(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】発音集魚剤収納用シンカーおよびこれを用いたルアー仕掛け
(51)【国際特許分類】
A01K 95/00 20060101AFI20220711BHJP
A01K 85/01 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
A01K95/00 Z
A01K85/01 B
(21)【出願番号】P 2021195447
(22)【出願日】2021-12-01
【審査請求日】2021-12-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520268470
【氏名又は名称】岡崎 章正
(74)【代理人】
【識別番号】100085224
【氏名又は名称】白井 重隆
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 章正
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第6651376(US,B1)
【文献】米国特許第6796079(US,B1)
【文献】実開平2-83765(JP,U)
【文献】実開平1-121381(JP,U)
【文献】実開昭50-45289(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 95/00
A01K 85/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
錘となるシンカー本体と、該シンカー本体に設けられて、水に溶けることで炭酸ガスを発生させる発音集魚剤を収納する通水収納部とを備えた発音集魚剤収納用シンカーであって、
前記シンカー本体又は前記通水収納部には、水中で前記炭酸ガスが発生した際の音に共鳴する水中共鳴部が設けられ、
該水中共鳴部は、
前記通水収納部と基端開口が連通する共鳴管と、該共鳴管の基端開口を塞ぐとともに、前記炭酸ガスが発生した際の音により振動する振動板とを有した共鳴管式水中共鳴部、又は、前記通水収納部と連通する開口部が形成された共鳴容器を有し、該共鳴容器の内部の水がばねとしての役割を果たし、共鳴することで音を発生するヘルムホルツ式水中共鳴部であることを特徴とする発音集魚剤収納用シンカー。
【請求項2】
前記発音集魚剤は、水溶性発泡剤に飴を練り込んだ発音キャンディ、又は、前記水溶性発泡剤に魚の餌成分又は餌臭気成分を混入したものであることを特徴とする請求項1に記載の発音集魚剤収納用シンカー。
【請求項3】
少なくともルアー、シンカーおよび釣り針を備えたルアー仕掛けであって、
前記シンカーが、請求項1又は請求項2に記載された発音集魚剤収納用シンカーであることを特徴とするルアー仕掛け。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中で音を発生させる集魚剤を付属した発音集魚剤収納用シンカーおよびこれを用いたルアー仕掛けに関する。
【背景技術】
【0002】
ルアーの一種として、例えば、特許文献1に記載されたバイブレーションタイプのラトルルアーが知られている。このタイプのルアーは、音を発生して魚の聴覚を刺激し、好奇心の強い魚をおびき寄せて釣る疑似餌で、ルアー本体と、ルアー本体の内部空間に移動自在に収納されたラトルボール(鉄球)とを備えている。
【0003】
このラトルルアーでは、ルアーが水中にキャスティングされた後の引き寄せ時、ルアー本体の内部空間でラトルボールを自在に移動させ、ラトルボール同士、又は、ラトルボールとルアー本体とを衝突させて、様々な音を発生させることで魚をおびき寄せる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-248441号公報
【文献】長崎総合科学大学、紀要第26巻第2号、共鳴管付き圧電型音源の検討、中村光彦、1985年10月31日受付(工学基礎センター)[令和3年11月8日検索]、インターネット<https://core.ac.uk/download/pdf/230994225.pdf>
【文献】Between Music:AquaSonic-trailer、[令和3年11月8日検索]、インターネット<https://www.youtube.com/watch?v=-uYdEsNao-A>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のルアーにあっては、このようにキャスティング後、リールを巻くなどしてルアーを引き寄せ(移動させ)なければ、ラトルボール同士や、ラトルボールとルアー本体とが衝突して音が鳴らなかった。
【0006】
そこで、発明者は鋭意研究の結果、水中で炭酸ガスを発生させる水溶性発泡剤を含む発音集魚剤をシンカーおよびこれを用いるルアー仕掛けに付属させれば、ラトルルアーの場合のように発音させるためのルアー操作が不要で、水中でルアーを静止した状態でも、炭酸ガスの泡が発生し、発音して集魚ができることを知見した。
また、発明者はさらなる鋭意研究の結果、炭酸ガスが発生したときの音を増幅すれば、より遠くの魚までおびき寄せられることを知見し、非特許文献2に開示された水中共鳴管および非特許文献3に開示されたヘルムホルツ式水中共鳴器に着目した。
【0007】
すなわち、非特許文献2の場合には、共鳴管の一端開口を塞ぎ、かつ非特許文献2のものの音源となる曲げ振動型圧電振動子に代えて、薄肉な振動板を採用した水中共鳴管をシンカーの一部に取り付ければ、水中で炭酸ガスが発生したときの音(音波)により振動板が振動し、この振動で共鳴管が共鳴することを知見し、この発明を完成させた。
また、非特許文献3の場合には、ヘルムホルツ共鳴器の一種であるバイオリンは、水中でも弓で弦を擦った音を胴部で共鳴可能で(非特許文献3には、ヘルムホルツ共鳴を利用した他の楽器も開示)、この共鳴原理は発音集魚剤収納用シンカーにも応用できることを知見し、この発明を完成させた。
【0008】
本発明は、このような問題点に鑑みなされたもので、水中でのルアーの移動や静止に拘わらず、常時、炭酸ガスが発生して発音し、この音を共鳴により増幅することで、魚の視覚および聴覚を刺激して、近くの魚だけでなくより遠くの魚をもおびき寄せることができる発音集魚剤収納用シンカーおよびこれを用いたルアー仕掛けを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、錘となるシンカー本体と、該シンカー本体に設けられて、水に溶けることで炭酸ガスを発生させる発音集魚剤を収納する通水収納部とを備えた発音集魚剤収納用シンカーであって、前記シンカー本体又は前記通水収納部には、水中で前記炭酸ガスが発生した際の音に共鳴する水中共鳴部が設けられ、該水中共鳴部は、前記通水収納部と基端開口が連通する共鳴管と、該共鳴管の基端開口を塞ぐとともに、前記炭酸ガスが発生した際の音により振動する振動板とを有した共鳴管式水中共鳴部、又は、前記通水収納部と連通する開口部が形成された共鳴容器を有し、該共鳴容器の内部の水がばねとしての役割を果たし、共鳴することで音を発生するヘルムホルツ式水中共鳴部であることを特徴とする発音集魚剤収納用シンカーである。
【0010】
シンカーの種類は任意である。例えば、ルアー釣り用のシンカーでも、そうでないシンカーでもよい。具体的には、バレットシンカー(テキサスシンカー)、スプリットシンカー、ダウンショットシンカー、ガン玉、ネイルシンカー、ジグヘッドなどを採用することができる。
このうち、ルアー釣り、特にソフトルアー(ワーム)釣り用のシンカーの場合には、フリーリグ用シンカー、テキサスリグ用シンカー、キャロライナリグ用シンカー、ダウンショットリグ用シンカー、スプリットショットリグ用シンカー、ジカリグ用シンカー、ジグヘッドリグ用シンカー、チェリーリグ用シンカー、ジグヘッドワッキーリグ用シンカー、ネコリグ用シンカーなどを採用することができる。
なお、ツアー釣りの場合、シンカーはルアーと一体的に使用されるもの(例えば、ジグヘッドリグ用シンカー、ジカリグ用シンカーなど)の方が、ルアーが発音していると魚が勘違いして喰いつきが良くなるために好ましい。
【0011】
シンカー本体の素材、形状、サイズは、シンカーの種類に応じて適宜変更される。
発音集魚剤を収納する通水収納部の素材は任意である。例えば、アルミニウム、鋼、鉄などの各種の金属や、各種の硬質プラスチックなどを採用することができる。
通水収納部の形状も任意である。例えば、丸型容器状、一面が三角形又は四角形以上の多角容器状、ボール容器状、半球容器状などを採用することができる。
通水収納部に通水機能を与える構造としては、例えば、所定形状、所定数の通水孔(メッシュ構造を含む)などを採用することができる。
通水収納部のサイズ、シンカー本体に対する取付位置も任意である。
「水に溶けることで炭酸ガスを発生させる発音集魚剤」としては、例えば、重曹を含む炭酸水素塩と、クエン酸を含む有機酸とを混合した水溶性発泡剤などを採用することができる。
【0012】
炭酸水素塩の種類は任意である。例えば、重曹の他、炭酸水素カルシウムなどを採用することができる。
有機酸の種類は任意である。例えば、クエン酸、シュウ酸、ギ酸、リンゴ酸、フマール酸などを採用することができる。
炭酸水素塩と有機酸との性状は限定されない。例えば、粉体でも顆粒でもよい。
炭酸水素塩と有機酸との配合比は限定されない。
【0013】
発音集魚剤の組成物は、少なくとも炭酸水素塩と有機酸との混合物が含まれていれば任意である。例えば、請求項2のように、魚の餌成分や餌臭気成分が含まれてもよい。また、魚の視覚を刺激するラメ(金属の切り箔)などを含んでもよい。
発音集魚剤の性状は任意であるものの、取り扱いが容易なように、例えば球状、キューブ状、各種の糖衣状といったブロック状が好ましい。
ブロック状の場合の発音集魚剤のサイズは任意であるものの、例えば、直径が数mm~10mmのものが好ましい。
【0014】
水中共鳴部は、シンカー本体に設けても、通水収納部に設けてもよい。又は、これらの両方に設けてもよい。
水中共鳴部の1つである“共鳴管式水中共鳴部”の構造は、通水収納部(の内部空間)に基端開口が連通した共鳴管と、共鳴管の基端開口を塞ぐとともに、水中で炭酸ガスが発生した際の音(音波)により振動する振動板とを有したものであれば任意である。例えば、事前の共鳴試験で求められた炭酸ガスの発生音の平均周波数と、略同一の共振周波数(固有振動数)を有する共鳴部材(振動板、共鳴管を含む)を有したものなどを採用することができる。
【0015】
共鳴管の素材は任意である。例えば、アルミニウム合金、鉄、鋼などの各種の金属を採用することができる。
共鳴管の形状は任意である。例えば、ストレート管(丸管、角管を含む)、湾曲管、ラッパ管でもよい。
共鳴管のサイズ(口径(外径)、長さ、厚さなど)は限定されない。水中で炭酸ガスが発生した際の音の周波数に応じて、共鳴管が共鳴するように、それぞれのサイズを適宜変更ですればよい。
共鳴管のサイズは任意である。例えば、共鳴管の口径(外径)は3mm~2cm、特に5mm~1cmが好ましい。また、共鳴管の長さは3mm~5cm、特に5mm~1cmが好ましい。さらに、共鳴管の厚さは0.1mm~1mm、特に0.3mm~0.7mmが好ましい。
【0016】
共鳴管は、通水収納部に内蔵しても、通水収納部の外に突出状態で取り付けてもよい。
振動板の素材は任意である。例えば、アルミニウム合金、鉄、鋼などの各種の金属を採用することができる。
振動板(共振板)のサイズ(直径、厚さなど)は限定されない。振動板が共鳴管の基端開口を封止(密封)でき、かつ水中で炭酸ガスが発生した際の音(音波)により振動できればよい。振動板の厚さは、例えば0.1mm~1mm、特に0.2mm~0.5mmが好ましい。
【0017】
水中共鳴部の1つである“ヘルムホルツ式水中共鳴部”の構造は、通水収納部と連通する開口部が形成された共鳴容器を有して、共鳴容器の内部の水がばねとしての役割を果たし、共鳴することで音を発生するものであれば任意である。
共鳴容器の形状は任意である。例えば、多面容器状、球形容器状、楕円体容器状でもよい。
共鳴容器のサイズは任意である。例えば、3mm~5cmでもよい。
共鳴容器の厚さは任意である。例えば、例えば0.1mm~1mm、特に0.2mm~0.5mmが好ましい。
開口部の形状は任意である。例えば、円形、楕円形、三角形以上の多角形でもよい。
開口部のサイズは任意である。例えば0.1mm~1mm、特に0.3mm~0.7mmが好ましい。
【0018】
請求項2に記載の発明は、前記発音集魚剤は、水溶性発泡剤に飴を練り込んだ発音キャンディ、又は、前記水溶性発泡剤に魚の餌成分又は餌臭気成分を混入したものであることを特徴とする請求項1に記載の発音集魚剤収納用シンカーである。
【0019】
飴に対する水溶性発泡剤の添加量は任意である。
魚の餌成分又は餌臭気成分としては、例えば、撒き餌に使用されるオキアミ、エビ、さなぎ粉などの成分を採用することができる。
【0020】
請求項3に記載の発明は、少なくともルアー、シンカーおよび釣り針を備えたルアー仕掛けであって、前記シンカーが、請求項1又は請求項2に記載された発音集魚剤収納用シンカーであることを特徴とするルアー仕掛けである。
【0021】
ルアー釣りの種類は任意である。川釣りでも、海釣りでもよい。
ルアー仕掛けの構成体は、少なくともルアー、シンカーおよび釣り針を有していれば任意である。その他、釣り糸(道糸を含む)、スナップなどを採用することができる。
これらのルアー仕掛けの構成体のうち、発音集魚剤の通水収納部が取り付けられるものは、シンカーだけでなく、例えば、ルアーとシンカーとの両方でもよい。その他、ルアー仕掛けを構成する別の構成体でもよい。
【0022】
ルアーの素材は任意である。例えば、各種の(硬質又は軟質の)合成樹脂、各種の木、各種の金属などを採用することができる。
ルアーの種類は任意である。例えば、各種のハードルアー、各種のソフトルアーなどを採用することができる。例えば、トップウォータールアーでもよい。
ルアーの形状も任意である。例えば、リップ付ルアー、リップレスルアー、ホッパールアー、バイブレーションルアー、スプーンルアー、スピナーベイトルアー、ビッグベイトルアーなどを採用することができる。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に記載の本発明によれば、発音集魚剤収納用シンカーの使用時には、まず通水収納部に発音集魚剤を収納する。その後、このシンカーを含む仕掛けを水面(海面)の目標地点にキャスティングして釣りを行う。
このとき、水中では、通水収納部に収納された発音集魚剤が水に溶け、例えば下記化学式の重曹とクエン酸の場合ように、水溶性発泡剤の炭酸水素塩と有機酸とが反応して炭酸ガスが発生する。
【0024】
(化1)
3NaHCO3+C6H8O7 → Na3C6H5O7+3H2O+3CO2↑
この炭酸ガス生成時に発生する泡と音が魚の視覚と聴覚とを刺激し、このシンカーの周りに魚を長時間おびき寄せることができる。しかも、発音集魚剤の補充時には、発音集魚剤を通水収納部に追加で収納するだけで、簡単に補充することができる。
【0025】
また、炭酸ガス生成時に発生する音と共鳴する水中共鳴部を通水収納部に設けたため、この炭酸ガスの発生音をより遠くまで拡散させて、さらに多くの魚をおびき寄せることができる。
具体的には、水中共鳴部が共鳴管式水中共鳴部の場合には、通水収納部内で炭酸ガスが生成されると、その際に発生した音の波(音波)が、水を介して、通水収納部と基端開口が連通する共鳴管の振動板を振動させる。この振動が共鳴管に伝わって共鳴(振幅が増大)することにより、炭酸ガスの発生音をより遠くまで拡散できる。
一方、水中共鳴部がヘルムホルツ式水中共鳴部の場合には、通水収納部内で炭酸ガスが生成されると、その際に発生した音の波が、水を介して、開口部から共鳴容器に伝わり、この容器内の水がばねとしての役割を果たして共鳴することで、炭酸ガスの発生音をより遠くまで拡散できる。
【0026】
また、請求項2に記載の本発明によれば、発音集魚剤として、飴に水溶性発泡剤を練り込んだ発音キャンディを採用した場合には、飴はゆっくりと水に溶けることから、その分だけ、炭酸ガスの生成に伴う発音時間が長くなる。これにより、発音集魚剤の補充回数を減らすことができる。
また、発音集魚剤に、魚の餌成分又は餌臭気成分を含有させた場合には、魚の聴覚だけでなく魚の聴覚も刺激して、より多くの魚をおびき寄せることができる。
【0027】
請求項3に記載の本発明によれば、まず、ルアー釣り用の釣り糸に結んだ発音集魚剤収納用シンカーの通水収納部に発音集魚剤を収納し、その後、ルアー仕掛けを水面(海面)の目標地点にキャスティングする。次いで、発音集魚剤付ルアーを静止又は引き寄せるなどしてルアー釣りを行う。
このとき、水中では、発音集魚剤収納用シンカーの通水収納部に収納された発音集魚剤が水に溶けて炭酸ガスが発生する。
この炭酸ガス生成時に発生する泡と音が、魚の視覚と聴覚とを刺激し、ルアー仕掛けの周りに魚を長時間おびき寄せることができる。
また、炭酸ガス生成時に発生する音と共鳴する水中共鳴部(共鳴管式水中共鳴部又はヘルムホルツ式水中共鳴部)を通水収納部に設けたため、この炭酸ガスの発生音をより遠くまで拡散させて、さらに多くの魚をおびき寄せることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施例1に係るルアー仕掛けの使用状態を示す一部断面図を含む側面図である。
【
図2】本発明の実施例1に係る発音集魚剤収納用シンカーに発音集魚剤を詰め込んでいる状態を示す一部断面図を含む拡大側面図である。
【
図3】本発明の実施例1に係る発音集魚剤収納用シンカーに組み込まれた共鳴管式水中共鳴部による共鳴現象を説明するための要部拡大断面図である。
【
図4】本発明の実施例2に係る発音集魚剤収納用シンカーに発音集魚剤を詰め込んでいる状態を示す一部断面図を含む拡大側面図である。
【
図5】本発明の実施例2に係る別の使用形態の発音集魚剤収納用シンカーに発音集魚剤を詰め込んでいる状態を示す一部断面図を含む拡大側面図である。
【
図6】本発明の実施例3に係る発音集魚剤収納用シンカーに組み込まれたヘルムホルツ式水中共鳴部による共鳴現象を説明するための要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施例を具体的に説明する。
【実施例】
【0030】
図1および
図2において、10は本発明の実施例1に係るルアー仕掛けで、ワーム(ルアー)11と、ジグヘッド12と、釣り糸としてのメインラインに繋がれたリーダ13とを備えたジグヘッドリグである。
以下、これらの構成体を具体的に説明する。
ワーム11は、軟質合成樹脂からなる虫系のソフトルアーである。
ジグヘッド12は、発音集魚剤収納用シンカー(以下、単にシンカー)14に釣り針15が固定されたものである。
【0031】
シンカー14は、錘となる直径約1cm、長さ約3cmのシンカー本体16と、シンカー本体16に設けられて、水に溶けることで炭酸ガスを発生させる発音キャンディ(発音集魚剤)17を収納する、金網からなる円筒容器状の通水収納部18と、通水収納部18に設けられて、水中で炭酸ガスが発生した際の音に共鳴する共鳴管式水中共鳴部(水中共鳴部)19とを備えている。
ここでは、通水収納部18がシンカー本体16を兼ねている。この通水収納部18は、金網製の縦長な円筒部20と、金網製のキャップ状の蓋部21とを有している。このうち、蓋部21の天板21aの外面には、リーダ13の先端が結ばれるリング22が固定されている。
【0032】
円筒部20の底板20aには、釣り針15の基端部が固着されている。
また、円筒部20の内部空間は、円筒部20の底部付近に配された仕切り金網23によって、大小2つの部分空間に区画されている。このうち、仕切り金網23より前側(開口側)に配された大きい部分空間aには、発音キャンディ17が収納されている。一方、仕切り金網23より後側(奥側)に配された小さい部分空間bには、共鳴管式水中共鳴部19が収納されている。
【0033】
なお、仕切り金網23は、通水性を有し、かつ発音キャンディ17が振動板(後述する)に接触することで、この振動板25の振動を阻害するのを防止するためのものである。
発音キャンディ17は、飴に水溶性発泡剤を練り込んだ直径5mmの小玉である。
水溶性発泡剤は、粉末の重曹(炭酸水素塩)と、粉末のクエン酸(有機酸)とを有し、これらを所定の配合比で混ぜ合わせた混合物である。
【0034】
図3に示すように、共鳴管式水中共鳴部19は、円筒部20のうち、発音キャンディ17が収納される前側の部分空間aと基端開口が連通した共鳴管24と、共鳴管24の基端開口を塞ぐとともに、炭酸ガスが発生した際の音により振動する振動板25とを有している。
共鳴管24および振動板25は、事前の共鳴試験で求められた炭酸ガスの発生音の平均周波数と、略同一の共振周波数(固有振動数)を有した部材である。
【0035】
このうち、共鳴管24は、直径約8mm、長さ約5mm、厚さ約0.5mmのアルミニウム合金製の短尺な丸パイプである。この共鳴管24の基端側の開口部付近には、周方向に180°ピッチで、円筒部20の奥側の部分と連結された2つのスポット溶接部26が配されている。共鳴管24は、共鳴管24の共鳴機能を阻害しないように、2つのスポット溶接部26のみを介して円筒部20と連結されている。なお、共鳴管24の共鳴機能を阻害しなければ、スポット溶接部26に代えて、例えば嵌入突起などの他の連結部材でもよい。
一方、振動板25は、直径約8mm、厚さ約0.3mmのアルミニウム合金製の薄肉な円板で、共鳴管24の基端開口に、これを密閉するように溶着されている。
【0036】
次に、
図1~
図3を参照して、本発明の実施例1に係るルアー仕掛け10の使い方を説明する。
図1に示すように、ルアー釣り時には、まず、円筒部20のうち、前側の大きい部分空間aに発音キャンディ17を詰めて蓋部21を閉める。
その後、ジグヘッド12をワーム11の尻尾に装着する。具体的には、ジグヘッド12の釣り針15をワーム11の尻尾から刺し、ワーム11の中央部分の外周面から外方へ釣り針15の先部を突出させる。
【0037】
次いで、図示しない竿を振ってルアー仕掛け10のワーム11を水面(海面)の目標地点にキャスティングし、その後、竿を操作してワーム11を引き寄せるなどしてルアー釣りを行う。
このとき、水中では、金網製の通水収納部18から水が浸入し、円筒部20の前側の部分空間aに収納された発音キャンディ17が水に溶け、化式2ように、重曹とクエン酸とが反応して炭酸ガスの泡cが発生する。
【0038】
(化2)
3NaHCO3+C6H8O7 → Na3C6H5O7+3H2O+3CO2↑
この炭酸ガス生成時に発生する泡cと“カチカチ”という音が発生し、かつこの音を共鳴管式水中共鳴部19の共鳴により増幅することで、近くの魚だけでなく、より遠くの魚をルアー仕掛け10の近くにおびき寄せることができる。
これにより、使用時に熟練を要すことなく、魚の視覚(泡c)と、聴覚(“カチカチ”という音)とを刺激したルアー釣り(釣り)を、誰でも楽しむことができる。
しかも、発音キャンディ17の補充時には、蓋部21を外して、少なくなった発音キャンディ17を円筒部20の前側の部分空間aに詰め込むだけで、簡単にこれを補充することができる。
【0039】
また、ここでは、発音集魚剤として、飴に混合物を練り込んだ発音キャンディ17を採用している。飴は、単に重曹とクエン酸とを混合して固めたものに比べて、ゆっくりと水に溶けるため、その分だけ炭酸ガスの生成に伴う発音時間が長くなり、発音キャンディ17を補充する回数を減らすことができる。
なお、単に重曹とクエン酸とを混合して固めた小玉の場合には、多量の泡cが“ジュワジュワ”という音ともに発生する。
また、上述した飴に混合物を練り込む際には、例えば、魚の餌成分又は餌臭気成分を添加して発音キャンディ17を製造してもよい。このようにすれば、魚の視覚、聴覚だけでなく魚の臭覚をも刺激して魚をおびき寄せることができる。
【0040】
さらに、炭酸ガス生成時に発生する音と共鳴する共鳴管式水中共鳴部19を通水収納部18に設けたため、この炭酸ガスの発生音をより遠くまで拡散させて、さらに多くの魚をおびき寄せることができる。
具体的には、円筒部20のうち、前側の部分空間a内で炭酸ガスが生成されると、その際に発生した音の波(音波)が、水を介して、円筒部20の後側の部分空間bに配された共鳴管24の基端開口を塞ぐ振動板25を振動させる。この振動が共鳴管24に伝わって共鳴(振幅が増大)することにより、炭酸ガスの発生音をより遠くまで拡散できる。
また、ここではワーム11の素材として軟質合成樹脂を採用したため、虫エサや小魚といったベイトの動きに似せて作製することができる。
【0041】
次に、
図4および
図5を参照して、本発明の実施例2に係る発音集魚剤収納用シンカーについて説明する。
図4に示すように、実施例2の発音集魚剤収納用シンカー(以下、シンカー)14Aの特徴は、実施例1のルアー釣り用のジグヘッド12の一部を構成するシンカー14に代えて、一般的な釣り用のシンカー(錘)に本発明を適用したものである。
すなわち、このシンカー14は、実施例1の円筒部20の底板20aの基端部から釣り針15を除去し、そこに鉛からなる厚肉な円板状の錘27を固着したものである。
【0042】
このように構成したため、本発明を一般的な釣り用のシンカー(錘)14Aとして利用することができる。
なお、
図5に示すように、このシンカー14Aの別形態として、長尺化した蓋部21の内部空間dに、共鳴管式水中共鳴部19を収納した発音集魚剤収納用シンカー14Bを採用してもよい。この場合、仕切り金網23Aは蓋部21の開口部付近に配される。
その他の構成、作用および効果は実施例1から推測可能であるため、説明を省略する。
【0043】
次に、
図6を参照して、本発明の実施例3に係る発音集魚剤収納用シンカーについて説明する。
図6に示すように、実施例3の発音集魚剤収納用シンカー(以下、シンカー)14Cの特徴は、実施例1の共鳴管式水中共鳴部19に代えて、ヘルムホルツ式水中共鳴部30を採用したものである。
ヘルムホルツ式水中共鳴部30は、通水収納部18と連通する開口部31a付きの円筒容器状の共鳴容器31を有している。共鳴容器31のサイズは、直径が8mm、厚さが0.3mmである。
【0044】
次に、
図6を参照して、本発明の実施例3のシンカー14Cの使用方法を説明する。
すなわち、通水収納部18内で炭酸ガスが生成されると、その際に発生した音の波が、水を介して、開口部31aから共鳴容器31に伝わり、この容器31内の水がばねとしての役割を果たして共鳴する。これにより、共鳴容器31を介して、炭酸ガスの発生音をより遠くまで拡散できる。
その他の構成、作用および効果は、実施例1から推測可能であるため、説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、水中で音を発生させる発音集魚剤収納用シンカーおよびこれを用いたルアー仕掛けの技術として有用である。
【符号の説明】
【0046】
10 ルアー仕掛け
11 ワーム(ルアー)
14、14A~14C 発音集魚剤収納用シンカー
16 シンカー本体
17 発音キャンディ(発音集魚剤)
18 通水収納部
19 共鳴管式水中共鳴部(水中共鳴部)
24 共鳴管
25 振動板
30 ヘルムホルツ式水中共鳴部(水中共鳴部)
31 共鳴容器
31a 開口部
【要約】
【課題】水中で常に炭酸ガスが発生して発音し、魚の視覚および聴覚を刺激して、近くの魚だけでなくより遠くの魚をもおびき寄せられる発音集魚剤収納用シンカーおよびこれを用いたルアー仕掛けを提供する。
【解決手段】釣り時、水中では通水収納部18に収納された発音キャンディ17が水に溶けて炭酸ガスが発生し、この時の“カチカチ”というガス発生音が魚の聴覚を刺激し、発音集魚剤収納用シンカー14の近くに魚をおびき寄せる。これにより、使用時に熟練を要すことなく、魚の視覚と聴覚とを刺激した釣りを、誰でも簡単に楽しむことができる。また、発音キャンディ17の補充も容易に行える。
【選択図】
図1