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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】編み物の糸端処理装置
(51)【国際特許分類】
   D04B 35/00 20060101AFI20220711BHJP
   D04B 9/46 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
D04B35/00
D04B9/46
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018076670
(22)【出願日】2018-04-12
(65)【公開番号】P2019183329
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】518128964
【氏名又は名称】株式会社ウェル
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100112575
【弁理士】
【氏名又は名称】田川 孝由
(72)【発明者】
【氏名】青川 実
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-014051(JP,A)
【文献】特開平05-337271(JP,A)
【文献】特開2008-115494(JP,A)
【文献】特公昭48-024422(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0141728(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04B 35/00
D04B 9/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
色違いの糸(a、b)で編んだ編み物(P)における編み物本体から飛び出た糸端処理装置であって、
編み物(P)を載せる空洞の作業台(6)と、その作業台(6)の表面に形成された空気通過孔(7)と、この空気通過孔(7)に向かって空気を噴射する空気ノズル(12)と、を有し、前記作業台(6)と空気ノズル(12)は水平面において相対的に移動自在となっており、
上記作業台(6)に編み物(P)から飛び出た糸端(c)を表になるように載置し、前記作業台(6)と空気ノズル(12)を水平面において相対的に移動させながら、空気ノズル(12)からの噴射空気(f)を、作業台(6)の外壁を通過させてその空洞に送り込むことによって前記飛び出た糸端(c)を編み目を介して編み物裏面に押し込む編み物の糸端処理装置。
【請求項2】
上記空気ノズル(12)には、この空気ノズル(12)からの噴射空気(f)が当たる編み物部分を点照射する光発射器(13)を付設し、その点照射の位置に上記飛び出た糸端(c)を位置させて、前記噴射空気(f)が前記飛び出た糸端(c)に当たるようにした請求項1に記載の編み物の糸端処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、靴下、セーター等の編み物の飛び出し糸端の処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、図6に示すように、靴下Pを、異なる色の糸a、bでデザイン編みすると、その異なる色の糸a、bのつなぎ目に前の糸a、bの端cが飛び出す。その糸端cは、編み方によって、靴下表面に出たり、同裏面に出たりする。
靴下表面に飛び出した糸端cは見栄えが悪いため、その処理方法が種々考案されている。その一手段として、表面に飛び出た糸端cを引っ掛け棒でそれぞれ裏面に押し込むものがある。この手段は人手によっている。
また、裏面に飛び出た糸端cは、靴下Pを履いた時、足に絡む等から、除去してくれと言う要望がある。その裏面に飛び出た糸端c(上記引っ掛け棒でそれぞれ裏面に押し込んだ糸端cも含む)は、従来、人手によって切除していた。
このような状況下、糸端cを編成部に押し付けて編み目内に押し込む技術が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5954911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記人手による糸端処理手段は、作業性が悪く、コスト的に問題となっている。また、糸端cを編成部に押し付けて編み目内に押し込む手段は、円滑さに欠ける問題がある。
【0005】
この発明は、以上の実状の下、人手によっても、糸端を円滑に処理し得るようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するため、この発明は、編み物表面に糸端が飛び出たものにあっては、空気ノズルから噴射空気を飛び出した糸端に当ててその糸端を編み目を介して編み物裏面に押し込むようにしたのである。
具体的には、色違いの糸で編んだ編み物における編み物本体から飛び出た糸端処理装置であって、編み物を載せる空洞の作業台と、その作業台の表面に形成された空気通過孔と、空気孔に向かって空気を噴射する空気ノズルと、を有し、前記作業台と空気ノズルは水平面において相対的に移動自在となっており、作業台に編み物から飛び出た糸端が表になるように嵌め込み、前記作業台と空気ノズルを水平面において相対的に移動させながら、空気ノズルからの噴射空気を、作業台の外壁を通過させてその空洞に送り込むことによって前記飛び出た糸端を編み目を介して編み物裏面に押し込む構成を採用したのである。
この構成において、編み物を作業台上で広げれば、編み目は拡がり、その拡がった編み目から、糸端は裏面に容易に入り込む。
作業台の空洞は周りが閉塞していなくても、一部が開放する等、例えば、半割筒等でも良い。要は、外壁(ケーシング)の全周が閉じていなくてもその一部が開放していて、噴射空気が外壁を通ってその中(空洞)に至れば良い。
【0007】
上記空気ノズルに、この空気ノズルからの噴射空気が当たる編み物部分を点照射する光発射器を付設し、その照射点に飛び出した糸端を位置させれば、噴射空気は飛び出し糸端に必ず当たって裏面にその飛び出し糸端が移行する(押し出される)。
【0008】
また、上記課題を達成するため、この発明は、編み物裏面に糸端が飛び出し、その糸端を切断するものにあっては、人力によらずに機械的にその切断を行うようにしたのである。
具体的には、色違いの糸で編んだ編み物における編み物本体から飛び出た糸端処理装置であって、編み物を筒状としてその長さ方向に嵌め込む回転筒体と、この回転筒体の表面に臨む糸端切断刃と、からなり、前記回転筒体に編み物を飛び出た糸端が表になるように嵌め込み、前記回転筒体を回転させながら、回転筒体と切断刃を回転筒体の長さ方向に相対的に移動させて、前記飛び出た糸端を切断刃によって切除する構成を採用したのである。
この構成において、上記切断刃に切除された糸端の吸引器を付設すれば、切断した糸端(糸くず)の処理を円滑に行うことができる。
また、上記切断刃に飛び出た糸端を立ち上げる空気を噴射する空気ノズルを付設すれば、糸端が立ち上がるため、その切断が容易になって円滑となる。
【発明の効果】
【0009】
この発明は、以上のように構成して、飛び出した糸端を編み物の裏面に押し込んだり、切除したりするようにしたので、糸端の処理を従来の人手による場合に比べれば、その作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】この発明に係る飛び出し糸端の処理装置の一実施形態の概略斜視図
図2】同実施形態の作用説明図
図3】この発明に係る飛び出し糸端の処理装置の他の実施形態の概略斜視図
図4】同実施形態の左側面概略図
図5】同実施形態の作用説明図
図6】靴下の平面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明に係る、図6に示す色違いの糸a、bで編んだ靴下Pの表面に糸端cが飛び出した物において、その糸端cを裏面に押し込む処理装置Aを図1図2に示す。
この処理装置Aは、作業テーブル1に対の板2a、2bからなるXY軸テーブル2に設けられている。作業テーブル1は地盤上に固定であって元台となり、適宜に脚を設けて作業しやすい高さにする。作業テーブル1の上にX軸方向のレール3a、XY軸テーブル2の下側の板2aにY軸方向のレール3bがそれぞれ設けられている。このX軸方向のレール3aを介してXY軸テーブル2の下側の板2aが作業テーブル1に対してX軸方向に移動可能となり、Y軸方向のレール3bを介して同上側の板2bが同下側の板2aに対してY軸方向に移動可能となっている。このため、上側の板2bは作業テーブル1(元台)に対し先後左右(XY軸方向)に移動可能である。
【0012】
XY軸テーブル2の上側の板2bには、基台5が固定され、その基台5から横方向に筒体6が突出し、この筒体6が空洞を有する請求の範囲で言う「作業台」となる。その筒体6の上面はルーバー(空気通過孔)7が設けられて、空気が自由に通過可能となっている。ルーバー7の羽根7aは図2に示すように、筒体6の底面まで至っており、下記空気ノズル12からこのルーバー7に入り込んだ空気fは、図1鎖線矢印で示すように筒体6の筒軸方向に流れてその後端開口から排出される。
筒体6の両側面には当て部材8が設けられている。この当て部材8の大きさ・形状を適宜に設定することによって靴下Pの拡径度合いを調整して飛び出し糸端cが円滑に通り得る大きさの編み目となるようにする。
【0013】
作業テーブル1側面には、その角部(図1において左上端)に固定の支持脚11を介して空気ノズル12及びレーザ光発射器13が位置されている。このレーザ光照射器13から筒体6に向かって線状のレーザ光eが照射される。その筒体6上の照射点e’は前記空気ノズル12からの噴射空気fの筒体6上への到達点となる。前記支持脚11は、XY軸テーブル2(板2a、2b)の移動範囲外に位置させることは勿論であり、脚によって地盤上に固定することもできる。
図中、14は圧縮空気fの送気ホース、15は圧縮空気fの噴出を制御する手動開閉弁である。この手動開閉弁15は、足で踏むことによって開閉する足踏み式開閉弁とすることができる。
【0014】
この処理装置Aは以上の構成であり、つぎにその作用について説明する。
図6に示す、表面に糸端cが飛び出た靴下Pを少し広げて(筒径を大きくして)、図1鎖線に示すように筒体6に嵌める。このとき、図2に示すように、各糸端cをルーバー7の上に位置させるとともに、編み目が開いた状態とする。
【0015】
この状態において、空気ノズル12に圧縮空気fを送り込むと、その噴射空気fはレーザ光発射器13が照らす点(照射点)e’に吹き付けられる。このため、作業テーブル1を左右前後に動かしてその照射点e’に糸端cの根元近くを位置させると、図2の実線から鎖線に示すように、噴射空気fによって糸端cは拡がった編み目を通って裏面に至る。このとき、ルーバー7の羽根7aが筒体6の底面まで至って糸端cの振れを少なくするため、糸端cの裏面への移行は円滑である。
また、空気ノズル12及びレーザ光発射器13が作業テーブル1の手前角に位置しているため、その近く(例えば、鎖線靴下Pの位置)の作業者は筒体6(靴下P、作業テーブル1)を左右前後に動かし易く、作業性の良いものとなっている。
さらに、手動開閉弁15が足踏み式開閉弁であれば、照射点e’が糸端cの根元近くに位置すれば(位置決めされれば)、足踏み式開閉弁15を開放して糸端e’を靴下裏面に移行させることができる。すなわち、照射点e’に糸端cが位置決めした時点毎に圧縮空気fを吹き付けることができる。
この作業を、筒体6(板2b)を前後左右に動かしながら図6に示す全ての糸端cについて行う。
【0016】
以上の作業によって、靴下Pの表面に飛び出た糸端cの処理は終わるが、裏面に糸端cが長く飛び出ることは、履く人が好まなかったり、商品価値を低下したりする恐れがある。
このため、図3図5に示す、飛び出し糸端cの切断処理装置Bでもってその糸端cを切断する。
【0017】
この切断処理装置Bは、同図に示すように、図示しない機枠上に片持ち軸受32を介して円筒状回転筒体33が設けられ、この筒体33は図示しないモータによりベルト34、プーリ35を介して水平状態で回転自在となっている。この筒体33の途中に周方向の切欠き(溝)36が形成されている。
機枠には、スライダ38がガイド棒39を介して回転筒体33の筒軸方向に移動可能に設けられ、このスライダ38は、図示しないモータによって走行するベルト40とともに移動する。
【0018】
スライダ38の一端にはアーム41が回転筒体33に向かって斜め上方に設けられ、このアーム41に電動バリカン式の切断刃42が設けてある。この切断刃42は、固定刃と移動刃を重ねて電動モータによって移動刃を左右に動かして両刃内に至った物を切断する周知の物である。切断刃42には被うように吸気ボックス(吸引器)43が設けてある。アーム41は図示しないエアーシリンダ、パルスモータ、ねじジャッキ等によって起伏するようになっている。これらによらずに、手動で起伏させても良い。
【0019】
スライダ38の他端には支持脚44を介して圧縮空気fの噴射ノズル(空気ノズル)45が設けてある。この噴射ノズル45は回転筒体33の外周面の少し上に圧縮空気fを噴出する。図中、46は吸気ホース、47は送気ホースであって、そのホース46、47が接続された吸気ボックス43の吸気と噴射ノズル45の噴射は一の吸排気機械によって行っても別々の機器によって行ってもよい。吸気ボックス43からその機器への間にはバグフィルタ等の集塵機を介設する。
【0020】
アーム41の途中には突片48が設けられ、その突片48にボルト49が下方に向かってねじ通されている。このボルト49のねじ込み度合いによってその先端のスライダ38との当接長さ(アーム41の角度θ)が調節されて切断刃42の切断位置が調節される。この調節によって、飛び出し糸端cの切断長さを調節し得る。
【0021】
この処理装置Bは以上の構成であり、つぎにその作用について説明する。
裏面に飛び出し糸端cを有する靴下Pを糸端cが表になるように、図3鎖線で示すように、回転筒体33に筒状に嵌める。このとき、踵部は切欠き36に押し込んで嵌め込んだ靴下外周面に突部が無いようにする。
吸気ボックス43の吸気を行うと共に、噴射ノズル45から圧縮空気fを吹き出した状態、又はその前に、図3図4の状態から図5に示すように、アーム41を倒して切断刃42を回転筒体33(靴下P)に近接する。このとき、ボルト49のねじ込み度合を調整して切断刃42と靴下Pとを所要の距離(間隔)として飛び出し糸端cの切断長さが所要となるようにする。
【0022】
この近接状態において、回転筒体33が回転すると共に、切断刃42(アーム41)が筒軸方向に移動すると、靴下Pから飛び出た糸端cは切断刃42に接して所要の長さに切断される。この切断は、靴下Pの全周及び全長に亘って行われる。このため、飛び出た全ての糸端cは気にならない程度の長さ(例えば数ミリ)に切断される。このとき、噴射ノズル45から圧縮空気fが吹き出て、飛び出し糸端cを立ち上げるため、その糸端cは切断刃42に容易に捕捉されて切断される。
切断された糸端cは、吸気ボックス43内に吸い込まれる。
【0023】
上記処理装置Aにおいては、空気ノズル12に対して筒体6が左右前後(XY軸方向)に移動したが、筒体6に対して空気ノズル12を前後左右に移動するようにすることができる。すなわち、空気ノズル12と筒体6は水平面において相対的に移動可能であれば良い。
【0024】
また、上記処理装置Bにおいても、同様に、切断刃42を回転筒体33の長さ方向の一箇所に固定し、回転筒体33をその長さ方向に移動させるようにすることもできる。すなわち、回転筒体33と切断刃42は回転筒体33の長さ方向に相対的に移動可能であれば良い。
【0025】
なお、上記靴下Pには、足袋靴下(ソックス)や5本指靴下などの種々の態様のものを採用できることは言うまでもない。
また、この発明は、靴下P以外に、手袋、セーター、マフラー、ネクタイ、レッグウォマー、スパッツ、レギンス等の種々の編み物に採用し得ることは勿論である。このとき、その各態様の編み物に対して、処理装置Aの筒体6や当て部材8、処理装置Bの筒体33等はその態様に対応した形状にする。例えば、当て部材8は、大きさや形状の異なる編み物に応じた形状・大きさとする。異なる当て部材8の交換は、嵌め込みやねじ止め等を採用する。
このように、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。したがって、この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0026】
A 飛び出し糸端の押し込み処理装置
B 飛び出し糸端の切断処理装置
P 編み物(靴下)
a、b 編み糸
c 飛び出し糸端
e レーザ光
e’ 照射点
f 圧縮空気(噴射空気)
1 作業テーブル
2 XY軸テーブル
2a XY軸テーブルの下側板
2b 同上側板
3a X軸方向レール
3b Y軸方向レール
6 筒体(作業台)
7 ルーバー(空気通過孔)
12 空気ノズル
13 レーザ光照射器
15 手動開閉弁(足踏み式開閉弁)
33 回転筒体
42 切断刃
43 吸気ボックス
45 空気ノズル
図1
図2
図3
図4
図5
図6