(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】遮断装置
(51)【国際特許分類】
H01H 33/59 20060101AFI20220711BHJP
H01H 9/54 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
H01H33/59 B
H01H33/59 F
H01H9/54 A
(21)【出願番号】P 2018110301
(22)【出願日】2018-06-08
【審査請求日】2021-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 淳史
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-212879(JP,A)
【文献】国際公開第2011/034140(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 33/59
H01H 9/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の入力側端子と第1の負荷側端子との間に接続された第一の接点と、
第2の入力側端子と第2の負荷側端子との間に接続された第二の接点と、
を備え、
第一の接点には、開極時に生じるアークを半導体素子に転流させることで消弧可能な無アーク回路を、並設させた遮断装置であって、
閉極
により電流が流れていない状態から流れている状態にする時には第二の接点よりも先に第一の接点を閉じ
、
開極により電流が流れている状態から流れていない状態にする時には第二接点よりも先に第一の接点を開放させて、接点開放時に生じるアークを無アーク回路に転流させて消弧させた上で、第二の接点を開放させる遮断装置。
【請求項2】
各接点に設けられた可動接触子を動作させる機構部を接点毎に独立して設け、
各々の機構部は独立して動作可能である請求項1に記載の遮断装置。
【請求項3】
制御部が各々の機構部の動作を個別に制御する請求項2に記載の遮断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、接点に発生したアークを消弧するために半導体を用いることが知られている。このような消弧方法は二つの接点を備える回路においても使用されており、この場合、一方の接点に並設させるように半導体素子からなる無アーク回路を接続し、接点開放時に生じるアークを半導体素子に転入させる構造としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
ところで、
図9に示す開閉器のように、複数極の第一の接点111、第二の接点121を備えた遮断装置100を用いる場合には、遮断装置100の入力側端子100aには直流電源6が、出力側端子100bには負荷7が接続される。
この遮断装置100は、ハンドル200を操作して接点111、121の開閉操作を行うことを可能とするため、各接点111、121が筐体に形成されるハンドル200の操作に連動するように形成されている。この遮断装置100が通電状態の際に、ハンドル200を操作して接点111、121を開放するとアークが生じる。このアークを消弧するためには、無アーク回路131が接続される第1の接点111が先に開放し、次いで可動接触子121aの動作により第2の接点121が開放するように動作させる必要がある。一方、遮断装置100の接点の開極時に、ハンドル200に連結されている第1の接点111を第二の接点121より先に開放する構造とする場合には、遮断装置100の接点の閉極時には、第二の接点121が先に閉じた後に、次いで無アーク回路131を形成した第一の接点111が後に閉じる動作を行う形になる。この場合、
図9(a)のように、先に第二の接点121が閉じられることにより、無アーク回路131を形成した第一の接点111の両端のab間に電位差が生じた状態となる。この状態で
図9(b)のように、第一の接点111を開放状態から閉極する際に、接点の「バウンド」または「擦れ(すれ)」が発生すると、短い時間でON・OFFを繰り返すチャタリング等が発生する。チャタリングが発生すると、
図10に示すように、瞬間的に高い電圧にノイズが侵入し、無アーク回路131の半導体素子に定格電圧以上印加され、半導体素子が破壊される虞があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本件の発明者は、この点について鋭意検討することにより、解決を試みた。本発明の課題は、閉極時に接点に並設させた半導体素子にノイズが侵入しないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、第1の入力側端子と第1の負荷側端子との間に接続された第一の接点と、第2の入力側端子と第2の負荷側端子との間に接続された第二の接点と、を備え、第一の接点には、開極時に生じるアークを半導体素子に転流させることで消弧可能な無アーク回路を、並設させた遮断装置であって、閉極時には第二の接点よりも先に第一の接点を閉じる遮断装置とする。
【0007】
また、各接点に設けられた可動接触子を動作させる機構部を接点毎に独立して設け、各々の機構部は独立して動作可能である構成とすることが好ましい。
【0008】
また、制御部が各々の機構部の動作を個別に制御する構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、閉極時に接点に並設させた半導体素子にノイズが侵入しないようにすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】直流電源と負荷の間に設けられた開閉器において、第一の接点と第二の接点が開いた状態を示した図である。
【
図2】直流電源と負荷の間に設けられた開閉器において、第一の接点が閉じ、第二の接点が開いた状態を示した図である。
【
図3】直流電源と負荷の間に設けられた開閉器において、第一の接点と第二の接点が閉じた状態を示した図である。
【
図4】第一の接点と第二の接点を閉じるタイミングとab間の電圧との関係を示した図である。
【
図5】閉極時における第一の可動接触子と第二の可動接触子の動かし方を表す図である。ただし、(a)では第一の可動接触子と第二の可動接触子が開いた状態を示し、(b)では第一の可動接触子が閉じ、第二の可動接触子が開いた状態を示し、(c)では第一の可動接触子と第二の可動接触子が閉じた状態を示している。
【
図6】開極時における第一の可動接触子と第二の可動接触子の動かし方を表す図である。ただし、(d)では第一の可動接触子と第二の可動接触子が閉じた状態を示し、(e)では第一の可動接触子が開き、第二の可動接触子が閉じた状態を示し、(f)では第一の可動接触子と第二の可動接触子が開いた状態を示している。
【
図8】機構部操作片を備えた開閉器の斜視図である。
【
図9】直流電源と負荷の間に設けられた開閉器において、第一の接点が開き、第二の接点が閉じた状態から第一の接点を閉じる動かし方を示した図である。
【
図10】
図9に示す第一の接点と第二の接点を閉じるタイミングとab間の電圧との関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に発明を実施するための形態を示す。本実施形態の遮断装置1は、第1の入力側端子1a(1a-1)と第1の負荷側端子1b(1b-1)との間に接続された第一の接点11と、第2の入力側端子1a(1a-2)と第2の負荷側端子1b(1b-2)との間に接続された第二の接点21とを備えている。また、この遮断装置1の第一の接点11に、開極時に生じるアークを半導体素子に転流させることで消弧可能な無アーク回路31を並設させている。また、この遮断装置1は閉極時には第二の接点21よりも先に第一の接点11を閉じる。このため、閉極時に第一の接点11に並設させた半導体素子にノイズが侵入しないようにすることが可能となる。
【0012】
実施形態では遮断装置1を開閉器として説明する。本実施形態では、開閉器は直流電源6と負荷7との間に配置されている。詳しくは、遮断装置1の入力側端子1a-1、1a-2間には直流電源6が、出力側端子1b-1、1b-2間には負荷7が接続される。この開閉器は内部に複数極となる二つの接点を備えており、第一の接点11に並列するように無アーク回路31が設けられている。この無アーク回路31は半導体素子が備えられており、半導体素子の制御によって転流させたアークを消弧することができる。なお、半導体素子には金属酸化物半導体電界効果トランジスタなどを用いれば良い。
【0013】
本実施形態では、負荷7に電流が流れない状態から、負荷7に電流が流れる状態にする場合、開閉器の表面に形成したハンドル200を操作して、各接点は
図1に示す状態から
図2に示す状態を経て
図3に示す状態となる。つまり、第一の接点11と第二の接点21が開かれた状態から、閉極する場合、先ず可動接触子11aの動作で第一の接点11を閉じ、その後に可動接触子21aの動作で第二の接点21を閉じる。このようにすることにより、第一の接点11両端のab間に電位差が生じないようにできるため、閉極時にチャタリングによるノイズが無アーク回路31側に侵入する虞がない(
図4参照)。そして、負荷7に電流が流れる状態から開極する場合には、可動接触子11aの動作で第一の接点11を先に開放させて、接点開放時に生じるアークを無アーク回路31に転流させて消弧させた上で、可動接触子21aの動作で第二の接点22を開放させる。これによって、各接点がアークによって劣化することを防止できるものである。なお、
図1から
図3に示す例では、ハンドル200の操作に連動して各接点に設けられた可動接触子を動作させる機構部を接点毎に独立して設け、各々の機構部は独立して動作可能である。より具体的には、第一の機構部14により第一の接点11の第一の可動接触子12を動作させることが可能であるとともに、第一の機構部14とは独立して設けた第二の機構部24により第二の接点21の第二の可動接触子22を動作させることが可能である。このように、第一の機構部14、第二の機構部24を独立して形成するため、第一の接点11を閉極時に先に閉極することができ、開極時にも先に開極することが可能である。
【0014】
第一の接点11と第二の接点21をこのように動かすには、様々な手段が考えられるが、その一例を次に説明する。
図5に示す例では、各接点の開放を機械的な動作で制御する方法であって、第一の接点11に設けられた第一の可動接触子12と、第二の接点21に設けられた第二の可動接触子22が、異なるタイミングで閉じることができるようにしている。本実施形態では第一の被操作片16を動かすことで第一の可動接触子12を第一の固定接触子13と接続させることができ、第二の被操作片26を動かすことで第二の可動接触子22を第二の固定接触子(図示せず)と接続させることができる。
【0015】
第一の被操作片16と第二の被操作片26は各々独立して設けられ、独立して動作可能なものであるが、これらは図示しないハンドルの動作に連動する回動機構部32によって操作される。本実施形態では、回動可能な回動機構部32の回動軸から突出するように第一の操作片15と第二の操作片25が設けられている。第一の操作片15と第二の操作片25は、その突出方向がずれるように設けられており、一つの回動機構部32を回動させることにより、第一の被操作片16と第二の被操作片26の双方を順に移動させることができる。
【0016】
この際、第一の被操作片16を動かすことで押し上げられた第一の摺動機構部17により、第一の可動接触子12を回動させている。また、第二の被操作片26を動かすことで押し上げられた第二の摺動機構部27により、第二の可動接触子22を回動させている。なお、実施形態では、第一の固定接触子13に接圧が掛かり過ぎないようにするため、接圧用ばね33を設置し、回動機構部32から受ける力を吸収できるようにしている。
【0017】
本実施形態では、図示しないハンドルで開極操作した時には第二の接点21よりも先に第一の接点11を開くように構成している。
図5に示された回動機構部32を閉極時と逆方向に回動させると、第一の接点11が第二の接点21よりも後に開かれてしまう。そこで、
図6に示す例では、ハンドルでの開極操作した時に、回動機構部32を直進移動できるように構成した。回動機構部32を直進移動させることで、第一の被操作片16を支える状態を解除した後に第二の被操作片26を支える状態を解除できるようにしている。本実施形態では、第一の被操作片16の突出長さが第二の被操作片26の突出長さよりも短くなるように設けており、第一の接点11が第二の接点21よりも先に開きやすいようにしている。
【0018】
ところで、各接点に設けられた可動接触子を動作させる機構部を接点毎に独立して設ける場合において、各々の機構部が独立して動作可能とするのは、様々な手法で行うことが可能である。
図7及び
図8に示す例では、各接点の開放を通信による制御により行う方法であって、機構部を操作する機構部操作片34を設けている。また、開閉器には制御部35が連結されている。この制御部35は各々の機構部の動作を個別に制御することができる。より具体的には、この制御部35は各々の機構部の動作を個別に制御するように機構部操作片34を操作できるようにしている。なお、
図7及び
図8に示す例では、制御部35が複数設けられており、この制御部35同士が通信し、閉極時には第二の接点21よりも先に第一の接点11を閉じ、開極時には第二の接点21よりも先に第一の接点11を開くように制御している。なお、
図7及び
図8に示す例では第一の接点11、第二の接点21を別々の開閉器に形成し、それぞれの開閉器に制御部35が連結されているものである。複数の接点は開閉器内に設けてあっても良いし、別々の開閉器に形成するものであっても良いものである。
【0019】
以上、実施形態を例に挙げて本発明について説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、各種の態様とすることが可能である。例えば、遮断装置は開閉器ではなくブレーカとすることも可能である。
【0020】
また、接点は二つではなく三つ以上とすることも可能である。この場合、閉極時には第一の接点が一番最初に閉じられるようにすればよい。また、開極時には第一の接点が一番最後に開かれるようにすることが好ましい。
【符号の説明】
【0021】
1 遮断装置
11 第一の接点
12 第一の可動接触子
14 第一の機構部
21 第二の接点
22 第二の可動接触子
24 第二の機構部
31 無アーク回路
35 制御部