(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】吸音構造
(51)【国際特許分類】
G10K 11/16 20060101AFI20220711BHJP
B32B 3/12 20060101ALI20220711BHJP
B32B 3/24 20060101ALI20220711BHJP
G10K 11/172 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
G10K11/16 120
B32B3/12 Z
B32B3/24 Z
G10K11/172
(21)【出願番号】P 2021046896
(22)【出願日】2021-03-22
(62)【分割の表示】P 2016206393の分割
【原出願日】2016-10-20
【審査請求日】2021-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000010054
【氏名又は名称】岐阜プラスチック工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】木村 隆志
(72)【発明者】
【氏名】青木 達彦
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-241435(JP,A)
【文献】特開2015-151105(JP,A)
【文献】特開平08-109688(JP,A)
【文献】特開2009-093064(JP,A)
【文献】特開昭55-036566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/16
B32B 3/12
B32B 3/24
G10K 11/172
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に柱形状のセルが複数並設された中空板状の構造体と、前記構造体に対向して配置された被覆体とを備える吸音構造であって、
前記構造体は、前記セルを柱形状に区画する側壁部と、前記側壁部の上部及び下部を閉塞する一対の閉塞壁とを有し、
前記閉塞壁の一方には貫通孔が形成され、
前記被覆体は、被覆板と該被覆板から突出する柱状の脚部を有するとともに、前記脚部の先端が前記閉塞壁に接するように、前記貫通孔が形成されている閉塞壁と対向して配置され、
前記貫通孔が形成されている閉塞壁が音源側とは反対側に向いて立設状態で配置され、
前記構造体と前記被覆体との間には、0mmよりも大きく25mmよりも小さい隙間が形成されている吸音構造。
【請求項2】
内部に柱形状のセルが複数並設された中空板状の構造体と、前記構造体に対向して配置された被覆体とを備え、仕切りとして使用される吸音構造であって、
前記構造体は、前記セルを柱形状に区画する側壁部と、前記側壁部の上部及び下部を閉塞する一対の閉塞壁とを有し、
前記閉塞壁の一方には貫通孔が形成され、
前記被覆体は、前記貫通孔が形成されている閉塞壁と対向して配置され、
前記貫通孔が形成されている閉塞壁が音源側とは反対側に向いて立設状態で配置され、
前記構造体と前記被覆体との間には、0mmよりも大きく25mmよりも小さい隙間が形成される吸音構造。
【請求項3】
内部に柱形状のセルが、互いに隙間を有するように複数並設された中空板状の構造体と、前記構造体に対向して配置された
複数の被覆体とを備える吸音構造であって、
前記構造体は、前記セルを柱形状に区画する側壁部と、前記側壁部の上部及び下部を閉塞する一対の閉塞壁とを有し、
前記閉塞壁の一方には貫通孔が形成され、
複数の
前記被覆体は、前記貫通孔が形成されている閉塞壁と対向
するとともに、当該閉塞壁に沿う方向に隙間が形成されるように隣接して配置され、
前記構造体と前記被覆体との間には、0mmよりも大きく25mmよりも小さい隙間が形成されている吸音構造。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の吸音構造において、
前記構造体と前記被覆体との間の隙間が、0mmよりも大きく5mmよりも小さい吸音構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸音構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内部に多角柱形状又は円柱形状をなす複数のセルが並設された中空板状の構造体が知られている。例えば、特許文献1に記載の構造体は、所定形状の熱可塑性樹脂からなるシート材を折り畳むことにより、複数の六角柱形状のセルが区画されたコア層を有している。コア層の上下両面には、熱可塑性樹脂からなるシート材がスキン層として接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の中空板状の樹脂構造体は、比較的軽量で且つ十分な強度を有していることから、様々な用途で使用されることが想定される。しかし、特許文献1には、樹脂構造体を吸音材として使用することについて言及がない。そのため、特許文献1に記載の樹脂構造体を吸音材として使用するためには、なお改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、内部に柱形状のセルが複数並設された中空板状の構造体と、前記構造体に対向して配置された被覆体とを備える吸音構造であって、前記構造体は、前記セルを柱形状に区画する側壁部と、前記側壁部の上部及び下部を閉塞する一対の閉塞壁とを有し、前記閉塞壁の一方には貫通孔が形成され、前記被覆体は、被覆板と該被覆板から突出する柱状の脚部を有するとともに、前記脚部の先端が前記閉塞壁に接するように、前記貫通孔が形成されている閉塞壁と対向して配置され、前記貫通孔が形成されている閉塞壁が音源側とは反対側に向いて立設状態で配置され、前記構造体と前記被覆体との間には、0mmよりも大きく25mmよりも小さい隙間が形成されている。
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、内部に柱形状のセルが複数並設された中空板状の構造体と、前記構造体に対向して配置された被覆体とを備え、仕切りとして使用される吸音構造であって、前記構造体は、前記セルを柱形状に区画する側壁部と、前記側壁部の上部及び下部を閉塞する一対の閉塞壁とを有し、前記閉塞壁の一方には貫通孔が形成され、前記被覆体は、前記貫通孔が形成されている閉塞壁と対向して配置され、前記貫通孔が形成されている閉塞壁が音源側とは反対側に向いて立設状態で配置され、前記構造体と前記被覆体との間には、0mmよりも大きく25mmよりも小さい隙間が形成される。
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、内部に柱形状のセルが、互いに隙間を有するように複数並設された中空板状の構造体と、前記構造体に対向して配置された被覆体とを備える吸音構造であって、前記構造体は、前記セルを柱形状に区画する側壁部と、前記側壁部の上部及び下部を閉塞する一対の閉塞壁とを有し、前記閉塞壁の一方には貫通孔が形成され、前記被覆体は、前記貫通孔が形成されている閉塞壁と対向して配置され、前記構造体と前記被覆体との間には、0mmよりも大きく25mmよりも小さい隙間が形成されている。
【0008】
上記の発明では、構造体と被覆体との間に隙間が形成されており、この隙間は貫通孔を通じてセルの内部と連通している。そのため、この吸音構造には、隙間、貫通孔、及びセルによって連続した一体の空気室が形成されている。外部から伝達された空気の振動は、上記空気室のばね効果により減衰される。
【0009】
上記の発明において、前記構造体と前記被覆体との間の隙間は、0mmよりも大きく5mmよりも小さいことが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、中空板状の構造体を吸音材として用いて吸音効果を得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態の吸音構造を上面側から見た部分斜視図。
【
図4】(a)は樹脂構造体の斜視図、(b)は(a)におけるβ-β線断面図、(c)は(a)におけるγ-γ線断面図。
【
図5】(a)は中空板状のコア層を構成するシート材の斜視図、(b)は同シート材の折り畳み途中の状態を示す斜視図、(c)は同シート材を折り畳んだ状態を示す斜視図。(d)は樹脂構造体の貫通孔の形成態様を示す断面図。
【
図6】同実施形態の吸音構造の配置態様を示す模式図。
【
図7】第2実施形態の吸音構造を上面側から見た部分斜視図。
【
図10】同実施形態の吸音構造の配置態様を示す模式図。
【
図11】被覆体の変形例の構成を模式的に示す断面図。
【
図12】被覆体の変形例の構成を模式的に示す断面図。
【
図13】被覆体の変形例の構成を模式的に示す断面図。
【
図14】被覆体の変形例の構成を模式的に示す断面図。
【
図15】被覆体の変形例の構成を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した吸音構造の第1実施形態を
図1~
図6に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態の吸音構造は、樹脂構造体10と、樹脂構造体10に対向して配置された被覆体50とによって構成されている。樹脂構造体10は、内部に柱形状のセルSが複数並設された中空板状に形成されている。すなわち、樹脂構造体10は、内部に柱形状のセルSが複数並設された中空板状の構造体に相当する。樹脂構造体10は、上面10aまたは下面10bを構成する一対の閉塞壁11を有している。なお、以下では、一対の閉塞壁11のうち、上面10aを構成する閉塞壁を第1閉塞壁11a、下面10bを構成する閉塞壁を第2閉塞壁11bという。なお、樹脂構造体10の上面10a及び下面10b間の距離、すなわち、樹脂構造体10の厚さTは、例えば5mm~60mmの範囲、好ましくは5mm~30mmの範囲で設定する。本実施形態では、樹脂構造体10の厚さTは30mmに設定されている。
【0013】
図2に示すように、樹脂構造体10は、一対の閉塞壁11が正方形状に形成されている。樹脂構造体10は、本実施形態では3行3列の計9つ並設されている。各樹脂構造体10は、隣接する樹脂構造体10に対して所定の距離d1だけ離間している。
図1に示すように、樹脂構造体10の第1閉塞壁11aには、セルSの内外を連通させる複数の貫通孔15が形成されている。
【0014】
被覆体50は、樹脂構造体10の貫通孔15が形成されている第1閉塞壁11a側に配置されている。被覆体50は、板状の被覆板51と、該被覆板51から第1閉塞壁11aに向けて突出している柱状の複数の脚部52とからなる。
図2に示すように、被覆板51は、複数の樹脂構造体10を上記のように配置した際の全体の外縁形状と同じ正方形状に形成されている。脚部52は、各樹脂構造体10の四隅の位置に合わせて複数設けられている。脚部52は、樹脂構造体10の各隅の形状に沿って直角に屈曲した形状である。
【0015】
図3に示すように、脚部52には、樹脂構造体10の第1閉塞壁11aが当接している。これにより、樹脂構造体10の第1閉塞壁11aと、被覆体50の被覆板51との間には、脚部52の突出高さの分だけ隙間が形成されている。脚部52の突出高さは、0mmよりも大きく25mmよりも小さく設定することができる。本実施形態では、脚部52の突出高さを3mmに設定している。そのため、樹脂構造体10と被覆体50との間には、3mmの隙間が形成されている。被覆体50は、脚部52が第1閉塞壁11aに例えば溶着されることにより、樹脂構造体10と接合されている。なお、脚部52と第1閉塞壁11aとは、溶着に限らず、接着や鋲止めなど他の方法を用いて互いに連結することも可能である。
【0016】
以下、本実施形態の吸音構造を構成する樹脂構造体10について詳細に説明する。
図4(a)に示すように、樹脂構造体10は、内部に複数のセルSが並設されたコア層20と、その上下両面に接合されたシート状のスキン層30、40とで構成されている。
図4(b)及び(c)に示すように、コア層20は、所定形状に成形された1枚の熱可塑性樹脂製のシート材を折り畳んで形成されている。コア層20は、上壁部21と、下壁部22と、上壁部21及び下壁部22の間に立設されてセルSを六角柱形状に区画する側壁部23とで構成されている。
【0017】
図4(b)及び(c)に示すように、コア層20の内部に区画形成されるセルSには、構成の異なる第1セルS1及び第2セルS2が存在する。
図4(b)に示すように、第1セルS1においては、側壁部23の上部に2層構造の上壁部21が設けられている。この2層構造の上壁部21の各層は互いに接合されている。また、第1セルS1においては、側壁部23の下部に1層構造の下壁部22が設けられている。一方、
図4(c)に示すように、第2セルS2においては、側壁部23の上部に1層構造の上壁部21が設けられている。また、第2セルS2においては、側壁部23の下部に2層構造の下壁部22が設けられている。この2層構造の下壁部22の各層は互いに接合されている。また、
図4(b)及び(c)に示すように、隣接する第1セルS1同士の間、及び隣接する第2セルS2同士の間は、それぞれ2層構造の側壁部23によって区画されている。
【0018】
図4(a)に示すように、第1セルS1はX方向に沿って列を成すように並設されていて、上面視した場合に、隣り合う2つの第1セルS1が六角形の1辺を共有している。同様に、第2セルS2はX方向に沿って列を成すように並設されていて、上面視した場合に、隣り合う2つの第2セルS2が六角形の1辺を共有している。第1セルS1の列及び第2セルS2の列は、X方向に直交するY方向において交互に配列されている。そして、これら第1セルS1及び第2セルS2により、コア層20は、全体としてハニカム構造をなしている。
【0019】
図4(a)~(c)に示すように、上記のように構成されたコア層20の上面には熱可塑性樹脂製のシート材であるスキン層30が接合されている。また、コア層20の下面には、熱可塑性樹脂製のシート材であるスキン層40が接合されている。この実施形態では、コア層20における側壁部23の上部が、コア層20の上壁部21及びスキン層30で閉塞されている。これら上壁部21及びスキン層30が樹脂構造体10の上面10aを構成する第1閉塞壁11aを構成している。換言すれば、側壁部23の上部は第1閉塞壁11aによって閉塞されている。同様に、コア層20における側壁部23の下部が、コア層20の下壁部22及びスキン層40で閉塞されている。これら下壁部22及びスキン層40が樹脂構造体10の下面10bを構成する第2閉塞壁11bを構成している。換言すれば、側壁部23の下部は第2閉塞壁11bによって閉塞されている。このように、第1閉塞壁11a及び第2閉塞壁11bによって、樹脂構造体10の一対の閉塞壁11が構成されている。なお、
図4(b)及び(c)では、図示されている3つのセルSのうち、最も左側のセルSに代表して符号を付しているが、他のセルSについても同様である。
【0020】
図4(b)及び(c)に示すように、樹脂構造体10の第1閉塞壁11aには、セルSの内外を連通させる貫通孔15が設けられている。具体的には、
図4(b)に示すように、第1セルS1において貫通孔15は、上面側のスキン層30及び2層構造の上壁部21を貫通するように設けられている。また、
図4(c)に示すように、第2セルS2において貫通孔15は、上面側のスキン層30及び1層構造の上壁部21を貫通するように設けられている。
【0021】
図4(a)に示すように、貫通孔15は、第1閉塞壁11aにおける各セルSの上部中央部分に1箇所ずつ設けられている。
図4(b)、(c)に示すように、各貫通孔15の開口の直径は、セルSを上面視した場合の六角形の一辺の長さ以下に設定されている。具体的には、各貫通孔15の開口の直径は、X方向に隣り合うセルSの中心同士の間隔P1の数分の1(例えば、0.5~3.0mm程度)に設定されている。
【0022】
次に、樹脂構造体10の製造方法について
図5に従って説明する。
図5(a)に示すように、第1シート材100は、1枚の熱可塑性樹脂製のシートを所定の形状に成形することにより形成される。第1シート材100には、帯状をなす平面領域110及び膨出領域120が、第1シート材100の長手方向(X方向)に交互に配置されている。膨出領域120には、上面と一対の側面とからなる断面下向溝状をなす第1膨出部121が膨出領域120の延びる方向(Y方向)の全体にわたって形成されている。なお、第1膨出部121の上面と側面とのなす角は90度であることが好ましく、その結果として、第1膨出部121の断面形状は下向コ字状となる。また、第1膨出部121の幅(上面の短手方向の長さ)は平面領域110の幅と等しく、かつ第1膨出部121の膨出高さ(側面の短手方向の長さ)の2倍の長さとなるように設定されている。
【0023】
また、膨出領域120には、その断面形状が正六角形を最も長い対角線で二分して得られる台形状をなす複数の第2膨出部122が、第1膨出部121に直交するように形成されている。第2膨出部122の膨出高さは第1膨出部121の膨出高さと等しくなるように設定されている。また、隣り合う第2膨出部122間の間隔は、第2膨出部122の上面の幅と等しくなっている。
【0024】
なお、こうした第1膨出部121及び第2膨出部122は、シートの塑性を利用してシートを部分的に上方に膨出させることにより形成されている。また、第1シート材100は、真空成形法や圧縮成形法等の周知の成形方法によって1枚のシートから成形することができる。
【0025】
図5(a)及び(b)に示すように、上述のように構成された第1シート材100を、境界線P、Qに沿って折り畳むことでコア層20が形成される。具体的には、第1シート材100を、平面領域110と膨出領域120との境界線Pにて谷折りするとともに、第1膨出部121の上面と側面との境界線Qにて山折りしてX方向に圧縮する。そして、
図5(b)及び(c)に示すように、第1膨出部121の上面と側面とが折り重なるとともに、第2膨出部122の端面と平面領域110とが折り重なることによって、一つの膨出領域120に対して一つのY方向に延びる角柱状の区画体130が形成される。こうした区画体130がX方向に連続して形成されていくことにより中空板状のコア層20が形成される。なお、この実施形態では、第1シート材100を折り畳むために圧縮する方向が、セルSが並設される方向(X方向)である。
【0026】
上記のように第1シート材100を圧縮するとき、第1膨出部121の上面と側面とによってコア層20の上壁部21が形成されるとともに、第2膨出部122の端面と平面領域110とによってコア層20の下壁部22が形成される。なお、
図5(c)に示すように、上壁部21における第1膨出部121の上面と側面とが折り重なって2層構造を形成する部分、及び下壁部22における第2膨出部122の端面と平面領域110とが折り重なって2層構造を形成する部分がそれぞれ重ね合わせ部131となる。
【0027】
また、第2膨出部122が折り畳まれて区画形成される六角柱形状の領域が第2セルS2となるとともに、隣り合う一対の区画体130間に区画形成される六角柱形状の領域が第1セルS1となる。本実施形態では、第2膨出部122の上面及び側面が第2セルS2の側壁部23を構成するとともに、第2膨出部122の側面と、膨出領域120における第2膨出部122間に位置する平面部分とが第1セルS1の側壁部23を構成する。そして、第2膨出部122の上面同士の当接部位、及び膨出領域120における上記平面部分同士の当接部位が2層構造をなす側壁部23となる。また、第1セルS1では、一対の重ね合わせ部131によってその上部が区画され、第2セルS2では、一対の重ね合わせ部131によってその下部が区画されている。なお、こうした折り畳み工程を実施するに際して、第1シート材100を加熱処理して軟化させた状態としておくことが好ましい。
【0028】
このようにして得られたコア層20の上面及び下面には、それぞれ熱可塑性樹脂製の第2シート材が熱溶着により接合される。コア層20の上面に接合された第2シート材はスキン層30となり、コア層20の上壁部21と共に側壁部23の上部を閉塞する第1閉塞壁11aを構成する。コア層20の下面に接合された第2シート材は、スキン層40となり、コア層20の下壁部22と共に側壁部23の下部を閉塞する第2閉塞壁11bを構成する。
【0029】
なお、第2シート材(スキン層30、40)をコア層20に熱溶着する際には、第1セルS1における2層構造の上壁部21(重ね合せ部131)が互いに熱溶着される。同様に、第2セルS2における2層構造の下壁部22(重ね合せ部131)が互いに熱溶着される。
【0030】
上記工程により、X方向に第1セルS1又は第2セルS2がそれぞれ列を成すように多数並設され、Y方向に第1セルS1及び第2セルS2が交互に多数並設された樹脂構造体10が得られる。
【0031】
次に、樹脂構造体10の第1閉塞壁11aに多数の貫通孔15を形成する。貫通孔15は、ドリル、針、パンチ等の貫通部材60で樹脂構造体10の第1閉塞壁11aを貫通させることにより形成される。
図5(d)に示すように、貫通部材60は、隣り合うセルSの中心同士の各間隔と略同一の間隔で複数配列された構成となっている。複数の貫通部材60の下方側に樹脂構造体10を配置して固定し、貫通部材60を下降移動させる。このようにして、樹脂構造体10の第1閉塞壁11aには、各セルSの略中央部分に各1箇所ずつの貫通孔15が形成される。以上の工程を経て、複数の貫通孔15が形成された樹脂構造体10が製造される。
【0032】
次に、樹脂構造体10に被覆体50を接合する工程について説明する。
被覆体50は、例えば合成樹脂、金属、及び木などの素材によって構成される。本実施形態では、被覆体50を合成樹脂によって成形する。なお、合成樹脂としては、例えばポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)等を採用することができる。被覆体50は、板状の被覆板51と複数の柱状の脚部52とが同一の型を用いて一体に成形される。
図2に示すように、樹脂構造体10は、脚部52が四隅に位置するように位置合わせした上で被覆体50に載置される。このとき、樹脂構造体10は、第1閉塞壁11aが被覆板51に対向するように配置される。続いて、熱を加えて脚部52及び第1閉塞壁11aを溶着し、樹脂構造体10と被覆体50とを接合する。これにより、
図1に示すような吸音構造が得られる。
【0033】
図6に示すように、本実施形態の吸音構造は、室内の仕切りとして用いられる。吸音構造は、室内において直立した状態で、樹脂構造体10の第1閉塞壁11aが音源200とは反対側に向いて配置される。すなわち、樹脂構造体10の第2閉塞壁11bが音源200に向いているとともに、樹脂構造体10に対して音源200とは反対側に被覆体50が配置される。なお、音源200は、室内に設置されたスピーカーなどを採用することができる。
【0034】
次に、上記実施形態の吸音構造の作用をその効果とともに説明する。
(1)上記実施形態では、樹脂構造体10と被覆体50との間に隙間が形成されており、この隙間は貫通孔15を通じてセルSの内部と連通している。そのため、この吸音構造には、上記隙間、貫通孔15、及びセルSによって連続した一体の空気室が形成されている。外部から伝達された空気の振動は、上記空気室のばね効果により減衰される。すなわち、樹脂構造体10では、上記隙間、貫通孔15、及びセルSは、いわゆる「ヘルムホルツ共鳴器」として機能して、外部から伝達された空気振動を吸収する。したがって、上記構成によれば、樹脂構造体10を吸音材として用いて吸音効果を得ることが可能になる。
【0035】
(2)上記実施形態では、被覆体50は樹脂構造体10に対して音源200とは反対側に配置され、音源200側に配置されている複数の樹脂構造体10は互いに離間して設けられている。そのため、音源200から発生した音波の空気振動は、各樹脂構造体10の間を通じても被覆体50と樹脂構造体10との隙間に伝わる。したがって、空気振動が複数箇所から吸音構造の空気層に伝えられることとなり、空気振動の減衰効果の向上に貢献できる。
【0036】
(第2実施形態)
吸音構造の第2実施形態を
図7~
図10に従って説明する。本実施形態では、1つの樹脂構造体10に対して、複数の被覆体を接合している点が上記実施形態と異なっている。以下では、第1実施形態と異なる構成について説明し、同様の構成についてはその詳細な説明は省略する。
【0037】
図7に示すように、本実施形態の吸音構造は、樹脂構造体10と、樹脂構造体10に対向して配置された複数の被覆体70とによって構成されている。樹脂構造体10は、一対の閉塞壁11が正方形状に形成されている。
【0038】
図7及び
図8に示すように、被覆体70は、樹脂構造体10の第1閉塞壁11a側に配置されている。被覆体70は、板状の被覆板71と、該被覆板71から第1閉塞壁11aに向けて突出している柱状の複数の脚部72とからなる。脚部72は、被覆板71の四隅に設けられている。脚部72は、被覆板71の各隅の形状に沿って直角に屈曲した形状である。
図8に示すように、被覆体70は、本実施形態では3行3列の計9つ並設されている。各被覆体70は、隣接する被覆体70に対して所定の距離d2だけ離間している。なお、樹脂構造体10の閉塞壁11は、こうして被覆体70を配置した際の全体の外縁形状と同じ正方形状である。
【0039】
図9に示すように、脚部72は、樹脂構造体10の第1閉塞壁11aに当接している。これにより、樹脂構造体10の第1閉塞壁11aと、被覆体70の被覆板71との間には、脚部72の突出高さの分だけ隙間が形成されている。脚部72の突出高さは、0mmよりも大きく25mmよりも小さく設定することができる。本実施形態では、脚部72の突出高さを3mmに設定している。そのため、樹脂構造体10と被覆体70との間には、3mmの隙間が形成されている。被覆体70は、脚部72が第1閉塞壁11aに例えば溶着されることにより、樹脂構造体10と接合されている。なお、脚部72と第1閉塞壁11aとは、溶着に限らず、接着や鋲止めなど他の方法を用いて互いに連結することも可能である。
【0040】
図10に示すように、本実施形態の吸音構造は、室内の仕切りとして用いられる。吸音構造は、室内において直立した状態で、樹脂構造体10の第1閉塞壁11aを音源200に向けて配置される。すなわち、樹脂構造体10の第2閉塞壁11bが音源200とは反対側を向いているとともに、樹脂構造体10に対して音源200側に被覆体70が配置される。
【0041】
次に、上記実施形態の吸音構造の作用をその効果とともに説明する。本実施形態では、上記(1)の作用効果に加えて以下の作用効果が得られる。
(3)本実施形態では、樹脂構造体10に対して音源200側に配置されている複数の被覆体70が互いに離間して設けられている。そのため、音源200から発生した音波の空気振動は、各被覆体70の間を通じても被覆体70と樹脂構造体10との隙間に伝わる。したがって、空気振動が複数箇所から上記空気層に伝えられることとなり、空気振動の減衰効果の向上に貢献できる。
【0042】
上記実施形態は以下のように変更して実施することができる。
・第1実施形態では、樹脂構造体10を3行3列の計9つ並設したが、その配設態様は適宜変更が可能である。例えば、樹脂構造体10を2行2列の計4つ並設してもよい。また、全体の外縁形状が正方形となるように配置しなくてもよい。例えば、樹脂構造体10を3行2列の計6つ並設すれば全体の外縁形状は長方形となる。この場合、被覆体50の被覆板51の形状は、樹脂構造体10を並設した際の全体の外縁形状と同じ長方形状であってもよいし、該外縁形状よりも大きい又は小さい他の形状であってもよい。
【0043】
・第1実施形態では、並設された樹脂構造体10において、隣接する樹脂構造体10との隙間を全て距離d1に統一した。すなわち、隣接する樹脂構造体10の隙間を一定にした例を示した。しかし、樹脂構造体10の隙間の設定態様は適宜変更が可能である。例えば、一対の樹脂構造体10において、一方側ほど隙間が大きくなるように樹脂構造体10を配置してもよい。また、複数並設された樹脂構造体10において、ある部分の樹脂構造体10同士の隙間を、他の部分の樹脂構造体10同士の隙間よりも大きくしたり小さくしたりしてもよい。このように、隣接する樹脂構造体10の隙間は一定なものに限られない。
【0044】
・第1実施形態では、樹脂構造体10を複数設けたが、1つの樹脂構造体10を被覆体50と対向するように配置してもよい。すなわち、樹脂構造体10の第1閉塞壁11aを音源200とは反対側に向けた吸音構造において、樹脂構造体10の第1閉塞壁11a全体を1つの被覆体50によって覆う構成を採用してもよい。この場合には、樹脂構造体10の外縁から被覆体50と樹脂構造体10との隙間に音波が伝えられる。また、樹脂構造体10を1つだけ設ける場合、その大きさは、被覆体50の大きさと同じであってもよいし、被覆体50の大きさよりも大きくても小さくてもよい。
【0045】
・第2実施形態では、被覆体70を3行3列の計9つ並設したが、その配設態様は適宜変更が可能である。例えば、被覆体70を2行2列の計4つ並設してもよい。また、全体の外縁形状が正方形となるように配置しなくてもよい。例えば、被覆体70を3行2列の計6つ並設すれば全体の外縁形状は長方形となる。この場合、樹脂構造体10の閉塞壁11の形状は、被覆体70を並設した際の全体の外縁形状と同じ長方形状であってもよいし、該外縁形状よりも大きい又は小さい他の形状であってもよい。
【0046】
・第2実施形態では、並設された被覆体70において、隣接する被覆体70の隙間を全て距離d2に統一した。すなわち、隣接する被覆体70の隙間を一定にした例を示した。しかし、被覆体70の隙間の設定態様は適宜変更が可能である。例えば、一対の被覆体70において、一方側ほど隙間が大きくなるように被覆体70を配置してもよい。また、複数並設された被覆体70において、ある部分の被覆体70同士の隙間を、他の部分の被覆体70同士の隙間よりも大きくしたり小さくしたりしてもよい。このように、隣接する被覆体70の隙間は一定なものに限られない。
【0047】
・第2実施形態では、被覆体70を複数設けたが、1つの被覆体70を樹脂構造体10と対向するように配置してもよい。すなわち、樹脂構造体10の第1閉塞壁11aを音源200に向けた吸音構造において、樹脂構造体10の第1閉塞壁11a全体を1つの被覆体70によって覆う構成を採用してもよい。この場合には、被覆体70の外縁から被覆体70と樹脂構造体10との隙間に音波が伝えられる。また、被覆体70を1つだけ設ける場合、その大きさは、樹脂構造体10の大きさと同じであってもよいし、樹脂構造体10の大きさよりも大きくても小さくてもよい。被覆体70を樹脂構造体10よりも小さくした場合、樹脂構造体10の一部のみが被覆体70によって覆われることとなる。
【0048】
・樹脂構造体10の一対の閉塞壁11の形状は正方形状に限らず、長方形や他の多角形状であってもよいし、円形状であってもよい。さらには不定形状であってもよい。
・被覆体50,70の被覆板51,71の形状は、正方形状に限らず、長方形や他の多角形状であってもよいし、円形状であってもよい。さらには不定形状であってもよい。また、被覆板51,71はシート材によって構成されていてもよい。シート材の素材としては樹脂などが挙げられる。また、ゴムからなる遮音性のシート材を採用してもよい。なお、被覆板51,71には、複数の孔や切り欠きを設けることも可能である。
【0049】
・被覆体50,70に設けられている脚部52,72の形状は上述したものに限られない。例えば、円柱状であってもよい。また、脚部52,72の配設位置も樹脂構造体10の四隅や被覆体70の四隅に限られず、例えば樹脂構造体10や被覆体70の中央部分に設けられていてもよい。
【0050】
・被覆体50,70に脚部52,72を設け、該脚部52,72によって被覆体50,70と樹脂構造体10との間に隙間を形成するようにしたが、隙間の形成態様は適宜変更が可能である。例えば、被覆体50,70の脚部52,72を省略し、代わりに樹脂構造体10に脚部を設けてもよい。また、被覆体50,70の脚部52,72を省略し、代わりに被覆体50,70の側面と樹脂構造体10の側面とを架橋し、被覆体50,70と樹脂構造体10とを離間した状態で両者を連結する架橋部材を設けてもよい。さらには、被覆体50,70の脚部52,72を省略し、代わりに被覆体50,70及び樹脂構造体10とは異なる隙間部材を間に挟んで、被覆体50,70及び樹脂構造体10を連結することで隙間を形成してもよい。また、被覆体50,70を第1板材に固定し、樹脂構造体10を第2板材に固定するとともに、被覆体50,70が樹脂構造体10の第1閉塞壁11aと隙間を隔てて対向するように第1板材と第2板材とを配置するといった構成を採用することも可能である。なお、これら第1板材、被覆体50,70、樹脂構造体10、及び第2板材を、被覆体50,70が樹脂構造体10の第1閉塞壁11aと隙間を隔てて対向するよう配置した状態でユニット化することも可能である。こうした構成では、第1板材、被覆体50,70、樹脂構造体10、及び第2板材を一体物として扱うことが可能になり、吸音構造の取り回しが容易になる。また、樹脂構造体10の上面10aや、樹脂からなる被覆板51,71には若干の反りがあり、完全な平面にはならない。そのため、脚部52,72を省略した被覆体50,70と樹脂構造体10とを単に重ねた状態にすることで、樹脂構造体10と被覆体50,70との間に部分的に隙間を形成することも可能である。この場合、隙間を形成するための部材を設けなくても、樹脂構造体10と被覆体50,70との間に部分的に0mm以上の隙間が形成されるため、樹脂構造体10と被覆体50,70との間の隙間は全体として0mm以上になり、上述した(1)の作用効果と同様の作用効果を得ることはできる。
【0051】
・被覆体の構成は上述したものに限られない。例えば、樹脂構造体10と同様の構成を備える構造体を被覆体として採用してもよい。
すなわち、
図11に示すように、樹脂構造体10の第1閉塞壁11aに対向させて複数の被覆体300を互いに離間して配置する。被覆体300は、内部に柱形状のセルSが複数並設された中空板状である。被覆体300は、セルSを柱形状に区画する側壁部301と、側壁部301の上部及び下部を閉塞する一対の閉塞壁302とを有している。閉塞壁の一方には貫通孔303が形成されている。
図11に示すように、被覆体300は、貫通孔303が形成されている閉塞壁302が樹脂構造体10の第1閉塞壁11aに対して反対側に位置するように配置されている。
【0052】
なお、
図12に示すように、被覆体300を、貫通孔303が形成されている閉塞壁302が樹脂構造体10の第1閉塞壁11a側に位置するように配置することも可能である。
【0053】
また、
図13に示すように、被覆体300において、一対の閉塞壁302のうち、一方(
図13の下方)の閉塞壁302のみだけでなく、他方(
図13の上方)の閉塞壁302にも貫通孔303を形成することも可能である。この場合、各セルSにおいて、一方の閉塞壁302または他方の閉塞壁302のいずれかに貫通孔303を形成することが望ましい。
【0054】
さらには、
図14に示すように、上述した中空板状の構造体を2つ連結して被覆体400を構成してもよい。被覆体400は、一方(
図14の下方)の構造体401の閉塞壁302と他方(
図14の上方)の構造体402の閉塞壁302とを接合することで構成されている。また、一方の構造体401では、貫通孔303が形成されている閉塞壁302が樹脂構造体10の第1閉塞壁11a側に位置し、他方の構造体402では、貫通孔303が形成されている閉塞壁302が樹脂構造体10の第1閉塞壁11aとは反対側に位置している。
【0055】
また、
図15に示すように、上述した中空板状の構造体を2つ連結して被覆体500を構成することも可能である。被覆体500は、一方(
図15の下方)の構造体501の閉塞壁302と他方(
図15の上方)の構造体502の閉塞壁302とを接合することで構成されている。一方の構造体501は、一方の閉塞壁302のみに貫通孔303が形成されており、貫通孔303が形成されている閉塞壁302が樹脂構造体10の第1閉塞壁11aとは反対側に位置している。他方の構造体502は、一対の閉塞壁302の両方に貫通孔303が形成されている。一方の構造体501に形成されている貫通孔303及び他方の構造体502に形成されている貫通孔303とは連通している。すなわち、一方の構造体501のセルSと、他方の構造体502のセルSとは、各貫通孔303を通じて連通している。
【0056】
上述した各構成では、セルSと貫通孔303とにより、被覆体300,400,500に外部と連通する空気室が形成される。外部から伝達された空気の振動は、被覆体300,400,500の空気室のばね効果によっても減衰される。このように、これらの吸音構造では、上述した作用効果に加えて、被覆体300,400,500をいわゆる「ヘルムホルツ共鳴器」として機能させることによる吸音効果も得ることができる。
【0057】
・上記第1実施形態及び第2実施形態において、被覆体50,70に不織布を重ねて接着してもよい。不織布は高周波数域の吸音を行う。そのため、この構成によれば、より広域の吸音が可能になる。なお、シート材からなる被覆体や上述した構造体からなる被覆体300,400であっても同様に不織布を重ねることで、上述した効果を得ることができる点はいうまでもない。また、樹脂構造体10の一部が不織布を接着した被覆体によって被覆され、他の部分が不織布を接着していない被覆体によって被覆された吸音構造を採用することも可能である。さらには、樹脂構造体10の一部は被覆体によって被覆されず、他の一部は不織布を接着していない被覆体によって被覆され、その他の部分は不織布を接着した被覆体によって被覆された吸音構造を採用してもよい。
【0058】
・樹脂構造体10のスキン層30を省略してもよい。この場合、コア層20の上壁部21のみによって第1閉塞壁11aが構成される。また、樹脂構造体10のスキン層40を省略することも可能である。この場合には、コア層20の下壁部22のみによって第2閉塞壁11bが構成される。また、樹脂構造体10のスキン層30,40の双方を省略してもよい。
【0059】
・樹脂構造体10の貫通孔15を各セルSの略中央部分に1箇所形成したが、貫通孔15の形成箇所及び個数はこれに限定されない。また、樹脂構造体10全体に貫通孔15を規則的に形成したが、貫通孔15を不規則に形成してもよい。例えば、貫通孔15が各セルSにおいて異なった位置に形成されるようにしてもよい。また、貫通孔15を各セルSに1箇所或いは複数箇所形成してもよい。また、貫通孔15が形成されたセルSと貫通孔15が形成されないセルSとを混在させてもよい。
【0060】
・上記実施形態では、貫通孔15の開口の直径を、0.5~3mm程度に設定したが、吸音構造の吸音率を高める上では、1.0~1.5mmに設定することが望ましい。
・吸音構造は、第1閉塞壁11aを音源200ではなく室内の中心に向けて配置するなど、その配置態様を適宜変更することが可能である。例えば、第2実施形態の吸音構造において、室内などの所定空間において音の発生しやすい側に第1閉塞壁11aを向けて樹脂構造体10を設置してもよい。なお、吸音構造は、室内の仕切りとしてだけではなく、壁や天井として用いることも可能である。
【0061】
・吸音構造を室内に設置した例を示したが、吸音構造を室外に設定することも可能である。すなわち、吸音構造を例えば高架下や屋上などに設置してもよい。
・吸音構造を例えば室内に設置する場合には、被覆体として壁や柱を採用することも可能である。すなわち、樹脂構造体10の第1閉塞壁11aを対向させつつ、0mmよりも大きく25mmよりも小さい隙間を隔てて壁に組付けることにより、壁と樹脂構造体10とによって吸音構造を構成することも可能である。また、柱が円柱状である場合には、柱の外周面に沿った形状に樹脂構造体10を湾曲させて成形することにより、柱に組付けたときに樹脂構造体10と柱との隙間を略一定にして上述のような吸音構造を構成することができる。
【0062】
・樹脂構造体10は、一枚の第1シート材100を折り畳み成形してコア層20を形成するのに限らず、複数枚の第1シート材を用いてコア層を形成してもよい。例えば、帯状の第1シート材を所定間隔毎に屈曲させ、これら複数の第1シート材を並設することでコア層を形成してもよい。この場合、各第1シート材において屈曲させた部分がセルSの側壁部を構成することになる。
【0063】
・樹脂構造体10として、シート材を折り畳むことによって複数のセルSが並設された構造のものを用いたが、これに限定されない。押出成形によって断面ハーモニカ状に形成された構造の中空板材を用いてもよい。
【0064】
・内部に柱形状のセルSが複数並設された中空板状の構造体として、樹脂からなる樹脂構造体10を例に説明した。構造体としては、樹脂からなるものに限られず、例えば紙からなる紙構造体や、金属からなる金属構造体を採用することも可能である。
【0065】
・セルSの形状は特に六角柱形状に限定されるものではない。例えば、円柱形状でもよいし、四角柱形状、八角柱形状などの多角柱形状であってもよい。また、セルSの形状は、例えば、錐台形状や錐台形状の頂面同士を突き合わせたような形状であってもよい。すなわち、全体として柱形状をなしているのであればどのような形状であってもよい。さらに、コア層20内において異なる形状のセルSが混在していてもよいし、各セルSが隣接せず、セルSとセルSとの間に空間(隙間)が生じていてもよい。セルSとセルSとの間に空間(隙間)が生じている場合、貫通孔15は、セルSの内外を連通するような部分に形成されているだけでなく、セルSとセルSとの間の空間部分に形成されていてもよい。
【0066】
・樹脂構造体10として、シート材を折り畳むことによって形成されたコア層20に、スキン層30、40を積層後、貫通孔15を形成する構成としたが、これに限定されない。例えば、押出成形によってコア層20を形成後、スキン層30、40として、あらかじめ複数の貫通孔15が形成されたものをコア層20に積層する構成としてもよい。
【0067】
・スキン層30、40を熱溶着でコア層20に接合するのに限らず、例えば、接着剤等でスキン層30、40をコア層20に貼り付けて接合してもよい。また、コア層20とスキン層30、40との間に例えば熱可塑性樹脂製の接着層を介在させ、この接着層の接着力により、スキン層30、40をコア層20に接合してもよい。
【0068】
・コア層20を折り畳んで圧縮する方向(X方向)をセルSが並設された方向として説明したが、これは一例に過ぎない。例えば、
図4(a)において、X方向に対して30°傾斜した方向、60°傾斜した方向においても、隣り合うセルSは六角形の一辺を共有しており、互いに並設されているといえる。また、ハニカム構造以外の場合、多角形の一辺を共有していなくても、また、多少のずれが生じていても、全体として列をなしていれば、セルSは並設されているといえる。
【0069】
・次に、本実施形態の吸音構造における吸音特性の試験について説明する。この試験では、吸音構造の吸音率を周波数毎に測定した。吸音率の測定は、JIS-A1409に準じて行った。
【0070】
具体的には、残響室の中央に試験体となる吸音構造を平置きまたは直立に設置し、残響室内に設置された音源から発生させた音のうち、100~5000Hzまでの周波数における残響時間を測定した。この測定では、中心周波数100~5000Hzにおいて1/3オクターブバンドで測定を行った。なお、試験体を設置する前に、同様に、音源から音を発生させて、100~5000Hzにおいて1/3オクターブバンドで残響時間を測定した。吸音率asの算出は、下記の式(1)及び式(2)に基づいて行った。各周波数における吸音率を算出することによって吸音構造の吸音特性を評価した。
【0071】
A=55.3・V/C・(1/T2-1/T1)…(1)
as=A/S…(2)
上記各式において、Aは試験体の等価吸音面積(m2)、Vは試験体を入れない状態の残響室容積(m3)、Cは空気中の音速(m/sec)、T1は試験体を設置していない状態の残響時間(sec)、T2は試験体を設置した状態の残響時間(sec)、Sは試験体の面積(m3)を示している。
【0072】
この試験の結果を表1にまとめた。
【0073】
【0074】
表1中の条件1~条件4は、吸音構造を平置きし、樹脂構造体10の第1閉塞壁11aを下方(音源200とは反対側)に向けて配置した場合である。条件1は、樹脂構造体10と被覆体50との隙間を1mmに設定した場合である。条件2は、樹脂構造体10と被覆体50との隙間を3mmに設定した場合である。条件3は、樹脂構造体10と被覆体50との隙間を5mmに設定した場合である。条件4は、樹脂構造体10と被覆体50との隙間を10mmに設定した場合である。なお、これらの隙間は、被覆体50の脚部52の長さに対応したものであり、脚部52の長さと隙間の大きさとは等しいとみなしている。これら条件1~条件4の実験結果の対比から、低周波数域(例えば250Hz)での吸音率を高める上では、樹脂構造体10と被覆体50と隙間を0mmよりも大きく5mmよりも小さくすることが好ましいことがわかった。
【0075】
また、条件5は、樹脂構造体10単体を第1閉塞壁11aが上方に向くように平置きした場合である。この場合、条件1~条件4に比して高周波数域(例えば800Hz)での吸音率が高くなっている。一方で、500Hz以下の低周波数域においては、条件1~4の方が条件5に比して吸音率が高くなる傾向がある。すなわち、樹脂構造体10と被覆体50との間に0mmよりも大きく25mmよりも小さい隙間を形成した吸音構造では、樹脂構造体10のみを試験体として用いた場合に比して500Hz以下の低周波数域で吸音率が高まることがわかった。このように、本発明の技術思想によれば、貫通孔が形成された閉塞壁を有し、吸音効果を有する中空板状の構造体を用いた吸音構造において、構造体単体における吸音域よりも低周波数域の音を吸音することが可能な吸音構造を実現することができる。
【符号の説明】
【0076】
S…セル、S1…第1セル、S2…第2セル、10…樹脂構造体、10a…上面、10b…下面、11…閉塞壁、11a…第1閉塞壁、11b…第2閉塞壁、15…貫通孔、20…コア層、21…上壁部、22…下壁部、23…側壁部、30…スキン層、40…スキン層、50…被覆体、51…被覆板、52…脚部、60…貫通部材、70…被覆体、71…被覆板、72…脚部、100…第1シート材、110…平面領域、120…膨出領域、121…第1膨出部、122…第2膨出部、130…区画体、131…重ね合わせ部、200…音源、300…被覆体、301…側壁部、302…閉塞壁、303…貫通孔、400…被覆体、401,402…構造体、500…被覆体、501,502…構造体。