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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】適応等化器および搬送波再生回路
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/005 20060101AFI20220711BHJP
   H04L 27/01 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
H04B7/005
H04L27/01
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018175345
(22)【出願日】2018-09-19
(65)【公開番号】P2020048084
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 康英
【審査官】佐藤 敬介
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-074314(JP,A)
【文献】特開2015-115771(JP,A)
【文献】特開2000-138722(JP,A)
【文献】特開平05-244040(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/005
H04L 27/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号の周波数特性を補償する適応等化部と、
複素平面上に配置された理想点と前記適応等化部の出力信号との誤差に基づくアルゴリズムで、前記適応等化部に対するタップ係数を更新するタップ更新部と、
を備え、前記タップ更新部は、前記適応等化部の出力信号の位相雑音が所定状態よりも大きい場合、前記複素平面上の原点を中心にして前記適応等化部の出力信号を回転させて、前記適応等化部の出力信号に最も近い前記理想点を選定し、該選定した理想点と前記適応等化部の出力信号との誤差に基づいて前記タップ係数を更新する、
ことを特徴とする適応等化器。
【請求項2】
入力信号の位相を回転する第1の位相回転器と、
前記第1の位相回転器によって位相が回転された入力信号である位相回転信号の周波数特性を補償する、請求項1に記載の適応等化器と、
前記適応等化器によって補償された位相回転信号に含まれる位相誤差を検出する位相誤差検出器と、
前記位相誤差に基づいて位相回転制御信号を生成する回転信号生成部と、
前記位相回転制御信号に基づいて前記入力信号の位相を回転する第2の位相回転器と、
を備え、前記第1の位相回転器は、前記位相回転制御信号に基づいて前記入力信号の位相を回転する、
ことを特徴とする搬送波再生回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル無線伝送において搬送波・受信波を再生するのに使用される適応等化器および、この適応等化器を備えた搬送波再生回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線トラフィックが増々増加しており、周波数利用の高効率化の観点からデジタル無線伝送においては、高多値QAM(Quadrature Amplitude Modulation、直角位相振幅変調)方式による高速伝送の要求が高まっている。この高多値QAM方式では、送信装置や受信装置において生じる搬送波の位相ノイズ(位相誤差)などによって、復調性能が劣化する場合がある。このため、位相ノイズと熱雑音の影響度に基づいて復調性能(ビット誤り率)を向上させる、という搬送波再生回路が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この搬送波再生回路は、位相誤差検出器が検出する位相誤差と振幅誤差検出器が検出する振幅誤差とに基づいて、ループフィルタ制御部がループフィルタの帯域幅を制御することで、位相ノイズや熱雑音に応じた適切な帯域幅に設定し、復調性能を向上させる、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-101177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、熱雑音のみが存在する場合、C/N(搬送波対雑音比)が高いと図7(a)に示すように、理想点Rを中心とする小円状の信号分布領域が存在し、C/Nが低いと図7(b)に示すように、理想点Rを中心とする大円状の信号分布領域が存在する。さらに、熱雑音と位相雑音とが存在する場合、図8に示すように、理想点Rを中心とする円状の熱雑音分布領域が存在するとともに、複素平面上の原点Cを中心とする円弧状で理想点Rを通る位相雑音分布領域が存在する。
【0006】
また、高多値化変調においては、搬送波・キャリア再生の位相誤差検出範囲が著しく狭くなる。すなわち、低多値の場合には、隣接する理想点間の距離が大きいため位相誤差検出範囲が広いが、高多値の場合には、隣接する理想点間の距離が小さいため位相誤差検出範囲が狭くなる。そして、位相誤差検出範囲が著しく狭くなるため、位相ノイズ環境下で図9に示すような位相ジッタ(位相の揺らぎ)が増加し、搬送波再生の同期外れに至る可能性がある。
【0007】
すなわち、単に適応等化器の出力信号Sに最も近い理想点Rを基準にすると、例えば、図9に示す複素平面上の原点Cから遠く位相回転の影響が大きい領域において、信号点S(図中四角い破線で囲まれた黒丸、出力信号)に対して誤った理想点Rを基準にしてタップ係数を更新してしまい、意図しない信号点配置に収束する事象が生じてしまう。一方、特許文献1に記載の搬送波再生回路では、熱雑音の軽減を優先するか、位相ノイズの軽減を優先するかによって、高多値時の搬送波再生ループの諸元を切り替えるものであり、高多値化に伴う位相誤差検出範囲の低下による不安定動作については考慮されていない。
【0008】
そこで本発明は、高多値においても安定した高い復調性能を実現可能にする、適応等化器およびこれを備えた搬送波再生回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、入力信号の周波数特性を補償する適応等化部と、複素平面上に配置された理想点と前記適応等化部の出力信号との誤差に基づくアルゴリズムで、前記適応等化部に対するタップ係数を更新するタップ更新部と、を備え、前記タップ更新部は、前記適応等化部の出力信号の位相雑音が所定状態よりも大きい場合、前記複素平面上の原点を中心にして前記適応等化部の出力信号を回転させて、前記適応等化部の出力信号に最も近い前記理想点を選定し、該選定した理想点と前記適応等化部の出力信号との誤差に基づいて前記タップ係数を更新する、ことを特徴とする適応等化器である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、入力信号の位相を回転する第1の位相回転器と、前記第1の位相回転器によって位相が回転された入力信号である位相回転信号の周波数特性を補償する、請求項1に記載の適応等化器と、前記適応等化器によって補償された位相回転信号に含まれる位相誤差を検出する位相誤差検出器と、前記位相誤差に基づいて位相回転制御信号を生成する回転信号生成部と、前記位相回転制御信号に基づいて前記入力信号の位相を回転する第2の位相回転器と、を備え、前記第1の位相回転器は、前記位相回転制御信号に基づいて前記入力信号の位相を回転する、ことを特徴とする搬送波再生回路である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、適応等化部の出力信号の位相雑音が所定状態よりも大きい場合、複素平面上の原点を中心にして適応等化部の出力信号を回転させて、適応等化部の出力信号に最も近い理想点を選定する。つまり、位相雑音(位相ジッタ)が大きいときには、単に適応等化部の出力信号に最も近い理想点を選定するのではなく、出力信号を回転させて対応する理想点を選定するため、正しい理想点を選定することが可能となる。そして、この正しい理想点と適応等化部の出力信号との誤差に基づいてタップ係数を更新することで、適応等化器から安定した出力を得ることが可能となる。この結果、高多値においても高精度かつ安定した復調性能・搬送波再生を実現することが可能となる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、適応等化器で周波数特性が補償された位相回転信号の位相誤差に基づいて、位相回転制御信号が生成され入力信号の位相が回転されるため、フェージングによる波形歪がある場合でも、搬送波の位相ノイズを高精度に推定して高い復調性能・搬送波再生を実現することが可能となる。しかも、上記のように、安定した適応等化器出力が得られるため、より高精度かつ安定した復調性能・搬送波再生を実現することが可能となる。さらに、適応等化器で位相回転信号の周波数特性が補償されるため、熱雑音の影響も軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この発明の実施の形態に係る搬送波再生回路を示す概略構成ブロック図である。
図2図1の搬送波再生回路を備えるマイクロ波無線システムを示す概略構成図である。
図3図1の搬送波再生回路の適応等化器を示す概略構成ブロック図である。
図4図3の適応等化器のC/N推定部によって、位相雑音の大きさを推定する方法を説明するための図である。
図5図3の適応等化器の回転部によって、理想点を選定する方法を説明するための図である。
図6図3の適応等化器の回転部によって、位相回転の影響が大きい領域で選定された理想点を示す図である。
図7】熱雑音のみが存在する場合における、C/Nが高い際の信号分布領域(a)とC/Nが低い際の信号分布領域(b)を示す図である。
図8】熱雑音と位相雑音とが存在する場合における、熱雑音分布領域と位相雑音分布領域を示す図である。
図9】位相回転の影響が大きい領域において、信号点に対して誤った理想点を基準にしてしまう場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0015】
図1図6は、この発明の実施の形態を示し、図3は、この実施の形態に係る適応等化器3を示す概略構成ブロック図であり、図1は、この適応等化器3を備える搬送波再生回路1を示す概略構成ブロック図である。この搬送波再生回路1は、デジタル無線伝送において搬送波を再生する回路であり、図2に示すマイクロ波無線システムの受信装置102に設けられている。ここで、マイクロ波無線システムについてまず簡単に説明すると、送信装置101においてマッピングおよび変調された送信信号がアナログ変換され、搬送波W1で乗算されてアンテナから送信される。そして、マルチパスフェージング環境を経て受信装置102のアンテナで受信されると、搬送波W2で乗算され、周波数変換されたのち、ADCでデジタル変換され、搬送波再生回路1で復調されてデマッピングされるものである。
【0016】
搬送波再生回路1は、主として、第1の位相回転器2と、適応等化器3と、位相誤差検出器4と、LPF5と、NCO(回転信号生成部)6と、第2の位相回転器7と、等化器8と、を備える。
【0017】
第1の位相回転器2は、入力信号の位相を回転する回転器・乗算器であり、後述するNCO6の位相回転制御信号に基づいて入力信号の位相を回転する。具体的には、デジタル信号に変換されたIチャネルのベースバンド信号およびQチャネルのベースバンド信号の各々に対して、NCO6の位相回転制御信号の正弦波および余弦波に基づいて位相回転を行うものである。
【0018】
適応等化器3は、第1の位相回転器2によって位相が回転された入力信号である位相回転信号の周波数特性を補償する、つまり、位相回転信号の波形歪やデータ誤りを解消する等化器である。ここで、適応等化器3は、判定帰還型等化器(DFE:Decision Feedback Equalizer)や線形等化器で構成され、後述するようにして、タップ係数を更新するようになっている。
【0019】
位相誤差検出器4は、適応等化器3によって補償された位相回転信号に含まれる位相誤差を検出する検出器である。具体的な検出方法は周知の技術であり、例えば、送受信装置101、102間で用いられる変調方式の信号点配列のなかから、出力信号に応じた信号点を選択し、選択した信号点の座標と入力信号点の座標とを比較して、位相誤差値を算出する。
【0020】
LPF5は、位相誤差検出器4で検出された位相誤差の高周波成分を、所定の帯域幅に応じて除去するフィルタであり、ローパスフィルタ(Low Pass Filter)で構成されている。
【0021】
NCO6は、LPF5で高周波成分が除去された位相誤差に基づいて、位相回転制御信号を生成する生成部であり、NCO(Numerically Controlled Oscillator、数値制御発振器)で構成されている。具体的には、LPF5からの位相誤差に基づいて逆位相の正弦波および余弦波を生成し、第1の位相回転器2に出力することで、第1の位相回転器2による位相回転を制御するものである。さらに、生成した位相回転制御信号を第2の位相回転器7に出力する。
【0022】
第2の位相回転器7は、入力信号の位相を回転する回転器・乗算器であり、NCO6からの位相回転制御信号に基づいて入力信号の位相を回転して、周波数特性を補償する等化器8に出力する。すなわち、適応等化器3によって周波数特性補償(波形歪等が解消)されて検出された位相誤差に基づくNCO6からの正弦波および余弦波に基づいて、入力信号の位相を回転する。このように、搬送波再生ループ(第1の位相回転器2、位相誤差検出器4、LPF5およびNCO6のループ)のなかに適応等化器3が実装されており、これにより、周波数特性を補償した後に推定した位相誤差値に基づいて、入力信号の位相ノイズをキャンセルする。
【0023】
次に、適応等化器3におけるタップ係数の更新方法について説明する。適応等化器3は、図3に示すように、入力信号の周波数特性を補償する適応等化部(等化器本体、フィルタ)31と、適応等化部31に対するタップ係数を更新するタップ更新部32と、を備える。
【0024】
タップ更新部32は、複素平面上に配置された理想点(基準信号)Rと適応等化部31の出力信号Sとの誤差に基づくアルゴリズム(判定指向アルゴリズム)で、適応等化部31に対するタップ係数を更新する(先のタップ係数を更新する)更新部である。すなわち、最小平均二乗誤差(MMSE:Minimum Mean Square Error)を規範とする判定指向アルゴリズムを利用して、出力信号Sと理想点Rとの誤差電力が最小になるようにタップ係数を算出、更新するものであり、判定指向アルゴリズムとして、LMS(Least Mean Square)アルゴリズムやRLS(Recursive Least Square)アルゴリズムが採用される。
【0025】
この際、平常時は、所定の等間隔で格子状に配置された理想点Rのなかから、単に適応等化部31の出力信号Sに最も近い理想点Rを選定し、この理想点Rと出力信号Sとの誤差に基づいてタップ係数を更新する。一方、適応等化部31の出力信号Sの位相雑音が所定状態よりも大きい場合、複素平面上の原点Cを中心にして適応等化部31の出力信号Sを回転させて、適応等化部31の出力信号Sに最も近い理想点Rを選定し、該選定した理想点Rと適応等化部31の出力信号Sとの誤差に基づいてタップ係数を更新する。
【0026】
具体的には、まず、適応等化部31の出力信号Sの位相雑音が所定状態よりも大きいか否かを判定する。この実施の形態では、位相雑音が所定状態よりも大きいとは、位相雑音レベルが熱雑音レベルよりも大きい場合であり、C/N推定部321で推定するC/Nによって判断する。すなわち、図4に示すように、複素平面上の原点Cの周辺(領域C1内)においては位相雑音による位相回転の影響(回転移動量)が小さく、この領域C1内の出力信号Sを利用してC/Nを推定する。そして、C/Nが所定値以上の場合(熱雑音が小さい場合)には位相雑音が所定状態よりも大きいと判断し、C/Nが所定値よりも小さい場合(熱雑音が大きい場合)には位相雑音が所定状態よりも大きくないと判断する。
【0027】
ここで、所定値は、C/Nによって位相雑音レベルが熱雑音レベルよりも大きいと判断できる値に設定されており、レベル差が1.5倍、2倍などになるように所定値を設定してもよい。そして、このようにして判断した判断結果、つまり、出力信号Sの位相雑音が所定状態よりも大きいか否かを切替スイッチ323に入力する。
【0028】
次に、回転部322において、複素平面上の原点Cを中心にして適応等化部31の出力信号Sを回転させて、適応等化部31の出力信号Sに最も近い理想点Rを選定する。すなわち、図5に示すように、複素平面上の原点Cを中心に、時計回りおよび反時計回りに出力信号Sを回転させて、最も小さい回転角で出力信号Sが最接近する理想点Rを選定する。例えば、図5に示す第1の出力信号S1の場合、時計回りに回転させた際に最も小さい回転角で最接近する第1の理想点R1を選定する。
【0029】
このように、この実施の形態では、回転部322において出力信号Sを回転させて出力信号Sに最も近い理想点Rを選定しているが、次のようにしてもよい。すなわち、回転部322においては、各出力信号Sがそれぞれ理想点Rに最接近するのに要する回転方向と回転角を算出し、後述する判定部324においてこの回転角だけ出力信号Sを回転させて理想点を選定するようにしてもよい。
【0030】
一方、切替スイッチ323は、適応等化部31の出力信号Sと理想点Rをそのまま判定部324に入力するか、回転部322で選定した理想点Rと出力信号Sを判定部324に入力するかを切替自在になっている。すなわち、C/N推定部321による判断結果に基づいて、平常時は出力信号Sと理想点Rをそのまま判定部324に入力し、出力信号Sの位相雑音が所定状態よりも大きい場合には、回転部322で選定した理想点Rと出力信号Sを判定部324に入力する。
【0031】
次に、判定部324は、入力された出力信号Sと理想点Rとのタップ更新用誤差に基づいてタップ係数を更新する。この結果、平常時つまり出力信号Sの位相雑音が小さい場合には、格子状に配置された理想点Rのなかで単に出力信号Sに最も近い理想点Rと、出力信号Sとの誤差に基づいてタップ係数を更新する。一方、出力信号Sの位相雑音が大きい場合には、回転部322によって出力信号Sを回転させて選定された理想点Rと、出力信号Sとの誤差に基づいてタップ係数を更新する。そして、このようにして更新したタップ係数を適応等化部31に入力する。
【0032】
以上のように、この適応等化器3によれば、適応等化部31の出力信号Sの位相雑音が所定状態よりも大きい場合、複素平面上の原点Cを中心にして適応等化部31の出力信号Sを回転させて、適応等化部31の出力信号Sに最も近い理想点Rを選定する。つまり、位相雑音(位相ジッタ)が大きいときには、単に適応等化部31の出力信号Sに最も近い理想点Rを選定するのではなく、出力信号Sを回転させて対応する理想点Rを選定するため、正しい理想点Rを選定することが可能となる。例えば、図6に示すように、複素平面上の原点Cから遠く位相回転の影響が大きい領域においても、図9の場合とは異なり、正しい理想点Rを選定することができる。そして、この正しい理想点Rと適応等化部31の出力信号Sとのタップ更新用誤差に基づいてタップ係数を更新することで、適応等化器3から安定した出力を得ることが可能となる。この結果、高多値においても高精度かつ安定した復調性能・搬送波再生を実現することが可能となる。
【0033】
また、この搬送波再生回路1によれば、適応等化器3で周波数特性が補償(波形歪等が解消)された位相回転信号の位相誤差に基づいて、位相回転制御信号が生成され入力信号の位相が回転されるため、フェージングによる波形歪がある場合でも、搬送波の位相ノイズを高精度に推定(位相誤差検出器4で検出)して高い復調性能・搬送波再生を実現することが可能となる。しかも、上記のように、安定した適応等化器出力が得られるため、より高精度かつ安定した復調性能・搬送波再生を実現することが可能となる。さらに、適応等化器3で位相回転信号の周波数特性が補償されるため、熱雑音の影響も軽減することが可能となる。
【0034】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、予め常に回転部322において出力信号Sを回転させて理想点Rを選定しているが、C/N推定部321によって位相雑音が所定状態よりも大きいと判断された場合にのみ、回転部322で理想点Rを選定して判断部324に入力してもよい。
【0035】
1 搬送波再生回路
2 第1の位相回転器
3 適応等化器
31 適応等化部
32 タップ更新部
321 C/N推定部
322 回転部
323 切替スイッチ
324 判定部
4 位相誤差検出器
5 LPF
6 NCO(回転信号生成部)
7 第2の位相回転器
8 等化器
S 出力信号(信号点)
R 理想点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9