(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】ロボットシステム及びロボットの作業方法
(51)【国際特許分類】
B25J 11/00 20060101AFI20220711BHJP
B25J 19/06 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
B25J11/00 Z
B25J19/06
(21)【出願番号】P 2020118970
(22)【出願日】2020-07-10
【審査請求日】2020-07-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】特許業務法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】入間 大介
【審査官】神山 貴行
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-058083(JP,U)
【文献】特開2018-075679(JP,A)
【文献】特開2015-201693(JP,A)
【文献】実開昭59-109490(JP,U)
【文献】特開2018-111174(JP,A)
【文献】特開2008-279340(JP,A)
【文献】特開平06-218669(JP,A)
【文献】特開昭61-236482(JP,A)
【文献】実開昭63-013689(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置面に固定された支持部材と、
前記支持部材により支持され、
立位姿勢の作業者よりも上方の位置において少なくとも水平方向に移動可能なベース部材と、
前記ベース部材
の下方に吊り下げるように設置され
、ワークに所定の作業を実行するロボットと、
を有し、
前記ベース部材は、
前記支持部材に対して鉛直方向に沿った軸周りに旋回可能に連結された
第1アーム部及び
前記第1アーム部に対して前記鉛直方向に沿った軸周りに旋回可能に連結された第2アーム部を有する水平多関節型のアーム機構であり、前記ロボットが前記所定の作業を行う場合には
、前記第1アーム部及び前記第2アーム部を前記立位姿勢の作業者よりも上方の位置において旋回させることで前記ロボットを作業エリアに移動させ、前記ロボットが前記所定の作業を行わない場合には
、前記第1アーム部と前記第2アーム部とを
前記立位姿勢の作業者よりも上方の位置において旋回させて重なるように折りたたむことで退避エリアに移動させる、
ことを特徴とするロボットシステム。
【請求項2】
前記ロボットは、
アームを備えた多関節型のロボットであり、
前記退避エリアに移動された際に、前記アームを構成する各部が折りたたまれた待機姿勢となって待機する、
ことを特徴とする請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項3】
前記アーム機構は、
前記第1アーム部が前記第2アーム部よりも所定の長さだけ長くなるように構成されており、前記所定の長さは前記支持部材の太さよりも長い、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のロボットシステム。
【請求項4】
前記ロボットが前記所定の作業を行う場合には前記作業エリアに移動させ、前記ロボットが前記所定の作業を行わない場合には前記退避エリアに移動させるように、前記アーム機構を制御する第1制御部をさらに有する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【請求項5】
前記ワークを前記ロボットの可動範囲を通過するように搬送する1又は複数のコンベアをさらに有する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【請求項6】
前記コンベアにより搬送される前記ワークに前記ロボットを追従させるように前記アーム機構を制御する第2制御部をさらに有する
ことを特徴とする請求項5に記載のロボットシステム。
【請求項7】
前記ロボットに衝突による外力が作用したか否かを検出する外力センサと、
前記外力センサが前記外力を検出した場合に前記アーム機構及び前記ロボットを停止させる第3制御部と、をさらに有する
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【請求項8】
前記ロボットの作業エリア内に作業者が侵入したか否かを検出する侵入センサと、
前記侵入センサにより前記作業者が侵入したと検出された場合に、前記アーム機構及び前記ロボットを停止させる、又は、前記第3制御部による停止機能を有効にする、第4制御部と、をさらに有する
ことを特徴とする請求項7に記載のロボットシステム。
【請求項9】
前記ロボットの先端に取り付けられたエンドエフェクタを作業者が手作業で移動させた際の動作を教示位置として記録する第5制御部をさらに有する
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【請求項10】
前記ロボットの先端に取り付けられ、前記ワークに粉体塗料を吹き付ける塗装ガンと、
前記支持部材及び前記アーム機構に沿って配設され、前記塗装ガンに前記粉体塗料を送るためのホースと、をさらに有する
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【請求項11】
設置面に固定された支持部材により支持され、
前記支持部材に対して鉛直方向に沿った軸周りに旋回可能に連結された第1アーム部及び
前記第1アーム部に対して前記鉛直方向に沿った軸周りに旋回可能に連結された第2アーム部を有する水平多関節型のアーム機構を、
立位姿勢の作業者よりも上方の位置において少なくとも水平方向に移動させることと、
前記アーム機構
の下方に吊り下げるように設置されたロボットによ
りワークに所定の作業を実行する場合には
、前記第1アーム部及び前記第2アーム部を前記立位姿勢の作業者よりも上方の位置において旋回させることで前記ロボットを作業エリアに移動させることと、
前記ロボットが前記所定の作業を行わない場合には、前記第1アーム部と前記第2アーム部とを
前記立位姿勢の作業者よりも上方の位置において旋回させて重なるように折りたたむことで前記ロボットを退避エリアに移動させることと、
を有することを特徴とするロボットの作業方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、ロボットシステム及びロボットの作業方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、搬送システムが記載されている。この搬送システムは、無人で走行する無人走行車と、無人走行車に搭載され、被搬送物を保持可能なハンドを移動させるロボットと、無人走行車に搭載され、被搬送物またはハンドを昇降可能に懸垂して支持するクレーンユニットと、ロボットおよびクレーンユニットを協調動作させるコントローラとを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロボットを移動可能としつつ、当該ロボットによる作業の精度を更に向上させることが要望されている。
【0005】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、ロボットを移動可能としつつ作業の精度を向上することが可能なロボットシステム及びロボットの作業方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一の観点によれば、設置面に固定された支持部材と、前記支持部材により支持され、ワークよりも上方の位置において少なくとも水平方向に移動可能なベース部材と、前記ベース部材に設置され、前記ワークに所定の作業を実行するロボットと、を有するロボットシステムが適用される。
【0007】
また、本発明の別の観点によれば、設置面に固定された支持部材により支持されたベース部材を、ワークよりも上方の位置において少なくとも水平方向に移動させることと、前記ベース部材に設置されたロボットにより前記ワークに所定の作業を実行することと、を有するロボットの作業方法が適用される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ロボットを移動可能としつつ作業の精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】ロボットシステムの構成の一例を表す斜視図である。
【
図2】スカラアームが作業者よりも上方位置に配置されることを表す説明図である。
【
図4】ロボットシステムをハンドリング作業に適用した例を表す斜視図である。
【
図5】ロボットシステムをハンドリング作業に適用した例において、ロボットを退避させた場合の一例を表す斜視図である。
【
図6】ロボットシステムを艤装作業に適用した例を表す斜視図である。
【
図7】ロボットシステムを粉体塗装作業に適用した例を表す斜視図である。
【
図8】ロボットシステムの各コントローラの機能構成の一例を表すブロック図である。
【
図9】複数のコンベアを設置した変形例における、ロボットシステムの構成の一例を表す斜視図である。
【
図10】四方に作業エリアを配置した変形例における、ロボットシステムの構成の一例を表す斜視図である。
【
図11】上位コントローラのハードウェア構成例を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下において、ロボットシステム等の構成の説明の便宜上、上下左右前後等の方向を適宜使用する場合があるが、ロボットシステム等の各構成の位置関係を限定するものではない。
【0011】
<1.ロボットシステムの構成>
図1及び
図2を参照しつつ、本実施形態に係るロボットシステム1の構成の一例について説明する。
【0012】
図1に示すように、ロボットシステム1は、ベース板3と、支柱5と、スカラアーム7と、ロボット9と、制御ボックス11とを有する。
【0013】
ベース板3は、略長方形状の板状部材であり、建屋に固定された床面F(
図2参照。設置面の一例)に複数(例えば4本)のアンカーボルト13により固定されている。なお「建屋」とは、例えば工場や事業所等、ロボットシステム1が設置される建造物のことをいう。
【0014】
支柱5(支持部材の一例)は、ベース板3上の前側寄りに立設された、略四角柱状の支柱である。なお、支柱5の形状は四角柱状に限らず、例えば円柱状又は四角形以外の多角柱状としてもよい。支柱5は、鉛直上下方向に沿って立設され、下端がベース板3に固定されている。
図2に示すように、支柱5の高さHp(例えば2400mm程度)は、立位姿勢の作業者Mの身長よりも高く、詳細には作業者Mが上方に腕を伸ばしたときの高さHmよりも高くなるように設定されている。これにより、作業者Mが移動するスカラアーム7に衝突したり挟まれたりするのを防止できる。支柱5の前側には、操作盤15と、レーザスキャナ17とが設置されている。
【0015】
図2に示すように、操作盤15は、作業者Mが操作し易い高さ、例えば顔19よりやや低い高さに設置されている。操作盤15には、作業者Mが操作可能な複数の操作ボタン(図示省略)が設けられている。操作ボタンには、例えばスカラアーム7やロボット9を起動又は停止させるための起動ボタン及び停止ボタンが含まれている。なお、例えばスカラアーム7やロボット9の稼働状態等の情報を表示可能な表示部や、アラーム等の音声を出力可能なスピーカ等を操作盤15に設けてもよい。
【0016】
図2に示すように、レーザスキャナ17(侵入センサの一例)は、例えば作業者Mの脚21を検出可能な高さに設置されている。レーザスキャナ17は、前方の所定の角度範囲にレーザを照射することにより、ロボット9の作業エリア内に作業者M等が侵入したか否かを検出する。なお、作業者Mの有無を検出可能であれば、例えば赤外線センサや超音波センサ等、レーザスキャナ以外の種類のセンサを使用してもよい。
【0017】
スカラアーム7(ベース部材の一例)は、支柱5により支持され、上述した作業者Mの高さHmよりも上方の位置において水平方向に移動可能な水平多関節型のアーム機構である。なお、作業者Mの高さHmよりも上方の位置は、ロボット9の作業対象であるワーク(
図4,5,6,7等参照)よりも上方の位置である。スカラアーム7は、第1アーム部23と、第2アーム部25とを有する。第1アーム部23は、例えば略直方体状の柱状部材であり、支柱5の上端に対して、鉛直方向(上下方向)に平行な回転軸SAx1周りに旋回可能に連結されている。第1アーム部23は、支柱5との間の関節部に設けられたアクチュエータSAc1の駆動により旋回駆動される。第2アーム部25は、例えば略直方体状の柱状部材であり、第1アーム部23の先端に対して、鉛直方向(上下方向)に平行な回転軸SAx2周りに旋回可能に連結されている。第2アーム部25は、第1アーム部23との間の関節部に設けられたアクチュエータSAc2の駆動により旋回駆動される。後述の
図5に示すように、スカラアーム7を折りたたんでロボット9を退避エリアAr3に移動させることが可能なように、第1アーム部23は第2アーム部25よりも所定の長さ(例えば支柱5の太さに相当する長さ)だけ長くなっている。
【0018】
ロボット9は、スカラアーム7の第2アーム部25の先端の下方に吊り下げるように設置されており、ワークに所定の作業を実行する。「所定の作業」は、例えばワークのハンドリング作業(搬送、組立て、組付け、回転、姿勢の変更等)、自動車のボディに対する装備品の艤装作業、ワークに対する粉体塗装作業等であるが、これらに限定されるものではなく、多種多様な作業を実行可能である。ロボット9は、例えば6つの関節部を備えた垂直多関節型の6軸ロボットとして構成されており、その先端にはエンドエフェクタとして例えばハンド27が取り付けられている。ロボット9は、ハンド27によりワークを把持してハンドリングを行う。エンドエフェクタは、ロボット9が実行する作業の種類に応じて交換される。なお、ロボット9を6軸以外(例えば5軸や7軸等)のロボットとしてもよい。また、水平多関節型やパラレルリンクロボット等、ロボット9を垂直多関節型以外のロボットとしてもよい。さらに、汎用ロボット以外にも、例えば、XYZθ方向等に移動可能なアクチュエータを備えた所定の作業専用に設計された専用作業機等としてもよい。
【0019】
制御ボックス11は、ベース板3上の後側寄りに支柱5に隣接して配置されている。制御ボックス11には、アームコントローラ29と、ロボットコントローラ31と、上位コントローラ33とが収容されている。アームコントローラ29はスカラアーム7を制御し、ロボットコントローラ31はロボット9を制御し、上位コントローラ33はアームコントローラ29及びロボットコントローラ31を介してスカラアーム7とロボット9とを連携するように制御する。上位コントローラ33は、例えばモーションコントローラ、汎用パーソナルコンピュータ(PC)、又はプログラマブルロジックコントローラ(PLC)等により構成される。
【0020】
なお、アームコントローラ29を、制御ボックス11ではなく、スカラアーム7の近傍(例えば支柱5の表面や各アーム部23,25の表面等)に設けてもよい。同様に、ロボットコントローラ31を、制御ボックス11ではなく、ロボット9の近傍(例えばロボット9の基台等)に設けてもよい。また、アームコントローラ29、ロボットコントローラ31、上位コントローラ33は、別体でなく一体の制御装置として構成されてもよいし、いずれかのコントローラを複数の制御装置で構成してもよい。
【0021】
なお、上述したロボットシステム1の構成は一例であり、上述の内容に限定されるものではない。例えば、ベース板3は床面に限らず、例えば建屋に固定された天井に固定されてもよい。この場合、スカラアーム7の第1アーム部23を、天井から吊り下げ支持された支柱5の下端に対して回転軸SAx1周りに旋回可能に連結すればよい。また、ベース板3は、例えば建屋に固定された壁面(床面に垂直な壁面)に固定されてもよい。この場合、スカラアーム7の第1アーム部23を、壁面から水平に延設された支柱5の先端の上面又は下面に対して回転軸SAx1周りに旋回可能に連結すればよい。また、ベース板3は、建屋に固定された架台等に固定されてもよい。
【0022】
<2.ロボットの構成>
次に、
図3を参照しつつ、ロボット9の構成の一例について説明する。
【0023】
図3に示すように、ロボット9は、基台40と、旋回部43と、アーム45とを有する。基台40は、スカラアーム7の第2アーム部25の先端の下方に固定される。
【0024】
旋回部43は、基台40の下端部に、鉛直方向(上下方向)に平行な回転軸RAx1周りに旋回可能に支持されている。旋回部43は、基台40との間の関節部に設けられたアクチュエータRAc1の駆動により、基台40の下端部に対し、回転軸RAx1周りに旋回駆動される。アクチュエータRAc1は、基台40と旋回部43との間の回転軸RAx1周りのトルクを検出するトルクセンサTs1を有する。トルクセンサTs1の検出値は上位コントローラ33に送信される。
【0025】
アーム45は、旋回部43の例えば一方側の側部に支持されている。このアーム45は、下腕部47と、肘部49と、上腕部51と、手首部53と、フランジ部55とを有する。
【0026】
下腕部47は、旋回部43の一方側の側部に、回転軸RAx1に垂直な回転軸RAx2周りに旋回可能に支持されている。下腕部47は、旋回部43との間の関節部に設けられたアクチュエータRAc2の駆動により、旋回部43の一方側の側部に対し、回転軸RAx2周りに旋回駆動される。アクチュエータRAc2は、旋回部43と下腕部47との間の回転軸RAx2周りのトルクを検出するトルクセンサTs2を有する。トルクセンサTs2の検出値は上位コントローラ33に送信される。
【0027】
肘部49は、下腕部47の先端側に、回転軸RAx2に平行な回転軸RAx3周りに旋回可能に支持されている。肘部49は、下腕部47との間の関節部に設けられたアクチュエータRAc3の駆動により、下腕部47の先端側に対し、回転軸RAx3周りに旋回駆動される。アクチュエータRAc3は、下腕部47と肘部49との間の回転軸RAx3周りのトルクを検出するトルクセンサTs3を有する。トルクセンサTs3の検出値は上位コントローラ33に送信される。
【0028】
上腕部51は、肘部49の先端側に、回転軸RAx3に垂直な回転軸RAx4周りに回動可能に支持されている。上腕部51は、肘部49との間の関節部に設けられたアクチュエータRAc4の駆動により、肘部49の先端側に対し、回転軸RAx4周りに回動駆動される。アクチュエータRAc4は、肘部49と上腕部51との間の回転軸RAx4周りのトルクを検出するトルクセンサTs4を有する。トルクセンサTs4の検出値は上位コントローラ33に送信される。
【0029】
手首部53は、上腕部51の先端側に、回転軸RAx4に垂直な回転軸RAx5周りに旋回可能に支持されている。手首部53は、上腕部51との間の関節部に設けられたアクチュエータRAc5の駆動により、上腕部51の先端側に対し、回転軸RAx5周りに旋回駆動される。アクチュエータRAc5は、上腕部51と手首部53との間の回転軸RAx5周りのトルクを検出するトルクセンサTs5を有する。トルクセンサTs5の検出値は上位コントローラ33に送信される。
【0030】
フランジ部55は、手首部53の先端側に、回転軸RAx5に垂直な回転軸RAx6周りに回動可能に支持されている。フランジ部55は、手首部53との間の関節部に設けられたアクチュエータRAc6の駆動により、手首部53の先端側に対し、回転軸RAx6周りに回動駆動される。アクチュエータRAc6は、手首部53とフランジ部55との間の回転軸RAx6周りのトルクを検出するトルクセンサTs6を有する。トルクセンサTs6の検出値は上位コントローラ33に送信される。
【0031】
ハンド27は、フランジ部55の先端に取り付けられており、フランジ部55の回転軸RAx6周りの回動と共に、回転軸RAx6周りに回動する。ハンド27は、互いに遠近する方向に動作可能な一対の把持部材27a,27aを備えており、ワークを把持することを初めとして、各種の操作や作業をすることが可能である。
【0032】
以上の構成であるロボット9は、6つのアクチュエータRAc1~RAc6を備えた6つの関節部を有する6軸ロボットである。各関節部を駆動するアクチュエータRAc1~RAc6は、例えばサーボモータ39、エンコーダ41、トルクセンサTs1~Ts6(外力センサの一例)、減速機(図示省略)及びブレーキ(図示省略)等により構成されている。各関節部においてトルクを検出することにより、ロボット9が例えば人や物に衝突した場合には直ちに動作を停止させることが可能となっており、作業者Mと共に稼働することが可能な人協働ロボットとして構成されている。
【0033】
なお、上記では、アーム45の長手方向(あるいは延在方向)に沿った回転軸周りの回転を「回動」と呼び、アーム45の長手方向(あるいは延在方向)に垂直な回転軸周りの回転を「旋回」と呼んで区別している。
【0034】
<3.ロボットシステムの適用例>
次に、
図4~
図7を参照しつつ、ロボットシステム1の具体的な適用例について説明する。
【0035】
(3-1.ハンドリング作業)
図4及び
図5に、ロボット9がワークW1のハンドリング作業(例えば搬送、組立て、組付け、回転、姿勢の変更等)を行う場合の一例を示す。
図4及び
図5に示すように、ロボットシステム1の前方に例えば2つの作業テーブル57L,57Rが配置されており、各作業テーブル57L,57R上にはワークW1がそれぞれ配置されている。
図4に示す例では、作業テーブル57Lに対応する作業エリアAr1では作業者Mがハンドリング作業を実行する一方で、作業テーブル57Rに対応する作業エリアAr2では例えば欠員等により作業者Mが不在となっている。あるいは、作業エリアAr2を自動化する、又は作業エリアAr2でロボットによるフォローを行う等でもよい。そこで、スカラアーム7の駆動によりロボット9を作業エリアAr2に移動させ、ロボット9がワークW1に対するハンドリング作業を実行する。この場合、レーザスキャナ17は作業エリアAr2内に作業者Mを含む人や物が侵入したか否かを検出する。そして、レーザスキャナ17により作業エリアAr2内への人や物の侵入が検出された場合には、スカラアーム7及びロボット9の動作が停止されるか、又は、ロボットシステム1の稼働モードが通常モードから人協働モードに変更される。「人協働モード」とは、前述のトルクセンサTs1~Ts6の検出結果に基づいて、ロボット9が例えば人や物に衝突したと判定された場合に、直ちにスカラアーム7及びロボット9の動作を停止させる機能が有効化されたモードである。「通常モード」では上記機能が無効化されている。
【0036】
なお、
図4に示す例とは反対に、作業エリアAr1でロボット9を稼働させる場合には、スカラアーム7の駆動によりロボット9を作業エリアAr1に移動させて、ハンドリング作業を実行させる。なお、このようなロボット9の作業エリアの切り替えを、操作盤15にて操作できるようにしてもよい。
【0037】
図5に示す例では、作業エリアAr1,Ar2の両方で作業者Mがハンドリング作業を実行しており、ロボット9による作業が不要となっている。そこで、スカラアーム7の駆動により、ロボット9は例えば支柱5の後側且つ制御ボックス11の上側である退避エリアAr3に移動され、各部が折りたたまれた待機姿勢となって待機する。スカラアーム7は、例えば第1アーム部23と第2アーム部25が支柱5の後側において平行且つ上下方向に重なるように、スカラアーム7が折りたたまれている。このようにすることで、ロボット9を必要な時にだけ必要な場所で稼働させ、使用しない場合には邪魔にならない場所に待機させることができる。
【0038】
仮に、作業エリアAr1,Ar2においてロボット9を床面に設置した場合には、ロボット9が作業エリアを専有することになるが、本実施形態ではロボット9を天吊り型とすることにより、ロボット9が作業エリアAr1,Ar2を専有することを回避できる。これにより、作業エリアAr1,Ar2における人の作業スペースは維持したままで、必要に応じてロボット9による自動化を図ることが可能となり、自動化のトライアンドエラーが容易となる。また、例えば多品種生産時にワークの種類によっては作業者Mによる人手の作業に対してフォローが必要となるような場合に、ロボット9によるフォローが容易となる。
【0039】
さらに、ロボット9を天吊り型とすることにより作業エリアAr1,Ar2を開放できるので、作業者Mはロボット9の下方のスペースを活用して、例えばロボット9の下方に入り込みながら、ハンド27を容易且つ簡単に手作業で移動させることができる。したがって、ダイレクトティーチングの作業性を大幅に向上できる。
【0040】
(3-2.艤装作業)
図6に、ロボット9が自動車のボディに対する艤装作業を行う場合の一例を示す。
図6に示すように、ロボットシステム1は、自動車のボディBD(装備品を取り付ける対象としてのワークの一例)をロボット9の可動範囲を通過するように搬送するコンベア59を有する。コンベア59は、この例では左側から右側へ移動する方向に、ボディBDを停止させることなく連続的に搬送する。スカラアーム7は、コンベア59により搬送されるボディBDの移動にロボット9を追従させるように駆動する。ロボット9は、ボディBDと共に同じ方向及び同じ速度で移動しながら、各種の装備品であるワークW2,W3,W4をボディBDに取り付ける艤装作業を行う。
【0041】
ロボット9による艤装作業は、例えば次のようにして行われる。まず、ロボット9の艤装作業の動作を規定する教示データが、作業者Mがハンド27を手作業で移動させるダイレクトティーチングにより、上位コントローラ33に予め記録されている。このダイレクトティーチングは、ボディBD及びロボット9が所定の位置に所定の姿勢で固定された状態で行われる。また、コンベア59の搬送速度は、例えばコンベア59のモータのエンコーダ(図示省略)により検出される。そして、コンベア59によりボディBDがロボット9の可動範囲に進入すると、ロボット9はスカラアーム7によりボディBDに対してティーチング時と同じ相対位置及び同じ姿勢を維持されつつ、ボディBDと同じ方向及び同じ速度で移動される。これにより、ロボット9はダイレクトティーチングによる教示データをそのまま使用して移動中のボディBDに対する艤装作業を実行できる。
【0042】
なお、例えばボディBDの搬送経路にカメラ(図示省略)を設置しておき、当該カメラによりボディBDを検出し、画像処理によりボディBDの位置及び姿勢を測定してもよい。これにより、当該測定結果に基づいてスカラアーム7の動作を制御したり、ロボット9の教示データを補正する等が可能となり、艤装作業の精度を向上できる。
【0043】
図6に示す例では、ワークW2,W3,W4は、例えばコンベア61,63,65によりロボット9による作業エリアAr4の近傍にそれぞれ搬送され、コンベアの先端位置で停止される。ロボット9は、スカラアーム7により可動範囲が拡大されているので、並列に配置されたコンベア61,63,65からワークW2,W3,W4を容易にピッキングできる。なお、各ワークW2,W3,W4は例えば台車等により搬送されてもよい。
【0044】
レーザスキャナ17は、ロボット9がボディBDの移動に追従して艤装作業を行う範囲である作業エリアAr4内に、作業者Mを含む人や物が侵入したか否かを検出する。そして、レーザスキャナ17により作業エリアAr4内への人や物の侵入が検出された場合には、スカラアーム7及びロボット9の動作が停止されるか、又は、ロボットシステム1の稼働モードが通常モードから人協働モードに変更される。
【0045】
(3-3.粉体塗装作業)
図7に、ロボット9がワークW5に対する塗装作業を行う場合の一例を示す。
図7に示すように、ロボットシステム1は、塗装対象であるワークW5をロボット9の可動範囲を通過するように搬送するハンガーコンベア67をさらに有する。ワークW5は、例えばキャビネット等の箱体である。ハンガーコンベア67(コンベアの一例)は、レール69に沿ってワークW5を吊り下げたフック71を移動させることにより、例えば左側から右側へ移動する方向に、ワークW5を停止させることなく連続的に搬送する。スカラアーム7は、ハンガーコンベア67により搬送されるワークW5の移動にロボット9を追従させるように駆動する。ロボット9の先端には、エンドエフェクタとして塗装ガン73が取り付けられている。ロボット9は、ワークW5と共に同じ方向及び同じ速度で移動しながら、粉体塗料をワークW5に吹き付ける粉体塗装作業を行う。
【0046】
塗装ガン73には、粉体塗料を送るためのホース75が接続されている。ホース75は、適宜の保持具(図示省略)により、ロボット9の上腕部51及び下腕部47等に沿うように配設されると共に、スカラアーム7の第2アーム部25及び第1アーム部23に沿うように配設され、さらに支柱5の表面(この例では右側面)に沿うように下方に向けて配設されて、粉体塗料の供給タンク(図示省略)に接続される。ホース75は、スカラアーム7やロボット9の動作に追従できるように、ある程度の弛みや柔軟性を持たせて保持されている。なお、ホース75は必ずしもスカラアーム7や支柱5に沿って配設する必要はなく、例えば天井等に設置された保持具から吊り下げるように支持してもよい。
【0047】
ロボット9による粉体塗装作業は、例えば次のようにして行われる。まず、ロボット9の粉体塗装作業の動作を規定する教示データが、作業者Mが塗装ガン73を手作業で移動させるダイレクトティーチングにより、上位コントローラ33に予め記録されている。このダイレクトティーチングは、ワークW5及びロボット9が所定の位置に所定の姿勢で固定された状態で行われる。また、ハンガーコンベア67の搬送速度は、例えばハンガーコンベア67のモータのエンコーダ(図示省略)により検出される。そして、ハンガーコンベア67によりワークW5がロボット9の可動範囲に進入すると、ロボット9はスカラアーム7によりワークW5に対してティーチング時と同じ相対位置及び同じ姿勢を維持されつつ、ワークW5と同じ方向及び同じ速度で移動される。これにより、ロボット9はダイレクトティーチングによる教示データをそのまま使用して移動中のワークW5に対する粉体塗装作業を実行できる。
【0048】
レーザスキャナ17は、ロボット9がワークW5の移動に追従して塗装作業を行う範囲である作業エリアAr5内に、作業者Mを含む人や物が侵入したか否かを検出する。そして、レーザスキャナ17により作業エリアAr5内への人や物の侵入が検出された場合には、スカラアーム7及びロボット9の動作が停止されるか、又は、ロボットシステム1の稼働モードが通常モードから人協働モードに変更される。
【0049】
なお、粉体塗装は作業の性質上、位置決めに高い精度が要求されないため、ダイレクトティーチングに向いた作業である。このため、ダイレクトティーチングが容易な本実施形態のロボットシステム1に好適な作業である。なお、ロボット9に実行させる塗装作業は粉体塗装に限るものではなく、例えば液体塗装を実行させてもよい。但し、この場合には有害物質を含む有機溶剤を使用することとなり、防爆仕様の塗装ブース内での塗装作業となる。一方、粉体塗装の場合には、有害物質を含まない塗料を使用でき、且つ、非防爆エリアにて塗装作業を行うことが可能となる。このため、スカラアーム7によりロボット9の可動範囲を拡大してフレキシブルに動作させることが可能なロボットシステム1に、特に好適な作業である。
【0050】
<4.各コントローラの機能構成>
次に、
図8を参照しつつ、アームコントローラ29、ロボットコントローラ31、上位コントローラ33等の機能構成の一例について説明する。
【0051】
図8に示すように、アームコントローラ29は、モーション制御部77と、サーボアンプ79とを有する。モーション制御部77は、上位コントローラ33から入力された指令(例えば位置指令等)に基づいて、スカラアーム7の第2アーム部25の先端位置を所望の位置に移動させるために必要となる各アクチュエータSAc1,SAc2の各サーボモータ35の目標回転角度等を演算し、対応するモータ位置指令を出力する。サーボアンプ79は、モーション制御部77から入力されたモータ位置指令と、各サーボモータ35の各エンコーダ37の検出値等に基づいて、各アクチュエータSAc1,SAc2の各サーボモータ35に供給する駆動電力の制御を行い、スカラアーム7の動作を制御する。
【0052】
同様に、ロボットコントローラ31は、モーション制御部81と、サーボアンプ83とを有する。モーション制御部81は、上位コントローラ33から入力された指令(例えば位置指令等)に基づいて、ロボット9のハンド27等の手先位置をティーチング(例えばダイレクトティーチング)により教示された位置に移動させるために必要となる各アクチュエータRAc1~RAc6の各サーボモータ39の目標回転角度等を演算し、対応するモータ位置指令を出力する。サーボアンプ83は、モーション制御部81から入力されたモータ位置指令と、各サーボモータ39の各エンコーダ41の検出値等に基づいて各アクチュエータRAc1~RAc6の各サーボモータ39に供給する駆動電力の制御を行い、ロボット9の動作を制御する。
【0053】
上位コントローラ33は、第1制御部85と、第2制御部87と、第3制御部89と、第4制御部91と、第5制御部93とを有する。
【0054】
第1制御部85は、ロボット9が作業を行う場合には作業エリアに移動させ、ロボット9が作業を行わない場合には退避エリアに移動させるように、スカラアーム7を制御する。また第1制御部85は、ロボット9を作業エリアに移動させた際に、ダイレクトティーチングにより教示した動作を実行するようにロボット9を制御する。また第1制御部85は、ロボット9を退避エリアに移動させた際に、各部が折りたたまれた待機姿勢となるようにロボット9を制御する。
【0055】
第2制御部87は、コンベア59により搬送される自動車のボディBD、又は、ハンガーコンベア67により搬送されるワークW5に、ロボット9を追従させるようにスカラアーム7を制御する。また、第2制御部87は、ボディBD又はワークW5の移動にロボット9を追従させながら、ダイレクトティーチングにより教示した動作を実行するようにロボット9を制御する。
【0056】
第3制御部89は、ロボット9の各トルクセンサTs1~Ts6から入力された検出値に基づいて、ロボット9に例えば人や物との衝突による外力が作用したか否かを判定し、外力が作用したと判定した場合にはスカラアーム7及びロボット9を停止させる。
【0057】
第4制御部91は、レーザスキャナ17によりロボット9の作業エリアに人や物が侵入したと検出された場合に、スカラアーム7及びロボット9を停止させる。あるいは、第4制御部91は、レーザスキャナ17によりロボット9の作業エリアに人や物が侵入したと検出された場合に、上記第3制御部89による停止機能を有効にする。すなわち、ロボットシステム1の稼働モードを通常モードから人協働モードに変更する。
【0058】
第5制御部93は、ロボット9の先端に取り付けられたエンドエフェクタを作業者Mが手作業で移動させた際の動作(エンコーダ41により検出された各サーボモータ39の回転位置)を教示位置として記録する。すなわち、ダイレクトティーチングによる教示データを記録する。
【0059】
また、上位コントローラ33は、操作盤15から入力される操作信号に基づいて、スカラアーム7及びロボット9の動作を制御する。
【0060】
なお、上述した上位コントローラ33の第1制御部85、第2制御部87、第3制御部89、第4制御部91、第5制御部93等における処理等は、これらの処理の分担の例に限定されるものではなく、例えば、更に少ない数の処理部(例えば1つの処理部)で処理されてもよく、また、更に細分化された処理部により処理されてもよい。また、上位コントローラ33の上記の機能は、後述するCPU901(
図11参照)が実行するプログラムにより実装されてもよいし、その一部又は全部がASICやFPGA、その他の電気回路等の実際の装置により実装されてもよい。
【0061】
<5.実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態のロボットシステム1は、床面Fに固定された支柱5と、支柱5により支持され、ワーク(ワークW1~W5、自動車のボディBDを含む)よりも上方の位置において少なくとも水平方向に移動可能なスカラアーム7と、スカラアーム7に設置され、ワークに所定の作業を実行するロボット9と、を有する。
【0062】
本実施形態では、ロボット9はスカラアーム7に設置され、スカラアーム7は支柱5により支持される。スカラアーム7はワークよりも上方位置において少なくとも水平方向に移動可能に設けられるため、ロボット9はニーズに応じてフレキシブルに移動可能である。その上で、スカラアーム7は床面Fに固定された支柱5により支持されるので、例えば台車やAGVによりロボット9を移動可能な構成とする場合に比べて、ロボット9の位置決めの精度を確保できる。したがって、作業精度を向上できる。
【0063】
また、ロボット9をスカラアーム7の下方に吊り下げるように設置した天吊り型ロボットとすることで、ロボット9が作業エリアを専有することを回避できる。これにより、例えば作業エリアにおいて人の作業スペースはそのまま維持したままで、必要に応じてロボット9による自動化を図ることが可能となり、自動化のトライアンドエラーが容易となる。また、例えば多品種生産時にワークの種類によっては作業者Mによる人手の作業に対してフォローが必要となるような場合に、ロボット9によるフォローが容易となる。
【0064】
さらに、スカラアーム7を水平方向に移動可能とすることにより、ロボット9の可動範囲を拡大できる。これにより、例えばワークに取り付ける部品を部品置き場から取り出したり、例えば生産ラインにおける複数の工程間でワークを搬送する等、人の動作範囲と同等の広い可動範囲を確保することが可能となる。
【0065】
また、本実施形態では特に、スカラアーム7は、立位姿勢の作業者Mよりも上方の位置において移動可能に支持されている。これにより、作業者Mが移動するスカラアーム7に衝突したり挟まれたりするのを防止でき、安全性を向上できる。
【0066】
また、本実施形態では特に、スカラアーム7は、支柱5に対して鉛直方向に沿った回転軸SAx1,SAx2周りに旋回可能に連結された、複数のアーム部23,25を有するアーム機構である。これにより、水平方向に移動可能なベース部材をスカラ構造のアーム機構として構成できる。したがって、構造が単純で制御がしやすく、且つ、作業の高速化及び高精度化が可能なロボットシステム1を実現できる。
【0067】
また、本実施形態では特に、ロボットシステム1は、ロボット9が作業を行う場合には作業エリアに移動させ、ロボット9が作業を行わない場合には退避エリアに移動させるように、スカラアーム7を制御する第1制御部85を備えた上位コントローラ33を有する。これにより、ロボットシステム自体を移動させることなく、必要な時にはロボット9を作業エリアに移動させて作業を行わせ、使用しない時にはロボット9を邪魔にならない退避エリアに移動させて待機させることができる。したがって、利便性及び汎用性の高いロボットシステム1を実現できる。
【0068】
また、本実施形態では特に、ロボットシステム1は、ワーク(上記実施形態では自動車のボディBD又はワークW5)をロボット9の可動範囲を通過するように搬送するコンベア59又はハンガーコンベア67をさらに有する。これにより、コンベア59又はハンガーコンベア67により次々に搬送されるワークに対してロボット9が順次作業を実行することが可能な作業効率の良いロボットシステム1を実現できる。
【0069】
また、本実施形態では特に、上位コントローラ33は、コンベア59又はハンガーコンベア67により搬送されるワーク(上記実施形態では自動車のボディBD又はワークW5)の移動にロボット9を追従させるようにスカラアーム7を制御する第2制御部87を有する。これにより、移動中のワークを停止させることなくロボット9により作業を実行できるので、生産ラインのタクトタイムを短縮できる。また、ロボット9をワークに対してティーチング時と同じ相対位置及び姿勢となるように追従させることができるので、新たなティーチングを行うことなく連続的な作業を実行できる。
【0070】
また、本実施形態では特に、ロボットシステム1は、ロボット9に衝突による外力が作用したか否かを検出するトルクセンサTs1~Ts6をさらに有し、上位コントローラ33は、トルクセンサTs1~Ts6が外力を検出した場合にスカラアーム7及びロボット9を停止させる第3制御部89を有する。これにより、ロボット9が人や物に衝突した場合に直ちにスカラアーム7及びロボット9の動作を停止させることが可能となり、安全性を向上できる。したがって、作業者Mと共に稼働する人協働ロボットシステムを実現できる。
【0071】
また、本実施形態では特に、ロボットシステム1は、ロボット9の作業エリア内に人や物が侵入したか否かを検出するレーザスキャナ17をさらに有し、上位コントローラ33は、レーザスキャナ17により人や物が侵入したと検出された場合に、スカラアーム7及びロボット9を停止させる、又は、上位コントローラ33の第3制御部89による停止機能を有効にする、第4制御部91を有する。これにより、人や物が作業エリア内に侵入した場合に直ちにスカラアーム7及びロボット9を緊急停止させるか、又は、人協働モードを有効にすることが可能となり、安全性を向上できる。したがって、より安全な人協働ロボットシステムを実現できる。
【0072】
また、本実施形態では特に、上位コントローラ33は、ロボット9の先端に取り付けられたエンドエフェクタを作業者Mが手作業で移動させた際の動作を教示位置として記録する第5制御部93を有する。これにより、ロボット9に対するダイレクトティーチングが可能となり、例えばティーチングペンダント等の操作端末を使用したオンラインティーチングに不慣れな作業者Mでも、直感的な操作でティーチングを行うことができる。特に、ロボット9を天吊り型とすることにより作業エリアを開放できるので、作業者Mはロボット9の下方のスペースを活用してエンドエフェクタを容易に動作させることができ、ダイレクトティーチングの作業性を大幅に向上できる。
【0073】
また、本実施形態では特に、ロボットシステム1は、ロボット9の先端に取り付けられ、ワークW5に粉体塗料を吹き付ける塗装ガン73と、支柱5及びスカラアーム7に沿って配設され、塗装ガン73に粉体塗料を送るためのホース75と、をさらに有する。これにより、ロボット9を移動させることでワークW5に対し広範囲に粉体塗装を行うことを可能としつつ、塗装作業の精度を向上することができるロボットシステム1を実現できる。また、ホース75を支柱5及びスカラアーム7に沿って配設することにより、ホース75の絡みや人や物との接触等を防止できる。さらに、粉体塗装は作業の性質上要求される位置決め精度が高くないため、ダイレクトティーチングに向いた作業であり、このためダイレクトティーチングをし易いロボットシステム1に好適な用途である。
【0074】
<6.変形例>
なお、開示の実施形態は、上記に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例について説明する。
【0075】
(6-1.複数のコンベアを設置する場合)
上記実施形態では、ロボットシステム1が1つのコンベアを有する場合について説明したが、複数のコンベアを有する構成としてもよい。
図9に、複数のコンベアを有するロボットシステム1の構成の一例を示す。
図9に示すように、ロボットシステム1は、ワークW6をロボット9の可動範囲を通過するように搬送する2つのコンベア95,97を有する。コンベア95,97は、支柱5を前後方向に挟むように配置されている。
図9に示す例では、コンベア97に対応する作業エリアAr8,Ar9では作業者Mがハンドリング作業を実行している。また、コンベア95に対応する作業エリアAr6,Ar7のうち、作業エリアAr6では作業者Mがハンドリング作業を実行する一方で、作業エリアAr7では例えば欠員等により作業者Mが不在となっている。あるいは、作業エリアAr7を自動化する、又は作業エリアAr7でロボットによるフォローを行う等でもよい。そこで、スカラアーム7の駆動によりロボット9を作業エリアAr7に移動させ、ロボット9がワークW6に対するハンドリング作業を実行する。
【0076】
作業エリアAr7以外のエリア、例えば作業エリアAr6やコンベア97側の作業エリアAr8,Ar9のいずれかにおいてロボット9を稼働させる場合には、スカラアーム7の駆動によりロボット9を該当する作業エリアに移動させて、ハンドリング作業を実行させる。なお、このようなロボット9の作業エリアの切り替えを、操作盤15にて操作できるようにしてもよい。
【0077】
なお、
図9に示す例では、レーザスキャナ17は、例えば支柱5の前側と後側の両方に設置されており、コンベア95側とコンベア97側の両方の作業エリアを検出可能となっている。これに伴い、制御ボックス11は例えば支柱5の左側に隣接して配置されている。また、操作盤15は、コンベア95側とコンベア97側の両方の作業者Mが操作し易いように、例えば支柱5の右側に設置されている。
【0078】
本変形例によれば、ロボットシステム自体を移動させることなく、ロボット9を複数のコンベア95,97の各々に対応した複数の作業エリアAr6,Ar7,Ar8,Ar9で作業させることが可能なロボットシステム1を実現できる。
【0079】
(6-2.四方に作業エリアを配置する場合)
例えば、ロボット9の作業エリアを支柱5を囲むように四方に配置する構成としてもよい。
図10に、この場合のロボットシステム1の構成の一例を示す。
図10に示す例では、ロボットシステム1の前側、右側、後側、左側にそれぞれ2つずつ、作業テーブル99,100、作業テーブル101,102、作業テーブル103,104、作業テーブル105,106が配置されており、各作業テーブル99~106上にはワークW7がそれぞれ配置されている。
図10に示す例では、作業テーブル99,101~106に対応する作業エリアでは作業者Mがハンドリング作業を実行する一方で、作業テーブル100に対応する作業エリアAr10では例えば欠員等により作業者Mが不在となっている。あるいは、作業エリアAr10を自動化する、又は作業エリアAr10でロボットによるフォローを行う等でもよい。そこで、スカラアーム7の駆動によりロボット9を作業エリアAr10に移動させ、ロボット9がワークW7に対するハンドリング作業を実行する。
【0080】
作業エリアAr10以外の作業エリア、例えば作業テーブル99,101~106のいずれかに対応する作業エリアにおいてロボット9を稼働させる場合には、スカラアーム7の駆動によりロボット9を該当する作業エリアに移動させて、ハンドリング作業を実行させる。なお、このようなロボット9の作業エリアの切り替えを、操作盤15にて操作できるようにしてもよい。
【0081】
なお、
図10に示す例では、レーザスキャナ17は、例えば支柱5の前側、右側、後側、左側の四方に設置されており、各作業テーブル99~106に対応する各作業エリアを検出可能となっている。これに伴い、制御ボックス11は図示しない別の場所に配置されている。なお、本変形例では操作盤15を支柱5に対して1方向のみ(例えば支柱5の右側)設置しているが、操作盤15を支柱5に対して複数方向に設置してもよい。
【0082】
(6-3.その他)
上記実施形態では、ロボット9が各関節に有するトルクセンサTs1~Ts6により外力を検出するようにしたが、外力センサはこれに限定されるものではない。例えばトルクセンサの代わりに、ロボット9の各関節の少なくとも1つに力覚センサを設けてもよい。力覚センサは、例えば、X軸、Y軸、Z軸の各軸方向の力成分や、回転軸周りに作用するトルク成分を検出することにより、ロボット9が受ける外力を検出する。また例えば、ロボット9の表面等にひずみゲージを設けてもよい。これにより、各関節にトルクを検出する機能を有していないロボットに対しても本発明を適用できる。
【0083】
また以上では、スカラアーム7を2つのアーム部23,25を有する構成としたが、これに限定されるものではなく、例えば1つのアーム部を支柱5周りに旋回させる構成や、3つ以上のアーム部を有する水平多関節機構としてもよい。
【0084】
また以上では、ロボットシステム1のベース板3を床面Fにアンカーボルト13により固定した場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ベース板3の床面Fに対する固定を、着脱可能な簡易的な固定としておき、工場等の建屋内でロボットシステム1の設置個所を移設し易くしてもよい。また、床面F等の設置面は、必ずしも建屋に固定されてなくともよい。
【0085】
<7.上位コントローラのハードウェア構成例>
次に、
図11を参照しつつ、上位コントローラ33のハードウェア構成例について説明する。
【0086】
図11に示すように、上位コントローラ33は、例えば、CPU901と、ROM903と、RAM905と、ASIC又はFPGA等の特定の用途向けに構築された専用集積回路907と、入力装置913と、出力装置915と、記録装置917と、ドライブ919と、接続ポート921と、通信装置923とを有する。これらの構成は、バス909や入出力インターフェース911を介し相互に信号を伝達可能に接続されている。
【0087】
プログラムは、例えば、ROM903やRAM905、記録装置917等に記録しておくことができる。
【0088】
また、プログラムは、例えば、フレキシブルディスクなどの磁気ディスク、各種のCD・MOディスク・DVD等の光ディスク、半導体メモリ等のリムーバブルな記録媒体925に、一時的又は非一時的(永続的)に記録しておくこともできる。このような記録媒体925は、いわゆるパッケージソフトウエアとして提供することもできる。この場合、これらの記録媒体925に記録されたプログラムは、ドライブ919により読み出されて、入出力インターフェース911やバス909等を介し上記記録装置917に記録されてもよい。
【0089】
また、プログラムは、例えば、ダウンロードサイト・他のコンピュータ・他の記録装置等(図示せず)に記録しておくこともできる。この場合、プログラムは、LANやインターネット等のネットワークNWを介し転送され、通信装置923がこのプログラムを受信する。そして、通信装置923が受信したプログラムは、入出力インターフェース911やバス909等を介し上記記録装置917に記録されてもよい。
【0090】
また、プログラムは、例えば、適宜の外部接続機器927に記録しておくこともできる。この場合、プログラムは、適宜の接続ポート921を介し転送され、入出力インターフェース911やバス909等を介し上記記録装置917に記録されてもよい。
【0091】
そして、CPU901が、上記記録装置917に記録されたプログラムに従い各種の処理(ロボットの作業方法)を実行することにより、上記の第1制御部85、第2制御部87、第3制御部89、第4制御部91、第5制御部93等による処理が実現される。この際、CPU901は、例えば、上記記録装置917からプログラムを直接読み出して実行してもよいし、RAM905に一旦ロードした上で実行してもよい。更にCPU901は、例えば、プログラムを通信装置923やドライブ919、接続ポート921を介し受信する場合、受信したプログラムを記録装置917に記録せずに直接実行してもよい。
【0092】
また、CPU901は、必要に応じて、例えばマウス・キーボード・マイク(図示せず)等の入力装置913から入力する信号や情報に基づいて各種の処理を行ってもよい。
【0093】
そして、CPU901は、上記の処理を実行した結果を、例えば表示装置や音声出力装置等の出力装置915から出力してもよく、さらにCPU901は、必要に応じてこの処理結果を通信装置923や接続ポート921を介し送信してもよく、上記記録装置917や記録媒体925に記録させてもよい。
【0094】
なお、以上の説明において、「垂直」「平行」「平面」等の記載がある場合には、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「垂直」「平行」「平面」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に垂直」「実質的に平行」「実質的に平面」という意味である。
【0095】
また、以上の説明において、外観上の寸法や大きさ、形状、位置等が「同一」「同じ」「等しい」「異なる」等の記載がある場合は、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「同一」「同じ」「等しい」「異なる」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に同一」「実質的に同じ」「実質的に等しい」「実質的に異なる」という意味である。
【0096】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。その他、一々例示はしないが、上記実施形態や各変形例は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0097】
1 ロボットシステム
5 支柱(支持部材)
7 スカラアーム(ベース部材)
9 ロボット
17 レーザスキャナ(侵入センサ)
23 第1アーム部
25 第2アーム部
27 ハンド(エンドエフェクタ)
59 コンベア
67 ハンガーコンベア
73 塗装ガン(エンドエフェクタ)
75 ホース
85 第1制御部
87 第2制御部
89 第3制御部
91 第4制御部
93 第5制御部
95 コンベア
97 コンベア
Ar1~2 作業エリア
Ar3 退避エリア
Ar4~10 作業エリア
BD 自動車のボディ(ワーク)
F 床面(設置面)
SAx1 回転軸
SAx2 回転軸
Ts1~6 トルクセンサ(外力センサ)
W1~W7 ワーク