(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】洗浄機能付き摩砕機
(51)【国際特許分類】
B02C 23/00 20060101AFI20220711BHJP
B02C 7/11 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
B02C23/00 A
B02C7/11 Z
(21)【出願番号】P 2018166291
(22)【出願日】2018-09-05
【審査請求日】2021-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000202534
【氏名又は名称】増幸産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【氏名又は名称】上村 欣浩
(72)【発明者】
【氏名】増田 幸也
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】実公昭62-031135(JP,Y2)
【文献】米国特許出願公開第2016/0271837(US,A1)
【文献】実開昭53-047887(JP,U)
【文献】国際公開第2007/030062(WO,A1)
【文献】特表2013-538680(JP,A)
【文献】特開2003-299970(JP,A)
【文献】特開昭63-310652(JP,A)
【文献】特開平01-258752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 1/00-25/00
B24D 3/00-99/00
C08J 3/00-3/28;99/00
B02B 1/00-7/02
B08B 3/00-3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に設けられたリング状の下部砥石と、該下部砥石に対向するリング状の上部砥石と、下部ケース、及び該下部ケースに対して開閉可能に設けられる上部ケースによって構成され、該下部砥石と該上部砥石を内側に収める筐体と、を備える摩砕機において、
前記筐体内に配置され、先端部に設けた噴出口から前記下部砥石の周辺に向けて洗浄液を噴出させる噴出ヘッドを備え、
前記噴出ヘッドは、該噴出ヘッドの上面部に上面側開口を有する洗浄機能付き摩砕機。
【請求項2】
前記噴出ヘッドは、該噴出ヘッドの下面部に下面側開口を有する請求項1に記載の洗浄機能付き摩砕機。
【請求項3】
前記下面側開口を、前記上面側開口の開口面積よりも小さくしてなる請求項2に記載の洗浄機能付き摩砕機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、化学、医薬品及び燃料等の分野で利用可能な超微粒子を製造する摩砕機に関するものであって、特に、摩砕機内部の洗浄を行うことができる洗浄機能付き摩砕機に関する。
【背景技術】
【0002】
材料を粉砕して超微粒子を製造することが可能な摩砕機においては、石臼の原理を応用した上下2枚の砥石を備えるものが既知である。例えば特許文献1には、本件出願人によるものとして、装置本体に対して回転可能に設けられたリング状の下部砥石と、蓋体に固定されるとともに下部砥石に対して対向するリング状の上部砥石とを備える摩砕機が示されている。このような摩砕機では、下部砥石と上部砥石の間に材料を送り込みつつ下部砥石を回転させ、砥石間で生ずる圧縮・剪断・摩擦等の複合作用によって材料をすり潰して超微細粒子に粉砕している。
【0003】
ところで、材料の粉砕を衛生的に行い、また材料交換時のコンタミネーションを防止するには、摩砕機内部の洗浄が欠かせない。ここで従来の摩砕機においては、特許文献2の第2図に示されているように、例えば上部に設けた開口からホースを挿入し、ホースから洗浄液を噴出させて洗浄が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許3558687号公報
【文献】実公昭62-31135号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述したような人手による洗浄方法では、作業に手間がかかるうえ、作業者によって洗浄具合がばらつくおそれもある。ここで、他の分野の装置(例えば飲料容器に内容物を充填する装置)においては、装置内を自動で洗浄するCIP(Cleaning In Place)洗浄の技術が導入されているが、摩砕機の分野においては未だ一般的ではない。また下部砥石と上部砥石を対向させた摩砕機において、これらの砥石によって粉砕された材料は砥石の径方向内側から外側に向けて排出されるため、特に、下部砥石の周辺が粉砕した材料によって汚れやすくなっている。このため、摩砕機の内部を自動で洗浄することができる機能を設けるにあたっては、特に下部砥石周辺の洗浄に優れることが好ましい。一方、洗浄機能を設けるにあたっては、粉砕された材料が、新たに追加する洗浄機能を有する部位に付着してこの部位が汚れてしまうことも想定されるため、この点について配慮することも必要である。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、特に下部砥石周辺の洗浄に優れる洗浄機能を備えるとともに、この洗浄機能を有する部位が汚れにくい洗浄機能付き摩砕機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、回転可能に設けられたリング状の下部砥石と、該下部砥石に対向するリング状の上部砥石と、下部ケース、及び該下部ケースに対して開閉可能に設けられる上部ケースによって構成され、該下部砥石と該上部砥石を内側に収める筐体と、を備える摩砕機において、前記筐体内に配置され、先端部に設けた噴出口から前記下部砥石の周辺に向けて洗浄液を噴出させる噴出ヘッドを備え、前記噴出ヘッドは、該噴出ヘッドの上面部に上面側開口を有する洗浄機能付き摩砕機である。
【0008】
また前記噴出ヘッドは、該噴出ヘッドの下面部に下面側開口を有することが好ましい。
【0009】
そして前記下面側開口を、前記上面側開口の開口面積よりも小さくすることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の洗浄機能付き摩砕機は、筐体内に配置され、先端部に設けた噴出口から下部砥石の周辺に向けて洗浄液を噴出させる噴出ヘッドを備えている。このため、粉砕した材料によって特に汚れやすい下部砥石周辺を洗浄することができる。ここで噴出ヘッドは、下部砥石の周辺に向けて洗浄液を噴出させるべく、筐体の下方寄りに設けられているため、下部砥石と上部砥石によって粉砕された材料は、噴出ヘッドの上面部に向かって流れてこの上面部に付着することがある。一方、本発明の噴出ヘッドは、この上面部に上面側開口を備えていて、粉砕された材料がこの上面部に流れてきても、上面側開口から噴出ヘッドの内側に入ることになるため、粉砕された材料は噴出ヘッドの上面部に溜まりにくくなる。また、噴出ヘッドの内部に入った材料は、洗浄時において洗浄液とともに噴出口から噴出するため、噴出ヘッドの内側に汚れが残ることもない。また洗浄を行う際、洗浄液は、上面側開口からも噴出するため、上面側開口の周辺はもとより、上部砥石の周辺や筐体の上部にかけても汚れを取り除くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に従う洗浄機能付き摩砕機の一実施形態を示した断面図である。
【
図2】
図1の摩砕機で用いた噴出ヘッドについて示した図であって、(a)は上方からの斜視図であり、(b)は下方からの斜視図であり、(c)は側面視での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、
図1を参照しながら本発明に従う洗浄機能付き摩砕機(以下、「摩砕機」と称する)の一実施形態について説明する。
【0013】
図1において、符号1は本実施形態の摩砕機を示している。摩砕機1の下部には、主モータ2が設けられている。主モータ2は、主軸3が上方へ指向する向きで取り付けられている。主軸3は、円筒状をなす接続部材4の下部に連結している。また接続部材4の上方には、接続部材4に対して同心になる位置において、接続部材4とスプライン結合するスプラインシャフト5が設けられている。更にスプラインシャフト5の上方には円板状の回転盤6が設けられていて、回転盤6の下面には、板状の部材を周方向に間隔をあけて配置された羽根部6aが設けられている。そして回転盤6の上面には、リング状の下部砥石7が取り付けられている。
【0014】
更に摩砕機1は、横向きに設けたトルク制限機能付きのサーボモータ8と、サーボモータ8の出力軸に設けた出力歯車9と、接続部材4の外周側に設けられ、出力歯車9によって回転するリング状のかさ歯車10を備えている。またかさ歯車10には、上方へ向けて起立させた連結ピン11が設けられていて、連結ピン11は、接続部材4の外周側に設けられる円筒状の支持部材12と連結している。そして支持部材12の上部内側には、スプラインシャフト5を回転可能に支持する軸受け13が設けられている。また支持部材12の外周側には、円筒状をなす固定部材14が設けられている。なお、図示は省略するが、支持部材12の外周面には雄ねじ部が設けられていて、固定部材14の内周面には、この雄ねじ部に螺合する雌ねじ部が設けられている。また固定部材14には、回転盤6及び下部砥石7の下方に位置するとともに回転盤6及び下部砥石7よりも大径になる下部ケース15が固定保持されている。本実施形態の下部ケース15は、下部砥石7によって粉砕された材料を摩砕機1から排出するための樋部16を備えている。
【0015】
そして下部砥石7の上方には、下部砥石7に対向するように設けられるリング状の上部砥石17が設けられている。本実施形態の上部砥石17は、中央部に開口18を有する固定盤19の下面に取り付けられている。図示は省略するが、開口18にはホッパー等を取り付けることが可能であって、開口18を通して粉砕する材料を摩砕機1に供給することができる。また固定盤19は、上部砥石17よりも大径であって、下部ケース15に対して揺動可能に取り付けられる上部ケース20を備えている。上部ケース20は、下部ケース15に向けて揺動させると、回転盤6、下部砥石7、及び上部砥石17を内側に収めて下部ケース15と隙間なく合わさる一方、下部ケース15から離れる向きに揺動させれば上部砥石17も一緒に移動するため、下部砥石7に対して上部砥石17を大きく開くことができる。ここで、下部ケース15と上部ケース20とをまとめて筐体21と称する。
【0016】
本実施形態の下部砥石7と上部砥石17は、その外周部において、材料を粉砕するための平坦面を有している。また中央部には、その平坦面に連続するように設けられる中くぼみ状の円錐台形部が設けられている。ここで、下部砥石7における平坦面を摩砕上面22と称し、上部砥石17における平坦面を摩砕下面23と称する。
【0017】
また摩砕機1は、特に下部砥石7の周辺を洗浄することができる噴出ヘッド24を備えている。本実施形態の噴出ヘッド24は、下部ケース15に取り付けられている。
図2に示すように噴出ヘッド24は、概略、先端部が封止された円筒状をなすように形作られている。また噴出ヘッド24の後端部には、洗浄液を送給するためのパイプ25が設けられている。また噴出ヘッド24の先端部には、図示の例では円形になる噴出口26が4つ設けられている。なお、噴出口26の形状及び数は一例であって、図示したものに限られない。また噴出ヘッド24の上面部には、平面視において矩形状をなす上面側開口27が設けられている。そして噴出ヘッド24の下面部にも、底面視において矩形状をなす下面側開口28が設けられている。ここで、本実施形態の下面側開口28は、上面側開口27の直下に位置していて、上面側開口27よりも小さな開口面積で設けられている。
【0018】
このような構成になる摩砕機1は、主モータ2を駆動させると、主軸3、接続部材4、スプラインシャフト5、及び回転盤6が回転し、それに伴って下部砥石7を回転させることができる。またサーボモータ8を駆動させると、出力歯車9によってかさ歯車10が回転し、これにより連結ピン11を介して支持部材12も回転する。ここで、支持部材12は固定部材14に螺合しているため、支持部材12は回転しながら固定部材14に対して上下方向に移動し、軸受け13を介して支持部材12に支持されるスプラインシャフト5と回転盤6も上下方向に移動する。これにより、下部砥石7を上下動させて摩砕上面22と摩砕下面23との対向距離を調整することができる。なお、摩砕上面22と摩砕下面23との対向距離は、例えば下部砥石7を上昇させてサーボモータ8のトルクが変化したところが摩砕上面22と摩砕下面23が当接した位置だとみなし、この位置を基準として摩砕上面22と摩砕下面23との対向距離を調整することができる。
【0019】
そして材料の粉砕を行うにあたっては、摩砕上面22と摩砕下面23との対向距離を適宜設定するとともに下部砥石7を回転させて、開口18を通して材料を供給する。なお、材料を供給した後、下部砥石7を回転させてもよい。これにより下部砥石7と上部砥石17の内側に導入された材料は、遠心力等によって摩砕上面22と摩砕下面23の間に送り込まれて粉砕され、下部砥石7と上部砥石17の外側に流出する。そして、粉砕された材料は、羽根部6aによる遠心力によって径方向外側に送り出され、樋部16を通って不図示の容器等に収容される。
【0020】
ところで、下部砥石7と上部砥石17から流出する粉砕された材料は、下部砥石7や回転盤6を伝って下部ケース15や樋部16に流れ出る一方、噴出ヘッド24の上面部に垂れることもある。本実施形態の噴出ヘッド24は上面側開口27を有しているため、たれ落ちた材料は上面側開口27から噴出ヘッド24の内側に入ることになる。更に上面側開口27の直下には下面側開口28が設けられているため、一旦噴出ヘッド24の内側に入った材料は、下面側開口28を通して噴出ヘッド24から流出し、下部ケース15や樋部16に流れ出ることになる。このため、噴出ヘッド24に粉砕された材料がたれ落ちても、噴出ヘッド24の上面部に溜まったままになる材料を減らすことができる。
【0021】
材料の粉砕を長時間行った後や、異なる種類の材料の粉砕を行う際には、噴出ヘッド24によって摩砕機1の内部を洗浄する。具体的には、まずアルカリ性の洗浄液を使用して洗浄を行い、次に酸性の洗浄液で洗浄し、最後に温水ですすぎを行う。なお、アルカリ性の洗浄液や酸性の洗浄液を使用する前に温水ですすぎを行ってもよい。また温水に限られず常温の水を使用してもよい。本実施形態においては、パイプ25を通して洗浄液を噴出ヘッド24へ送給する。これにより洗浄液は、噴出ヘッド24の先端部に設けた噴出口26から下部砥石7の周辺に向けて(図示例では回転盤6の下面に向けて)噴出するため、特に下部砥石7の周辺を洗浄することができる。また本実施形態の噴出ヘッド24は、上面側開口27や下面側開口28からも噴出する。このため、上部砥石17の周辺の他、筐体21の内側全域を洗浄することができる。また本実施形態の噴出ヘッド24は、筐体21に対して下寄りに取り付けられていて、筐体21の内側壁面の面積は、噴出ヘッド24よりも上方が下方よりも広くなっている。ここで上面側開口27は、下面側開口28よりも開口面積が大きくなっていて、洗浄液は上方に向けてより多量に噴出する。このため、面積が広い筐体21の上方における内側壁面を、効果的に洗浄することができる。なお、粉砕時に上面側開口27から入り込んだ内容物が噴出ヘッド24の内側に残留していても、洗浄液を送給することによって噴出口26や上面側開口27、下面側開口28から洗浄液とともに噴出されるため、噴出ヘッド24の内側に汚れが残ることはない。また洗浄を行う際は、噴出ヘッド24から洗浄液等を噴出させるに加えて開口18からも洗浄液等を注入して、下部砥石7と上部砥石17の内側の汚れも併せて除去するものとする。
【0022】
以上、本発明に従う洗浄機能付き摩砕機の一実施形態について説明したが、本発明にはこの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に従う範疇で種々の変更や追加を加えたものも含まれる。例えば上述した上部砥石17は、固定盤19に対して回転不能に取り付けたものであったが、主モータ2とは別異に設けた他のモータによって回転可能に構成したものでもよい。
【0023】
また、噴出ヘッド24は下部ケース15に取り付けたが、上部ケース20に設けるなど、取り付け位置は種々変更可能である。また、図示した噴出ヘッド24は1つであったが、例えば下部砥石7の周囲に等間隔で配置する(異なる間隔でもよい)など、これを複数設けてもよい。なお、図示例において噴出ヘッド24は水平方向に指向させているが、斜め上や斜め下に向けてもよい。また噴出ヘッド24の形状も種々選択可能であり、例えば平面状の先端部を外側に向けて膨出させて球面状にしたものでもよいし、円筒状の周壁を角筒状にしたものでもよい。そして、上面側開口27及び下面側開口28は円形でもよく、図示例の形状に限定されるものではない。更に、下面側開口28は上面側開口27の直下に設けることが好ましいが、上面側開口27に対してずれた位置に設けてもよい。また、上面側開口27及び下面側開口28の数も任意である。そして、噴出させる洗浄水の勢いを確保するべく、下面側開口28の開口面積は上面側開口27よりも小さい方が好ましいが、同等或いは上面側開口27よりも開口面積を大きくしてもよい。なお、下面側開口28は廃止してもよい。
【0024】
上述した噴出ヘッド24は、下部ケース15に対して不動に取り付けられていたが、その軸線方向に沿って進退移動するように構成し、材料の粉砕を行う際には噴出ヘッド24を後退させるようにしてもよい。すなわち、噴出ヘッド24の先端部が下部ケース15の内壁に揃う程度まで後退させれば、粉砕した材料が噴出ヘッド24の上部に溜まることがない。一方、筐体21の洗浄を行う際には、噴出ヘッド24を前進させて図示した位置で洗浄液を噴出すればよい。
【0025】
また、噴出ヘッド24による洗浄も種々の方法で行うことが可能である。例えば、所定時間運転した後は、粉砕動作を停止するとともに音や光などで作業者に知らせ、洗浄を促すようにしてもよい。また、樋部16による通路を複数設けるとともに所期する通路に切り替えられるように構成し、所定時間運転した後は、粉砕した材料に異物が混入しないように通路を自動的に切り替えて洗浄液を自動的に噴出させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0026】
1:摩砕機
2:主モータ
3:主軸
4:接続部材
5:スプラインシャフト
6:回転盤
6a:羽根部
7:下部砥石
8:サーボモータ
9:出力歯車
10:歯車
11:連結ピン
12:支持部材
13:軸受け
14:固定部材
15:下部ケース
16:樋部
17:上部砥石
18:開口
19:固定盤
20:上部ケース
21:筐体
22:摩砕上面
23:摩砕下面
24:噴出ヘッド
25:パイプ
26:噴出口
27:上面側開口
28:下面側開口