(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】プロピレンの気相重合方法
(51)【国際特許分類】
C08F 2/34 20060101AFI20220711BHJP
C08F 4/76 20060101ALI20220711BHJP
C08F 10/06 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
C08F2/34
C08F4/76
C08F10/06
(21)【出願番号】P 2018505452
(86)(22)【出願日】2016-08-03
(86)【国際出願番号】 EP2016068555
(87)【国際公開番号】W WO2017021454
(87)【国際公開日】2017-02-09
【審査請求日】2018-02-01
【審判番号】
【審判請求日】2020-05-22
(32)【優先日】2015-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513076604
【氏名又は名称】バーゼル・ポリオレフィン・イタリア・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ジャンピエロ・モリーニ
(72)【発明者】
【氏名】マッシモ・コベッツィ
(72)【発明者】
【氏名】ティジアナ・ダロッコ
(72)【発明者】
【氏名】ダリオ・リグオーリ
(72)【発明者】
【氏名】ファブリッツィオ・ピエモンテージ
(72)【発明者】
【氏名】ジアンニ・ヴィタール
【合議体】
【審判長】杉江 渉
【審判官】福井 悟
【審判官】土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-500697(JP,A)
【文献】特表2011-508037(JP,A)
【文献】特表2010-514905(JP,A)
【文献】特表2011-507989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F2/00
C08F4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)Mg、Ti、ハロゲン、1,3-ジエーテル
である電子供与体及びオレフィン重合体を含む固体触媒成分;
(b)アルミニウムアルキル化合物及び
(c)ケイ素化合物
である外部電子供与体化合物;を含み、前記成分(b)及び(c)は、Al/(
外部電子供与体化合物)モル比が2~200の範囲になる量で使用される、触媒システムの存在下で実施される、プロピレンと他のオレフィンとの単独重合または共重合のための、気相方法であって、
固体触媒成分(a)のオレフィン重合体の含有量は、固体触媒成分の総重量の10~85%範囲であり、
固体触媒成分(a)の1,3-ジエーテル/Mgモル比は、0.030~0.150の範囲であり、及びMg/Tiモル比は、5~8の範囲であり、
前記外部供与体化合物が、式
R
5
a
R
6
b
Si(OR
7)
cのケイ素化合物から選択され、ここで、a及びbは0~2の整数であり、cは1~3の整数であり、合計(a+b+c)は4であり;R
5、R
6及びR
7は場合によりN、O、ハロゲン及びPから選択されたヘテロ原子を含有する、炭素数1~18個のアルキル、シクロアルキルまたはアリール
基であ
り、
且つ
前記アルミニウムアルキル化合物が、Al/Tiモル比が49~400の範囲になる量で使用される、
ことを特徴とする気相方法。
【請求項2】
前記1,3-ジエーテルは
、式(I)の化合物である、請求項1に記載の気相方法。
【化1】
前記の式において、R
I及びR
IIは、同じかまたは異なり、水素または1つ以上の環状構造を形成することができる直鎖状または分岐鎖状C
1-C
18炭化水素基であり;R
III基は、互いに同じかまたは異なり、水素またはC
1-C
18炭化水素基であり;R
IV基は、互いに同じかまたは異なり、これらが水素であることができないことを除いて、R
IIIと同じ意味を有し、R
I~R
IV基の各々は、ハロゲン、N、O、S及びSiから選択されたヘテロ原子を含むことができる。
【請求項3】
前記1、3-ジエーテルは、式(III)のものの中から選択される、請求項1に記載の方法。
【化2】
前記の式において、同じかまたは異なるR
VI
基は水素;ハロゲ
ン;直鎖状または分枝鎖状のC
1-C
20アルキル
基;炭素原子または水素原子または両方の置換基として、場合により、N、O、S、P、Si及びハロゲ
ンからなる群から選択された1つ以上のヘテロ原子を含有する、C
3-C
20シクロアルキル、C
6-C
20アリール、C
7-C
20アルキルアリール及びC
7-C
20アラルキル
基であり;前記
基R
III及びR
IVは、請求項2において定義された通りである。
【請求項4】
オレフィン重合体の重量は、固体触媒成分(a)の総重量の15~75%の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
気相流動床反応器中で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
気相機械的撹拌床反応器中で実施される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、場合によって他のオレフィンと混合する、プロピレンの気相重合方法に関する。特に、本発明は、特定の触媒システムの存在下で実施されるプロピレンの気相重合方法に関する。さらに、本発明は、自己消火性プロピレン気相重合工程を生成するための特定の触媒システムの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
高収率で、元素周期律表のIV族、V族またはVI族に属する遷移金属化合物及びアルミニウムアルキル化合物から得られた触媒の存在下で、流動床または機械的撹拌床反応器内で気相中で実施され、アイソタクチックポリプロピレンが25℃でキシレンに95重量%超の不溶性である、プロピレンの重合方法が知られている。
【0003】
前記重合体は、触媒の形態によって多かれ少なかれ規則的な形態を有する顆粒の形態で得られる;顆粒の寸法は、触媒粒子の元の寸法及び反応条件に依存し、一般に平均値の周りに分布される。
【0004】
これらのタイプの工程では、反応器の内部に設置された熱交換器または反応ガスの再循環ラインによって反応熱を除去する。
【0005】
このタイプの重合工程における一般に遭遇する問題点は、既に存在する触媒微粒子から生成されるか、または触媒自体の破壊から生成される非常に微細な重合体の粒子の存在に起因する。
【0006】
これらの微粒子は、反応器の内壁及び熱交換器の内壁に沈着されるか、静電気的に付着する傾向があり、その結果、これらの微粒子は、重合によってサイズが増加し、絶縁効果及び低い熱伝達を引き起こして反応器内にホットスポット(hot spot)を形成するようになる。
【0007】
これらの効果は、アルミニウムアルキルと活性形態のマグネシウムハライド上に担持されたチタン化合物との反応生成物を含むものなどの高活性触媒の存在下で気相アルファ-オレフィン重合工程を実施する場合に増強される。
【0008】
その結果、流動化効率及び均質性の損失が一般に生じる;例えば、触媒供給中断が起こるだけでなく、重合体排出システムの目詰まりが起こり得る;さらに、過度な温度は、粒子の溶解をもたらし、反応器の壁に付着する薄い凝集物層を形成し、またガス分配プレートを詰まらせる凝集物の形成をもたらすことができる。
【0009】
これらの欠点は、加工再現性を落とし、比較的短時間の後でも反応器の内部に形成された沈着物をと除去するために、実行を強制に中断させる可能性もある。
【0010】
触媒破砕の程度を減少させるために、触媒は、主重合工程の初期段階で触媒が破壊される傾向を低下させると考えられる穏やかな条件下で実施される予備重合段階を経ることができる。典型的には、予備重合段階は、主重合セクションに直接接続されたプラント部分で実施され、製造された予備重合体が主重合反応器(すなわち、プレポリインライン(prepoly in-line)とも呼ばれる)に直接供給され、比較的高い単量体転化率(50~2000g重合体/g触媒)を特徴とする。或いは、これは専用セクションで実施することができ、また生産された予備重合体は、今後の使用のために貯蔵される。この後者の場合、単量体転化率(0.1~50g重合体/g触媒)のより低い値が可能である。しかしながら、両方の場合において、予備重合が不適切な触媒破砕の程度を減少させることができるが、元の触媒に既に存在しているためであるか、触媒破砕によって生成されたためであるか、いかなる方式においても存在する微細触媒粒子に由来する、重合活性の悪影響を減少させる効果はない。
【0011】
これらの欠点を回避するために提案された解決策は、触媒活性を低下させるかまたは消すか、または静電気電圧を減少または除去するかのいずれかを含む。
【0012】
特許出願EP-359444号には、オレフィン重合速度を減少させるために、重合阻害剤または触媒を被毒することができる物質から選択された少量(一般に、重合混合物に対して0.1ppm未満)の遅延剤を重合反応器に導入することを記載している。しかし、同一特許出願に記載されたように、遅延剤を多量に使用すると、重合体のメルトインデックス、メルトフロー比及び/または立体規則性のように生成された重合体の品質及び特性の両方に悪影響を及ぼすだけでなく、工程の効率性を減少させる。
【0013】
米国特許第4,739,015号には、異相(heterophasic)プロピレン重合体を製造する方法において、凝集物の形成及び反応器汚染を防止するために、ガス状生成物を含有する酸素及び活性水素を含有する液体または固体化合物を使用する方法が記載されている。活性水素を含有する化合物としては、エタノール、メタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール及びジエチレングリコールが挙げられる。
【0014】
重合阻害剤として知られているこれらの化合物は、触媒を不活性化させないためには重合体に対して数ppmの量で使用するべきであり;このような濃度では、これらは微細触媒粒子の選択的不活性化に対して効果的ではなく、より高い濃度では重合が起こらない。
【0015】
WO2005/030815号、WO2011/084628号のようないくつかの文献などは、選択性調節剤(SCA)及びいわゆる活性制限剤(ALA)を含む混合外部電子供与体システムの存在下でスラリーまたは気相のいずれかでプロピレンの重合を実施することを提案している。前記SCAがアルキル-アルコキシシランであり得るが、前記ALAは、典型的にモノカルボキシリックまたはポリカルボキシリック脂肪酸のエステルの中から選択される。前記ALAは、温度が閾値以上に上昇する結果として触媒活性の大幅な減少を含む自己消火性を提供すべきである。しかしながら、効果的な自己消化特性は、SCAが唯一の供与体である場合に使用されるものよりも高い総SCA+ALA/Ti比を誘導する相当量のALAが使用される場合にのみ達成される。その結果、また基本触媒活性、すなわち閾値(約70℃)未満の活性が低下する。一方、より高い基本触媒活性を保障する総SCA+ALA/Ti比に到達するためにSCAの量を下げることは、多くの応用分野に不十分な立体規則性を有するポリプロピレンの製造を伴うだろう。
【0016】
従って、触媒及び/または良好な形態学的性質、高い立体規則性を有するポリプロピレン生成物を生成することができ、また微細な触媒粒子重合による悪影響を選択的に解決または緩和することができるように自己消火性を示すことができる触媒及び/または条件で実施される気相重合方法の必要性が感じられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
従って、本発明の目的は、
(a)固体触媒成分の総重量の10~85%範囲の量でMg、Ti、ハロゲン、1.3-ジエーテルから選択された電子供与体及びオレフィン重合体を含む固体触媒成分;
(b)アルミニウムアルキル化合物及び
(c)ケイ素化合物、エーテル、エステル、アミン、複素環化合物、ケトン及びこれらの任意の混合物から選択された外部電子供与体化合物(ED);を含み、前記成分(b)及び(c)は、Al/(ED)モル比が2~200の範囲になる量で使用される、触媒システムの存在下で実施される、プロピレンと他のオレフィンとの単独重合または共重合のための気相方法である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
好ましくは、固体触媒成分は、10~100μm、より好ましくは20~80μm範囲の平均粒子サイズを有する。
【0019】
前記言及された1,3-ジエーテルの中で、下記の式(I)の化合物が特に好ましい。
【0020】
【0021】
前記の式において、RI及びRIIは、同じかまたは異なり、水素または1つ以上の環状構造を形成することができる直鎖状または分岐鎖状C1-C18炭化水素基であり;RIII基は、互いに同じかまたは異なり、水素またはC1-C18炭化水素基であり;RIV基などは、互いに同じかまたは異なり、これらが水素であることができないことを除いて、RIIIと同じ意味を有し;RI~RIV基の各々は、ハロゲン、N、O、S及びSiから選択されたヘテロ原子を含むことができる。
【0022】
好ましくは、RIVは、1~6個の炭素原子を有するアルキルラジカル、より特にメチルである一方RIIIラジカルは好ましくは水素である。また、RIがメチル、エチル、プロピル、またはイソプロピルである場合、RIIはエチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、イソペンチル、2-エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、フェニルまたはベンジルであり得る;RIが水素である場合、RIIはエチル、ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、2-エチルヘキシル、シクロヘキシルエチル、ジフェニルメチル、p-クロロフェニル、1-ナフチル、1-デカヒドロナフチルであり得る;RI及びRIIは、また同じであることができ、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ネオペンチル、フェニル、ベンジル、シクロヘキシル、シクロペンチルであり得る。
【0023】
有利に使用することができるエーテルの具体例には、2-(2-エチルヘキシル)1、3-ジメトキシプロパン、2-イソプロピル-1、3-ジメトキシプロパン、2-ブチル-1、3-ジメトキシプロパン、2-sec-ブチル-1、3-ジメトキシプロパン、2-シクロヘキシル-1、3-ジメトキシプロパン、2-フェニル-1、3-ジメトキシプロパン、2-tert-ブチル-1、3-ジメトキシプロパン、2-クミル-1、3-ジメトキシプロパン、2-(2-フェニルエチル)-1、3-ジメトキシプロパン、2-(2-シクロヘキシルエチル)-1、3-ジメトキシプロパン、2-(p-クロロフェニル)-1、3-ジメトキシプロパン、2-(ジフェニルメチル)-1、3-ジメトキシプロパン、2(1-ナフチル)-1、3-ジメトキシプロパン、2(p-フルオロフェニル)-1、3-ジメトキシプロパン、2(1-デカヒドロナフチル)-1、3-ジメトキシプロパン、2(p-tert-ブチルフェニル)-1、3-ジメトキシプロパン、2、2-ジシクロヘキシル-1、3-ジメトキシプロパン、2,2-ジエチル-1、3-ジメトキシプロパン、2、2-ジプロピル-1、3-ジメトキシプロパン、2、2-ジブチル-1、3-ジメトキシプロパン、2,2-ジエチル-1、3-ジエトキシプロパン、2、2-ジシクロペンチル-1、3-ジメトキシプロパン、2,2-ジプロピル-1、3-ジエトキシプロパン、2,2-ジブチル-1、3-ジエトキシプロパン、2-メチル-2-エチル-1、3-ジメトキシプロパン、2-メチル-2-プロピル-1、3-ジメトキシプロパン、2-メチル-2-ベンジル-1、3-ジメトキシプロパン、2-メチル-2-フェニル-1、3-ジメトキシプロパン、2-メチル-2-シクロヘキシル-1、3-ジメトキシプロパン、2-メチル-2-メチルシクロヘキシル-1、3-ジメトキシプロパン、2,2-ビス(p-クロロフェニル)-1、3-ジメトキシプロパン、2,2-ビス(2-フェニルエチル)-1、3-ジメトキシプロパン、2,2-ビス(2-シクロヘキシルエチル)-1、3-ジメトキシプロパン、2-メチル-2-イソブチル-1、3-ジメトキシプロパン、2-メチル-2-(2-エチルヘキシル)-1、3-ジメトキシプロパン、2,2-ビス(2-エチルヘキシル)-1、3-ジメトキシプロパン、2,2-ビス(p-メチルフェニル)-1、3-ジメトキシプロパン、2-メチル-2-イソプロピル-1、3-ジメトキシプロパン、2,2-ジイソブチル-1、3-ジメトキシプロパン、2、2-ジフェニル1、3-ジメトキシプロパン、2、2-ジベンジル-1、3-ジメトキシプロパン、2-イソプロピル-2-シクロペンチル-1、3-ジメトキシプロパン、2、2-ビス(シクロヘキシルメチル)-1、3-ジメトキシプロパン、2,2-ジイソブチル-1、3-ジエトキシプロパン、2,2-ジイソブチル-1、3-ジブトキシプロパン、2-イソブチル-2-イソプロピル-1、3-ジメトキシプロパン、2,2-ジ-sec-ブチル-1、3-ジメトキシプロパン、2,2-ジ-tert-ブチル-1、3-ジメトキシプロパン、2,2-ジネオペンチル-1、3-ジメトキシプロパン、2-イソ-プロピル-2-イソペンチル-1、3-ジメトキシプロパン、2-フェニル-2-ベンジル-1、3-ジメトキシプロパン、2-シクロヘキシル-2-シクロヘキシルメチル-1、3-ジメトキシプロパンが含まれる。
【0024】
さらに、下記の式(II)の1,3-ジエーテルが特に好ましい。
【0025】
【0026】
前記の式において、ラジカルRIVは、式(I)において定義されたのと同じ意味を有し、ラジカルRIII及びRVは、互いに同じかまたは異なり、水素;ハロゲン、好ましくはCl及びF;直鎖状または分岐鎖状のC1-C20アルキルラジカル;C3-C20シクロアルキル、C6-C20アリール、C7-C20アルキルアリール及びC7-C20アリールアルキルラジカルからなる群から選択され、前記RVラジカル中の2つ以上は、互いに結合して飽和または不飽和であり、ハロゲン、好ましくはCl及びF;直鎖状または分枝鎖状のC1-C20アルキルラジカル;C3-C20シクロアルキル、C6-C20アリール、C7-C20アルカリール及びC7-C20アラルキルラジカルからなる群から選択されたRVIで任意選択的に置換された、縮合環状構造を形成することができ;前記ラジカルRV及びRVIは、場合により炭素原子または水素原子またはこれら両方の置換基として1つ以上のヘテロ原子を含有する。
【0027】
好ましくは、式(I)及び(II)の1,3-ジエーテルにおいて、すべてのRIIIラジカルは水素であり、すべてのRIVラジカルはメチルである。また、RVラジカルの2つ以上が互いに結合されて1つ以上の縮合環構造、好ましくはRVIラジカルで任意選択的に置換されたベンゼンを形成する式(II)の1,3-ジエーテルが特に好ましい。特に好ましいのは、下記の式(III)の化合物である:
【0028】
【0029】
前記の式において、RIII及びRIVラジカルは、式(I)において定義されたのと同じ意味を有し、同じまたは異なるRVIラジカルは水素;ハロゲン、好ましくはCl及びF;直鎖状または分枝鎖状のC1-C20アルキルラジカル;炭素原子または水素原子または両方の置換基として、場合により、N、O、S、P、Si及びハロゲン、特にCl及びFからなる群から選択された1つ以上のヘテロ原子を含有する、C3-C20シクロアルキル、C6-C20アリール、C7-C20アルキルアリール及びC7-C20アラルキルラジカルである。
【0030】
式(II)及び(III)に含まれる化合物の具体例は、次の通りである:
1,1-ビス(メトキシメチル)-シクロペンタジエン;
1,1-ビス(メトキシメチル)-2,3,4,5-テトラメチルシクロペンタジエン;
1,1-ビス(メトキシメチル)-2,3,4,5-テトラフェニルシクロペンタジエン;
1,1-ビス(メトキシメチル)-2,3,4,5-テトラフルオロシクロペンタジエン;
1,1-ビス(メトキシメチル)-3,4-ジシクロペンチルシクロペンタジエン;
1,1-ビス(メトキシメチル)インデン;1,1-ビス(メトキシメチル)-2,3-ジメチルインデン;
1,1-ビス(メトキシメチル)-4,5,6,7-テトラヒドロインデン;
1,1-ビス(メトキシメチル)-2,3,6,7-テトラフルオロインデン;
1,1-ビス(メトキシメチル)-4,7-ジメチルインデン;
1,1-ビス(メトキシメチル)-3,6-ジメチルインデン;
1,1-ビス(メトキシメチル)-4-フェニルインデン;
1,1-ビス(メトキシメチル)-4-フェニル-2-メチルインデン;
1,1-ビス(メトキシメチル)-4-シクロヘキシルインデン;
1,1-ビス(メトキシメチル)-7-(3,3,3-トリフルオロプロピル)インデン;
1,1-ビス(メトキシメチル)-7-トリメチルシリルインデン;
1,1-ビス(メトキシメチル)-7-トリフルオロメチルインデン;
1,1-ビス(メトキシメチル)-4,7-ジメチル-4,5,6,7-テトラヒドロインデン;
1,1-ビス(メトキシメチル)-7-メチルインデン;
1,1-ビス(メトキシメチル)-7-シクロペンチルインデン;
1,1-ビス(メトキシメチル)-7-イソプロピルインデン;
1,1-ビス(メトキシメチル)-7-シクロヘキシルインデン;
1,1-ビス(メトキシメチル)-7-tert-ブチルインデン;
1,1-ビス(メトキシメチル)-7-tert-ブチル-2-メチルインデン;
1,1-ビス(メトキシメチル)-7-フェニルインデン;
1,1-ビス(メトキシメチル)-2-フェニルインデン;
1,1-ビス(メトキシメチル)-1H-ベンズ\[e]インデン;
1,1-ビス(メトキシメチル)-1H-2-メチルベンズ\[e]インデン;
9,9-ビス(メトキシメチル)フルオレン;
9,9-ビス(メトキシメチル)-2,3,6,7-テトラメチルフルオレン;
9,9-ビス(メトキシメチル)-2,3,4,5,6,7-ヘキサフルオロフルオレン;
9,9-ビス(メトキシメチル)-2,3-ベンゾフルオレン;
9,9-ビス(メトキシメチル)-2,3,6,7-ジベンゾフルオレン;
9,9-ビス(メトキシメチル)-2,7-ジイソプロピルフルオレン;
9,9-ビス(メトキシメチル)-1,8-ジクロロフルオレン;
9,9-ビス(メトキシメチル)-2,7-ジシクロペンチルフルオレン;
9,9-ビス(メトキシメチル)-1,8-ジフルオロフルオレン;
9,9-ビス(メトキシメチル)-1,2,3,4-テトラヒドロフルオレン;
9,9-ビス(メトキシメチル)-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロフルオレン;
9,9-ビス(メトキシメチル)-4-tert-ブチルフルオレン。
【0031】
好ましくは、1.3-ジエーテル/Mgのモル比は0.030~0.150、最も好ましくは0.035~0.010の範囲である。好ましい実施形態において、Mg/Tiモル比は4~10、より好ましくは5~8の範囲である。
【0032】
好ましくは、固体触媒成分(a)のオレフィン重合体部分は、Rが水素または1~12個の炭素原子を有するヒドロカルビルラジカルである式CH2=CHRのオレフィンの(共)重合体から選択される。より好ましくは、前記オレフィンは、エチレン、プロピレンまたはこの混合物から選択される。エチレンまたはプロピレンの単独使用が特に好ましい。
【0033】
固体触媒成分(a)中のオレフィン重合体の量は、好ましくは固体触媒成分(a)の総重量に基づいて15~75重量%の範囲である。
【0034】
固体触媒成分(a)は、好ましくは予備重合固体触媒成分である。これは、Mg、Ti、ハロゲン及び1.3-ジエーテルから選択された電子供与体を含む元の固体触媒成分をオレフィン単量体及びAl-アルキル化合物の存在下で予備重合条件を実施することによって得ることができる。
【0035】
予備重合固体触媒成分は、Mg、Ti、ハロゲン及び1.3-ジエーテルから選択された電子供与体及びポリオレフィンを含む元の固体触媒成分を含み、前記ポリオレフィンは、前記元の固体触媒成分とオレフィン単量体との重合に由来し、その量は、前記元の固体触媒成分の量の5倍以下である。
【0036】
予備重合条件という用語は、前記定義された予備重合触媒成分を製造するのに適した温度、単量体濃度、温度及び試薬の量に関連する複合的な条件を意味する。
【0037】
少量のアルキル-Al化合物を使用して予備重合を実施することが特に有利であることが見出された。特に、前記量は、0.001~10、好ましくは0.005~5、より好ましくは0.01~2.5範囲のAl/触媒重量比を有するようにすることができる。以前に報告された式(I)のケイ素化合物、エーテル、エステル、アミン、複素環化合物、ケトン及び1,3-ジエーテルから選択された外部供与体もまた使用され得る。しかしながら、予備重合における外部供与体の使用が厳密に必要なものではない。
【0038】
予備重合は、一般に、-20~80℃、好ましくは0℃~75℃範囲の温度で液相、(スラリーまたはバルク)または気相で行うことができる。好ましくは、特に液体軽質炭化水素から選択された液体希釈剤中で行われる。その中でも、ペンタン、ヘキサン及びヘプタンが好ましい。代替的な実施形態において、予備重合は、特に40℃で5~100cSt範囲の動粘度を有するより粘性の媒体で行うことができる。そのような媒体は、純粋な物質または異なる動粘度を有する物質の均質混合物であり得る。好ましくは、このような媒体は炭化水素媒体であり、より好ましくは40℃で10~90cSt範囲の動粘度を有する。
【0039】
液体希釈剤中の元の触媒成分濃度は、好ましくは10~300g/l、より好ましくは40~200g/lの範囲である。
【0040】
予備重合時間は、0.25~30時間、特に0.5~20時間、より具体的には1~15時間の範囲であり得る。予備重合されるべきオレフィン単量体は、予備重合の前に反応器に所定量で、そして1つの段階で供給することができる。また他の実施形態において、オレフィン単量体は、重合中に所望の速度で反応器に連続的に供給される。
【0041】
オレフィン重合体を含有しない元の固体触媒成分は、好ましくは1μm以下の半径を有する空隙による、水銀法で測定された空隙率が0.15cm3/g~1.5cm3/g、好ましくは0.3cm3/g~0.9cm3/g及びより好ましくは0.4~0.9cm3/gの範囲であることを特徴とする。
【0042】
元の固体触媒成分及び固体触媒成分(a)は、前述した電子供与体の以外に、少なくとも1つのTi-ハロゲン結合を有するチタン化合物及びMgハライドをまた含む。マグネシウムハライドは、チーグラー・ナッタ触媒に対する担持体として特許文献に広く知られている活性型のMgCl2であることが好ましい。米国特許第4,298,718号及び米国特許第4,495,338号は、チーグラー・ナッタ触媒作用におけるこれらの化合物の用途を最初に記載した。これらの特許から、オレフィンの重合用触媒成分において担持体または共担持体として使用される活性型のマグネシウムジハライドは、X線スペクトルを特徴とすると知られており、X線スペクトルにおいて、非活性ハライドで現れる最も強い回折線は強度が減少し、最大強度がより強い線の強度に比べてより低い角度に変位されるハロに置換される。
【0043】
本発明の触媒成分に使用される好ましいチタン化合物はTiCl4及びTiCl3であり;さらに、式Ti(OR)n-yXyのTi-ハロアルコラートが使用されることができ、ここで、nはチタンの原子価であり、yは1~n-1の数であり、Xはハロゲンであり、Rは1~10個の炭素原子を有する炭化水素ラジカルである。
【0044】
好ましくは、元の触媒成分(a)は、10~100μm範囲の平均粒子サイズを有する。
【0045】
予備重合に使用されることと同一であり得るアルキル-Al化合物(b)は、例えば、トリエチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム化合物の中から選択されることが好ましい。アルキルアルミニウムハライド、アルキルアルミニウムハイドライドまたはAlEt2Cl及びAl2Et3Cl3などのアルキルアルミニウムセスキクロライドとトリアルキルアルミニウムとの混合物を使用することもできる。
【0046】
好ましくは、アルミニウムアルキル化合物(b)は、Al/Tiモル比が10~400、好ましくは30~250、より好ましくは40~100の範囲になる量で気相工程で使用されるべきである。
【0047】
前記されたように、触媒システムは、いくつかのクラスから選択された外部電子供与体(ED)を含むことができる。エーテルの中で、固体触媒成分(a)で内部供与体としてまた開示される1,3ジエーテルが好ましい。エステルの中で、マロン酸、コハク酸及びグルタル酸などの脂肪族飽和モノカルボン酸またはジカルボン酸のエステルが好ましい。複素環化合物の中で、特に2,2,6,6-テトラメチルピペリジンが好ましい。好ましい外部供与体化合物の特定のクラスは、少なくとも1つのSi-O-C結合を有するケイ素化合物のものである。好ましくは、前記ケイ素化合物は、式Ra5Rb6Si(OR7)cを有し、ここで、a及びbは0~2の整数であり、cは1~3の整数であり、合計(a+b+c)は4であり;R5、R6及びR7は場合によりN、O、ハロゲン及びPから選択されたヘテロ原子を含有する、炭素数1~18個のアルキル、シクロアルキルまたはアリールラジカルである。特に、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルt-ブチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、2-エチルピペリジニル-2-t-ブチルジメトキシシラン及び1,1,1,トリフルオロプロピル-2-エチルピペリジニル-ジメトキシシラン及び1,1,1,トリフルオロプロピル-メチル-ジメトキシシランが好ましい。主重合工程において使用される外部電子供与体化合物は、主重合工程において使用される有機アルミニウム化合物(b)と前記電子供与体化合物とのモル比が2~200、好ましくは5~150、より好ましくは7~100、特に7~70になるようにする量で適用かつ使用される。
【0048】
気相法は、任意のタイプの気相反応器または技術を使用して行うことができる。特に、これは1つ以上の流動床または機械的撹拌床反応器で操作して行うことができる。典型的に、流動床反応器において、流動化は、不活性流動化ガスの流れによって得られ、その速度は輸送速度の以下である。その結果、流動化された粒子の床は、反応器の多少限定されたセクションで見出され得る。機械的撹拌床反応器において、重合体床は、連続的なブレード動作によって生成された気体流動によって定位置に維持され、ブレード動作の調節はまた床の高さを決定する。作動温度は一般に50~85℃、好ましくは60~85℃の間で選択される一方、作動圧力は一般に0.5~8MPa、好ましくは1~5MPa、より好ましくは1.0~3.0MPaに設定される。不活性流動化ガスはまた、重合反応によって生成された熱を消散させるのに有用であり、窒素または好ましくはプロパン、ペンタン、ヘキサンまたはこれらの混合物などの飽和された軽質炭化水素から便利に選択される。
【0049】
重合体分子量は、適切な量の水素またはZnEt2のような任意の他の適切な分子量調節剤を使用して調節することができる。水素が使用される場合、水素/プロピレンのモル比は一般に0.0002~0.5であり、プロピレン単量体は反応器中に存在するガスの全体積に基づいて20~100体積%、好ましくは30~70体積%を含む。供給混合物の残りの部分は、もしあれば、不活性気体及び1つ以上のα-オレフィン共単量体で構成される。
【0050】
本発明に従って使用可能な別の気相技術は、少なくとも2つの相互連結された重合ゾーンを含む気相重合装置の使用を含む。前記方法は、プロピレン及びエチレンまたはプロピレン及びアルファ-オレフィンが触媒システムの存在下で供給され、生成された重合体が排出される第1相互連結された重合ゾーン内で、かつ第2の相互連結された重合ゾーン内で行われる。成長する重合体粒子は、速い流動化条件下で前記重合ゾーンなどのうち第1のゾーン(ライザー)を通って流れ、前記第1の重合ゾーンを出て重力の作用下で緻密化された状態で流れる前記重合ゾーンなどのうち第2のゾーン(ダウンカマ)に入り、前記第2の重合ゾーンを出て前記第1の重合ゾーンに再導入され、このようにして2つの重合ゾーンの間で重合体の循環を確立する。一般に、第1の重合ゾーンにおける速い流動化の条件は、成長する重合体を前記第1の重合ゾーン内に再導入する地点の下に単量体ガス混合物を供給することによって確立される。第1の重合ゾーンへの輸送ガスの速度は、作動条件下での輸送速度より高く、通常2~15m/sである。重力の作用下で緻密化された状態で重合体が流れる第2の重合ゾーンにおいて、重合体の嵩密度に近接する高密度の固形物に到逹する;従って、流動方向に沿って圧力の上昇を得ることができるので、機械的手段の助けなしに重合体を第1の反応ゾーンに再導入することが可能となる。このような方式で、2つの重合ゾーンの間の圧力均衡及びシステム内に導入されたヘッドロス(head loss)によって定義される“ループ”循環が設定される。またこの場合、窒素または脂肪族炭化水素のような1つ以上の不活性ガスが、不活性ガスの部分圧力の合計が好ましくはガスの総圧力の5~80%になる量で重合ゾーンに維持される。作動温度は50~85℃、好ましくは60~85℃であり、作動圧力は0.5~10MPa、好ましくは1.5~6MPaの範囲である。好ましくは、触媒成分は、第1の重合ゾーンの任意の地点で第1の重合ゾーンへ供給される。しかしながら、これらはまた、第2の重合ゾーンの任意の地点で供給され得る。分子量調節剤の使用は、前述の条件下で実施される。WO00/02929号に記載された手段を使用することにより、ライザーに存在するガス混合物がダウンカマに入ることを完全にまたは部分的に防止することが可能である;特に、これはライザーに存在するガス混合物と異なる組成を有するガス及び/または液体混合物をダウンカマに導入することによって好ましく得られる。本発明の特に有利な実施形態によれば、ライザーに存在するガス混合物と異なる組成を有する前記ガス及び/または液体混合物のダウンカマ内への導入は、後者の混合物がダウンカマに入るのを防ぐのに有効である。従って、異なる単量体組成を有し、従って異なる特性を有する重合体を生成することができる2つの相互連結された重合ゾーンを得ることができる。
【0051】
固体触媒成分(a)の製造のための予備重合工程は、原則として、気相反応器の直ぐ上流の予備重合セクションで実施され得る。しかしながら、予備重合の程度が比較的低いため、前記予備重合工程はバッチ専用プラントで実施することが好ましい。次いで、得られた触媒成分(a)を貯蔵し、必要に応じて重合プラントに供給することができる。
【0052】
説明したように、反応器の特定のセクションにおいて、微粒子の好ましくない重合によって温度がより高い値に到達すると、反応器の作動上の問題が生じることができる。本出願の実施例は、本発明の触媒システムが使用される場合、85℃より高い温度で触媒の活性が強く減少し、それにより汚染の問題を減少または除去する自己消火性を示すことを明らかに立証している。本出願に関連して、85℃より高い温度での重合活性、70℃における重合活性が、70%以下、より好ましくは65%以下、特に60%以下であれば、満足すべきレベルの自己消火性が存在する。従って、本発明の更なる目的は、選択的に少量の他のオレフィンと混合した、プロピレン及び以下を含む触媒システムを気相重合反応器に供給する段階を含む、プロピレンの自己消化性気相重合方法である:
【0053】
(a)固体触媒成分の総重量の10~85%範囲の量でMg、Ti、ハロゲン、1.3-ジエーテルから選択された電子供与体及びオレフィン重合体を含む固体触媒成分;
(b)アルミニウムアルキル化合物及び
(c)ケイ素化合物、エーテル、エステル、アミン、複素環化合物、ケトン及びこれらの任意の混合物から選択された外部電子供与体化合物(ED)であって;前記成分(b)及び(c)は、Al/(ED)モル比が2~200のなる量で使用される。
【0054】
先に説明されたすべての好ましい及び特定の実施形態も上述した方法に適用される。
【0055】
本発明の触媒は、自己消火性と共に、85℃未満の温度で重合する能力を示し、高い収率、高い立体規則性及び0.42cm3/g以上の嵩密度値で表される価値ある形態学的特性を示すことを注目する価値がある。
【実施例】
【0056】
以下に、本発明をより良く説明するために実施例を示すが、これらはどのような方式でも本発明を限定するものではない。
【0057】
特性評価
X.I.の測定
2.5gの重合体を撹拌下で、135℃で250mLのo-キシレン中に30分間溶解し、次いで溶液を25℃に冷却し、30分後に不溶性重合体を濾過した。得られた溶液を窒素流れ中で蒸発させた。残留物を乾燥し、秤量して可溶性重合体の比率を求め、差によってX.I.%を求めた。
【0058】
付加物、触媒及び予備重合体の平均粒子サイズ
「Malvern Instr. 2600」装置を使用して単色レーザー光の光学回折の原理に基づいた方法によって測定する。平均粒子サイズは、P50である。
【0059】
溶融流量(MFR)
ISO 1133(230℃、2.16Kg)に従って測定する。
【0060】
水銀による空隙率及び表面積:
この測定は、カルロエルバ(Carlo Erba)社製の「ポロシメーター(Porosimeter)2000シリーズ」を使用して行う。
【0061】
空隙率は、圧力下で水銀の吸収によって測定する。このような測定のために、水銀のリザーバと高真空ポンプ(1.10~2mbar)に連結された較正された膨張計CD3(直径:3mm)(カルロエルバ社製の)を使用する。秤量した量の試料をこの膨張計に入れる。次いで、この装置を高真空(<0.1mmHg)下に置き、これらの条件を20分間保持する。次いで、この膨張計を水銀リザーバに連結し、膨張計の高さが10cmのレベルに到逹するまで、その中に水銀をゆっくりと流入させる。膨張計と真空ポンプを連結するバルブを閉じ、次いで水銀圧力を窒素で漸次的に140Kg/cm
2
まで上げる。圧力効果下で、水銀は空隙中に入り、材料の空隙率に応じてそのレベルが下がる。
【0062】
触媒の場合、1μmまで(重合体の場合10μm)の空隙による空隙率(cm3/g)、空隙分布曲線、及び平均空隙サイズは、水銀の体積減少量と印加圧力との関数である積分空隙分布曲線から直接計算する(これらのデータのすべてはカルロエルバ社の「MILESTONE 200/2.04」プログラムが装着されたポロシメーターに連結したコンピュータによって得られ、精緻化される)。
【0063】
流動嵩密度[g/cm3]:DIN-53194に従って測定する。
【0064】
MgCl2・(EtOH)m付加物の一般的な製造方法
初期量の微小球MgCl2・2.8C2H5OHを10,000の代わりに3000rpmで操作することを除いては、米国特許第4,399,054号の実施例2に記載された方法に従って製造した。このようにして得られた35μmの平均粒子サイズを有する付加物は、Mgモル当たりのモルアルコール含量が1.99になるまで窒素気流中で作動する30~130℃の上昇温度で熱的脱アルコール化を実施した。最終粒子サイズはP50=40μmと決定された。
【0065】
非予備重合固体触媒成分の製造-一般的手順。
機械的撹拌機、冷却器及び温度計を備えた3.0リットルの丸底フラスコに、2.0LのTiCl4を室温で窒素雰囲気下で導入した。-5℃で冷却した後、撹拌しながら、100gの微小球MgCl2・2.0C2H5OHを導入した。次いで、温度を-5℃から40℃まで0.4℃/分の速度で上昇させた。40℃の温度に到達すると、内部供与体としての9,9-ビス(メトキシメチル)フルオレン26.7gを導入した。添加の終了時に温度を0.8℃/分の速度で100℃まで上昇させ、この温度値に60分間固定維持した。その後、撹拌を停止し、固体生成物を沈降させ、上澄液を温度を100℃に維持しながら吸い上げた。上澄液を除去した後、さらに1.9Lの新しいTiCl4を添加し、混合物を110℃に加熱し、この温度で30分間維持した。再度撹拌を中断した;固体生成物を沈降させ、上澄液を温度を110℃に維持しながら吸い上げた。新しいTiCl4(1.9L)の3回目の分取量を添加し、混合物を110℃で30分間撹拌下に維持させた後、上澄液を吸い上げた。固体を無水i-ヘキサンで60℃以下の温度勾配で5回(5×1.0L)洗浄し、室温で1回(1.0L)洗浄した。最後に、固体を真空下で乾燥させ、分析した。触媒組成:Mg=15.1重量%;Ti=4.4重量%;I.D.=14.5重量%;P50=41.2μm。
【0066】
気相プロピレン重合のための一般的手順
再循環ガス圧縮機、熱交換器、及び自動温度制御装置を備えた実験室規模の流動床反応器を使用して気相でプロピレンを重合させた。流動床反応器は、予備重合触媒を供給した後に目標値に到達するように、所望の温度、圧力及び組成に設定される。重合の目標値は以下の通りである:プロピレン93.8モル%、プロパン5モル%、及び水素1.2モル%からなる全圧20barg。
【0067】
ガラスフラスコに0.35gのトリエチルアルミニウム、使用時、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン(ED)、及び約40~100mgの固体触媒成分(または予備重合触媒)を100mLのi-ヘキサンに導入した。触媒を室温で10分間予備接触させた。次いで、フラスコの内容物を0.8Lのオートクレーブに供給した。オートクレーブを閉じ、100グラムの液体プロパン(及びインライン予備重合が行われた比較例2~4におけるプロピレンのみ6~40g)を添加した。触媒混合物を30℃で15分間撹拌した(他に明記しない限り)。次いで、オートクレーブの内容物を前述したように設定された流動床上反応器に供給した。反応した単量体を補充するのに十分な量のガス状プロピレンを連続的に供給することにより、反応器の圧力を一定に維持しながら2時間重合を実施した。2時間後、形成された重合体床を排出させ、脱気させて特性化する。
【0068】
実施例1
予備重合触媒の製造
機械的アンカー撹拌機を備えた250cm3のガラス容器/ステンレス鋼オートクレーブ内に、室温及び窒素雰囲気下で、トリ-n-オクチルアルミニウム(TNOA)0.28g及び前記したように製造された球状触媒9.2gを含有する100cm3のi-ヘキサンを導入した。撹拌は約300rpmに設定し、内部温度は30分間50℃に増加させた。反応器の温度を一定に維持しながら、エチレンを4時間一定の流れで注意深く導入した。触媒1g当たり重合体3gの理論転化率に到達したと判断されると、重合を中断した。生成された予備重合触媒を室温で真空下で乾燥させ、分析した。これは、固体触媒1g当たりポリエチレン2.97g(74%重合体)を含有した。予備重合体組成:Mg=3.8重量%;Ti=1.1重量%;I.D.=3.5重量%;P50=73.4μm。次いで、触媒成分は、70℃及び90℃でそれぞれ実施される一般的な手順に従って、プロピレンのダブルラン(double run)気相重合に使用した。
【0069】
実施例2
予備重合触媒の製造
機械的アンカー撹拌機を備えた250cm3のガラス容器/ステンレス鋼オートクレーブ内に、室温及び窒素雰囲気下で、トリ-n-オクチルアルミニウム(TNOA)0.63g及び前記したように製造された球状触媒20.2gを含有する100cm3のi-ヘキサンを導入した。撹拌は約300rpmに設定し、内部温度は30分間50℃に増加させた。反応器の温度を一定に維持しながら、エチレンを4時間一定の流れで注意深く導入した。触媒1g当たり重合体0.8gの理論転化率に到達したと判断されると、重合を中断した。生成された予備重合触媒を室温で真空の下に乾燥させ、分析した。これは、固体触媒1g当たりポリエチレン0.84g(重合体45.6%)を含有した。予備重合体組成:Mg=8.2重量%;Ti=2.5重量%;I.D.=6.6重量%;P50=52.1μm。次いで、触媒成分は、70℃及び90℃でそれぞれ実施される一般的な手順に従って、プロピレンのダブルラン気相重合に使用した。
【0070】
実施例3
予備重合触媒の製造
機械的アンカー撹拌機を備えた250cm3のガラス容器/ステンレス鋼オートクレーブ内に、室温及び窒素雰囲気下で、トリ-n-オクチルアルミニウム(TNOA)0.60g及び前記したように製造された球状触媒19.8gを含有する100cm3のi-ヘキサンを導入した。撹拌は約300rpmに設定し、内部温度は30分間50℃に増加させた。反応器の温度を一定に維持しながら、エチレンを3時間一定の流れで注意深く導入した。触媒1g当たり重合体0.5gの理論転化率に到達したと判断されると、重合を中断した。生成された予備重合触媒を室温で真空下で乾燥させ、分析した。これは、固体触媒1g当たりポリエチレン0.55g(重合体35.4%)を含有した。予備重合体組成:Mg=9.8重量%;Ti=2.9重量%;I.D.=8.7重量%;P50=47.7μm。次いで、触媒成分は、70℃及び90℃でそれぞれ実施される一般的な手順に従って、プロピレンのダブルラン気相重合に使用した。
【0071】
実施例4
予備重合触媒の製造
機械的アンカー撹拌機を備えた250cm3のガラス容器/ステンレス鋼オートクレーブ内に、室温及び窒素雰囲気下で、トリ-n-オクチルアルミニウム(TNOA)0.63g及び前記したように製造された球状触媒20.5gを含有する100cm3のi-ヘキサンを導入した。撹拌は約300rpmに設定し、内部温度は30分間50℃に増加させた。反応器の温度を一定に維持しながら、エチレンを2時間一定の流れで注意深く導入した。触媒1g当たり重合体0.25gの理論転化率に到達したと判断されると、重合を中断した。生成された予備重合触媒を室温で真空下で乾燥させ、分析した。これは、固体触媒1g当たりポリエチレン0.28g(重合体21.8%)を含有した。予備重合体組成:Mg=11.8重量%;Ti=3.4重量%;I.D.=9.0重量%;P50=43.3μm。次いで、触媒成分は、70℃及び90℃でそれぞれ実施される一般的な手順に従って、プロピレンのダブルラン気相重合に使用した。
【0072】
比較例1
予備重合を実施せずに、一般的な手順に従って製造された触媒成分は、70℃及び90℃でそれぞれ実施される一般的な手順に従って、プロピレンのダブルラン気相重合に使用した。
【0073】
比較例2-4
一般的な手順に従って製造された触媒成分は、インライン予備重合が実施されるという点から違うが、一般的な方法に従って、プロピレンの気相重合に使用した。70℃及び90℃でそれぞれ実施された第1のシリーズのダブルラン実施(比較例2)において、6gのプロピレンを5分間予備重合させた。第2のシリーズ(比較例3)において、6gのプロピレンを15分間予備重合させ、第3のシリーズ(比較例4)において、40gのプロピレンを15分間予備重合させた。重合体転化率は、同一条件下で実施された平行実験で製造された予備重合体を秤量して測定した。1gの触媒成分を考慮すると、比較例2における転化率は10(90%重合体)であり、比較例3における転化率は24(96%重合体)であり、比較例4における転化率は88(98.8%重合体)であった。
【0074】
実施例5
オイルスラリーにおける予備重合触媒の製造
機械的アンカー撹拌機を備えた250cm3のガラス容器/ステンレス鋼オートクレーブ内に、室温及び窒素雰囲気下で、80cm3の乾燥オイル(Winog-70)、トリ-n-オクチルアルミニウム(TNOA)0.62g及び前記したように製造された球状触媒19.0を含有する20cm3のi-ヘキサンを導入した。撹拌は約300rpmに設定し、内部温度は30分間70℃に増加させた。反応器の温度を一定に維持しながら、エチレンを一定の流れで4時間注意深く供給しながら1.0barの水素過圧を導入した。触媒1g当たり重合体1gの理論転化率に到逹したと判断されると、重合を中断した。生成された予備重合触媒をオイル/i-ヘキサンスラリー中に維持した。50cm3のスラリーを撹拌しながらi-ヘキサンで希釈し、溶媒を吸い上げ、残留固体予備重合体を50mlの乾燥したi-ヘキサンで3回洗浄し、分析した。これは、固体触媒1g当たりポリエチレン1.01gを含有した。予備重合体組成:Mg=7.5重量%;Ti=2.0重量%;I.D.=6.3重量%;P50=57.6μm。次いで、触媒成分は、70℃及び90℃でそれぞれ実施される一般的な手順に従って、プロピレンのダブルラン気相重合に使用した。
【0075】
実施例6
オイルスラリーにおける予備重合触媒の製造
機械的アンカー撹拌機を備えた250cm3のガラス容器/ステンレス鋼オートクレーブ内に、室温及び窒素雰囲気下で、80cm3の乾燥オイル(Winog-70)、トリ-エチルアルミニウム(TEA)4.4g及び前記したように製造された球状触媒16.95g及びシクロヘキシルメチルジメトキシシラン(ED)0.1gを含有する20cm3のi-ヘキサンを導入した。撹拌は約300rpmに設定し、室温で30分間撹拌しながら維持させた後、内部温度を10℃に下げた。反応器の温度を一定に維持しながら、プロピレンを一定の流れで4時間注意深く供給した。触媒1g当たり重合体1.4gの理論転化率に到逹したと判断されると、重合を中断した。生成された予備重合触媒をオイル/i-ヘキサンスラリー中に維持させた。50cm3のスラリーを撹拌しながらi-ヘキサンで希釈し、溶媒を吸い上げ、残留固体予備重合体を50mlの乾燥したi-ヘキサンで3回洗浄し、分析した。これは、固体触媒1g当たりポリプロピレン1.19gを含有した。予備重合体組成:Mg=7.1重量%;Ti=1.9重量%;I.D.=5.5重量%;P50=69.9μm。次いで、触媒成分は、70℃及び90℃でそれぞれ実施される一般的な手順に従って、プロピレンのダブルラン気相重合に使用した。
【0076】
実施例7-9及び比較例5
予備重合触媒の製造
機械的アンカー撹拌機を備えた250cm3のガラス容器/ステンレス鋼オートクレーブ内に、室温及び窒素雰囲気下で、トリ-n-オクチルアルミニウム(TNOA)0.60g及び前記したように製造された球状触媒19.6gを含有する100cm3のi-ヘキサンを導入した。撹拌は約300rpmに設定し、内部温度は30分間50℃に増加させた。反応器の温度を一定に維持しながら、エチレンを4時間一定の流れで注意深く導入した。触媒1g当たり重合体1gの理論転化率に到逹したと判断されると、重合を中断した。生成された予備重合触媒を室温で真空下で乾燥させ、分析した。これは、固体触媒1g当たりポリエチレン1.00gを含有した。予備重合体組成:Mg=7.6重量%;Ti=2.1重量%;I.D.=6.2重量%;P50=54.2μm。次いで、触媒成分は、70℃及び90℃でそれぞれ実施される一般的な手順に従って、プロピレンのダブルラン気相重合に使用した。
【0077】
実施例10
固体触媒成分の製造
内部供与体(ID)として、9,9-ビス(メトキシメチル)フルオレンの代わりに2-i-プロピル-2-i-ブチル-1、3-ジメトキシプロパンを使用することを除いては、一般的な手順に従って固体触媒成分を製造した。触媒組成物は、以下の通りである:Mg=18.3重量%;Ti=3.1重量%;I.D.=14.7重量%;P50=40.4μm。
【0078】
予備重合触媒の製造
機械的アンカー撹拌機を備えた250cm3のガラス容器/ステンレス鋼オートクレーブ内に、室温及び窒素雰囲気下で、トリ-n-オクチルアルミニウム(TNOA)0.32g及び前記したように製造された触媒14.5gを含有する150cm3のi-ヘキサンを導入した。撹拌は約300rpmに設定し、内部温度は30分間50℃に増加させた。反応器の温度を一定に維持しながら、エチレンを2時間一定の流れで注意深く導入した。触媒1g当たり重合体0.25gの理論転化率に到逹したと判断されると、重合を中断した。生成された予備重合触媒を室温で真空下で乾燥させ、分析した。これは、固体触媒1g当たりポリエチレン0.28g(22%重合体)を含有した。予備重合体組成:Mg=14.3重量%;Ti=2.3重量%;I.D.=11.7重量%;溶媒ゼロで;P50=43.0μm。次いで、触媒成分は、70℃及び90℃でそれぞれ実施される一般的な手順に従って、プロピレンのダブルラン気相重合に使用した。
【0079】
実施例11
予備重合触媒の製造
機械的アンカー撹拌機を備えた250cm3のガラス容器/ステンレス鋼オートクレーブ内に、室温及び窒素雰囲気下で、トリ-n-オクチルアルミニウム(TNOA)0.24g及び実施例10に記載されたように製造された球状触媒10.46gを含有する150cm3のi-ヘキサンを導入した。撹拌は約300rpmに設定し、内部温度は30分間50℃に増加させた。反応器の温度を一定に維持しながら、エチレンを4時間一定の流れで注意深く導入した。触媒1g当たり重合体1.0gの理論転化率に到逹したと判断されると、重合を中断した。生成された予備重合触媒を室温で真空下で乾燥させ、分析した。これは、固体触媒1g当たりポリエチレン1.13g(53%重合体)を含有した。予備重合体組成:Mg=8.6重量%;Ti=1.4重量%;溶媒ゼロで;P50=63.0μm。次いで、触媒成分は、70℃及び90℃でそれぞれ実施される一般的な手順に従って、プロピレンのダブルラン気相重合に使用した。
【0080】
実施例12
予備重合触媒の製造
機械的アンカー撹拌機を備えた250cm3のガラス容器/ステンレス鋼オートクレーブ内に、室温及び窒素雰囲気下で、トリ-n-オクチルアルミニウム(TNOA)1.35g及び前記したように製造された球状触媒(実施例10)12.12g及びシクロヘキシルメチルジメトキシシラン(CHMMS)0.14gを含有する150cm3のi-ヘキサンを導入した。撹拌は約300rpmに設定し、室温で30分間連続的に撹拌しながら維持させた後、内部温度を10℃に増加させた。反応器の温度を一定に維持しながら、プロピレンを3時間一定の流れで注意深く供給した。触媒1g当たり重合体0.5gの理論転化率に到逹したと判断されると、重合を中断した。生成された予備重合触媒を室温で真空下で乾燥させ、分析した。これは、固体触媒1g当たりポリプロピレン0.58gを含有した。予備重合体組成:Mg=11.6重量%;Ti=1.9重量%;I.D.=8.6重量%;P50=59.0μm。次いで、触媒成分は、70℃及び90℃でそれぞれ実施される一般的な手順に従って、プロピレンのダブルラン気相重合に使用した。
【0081】
比較例6
IDとして1,2-ジメトキシプロパン(DMP)を使用することを除いては、予備重合を実施せずに、一般的な手順に従って触媒成分を製造した。触媒組成は以下の通りであった:Mg=16.8重量%;Ti=5.5重量%;I.D.=4.7重量%;これは、70℃で実施された一般的な手順に従って、プロピレンの単一ラン気相重合において使用した。
【0082】