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特許7101988めっき用樹脂組成物、めっき用樹脂成形体及びめっき膜付き樹脂成形体
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  • 特許-めっき用樹脂組成物、めっき用樹脂成形体及びめっき膜付き樹脂成形体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】めっき用樹脂組成物、めっき用樹脂成形体及びめっき膜付き樹脂成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 87/00 20060101AFI20220711BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20220711BHJP
   C23C 18/16 20060101ALI20220711BHJP
   C23C 18/22 20060101ALI20220711BHJP
   C23C 18/40 20060101ALN20220711BHJP
【FI】
C08L87/00
C08K3/26
C23C18/16 A
C23C18/22
C23C18/40
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018198106
(22)【出願日】2018-10-22
(65)【公開番号】P2020066644
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】598039965
【氏名又は名称】白石工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江口 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】南野 裕
(72)【発明者】
【氏名】松井 政裕
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-228840(JP,A)
【文献】国際公開第2011/052207(WO,A1)
【文献】特開2006-108174(JP,A)
【文献】特表2021-508754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
C23C 18/00- 18/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナイロン樹脂又はポリフェニレンサルファイド樹脂と、平均一次粒子径が0.07μm~0.6μmである炭酸カルシウムとを含み、前記炭酸カルシウムがシランカップリング剤により表面処理されていることを特徴とするめっき用樹脂組成物。
【請求項2】
前記炭酸カルシウムの含有量が、前記ナイロン樹脂又はポリフェニレンサルファイド樹脂100質量部に対し、1質量部~50質量部の範囲内にある、請求項1に記載のめっき用樹脂組成物。
【請求項3】
前記シランカップリング剤による表面処理量が、前記炭酸カルシウム100質量部に対し、0.1質量部~10質量部の範囲内にある、請求項1又は2に記載のめっき用樹脂組成物。
【請求項4】
前記炭酸カルシウムとは異なる無機フィラーをさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のめっき用樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のめっき用樹脂組成物の成形体であり、前記成形体の表面がエッチングされている、めっき用樹脂成形体。
【請求項6】
請求項5に記載のめっき用樹脂成形体と、
前記めっき用樹脂成形体の前記エッチングされた表面上に積層されているめっき膜と、
を備える、めっき膜付き樹脂成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき用樹脂組成物、並びに該めっき用樹脂組成物を用いためっき用樹脂成形体及びめっき膜付き樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、樹脂成形体の表面が金属めっきされてなる、めっき膜付き樹脂成形体の開発が行われている。このようなめっき膜付き樹脂成形体は、軽量であり、加工しやすいという特徴を有していることから、金属の代替材料として注目を集めている。
【0003】
めっき膜付き樹脂成形体に用いられる樹脂としては、一般的に、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂が知られている。ABS樹脂を用いた樹脂成形体では、クロム酸によりブタジエン部分を溶解することによって樹脂成形体の表面をエッチングし、めっき処理がなされている。
【0004】
また、下記の特許文献1には、樹脂組成物の表面が酸処理されためっき可能なポリオレフィン樹脂成形体が開示されている。上記樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂と、繊維状マグネシウムオキサルフェート又は炭酸カルシウムと、板状又は繊維状の無機フィラーとを含有するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平5-279503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のABS樹脂を用いためっき膜付き樹脂成形体では、上記のように製造工程でクロム酸を用いることが多く、環境への負荷が問題となる。
【0007】
また、特許文献1のようなめっき可能なポリオレフィン樹脂成形体では、めっき膜と樹脂成形体との密着性が十分でない場合があった。特に、用いられる樹脂の種類によっては、その傾向が顕著であった。
【0008】
本発明の目的は、めっき膜との密着性を高めることができる、めっき用樹脂組成物、並びに該めっき用樹脂組成物を用いためっき用樹脂成形体及びめっき膜付き樹脂成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のめっき用樹脂組成物は、ナイロン樹脂又はポリフェニレンサルファイド樹脂と、平均一次粒子径が0.07μm~0.6μmである炭酸カルシウムとを含み、前記炭酸カルシウムがシランカップリング剤により表面処理されていることを特徴としている。
【0010】
本発明においては、前記炭酸カルシウムの含有量が、前記ナイロン樹脂又はポリフェニレンサルファイド樹脂100質量部に対し、1質量部~50質量部の範囲内にあることが好ましい。
【0011】
本発明においては、前記シランカップリング剤による表面処理量が、前記炭酸カルシウム100質量部に対し、0.1質量部~10質量部の範囲内にあることが好ましい。
【0012】
本発明においては、前記炭酸カルシウムとは異なる無機フィラーをさらに含むことが好ましい。
【0013】
本発明のめっき用樹脂成形体は、本発明に従って構成されるめっき用樹脂組成物の成形体であり、前記成形体の表面がエッチングされていることを特徴としている。
【0014】
本発明のめっき膜付き樹脂成形体は、本発明に従って構成されるめっき用樹脂成形体と、前記めっき用樹脂成形体の前記エッチングされた表面上に積層されているめっき膜と、
を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、めっき膜との密着性を高めることができる、めっき用樹脂組成物、並びに該めっき用樹脂組成物を用いためっき用樹脂成形体及びめっき膜付き樹脂成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係るめっき膜付き樹脂成形体を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、好ましい実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0018】
[めっき用樹脂組成物]
本発明のめっき用樹脂組成物は、ナイロン樹脂又はポリフェニレンサルファイド樹脂と、平均一次粒子径が0.07μm~0.6μmである炭酸カルシウムとを含む。上記炭酸カルシウムは、シランカップリング剤により表面処理されている。
【0019】
本発明のめっき用樹脂組成物は、炭酸カルシウムの平均一次粒子径が上記範囲内にあり、しかもシランカップリング剤により表面処理されているので、めっき膜との密着性を高めることができる。なお、この点については、後述のめっき膜付き樹脂成形体の欄で詳細に説明するものとする。
【0020】
以下、本発明のめっき用樹脂組成物を構成する各成分について詳細に説明する。
【0021】
(ナイロン樹脂又はポリフェニレンサルファイド樹脂)
本発明のめっき用樹脂組成物は、ナイロン樹脂又はポリフェニレンサルファイド樹脂を含んでいる。
【0022】
ナイロン樹脂としては、特に限定されないが、例えば、6ナイロン(PA6)、66ナイロン(PA66)、46ナイロン(PA46)、11ナイロン(PA11)、12ナイロン(PA12)、半芳香族ナイロン(PPA)、4Tナイロン(4TPA)、6Tナイロン(6TPA)、9Tナイロン(9TPA)、10Tナイロン(10TPA)などを用いることができる。
【0023】
(炭酸カルシウム)
本発明のめっき用樹脂組成物は、炭酸カルシウムを含んでいる。
【0024】
炭酸カルシウムとしては、特に限定されず、従来公知の炭酸カルシウムを用いることができる。炭酸カルシウムの具体例としては、合成炭酸カルシウム、天然炭酸カルシウム(重質炭酸カルシウム)などが挙げられる。本発明では、合成炭酸カルシウムが好ましく用いられる。
【0025】
合成炭酸カルシウムは、特に限定されない。合成炭酸カルシウムとしては、例えば、沈降性(膠質)炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウムなどが挙げられる。本発明では、沈降性炭酸カルシウムが好ましく用いられる。
【0026】
合成炭酸カルシウムは、例えば、水酸化カルシウムを炭酸ガスと反応させることによって製造することができる。水酸化カルシウムは、例えば、酸化カルシウムを水と反応させることによって製造することができる。酸化カルシウムは、例えば、石灰石原石をコークスなどと混合し焼成することによって製造することができる。この場合、焼成時に炭酸ガスが発生するので、この炭酸ガスを水酸化カルシウムの水懸濁液中に吹き込み、炭酸ガスを水酸化カルシウムと反応させることによって炭酸カルシウムを製造することができる。
【0027】
合成炭酸カルシウムは、カルサイト結晶であることが好ましい。また、合成炭酸カルシウムは、略立方体の形状を有していることが好ましい。
【0028】
炭酸カルシウムの平均一次粒子径は、0.07μm以上、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.12μm以上、0.6μm以下、好ましくは0.45μm以下、より好ましくは0.3μm以下である。炭酸カルシウムの平均一次粒子径が、上記範囲内にある場合、めっき膜との密着性をより一層高めることができる。なお、上記炭酸カルシウムの平均一次粒子径は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)により測定することができる。
【0029】
炭酸カルシウムの含有量は、ナイロン樹脂又はポリフェニレンサルファイド樹脂100質量部に対し、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下である。炭酸カルシウムの含有量が、上記範囲内である場合、めっき膜との密着性をより一層高めることができる。他方、炭酸カルシウムの含有量が、上記範囲外である場合、めっき膜との密着性が劣ったり、樹脂成形体の強度が著しく低下したりすることがある。
【0030】
炭酸カルシウムのBET比表面積は、好ましくは5m/g以上、より好ましくは7m/g以上、好ましくは22m/g以下、より好ましくは15m/g以下である。炭酸カルシウムのBET比表面積が上記範囲内にある場合、めっき膜との密着性及びめっき膜の表面平滑性をより一層高めることができる。
【0031】
炭酸カルシウムは、シランカップリング剤により表面処理されている。シランカップリング剤としては、特に限定されず、アミノ基、エポキシ基、ビニル基、メタアクリル基などの官能基を有するシランカップリング剤などが挙げられる。また、官能基を有しないシランカップリング剤を用いてもよい。
【0032】
シランカップリング剤の具体例としては、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス-(3-〔トリエトキシシリル〕-プロピル)-テトラサルファン(TESPT)、ビス-(3-〔トリエトキシシリル〕-プロピル)-ジサルファン、各種アルキルシランなどを挙げることができる。
【0033】
シランカップリング剤を用いて炭酸カルシウムを表面処理する方法としては、特に限定されず、従来公知の種々の表面処理方法を用いることができる。
【0034】
表面処理する炭酸カルシウムが、乾燥粉末である場合には、例えば、この炭酸カルシウム粉末をミキサー中で撹拌しながら、シランカップリング剤を滴下、或いはスプレーなどを用いて噴霧することによって、シランカップリング剤を炭酸カルシウムの表面に付与する方法などを用いることができる。この場合、必要に応じて表面処理後に加熱乾燥してもよい。
【0035】
また、表面処理する炭酸カルシウムが懸濁液の状態で得られる場合には、この懸濁液に水溶性シランカップリング剤を投入し、炭酸カルシウムの表面にシランカップリング剤を吸着させることにより表面処理を行い、次いで、処理物を濾別し、乾燥することにより、シランカップリング剤で表面処理した炭酸カルシウムを製造することができる。また、処理を均一に行わせるために、攪拌機、或いは、ビーズミル、サンドミルのような湿式磨砕機を使用してもよい。
【0036】
シランカップリング剤による表面処理量としては、炭酸カルシウム100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。シランカップリング剤の表面処理量が、上記範囲内である場合、めっき膜との密着性をより一層高めることができる。他方、シランカップリング剤の表面処理量が、上記範囲外である場合、めっき膜との密着性が劣ったり、炭酸カルシウムの凝集塊の生成による樹脂成形体の強度低下を引き起こしたりすることがある。
【0037】
(無機フィラー)
本発明のめっき用樹脂組成物は、さらに炭酸カルシウムとは異なる無機フィラーを含んでいてもよい。無機フィラーとしては、特に限定されないが、例えば、タルク、マイカ、クレー、カオリン、セリサイト、ガラス繊維、ワラストナイト、塩基性硫酸マグネシウム等を用いることができる。なかでも、めっき膜との密着性や樹脂成形体の強度をより一層高める観点から、ガラス繊維であることが好ましい。
【0038】
無機フィラーの含有量としては、特に限定されないが、ナイロン樹脂又はポリフェニレンサルファイド樹脂100質量部に対し、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下である。無機フィラーの含有量が、上記範囲内である場合、めっき膜との密着性をより一層高めることができる。無機フィラーの含有量が、上記範囲外である場合、樹脂成形体の強度低下を引き起こすことがある。
【0039】
(他の添加剤)
本発明のめっき用樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、例えば、ナイロン樹脂又はポリフェニレンサルファイド樹脂以外の樹脂や通常の添加剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、繊維状強化剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤、顔料等をさらに含有することができる。これらの添加剤の含有量は、本発明のめっき用樹脂組成物全体に対しての10質量%以下であることが好ましい。
【0040】
(製造方法)
本発明におけるめっき用樹脂組成物は、上述した各成分を、従来公知の方法により混合、混練して得ることができる。混合・混練方法としては、例えば、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、ドラムタンブラー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、コニーダ、多軸スクリュー押出機などを用いる方法により行うことができる。混練時の加熱温度は、融点を基準に決定される。
【0041】
[めっき用樹脂成形体]
本発明のめっき用樹脂成形体は、上述のめっき用樹脂組成物の成形体である。本発明において、めっき用樹脂成形体の表面は、エッチングされている。
【0042】
めっき用樹脂組成物の成形方法としては、特に限定されず、従来公知の方法により成形することができる。成形方法としては、例えば、射出成形や押出成形等が挙げられる。
【0043】
また、めっき用樹脂成形体の表面におけるエッチングは、塩酸、硝酸、硫酸などを用いた酸エッチングにより行ってもよく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどを用いたアルカリエッチングにより行ってもよい。環境への負荷をより一層抑制する観点から、塩酸などによりエッチングすることが好ましい。
【0044】
本発明においては、上記のエッチングにより樹脂成形体の表面における炭酸カルシウムを溶解させ、アンカーホールを形成することができる。そのため、表面を粗くすることができ、めっき膜との密着性を高めることができる。また、アンカーホールには、シランカップリング剤が残留しているため、この点からもめっき膜との密着性を高めることができる。
【0045】
このように、本発明においては、シランカップリング剤により表面処理された炭酸カルシウムを用いることにより、樹脂組成物中における炭酸カルシウムの分散性を高めるだけでなく、樹脂成形体とめっき膜との密着性をも効果的に高めることができる。
【0046】
[めっき膜付き樹脂成形体]
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0047】
図1は、本発明の一実施形態に係るめっき膜付き樹脂成形体を示す模式的断面図である。図1に示すように、めっき膜付き樹脂成形体1は、めっき用樹脂成形体2と、めっき膜3とを備える。めっき用樹脂成形体2の一方側の主面2a上に、めっき膜3が積層されている。めっき用樹脂成形体2は、上述した本発明のめっき用樹脂成形体である。また、めっき用樹脂成形体2の主面2aは、エッチングされた表面である。なお、めっき膜3は、めっき用樹脂成形体2の両側の主面上に設けられていてもよく、めっき用樹脂成形体2の表面全体に設けられていてもよい。
【0048】
めっき膜3は、例えば、めっき用樹脂成形体2のエッチングされた表面上に、無電解めっき、電気めっき、置換めっきすることにより形成することができる。
【0049】
本発明のめっき膜付き樹脂成形体は、上述のめっき用樹脂成形体を備えるので、めっき膜と樹脂成形体との密着性に優れている。めっき膜と樹脂成形体との密着性に優れているので、めっき膜のクラックや剥がれが生じ難く、めっき膜表面の金属光沢性を高めることができる。また、樹脂成形体を基材に用いているので、軽量化を図ることもできる。
【0050】
従って、本発明のめっき膜付き樹脂成形体は、例えば、自動車部品や、水洗金具、シャワー、ドアノブ、電化製品の外観部品などの金属代替材料として好適に用いることができる。
【実施例
【0051】
以下、本発明に従う具体的な実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0052】
以下に、実施例及び比較例で用いた配合成分を示す。
【0053】
ナイロン樹脂;66ナイロン(PA66)、デュポン社製、品番「ザイテル101L」
ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS);東レ社製、品番「トレリナA900」
炭酸カルシウム;平均一次粒子径0.04μm、0.08μm、0.15μm、0.3μm、0.5μm、1~2μm、5μmの7種類の合成炭酸カルシウム、略立方体状の形状、カルサイト結晶
シランカップリング剤;3-アミノプロピルトリメトキシシラン(アミノシラン、信越化学工業社製、商品名「KBM-903」)、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(エポキシシラン、信越化学工業社製、商品名「KBM-403」)
ガラス繊維;平均繊維長3mm
【0054】
(実施例1)
平均一次粒子径が0.15μmの炭酸カルシウム粉体を攪拌混合器に入れ、炭酸カルシウム100質量部に対して、アミノシランが2質量部となるように添加し、60℃で15分間撹拌混合して、シランカップリング剤により表面処理した表面処理炭酸カルシウムを得た。
【0055】
得られた表面処理炭酸カルシウム 10質量%と、PA66 70質量%と、ガラス繊維 20質量%とを混合し、二軸押出混練機を用いて、280℃、スクリュー回転速度300rpmで溶融混練して、めっき膜用樹脂組成物を調製した。
【0056】
次に、得られためっき膜用樹脂組成物を射出成形機を用いて成形し、成形体を得た。射出成形の条件は、温度290℃、金型温度80℃とした。成形の前には、めっき膜用樹脂組成物を真空乾燥機を用いて100℃で2時間乾燥した。
【0057】
次に、得られた成形体40×40×2mmの表面を、10Mの塩酸に、50℃で2時間浸漬してエッチングを行い、めっき用樹脂成形体を得た。
【0058】
最後に、めっき用樹脂成形体のエッチングをした表面に、銅により無電解めっきを施し、めっき膜付き樹脂成形体を得た。
【0059】
(実施例2)
シランカップリング剤として、アミノシランの代わりにエポキシシランを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてめっき膜付き樹脂成形体を得た。
【0060】
(実施例3~5)
平均一次粒子径が0.15μmの炭酸カルシウムの代わりに、下記の表1に示す平均一次粒子径の炭酸カルシウムを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてめっき膜付き樹脂成形体を得た。
【0061】
(実施例6)
PA66の代わりにPPSを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてめっき膜付き樹脂成形体を得た。
【0062】
(比較例1)
炭酸カルシウムを用いなかったこと以外は、実施例1と同様にしてめっき膜付き樹脂成形体を得た。
【0063】
(比較例2)
シランカップリング剤により、炭酸カルシウムの表面処理をしなかったこと以外は、実施例1と同様にしてめっき膜付き樹脂成形体を得た。
【0064】
(比較例3~5)
平均一次粒子径が0.15μmの炭酸カルシウムの代わりに、下記の表1に示す平均一次粒子径の炭酸カルシウムを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてめっき膜付き樹脂成形体を得た。
【0065】
(評価)
実施例及び比較例で得られためっき膜付き樹脂成形体につき、以下の評価を行った。結果を下記の表1に示す。
【0066】
外観;
得られためっき膜付き樹脂成形体のめっき膜が設けられている側の表面を観察した。
【0067】
密着強度;
JISH8630「プラスチック上への装飾用電気めっき」に準拠して、めっき用樹脂成形体とめっき膜との密着強度を測定した。
【0068】
【表1】
【0069】
表1より、実施例1~6のめっき膜付き樹脂成形体では、表面に光沢があり、めっき膜の密着強度が高められていることが確認できた。
【符号の説明】
【0070】
1…めっき膜付き樹脂成形体
2…めっき用樹脂成形体
2a…主面
3…めっき膜
図1