2の電極接続部18内の電圧降下を測定することを実施するために使用される。この場合、第1の電極11(ゲート)は、フローティングに維持される。その電位は、第2の電極12(エミッタ)の電位である。第1の電極11と第2の電極接続部18との間で測定される電位は、第2の電極接続部18の抵抗に相関する。この測定により、第2の電極接続部18(エミッタ接続部)、例えば、ワイヤボンドの健全度をモニタすることができる。そのような方法は、後で述べる。
【0026】
構造的に、第1の電極11は、一体で作られたポリシリコン材料を含む。一体部は、部分的にモニタリング部分13も作る。第1の電極11及びモニタリング部分13は、全てワンブロックで作られ、上記ブロックはポリシリコン材料を含む。モニタリング部分13は、第2の電極12と電気接触しており、それにより、モジュール1の動作状態において、漏洩電流が、モニタリング部分13を介して第1の電極11と第2の電極12との間に流れる。モニタリング部分13は、モジュール1の動作状態中に、その温度Tに応じた可変抵抗Rを有するように合わせて選択される場所、形態、サイズ、及び材料組成(ポリシリコン)を有する。
【0027】
以下で、トレンチ構造についての例を詳述する。上記の、また以下の特徴は、トレンチ構造と異なる構造、例えば、プレーナ構造(トレンチなし)にも適用することができる。
【0028】
図5は、トレンチ構造におけるダイレイアウトの例を示す。モジュール1の上面のみを
図5で見ることができる。第1の電極11(ゲート)はモジュール1の周縁に沿って延在する。第2の電極12は、
図5で内部エリアの上部表面に対応する。トレンチ21は上部表面の下に形成される。トレンチ21は、
図5では水平で、細く、暗いラインに対応する。トレンチ21は、
図5の水平方向に、実質的に直線状でかつ互いに平行である。電気絶縁体23は、周縁(第1の電極11)と内部エリアの上部表面(第2の電極12)との間に設けられる。
図5で、電気絶縁体23は、トレンチ21の両端において、第1の電極11のラインに沿って延在する垂直ラインに対応する。電気絶縁体23は、導電性材料が局所的に存在しないことによって、例えば、上部導電性層が局所的に存在しないことによって得ることができる。
【0029】
ここで、
図6を参照する。
図6は、
図5上でVIで参照される部分の詳細を示す。2つのタイプのトレンチ21、すなわち、第1の電極トレンチ2111(又はゲートトレンチ)とダミートレンチ2112(第2の電極トレンチに対応する)とを区別することが可能である。第1の電極トレンチ2111は周縁(第1の電極11;ゲートライン)まで延在し、一方、ダミートレンチ2112は、周縁から或る距離を置いて中断される。以下の例において、また部分VIにおいて、ダミートレンチ2112は第2の電極12に電気接続される。モジュール1の残りにおいて、トレンチの一部は、非アクティブであり、第1の電極11にも、第2の電極12にも接続されない可能性がある。モジュール1は、電気を伝導するために必要である数より多くのトレンチ21を備えることができる。例えば、幾つかの実施形態において、未接続トレンチ(自由トレンチ)を許すことは、デバイス内の電界を低減することを可能にする。
【0030】
電気的観点において、第1の電極11(ゲート)は、電気的に相互接続されるモジュール1を3つの部分に分解することができ、第1の電極電位が存在する:
-第1の電極パッド(ゲートパッド)は、ライン(ゲートライン)を通して第1の電極トレンチ2111(ゲートトレンチ)に接続される。例えば、パッドは、少なくとも1つのワイヤボンドを介してモジュール1と別個の要素に接続される。例えば、パッドはアルミニウムで作られる;
-第1の電極ライン又は層(ゲートライン又はゲート層)は、モジュール1のアクティブエリア内で第1の電極電位(ゲート電位)を分配する。例えば、ゲートラインは、アルミニウム及び/又はポリシリコンで作られる;
-モジュール1のアクティブエリアに対応する第1の電極トレンチ2111(ゲートトレンチ)は、例えばポリシリコンで充填される。
【0031】
電気的観点において、第2の電極12(エミッタ/コレクタ)は、電気的に相互接続されるモジュール1を5つの部分に分解することができ、第2の電極電位が存在する:
-第2の電極パッド(エミッタ/コレクタパッド)は、プラグを通してシリコンのN+ドーピング領域及びダミートレンチ2112に接続される。例えば、パッドは、少なくとも1つのワイヤボンドを介してモジュール1と別個の要素に接続される。例えば、パッドはアルミニウムで作られる;
-第2の電極プラグ(エミッタ/コレクタプラグ)は、第2の電極パッドを第2の電極ライン及び/又はN+ドーピング領域及び/又はダミートレンチ2112に接続する垂直接続部を形成する。例えば、第2の電極プラグはタングステンで作られる;
-第2の電極ライン又は層(エミッタ/コレクタライン)は、例えば、非アクティブポリシリコン層を形成する;
-N+ドーピング領域は、半導体材料のアクティブエリアに対応する;
-第2の電極トレンチ2112(エミッタ/コレクタトレンチ)は、ゲート電位に直接的に接続されるのではなく、エミッタ/コレクタ電位に接続される。例えば、ダミートレンチ2112はポリシリコンで充填される。
【0032】
以下の実施形態において、サーミスタは、3つの第1の電極部分のうちの1つと、5つの第2の電極部分のうちの1つとの間に作成される。例えば、ポリシリコンパターンは、サーミスタを作成するために局所的に適応される。
【0033】
ここで、
図7を参照する。
図7は
図6と同様であり、3つの別個の切断平面を示しており、それぞれが詳細な実施形態の1つに対応する。参照符号VIIIを有する切断平面は、
図8及び
図9の平面に対応する。参照符号Xを有する切断平面は、
図10及び
図11の平面に対応する。参照符号XIIを有する切断平面は、
図12及び
図13の平面に対応する。3つの切断平面の位置は、実施形態を理解し比較することを助けるために同じ
図7上に示されている。3つの切断平面がたとえ同じ
図7上に示されていても、3つの実施形態は、互いに独立であり、同じモジュール1内で必ずしも組み合わされない。
【0034】
図8~
図13上に示す実施形態のそれぞれ1つの実施形態において、モジュール1は、複数の層の積層部100を含む。
図8で、例えば、積層部100は、下部から上部に、以下の層:
-仕上げ層101(又は「支持層」);
-第1のPドープ層102;
-N
+ドープ層103(又は「緩衝層」);
-第1のN
-ドープ層104(又は「半導体ベース層」);
-第2のN
-ドープ層105(又は「キャリア蓄積層」);
-第2のPドープ層106;
-酸化物層107;
-BPSG層108(珪酸ガラス;BPSGは「ほうりん珪酸ガラス」を表す);
-金属層109(例えば、アルミニウム)、
を備える。
【0035】
ここで、
図8及び
図9を参照する。第1の実施形態において、サーミスタは、少なくとも第1の電極トレンチ2111と、半導体材料のアクティブエリアに対応するN
+ドーピング領域との間にポリシリコンリンクを作成することによって形成される。
図8で見ることができるように、3つのダミートレンチ2112のそれぞれの内壁は、酸化物層107の酸化物と同様の酸化物である絶縁膜123によってコーティングされる。それによって、トレンチの内部は、積層部100の他の部分から電気絶縁される。3つのダミートレンチ2112のそれぞれでは、絶縁膜123の内部に、ポリシリコン充填剤121が充填される。ポリシリコン121によって、ダミートレンチ2112に沿った(
図7の水平方向に)電気伝導が可能になる。第1の電極トレンチ2111は、酸化物層107の酸化物と同様の酸化物である絶縁膜133によってコーティングされる。それによって、トレンチの内部は、積層部100の他の部分から電気絶縁される。第1の電極トレンチ2111では、絶縁膜133の内部に、ポリシリコン充填剤131が充填される。ポリシリコン131によって、第1の電極トレンチ2111に沿った(
図7の水平方向に)電気伝導が可能になる。トレンチ2111、2112は、垂直方向に積層部100を貫通して、N
-ドープ層104から酸化物層107まで延在する。
【0036】
図8で見ることができるように、モジュール1は、第1の電極トレンチ2111の両側にそれぞれ配設される一対のプラグを更に備える。プラグは、垂直方向に:
-第2のPドープ層106から酸化物層107まで延在し、それぞれ、下部分151、153;を含み、及び、
-酸化物層107から金属層109まで延在し、それぞれの下部分と連続する上部分141、143、
を含む。
【0037】
下部分151、153は、N+ドープであり、上部分141、143を介して第2の電極12と電気的に接触している。
【0038】
図8と
図9とを比較することにより、モニタリング部分13(サーミスタ)を得る方法を理解することができる。モニタリング部分13は、第1の電極11(ポリシリコン充填剤131)と一体で作られ、ポリシリコン材料を含む。モニタリング部分13は、下部分151、153、上部分141、143、及び金属層109を介して第2の電極12と電気接触している。モジュール1の動作状態において、漏洩電流は、第1の電極11と第2の電極12との間に流れる。
【0039】
第1の実施形態において、モニタリング部分13は、上記膜が形成されるときに、第1の電極トレンチ2111の絶縁膜133内の局所ギャップを維持することによって得られる。ここで、「ギャップ(gap)」は、膜内に中空部又は「窓(window)」を形成するためなどにおいて、特定の場所における、膜の自発的な欠如又は膜内に穴が開いているとして理解される必要がある。絶縁膜133を形成する酸化ステップは、例えば、選択的でない熱酸化である。ギャップを作成するため、所望のエリアが、例えば、窒化シリコン膜で前もって覆われる。窒化シリコン膜は、ずっと遅いレートで酸化されるため、酸素及び水蒸気の拡散を阻止する。その後、窒化シリコン膜は、酸化が完了した後に除去される。
【0040】
その後、第1の電極トレンチ2111がポリシリコン充填剤131を充填されると、ギャップも充填される。すなわち、ポリシリコン充填剤131及びモニタリング部分13は一体で作られる。本実施形態において、ポリシリコン充填剤131及びモニタリング部分13は単一ステップで作られる。
【0041】
ポリシリコンで作られるモニタリング部分13によって置換されるゲート酸化物内の局所ギャップによって、ゲート電位にある第1の電極トレンチ2111内のポリシリコン充填剤131から、(エミッタ/コレクタ電位にある)第2の電極12に接続される下部分151のN+ドープ領域までの電気接続部を作ることができる。ギャップの(そして、結果として得られるモニタリング部分13の)場所、形態、及びサイズは、サーミスタンス(thermistance)を設定するために合わせて選択される。サーミスタンスは、温度に応じた電気コンポーネントの抵抗挙動を規定し、NTC(「負の温度係数(Negative Temperature Coefficient)」)又はPTC(「正の温度係数(Positive Temperature Coefficient)」)のいずれにも定義することができる。
【0042】
換言すれば、モニタリング部分13の場所、形態、及びサイズは、抵抗Rが、モジュール1の動作状態中に、温度Tに応じて所定のかつ制御された方法で変動するようなモニタリング部分13の挙動を決定するために選択される。
【0043】
単一ギャップ(単一モニタリング部分13)を作ることができる。そのような場合、モニタリング部分13に、さらに高い抵抗値が設定される。ギャップの場所は、例えば、温度が一般的に最も高いモジュール1の中央に配置することができる。それに代わり、配置する場所は、温度が最も高いあるワイヤボンドの下にすることもできる。
【0044】
種々の実施形態において、複数のギャップを作ることができる。これによって、局所抵抗値を低減すること及び/又はモジュール1内の種々の部分の温度モニタリングを得ることができる。
【0045】
サーミスタンスを精密にセットアップする方法は、ギャップの面積(又は有効断面)を設定することである(他のパラメータは一定として考える)。本出願人が行った試験では、ギャップの面積が1μm2より小さい場合、良好なサーミスタンス挙動に達することができた。当業者は、モジュール1の特定の構造に応じた所望のサーミスタンスを有するために他のパラメータ(場所、形態、材料組成)を調整することになる。
【0046】
ポリシリコンは、一般的に、ドーピング濃度に依存して10-3Ω・cm~105Ω・cmに及ぶ抵抗率を有すると考えられる。温度の良好なモニタリングを有するため、モジュール1の予想される動作温度範囲について、抵抗値Rが10kΩ(デバイスの損傷によって規定される最小値)~1MΩ(測定回路の感度及びゲート酸化物の等価抵抗によって規定される最大値)の値を有するように、サーミスタンスがセットアップされるべきであると、本出願人は判断した。本明細書において、「モジュール1の予想される動作温度範囲」は、モジュール1の製造業者によって特に計画される温度範囲に対応する。そのような範囲は、任意の半導体モジュールとともに必ず提供される技術文書に示される。例えば、本出願人が試験を行ったモジュール1の温度範囲は25℃~125℃である。抵抗値Rが、モジュール1の予想される動作温度範囲内(例えば、25℃~125℃)で少なくとも2%の係数の変動を有するようにサーミスタンスがセットアップされるべきであるとも、本出願人は判断した。
【0047】
そのようなモニタリング部分13の挙動は、パワー半導体デバイス分野で使用される通常のポリシリコン材料によって得ることができる。種々の実施形態において、モニタリング部分13を構成するポリシリコンの特定のドーピング特性を使用することができる。そのようなドーピング特性は、モニタリング部分13に特有であり、(局所ドーピングによる)ポリシリコン充填剤131の残りの部分と異なるものとすることができるか、又は、一体型ポリシリコンにおいて均質とすることができる。換言すれば、ポリシリコンがたとえ一体で作られる場合でも、化学的組成は必ずしも均質でない。
【0048】
ここで、
図10及び
図11を参照する。第2の実施形態において、サーミスタは、少なくともダミートレンチ2112と第1の電極トレンチ2111との間にポリシリコンリンクを作成することによって形成される。第2の実施形態は、第1の実施形態より実装するのが容易である。
【0049】
図10及び
図11において、先行する図の要素と同様の要素は、同じ参照符号を有する。第1の実施形態(
図8及び
図9)と比較すると、下部のプラグは存在しない。プラグ144は、ダミートレンチ2112の上部に、BPSG層108を通して設けられる。積層部100の酸化物層107のほとんどの部分は、ダミートレンチ2112の上部においてポリシリコン層120によって置換される。ポリシリコン層120は、少なくともダミートレンチ2112の上部を覆う。
【0050】
通常、また、
図10に示すように、ダミートレンチ2112内のポリシリコン充填剤121と第1の電極トレンチ2111内のポリシリコン充填剤131との間の電気絶縁は、第1の電極トレンチ2111の上部に保存される酸化物層107の部分130によって確保される。
図11の例では、酸化物層107の部分130は存在しない。その代わり、ポリシリコン層120は、ダミートレンチ2112内のポリシリコン充填剤121及び第1の電極トレンチ2111内のポリシリコン充填剤131と一体で作られる。換言すれば、ポリシリコン層120は、第1の電極トレンチ2111の上部を含むトレンチ上に延在する。第1の電極トレンチ2111の上部に延在するポリシリコン層120の一部は、第2の実施形態のモニタリング部分13を形成する。モニタリング部分13は、第1の電極11と第2の電極12との間に、意図する抵抗経路を作成する。第2の実施形態において、モニタリング部分13のサイズ、特に厚さは、所望のサーミスタンス挙動を生成するために規定される。
【0051】
関係するダミートレンチのプラグ材料は、エミッタとの接触がダミートレンチの他の側(対向端)で実施されるように、局所的に除去することができる。そのような方法で、ダミートレンチ自身の抵抗がサーミスタンスに付加される。幾つかの隣接するダミートレンチを、例えば、蛇行構造で端と端とで接続することができる。そのような方法で、ダミートレンチの抵抗は、累積され、サーミスタンスに付加される。ダミープラグを賢明な方法で除去し、ダミートレンチをともに接続するポリシリコン層を修正することによって、サーミスタンスの値を意のままに適応させることが可能である。
【0052】
ポリシリコン要素(ポリシリコン充填剤121、ポリシリコン充填剤131、ポリシリコン層120、及びそのモニタリング部分13)を設けるために、既知のプロセスを使用することができる。例えば、ポリシリコンは、低圧化学気相堆積(LPCVD:Low-Pressure Chemical Vapor Deposition)、リソグラフィー(樹脂コーティング、マスク堆積、アクティベーション、選択的樹脂除去)、及び/又はドライエッチング(ポリシリコンの選択的除去、残留樹脂の除去)によって堆積する。モニタリング部分13を作成するために、酸化物層107の通常の部分130(
図10参照)をポリシリコン層120の一部から作ったモニタリング部分13(
図11参照)によって置換するために、リソグラフィーで使用される既知のマスクを用いることが可能である。そのようなモニタリング部分を得るためにマスクを用いる正確な方法は、当業者によって、各モジュール1に応じて容易に決定されることになる。
【0053】
ここで、
図12及び
図13を参照する。これらの図の平面は、先行する実施形態の1つ(
図7参照)に実質的に垂直である。先行する図の要素と同様の要素は同じ参照符号を有する。図の右部分上で、第1の電極11の上部の金属層109の一部が、それが通例であるが、第2の電極12の上部の金属層109の一部から分離されていることを見ることができる。第1の電極11(ゲート)の部分において、積層部100は、トレンチ2111、2112を含む部分内の積層部と異なる。積層部100は、下部から上部に、以下の層:
-仕上げ層101(又は「支持層」);
-第1のPドープ層102;
-N
+ドープ層103(又は「緩衝層」);
-第1のN
-ドープ層104(又は「半導体ベース層」);
-第2のPドープ層106;
-酸化物層107の肉厚部;
-BPSG層108(珪酸ガラス;BPSGは「ほうりん珪酸ガラス」を表す);
-金属層109(例えば、アルミニウム)、
を備える。
【0054】
BPSG層108において、酸化物層107の肉厚部上に、ポリシリコン層161が設けられる。ポリシリコン層161は、
図12及び
図13の平面に実質的に垂直な方向に延在する。第1の電極トレンチ2111(図では見えず)を含む平面内で、ポリシリコン層161は、トレンチ2111のポリシリコン充填剤131と一体で作られる。ポリシリコン層161上で、ポリシリコン層161と金属層109の上記一部との間の電気接続部を確保するためにプラグ167が設けられる。例えばポリアミドの保護層170が上部に付加される。
【0055】
第3の実施形態において、サーミスタが、少なくとも1つのダミートレンチ2112の、第1の電極11(ゲートライン)までの伸長によって形成される。そのため、エミッタ/コレクタ電位は、ゲート電位のラインに達し接触する。種々の実施形態において、ラインパターンは、伸長したトレンチに対する接続を容易にするために修正することもできる。
【0056】
図12に見ることができるように、ダミートレンチ2112内のポリシリコン充填剤121及び第1の電極部のポリシリコン層161は、通常、互いに分離される。さらに、それぞれは、環境から電気絶縁するために、絶縁膜123(酸化物層)、163によってそれぞれ囲まれる。比較すると、第3の実施形態の
図13に見ることができるように、ポリシリコン材料の伸長部が、ダミートレンチ2112内のポリシリコン充填剤121と第1の電極部のポリシリコン層161との間に設けられる。第3の実施形態において、上記伸長部はモニタリング部分13を形成する。
【0057】
モニタリング部分13を形成する伸長部は、第1の電極11(ポリシリコン層161及びポリシリコン充填剤131)と一体で作られる。伸長部は、プラグ144及び金属層109を介して第2の電極12に電気接触している。モジュール1の動作状態において、漏洩電流は、第1の電極11と第2の電極12との間に流れる。
【0058】
3つの主要な実施形態を述べた。これらの3つの実施形態が例であり、本発明の範囲の制限として解釈される必要がないことを当業者は理解するであろう。1つの実施形態に関して述べるほとんどの特徴は、別の実施形態に対して置き換える/適応することができる。例えば、サーミスタンス挙動を設定する方法に関する特徴は、第1の実施形態に関して説明される。そのような特徴は、他の実施形態に適応することができる。当業者は、モジュール1の各実施形態に応じてモニタリング部分13の場所、形態、及びサイズを適応させることによって、サーミスタンス挙動をセットアップする方法を知ることになる。サーミスタンスをセットアップするために適応させる有効断面は、第1の実施形態のギャップの高さ及び幅に、第2の実施形態のポリシリコン層120の幅及び厚さに、また、第3の実施形態の伸長部の幅及び厚さに対応することができる。
【0059】
図14及び
図15は、モジュール1の写真であり、その写真上で、寸法スケールは例として示される。
【0060】
上述したモジュール1、特に、測定回路2(
図3参照)は、モジュール1の動作寿命中に、2つの方法、すなわち、モジュール1の温度を推定する測定方法、及び、モジュール1の接続部、特に、第2の電極接続部18の健全状態を推定する測定方法を実施するために使用することができる。
【0061】
モジュール1の温度を推定する測定方法は、例えば、
a)IGBTのエミッタEから、または、MOSFETのソースSから、電流が提供されないときに測定をトリガーすること;
b)モジュール1の第1の電極11(ゲート)の診断モードを生成することであって、診断モード中に、第1の電極11-第2の電極12-電圧源の電流回路内に抵抗17が配置されるように、生成すること;
c)上記回路上で少なくとも電圧Vmeas又は電流Imeasをモニタすること;および
d)モニタされた値を較正データに従って温度に変換すること、
を含む。
【0062】
ステップa)すなわちIGBTのエミッタ接続部に電流が通過しないときに、測定トリガーが実施される。そのため、エミッタ接続部における温度及び電流依存電圧降下のいずれも測定と相互作用しない。この状況は、例えば、電流がオフであるときに可能である。逆並列ダイオードがエミッタ接続部を共有している(
図3参照)場合、ダイオードもオフであるべきである。これらの状況は、電流センサ及び/又はコントローラ情報を使用して検出される。代替の実施形態において、エミッタ接続部における電圧降下は、厳密にゼロであるのではなく、小さい値、例えば、200mV未満と考えられる。そのような場合、電圧降下は、無視又は補償することができる。
【0063】
ステップd)すなわち較正データに基づく変換は、モジュール1が予め特徴付けられることを示唆する。特徴付けは、例えば、Rge=f(T)又はVmeas=f(T)又はImeas=f(T)のように、パラメータとして温度(T)を有する関数「f」の形態でモジュール1のサーミスタンスプロファイルを生成することを含む。
【0064】
モジュール1の接続部の健全状態を推定する測定方法は、例えば:
1)IGBTのエミッタEの接続部(例えば、第2の電極接続部18)に、または、MOSFETのソースSの接続部に、大電流が通過するときに測定をトリガーすること;
2)モジュール1の第1の電極11の診断モードを生成することであって、診断モード中に、上記第1の電極11が電気的に切り離される、これは、例えば、第1の電極11を、モニタリング部分13の抵抗値Rの10倍より大きい抵抗値を有する抵抗器(
図3の抵抗器17と異なる)に接続することによって行うことができる、生成すること;
3)少なくとも電圧V
measをモニタすること;および
4)モニタされた値を較正データに従って損傷指標に変換すること、
を含む。
【0065】
サーミスタンス挙動は、材料不安定性(機械的、化学的)の影響として経時的にドリフトする場合がある。この現象は、ダイの高温環境によって加速される。
【0066】
ドリフトの影響に対抗するために、再較正を、一定間隔で実施することができる。そのような再較正は、例えば、モジュール1が、オフ状態の動作において均一温度に達すると、実施される。較正は、例えば、モジュール1のベースプレート上で、モジュール1の別の温度センサを使用して実施される。広い温度範囲において温度に特徴的なドリフトを得ることが難しいため、特定の温度におけるドリフト値を使用し、モデルを使用することによって他の温度値についてのドリフト値を推定することが可能である。幾つかの実施形態において、特定の温度におけるドリフト値は、モジュール1の健全度の指標として使用される。例えば、25℃におけるドリフトを定期的にモニタする。ドリフトが予め規定された閾値を超えると、警告メッセージが生成される。
【0067】
本明細書で述べる方法は、例えば、チップによって実施される又はプロセッサによって実装されるコンピュータプログラムの形態で実装することができる。本発明は、本明細書で述べる、モジュール、マスク、方法、コンピュータプログラム、及びコンピュータ可読非一時的記録媒体に限定されず、それらは例に過ぎない。本発明は、当業者が、本文書を読むと想定することになる全ての代替物を包含する。
【符号の説明】
【0068】
1 モジュール、2 測定回路、3 センサ部、11 第1の電極、12 第2の電極、13 モニタリング部分、17 抵抗、18 第2の電極接続部、21 トレンチ、23 電気絶縁体、100 積層部、101 仕上げ層、102 第1のPドープ層、103 N+ドープ層、104 第1のN-ドープ層、105 第2のN-ドープ層、106 第2のPドープ層、107 酸化物層、108 BPSG層、109 金属層、120 ポリシリコン層、121 ポリシリコン充填剤、123 絶縁膜、130 酸化物層の部分、131 ポリシリコン充填剤、133 絶縁膜、141 プラグの上部分、143 プラグの上部分、144 プラグ、151 プラグの下部分、153 プラグの下部分、161 ポリシリコン層、163 絶縁膜、167 プラグ、170 保護層、2111 第1の電極トレンチ、2112 ダミートレンチ。