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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】検体検査依頼の支援システム
(51)【国際特許分類】
   G16H 10/40 20180101AFI20220708BHJP
【FI】
G16H10/40
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022023380
(22)【出願日】2022-02-18
【審査請求日】2022-02-28
(31)【優先権主張番号】P 2021215359
(32)【優先日】2021-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521260204
【氏名又は名称】藤井 賢治
(73)【特許権者】
【識別番号】521260215
【氏名又は名称】柳田 竜二
(74)【代理人】
【識別番号】100133271
【弁理士】
【氏名又は名称】東 和博
(72)【発明者】
【氏名】藤井 賢治
(72)【発明者】
【氏名】柳田 竜二
【審査官】梅岡 信幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-165935(JP,A)
【文献】実開平2-41974(JP,U)
【文献】谷口 浩和,特集 マルチメディア時代の内視鏡診療,消化器内視鏡,第27巻,株式会社東京医学社,2015年11月25日,p.1832-1839
【文献】ジェイ エスキューブ 臨床検査受付/発送仕分けソリューション,FileMakerボリュームライセンス 企業・団体・教育・NPOユーザに最適なソフトウェア導入プログラム,2018年09月12日,p.1-2
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療機関が被験者から採取した検体の検査を検査機関に依頼し、検査機関が医療機関から受け取った検査依頼書と検体により依頼された検体検査を行なうシステムにおいて、
検査依頼書は、依頼元の医療機関を示す医療機関情報表示欄と、被験者情報を記入する被験者情報記入欄と、依頼元の医療機関が依頼対象の検査項目を選択する検査項目選択欄を含み、
検査項目選択欄は、依頼元の医療機関が依頼対象の検査にチェックマークを入れるチェック欄とともに複数の検査項目が配列されており、
検査機関の端末と画像読取り装置と支援サーバがネットワークで接続され、
支援サーバは、ファイル保存部と、画像解析手段と、文字列情報変換手段と、出力部を備え、
前記ファイル保存部には、医療機関から受け取った検査依頼書を画像読取り装置に読み込んで得られる検査依頼書の画像ファイルが保存され、
前記画像解析手段は、検査機関の端末からの指令により、ファイル保存部に保存された検査依頼書の画像ファイルを画像解析し、
前記文字列情報変換手段は、検査機関の端末からの指令により、画像解析後の画像ファイルに含まれる各欄の画像データを文字列情報に変換し、
前記出力部は、検査機関の端末からの指令により、文字列情報変換手段により変換された各欄の文字列情報から検査指示ファイルを生成して出力し、
前記文字列情報変換手段は、画像解析後の画像ファイルに含まれる各欄の画像データのうち、検査項目選択欄については、チェック欄にチェックマークが含まれている検査項目のみの画像データを文字列情報に変換することを特徴とする検体検査依頼の支援システム。
【請求項2】
前記検査依頼書は、複数の医療機関ごとに、依頼元の医療機関を示す医療機関情報表示欄と、被験者情報を記入する被験者情報記入欄と、依頼元の医療機関が独自に設定した検査項目から依頼対象の検査項目を選択する検査項目選択欄を含み、かつ、医療機関ごとの検査依頼書は、それぞれの検査項目選択欄の異なる配列位置に同じ検査項目がチェック欄とともに含まれており、
前記ファイル保存部には、それぞれの医療機関から受け取った検査依頼書を画像読取り装置に読み込んで得られる検査依頼書の画像ファイルが保存され、
前記画像解析手段は、検査機関の端末からの指令により、ファイル保存部に保存された複数の医療機関ごとの検査依頼書の画像ファイルを画像解析し、
前記文字列情報変換手段は、検査機関の端末からの指令により、画像解析後の各画像ファイルに含まれる各欄の画像データを文字列情報に変換し、
前記出力部は、検査機関の端末からの指令により、文字列情報変換手段により変換された各欄の文字列情報から検体検査の検査指示ファイルを医療機関ごとに生成して出力することを特徴とする請求項1記載の検体検査依頼の支援システム。
【請求項3】
検査項目選択欄が、検査分野を表す中分類に区分されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の検体検査依頼の支援システム。
【請求項4】
検査依頼書が、依頼元の医療機関が被験者の臨床症状を選択する臨床症状選択欄を含み、
当該臨床症状選択欄は、依頼元の医療機関が被験者の臨床症状にチェックマークを入れるチェック欄とともに複数の臨床症状が配列されており、
文字列情報変換手段は、画像解析後の各欄の画像データのうち、臨床症状選択欄については、チェック欄にチェックマークが含まれている臨床症状のみの画像データを文字列情報に変換することを特徴とする請求項1または請求項2記載の検体検査依頼の支援システム。
【請求項5】
検査依頼書が、依頼元の医療機関が検体の検査材料を選択する検査材料選択欄を含み、
当該検査材料選択欄は、依頼元の医療機関が検体の検査材料にチェックマークを入れるチェック欄とともに複数の検査材料が配列されており、
文字列情報変換手段は、画像解析後の各欄の画像データのうち、検査材料選択欄については、チェック欄にチェックマークが含まれている検査材料のみの画像データを文字列情報に変換することを特徴とする請求項1または請求項2記載の検体検査依頼の支援システム。
【請求項6】
検査依頼書が、前記検査項目選択欄に代えて、依頼元の医療機関が検体を採取した部位を選択する検体採取部位選択欄を含み、
当該検体採取部位選択欄は、依頼元の医療機関が検体を採取した部位にチェックマークを入れるチェック欄とともに複数の採取部位が配列されており、
文字列情報変換手段は、画像解析後の各欄の画像データのうち、検体採取部位選択欄については、チェック欄にチェックマークが含まれている採取部位のみの画像データを文字列情報に変換することを特徴とする請求項1または請求項2記載の検体検査依頼の支援システム。
【請求項7】
検査依頼書の前記検体採取選択欄に、依頼元の医療機関が検体を採取した採取法を選択する選択欄を含み、
当該選択欄は、複数の採取法から依頼元の医療機関が検体を採取した採取法にチェックマークを入れるチェック欄とともに複数の採取法が配列されており、
文字列情報変換手段は、画像解析後の各欄の画像データのうち、検体を採取した採取法を選択する選択欄については、チェック欄にチェックマークが含まれている採取法のみの画像データを文字列情報に変換することを特徴とする請求項6記載の検体検査依頼の支援システム。
【請求項8】
検査依頼書の前記検体採取部位選択欄に、依頼元の医療機関が検体を採取した材料の種類を選択する選択欄を含み、
当該選択欄は、検体の材料の複数の種類から依頼元の医療機関が検体を採取した材料の種類にチェックマークを入れるチェック欄とともに複数の種類が配列されており、
文字列情報変換手段は、画像解析後の各欄の画像データのうち、検体を採取した材料の種類を選択する選択欄については、チェック欄にチェックマークが含まれている種類のみの画像データを文字列情報に変換することを特徴とする請求項6記載の検体検査依頼の支援システム。
【請求項9】
検査依頼書が、固有の検体情報を取得する検体情報取得領域または検体情報表示欄を含むことを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載の検体検査依頼の支援システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体検査依頼書の改善を図り、医療機関および検査機関双方の負担軽減を図ることが可能な検体検査依頼の支援システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、医療機関において、病気の診療等のため血液等の検体を採取することが行なわれている。採取された検体は検体容器に収容され、医療機関の名称、患者の情報、検査項目等が記入された検査依頼書が検体容器と一緒に検査機関に送られるようになっている。検査機関は検査依頼書に基づき検体の検査を行ない、検査の結果を依頼元の医療機関に送るようになっている。
【0003】
しかしながら、従来の検査依頼書(以下、依頼書という)は、複写形式の専用紙が用いられており、患者の名前などの情報はすべて手書きで記入し、また、検体検査の依頼項目は配列が固定され、依頼元の医療機関は多くの項目の中から必要な項目だけを選んでチェックを記入しており、効率が非常に悪いものであった。
【0004】
検体検査に関して、検体提出票に被検者の氏名と固有番号を文字で印字するとともに固有番号をバーコードで印字し、検体容器に固有番号を付与して検査を行い、検体提出票のバーコードを読み取り、検査結果を固有番号に対応させてコンピュータ入力し、検査報告書を作成する検体検査の管理方法(特許文献1)が提案されている。
【0005】
また、検体容器を識別可能な情報を書き込んだRF-IDメディアを検体容器に装着し、検査依頼書を識別可能なシートIDを検査依頼書に記載し、医療機関から検査依頼書及び検体容器を回収する際に、検査依頼書からシートIDを読み取り、RF-IDメディアに書き込まれた情報を読み取る検体管理システム(特許文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平08-255200号公報
【文献】特開2006-29818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来技術は、検査依頼に対応する検体の管理を主目的とするもので、前述したような従来の依頼書によりこれまで生じていた種々の課題に対応したものではない。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、検査依頼書の改善を図り、医療機関および検査機関双方の負担軽減を図れるようにした検体検査依頼の支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る検体検査依頼の支援システムは、
医療機関が被験者から採取した検体の検査を検査機関に依頼し、検査機関が医療機関から受け取った検査依頼書と検体により依頼された検体検査を行なうシステムにおいて、
検査依頼書は、依頼元の医療機関を示す医療機関情報表示欄と、被験者情報を記入する被験者情報記入欄と、依頼元の医療機関が依頼対象の検査項目を選択する検査項目選択欄を含み、
検査項目選択欄は、依頼元の医療機関が依頼対象の検査にチェックマークを入れるチェック欄とともに複数の検査項目が配列されており、
検査機関の端末と画像読取り装置と支援サーバがネットワークで接続され、
支援サーバは、ファイル保存部と、画像解析手段と、文字列情報変換手段と、出力部を備え、
前記ファイル保存部には、医療機関から受け取った検査依頼書を画像読取り装置に読み込んで得られる検査依頼書の画像ファイルが保存され、
前記画像解析手段は、検査機関の端末からの指令により、ファイル保存部に保存された検査依頼書の画像ファイルを画像解析し、
前記文字列情報変換手段は、検査機関の端末からの指令により、画像解析後の画像ファイルに含まれる各欄の画像データを文字列情報に変換し、
前記出力部は、検査機関の端末からの指令により、文字列情報変換手段により変換された各欄の文字列情報から検査指示ファイルを生成して出力し、
前記文字列情報変換手段は、画像解析後の画像ファイルに含まれる各欄の画像データのうち、検査項目選択欄については、チェック欄にチェックマークが含まれている検査項目のみの画像データを文字列情報に変換することを特徴とすることを第1の特徴とする。
【0010】
本発明に係る検体検査依頼の支援システムは、
前記検査依頼書が、複数の医療機関ごとに、依頼元の医療機関を示す医療機関情報表示欄と、被験者情報を記入する被験者情報記入欄と、依頼元の医療機関が独自に設定した検査項目から依頼対象の検査項目を選択する検査項目選択欄を含み、かつ、医療機関ごとの検査依頼書は、それぞれの検査項目選択欄の異なる配列位置に同じ検査項目がチェック欄とともに含まれており、
前記ファイル保存部には、それぞれの医療機関から受け取った検査依頼書を画像読取り装置に読み込んで得られる検査依頼書の画像ファイルが保存され、
前記画像解析手段が、検査機関の端末からの指令により、ファイル保存部に保存された複数の医療機関ごとの検査依頼書の画像ファイルを画像解析し、
前記文字列情報変換手段が、検査機関の端末からの指令により、画像解析後の各画像ファイルに含まれる各欄の画像データを文字列情報に変換し、
前記出力部が、検査機関の端末からの指令により、文字列情報変換手段により変換された各欄の文字列情報から検体検査の検査指示ファイルを医療機関ごとに生成して出力することを第2の特徴とする。
【0011】
本発明に係る検体検査依頼の支援システムは、
検査項目選択欄が、検査分野を表す中分類に区分されていることを第3の特徴とする。
【0012】
本発明に係る検体検査依頼の支援システムは、
検査依頼書が、依頼元の医療機関が被験者の臨床症状を選択する臨床症状選択欄を含み、
当該臨床症状選択欄は、依頼元の医療機関が被験者の臨床症状にチェックマークを入れるチェック欄とともに複数の臨床症状が配列されており、
文字列情報変換手段は、画像解析後の各欄の画像データのうち、臨床症状選択欄については、チェック欄にチェックマークが含まれている臨床症状のみの画像データを文字列情報に変換することを第4の特徴とする。
【0013】
本発明に係る検体検査依頼の支援システムは、
検査依頼書が、依頼元の医療機関が検体の検査材料を選択する検査材料選択欄を含み、
当該検査材料選択欄は、依頼元の医療機関が検体の検査材料にチェックマークを入れるチェック欄とともに複数の検査材料が配列されており、
文字列情報変換手段は、画像解析後の各欄の画像データのうち、検査材料選択欄については、チェック欄にチェックマークが含まれている検査材料のみの画像データを文字列情報に変換することを第5の特徴とする。
【0014】
本発明に係る検体検査依頼の支援システムは、
検査依頼書が、前記検査項目選択欄に代えて、依頼元の医療機関が検体を採取した部位を選択する検体採取部位選択欄を含み、
当該検体採取部位選択欄は、依頼元の医療機関が検体を採取した部位にチェックマークを入れるチェック欄とともに複数の採取部位が配列されており、
文字列情報変換手段は、画像解析後の各欄の画像データのうち、検体採取部位選択欄については、チェック欄にチェックマークが含まれている採取部位のみの画像データを文字列情報に変換することを第6の特徴とする。
【0015】
本発明に係る検体検査依頼の支援システムは、
検査依頼書の前記検体採取部位選択欄に、依頼元の医療機関が検体を採取した採取法を選択する選択欄を含み、
当該選択欄は、複数の採取法から依頼元の医療機関が検体を採取した採取法にチェックマークを入れるチェック欄とともに複数の採取法が配列されており、
文字列情報変換手段は、画像解析後の各欄の画像データのうち、検体を採取した採取法を選択する選択欄については、チェック欄にチェックマークが含まれている採取法のみの画像データを文字列情報に変換することを第7の特徴とする。
【0016】
本発明に係る検体検査依頼の支援システムは、
検査依頼書の前記検体採取部位選択欄に、依頼元の医療機関が検体を採取した材料の種類を選択する選択欄を含み、
当該選択欄は、検体の材料の複数の種類から依頼元の医療機関が検体を採取した材料の種類にチェックマークを入れるチェック欄とともに複数の種類が配列されており、
文字列情報変換手段は、画像解析後の各欄の画像データのうち、検体を採取した材料の種類を選択する選択欄については、チェック欄にチェックマークが含まれている種類のみの画像データを文字列情報に変換することを第8の特徴とする。
【0017】
本発明に係る検体検査依頼の支援システムは、
検査依頼書が、固有の検体情報を取得する検体情報取得領域または検体情報表示欄を含むことを第9の特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によると、検査依頼書を医療機関ごとにカスタマイズ化しながら、各医療機関から検査機関が受け取った検査依頼書を画像ファイル化し、画像解析により読み込んだ画像データから、検査依頼書に従う検査指示ファイルを生成し出力できるようになり、検査依頼書を医療機関ごとにカスタマイズ化して検査依頼書の使い勝手の向上を図り、また、医療機関毎にカスタマイズ化された検査依頼書と検体検査システムとの連携をスムーズに行え、これにより、検査機関は各医療機関から依頼される多数の検体検査を管理しながら効率よく検体検査を実施できるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る検体検査依頼の支援システムの構成図、
図2図1のシステムに用いる検査依頼書の構成図、
図3図1の支援システムに用いる支援サーバの構成図、
図4図1の支援システムに用いるクラウドサーバの構成図、
図5】(A)は医療機関の端末画面、(B)は患者情報ラベルと検体ラベルを示す説明図、
図6図2の検査依頼書の検査依頼例を示す図、
図7】病院が異なる場合の検査依頼書の構成図、
図8】検査指示ファイルの出力例を示す図、
図9】検査指示ファイルの出力例を示す図、
図10】病理組織診の検査依頼書を示す構成図、
図11図10の検査依頼書の検査依頼例を示す図、
図12】病理組織診の検査指示ファイルの出力例を示す図、
図13】病理組織診の検査指示ファイルの出力例を示す図、
図14】病理細胞診の検査依頼書を示す構成図、
図15図14の検査依頼書の検査依頼例を示す図、
図16】病理細胞診の検査指示ファイルの出力例を示す図、
図17】病理細胞診の検査指示ファイルの出力例を示す図、
図18】細菌検査の検査依頼書を示す構成図、
図19図18の検査依頼書の検査依頼例を示す図、
図20】細菌検査の検査指示ファイルの出力例を示す図、
図21】細菌検査の検査指示ファイルの出力例を示す図、
図22】検体ラベルを貼付けない場合の検査依頼書を示す図、
図23】検体の固有番号を手書きした例の検査依頼書を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。図1ないし図9は本発明の第1実施形態を示すもので、図1は検体検査依頼の支援システムの構成図である。図中、符号Sは検体検査依頼の支援システム、符号1は検査依頼書、符号2は検体容器を示している。
【0021】
検体検査依頼の支援システムS(以下、支援システムSという)は、後工程の臨床検査システムに連動し、検体検査依頼の業務を支援するシステムである。同支援システムSは、図1に示すように、検査機関Kの端末10と、画像読取り装置30と、支援サーバ40がネットワーク60で結ばれている。また、検査機関Kの端末10と、医療機関Mの端末20と、クラウドサーバ50がネットワーク60で結ばれている。ネットワーク60は、インターネット、有線LAN、無線LANなどの通信網、通信手段から構成されている。
【0022】
検査依頼書1は、図2に示すように、依頼日記入欄1a、医療機関名表示欄1b、患者情報記入欄1c、ラベル貼付欄1d、検査項目選択欄1e、専用セット選択欄1fを備えている。
【0023】
医療機関名表示欄1bは、検査依頼元の医療機関名が入力表示される。患者情報記入欄1cは、患者(被験者)に関する情報(ID、姓名、生年月日、採取日等)を記入する欄で、ラベル貼付欄1dは、図6に示すように、患者情報ラベルR1と検体情報ラベルR2(以下、検体ラベルR2という)が貼付けられる。患者情報ラベルR1は、文字情報とQRコード(登録商標)が印字され、QRコード(登録商標)には患者記入欄1cと同一の患者情報(ID、姓名、誕生日、性別等)が検体の固有番号である受付番号と一緒に格納されている。検体ラベルR2は、文字情報とバーコードが印刷され、バーコードには検体の固有番号である受付番号が格納されている。
【0024】
検査項目選択欄1eは、医療機関が検査を依頼する項目を選択する欄で、最上段に検査分野を表す中分類mの区分が設けられ、2段目以降に、各区分に属する検査項目がチェック欄cと並んで配列されている。図2の検査依頼書1では、最上段に7種類(免疫学、血液学、生化学1、生化学2、尿・糞便、遺伝子・染色体、カスタマイズ枠)の区分が設けられている。
【0025】
検査項目選択欄1eは、医療機関ごと(大分類)に検査項目(小分類)をカスタマイズすることができる。図6は医療機関M(例:ABC病院)の検査依頼書1の例であり、図7は医療機関M(例:abcクリニック)の検査依頼書1’の例である。患者基本情報部分は統一して、医療機関ごと(大分類)にかつ検査分野ごと(中分類)に検査項目(小分類)を自由に設定することができる。また、患者基本情報部分は統一して、医療機関ごと(大分類)に中分類なしで(中分類の区分を空欄にして)検査項目(小分類)を自由に設定することができる。
【0026】
専用セット選択欄1fは、特定の検査項目の組合せと特定の検体容器の組合せを1の専用セットとする複数の専用セットがチェック欄cと並んで配列されている。専用セット選択欄1fは、検査項目選択欄1eの代わりに用いることができる。図示例の場合、上段に特定の検査項目の組合せを示す専用セット番号(1、2・・・)が配列され、下段に専用セット番号に対応した検体容器の組合せ(全・糖・末/全・糖/全・末/全・糖・末/全・末/全・糖・末/他)が配列される。
【0027】
例えば、専用セット番号1のチェック欄cにチェックを入れると、専用セット番号1で組合わされる検査項目の検査を依頼することを意味し、依頼時に3種類(全・糖・末)の検体容器が必要であることを意味する。専用セット番号に対応する検査項目の組合せは、クラウドサーバ50に保存される。
【0028】
上記専用セットにおいて、“全”は全血検査に分類される検査項目の容器、“糖”は血糖検査に分類される検査項目の容器、“末”は末梢血検査に分類される検査項目の容器、を意味している。検体容器の種類は、蓋の色(例:青・黄・紫)で識別される。なお、検体容器の種類は、容器の大きさ、容器の形態の種別によっても識別可能である。
【0029】
上記検査依頼書1は、クラウドサーバ50に雛形ファイルが保存されている。図4にクラウドサーバ50の構成図を示す。クラウドサーバ50はファイル保存部51を備え、ファイル保存部51には、検体検査を依頼するための多数の検査項目一覧、各検査項目のコード一覧、専用セット番号に対応する検査項目の組合せ一覧の各データが保存されている。
【0030】
医療機関Mは、端末20からの操作により、クラウドサーバ50から検査依頼書1の雛形ファイルをダウンロードし、検査項目選択欄1eに中分類の区分ごとに配列された検査項目を、クラウドサーバ50に保存された検査項目一覧から選択し、検査項目の種類および数を任意に設定し、プリンター等の出力装置から、設定後の検査依頼書を出力することができる。
【0031】
クラウドサーバ50は、検体の固有番号である受付番号を発行する番号発行部52、検査依頼書1のラベル貼付欄1dに貼付ける患者情報ラベルR1、検査依頼書1のラベル貼付欄1dと検体容器2に貼付ける検体ラベルR2を発行するラベル発行部53、出力部54をさらに備えている。
【0032】
医療機関Mは、端末20からの操作により、クラウドサーバ50の番号発行部52から、検査を依頼する検体について順次発行される受付番号を取得し、医療機関Mのデータベースに保存された患者情報をもとに、クラウドサーバ50のラベル発行部53から、患者情報ラベルR1と検体ラベルR2を作成し、プリンター等の出力装置から、1枚の患者情報ラベルR1と必要枚数(検体容器2の数が3個の場合は3枚+1枚=4枚)の検体ラベルR2を出力することができる。図5(A)に端末20の画面21、図5(B)に印刷されたラベルR1、R2の例を示す。
【0033】
画像読取り装置30は、検査機関Kが受け取った検査依頼書1を読み込んで画像ファイル化し、検査依頼書1の画像ファイル(依頼書画像ファイル)Fiを支援サーバ40に送信する。検査機関Kが受け取ったペーパー形式の検査依頼書1を読み込んで画像ファイル化してもよい。検査機関Kの端末10が受け取ったPDF形式の検査依頼書1を画像読取り装置30に送信し、読み込んで、画像ファイル化してもよい。
【0034】
検査依頼書1の画像ファイル化の形式は、JPEG、GIF、PNGなどの形式が適用される。依頼書画像ファイルFiの支援サーバ40への送信は、検査機関Kの端末10からの指令により行なわれる。また、予め画像読取り装置30に組み込まれた送信プログラムにより行なわれる。
【0035】
支援サーバ40は、図3に示すように、依頼書画像ファイルFiを保存する画像ファイル保存部41と、保存された依頼書画像ファイルFiを画像解析する画像解析部42と、画像解析後の画像データを、検体検査の指示ファイルを生成するための文字列情報に変換する文字列情報変換部43と、変換された各欄の文字列情報を検体検査の指示ファイルと管理データ用に出力する出力部44と、プログラム保存部45を備えている。
【0036】
画像ファイル保存部41は、画像読取り装置30から送信されるすべての依頼書画像ファイルFiを保存する。画像解析部42は、依頼書画像ファイルFiについて、検査依頼書1に含まれる各欄、すなわち、依頼日記入欄1a、医療機関名表示欄1b、患者情報記入欄1c、ラベル貼付欄1d、検査項目選択欄1e、専用セット選択欄1fを含む各欄をそれぞれ特定し、特定後の各欄1a~1fについて画像解析を行なう。
【0037】
文字列情報変換部43は、検査機関Kの端末10からの指令により、画像解析後の各欄1a~1fに含まれる画像データを、それぞれ文字列情報に変換する。文字列情報変換部43は、検査項目選択欄1eについては、チェック欄cにチェックマークが付いている検査項目の画像データのみを文字列情報に変換する。出力部44は、検査機関Kの端末10からの指令により、変換後の各欄の文字列情報から検体検査の指示ファイルを生成し出力する。具体的内容は後述する。
【0038】
画像ファイル保存部41、画像解析部42、文字列情報生成部43、出力部44の各動作は、検査機関Kの端末10からの指令に従って行なわれる。また、予め支援サーバ40のプログラム保存部45に保存されたプログラムにより行なわれる。
【0039】
次に上記構成の支援システムSを用いた検体検査の依頼書の作成から検査の指示ファイルの出力までの流れについて、以下に説明する。
【0040】
(検査依頼書の作成)
医療機関Mは、患者から採取した検体を検体容器2に収容し、検査依頼書1を作成する。検査依頼書1(以下、依頼書1という)は、端末20からの操作により、クラウドサーバ50から医療機関M用に作成した雛形をダウンロードし、印刷する。依頼書1の雛形は、検査機関Kが端末10からの操作により医療機関ごとにダウンロードし、医療機関Mに提供してよい。
【0041】
依頼書1は、検査項目選択欄1eに配列される中分類の区分および各区分の検査項目を医療機関ごとにカスタマイズ化することができる。カスタマイズ化された雛形はクラウドサーバ50に保存される。
【0042】
(ラベルの発行)
次に、医療機関Mは、端末20からの操作により、クラウドサーバ50のラベル発行部53を作動させ、画面21から必要情報を入力し(図5(A)参照)、患者情報ラベルR1と検体ラベルR2を作成し、各ラベルを印刷する(図5(B)参照)。検体ラベルR2は必要枚数印刷する。
【0043】
印刷したラベルR1、R2は、依頼書1のラベル貼付欄1dに貼付ける(図6参照)。残りの検体情報ラベルR2は検体容器2に貼付ける(図1参照)。図示例の場合、検体ラベルR2は4枚印刷し、1枚を依頼書1に、3枚を3種類(全・糖・末)の検体容器2に貼付ける。
【0044】
なお、ラベル貼付欄1dに患者情報ラベルR1を貼付けない場合、患者情報記入欄1cに手書きで患者情報を記入してもよい。また、後述するように、検体ラベルR2は、検体容器2の数だけ印刷し、ラベル貼付欄1dに検体ラベルR2を貼付けず、検体ラベルR2を貼付ける領域に検体容器の受付番号を格納するバーコードを直接印刷し、あるいは検体容器の受付番号を手書きで記入する場合もある。
【0045】
次に、医療機関Mの担当者は、印刷した依頼書1の検査項目選択欄1eについて、検査を依頼する検査項目のチェック欄cにチェックマークを記入する。図6の例では、検査項目選択欄1eの中分類「免疫学」の項目「末梢血一般検査」、中分類「生化学2」の項目「CRP(定量)」、中分類「遺伝子・染色体」の項目「BNP」のチェック欄cにそれぞれチェックマークが記入されている。チェックマークは端末20から入力してもよい。
【0046】
図6の例で、ABC病院の担当者は、「末梢血一般検査」「CRP(定量)」「BNP」の検査項目依頼時の容器を把握しており、検査依頼書1には、ABC病院で検査依頼頻度が多い項目を自由に配置する事により、自院で利用する検査項目を容易に特定し、検査依頼を行う事が可能である。同様に、図7の例で、検査依頼書1’にabcクリニックで検査依頼頻度が多い項目を自由に配置する事により、abcクリニックの担当者は、自院で利用する検査項目を容易に特定し、検査依頼を行う事が可能である。
【0047】
医療機関Mの担当者は、患者に対し、検査を依頼する検査項目の組合せが決まっている場合、依頼書1の検査項目選択欄1eにチェックマークを記入することに加えて、または、依頼書1の検査項目選択欄1eにチェックマークを記入する代わりに、専用セット選択欄1fを使用し、専用セット選択欄1fから専用セット番号を選択し、チェック欄cにチェックマークを記入できる。図6の例では、専用セット番号2にチェックマークが記入されている。チェックマークの記入は端末20から行ってもよい。
【0048】
(検体検査の依頼)
次に、医療機関Mは、依頼書1と検体容器2の準備ができたら、検体検査を検査機関Kに依頼し、依頼書1と検体容器2を検査機関Kに送付する。医療機関Mの依頼により、検査機関Kの担当者が医療機関Mを訪問し、依頼書1と検体容器2を確認して受け取る場合もある。
【0049】
依頼書1には、検査項目と検体容器2の種類・個数が紐づけされており、医療機関Mの担当者は、検査依頼時に検査項目と検体容器の種類・個数を容易に照合することができる。検査機関Kは、医療機関Mから依頼書1と検体容器2を受領するが、同様に、受領時に検査項目と検体容器の種類・個数を容易に照合することができる。依頼書1はPDF形式に変換し、医療機関Mの端末20から検査機関Kの端末10に送信してよい。
【0050】
(依頼書の画像ファイル化)
検査機関Kは、依頼書1と検体容器2の受領後、依頼書1を画像読取り装置30に読み込んで画像ファイル化し、依頼書画像ファイルFiを支援サーバ40に送信し、画像ファイル保存部41に保存する。検査機関Kは、端末10に医療機関Mの端末20からPDF形式の依頼書1を受け取った場合、これを画像読取り装置30に送信し、画像ファイル化してもよい。
【0051】
(依頼書画像ファイルの画像解析)
次に、検査機関Kは、端末10からの指令により、支援サーバ40の画像解析部42を作動させ、画像ファイル保存部41に保存された依頼書画像ファイルFiを順次選択し、画像解析を行なう。画像解析部42が作動されると、画像解析部42が、依頼書画像ファイルFiに含まれる各欄をそれぞれ特定し、画像解析を行う。
【0052】
図6の依頼書1の場合、画像解析部42が隅部の基準マークMkを読み取り、基準マークMkの位置情報(X、Y座標)から、各欄のフィールド(領域)を特定し、各欄のフィールド内の画像を解析する。各欄のフィールド情報(X、Y座標、幅、高さ)は、依頼書1の基準マークMkの位置情報に紐づけされており、各欄のフィールドを画像解析部42が特定可能である。
【0053】
また、依頼書1の隅部に基準マークMkがない場合であっても、画像解析部42が、依頼書画像ファイルFiの画像全体から、チェックマーク欄のチェックマークcを認識し、チェックマークcに隣接する検査項目の文字列情報を読み取ることができる。この場合、後述するように、患者情報は患者情報ラベルR1から読み取り、検体情報は検体ラベルR2から読み取る。患者情報記入欄1cにカラー色の手書きで記入されている場合など、カラー色の有無で患者情報であることを認識させてもよい。
【0054】
画像解析部42は、AI(人工知能)-OCR(光学文字認識)機能を内蔵しており、各欄のフィールドの画像を高度に認識し、解析を行う。ラベル貼付欄1dに患者情報ラベルR1が貼付けられている場合、まず、患者情報ラベルR1からQRコード(登録商標)を読み取る。同時に、検体ラベルR2からバーコードを読取る。
【0055】
これにより、画像解析部42は、依頼書1の患者情報と、依頼書1に紐づけられた検体情報を認識する。ラベル貼付欄1dに患者情報ラベルR1が貼付けられておらず、患者情報記入欄1cに手書きの文字で患者情報が記入されている場合、手書きの文字を読み取り、依頼書1の患者情報と検体情報を認識する。
【0056】
後述するように、ラベル貼付欄1dに検体ラベルR2を貼付けず、検体ラベルR2を貼付ける領域に検体容器の受付番号を格納するバーコードが直接印刷され、あるいは検体容器の受付番号が手書きで記入されている場合は、画像解析部42が、これらの情報から検体情報を読み取り、認識する。当該領域は検体容器に固有の検体情報を取得する検体情報取得領域または検体情報表示欄として機能する。
【0057】
次に、画像解析部42は、検査項目選択欄1eについて、検査項目のチェック欄cにチェックマークが含まれている場合、チェックマークが含まれているチェック欄cの、すぐ隣りの検査項目を検査依頼項目と認識(判断)し、当該検査項目の文字列(画像データ)を読み取る。
【0058】
画像解析部42は、専用セット選択欄1fにチェックマークが含まれている場合、チェックマークが含まれている専用セットの専用セット番号を、検査依頼対象の専用セットと認識(判断)し、当該セット番号(画像データ)を読み取る。
【0059】
画像解析部42は、AI(人工知能)機能を内蔵せず、OCR(光学文字認識)機能のみを内蔵する場合でも、依頼書画像ファイルFiを解析可能である。この場合、OCRが患者情報および検体情報を読み取り、また、OCRがチェックマークを認識して、隣接する検査項目の文字列情報を読み取ることができる。
【0060】
図6および図7に示すように、異なる医療機関(ABC病院、abcクリニック)の依頼書について、検査項目の配列が異なる場合でも、画像解析部42が、チェックマークを認識し、チェックされた検査項目の文字列(画像データ)を読み取る(すなわち、チェックマークと検査項目の文字列をセットとして取り扱う)ので、検査機関Kは、複数の異なる依頼書から同一の検査項目をカウントし、処理件数および負荷を把握し、検査の予定を把握し、管理することができる。
【0061】
例えば、図6の例ではABC病院の検査頻度に合わせて、中分類「血液学」の項目「総蛋白質」が上から11番目に配置されているが、図7の例ではabcクリニックの検査頻度に合わせて、同項目「総蛋白質」が上から1番目に配置されている。このように複数の検査依頼書について、同一の検査項目の配列位置が異なる場合でも、それぞれにチェックマークがあることにより、検査機関Kは、複数の異なる依頼書から同一の検査項目をカウントし、処理件数および負荷を把握し、検査の予定を把握し、管理することができる。
【0062】
(各欄の文字列情報変換)
次に、検査機関Kは、端末10からの指令により、支援サーバ40の文字列情報変換部43を作動させ、文字列情報変換部43が、画像解析により認識されたフィールドの画像データ(検査項目選択欄1e、専用セット選択欄1fの場合、チェックマークにより選択された項目のフィールドの画像データ)を、それぞれ文字列情報に変換する。
【0063】
(検査指示ファイルの出力)
次に、検査機関Kは、端末10からの指令により、支援サーバ40の出力部44を作動させ、出力部44が、文字列情報に変換されたフィールド(検査項目選択欄1e、専用セット選択欄1fの場合、チェックマークにより選択された項目のフィールド)から、CSV形式の検査指示ファイルFsを出力する。
【0064】
図8および図9に、図6の検査依頼書1に基づく検査指示ファイルの出力例を示す。図8は患者属性部、図9は検査明細部を示している。図8に示すように、患者属性部には、医療機関、依頼日、受付番号、患者情報等の各項目が配列され、各項目のフィールドに対応する文字列情報が出力される。
【0065】
図9に示すように、検査明細部には、専用セット、検査項目等の各欄が配列されており、専用セット欄には、医療機関、依頼日、受付番号等の項目が、専用セット番号の項目とともに配列され、各項目のフィールドに、対応する文字列情報が出力される。また、検査項目欄には、同じく医療機関、依頼日、受付番号の項目が、検査項目とともに配列され、各項目のフィールドに、対応する文字列情報が出力される。検査項目が2以上チェックされている場合、それぞれの検査項目欄が出力される。
【0066】
出力された検査指示ファイルFsは、図1を参照して、後工程の臨床検査システムに引き継がれ、検査機関Kの端末10からの指令により、管理サーバ70に送信され、検査指示ファイルFsに従って、検体検査が実施される。
【0067】
検査指示ファイルには、検査項目、専用セットに対応してそれぞれ検体の受付番号が出力されるので、検体検査の実施時に指示ファイルと検体容器の照合が確実に行なわれる。検体容器に貼付けられた検体ラベルR2の検体情報(受付番号)は、検体検査システムの一部を構成するバーコード読取り機により読取りされ、検査指示ファイルに含まれる受付番号と照合される。
【0068】
依頼書1の受取りから依頼書1の画像ファイル化および保存、依頼書画像ファイルの解析、画像ファイルから文字列情報への変換、検査指示ファイルの生成および出力までの一連の動作は、端末10からの指令に従い支援サーバ40に保存されたプログラムにより実行させることができる。
【0069】
本実施形態によると、依頼書1に患者情報ラベルR1と検体ラベルR2の貼付欄を設け、依頼書1から各情報を読み取るから、依頼書1と検体容器2のマッチングが図れ、検査依頼時、受領時の医療機関M、検査機関K双方の負担が大きく軽減される。
【0070】
医療機関Mは、検査項目選択欄1eに医療機関の検査依頼頻度の多い項目を自由に配置することができ、自院で利用する検査項目を容易に特定して検査依頼することができる。これにより、医療機関ごとに検査依頼書の使い勝手が向上する。
【0071】
検査機関Kは、医療機関ごとに検査項目の配列が異なる依頼書1のそれぞれを画像ファイル化し、画像解析により、検査指示に必要な検査指示ファイルを生成することができ、臨床検査システムとの連携を図ることができる。これにより、多くの医療機関から依頼される検体検査を効率よく行うことができる。
【0072】
図10ないし図13は、本発明の第2実施形態を示すもので、病理検査の一つである組織検査の検査依頼書および検査指示書の例を示している。組織検査はメス、鉗子、針などを用いて採取した部位の検体の組織を顕微鏡で観察し調べる検査である。
【0073】
図10の検査依頼書3は、依頼日記入欄、医療機関名表示欄、患者情報記入欄、ラベル貼付欄3d、検体採取部位選択欄3e、臨床診断記入欄3g、臨床経過及び所見等記入欄3hを備えている。検体採取部位選択欄3eは、依頼元の医療機関が検体を採取した部位等を選択する欄で、図示例の場合、上段に採取部位の分野を表す中分類の区分が設けられ、中段にチェック欄cが設けられ、下段にチェック欄cに対応する依頼項目(採取部位項目)が配列されている。
【0074】
検体採取部位選択欄3eは、上段の中分類として16種類(消化器、肝胆膵、呼吸器・・・、採取法、運動器など)の区分が設けられ、各区分に、1又は複数の依頼項目(口腔、咽頭など)が配列されている。
【0075】
図11は、図10の検査依頼書3の記入例を示している。組織診断検査依頼では、検体採取部位、採取法、運動器にチェックを入れ、場合によっては、左右の識別および特別欄にもチェックを入れる。図示例の場合、検体採取部位選択欄3eの中分類「消化器」の項目「食道」、中分類「採取法」の項目「生検」、中分類「運動器」の項目「1臓器」のチェック欄cにチェックマークが記入されている。また、臨床診断記入欄3gおよび臨床経過及び所見等記入欄3hに提出医により臨床診断、臨床経過及び所見等が手書き等で記入されている。
【0076】
上記検査依頼書3は、第1実施形態と同じ手順により、医療機関から検査機関に検体とともに送付あるいは送信され、画像読取り装置30により読み取られ、依頼書画像ファイルFiが画像ファイル保存部41に保存される。保存された依頼書画像ファイルFiは、画像解析部42により、依頼書画像ファイルFiに含まれる各欄が画像解析され、また、手書きの文字が読み取られる。
【0077】
さらに、画像解析部42により、第1実施形態と同様に、検体採取部位選択欄3eについて、チェックマークの有無が解析され、文字列情報変換部43により、チェックマークが記入された項目の画像データのみが文字列情報に変換される。臨床診断記入欄3gおよび臨床経過及び所見等記入欄3hの手書き文字は、OCR画像として切出しされて、画像ファイル保管部41に保管される。
【0078】
そして、出力部44により、文字列情報変換部43により変換された文字列情報と検査指示書Fsが出力される。図12および図13に出力された検査指示書Fsを示す。なお、後工程で画像ファイル保管部41に保管された手書き文字のOCR画像を含む組織診断検査情報が組織診断検査報告書として出力される。
【0079】
医療機関は、組織検査の検査依頼書について、検体採取部位選択欄3eに医療機関の検査依頼頻度の多い項目を自由に配置することができ、自院で利用する検査項目を容易に特定して検査依頼することができる。これにより、医療機関ごとに組織検査の検査依頼書の使い勝手が向上する。
【0080】
図14ないし図17は、本発明の第3実施形態を示すもので、病理検査の一つである細胞検査の検査依頼書および検査指示書の例を示している。細胞検査は採取した検体の細胞を顕微鏡で観察し調べる検査である。
【0081】
図14の検査依頼書4は、依頼日記入欄、医療機関名表示欄、患者情報記入欄、ラベル貼付欄4d、検体採取部位選択欄4e、臨床診断記入欄4g、臨床経過所見及び療法記入欄4h、細胞診断記入欄4i、検査結果記入欄4jを備えている。検体採取部位選択欄4eは、依頼元の医療機関が検体を採取した部位・方法・種類・材料を選択する欄で、図示例の場合、上段に採取部位の種別を表す中分類の区分が設けられ、中段にチェック欄cが設けられ、下段にチェック欄cに対応する項目(採取部位・採取方法・採取種類・採取材料)が配列されている。
【0082】
図15は、図14の検査依頼書4の記入例を示している。細胞診断検査依頼では、検体採取部位にチェックを入れ、場合によっては、左右の識別および特別欄にもチェックを入れる。図示例の場合、検体採取部位選択欄4eの中分類「泌尿器」の項目「自然尿」のチェック欄cにチェックマークが記入されている。また、臨床経過及び所見記入欄4hに提出医により臨床経過所見及び療法が手書き等で記入されている。
【0083】
上記検査依頼書4は、第1実施形態と同じ手順により、医療機関から検査機関に検体とともに送付あるいは送信され、画像読取り装置30により読み取られ、依頼書画像ファイルFiが画像ファイル保存部41に保存される。保存された依頼書画像ファイルFiは、画像解析部42により、依頼書画像ファイルFiに含まれる各欄が画像解析され、また、手書きの文字が読み取られる。
【0084】
さらに、画像解析部42により、第1実施形態と同様に、検体採取部位選択欄4eについて、チェックマークの有無が解析され、文字列情報変換部43により、チェックマークが記入された項目の画像データのみが文字列情報に変換される。臨床経過所見及び療法記入欄4hの手書き文字は、OCR画像として切出しされて、画像ファイル保管部41に保管される。
【0085】
そして、出力部44により、文字列情報変換部43により変換された文字列情報と検査指示書Fsが出力される。図16および図17に出力された検査指示書Fsを示す。なお、後工程で画像ファイル保管部41に保管された手書き文字のOCR画像を含む細胞診断検査情報が細胞診断検査報告書として出力される。
【0086】
医療機関は、細胞検査の検査依頼書について、検体採取部位選択欄4eに医療機関の検査依頼頻度の多い項目を自由に配置することができ、自院で利用する検査項目を容易に特定して検査依頼することができる。これにより、医療機関ごとに細胞検査の検査依頼書の使い勝手が向上する。
【0087】
図18および図21は、本発明の第4実施形態を示すもので、細菌の検査依頼書および検査指示書の例を示している。細菌検査は採取した検査材料から目的とする細菌を顕微鏡で観察し調べる検査である。
【0088】
図18の検査依頼書5は、依頼日記入欄、医療機関名表示欄、患者情報記入欄、ラベル貼付欄5d、検査材料選択欄5e、臨床症状選択欄5g、一般細菌検査選択欄5h、抗酸菌検査選択欄5iを備えている。検査材料選択欄5eは、依頼元の医療機関が検体となる検査材料を選択する欄で、図示例の場合、先頭行に検査材料の器官の種別を表す中分類区分が設けられ、偶数行にチェック欄cが設けられ、奇数行にチェック欄cに対応する項目(検査材料)が配列されている。
【0089】
臨床症状選択欄5gは、偶数行にチェック欄cが設けられ、奇数行にチェック欄cに対応する項目(臨床症状)が配列されている。一般細菌検査選択欄5hは、先頭行に目的菌の器官の種別を表す中分類区分が設けられ、偶数行にチェック欄cが設けられ、奇数行にチェック欄cに対応する項目(目的菌、検査項目)が配列されている。抗酸菌検査選択欄5iは、偶数行にチェック欄cが設けられ、奇数行にチェック欄cに対応する項目(検査項目)が配列されている。
【0090】
図19は、図18の検査依頼書5の記入例を示している。細菌検査依頼では、検査材料にチェックを入れ、対象材料のチェック欄がない場合、その他欄に記入する。検査材料のチェック後、一般細菌検査または抗酸菌検査もしくは両方に該当する検査依頼項目にチェックを入れる。
【0091】
図示例の場合、検査材料選択欄5eでは、中分類「血液穿刺液」の項目「胸水」のチェック欄cにチェックマークが記入され、一般細菌検査選択欄5hでは、中分類「共通」の項目「Sta.a.(MRSA)」「カンジダ」と中分類「セット項目」の項目「感受性-標準」にチェックマークが記入されている。また、抗酸菌検査選択欄5iでは、項目「抗酸菌塗抹」「抗酸菌培養」「結核菌群同定-DNA」にチェックマークが記入されている。
【0092】
上記検査依頼書5は、第1実施形態と同じ手順により、医療機関から検査機関に検体とともに送付あるいは送信され、画像読取り装置30により読み取られ、依頼書画像ファイルFiが画像ファイル保存部41に保存される。保存された依頼書画像ファイルFiは、画像解析部42により、依頼書画像ファイルFiに含まれる各欄が画像解析される。
【0093】
さらに、画像解析部42により、第1実施形態と同様に、検査材料選択欄5e、臨床症状選択欄5g、一般細菌検査項目選択欄5h、抗酸菌検査選択欄5iのそれぞれについて、チェックマークの有無が解析され、文字列情報変換部43により、チェックマークが記入された項目の画像データのみが文字列情報に変換される。
【0094】
そして、出力部44により、文字列情報変換部43により変換された項目名の文字列情報を含む検査指示書Fsが出力される。図20および図21に出力された検査指示書Fsを示す。
【0095】
医療機関は、細菌検査の検査依頼書について、検査材料選択欄5e、臨床症状選択欄5g、一般細菌検査項目選択欄5h、抗酸菌検査選択欄5iのそれぞれに、医療機関の検査依頼頻度の多い項目を自由に配置することができ、自院で利用する検査項目を容易に特定して検査依頼することができる。これにより、医療機関ごとに細菌検査の検査依頼書の使い勝手が向上する。
【0096】
検査機関は、病理検査(組織検査、細胞検査)および細菌検査のそれぞれの検査依頼書について、医療機関ごとに依頼項目の配列が異なる場合であっても、それぞれの依頼書を画像ファイル化し、画像解析により、検査指示に必要な検査指示ファイルを生成することができ、臨床検査システムとの連携を図ることができる。これにより、多くの医療機関から依頼される病理および細菌の検体検査を効率よく行うことができる。
【0097】
図22の検査依頼書1”は、図2に示す検査依頼書1のラベル貼付欄1dの検体ラベルR2の貼付け領域に検体ラベルR2を貼付けず、同貼付け領域を検体容器2の固有番号である受付番号の情報を格納したバーコードを印刷する領域1hとして使用した例を示している。
【0098】
上記の領域1hに対する検体容器2の受付番号の情報のバーコード印刷pr1は、医療機関Mの担当者が、端末20からの操作により、クラウドサーバ50の番号発行部52から検体について発行される受付番号をバーコードに変換し、検査依頼書1”の上記領域1hに、出力装置を用いて、検体の受付番号情報を格納したバーコードを印刷することにより行われる。
【0099】
図23の検査依頼書6は、検査依頼項目選択欄1eが、最上段の中分類mに、検査容器の種別を表す区分が設けられ、2段目以降に、各区分に属する検査項目がチェック欄cとともに配列されている。図示例の場合、最上段の中分類mに、2種類(末・全)の区分と減菌スピッツ、カスタマイズ枠の区分が設けられている。“末”は末梢血検査に分類される検査項目の容器、“全”は全血検査に分類される検査項目の容器を意味している。同選択欄1eには別種類(糖)の区分を追加してもよい。“糖”は血糖検査に分類される検査項目の容器を意味する。検体容器の種類は、蓋の色(例:青・黄・紫)等で識別される。
【0100】
図23に示す検査依頼書6は、ラベル貼付欄1dの検体ラベルR2の貼付け領域が、検体容器の検体情報表示欄1iとして使用されている。検体容器の検体情報は、検体容器の受付番号を使用し、番号発行部52から検体ごとに発行される受付番号を、出力装置を用いて検体情報表示欄1iに印刷させてもよいし、医療機関Mの担当者が手書きで記入してもよい。
【0101】
検査依頼書1”に印刷される検体容器の受付番号のバーコード印刷pr1、または検査依頼書6の検体情報表示欄1iに記入される受付番号は、前述の実施形態と同様に、画像読取り装置30により読み取られ、画像解析部42により画像解析され、文字列情報変換部により、文字列情報に変換され、検査指示ファイルの項目(受付番号)に出力される。
【0102】
図22に示す検査依頼書1”の例は、図10図14図18図23に示す検査依頼書に適用できるのは勿論であり、また、図23に示す検査依頼書6の例は、図2図10図14図18に示す検査依頼書に適用できるのは勿論である。
【0103】
かくして、本発明によると、医療機関が使用する検査依頼書を医療機関ごとにカスタマイズ化し得て、検査依頼書の改善を図り、医療機関および検査機関双方の負担軽減を図れる検体検査依頼の支援システムを実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、臨床検査、病理検査、細菌検査等の検査システムと連携し、検査依頼の支援を行なう支援システムとして利用可能である。
【符号の説明】
【0105】
1,1’,1”,3,4,5,6 検査依頼書
1d,3d,4d,5d ラベル貼付欄
1e 検査項目選択欄
1h 検体情報印刷領域
1i 検体情報表示欄
2 検体容器
3e,4e 検体採取部位選択欄
5e 検査材料選択欄
10,20 端末
21 画面
30 画像読取り装置
40 支援サーバ
41 画像ファイル保存部
42 画像解析部
43 文字列情報変換部
44,54 出力部
45 プログラム保存部
50 クラウドサーバ
51 ファイル保存部
52 番号発行部
53 ラベル発行部
60 ネットワーク
70 管理サーバ
Fi 依頼書画像ファイル
Fs 検査指示ファイル
K 検査機関
M 医療機関
R1 患者情報ラベル
R2 検体ラベル(検体情報ラベル)
S 支援システム(検体検査依頼の支援システム)
【要約】      (修正有)
【課題】依頼書の改善と、医療機関および検査機関双方の負担軽減を図ることが可能な検体検査依頼の支援システムを提供する。
【解決手段】検体検査依頼の支援システムSにおいて、検査依頼書1に医療機関情報表示欄、被験者情報記入欄、検査項目選択欄を設ける。検査機関Kの端末10と画像読取り装置30と支援サーバ40をネットワーク60で接続し、医療機関Mから受け取った検査依頼書1を画像読取り装置30に読み込んで画像ファイル化し、画像解析部42が検査依頼書の画像ファイルFiを画像解析し、文字列情報変換部43が画像解析後の画像ファイルに含まれる各欄の画像データを文字列情報に変換し、出力部44が変換後の各欄の文字列情報から検査指示ファイルFsを生成し出力する。文字列情報変換部43は、検査項目選択欄についてチェック欄にチェックマークが含まれている検査項目のみの画像データを文字列情報に変換する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23