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特許7102047ヘモグロビン濃度測定システム、経膣プローブ、アタッチメント、及びヘモグロビン濃度測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】ヘモグロビン濃度測定システム、経膣プローブ、アタッチメント、及びヘモグロビン濃度測定方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/00 20060101AFI20220711BHJP
   A61B 8/12 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
A61B10/00 E
A61B8/12
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022505194
(86)(22)【出願日】2021-04-15
(86)【国際出願番号】 JP2021015576
(87)【国際公開番号】W WO2021210642
(87)【国際公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-01-24
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2020/016638
(32)【優先日】2020-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516079785
【氏名又は名称】セルスペクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142734
【弁理士】
【氏名又は名称】安 裕 希
(72)【発明者】
【氏名】酒井 博則
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 拓也
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0256461(US,A1)
【文献】国際公開第2015/147284(WO,A1)
【文献】特開2019-213570(JP,A)
【文献】特開2010-029399(JP,A)
【文献】「低侵襲に子宮内膜症の悪性化を評価できる光学経腟プローブの開発」,平成29年度 戦略的基盤技術高度化・連携支援事業 戦略的基盤技術高度化支援事業 研究開発成果等報告書,2020年06月24日,[online],[検索日 2020.06.24]
【文献】山田有紀 他,近赤外線を用いたチョコレート嚢胞癌化の新規診断法,第39回日本エンドメトリオーシス学会学術講演会 プログラム・抄録集,2018年01月05日,p.139
【文献】新納恵美子 他,卵巣子宮内膜症癌化の早期発見を目指した超音波機器の開発,第41回日本エンドメトリオーシス学会学術講演会 プログラム・抄録集,2020年01月07日,p.104
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 10/00
A61B 5/00-5/03
A61B 5/06-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織における卵巣嚢胞に向けて超音波を送信可能、且つ、該生体組織から反射された超音波エコーを受信可能な超音波送受信部と、
前記超音波送受信部から送信される超音波の走査面と平行な方向に向けて、可視光から近赤外光の波長域のうち少なくとも可視光域の波長を含み、且つ、580nm及び762nm以外の1つ以上の可視光域の波長を含む、特定の複数の波長の成分を含む光を出射可能な光照射部と、
前記光照射部から出射し、生体組織により反射され又は生体組織を透過して前記走査面と平行な方向から伝搬する反射光又は透過光を受光可能な受光部と、
を有する経膣プローブと、
前記超音波送受信部により受信された超音波エコーに基づき、卵巣嚢胞の像を含む超音波画像を表示可能な表示部と、
前記受光部により受光された前記卵巣嚢胞からの前記反射光又は前記透過光の分光スペクトルに基づいて、前記特定の複数の波長における吸光度の測定値を取得し、前記吸光度の測定値を、前記特定の複数の波長における吸光度とヘモグロビンの濃度との関係を表す予め取得された所定の式に代入することにより、前記卵巣嚢胞に保持された嚢胞液中のヘモグロビンの濃度を算出する濃度算出部と、
を備えるヘモグロビン濃度測定システム。
【請求項2】
前記複数の波長は、可視光域の波長のみを含む、請求項1に記載のヘモグロビン濃度測定システム。
【請求項3】
前記特定の複数の波長は、少なくとも、580nm、590nm、640nm、680nm、762nmのうちから選択される2つ以上の波長を含む、請求項1に記載のヘモグロビン濃度測定システム。
【請求項4】
前記特定の複数の波長は、580nm,590nm,640nm,680nm,762nm,876nm,900nm,932nm,958nm,968nm,978nm,1095nmのうちから選択される2つ以上の波長を含む、請求項1に記載のヘモグロビン濃度測定システム。
【請求項5】
前記所定の式は、
ヘモグロビンの濃度が既知である液体が内部に収容された透明の容器を生体組織によって被覆した疑似生体サンプルに、可視光から近赤外光の波長域に含まれる光を照射するステップ(a)と、
前記疑似生体サンプルにより反射された反射光、又は、前記疑似生体サンプルを透過した透過光を受光するステップ(b)と、
ステップ(b)において受光された反射光又は透過光の分光スペクトルを取得するステップ(c)と、
ステップ(a)~(c)を複数の疑似生体サンプルに対して行うことにより取得された複数の分光スペクトルに基づいて、ステップ(a)において照射された光の波長域のうち、少なくとも可視光域の波長を含む所定の複数の波長における複数の吸光度を取得し、該複数の吸光度と前記濃度が既知である液体の該濃度とに基づいて、前記所定の複数の波長における吸光度とヘモグロビンの濃度との関係を求めるステップ(d)と、
を含む方法によって決定されたものであり、
前記特定の複数の波長は、前記所定の複数の波長である、
請求項1~のいずれか1項に記載のヘモグロビン濃度測定システム。
【請求項6】
前記超音波送受信部は、生体組織をコンベックス状に走査するように超音波を送信し、
前記光照射部は、コンベックス状の前記走査面の中心における超音波の送信方向と平行な方向に向けて前記光を出射可能となるように設けられている、請求項1~のいずれか1項に記載のヘモグロビン濃度測定システム。
【請求項7】
前記光照射部及び前記受光部は、前記超音波送受信部を挟んで互いに反対側に配置されている、請求項1~のいずれか1項に記載のヘモグロビン濃度測定システム。
【請求項8】
前記光照射部及び前記受光部は、前記光照射部の端面と前記受光部の端面とを結んだラインが、前記超音波送受信部から送信される超音波の走査方向に対して直交するように配置されている、請求項1~のいずれか1項に記載のヘモグロビン濃度測定システム。
【請求項9】
前記光照射部の端面と前記受光部の端面との中心間距離は10mm以上31mm以下である、請求項1~のいずれか1項に記載のヘモグロビン濃度測定システム。
【請求項10】
前記超音波送受信部は、経膣用の超音波プローブに設けられ、
前記光照射部及び前記受光部は、前記超音波プローブのうち膣内に挿入される挿入部に被せられるホルダーに取り付けられ、
前記光照射部及び前記受光部は前記ホルダーと共に、前記超音波プローブに対して取り外し可能である、請求項1~のいずれか1項に記載のヘモグロビン濃度測定システム。
【請求項11】
前記濃度算出部により算出されたヘモグロビンの濃度が、予めヘモグロビン濃度と関連付けられた子宮内膜症性卵巣嚢胞の悪性度の分類のいずれに当てはまるかを判定する判定部をさらに備える請求項1~10のいずれか1項に記載のヘモグロビン濃度測定システム。
【請求項12】
生体組織における卵巣嚢胞に保持された嚢胞液中のヘモグロビンの濃度を測定するヘモグロビン濃度測定システムにおいて用いられる経膣プローブであって、
生体組織に向けて超音波を送信可能、且つ、該生体組織から反射された超音波エコーを受信可能な超音波送受信部と、
前記超音波送受信部から送信される超音波の走査面と平行な方向に向けて、可視光から近赤外光の波長域のうち少なくとも可視光域の波長を含み、且つ、580nm及び762nm以外の1つ以上の可視光域の波長を含む、特定の複数の波長の成分を含む光を出射可能な光照射部と、
前記光照射部から出射し、生体組織により反射され又は生体組織を透過して前記走査面と平行な方向から伝搬する反射光又は透過光を受光可能な受光部と、
を有し、
前記超音波送受信部により受信された超音波エコーに基づき、卵巣嚢胞の像を含む超音波画像が表示されるときに、前記光照射部は前記卵巣嚢胞に向けて光を出射し、前記受光部は、前記卵巣嚢胞からの反射光又は透過光を受光し、
前記ヘモグロビン濃度測定システムは、前記受光部により受光された前記卵巣嚢胞からの前記反射光又は前記透過光の分光スペクトルに基づいて、前記特定の複数の波長における吸光度の測定値を取得し、前記吸光度の測定値を、前記特定の複数の波長における吸光度とヘモグロビンの濃度との関係を表す予め取得された所定の式に代入することにより、前記ヘモグロビンの濃度を算出するものである、経膣プローブ。
【請求項13】
生体組織における卵巣嚢胞に保持された嚢胞液中のヘモグロビンの濃度を測定するヘモグロビン濃度測定システムにおいて、生体組織に向けて超音波を送信可能、且つ、該生体組織から反射された超音波エコーを受信可能な超音波送受信部が設けられた経膣用の超音波プローブに取り付け可能なアタッチメントであって、
前記超音波プローブのうち膣内に挿入される挿入部に被せられるホルダーと、
可視光から近赤外光の波長域のうち少なくとも可視光域の波長を含み、且つ、580nm及び762nm以外の1つ以上の可視光域の波長を含む、特定の複数の波長の成分を含む光を出射可能な光照射部であって、前記ホルダーが被せられた前記超音波プローブが膣内に挿入されたとき、所定の方向に向けて前記光を照射可能となるように前記ホルダーに取り付けられた光照射部と、
前記光を受光可能な受光部であって、前記ホルダーが被せられた前記超音波プローブが膣内に挿入されたとき、前記光照射部から出射し、生体組織により反射され又は生体組織を透過して所定の方向から伝搬する反射光又は透過光を受光可能となるように前記ホルダーに取り付けられた受光部と、
を備え、
前記ヘモグロビン濃度測定システムは、前記受光部により受光された前記卵巣嚢胞からの前記反射光又は前記透過光の分光スペクトルに基づいて、前記特定の複数の波長における吸光度の測定値を取得し、前記吸光度の測定値を、前記特定の複数の波長における吸光度とヘモグロビンの濃度との関係を表す予め取得された所定の式に代入することにより、前記ヘモグロビンの濃度を算出するものである、アタッチメント。
【請求項14】
前記光照射部は、前記超音波送受信部から送信される超音波の走査面と平行な方向に向けて前記光を照射可能となるように前記ホルダーに取り付けられ、
前記受光部は、前記走査面と平行な方向から伝搬する前記反射光又は前記透過光を受光可能となるように前記ホルダーに取り付けられている、
請求項1に記載のアタッチメント。
【請求項15】
コンピュータを備えるヘモグロビン濃度測定システムにおいて、前記コンピュータが、
超音波送受信部から生体組織における卵巣嚢胞に向けて超音波を経膣的に送信され、該生体組織から反射され、前記超音波送受信部により受信された超音波エコーに基づいて、表示部に卵巣嚢胞の像を含む超音波画像を表示する表させる表示ステップと、
光照射部から前記卵巣嚢胞に向けて 送信される超音波の走査面と平行な方向に向けて出射された光であって、可視光から近赤外光の波長域のうち少なくとも可視光域の波長を含み、且つ、580nm及び762nm以外の1つ以上の可視光域の波長を含む、特定の複数の波長の成分を含む光が、生体組織により反射され又は生体組織を透過して前記走査面と平行な方向から伝搬する反射光又は透過光を受光部により受光することにより得られた前記反射光又は前記透過光の分光スペクトルに基づいて、前記特定の複数の波長における吸光度の測定値を取得し、前記吸光度の測定値を、前記特定の複数の波長における吸光度とヘモグロビンの濃度との関係を表す予め取得された所定の式に代入することにより、前記卵巣嚢胞に保持された嚢胞液中のヘモグロビンの濃度を算出する濃度算出ステップと、
を含むヘモグロビン濃度測定システムの作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、子宮内膜症性卵巣嚢胞の嚢胞液中のヘモグロビン濃度を生体内において測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
子宮内膜症は約10人に1人の割合で発生する婦人科疾患である。子宮内膜症の一種である子宮内膜症性卵巣嚢胞は、別名「チョコレート嚢胞」と呼ばれる良性卵巣嚢腫であり、卵巣内で発症した子宮内膜症からの出血による血液が溜まって嚢胞が形成されたものをいう。
【0003】
子宮内膜症性卵巣嚢胞のうち、約1%ががん化して卵巣がんになることが報告されている。なお、内膜症から発生する卵巣がんは、Endometriosis Associated Ovarian Cancer(EAOC)と総称される。疫学的には、44歳以上、嚢胞径が84mm以上、短期間で急激に嚢胞が増大した患者の場合、発がんのリスクが高いとされているため、現在のところ卵巣の摘出手術が推奨されている。しかし、これまでのところ、術後の病理医診断により実際に悪性と判断された症例は1%程度である。つまり、99%は、良性にもかかわらず卵巣摘出手術を受けていることになる。
【0004】
子宮内膜症性卵巣嚢胞の悪性度の判定に関連する技術として、非特許文献1には、子宮内膜症性卵巣嚢胞の悪性度とバイオマーカー濃度との相関性が開示されている。
【0005】
また、特許文献1には、採取した子宮内膜症性卵巣嚢胞液中の鉄濃度を測定する鉄濃度測定部と、該子宮内膜症性卵巣嚢胞の嚢胞液中のメトヘムとオキシヘムの存在比率を測定するための存在比率測定部とを包含し、がん化している可能性の判定を行う判定部とを備えた診断装置において、子宮内膜症性卵巣嚢胞ががん化している可能性を判定するための方法が開示されている。この特許文献1には、嚢胞液中のヘム総鉄濃度を測定する方法として、Triton-MeOHアッセイ発色法や、高速液体クロマトグラフィー法が例示されている。また、子宮内膜症性卵巣嚢胞内に嚢胞液が内包された状態で、嚢胞液中の鉄濃度を測定する方法として、近赤外分光法、核磁気共鳴分光法(magnetic resonance spectroscopy:MRS)、放射化分析法、蛍光X線分析法が例示されている。さらに、特許文献1には、近赤外光の発光部及び受光部を備える探触子を含む鉄濃度測定部が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、透光性の採血管又は採血袋内の血液に、外部から採血管又は採血袋を通して光を照射し、該採血管又は採血袋内の血液からの散乱反射光、散乱透過光或いは透過反射光を光センサにより検出して血液の近赤外吸収スペクトルを測定し、この測定値を、同様の方法により測定したスペクトルから予め作成した検量線に代入することによって、血液の化学成分または理化学的特性を求める近赤外分光法を用いた血液分析法が開示されている。この血液分析法においては、上記透光性の採血管又は採血袋内の血液に対し、波長が700nm~1100nmの近赤外光を照射することとしている。
【0007】
特許文献3には、子宮内膜症性卵巣嚢胞を診断するためデータ取得する診断用の探触子が開示されている。
【0008】
非特許文献2には、濃度が既知のヘモグロビン溶液が収容された模擬嚢胞に対して近赤外線を照射し、反射光の分光スペクトルに基づいてヘモグロビン濃度を算出し、さらに、多変量解析による多数の波長を用いた重回帰式を構築することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2018-163174号公報
【文献】特開2002-122537号公報
【文献】特許第6657438号公報
【非特許文献】
【0010】
【文献】C. Yoshimoto et. al., “Cyst fluid iron-related compounds as useful markers to distinguish malignant transformation from benign endometriotic cysts”, Cancer Biomarkers, vol. 15 (2015), P. 493-499
【0011】
【文献】「低侵襲に子宮内膜症の悪性化を評価できる光学経腟プローブの開発」、平成29年度 戦略的基板技術高度化・連携支援事業 戦略的基板技術高度化支援事業 研究開発成果等報告書、<URL:https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/sapoin/portal/seika/28fy.htm>、2018年10月掲載
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
子宮内膜症性卵巣嚢胞の悪性度(がん化の可能性)は、従来、超音波診断装置や、コンピュータ断層撮影法(CT)や、核磁気共鳴映像法(MRI)を用いた卵巣嚢胞の形態的評価に基づいて推定されている。しかしながら、卵巣摘出手術後の病理診断結果のうち、がん化した子宮内膜症性卵巣嚢胞は1%であるという事実から、このような形態的評価に基づいて、良性の子宮内膜症性卵巣嚢胞とがん化した子宮内膜症性卵巣嚢胞とを判別することは、実際のところ困難である。
【0013】
がん化した部分を認識する方法として、患者に造影剤を投与してMRIを行う造影MRI検査が存在する。しかし、この方法は、患者の負担が大きく、造影剤の副作用のリスクもある。また、通常の外来診療で実施することができないという問題もある。そのため、造影MRI検査を頻回に行うことはできず、検査頻度によってはがん化した症例を見逃してしまうおそれもある。
【0014】
このように、子宮内膜症性卵巣嚢胞の悪性度を、簡便且つ非侵襲的に、高い確度で判定することができる方法は、現在のところ存在していない。そのため、現状では、子宮内膜症性卵巣嚢胞と診断された患者に対し、外来診療で定期的に検査を行い、疾病の進行度合いに応じた処置を行うことは困難である。その結果、子宮内膜症性卵巣嚢胞と診断された場合、現時点ではがん化しないものの、将来がん化する可能性を考慮して、子宮内膜症性卵巣嚢胞を卵巣ごと摘出する外科的な処置を受ける患者も少なくない。
【0015】
このような問題に対し、特許文献1によれば、嚢胞液中のヘモグロビンをバイオマーカーとすることにより、子宮内膜症性卵巣嚢胞の悪性度を、従来よりも簡便且つ高い確度で判定することができる。それに加えて、嚢胞液中のヘモグロビン濃度を、その場(生体内)で非侵襲的に測定することができれば、患者の負担を低減することが可能となる。
【0016】
液体中の特定の成分の濃度は、液体から反射された反射光、又は、液体を透過した透過光の分光スペクトルを利用した分光法により、非接触で測定することができる(例えば特許文献2参照)。しかしながら、嚢胞液は、生体内において間質細胞や内臓脂肪といった不定形且つ不均一な組織に保持されている。そのため、嚢胞液中のヘモグロビン濃度を非侵襲的に測定するために、生体内において卵巣嚢胞に光を照射したとしても、それによって得られた分光スペクトルにおいては、間質細胞や内臓脂肪等の組織の存在により、ノイズが非常に大きくなっている可能性がある。そのような分光スペクトルに基づき、分光法によりヘモグロビン濃度を測定する場合、卵巣嚢胞から嚢胞液を採取して生体外で濃度を測定する場合と比較して、十分な測定精度を得ることができない。
【0017】
これに対し、非特許文献2においては、模擬嚢胞に近赤外光を照射する実験により得られた測定値に基づいて重回帰式を構築することから、嚢胞液中のヘモグロビン濃度を生体内において測定する場合であっても、上述した間質細胞や内臓脂肪等の組織の影響を低減することができる。
【0018】
しかしながら、生体内において嚢胞液中のヘモグロビン濃度を測定するためには、測定対象である嚢胞液に向けて光を確実に照射する必要がある。この点に関し、特許文献3及び非特許文献2においては、超音波画像を用いて卵巣嚢胞の位置を確認することとされているが、詳細な構成は明らかにされておらず、測定対象に向けて光を確実に照射し、安定的に測定を行うことは困難である。
【0019】
本発明は上記の問題点を鑑みてなされたものであり、生体内の卵巣嚢胞に保持された嚢胞液中のヘモグロビン濃度を非侵襲的に、安定的に測定することができるヘモグロビン濃度測定システム、経膣プローブ、アタッチメント、及びヘモグロビン濃度測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するために、本発明の一態様であるヘモグロビン濃度測定システムは、生体組織に向けて超音波を送信可能、且つ、該生体組織から反射された超音波エコーを受信可能な超音波送受信部と、前記超音波送受信部から送信される超音波の走査面と平行な方向に向けて、可視光から近赤外光の波長域のうち特定の複数の波長成分を含む光を出射可能な光照射部と、前記光照射部から出射し、生体組織により反射され又は生体組織を透過して前記走査面と平行な方向から伝搬する反射光又は透過光を受光可能な受光部と、を有する経膣プローブと、前記超音波送受信部により受信された超音波エコーに基づき、卵巣嚢胞の像を含む超音波画像を表示可能な表示部と、前記受光部により受光された前記卵巣嚢胞からの前記反射光又は前記透過光の分光スペクトルに基づいて、前記卵巣嚢胞に保持された嚢胞液中のヘモグロビンの濃度を算出する濃度算出部と、を備えるものである。
【0021】
上記ヘモグロビン濃度測定システムにおいて、前記超音波送受信部は、生体組織をコンベックス状に走査するように超音波を送信し、前記光照射部は、コンベックス状の前記走査面の中心における超音波の送信方向と平行な方向に向けて前記光を出射可能となるように設けられていても良い。
【0022】
上記ヘモグロビン濃度測定システムにおいて、前記光照射部及び前記受光部は、前記超音波送受信部を挟んで互いに反対側に配置されていても良い。
【0023】
上記ヘモグロビン濃度測定システムにおいて、前記光照射部及び前記受光部は、前記光照射部の端面と前記受光部の端面とを結んだラインが、前記超音波送受信部から送信される超音波の走査方向に対して直交するように配置されていても良い。
【0024】
上記ヘモグロビン濃度測定システムにおいて、前記光照射部の端面と前記受光部の端面との中心間距離は10mm以上31mm以下であっても良い。
【0025】
上記ヘモグロビン濃度測定システムにおいて、前記超音波送受信部は、経膣用の超音波プローブに設けられ、前記光照射部及び前記受光部は、前記超音波プローブのうち膣内に挿入される挿入部に被せられるホルダーに取り付けられ、前記光照射部及び前記受光部は前記ホルダーと共に、前記超音波プローブに対して取り外し可能であっても良い。
【0026】
上記ヘモグロビン濃度測定システムにおいて、前記濃度算出部は、前記特定の複数の波長における吸光度の測定値を取得し、前記吸光度の測定値を、前記特定の複数の波長における吸光度とヘモグロビンの濃度との関係を表す予め取得された所定の式に代入することにより、前記ヘモグロビンの濃度を算出しても良い。
【0027】
上記ヘモグロビン濃度測定システムにおいて、前記複数の波長成分は、少なくとも可視光域の波長成分を含んでも良い。
【0028】
上記ヘモグロビン濃度測定システムにおいて、前記複数の波長成分は、可視光域の波長成分であっても良い。
【0029】
上記ヘモグロビン濃度測定システムにおいて、前記特定の複数の波長は、少なくとも、580nm、590nm、640nm、680nm、762nmのうちから選択される2つ以上の波長を含んでも良い。
【0030】
上記ヘモグロビン濃度測定システムは、前記濃度算出部により算出されたヘモグロビンの濃度が、予めヘモグロビン濃度と関連付けられた子宮内膜症性卵巣嚢胞の悪性度の分類のいずれに当てはまるかを判定する判定部をさらに備えても良い。
【0031】
本発明の別の態様である経膣プローブは、卵巣嚢胞に保持された嚢胞液中のヘモグロビンの濃度を測定するヘモグロビン濃度測定システムにおいて用いられる経膣プローブであって、生体組織に向けて超音波を送信可能、且つ、該生体組織から反射された超音波エコーを受信可能な超音波送受信部と、前記超音波送受信部から送信される超音波の走査面と平行な方向に向けて、可視光から近赤外光の波長域のうち特定の複数の波長成分を含む光を出射可能な光照射部と、前記光照射部から出射し、生体組織により反射され又は生体組織を透過して前記走査面と平行な方向から伝搬する反射光又は透過光を受光可能な受光部と、を有し、前記超音波送受信部により受信された超音波エコーに基づき、卵巣嚢胞の像を含む超音波画像が表示されるときに、前記光照射部は前記卵巣嚢胞に向けて光を出射し、前記受光部は、前記卵巣嚢胞からの反射光又は透過光を受光するものである。
【0032】
本発明の別の態様であるアタッチメントは、生体組織に向けて超音波を送信可能、且つ、該生体組織から反射された超音波エコーを受信可能な超音波送受信部が設けられた経膣用の超音波プローブに取り付け可能なアタッチメントであって、前記超音波プローブのうち膣内に挿入される挿入部に被せられるホルダーと、可視光から近赤外光の波長域のうち特定の複数の波長の成分を含む光を出射可能な光照射部であって、前記ホルダーが被せられた前記超音波プローブが膣内に挿入されたとき、所定の方向に向けて前記光を照射可能となるように前記ホルダーに取り付けられた光照射部と、前記光を受光可能な受光部であって、前記ホルダーが被せられた前記超音波プローブが膣内に挿入されたとき、前記光照射部から出射し、生体組織により反射され又は生体組織を透過して所定の方向から伝搬する反射光又は透過光を受光可能となるように前記ホルダーに取り付けられた受光部と、を備えるものである。
【0033】
上記アタッチメントにおいて、前記光照射部は、前記超音波送受信部から送信される超音波の走査面と平行な方向に向けて前記光を照射可能となるように前記ホルダーに取り付けられ、前記受光部は、前記走査面と平行な方向から伝搬する前記反射光又は前記透過光を受光可能となるように前記ホルダーに取り付けられていても良い。
【0034】
本発明の別の態様であるヘモグロビン濃度測定方法は、生体組織に向けて超音波を経膣的に送信し、該生体組織から反射された超音波エコーを受信し、該超音波エコーに基づいて卵巣嚢胞の像を含む超音波画像を表示する超音波画像表示ステップと、前記超音波画像表示ステップにおいて送信される超音波の走査面と平行な方向に向けて、可視光から近赤外光の波長域のうち特定の複数の波長成分を含む光を出射する光照射ステップと、前記光照射ステップにおいて出射され、生体組織により反射され又は生体組織を透過して前記走査面と平行な方向から伝搬する反射光又は透過光を受光する受光ステップと、前記受光ステップにおいて受光された前記卵巣嚢胞からの前記反射光又は前記透過光の分光スペクトルに基づいて、前記卵巣嚢胞に保持された嚢胞液中のヘモグロビンの濃度を算出する濃度算出ステップと、を含むものである。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、超音波の走査面に対して所定の方向となるように光を出射するので、超音波画像を参照することにより生体組織に対して光を確実に照射し、その反射光又は透過光を受光することができる。従って、生体内の卵巣嚢胞に保持された嚢胞液中のヘモグロビン濃度を非侵襲的に、安定的に測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】卵巣摘出手術後の確定診断及びヘモグロビン濃度を示す表である。
図2】非がん群及びがん群に属するヘモグロビン濃度及びカットオフ値を表すグラフである。
図3】本発明の第1の実施形態に係るバイオマーカー濃度の測定方法を示すフローチャートである。
図4図3に示す濃度算出ステップにおいて用いられる式を求める方法を示すフローチャートである。
図5】本発明の第1の実施形態に係るヘモグロビン濃度測定システムの概略構成を例示するブロック図である。
図6】実施例1-1において使用された測定光学系を模式的に示す平面図である。
図7】実施例1-1における分光スペクトルの二次微分を示すグラフである。
図8】実施例1-1におけるヘモグロビンの直接測定濃度と算出濃度(全波長を用いた場合)との相関を示すグラフである。
図9】実施例1-2におけるヘモグロビンの直接測定濃度と算出濃度(12波長を用いた場合)との相関を示すグラフである。
図10】実施例1-3におけるヘモグロビンの直接測定濃度と算出濃度(2波長を用いた場合)との相関を示すグラフである。
図11】実施例1-4において、回帰式の作成に用いられた波長と相関係数とを示す表である。
図12】実施例2-1における分光スペクトルの二次微分を示すグラフである。
図13】実施例2-1におけるヘモグロビンの直接測定濃度と算出濃度(全波長を用いた場合)との相関を示すグラフである。
図14】実施例2-2におけるヘモグロビンの直接測定濃度と算出濃度(2波長を用いた場合)との相関を示すグラフである。
図15】実施例3において使用されたプローブの先端部を模式的に示す平面図である。
図16】実施例3におけるヘモグロビンの直接測定濃度と算出濃度との相関を示すグラフである。
図17】本発明の第2の実施形態に係る経膣プローブを模式的に示す側面図である。
図18図17に示す経膣プローブの上面図である。
図19図17のX矢視拡大図である。
図20】超音波画像と光の照射方向との関係を説明するための模式図である。
図21】実施例4におけるヘモグロビンの直接測定濃度と算出濃度(2波長を用いた場合)との相関を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態に係る測定方法、ヘモグロビン濃度測定システム、経膣プローブ、アタッチメント、及びヘモグロビン濃度測定方法について、図面を参照しながら説明する。なお、これらの実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、各図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
【0038】
以下の説明において参照する図面は、本発明の内容を理解し得る程度に形状、大きさ、及び位置関係を概略的に示しているに過ぎない。即ち、本発明は各図で例示された形状、大きさ、及び位置関係のみに限定されるものではない。また、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。本明細書においては、特に明記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。
【0039】
以下の実施形態においては、濃度の測定対象であるバイオマーカーの例として、子宮内膜症性卵巣嚢胞に保持された嚢胞液中のヘモグロビンを挙げて説明する。しかしながら、本発明に係るバイオマーカー濃度の測定方法は、卵巣嚢胞内の嚢胞液中のヘモグロビンの濃度に限定されず、生体組織に保持された液体における各種成分の濃度を、液体が生体組織に保持された状態のまま測定する場合に適用することができる。
【0040】
子宮内膜症性卵巣嚢胞の嚢胞液とは、子宮内膜症性卵巣嚢胞内に溜まっている液体のことである。嚢胞液におけるヘモグロビンは、子宮内膜症性卵巣嚢胞ががん化している可能性(即ち、悪性度)を判定する際のバイオマーカーとして使用することができる。被験体としては、子宮内膜症性卵巣嚢胞を発症しうる生物であれば特に限定されず、哺乳動物全般が対象となる。
【0041】
子宮内膜症性卵巣嚢胞の悪性度は、がん化した子宮内膜症性卵巣嚢胞の嚢胞液に含まれるヘモグロビンの濃度は良性の子宮内膜症性卵巣嚢胞の嚢胞液におけるヘモグロビン濃度と比較して有意に低い、という知見に基づいて判定することができる。
【0042】
まず、嚢胞液中のヘモグロビン濃度と子宮内膜症性卵巣嚢胞の悪性度との関連性について、臨床検体のヘモグロビン濃度の測定結果に対する統計的解析に基づいて説明する。
本願発明者が、卵巣摘出手術を受けた患者より提供された嚢胞液についてヘモグロビン濃度を測定したところ、嚢胞液中のヘモグロビン濃度と嚢胞の悪性度とに関連性があることが明確になった。図1は、一部の症例における術後確定診断及びヘモグロビン濃度を示す表である。なお、ヘモグロビン濃度の測定は、メタロアッセイLSヘムアッセイキット(メタロジェニクス株式会社製)を使用し、マイクロプレートリーダー(コロナ電気株式会社製、型名:SH-1200型)により電子吸収スペクトルを測定することにより行った。
【0043】
術後の病理医診断によると、症例117件のうち診断の内訳は、非がん群88件、がん群29件であった。次表に、測定結果の平均値、標準偏差、範囲、有意確率(p値)を示す。
【表1】
【0044】
表1に示すように、非がん群におけるヘモグロビン濃度の平均値は5.7g/dL、がん群におけるヘモグロビン濃度の平均値は0.9g/dLであることから、非がん群におけるヘモグロビン濃度は、がん群におけるヘモグロビン濃度よりも明らかに高い。また、p値が0.001未満であることから、ヘモグロビン濃度と悪性度との間に相関があることは明確である。
【0045】
この結果に対するROC曲線による解析の結果、がん群と非がん群のカットオフ値は2.0g/dLと算出された。このときの感度及び特異度はそれぞれ、95.4%、81.1%であった。また、このカットオフ値を用いたときの陽性適中率及び陰性適中率はそれぞれ、95.4%、85.7%であった。
【0046】
図2は、非がん群及びがん群における嚢胞液中のヘモグロビン濃度の平均値の差をノンパラメトリック解析(マン・ホイットニーのU-検定)により検定した結果を示すグラフである。図2においては、カットオフ値を破線により示している。
以上の解析より、検体中のヘモグロビン濃度が0.0~2.0g/dLであるとき、85.7%の確率でがん化している可能性を判定することができる。
【0047】
なお、ヘモグロビン濃度の数値範囲と子宮内膜症性卵巣嚢胞の悪性度の判定との関係は、C. Yoshimoto et. al., “Cyst fluid iron-related compounds as useful markers to distinguish malignant transformation from benign endometriotic cysts” (Cancer Biomarkers, vol. 15 (2015), P. 493-499)にも記載されている。この文献においては、カットオフ値がヘム鉄濃度72.7mg/dLとされており(P. 497参照)、この値はヘモグロビン濃度2.0g/dLに対応する。
【0048】
(第1の実施形態)
図3は、本発明の第1の実施形態に係る測定方法を示すフローチャートである。本実施形態に係る測定方法は、生体組織に保持されている液体中のバイオマーカーの濃度を、液体が生体組織に保持された状態のまま、その場(生体内)で非侵襲的に測定する方法である。以下においては、一例として、被検体が有する子宮内膜症性卵巣嚢胞に保持された嚢胞液中のヘモグロビン濃度を測定する場合を説明する。
【0049】
まず、超音波観察装置を用いて、対象となる生体組織の像を含む超音波画像を表示し、当該生体組織の位置を確認する(超音波画像表示ステップS1)。例えば、卵巣嚢胞に保持された嚢胞液中のヘモグロビン濃度を測定する場合、経膣用の超音波プローブを用いて、卵巣嚢胞の像を含む超音波画像を表示する。
【0050】
続いて、液体を保持する生体組織に向け、可視光から近赤外光の波長域に含まれる光を照射する(光照射ステップS2)。照射光としては、後述する特定の複数の波長の成分を含む光であれば特に限定されず、可視光のみであっても良いし、近赤外光のみであっても良いし、両者を含む光であっても良い。特定の複数の波長は、後述する濃度算出ステップS5において用いられる式に応じて決定される。例えば、卵巣嚢胞内の嚢胞液中のヘモグロビン濃度を測定する場合、照射光は、580nm,590nm,640nm,680nm,762nm,876nm,900nm,932nm,958nm,968nm,978nm,1095nmのうちから選択される少なくとも2つの波長の成分を含む光であることが好ましい。照射光を発生する光源は、生体に向けて非侵襲的に光を照射することができれば特に限定されない。例えば、ピーク波長が異なる複数のLEDを組み合わせた光源を用いても良いし、ハロゲンランプを用いても良い。また、光の照射方法についても、生体に対して非侵襲であれば特に限定されず、経膣的に照射しても良いし、経腹的に照射しても良い。例えば、光源に光ファイバを接続し、光ファイバの端部を生体に接触させることにより、生体の局所に光を照射することができる。
【0051】
続いて、生体組織により反射された反射光、又は、生体組織を透過した透過光を受光する(受光ステップS3)。反射光又は透過光の受光手段は、非侵襲であり、且つ、上記特定の複数の波長における光強度を検出可能な手段であれば特に限定されない。受光手段としては、例えば、特定の波長にのみ感度を有する複数の分光センサを組み合わせたものを用いても良いし、幅広い帯域の波長を検出可能なセンサを用いても良い。また、これらのセンサに光ファイバを接続し、光ファイバの端部を生体に接触させることにより、生体の局所からの光を受光することができる。
【0052】
光照射ステップS2及び受光ステップS3においては、例えば、経膣用プローブに光照射手段及び受光手段を設け、膣内から光を照射すると共に膣内において反射光を受光しても良い。また、経腹用プローブに光照射手段及び受光手段を設け、腹部表面から光を照射すると共に腹部表面において反射光を受光しても良い。或いは、経腹用プローブ及び経膣用プローブに光照射手段及び受光手段がそれぞれ設け、腹部表面から光を照射し、膣内において透過光を受光しても良いし、その反対であっても良い。
【0053】
続いて、受光ステップS3において受光された光に基づいて、特定の複数の波長における吸光度の測定値を取得する(吸光度取得ステップS4)。上述したように、特定の複数の波長は、後述する濃度算出ステップS5において用いられる式に応じて決定される。波長(λ)における吸光度A(λ)は、ランバート(ランベルト)・ベールの法則に基づき、照射光の強度I0と反射光又は透過光の強度I1を用いて、次式(1)により算出することができる。
A(λ)=-log10(I1/I0) …(1)
【0054】
続いて、吸光度取得ステップS4において取得された吸光度の測定値を、特定の複数の波長における吸光度とバイオマーカーの濃度との関係を表す予め取得された所定の式に代入することにより、バイオマーカーの濃度を算出する(濃度算出ステップS5)。バイオマーカーの濃度Cは、例えば、特定の波長λnにおける吸光度A(λn)(n=1~N、N≧2)を変数とする次式(2)によって表される。式(2)において、係数anは予め設定されている。また、符号bは定数である。
C=a1・A(λ1)+a2・A(λ2)+…+aN・A(λN)+b …(2)
このようにして、バイオマーカーの濃度Cを非侵襲で得ることができる。
【0055】
次に、濃度算出ステップS5において使用される式を求める方法について説明する。
上述したように、嚢胞液中のヘモグロビン濃度を測定することにより、子宮内膜症性卵巣嚢胞の悪性度を高い確度で判定することができる。しかしながら、嚢胞液は、間質細胞や内臓脂肪といった不定形且つ不均一な生体組織に保持されているため、生体組織を介して(即ち、生体組織を侵襲することなく)嚢胞液に光を照射した場合、その反射光又は透過光の分光スペクトルにおいてノイズが非常に大きくなる。そのため、このようにノイズが大きい分光スペクトルに基づき、ランバート・ベールの法則を用いた一般的な分光法によりヘモグロビン濃度を測定したとしても、十分な測定精度を得ることができない。そもそも、生体内における光路長を特定することも困難である。つまり、嚢胞液が不定形な間質細胞等に保持された状態のままでは、分光法による定量的な分析は困難であり、現実的ではない。
【0056】
そこで、本願発明者は、鋭意検討を重ね、間質細胞等の生体組織を模した疑似生体サンプル(模擬嚢胞)を作成して、疑似生体サンプルに対する分光測定を繰り返し、取得された分光スペクトルを分析した。それにより、生体組織の厚さ、組成、含水率、光路長が異なっていたとしても、特定の波長における吸光度を用いることで、バイオマーカー濃度を精度良く測定できる本実施形態に係る測定方法に想到した。
【0057】
また、従来、可視光は生体透過性が低いため嚢胞中に到達し難く、非破壊検査にはあまり適していないと考えられていたが、本願発明者は、間質細胞に保持された嚢胞液に可視光を到達させ、その反射光又は透過光を検知できる程度の光量があれば、そこから固有の光シグナルを取得可能であることを見出した。このような本願発明者の努力により、可視光から近赤外光の波長域に含まれる特定の波長の光を用いることで、子宮内膜症性卵巣嚢胞に保持された嚢胞液中のバイオマーカー濃度を、その場で非侵襲的に精度良く測定することが可能となった。
【0058】
図4は、図3に示す濃度算出ステップS5において用いられる式を求める方法を示すフローチャートである。
まず、バイオマーカー(本実施形態においてはヘモグロビン)の濃度が既知である液体が内部に収容された透明の容器を生体組織によって被覆した疑似生体サンプルを複数作成し、各疑似生体サンプルについて設定された回数だけステップS11~S13の処理を繰り返す。液体は、ヘモグロビン濃度が明らかなものであれば良く、例えば、ヘモグロビン粉末を純水に溶解したヘモグロビン水溶液であっても良いし、生体から採取した嚢胞液であっても良い。後者の場合、分光光度計等の公知の濃度測定手段を用いて予めヘモグロビン濃度を測定しておく。
【0059】
液体を収容する容器は、透明で均一な素材で形成されているものであれば特に限定されない。好ましくは、一般的な分光光度計等で使用される透明なセルやキュベットを用いることができる。また、容器を包む生体組織としては、豚肉や鶏肉又はこれらの脂肪など、市販のものを用いることができる。
【0060】
このような疑似生体サンプルに、可視光から近赤外光の波長域に含まれる光を照射する(ステップS11)。照射される光は、可視光のみであっても良いし、近赤外光のみであっても良いし、可視光及び近赤外光であっても良い。なお、照射される光が、可視光から近赤外光の波長域を超える波長の光(例えば紫外光)を含んでいたとしても問題ない。照射光を発生する光源は特に限定されず、例えばハロゲンランプ等を用いることができる。
【0061】
続いて、疑似生体サンプルにより反射された反射光、又は、疑似生体サンプルを透過した透過光を受光する(ステップS12)。さらに、受光された光の分光スペクトルを取得する(ステップS13)。反射光又は透過光を受光して分光スペクトルを取得する手段も特に限定されず、一般的な分光器や分光センサ等を用いることができる。
【0062】
このようなステップS11~S13を繰り返すことにより、複数の疑似生体サンプルに対応する複数の分光スペクトルを取得する。そして、取得された複数の分光スペクトルに基づいて、ステップS11において照射された光の波長域から、特徴的な光シグナルが見られる複数の波長を抽出する(ステップS14)。この特徴的な光シグナルは、バイオマーカーの存在を示していると言える。
【0063】
波長の抽出方法の一例を説明する。まず、各分光スペクトルに対し、二次微分を行う。二次微分の手法は特に限定されず、例えば、サビツキ-ゴーレイ法を用いることができる。スペクトルの二次微分は、原スペクトルにおける有意差が下向きのピークとなって現れるため、下向きのピークが現れる波長を抽出する。この際、全ての下向きのピークを抽出しても良いし、ピークが大きい方から所定数の波長を選択しても良い。或いは、所定値(絶対値)以上のピークを有する波長を全て選択しても良い。
【0064】
続いて、ステップS14において選択された複数の波長における吸光度とバイオマーカーの濃度との関係を表す式を求める(ステップS15)。詳細には、複数の分光スペクトルの各々に基づいて、選択された複数の波長における吸光度を取得し、取得された吸光度を説明変数、疑似生体サンプル内の溶液におけるバイオマーカーの既知の濃度を応答変数として回帰分析を行う。回帰分析の手法は、サンプル数(測定回数)及び選択された波長の数に応じた解析が可能であれば特に限定されない。適用可能な回帰分析の一例として、多変量解析の一種であるPLS解析(部分的最小二乗回帰分析)が挙げられる。
【0065】
なお、上述したステップS14は必須ではない。ステップS14が省略された場合には、ステップS15において、照射光の波長域で検知可能な全ての波長における吸光度を用いて同様の回帰分析を行えば良い。
【0066】
このようにして求められた式は、生体組織の厚さ、組成、含水率、及び、これらに起因する光路長の違いといった要因の影響を受けにくく、測定対象であるバイオマーカーの濃度を精度良く反映したものとなっている。従って、卵巣嚢胞に向けて経膣的又は経腹的に光を照射することにより取得された特定の波長における吸光度の測定値を上記式に代入することにより(図3の濃度算出ステップS5参照)、間質細胞や内臓脂肪の厚さや組成の影響を大きく受けることなく、卵巣嚢胞に保持された嚢胞液中のヘモグロビン濃度を定量的に精度良く測定することができる。
【0067】
図5は、本実施形態に係るヘモグロビン濃度測定システムの概略構成を例示するブロック図である。図5に示すヘモグロビン濃度測定システムは、嚢胞液中のヘモグロビンをバイオマーカーとして子宮内膜症性卵巣嚢胞の悪性度を判定する判定機能も有している。図5に示すヘモグロビン濃度測定システム10は、経膣用又は経腹用のプローブ100と、本体110とを備える。プローブ100と本体110とは、ライトガイドファイバ及び電気信号伝送用ワイヤを含むケーブルにより接続される。
【0068】
プローブ100は、本体110から送光用のライトガイドファイバを介して伝送された光を被検体(患者)の生体組織に向けて照射する照射部101と、生体組織から反射された反射光又は生体組織を透過した透過光を受光し、受光用のライトガイドファイバを介して本体110に伝送する受光部102と、生体組織に向けて超音波を送信すると共に、生体組織から反射された超音波エコーを受信する超音波送受信部103とを有する。
【0069】
照射部101は、ライトガイドファイバの端部にフォーカスレンズ等の光学系を設けたものであっても良い。また、受光部102は、ライトガイドファイバの端部に、反射光又は透過光を集光するコレクタレンズ等の光学系を設けたものであっても良い。
【0070】
超音波送受信部103は、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電セラミックや、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)等の高分子圧電素子といった圧電体の両端に電極を形成した1つ以上の圧電振動子を用いて構成される。超音波送受信部103は、本体110から送信された駆動用の電気信号に基づいて超音波を発生すると共に、生体組織から反射された超音波エコーを受信してこれを電気信号(超音波受信信号)に変換し、本体110に送信する。
【0071】
本体110は、プローブ100に伝送される光を発生する光源111と、プローブから伝送された光を受光して分光する分光部112と、超音波の駆動信号を発生してプローブ100に送信する駆動信号発生部113と、プローブ100から送信された超音波受信信号を処理する超音波信号処理部114と、操作入力部115と、表示部116と、記憶部120と、制御部130とを備える。
【0072】
光源111は、可視光から近赤外光の波長域のうち特定の複数の波長の成分を含む光を発生する。光源111としては、良好な指向性を有する光を発生するものであることが好ましい。光源111は、一例として、580nm、590nm、640nm、680nm、762nm、876nm、900nm、932nm、958nm、968nm、978nm、1095nmのうちから選択される2つ以上の波長の成分を含む光を発生する。光源111としては、ピーク波長が異なる複数のLEDを組み合わせた光源を用いても良いし、紫外光から近赤外光までの光を発生するハロゲンランプを用いても良い。光源111により発生した光は、ライトガイドファイバを介して照射部101に伝送される。
【0073】
分光部112は、受光部102により受光されライトガイドファイバを介して伝送された光の分光スペクトルを取得し、該光に含まれる各波長成分の強度を表す信号を出力する。分光部112としては、一般的な分光器や分光センサを用いることができる。例えば、特定の波長にのみ感度を有する複数のセンサを組み合わせたものを用いても良いし、幅広い波長域を検知可能なセンサを用いても良い。
【0074】
駆動信号発生部113は、例えばパルサによって構成され、超音波送受信部103を構成する1つ以上の圧電振動子に印加される駆動信号を発生する。
【0075】
超音波信号処理部114は、例えば増幅器及びA/D変換器によって構成され、超音波送受信部103から送信された超音波受信信号に対して増幅及びA/D変換等の信号処理を施すことにより、ディジタルの超音波受信信号を生成する。
【0076】
操作入力部115は、例えば、操作ボタン、操作レバー、キーボード、マウス、タッチパネル等の入力デバイスを用いて構成され、外部からなされる操作に応じた信号を制御部130に入力する。
【0077】
表示部116は、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイであり、制御部130の制御の下で、超音波受信信号に基づく超音波画像や、バイオマーカー濃度の測定結果等の情報を表示する。
【0078】
記憶部120、例えばROMやRAMといった半導体メモリやハードディスク等のコンピュータ読取可能な記憶媒体であり、プログラム記憶部121と、パラメータ記憶部122と、測定結果記憶部123とを含む。
【0079】
プログラム記憶部121は、制御部130を動作させるためのオペレーティングシステムプログラム及びドライバプログラムに加えて、各種機能を実行するアプリケーションプログラムを格納する。具体的には、プログラム記憶部121は、分光部112により取得された分光スペクトルに基づくバイオマーカー濃度の測定動作を制御部130に実行させるための測定プログラムや、バイオマーカー濃度に基づく子宮内膜症性卵巣嚢胞の悪性度の判定動作を制御部130に実行させるための判定プログラム等を格納する。
【0080】
パラメータ記憶部122は、プログラム記憶部121に記憶されたプログラムの実行中に使用される各種パラメータ等を格納する。例えば、パラメータ記憶部122は、バイオマーカー濃度の測定プログラムの実行中に使用される式のパラメータを記憶する。この式は、特定の複数の波長における吸光度と生体内におけるバイオマーカー濃度との関係を表す式であり、例えば上式(2)によって表される。パラメータ記憶部122は、例えば式(2)を構成する係数an及び定数bを格納する。また、パラメータ記憶部122は、子宮内膜症性卵巣嚢胞の悪性度の判定プログラムにおいて使用されるヘモグロビン濃度のカットオフ値を記憶する。
【0081】
測定結果記憶部123は、バイオマーカー(ヘモグロビン)濃度の測定値や子宮内膜症性卵巣嚢胞の悪性度等の測定結果を格納する。
【0082】
制御部130は、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いて構成され、プログラム記憶部121に記憶された各種プログラムを読み込むことにより、ヘモグロビン濃度測定システム10の各部を統括的に制御すると共に、バイオマーカー濃度の測定や、この測定結果に基づく子宮内膜症性卵巣嚢胞の悪性度の判定を行うための各種演算処理を実行する。詳細には、制御部130により実現される機能部には、光源制御部131と、吸光度取得部132と、濃度算出部133と、判定部134と、走査制御部135と、画像処理部136と、表示制御部137とが含まれる。
【0083】
光源制御部131は、操作入力部115から入力された信号に従って、光源111のオンオフや照射時間、照射強度等を制御する。なお、本実施形態においては、生体組織からの反射光又は透過光の分光スペクトルを取得できれば良いので、1回の測定における光の照射時間は、長くてもミリ秒レベルで足りる。
【0084】
吸光度取得部132は、分光部112から出力された波長成分の強度を表す信号に基づいて、当該波長における吸光度の測定値を取得する。吸光度は、ランバート・ベールの法則に基づき、上式(1)に用いて算出することができる。
【0085】
濃度算出部133は、吸光度取得部132により取得された吸光度の測定値を、パラメータ記憶部122に格納されたパラメータ(例えば、上式(2)における係数an及び定数b)を用いて構成される式に代入することにより、バイオマーカーの濃度を算出する。
【0086】
判定部134は、濃度算出部133により算出されたバイオマーカーの濃度を、パラメータ記憶部122に格納されたカットオフ値と比較することにより、子宮内膜症性卵巣嚢胞の悪性度を判定する。例えば、判定部は、嚢胞液中におけるヘモグロビン濃度が0.0~2.0g/dLであるとき、85.7%の確率でがん化していると判定することができる。
【0087】
走査制御部135は、駆動信号発生部113における駆動信号の発生タイミング(信号の遅延パターン)を制御することにより、超音波送受信部103から送信される超音波により被検体を走査させる。超音波による走査パターンは特に限定されず、ラジアル走査、セクタ走査等、プローブの形状や走査対象部位等に応じて適宜設定することができる。
【0088】
画像処理部136は、超音波信号処理部114により生成されたディジタルの超音波受信信号に基づいて、超音波画像を生成する。
【0089】
表示制御部137は、操作入力部115を介して入力された情報や、当該制御部130において処理された情報などの所定の情報を所定の形式で表示するように、表示部116を制御する。例えば、表示制御部137は、画像処理部136により生成された超音波画像を表示部116に表示させると共に、プローブ100の照射部101から出射する光の方向をアニメーションにより超音波画像に重畳表示させても良い。これにより、ヘモグロビン濃度測定システム10を操作するユーザは、バイオマーカー濃度の測定対象(例えば、卵巣嚢胞)の位置を確認し、測定対象に向けて光を確実に照射することができる。また、表示制御部137は、超音波画像内のバイオマーカー濃度の測定対象領域に、濃度算出部133により算出されたバイオマーカー濃度を表す情報が重畳表示されるように制御しても良い。具体例として、超音波画像内の卵巣嚢胞の領域に対し、バイオマーカー濃度の値に応じた色や輝度の網掛けが重畳されるようにしても良い。また、表示制御部137は、判定部134による判定結果や、この判定結果に応じたアラームを表示部116に表示させても良い。
【0090】
なお、本体110は、1つの機器によって構成されていても良いし、通信ケーブル又は通信ネットワークを介して接続された複数の機器により構成されても良い。
【0091】
また、本実施形態においては、照射部101及び受光部102をプローブ100側に設け、光源111及び分光部112を本体110側に設けているが、光源111若しくは分光部112又はその両方をプローブ100側に設けても良い。
【0092】
また、本実施形態においては、照射部101及び受光部102を同一のプローブに設けているが、これらを別々のプローブに設けても良い。例えば、経膣用プローブに受光部102を設け、腹部表面から光を照射することにより、卵巣嚢胞を透過した透過光を膣内において受光することができる。或いは、経膣用プローブに照射部101を設け、膣内から光を照射することにより、卵巣嚢胞を透過した透過光を腹部表面において受光しても良い。
【0093】
なお、本実施形態においては、ヘモグロビン濃度測定システムを超音波画像生成手段と組み合わせているが、MRIなど超音波画像以外の医用画像生成手段と組み合わせても良い。この場合、医用画像生成手段により生成された医用画像に対し、本実施形態に係るシステムによるヘモグロビン濃度の測定結果を重畳表示しても良い。
【0094】
また、本実施形態においては、測定結果として得られたヘモグロビン濃度を予め設定されたカットオフ値と比較することにより、子宮内膜症性卵巣嚢胞の悪性度を判定しているが、さらに、被検体(患者)の年齢や嚢胞の大きさといったデータと組み合わせて悪性度を判定しても良い。なお、嚢胞の大きさは、超音波画像やMRI画像に基づいて測定することができる。例えば、疫学的には、患者の年齢が44歳以上、又は、嚢胞の最大径が84mm以上である場合、子宮内膜症性卵巣嚢胞ががん化している可能性が高いことが知られているため、患者の年齢や嚢胞の大きさによりカットオフ値を調整しても良い。
【0095】
以上説明したように、本実施形態によれば、特定の複数の波長における吸光度とバイオマーカーの濃度との関係を表す予め取得された式に対し、生体組織に向けて光を照射することによって取得された特定の複数の波長における吸光度の測定値を代入することにより、バイオマーカーの濃度を算出するので、生体組織に保持された液体中のバイオマーカーの濃度を定量的に、その場で非侵襲的に精度良く測定することが可能となる。また、上記式は予め取得されているので、迅速且つリアルタイムに測定を行うことできる。さらに、被検体にとっても、非拘束で、無痛又は減痛、且つ非観血的にバイオマーカーの濃度を測定することができるので、身体的負担が少ない検査を行うことが可能となる。
【0096】
また、本実施形態によれば、嚢胞液中のヘモグロビン濃度を測定する場合に、580nm、590nm、640nm、680nm、762nm、876nm、900nm、932nm、958nm、968nm、978nm、1095nmの12波長のうちから選択される2つ以上の波長を用いるので、ヘモグロビン濃度を精度良く反映しつつも、嚢胞液の周囲に存在する間質細胞や内臓脂肪等の生体組織の厚さ、組成、含水率、及び、光路長の違いといった要因の影響を受けにくい光信号を取得することができる。従って、間質細胞の厚さや組成等の差異によらず、精度良くヘモグロビン濃度を測定することが可能となる。さらに、上記12波長は可視光から近赤外光の波長域であることから、安全性の高い検査を行うことが可能となる。
【0097】
また、本実施形態によれば、上記12波長から選択される2つ以上の波長を用いてヘモグロビン濃度を測定することができるので、ピーク波長が異なる複数のLEDを組み合わせることにより光源を構成することが可能である。つまり、光学系の設計に対する自由度を高めることができる。
【0098】
ここで、本実施形態においては、模擬嚢胞を用いた測定に基づいて重回帰式を構築する。そのため、生体内において嚢胞液中のヘモグロビン濃度を測定する場合に、この重回帰式を用いることにより、間質細胞や内臓脂肪等の組織の影響を低減することが可能となる。しかしながら、生体内は、さらに、被検体(患者)の体温など、実験室とは異なる環境にある。そして、個々の被検体の生体内における環境を実験室において再現し、そのような環境下における模擬嚢胞を用いた測定に基づいて重回帰式を構築することは困難である。この点において、可視光は温度の影響を比較的受け難いため、模擬嚢胞を用いた測定、及び、被検体の生体内における測定において、可視光及び近赤外光、又は、可視光のみを用いることにより、温度などの環境の違いが測定値に及ぼす影響を低減することができる。それにより、模擬嚢胞を用いた測定により得られた重回帰式に基づいて、生体内において嚢胞液中のヘモグロビン濃度を安定的に測定することが可能となる。
【0099】
また、本実施形態によれば、少なくとも2つの波長における吸光度を用いてヘモグロビン濃度を測定することができるので、演算負荷が小さい。そのため、民生品のパーソナルコンピュータと同程度のスペックの機器を用いた場合であっても、高速に測定結果を得ることができる。従って、システムの小型化と、製造コスト及び運転コストの低減とを図ることが可能となる。
【0100】
また、本実施形態によれば、卵巣嚢胞に保持された嚢胞液中のヘモグロビン濃度を、その場で非侵襲的に精度良く測定することができるので、予めヘモグロビン濃度と関連付けられた子宮内膜症性卵巣嚢胞の悪性度の分類又はカットオフ値を参照することにより、悪性度を簡便且つ非侵襲的に頻回、高い確度で判定することが可能となる。従って、子宮内膜症性卵巣嚢胞と診断された患者に対し、卵巣嚢胞が現時点ではがん化していないにもかかわらず将来がん化する可能性を考慮して卵巣を摘出するといった無用な手術を減らし、患者の身体的、経済的負担を軽減できる可能性がある。
【0101】
また、本実施形態によれば、子宮内膜症性卵巣嚢胞の悪性度の判定にあたって、造影剤による副作用や、X線による被爆を考慮する必要がない。また、本実施形態においては、測定時間がミリ秒レベルであるため、紫外線を含む光源を用いた場合であっても生体に与える影響は少ない。従って、患者の身体的負担が少なく、検査を頻回行うことも可能となる。
【0102】
また、本実施形態によれば、子宮内膜症性卵巣嚢胞の悪性度を、MRI等の大型の機器を用いることなく、簡便且つ迅速に判定することができる。従って、小規模なクリニックにおける検診や定期検診における検査に適用することが可能である。特に、図5に例示するヘモグロビン濃度測定システムを用いることで、ヘモグロビン濃度の測定から悪性度の判定までを自動で行うことができる。従って、経過観察や判定結果に応じた投薬治療を行い、必要になった段階で適切な外科的治療を施すといった治療計画のバリエーションを増やせる可能性がある。
【0103】
なお、本実施形態において説明した子宮内膜症性卵巣嚢胞の悪性度の判定方法は、子宮内膜症性卵巣嚢胞ががん化しているか否かの確定診断を実現するものではない。子宮内膜症性卵巣嚢胞ががん化しているか否かの確定診断は、病理組織学的に判断される。
【0104】
(実施例)
卵巣嚢胞を模した疑似生体サンプル(以下、模擬嚢胞という)に対する透過光の分光スペクトルに基づいて、ヘモグロビン濃度の算出に用いられる式を作成し、この式を用いて算出されるヘモグロビン濃度の精度を検証する実験を行った。
【0105】
実施例1-1
(1)試料(模擬嚢胞)の作成
ヘモグロビン粉末(シスメックス株式会社製、溶血ヘモグロビン)を純水で溶解することによりヘモグロビン水溶液を調整した。ヘモグロビン濃度は、0.0g/dL(純水のみ)、0.5g/dL、1.0g/dL、2.0g/dL、3.0g/dL、4.0g/dLの6通りとした。なお、これらの濃度は、子宮内膜症性卵巣嚢胞の悪性度のカットオフ値であるヘモグロビン濃度2.0g/dLの周辺の濃度域である。ヘモグロビン濃度は、ヘマトロジーアナライザー(シスメックス株式会社製、型名:XN-330)を用いて実測した。
【0106】
各濃度のヘモグロビン水溶液を、使い捨て型のポリスチレンキュベット(Biorad社製、内寸10mm×10mm×45mm)及び大きさが2種類のガラスキュベット(東京硝子器械株式会社製、内寸10mm×10mm×45mm、20mm×10mm×45mm)に4mLずつ注入し、パラフィルムで封をした。さらに、ヘモグロビン水溶液が封入された容器を横倒しにし、豚肉で包むことにより模擬嚢胞を作成した。豚肉の厚さは、光ファイバ(後述)が接する部分において5mm及び10mmの2通りとなるようにした。試料として、上記6通りのヘモグロビン濃度に対し、豚肉の厚さが2通り、容器が3通りの計36通りの疑似嚢胞を用意した。
【0107】
(2)模擬嚢胞に対する光の照射及び吸光度の取得
近赤外線用の2本の光ファイバ(浜松ホトニクス株式会社製、型名:A7969-08AS及びA9763-01)を、先端面同士が同一平面且つ中心間距離が18mmとなるように平行に並べ、ファイバホルダ(Thorlabs社製、ADASMAB2)を用いて固定した。そして、2本の光ファイバの先端面が、試料台に載せられる模擬嚢胞に接するように、ファイバホルダ及び試料台の位置を調節し、測定中に光軸がずれないように、ファイバホルダ及び試料台を光学試験ベンチに固定することにより、測定光学系を設置した。
【0108】
また、一方の光ファイバ(A9763-01)の後端部には、光源としてハロゲンランプ(浜松ホトニクス株式会社製、High Power UV/Vis、型名:L10290)を接続し、もう一方の光ファイバ(A7969-08AS)の後端部には分光器(浜松ホトニクス株式会社、型名:C9405CB)を接続した。さらに、外部から太陽光や照明等余計な光が入らないように、黒いポリプロピレンの板材を加工して暗箱を作成し、測定光学系に被せた。
【0109】
図6は、上述した測定光学系を模式的に示す平面図である。模擬嚢胞200に対して、2本の光ファイバ201,202の先端面を接触させることにより、一方の光ファイバ201の先端面から出射した光が模擬嚢胞200の内部に入射する。この光は、模擬嚢胞200内において反射され、その反射光の一部が、他方の光ファイバ202の先端面に入射する。この光ファイバ202に入射した光は、模擬嚢胞200内の容器203に収容された液体に関する情報を含んでいる。なお、図6においては、暗箱204を一点鎖線により示している。また、実際に測定を行う際には、汚れ防止のため、模擬嚢胞を食品用のラップフィルムで覆った。
【0110】
まず、光源及び分光器の電源を入れて30分以上通電させた後、試料台に何も載せず、暗箱を被せた状態で分光スペクトルを取得し、各波長における光強度I0を測定した。次に、模擬嚢胞を試料台に載せて分光スペクトルを取得し、各波長における光強度I1を測定した。測定点(波長)は、分光器の仕様から、434nm~1144nmにおいて検知可能な1025点の波長とした。そして、光強度I0及び光強度I1から、ランバート・ベールの法則に従って、各波長における吸光度を算出した。このような測定を、濃度6通り、肉厚2通り、容器3通りの疑似嚢胞に対して4回ずつ、トータルで144回行った。
【0111】
図7は、各回の測定において得られた分光スペクトルの二次微分を示すグラフである。二次微分としては、サビツキ-ゴーレイの方法を採用した。ここで、分光スペクトルの二次微分は、原スペクトルの有意差が下向きのピークとなって現れる。図7に示すように、本実施例においては、580nm、590nm、640nm、680nm、762nm、876nm、900nm、932nm、958nm、968nm、978nm、1095nmの12波長の位置に、明らかにノイズではないピークが見られる。これらのピークが、疑似嚢胞中のヘモグロビン濃度を特徴づけるものと考えられる。
【0112】
(3)回帰式の作成及び検証
上記測定により得られた144回分の測定結果(各回につき1025点の波長における吸光度)のうち、30回分の測定結果をランダムに抽出して除外し、残りの114回分の測定結果を用いて回帰分析を行うことにより、回帰式を取得した。回帰分析としては、1025点の全ての波長における吸光度を説明変数、ヘマトロジーアナライザーで実測することにより得られたヘモグロビン濃度を応答変数とし、多変量解析の一種であるPLS解析を行った。
【0113】
取得された回帰式に対し、除外された30回分の測定結果(同上)の各々を代入することにより、ヘモグロビン濃度を算出した。そして、回帰式に代入することにより算出されたヘモグロビン濃度と、ヘモグロビン水溶液をヘマトロジーアナライザーで直接測定することにより得られたヘモグロビン濃度との相関性を求めた。
【0114】
図8は、ヘマトロジーアナライザーにより直接測定されたヘモグロビンの濃度(以下、直接測定濃度)と、回帰式から得られたヘモグロビンの測定濃度(以下、算出濃度)との相関を示すグラフである。ヘマトロジーアナライザーによる直接測定濃度と、回帰式による算出濃度との相関係数はR=0.91であり、両者の間には高い相関性が認められる。このことから、肉に包まれた模擬嚢胞内部の水溶液中のヘモグロビン濃度を、肉から取り出すことなく精度良く測定可能であることがわかった。また、肉の厚さやキュベットの大きさが異なる様々な模擬嚢胞に対しても、統一的な回帰式を作成してヘモグロビン濃度を算出できることがわかった。
【0115】
ここで、子宮内膜症性卵巣嚢胞に罹患した患者には、細胞の厚さ、内臓脂肪や筋組織の密度、腫瘍の大きさ等の点で個人差がある。本実施例における測定方法においては、このように種々の条件が異なる患者に対し、統一的な回帰式を適用して卵巣嚢胞内の嚢胞液中のヘモグロビン濃度を測定することが可能であり、極めて汎用性が高い測定方法であると言える。
【0116】
実施例1-2
上記実施例1-1における実験により得られた測定結果を用いて、実施例1-1と同様に回帰分析を行うことにより回帰式を取得し、この回帰式によりヘモグロビン濃度を算出した。ただし、説明変数としては、1025点の波長の代わりに、分光スペクトルの二次微分(図7参照)において顕著な下向きのピークが見られる580nm、590nm、640nm、680nm、762nm、876nm、900nm、932nm、958nm、968nm、978nm、1095nmの12波長における吸光度を用いた。
【0117】
図9は、ヘマトロジーアナライザーにより直接測定されたヘモグロビンの濃度(直接測定濃度)と、12波長における吸光度を用いた回帰式により算出されたヘモグロビンの測定濃度(算出濃度)との相関を示すグラフである。ヘマトロジーアナライザーによる直接測定濃度と、回帰式による算出濃度との相関係数は、R=0.88であった。このように、説明変数を上記12波長における吸光度に限定した場合であっても、ヘマトロジーアナライザーによるヘモグロビンの直接測定濃度と、回帰式によるヘモグロビンの算出濃度との間には良好な相関性が認められる。
【0118】
実施例1-3
上記実施例1-1における実験により得られた測定結果を用いて、実施例1-1と同様に回帰分析を行うことにより回帰式を取得し、この回帰式によりヘモグロビン濃度を算出。ただし、説明変数としては、分光スペクトルの二次微分(図7参照)において顕著な下向きのピークが見られる12波長のうち、900nm及び968nmの2波長における吸光度のみを用いた。
【0119】
図10は、ヘマトロジーアナライザーにより直接測定されたヘモグロビンの濃度(直接測定濃度)と、2波長における吸光度を用いた回帰式により算出されたヘモグロビンの測定濃度(算出濃度)との相関を示すグラフである。説明変数を上記2波長における吸光度に限定した場合であっても、ヘマトロジーアナライザーによる直接測定濃度と、回帰式による算出濃度との相関係数はR=0.89であり、両者の間には良好な相関性が認められる。
【0120】
実施例1-4
上記実施例1-1における実験により得られた測定結果を用いて、実施例1-1と同様に回帰分析を行うことにより回帰式を取得し、この回帰式によりヘモグロビン濃度を算出した。ただし、説明変数としては、分光スペクトルの二次微分(図7参照)において顕著な下向きのピークが見られる580nm、590nm、640nm、680nm、762nm、876nm、900nm、932nm、958nm、968nm、978nm、1095nmの12波長のうち、任意の2つ以上の波長における吸光度を用いた。
【0121】
図11は、回帰式の作成に用いられた吸光度の波長と、当該回帰式によるヘモグロビンの算出濃度とヘマトロジーアナライザーによるヘモグロビンの直接測定濃度との相関係数とを示す表である。図11に示すように、いずれの波長の組み合わせにおいても相関係数はR=0.83以上であり、両者の間に良好な相関性が見られる。これにより、上記12波長のうち任意の2つ以上の波長における吸光度を用いることで、精度良くヘモグロビン濃度を算出可能な回帰式を作成できることがわかった。
【0122】
また、従来は、可視光は生体を透過しないため、生体に対する分光測定にはもっぱら近赤外光が使用されていたが、図11に示すように、可視光のみ、又は、可視光及び近赤外光を用いる場合であっても、近赤外光のみを用いる場合と同等またはそれ以上の精度が得られることがわかった。
【0123】
実施例2-1
(1)試料(模擬嚢胞)の作成
卵巣摘出手術を受けた9名の患者から提供された検体(嚢胞液)を用意した。これらの検体のヘモグロビン濃度を、ヘマトロジーアナライザー(シスメックス株式会社製、型名:XN-330)を用いて実測したところ、0.1g/dL~3.8g/dLの範囲であった。また、ヒト由来のアルブミン(ナカライテスク株式会社社製)をリン酸緩衝生理食塩水に溶解させた溶解液(アルブミン濃度5.0g/dL)を、ヘモグロビン濃度0.0g/dLのブランクとし、計10通りの検体を用意した。
【0124】
これらの検体を、実施例1-1と同様に、使い捨て型のポリスチレンキュベット(Biorad社製、内寸10mm×10mm×45mm)に4mLずつ注入し、パラフィルムで封をし、豚肉で包むことにより模擬嚢胞を作成した。豚肉の厚さは、光ファイバが接する部分において5mm及び10mmの2通りとなるようにした。試料としては、上記10通りの検体に対し、豚肉の厚さが2通りの計20通りの疑似嚢胞を用意した。
【0125】
(2)模擬嚢胞に対する光の照射及び吸光度の取得
上記実施例1-1と同様に測定光学系を設置し、疑似嚢胞を透過した光の分光スペクトルを取得して吸光度を算出する実験を、各試料に対して2回ずつ、計40回行った。
【0126】
図12は、各回の測定において得られた分光スペクトルの二次微分を示すグラフである。図12に示すように、本実施例においても、実施例1-1と同様に、580nm、590nm、640nm、680nm、762nm、876nm、900nm、932nm、958nm、968nm、978nm、1095nmの12波長の位置に特徴的なピークが見られる。実施例1-1及び実施例2-1を考慮すると、これらのピークは、測定対象の由来に依存せず、ヘモグロビンという化学種に特有のピークであると考えられる。
【0127】
(3)回帰式の作成及び検証
上記測定により得られた40回分の測定結果(各回につき1025点の波長における吸光度)のうち、10回分の測定結果をランダムに抽出して除外し、残りの30回分の測定結果を用いて回帰分析を行うことにより、回帰式を取得した。回帰分析としては、実施例1-1と同様に、1025点の全ての波長における吸光度を説明変数、ヘマトロジーアナライザーで実測することにより得られたヘモグロビン濃度を応答変数とするPLS解析を行った。
【0128】
取得された回帰式に対し、除外された10回分の測定結果(同上)の各々を代入することにより、ヘモグロビン濃度を算出した。そして、回帰式に代入することにより算出されたヘモグロビン濃度と、検体をヘマトロジーアナライザーで直接測定することにより得られたヘモグロビン濃度との相関性を求めた。
【0129】
図13は、ヘマトロジーアナライザーにより直接測定されたヘモグロビンの濃度(直接測定濃度)と、回帰式により算出されたヘモグロビンの測定濃度(算出濃度)との相関を示すグラフである。ヘマトロジーアナライザーによる直接測定濃度と、回帰式による算出濃度との相関係数はR=0.97であり、両者の間には高い相関性が認められる。
【0130】
このように、実施例2-1によれば、ヘモグロビン水溶液だけでなく、患者から提供された臨床検体についても、疑似嚢胞から取り出すことなく、即ち非侵襲的に、且つ高精度にヘモグロビン濃度を測定可能であることがわかった。
【0131】
実施例2-2
上記実施例2-1における実験により得られた測定結果から10回分の測定結果を除外した30回分の測定結果のうち、900nm及び968nmの2波長における吸光度から検量線を作成した。そして、この検量線に対し、除外された10回分の測定結果を適用することにより、ヘモグロビン濃度を算出した。図14は、ヘマトロジーアナライザーにより直接測定されたヘモグロビンの濃度(直接測定濃度)と、PLS解析から求められた検量線より算出されたヘモグロビンの測定濃度(算出濃度)との相関を示すグラフである。ヘマトロジーアナライザーによる直接測定濃度と、検量線による算出濃度との相関係数はR=0.92であり、両者の間には高い相関性が認められる。
【0132】
実施例3
(1)試料(模擬嚢胞)の作成
実施例1-1と同様に、0.0g/dL(純水のみ)、0.5g/dL、1.0g/dL、2.0g/dL、3.0g/dL、4.0g/dLの6通りに調整したヘモグロビン水溶液をポリスチレンキュベット(Biorad社製、内寸10mm×10mm×45mm)に封入して豚肉で巻くことにより、疑似嚢胞を作成した。肉の厚さを、5mm及び10mmの2通りとすることにより、計12通りの疑似嚢胞を用意した。
【0133】
(2)模擬嚢胞に対する光の照射及び吸光度の取得
超音波診断に使用される体腔用プローブ(経膣プローブ)を利用し、プローブの先端部に光ファイバを埋め込んだ実験用プローブを作成した。図15は、実施例3において使用されたプローブの先端部(ヘッド部)を模式的に示す平面図である。プローブ210のヘッド部の幅は21.8mmであり、ヘッド部の中央には超音波送受信部211が設けられている。このような体腔用プローブに対し、光源と接続された光ファイバ212及び分光器と接続された光ファイバ213を、各光ファイバ212,213の先端面がヘッド部の表面と同一面になるように取り付けた。光ファイバ212,213の中心間距離は18mmとした。
【0134】
このような実験用ブローブに対し、超音波診断における通常の手順と同様に、先端に超音波用ゼリー(ジェクス株式会社製)を塗布し、プローブカバー(不二ラテックス株式会社製)を被せた。なお、通常の手順に従ったのは、超音波用ゼリー及びプローブカバーによる光の減衰があっても光検出が可能か否かを検証するためである。
【0135】
この実験用プローブを光学ベンチに固定し、実施例1-1と同様に、試料台に疑似嚢胞を載せない状態で測定した光強度I0と、疑似嚢胞を載せた状態で測定した光強度I1とを取得した。そして、光強度I0及び光強度I1から、ランバート・ベールの法則に従って、各波長における吸光度を算出した。このような測定を、濃度6通り、肉厚2通りの疑似嚢胞に対して3回ずつ、トータルで36回行った。
【0136】
(3)回帰式の作成及び検証
上記測定により得られた36回分の測定結果(各回につき1025点の波長における吸光度)のうち、9回分の測定結果をランダムに抽出して除外し、残りの27回分の測定結果を用いて回帰分析を行うことにより、回帰式を取得した。回帰分析としては、実施例1-1と同様に、1025点の全ての波長における吸光度を説明変数、ヘマトロジーアナライザーで実測することにより得られたヘモグロビン濃度を応答変数とするPLS解析を行った。
【0137】
取得された回帰式に対し、除外された9回分の測定結果(同上)の各々を代入することにより、ヘモグロビン濃度を算出した。そして、回帰式に代入することにより算出されたヘモグロビン濃度と、ヘモグロビン水溶液をヘマトロジーアナライザーで直接測定することにより得られたヘモグロビン濃度との相関性を求めた。図16は、ヘマトロジーアナライザーにより直接測定されたヘモグロビンの濃度(直接測定濃度)と、回帰式により算出されたヘモグロビンの測定濃度(算出濃度)との相関を示すグラフである。ヘマトロジーアナライザーによる直接測定濃度と、回帰式による算出濃度との相関係数はR=0.89であり、両者の間には良好な相関性が認められる。
【0138】
このように、光学実験用の特殊な光ファイバホルダで測定光学系を構成しない場合であっても、体腔用プローブに光ファイバ等の光学系を搭載することにより、擬似嚢胞内の液体のヘモグロビン濃度を、非侵襲的に精度良く測定可能であることがわかった。また、超音波診断の際に使用される超音波用ゼリー及びプローブカバーを介した場合であっても、ヘモグロビン濃度の測定に十分な光量の光を検出できることが確認された。
【0139】
(第2の実施形態)
図17は、本発明の第2の実施形態に係る経膣プローブを模式的に示す側面図である。図18は、図17に示す経膣プローブの上面図である。図19は、図17のX矢視拡大図である。図20は、超音波画像と光の照射方向との関係を説明するための模式図である。
【0140】
図17図19に示す経膣プローブ300は、主に、子宮内膜症性卵巣嚢胞に保持された嚢胞液中のヘモグロビン濃度を測定するために使用されるプローブであり、被検体(患者)の生体組織に向けて超音波を送信すると共に、生体組織から反射された超音波エコーを受信する超音波送受信機能と、生体組織に向けて光を照射する機能と、生体組織から反射された反射光又は生体組織を透過した透過光を受光する機能とを有する。このような経膣プローブ300は、例えば、図5に示すヘモグロビン濃度測定システム10の本体110に接続されて使用され、ヘモグロビン濃度測定システムの一部を構成することができる。
【0141】
詳細には、経膣プローブ300は、経膣用の超音波プローブ310と、この超音波プローブ310への取り付け及び取り外しが可能な光送受信用のアタッチメント320とを備える。
【0142】
超音波プローブ310のうち、膣内に挿入される挿入部311の先端部には、生体組織に向けて超音波を送信すると共に、生体組織から反射された超音波エコーを受信する超音波送受信部312が設けられている。超音波送受信部312は、所定の並びで配列された複数の圧電振動子を用いて構成される。超音波送受信部312は、好ましくは、挿入部311の先端部から送信される超音波により生体組織をコンベックス状に走査する。超音波送受信部312は、ケーブル313を介して当該超音波プローブ310と接続される本体110から送信される駆動用の電気信号に基づいて超音波を発生すると共に、生体組織から反射された超音波エコーを受信してこれを電気信号(超音波受信信号)に変換し、ケーブル313を介して本体110に送信する。
【0143】
アタッチメント320は、挿入部311に被せられるホルダー321と、本体110の光源111に接続される送光用のライトガイドファイバ322と、ライトガイドファイバ322を介して伝送された光を被検体の生体組織に向けて照射する照射部323と、生体組織から反射された反射光又は生体組織を透過した透過光を受光する受光部324と、本体110の分光部112に接続され、受光部324が受光した光を分光部112に伝送する受光用のライトガイドファイバ325とを備える。照射部323及び受光部324、並びに、ライトガイドファイバ322,325の少なくとも一部は、ホルダー321に取り付けられている。
【0144】
ホルダー321は、例えばポリウレタンやポリエーテルエーテルケトン、ポリメチルメタクリレート、ポリイソプレン等の生体適合性を有する樹脂材料によって形成されている。ホルダー321の原料は被検体の安全性が担保される生体適合性を示すものであれば限定されず、材料の硬さ及び色は問わない。ホルダー321は、照射部323及び受光部324並びにライトガイドファイバ322,325の一部を挿入部311に固定すると共に、これらの光学部材が膣内において生体組織に直接接触することがないように保護する。さらに、ホルダー321は、照射部323及び受光部324の端面が超音波送受信部312の端面よりも突出することがないように、照射部323及び受光部324を保持する。
【0145】
照射部323は、例えば、送光用のライトガイドファイバ322の端部にフォーカスレンズ等の光学系を設けたものであり、光源から伝送される可視光から近赤外光のうち特定の波長成分を含む光を出射する。照射部323は、経膣プローブ300が膣内に挿入されたときに、所定の方向に位置する生体組織に向けて上記光を照射可能となるように、ホルダー321に取り付けられている。
【0146】
受光部324は、例えば、受光用のライトガイドファイバ325の端部に、光を集光するコレクタレンズ等の光学系を設けたものであり、可視光から近赤外光のうち特定の波長成分を含む光を受光する。受光部324は、経膣プローブ300が膣内に挿入されたときに、照射部323から出射した光が所定の方向に位置する生体組織により反射された反射光又は該生体組織を透過した透過光を受光可能となるように、ホルダー321に取り付けられている。
【0147】
照射部323及び受光部324は、ホルダー321が挿入部311に被せられたときに、超音波送受信部312に対して所定の位置関係となるような位置に設けられている。詳細には、照射部323は、図20に示すように、超音波送受信部312から送信される超音波の走査面と平行な方向に向けて光を出射するように設けられている。また、受光部324は、照射部323から出射し、生体組織により反射され又は生体組織を透過して上記走査面と平行な方向から伝搬する反射光又は透過光を受光可能となるように設けられている。それにより、超音波画像として表示される走査面上の生体組織に対して光を照射し、その反射光又は透過光を受光することが可能となる。ここで、本明細書において、超音波の走査面と平行とは、走査面に対して光の出射方向(言い換えると、照射部323に設けられた光学系の光軸の向き)又は光の伝搬方向(言い換えると、受光部324に設けられた光学系の光軸の向き)が完全に平行な状態に加え、被検体の体内において走査面と出射方向又は伝搬方向とが交差しない程度の略平行な範囲(例えば、走査面に対する角度が±5°程度以内)も含む。
【0148】
また、超音波送受信部312による超音波の走査方式がコンベックス式である場合、照射部323は、コンベックス状の走査面の中心における超音波の送信方向と平行な方向に向けて光が出射可能となるように設けられていても良い。それにより、超音波画像の走査方向における中心に位置する生体組織に対して光を照射することが可能となる。
【0149】
図19に示すように、照射部323及び受光部324は、超音波送受信部312を挟んで互いに反対側に位置するように配置されることが好ましい。また、照射部323及び受光部324は、照射部323の端面と受光部324の端面とを結んだラインが、超音波送受信部312から送信される超音波の走査方向に対して直交するように配置されることがより好ましい。さらには、照射部323の端面と受光部324の端面とを結んだラインが超音波の走査ラインの略中央を通るように、照射部323及び受光部324を配置されることが好ましい。このように照射部323及び受光部324を配置することにより、超音波の走査面に対して略平行、且つ、超音波の走査範囲の略中央となる方向に光を出射することができる。それにより、図20に示すように、超音波画像に写った卵巣嚢胞に向けて確実に光を照射できるようになり、卵巣嚢胞に保持された嚢胞液に関する情報を含む光信号を取得することが可能となる。
【0150】
ここで、超音波画像に写った生体組織に対して光を照射し、その反射光又は透過光を受光するという観点では、超音波送受信部312に対して照射部323及び受光部324をできるだけ近づけて配置することが好ましい。他方、照射部323と受光部324との間隔が近すぎると、照射部323から出射した光が生体内の組織に散乱されることにより生じる散乱光が受光部324に直接入射してしまい、受光部324が受光した光信号におけるSN比が低下してしまうおそれがある。この点に関し、図19に示すように、照射部323と受光部324との間に超音波送受信部312を挟むことにより、照射部323及び受光部324を超音波送受信部312に近づけつつ、照射部323と受光部324との間隔を開けることができるので、受光部324が受光した光信号におけるSN比の低下を抑制することが可能となる。
【0151】
照射部323と受光部324との中心間間隔は、概ね、10mm以上31mm以下とすることが好ましい。照射部323から出射した光の散乱光が受光部324に直接入射することを抑制するためには、中心間距離を10mm以上とすることが好ましい。ある程度の範囲では、中心間距離を長く取るほど、散乱光に起因するノイズを低減できる可能性がある。他方、中心間距離を長くすると、経膣プローブ300の先端部の寸法が大きくなり、被検体に対する使用が困難になるため、中心間距離を31mm以下とし、外寸をコンパクトに抑えることが好ましい。本実施形態のように、アタッチメント320を使用する場合には、経膣プローブ300の寸法を考慮し、中心間距離を20mm以上31mm以下とすることが好ましい。
【0152】
以上説明したように、本発明の第2の実施形態によれば、超音波送受信部と光照射部と受光部とが所定の位置関係で設けられた経膣プローブを用いることにより、超音波画像に対する光の出射方向を把握することができるので、ユーザは、超音波画像を観察しながら、卵巣嚢胞が存在する方向に向けて確実に光を照射することができる。従って、そのようにして照射された光の反射光に基づいて、卵巣嚢胞に保持された嚢胞液中のヘモグロビン濃度を、その場で非侵襲的に、且つ安定的に測定することが可能となる。
【0153】
また、本発明の第2の実施形態によれば、一般的な経膣用の超音波プローブ310に対してアタッチメント320を取り付けることにより、超音波画像を参照しながら嚢胞液中のヘモグロビン濃度を測定することができるプローブを、安価且つ手軽に実現することができる。
【0154】
実施例4
(1)試料(模擬嚢胞)の作成
実施例1-1と同様に、0.0g/dL(純水のみ)、0.5g/dL、1.0g/dL、2.0g/dL、3.0g/dL、4.0g/dLの6通りに調整したヘモグロビン水溶液を調整した。調整したヘモグロビン水溶液を後述するファントム模型に封入される被験試料とした。
【0155】
(2)模擬嚢胞に対する光の照射及び吸光度の取得
旧東芝メディカルシステムズ株式会社(現キヤノンメディカルシステムズ株式会社)製の経膣用の超音波プローブ(PVU-781VTE)に対し、上記第2の実施形態で説明したように、光の照射部及び受光部が設けられたアタッチメントを取り付けた経膣プローブを用意した。超音波プローブは超音波画像診断装置(Xario100s)に接続した。送光用のライトガイドファイバとしてはThorlbas社製の光ファイバ(型名:M29)を用い、受光用ライトガイドファイバも同じものを用いた。照射部の端面と受光部の端面との中心間距離は、30mmとした。光源(ハロゲンランプ)及び分光器については、実施例1-1と同じ機器を用いた。
【0156】
このような経膣プローブに対し、超音波診断における通常の手順と同様に、先端に超音波用ゼリー(ジェクス株式会社製)を塗布し、プローブカバー(不二ラテックス株式会社製)を被せた。なお、通常の手順に従ったのは、超音波用ゼリー及びプローブカバーによる光の減衰があっても光検出が可能か否かを検証するためである。
【0157】
子宮内膜症性卵巣嚢胞を模した卵巣部が設けられた女性生殖器のファントム模型を用意し、被験試料を封入した。ファントム模型には肥大した卵巣部が設けられており、卵巣部の内部に液体を封入することで超音波画像の取得と光学試験を同時に行うことができるようになっている。このようなファントム模型に対し、上記経膣プローブを腟部に挿入して測定した光強度I0と、卵巣部に試料を注入した状態で同様に測定した光強度I1とを取得した。そして、光強度I0及び光強度I1から、ランバート・ベールの法則に従って、各波長における吸光度を算出した。このような測定を、濃度6通り、肉厚2通りの疑似嚢胞に対して6回ずつ、トータルで72回行った。卵巣部は長軸50mm、短軸30mm程度の楕円球をしており、超音波画像を確認しながら卵巣部に光を当ててシグナルを取得した。
【0158】
(3)回帰式の作成及び検証
上記測定により得られた72回分の測定結果(各回につき1025点の波長における吸光度)のうち、15回分の測定結果をランダムに抽出して除外し、残りの57回分の測定結果を用いて回帰分析を行うことにより、回帰式を取得した。回帰分析としては、実施例1-1と同様に、1025点の全ての波長における吸光度を説明変数、ヘマトロジーアナライザーで実測することにより得られたヘモグロビン濃度を応答変数とするPLS解析を行った。
【0159】
取得された回帰式に対し、除外された15回分の測定結果(同上)の各々を代入することにより、ヘモグロビン濃度を算出した。そして、回帰式に代入することにより算出されたヘモグロビン濃度と、ヘモグロビン水溶液をヘマトロジーアナライザーで直接測定することにより得られたヘモグロビン濃度との相関性を求めた。図21は、ヘマトロジーアナライザーにより直接測定されたヘモグロビンの濃度(直接測定濃度)と、回帰式により算出されたヘモグロビンの測定濃度(算出濃度)との相関を示すグラフである。ヘマトロジーアナライザーによる直接測定濃度と、回帰式による算出濃度との相関係数はR=0.97であり、両者の間には非常に良好な相関性が認められる。
【0160】
ここで、上記1025波長を用いて解析を行った実施例1-1においては、照射部の端面と受光部の端面との中心間距離が18mm、相関係数Rが0.91であった。これに対し、本実施例4においては、中心間距離を長く取ったことにより、照射部の表面で散乱したノイズが受光部に直接入射することが抑制されたために、相関係数が向上したものと考えられる。
【0161】
本発明は、以上説明した第1及び第2の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、他の様々な形で実施することができる。例えば、上記第1及び第2の実施形態に示した全構成要素からいくつかの構成要素を除外して形成しても良いし、上記第1及び第2の実施形態に示した構成要素を適宜組み合わせて形成しても良い。
【符号の説明】
【0162】
10…ヘモグロビン濃度測定システム、100…プローブ、101,323…照射部、102,324…受光部、103,312…超音波送受信部、110…本体、111…光源、112…分光部、113…駆動信号発生部、114…超音波信号処理部、115…操作入力部、116…表示部、120…記憶部、121…プログラム記憶部、122…パラメータ記憶部、123…測定結果記憶部、130…制御部、131…光源制御部、132…吸光度取得部、133…濃度算出部、134…判定部、135…走査制御部、136…画像処理部、137…表示制御部、200…模擬嚢胞、201,202,212,213…光ファイバ、203…容器、204…暗箱、210…プローブ、211,312…超音波送受信部、300…経膣プローブ、310…超音波プローブ、311…挿入部、313…ケーブル、320…アタッチメント、321…ホルダー、322,325…ライトガイドファイバ
図1
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