(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】改善されたハイブリッドテロデンドリマー
(51)【国際特許分類】
C08G 65/329 20060101AFI20220711BHJP
C08G 65/333 20060101ALI20220711BHJP
C08G 65/332 20060101ALI20220711BHJP
A61K 31/407 20060101ALI20220711BHJP
A61K 31/405 20060101ALI20220711BHJP
A61K 31/421 20060101ALI20220711BHJP
A61K 31/192 20060101ALI20220711BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220711BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20220711BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20220711BHJP
A61K 51/06 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
C08G65/329
C08G65/333
C08G65/332
A61K31/407
A61K31/405
A61K31/421
A61K31/192
A61P29/00
A61K47/60
A61K47/54
A61K51/06 200
(21)【出願番号】P 2019514124
(86)(22)【出願日】2017-09-15
(86)【国際出願番号】 US2017051862
(87)【国際公開番号】W WO2018053316
(87)【国際公開日】2018-03-22
【審査請求日】2020-09-03
(32)【優先日】2016-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100196977
【氏名又は名称】上原 路子
(72)【発明者】
【氏名】キット エス.ラム
(72)【発明者】
【氏名】ユアンペイ リー
(72)【発明者】
【氏名】ガウラブ バラドワジ
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-514431(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 65/00-65/48
A61K 31/407
A61K 31/405
A61K 31/421
A61K 31/192
A61P 29/00
A61K 47/60
A61K 47/54
A61K 51/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造を有する化合物であって、
【化1】
L’及びL”のそれぞれは独立して、結合又はリンカーEbes、アミノカプロン酸、5-アミノペンタン酸、4-アミノブタン酸、β-アラニン又はコハク酸であり、
PEGは1~50kDaの分子量を有し、
R’はそれぞれ独立して、コール酸、(3α,5β,7α,12α)-7,12-ジヒドロキシ-3-(2,3-ジヒドロキシ-1-プロポキシ)-コール酸(CA-4OH)、(3α,5β,7α,12α)-7-ヒドロキシ-3,12-ジ(2,3-ジヒドロキシ-1-プロポキシ)-コール酸(CA-5OH)、及び(3α,5β,7α,12α)-7,12-ジヒドロキシ-3-(3-アミノ-2-ヒドロキシ-1-プロポキシ)-コール酸(CA-3OH-NH
2)から成る群から選択され、
R’’はそれぞれ独立してビオチン、trans-桂皮酸、ラウリン酸、リノール酸、リポ酸、ニコチン酸、オクタン酸、オレイン酸、レチノイン酸、ソルビン酸、ピロミド酸、コーヒー酸、リシノール酸、パントテン酸、アミノカプロン酸、リボフラビン、ピリドキシン、コレカルシフェロール、及び非ステロイド性抗炎症薬から成る群から選択され、
分岐モノマー単位Xはジアミノカルボン酸であり、かつ、
Y
1はそれぞれチオール、ボロン酸、1,2-ジオール、若しくはシステイン基から成る群から選択される、化合物。
【請求項2】
分岐モノマー単位Xがそれぞれリジンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Xがそれぞれリジンであり、
PEGがPEG5kであり、
R’がそれぞれ、コール酸であり、かつ、
R’’がそれぞれ、エトドラク、インドメタシン、ナプロキセン、オキサプロジン、及びスリンダクから成る群から選択される、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
分岐モノマー単位Xがそれぞれリジンであり、かつ、
L’がそれぞれ、リンカーEbes又はコハク酸である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
L”がそれぞれ独立して結合又はリンカーEbesであり、
PEGが1~50kDaの分子量を有し、
R’がそれぞれ、コール酸であり、
R’’がそれぞれ、桂皮酸及びリノール酸から成る群から選択され、
分岐モノマー単位Xがそれぞれリジンであり、かつ、
Y
1がそれぞれシステインである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
以下の式の化合物であって、
【化2】
Xは分岐モノマー単位であり、
Lは結合又はリンカーであり、
PEGはそれぞれ、ポリエチレングリコール(PEG)ポリマーであり、PEGポリマーはそれぞれ1~50kDaの分子量を有し、
R’がそれぞれ独立して、コール酸、(3α,5β,7α,12α)-7,12-ジヒドロキシ-3-(2,3-ジヒドロキシ-1-プロポキシ)-コール酸、(3α,5β,7α,12α)-7-ヒドロキシ-3,12-ジ(2,3-ジヒドロキシ-1-プロポキシ)コール酸、及び(3α,5β,7α,12α)-7,12-ジヒドロキシ-3-(3-アミノ-2-ヒドロキシ-1-プロポキシ)-コール酸から成る群から選択され、かつ、
R’’がそれぞれ独立してチオール、システイン及びN-アセチルシステインから成る群から選択される架橋性基であり、架橋性基がそれぞれ独立して、結合又はリンカーを介して異なる分岐モノマー単位Xに結合される、化合物。
【請求項7】
R’’がそれぞれ独立してリンカーEbes、アミノカプロン酸、5-アミノペンタン酸、4-アミノブタン酸、4-アミノブタン酸、又はβ-アラニンを介して異なる分岐モノマー単位Xに結合される、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
分岐モノマー単位Xがそれぞれ独立してジアミノカルボン酸、ジヒドロキシカルボン酸及びヒドロキシルアミノカルボン酸から成る群から選択される、請求項6に記載の化合物。
【請求項9】
ジアミノカルボン酸がアミノ酸である、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
分岐モノマー単位Xがそれぞれリジンである、請求項8に記載の化合物。
【請求項11】
R’がそれぞれ独立して、コール酸、(3α,5β,7α,12α)-7,12-ジヒドロキシ-3-(2,3-ジヒドロキシ-1-プロポキシ)-コール酸、(3α,5β,7α,12α)-7-ヒドロキシ-3,12-ジ(2,3-ジヒドロキシ-1-プロポキシ)コール酸、及び(3α,5β,7α,12α)-7,12-ジヒドロキシ-3-(3-アミノ-2-ヒドロキシ-1-プロポキシ)-コール酸から成る群から選択される、請求項6に記載の化合物。
【請求項12】
R’がそれぞれコール酸である、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
PEGがPEG5kである、請求項8に記載の化合物。
【請求項14】
以下の式の化合物であって、
【化3】
分岐モノマー単位Xがそれぞれリジンであり、
Lは結合又はリンカーであり、
リンカーL’が6-アミノヘキサン酸であり、
PEGがPEG5kであり、
R’がそれぞれ、コール酸であり、かつ、
R’’がそれぞれN‐アセチルシステインである、請求項6に記載の化合物。
【請求項15】
内部及び外部を有するナノ担体であって、該ナノ担体は少なくとも2つの複合体を含み、少なくとも1つの複合体は請求項1に記載の化合物であり、複合体はそれぞれ、
ポリエチレングリコール(PEG)ポリマー、
少なくとも2つのR’、ここでR’は疎水面及び親水面を有する両親媒性化合物である、並びに
PEG及び両親媒性化合物に共有結合する樹状ポリマー、を含み、
複合体はそれぞれ水性相溶媒において自己組織化してナノ担体を形成し、疎水性ポケットがそれぞれの両親媒性化合物の互いに対する疎水面の配向によって、ナノ担体の内部に形成され、それぞれの複合体のPEGがナノ担体の外部で自己組織化する、ナノ担体。
【請求項16】
複合体のそれぞれが請求項1に記載の化合物を含む、請求項15に記載のナノ担体。
【請求項17】
R’がそれぞれコール酸である、請求項15に記載のナノ担体。
【請求項18】
内部及び外部を有する可逆的に架橋されるナノ担体であって、該ナノ担体は少なくとも2つの複合体を含み、少なくとも1つの複合体は請求項1に記載の化合物であり、複合体はそれぞれ、
ポリエチレングリコール(PEG)ポリマー、
少なくとも2つのR’、ここでR’はそれぞれ独立して疎水面及び親水面を有する両親媒性化合物である、
架橋性基Y
1、並びに
PEG、R’及びR’’基に共有結合する樹状ポリマーを含み、
複合体はそれぞれ水性相溶媒において自己組織化してナノ担体を形成し、疎水性ポケットがそれぞれのR’の互いに対する疎水面の配向によって、ナノ担体の内部に形成され、それぞれの複合体のPEGがナノ担体の外部で自己組織化し、少なくとも2つの複合体が架橋性基を介して可逆的に架橋する、ナノ担体。
【請求項19】
複合体のそれぞれが請求項1に記載の化合物を含む、請求項18に記載のナノ担体。
【請求項20】
ナノ担体が架橋性チオール基を含む、請求項18に記載のナノ担体。
【請求項21】
R’がそれぞれコール酸である、請求項18に記載のナノ担体。
【請求項22】
請求項15~21の何れか1項に記載のナノ担体の治療有効量を含み、ナノ担体が薬物をさらに含む、疾患を治療するための医薬組成物。
【請求項23】
薬物がナノ担体の内部に隔離される疎水性薬物である、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
ナノ担体がイメージング剤をさらに含む、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項25】
ナノ担体が放射性核種をさらに含む、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項26】
請求項15~21の何れかに記載のナノ担体の治療有効量を含み、ナノ担体がイメージング剤をさらに含む、イメージングのための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年9月15日に出願した米国仮特許出願第62/395,237号の優先権を主張し、全ての目的についてその全体が本明細書に援用される。
政府のライセンス権
【0002】
本発明は、国立保健研究所によって与えられた契約番号2R01CA115483-08及び1U01CA198880-01の下で政府の援助を受けた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
対象を通じて、標的位置に小分子薬物を送達する方法及び組成物は、研究の重要分野である。タキサンは、細胞分裂の間に正常な微小管崩壊を妨げることによって働く小分子抗癌剤のベンチマーククラスである。現在、タキサンファミリーの3つのメンバー、すなわち、パクリタキセル(PTX)、ドセタキセル(DTX)及びカバジタキセル(CTX)が米国医薬品局によってその臨床使用が承認されており(
図1)、パクリタキセル(PTX)及びドセタキセル(DTX)は、乳癌、卵巣癌及び肺癌等の多くの形態の癌のフロントラインの治療選択肢として広く処方されている。CTXは、ホルモン難治性前立腺癌の治療のために承認されたタキサンファミリーの最新メンバーである。広く人気があるものの、この3つのタキサンは全て低可溶性であり、それによって医学的使用に効果的な製剤の開発を困難にしている。この3つのタキサンは、Cremophor EL/無水エタノールの混合物、又はポリソルベート80の何れかに配合され、両方とも深刻な副作用(過敏症反応、末梢神経毒性など)に関連する。癌分野のナノ医療の適用によって、PTXを負荷したヒト血清ナノ凝集体(Abraxane(登録商標))の開発及びFDA承認が進んだ。より多くの薬物を提供することができるが(アブラキサンの240mg/m
2PTX対パクリタキセルの175mg/m
2のPTX)、これらのナノ粒子は相対的に「大きく」(直径130nm)であり、臨床的有効性の改善がほとんどない。多品種のPTX及びDTXナノ製剤が発見され、もっと最近ではCTXナノ製剤が試みられた。しかし、我々の最大限の我々の知識を以ってしても、高負荷効率でタキサンファミリーの全メンバーを安定してカプセル化することができる1つのポリマー又はナノプラットフォームは存在しない。本発明はこれとその他の必要性を満足する。
【発明の概要】
【0004】
一実施形態において、本発明は式IIIの化合物を提供し、
(PEG)m-Ap-L-D(Y1)q-(R)n (III)
Aは少なくとも1つのPEG基に結合し、Dは1つのフォーカルポイント基、複数の分岐モノマー単位X、複数の架橋性基Y1、及び複数の末端基Rを有する樹状ポリマーであり、Lは樹状ポリマーのフォーカルポイント基に結合した結合又はリンカーであり、PEGはそれぞれ、ポリエチレングリコール(PEG)ポリマーであり、PEGポリマーはそれぞれ1~50kDaの分子量を有し、Rはそれぞれ独立してR’及びR’’から選択され、R’はそれぞれ独立して疎水面及び親水面を有する両親媒性化合物であり、R’’はそれぞれ独立して飽和又は不飽和脂肪酸、飽和又は不飽和カルボン酸、ビタミン又はその代謝物、酵素補因子、抗生物質及び薬物から成る群から選択され、Rはそれぞれ100g/mol超及び2000g/mol未満の分子量を有し、添字nは整数8~20であり、添字nは樹状ポリマーの末端基の数と等しく、Y1はそれぞれ独立して、チオール、ボロン酸、1,2-ジオール又はシステイン基から成る群から選択される架橋性基であり、添字mは0~5の整数であり、添字p及びqは0又は2~10である。
【0005】
別の実施形態において、本発明は式Iの化合物を提供し、
(PEG)m-L-D-(R)n (I)
Dは1つのフォーカルポイント基、複数の分岐モノマー単位X、及び複数の末端基Rを有する樹状ポリマーであり、Lは樹状ポリマーのフォーカルポイント基に結合した結合又はリンカーであり、PEGはそれぞれ、ポリエチレングリコール(PEG)ポリマーであり、PEGポリマーはそれぞれ1~50kDaの分子量を有し、Rはそれぞれ独立して直接又はリンカーLを介して樹状ポリマーのモノマーXに結合し、Rはそれぞれ独立してR’及びR’’であり、R’は疎水面及び親水面を有する両親媒性化合物であり、R’’は飽和又は不飽和脂肪酸、飽和又は不飽和カルボン酸、ビタミン又はその代謝物、酵素補因子、抗生物質及び薬物から成る群から選択され、添字nは整数8~20であり、添字nは樹状ポリマーの末端基の数と等しく、R基の数nの少なくとも4分の1はR’であり、添字mは0~5の整数である。いくつかの実施形態において、Rはそれぞれ100g/mol超及び2000g/mol未満の分子量を有する。
【0006】
別の実施形態において、本発明は式IIの化合物を提供し、
(PEG)m-Ap-L-D(Y1)q-(R)n (II)
Aは少なくとも1つのPEG基に結合し、Dは1つのフォーカルポイント基、複数の分岐モノマー単位X、及び複数の末端基を有する樹状ポリマーであり、Lは樹状ポリマーのフォーカルポイント基に結合した結合又はリンカーであり、PEGはそれぞれ、ポリエチレングリコール(PEG)ポリマーであり、PEGポリマーはそれぞれ1~50kDaの分子量を有し、Rはそれぞれ独立してR’及びR’’から選択され、R’はそれぞれ独立して疎水面及び親水面を有する両親媒性化合物であり、R’’はそれぞれ独立して飽和又は不飽和脂肪酸、飽和又は不飽和カルボン酸、ビタミン又はその代謝物、酵素補因子、抗生物質及び薬物から成る群から選択され、添字nは整数8~20であり、添字nは樹状ポリマーの末端基の数と等しく、R基の数nの少なくとも4分の1はR’であり、Y1はそれぞれ独立して、チオール、ボロン酸、1,2-ジオール又はシステイン基から成る群から選択される架橋性基であり、添字mは0~5の整数であり、添字p及びqは0又は2~10であり、添字p及びqの1つは2~10である。いくつかの実施形態において、Rはそれぞれ100g/mol超及び2000g/mol未満の分子量を有する。
【0007】
別の実施形態において、本発明は以下の式の化合物を提供し、
【化1】
Xは分岐モノマー単位であり、Lは結合又はリンカーであり、PEGはそれぞれポリエチレングリコール(PEG)ポリマーであり、PEGポリマーはそれぞれ1~50kDaの分子量を有し、R’はそれぞれ独立して疎水面及び親水面を有する両親媒性化合物であり、R’はそれぞれ独立して結合又はリンカーを介して異なる分岐モノマー単位Xに結合し、R’’はそれぞれ独立してチオール、システイン、及びN‐アセチルシステインから成る群から選択される架橋性基であり、架橋性基はそれぞれ独立して結合又はリンカーを介して異なる分岐モノマー単位Xに結合する。いくつかの実施形態において、Rはそれぞれ100g/mol超及び2000g/mol未満の分子量を有する。
【0008】
本発明は、少なくとも1つの、又は少なくとも2つの前述の複合体を含むナノ担体も提供する。いくつかの実施形態において、ナノ担体の少なくとも2つの複合体は、架橋性基を含み、1つの複合体の架橋性基は、別の複合体の架橋性基に架橋される。本発明は薬物を負荷したナノ担体も提供する。
【0009】
本発明は、前述の化合物又はナノ担体の1つ以上を調製する方法も提供し、薬物又はイメージング剤を負荷したナノ担体を含む。本発明は、前述の化合物又はナノ担体の1つ以上を投与する方法も提供し、薬物又はイメージング剤を負荷したナノ担体を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1はFDAによって承認されたタキサン薬物(左)及びPEG
5K-CA
8テロデンドリマーの化学構造を示す。
【0011】
【
図2】
図2は本明細書に開示される両親媒性ポリマーの2つの異なる実施形態を示し、(左)ハイブリッドテロデンドリマーはコレート(CA)及び有機部分(OM)末端基、及び(右)非ハイブリッドテロデンドリマーを含み、テロデンドリマー末端基は全ての有機部分(OM)である。
【0012】
【
図3】
図3は示されるテロデンドリマーの溶血アッセイの結果を示す。
【0013】
【
図4】
図4はMDA-MB-231乳癌細胞に対する示されるテロデンドリマーの細胞傷害性を示す。報告した値は、3重の試料の平均±SDである。
【0014】
【
図5】
図5Aはハイブリッドテロデンドリマーを生成する合成スキーム、
図5Bは非ハイブリッドテロデンドリマーを生成する合成スキームを示す。
【0015】
【
図6】
図6はPEGポリマーPEG
5k-NH
2のMALDI-TOF MSデータを示す。
【0016】
【
図7】
図7はハイブリッドテロデンドリマーPEG
5k-(桂皮酸)
4-CA
4のMALDI-TOF MSデータを示す。
【0017】
【
図8】
図8は非ハイブリッドテロデンドリマーPEG
5k-(桂皮酸)
8のMALDI-TOF MSデータを示す。
【0018】
【
図9】
図9はハイブリッドテロデンドリマーPEG
5k-(ソルビン酸)
4-CA
4のMALDI-TOF MSデータを示す。
【0019】
【
図10】
図10は非ハイブリッドテロデンドリマーソルビン酸PEG
5k-(ソルビン酸)
8のMALDI-TOF MSデータを示す。
【0020】
【
図11-1】
図11は代表的な示される薬物負荷ハイブリッド及び非ハイブリッドテロデンドリマーの動的光散乱法(DLS)によって測定された粒径を示す。
【
図11-2】
図11は代表的な示される薬物負荷ハイブリッド及び非ハイブリッドテロデンドリマーの動的光散乱法(DLS)によって測定された粒径を示す。
【
図11-3】
図11は代表的な示される薬物負荷ハイブリッド及び非ハイブリッドテロデンドリマーの動的光散乱法(DLS)によって測定された粒径を示す。
【0021】
【
図12】
図12はコレート(CA)を含むハイブリッドテロデンドリマーのクラス及びヒドロキシル又はアミン含有末端基の一実施形態を示す。
【0022】
【
図13】
図13はジスルフィド系架橋性ハイブリッドテロデンドリマーのクラスの一実施形態を示す。
【0023】
【
図14】
図14(左)はリポ酸系架橋性ハイブリッドテロデンドリマーのクラスの一実施形態を示し、
図14(右)は3つ以上のリポ酸系架橋性ハイブリッドテロデンドリマーを架橋するための反応スキームを示す。
【0024】
【
図15】
図15は還元反応性ジスルフィド系ハイブリッドテロデンドリマーのクラスの一実施形態を示す。
【0025】
【
図16】
図16は桂皮酸に基づいたジスルフィド架橋結合ポリマーPEG5K-(桂皮酸)4/(Cys-L-CA)4及びリノール酸に基づいたPEG5K-(リノール酸)4/(Cys-L-CA)4の合成を示す。
【0026】
【
図17】
図17はPEG
5K-(桂皮酸)
4/(Cys-L-CA)
4を使用して調製したナノ担体の容量のサイズ分布を示す。
【0027】
【
図18】
図18はPEG
5K-(リノール酸)
4/(Cys-L-CA)
4を使用して調製したナノ担体の容量のサイズ分布を示す。
【0028】
【
図19】
図19はPEG
5K-(リノール酸)
4/(Cys-L-CA)
4によるSDS安定性試験を示す。
【0029】
【
図20】
図20はPEG
5K-(リノール酸)
4/(Cys-L-CA)
4及びDTTの10mMにおけるSDS安定性試験を示す。
【0030】
【
図21】
図21はNSAIDハイブリッドテロデンドリマーの調製を示す。
【0031】
【0032】
【
図23】
図23はPEG
5K-(エトドラク)
4/(CA)
4を使用して調製したナノ担体の容量のサイズ分布を示す。
【0033】
【
図24】
図24はPEG
5K-(インドメタシン)
4/(CA)
4を使用して調製したナノ担体の容量のサイズ分布を示す。
【0034】
【
図25】
図25はPEG
5K-(ナプロキセン)
4/(CA)
4を使用して調製したナノ担体の容量のサイズ分布を示す。
【0035】
【
図26】
図26はPEG
5K-(オキサプロジン)
4/(CA)
4を使用して調製したナノ担体の容量のサイズ分布を示す。
【0036】
【
図27】
図27はPEG
5K-(スリンダク)
4/(CA)
4を使用して調製したナノ担体の容量のサイズ分布を示す。
【0037】
【
図28】
図28はPEG
5K-(Ahx-(NAc-Cys))
4/CA
4等の表面架橋性テロデンドリマーの調製を示す。
【0038】
【
図29】
図29はPEG
5K-(Ahx-(NAc-Cys))
4/CA
4を使用して調製したナノ担体の容量のサイズ分布を示す。
【0039】
【
図30】
図30はPEG
5K-(Ahx-(NAc-Cys))
4/CA
4によるSDS安定性試験を示す。
【0040】
【
図31】
図31は10mMにおけるPEG
5K-(Ahx-(NAc-Cys))
4/CA
4及びDTTによるSDS安定性試験を示す。
【0041】
【
図32】
図32はカバジタキセルを負荷したPEG
5K-(Ahx-(NAc-Cys))
4/CA
4を使用して調製したナノ担体の容量のサイズ分布を示す。
【0042】
【
図33】
図33はドセタキセルを負荷したPEG
5K-(Ahx-(NAc-Cys))
4/CA
4を使用して調製したナノ担体の容量のサイズ分布を示す。
【0043】
【
図34】
図34はドキソルビシンを負荷したPEG
5K-(Ahx-(NAc-Cys))
4/CA
4を使用して調製したナノ担体の容量のサイズ分布を示す。
【0044】
【
図35】
図35はエトポシドを負荷したPEG
5K-(Ahx-(NAc-Cys))
4/CA
4を使用して調製したナノ担体の容量のサイズ分布を示す。
【0045】
【
図36】
図36はパクリタキセルを負荷したPEG
5K-(Ahx-(NAc-Cys))
4/CA
4を使用して調製したナノ担体の容量のサイズ分布を示す。
【0046】
【
図37】
図37はSN-38を負荷したPEG
5K-(Ahx-(NAc-Cys))
4/CA
4を使用して調製したナノ担体の容量のサイズ分布を示す。
【0047】
【
図38】
図38はビンブラスチンを負荷したPEG
5K-(Ahx-(NAc-Cys))
4/CA
4を使用して調製したナノ担体の容量のサイズ分布を示す。
【0048】
【
図39】
図39はビンクリスチンを負荷したPEG
5K-(Ahx-(NAc-Cys))
4/CA
4を使用して調製したナノ担体の容量のサイズ分布を示す。
【0049】
【
図40】
図40はPEG
5K-(Ahx-(NAc-Cys))
4/CA
4及びビンブラスチンを負荷したPEG
5K-(Ahx-(NAc-Cys))
4/CA
4を使用して調製したナノ担体に暴露された膀胱癌細胞(5637)の生存率を示す。
【0050】
【
図41】
図41はPEG
5K-(Ahx-(NAc-Cys))
4/CA
4及びビンブラスチンを負荷したPEG
5K-(Ahx-(NAc-Cys))
4/CA
4を使用して調製したナノ担体に暴露された膀胱癌細胞(J82)の生存率を示す。
【0051】
【
図42】
図42はDiDを負荷したPEG
5K-(Ahx-(NAc-Cys))
4/CA
4を使用して調製したナノ担体のin vivoの体内分布を示す。
【0052】
【
図43】PEG
5K-(Ahx-(NAc-Cys))
4/CA
4及びビンブラスチンを負荷したPEG
5K-(Ahx-(NAc-Cys))
4/CA
4を使用してMB49腫瘍のin vivo治療試験の結果を示し、腫瘍増殖(
図43A)、生存曲線(
図43B)、及び体重(
図43C)を示す。
【0053】
【
図44】PEG
5K-(Ahx-(NAc-Cys))
4/CA
4及びビンブラスチンを負荷したPEG
5K-(Ahx-(NAc-Cys))
4/CA
4を使用してBL269腫瘍のin vivo治療試験の結果を示し、腫瘍増殖(
図44A)、生存曲線(
図44B)、及び体重(
図44C)を示す。
【発明の詳細な説明】
【0054】
I.概要
本発明は、親水性ポリ(エチレングリコール)(PEG)セグメント、デンドリマーセグメント及び複数の末端基Rを有する改善されたハイブリッド及び非ハイブリッド並びに架橋性ハイブリッド及び非ハイブリッドテロデンドリマー複合体を提供する。PEGセグメントは1つ以上のPEG鎖を含む分岐又は線形構造を有し得る。末端基Rの少なくとも一部分(例えば、1/4、1/3、1/2、2/3、3/4又は全て)は、コール酸又はその誘導体であり得る。残りの末端基は有機部分(OM)である。コール酸又はその誘導体及びPEGは、オリゴマーによって接続され、多様な酸繰り返し単位を含み得るデンドリマーである。一般的に、デンドリマーはジアミノカルボン酸、リジンを含む。テロデンドリマーはまた、架橋性基で官能化し得る。テロデンドリマーは、溶液において凝集体であって、疎水性内部及び親水性外部でミセルを形成することができ、ナノ担体として使用して、低水溶性を有する薬物(例えばタキサン)又はその他の薬剤(例えばイメージング剤)を送達することができる。ミセル形成後、架橋性基を有するテロデンドリマーは、架橋性基を使用して架橋することができ、より多くの安定したミセルを形成する。
【0055】
II.定義
本明細書で使用する場合、「デンドリマー」及び「樹状ポリマー」という用語は、フォーカルポイントを含む分岐ポリマー、複数の分岐モノマー単位及び複数の末端基を指す。モノマーは、一緒に結合して、フォーカルポイントから延びて、末端基で終わるアーム(又は「デンドロン」)を形成する。デンドリマーのフォーカルポイントは、本発明の化合物のその他のセグメントに結合することができ、末端基は、さらに、追加の化学部分で官能化され得る。
【0056】
本明細書で使用する場合、「テロデンドリマー」という用語は、親水性PEGセグメント及びデンドリマーの1つ以上の末端基に共有結合する1つ以上の化学部分を含むデンドリマーを指す。これらの部分として、限定されないが、疎水性基、親水性基、両親媒性化合物及び有機部分を挙げることができる。異なる部分は、直交性保護基戦略を使用して、望ましい末端基に選択的に設置することができる。
【0057】
本明細書で使用する場合、「ナノ担体」という用語は、本発明のデンドリマー複合体の凝集から生じるミセルを指す。ナノ担体は疎水性コア及び親水性外部を有する。
【0058】
本明細書で使用する場合、「モノマー」及び「モノマー単位」という用語は、ジアミノカルボン酸、ジヒドロキシカルボン酸及びヒドロキシルアミノカルボン酸を指す。本発明のジアミノカルボン酸基の例として、限定されないが、2,3-ジアミノプロパン酸、2,4-ジアミノブタン酸、2,5-ジアミノペンタン酸(オルニチン)、2,6-ジアミノヘキサン酸(リジン)、(2-アミノエチル)-システイン、3-アミノ-2-アミノメチルプロパン酸、3-アミノ-2-アミノメチル-2-メチルプロパン酸、4-アミノ-2-(2-アミノエチル)酪酸及び5-アミノ-2-(3-アミノプロピル)ペンタン酸が挙げられる。本発明のジヒドロキシカルボン酸基の例として、限定されないが、グリセリン酸、2,4-ジヒドロキシ酪酸、グリセリン酸、2,4-ジヒドロキシ酪酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸及び2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸が挙げられる。ヒドロキシルアミノカルボン酸の例として、限定されないが、セリン及びホモセリンが挙げられる。当業者は、その他のモノマー単位が本発明に有用であることを理解する。
【0059】
本明細書で使用する場合、「アミノ酸」という用語は、アミン官能基を有するカルボン酸を指す。アミノ酸は、前述のジアミノカルボン酸を含む。アミノ酸は、天然のα-アミノ酸を含み、このアミンは、カルボン酸のカルボニル炭素に隣接する炭素に結合する。天然のα-アミノ酸の例として、限定されないが、L-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、L-ヒスチジン、L-リジン及びL-アルギニンが挙げられる。アミノ酸は、天然のα-アミノ酸、並びにβ-アミノ酸及びその他の天然のアミノ酸のD-エナンチオマーも含み得る。
【0060】
本明細書で使用する場合、「オリゴマー」という用語は、前述のように、共に共有結合する5個以下のモノマーを指す。モノマーは、線形又は分岐して共に結合し得る。オリゴマーは、テロデンドリマーの分岐セグメントのフォーカルポイントとして機能し得る。
【0061】
本明細書で使用する場合、「両親媒性化合物」という用語は、疎水性部分及び親水性部分の両方を有する化合物を指す。例えば、本発明の両親媒性化合物は、化合物の1つの親水面及び化合物の1つの疎水面を有することができる。本発明に有用な両親媒性化合物として、限定されないが、コール酸及びコール酸類似体及び誘導体が挙げられる。
【0062】
本明細書で使用する場合、「コール酸」という用語は、(R)-4-((3R,55,7R,8R,95,105,125,13R,145,17R)-3,7,12-トリヒドロキシ-10,13-ジメチルヘキサデカヒドルプ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-l7-イル)ペンタン酸を指す。コール酸は、3α,7α,12α-トリヒドロキシ-5P-コラン酸、3-a,7-a,12-a-トリヒドロキシ-5-コラン-24-酸、17-β-(1-メチル-3-カルボキシプロピル)エチオコラン-3a,7a,12a-トリオール、コラル酸、及びコラリンとしても知られている。アロコール酸、ピトコール酸、アビコール酸、デオキシコール酸、及びケノデオキシコール酸等のコール酸誘導体及び類似体も本発明に有用である。コール酸誘導体は、ミセル安定性及び膜活性等のテロデンドリマーから生じるナノ担体の特性を調節するように設計することができる。例えば、コール酸誘導体は、1つ以上のグリセロール基、アミノプロパンジオール基又はその他の基で修飾される親水面を有することができる。
【0063】
本明細書で使用する場合、「薬物」又は「治療剤」という用語は、病態又は疾患を治療及び/又は改善することができる薬剤を指す。薬物は、疎水性薬物であってもよく、水を忌避する薬物である。本発明に有用な疎水性薬物として、限定されないが、タキサン(例えば、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、バッカチンIII、10-デアセチルバッカチン、紅豆杉A、紅豆杉B又は紅豆杉C)、ドキソルビシン、エトポシド、イリノテカン、SN-38、シクロスポリンA、ポドフィロトキシン、カルムスチン、アンホテリシン、イクサベピロン、パツピロン(エポチロンクラス)、ラパマイシン及び白金薬物が挙げられる。その他の薬物として、非ステロイド性抗炎症薬並びにビンブラスチン及びビンクリスチン等のビンカアルカロイドが挙げられる。本発明の約物は、プロドラッグ形態も含む。当業者は、その他の薬物が本発明に有用であることを理解する。
【0064】
本明細書で使用する場合、「架橋性基」又は「架橋基」は、別の分子の類似又は相補的基に結合することができる官能基、例えば、第2樹状ポリマーの第2架橋性基に結合する第1樹状ポリマーの第1架橋性基を指す。本発明の架橋性基及び架橋基に適した基は、デンドリマーの内部に組み込まれるとき、システイン、ボロン酸、及びカテコール等の1,2-ジヒドロキシベンゼンを含む1,2-ジオール等のチオールを含む。本発明の架橋性基及び架橋基として適した基は、デンドリマーの1つ以上の末端基に組み込まれるとき、システイン及びN-アセチル-システイン等のチオールを含む。架橋性基及び架橋基を組み合わせるとき、それらは、ジスルフィド及びボロン酸エステル等の架橋結合を形成する。その他の架橋性基及び架橋基は本発明に適している。
【0065】
本明細書で使用する場合、「結合解裂成分」は、本発明の架橋性基及び架橋基を使用して形成された架橋結合を解裂することができる薬剤を指す。結合解裂成分は、架橋結合がジスルフィドである場合グルタチオン、又は架橋結合がボロン酸及び1,2-ジオールから形成される場合マンニトール等の還元剤であり得る。
【0066】
本明細書で使用する場合、「イメージング剤」という用語は、身体臓器、組織又は系を画像にすることができる化学物質を指す。例示的なイメージング剤として、常磁性剤、光学プローブ及び放射性核種が挙げられる。
【0067】
本明細書で使用する場合、「治療」(「treat」、「treating」及び「treatment」)という用語は、外傷、病理、病態又は症状(例えば、疼痛)の治療又は改善が成功したという兆候を指し、寛解、緩解、症状の消失又は患者により忍容性の症状、外傷、病理又は病態の発生、症状又は病態の頻度又は発症期間の減少、又はいくつの状況において、症状又は病態の発症の予防といった主観的又は客観的パラメータを含む。症状の治療又は改善は、例えば、物理的試験の結果を含む客観的又は主観的パラメータに基づくことができる。
【0068】
本明細書で使用する場合、「対象」という用語は、限定されないが、霊長類(例えばヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウス等を含む哺乳動物といった動物を指す。特定の実施形態において、対象はヒトである。
【0069】
本明細書で使用する場合、「治療有効量又は用量」又は「治療的に充分な量又は用量」又は「有効又は充分な量又は用量」という用語は、投与した者に治療効果を生み出す用量を指す。厳密な用量は、治療目的に依存し、周知の技術を使用して当業者によって確認される(例えば、Lieberman、Pharmaceutical Dosage Forms (1-3巻、1992); Lloyd、The Art、Science and Technology of Pharmaceutical Compounding (1999); Pickar、Dosage Calculations (1999);及びRemington:The Science and Practice of Pharmacy、20版、2003、Gennaro、版、Lippincott、Williams & Wilkinsを参照のこと)。感作細胞の場合、治療有効量は、非感作細胞の通常の治療有効用量より少ない可能性が多い。
【0070】
本明細書で使用する場合、「有機部分」、「OM」という用語は、コール酸又はその誘導体ではない末端基を指し、飽和又は不飽和脂肪酸、飽和又は不飽和カルボン酸、ビタミン又はその代謝物、酵素補因子、抗生物質及び薬物から成る群から選択される。本発明の有機部分末端基は、概して、100~2000g/mol、好ましくは130~500g/molの分子量を有する。
【0071】
III.ハイブリッドテロデンドリマー
本発明は、親水性ポリ(エチレングリコール)(PEG)セグメント、デンドリマーセグメント及び複数の末端基Rを有する改善されたハイブリッド及び非ハイブリッド並びに架橋性ハイブリッド及び非ハイブリッドテロデンドリマー複合体を提供する。PEGセグメントは1つ以上のPEG鎖を含む分岐又は線形構造を有し得る。末端基Rの少なくとも一部分(例えば、1/4、1/3、1/2、2/3、3/4又は全て)は、コール酸又はその誘導体であり得る。残りの末端基は有機部分(OM)である。コール酸又はその誘導体及びPEGは、オリゴマーによって接続され、多様な酸繰り返し単位を含み得るデンドリマーである。一般的に、デンドリマーはジアミノカルボン酸、リジンを含む。テロデンドリマーはまた、架橋性基で官能化し得る。テロデンドリマーは、溶液において凝集体であって、疎水性内部及び親水性外部でミセルを形成することができ、ナノ担体として使用して、低水溶性を有する薬物(例えばタキサン)又はその他の薬剤(例えばイメージング剤)を送達することができる。ミセル形成後、架橋性基を有するテロデンドリマーは、架橋性基を使用して架橋することができ、より多くの安定したミセルを形成する。
【0072】
いくつかの実施形態において、本発明は、式IIIの化合物を提供し、
(PEG)m-Ap-L-D(Y1)q-(R)n (III)
Aは少なくとも1つのPEG基に結合し、Dは1つのフォーカルポイント基、複数の分岐モノマー単位X、複数の架橋性基Y1、及び複数の末端基Rを有する樹状ポリマーであり、Lは樹状ポリマーのフォーカルポイント基に結合した結合又はリンカーであり、PEGはそれぞれ、ポリエチレングリコール(PEG)ポリマーであり、PEGポリマーはそれぞれ1~50kDaの分子量を有し、Rはそれぞれ独立してR’及びR’’から選択され、R’はそれぞれ独立して疎水面及び親水面を有する両親媒性化合物であり、R’’はそれぞれ独立して飽和又は不飽和脂肪酸、飽和又は不飽和カルボン酸、ビタミン又はその代謝物、酵素補因子、抗生物質及び薬物から成る群から選択され、Rはそれぞれ100g/mol超及び2000g/mol未満の分子量を有し、添字nは整数8~20であり、添字nは樹状ポリマーの末端基の数と等しく、Y1はそれぞれ独立して、チオール、ボロン酸、1,2-ジオール又はシステイン基から成る群から選択される架橋性基であり、添字mは0~5の整数であり、添字p及びqは0又は2~10である。
【0073】
いくつかの実施形態において、本発明は、式IIIaの化合物を提供する。
(PEG)m-L-D(Y1)q-(R)n (IIIa)
【0074】
いくつかの実施形態において、化合物は以下の構造を有し、
【化2】
L’及びL”のそれぞれは独立して、結合又はリンカーEbes、アミノカプロン酸、5-アミノペンタン酸、4-アミノブタン酸、β-アラニン又はコハク酸であり、PEGは1~50kDaの分子量を有し、R’はそれぞれ独立して、コール酸、(3α,5β,7α,12α)-7,12-ジヒドロキシ-3-(2,3-ジヒドロキシ-1-プロポキシ)-コール酸(CA-4OH)(3α,5β,7α,12α)-7-ヒドロキシ-3,12-ジ(2,3-ジヒドロキシ-1-プロポキシ)-コール酸(CA-5OH)及び(3α,5β,7α,12α)-7,12-ジヒドロキシ-3-(3-アミノ-2-ヒドロキシ-1-プロポキシ)-コール酸(CA-3OH-NH
2)から成る群から選択され、R’’はそれぞれ独立して、飽和又は不飽和脂肪酸、飽和又は不飽和カルボン酸、ビタミン又はその代謝物、酵素補因子、抗生物質及び薬物から成る群から選択され、分岐モノマー単位Xはそれぞれリジンであり、Y
1はそれぞれ存在しない、又はチオール、ボロン酸、1,2-ジオール若しくはシステインである。
【0075】
いくつかの実施形態において、L’はそれぞれ独立して、結合又はアミノカプロン酸、5-アミノペンタン酸、4-アミノブタン酸、β-アラニン又はコハク酸であり、L”はそれぞれ独立して結合又はリンカーEbesであり、PEGは1~50kDaの分子量を有し、R’はそれぞれ独立して、コール酸、(3α,5β,7α,12α)-7,12-ジヒドロキシ-3-(2,3-ジヒドロキシ-1-プロポキシ)-コール酸(CA-4OH)、(3α,5β,7α,12α)-7-ヒドロキシ-3,12-ジ(2,3-ジヒドロキシ-1-プロポキシ)-コール酸(CA-5OH)及び(3α,5β,7α,12α)-7,12-ジヒドロキシ-3-(3-アミノ-2-ヒドロキシ-1-プロポキシ)-コール酸(CA-3OH-NH2)から成る群から選択され、R’’はそれぞれ独立して、飽和又は不飽和脂肪酸、飽和又は不飽和カルボン酸、ビタミン又はその代謝物、酵素補因子、抗生物質及び薬物から成る群から選択され、分岐モノマー単位Xはそれぞれリジンであり、Y1はそれぞれ存在しない、又はチオール、ボロン酸、1,2-ジオール若しくはシステインである。
【0076】
いくつかの実施形態において、L’は結合、L”は結合である。いくつかの実施形態において、L’は結合、L”はEbesである。いくつかの実施形態において、L’はアミノカプロン酸、5-アミノペンタン酸、4-アミノブタン酸、β-アラニン又はコハク酸であり、L”は結合である。いくつかの実施形態において、L’はコハク酸、L”は結合である。いくつかの実施形態において、L’はアミノカプロン酸、5-アミノペンタン酸、4-アミノブタン酸、β-アラニン又はコハク酸であり、L”はEbesである。いくつかの実施形態において、L’はコハク酸、L”はEbesである。
【0077】
いくつかの実施形態において、Y1はそれぞれ結合である。いくつかの実施形態において、Y1はそれぞれチオール、ボロン酸、1,2-ジオール又はシステインである。いくつかの実施形態において、Y1はそれぞれシステインである。
【0078】
いくつかの実施形態において、L”はそれぞれ結合、Y1はそれぞれ結合である。いくつかの実施形態において、L”はそれぞれEbes、Y1はそれぞれ結合である。いくつかの実施形態において、L”はそれぞれ結合、Y1はそれぞれシステインである。いくつかの実施形態において、L”はそれぞれEbes、Y1はそれぞれシステインである。
【0079】
いくつかの実施形態において、L’はそれぞれ結合、L”はそれぞれ結合、Y1はそれぞれ結合である。いくつかの実施形態において、L’はそれぞれコハク酸、L”はそれぞれ結合、Y1はそれぞれ結合である。いくつかの実施形態において、L’はそれぞれ結合、L”はそれぞれEbes、Y1はそれぞれシステインである。いくつかの実施形態において、L’はそれぞれコハク酸、L”はそれぞれEbes、Y1はそれぞれシステインである。
【0080】
本発明のそれぞれの実施形態において、R’はそれぞれコール酸、CA-4OH、CA-5OH又はCA-3OH-NH2であり、R’’はそれぞれビオチン、trans-桂皮酸、ラウリン酸、リノール酸、リポ酸、ニコチン酸、オクタン酸、オレイン酸、レチノイン酸、ソルビン酸、ピロミド酸、コーヒー酸、リシノール酸、パントテン酸、アミノカプロン酸、リボフラビン、ピリドキシン、及びコレカルシフェロールから成る群から選択される。
【0081】
本発明のそれぞれの実施形態において、R’はコール酸であり得る。
【0082】
いくつかの実施形態において、化合物は以下の構造を有し、
【化3】
L”はそれぞれ独立して結合又はリンカーEbesであり、PEGは1~50kDaの分子量を有し、R’はそれぞれコール酸であり、R’’はそれぞれ桂皮酸及びリノール酸から成る群から選択され、分岐モノマー単位Xはそれぞれリジンであり、Y
1はそれぞれシステインである。
【0083】
A.有機部分ハイブリッド
本発明は、デンドリマー周縁にコール酸基及びその他の有機部分(OM)を含むテロデンドリマーと呼ばれるPEG化デンドリマーを提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、式Iの化合物を提供し、
(PEG)m-L-D-(R)n (I)
式IのラジカルDは、1つのフォーカルポイント基、複数の分岐モノマー単位X及び複数の末端基Rを有する樹状ポリマーである。式IのラジカルLは、樹状ポリマーのフォーカルポイント基に結合される結合又はリンカーである。式IのPEGはそれぞれ、ポリエチレングリコール(PEG)ポリマーであり、PEGポリマーはそれぞれ1~50kDaの分子量を有する。式IのRはそれぞれ100g/mol超及び2000g/mol未満の分子量を有する。また、Rはそれぞれ独立して、結合を介して直接的又はリンカーL’を介して間接的に樹状ポリマーのモノマーXに結合する。Rはそれぞれ、末端基R’及び末端基R’’から独立して選択され、R’はそれぞれ独立して疎水面及び親水面を有する両親媒性化合物であり、R’’はそれぞれ独立して飽和又は不飽和脂肪酸、飽和又は不飽和カルボン酸、ビタミン又はその代謝物、酵素補因子、抗生物質、又は薬物である。式Iの添字mは0~5の整数である。式Iの添字nは8~20の整数であり、添字nは樹状ポリマーの末端基の数と等しい。いくつかの実施形態において、R基の数nの少なくとも4分の1(例えば、1/4、1/3、1/2、2/3、3/4又は全て)はR’である。いくつかの実施形態において、R基の数nの少なくとも4分の1(例えば、1/4、1/3、1/2、2/3、3/4又は全て)はR’’である。
【0084】
樹状ポリマーは適した樹状ポリマーであり得る。樹状ポリマーは、アミノ酸又はその他の二官能性AB2型モノマーを含む分岐モノマー単位から作られ、A及びBは、共に反応することができる2つの異なる官能基であり、結果として生じるポリマー鎖は、A-B結合が形成される分岐ポイントを有する。いくつかの実施形態において、分岐モノマー単位Xは、ジアミノカルボン酸、ジヒドロキシカルボン酸及びヒドロキシルアミノカルボン酸であり得る。いくつかの実施形態において、ジアミノカルボン酸基はそれぞれ、2,3-ジアミノプロパン酸、2,4-ジアミノブタン酸、2,5-ジアミノペンタン酸(オルニチン)、2,6-ジアミノヘキサン酸(リジン)、(2-アミノエチル)-システイン、3-アミノ-2-アミノメチルプロパン酸、3-アミノ-2-アミノメチル-2-メチルプロパン酸、4-アミノ-2-(2-アミノエチル)酪酸又は5-アミノ-2-(3-アミノプロピル)ペンタン酸であり得る。いくつかの実施形態において、ジヒドロキシカルボン酸はそれぞれグリセリン酸、2,4-ジヒドロキシ酪酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、セリン又はスレオニンであり得る。いくつかの実施形態において、ヒドロキシルアミノカルボン酸はそれぞれセリン又はホモセリンであり得る。いくつかの実施形態において、ジアミノカルボン酸はアミノ酸である。いくつかの実施形態において、分岐モノマー単位Xはそれぞれリジンである。
【0085】
テロデンドリマーの樹状ポリマーは、デンドリマーの適した生成であり得、1、2、3、4、5個以上の生成を含み、デンドリマーの「生成」はそれぞれフォーカルポイントとデンドリマーの1つの分岐に続く末端基の間で出合った分岐点の数を指す。テロデンドリマーの樹状ポリマーは、また、1.5、2.5、3.5、4.5、5.5といった部分生成も含み、デンドリマーの分岐点は、たった1つの分岐しか有しない。樹状ポリマーの様々な構造は、限定されないが、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31又は32個の末端基を含む適切な数の末端基を提供し得る。
【0086】
テロデンドリマーのフォーカルポイント又はテロデンドリマーセグメントは、適切な官能基であり得る。いくつかの実施形態において、フォーカルポイントは、テロデンドリマー又はテロデンドリマーセグメントを別のセグメントに結合することができる官能基を含む。フォーカルポイント官能基は、限定されないが、アルコール、アミン、チオール又はヒドラジンを含む求核性基であり得る。フォーカルポイント官能基は、アルデヒド、カルボン酸、又は酸塩化物又はN-ヒドロキシスクシンイミジルエステルを含むカルボン酸誘導体等の求電子試薬でもあり得る。
【0087】
テロデンドリマー周縁に設置されたR基は、親水性基、疎水性基又は両親媒性化合物を含む適切な化学部分であり得る。疎水性基の例として、限定されないが、長鎖アルカン、飽和又は不飽和脂肪酸、フルオロカーボン、シリコーン、コレステロール等の特定のステロイド、並びにポリスチレン及びポリイソプレンを含む多くのポリマーが挙げられる。親水性基の例として、限定されないが、アルコール類、短鎖カルボン酸、アミン、スルホン酸塩、リン酸塩、糖類、及びPEG等の特定のポリマーが挙げられる。両親媒性化合物の例として、限定されないが、1つの親水面と1つの疎水面を有する分子が挙げられる。
【0088】
本発明に有用な両親媒性化合物として、限定されないが、コール酸及びコール酸類似体及び誘導体が挙げられる。「コール酸」は、以下の構造を有する(R)-4-((3R,5S,7R,8R,9S,10S,12S,13R,14S,17R)-3,7,12-トリヒドロキシ-10,13-ジメチルヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-17-イル)ペンタン酸を指す。
【化4】
【0089】
コール酸誘導体及び類似体として、限定されないが、アロコール酸、ピトコール酸、アビコール酸、デオキシコール酸、及びケノデオキシコール酸が挙げられる。コール酸誘導体は、ミセル安定性及び膜活性等のテロデンドリマーから生じるナノ担体の特性を調節するように設計することができる。例えば、コール酸誘導体は、1つ以上のグリセロール基、アミノプロパンジオール基又はその他の基で修飾される親水面を有することができる。
【0090】
テロデンドリマー末端基は、アミノカプロン酸等の薬物も含み得る。当業者は、その他の薬物が本発明に有用であることを理解する。テロデンドリマー末端基は、また、飽和又は不飽和カルボン酸、ビタミン、酵素補因子及び代謝物も含み得る。
【0091】
いくつかの実施形態において、R’はそれぞれ独立して、コール酸、(3α,5β,7α,12α)-7,12-ジヒドロキシ-3-(2,3-ジヒドロキシ-1-プロポキシ)-コール酸(CA-4OH)、(3α,5β,7α,12α)-7-ヒドロキシ-3,12-ジ(2,3-ジヒドロキシ-1-プロポキシ)-コール酸(CA-5OH)、(3α,5β,7α,12α)-7,12-ジヒドロキシ-3-(3-アミノ-2-ヒドロキシ-1-プロポキシ)-コール酸(CA-3OH-NH2)であり得る。
【0092】
テロデンドリマー骨格は、分岐数並びに末端基及びR基の数及び化学的性質に依存して変化し得、溶液の構造、レオロジー特性及びその他の特徴を調整する。テロデンドリマーは、末端基の適切な数n及び適切な数のR基を有し得る。いくつかの実施形態において、nは2~70、又は2~50、又は2~30、又は2~10であり得る。添字nは約2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、又は20であり得る。いくつかの実施形態において、添字nは2~10、2~8、4~10又は4~8であり得る。いくつかの実施形態において、nは4~20又は8~10である。いくつかの実施形態において、nは8~20である。いくつかの実施形態において、nは8である。
【0093】
いくつかの実施形態において、各R’基は同じである。同様に、いくつかの実施形態において、各R’’基は同じである。いくつかの実施形態において、2つの異なる両親媒性基等の少なくとも2つの異なるR’基が存在する。いくつかの実施形態において、少なくとも2つのR’’基が、不飽和カルボン酸(桂皮酸)及び飽和脂肪酸(ラウリン酸)というように存在する。
【0094】
リンカーLは適切なリンカーを含み得る。概して、リンカーは二官能性リンカーであり、2つのテロデンドリマーセグメントのそれぞれと反応するために、2つの官能性基を有する。いくつかの実施形態において、リンカーは、ヘテロ二官能性リンカーであり得る。いくつかの実施形態において、リンカーは、ホモ二官能性リンカーであり得る。いくつかの実施形態において、リンカーLは、ポリエチレングリコール、ポリセリン、ポリグリシン、ポリ(セリン-グリシン)、脂肪族アミノ酸類、6-アミノヘキサン酸、5-アミノペンタン酸、4-アミノブタン酸又はベータ-アラニンであり得る。当業者は、リンカーのサイズ及び化学的性質が、結合されるテロデンドリマーセグメントの構造に基づいて変化し得ることを理解する。
【0095】
いくつかの実施形態において、リンカーLは以下の式を有するEbesリンカーである。
【化5】
【0096】
任意のサイズと構造のポリエチレングリコール(PEG)は、本発明のナノ担体に有用である。いくつかの実施形態において、PEGは1~100kDaである。他の実施形態において、PEGは1~10kDaである。いくつかの実施形態において、PEGは約5kDaである。さらに他の実施形態において、追加のPEGポリマーが両親媒性化合物に結合する。例えば、両親媒性化合物がコール酸である場合、最大3個のPEGポリマーがそれぞれのコール酸に結合する。両親媒性化合物に結合するPEGポリマーは、200~10,000Daのサイズである。他の実施形態において、両親媒性化合物に結合するPEGポリマーは、1~5kDaのサイズである。当業者は、その他のPEGポリマー及び親水性ポリマーが本発明に有用であることを理解する。PEGは適した長さであり得る。
【0097】
適切な数のPEG基が存在し得る。例えば、添字mは0、1、2、3、4、5、10、15、又は20であり得る。添字mは0~5、0~4、0~3、0~2、1~5、1~4又は1~3でもあり得る。いくつかの実施形態において、添字mは1である。
【0098】
いくつかの実施形態において、式Iの化合物は以下の構造を有し、
【化6】
R’は疎水面及び親水面を有する両親媒性化合物であり、R’’は飽和又は不飽和脂肪酸、飽和又は不飽和カルボン酸、ビタミン又はその代謝物、酵素補因子、抗生物質、又は薬物である。いくつかの場合において、分岐モノマー単位Xはそれぞれリジンである。いくつかの場合において、疎水面及び親水面を有する両親媒性化合物(R’)はそれぞれ独立して、コール酸(CA)、(3α,5β,7α,12α)-7,12-ジヒドロキシ-3-(2,3-ジヒドロキシ-1-プロポキシ)-コール酸(CA-4OH)、(3α,5β,7α,12α)-7-ヒドロキシ-3,12-ジ(2,3-ジヒドロキシ-1-プロポキシ)-コール酸(CA-5OH)、及び(3α,5β,7α,12α)-7,12-ジヒドロキシ-3-(3-アミノ-2-ヒドロキシ-1-プロポキシ)-コール酸(CA-3OH-NH
2)から成る群から選択される。
【0099】
いくつかの実施形態において、式Iの化合物は以下の構造を有し、
【化7】
Xはそれぞれリジンであり、PEGはPEG5kであり、R’はコール酸、CA-4OH、CA-5OH、又はCA-3OH-NH
2であり、R’’はそれぞれビオチン、trans-桂皮酸、ラウリン酸、リノール酸、リポ酸、ニコチン酸、オクタン酸、オレイン酸、レチノイン酸、ソルビン酸、ピロミド酸、コーヒー酸、リシノール酸、パントテン酸、アミノカプロン酸、リボフラビン、ピリドキシン、コレカルシフェロール、及び非ステロイド性抗炎症薬から成る群から選択される。
【0100】
本発明に有用な非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)は、周知のNSAIDを含む。代表的なNSAIDとして、限定されないが、エトドラク、インドメタシン、ナプロキセン、オキサプロジン、スリンダク、アセチルサリチル酸、ジフルニサル、サリチル酸、サルサラート、イブプロフェン、デクスイブプロフェン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、デクスケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、ロキソプロフェン、トルメチン、ケトロラク、ジクロフェナク、アセクロフェナク、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、トルフェナム酸等が挙げられる。いくつかの実施形態において、NSAIDは、エトドラク、インドメタシン、ナプロキセン、オキサプロジン、スリンダク、アセチルサリチル酸、フィフルニサル(fiflunisal)、サリチル酸、サルサラート、イブプロフェン、デクスイブプロフェン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、デクスケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、ロキソプロフェン、トルメチン、ケトロラク、ジクロフェナク、又はアセクロフェナクであり得る。いくつかの実施形態において、NSAIDは、エトドラク、インドメタシン、ナプロキセン、オキサプロジン又はスリンダクであり得る。
【0101】
いくつかの実施形態において、式Iの化合物は以下の構造を有し、
【化8】
分岐モノマー単位Xはそれぞれリジンであり、L’はそれぞれ結合又はリンカーである。いくつかの実施形態において、L’はそれぞれ、リンカーEbes又はコハク酸である。いくつかの実施形態において、L’はそれぞれリンカーEbesである。いくつかの実施形態において、L’はそれぞれコハク酸である。いくつかの場合において、L’がコハク酸である場合、R’’はカルボン酸基を欠いている有機部分(OM)、又はヒドロキシル若しくはアミン基を有するOMである。いくつかの場合において、L’はコハク酸であり、R’’はリボフラビン、ピリドキシン及びコレカルシフェロールから成る群から独立して選択される有機部分(OM)である。いくつかの場合において、L’は結合又はリンカーEbesであり、R’’はビオチン、trans-桂皮酸、ラウリン酸、リノール酸、リポ酸、ニコチン酸、オクタン酸、オレイン酸、レチノイン酸、ソルビン酸、ピロミド酸、コーヒー酸、リシノール酸、パントテン酸、及びアミノカプロン酸から成る群から独立して選択される有機部分(OM)である。いくつかの場合において、L’は結合又はリンカーEbesであり、R’’は薬物である。
【0102】
いくつかの実施形態において、式Iの化合物は以下の構造を有し、
【化9】
Xはそれぞれリジンであり、PEGはPEG5kであり、R’はそれぞれコール酸、CA-4OH、CA-5OH、又はCA-3OH-NH
2であり、R’’はそれぞれビオチン、trans-桂皮酸、ラウリン酸、リノール酸、リポ酸、ニコチン酸、オクタン酸、オレイン酸、レチノイン酸、ソルビン酸、ピロミド酸、コーヒー酸、リシノール酸、パントテン酸、アミノカプロン酸、リボフラビン、ピリドキシン、及びコレカルシフェロールから成る群から選択される。
【0103】
いくつかの実施形態において、式Iの化合物は以下の構造を有し、
【化10】
Xはそれぞれリジンであり、PEGはPEG5kであり、R’はそれぞれコール酸であり、R’’はそれぞれ、エトドラク、インドメタシン、ナプロキセン、オキサプロジン、及びスリンダクから成る群から選択される。
【0104】
いくつかの実施形態において、本発明は表Aのテロデンドリマーを1つ以上、及び/又は表Aのテロデンドリマーを1つ以上、又は少なくとも2つ含むナノ担体を提供する。
【表A】
【0105】
B.表面架橋性ハイブリッド
いくつかの実施形態において、本発明は様々な架橋性テロデンドリマーを提供する。架橋性テロデンドリマーは、それぞれのミセルナノ担体が少なくとも2つの架橋性テロデンドリマー分子を含むように、様々なナノ担体に組み込むことができる。架橋性テロデンドリマーの架橋性基は、その後、架橋結合して、ナノ担体の安定性を増加することができる。いくつかの場合において、架橋結合は可逆的架橋結合であり、そのため、可逆的に架橋結合したナノ担体を提供する。例えば、架橋結合はジスルフィド結合であり、ナノ担体の架橋結合は、還元剤で還元され得る。
【0106】
本発明の化合物に適した架橋性基は、架橋性基を含み、別のテロデンドリマーの同官能基、又は別のテロデンドリマーの相補的官能基と共有結合を形成することができる。同官能基と共有結合を形成することができる官能基は、チオールを含む。本発明の化合物に有用なチオールとして、システイン等のチオールを含む。いくつかの場合において、チオールがテロデンドリマーの末端基である場合、チオールはN‐アセチルシステインであり得る。
【0107】
Y1又はY2架橋性基として有用であり、共有結合を形成することができる相補的官能基は、前述のチオールを1つ以上含む。あるいは、Y1又はY2架橋性基として有用であり、共有結合を形成することができる相補的官能基は、ボロン酸及び1,2-ジオールを含む。本発明の化合物に有用なボロン酸として、限定されないが、フェニルボロン酸、2-チエニルボロン酸、メチルボロン酸、及びプロペニルボロン酸が挙げられる。適切な1,2-ジオールとして、カテコール等のアルキル-1,2-ジオール及びフェニル-1,2-ジオールが挙げられる。
【0108】
いくつかの実施形態において、架橋性基Y1及びY2はそれぞれボロン酸、ジヒドロキシベンゼン、又はチオールであり得る。いくつかの実施形態において、架橋性基Y1及びY2はそれぞれボロン酸又はジヒドロキシベンゼンであり得る。いくつかの実施形態において、架橋性基Y1及びY2はそれぞれフェニルボロン酸又はジヒドロキシベンゼンであり得る。いくつかの実施形態において、架橋性基Y1はそれぞれフェニルボロン酸又はジヒドロキシベンゼンであり得る。いくつかの実施形態において、架橋性基Y1はそれぞれカルボキシフェニルボロン酸、カルボキシニトロフェニルボロン酸又は3,4-ジヒドロキシ安息香酸であり得る。いくつかの実施形態において、架橋性基Y1及びY2はそれぞれチオールであり得る。いくつかの実施形態において、架橋性基Y1及びY2はそれぞれシステインであり得る。いくつかの実施形態において、架橋性基Y2はそれぞれシステインであり得る。
【0109】
いくつかの実施形態において、本発明は以下の式の化合物を提供し、
【化11】
Xは分岐モノマー単位であり、Lは結合又はリンカーであり、PEGはそれぞれポリエチレングリコール(PEG)ポリマーであり、PEGポリマーはそれぞれ1~50kDaの分子量を有し、R’はそれぞれ独立して疎水面及び親水面を有する両親媒性化合物であり、R’はそれぞれ独立して結合又はリンカーを介して異なる分岐モノマー単位Xに結合し、R’’はそれぞれ独立してチオール、システイン、及びN‐アセチルシステインから成る群から選択される架橋性基であり、架橋性基はそれぞれ独立して結合又はリンカーを介して異なる分岐モノマー単位Xに結合する。
【0110】
いくつかの実施形態において、本発明は以下の式の化合物を提供し、
【化12】
Xは分岐モノマー単位であり、Lは結合又はリンカーであり、L’は結合又はリンカーであり、PEGはそれぞれポリエチレングリコール(PEG)ポリマーであり、PEGポリマーはそれぞれ1~50kDaの分子量を有し、R’はそれぞれ独立して疎水面及び親水面を有する両親媒性化合物であり、R’はそれぞれ独立して結合又はリンカーを介して異なる分岐モノマー単位Xに結合し、R’’はそれぞれ独立してチオール、システイン、及びN‐アセチルシステインから成る群から選択される架橋性基であり、架橋性基はそれぞれ独立して結合又はリンカーを介して異なる分岐モノマー単位Xに結合する。いくつかの実施形態において、リンカーL’は、Ebes、アミノカプロン酸、5-アミノペンタン酸、4-アミノブタン酸又はβ-アラニンであり得る。いくつかの実施形態において、リンカーL’は、アミノカプロン酸、5-アミノペンタン酸、4-アミノブタン酸又はβ-アラニンであり得る。いくつかの実施形態において、リンカーL’は、アミノカプロン酸であり得る。いくつかの実施形態において、リンカーL’は、6-アミノヘキサン酸(Ahx)であり得る。
【0111】
いくつかの実施形態において、R’’はそれぞれ独立してリンカーEbes、アミノカプロン酸、5-アミノペンタン酸、4-アミノブタン酸又はβ-アラニンを介して異なる分岐モノマー単位Xに結合される。いくつかの実施形態において、R’はそれぞれ独立してリンカーEbes、アミノカプロン酸、5-アミノペンタン酸、4-アミノブタン酸又はβ-アラニンを介して異なる分岐モノマー単位Xに結合される。いくつかの実施形態において、R’はそれぞれ独立してリンカーを介して異なる分岐モノマー単位に結合し、R’’はそれぞれ独立してリンカーを介して異なる分岐モノマー単位に結合し、リンカーはそれぞれ独立してEbes、アミノカプロン酸、5-アミノペンタン酸、4-アミノブタン酸、4-アミノブタン酸又はβ-アラニンから成る群から選択される。
【0112】
いくつかの実施形態において、分岐モノマー単位Xはそれぞれ独立してジアミノカルボン酸、ジヒドロキシカルボン酸及びヒドロキシルアミノカルボン酸から成る群から選択される。いくつかの実施形態において、ジアミノカルボン酸は、それぞれ独立して2,3-ジアミノプロパン酸、2,4-ジアミノブタン酸、2,5-ジアミノペンタン酸(オルニチン)、2,6-ジアミノヘキサン酸(リジン)、(2-アミノエチル)-システイン、3-アミノ-2-アミノメチルプロパン酸、3-アミノ-2-アミノメチル-2-メチルプロパン酸、4-アミノ-2-(2-アミノエチル)酪酸及び5-アミノ-2-(3-アミノプロピル)ペンタン酸から成る群から選択される。いくつかの実施形態において、ジヒドロキシカルボン酸はそれぞれ独立してグリセリン酸、2,4-ジヒドロキシ酪酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、及び2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸から成る群から選択される。いくつかの実施形態において、ヒドロキシルアミノカルボン酸はそれぞれ独立して、セリン、スレオニン、及びホモセリンから成る群から選択される。いくつかの実施形態において、ジアミノカルボン酸はアミノ酸である。いくつかの実施形態において、分岐モノマー単位Xはそれぞれリジンである。
【0113】
いくつかの実施形態において、R’はそれぞれ独立して、コール酸、(3α,5β,7α,12α)-7,12-ジヒドロキシ-3-(2,3-ジヒドロキシ-1-プロポキシ)-コール酸、(3α,5β,7α,12α)-7-ヒドロキシ-3,12-ジ(2,3-ジヒドロキシ-1-プロポキシ)コール酸、及び(3α,5β,7α,12α)-7,12-ジヒドロキシ-3-(3-アミノ-2-ヒドロキシ-1-プロポキシ)-コール酸から成る群から選択される。いくつかの実施形態において、各R’はコール酸である。いくつかの実施形態において、PEGは1~50kDaである。他の実施形態において、PEGは1~10kDaである。いくつかの実施形態において、PEGは5kDa又は約5kDaである。
【0114】
いくつかの実施形態において、化合物は以下の構造を有し、
【化13】
PEGはPEG
5kであり、Xはリジンであり、R’はコール酸であり、R’’はシステイン又はN-アセチルシステインであり、R’’は、アミノカプロン酸、5-アミノペンタン酸、4-アミノブタン酸及びβ-アラニンから成る群から選択されるリンカーを介して対応するモノマーXに結合する。
【0115】
いくつかの実施形態において、化合物は以下の構造を有し、
【化14】
分岐モノマー単位Xはそれぞれリジンであり、Lは結合又はリンカーであり、リンカーL’は6-アミノヘキサン酸であり、PEGはPEG5kであり、R’はそれぞれコール酸であり、R’’はそれぞれN-アセチルシステインである。
【0116】
いくつかの実施形態において、本発明は表Bの架橋性テロデンドリマーを1つ以上、及び/又は表Bの架橋性テロデンドリマーを1つ以上、又は少なくとも2つ含むナノ担体を提供する。
【表B】
【0117】
A.架橋性有機部分ハイブリッド
いくつかの実施形態において、本発明は、式IIの化合物を提供し、
(PEG)m-Ap-L-D(Y1)q-(R)n (II)
Aは少なくとも1つのPEG基に結合し、Dは1つのフォーカルポイント基、複数の分岐モノマー単位X、複数の架橋性基Y1、及び複数の末端基Rを有する樹状ポリマーであり、Lは樹状ポリマーのフォーカルポイント基に結合した結合又はリンカーであり、PEGはそれぞれ、ポリエチレングリコール(PEG)ポリマーであり、PEGポリマーはそれぞれ1~50kDaの分子量を有し、Rはそれぞれ、100g/mol超及び2000g/mol未満の分子量を有し、Rはそれぞれ独立してR’及びR’’から選択され、R’はそれぞれ独立して疎水面及び親水面を有する両親媒性化合物であり、R’’はそれぞれ独立して飽和又は不飽和脂肪酸、飽和又は不飽和カルボン酸、ビタミン又はその代謝物、酵素補因子、抗生物質及び薬物から成る群から選択され、添字nは整数8~20であり、添字nは樹状ポリマーの末端基の数と等しく、Y1はそれぞれ独立して、チオール、ボロン酸、1,2-ジオール又はシステイン基から成る群から選択される架橋性基であり、添字mは0~5の整数であり、添字p及びqは0又は2~10であり、添字p及びqの1つは2~10である。いくつかの実施形態において、R基の数nの少なくとも4分の1(例えば、1/4、1/3、1/2、2/3、3/4又は全て)はR’である。いくつかの実施形態において、R基の数nの少なくとも4分の1(例えば、1/4、1/3、1/2、2/3、3/4又は全て)はR’’である。
【0118】
いくつかの実施形態において、分岐モノマー単位Xはそれぞれ独立してジアミノカルボン酸、ジヒドロキシカルボン酸及びヒドロキシルアミノカルボン酸から成る群から選択される。いくつかの実施形態において、分岐モノマー単位Xはそれぞれリジンである。いくつかの実施形態において、ジアミノカルボン酸は、それぞれ独立して2,3-ジアミノプロパン酸、2,4-ジアミノブタン酸、2,5-ジアミノペンタン酸(オルニチン)、2,6-ジアミノヘキサン酸(リジン)、(2-アミノエチル)-システイン、3-アミノ-2-アミノメチルプロパン酸、3-アミノ-2-アミノメチル-2-メチルプロパン酸、4-アミノ-2-(2-アミノエチル)酪酸及び5-アミノ-2-(3-アミノプロピル)ペンタン酸から成る群から選択される。いくつかの実施形態において、ジヒドロキシカルボン酸はそれぞれ独立してグリセリン酸、2,4-ジヒドロキシ酪酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、及び2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸から成る群から選択される。いくつかの実施形態において、ヒドロキシルアミノカルボン酸はそれぞれ独立して、セリン、スレオニン、及びホモセリンから成る群から選択される。いくつかの実施形態において、ジアミノカルボン酸はアミノ酸である。
【0119】
いくつかの実施形態において、R’はそれぞれ独立して、コール酸、(3α,5β,7α,12α)-7,12-ジヒドロキシ-3-(2,3-ジヒドロキシ-1-プロポキシ)-コール酸(CA-4OH)、(3α,5β,7α,12α)-7-ヒドロキシ-3,12-ジ(2,3-ジヒドロキシ-1-プロポキシ)-コール酸(CA-5OH)、及び(3α,5β,7α,12α)-7,12-ジヒドロキシ-3-(3-アミノ-2-ヒドロキシ-1-プロポキシ)-コール酸(CA-3OH-NH2)から成る群から選択される。いくつかの実施形態において、各R’はコール酸である。
【0120】
いくつかの実施形態において、リンカーLはポリエチレングリコール、ポリセリン、ポリグリシン、ポリ(セリン-グリシン)、脂肪族アミノ酸類、6-アミノヘキサン酸、5-アミノペンタン酸、4-アミノブタン酸及びベータ-アラニンから成る群から選択される。いくつかの実施形態において、リンカーLは以下の式を有するEbesリンカーである。
【化15】
【0121】
いくつかの実施形態において、式IIの化合物は式IIbの化合物であり、
PEG-D(Y1)q-(R)n (IIb)
添字qは2~10の整数である。
【0122】
いくつかの実施形態において、化合物は以下の構造を有し、
【化16】
Aはリジンのモノマー又はオリゴマーであるか又は存在せず、L’のそれぞれは独立して、結合又はリンカーEbes、アミノカプロン酸、5-アミノペンタン酸、4-アミノブタン酸、β-アラニン又はコハク酸であり、PEGは1~50kDaの分子量を有し、R’はそれぞれ独立して、コール酸、(3α,5β,7α,12α)-7,12-ジヒドロキシ-3-(2,3-ジヒドロキシ-1-プロポキシ)-コール酸(CA-4OH)、(3α,5β,7α,12α)-7-ヒドロキシ-3,12-ジ(2,3-ジヒドロキシ-1-プロポキシ)-コール酸(CA-5OH)及び(3α,5β,7α,12α)-7,12-ジヒドロキシ-3-(3-アミノ-2-ヒドロキシ-1-プロポキシ)-コール酸(CA-3OH-NH
2)から成る群から選択され、R’’はそれぞれ独立して、飽和又は不飽和脂肪酸、飽和又は不飽和カルボン酸、ビタミン又はその代謝物、酵素補因子、抗生物質及び薬物から成る群から選択され、分岐モノマー単位Xはそれぞれジアミノカルボン酸であり、Y
1はそれぞれチオール、ボロン酸、1,2-ジオール又はシステインである。
【0123】
いくつかの実施形態において、化合物は以下の構造を有し、
【化17】
L’及びL”はそれぞれ独立して、結合又はリンカーEbes、アミノカプロン酸、5-アミノペンタン酸、4-アミノブタン酸、β-アラニン又はコハク酸であり、PEGは1~50kDaの分子量を有し、R’はそれぞれ独立して、コール酸、(3α,5β,7α,12α)-7,12-ジヒドロキシ-3-(2,3-ジヒドロキシ-1-プロポキシ)-コール酸(CA-4OH)、(3α,5β,7α,12α)-7-ヒドロキシ-3,12-ジ(2,3-ジヒドロキシ-1-プロポキシ)-コール酸(CA-5OH)及び(3α,5β,7α,12α)-7,12-ジヒドロキシ-3-(3-アミノ-2-ヒドロキシ-1-プロポキシ)-コール酸(CA-3OH-NH
2)から成る群から選択され、R’’はそれぞれ独立して、飽和又は不飽和脂肪酸、飽和又は不飽和カルボン酸、ビタミン又はその代謝物、酵素補因子、抗生物質及び薬物から成る群から選択され、分岐モノマー単位Xはそれぞれジアミノカルボン酸であり、Y
1はそれぞれチオール、ボロン酸、1,2-ジオール又はシステインである。
【0124】
いくつかの実施形態において、PEGは1~50kDaである。他の実施形態において、PEGは1~10kDaである。いくつかの実施形態において、PEGは約5kDaである。いくつかの実施形態において、R’’はそれぞれ独立してビオチン、trans-桂皮酸、ラウリン酸、リノール酸、リポ酸、ニコチン酸、オクタン酸、オレイン酸、レチノイン酸、ソルビン酸、ピロミド酸、コーヒー酸、リシノール酸、パントテン酸、アミノカプロン酸、リボフラビン、ピリドキシン、及びコレカルシフェロールから成る群から選択される。いくつかの実施形態において、各R’はコール酸である。いくつかの実施形態において、Aは存在しない。いくつかの実施形態において、分岐モノマー単位Xはそれぞれリジンである。
【0125】
いくつかの実施形態において、リンカーL’はコハク酸であり、R’’はそれぞれ独立してリボフラビン、ピリドキシン及びコレカルシフェロールから成る群から選択される。いくつかの実施形態において、リンカーL’は結合又はリンカーEbes、アミノカプロン酸、5-アミノペンタン酸、4-アミノブタン酸、又はβ-アラニンであり、R’’はそれぞれ独立してビオチン、trans-桂皮酸、ラウリン酸、リノール酸、リポ酸、ニコチン酸、オクタン酸、オレイン酸、レチノイン酸、ソルビン酸、ピロミド酸、コーヒー酸、リシノール酸、パントテン酸、及びアミノカプロン酸から成る群から選択される。いくつかの実施形態において、リンカーL’は結合であり、リンカーL”はリンカーEbes、アミノカプロン酸、5-アミノペンタン酸、4-アミノブタン酸、又はβ-アラニンである。いくつかの場合において、リンカーL”はリンカーEbesである。
【0126】
いくつかの実施形態において、本発明は表Cの架橋性テロデンドリマーを1つ以上、及び/又は表Cの架橋性テロデンドリマーを1つ以上、又は少なくとも2つ含むナノ担体を提供する。
【表C】
【0127】
IV.ナノ担体
本発明のテロデンドリマーは凝集して疎水性コア及び親水性外部を有するナノ担体を形成する。いくつかの実施形態において、本発明は、内部及び外部を有するナノ担体、本発明のデンドリマー複合体を複数含むナノ担体を提供し、化合物はそれぞれ水性溶媒で自己組織化して、ナノ担体を形成し、疎水性ポケットがナノ担体に形成され、それぞれの化合物のPEGはナノ担体の外部に自己組織化する。
【0128】
いくつかの実施形態において、ナノ担体は、疎水性薬物又はイメージング剤を含み、疎水性薬物又はイメージング剤は、ナノ担体の疎水性ポケットに隔離される。本発明のナノ担体に有用な疎水性薬物は、低水溶性を有する薬物を含む。いくつかの実施形態において、ナノ担体の疎水性薬物は、ボルテゾミブ、パクリタキセル、SN38、カンプトテシン、エトポシド及びドキソルビシン、ドセタキセル、ダウノルビシン、VP16、プレドニゾン、デキサメタゾン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、テムシロリムス及びカルムスチンであり得る。
【0129】
いくつかの実施形態において、ナノ担体は、光学プローブ、放射性核種、常磁性剤、金属キレート剤又は薬物に任意に結合される少なくとも1つのモノマー単位を含む。薬物は、様々な親水性又は疎水性薬物であり得、限定されないが、本発明のナノ担体の内部で隔離される疎水性薬物である。
【0130】
ナノ担体に隔離され、本発明の複合体に結合され得る薬物として、限定されないが、細胞分裂阻害剤、細胞毒性薬(例えば、限定されないが、DNA相互作用的な薬剤(シスプラチン又はドキソルビシン等))、タキサン(例えば、タキソテール、タキソール)、トポイソメラーゼII阻害剤(エトポシド等)、トポイソメラーゼI阻害剤(イリノテカン(又はCPT-11)、camptostar又はトポテカン等)、チュブリン相互作用剤(パクリタキセル、ドセタキセル又はエポチロン)、ホルモン剤(タモキシフェン等)、チミジル酸合成酵素阻害剤(5-フルオロウラシル等)、抗代謝物(メトトレキサート)、アルキル化薬(テモゾロミド(TEMODAR(商標)Schering-PloughCorporation(Kenilworth、N.J.)製)シクロホスファミド等)、アロマターゼ化合、ara-C、アドリアマイシン、シトキサン及びゲムシタビンが挙げられる。本発明のナノ担体に有用なその他の化合物として、限定されないが、ウラシルマスタード、クロルメチン、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ピポブロマン、トリエチレンメラミン、トリエチレンチオホスホラミン、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジン、フロクスウリジン、シタラビン、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、フルダラビンリン酸エステル、オキサリプラチン、ロイコボリン、オキサリプラチン(ELOXATIN(商標)Sanofi-SynthelaboPharmaceuticals(France)製)、ペントスタチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ブレオマイシン、ダクイダルビシンチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミスラマイシン、デオキシコホルマイシン、ミトマイシン-C、L-アスパラギナーゼ、テニポシド17.アルファ.-エチニルエストラジオール、ジエチルスチルベストロール、テストステロン、プレドニゾン、フルオキシメステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、テストラクトン、メゲストロール酢酸エステル、メチルプレドニゾロン、メチルテストステロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、クロロトリアニセン、ヒドロキシプロゲステロン、アミノグルテチミド、エストラムスチン、メドロキシプロゲステロン酢酸エステル、リュープロリド、フルタミド、トレミフェン、ゴセレリン、シスプラチン、カルボプラチン、ヒドロキシ尿素、アムサクリン、プロカルバジン、ミトタン、ミトキサントロン、レバミソール、ナベルベン、アナストロゾール、レトラゾール、カペシタビン、ラロキシフェン、ドロロキサフィン又はヘキサメチルメラミンが挙げられる。プロドラッグ形態も本発明に有用である。
【0131】
本発明に有用なその他の薬物は、67Cu、90Y、123I、125I、131I、177Lu、188Re、186Re及び211At等の放射性核種も含む。いくつかの実施形態において、放射性核種は、薬物及びイメージング剤として治療的に作用し得る。
【0132】
イメージング剤として、常磁性剤、光学プローブ及び放射性核種が挙げられる。常磁性剤として、ナノ担体の疎水性ポケットに隔離される鉄ナノ粒子等の鉄粒子が挙げられる。
【0133】
いくつかの実施形態において、本発明は、内部及び外部を有するナノ担体を提供し、ナノ担体は、少なくとも2つの複合体を含み、少なくとも1つの複合体は、式IIIの化合物であり、複合体はそれぞれ、ポリエチレングリコール(PEG)ポリマー、少なくとも2つのR’を含み、R’は疎水面及び親水面を有する両親媒性化合物であり、PEGに共有結合する樹状ポリマー、及び両親媒性化合物を含み、複合体はそれぞれ、水性溶媒に自己組織化して、ナノ担体を形成し、疎水性ポケットが互いに対して両親媒性化合物のそれぞれの疎水面の配向によってナノ担体の内部に形成され、それぞれの複合体のPEGはナノ担体の外部に自己組織化する。いくつかの実施形態において、複合体はそれぞれ式IIIの複合体である。いくつかの実施形態において、各R’はコール酸である。
【0134】
いくつかの実施形態において、本発明は、内部及び外部を有するナノ担体を提供し、ナノ担体は、少なくとも2つの複合体を含み、少なくとも1つの複合体は、式Iの化合物であり、複合体はそれぞれ、ポリエチレングリコール(PEG)ポリマー、少なくとも2つのR’を含み、R’は疎水面及び親水面を有する両親媒性化合物であり、PEGに共有結合する樹状ポリマー、及び両親媒性化合物を含み、複合体はそれぞれ、水性溶媒に自己組織化して、ナノ担体を形成し、疎水性ポケットが互いに対して両親媒性化合物のそれぞれの疎水面の配向によってナノ担体の内部に形成され、それぞれの複合体のPEGはナノ担体の外部に自己組織化する。いくつかの実施形態において、複合体はそれぞれ式Iの複合体である。いくつかの実施形態において、R’はそれぞれコール酸である。
【0135】
いくつかの実施形態において、本発明は、内部及び外部を有する可逆的に架橋されるナノ担体を提供し、ナノ担体は、少なくとも2つの複合体を含み、少なくとも1つの複合体は、式IIの化合物であり、複合体はそれぞれ、ポリエチレングリコール(PEG)ポリマー、少なくとも2つのR’を含み、R’はそれぞれ独立して疎水面及び親水面を有する両親媒性化合物、架橋性基Y1並びにPEG、R’基及びR’’基に共有結合される樹状ポリマーを含み、複合体は水性溶媒に自己組織化して、ナノ担体を形成し、疎水性ポケットが互いに対してR’のそれぞれの疎水面の配向によってナノ担体の内部に形成され、それぞれの複合体のPEGはナノ担体の外部に自己組織化し、少なくとも2つの複合体は、架橋性基を介して可逆的に架橋される。いくつかの実施形態において、複合体はそれぞれ式IIの化合物である。いくつかの実施形態において、ナノ担体は架橋性チオール基を含む。いくつかの実施形態において、各R’はコール酸である。
【0136】
いくつかの実施形態において、本発明は、内部及び外部を有する可逆的に架橋されるナノ担体を提供し、ナノ担体は少なくとも2つの複合体を含み、少なくとも1つの複合体は前述の化合物であり、
【化18】
複合体はそれぞれ、疎水面及び親水面を有する両親媒性化合物R’、架橋性基R’’、及びポリエチレングリコール(PEG)ポリマーを含み、複合体はそれぞれ水性相溶媒において自己組織化してナノ担体を形成し、疎水性ポケットが互いに対してそれぞれの両親媒性化合物の疎水面の配向によって、ナノ担体の内部に形成され、それぞれの複合体のPEGがナノ担体の外部で自己組織化し、少なくとも2つの複合体が架橋性基を介して可逆的に架橋する。いくつかの実施形態において、各R’はコール酸である。いくつかの実施形態において、複合体はそれぞれ以下の式の化合物である。
【化19】
【0137】
V.治療方法
本発明のナノ担体は、例えば、ナノ担体の内部に疎水性薬物を隔離することによって、又はナノ担体の複合体に薬物を共有結合することによって、薬物の投与を必要とする疾患の治療に使用することができる。ナノ担体は、ナノ担体の内部のイメージング剤を隔離することによって、又はナノ担体の複合体にイメージング剤を結合させることによって、イメージングにも使用することができる。
【0138】
いくつかの実施形態において、本発明は、疾患を治療する方法を提供し、本発明のナノ担体の治療有効量を治療を必要とする対象に投与することを含み、ナノ担体は薬物を含む。薬物は、ナノ担体の複合体に共有結合され得る。いくつかの実施形態において、薬物はナノ担体の内部に隔離される疎水性薬物である。いくつかの実施形態において、ナノ担体はイメージング剤も含む。イメージング剤は、ナノ担体の複合体に共有結合し得、又はイメージング剤はナノ担体の内部に隔離され得る。いくつかの実施形態において、疎水性薬物とイメージング剤の両方は、ナノ担体の内部に隔離される。その他の実施形態において、薬物とイメージング剤の両方は、ナノ担体の複合体に共有結合される。その他の実施形態において、ナノ担体は、放射性核種も含み得る。
【0139】
本発明のナノ担体は、治療を必要とする対象に投与することができ、疾患として、例えば、限定されないが、癌腫、神経膠腫、中皮腫、メラノーマ、リンパ腫、白血病、腺癌、乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、神経膠芽腫、白血病、リンパ腫、前立腺癌、及びバーキットリンパ腫、頭頸部癌、結腸癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、食道癌、胃癌、膵癌、肝胆道癌、胆嚢癌、小腸癌、肝臓癌、腎臓癌、膀胱癌、前立腺癌、陰茎癌、尿道癌、精巣癌、子宮頸癌、膣癌、子宮癌、卵巣癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、膵内分泌癌、カルチノイド癌、骨癌、皮膚癌、網膜芽細胞腫、多発性骨髄腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(その他追加の癌についてはCANCER:PRINCIPLES AND PRACTICE (DeVita, V. T.等版2008)を参照のこと)が挙げられる。
【0140】
本発明ナノ担体によって治療することができるその他の疾患として、(1)全身性アナフィラキシー又は過敏性応答、薬物アレルギー、虫刺されアレルギー等の炎症性又はアレルギー疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、回腸炎及び腸炎等の炎症性腸疾患、腟炎、乾癬及び皮膚炎、湿疹、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、蕁麻疹等の炎症性皮膚疾患、血管炎、脊椎関節症、強皮症、喘息、アレルギー性鼻炎、過敏性肺疾患等の呼吸器官アレルギー疾患、(2)関節炎(リウマチ及び乾癬)、変形性関節症、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、糖尿病、糸球体腎炎等の自己免疫疾患、(3)(同種移植片拒絶及び移植片対宿主疾患を含む)移植拒絶、並びに(4)望ましくない炎症応答が阻害されるその他の疾患(例えば、粥状動脈硬化、筋炎、卒中及び閉鎖性頭部外傷等の神経病態、神経変性疾患、アルツハイマー病、脳炎、髄膜炎、骨粗鬆症、痛風、肝炎、腎炎、敗血症、サルコイドーシス、結膜炎、耳炎、慢性閉塞性肺疾患、副鼻腔炎及びベーチェット症候群)が挙げられる。
【0141】
さらに、本発明のナノ担体は、ウイルス、細菌、真菌及び寄生虫等の病原体による感染の治療に有用である。その他の疾患も本発明のナノ担体を使用して治療することができる。
【0142】
A.製剤
本発明のナノ担体は、当業者に周知の様々な異なる方法で製剤にすることができる。薬学的に許容される担体は、投与する特定の組成物、及び組成物を投与するために使用される特定の方法によって、部分的に決定される。従って、本発明の医薬組成物の適切な製剤は広範囲に多様にある(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、20版、2003、上記参照)。効果的な製剤として、経口及び経鼻製剤、非経口投与の製剤、徐放性のために調合された組成物が挙げられる。
【0143】
投与に適した製剤は、(a)水、生理食塩水、又はPEG400等の希釈剤に懸濁された本発明の有効量の化合物等の液体溶液、(b)それぞれ液体、固体、顆粒又はゼラチンとして所定量の有効成分を含むカプセル、小袋、デポー又は錠剤、(c)適切な液体中の懸濁剤、(d)適切な乳化剤及び(e)パッチから構成され得る。前述の液体溶液は無菌溶液であり得る。薬学的剤形は、乳糖、ショ糖、マンニトール、ソルビトール、リン酸カルシウム、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、結晶セルロース、ゼラチン、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、及びその他の賦形剤、着色剤、充填剤、結合剤、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、保存剤、香料、染料、崩壊剤及び薬学的に適合性の担体の1つ以上を含み得る。トローチ剤形は、香料に有効成分を含み得、例えば、ショ糖、並びにゼラチン及びグリセリン又はショ糖及びアカシア乳化剤、ゲル等の不活性塩基、並びに有効成分の他に技術分野で周知の担体に有効成分を含むトローチを含み得る。
【0144】
医薬調製物は単位剤形が好ましい。このような剤形で、調製物は、適切な量の有効成分を含有する単位剤形に小分けにされる。単位剤形は、パッケージにされた調製物、小分けにされた錠剤、カプセル及びバイアル又はアンプル中の粉末等の分散量の調製物を含有するパッケージであり得る。また、単位剤形は、カプセル、錠剤、オブラート又はトローチそれ自体であってもよく、又はパッケージ形態の適切な数のものであってもよい。組成物は、望ましい場合、その他の適合性の治療薬を含み得る。好ましい医薬調製物は、本発明の化合物を徐放性製剤にすることができる。
【0145】
本発明に有用な医薬調製物は、徐放性製剤も含む。いくつかの実施形態において、本発明に有用な徐放性製剤は、米国特許第6,699,508号に記載されており、米国特許第7,125,567号に従って調製することができ、両特許とも参照により本明細書に組み込まれる。
【0146】
医薬調製物は、一般的に、ヒト及び非ヒト哺乳動物を含む哺乳動物に投与される。本発明の方法を使用して治療を受ける非ヒト哺乳動物として、ペット(イヌ、ネコ、マウス、齧歯目及びウサギ目)及び家畜動物(ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ)が挙げられる。
【0147】
本発明の方法を実施するときに、医薬組成物を単独で使用してもよいし、又はその他の治療薬又は診断薬と組み合わせて使用してもよい。
【0148】
B.投与
本発明のナノ担体は、1時間ごと、毎日、毎週又は毎月を含む必要な頻度で投与することができる。本発明の薬学的方法で使用する化合物は、1日につき約0.0001mg/kg~約1000mg/kgの初回投与量で投与される。約0.01mg/kg~約500mg/kg、又は約0.1mg/kg~約200mg/kg、又は約1mg/kg~約100mg/kg、又は約10mg/kg~約50mg/kgの1日用量を使用することができる。しかし、用量は、患者の必要条件、治療を行う病態の重症度、及び使用する化合物によって変化し得る。例えば、用量は、特定の患者に診断された疾患の種類、ステージを考慮して経験的に決定することができる。本発明において、患者に投与する用量は、経時的に患者の有益な治療奏功をもたらす充分な量であるべきである。用量の大きさは、特定の患者に特定の化合物を投与することに伴う有害な副作用の存在、性質及び範囲によっても決定される。特定の状況について適切な用量を決定することは、従事者のスキルの範囲内である。概して、化合物の最適量より少ない用量で、治療は開始される。その後、用量は、状況下の最適効果に達するまで徐々に増加する。利便性のために、合計の1日用量は望ましい場合その日のうちにいくつかに分けられて投与してもよい。治療医による判断で、毎日、又は1日おきに投与することができる。皮下カプセル、小袋又はデポーを使用して、又はパッチ若しくはポンプを介して、長期間(数週間、数か月又は数年)にわたって定期的に又は連続して投与することもできる。
【0149】
医薬組成物は、例えば、局所、非経口、静脈、皮内、皮下、筋肉内、腸内、直腸又は腹腔内を含む様々な方法で患者に投与することができる。好ましくは、医薬組成物は、非経口、局所、静脈、筋肉内、皮下、経口、吸入等の経鼻的に投与される。
【0150】
本発明の方法を実施するときに、医薬組成物を単独で使用してもよいし、又はその他の治療薬又は診断薬と組み合わせて使用してもよい。本発明の組み合わせプロトコルに使用される追加の薬物は、別々に投与することができ、又は組み合わせプロトコルで使用される1つ以上の薬物を混合して、一緒に投与することができる。1つ以上の薬物を別々に投与する場合、それぞれの薬物の投与のタイミングとスケジュールは変化し得る。その他の治療又は診断薬は、本発明の化合物と同時に、別々に、又は異なる回数で投与することができる。
【0151】
VI.イメージングの方法
いくつかの実施形態において、本発明は、イメージングの方法を提供し、本発明のナノ担体の有効量を、イメージングする対象に投与することを含み、ナノ担体はイメージング剤を含む。他の実施形態において、治療方法及びイメージング方法は、薬物とイメージング剤の両方を有するナノ担体を使用して同時に達成される。
【0152】
例示的なイメージング剤として、常磁性剤、光学プローブ及び放射性核種が挙げられる。常磁性剤及びイメージング剤は、外部に適用される領域において、磁性である。常磁性剤の例として、限定されないが、ナノ粒子を含む鉄粒子が挙げられる。光学プローブは、放射線の1つの波長で励起することによって、第2の異なる波長の放射線で検出することによって、検出することができる蛍光化合物である。本発明に有用な光学プローブとして、限定されないが、Cy5.5、Alexa680、Cy5、DiD(1,1’’-ジオクタデシル-3,3,3’,3’-テトラメチルインドジカルボシアニン過塩素酸塩)及びDiR(1,1’-ジオクタデシル-3,3,3’,3’-テトラメチルインドトリカルボシアニンヨウ化物)が挙げられる。その他の光学プローブは量子ドットを含む。放射性核種は、放射性崩壊を行う要素である。本発明に有用な放射性核種として、限定されないが、3H、11C、13N、18F、19F、60Co、64Cu、67Cu、68Ga、82Rb、90Sr、90Y、99Tc、99mTc、111In、123I、124I、125I、129I、131I、137Cs、177Lu、186Re、188Re、211At、Rn、Ra、Th、U、Pu及び241Amが挙げられる。
【実施例】
【0153】
VII.実施例
一般的方法
以下の実施例は、TherapeuticDelivery2013、10、1279-1292;Nanomedicine(Lond)2014、9、1807-1820;Biomaterials2015、67、183-93;及びNanotechnology2016、27(42)、425103に概要を示した手順を使用する。
【0154】
本発明のテロデンドリマーは、以下にまとめた手順又は適切な試薬を使用して、Li Y等、“Well-defined, reversible disulfide cross-linked micelles for on-demand paclitaxel delivery”、Biomaterials 2011、32(27)、6633-6645 and Bharadwaj G等、“Cholicacid-based novel micellar nanoplatform for delivering FDA-approved taxanes”、Nanomedicine(London, England)2017に記載の手順に従って作製する。
【0155】
実施例1:有機部分ハイブリッドテロデンドリマーの調製
タキサン(パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル)は、広範囲の様々な癌の治療の礎石であり続ける重要なクラスの化学療法薬である。しかし、薬物及び賦形剤から生じる深刻な副作用がクリニックで観察されることが多い。効果的なカプセル化のためにコール酸(CA)系ミセルナノ担体の開発及びパクリタキセルの送達は以前に報告されていた。このナノプラットフォームは、一端に8個のコール酸の集団を有する5000ダルトンの線形PEGからなるテロデンドリマー(PEG5K-CA8)から構築される。一連の新規のハイブリッドテロデンドリマー(PEG5K-OM4/CA4)を記載し、改善された物理化学特性、薬物負荷能力及び有効性は、8つのコール酸のうち4つを生適合性有機部分(OM)に置換することによって生じる。これらのハイブリッドテロデンドリマーのいくつかは、狭いサイズ分布、低臨界ミセル濃度(CMC)値(0.9~6.4μM)、優れた血液適合性(試験時最大2mg/ml)及びin vitroの細胞傷害性(最大2mg/ml)の喪失を有するミセルを生成することができる。PEG5K-CA8と共に、本明細書に記載のコール酸系ハイブリッドナノプラットフォームは、約100%の効率性と最大20%(w/w)の負荷で、FDA承認された全ての3つのタキサンを安定してカプセル化することができる最初の種類である。
【0156】
材料
ドセタキセル及びカバジタキセルはAdooq Bioscienceから購入した。モノメチル末端ポリエチレングリコールモノアミン(MeO-PEG-NH2、分子量5KDa)はRapp Polymere(Tubingen、Germany)から購入した。(Fmoc)リジン(Fmoc)OH及び6-Cl-HOBtはAapptecから購入した。(Fmoc)リジン(Boc)OHはCombi-Blocks Incから購入した。N,N′-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、レチノイン酸、桂皮酸、ビオチン、リポ酸、ナイアシン、オクタン酸、オレイン酸及びリノール酸はSigma Aldrichから購入した。ラウリン酸はACROS ORGANICSから購入した。ソルビン酸はTCI Americaから購入した。ケンデオキシコール酸及びグリココール酸はChem-Ipex Internationalから購入した。配列グレードDMF及びジエチルエーテルはFisher Scientificから購入した。MTS試薬はPromegaから購入した。アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(ATCC)のヒト乳癌細胞株MDA-MB-231を、10%のウシ胎仔血清(FBS)(ATCC30-2020)、1%のペニシリン-ストレプトマイシン(PS)(Life Technologies)、1%の非必須アミノ酸(NEAA)(Life Technologies)を補充したイーグル最小必須培地(ATCC30-2003)で37℃、5%のCO2で培養した。
【0157】
PEG
5K-OM
4/CA
4及びのPEG
5K-OM
8の合成
ハイブリッドTD PEG
5K-OM
4/CA
4を出発材料としてMeO-PEG
5K-NH
2を使用して、溶液相ペプチドカップリングを介して合成し(
図5A)、次にエーテル沈殿し、それぞれのカップリング反応後に遠心分離によって結合していない試薬を除去した。端的には、DIC及びHOBtをカップリング試薬として使用して、一晩、負カイザーテストの結果が得られるまで、(Fmoc)Lys(Fmoc)-OH(3等量)をMeO-PEG
5K-NH
2のN末端で結合し、カップリング反応の完了を示した。溶出剤としてDCM/MeOH(9:1)を使用してTLCによって、反応の完了をさらに検証した。PEG化分子を冷たいエーテルを添加することにより沈殿させた。上清の除去後、残渣をDMFに再溶解し、冷たいエーテルを添加することにより再び沈殿させた。再溶解と沈殿をもう1回実施し、最後に冷たいエーテルで2回洗浄した。ジメチルホルムアミド(DMF)中で20%(v/v)の4-メチルピペリジンで3時間処理することによってFmoc基を除去し、PEG化分子を前述と同じように沈殿し、洗浄した。真空下で白色粉末沈殿物を乾燥し、(Fmoc)Lys(Fmoc)-OHの1つのカップリング及び(Fmoc)lys(Boc)-OHの1つのカップリングを連続して実施して、PEGの一端で4つのBoc及びFmoc基で終了した樹状ポリリジンの第3世代を生成した。Boc基を50%(v/v)のTFA/DCMを使用して続けて除去し、次に前述のように、エーテル沈殿と洗浄を行った。その後、カップリング試薬としてDIC及びHOBtを使用して、遊離-COOHを有する有機ビルディングブロックをPEGオリゴリジンデンドリマーの遊離一級アミンに結合した。20%(v/v)の4-メチルピペリジンでFmocを除去した後、最後に、CA-NHSエステルを残りの末端一級アミンに結合させた。7000KDaの分子量カットオフで透析管中の4Lの水に対してTD溶液を透析し、残りの水は48時間で4回完全にリフレッシュした。最後に、TDを凍結乾燥して、白色から淡黄色のハイブリッドTDを得た。
【0158】
(Fmoc)Lys(Boc)-OHの代わりにFmoc)Lys(Fmoc)-OHを使用して、前述と同様の方法でPEG
5K-OM
8ポリマーを合成して(
図5B)、8つのFmoc基で終了した樹状ポリリジンの第3世代を生成した。Fmocを除去し、次に有機酸のDIC媒介カップリングを行い、所望のPEG
5K-OM
8ポリマーを得た。
【0159】
ポリマーの特徴化
質量分析
マトリックスとしてシナピン酸又は2,5-ジヒドロキシ安息香酸(DHB)を使用して、Ultra Flex MALDI-TOF/TOF質量分析計(線形モード)でTDの質量スペクトルを回収した。
【0160】
粒径及び臨界ミセル濃度(CMC)
ミセルの粒径とサイズ分布を動的光散乱(DLS)器具(Microtrac)によって測定した。DLS測定値のミセル濃度をPBSバッファ中1.0mg/mLで保持した。粒径の測定値を室温で3重で記録した。
【0161】
調製したミセル溶液全てのCMC値を疎水性蛍光プローブとしてピレンを使用することによって以前に公表した手順に従って蛍光定量的に測定した。端的には、ピレンのストック溶液をメタノール中に作製し、暗条件下に保管した。ピレンのアリコートを96ウェルのブラックプレートにウェルごとに添加し、メタノールを37℃で蒸発した。得られるピレン濃度がウェルあたり6×10-6Mになるように異なる濃度(5×10-7M~5×10-4M)の水性ミセル溶液を各ウェルに添加した。プレートを暗条件で室温で一晩置いた。それぞれ332nmと336nmで励起した後、391nmのピレンの蛍光放射の強度を回収した。I336/I332のプロット対濃度を使用して以前に報告したようにCMC値を計算した。
【0162】
溶血
新しく調製したハイブリッドTD PEG5K-OM4/CA4及びPEG5K-OM8の溶血をマウスの新鮮なクエン酸血を使用して実施した。血液の赤血球細胞(RBC)を1000rpmの遠心分離を10分間行うことで回収し、PBSで3回洗浄し、その後、PBS中2%の最終濃度を得た。異なる濃度(0.2及び2.0mg/mL)のポリマーを200μLの赤血球懸濁液に添加し、37℃で4時間インキュベートした。試料に1000rpmの遠心分離を5分間行い、全試料の100μLの上清を遊離ヘモグロビン分析のために96ウェルプレートに移した。マイクロプレートリーダー(SpectraMax M2、Molecular Devices、USA)を使用して全試料の540nmの吸光度を記録した。Triton-100(2%)とPBSによるRBCインキュベーションをそれぞれ陽性及び陰性対照として使用した。各試料によるRBCの溶血パーセントを以下の式を使用して計算した。
(OD試料-OD陰性対照)/(OD陽性対照-OD陰性対照)×100%
【0163】
細胞傷害性
ブランクナノ粒子の細胞傷害性をヒト乳癌細胞MDA-MB-231で評価した。PromegaのCellTiter 96(登録商標)AQueous One Solution Cell Proliferation Assay (MTS)を使用して細胞生存率を確認した。ポリマーのストック溶液をPBSバッファ中20mg/mlで調製した。96ウェルプレートに8000細胞/ウェルの密度で細胞を蒔き、37℃で24時間インキュベートした。24時間後、培地を交換し、新しい培地に様々な濃度の異なるナノ粒子を添加し、さらに48~72時間インキュベートした。望ましいタイムポイント(48又は72時間)で、培地を交換し、製造者の推奨に従ってMTS/PMS試薬(20:1比)で補充した。試料を5%のCO2で暗条件に37℃で4時間置いた。Spectramax M3 Microplate reader(Molecular Devices)を使用して結果を得た。
【0164】
薬物負荷
薬物(DTX及びCTX)をウェルを使用してナノ粒子に負荷し、溶媒蒸発方法を確立した。様々な量の薬物(1.5~3mg)及び固定量のポリマー(15mg)を10mlの丸底フラスコに添加した。クロロホルム又はメタノール(1ml)を添加して試料を溶解した。溶媒を高圧下で蒸発して、薄膜を形成した。PBSバッファ(1ml)を添加して、薄膜を再構成した。必要な場合、試料を超音波処理し、0.22μmのフィルターに通した。ジメチルスルホキシド(DMSO)を9回添加し、その後10分間超音波処理することによって、ミセルから薬物を放出した後に、各ミセルに負荷した薬物の量をHPLCシステム(Waters)で分析した。HPLC領域値と薬物標準の濃度との間で以前に生成した較正曲線に従って薬物負荷を計算した。
【0165】
結果と検討
リポソーム、ミセル、ポリマー、ハイドロゲル及びその他に基づいていくつかのナノ担体を開発することで、多くの疎水性癌薬物を安定的にカプセル化することができ、活性又は受動的ターゲティングを介して癌の部位に部位特異的に送達することができる。我々は、ある範囲の疎水性コアの疎水性薬剤を安定的にカプセル化することができる強固なミセルナノ粒子を最近報告した。このナノプラットフォームは、天然の界面活性剤CA及び線形ポリエチレングリコール(PEG)に結合した樹状リジンから成る両親媒性TDから構築され、式PEG
nK-CA
y(n=キロダルトン(K)の分子量、y=CA単位の数)によって示される。最も研究されているTDの1つであるPEG
5K-CA
8(
図1)は、パクリタキセル(PTX)、タキサン及びいくつかの他の小分子、薬物又は化学療法薬を含むある範囲の癌薬物を安定的にカプセル化することができる。PTXの最初の量がPEG
5K-CA
8(20mg/ml)の25重量%未満であり、優れた安定性を有し(6か月以上)、大きさが20~60nmである場合、TDは、100%の負荷効率でPTXをカプセル化した。PEG
5K-CA
8は、PTXに優れた負荷能力を示したが、ドセタキセル(DTX)及びカバジタキセル(CTX)には示さなかった(表3及び5を参照のこと)。全ての3つのタキサンが構造的にかなり類似している場合(
図1)、この結果はいくらか驚くものである。しかし、ナノ製剤の成功は、担体の適合性と小分子のペイロードに依存し得ることを示す。
【0166】
文献において、ミセルナノ粒子に使用される多くの両親媒性ポリマーは、ブロックコポリマー化によって形成され、詳細には明らかになっていない。異種性PEG部分を除いて、我々の両親媒性ポリマーの1つのユニークな特徴が化学的に詳細に明らかになっている。両親媒性ポリマーはステップごとのペプチド合成によって調製されるため、合成スキームを容易に修正し、異なるリンカー、両親媒性ビルディングブロック又は有機部分(OM)をPEGオリゴリジンデンドリマーの末端に導入することができる。我々は、このような修正によって、特定の薬物又は薬物群に適した新規のTDを生成することができると考えている。ここで、我々は、3つのタキサン:PTX、DTX及びCTXの全てをカプセル化することができるTDを開発することに専心した。PEG
5K-CA
8の8つのCAの4つをOM生成TD(ハイブリッドTD)に置き換え、PEG
5K-OM
4/CA
4(
図2)として示した。我々は、8つの全てのCAがOMに置き換えて、薬物負荷に対するCAの分布を調べる場合に、PEG
5K-CA
8の構造的類似体も開発した。これらの新しいTDの毒性を最小にするために、内在的に生成されるか、又はヒトの食事の一部として消費される、又はFDAに承認されたOMのみを選択した。異なるハイブリッドTDを調製するために使用した単純な脂肪族又は芳香族OMの化学構造を表1に示す。我々の最初の試験について、飽和及び不飽和脂肪酸(表1;エントリー3、4、7及び8)の小さいセット、環状ビタミン(表1;エントリー1、6及び9であって、1及び6は複素環式化合物でもある)、香料及び食品保存剤(表1;それぞれエントリー2及び10)に注目し、最後に補助因子(表1;複素環式化合物でもあるエントリー5)に注目した。我々は、また、ポリマークラスPEG
5K-OM
8についてCAの代用(表2、エントリー12及び14)として、天然界面活性剤ケノデオキシコール酸及びグリココール酸を含めた。全てのポリマーは我々が確立し、公表した手順に従って調製した。
図6~10を参照されたい。
【表1】
【表2】
【0167】
溶血
血液適合性は、ポリマー系薬物担体の臨床橋渡しに必要である。両親媒性ポリマーは、細胞膜、とりわけ赤血球細胞(RBC)の細胞膜の崩壊を引き起こす能力を有する。ハイブリッドTD及び選択されたPEG
5K-OM
8ポリマーによって誘導された溶血を検査して、血液適合性の洞察を得た。ミセルナノ粒子で処理された赤血球細胞の上清に存在するヘモグロビンの吸光光度測定によって、溶血を検出した。以前に、我々は、標準TD PEG
5K-CA
8から用量依存的赤血球細胞(RBC)溶血を示した。PEG
5K-CA
8からの溶血の割合は、濃度が0.2mg/mLから1.0mg/mLに増加するにつれて、9.0%から16.3%に増加した。現在のポリマーセットについて、溶血の試験を0.2mg/mlと2mg/mlの濃度で実施した。
図3は、ハイブリッドTD及びPEG
5K-OM
8ポリマーから観察した溶血活性を示す。0.2mg/mlの濃度では、大部分のポリマーは、PEG
5K-(グリココール酸)
8ポリマー(81.9%)を除いて、溶血活性を示さなかった。PEG
5K-(オクタン酸)
4/CA
4及びPEG
5K-(レチノイン酸)
4/CA
4からの溶血はかなり低かった(それぞれ4.0%と5.5%)。高いポリマー濃度(2mg/ml)では、PEG
5K-(レチノイン酸)
4/CA
4を除いて、2桁の溶血を示し(16.2%)、PEG
5K-(グリココール酸)
8はより高い溶血を示し(90.9%)、ハイブリッドTDとPEG
5K-OM
8の多くは、溶血活性がないか、最小の溶血しか誘導されなかった(ラウリン酸系ハイブリッドTDについては2.7%、リポ酸系ハイブリッドTDについては3.4%、オクタン酸系ハイブリッドTDについては4.7%であり、PEG
5K-(ビオチン)
8については1.9%であった)。PEG
5K-(レチノイン酸)
4/CA
4及びPEG
5K-(グリココール酸)
8の高い溶血活性は重要であり得るが、我々の標準TDについて以前に報告したように、疎水性コアにジスルフィド架橋結合を導入することによって、軽減する可能性がある。
【0168】
in vitroの細胞傷害性
ハイブリッドTDから構築された空のナノ粒子のヒト乳癌細胞MDA-MB-231に対する細胞傷害性をMTSアッセイを使用して評価した。
図4に示すように、ナノ担体は48時間又は72時間のインキュベーションについて、最大少なくとも2mg/mlまで、検出可能な細胞傷害性を示さなかったが、例外として、PEG
5K-(グリココール酸)
8は72時間のタイムポイントでいくらか毒性を示した。これらのミセルから細胞傷害性が欠いていることは、これらのナノ担体のナノ製剤の薬物担体としての潜在的な使用を示している。
【0169】
ここ数年にわたって、我々は、PEG5K-CA8から構築された我々の標準ナノミセルへのいくつかの疎水性薬物(PTX、ドキソルビシン、ビンクリスチン、ダウノルビシン等)の負荷に成功してきており、これらのナノ製剤がいくつかの異種移植片モデルにおいて有効であることを証明した。しかし、我々は、PEG5K-CA8がDTX(表3、エントリー1)、CTX(表5、エントリー1)又はSN-38(データ示さず)等の疎水性薬物全てに働かないことも分かっている。我々のナノミセルの多用途性及び柔軟性を示すために、小さいポリマーセットのDTX(表3及び4)及びCTX(表5及び6)をカプセル化する能力について評価を行った。
【0170】
表3に示すように、10%の薬物:ポリマー比(w/w)のDTXについて標準TD PEG
5K-CA
8の負荷効率が68.9%であることが分かった。近似した薬物:ポリマー比では、6つの異なるハイブリッドTDがPEG
5K-CA
8(エントリー2、3、6、7、8及び11)より高い薬物負荷効率を有することが分かった。PEG
5K-CA
8クラスのうち、PEG
5K-(グリココール酸)
8は標準TDよりも優れた負荷効率を有する。PEG
5K-(オクタン酸)
4/CA
4以外(エントリー8)では、その他全ての好ましい候補は、狭いサイズ分布で20nm未満の粒径を有した。さらに、3(PEG
5K-(桂皮酸)
4/CA
4)、6(PEG
5K-(リポ酸)
4/CA
4)及び11(PEG
5K-(ソルビン酸)
4/CA
4)の3つは、100%の負荷効率でDTXをカプセル化した。これらの3つのポリマーは、より高い薬物濃度で、負荷に選択された(表4)。3mg/15mgのポリマーのDTX負荷では、3と6の両方がより高い薬物負荷を維持したが(それぞれ93.3%と88.4%)、11の負荷効率は56.7%に低下したことが分かった。DTXスクリーニングに基づいて、我々は、3と6の2つのポリマーを識別し、これらのポリマーは、目に見える沈殿がなく高い負荷能力(約20%w/w)でDTXを安定してカプセル化することができ、安定性をDLSによってモニターした(データ示さず)。
【表3】
【表4】
【0171】
もう1つ別のタキサンファミリーのCTXは、前立腺癌の治療のために最近承認され、次にこれをスクリーニングする。DTXに比べて、標準TD PEG
5K-CA
8においてCTXは良好な薬物負荷を有した(エントリー1、表5)(15mgのポリマーにつき、2.0mgのCTXでは79.5%、1.5mgのDTXでは68.9%)。PEG
5K-CA
8によってCTXはDTXを上回る優れた負荷があるにもかかわらず、最終的なナノ粒子のより広いサイズ分布がCTXに観察された。PEG
5K-CA
8に比べて、3、5、6及び8の4つのその他のハイブリッドTDは、より優れた薬物負荷を示し、PEG
5K-(オレイン酸)
4/CA
4(エントリー9)は同様の負荷効率を示した。他方では、PEG
5K-OM
8ポリマーのどれもPEG
5K-CA
8より優れた負荷効率を示さなかった。PEG
5K-(桂皮酸)
4/CA
4(エントリー3)及びPEG
5K-(リノール酸)
4/CA
4(エントリー5)は、両方とも100%の負荷効率を示し、より高い薬物負荷の試験をさらに行った。これらのハイブリッドTDの両方は、3mgの薬物と15mgのポリマーで約100%の負荷効率を維持することが分かった(表5)。CTXスクリーニングに基づいて、非常に高い負荷効率(約20%w/w)を有する2つのポリマーを識別し、DTXの結果に比べて良好な負荷であった。薬物負荷試料の代表的なDLSデータについては
図11を参照されたい。
【表5】
【表6】
【0172】
実施例2:追加の有機部分ハイブリッドテロデンドリマーの調製
カルボキシル含有有機部分(OM)について追加のハイブリッドテロデンドリマーを提案する。表7は5つのハイブリッドテロデンドリマーを示す。
【表7】
【0173】
エントリー17を合成し、質量分析法及び動的光散乱法(DLS)によって特徴付けた。結果を以下に示す。
分子量(Da;Theo):8161
分子量(Da;Exp):8134
粒径(容量%、幅):15.6(100,8.1)nm
【0174】
実施例3:有機部分ハイブリッドテロデンドリマーのパクリタキセル負荷ナノ担体の脂質プロファイル
選択したテロデンドリマーを使用してパクリタキセルをナノ製剤化した。得られたナノ担体カプセル化された薬物を10mg/Kgの負荷したパクリタキセルと200mg/kgのポリマーの用量で、Balb/Cマウスに静脈注射した。血液を注射後8時間と24時間に採取して、脂質パネルについて血清試料の試験を行った。血液試料を分析して脂質プロファイルを生成した。注射後8時間で、PEG
5K-(リノール酸)
4/CA
4を除くポリマー全てでコレステロールとトリグリセリドレベルが増加した。24時間で、多くのポリマーでコレステロールとトリグリセリドレベルの両方が、正常レベル近くにまで低下したが、PEG
5K-Cys
4-Ebes
4-CA
8は正常範囲の6倍を超えて維持した。リノール酸及びジスルフィド架橋ポリマー(PEG
5K-Cys
4-Ebes
4-CA
8)を除く多くのポリマーでLDLレベルが増加した。ポルフィリンハイブリッドテロデンドリマー(PEG
5K-Por
4/CA
4)の低い脂質値は、分析の波長においてポルフィリン部分の吸光度によって分析を妨害したためによるものと考えられる。結果を表8に提供する。
【表8】
【0175】
実施例4:NSAIDハイブリッドテロデンドリマー
PEG
5K-(NSAID)
4/CA
4テロデンドリマーを周知の方法及び周知のNSAIDを使用して、
図21に概要を示したスキームに従って調製した(
図22)。ナノ担体も対応するテロデンドリマーから調製した。テロデンドリマーの分子量及び対応する分子量の粒径を以下に提供する。
【表9】
【0176】
前述の方法を使用して、ナノ担体を2mg/20mgポリマー(n=1)のニクロサミドに負荷した。
【表10】
【0177】
実施例5:架橋性有機部分ハイブリッドテロデンドリマー
PEG
5K-(桂皮酸)
4/Cys
4-L-CA
4及びPEG
5K-(リノール酸)
4/Cys
4-L-CA
4を周知の方法を使用して、
図16に概要を示したスキームに従って調製した。
【表11】
【0178】
SDSの存在下で、リノール酸系架橋系は、同様の粒径を維持し、これは、45分間観察するときの崩壊条件下でミセル安定性を示す。10mMの還元剤を添加した同様の条件下で、驚くことに、架橋系は、解離状態に対して無作為変動を有してほぼ同様の粒径を維持した(
図19及び
図20)。
【0179】
架橋性ナノ担体にカバジタキセル(2mgの薬物/15mgのポリマーn=1)を負荷した。
【表12】
【0180】
実施例6:表面架橋性ハイブリッドテロデンドリマーPEG
5K-(Ahx-(NAc-Cys))
4/CA
4の調製
PEG
5K-(Ahx-(NAc-Cys))
4/CA
4を周知の方法を使用して、
図28に概要を示したスキームに従って調製した。これらのテロデンドリマーは、(理論上の分子量8544に比べて)8412の実験的分子量を有し、その後、使用して、前述の方法を使用してナノ担体を調製した(
図29を参照のこと)。
【0181】
10mMのDTTがある場合とない場合とで追加のSDS安定性試験も実施した。
【0182】
架橋性ナノ担体に以下の表に示す異なる薬物を負荷した。
【表13】
【0183】
ビンブラスチンを負荷したPEG
5K-(Ahx-(NAc-Cys))
4/CA
4のナノ担体のin vitroの細胞傷害性を膀胱癌細胞5637(
図40)及びJ82(
図41)で試験を行った。DiDを負荷したナノ担体のin vivoの体内分布についても試験を行い、
図42に示す。MB49腫瘍及びBL269腫瘍を使用して、in vivoの治療試験も行った。
【0184】
理解の明白性のために、図示と例によって前述の発明のいくらか詳細に記述してきたが、一定の変更及び修正が添付の請求項の範囲でなされ得ることを当業者は理解するだろう。さらに、本明細書で提供された参考文献はそれぞれ、各参考文献が参照により個別に組み込まれたかのと同じ範囲で、参照によりその全体が組み込まれる。本出願と本明細書で提供された参考文献とで齟齬がある場合、本出願が優先される。