(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】隅棟を有する傾斜した可燃性密閉空間防火システム
(51)【国際特許分類】
A62C 3/00 20060101AFI20220708BHJP
A62C 35/68 20060101ALI20220708BHJP
【FI】
A62C3/00 J
A62C35/68
(21)【出願番号】P 2021572598
(86)(22)【出願日】2020-06-04
(86)【国際出願番号】 US2020036115
(87)【国際公開番号】W WO2020247624
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-01-12
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507171797
【氏名又は名称】ヴィクトリック カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・デスロージャー
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン・デズモンド・モーガン
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン・ジェー・マイヤー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・エドウィン・アーチボルド
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0318620(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0375287(US,A1)
【文献】米国特許第9956443(US,B1)
【文献】米国特許第5669449(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可燃性密閉空間の防火システムであって、前記可燃性密閉空間が、全体的に勾配がある屋根部分と、前記全体的に勾配がある屋根部分の少なくとも一端に、少なくとも1つの隅棟とを含む屋根を備え、前記隅棟が、前記全体的に勾配がある屋根部分の端部と実質的に一致する頂点を有し、前記頂点から前記隅棟が、前記勾配がある屋根部分の側面に向かって、また軒に向かって下向きおよび外向きに広がって、前記可燃性密閉空間のほぼ水平の床と角度を形成し、前記角度が前記隅棟の傾斜であり、前記隅棟が、前記隅棟の前記傾斜に直交する方向で配設されるとともに前記隅棟の前記傾斜に平行な方向で離隔された、少なくとも2つのステップダウントラスで構成された上部隅棟と、前記隅棟の前記傾斜に平行な方向で配設されるとともに前記隅棟の前記傾斜に直交する方向で離隔された、複数のジャックトラスで構成された下部隅棟とを備え、前記防火システムが、
前記隅棟の前記頂点に実質的に配設された、少なくとも1つのスプリンクラーを備える第1の列のスプリンクラーであって、前記第1の列のスプリンクラーが2つ以上のスプリンクラーを包含する場合、前記2つ以上のスプリンクラーが、前記隅棟の前記傾斜に直交する方向で互いから離隔される、第1の列のスプリンクラーと、
前記隅棟の前記傾斜に平行な方向で、前記第1の列のスプリンクラーから下り坂に第1の間隔で配設された、少なくとも2つのスプリンクラーを備える第2の列のスプリンクラーであって、前記少なくとも2つのスプリンクラーが、前記隅棟の前記傾斜に直交する方向で互いから離隔された、第2の列のスプリンクラーと、を備える、
上部隅棟防火システムを含み、
前記第2の列のスプリンクラーの前記少なくとも2つのスプリンクラーのうち任意の2つの間の最大間隔が、前記第1の間隔に対する最大値よりも大きい、防火システム。
【請求項2】
前記上部隅棟防火システムが、前記第2の列のスプリンクラーから下り坂に第2の間隔で配設された、少なくとも2つのスプリンクラーを備える第3の列のスプリンクラーを更に備え、前記第3の列のスプリンクラーのうち前記少なくとも2つのスプリンクラーが、前記隅棟の前記傾斜に直交する方向で互いから離隔され、
前記第2および第3の列のスプリンクラーにおける前記スプリンクラーのうち任意の2つの間の最大間隔が、前記第1および第2の間隔の最大間隔値よりも大きい、請求項1に記載の防火システム。
【請求項3】
前記第1および第2の間隔に対する前記最大間隔値が最大10フィート(3.05m)である、請求項2に記載の防火システム。
【請求項4】
前記第2の列のスプリンクラーのうち前記スプリンクラーの任意の2つの間の前記最大間隔が最大12フィート(3.66m)である、請求項1に記載の防火システム。
【請求項5】
前記第1の間隔に対する前記最大値が最大10フィート(3.05m)である、請求項1に記載の防火システム。
【請求項6】
前記第1のおよび第2の列のスプリンクラーの前記それぞれのスプリンクラーが、実質的に無指向性スプリンクラーである、請求項1に記載の防火システム。
【請求項7】
前記ジャックトラスの間に配設され、前記隅棟の前記傾斜に垂直な方向で互いから離隔された、2つ以上の第1の下部スプリンクラーのうち少なくとも1つの列を備える、下部隅棟防火システムを更に備える、請求項1に記載の防火システム。
【請求項8】
前記下部隅棟防火システムが、前記ジャックトラスの間に配設され、前記隅棟の前記傾斜に垂直な方向で互いから離隔された、2つ以上の第2の下部スプリンクラーの第2の列を更に備える、請求項7に記載の防火システム。
【請求項9】
前記第1の下部スプリンクラーが実質的に無指向性スプリンクラーであり、前記第2の下部スプリンクラーが、前記隅棟の前記傾斜に対してほぼ下り坂に方向付けられたそれぞれの散水パターンを有する指向性スプリンクラーである、請求項8に記載の防火システム。
【請求項10】
前記第1の下部スプリンクラーが実質的に無指向性スプリンクラーである、請求項7に記載の防火システム。
【請求項11】
防火スプリンクラーを可燃性密閉空間内に位置決めする方法であって、前記可燃性密閉空間が、全体的に勾配がある屋根部分と、前記全体的に勾配がある屋根部分の少なくとも一端に、少なくとも1つの隅棟とを含む屋根を備え、前記隅棟が、前記全体的に勾配がある屋根部分の端部と実質的に一致する頂点を有し、前記頂点から前記隅棟が、前記勾配がある屋根部分の側面に向かって、また軒に向かって下向きおよび外向きに広がって、前記可燃性密閉空間のほぼ水平の床と角度を形成し、前記角度が前記隅棟の傾斜であり、前記隅棟が、前記隅棟の前記傾斜に直交する方向で配設されるとともに前記隅棟の前記傾斜に平行な方向で離隔された、少なくとも2つのステップダウントラスで構成された上部隅棟と、前記隅棟の前記傾斜に平行な方向で配設されるとともに前記隅棟の前記傾斜に直交する方向で離隔された、複数のジャックトラスで構成された下部隅棟とを備え、前記方法が、
スプリンクラーを2つ以上の列で前記上部隅棟に位置決めするステップを含み、前記ステップが、
少なくとも1つのスプリンクラーを備える第1の列のスプリンクラーを、実質的に前記隅棟の前記頂点に位置決めするステップであって、前記第1の列のスプリンクラーが2つ以上のスプリンクラーを包含する場合、前記第1の列のスプリンクラーの前記位置決めが、前記2つ以上のスプリンクラーを前記隅棟の前記傾斜に直交する方向で互いから離隔させることを含む、ステップと、
少なくとも2つのスプリンクラーを備える第2の列のスプリンクラーを、前記隅棟の前記傾斜に垂直な方向で前記少なくとも2つのスプリンクラーを互いから離隔させることを含めて、前記隅棟の前記傾斜に平行な方向で、前記第1の列のスプリンクラーから下り坂に第1の間隔で位置決めするステップと、を含み、
前記第2の列のスプリンクラーの前記少なくとも2つのスプリンクラーのうち任意の2つの間の最大間隔が、前記第1の間隔に対する最大値よりも大きい、方法。
【請求項12】
スプリンクラーを2つ以上の列で前記上部隅棟に位置決めするステップが、第3の列のスプリンクラーの少なくとも2つのスプリンクラーを前記隅棟の前記傾斜に垂直な方向で互いから離隔させることを含めて、前記第2の列のスプリンクラーから下り坂に第2の間隔で、前記少なくとも2つのスプリンクラーを備える前記第3の列のスプリンクラーを位置決めするステップを更に含み、
前記第2および第3の列のスプリンクラーにおける前記スプリンクラーのうち任意の2つの間の最大間隔が、前記第1および第2の間隔の最大間隔値よりも大きい、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1および第2の間隔に対する前記最大間隔値が最大10フィート(3.05m)である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の列のスプリンクラーのうち前記スプリンクラーの任意の2つの間の前記最大間隔が最大12フィート(3.66m)である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の間隔に対する前記最大値が最大10フィート(3.05m)である、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記第1のおよび第2の列のスプリンクラーの前記それぞれのスプリンクラーが、実質的に無指向性スプリンクラーである、請求項
11に記載の方法。
【請求項17】
前記ジャックトラスの間で前記下部隅棟に、前記隅棟の前記傾斜に垂直な方向で互いから離隔させて、2つ以上の第1の下部スプリンクラーのうち少なくとも1つの列を位置決めするステップを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記ジャックトラスの間で前記下部隅棟に、前記隅棟の前記傾斜に垂直な方向で互いから離隔させて、2つ以上の第2の下部スプリンクラーの第2の列を位置決めするステップを更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の下部スプリンクラーが実質的に無指向性スプリンクラーであり、前記第2の下部スプリンクラーが、前記隅棟の前記傾斜に対してほぼ下り坂に方向付けられたそれぞれの散水パターンを有する指向性スプリンクラーである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の下部スプリンクラーが実質的に無指向性スプリンクラーである、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本発明は、「隅棟を有する傾斜した可燃性密閉空間防火システム(Fire Protection System for Sloped Combustible Concealed Spaces Having Hips)」という名称の、2019年6月7日付けの米国仮特許出願第62/858,427号の優先権を主張し、その全内容を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
本開示は、全体として防火に関し、より詳細には、勾配屋根、特に隅棟を有するものの下にある屋根裏および可燃性密閉空間において使用される防火システムに関する。
【背景技術】
【0003】
火災用スプリンクラーシステム、ならびにその設置および動作には、参照により本明細書に組み込む、NFPA 13、13D、および13Rなど、国内で承認されている条例および規格の認可が必要である。NFPA 13および他の規格は、物理的特性および性能を特定し検証するため、認定試験機関(例えば、ULまたはFM)によって個別に試験済みである、機器および構成要素の使用を要する。
【0004】
屋根裏は、通常は非居住の可燃性密閉空間であり、建物の一番上の居住階の天井と空間の勾配屋根との間にある。屋根構造に勾配があり、木製の根太および垂木または木製トラス(以下、「構造部材」)で構築されている場合、建物の屋根裏の防火に関して特定の問題が生じる。例を
図1Aおよび
図1Bに示す。つまり、屋根裏空間におけるスプリンクラーの選択および位置決めの選択肢が、それ故に、活性化の遅れおよび非効率で法外な水消費に大きく苦しめられる。
【0005】
問題は、一例を
図1Bに示す、「隅棟」を有する勾配屋根を考慮した場合に、より複雑になる。隅棟の構造の一例を
図2に示している。かかる隅棟の構造部材のタイプおよび配置により、隅棟を有さない勾配屋根の場合(または隅棟を有する屋根の勾配(切妻)部分の場合)よりも複雑な形で熱が拡散することがある。
【0006】
したがって、スプリンクラーが火元の場所に対して良好に位置付けられ、迅速な対応時間を提供することができ、一般の屋根裏隅棟構造部材付近に配置するのに適した散布の分布を有し、それによってより効率的な防火を遂行するような形で、隅棟範囲内にスプリンクラーを提供するように、屋根の隅棟範囲に防火システムを提供するのが望ましいことがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Globe Publication GFS-650、「Specific Application Attic Sprinklers」(www.globesprinkler.com)
【文献】Globe datasheet、「Specific Application Attic Sprinklers」(www.globesprinkler.com)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
概して、本開示の一態様は、可燃性密閉空間の隅棟範囲の防火システムを対象としてもよい。防火システムは、隅棟の傾斜に直交する方向で、列状に配置されたスプリンクラーを備えてもよい。列内のスプリンクラーの間隔は、隅棟の傾斜に(即ち、例えば屋根裏の底部の、水平方向に対して)平行な方向で、列間の最大分離距離よりも大きい最大分離距離を有してもよい。
【0009】
本開示の更なる態様によれば、屋根の隅棟部分にスプリンクラーヘッドをレイアウトする方法は、隅棟の傾斜に平行な方向で、隣接する列間の最大分離距離よりも大きい最大分離距離で、列内のスプリンクラーを離隔させることを伴ってもよい。
【0010】
本開示の好ましい実施形態についての以下の記載は、添付の図面と併せ読むことでより良く理解されるであろう。しかしながら、本開示は、図示される正確な配置および手段に限定されないことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】本開示の態様による、隅棟を有さない屋根を有する構造の実例を示す図である。
【
図1B】本開示の態様による、隅棟を有する屋根を有する構造の実例を示す図である。
【
図2】本開示の態様による、屋根の隅棟部分の実例を示す図である。
【
図3】本開示の態様において参照されることがあるような、異なる配向を説明する図である。
【
図4A】本開示の態様による、水平面上への隅棟構造の投影を示す概念図である。
【
図4B】本開示の態様による、水平面上への隅棟構造の投影を示す概念図である。
【
図5A】本開示の様々な態様にしたがって使用されてもよいスプリンクラーを示す概念図である。
【
図5B】本開示の様々な態様にしたがって使用されてもよいスプリンクラーを示す概念図である。
【
図6A】本開示の様々な態様にしたがって使用されてもよいスプリンクラーを示す概念図である。
【
図6B】本開示の様々な態様にしたがって使用されてもよいスプリンクラーを示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
特定の専門用語は、以下の記載において単に便宜上使用されるものであり、限定ではない。「下側」、「底部」、「上側」、および「頂部」という単語は、参照される図面中の方向を指定する。「内向きに」、「外向きに」、「上向きに」、および「下向きに」という単語はそれぞれ、本開示にしたがって、屋根裏空間またはスプリンクラーおよびそれらの指定された部分の幾何中心に向かう、またそこから離れる方向を指す。本明細書で具体的に記述しない限り、「1つの」、「ある」、および「その」という用語は、1つの要素に限定されず、代わりに「少なくとも1つ」を意味するものとして読まれるべきである。専門用語は、上述の単語、それらの派生形、および類似の意味の単語を含む。
【0013】
また、「おおよそ」、「約」、「ほぼ」、「実質的に」などの用語は、本開示の構成要素の寸法または特性に言及するのに本明細書で使用するとき、記載される寸法/特性が厳密な境界またはパラメータではなく、機能的に同等であるそこからのわずかなばらつきを除外しないことが理解されるべきである。少なくとも、数値的パラメータを含むかかる言及は、当該技術分野で許容されている数学的および産業的原理(例えば、丸め、測定誤差もしくは他のシステム誤差、製造公差など)を使用して最下位桁が変動しないであろう、ばらつきを含むものである。
【0014】
図面を詳細に参照すると、全体を通して類似の数字は類似の要素を示し、
図1A~
図6Bは、全体として、本開示の様々な態様による、隅棟部分を有する勾配屋根を備えた屋根裏または可燃性密閉空間向けのスプリンクラーシステムを示している。建物または他の構造10は、屋根裏または他の密閉空間16(以下、「屋根裏」と呼ばれる)を有してもよい。
図1Aに示されるように、屋根裏16は、概して、稜線12からそれぞれの軒13まで下向きおよび外向きに延在する、対向して配設された傾斜面を有する、傾斜または勾配屋根(以下、「勾配屋根」を使用する)によって上方から密閉されてもよい。側面は、木製の根太および垂木または木製トラス(以下、全体として、「構造部材」と呼ぶ)から構築されてもよい。軒13は、屋根裏16の水平床と一致するか、または屋根裏16の水平床の端部を超えて延在してもよい。隣接する平行な構造部材の間の間隔は、それぞれのチャネルを画定する。概して、チャネルは、例えば、約3インチ(7.62cm)および6インチ(15.24cm)深さであってもよいが、それよりも深いものでもあり得る。また、
図1Aの例では、屋根裏16は側板11aおよび11bによって密閉されてもよい。
【0015】
図1Bは、勾配部分を有する屋根、および側板11a、11bに代わる端部の隅棟11a'、11b'によって密閉された、屋根裏16を有する構造10の一例を示している。隅棟11a'、11b'はそれぞれ、稜線12の端部14(稜線12の端部14は、同様に、「隅棟の頂点」と呼ばれてもよい)から下向きおよび外向きに延在して、屋根裏16の水平床の端部と一致するかまたはそれを超えて延在してもよい、それぞれの軒(例えば、軒15)で終わってもよい、パネルによって密閉される。隅棟11a'、11b'のパネルの側面は、屋根の勾配部分のそれぞれの下向きに傾斜した側面の端部に当接してもよい。
【0016】
図2は、本開示の様々な態様による、寄棟屋根の隅棟11a'、11b'の支持構造200の実例を示している。上述したように、構造の(上向きおよび外向きに面する)外側部分は、稜線12(図示なし)の端部14から下向きおよび外向きに延在してもよい。
【0017】
支持構造200について引き続き記載する前に、単に説明目的で、基準系について考察するのが有用である。
図3は隅棟(符号なし)を示している。実線で示される隅棟は、点線で示される屋根裏16の水平床(または他の水平な基準系)に対してある角度sで傾斜していてもよい。最初に隅棟(またはその外板)に移ると、(a)隅棟の傾斜に平行な方向d
parと、(b)隅棟の傾斜に直交する方向d
ppとの2つの方向が定義されてもよい。換言すれば、d
parは、水平床に沿った平行方向h
parに対する上向きの傾斜sの方向に対応し、d
ppは、d
parに対して直交し、屋根裏床上に垂直に投影して、h
parに直交する方向h
ppに平行である、方向に対応する。
【0018】
図2に戻ると、一般的な隅棟支持構造200は、ジャックトラス21およびステップダウントラス(stepdown trusses)20の2つのタイプのトラスで構成されてもよく、等価の構造が根太および垂木(図示なし)で構築されてもよいことが注目される。ステップダウントラス20は、稜線の端部14と、稜線の端部14の下り坂における所定位置に配設された更なるほぼ水平な構造部材23との間で離隔されたほぼ水平の部品を含んでもよく、構造部材20および23は隅棟の傾斜に対して直交する方向である。用いられるステップダウントラス20の数は、隅棟11a'、11b'のサイズに応じて決まってもよく、より大きい隅棟にはより多数のステップダウントラス20が使用されてもよい。他方で、ジャックトラス21は、隅棟の傾斜にほぼ平行な部品を含んでもよい。概して、ジャックトラス21は、やはり隅棟11a'、11b'の傾斜にほぼ平行な方向で配向された、軒から4~15フィート(1.22~4.57m)延在してもよいが、ジャックトラス21の長さはそのように限定されない。
【0019】
上記では、参照番号22は、構造部材20、21、および23を含む隅棟支持構造200の外側に面する構造を示すのに使用され、便宜上、参照番号20および21は、上記ではトラスに対応するものとして規定されているが、トラスの外側に面する構造部品を指すのに交換可能に使用され、それらはそれぞれ、隅棟の傾斜に対して、ならびにそれらを含む隅棟構造の領域に対して、直交方向および水平方向で配設される。ステップダウントラス20を含む領域は「上部隅棟(upper hip)」とも呼ばれることがあり、ジャックトラス21を含む領域は「下部隅棟(lower hip)」と呼ばれることもある。
【0020】
図4Aおよび
図4Bは、本開示の様々な態様による、スプリンクラーシステムを備えた異なる隅棟構造22の2つの実例を示している。
図4Aおよび
図4Bの例は、傾斜の方向が頂部および底部の間である、平面で(換言すれば、隅棟構造が水平面上に平らに広げられるかまたは投影されたように)示される。これを規定する別の方法によれば、d
parはページの鉛直(または「南北」)方向に延在し、d
ppはページの水平(または「東西」)方向に延在する。
【0021】
最初に
図4Aを参照すると、スプリンクラーシステムは、隅棟の傾斜に直交して(またしたがって、互いに平行に)列41、42、43で配置された、無指向性スプリンクラー44を含んでもよい。無指向性スプリンクラー44は、Globe Fire Sprinkler Corporation(「Globe」)によって製造され、例えば、www.globesprinkler.comで入手可能であって参照により本明細書に組み込まれる、Globe Publication GFS-650、「Specific Application Attic Sprinklers」に記載されている、モデルGL-SS/RE GL5620であってもよい。しかしながら、本開示はこの特定の無指向性スプリンクラーを使用することに限定されず、他のタイプが使用されてもよいことに留意されたい。列41および42は、構造22のステップダウン部分20に配置されてもよく、列43は、構造22のジャックトラス領域21に配置されてもよい。列41は、単一のスプリンクラー44を含んでもよいがそのように限定されず、隅棟11a'、11b'の頂点14に実質的に位置してもよく、列42は列41からの下り坂に位置してもよい。概して、スプリンクラー44は、トラスの間の範囲によって形成されるチャネル内に配設されてもよいが、本開示はそのように限定されない。上述したように、ステップダウン部分20およびジャックトラス部分21は、
図2に示されるような(ただし本図面には図示されない)水平構造部材23によって分離されてもよい。
図4Aには3列のみのスプリンクラー41、42、43が示されるが、上部隅棟20に、下部隅棟21に、または両方に、より多数の列が存在してもよいことが注目される。これは、例えば、使用されるスプリンクラーの散布パターン/距離に依存してもよい。
【0022】
加えて、下り坂に(即ち、軒に向かって)方向付けられた散布パターンを有する、指向性スプリンクラー(図示なし)の列が、列43の下り坂の更なる列として、ジャックトラス部分21内の下部列として用いられてもよいことが注目される。これは、特に、所与の無指向性スプリンクラー44までの距離がジャックトラス21の1つまたは複数の長さよりも短い場合に、使用されてもよい。かかる指向性スプリンクラーの例は、Globeによって製造され、例えば、www.globesprinkler.comで入手可能であって参照により本明細書に組み込まれる、Globe datasheet、「Specific Application Attic Sprinklers」に記載されている、モデルGL-SS/DS GL5621である。しかしながら、これは単なる一例であり、本開示はこの特定のスプリンクラーに限定されない。
【0023】
特定の例として、本開示はそれに限定されないが、下部隅棟におけるジャックトラス21の最大長は16フィート(4.88m)であってもよく、列43の無指向性スプリンクラー44の最大拡散は12フィート(3.66m)のみであってもよい。そのような場合、上述したような、指向性スプリンクラーの更なる列(図示なし)が、指向性スプリンクラーが下り坂方向で散布し、列43の無指向性スプリンクラー44の散布によって網羅されない下部隅棟の範囲を網羅するのに十分なように、配置されてもよい。
【0024】
上部隅棟20内で、熱は隅棟11a'、11b'を上へと伝わるので、隅棟11a'、11b'の傾斜に沿ったほぼ上向きの方向での熱の進行は、ステップダウントラス20の構造によって遅らせることができる。この構造により、熱は、隅棟の傾斜の方向に直交するステップダウントラス20の下に回り、所与のステップダウントラス20の下に回った後、更なるステップダウントラス20の下に回る前に、水平に拡散することができる。これは、隅棟の傾斜に直交する方向でのスプリンクラー44間の最大間隔が、隅棟の傾斜に平行な方向でのスプリンクラー44間の最大間隔よりも大きい、上部隅棟20におけるスプリンクラー44の特定の配置を提案することができる。実例では、直交方向での最大間隔は、スプリンクラー間で最大12フィート(3.66m)であってもよく、平行方向での最大間隔は、スプリンクラー(即ち、スプリンクラーの列)間で最大10フィート(3.05m)であってもよい。これは単なる一例であり、本開示はそれに限定されないことに留意されたい。
【0025】
図5A~
図6Bは、使用されてもよく、GlobeのモデルGL-22/RE GL5620に対応してもよい、無指向性スプリンクラー44の一例を示しているが、やはり、本開示はいずれの特定の無指向性スプリンクラーにも限定されないことが理解される。1つの非限定例では、スプリンクラー44は、分岐水路から上向きに突出して(分岐路に直交して、またはそれに対して上向きの角度で)設置されてもよい。スプリンクラー44は、スプリンクラーフレーム51と、流体デフレクタ52と、スプリンクラー44を非作動構成で封止する封止アセンブリ/栓54を支持する熱トリガ(即ち、感熱素子)53とを含んでもよい。スプリンクラーフレーム51は、近位側入口51aと、遠位側出口51bと、それらの間に延在する、スプリンクラー軸線A-Aを規定する内部水路とを規定してもよい。例示される例では、熱トリガ53は、スプリンクラー軸線A-Aに沿って配設され軸線方向で位置合わせされた、ガラス球タイプのトリガの形態を取ってもよいが、本開示はそのように限定されない。
【0026】
スプリンクラーフレーム51は、近位側入口51aと、遠位側出口51bと、それらの間に延在する、封止栓54の少なくとも一部分を受け入れてもよい内部水路とを規定する、少なくとも部分的に雄ねじが切られた本体55を含んでもよい。本体55は、例えばねじ込みによって、分岐水路(図示なし)に装着されて、そこから、また本体55を通る内部水路を通して、水を受け入れてもよい。2つのフレームアーム56aは、本体55に対して径方向に位置付けられるかまたは正反対に対向してもよく、そこからデフレクタ52に向かって軸線方向に延在してもよい。フレームアーム56aは、スプリンクラー軸線A-Aに向かって収束して、スプリンクラー軸線A-Aに沿って軸線方向で位置合わせされた、スプリンクラーフレーム51の末端56bにおいて終端してもよい。デフレクタ52は、スプリンクラーフレーム51の末端56b上に装着されてもよい。
【0027】
圧縮ねじ57(
図5Bに図示)などは、当業者には十分に理解されているような方式で、熱トリガ53を封止栓54上に固定するのに使用されてもよい。熱トリガ53は、圧縮ねじ57を介して、(分岐路内の流体から封止栓54にかかる対向する水圧よりも高い)圧力を封止栓54に加えて、スプリンクラー44の周りの周囲温度が、熱トリガ53がその時点でトリガ/活性化される活性化温度に達するまで、(分岐路からの)水が本体55から流出するのを防いでもよい。熱トリガ53が活性化されると、例えばガラス球が破砕されると、封止栓54が、上流の加圧水によって押し出され、偏向されてもよい。水は、本体55の水路から散布してもよく、デフレクタ52の設計にしたがって所望の散布パターンで水を分布させるため、デフレクタ52に当たってもよい。
【0028】
図6A~
図6Bに移ると、デフレクタ52は、図示される例では、例えば円形パターンなど、ほぼ楕円形のパターンで散布を分布させるように設計されてもよい。1つの非限定例では、加圧水は、最大で直径約24フィート(7.32m)の、即ち全ての方向で12フィート(3.66m)にデフレクタ52によって発射されてもよく、12フィート(3.66m)の無指向性の散布パターンがもたらされる。
図6Aに示されるように、デフレクタ52は、直径Dを規定するほぼ円形の本体60を含んでもよい。デフレクタ52は、スプリンクラーフレーム51の末端56bに装着するための、ほぼ円形でほぼ平らな装着開口63を含んでもよい。デフレクタ52は、その周囲に複数の角度方向で離隔された歯61を含んでもよく、それらは間に複数のスロット62を規定してもよい。図示される例では、デフレクタ52は、実質的に均等に寸法決めされ、実質的に均等に離隔された18の歯61と、実質的に均等に寸法決めされ、実質的に均等に離隔された18のスロット62とを含んでもよいが、本開示はそのように限定されない。
【0029】
図6Bに最も良く示されるように、デフレクタ52の本体60は、装着開口63を中に規定する径方向内側部分60Aと、内側部分60Aと一体である同心の径方向外側部分60Bとを含んでもよい。図示されるように、径方向外側部分60Bは、径方向内側部分60Aに対して角度Θ分、上向きに、即ちスプリンクラーフレーム51から離れるように角度を付けられてもよい。1つの非限定例では、角度Θは約5°であってもよく、水の大きい上向きの発射角度がもたらされる。言い換えると、デフレクタ52の下方における実質的に全て下向きの角度での従来の配水に加えて、上向きの発射角度Θは、散水パターンが高い突出を有して、スプリンクラー44の上方にある屋根裏構造のより近くまで散水を高く上げることができてもよい。
【0030】
やはり
図6Bに最も良く示されるように、デフレクタ52の歯61のうち少なくとも一対の正反対に対向する歯61Aは、本体60の径方向内側部分60Aに対して角度α分、下向きに、即ちスプリンクラーフレーム51に向かって角度を付けられてもよい。1つの非限定例では、角度αは約60°であってもよい。スプリンクラー44は、歯61Aが分岐路を実質的に横断して配向されるようにして、分岐水路に装着されてもよい。したがって、分岐路を実質的に横断する方向で1つのスプリンクラー44によって散布される水は、歯61Aに接触した後、隣接する分岐路のスプリンクラーから離れるように偏向されてもよい。
【0031】
本出願の広範な発明の概念から逸脱することなく、上述した本開示の様々な態様に対して変更を行うことができることが、当業者には認識されるであろう。したがって、本開示は本開示の特定の態様に限定されず、添付の特許請求の範囲に記述されるような本開示の趣旨および範囲内にある修正を網羅するものであることが理解される。
【符号の説明】
【0032】
10 構造
11a、11b 側板
11a'、11b' 隅棟
12 稜線
13 軒
14 端部、頂点
15 軒
16 屋根裏、密閉空間
20 ステップダウントラス、上部隅棟
21 ジャックトラス、下部隅棟
22 構造
23 構造部材
34
34a
41、42、43 列
44 スプリンクラー
51 スプリンクラーフレーム
51a 近位側入口
51b 遠位側出口
52 デフレクタ
53 熱トリガ
54 封止栓
55 本体
56a フレームアーム
56b 末端
57 圧縮ねじ
60 本体
60A 径方向内側部分
60B 径方向外側部分
61、61A 歯
62 スロット
63 装着開口
200 支持構造
A-A スプリンクラー軸線
D 直径
s 角度
α 角度
Θ 角度