(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】大豆の乳酸発酵食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 11/50 20210101AFI20220711BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20220711BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20220711BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
A23L11/50 209Z
A23L33/135
A23L5/00 J
C12N1/20 A
(21)【出願番号】P 2018134643
(22)【出願日】2018-07-18
【審査請求日】2021-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】518171650
【氏名又は名称】株式会社松井三郎環境設計事務所
(73)【特許権者】
【識別番号】518171661
【氏名又は名称】株式会社SKY・ライフ
(74)【代理人】
【識別番号】100074734
【氏名又は名称】中里 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100086265
【氏名又は名称】川崎 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100076451
【氏名又は名称】三嶋 景治
(72)【発明者】
【氏名】松井 三郎
(72)【発明者】
【氏名】汐見修一
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-035759(JP,A)
【文献】特開昭62-163665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L、C12N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大豆を原料として、乳酸菌を用いて、納豆様の大豆の乳酸発酵食品を製造する方法において、
乳酸菌を添加した浸漬用乳酸菌水に、生の原料大豆を所定時間浸漬し、膨潤させる浸漬膨潤工程、
浸漬膨潤した原料大豆を、煮るか、蒸すことにより所定時間加熱し、大豆の組織を軟化させる熱膨潤工程、
膨潤化した原料大豆に初期噴霧用乳酸菌水を均等に噴霧する乳酸菌噴霧工程、および
乳酸菌が噴霧された膨潤化した大豆を、発酵室に入れて温度35℃~38℃、湿度30%~80%の条件下で、所定時間毎に中間噴霧用乳酸菌水を噴霧しつつ、乳酸発酵させ、大豆の乳酸発酵食品を製造する発酵工程
を備えていることを特徴とする大豆の乳酸発酵食品の製造方法。
【請求項2】
前記発酵工程における温度が36℃~38℃、湿度が、50%~60%である請求項1の大豆の乳酸発酵食品の製造方法。
【請求項3】
前記浸漬用乳酸菌水における乳酸菌の数が、1mL当たり10
4個~10
5個である請求項1または2の大豆の乳酸発酵食品の製造方法。
【請求項4】
前記初期および中間噴霧用乳酸菌水における乳酸菌の数が、1mL当たり3000個~30000個である請求項1~3のいずれかの大豆の乳酸発酵食品の製造方法。
【請求項5】
熱膨潤工程において、「煮る」を採用した場合、煮上がった後に、煮液切りを行う請求項1~4のいずれかの大豆の乳酸発酵食品の製造方法。
【請求項6】
前記浸漬用乳酸菌水、ならびに前記初期および中間噴霧用乳酸菌水に用いる乳酸菌が、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ペジオコッカス(Pediococcus)属、ロイコノストック(Leuconostoc)属、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属およびエンテロコッカス属(Enterococcus)いずれかの属に属する乳酸菌のうち一種または二種以上の組み合わせの乳酸菌である請求項1~5のいずれかの大豆の乳酸発酵食品の製造方法。
【請求項7】
前記乳酸菌が、ラクトバチルス属に属する乳酸菌であり、ラクトバチルスカゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス アラビノサス(Lactobacillus arabinosus、ラクトバチルス ラ・フランス(Lactobacillus la france)、またエンテロコッカス属のエンテロコッカス ジュランス(Enterococcus durans)のうち一種またはそれ以上の組み合わせである請求項6の大豆の乳酸発酵食品の製造方法。
【請求項8】
前記乳酸菌が、ラクトバチルス ファーメンタムである請求項7の大豆の乳酸発酵食品の製造方法。
【請求項9】
製
造さ
れる納豆様の大豆の乳酸発酵食
品が、生菌乳酸菌、および大豆の豆の内外に存在する死菌乳酸菌を含有す
る請求項1~8のいずれかの大豆の乳酸発酵食
品の製造方法。
【請求項10】
製造される納豆様の大豆の乳酸発酵食品が、
生菌乳酸菌を1g当たり10
7個~10
8個含有する請求項9の大豆の乳酸発酵食
品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大豆の乳酸発酵食品の製造方法に関し、更に詳細には、納豆様の大豆の乳酸発酵食品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、納豆菌を接種し発酵させた納豆は独特の納豆臭とにがみがあり、栄養上消化されやすい良質の植物性蛋白質でありながら関西方面ではその消費が特に低迷しているといわれている。
【0003】
そこで、特開昭61-35759号公報(特許文献1)では、無臭または低臭納豆を製造すべく研究をし、下記のような乳酸菌納豆を提案した。
【0004】
特許文献1では、本乳酸菌納豆は従来の納豆製造方法に基づき納豆を製造する際に納豆菌を使用せずに整腸効果があると言われる乳酸菌を使用し発酵させて得られるものである、としている。
【0005】
すなわち、本乳酸菌納豆は従来の納豆菌で製造した納豆と、その性状が酷似しているにもかかわらず納豆臭がなく、糸ひきもよく、食して口中ににがみを感じないものである。
【0006】
前記特許文献1によれば、「当該乳酸菌納豆を製造するには、原料大豆を良く水で洗浄し、8~24時間水に浸漬する。
常圧で大豆の2~3倍量の水でやわらかくなるまで煮た後煮汁をきるか、または加圧下例えば0.75kg/cm2・40分または1.0kg/cm2・30分または1.5kg/cm2・20分蒸煮した大豆を清潔な環境下で放冷し、約40℃~50℃、好ましくは44℃~47℃、例えば45℃となった時、乳酸菌を単一で、または混合したものを減菌水に溶かし接種する。
室温40℃~50℃好ましくは44℃~47℃で22~50時間或はそれ以上の時間発酵させた後室出しして冷却する。
得られた製品はあの独特な納豆臭がなく、混ぜると糸ひきがよく食して大豆ににがみのない消化されやすい大豆の発酵食品になっているのである。
なお、本発明の乳酸菌納豆を製造する際に使用する乳酸菌は、Lactobacillus Bulgaricus, Streptococcus thermophilus, Lactbacillus sporogenes, Bifidobacterium longum, Lactobacillus acidophilus, Streptococcus Fascalis, Bifidobacterium thermophilum, Bifidobacterium pseudolongumの単一菌またはそれぞれの菌を混合させたものを用いる。ただし、S.Faecalisのみ単一で使用した場合は糸ひきも他のものよりやや悪く、酸味臭が強くなる傾向にあるので、他の菌に比し本発明の目的にはやや劣るが、なお充分に本発明の目的を達成しうるものであり、その上、該乳酸菌は製剤化された粉末で入手が容易であるばかりか取扱い方法も簡便である利点がある。
このように本発明の乳酸菌納豆は従来から使用されている納豆製造機または納豆製造設備を変えることなく容易に製造でき、独特な納豆臭がなく糸ひきが良く、食してにがみのないものになっている。またこれが乳酸菌で発酵させていることによりものと蒸煮大豆または煮大豆より消化されやすい食品となり、また乳酸菌の整腸効果により健康的にも期待できるものである。
本発明の乳酸菌納豆はねぎやからしなどの薬味と醤油を加えて食してもよいが、凍結乾燥して調味料と薬味を添加し、スナック風菓子、おつまみ、またはふりかけ、または健康食品例えば錠剤、顆粒、粉末に加工利用できるものである。」
としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、前記特許文献1に記載された乳酸菌納豆やその他乳酸菌納豆では、乳酸菌を用いる良さ、すなわち乳酸菌の力を生かし切れていないという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、乳酸菌の作用を十分に活かした大豆の乳酸発酵食品の製造方法および大豆の乳酸発酵食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、下記(1)~(10)の本発明による大豆の乳酸発酵食品の製造方法および大豆の乳酸発酵食品により達成される。
(1)
大豆を原料として、乳酸菌を用いて、納豆様の大豆の乳酸発酵食品を製造する方法において、
乳酸菌を添加した浸漬用乳酸菌水に、生の原料大豆を所定時間浸漬し、膨潤させる浸漬膨潤工程、
浸漬膨潤した原料大豆を、煮るか、蒸すことにより所定時間加熱し、大豆の組織を軟化させる熱膨潤工程、
膨潤化した原料大豆に初期噴霧用乳酸菌水を均等に噴霧する乳酸菌噴霧工程、および
乳酸菌が噴霧された膨潤化した大豆を、発酵室に入れて温度35℃~38℃、湿度30%~80%の条件下で、所定時間毎に中間噴霧用乳酸菌水を噴霧しつつ、乳酸発酵させ、大豆の乳酸発酵食品を製造する発酵工程
を備えていることを特徴とする大豆の乳酸発酵食品の製造方法。
(2)
前記発酵工程における温度が36℃~38℃、湿度が、50%~60%である前記(1)の大豆の乳酸発酵食品の製造方法。
(3)
前記浸漬用乳酸菌水における乳酸菌の数が、1mL当たり104個~105個である前記(1)または(2)の大豆の乳酸発酵食品の製造方法。
(4)
前記初期および中間噴霧用乳酸菌水における乳酸菌の数が、1mL当たり3000個~30000個である前記(1)~(3)のいずれかの大豆の乳酸発酵食品の製造方法。
(5)
熱膨潤工程において、「煮る」を採用した場合、煮上がった後に、煮液切りを行う前記(1)~(4)のいずれかの大豆の乳酸発酵食品の製造方法。
(6)
前記浸漬用乳酸菌水、ならびに前記初期および中間噴霧用乳酸菌水に用いる乳酸菌が、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ペジオコッカス(Pediococcus)属、ロイコノストック(Leuconostoc)属、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属およびエンテロコッカス属(Enterococcus)いずれかの属に属する乳酸菌のうち一種または二種以上の組み合わせの乳酸菌である前記(1)~(5)のいずれかの大豆の乳酸発酵食品の製造方法。
(7)
前記乳酸菌が、ラクトバチルス属に属する乳酸菌であり、ラクトバチルスカゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス アラビノサス(Lactobacillus arabinosus、ラクトバチルス ラ・フランス(Lactobacillus la france)、またエンテロコッカス属のエンテロコッカス ジュランス(Enterococcus durans)のうち一種またはそれ以上の組み合わせである前記(6)の大豆の乳酸発酵食品の製造方法。
(8)
前記乳酸菌が、ラクトバチルス ファーメンタムである請求項7の大豆の乳酸発酵食品の製造方法。
(9)
大豆を原料として、乳酸菌を用いて製造された、納豆様の大豆の乳酸発酵食品であって、生菌乳酸菌、および大豆の豆の内外に存在する死菌乳酸菌を含有することを特徴とする大豆の乳酸発酵食品。
(10)
生菌乳酸菌を1g当たり107個~108個含有する請求項9の大豆の乳酸発酵食品。
【発明の効果】
【0011】
本発明の大豆の乳酸発酵食品は、上記したように、生菌乳酸菌および死菌乳酸菌を含有する。
本大豆の乳酸発酵食品を蝕すると、生菌乳酸菌、特に、ラクトバチルス ファーメンタムは、生きたまま腸まで届き、腸内(フロラー)を活性してビィフズス菌を助け腐敗菌を抑制することができる。
一方、含有する死菌乳酸菌は、その菌体成分が、善玉菌(生菌乳酸菌)の栄養分(エサ)となり、善玉菌を増やしたり、活性化したりする他、小腸や大腸にある免疫に関わる受容体(レセプター)を刺激することで、腸の免疫細胞を活性化し、免疫力を向上させるという利点を有する。
【0012】
また、本発明の本発明による大豆の乳酸発酵食品の製造方法においては、大豆のボイル(煮る)やスチーム(蒸す)である加熱工程の前の浸漬工程における浸漬水に乳酸菌を添加したことにより、加熱工程前に、乳酸菌が大豆内に深く浸透し、この工程でも、乳酸菌が大豆のタンパク質に作用して、アミノ酸を生成する。従って、本発明の大豆の乳酸発酵食品は、従来の加熱工程後に乳酸菌を接種して製造された大豆の乳酸発酵食品にくらべて、大変に柔らかく、美味である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明による大豆の乳酸発酵食品の製造方法について説明する。本発明の製造方法によって製造される食品は、大豆を原料として、乳酸菌を用いて製造された納豆様の大豆の乳酸発酵食品である。
【0014】
本発明の製造方法は、まず、乳酸菌を添加した浸漬用乳酸菌水に、生の原料大豆を所定時間浸漬し、膨潤させる浸漬膨潤工程から始める。
前記浸漬用乳酸菌水における乳酸菌の数は、1mL当たり104個~105個とする。用いる水は、蒸留水等の無菌水であることが望ましいが、一般の水道水であってもよい。
浸漬時間は、12時間~15時間を目安とするが、湿度、温度等によって調節する、
この浸漬後、大豆は、水を吸って、2.4倍~2.5倍に増量する。これに対し、乳酸菌を含有していない通常の水の場合は、同時間の浸漬で、1.8倍~2倍になるに留まる。
【0015】
この後、浸漬膨潤した原料大豆を、煮るか、蒸すことにより所定時間加熱し、大豆の組織を軟化させ、膨潤させ、軟化させる(指で押して潰れたらOK)熱膨潤工程を行う。この熱膨潤工程は、通常の鍋を用いた場合、40分程度である。(?乳酸菌水に浸漬した本発明では、通常の時間より短くて済む、等の効果があれば嬉しいのですが)。圧力釜を用いた場合は、相対的に更に時間を短縮できる。
【0016】
次いで、前記熱膨潤工程で膨潤化した原料大豆に乳酸菌水(初期噴霧用)を均等に噴霧する乳酸菌噴霧工程を行う。初期噴霧用乳酸菌水における乳酸菌の数は、1mL当たり3000個~30000個(?確認をお願いします)とするのが好ましい。この大豆への初期噴霧用乳酸菌水の噴霧は、大豆をトレー上に均等に並べた状態で行う。なお、前記熱膨潤工程において、「煮る」を採用した場合、煮上がった後に、煮液切りを行った後に、大豆をトレー上に均等に並べる。
【0017】
前記乳酸菌噴霧工程の後、乳酸菌が噴霧された膨潤化した大豆を、発酵室(中温乾燥室)に入れて温度35℃~38℃、特に36℃~38℃、湿度30%~80%、特に50%~60%の条件下で、所定時間毎に中間噴霧用乳酸菌水を噴霧しつつ、乳酸発酵させ、大豆の乳酸発酵食品を製造する発酵工程を行う。
【0018】
前記中間噴霧用乳酸菌水における乳酸菌の数は、3000個~30000個とするのが好ましい。また、前記所定時間毎の時間とは、数時間から12時間程度であることが好ましい。
この発酵工程では、大豆の全体が菌糸で覆われた時点を発酵の完了と判断する。ほぼ、発酵開始から24時間程度である。
【0019】
前記浸漬用乳酸菌水、ならびに前記初期および中間噴霧用乳酸菌水に用いる乳酸菌は、全て同じ菌であって良く、例えば、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ペジオコッカス(Pediococcus)属、ロイコノストック(Leuconostoc)属、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属のいずれかの属に属する乳酸菌のうち一種または二種以上の組み合わせの乳酸菌を用いる。
【0020】
前記乳酸菌は、特に、ラクトバチルス属に属する乳酸菌であり、ラクトバチルスカゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス アラビノサス(Lactobacillus arabinosus、ラクトバチルス ラ・フランス(Lactobacillus la france)、またエンテロコッカス属のエンテロコッカス ジュランス(Enterococcus durans)のうち一種またはそれ以上の組み合わせであることが好ましい。
前記乳酸菌は、ラクトバチルス ファーメンタムであることが好ましい。
【0021】
以上により、本発明の大豆の乳酸発酵食品の製造方法により、本発明の大豆の乳酸発酵食品が製造される。
【0022】
このように製造された本発明の納豆様の大豆の乳酸発酵食品は、生菌乳酸菌、および大豆の豆の内外に存在する死菌乳酸菌を含有する。死菌乳酸菌は、前記浸漬用乳酸菌が前記熱膨潤工程におけるかねつにより、死菌となったものである。
【0023】
完成した大豆の乳酸発酵食品は、生菌乳酸菌を1g当たり107個~108個有している。死菌は計測できないが、ELISA法により死菌乳酸菌の存在を確認することができ、上記浸漬用乳酸菌水への浸漬直後の数とほぼ同数の死菌乳酸菌を含有しているものと推測される。
【0024】
以上により製造された大豆の乳酸発酵食品は、納豆様でありながら、納豆特有の臭いがなく、またふっくらとして食感がよく、味も優れており(従って、たれや醤油も不要で食することができる)、極めて良好な食品である。
また、本発明の大豆の乳酸発酵食品は、前記したように、乳酸菌の生菌を高濃度で備えているので、健康食品としても大いに期待できる。
【実施例】
【0025】
次に、本発明の大豆の乳酸発酵食品の製造方法、ならびにできた乳酸菌発酵食品の実施例について説明する。なお、本実施例では、乳酸菌として、ラクトバチルス ファーメンタムであるLB403菌(一般に入手可能)を使用した。
(1)大豆『国産』材料を250g準備した。
(2)無菌水に乳酸菌数1mL当たり105個のとなるように前記乳酸菌を添加して、浸漬用乳酸菌水を準備し、これを容器の中に、1000mL入れ、その中に前記大豆を250g浸漬した。
浸漬時間は、12時間とした。
(3)浸漬が完了した時点で、大豆250gが水を含んで約600g2.4倍に増量した。この大豆の菌乳酸菌を測定したところ、1g当たり107個の生菌乳酸菌を有していた。
乳酸菌無添加の通常浸漬水を用いた場合の同条件での増量は1.8倍~2倍であり、本発明の効果が確認できる。
以上の大豆を通常の釜で約40間煮た。指で押して、つぶれた時点で煮工程の完了と判断し、火を止めた。
(4)良く水洗いをして、浮いた皮を取り、更に適度な脱水を行った。
(5)トレーに均等に豆を並べ、初期乳酸菌水を噴霧した。
(6)この乳酸菌水が噴霧された大豆を、中温乾燥機(発酵室)(温度38度、湿度50%)で発酵させた。
(7)2日間 48時間発酵
発酵工程の段階で乳酸菌水(約1.2×105個/1mL)を発酵工程開始から24時間後に噴霧して、大豆上を菌糸が覆ったところで完成とした。
(8)できた製品の大豆をランダムに取り出し、乳酸菌の生菌数をカウントした。生菌の数は、約2x107個/gであった。また、ELISA法により、大豆の中心部分の死菌乳酸菌の存在を確認したところ、相当数の散在が確認された。死菌数は、上記浸漬用乳酸菌水への浸漬直後の数とほぼ同数と推測される。
【0026】
出来上がった製品の大豆を、年代、性別をバラバラにした100人のモニターにタレを付けずに食して貰ったところ、80人のモニターが臭いもなく、美味であるとの感想であった。残りの20人は、普通、若しくは通常の納豆の方がよいと回答した。