(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】少なくとも1つの溶液中の物質の吸光度を測定する方法及び測定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/59 20060101AFI20220711BHJP
【FI】
G01N21/59 Z
(21)【出願番号】P 2018544451
(86)(22)【出願日】2017-02-23
(86)【国際出願番号】 EP2017054225
(87)【国際公開番号】W WO2017144607
(87)【国際公開日】2017-08-31
【審査請求日】2020-01-23
(32)【優先日】2016-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】597064713
【氏名又は名称】サイティバ・スウェーデン・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100207158
【氏名又は名称】田中 研二
(72)【発明者】
【氏名】オストランド,エリック
【審査官】越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-518157(JP,A)
【文献】特開昭57-090144(JP,A)
【文献】特開昭57-156542(JP,A)
【文献】特開平03-146852(JP,A)
【文献】特開2011-174852(JP,A)
【文献】特開2001-221738(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0218750(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定装置(21;21’;21’’)に設けられた少なくとも2つのフローセル(27,29;27,29’;27’’,29’’,30)に入れられた少なくとも1つの溶液中の物質の吸光度を測定する方法であって、前記方法は、
-前記測定装置(21;21’;21’’)に設けられた光源(23)から第1の光線(25)を、前記測定装置(21;21’;21’’)に設けられた光学装置(31;31’’)に向けて伝達するステップと、
-前記光学装置(31;31’’)内に、少なくとも2つのビームスプリッタ(33,35;33’’,35’’,36)を設けるステップであって、前記
少なくとも2つのビームスプリッタ(33,35;33’’,35’’,36)それぞれは、前記光源(23)から
まっすぐ前記光学装置(31;31’’)に入る前記第1の光線(25)を第1の分割光と第2の分割光に分割するように構成され、前記第1の分割光は各フローセル(27,29;27,29’;27’’,29’’,30)を通じて伝搬するためのものであり、前記第2の分割光は前記光学装置(31;31’’)から出た後に基準検出器(37)に入るものである、ステップと、
-各フローセル(27,29;27,29’;27’’,29’’,30)を通過した光を検出するステップと、
-
前記溶液中の前記物質の前記吸光度を判定するために、各フローセル(27,29;27,29’;27’’,29’’,30)を通過した検出光と
、前記基準検出器(37)によって検出された
光と、を比較するステップと
を備え、
各ビームスプリッタの透過特性は、各フローセルを通過するように等しい強度の光を提供するように、かつ、前記基準検出器に前記等しい強度の光を提供するように構成され、前記基準検出器(37)は、前記光源(23)からの前記第1の光線(25)の経路において前記ビームスプリッタの後に配置されて
おり、
前記少なくとも2つのビームスプリッタ(33,35;33’’,35’’,36)は、前記第1の光線(25)に沿って前記光源(23)と前記基準検出器(37)との間に配置されている、方法。
【請求項2】
-前記少なくとも2つのビームスプリッタ(33,35;33’’,35’’,36)を、前記光源(23)からの前記第1の光線(25)の経路に沿って配置し、各ビームスプリッタからの光の反射された部分が、前記フローセル(27,29;27,29’;27’’,29’’,30)のそれぞれを通過するステップ、を更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ビームスプリッタは、それぞれ半透過鏡又はビーム分割プリズムを含み、前記半透過鏡又はビーム分割プリズムはそれぞれ半反射面を有し、前記方法は、
-前記測定装置(21,21’)に設けられた光源(23)からの第1の光線(25)を、前記光学装置(31)に設けられた前記半透過鏡又はビーム分割プリズムの前記半反射面(33)の第1の表面に向けて伝搬するステップであって、前記第1の表面は前記第1の光線(25)の前記光の方向に対して角度が付けられている、ステップと、
-前記第1の表面(33)からの入射光の1/3を反射し、前記光の2/3を通過させるステップと、
-前記第1の表面(33)を通過した前記光を、前記光学装置(31)に設けられた前記半透過鏡又はビーム分割プリズムの前記半反射面(33)の第2の表面(35)に入射させるステップであって、前記第2の表面(35)は前記入射光の方向に対して角度が付けられている、ステップと、
-前記第2の表面(35)からの前記入射光の半分を反射し、前記入射光の半分を通過させるステップと、
-前記第1の表面(33)から反射された前記光を、第1の溶液を含む第1のフローセル(27)に供給するステップと、
-前記第2の表面(35)から反射された前記光を、第2の溶液を含む第2のフローセル(29;29’)を介して提供するステップと、
-前記測定装置(21;21’)に設けられた第1の検出器(47)によって、前記第1のフローセル(27)を通過した光を検出するステップと、
-前記測定装置(21;21’)に設けられた第2の検出器(49)によって前記第2のフローセル(29;29’)を通過した光を検出するステップと、
-前記基準検出器(37)によって前記第2の表面(35)を通過した光を検出するステップと、
を備える、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
測定装置(21;21’;21’’)の少なくとも2つのフローセル(27,29;27,29’;27’’,29’’,30)に設けられた少なくとも1つの溶液中の物質の吸光度を測定する測定装置(21;21’;21’’)であって、前記測定装置(21;21’;21’’)は、
-第1の光線(25)を
まっすぐ基準検出器(37)に送信する光源(23)と、
-前記少なくとも2つのフローセル(27,29;27,29’;27’’,29’’,30)と、
-異なる透過特性を有する少なくとも2つのビームスプリッタ(33,35;33’’,35’’,36)を含む光学装置(31;31’’)であって、前記
少なくとも2つのビームスプリッタ(33,35;33’’,35’’,36)それぞれは、光源(23)から入る第1の光線(25)を第1の分割光と第2の分割光とに分割するように構成され、前記第1の分割光は各フローセル(27,29;27,29’;27’’,29’’,30)を通過し、前記第2の分割光は光学装置(31;31’’)の直後に
前記基準検出器(37)に入る、光学装置(31;31’’)と、
-フローセル(27,29;27,29’;27’’,29’’,30)を通過した光を検出するために各フローセル(27,29;27,29’;27’’,29’’,30)の後に1つずつ配置された検出器(47,49;47’’,49’’,50)と、
を備え、
各ビームスプリッタの前記透過特性は、各フローセルを通過するように等しい強度の光を提供するように、かつ、前記基準検出器に前記等しい強度の光を提供するように構成され、前記基準検出器(37)は、前記光源(23)からの前記第1の光線(25)の経路において前記ビームスプリッタの後に配置されて
おり、
前記少なくとも2つのビームスプリッタ(33,35;33’’,35’’,36)は、前記第1の光線(25)に沿って前記光源(23)と前記基準検出器(37)との間に配置されている、測定装置(21;21’;21’’)。
【請求項5】
前記少なくとも2つのビームスプリッタは、半透過鏡(33,35;33’’,35’’,36)であり、前記光源(23)からの前記第1の光線(25)の経路に沿って配置され、各半透過鏡からの光の反射部分(39,43)がそれぞれの前記フローセル(27,29,27,29’;27’’,29’’,30)を通過する、請求項4に記載の測定装置(21;21’;21’’)。
【請求項6】
前記光学装置(31)は、
-半透過鏡面に入る入射光の1/3を反射し、2/3を通過させる第1の半透過鏡(33)であって、前記光源(23)から前記第1の光線(25)に向かってある角度で前記測定装置(21;21’;21’’)内に配置される、前記第1の半透過鏡(33)と、
-半透過鏡面に入る入射光の1/2を反射し、1/2を通過させる第2の半透過鏡(35)であって、前記第1の半透過鏡(33)を通過した光に向かってある角度で前記測定装置(21;21’;21’’)内に配置される、前記第2の半透過鏡(35)と
を含み、
前記測定装置(21;21’;21’’)は、更に
-第1の溶液を含む第1のフローセル(27)であって、前記第1の半透過鏡(33)から反射された光の経路に配置された、第1のフローセル(27)と、
-第2の溶液を含む第2のフローセル(29;29’)であって、前記第2の半透過鏡(35)から反射された光の経路に配置された、第2のフローセル(29;29’)と、
-前記第1のフローセル(27)を通過した光を検出するために配置された第1の検出器(47)と、
-前記第2のフローセル(29;29’)を通過した光を検出するために配置された第2の検出器(49)と、
-前記第2の半透過鏡(35)を通過した光を検出するために配置された基準検出器(37)と
を含む、請求項4又は5に記載の測定装置(21;21’;21’’)。
【請求項7】
前記光学装置(31’’)は、
-半透過鏡面に入射する光の1/4を反射し、3/4を通過させる第1の半透過鏡(33’’)であって、光源(23)から前記第1の光線(25)に向かってある角度で前記測定装置(21;21’;21’’)内に配置される、前記第1の半透過鏡(33’’)と、
-半透過鏡面に入射する光の1/3を反射し、2/3を通過させる第2の半透過鏡(35’’)であって、前記第1の半透過鏡(33’’)を通過した光に向かってある角度で前記測定装置(21;21’;21’’)内に配置される、前記第2の半透過鏡(35’’)と
-半透過鏡面に入射する光の1/2を反射し、1/2を通過させる第3の半透過鏡(36)であって、前記第2の半透過鏡(35’’)を通過した光に向かってある角度で前記測定装置(21;21’;21’’)内に配置される、前記第3の半透過鏡(36)と
を含み、
前記測定装置(21;21’;21’’)は、
-第1の溶液を含む第1のフローセル(27’’)であって、前記第1の半透過鏡(33’’)から反射された光の経路に配置された、第1のフローセル(27’’)と、
-第2の溶液を含む第2のフローセル(29’’)であって、前記第2の半透過鏡(35’’)から反射された光の経路に配置された、第2のフローセル(29’’)と、
-第3の溶液を含む第3のフローセル(30)であって、前記第3の半透過鏡(36)から反射された光の経路に配置された、第3のフローセル(30)と、
-前記第1のフローセル(27’’)を通過した光を検出するために配置された第1の検出器(47’’)と、
-前記第2のフローセル(29’’)を通過した光を検出するために配置された第2の検出器(49’’)と、
-前記第3のフローセル(30)を通過した光を検出するために配置された第3の検出器(50)と、
-前記第3の半透過鏡(36)を通過した光を検出するために配置された基準検出器(37)と
を含む、請求項5に記載の測定装置(21;21’;21’’)。
【請求項8】
前記フローセル(27,29’)は、異なる経路長を備える、請求項5乃至7のいずれか1項に記載の測定装置(21;21’;21’’)。
【請求項9】
測定装置(21;21’;21’’)の少なくとも2つのフローセル(27,29;27,29;27’’,29’’,30)に入れられた少なくとも1つの溶液中の物質の吸光度を測定する前記測定装置(21;21’;21’’)であって、前記測定装置(21;21’;21’’)は、
光を放射する光源と、前記光源から所定の光強度で放射された前記光を伝搬させる経路(25)と、
光学要素であって、
前記光を第1及び第2の部分に分割するように構成された第1のビームスプリッタと、
前記第2の部分を第3及び第4の部分に分割するように構成された第2のビームスプリッタと、を含む、光学要素と、
前記第2のビームスプリッタを通過した光を検出するように配置された基準検出器
であって、前記経路(25)は前記光源から前記基準検出器までまっすぐである、基準検出器と、
を備え、
前記第1のビームスプリッタは、前記第1の部分を前記2つのフローセル(27,29;27,29’;27’’,29’’,30)の第1のフローセル(27;27’’)に向かって伝播するように構成され、前記第2の部分を前記第2のビームスプリッタに向かって伝搬するように構成され、
前記第2のビームスプリッタは、前記第3の部分を前記2つのフローセル(27,29;27,29’;27’’,29’’,30)の第2のフローセル(29;29’)に向かって伝播するように構成され、
各ビームスプリッタの透過特性は、各フローセルを通過するように等しい強度の光を提供するように、かつ、前記基準検出器に前記等しい強度の光を提供するように構成され
ており、
前記第1のビームスプリッタ及び前記第2のビームスプリッタは、前記経路(25)に沿って前記光源と前記基準検出器との間に配置されている、測定装置(21;21’;21’’)。
【請求項10】
前記少なくとも2つのフローセル(27,29;27,29’;27’’,29’’,30)は、2つのフローセルを備え、前記第1及び第3の部分は約33.3%の前記光強度を有し、前記光学要素は、同じく約33.3%の前記光強度を有する前記第4の部分を基準検出器(37,37’’)に向けて伝搬するように更に構成される、請求項9に記載の測定装置(21;21’;21’’)。
【請求項11】
前記少なくとも2つのフローセル(27,29;27,29’;27’’,29’’,30)は、3つのフローセルを備えて、前記光学要素は、光の前記第4の部分を、第3のフローセル(30)に向かって伝搬するための第5の部分と第6の部分に分割するように構成された第3のビームスプリッタを更に含み、前記第1、第3及び第5の部分はそれぞれ約25%の前記光強度を有し、光学要素は約25%の前記光強度を有する前記第6の部分を基準検出器(37,37’’)に向かって伝播するように更に構成される、請求項9に記載の測定装置(21;21’;21’’)。
【請求項12】
前記ビームスプリッタはそれぞれ、半透過鏡と、ビーム分割プリズム、又はビーム分割光ガイドを含む、請求項9乃至11のいずれか1項に記載の測定装置(21;21’;21’’)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの溶液中の物質の吸光度を測定する方法及び測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの物質は、その化学組成のために紫外線又は可視光を吸収する。物質による光の吸収は、そのような物質の存在を検出し、そのような物質の濃度を測定するための基礎として長年にわたって用いられてきた。物質の濃度は、ランベルトベールの法則(Beer Lambert Law)を用いて求めることができ、
A=Ebc
ここで、
Aは吸光度であり、
EはLmol-1cm-1の単位によるモル吸光度であり、
bはcmで定義されるサンプルの光路長であり、
cは溶液中の化合物の濃度であり、mol-1で表される。
【0003】
Emaxは、所定の波長における物質の最大吸収を表す。
【0004】
UV領域は、1nm~400nmの領域の波長の光から成ると考えられ、180nm~300nmの波長の光は「遠紫外」として知られている。遠紫外(UV)領域で吸収する物質を検出するほとんどの分析機器は、水銀灯、重水素ランプ又はキセノンフラッシュランプを光源として使用する。このような機器の一例は、1つ以上のUV吸収物質を含有する溶液を、UV光源(例えば水銀灯)とUV検出器(例えば光電子増倍管又はフォトダイオード)との間を通過させるフローセルであり、検出器に到達するUV光の強度の変化は、溶液中のUV吸収物質の濃度に関連する。
【0005】
タンパク質、核酸及びペプチドの検出は、環境科学、生物学及び化学を含む多くの分野において非常に重要である。タンパク質は、遠UV領域で主に2つの吸収ピークを有し、1つは約190nmに最大値を有する非常に強い吸収帯であってペプチド結合の吸収によるものであり、もう1つは、芳香族アミノ酸(例えばチロシン、トリプトファン及びフェニルアラニン)による光吸収による比較的強度が弱い約280nmのピークである。
【0006】
核酸は約260nmのUV光を吸収し、核酸のいくつかのサブユニット(プリン)は、260nmをわずかに下回る最大吸光度を有し、他(ピリミジン)は260nmをわずかに上回る最大値を有する。ほぼ全てのタンパク質は、吸光性芳香族アミノ酸を含有するため、約280nmに最大吸光度を有する。タンパク質濃度を検出し測定するために使用される分析システムの検出器の光源は、従来は水銀輝線灯であった。水銀は280nmでなく254nmの波長を発光するため、水銀灯によって生成された254nmの光をより長い波長に変換するために蛍光コンバータが必要であり、バンドパスフィルタが約280nmの領域を切り出すために使用される。水銀灯の寿命は比較的短く、時間とともに不安定になることがあり、更にこれらのランプの廃棄は環境問題につながる可能性がある。重水素ランプ及びキセノンフラッシュランプなどの紫外線を発生させるために使用される他のランプは、高電圧を必要とし、複雑な電子機器を必要とし、時間とともに不安定になることが多く不利である。現在使用されている全ての紫外光源は、比較的大きく、したがって、分析機器の小型化には不適当である。更に、全てのランプは、動作に必要な高電圧により相当量の熱を発生する。
【0007】
国際公開第2007/062800号明細書及び国際公開第2013/178770号明細書は、液体サンプル中の物質の濃度の分析用の光源としてのUV LEDの使用を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2007/062800号
【文献】国際公開第2013/178770号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
吸光度を液体流路内の複数の場所で測定する必要がある用途によっては、同じ器具内で複数のUV検出器を使用する必要がある。長い液体流路は、例えば、バンド広帯化によるなど不利であるため、装置をコンパクトにし、それによってキャピラリ(液体流路)の長さを短くすることが重要である。
【0010】
本発明の目的は、溶液中の物質の光の吸光度を測定するための改良された方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これは、測定装置に設けられた少なくとも2つのフローセルに設けられた少なくとも1つの溶液中の物質の吸光度を測定する方法によって達成され、前記方法は、
-測定装置に設けられた光源から第1の光線を、測定装置に設けられた光学装置に向けて伝達するステップと、
-光学装置内に、少なくとも2つのビームスプリッタ、例えば、特定の透過特性を有する半透過鏡を設けるステップであって、前記光学装置は、光源から光学装置に入る第1の光線を別個の光部分に分割するように構成され、1つは各フローセルを通過し、もう1つは光学装置の直後に基準検出器に入るものである、ステップと、
-各フローセルを通過した光を検出するステップと、
-各フローセルを通過した検出光と、溶液中の物質の吸光度を判定するために基準検出器によって検出された光とを比較するステップと
を備える。
【0012】
これはまた、測定装置の少なくとも2つのフローセルに設けられた少なくとも1つの溶液中の物質の吸光度を測定する測定装置によって達成され、前記測定装置は、
-第1の光線を送信する光源と、
-前記少なくとも2つのフローセルと、
-少なくとも2つのビームスプリッタ、例えば異なる透過特性を有する半透過鏡を含む光学装置であって、前記光学装置は、光源から入る第1の光線を別個の光部分に分割するように構成され、1つは各フローセルを通過し、もう1つは光学装置の直後に基準検出器に入る、光学装置と、
-フローセルを通過した光を検出するために各フローセルの後に設けられた1つの検出器と
を備える。
【0013】
これにより、同じ装置内で同じ光源及び基準検出器を使用して複数の測定を提供することができる。複数の測定に同じ光源及び同じ基準検出器を使用することにより、測定間の一貫性が向上し、測定結果を直接比較できる可能性を改善される。
【0014】
更に、単位面積あたりより多くの機能を持つことができる機器は、機器全体の性能にとって有益である。
【0015】
用途によっては、UV吸収測定で非常に大きなダイナミックレンジをカバーする能力が必要とされる。この要件を満たす方法は、異なる経路長の2つのUVフローセルを連続して配置することである。この装置を用いると吸光度の高い物質と低い物質の両方を測定することができる。このような測定を行うには、2つのUVフローセル間の距離を短くすることが不可欠である。2つのUV検出器を同一のモジュールの近くに配置することによりこれが可能になる。
【0016】
一実施形態では、測定装置の少なくとも2つのビームスプリッタは、光源からの第1の光線のラインに設けられ、各半透過鏡からの光の反射部分がそれぞれのフローセルを通過し、各半透過鏡の透過特性は、各フローセルを通過するように等しく大きな光部分を提供するよう、及び測定装置に含まれる基準検出器に更なる光部分を提供するのに適しており、前記基準検出器は、光源からの第1の光線のラインにビームスプリッタの後に設けられている。
【0017】
更なる実施形態が、従属請求項に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、従来技術のUV検出器を概略的に示す。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態による溶液中の物質の吸光度を測定する測定装置を概略的に示す。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態による、溶液中の物質の吸光度を測定する測定装置を概略的に示す。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態による、溶液中の物質の吸光度を測定する測定装置を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、従来技術のUV検出器1を概略的に示す。これはビームスプリッタとも呼ばれ、半透過鏡7に向けて光線5を伝達する光源3、例えばLEDを含む。半透過鏡は、光線5に向かって90度とは異なる角度でUV検出器内に構成される。入射光の一部が反射され、ここでは反射部分9と呼ばれる。反射部分9を受け取る基準検出器11が設けられている。半透過鏡7への入射光の一部は、半透過鏡を通って伝達される。この光の部分を透過部分13と呼ぶ。光の透過部分13は、溶液を含むフローセル15を通って導かれる。この溶液は、このUV検出器によってUV光の吸光度が測定される溶液である。溶液は、例えば、溶液の吸光度のインライン測定用のクロマトグラフィシステムから採取できる。溶液中の特定の物質は、特定の波長のUV光を吸収する。例えば、特定のタンパク質を探す場合、対応する波長が光源3から伝達され、前記光の吸光度により溶液中のタンパク質の量を計る。
【0020】
フローセル15は、フローセルを通過する光用の透明な入口開口部及び出口開口部を有する必要がある。フローセルの後に、フローセルを通過した光及びフローセルに設けられたサンプルを検出するサンプル検出器17が設けられている。基準検出器11及びサンプル検出器17からの検出器応答を比較して、溶液中の吸光度を計る。
【0021】
図2は、本発明の一実施形態による溶液中の物質の吸光度を測定する測定装置21を概略的に示す。
【0022】
測定装置21は、第1の光線25を伝達する光源23を備える。光源は、例えば、レーザ又はLEDであってもよく、場合によってはバンドパスフィルタとともに用いられてもよい。測定装置21は更に、本発明による、少なくとも2つのフローセルを含む。本実施形態では、第1のフローセル27及び第2のフローセル29が示される。フローセル27、29は、測定に使用される光に対して少なくとも部分的に透明である必要がある。本発明の測定目的のためにフローセルを通過する光は、フローセル構造によって吸収されるべきではない。各フローセル27、29は、吸光度を測定すべき溶液を含む。これは、第1及び第2のフローセル27、29の両方において同一の溶液又は異なる溶液であり得る。先行技術に関連して上述したように、溶液は、例えばクロマトグラフィにおけるインライン測定用のクロマトグラフィシステムから採取することができる。
【0023】
測定装置21は、光学装置31を更に備える。本発明によれば、光学装置31は、少なくとも2つのビームスプリッタを含み、本実施形態では、異なる透過特性を有する半透過鏡を含む。この図示された実施形態では、光学装置31は、第1の半透過鏡33及び第2の半透過鏡35を備える。本発明によれば、前記光学装置31は、光源23から入る第1の光線25を別個の光部分に分割するように構成され、1つは各フローセル27、29を通過し、もう1つは基準検出器37に直接入る。
図2に示す実施形態では、第1の半透過鏡33は、光源23から第1の光線25に向かってある角度で測定装置21内に構成される。角度は本質的に45度であるように示されているが、90度ではない別の角度も使用することができる。第1の光線25は、第1の半透過鏡33に対して部分的に反射され、部分的に透過する。反射された部分はここでは第1の反射部分39と呼び、透過した部分はここでは第1の透過部分41と呼ぶ。
【0024】
第2の半透過鏡35は、本発明の本実施形態では、第1の半透過鏡33の後に、第1の光線25の方向の直線上に構成される。また、第2の半透過鏡35は、第1の半透過鏡33を透過した第1の透過部分41である入射光に向けてある角度をなして構成される。角度はここでは実質的に45度であるが、90度ではない別の角度であってもよい。第2の半透過鏡35への入射光は、第2の半透過鏡35に対して部分的に反射され、部分的に透過する。反射された部分はここでは第2の反射部分43と呼び、透過された部分はここでは第2の透過部分45と呼ぶ。
【0025】
第1のフローセル27は、第1の反射部分39が第1のフローセル27を通過するように測定装置21に構成され、第2のフローセル29は、第2の反射部分43が第2のフローセル29を通過するように測定装置21に構成される。各半透過鏡の透過特性は、本発明の一実施形態では、基準検出器37に向かって各フローセル27、29を通過するのに等しく大きさの光部分を提供するのに適する。しかしながら、本発明の別の実施形態では、光部分は必ずしも等しく大きくない。一実施形態では、フローセルを通過する光部分は等しく大きいが、基準検出器に向かう光部分は異なってもよい。別の実施形態では、全ての光部分のサイズが異なり、代わりに適切な増幅を各検出器に設けることができる。
【0026】
基準検出器37は、光源23からの第1の光線25のライン上の半透過鏡の後に測定装置21内に設けられる。基準検出器37は、第2の透過部分45が基準検出器37に伝達されて検出されるように、測定装置21内に構成される。
【0027】
基準検出器37まで2つのフローセル27、29を通過する等しく大きい光部分を達成するために、本実施形態の半透過鏡の透過特性は以下のように、第1の半透過鏡33は、光の1/3を反射させ、光の2/3を透過させる必要があり、第2の半透過鏡35は、光の1/2を反射させ、光の1/2を透過させる必要がある。この構成では、第1の光線25からの光の1/3がフローセル27、29の各々を透過し、光の1/3が基準検出器37によって受け取られる。各フローセルを通過し、可能性として基準検出器に入る等しく大きい光の部分を有するという利点は、検出器からの出力を直接比較できることである。
【0028】
本発明の利点は、1つの光源のみが2つ以上の測定に使用されることである。1つの光源は、測定に同じ波長が使用されることを確実にする。本発明による別の利点は、2つの別個の測定に同じ基準検出器を使用することは、従来技術による2つの別個の測定装置からの結果を比較する際に問題となる可能性がある温度ドリフトに関連する可能性のある問題を制限する。更に、光源からの光強度の調節が、基準検出器からの制御ループによって行うことができ、本発明による場合と同じ制御ループの下で複数の測定を行う場合、異なる測定に異なる光強度を提供するというリスクが回避される。これは、各測定に対して1つの制御ループが提供される従来技術の装置においてリスクであり得る。別の利点は、スペースが節約されることである。例えば、UV検出器がクロマトグラフィシステム又はフィルタシステムのシャーシ上に設けられる場合、従来技術の1つのUV検出器のみが設けられていたシャーシの同じ位置に、2つ以上のUV検出器を設けることができる。
【0029】
測定装置21は、フローセルを通過した光を検出するために、各フローセルの後に設けられる1つの検出器を更に備える。
図2に示す実施形態では、第1のフローセル27を通過した後に第1の反射部分39を受け取るために第1の検出器47が構成され、第2のフローセル29を通過した後に第2の反射部分43を受け取るために第2の検出器49が構成される。第1及び第2の検出器47、49は光を検出し、基準検出器37によって検出された光と比較することにより、各フローセルにおけるサンプルの吸光度を判定することができる。上述のように、例えば、サンプル中のこの特定の波長の光を吸収している特定のタンパク質の量は、これから導き出すことができる。
【0030】
図3は、本発明の一実施形態による溶液中の物質の吸光度を測定する測定装置21’を概略的に示す。本発明の本実施形態による測定装置21’のほとんどの細部及び部分は、
図2に示された実施形態の部分と同一であるので、名称及び番号は同じであり、その説明は繰り返さない。唯一の違いは、この実施形態では、フローセル27、29’が異なる経路長を有することができることが示されている。第2のフローセル29’は、第1のフローセル27よりも大きな経路長を有するように示されている。用途によっては、UV吸収測定で非常に大きなダイナミックレンジをカバーする能力が必要とされる。この要件を満たす方法は、異なる経路長の2つのUVフローセルを連続して配置することである。この装置を用いると吸光度の高い物質と低い物質の両方を測定することができる。このような測定を行うには、2つのUVフローセル間の距離を短くすることが不可欠である。2つのUV検出器を同一のモジュールの近くに配置することによりこれが可能になる。
【0031】
図4は、本発明の一実施形態による溶液中の物質の吸光度を測定する測定装置21’’を概略的に示す。設定は、先に説明した実施形態と同様であり、いくつかの明白な詳細は繰り返さない。部品の番号と名前は、以前に使用された番号と名前に対応する。
図2及び
図3に示す実施形態との相違点は、2つの代わりに、3つのフローセル及び3つの半透過鏡を使用することである。同じ論理によって、4つのフローセルと4つの半透過鏡、又は5つのフローセルと5つの半透過鏡などを含む測定装置を設けることができる。
【0032】
図4をより詳細に説明する。測定装置21’’は、第1の光線25を伝達する光源23を備える。この実施形態では、測定装置21’’は、3つのフローセル、第1のフローセル27’’、第2のフローセル29’’及び第3のフローセル30を備える。測定装置21’’は、光学装置31’’を更に備える。本実施形態では、光学装置31’’は、本実施形態では光ガイド、この場合は光ファイバ25’内に案内された第1の光線25の線に沿って、互いの後に構成された3つの半透過鏡を備える。ここで、半透過鏡は、第1の半透過鏡33’’、第2の半透過鏡35’’及び第3の半透過鏡36と呼ばれる。第1、第2及び第3の半透過鏡33’’、35’’’、36の透過特性は、本発明の一実施形態では、3つのフローセルのそれぞれを通過する光の3つの反射部分と、可能性として第3の半透過鏡36からの透過部分も全て等しく大きいように選択される。上述したように、光部分は必ずしも等しく大きくする必要はない。代わりに、異なるサイズの光部分を補償するために、検出器に適切な増幅を提供することができる。第3の半透過鏡36からの透過部分を受光して検出するために、3つの半透過鏡の後に、第1の光線25のライン上に基準検出器37’’が設けられる。更に、第1のフローセル27’’を通過した後に、第1の半透過鏡33’’からの光の反射部分を受光して検出する第1の検出器47’’が設けられ、第2のフローセル27’’を通過した後に、第2の半透過鏡35’’からの光の反射部分を受光し検出する第2の検出器49’’が設けられ、第3のフローセル30を通過した後に、第3の半透過鏡36からの光の反射部分を受光して検出する第3の検出器50が設けられる。
【0033】
3つのフローセル27’’、29’’、30を通過して基準検出器37’’に入る等しく大きな光部分を達成するために、第1の半透過鏡33’’は半透過鏡面に入る光の1/4を反射し、3/4を通過させるように構成される。更に、第2の半透過鏡35’’は、半透過鏡面に入る光の1/3を反射し、2/3を通過させるように構成され、第3の半透過鏡36は、半透過鏡面に入る光の1/2を反射し、1/2を通過させるように構成される。
【0034】
更に、第1のフローセル27’’は、第1の溶液を含み、第1の半透過鏡33’’から反射される光の経路に構成される。第2のフローセル29’’は、第1の溶液と同じでも異なっていてもよい第2の溶液を含む。第2のフローセル29’’は、第2の半透過鏡35’’から反射される光の経路に構成される。第3のフローセル30は、第1及び第2の溶液と同じでも異なっていてもよい第3の溶液を含む。第3のフローセル30は、第3の半透過鏡36にから反射される光の経路に構成される。
【0035】
本実施形態においても、流路の長さを変えることができる。
【0036】
上述の実施形態は、「光線」25を用いて動作するものとして説明した。疑念を避けるために、このような光線は空気を通って伝播するか、又は光ガイド、例えば
図4に示す光ファイバ25’によって導かれ得ることに注意すべきである。上述の実施形態は、半透過鏡33、35、33’’、35’’、36の形態のビームスプリッタを記載しているが、他のビームスプリッタを鏡の代わりに使用して同等の効果を得ることができ、例えば、プリズムビームスプリッタ、あるいはバイコニカルテーパ(FBT)スプリッタ又は平面光波回路(PLC)スプリッタなどの光ファイバスプリッタを使用してビームを分割することができる。そのような代替案は、図示された概略図において想定されている。本発明は、測定装置の少なくとも2つのフローセル(27、29;27、29;27’’、29’’、30)に設けられた少なくとも1つの溶液中の物質の吸光度を測定する測定装置であって、測定装置は、光を放射するソースと、光源から放射された光を光強度で伝搬させる経路25と、光学要素であって、光を第1及び第2の部分に分割するように構成された第1のビームスプリッタと、第2の部分を第3及び第4の部分に分割するように構成された第2のビームスプリッタとを含む、光学要素とを備え、第1のビームスプリッタは、第1の部分を2つのフローセルの第1のフローセルに向かって伝播するように構成され、第2の部分を第2のビームスプリッタに向かって伝搬するように構成され、第2のビームスプリッタは、第3の部分をフローセルの第2のフローセルに向かって伝播するように構成されている。
【0037】
実施形態では、前記少なくとも2つのフローセルは、2つのフローセルを備えてもよく、前記第1及び第3の部分は約33.3%の光強度を有し、前記光学要素は、同じく約33.3%の光強度を有する第4の部分を基準検出器に向けて伝搬するように更に構成されてもよい。
【0038】
実施形態において、前記少なくとも2つのフローセルは、3つのフローセルを備えてもよく、光学要素は、光の第4の部分を、第3のフローセルに向かって伝搬するための第5の部分と第6の部分に分割するように構成された第3のビームスプリッタを更に含んでもよく、第1、第3及び第5の部分はそれぞれ約25%の光強度を有することができ、光学要素は約25%の光強度を有する第6の部分を基準検出器に向かって伝播するように更に構成することができる。
【0039】
このような測定装置のビームスプリッタはそれぞれ、半透過鏡と、ビーム分割プリズム、又はビーム分割光ガイドを含む。
【符号の説明】
【0040】
1 UV検出器
3 光源
5 第1の光線
7 半透過鏡
9 第1の反射部分
11 基準検出器
13 透過部分
15 フローセル
17 サンプル検出器
21 測定装置
21’ 測定装置
21’’ 測定装置
23 光源
25 経路、第1の光線
25’ 光ファイバ
27 第1のフローセル
27’’ 第1のフローセル
29 第2のフローセル
29’ 第2のフローセル
29’’ 第2のフローセル
30 第3のフローセル
31 光学装置
31’’ 光学装置
33 第1の半透過鏡
33’’ 第1の半透過鏡
35 第2の半透過鏡
35’’ 第2の半透過鏡
35’’’ 第2の半透過鏡
36 第3の半透過鏡
37 基準検出器
37’’ 基準検出器
39 第1の反射部分
41 第1の透過部分
43 第2の反射部分
45 第2の透過部分
47 第1の検出器
49 第2の検出器
50 第3の検出器