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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】合成ペプチドsp2
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/08 20060101AFI20220711BHJP
【FI】
C07K7/08 ZNA
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020570717
(86)(22)【出願日】2018-11-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-14
(86)【国際出願番号】 CN2018115567
(87)【国際公開番号】W WO2020093427
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2020-12-18
(31)【優先権主張番号】201811333589.1
(32)【優先日】2018-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520177806
【氏名又は名称】泰安市啓航生物科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】張 万琴
(72)【発明者】
【氏名】李 蔭田
(72)【発明者】
【氏名】吉 学文
(72)【発明者】
【氏名】趙 麗美
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103819554(CN,A)
【文献】Database GenBank [online], Accession No. AMX81493,2016-04-13 uploaded, [retrieved on 2021-12-13],<https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/AMX81493.1/>, venom toxin meuTX20 [Mesobuthuseupeus]
【文献】Database UniProtKB/Swiss-Prot[online], Accession No.D9U2B5, 2017-11-22 uploaded,[retrieved on 2021-12-13], <https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/317374859?sat=48&satkey=4648677>, Definition: RecName: Full=Bradykinin-potentiating peptide NDBP6; Short=BPP-6;Flags: Precursor
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 7/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸配列がSEQ ID No.1である合成ペプチドsp2。
【請求項2】
用途が (1)腫瘍の予防及び/又は治療、(2)腫瘍細胞の増殖及び/又は成長、(3)抗腫瘍免疫応答の増強、(4)腫瘍細胞分化の誘導、(5)1類の抗腫瘍薬の製造、(6)腫瘍テロメラーゼ活性の抑制、(7)腫瘍細胞周期の制御、のいずれか1つである、請求項1に記載の合成ペプチドsp2。
【請求項3】
前記(1)~(7)のいずれか1つにおける腫瘍が、ヒト膵臓の上皮内がん、ヒト子宮頸がん、ヒト卵巣がん、ヒト骨肉腫、ヒト肺腺がん及びヒト低分化胃腺がんを含む、ことを特徴をする請求項2に記載の合成ペプチドsp2。
【請求項4】
前記腫瘍の細胞株はそれぞれヒト膵臓の上皮内がんBxPC-3、ヒト子宮頸がんSiHa、ヒト卵巣がんA2780、ヒト骨肉腫MG-63、ヒト肺腺がんA549及びヒト低分化胃腺がんBGC-823である、ことを特徴とする請求項3に記載の合成ペプチドsp2。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生物医学の技術分野に属し、合成ペプチドsp2(Synthetic Peptide-2)及びその用途に関し、特に非細胞傷害性抗腫瘍新薬の製造のための用途に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍患者は安全かつ有効な抗腫瘍薬を緊急に必要としている。
【0003】
膵臓がんは、非常に悪性で、隠れて発病し、初診時には既に膵臓周囲への臓器転移又はリンパ節転移、肝転移及び遠隔転移が起こっているため「がんの王様」と呼ばれている。従来の膵臓がんの化学療法では、フルオロウラシル(5-FU)、マイトマイシン(MMC)、シスプラチン(ADM)等の細胞傷害性抗腫瘍薬を使用することが多い。それらの細胞傷害性抗腫瘍薬は腫瘍細胞に対して強い殺傷又は抑制作用があるが、膵臓がんの治療に対しては単剤化学療法の効果が劣り、生存期間が短いため、例えばFAM(5-FU、ADM、MMC)、SMF(STZ、MMC、5-FU)等の併用化学療法が採用されることが多い。パクリタキセルが発売されて以来、徐々にTC(パクリタキセル+カルボプラチン)の治療法が膵臓がん治療の第一選択になりつつある。
【0004】
子宮頸がんは、最もよく見られる婦人科悪性腫瘍であり、女性の健康と生命を脅かす主な疾患である。子宮頸がんの化学療法は主に末期或いは再発転移の患者に用いられる。通常の化学療法薬剤には、シスプラチン、カルボプラチン、パクリタキセル、ブレオマイシン、イホスファミド、フルオロウラシル等の細胞傷害性抗腫瘍薬がある。細胞傷害性抗腫瘍薬は、腫瘍細胞の殺傷や抑制と同時に、生体の正常な細胞、特に代謝が活発な細胞に影響を及ぼし、通常、薬学的に有効な投与量下で患者に副作用を起こす。本発明で採用している陽性対照薬物のパクリタキセル(Taxol)は、広域スペクトル細胞傷害性抗腫瘍薬に属し、近年、国際市場で最もブームの抗がん剤の一つである。アメリカ国立腫瘍研究所はパクリタキセルが今後20年間で最も有効な抗がん剤であると予測しているが、アレルギー反応、骨髄抑制、神経毒性、心血管毒性等の毒性と副作用が患者に多くの害をもたらす。
【0005】
従って、非細胞傷害性抗腫瘍新薬の製造は重大な社会的意義と広範な市場ニーズを有する。今まで、従来技術には、本発明と類似の非細胞傷害性抗腫瘍の合成ペプチドに関する報告がない。sp2は8種のアミノ酸からなるポリペプチドであって、その化学合成、精製及び構造同定等のいずれもバイオテクノロジーの成果及びそのバイオメディカルテクノロジーへの応用から恩恵を受けている。しかしながら、合成ペプチドsp2の抗腫瘍新薬への応用に関する研究は行われていない。sp2の抗腫瘍効果の安全性、有効性及びその多種類の薬理、薬効活性を含む合成ペプチドsp2の抗腫瘍新薬の製造の用途は、独自の発見である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、固相化学合成技術により獲得した99%以上の高純度の、アミノ酸配列がSEQ ID NO.1である化学合成ペプチドsp2(図1)を提供する。その化学合成ペプチドsp2のアミノ酸配列はRVLNGPEEEAAAPAE、すなわちArg Val Leu Asn Gly Pro Glu Glu Glu Ala Ala Ala Pro Ala Gluである。
【0007】
天然の抗腫瘍ペプチドと比較して、化学合成により高純度のペプチド単体を得ることができる。非細胞傷害性抗腫瘍新薬の製造における化学合成ペプチドsp2の用途を開示する。
【0008】
本発明は、さらに、以下の(1)から(8)のいずれか1つにおける合成ペプチドsp2の用途を保護する。(1)腫瘍の予防及び/又は治療、(2)腫瘍細胞の増殖及び/又は成長及び/又は侵入の抑制、(3)抗腫瘍免疫応答の強化、(4)腫瘍細胞分化の誘導、(5)一類の抗腫瘍薬の製造、(6)腫瘍テロメラーゼ活性の抑制、(7)腫瘍細胞周期の制、(8)腫瘍細胞周期を制御する製品の製造。
【0009】
本発明は固相化学合成技術により99%以上の高純度の化学合成ペプチドsp2(図1)を得、非細胞傷害性抗腫瘍新薬の製造における化学合成ペプチドsp2の用途を開示する。
【0010】
さらに、上記の合成ペプチドsp2の用途(1)~(8)のいずれか1つにおける前記腫瘍が、ヒト膵臓の上皮内がん、ヒト子宮頸がん、ヒト卵巣がん、ヒト骨肉腫、ヒト肺腺がん及びヒト低分化胃腺がんを含む。
【0011】
さらに、実施例において具体的に挙げられる上記の腫瘍細胞株は、ヒト膵臓の上皮内がんBxPC-3、ヒト子宮頸がんSiHa、ヒト卵巣がんA2780、ヒト骨肉腫MG-63、ヒト肺腺がんA549及びヒト低分化胃腺がんBGC-823である。
【0012】
sp2の抗腫瘍作用は安全性と有効性の両方を備える。安全性は実施例において採用した上下法及び最大投与量法による検証結果を含み、sp2の静脈投与の最大無毒性反応投与量を検出した。具体的に、昆明種マウスに2000mg/kgBW用量でsp2を尾静脈注射した後、一定の期間内に14日間連続観察したところ、毒性反応と死亡が見られず、解剖においても異常が見られなかった。結論は、sp2の静脈投与の最大無毒性反応投与量は2000mg/kgBWである。
【0013】
上記の有効性には、実施例におけるヌードマウスの皮下ヒト膵臓がん、ヒト子宮頸がん、ヒト卵巣がん、ヒト骨肉腫等に対する抗腫瘍効果の有効性の検証結果、及びヌードマウス同所移植のヒト膵臓がんとヒト肺腺がんの転移遅延と担癌ヌードマウスの生存期間中央値延長に対する作用結果が含まれ、陽性対照パクリタキセル群と比べてその薬効には有意差がなかった。
【0014】
合成ペプチドsp2は多機能の生物活性分子であり、同時に多種の機能活性に関わる:a.テロメラーゼ活性の抑制。テロメラーゼはテロメアDNAの複製を促進することができる。テロメアは染色体の末端に位置して、重複配列であるTTAGGGとテロメア結合タンパク質より構成されている。細胞分裂の維持においてテロメアDNAが重要な役割を果たす。ヒトの細胞は分裂する度にテロメアが1回短縮し、テロメアがある程度に短縮すると、細胞は再分裂できなくなるが、細胞が癌化すると無限に分裂して増殖する。テロメラーゼはリボ核タンパク質酵素複合体の特殊な逆転写酵素の一種であり、RNAとタンパク質より構成され、そのRNA成分はテロメア配列のテンプレートであり、テロメラーゼは自身のRNAテンプレートによりテロメアのDNA断片を合成する。腫瘍テロメラーゼ活性は腫瘍の悪性増殖の重要な原因の一つである可能性が高い。b.悪性腫瘍細胞分化の誘導。細胞が癌化した後、腫瘍細胞の表現型は未分化の状態に戻り、分化異常が現れる。細胞の増殖から分化までは細胞周期の停止と分化誘導の活性化(細胞形態と機能の変化)の過程である。c.T細胞転化の強化。Tリンパ球は抗腫瘍の過程で極めて重要な役割を果たす。d.腫瘍細胞を除去する免疫効果の強化:腫瘍細胞は免疫系の腫瘍細胞への有効な識別と殺傷の抑制により免疫寛容を生じ、CD47、PD-L1は腫瘍細胞の表面上で高発現し、それぞれ大食細胞とTリンパ球の表面の対応の抗原に結合し、免疫機能を抑制する。
【0015】
本発明は、さらに、生物活性分子製品を保護し、その活性成分は前記合成ペプチドsp2である。sp2は、抗腫瘍作用の標的が明確であるため、単一薬剤として使用可能である。実施例の実験は、合成ペプチドsp2を生物活性分子製品の唯一の有効活性成分とした治療効果が顕著であることを証明した。
【発明の効果】
【0016】
本発明の体外スクリーニング実験において、sp2がヒト膵臓がんBxPC-3に対して顕著な増殖抑制活性を有することが認められた(図2)。
【0017】
sp2の体内薬効実験では、ヌードマウス皮下とヌードマウス同所ヒト癌異種移植腫瘍モデルを採用した。sp2のヌードマウス皮下のヒト癌異種移植腫瘍モデルの抗腫瘍活性の有効性に対する評価指標として、相対腫瘍増殖率T/C(%)と腫瘍成長抑制率(%)の二種類の体内薬効評価指標を含む。ヌードマウス皮下ヒト子宮頸がんSiHa、ヒト膵臓上皮内がんBxPC-3、ヒト卵巣がんA2780、ヒト骨肉腫MG-63及びヒト低分化胃腺がんBGC-823のいずれに対しても明かな薬効があり、明かな投与量-効果関係と時間-効果関係がある(図3)。
【0018】
腫瘍の転移と再発は腫瘍患者死亡の重要な原因である。本発明のsp2はヌードマウスヒト肺腺がんA549とヒト膵臓上皮内がんBxPC-3の異種移植腫瘍に対して、腫瘍転移の発生を明らかに遅らせて、担癌ヌードマウスの生存期間の中央値を延長することができた(図4aと4b)。生体内撮像により、sp2の高用量群の薬効蛍光強度と陽性対照のパクリタキセル群の蛍光強度には有意差がなく、すなわち両者の薬効強度には有意差がないことが判明した(図5)。
【0019】
sp2の安全性とは、それぞれ急性毒性実験の上下法及び最大投与量法を採用して、ICRマウスと昆明種マウスにそれぞれ2000mg/kgBW用量でsp2を尾静脈注射した後、一定の期間内(14日間の連続観察)に、明らかな行動異常や体重低下や死亡の損害作用が見られなく、且つ実験が完了した後の解剖においても組織器官の異常が見られないとのことを言う。実施例12、13及び図12により、sp2の静脈投与の最大無毒性反応投与量は、2000mg/kgBWであることが証明された。
【0020】
腫瘍細胞の無限の分裂と増殖は、テロメラーゼが自身のRNAテンプレートにより連続的にテロメアのDNA断片TTAGGGを合成することと関係がある。sp2は腫瘍テロメラーゼ活性を顕著に抑制する作用を有する(図6)。
【0021】
本発明により、sp2は悪性腫瘍細胞HL-60に対して、明らかな分化誘導作用とその分化誘導過程を有する(図7)。sp2を急性前骨髄球性白血病細胞HL-60と5日間共培養して、フローサイトメトリーでHL-60の細胞周期を検出したところ、対照群と比べて、sp2を作用させた後に、HL-60のG0/G1期細胞の発現量が顕著に増加し、G2/M期細胞の発現量が減少し、S期細胞の発現量が減少し、G1期停止を示した(図7a)。また、sp2を急性前骨髄球性白血病細胞HL-60と5日間共培養することにより、形態上で腫瘍細胞HL-60の成熟細胞が顕著に増加し(図7b)、機能上でNBT還元能力が顕著に強化された(図7c)。これにより、細胞の増殖から分化までは細胞周期停止と分化誘導の活性化(形態と機能の変化)の過程であり、sp2が腫瘍細胞に対して明らかな分化促進のための作用があることを判明した。
【0022】
本発明により、16mg/kg/日で4週間連続してsp2を体内投与した時、ヌードマウス皮下のヒト異種移植腫瘍(検出した骨肉腫、卵巣がん及びヒト低分化胃腺がんの腫瘍細胞)の明らかなアポトーシス現像が現れることが認められた(図8)。
【0023】
腫瘍転移は生体の腫瘍細胞を除去する免疫調節作用と関係があり、Tリンパ球が生体の抗腫瘍の過程で重要な役割を果たしている。フローサイトメトリーの検出により、陽性対照のパクリタキセル群は末梢血Tリンパ球の含有量を顕著に減少させ(p<0.05)、sp2は、T細胞量を増加させる傾向があり、パクリタキセル群と比べて有意差がある(P<0.05)ことが表明された(図9)。
【0024】
脾臓を取って脾臓細胞懸濁液を調製し、ConA-マイトジェンで刺激し、MTT実験によりOD値を測定して、細胞の増殖状況を反映したとことろ、sp2は担癌ヌードマウス(MG-63)のTリンパ球の増殖活性を明らかに強化させ、且つ明かな投与量-効果関係があるが、陽性対照のパクリタキセル群はConA-マイトジェンの刺激によるTリンパ球の増殖を明らかに抑制することが分った(図10)。
【0025】
腫瘍細胞は免疫系の腫瘍細胞に対する有効な識別と殺傷を抑制することにより、免疫寛容を生じる。CD47、PD-L1は腫瘍細胞の表面上に高発現し、それぞれ大食細胞とTリンパ球の表面上の対応の抗原に結合して、免疫機能が抑制されるようにする。sp2は腫瘍細胞におけるCD47とPD-L1の高発現を著しく抑制し、腫瘍細胞を除去する免疫効果を強化することができる(図11)。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1a】sp2のアミノ酸組成を示す図(アミノ酸組成分析)。
図1b】sp2のクロマトグラフィーを示す図(クロマトグラフィー(RP-HPLC)精製)。
図1c】sp2の質量分析を示す図(質量分析ESI-MS)。
図2】sp2のヒト膵臓上皮内がん細胞BxPC~3の体外増殖活性に対する抑制率及びIC50値(%)を示す図。sp2の体外薬効活性のスクリーニング実験(CCK法)は、22株のヒトがん細胞株を用いて行い、それぞれ異なる濃度のsp2を投与し、72時間共培養した後、CCK法で検出し、実験において陽性対照群と陰性対照群を設定し、各群は5ウェルずつ、10勾配の濃度を設けて、sp2のIC50値を計算する。
図3a】sp2のヌードマウス皮下ヒト子宮頸がんの異種移植腫瘍に対する体内薬効結果を示す図(成長体積変化に対する影響)。
図3b】sp2のヌードマウス皮下ヒト子宮頸がんSiHaの異種移植腫瘍に対する体内薬効結果を示す図(相対腫瘍増殖率T/C(%)に対する影響)。
図3c】sp2のヌードマウス皮下ヒト子宮頸がんSiHaの異種移植腫瘍に対する体内薬効結果を示す図(腫瘍重量に対する影響)。
図3d】各群の担癌ヌードマウスの写真(上から下への方向で順次にモデル群、sp2の低用量群、中用量群、高用量群)。
図3e】各群の担癌ヌードマウス腫瘍の写真。
図4a】sp2のヌードマウスヒト肺腺上皮内がんA549の異種移植腫瘍に対する体内薬効を示す図(生体内撮像によるsp2のヌードマウスヒト肺腺上皮内がんA549に対する体内薬効活性の蛍光強度の比較)。
図4b】sp2のヌードマウスヒト肺腺上皮内がんA549の異種移植腫瘍に対する体内薬効を示す図(sp2のヒト肺腺上皮内がんA549担癌ヌードマウスの生存期間に対する影響)。5dモデル群:投与5日目に腫瘍蛍光は主に肺に集中し、肺外への転移は見られない。5d高用量群:投与5日目に腫瘍蛍光は主に肺に集中し、肺外への転移は見られない。12dモデル群:投与12日目に8匹のヌードマウスでは、肺外への腫瘍転移が発生し、他の2匹のヌードマウスの腫瘍転移が見られない。12d高用量群:投与12日目に腫瘍蛍光は依然として肺に集中し、肺外への転移は見られない。19dモデル群:投与19日目に2匹のヌードマウスが死亡し、生存している8匹のヌードマウスではいずれも広範な転移が発生し、蛍光信号が強い。19d高用量群:投与19日目に死亡が見られないし、2匹のヌードマウスでは肺外への転移が見られなく、他の8匹のヌードマウスでは肺外への転移が発生した。
図5】sp2のヌードマウス皮下ヒト膵臓上皮内がんBxPC~3の異種移植腫瘍に対する体内薬効を示す図。生体内撮像による蛍光強度をモデル群と比較し、*は有意差がある(P<0.05)ことを示し、sp2の高用量群の薬効である蛍光強度は陽性対照のパクリタキセル群と比べて有意差がない(P>0.05)。
図6】sp2の腫瘍テロメラーゼ活性に対する抑制、sp2のヌードマウス皮下ヒト子宮頸がんSiHaの異種移植腫瘍テロメラーゼ活性に対する影響を示す図。sp2はヌードマウス皮下ヒト子宮頸がんSiHaの異種移植腫瘍テロメラーゼ活性を明らかに抑制し、モデル群と比べて、低濃度のsp2はテロメラーゼ活性を低下させ(P<0.05)、中、高濃度のsp2はテロメラーゼ活性を顕著に低下させることができる(P<0.01)。
図7a】sp2が悪性腫瘍細胞HL-60に対して明らかな分化誘導の作用を有し、sp2がヒト急性顆粒球白血病HL-60細胞株の正常な顆粒球への分化を誘導するのを示す図。FCN検出:異なる用量のsp2のHL-60細胞周期に対する影響を示す(A:対照群、B:25μM、C:50μM,D:100μM,E:200μM)。
図7b】sp2合成ペプチドをHL-60に作用させた後、細胞形態に対する影響を示す(上:対照群、下:200μM)。
図7c】異なる用量のsp2合成ペプチドのHL-60の体外分化誘導作用の検出(NBT還元反応)に対する影響を示す(A:対照群、B:225μM、C:50μM、D:100μM,E:200μM)。
図8】sp2のヌードマウス腫瘍細胞のアポトーシス誘導作用を示す図。sp2は、ヌードマウス皮下ヒト骨肉腫MG63の移植腫瘍細胞の明らかなアポトーシス発生を促進する。モデル群と比べて、パクリタキセル群は腫瘍細胞のアポトーシス率を向上させることができる(P<0.05)。モデル群と比べて、sp2も明らかなアポトーシスを促進する作用がある。
図9】フローサイトメトリーで末梢血Tリンパ球の含有量を検出した結果示す図。*はモデル群と比べて差異がある(P値<0.05)ことを示し、**はモデル群と比べて有意差がある(P値<0.01)ことを示し、+は陽性対照のパクリタキセル群と比べて差異がある(P値<0.05)ことを示し、++は陽性対照パクリタキセルと比べて有意差がある(P値<0.01)ことを示す。陽性対照のパクリタキセル群はTリンパ球に対して明らかな毒性を現し、モデル群と比べて有意差がある(P<0.01)。sp2の投与量の上昇に伴いTリンパ球の上昇を促進する傾向があるが、モデル群と比べて有意差がない(P>0.05)し、陽性対照のパクリタキセル群と比べて、sp2の高用量群はTリンパ球含有量の上昇を促進することができる(P<0.05)。
図10】ヌードマウス脾リンパ球転化実験結果を示す図。陽性対照のパクリタキセル群では顕著に減少し、sp2はTリンパ球増殖効果を顕著に強化する。*はモデル群と比べて差異がある(P値<0.05)ことを示し、**はモデル群と比べて有意差がある(P値<0.01)ことを示す。+は陽性対照のパクリタキセル群と比べて、差異がある(P値<0.05)ことを示し、++はパクリタキセル群と比べて有意差がある(P値<0.01)ことを示す。モデル群と比べて、パクリタキセル群はTリンパ球転化効率を顕著に低下させる(P<0.01)。モデル群と比べて、sp2はTリンパ球転化効率を顕著に強化させ、かつ投与量依存性を呈し、その中、低用量群は差異がなく(P>0.05)、中用量群と高容量群は有意差がある(P<0.01)。陽性対照のパクリタキセル群と比べて、sp2を投与した後、各群はいずれもTリンパ球転化効率を顕著に上向させることができる(P<0.01)。
図11a】腫瘍細胞におけるCD47とPD-L1の高発現を明らかに抑制することができ、sp2が腫瘍細胞におけるPD-L1、CD47の高発現を明らかに抑制するのを示す図(CD47の発現の変化を示す。sp2の投与群はモデル群と比べて、CD47の発現がいずれも顕著に減少し、投与量-効果関係がある。)。
図11b】PD-L1の発現の変化を示す。sp2の中用量群と高用量群はモデル群と比べてPD-L1の発現が顕著に減少する。
図12】急性毒性試験(最大投与量法)結果を示す図。昆明種マウスに2000mg/kgBW用量でsp2を尾静脈注射した後、2週間内の動物体重変化曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
下記の非限定的実施例は、当業者が本発明を全面的に理解するように説明するものであり、いかなる形態においても本発明を制限するものではない。
【0028】
(実施例1)
アミノ酸組成、固相化学合成、クロマトグラフィー精製及び質量分析同定
1)sp2のアミノ酸組成の分析:10.2mgのサンプルを計量して、7mLの6NHClに溶解し、窒素ガス雰囲気下において、110℃で酸加水分解を22時間行って、冷却した後、10mLメスフラスコに移して規定容量にする。0.2mLを取り、55℃の窒素ガスを吹き付けて乾燥させ、1mLの蒸留水を加えて再度乾燥させ、それを三回繰り返す。1.2mLの脱イオン水(0.02mol/L HCl)に十分に溶解し、よく混合する。0.45μmフィルターで濾過し、20μLを装置(日立L-8900アミノ酸分析装置)に注入し、測定を行う。
2)sp2の固相化学合成、純度検出及び分子量同定を行う:
sp2の固相化学合成では、既知のポリペプチドのアミノ酸配列のC末端からN末端の順にアミノ酸を繰り返し添加するプロセスである、ペプチドFmoc固相合成技術を採用する。先ず、標的ポリペプチドのC末端の一番目のアミノ酸のカルボキシル基を固相担体(樹脂)に共有結合させ、次にこのアミノ酸のアミノ基を合成の開始点として隣接するアミノ酸のカルボキシル基とアシル化反応を行い、ペプチド結合を形成する。標的ポリペプチドの合成が完了するまでこのプロセスを連続的に繰り返し、その後、標的ポリペプチドを樹脂から切り取るとともに、側鎖の保護基を除去する。最後に、氷エーテルを加えて粗ペプチドを沈殿させる。
3)高速液体クロマトグラフィーにて分離精製を行う:RP-HPLC
4)質量分析により純度検出と分子量同定を行う(図1a、b、c)。
【0029】
(実施例2)
細胞増殖抑制試験
細胞を消化し、カウントして、濃度が1×10個/mLになるように細胞懸濁液を調製する。96ウェルプレートの各ウェルに100μLの細胞懸濁液(ウェルあたり1×10個の細胞)を添加し、96ウェルプレートを37℃、5%COのインキュベーターに置いて24時間培養する。各ウェルに100μLの相応の薬物含有培地を添加し、同時に、陰性対照群、溶媒対照群、陽性対照群を設定し、各群は5ウェルずつ設ける。96ウェルプレートを37℃、5%COのインキュベーターに置いて72時間培養した後、10μLのCCK-8溶液を各ウェルに加え、培養プレートをインキュベーターに置いて4時間培養し、マイクロプレートリーダーで450nmのOD値を測定し、sp2のBxPC-3腫瘍細胞株に対する抑制率とIC50値を計算する。図2に示すように、評価基準として、同じサンプルの異なる濃度のsp2の腫瘍細胞抑制率で用量効果曲線を取得し、その後、ロジット法を採用して半数有効濃度(IC50値)を計算する。
【0030】
【表1】
【0031】
(実施例3)
ヌードマウスの皮下ヒト子宮頸がん、ヒト卵巣がん、ヒト膵臓上皮内がん、ヒト骨肉腫及びヒト低分化胃腺がんに対するsp2の体内薬効の評価
一.細胞系:ヒト子宮頸がん細胞株SiHa、ヒト卵巣がん細胞株A2780、ヒト膵臓上皮内がん細胞株BxPC-3、ヒト低分化胃腺がん細胞株BGC-823及びヒト骨肉腫細胞株MG-63のいずれも10%のウシ胎児血清を含むRPMI-1640培地において培養する。
二.モデリング方法:細胞系の皮下注射、腋下腫瘍形成
三.実験手順:
(一)細胞の準備段階
1:回復状態が良好なMG-63細胞系をT75細胞培養フラスコに播種し、37℃、5%COで培養する。
2:2~3日おきに培地を一回交換し、細胞治癒度か約80%に達すると、1:3の比率で継代培養し、約20本のボトルが必要である。
3:細胞を継代培養して十分な数に達したら、消化及び遠心分離を行って細胞を収集し、生理食塩水で細胞濃度が5*10個/mLになるように調整し、ヌードマウスへの接種に用いる。
(二)動物の準備段階
1:約4週齢のbclb/cヌードマウスを購入して、1週間適合化飼育を行った後、細胞の接種に用いる。
2:無菌状態で1mLシリンジで細胞懸濁液を吸い上げる(その間、振とうを繰り返して細胞の沈降を防ぐ)。
3:ヌードマウスを取り、接種部位をエタノールで拭き(右前肢の脇の下)、バイオセーフティキャビネットにおいて100μLの細胞懸濁液(約5*10個/匹)を接種する。各細胞種類当たり30匹ずつ(30匹/種類)接種を行う。
4:細胞を接種した後、25℃、12時間光あり/光なしで、通常どおり餌と水を与えて飼育する。
5:接種してから約5日後に接種部位に触れて、小さな腫瘍塊があるかどうかを確認し、腫瘍塊がない場合には細胞接種量を2倍にして再接種する。
6:接種した後8日目に、ノギスで移植腫瘍の直径を測定して、腫瘍体積を計算し、腫瘍体積が80~100mmになったら、群分けをし投与を行う。
(三)動物の群分けと動物数:各群に6匹ずつ、計5群;
1)モデル群:等体積NS、0.1mL/10gBW;
2)陽性対照群:パクリタキセル10mg/kgBW;
3)sp2の高用量群:16mg/kgBWのsp2;
4)sp2の中用量群:8mg/kgBWのsp2;
5)sp2の低用量群:4mg/kgBWのsp2;
(四)動物の処理:
1)動物を群に分けた後、各群の動物に尾静脈注射を毎日1回実施し、それぞれNS、及び高、中、低用量である異なる用量のsp2を4週間連続投与する。パクリタキセルは週2回で4週間連続投与する。
2)動物を群に分けてから、当日及び一日おきに腫瘍のサイズと重量を測定し、腫瘍体積(tumorvolume,TV)を下式のように計算する:
TV=0.5*a*b、ここで、aは長径であり、bは短径である。
3)下式のように測定ごとの相対腫瘍体積(Relative Tumor Volume,RTV)を計算する:
RTV=Vt/V、ここで、Vは動物を群に分けて投与した時(すなわちd)に測定した腫瘍体積であり、Vtは測定ごとの腫瘍体積である。
4)下式のように相対腫瘍体積に基づき、相対腫瘍増殖率T/C(%)を計算する:
T/C%=TRTV/CRTV*100%
5)実験が完了した後、ヌードマウスを頸椎脱臼法により屠殺し、群別で写真を撮った後、脇下の腫瘍を剥離して群別で写真を撮った後、腫瘍の重量を量る。
6)腫瘍重量データに基づき、腫瘍成長抑制率(%)を計算する:
腫瘍成長抑制率%=(1-実験群の腫瘍重量/対照群の腫瘍重量)*100%
sp2のヌードマウス皮下異種移植腫瘍に対する体内薬効評価:下表においてそれぞれT/C%と腫瘍成長抑制率(%)によって表示する。
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
(実施例4)
sp2のヌードマウス同所移植A549~luc細胞に対する薬効実験
細胞系:ヒト肺腺がん細胞A549-luc(発光酵素ありのA549細胞)
動物:Balb/cヌードマウス、雄、6週齢、体重<20g
1.接種方法:
細胞の準備:A549-luc細胞を回復及び継代培養を行い、PBSで再懸濁した後、マトリゲル(Matrigel)と1:1の割合で混合し、各ヌードマウスの肺内に5×10個細胞を含む100μLの混合懸濁液を注射する。
1)麻酔:動物を麻酔した後、無菌作業台に置いて固定し、胸腔表面をヨードチンキ、エタノールで消毒する。
2)位置の確定:マウスの左側肋骨弓の下端より約1cm上(第四、五肋骨弓の間)の位置であって、この部位には縦方向に太い血管が2本あり、肺臓がこの2本の血管の間に位置するので、この位置をマーカーペンでマークする。
3)肺部の露出:約5mmの小口で表皮をはさみ切って、その小口に沿って徐々に下層の皮下組織および筋肉組織を切ると、胸膜を隔てて、ピンクの肺が、マウスの呼吸運動に伴って拡大・縮小しているのが見える。
4)腫瘍細胞の注射:よく混ぜた100μLの細胞懸濁液(細胞懸濁液+マトリゲル)を取り、切り口に沿って、マウスの肺内にゆっくり注射する。
5)はさみ切ったマウスの表皮を縫合し、マウスを37℃の定温加熱板に蘇生するまで置き、元のケージに戻し継続して飼育したら、4~6日で傷口が癒合される。
6)腫瘍成長状況の観察
a.ヌードマウスごとに接種した細胞によって、モデリング当日、すなわち0目日を開始時間として、4目日から7日おきにヌードマウスの生体内撮像を実施する。
b.各群のマウスの腫瘍サイズ、転移状況(転移の有無、どの部位に転移したのか)を観察する。
c.マウスの重量を量り、動物の死亡時間を観察して記録し、生存日数を計算する。
2.生体内撮像観察方法
ヌードマウスごとに腹腔に150μLの発光酵素基質を注射し、基質を5分間作用させた後、5分間麻酔し、生体内撮像装置のボックスに置いて撮像する。統計的処理によりT/C(%)を獲得する。
3.投与方法:
同所に接種した後、4日目に尾静脈注射による投与を開始し、一日に1回、3~4w連続投与する。
4.被験薬物:sp2
5.群別状況:モデル群、高用量群、中用量群、低用量群、ヌードマウスは各群に10匹ずつ
6.結果の分析:
1)sp2の高、中、低用量群におけるヌードマウスの生存期間中央値はそれぞれ30.3日間、28.7日間、23.5日間である。モデル群と比べて、sp2の高濃度と中濃度の両者の生存期間中央値の差異は統計学的意義がある(P<0.05)。
2)腫瘍転移状況の観察
モデル群:
5日目に腫瘍蛍光が主に肺に集中し、肺からの転移が見られない。
12日目に3匹のヌードマウスでは腫瘍の蛍光信号がさらに増大し、他の7匹のヌードマウスでは肺からの腫瘍転移が見られる。
19日目に2匹のヌードマウスが死亡し、生存している8匹のヌードマウスでは広範の転移が発生して、蛍光信号が強い。
sp2の高濃度群:
5日目に腫瘍蛍光が主に肺に集中し、肺外への転移は見られない。
12日目に腫瘍蛍光が依然として肺に集中し、肺外への転移は見られなく、腫瘍の蛍光信号が明らかに強くなっている。
19日目に2匹のヌードマウスでは肺外への転移は見られなく、他の8匹のヌードマウスでは肺外への転移が見られる。
26日目に2匹のヌードマウスでは肺外への転移が見られなく、他の8匹のヌードマウスでは肺外への転移が見られ、腫瘍の蛍光信号がさらに増大される(図4)。
【0035】
(実施例5)
sp2のヌードマウスのヒト膵臓上皮内がんBxPC-3細胞同所移植に対する薬効試験
細胞系:ヒト膵臓がん細胞BxPC-3
Lucを含むレンチウイルス担体の構築:レンチウイルスパッケージ
BxPC-3細胞のトランスフェクションを行い、安定なトランスフェクションの細胞株を選別する。
動物:Balb/cヌードマウス、雄、5週齢、体重<20g
同所移植方法
細胞の準備:BxPC3-luc細胞を回復及び継代培養を行い、対数増殖期の体外培養の細胞を取り、トリプシンで消化した後で、単細胞懸濁液に調製し、細胞濃度が1×10個/mLになるように調整する。
1)麻酔:動物を麻酔した後、無菌作業台に置いて固定し、ヨードチンキ、エタノールで胸腔と腹部の表面を消毒する。
2)腫瘍細胞の注射:
胃と脾の間の膜を分離して膵臓を露出させ、50μLの細胞懸濁液を膵臓被膜下に注射する。
3)切り口の表皮を縫合し、マウスを37℃の定温加熱板に蘇生するまで置き、元のケージに戻し継続して飼育する。
生体内撮像観察方法
1)ヌードマウスごとに接種した細胞によって、モデリング当日、すなわち0目日を開始時間として、4目日から7日おきにヌードマウスの生体内撮像を4週連続して実施する。
2)ヌードマウスごとに150μLの発光酵素基質を腹腔に注射し、基質を5分間作用させた後、5分間麻酔し、生体内撮像装置のボックスに置いて撮像する。
投与方法:
同所移植してから3日目に尾静脈注射を実施して、一日1回で、4週間連続して投与する。
被験薬物:sp2
群別状況:モデル群、陽性対照のパクリタキセル群、高用量群、中用量群、低用量群、ヌードマウスは各群に10匹ずつ
腫瘍成長状況の観察:
a.生体内撮像により各群のマウスの腫瘍サイズ、転移状況(転移の有無、転移部位)を観察する。
b.動物の体重変化を観察して記録し、体重変化曲線を作る。
c.動物の死亡時間を観察して記録し、生存日数を計算する。
d.動物が死亡した後、又は実験完了の屠殺を実施した後、すべての被験動物は解剖を行う。
生体内撮像による蛍光強度を比較して、異なる用量のsp2と陽性対照のパクリタキセルを膵臓上皮内がんモデルのヌードマウスに作用させ、生体内撮像検出により統計的結果を得た。モデル群と比べて、sp2の高用量群の平均蛍光強度は10、17、24日目に顕著に低下(P<0.05)し、sp2の中用量群も17日目に顕著に低下し、sp2の抑制作用は、明らかの投与量-反応関係を呈し、かつsp2の膵臓がんに対する抑制作用の強さは陽性対照のパクリタキセル群と比べて有意差がない(P>0.05)(図5)。
【0036】
(実施例6)
固形腫瘍テロメラーゼ活性の検出
1.サンプルの準備:ヌードマウスの体内抗腫瘍薬効実験が完了した時に採取したヒト子宮頸がん、ヒト卵巣がん、ヒト膵臓がん、ヒト骨肉腫、ヒト低分化胃腺がんの腫瘍サンプル
2.全RNAの抽出
3.RNA逆転写によりcDNAを生成
4.QPCR反応:AppliedBiosystems7500を用いた操作方法
1)PCR反応液の調製
通常、プライマーの最終濃度が0.2μMであると、良い結果が得られる。0.1~1.0μMの範囲内でプライマー濃度を調整できる。
2)ROX Reference DyeII(50×)は、ROX Reference Dye(50×)よりも低濃度であり、7500Real-Time PCR System及び7500Fast Real-Time PCR Systemを用いる場合、ROX Reference DyeII(50×)を使用し、ABIPRISM7300Real-Time PCR System及びStep One PlusTMを用いる使用する場合、ROX Reference Dye(50×)を使用する。
3)20μLの反応系において、DNAテンプレートの添加量は通常に100ng未満である。異なる種類のDNAテンプレートに含まれる標的遺伝子のコピー数が異なるため、必要に応じて勾配希釈を行い、最適なDNAテンプレートの添加量を決定する。
4)各機器の推奨システムに従って反応液を調製する。
5)リアルタイムPCR反応の実行:2ステップ法はPCR増幅標準プログラムに従って行う。
6)実験結果の解析(図6)。
【0037】
(実施例7)
sp2はヒト急性骨髄芽球性白血病HL-60細胞株の正常な顆粒球への分化を誘導する。
sp2のヒト急性骨髄芽球性白血病HL-60細胞株の正常な顆粒球への分化誘導の方法:
1.細胞培養:15%ウシ胎児血清を含むRPM11640培地を使用して37℃、5%COの飽和湿度条件下でHL-60細胞株を培養する。対数増殖期の細胞を取り、実験を行う。
2.sp2合成ペプチド原液サンプルの調製:3000μg/ボトルのsp2凍結乾燥粉末を0.97mLの超純水(濃度は2000μM、即ち、3105μg/mL)で完全に溶解させ、合成ペプチド原液を得る。この原液の濃度は、高用量群の作業液濃度(200μM、即ち、310.5μg/mL)の10倍に相当する。
(1)群分け:対照群、sp2投与群。(2)投与群の用量設置:25~200μM(投与量群1~4)。培養液を用いてsp2を200、100、50及び25μMの四つの異なる濃度の作業液を調製する。(3)異なる濃度の合成ペプチドsp2を、それぞれ対数増殖期のHL-60細胞株(10/mL)と5日間共培養する。24~48時間継代培養して、細胞を対数増殖期に維持する。対照群には投与群と等体積の溶剤を加える。
7a.細胞周期停止
細胞周期は、細胞増殖の速度を反映する。ヨウ化プロピジウム(Propidium Iodide、PIと略称する)は、二本鎖DNAの蛍光色素である。ヨウ化プロピジウムと二本鎖DNAの結合により蛍光が発生され、且つ蛍光強度は二本鎖DNAの含有量に比例する。細胞内のDNAをヨウ化プロピジウムで染色した後、フローサイトメトリーで細胞のDNA含有量を測定し、DNA含有量の分布に従って細胞周期分析を行うことができる。
(1)細胞培養
(2)培養済の異なる群の細胞を0.25%のトリプシンで消化して単個細胞に分散させ、十分に吹き出し細胞懸濁液を完全に混ぜ合わせ、専用のフローチューブに収集する。
(3)1000gで5分間遠心分離し、上清液を吸い取って除去し、10%のウシ胎児血清を含む300μLのPBS溶液で懸濁して沈殿させ、清潔な1.5mL遠心分離チューブに移す。
(4)700μLの無水エタノールを加え-20℃の冷蔵庫で24時間以上細胞を固定する。
(5)固定したサンプルを取り出し、3000gで30秒間細胞を遠心分離し、上清液を吸い取って除去する。
(6)細胞沈殿は、濃度が1mg/mLの100μLのRNaseA溶液で懸濁し、37℃のインキュベーターにおいて細胞内のRNAを消化する。
(7)濃度が50μg/mLの400μLのヨウ化プロピジウム(PI、PropidiumIodide)溶液を加え、暗所で10分間細胞核を染色する。フローサイトメトリーで細胞のDNA含有量を測定し、各細胞周期における細胞の割合を確定する。
図7a.FCN検出:異なる用量のsp2を作用させた後、HL-60細胞周期に対する影響を示す。ここでA:対照群、B:25μM、C:50μM、D:100μM、E:200μMである。
【0038】
【表4】
【0039】
対照群と比べて、sp2を作用させた後、G1期停止を呈する。
FCM検出による細胞周期:ヒト前骨髄球性白血病細胞株HL-60に異なる濃度のsp2を作用させた後、G0/G1期細胞の発現が増加し、S期細胞の発現が減少し、G2期細胞の発現が減少し、G1期停止を呈し、用量-反応関係を有する。
7b.HE染色法(浮遊細胞)
(1)95%のエタノールで拭き又は浸漬して脱脂及び乾燥させた、清潔で、油汚れ及びキズのない新しいスライドを、標本塗布用スライドとして予備する。(2)細胞懸濁液を4℃で30分間遠心分離し、少量の上清液が残るように上清液を除去し、後でスライドに塗布し易くする。(3)バイオセーフティキャビネットにおいてピペットでよく混ぜた細胞懸濁液を約0.05mL~0.1mL吸い取って、標本をスライドの正面に均一に10mm×20mmの卵円形膜になるように塗布し、乾燥機に置いて乾燥させる。(4)10%の中性ホルマリンに10分間固定する。(5)2分間少し水洗する。(6)ヘマトキシリンで1~2分間染色する。(7)流水で遊離のヘマトキシリンを5~10秒間洗浄する。(8)1%の塩酸エタノールで1~3秒間処理する。(9)1~2秒間少し水洗する。(10)ブルーイング剤で5~10秒間作用させる。(11)流水で15~30秒間洗浄する。(12)0.5%のエオシンで2~3分間染色する。(13)蒸留水で1分間少し洗浄する。(14)80%のエタノールで1~2秒間処理する。(15)95%のエタノールで1~2秒間処理する。(16)無水エタノールで1~2秒間処理する。(17)キシレン(I)で2~3秒間処理する。(18)キシレン(II)で2~3秒間処理する。(19)中性ゴムでシールする。
HE染色(浮遊細胞)の結果と分析
図7bは、sp2合成ペプチドの、HL-60(ヒト急性骨髄芽球性白血病)細胞の成熟、未熟の比率(%)に対する影響を示す。
【0040】
【表5】
【0041】
7c.テトラゾリウムブルー(NBT)還元反応実験
200個の細胞を数え、陽性細胞の比率を求める。
(1)各群の細胞懸濁液を収集して遠心分離し、0.1%のNBTを0.5mL、及びTPAを100μL加え、よく混ぜる。
(2)37℃で3時間インキュベートする。
(3)遠心分離して反応を停止し、ホルムアルデヒドで10分間固定し、スライドに塗抹する。
(4)5分間ギムザ染色する。
図7cは、異なる投与量のsp2合成ペプチドの、HL-60に対する体外分化誘導作用の検出(NBT還元反応であり、200個の細胞を数える)結果を示す。
【0042】
【表6】
【0043】
上記結果により、対照群と比べて、sp2を作用させた後、ヒト前骨髄球性白血病細胞株HL-60のNBT陽性細胞率が顕著に増加し、投与量-効果関係があるのがわかる。sp2はHL-60のNBT還元能力を効果的に向上でき、HL-60細胞の分化を誘導できることを示している(図7b)。
細胞が癌化された後、腫瘍細胞の表現型は未分化状態に戻り、sp2をHL-60と5日間共培養することにより、HL-60細胞の細胞周期は顕著なG1期停止を呈し、細胞形態は未熟から成熟に変更し、細胞NBT還元能力が強化される。細胞の増殖から分化の過程は、細胞周期停止と分化誘導の活性化(細胞形態と機能の変化)の過程であり、sp2は腫瘍細胞に対して明らかな分化の促進のための作用があることを示している(図7)。
【0044】
(実施例8)
sp2は、担癌ヌードマウス腫瘍細胞のアポトーシスを促進する。
1.sp2を4週間連続して投与した後の担癌ヌードマウス皮下ヒト骨肉腫MG-63とヒト低分化胃腺がんBGC-823の腫瘍組織をそれぞれ採用して固形腫瘍単細胞懸濁液を調製する。
1.1腫瘍塊をPBS緩衝液で2~3回洗浄し、眼科手術用ハサミで腫瘍を小片(1~2mm)に切断し、PBS緩衝液で2~3回洗浄し、50mLの遠心分離チューブに移す。
1.2 組織塊量に応じて5~6倍の0.25%のトリプシンを加え、37℃で20~40分間消化し、5分間おきに軽く一回振って細胞を分離する。
1.3 血清を含む2~5mLの培地を加え、トリプシンの消化作用を停止させる。
1.4 2~3分間静置し、懸濁液を新しい遠心分離チューブに移し、200メッシュのナイロンネットで懸濁液を二回濾過する。
1.5濾過した懸濁液を1000rpmで5分間遠心分離し、上清液を除去する。
1.6 5mLのPBS緩衝液を細胞に軽くに加え、再度遠心分離し、上清液を除去する。
1.7 細胞量に応じて1~2mLの培養液を加え、細胞を数え、予備する。
2.AnnexinV-FITC細胞アポトーシス(annexinV)
1)固形腫瘍単細胞懸濁液に細胞培養液を加えて少々混ぜ、遠心分離チューブに移し、1000gで5分間遠心分離し、上清液を除去して細胞を収集し、PBS緩衝液で細胞を軽く再懸濁して数える。
2)5~10万個の再懸濁した細胞を取って、1000gで5分間遠心分離し、上清液を除去し、195μLのAnnexinV-FITC結合液を加え、軽く細胞を再懸濁する。
3)5μLのAnnexinV-FITCを加え、軽く混ぜる。
4)10μLのヨウ化プロピジウム染色液を加え、軽く混ぜる。
5)室温(20~25℃)、暗所で10~20分間インキュベートした後、氷浴に置く。アルミホイルを使い、遮光してもよい。培養過程において細胞を2~3回再懸濁することにより、標記効果を改善する。
6)その後、フローサイトメトリー検出を行い、AnnexinV-FITCは緑色蛍光であり、PIは赤色蛍光である。
腫瘍細胞のアポトーシス実験結果:モデル群と比べて、パクリタキセル群は腫瘍細胞アポトーシス率(P<0.05)を向上できる。モデル群と比べて、sp2の各用量群のいずれもアポトーシスの促進作用がある。陽性対照のパクリタキセル群と比べて、sp2の高、低用量群と陽性対照のパクリタキセル群には有意差がない(P>0.05)(図8)。
【0045】
(実施例9)
フローサイトメトリーにより末梢血T細胞含有量を検出する。
1.試剤と抗体
【表7】
【0046】
2.実験方法及び結果
1)担癌ヌードマウスを頸椎脱臼法により屠殺する前に、眼球を摘出して血を取って、抗凝血処理をし、4℃で保存して予備する(当日に検出を完了する)。
2)軽く遠心分離し、細胞をチューブ底に沈降させ、100μLの全血を取る。
各チューブに、各相応抗体を10μL加えて振とうし、室温において暗所で20分間置いてから、振とうする。
3)1mLの溶血素を加え、振とうした後室温において暗室で10分間置く。
4)1200rpmで5分間遠心分離する。上清液を除去し、振とうする。
5)2mLのPBS洗浄剤を加え、振とうし、1200rpmで5分間遠心分離する。上清液を除去し、振とうする。
6)500μLのPBSを加え、機器に注入する前に4℃で保存する。
7)機器に注入する。効き
8)結果の解析:パクリタキセル群はTリンパ球に対して、明らかな毒性を現し、モデル群と比べて、有意差がある(P<0.01)。sp2は、投与量の上昇に伴いTリンパ球の上昇を促進する傾向があるが、モデル群に比べて有意差がない(P>0.05)。パクリタキセル群に比べて、sp2の高用量群はTリンパ球の含有量の向上を促進することができる(P<0.05)(図9)。
【0047】
(実施例10)
sp2はヌードマウス脾臓リンパ球の転化を促進する作用がある。
1、脾細胞懸濁液を調製する。
1)頸椎脱臼法によりヌードマウスを屠殺した後、75%のエタノールで10分間浸かり、バイオセーフティキャビネットにおいてヌードマウスを解剖して、脾臓を分離し、適量の無菌PBS液を入れたシャーレに置く。
2)PBSで洗浄した後、手術用ハサミで脾臓を1mmの小片に切断し、200メッシュのメッシュで濾過し、シリンジの注射棒のゴム部分で脾臓組織を細かく砕いて、PBSで洗浄し、上清液を収集する。
3)1500rpmで5分間遠心分離し、PBS(カルシウム、マグネシウムイオンを含まない)で1~2回洗浄する。
4)4mLの赤血球溶解液を加え、再懸濁し、37℃で5分間作用させ、遠心分離(1500rpmで5分間)し、上清液を除去する。
5)PBSで細胞を1回洗浄した後、完全培地で再懸濁し、細胞を数え、細胞濃度が10個/mLになるように調整する。
6)96ウェルプレートに細胞懸濁液を添加し、各ウェルは100μLであり、4時間適合化培養を行う。
7)新鮮な培養液を交換し、実験群にConA(最終濃度は5μg/mL)を加え、対照群に同体積の培地を添加し、48時間培養する。
8)10μLのCCK-8溶液を各ウェルに加え、インキュベーターで4時間培養した後、マイクロプレートリーダーで450nmにおいて吸光度を測定し、増殖率を計算する。実験群と対照群の三つのウェルのOD値の平均値を取る。
転化値=実験群の平均OD値-対照群の平均OD値。
【0048】
Tリンパ球の転化結果:モデル群と比べて、パクリタキセル群はTリンパ球転化効率を顕著に低下させる(P<0.01)。モデル群と比べて、sp2の各用量群のTリンパ球の転化効率はモデル群より優れ且つ用量の相関性を呈し、その中、低用量群は有意差がない(P>0.05)、中用量群と高用量群には有意差がある(P<0.01)。パクリタキセル群と比べて、sp2を4週間投与した後、各群はいずれもTリンパ球転化効率を向上させることができる(P<0.01)(図10)。
【0049】
(実施例11)
免疫蛍光実験によりsp2のPD-L1、CD47に対する抑制作用を検出する。
1.サンプル:担癌ヌードマウス皮下ヒト異種移植腫瘍組織
【0050】
2.抗体:
【表8】
【0051】
実験手順:
1.組織切片、プレーティング
1.1ミクロトームナイフをミクロトームの刃物台に取り付けて固定し、パラフィンブロックベースを固定し、ナイフ刃先とパラフィンブロックの表面との角度を5度になるように調整する。
1.2切片の厚さは4~7μmである。
1.3プレーティングと採集:ウォーターバス(Water Bath-Slide Drier)を用い、水温を45~50℃に維持させ、左手により毛筆で切片を軽く持ち上げ、右手によりピンセットで切片の角を挟み上げ、正面を上に向けるようにウォーターバスの水面に軽く敷き、切ったパラフィン切片を温水に浮かばせて熱せられた後、表面張力の作用により自然に平らに広げて採集し、番号を付ける。
1.4乾燥:プレーティングした切片を室温で軽く乾燥させた後、40℃の定温オーブンに置いて、0.5~2時間乾燥させて予備する。
【0052】
2.組織脱ろう水和化
3.抗原回復
切片をクエン酸塩緩衝液(0.01mol/L、pH6.0)を含む容器に入れ、電子レンジ(マイクロ波3段)で加熱して、容器内の液体の温度を約98℃にし、10~15分間維持する。容器を取り出し、室温で20~30分間冷却する(注意:蛋白が元の立体構成を回復できるため、切片を緩衝液から取り出してはいけない)。PBSで5分間×3回洗浄し、熱蒸気で20分間抗原回復を行い、その後室温まで自然に冷却させる。
4、PBSを吸い取って除去し、5%BSA/0.01MのPBSで30分間ブロッキングし、洗わなく、吸収紙で5%BSAブロッキング液を端縁から吸い取って除去する。希釈した抗体溶液(希釈溶液は5%BSAを含むPBS)を滴下し、空白対照群は抗体をPBS(0.01M、pH=7.4)に替え、湿気箱において4℃で一晩培養する。
5.翌日、室温に15分間放置して復温させる。PBSで5分間×5回洗浄する。余分のPBSを吸い取って除去し、蛍光二次抗体を滴下し、室温において暗所で30分間培養する。PBSで5分間×5回洗浄する。
6.DAPIを滴下し、暗所で2分間培養して細胞核を染色する。染色された細胞核は青色蛍光を示す。PBSで1分間×3回洗浄する。
7.最後に、切片をグリセロールで密封し、すぐに蛍光顕微鏡下で観察する。
8.分析方法:
9.平均光学密度(OD)と陽性面積比(陽性陽性面積/総面積)
陽性指数=陽性面積比×OD
結果:sp2は担癌ヌードマウスの腫瘍細胞を除去する免疫効果を顕著に強化する。
【0053】
(実施例12)
sp2の動物急性毒性試験(上下法)
2000mg/kgBW用量での限度実験。
方法特徴:被験動物数が少なく、LD50値を推算でき、毒性表現を観察できる。
1.被験薬物:sp2
含有量(又は規格):サンプルは精密な包装であり、40mg/ボトル×5本
保存条件:-20℃で保存
サンプル純度:HPLC検出による純度>98.5%
調製方法:40mg/1.5mL超純水
投与経路:マウス尾静脈注射
投与方式:動物急性毒性試験(Acute toxicity test,Single dose toxicitytest)とは動物に被験薬物を1回または24時間以内に複数回投与した後、一定の期間内に引き起こされた毒性反応を指す。本実験は24時間以内に3回投与する方法を採用し、すなわち0.5mL/回、3回/日、3時間おきに投与する。
用量:2000mg/kgBW
2.動物:ICRマウス、雄、6週齢、体重20±2g
3.実験方法:
a.尾静脈注射により2000mg/kgBW用量の被験薬物(sp2)を1匹のICRマウスに投与する:体重に基づき用量を計算する。
sp2の尾静脈注射用量は2mg/0.075mL/gの体重
b.毒性反応が現れるか否か観察して記録する(開始症状、開始時間、すなわち投与後時間、程度及び持続時間)
c.動物が死亡した場合、死亡直前の反応、死亡時間を記録する。
d.動物が生存している場合、被験薬物をほかの4匹の動物に投与して、この時、動物は計5匹である。もしこの5匹の動物の中で1匹の動物だけ試験後期で(すなわち観察期間内)死亡し、他の4匹の動物が生存している場合、継続観察して、後期で死亡した動物は他の死亡動物と同様に数える。
4.以下のように結果を評価する。
死亡した動物数≧3匹の場合、LD50は2000mg/kgBW未満であり、メイン実験(「化学薬物急性毒性試験技術のガイドライン」に基づく)に入る。
生存している動物数≧3匹の場合、LD50>2000mg/kgBW(本実験の設置によりLD50値を推算できる)である。
実験結果:2000mg/kgBW用量群では、尾静脈注射によりICR系マウスに2000mg/kgBW用量のsp2被験薬物を投与すると、その中、1匹のマウスでは投与後で一過性の活動が増加し、その後、該症状がなくなる。2週間の観察期間内、全部の被験マウスにはいずれも死亡が現れない。
限度試験方案の評価標準に基づいて、生存している動物数≧3匹である場合、LD50は2000mg/kgBW以上である。
【0054】
【表9】
【0055】
sp2のLD50は2000mg/kgBW以上であると推算する。
【0056】
(実施例13)
sp2の動物急性毒性試験(最大耐用量法)
一.被験動物及び被験薬物
実験条件:Good Laboratory Practice,GLP
1.被験動物
昆明マウス20匹、健康、成体、雌雄各半分、体重20g±2%
2.飼育条件
25℃の定温環境、12時間おきの光交代、無菌環境、十分の水及び餌提供下で飼育する。
3.被験サンプル
sp2は合成ペプチドの凍結乾燥粉末であり、純度>99.34%、40mg/ボトルの精密個包装、計40mg/ボトル×20本
LotNo:04010039572,蘇州強耀生物科技有限会社
【0057】
二.マウス急性毒性実験
1.実験手順
1)昆明種マウスの体重を量って記録する。
2)-20℃の環境からsp2の凍結乾燥粉末を取り出して、室温に15分間放置し、気を付けて蓋を開け、1.5mLの生理食塩水を加え、振って、完全に溶解させる。
3)用量:2000mg/kgBW(sp2濃度は40mg/1.5mLであり、マウスへの投与量は容積=0.075mL×マウス体重に従う)。
4)投与経路:尾静脈注射
5)投与方式:単回投与動物急性毒性試験(Acute toxicity test,Single dose toxicity test)とは、動物に被験薬物を1回または24時間以内に複数回投与した後、一定の期間内に引き起こされた毒性反応を指す。本実験は24時間以内に3回投与する方法を採用して、すなわち0.5mL/回、3回/24時間、3時間おきに投与する。
sp2濃度は40mg/1.5mLであり、各匹のマウスへの投与量は容積=0.075mL×マウス体重に従う。
6)被験動物の反応症状を観察して記録し、14日間連続観察して、投与の当日及び一日おきに1日に2回観察し、その後、1日に1回観察する。
7)実験が完了した後、頸椎脱臼法により屠殺し、すべての被験動物を解剖して、その組織器官の体積、色、材質などが変化したか否かと観察して記録する。
【0058】
【表10】
【0059】
20匹の昆明種マウス(雌雄各半分)に尾静脈注射により2000mg/kgBW用量のsp2を投与した後、所定の14日間(0日を含めて、計14日間)で連続観察して、明らかな行動異常や体重低下や死亡を含む損害作用が現れない。実験が完了した後、解剖を行って組織器官の異常が見られない。結論:sp2の静脈投与の最大無毒性反応量は2000mg/kgBWである。
【0060】
当業者であれば、本発明の技術的手段の範囲から逸脱することなく、上記に開示した技術内容に基づき、本発明の技術案に対して様々な可能性の変更及び修飾を行い、または同等変形した同様な効果を奏する実施形態に修正することができる。そのため、本発明の技術的手段の内容から逸脱することなく、本発明の技術案の本質に従って上記の実施形態に対して行われたいかなる単純な修正、同等の変形、修飾は、依然として本発明の技術案の保護範囲内にあるだろう。
【0061】
[付記]
[付記1]
アミノ酸配列がSEQ ID No.1である合成ペプチドsp2。
【0062】
[付記2]
(1)腫瘍の予防及び/又は治療、(2)腫瘍細胞の増殖及び/又は成長及び/又は侵入の抑制、(3)抗腫瘍免疫応答の増強、(4)腫瘍細胞分化の誘導、(5)1類の抗腫瘍薬の製造、(6)腫瘍テロメラーゼ活性の抑制、(7)腫瘍細胞周期の制御、(8)腫瘍細胞周期を制御する製品の製造、のいずれか1つの、付記1に記載の合成ペプチドsp2の用途。
【0063】
[付記3]
前記(1)~(8)のいずれか1つにおける腫瘍が、ヒト膵臓の上皮内がん、ヒト子宮頸がん、ヒト卵巣がん、ヒト骨肉腫、ヒト肺腺がん及びヒト低分化胃腺がんを含む、ことを特徴をする付記2に記載の合成ペプチドsp2の用途。
【0064】
[付記4]
前記腫瘍の細胞株はそれぞれヒト膵臓の上皮内がんBxPC-3、ヒト子宮頸がんSiHa、ヒト卵巣がんA2780、ヒト骨肉腫MG-63、ヒト肺腺がんA549及びヒト低分化胃腺がんBGC-823である、ことを特徴とする付記3に記載の合成ペプチドsp2の用途。
【0065】
[付記5]
活性成分が、付記1に記載の合成ペプチドsp2である生物活性分子製品。
【0066】
[付記6]
唯一の有効活性成分が、付記1に記載の合成ペプチドsp2である生物活性分子製品。
図1a
図1b
図1c
図2
図3a
図3b
図3c
図3d
図3e
図4a
図4b
図5
図6
図7a
図7b
図7c
図8
図9
図10
図11a
図11b
図12
【配列表】
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