(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】長寸の制動ヒンジ
(51)【国際特許分類】
E05D 11/08 20060101AFI20220711BHJP
E05D 3/02 20060101ALI20220711BHJP
E05D 5/14 20060101ALI20220711BHJP
F16C 11/10 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
E05D11/08 F
E05D3/02
E05D5/14
F16C11/10 A
(21)【出願番号】P 2018172091
(22)【出願日】2018-09-14
【審査請求日】2021-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】390024453
【氏名又は名称】株式会社三渡工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100079234
【氏名又は名称】神崎 彰夫
(72)【発明者】
【氏名】渡部 正大
(72)【発明者】
【氏名】片桐 公貴
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-007984(JP,A)
【文献】特開2016-188478(JP,A)
【文献】米国特許第04292708(US,A)
【文献】米国特許第04964193(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 1/00-13/00
F16C 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1リーフには2個以上の第1バレル部を形成し、第2リーフには第1バレル部と食い違い配列する3個以上の第2バレル部を形成し、締め付け前のプラスチック制動プラグは第1バレル部の内径よりも小さい外径とシャフト直径よりも大きい内径を有し、該制動プラグを第1バレル部内に
設置し、且つシャフトは全バレル部を貫通するように
配置され、さらに
シャフトの両端部に嵌めた固定ホルダ
を端側の第2バレル部に
止着するとともに、締め付け後の制動プラグの内周面がシャフト周面と密に接触することにより、第1リーフおよび第2リーフが互いに制動回動する長寸の制動ヒンジ。
【請求項2】
細長い第1リーフには4個以上の第1バレル部を形成し、細長い第2リーフには第1バレル部と食い違い配列する5個以上の第2バレル部を形成し、締め付け前のプラスチック制動プラグは第1バレル部の内径よりも小さい外径とシャフト直径よりも大きい内径を有し、該制動プラグを第1バレル部内にそれぞれ
設置し、且つシャフトは2本からなり、
それぞれ第1バレル部に挿入した両シャフト
は連結ホルダ
によって一直線状になり、さらに
シャフトの両端部に嵌めた固定ホルダ
を端側の第2バレル部に
止着するとともに、締め付け後の制動プラグの内周面がシャフト周面と密に接触することにより、第1
リーフおよび第2リーフが互いに制動回動する長寸の制動ヒンジ。
【請求項3】
制動プラグはフランジ付の円筒体であり、該制動プラグの長さは第1バレル部の長さの半分以下であり、各2個の制動プラグを第1バレル部の両端から嵌入
することで止着し、各プラグのフランジが第1バレル部と第2バレル部との間に介在する請求項1または2記載のヒンジ。
【請求項4】
第2バレル部には、固定ホルダを係止する両端バレル部およ
び中央バレル部を除い
て支持ホルダを取り付け
、該中央バレル部には支持ホルダまたは該支持ホルダと同外径の連結ホルダを取り付ける請求項1または2記載のヒンジ。
【請求項5】
第1および第2バレル部は、リーフ表面との間に間隙を有する不完全な円筒形であり、この間隙の中に制動プラグ、固定ホル
ダおよび支持ホルダの縦突起を挿入することにより、制動プラグ、固定ホル
ダおよび支持ホルダの自由回動を阻止する請求項1または2記載のヒンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横長の可動体に対して正確且つ容易に取り付けることができ、ヒンジ組み立てが簡単で美観的にも好ましい長寸の制動ヒンジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の金属ヒンジは、1対2で配置したバレル部に挿入したシャフトによって2枚のリーフを相互に回転可能に接続し、該リーフの一方を蓋体に且つ他方を木ネジや釘で本体に固着する。この種の金属ヒンジは、グランドピアノの鍵盤蓋や開閉ソリッドの場合のように水平に取り付けると、蓋体の荷重がリーフに掛かると該蓋体を任意の開口角度で静止できず、該蓋体を部分的に開いた状態で手を離すと全開になるかまたは元のように閉じてしまう。この開閉作動は衝撃的に行われるので、使用者が蓋体に指を詰めて怪我をしたり、蓋体や本体を損傷しやすい。
【0003】
これに対し、既存の制動ヒンジは、従来の金属ヒンジのような衝撃的な開閉を回避し、蓋体を静かに開閉することができる。この種の制動ヒンジとして、実開昭53-140857号、本出願人が出願した特開平9-217545号、特開2008-7984号、特開2008-14058号などが開示されている。制動ヒンジの取り付けにより、家具や建具などの蓋が静かに開閉できるうえに、その蓋を任意の開口角度で静止でき、使用者が蓋体に指を詰めたり本体を損傷することを回避できる。
【0004】
既存の制動ヒンジに関して、実開昭53-140857号に開示する蝶番は、金属部材で回転軸を締め付けるため、該回転軸の制動が十分に行われにくく、嫌な金属擦過音が発生するうえに耐久性を欠いている。特開平9-217545号および特開2008-14058号に開示のヒンジは、中間バレル部において制動部材、保持金具および締め付けネジを備え、これらはリーフから突起することにより、該ヒンジの取付個所が人目につく場合には美観的に好ましくない。一方、特開2008-7984号に開示のヒンジは、外観的には市販の金属ヒンジと同じであっても、シャフトの形状が複雑でコストアップにつながりやすく、該ヒンジの長寸化も困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開昭53-140857号公報
【文献】特開平9-217545号公報
【文献】特開2008-7984号公報
【文献】特開2008-14058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
既存の制動ヒンジは、特開2008-14058号や特開2008-7984号から明らかなように、一方のリーフに中間バレル部を他方のリーフに両端バレル部を備えて短寸である。制動ヒンジが短寸であると、回転窓やグランドピアノの鍵盤蓋のような取り付け個所が長い場合には、多数個を並べて設置することになる。しかしながら、多数個の制動ヒンジを並べて設置する際には、各ヒンジのシャフト軸心を一直線状に合致させることが非常に難しく、各シャフト軸心が正確に合致していないとヒンジ開閉作動がスムースにならず、シャフト軸心が微妙にずれていると開閉作動が取り付け後に次第に悪化する。ヒンジ取付作業は、熟練作業者が少なくなった現在では複数本のシャフト軸心を正確に合致させるのに長時間を要し、しかもヒンジ取り付け後にクレームが発生することが多い。
【0007】
特開2008-14058号や特開2008-7984号に開示の短寸ヒンジでは、該ヒンジの組み立て時に、シャフトを円筒形の制動プラグの中に圧入するために、該シャフトを制動プラグに打ち込むことを要する。シャフト打ち込み作業は、前記公開公報のように制動プラグが比較的短い場合には比較的簡単であっても、仮に長寸ヒンジのように多数個の制動プラグが一連に並んでいる場合には難かしく、間隔をおいた2連以上の制動プラグにシャフトを圧入する作業は非能率になってしまう。また、長い取り付け個所において、短寸の制動ヒンジを密接配置すると数が増えてヒンジコストが高くなり、適当な間隔をおいて配置すると美観的にあまり好ましくない。
【0008】
本発明は、従来の制動ヒンジに関する前記の問題点を改善するために提案されたものであり、横長の可動体に対して容易に取り付けることができる長寸の制動ヒンジを提供することを目的としている。本発明の他の目的は、美観的に好ましく且つ比較的容易に組み立てることができる長寸の制動ヒンジを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る制動ヒンジでは、第1リーフには2個以上の第1バレル部を形成し、第2リーフには第1バレル部と食い違い配列する3個以上の第2バレル部を形成し、締め付け前のプラスチック制動プラグは第1バレル部の内径よりも小さい外径とシャフト直径よりも大きい内径を有する。この制動プラグを第1バレル部内にそれぞれ嵌入・係止させ、シャフトを全バレル部を貫通するように配置し、該シャフトの両端部に固定ホルダを嵌めて端側の第2バレル部に係止させてから、プレスによって第1バレル部を経て制動プラグを内方へ締め付け、該制動プラグの内周面がシャフト周面と密に接触することにより、第1リーフおよび第2リーフが互いに制動回動する。
【0010】
本発明に係る別の制動ヒンジでは、細長い第1リーフには4個以上の第1バレル部を形成し、細長い第2リーフには第1バレル部と食い違い配列する5個以上の第2バレル部を形成し、締め付け前のプラスチック制動プラグは第1バレル部の内径よりも小さい外径とシャフト直径よりも大きい内径を有する。2本のシャフトをそれぞれ端部の第1バレル部から挿入して先端部を中央の連結ホルダに固定して一本化し、該シャフトの両端部に固定ホルダを嵌めて端側の第2バレル部に係止させてから、プレスによって第1バレル部を経て制動プラグを内方へ締め付ける。
【0011】
本発明の制動ヒンジにおいて、制動プラグはフランジ付の円筒体であると好ましく、該制動プラグの長さは第1バレル部の長さの半分以下であり、各2個の制動プラグを第1バレル部の両端から嵌入・係止させると、各プラグのフランジが第1バレル部と第2バレル部との間に介在する。また、第2バレル部には、固定ホルダを収納する両端バレル部および連結ホルダを収納する中央バレル部を除いて、連結ホルダと同外径の支持ホルダを嵌入・係止させると好ましい。さらに、第1および第2バレル部は、リーフ表面との間に間隙を有する不完全な円筒形であり、この間隙の中に制動プラグ、固定ホルダ、連結ホルダおよび支持ホルダの縦突起を挿入することにより、制動プラグ、固定ホルダ、連結ホルダおよび支持ホルダの自由回動を阻止すると好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る制動ヒンジは、横長の可動体に対して複数個の短寸ヒンジを一直線状に取り付けるよりも遙かに正確に取り付けることができる。長寸の制動ヒンジは、全長が100cm前後に達するものも存在し、グランドピアノの鍵盤蓋や開閉蓋などの取り付け個所が非常に長い場合に取り付ける際に、1本だけの制動ヒンジを用いてボルト止めすればよいから、取付作業が簡単になるうえに総合的なヒンジコストが安くなって美観的にも好ましい。
【0013】
本発明に係る制動ヒンジは、長寸ヒンジであっても比較的容易に組み立てることができ、通常の短寸ヒンジを同じ長さになる個数まで製造する場合と比べて安価になる。本発明の制動ヒンジは、全体の組み立て作業が簡単であり、最後にプレスで第1バレル部を経て制動プラグを内方へ締め付けて制動機能を発揮させればよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る制動ヒンジを示す斜視図である。
【
図2】向きを反対にして示す
図1の制動ヒンジの分解斜視図である。
【
図4】
図3のA-A線に沿って切断した横断面図である。
【
図5】
図3のB-B線に沿って切断した横断面図である。
【
図6】
図3のC-C線に沿って切断した横断面図である。
【
図7】第1バレル部に挿入した締め付け前の制動プラグ2個を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る制動ヒンジ1は、
図1から
図3に示すような長寸であり、一般にヒンジ長さが30cm以上のものを想定し、ヒンジ全長が100cm前後に達するものも製造可能である。本発明の制動ヒンジ1では、第1リーフ3に2個以上(
図1では4個)の第1バレル部7および第2リーフ5に3個以上(
図1では5個)の第2バレル部8を有することを最低基準とし、全バレル数が5個以上であれば本発明の対象とする。この明細書において、第1リーフおよび第2リーフは、2枚のリーフを単に説明のために区別して使用する。
【0016】
制動ヒンジ1は、
図1から
図3に例示するように、平坦で同じ長さの第1および第2リーフ3,5からなり、両リーフ3,5において多数個の取り付け用ボルト孔10を所定間隔おいて設ける。両リーフ3,5には、その一側部において筒状に湾曲させた複数個のバレル部7,8をそれぞれ対向させて形成し、例えば、4個の同形の第1バレル部7と食い違い状に5個の同形の第2バレル部8を配列する。バレル部7,8の長さは個々に定めればよく、制動ヒンジ1の所望の長さに応じて定めることになる。
【0017】
第1リーフ3における第1バレル部7は、
図2と
図6に示すように不完全な円筒形であり、各バレル部の下側においてリーフ表面との間に間隙12,14を設ける。第1バレル部7には、
図2や
図7に例示するように、その一端または両端部から円筒形の制動プラグ16をそれぞれ嵌入する。制動プラグ16は、通常、
図7に示すように、その長さを第1バレル部7の長さの半分以下に定め、各2個の制動プラグを第1バレル部7の両端から嵌入・係止させる。
【0018】
プラスチック制動プラグ16は、通常、耐磨耗性プラスチック製であり、白色や黒色などに着色したポリアセタール(POM)製やポリアミド製であると好ましい。制動プラグ16は、
図2や
図7に示すようにフランジ17付の円筒体であり、さらに外周面に縦突起20を設けると好ましい。
図7に示すように、制動プラグ16の外径は、締め付け前では第1バレル部7の内径よりも小さく、且つその内径はシャフト18の直径よりも大きい。このため、制動プラグ16を第1バレル部7内に嵌入することは容易であり、該プラグの縦突起20が間隙12または14に嵌まって係止され(
図7参照)、さらにシャフト18を制動プラグ16に挿通することも容易である。
【0019】
各制動プラグ16は、ヒンジ組み立て後において、公知のプレスによって第1バレル部7を経て内方へ締め付けられ、該制動プラグの内周面がシャフト周面と密に接触することにより、第1リーフ3および第2リーフ5が相互に制動回動することが可能になる。制動プラグ16のフランジ17は、
図1および
図3から明らかなように、ヒンジ組み立て時にバレル部7,8間に位置し、両バレル部が直接接触することによる金属擦過音の発生を防止する。フランジ17の外径は、第2バレル部8の外径とほぼ同じである。
【0020】
第2リーフ5における第2バレル部8は、
図2、
図4および
図5に示すように不完全な円筒形であり、各バレル部の下側においてリーフ表面との間に間隙21を設け、両端バレル部8a,8aの間隙21(
図4)はバレル外端面から内方へ形成する。第2バレル部8には、
図2に示すように、円筒形のプラスチックホルダ22,24,26をそれぞれ嵌入する。ホルダ22,24,26は、通常、その長さを第2バレル部8の長さ以下に定め、その外径は第2バレル部8の内径よりも小さいので、各ホルダを第2バレル部8内に嵌入することは容易である。
【0021】
ホルダ22,24,26は、通常、黒色などに着色したポリアセタール製またはポリアミド製であると好ましい。ホルダ22,24,26の外周面には縦突起28を設けると好ましく、各ホルダを第2バレル部8内に嵌入すると、該ホルダの縦突起28が間隙21に入って第2バレル部8に係止される。支持ホルダ24は、その内径がシャフト18の直径よりも僅かに大きい円筒形である。支持ホルダ24は、シャフト18が1本で連結ホルダ26を使用しない場合には、両端バレル部8a,8aを除く総ての第2バレル部8内に配置すると好ましい。
【0022】
好ましくはポリアミド製である固定ホルダ22,22は、
図2に示すように両端の第2バレル部8a,8a内に配置する。
図4に示すように、固定ホルダ22には、六角形などの異形断面を有する有底中心孔30を設け、該中心孔にシャフト両端の同形の異形断面部32が嵌入されることにより、シャフト18は固定ホルダ22および第2バレル部8を介して第2リーフ5とともに回動・停止する。有底中心孔30の異形断面部の深さは、通常、シャフト18の異形断面部32の長さとほぼ等しい。
【0023】
連結ホルダ26は、支持ホルダ24と同様の外形にすればよく、
図2のように制動ヒンジ1が長くて2本のシャフト18を連結して挿通する際に使用し、挿通シャフトが1本であれば使用する必要はなく、この制動ヒンジが100cm前後の非常に長い場合には3本以上に分割してもよい。
図5に示すように、連結ホルダ26には、六角形などの異形断面を有する貫通中心孔34を設け、該中心孔にシャフト先端の同形の異形断面部36を嵌入することにより、シャフト18,18を1本化する。連結ホルダ26は、
図2に示すように同寸のシャフト18が2本である場合には、中央の第2バレル部8内に配置する。
【0024】
シャフト18は、ステンレス鋼などの金属製であり、
図1に示すような細長い円柱形の丸棒であり、1本使用であれば両端部に六角形などの異形断面部32を形成する。
図2に示すように、シャフト18を2本使用する場合には、両シャフト18,18を同じ長さに定めればよく、両シャフトの先端部に六角形などの異形断面部36を形成する。両異形断面部36の合算長さは、連結ホルダ26の長さと同程度であればよい。両シャフト18の合算長さは、リーフ3,5の長さにほぼ相当する長さである。
【0025】
制動ヒンジ1を製造する際には、第1リーフ3に2個以上のバレル部7を形成し、第2リーフ5に第1バレル部7と食い違い配列する3個以上の第2バレル部8を形成し、各バレル部について間隙12,14または21を形成するように筒状に湾曲する。個々の第2バレル部8について、2個の制動プラグ16をバレル両端からバレル部内へ嵌入する(
図2と
図7参照)。次に、第2バレル部8について、両端バレル部を除いて支持ホルダ24および連結ホルダ26をバレル部内へそれぞれ嵌入する。このような嵌入が完了すれば、第1および第2バレル部7,8を食い違い状に一直線状に配列する。
【0026】
シャフト18は、バレル部7,8を食い違い状に配列した後に、一直線状に全バレル部に挿通される。シャフト18が2本の場合には、両シャフトを両端の第2バレル部8a,8aからそれぞれ挿入し、その先端の異形断面部36を連結ホルダ26の中心孔34内に嵌入してシャフト18,18を1本化する。シャフト18の挿通は、該シャフトの直径が各制動プラグ16および支持ホルダ24の内径よりも小さいので容易である。
【0027】
固定ホルダ22,22は、シャフト18を挿通した後に、両端の第2バレル部8a,8a内へ嵌入し、該固定ホルダの有底中心孔30にシャフト18の異形断面部32を押し込んで嵌合することにより、固定ホルダ22をシャフト18と一体化させ、該シャフトは第2リーフ5とともに回動・停止する。両端の第2バレル部8a,8aは、その外周端を多少変形することによって固定ホルダ22が脱落しないようにすると好ましい。前記のように、制動ヒンジ1は、長寸であっても容易に組み立てることができる。
【0028】
制動ヒンジ1の組み立てが完了した後に、公知のプレスによって第1リーフ3の第1バレル部7を内方へ圧縮変形することにより、各制動プラグ16を内方へ締め付け、該制動プラグの内周面をシャフト18の周面と密に接触させる。この際に、制動トルクを大きくするには第1バレル部7の数が多くて長い方が望ましく、制動トルクが比較的小さくてよい場合には一部の第1バレル部7を圧縮変形するだけでもよい。
【0029】
制動ヒンジ1は、一般に長さ30cm前後であり、回転窓などの横長の可動体に対して複数個の短寸ヒンジを一直線状に取り付けるよりも正確且つ容易に取り付けることができる。長寸の制動ヒンジ1は、全長が100cm前後に達するものも存在し、取り付け個所が長い場合に取り付ける際にも1本だけ使用すればよいから、取付作業が簡単になり且つ美観的にも好ましい。長寸の制動ヒンジは、建具や家具のほかに産業用途に適用することも可能である。
【実施例1】
【0030】
次に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。制動ヒンジ1は、
図1に示すように長さ30cmの長寸である。第1リーフ3は、幅37mmの4個のバレル部7を有し、第2リーフ5は、幅28mmの5個のバレル部8を有する。バレル部7、8は相互に食い違い状に配列する。
【0031】
第1バレル部7および第2バレル部8は、
図4から
図6に示すようにいずれも不完全な円筒形である。第1バレル部7では、その下側にリーフ表面との間に間隙21を設け、間隙21の長さはバレル部7よりも短く、後方のバレル下側はリーフ表面とほぼ接する。両端バレル部8a,8aでは、間隙21(
図4)をバレル外端面から内方へ形成し、通常、
図5に示す前記の間隙よりも広い。第2バレル部8では、その下側においてリーフ表面との間に間隙12,14を設け、間隙12と14の長さはバレル部7よりも短く、中間のバレル下側はリーフ表面とほぼ接する。
【0032】
制動プラグ16は、白色に着色した耐磨耗性プラスチックであるPOM製である。制動プラグ16は、
図2や
図7に示すようにフランジ17付の円筒体であり、さらに外周面において縦突起20を設け、該縦突起はフランジ下面からプラグ軸心に沿って後方へ延びる。縦突起20の断面は、
図6に示すようにプラグ周面から外方へ延びる接線とその接線とほぼ平行に延びる直線とで囲まれている。縦突起20を第1バレル部7に嵌めると、その接線面がリーフ表面と接触することにより、制動プラグ16がバレル部7内でがたつくことが少ないので好ましい。
【0033】
制動プラグ16は、
図7に示すように、その長さが第1バレル部7の長さの半分以下であり、各2個の制動プラグを第1バレル部7の両端から嵌入・係止させる。制動プラグ16は、締め付け前ではその外径が第1バレル部7の内径よりも小さく、且つその内径はシャフト18の直径よりも大きい。
【0034】
固定ホルダ22は黒色のポリアミド製であり、支持ホルダ24および連結ホルダ26は黒色のポリアセタール製である。ホルダ22,24,26は、その長さは約20mmであり、その外周面には縦突起28を設ける。支持ホルダ24は、その内径がシャフト18の直径よりも僅かに大きい円筒形である。支持ホルダ24は、両端バレル部8a,8aおよび中間バレル部を除く2個の第2バレル部8内に配置する。
【0035】
固定ホルダ22,22は、
図2に示すように両端の第2バレル部8a,8a内に配置する。
図4に示すように、固定ホルダ22には、六角形断面を有する有底中心孔30を設け、該中心孔にシャフト両端の同形の異形断面部32が挿入されることにより、シャフト18は固定ホルダ22を介して第2リーフ5とともに回動・停止する。
【0036】
連結ホルダ26は、支持ホルダ24と同様の外形であり、
図2のように2本のシャフト18を連結する際に使用する。
図5に示すように、連結ホルダ26には、六角形断面を有する貫通中心孔34を設け、該中心孔にシャフト先端の同形の異形断面部36を嵌入することにより、シャフト18,18を1本化する。連結ホルダ26は、
図2に示すように中央の第2バレル部8内に配置する。
【0037】
ホルダ22,24,26の縦突起28の断面は、
図4と
図5に示すように、ホルダ周面から外方へ延びる接線とその接線とほぼ平行に延びる直線とで囲まれている点で縦突起20とほぼ同様である。一般に、固定ホルダ22の縦突起28には、制動トルクが作用するために縦突起20およびホルダ24,26の縦突起28よりも肉厚である。ホルダ22,24,26を第2バレル部8,8aに嵌めると、その接線面がリーフ表面と接触することにより、これらのホルダがバレル部8,8a内でがたつくことが少ないので好ましい。
【0038】
2本のシャフト18は、バレル部7,8を食い違い状に配列した後に、一直線状に全バレル部に挿通される。両シャフトを両端の第2バレル部8a,8aからそれぞれ挿入し、シャフト先端の異形断面部36を連結ホルダ26の中心孔34内に嵌入してシャフト18,18を1本化する。シャフト18の挿通は、該シャフトの直径が各制動プラグ16および支持ホルダ24の内径よりも小さいので容易である。
【0039】
制動ヒンジ1を製造する際には、個々の第
1バレル部
7について、2本の制動プラグ16をバレル両端からバレル部内へ嵌入する(
図7参照)。次に、第2バレル部8について、両端バレル部を除いて支持ホルダ24および連結ホルダ26をバレル部内へそれぞれ嵌入する。このような嵌入が完了すれば、第1および第2バレル部7,8を食い違い状に一直線状に配列する。
【0040】
シャフト18は、バレル部7,8を食い違い状に一直線状に配列した後に、全バレル部に挿入される。2本のシャフト18を両端の第2バレル部8a,8aからそれぞれ挿入し、その異形断面部36を連結ホルダ26の中心孔34に嵌合してシャフト18,18を1本化する。固定ホルダ22,22は、両端の第2バレル部8a,8a内へ嵌入し、その有底中心孔30にシャフト18の異形断面部32を押し込んで嵌合することにより、固定ホルダ22をシャフト18と一体化させる。また、両端の第2バレル部8a,8aは、その外周端を多少変形することによって固定ホルダ22が脱落しないようにする。
【0041】
制動ヒンジ1の組み立てが完了した後に、公知のプレスによって第1リーフ3の第1バレル部7を内方へ圧縮変形することにより、各制動プラグ16を内方へ締め付け、該制動プラグの内周面をシャフト18の周面と密に接触させる。
【実施例2】
【0042】
実施例2では、制動ヒンジの長さは165mmである。第1リーフは、幅37mmの2個の第1バレル部を有し、第2リーフ5は、幅28mmの3個の第2バレル部を有する。第1および第2バレル部の形状は実施例1とほぼ同じであり、全バレル部を相互に食い違い状に配列する。使用するシャフトは1本であり、第1および第2バレル部を食い違い状に配列した後に全バレル部に挿通される。
【0043】
2個の固定ホルダは、シャフトを全バレル部に挿通してから、両端の第2バレル部内へそれぞれ嵌入し、その有底中心孔にシャフトの両端の異形断面部を押し込んで嵌合することにより、該固定ホルダをシャフトと一体化させる。この制動ヒンジの組み立てが完了した後に、公知のプレスによって第1リーフの第1バレル部を内方へ圧縮変形することにより、各制動プラグを内方へ締め付け、該制動プラグの内周面をシャフトの周面と密に接触させる。
【符号の説明】
【0044】
1 制動ヒンジ
3 第1リーフ
5 第2リーフ
7 第1バレル部
8 第2バレル部
8a,8a 両端の第2バレル部
12,14 第1バレル部の間隙
16 制動プラグ
18,18 シャフト
20 縦突起
21 第2バレル部の間隙
22 固定ホルダ
24 支持ホルダ
26 連結ホルダ
28 縦突起