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  • -故障予知機能を備えた複合加工機械 図1
  • -故障予知機能を備えた複合加工機械 図2
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  • -故障予知機能を備えた複合加工機械 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】故障予知機能を備えた複合加工機械
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20220711BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20220711BHJP
   B23Q 17/12 20060101ALI20220711BHJP
   G01M 13/04 20190101ALI20220711BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
B23Q17/00 A
B23Q17/12
G01M13/04
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017112919
(22)【出願日】2017-06-07
(65)【公開番号】P2018205213
(43)【公開日】2018-12-27
【審査請求日】2020-03-30
【審判番号】
【審判請求日】2021-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000212566
【氏名又は名称】中村留精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】中西 賢一
【合議体】
【審判長】三崎 仁
【審判官】▲高▼見 重雄
【審判官】樋口 宗彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-223906(JP,A)
【文献】特開2017-32520(JP,A)
【文献】特開2002-174550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M13/00-13/04,99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを加工する複合工作機械であって、
故障を予知する回転機溝部の振動部位に取り付けたセンサーと、
前記センサーから得られたセンサー情報を周波数解析するFFT解析手段と、ワークの加工が開始されたことを検知する検知手段とを有し、
ワークが加工されていない非加工時であって、かつ定速状態で前記センサーから得られたセンサー情報に基づいて前記FFT解析により周波数解析して得られた所定の故障モードが含まれる周波数帯域の振幅スペクトルと、前記所定の故障モードが含まれる周波数帯域の回転走行距離と前記周波数帯域の平均振幅スペクトルの関係が学習された学習モデルにより得られる前記故障を予知するための回転機構部の現在の回転走行距離における前記周波数帯域の平均振幅スペクトルとを比較する比較手段とを有することを特徴とする故障予知機能を備えた複合工作機械。
【請求項2】
前記振幅スペクトルは、パワースペクトル密度の振幅スペクトルであることを特徴とする請求項1記載の故障予知機能を備えた複合工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械学習からなる故障予知機能を備えた複合工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでも軸受けや摺動部材の異常を判定,診断する方法としては、例えば特許文献1に相対回転に伴う振動を検出し、電気信号に変換した後にエンベロープ処理やフィルター処理等を組み合せ、所定の閾値と比較する方法を開示する。
例えば特許文献2には、エンベロープ信号の周波数スペクトルを低周波数域での基準レベル以上のピークを持つ、周波数成分の有無に基づく異常診断方法を開示する。
しかし、これら従来の異常判定方法,異常診断方法は、一時的な信号データに基づくものであり、外乱の影響を受けやすく、判定の信頼性に不安が残る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5067121号公報
【文献】特許第3846560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、故障の予知のロバスト性に優れ、故障する前に点検や部品交換による対応を可能にした複合工作機械の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る故障予知機能を備えた複合工作機械は、故障を予知する部位に取り付けたセンサーと、前記センサーから得られたセンサー情報を周波数分析するFFT(高速フーリエ変換)解析手段と、非加工及び定速状態における前記FFT解析にて得られた振幅スペクトルを取り込む機械学習手段と、前記機械学習手段に取り込まれFFT解析により得られた振幅スペクトルと故障なしの振幅スペクトルを比較することを特徴とする。
ここで複合工作機械とは、NC旋盤の機能とマニシングセンターの持つ機能等を組み合せたもののみならず、各種工作機及びそれらを組み合せたものを含む。
また、センサー情報には、振動,音,加速度,負荷変動等の各種情報が含まれる。
【0006】
例えば、センサー情報は加速度情報であり、前記振幅スペクトルはパワースペクトル密度(PSD)の振幅スペクトルである等が例として挙げられる。
【0007】
また、例えば、故障を予知する部位は軸受、ボールネジ等の回転機構部等が例として挙げられる。
【発明の効果】
【0008】
本発明においては、故障を予知する判断基準に、それまでの複合工作機械の所定の部位又は部品のセンサー情報を機械学習手段に取り込んだので、故障の予知の信頼性が高い。
複数の部位にそれぞれセンサーを取り付け、その振幅スペクトル情報を用いることで、どの周波数のスペクトルに異常が発生するかを識別することで、複合工作機械のどの部品を点検すべきか知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る故障予知のフローを軸受けに適用した例を示す。
図2】周波数に対する振幅スペクトルのチャート例を模式的に示す。
図3】故障予知の学習・評価サイクルを示す。
図4】ベアリング各部品の周波数計算方法を示す。
図5】ボールネジ各部品の周波数計算方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る故障予知のフローを軸受(ベアリング)を対象にした例で、以下説明する。
本発明の適用の対象となる複合工作機械の部位は、ワークをチャック保持し、回転制御される主軸の軸受け、タレットやスピンドル等にツールを回転保持する部品の軸受け、テーブル等をスライド制御するボールネジ等、各種部位に適用できる。
【0011】
例えば、主軸台,対向旋盤にあっては、L及びR側の各主軸台に加速度ピックアップセンサーを取り付ける。
例えば、50Hz~2kHzの間を例えば0.2msec毎にデータを計測し、取り込むことができるようにする。
加速度ピックアップの仕様としては、例えば下記のものを使用する。
感度:1.0mV(m/s),A/D分解能:16bit以上
プリアンプ内蔵型,最大使用加速度:200m/s以上
【0012】
図1にフロー図を示す。
主軸回転指令を出し、加工しない非加工状態で定速回転になった後に、周期0.2msec毎にデータを収集する。
主軸ロードの変化により、加工の開始等を検知するとデータ収集を終了し、0.1s分のデータを削除し、FFT解析する。
主軸ロードの変化が20%未満であれば、さらにデータを収集する。
【0013】
例えば、ベアリング各部品の周波数は、図4に示すような計算式で求まることが分かっているから、これらの周波数帯が含まれるようにFFT解析し、またボールネジ各部品の周波数は図5に示した計算式で求まる。
上記計算式で求められる各モードの周波数に基づいて、周波数分析を行うことになる。
例えば、図1のフローに示すように、各4096データの離散的な収集データに基づいて、離散フーリエ変換を行う。
上記各周波数の±10Hz区間の振幅値を抽出し、最小二乗法を用いた機械学習部に入力して学習し、その学習モデルから各周波数のRMS値を演算する。
機械学習で得られたRMS値とピーク値を比較することになるが、例えば閾値を10倍に設定したのが図1に示すフローである。
このような周波数に対する振動加速度チャートの(振動スペクトル)イメージ図を図2に示す。
機械学習手段にデータを取り込み、学習した学習モデルにより振動スペクトルのピーク値の推移を予測し、どの部位に故障する恐れが生じるかを予知することができる。
故障が予知されれば、警告信号を画面に表示、又は音声等で警告することができる。
例えば、ベアリング部品の故障予知の学習・評価サイクルを図3に示す。
このような学習・評価サイクルは、ボールねじ等の各種部品に適用できる。
図1
図2
図3
図4
図5