(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】立体造形用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20220711BHJP
C08K 3/40 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/40
(21)【出願番号】P 2017245899
(22)【出願日】2017-12-22
【審査請求日】2020-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】虫明 篤
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/076180(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/014067(WO,A1)
【文献】特開2001-071432(JP,A)
【文献】特開平11-174624(JP,A)
【文献】特開2002-167233(JP,A)
【文献】特開2002-047009(JP,A)
【文献】特開2003-192339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
B29C64/00- 64/40
B29C67/00- 67/08
B29C67/24- 69/02
B29C73/00- 73/34
B29D 1/00- 29/10
B29D 33/00
B29D 99/00
B33Y10/00- 99/00
C03C 1/00- 14/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスフィラー及び硬化性樹脂を含有する立体造形用樹脂組成物であって、
前記ガラスフィラーと硬化後の前記硬化性樹脂との屈折率ndの差が±0.02以内であり、
前記ガラスフィラーが非晶質であり、
略球状であり、レーザー回折散乱式粒度分布測定による累積10%粒子径(D10)と累積90%粒子径(D90)との比D90/D10が4以下
、累積50%粒子径(D50)が6.1~12μmであることを特徴とする立体造形用樹脂組成物。
【請求項2】
ガラスフィラーが、ガラス組成として、質量%で、SiO
2 20~70%、B
2O
3 0~50%、Nb
2O
5 0~20%、WO
3 0~20%を含有することを特徴とする請求項
1に記載の立体造形用樹脂組成物。
【請求項3】
レーザー回折散乱式粒度分布測定による累積10%粒子径(D10)が1μm以上であることを特徴とする請求項1
又は2に記載の立体造形用樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体造形用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂材料等を積層させて立体造形物を得る方法が知られている。例えば光造形法、粉末焼結法、熱溶解積層(FDM)法等種々の方法が提案され実用化されている。
【0003】
例えば光造形法は、細やかな造形や正確なサイズ表現に優れており、広く普及している。この方法は以下のようにして立体造形物を作製するものである。まず液状の光硬化性樹脂を満たした槽内に造形ステージを設け、造形ステージ上の光硬化性樹脂に紫外線レーザーを照射して所望のパターンの硬化層を作製する。このようにして硬化層を1層造ると造形ステージを1層分だけ下げて、硬化層上に未硬化の樹脂を導入し、同様にして紫外線レーザーを光硬化性樹脂に照射して前記硬化層上に新たな硬化層を積み上げる。この操作を繰り返すことにより、所定の立体造形物を得る。また、粉末焼結法は、樹脂、金属、セラミックス、ガラスの粉末を満たした槽内に造形ステージを設け、造形ステージ上の粉末に半導体等のレーザーを照射し、軟化変形にて所望のパターンの硬化層を作製するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光造形法等で作製される樹脂製の立体造形物は、細やかで精密であるが、機械的強度等に劣ることが指摘されている。そこで特許文献1で提案されているように、光硬化性樹脂に、無機充填材を添加することが提案されている。
【0006】
ところが無機充填材粒子を添加すると、立体造形物の透明性が損なわれるという問題がある。
【0007】
本発明の課題は、透明性に優れた立体造形物を作製できる立体造形用樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の立体造形用樹脂組成物は、ガラスフィラー及び硬化性樹脂を含有する立体造形用樹脂組成物であって、前記ガラスフィラーが非晶質であり、レーザー回折散乱式粒度分布測定による累積10%粒子径(D10)と累積90%粒子径(D90)との比D90/D10が4以下であることを特徴とする。D90/D10が低い値であることは、粒度分布が狭い(粒度分布がシャープであり、粒子径がそろっている)ことを意味する。そして、本願で使用するガラスフィラーは、D90/D10が4以下の範囲であることから粒度分布が狭く、優れた分散性を得ることができる。つまり、樹脂組成物中にフィラー粉末を均質に分散させることが可能になるため、光透過率に優れた樹脂組成物を得ることができる。また、ガラスフィラーは非晶質であり、フィラー中に結晶を実質的に含んでいない。従って、フィラー内にガラスと結晶との界面が存在せず、これに起因する光散乱が生じにくいことから、透過率の高い樹脂組成物を得ることができる。なお、非晶質であるかどうかについては、例えば、X線回折装置を用いて結晶化ピークがなく、ハローピークのみを示すか否かで判断できる。
【0009】
本発明の立体造形用樹脂組成物は、ガラスフィラーが略球状であることが好ましい。このようにすれば、ガラスフィラーと硬化性樹脂の接触面積が減少し、ガラスフィラーと硬化性樹脂との界面における光散乱が抑制され、造形物の透明性を高めることができる。
【0010】
本発明の立体造形用樹脂組成物は、ガラスフィラーが、ガラス組成として、質量%で、SiO2 20~70%、B2O3 0~50%、Nb2O5 0~20%、WO3 0~20%を含有することが好ましい。
【0011】
本発明の立体造形用樹脂組成物は、レーザー回折散乱式粒度分布測定による累積10%粒子径(D10)が1μm以上であることが好ましい。このようにすれば、粒子径の小さなガラスフィラーの割合が少なくなるため、ガラスフィラーと硬化性樹脂の接触面積が減少し、両者の界面での光散乱が抑制され、造形物の透明性を高めることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、透明性に優れた立体造形物を作製できる立体造形用樹脂組成物を提供することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の立体造形用樹脂組成物は、ガラスフィラー及び硬化性樹脂を含有する。
【0014】
ガラスフィラーの量は、硬化性樹脂100質量部に対して50~300質量部、60~280質量部、特に70~260質量部であることが好ましい。ガラスフィラーの量が少なすぎると、造形物の機械的強度が低くなる傾向がある。一方、ガラスフィラーの量が多すぎると、樹脂組成物の粘度が高くなりすぎ、樹脂の流動性が低下し、造形が困難となる。
【0015】
次に、本発明で使用するガラスフィラーについて説明する。
(ガラスフィラー)
ガラスフィラーは非晶質である。よって、フィラー内での光散乱が生じにくく、透明性の高い造形物を得やすくなる。
【0016】
ガラスフィラーは、レーザー回折散乱式粒度分布測定による累積10%粒子径(D10)と累積90%粒子径(D90)との比D90/D10が4以下であり、3以下、特に2以下であることが好ましい。D90/D10が大きすぎると、粒度分布が広くなり、分散性が悪化する傾向にある。つまり、樹脂組成物中にガラスフィラーを均質に分散させることが困難になるため、透明性の高い造形物を得にくくなる。D90/D10の下限は特に限定されないが、現実的には1以上、さらには1.1以上である。
【0017】
なお、D10、D50(累積50%粒子径)及びD90の好ましい範囲は以下の通りである。
【0018】
D10は、1~8μm、2~8μm、3~7μm、4~7μm、特に5~6μmであることが好ましい。D50は3~12μm、4~10μm、特に5~8μmであることが好ましい。D90は、5~16μm、6~14μm、特に7~12μmであることが好ましい。D10、D50、D90が小さすぎると、ガラスフィラーと硬化性樹脂との光散乱が増加し、透明性の高い造形物を得にくくなる。一方、D10、D50、D90が大きすぎると、分散性が悪化する傾向にある。
【0019】
本発明のフィラー粉末の形状は、略球状であることが好ましい。このようにすれば、フィラー粉末の粒径が小さくても比表面積が小さくなり、フィラー粉末と樹脂との界面での光散乱を抑制することができる。結果として、透明性の高い造形物を得やすくなる。なお、真球に近いほど、上記効果が得られやすい。
【0020】
ガラスフィラーは、硬化後の硬化性樹脂との屈折率ndの差が±0.02以内(好ましくは±0.01以内、より好ましくは±0.0075以内、さらに好ましくは±0.005以内)、アッベ数νdの差が±10以内(好ましくは±5.0以内、より好ましくは±2.5以内、さらに好ましくは±1.0以内)であることが好ましい。なお、ガラスフィラーと硬化性樹脂との光学定数の差が大きくなると樹脂との屈折率等の不整合により、造形物の透明性が低下しやすくなる。
【0021】
ガラスフィラーは、屈折率ndが1.40~1.90、1.40~1.65、1.45~1.6、特に1.5~1.55であることが好ましく、アッべ数νdは、20~65、40~65、45~60、特に50~57であることが好ましい。さらに屈折率ndが1.5~1.55、且つアッべ数νdが50~57であれば、アクリル系樹脂等多くの樹脂と光学定数が整合する。光学定数が上記範囲から外れると、硬化後の硬化性樹脂と整合した光学定数を得ることが難しくなる。またガラスフィラーは、得られる造形物の透明性を高める観点から、厚み1mmでの可視域(400~700nm)における平均透過率が30%以上、50%以上、特に70%以上であることが好ましい。
【0022】
ガラスフィラーは、その表面がシランカップリング剤によって処理されていることが好ましい。シランカップリング剤で処理すれば、ガラスフィラーと硬化性樹脂の結合力を高めることができ、より機械的強度の高い造形物を得ることが可能になる。さらに、ガラスフィラーと硬化性樹脂のなじみがよくなり、界面の泡や空隙が減少できる。その結果、光散乱を抑制でき、透過率を高めることができる。シランカップリング剤としては、例えばアミノシラン、エポキシシラン、アクリルシラン等が好ましい。なおシランカップリング剤は、用いる硬化性樹脂によって適宜選択すればよい。
【0023】
ガラスフィラーは、ガラス組成として、質量%で、SiO2 20~70%、B2O3 0~50%、Nb2O5 0~20%、WO3 0~20%を含有する。以下、上記のように各成分を限定した理由を説明する。なお、各成分の含有範囲の説明において、%表示は、質量%を意味する。
【0024】
SiO2はガラス骨格を形成する成分である。また化学耐久性の向上や失透の抑制が可能な成分である。SiO2の含有量は、20~70%、30~65%、特に40~60%であることが好ましい。SiO2の含有量が少なすぎると化学耐久性が低下しやすくなり、またガラスが失透しやすくなって製造が困難になる虞がある。一方、SiO2の含有量が多すぎると溶融性が低下しやすくなり、また成形時に軟化しにくくなって製造が困難になる虞がある。
【0025】
B2O3はガラス骨格を形成する成分である。また化学耐久性の向上や失透の抑制が可能な成分である。B2O3の含有量は、0~50%、2.5~40%、特に5~30%であることが好ましい。B2O3の含有量が多すぎると、溶融性が低下しやすくなり、また成形時に軟化しにくくなって製造が困難になる虞がある。
【0026】
Nb2O5は、屈折率、アッベ数を調整できる成分である。Nb2O5の含有量は、0~20%、0.1~15%、0.5~10%、特に1~5%であることが好ましい。Nb2O5の含有量が多すぎると屈折率が大きくなり、またアッベ数が小さくなる傾向がある。さらにガラスが失透しやすくなる。
【0027】
WO3は、屈折率、アッベ数を調整できる成分であり、またガラスの粘度を低下させる成分である。WO3の含有量は、0~20%、0.1~15%、0.5~10%、特に1~5%であることが好ましい。WO3が多すぎると屈折率が大きくなり、またアッベ数が小さくなる傾向がある。さらにガラスが着色しやすくなる傾向がある。
【0028】
上記成分以外にも、例えば、以下の成分を導入することができる。
【0029】
Al2O3はガラス化安定成分である。また化学耐久性の向上や失透の抑制が可能な成分である。Al2O3の含有量は、0~30%、2.5~25%、特に5~20%であることが好ましい。Al2O3の含有量が多すぎると、溶融性が低下しやすくなる。また成形時に軟化しにくくなって製造が困難になる虞がある。
【0030】
Li2Oは、ガラスの粘度を低下させるとともに、失透を抑制する成分である。Li2Oの含有量は、0~10%、0.1~9%、0.5~7%、特に1~5%であることが好ましい。Li2Oの含有量が多すぎると化学耐久性が低下しやすくなり、またガラスが失透しやすくなって製造が困難になる虞がある。
【0031】
Na2Oは、ガラスの粘度を低下させるとともに、失透を抑制する成分である。Na2Oの含有量は、0~10%、0.1~7.5%、0.5~5%、特に1~2.5%であることが好ましい。Na2Oの含有量が多すぎると化学耐久性が低下しやすくなり、またガラスが失透しやすくなって製造が困難になる虞がある。
【0032】
K2Oは、ガラスの粘度を低下させるとともに、失透を抑制する成分である。K2Oの含有量は、0~10%、0.1~8%、0.5~6%、特に1~4%であることが好ましい。K2Oの含有量が多すぎると化学耐久性が低下しやすくなり、またガラスが失透しやすくなって製造が困難になる虞がある。
【0033】
またガラス組成中のLi2O、Na2O、K2Oの含有量は合量で10%以下、6%以下、特に5%以下とすることが好ましい。これらの成分の合量を上記のように限定すれば、樹脂硬化時に発生するガラス中のアルカリ成分の蒸発を抑制し易くなる。また化学耐久性の低下を抑制できることから、例えばアルカリ溶出による樹脂の劣化が抑制できる。それゆえ無色透明な立体造形物を容易に得ることができ、また得られた造形物の経時的な劣化を防止することができる。さらにガラスの熱膨張係数を小さくできることから、サーマルショックや硬化時の熱収縮が抑制できる。
【0034】
MgOはガラス中で中間物質として働き、ガラスを安定化させる成分である。MgOの含有量は、0~25%、0.5~20%、特に1~15%であることが好ましい。MgOの含有量が多すぎると化学耐久性が低下しやすくなり、またガラスが失透しやすくなって製造が困難になる虞がある。
【0035】
CaOは、ガラス中で中間物質として働き、ガラスを安定化させる成分である。CaOは、0~25%、0.5~20%、特に1~15%であることが好ましい。CaOの含有量が多すぎると化学耐久性が低下しやすくなり、またガラスが失透しやすくなって製造が困難になる虞がある。
【0036】
SrOは、ガラス中で中間物質として働き、ガラスを安定化させる成分である。SrOの含有量は、0~25%、0.5~20%、特に1~15%であることが好ましい。SrOの含有量が多すぎると化学耐久性が低下しやすくなり、またガラスが失透しやすくなって製造が困難になる虞がある。
【0037】
BaOは、ガラス中で中間物質として働き、ガラスを安定化させる成分である。BaOの含有量は、0~25%、0.5~20%、特に1~15%であることが好ましい。BaOの含有量が多すぎると化学耐久性が低下しやすくなり、またガラスが失透しやすくなって製造が困難になる虞がある。
【0038】
ZnOはガラス中で中間物質として働き、ガラスを安定化させる成分である。ZnOの含有量は、0~25%、0.5~20%、特に1~15%であることが好ましい。ZnOの含有量が多すぎると化学耐久性が低下しやすくなり、またガラスが失透しやすくなって製造が困難になる虞がある。
【0039】
TiO2は、屈折率、アッベ数を調整できる成分であり、またガラスの粘度を低下させる成分である。TiO2の含有量は、0~15%、0.1~12%、0.5~10%、特に1~5%であることが好ましい。TiO2の含有量が多すぎると屈折率が大きくなり、またアッベ数が小さくなる傾向がある。またガラスが着色しやすくなる。
【0040】
またガラス組成中のTiO2、Nb2O5、WO3の含有量は合量で0~30%、0.1~25%、1~20%、特に3~15とすることが好ましい。これらの成分の範囲を上記のように限定すれば、屈折率やアッベ数の調整がしやすく、またガラスの失透の抑制が容易になる。さらに化学耐久性の高いガラスを得やすくなる。
【0041】
またガラス組成中のNb2O5、WO3の含有量は合量で0~30%、0.1~25%、1~20%、特に2~15%とすることが好ましい。これらの成分の範囲を上記のように限定すれば、屈折率やアッベ数の調整がしやすくなるとともに、着色し難くなる。またガラスの失透の抑制が容易になる。さらに化学耐久性の高いガラスを得やすくなる。
【0042】
次に、ガラスフィラーを球状化する場合において、その製造方法について説明する。
【0043】
まず、ガラス原料を所定割合で調合して得られた原料バッチを1400~1700℃で溶融して溶融ガラスを得る。次に、溶融ガラスを所定形状(例えば、フィルム状)に成形した後、粉砕、分級しガラス粉末を得る。粉砕方法としては、ボールミル、ビーズミル、ジェットミル、振動ミル等が使用でき、湿式粉砕又は乾式粉砕を使用することができる。中でもジェットミルは粒度分布が狭い粉末が得られるため、好適である。分級方法としては、網篩い、気流式分級装置等の公知の分級技術を用いることができる。
【0044】
得られたガラス粉末を加熱溶融することにより球状化する。加熱溶融方法としては、ガラス粉末をテーブルフィーダー等で炉内へ供給し、空気バーナー等で1400~2000℃に加熱し、溶融して、表面張力によりガラス粉末を球状化し、冷却、回収する方法が挙げられる。
【0045】
次に、球状化したガラス粉末を所望の粒度分布になるように分級し、ガラスフィラーを得る。分級方法としては、網篩い、気流式分級装置等の公知の分級技術を用いることができる。
【0046】
得られたガラスフィラーにナノ粒子を含有させても構わない。ナノ粒子はD50が1μm未満の粒子であり、樹脂組成物の粘度を上昇させることができる。結果として造形中のガラスフィラーの沈降を抑制することができる。ナノ粒子のD50は小さいほど粘度上昇の効果が大きいことから、500nm以下、200nm以下、100nm以下、50nm以下、20nm以下、特に10nm以下であることが好ましい。一方、D50が小さくなりすぎるとナノ粒子の製造及び取り扱いが困難であることから、1nm以上、特に2nm以上であることが好ましい。
【0047】
ナノ粒子としては、フュームドシリカ、フュームドシリカアルミ、フュームドチタニア等が挙げられる。なかでも、フュームドシリカは、表面に多数のシラノール基を有し、各フュームドシリカ同士が水素結合して、液体樹脂中にて三次元網目構造を形成し、樹脂組成物の粘度を高める効果が高い。
【0048】
次に、本発明で使用する硬化性樹脂について説明する。
(硬化性樹脂)
硬化性樹脂は、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂の何れであってもよく、採用する造形法によって適宜選択することができる。例えば光造形法を使用する場合は液状の光硬化性樹脂を選択すればよく、また粉末焼結法を採用する場合は粉末状の熱硬化性樹脂を選択すればよい。
【0049】
上記光硬化性樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、メラミン樹脂、(メタ)アクリル-スチレン共重合体、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ベンゾグアナミン-メラミンホルムアルデヒド、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂、架橋(メタ)アクリル系樹脂、架橋ポリスチレン系樹脂、架橋ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。
【0050】
上記熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ系樹脂、熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル系樹脂、熱硬化型ポリイミド系樹脂、ユリア系樹脂、アリル樹脂、ケイ素樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂、フェノール系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、アルキド系樹脂、フラン系樹脂、メラミン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アニリン系樹脂等が挙げられる。
【0051】
次に、立体造形物の製造方法の一例を説明する。具体的には、光硬化性樹脂を含む樹脂組成物を用いた立体造形物の製造方法について説明する。なお樹脂組成物は既述の通りであり、ここでは説明を省略する。
【0052】
まず光硬化性樹脂組成物からなる1層の液状層を準備する。例えば液状の光硬化性樹脂組成物を満たした槽内に造形用ステージを設け、ステージ上面が液面から所望の深さ(例えば0.2mm程度)となるように位置させる。このようにすることで、ステージ上に液状層を準備することができる。
【0053】
次に、この液状層に活性エネルギー線、例えば紫外線レーザーを照射して光硬化性樹脂を硬化させ、所定のパターンを有する硬化層を形成する。なお活性エネルギー線としては、紫外線の他に、可視光線、赤外線等のレーザー光を用いることができる。
【0054】
続いて、形成した硬化層上に、光硬化性樹脂組成物からなる新たな液状層を準備する。例えば、前記した造形用ステージを1層分下降させることにより、硬化層上に光硬化性樹脂組成物を導入し、新たな液状層を準備することができる。
【0055】
その後、硬化層上に準備した新たな液状層に活性エネルギー線を照射して、前記硬化層と連続した新たな硬化層を形成する。
【0056】
以上の操作を繰り返すことによって硬化層を連続的に積層し、所定の立体造形物を得る。
【実施例】
【0057】
以下、実施例に基づき本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0058】
【0059】
(ガラスフィラーの作製)
表1の組成となるように、原料粉末を調合し、均一に混合した。得られた原料バッチを1580~1600℃で均質になるまで溶融した後、一対のローラー間に流し出してフィルム状に成形した。得られたガラスについて、屈折率測定器(島津製作所社製 KPR-2000)により屈折率を測定した。その後、ジェットミル粉砕を行い、ガラス粉末を得た。
【0060】
得られたガラス粉末をテーブルフィーダーで炉内へ供給し、空気バーナーでガラス粉末を1400~2000℃に加熱し、溶融して、ガラス粉末を球状化した。
【0061】
次に、ガラス粉末表面に付着した微粒子を水で洗浄して取り除いた後、乾燥した。
【0062】
次いで、球状化したガラス粉末を表1に記載の粒子径になるように気流式分級装置にて分級し、ガラスフィラーを得た。
(シラン処理)
ビーカーに純水9g及びシランカップリング剤(信越化学社製 KBM-503)1gを混合した。さらに酢酸0.03gを添加し、スターラーを用いて30分撹拌し、シランカップリング剤を加水分解させた。
【0063】
次に、別の容器に重量比で第一のガラスフィラー:エタノール:加水分解させたシランカップリング剤を20:19:1の割合で混合し、1時間撹拌した。
【0064】
次に、アルコールを蒸発乾燥させ、さらに110℃で30分保持した。
(樹脂組成物の作製)
硬化性樹脂(デジタルワックス社製 DL360)100質量部に対してガラスフィラー87質量部となるように秤量した。さらに、自公転ミキサー(シンキー社製 ARE-310)を用いて、ガラスフィラー及び硬化性樹脂を混合し、樹脂組成物を得た。なお、光硬化後の硬化性樹脂の屈折率ndは1.514であった。
(透過率測定)
得られた樹脂組成物をスライドガラス上に適量採取し、厚さ0.5mmのガラス板をスペーサとしてもう一枚のスライドガラスで挟み、紫外線を照射して樹脂組成物を硬化させた。
【0065】
次にスライドガラスを含めた樹脂組成物について、分光光度計(島津製作所製 UV-3100)により全光線透過率測定を行い、588nmにおける透過率を測定した。
【0066】
表1に示すように、実施例1、2は、透過率が82%と高かった。一方、比較例3は、D90/D10が4.1と大きく粒度分布が広いため、光透過率が46%と低かった。